説明

燃料電池及びそれを用いる携帯機器

【課題】携帯機器の電源として利用可能であり、携帯機器の電気回路の発熱を利用して発電能力が向上可能な燃料電池、及び、燃料電池を電源として使用可能に構成され、その電気回路の発熱によって燃料電池の発電能力を向上可能な携帯機器を提供する。
【解決手段】電気回路34a,34bを有する携帯機器32の電源として使用される燃料電池10。この燃料電池10は、電気回路34a,34bから発生した熱を吸熱する吸熱部30a,30bと、吸熱部30a,30bに吸熱された熱を、発電のための活物質に電気化学反応を起こさせる反応部18に伝達する電池側熱伝達部材20a,20bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を有する携帯機器の電源として使用される燃料電池、及び、燃料電池を電源として使用可能に構成され、電気回路を有する携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料側電極と酸化剤側電極とによって電解質膜を挟持した燃料電池が用いられている。このような燃料電池では、発電能力を向上するために、酸化剤電極に供給される酸化剤を加熱することが行われている。
【0003】
特許文献1の燃料電池発電装置では、電力変換装置の発熱を利用して酸化剤としての空気を加熱している。詳細に説明すると、図6に示されるように、燃料電池100は電力変換装置102に直流電圧を出力し、電力変換装置102は直流電圧を交流電圧に変換して負荷104に出力するようになっている。ここで、電力変換装置102には水冷用冷却器106が付設されており、この水冷用冷却器106には熱媒循環回路108が接続されている。この熱媒循環回路108には熱媒循環用ポンプ110及びラジエータ112が配設されている。このラジエータ112は、空気を酸化剤側電極116bに供給するための反応空気ブロウ114の空気吸い込み部に配置されている。電力変換装置102の発熱により加熱された熱媒は、熱媒循環用ポンプ110によってラジエータ112へと移送され、熱交換によって空気吸い込み部近傍の空気を加熱する。加熱された空気は、反応空気ブロウ114によって酸化剤側電極116bに供給される。このようにして、電力変換装置102の発熱を反応空気の加熱に利用している。
【特許文献1】特開2002−8687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の燃料電池発電装置では、熱媒を利用して反応空気を加熱している。このため、熱媒を循環させるための熱媒循環回路108、熱媒を移送する熱媒循環用ポンプ110、及び、熱媒と反応空気との熱交換を行うためのラジエータ112が必須となっている。即ち、多数かつ複雑な構成要素が必要となっており、各種携帯機器に適用することが困難となっている。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、携帯機器の電源として利用可能であり、携帯機器の電気回路の発熱を利用して発電能力が向上可能な燃料電池、及び、燃料電池を電源として使用可能に構成され、その電気回路の発熱によって燃料電池の発電能力を向上可能な携帯機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい一実施態様は、電気回路を有する携帯機器の電源として使用される燃料電池であって、前記電気回路から発生した熱を吸熱する吸熱部と、前記吸熱部に吸熱された熱を、発電のための活物質に電気化学反応を起こさせる反応部に伝達する電池側熱伝達部材と、を有することを特徴とする燃料電池である。
【0007】
好ましくは、前記吸熱部は、前記電気回路又は当該電気回路から発生した熱を伝達する回路側熱伝達部材の接触部と接触する。
【0008】
好ましくは、前記吸熱部は、前記電気回路又は前記回路側熱伝達部材と分離可能である。
【0009】
好ましくは、前記電池側熱伝達部材は、前記活物質が通過する経路の壁面であって、前記反応部に至るまでの当該経路の壁面に、前記吸熱部で吸熱された熱を伝達する。
【0010】
好ましくは、前記電池側熱伝達部材は、前記燃料電池のセパレータを兼ねている。
【0011】
本発明の好ましい別の一実施態様は、燃料電池を電源として使用可能に構成され、電気回路を有する携帯機器であって、前記電気回路と熱的に接続され当該電気回路から発生した熱を伝達する回路側熱伝達部材と、発電のための活物質に電気化学反応を起こさせる反応部に熱的に接続されている電池側熱伝達部材と接触し、前記回路側熱伝達部材に伝達された熱を当該電池側熱伝達部材に伝達する接触部と、を有することを特徴とする携帯機器である。
【0012】
好ましくは、前記回路側熱伝達部材は、前記電気回路と直接的又は間接的に接続されている。
【0013】
好ましくは、前記接触部は、前記電池側熱伝達部材と分離可能である。
【0014】
好ましくは、前記電池側熱伝達部材は、前記活物質が通過する経路の壁面であって、前記反応部に至るまでの当該経路の壁面に、前記接触部から伝達された熱を伝達する。
【0015】
好ましくは、前記電池側熱伝達部材は、前記燃料電池のセパレータを兼ねている。
【0016】
好ましくは、前記電気回路は、撮像素子を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料電池が携帯機器の電源として利用可能となっており、その発電能力を携帯機器の電気回路の発熱を利用して向上することが可能となっている。また、携帯機器が燃料電池を電源として使用可能に構成されており、その電気回路の発熱によって燃料電池の発電能力を向上することが可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態を図1を参照して説明する。本実施形態の燃料電池10は、図1(A)及び図1(B)に示されるように電解質膜14を有する。この電解質膜14として、例えば、DuPont社のNafion(登録商標)が用いられる。
【0019】
そして、電解質膜14の両面には、夫々、燃料側電極16a及び酸化剤側電極16bが密着して配置されている。これら燃料側電極16a及び酸化剤側電極16bとして、例えば、カーボンペーパ、カーボンクロス等のウェブに触媒を担持したものが用いられる。ここで、燃料側電極16aの触媒は使用される燃料に応じて選択されている。例えば、燃料がメタノール水溶液の場合には白金・ルテニウム触媒、燃料が水素化ホウ素ナトリウム水溶液等の苛性アルカリ水溶液の場合には水素吸蔵合金を用いるのが好ましい。一方、酸化剤側電極16bの触媒としては、例えば白金が用いられる。
【0020】
燃料側電極16aに燃料が供給され、酸化剤側電極16bに酸化剤が供給されると、電解質膜14を介して化学反応が進行するようになっている。即ち、電解質膜14、燃料側電極16a、及び、酸化剤側電極16bによって、発電のための燃料及び酸化剤(まとめて活物質と称する)に反応を起こさせるための反応部18が形成されている。
【0021】
燃料側電極16a及び酸化剤側電極16bの、電解質膜14側とは反対側の面には、夫々、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bが密着して配置されている。これら燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bは、導電体、例えばステンレス、チタン、炭素によって形成されている。好ましくは、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bは、比較的熱伝導率の大きい導電体、例えば炭素、ステンレスによって形成されている。
【0022】
燃料側セパレータ20aの、燃料側電極16a側の面には溝22が延設されている。この溝22の内壁面と、燃料側電極16aの、燃料側セパレータ20a側の面とによって、燃料が流動される燃料経路24aが形成されている。また、燃料経路24aの両端部は、夫々、燃料側セパレータ20aに形成されている図示しない貫通孔を介して、燃料側セパレータ20aの側面に連通されている。一端部の貫通孔を介して燃料経路24aは燃料供給管26aに接続され、他端部の貫通孔を介して燃料経路24aは燃料排出管28aに接続されている。本実施形態では、燃料側セパレータ20aの、燃料側電極16a側とは反対側の面により、外部からの熱を吸熱する燃料側吸熱部30aが形成されている。この燃料側吸熱部30aで吸熱された熱は、燃料側セパレータ20aを介して反応部18に伝達されるようになっている。
【0023】
同様に、酸化剤側セパレータ20bの、酸化剤側電極16b側の面には溝22が延設され、この溝22の内壁面と、酸化剤側電極16bの、酸化剤側セパレータ20b側の面とによって、酸化剤が流動される酸化剤経路24bが形成されている。また、溝22の一端部の貫通孔を介して酸化剤経路24bは酸化剤供給管26bに接続され、他端部の貫通孔を介して酸化剤経路24bは酸化剤排出管28bに接続されている。また、酸化剤側セパレータ20bの、酸化剤側電極16b側とは反対側の面によって酸化剤側吸熱部30bが形成されており、この酸化剤側吸熱部30bで吸熱された熱は酸化剤側セパレータ20bを介して反応部18に伝達されるようになっている。
【0024】
即ち、本実施形態では、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bによって、燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bで吸熱された熱を反応部18に伝達する電池側熱伝達部材が形成されている。さらに、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bは、夫々、燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bで吸熱された熱を燃料経路24a及び酸化剤経路24bを規定する溝22の内壁面に伝達するようになっている。
【0025】
以下、上述した燃料電池10を電源として使用する本実施形態の携帯機器32を説明する。携帯機器32としては、デジタルカメラ、ノート型パソコン、携帯電話、デジタルムービーカメラ等の様々な機器が選択可能である。
【0026】
本実施形態の携帯機器32は、燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bに夫々密着される第1及び第2の電気回路34a,34bを有する。例えば、これらを接着剤で密着させる場合は、接着剤として熱伝導性のよいシリコーン系の材料を含む接着剤等が適するが、これに限定されるものではない。第1及び第2の電気回路34a,34bは、携帯機器32を使用する際に発熱するものである。また、第1又は第2の電気回路34a,34bは、1つの電気電子素子により構成されていてもよく、2つ以上の電気電子素子から構成されていてもよいし、配線基板等に実装されている電気電子素子群でもよい。
【0027】
そして、第1及び第2の電気回路34a,34bは、好ましくは、燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bに効率よく熱を伝達するように、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bに対して配置されている。例えば、第1又は第2の電気回路34a,34bが配線基板等に実装されている電気電子素子群である場合には、配線基板の熱放出が最大の領域が燃料側吸熱部30a又は酸化剤側吸熱部30bに接触するように配置されている。本実施形態では、第1又は第2の電気回路34a,34bの、燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bと接触している面は、燃料側吸熱部30a又は酸化剤側吸熱部30bとほぼ合同な形状を有する。
【0028】
本実施形態では、第1及び第2の電気回路34a,34bの、燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bと接触している面により、夫々、電池側熱伝達部材としての燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bに熱を伝達する燃料側接触部36a及び酸化剤側接触部36bが形成されている。また、第1及び第2の電気回路34a,34bは、第1及び第2の電気回路34a,34bから発生した熱を燃料側接触部36a及び酸化剤側接触部36bに伝達する回路側熱伝達部材を兼ねている。
【0029】
ここで、携帯機器32としてデジタルカメラが選択されている場合には、第1及び第2の電気回路34a,34bとしては、撮像素子、燃料電池10と併用されている2次電池、燃料電池10の出力電圧を所望の電圧に変換するためのDC−DCコンバータ等が用いられる。具体的には、撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device、電荷結合デバイス)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型撮像素子等が用いられる。また、2次電池には、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等が用いられており、デジタルカメラの消費電力が特に大きい場合には、電力を安定供給するためにコンデンサ等が用いられる。なお、第1及び第2の電気回路34a,34bは、それらの機能を損なわないように配設されている。例えば、第1又は第2の電気回路34a,34bとしてCCDが用いられる場合には、CCDの撮像面が燃料側セパレータ20a又は酸化剤側セパレータ20bとは反対側に配置されるようにCCDが配設される。
【0030】
次に、本実施形態の燃料電池10及び携帯機器32の作用について説明する。携帯機器32を使用する際には燃料電池10で発電を行う。即ち、補機を用いて、水素ガス、アルコール水溶液、水素化ホウ素ナトリウム水溶液等の燃料を燃料供給管26aを介して燃料経路24aに導入し、燃料経路24aの一端部から他端部へと流動させる。同様に、補機を用いて、空気、酸素等の酸化剤を酸化剤供給管26bを介して酸化剤経路24bに導入し、酸化剤経路24bの一端部から他端部へと流動させる。燃料経路24aを流動する燃料は燃料側電極16aに接し、酸化剤経路24bを流動する酸化剤は酸化剤側電極16bに接して、反応部18で電気化学反応が進行して発電が行われる。この電力を利用して携帯機器32が作動される。なお、電気化学反応の結果生成した物質、消費されなかった燃料、酸化剤等は、燃料排出管28a、酸化剤排出管28bを介して排出される。
【0031】
携帯機器32の作動により、第1及び第2の電気回路34a,34bが発熱する。第1及び第2の電気回路34a,34bから発生した熱は燃料側接触部36a及び酸化剤側接触部36bを介して燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bに吸熱される。燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bで吸熱された熱は、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bによって反応部18へと伝達され、反応部18が加熱される。また、燃料側吸熱部30a及び酸化剤側吸熱部30bで吸熱された熱は、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bによって、燃料経路24a及び酸化剤経路24bを規定する溝22の内壁面に伝達され、そして、燃料経路24a及び酸化剤経路24bを流動されている燃料及び酸化剤が内壁面を介して加熱される。このような加熱の結果、反応部18における電気化学反応が促進され、発電能力が向上される。
【0032】
従って、本実施形態の燃料電池10及び携帯機器32は次の効果を奏する。第1及び第2の電気回路34a,34bから発生した熱は、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bによって反応部18へと伝達され、反応部18が加熱されている。即ち、電気回路34の発熱を利用して反応部18を加熱して燃料電池10の発電能力を向上させる構成が少数かつ簡単な構成要素によって形成されており、発電能力を向上させる構成を小型化することが可能となっている。このため、燃料電池10は、携帯機器32の電源として利用可能であり、かつ、第1及び第2の電気回路34a,34bの発熱を利用してその発電能力を向上することが可能となっている。換言すれば、携帯機器32は、燃料電池10を電源として使用可能に構成されており、かつ、その第1及び第2の電気回路34a,34bの発熱によって燃料電池10の発電能力を向上することが可能となっている。
【0033】
また、第1及び第2の電気回路34a,34bから発生した熱を、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bによって反応部18自体に直接伝達する構成となっている。このため、燃料又は酸化剤を加熱して反応部18を間接的に加熱するよりも、効率的に反応部18を加熱することが可能となっている。従って、電気回路34の発熱量が少ない場合であっても、所望の発電能力を得ることが比較的容易になっている。
【0034】
そして、第1及び第2の電気回路34a,34bから発生した熱は、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bによって、燃料経路24a及び酸化剤経路24bを規定する溝22の内壁面に伝達され、燃料及び酸化剤が内壁面を介して加熱されている。このような燃料及び酸化剤の加熱により、反応部18における電気化学反応が促進され、発電能力が向上されている。
【0035】
さらに、本実施形態では、燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bは、吸熱部で吸熱された熱を反応部18に伝達する電池側熱伝達部材を兼ねている。また、第1及び第2の電気回路34a,34bは、電気回路から発生した熱を伝達する回路側熱伝達部材を兼ねている。このため、部品点数が削減されており、更なる小型化と安価な製造が可能となっている。
【0036】
なお、本実施形態では、燃料側と酸化剤側との両方で電気回路からの発熱を利用する構成となっているが、一方の側でのみ電気回路からの発熱を利用する構成としてもよい。
【0037】
図2は、本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態と同様な機能を有する構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施形態の燃料電池10では、燃料及び酸化剤を自己拡散により燃料側電極16a及び酸化剤側電極16bに供給するようになっている。
【0038】
図2(A)及び図2(B)に示されるように、燃料側セパレータ20aには、燃料を燃料側電極16aへと拡散させるための複数の貫通溝38が並設されている。即ち、これら貫通溝38は燃料経路24aを形成している。また、本実施形態では第1の電気回路34a(図1参照)は用いられていない。燃料側セパレータ20aの、燃料側電極16a側とは反対側の面には、燃料を収容する燃料タンク40が配設されている。この燃料タンク40は、燃料側セパレータ20aへと燃料を供給するための図示しない供給孔を有する。
【0039】
酸化剤側セパレータ20bには、酸化剤を酸化剤側電極16bへと拡散させるための複数の貫通溝38が並設されている。即ち、これら貫通溝38は酸化剤経路24bを形成している。酸化剤側セパレータ20bの、酸化剤側電極16bとは反対側の面の四隅には、凸部42が一体形成されている。これら凸部42の突出端面によって電気回路34が支持されている。本実施形態では、凸部42が電気回路34から発生した熱を吸熱する酸化剤側吸熱部30bを形成している。そして、酸化剤側セパレータ20bと電気回路34との間には、酸化剤側セパレータ20bの貫通溝38と外部とを連通する連通部44が形成されている。なお、凸部42は貫通溝38と外部とを連通するように電気回路34を支持する様々な個数及び配置を採ることが可能である。また、凸部42及び電気回路34を一体形成してもよいし、酸化剤側セパレータ20b、凸部42、及び、電気回路34を一体形成してもよい。
【0040】
本実施形態では、電気回路34からの放射によっても酸化剤側セパレータ20bに熱が伝達されるようになっている。このため、酸化剤側セパレータ20bの、電気回路34に対面する表面は、好ましくは放射を吸収しやすい表面構造になっている。例えば、酸化剤側セパレータ20bの、電気回路34に対面する表面は、黒色表面、又は、微細な凹凸を有する表面によって構成されている。
【0041】
次に、本実施形態の燃料電池10及び携帯機器32の作用について説明する。燃料電池10で発電を行う際には、燃料タンク40から燃料が燃料側セパレータ20aの貫通溝38を介して燃料側電極16aに拡散される。また、酸化剤としては外部空気が用いられ、外部から空気が酸化剤側セパレータ20bと電気回路34との間の連通部44、及び、酸化剤側セパレータ20bの貫通溝38を介して酸化剤側電極16bに拡散される。そして、反応部18で電気化学反応が進行して発電が行われる。
【0042】
電気回路34から発生した熱は、凸部42に吸熱され、酸化剤側セパレータ20bによって反応部18へと伝達され、反応部18が加熱される。また、凸部42で吸熱された熱は、酸化剤側セパレータ20bによって酸化剤経路24bを規定する貫通溝38の内壁面に伝達され、酸化剤経路24bで拡散している酸化剤が内壁面を介して加熱される。さらに、電気回路34から発生した熱は、放射によって、酸化剤側セパレータ20bの、電気回路34に対面する表面に吸収される。表面に吸収された熱は、凸部42に吸熱された熱と同様に、酸化剤側セパレータ20bによって反応部18へと伝達される。また、電気回路34から発生した熱は、放射によって、貫通溝38を介して直接反応部18に吸収される。加えて、連通部44内の空気は、電気回路34の、酸化剤側セパレータ20b側の面によって加熱され対流を生じる。電気回路34から発生した熱は、空気の対流によっても酸化剤側セパレータ20b又は反応部18に伝達される。このような加熱の結果、反応部18における電気化学反応が促進され、発電能力が向上される。
【0043】
従って、本実施形態の燃料電池10及び携帯機器32は次の効果を奏する。凸部42及び酸化剤側セパレータ20bを介した熱伝導に加えて、放射、対流によっても電気回路34から発生する熱を反応部18に伝達している。このため、電気回路34から発生した熱の内、廃熱となる熱の割合を低下させることが可能となっている。従って、電気回路34の発熱量が少ない場合であっても、所望の発電能力を得ることが比較的容易になっている。
【0044】
また、燃料を燃料側セパレータ20aの貫通溝38を介して燃料側電極16aに拡散させており、また、外部の空気を連通部44、及び、酸化剤側セパレータ20bの貫通溝38を介して酸化剤側電極16bに拡散させている。即ち、燃料及び酸化剤を供給するための補機が必要ではなく、燃料電池10の構成が簡単化され、小型化が可能となっている。このため、燃料電池10がさらに携帯機器32に適したものとなっている。
【0045】
図3は、本発明の第3実施形態を示す。第2実施形態と同様な機能を有する構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施形態は、第2実施形態において、燃料側でも電気回路からの発熱を利用するようにしたものである。
【0046】
図3(A)及び図3(B)に示されるように、本実施形態の燃料側セパレータ20aは、一体的に順に連設されている本体部46、連結部48、及び、接続子50を有する。本体部46は第2実施形態の燃料側セパレータ20aと同様の構成となっており、燃料側電極16a、燃料タンク40が配設されている。また、接続子50は板状の部材であり、その一面には第1の電気回路34aが密着して配設されている。本実施形態では、接続子50の、第1の電気回路34aに接触する面が、第1の電気回路34aからの熱を吸熱する燃料側吸熱部30aを形成している。また、本体部46、連結部48、及び、接続子50有する燃料側セパレータ20aが電池側熱伝達部材を兼ねている。
【0047】
ここで、接続子50の他面に第3の電気回路を密着して配設してもよい。また、連結部48は、直線的な長板形状、屈曲しているL字形状、J字形状等の様々な形状を採り得る。また、連結部48は、形状可変のベローズ状であってもよい。なお、本体部46、連結部48、又は、接続子50は、互いに別体的に形成してもよい。別体的に形成する場合であっても、連結部48及び接続子50は熱伝導率の高い材料で形成することが好ましい。また、連結部48及び接続子50の個数は1つに限定されず、本体部46に複数の連結部48及び接続子50を連設するようにしてもよい。
【0048】
次に、本実施形態の燃料電池10及び携帯機器32の作用について説明する。第1の電気回路34aから発生した熱は、燃料側吸熱部30aに吸熱され、燃料側セパレータ20aの接続子50、連結部48、本体部46によって反応部18に伝達される。
【0049】
従って、本実施形態の燃料電池10及び携帯機器32は次の効果を奏する。燃料側セパレータ20aは接続子50を有し、この接続子50には第1の電気回路34aが密着して配設されており、第1の電気回路34aから発生する熱は、接続子50、連結部48及び本体部46を介して反応部18に伝達されている。そして、接続子50は、様々な個数、形状、配置で形成することが可能である。即ち、携帯機器32の内部要素の形状、配置に応じて接続子50を形成することが可能であり、携帯機器32の設計の自由度が向上されている。
【0050】
なお、酸化剤側セパレータ20bについても、本実施形態の燃料側セパレータ20aのように接続子50を有する構成とすることが可能である。また、第1実施形態のような補機を用いる燃料側セパレータ20a及び酸化剤側セパレータ20bについても、接続子50を有する構成とすることが可能である。
【0051】
図4は、本発明の第4実施形態を示す。第3実施形態と同様な機能を有する構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施形態では、図4に示されるように、第1の電気回路34aが燃料側セパレータ20aの接続子50にねじ51を用いたねじ止めによって着脱自在に装着されている。即ち、燃料側セパレータ20a(電池側熱伝達部材を兼ねる)の燃料側吸熱部30aは、第1の電気回路34a(回路側熱伝達部材を兼ねる)と分離可能となっている。換言すれば、第1の電気回路34a(回路側熱伝達部材を兼ねる)の燃料側接触部36aは、燃料側セパレータ20a(電池側熱伝達部材を兼ねる)と分離可能となっている。本実施形態では、接続子50を第1の電気回路34aから分離して、燃料電池10を交換することが可能となっている。
【0052】
図5は、本発明の第4実施形態の変形例を示す。第3実施形態と同様な機能を有する構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第1の電気回路34aと回路側熱伝達部材52とを別体的に形成している。図5(A)に示されるように、回路側熱伝達部材52は長板状の部材である。また、回路側熱伝達部材52は、その一面の一側方が燃料側セパレータ20aの接続子50に密着するように、接続子50にねじ51を用いたねじ止めにより着脱自在に装着されている。また、回路側熱伝達部材52の一面の他側方には、第1の電気回路34aが回路側熱伝達部材52に密着するようにねじ51を用いてねじ止めにより着脱自在に装着されている。
【0053】
本実施形態では、燃料側セパレータ20aの接続子50の、回路側熱伝達部材52と接触する面によって燃料側吸熱部30aが形成されており、回路側熱伝達部材52の、接続子50と接触する面によって燃料側接触部36aが形成されている。また、燃料側吸熱部30aは回路側熱伝達部材52と分離可能となっており、換言すれば、燃料側接触部36aは燃料側セパレータ20a(電池側熱伝達部材を兼ねる)と分離可能となっている。
【0054】
図5(B)は、燃料電池10及び携帯機器32の概略構成を携帯機器としてデジタルカメラを選択して示す図である。本実施形態では、接続子50を回路側熱伝達部材52から分離することにより、図5(B)で点線によって示される燃料電池10を交換することが可能となっている。
【0055】
なお、本実施形態等及びその変形例において部材同士の接続に用いられているねじ止めは接続方法の一例であり、接続方法はねじ止めに限定されるものではない。即ち、熱伝導が行なわれる程度に部材同士が接触するような接続方法であればよく、弾性部材やクリップ等を利用して接続が維持されるような構成でもよい。さらに、一方の部材に突起を設け他方に設けられた凹部または穴に嵌合させるような接続方法でもよい。
【0056】
また、本実施形態及びその変形例では、第1の電気回路34aと回路側熱伝達部材52とが直接的に接続されている。代わって、第1の電気回路34aと回路側熱伝達部材52とを間接的に接続するようにしてもよい。即ち、第1の電気回路34aと回路側熱伝達部材52とは共に剛性の高い部材であるため、第1の電気回路34aと回路側熱伝達部材52とを直接的に接続する場合には、接続面において充分な密着性が得られず熱伝導効率が低下する場合がある。この場合には、第1の電気回路34aと回路側熱伝達部材52との間に、熱伝導性及び密着性に優れる弾性部材、例えばシリコーンゴム膜を介設することが好ましい。このシリコーンゴム膜を介して、第1の電気回路34aと回路側熱伝達部材52とは熱的に接続されることになり、熱伝導効率の低下を防止することが可能となる。
【0057】
なお、シリコーンゴム膜等の熱伝導性及び密着性に優れる弾性部材は、熱伝達の効率を確保することを目的とするものであるから、電気回路と回路側熱伝達部材との間以外にも、熱伝達を行う様々な部材間に適用することが可能である。また、他の実施形態及び変形例にも適用できることは言うまでもない。例えば、第1実施形態において、セパレータの吸熱部と電気回路の接触部との間に弾性部材を配置して、セパレータと電気回路とを間接的に接続することにより、熱伝達の効率を確保することが可能である。
【0058】
ところで、電池側の吸熱部と回路側の接触部とは、燃料電池と携帯機器とを分離する境界となり、その分離の頻度が他の部分より相当多くなることが想定される。このため、吸熱部と接触部との間に上記のような弾性部材を配置してこれら間の接続を確実にし、熱伝達の効率を確保するようにすることは、製品の信頼性向上の観点からより好ましい。
【0059】
なお、第1実施形態では補機を用いる燃料電池、第2乃至第4の実施形態では補機を用いない燃料電池について説明している。これらを組み合わせて、燃料側でのみ補機を用い酸化剤側で補機を用いない、あるいは、酸化剤側でのみ補機を用い燃料側で補機を用いない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、携帯機器の電源として利用可能であり、携帯機器の電気回路の発熱を利用して発電能力が向上可能な燃料電池、及び、燃料電池を電源として使用可能に構成され、その電気回路の発熱によって燃料電池の発電能力を向上可能な携帯機器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の燃料電池及び携帯機器を示す分解斜視図、(B)は同実施形態の燃料電池及び携帯機器を示す断面図。
【図2】(A)は本発明の第2実施形態の燃料電池及び携帯機器を示す分解斜視図、(B)は同実施形態の燃料電池及び携帯機器を示す断面図。
【図3】(A)は本発明の第3実施形態の燃料電池及び携帯機器を示す分解斜視図、(B)は同実施形態の燃料電池及び携帯機器を示す断面図。
【図4】本発明の第4実施形態の燃料電池及び携帯機器を示す断面図。
【図5】(A)は本発明の第4実施形態の変形例の燃料電池及び携帯機器を示す断面図、(B)は同実施形態の燃料電池及び携帯機器の全体の概略構成を携帯機器としてデジタルカメラを選択して示す断面図。
【図6】従来の燃料電池発電装置を示す概略図。
【符号の説明】
【0062】
10…燃料電池、18…反応部、20a,20b…電池側熱伝達部材、30a,30b…吸熱部、32…携帯機器、34a,34b…電気回路、(34a,34b)(52)…回路側熱伝達部材、36a,36b…接触部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を有する携帯機器の電源として使用される燃料電池であって、
前記電気回路から発生した熱を吸熱する吸熱部と、
前記吸熱部に吸熱された熱を、発電のための活物質に電気化学反応を起こさせる反応部に伝達する電池側熱伝達部材と、
を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記吸熱部は、前記電気回路又は当該電気回路から発生した熱を伝達する回路側熱伝達部材の接触部と接触することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記吸熱部は、前記電気回路又は前記回路側熱伝達部材と分離可能であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記電池側熱伝達部材は、前記活物質が通過する経路の壁面であって、前記反応部に至るまでの当該経路の壁面に、前記吸熱部で吸熱された熱を伝達することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記電池側熱伝達部材は、前記燃料電池のセパレータを兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項6】
燃料電池を電源として使用可能に構成され、電気回路を有する携帯機器であって、
前記電気回路と熱的に接続され当該電気回路から発生した熱を伝達する回路側熱伝達部材と、
発電のための活物質に電気化学反応を起こさせる反応部に熱的に接続されている電池側熱伝達部材と接触し、前記回路側熱伝達部材に伝達された熱を当該電池側熱伝達部材に伝達する接触部と、
を有することを特徴とする携帯機器。
【請求項7】
前記回路側熱伝達部材は、前記電気回路と直接的又は間接的に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の携帯機器。
【請求項8】
前記接触部は、前記電池側熱伝達部材と分離可能であることを特徴とする請求項6に記載の携帯機器。
【請求項9】
前記電池側熱伝達部材は、前記活物質が通過する経路の壁面であって、前記反応部に至るまでの当該経路の壁面に、前記接触部から伝達された熱を伝達することを特徴とする請求項6に記載の携帯機器。
【請求項10】
前記電池側熱伝達部材は、前記燃料電池のセパレータを兼ねていることを特徴とする請求項6に記載の携帯機器。
【請求項11】
前記電気回路は、撮像素子を含むことを特徴とする請求項6に記載の携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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