説明

燃料電池及び測定装置

【課題】 過電圧の測定が可能で燃料ガス及び酸化ガスをカウンターフローで流すことが可能な燃料電池を実現する。
【解決手段】 水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池において、電解質膜と、この電解質膜の両面に形成される第1及び第2の触媒層・拡散層と、この第1の触媒層・拡散層に形成される燃料ガスのガス流路と、第2の触媒層・拡散層に燃料ガスのガス流路と流路が互いに対向すると共にそれぞれの供給口が燃料電池の対角線方向の相対する位置になるように形成される酸化ガスのガス流路と、第1及び第2の触媒層・拡散層、各ガス流路上にそれぞれ形成される第1及び第2のセパレータと、燃料ガスの供給口の近傍に形成されたアノード側の参照電極と、酸化ガスの供給口の近傍に形成されたカソード側の参照電極と、2つの参照電極に電解質膜を介して対向する第1及び第2の触媒層・拡散層の部分にそれぞれ形成された絶縁部材とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池に関し、特に過電圧の測定が可能で燃料ガス及び酸化ガスをカウンターフローで流すことが可能な燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−051318号公報
【特許文献2】特開2004−146267号公報
【特許文献3】特開2004−192971号公報
【特許文献4】特開2005−149851号公報
【0004】
図5は従来の燃料電池システムの一例を示す構成ブロック図である。図5において、1は電解質膜、2及び3は触媒層・拡散層である。電解質膜1の両面には触媒層・拡散層2及び触媒層・拡散層3がそれぞれ形成される。
【0005】
図5中”FG01”に示すように燃料ガス(例えば、水素等)が触媒層・拡散層2に供給され、図5中”OG01”に示すように酸化ガス(例えば、酸素や空気等)が触媒層・拡散層3に供給される。
【0006】
ここで、図5に示す従来例の動作を説明する。触媒層・拡散層2側(アノード側)では水素が水素イオン(H )になり電子(e )を放出し、一方、触媒層・拡散層3側(カソード側)では電解質膜1を伝播してきた水素イオン(H )と酸素原子が電子(e )と反応して水(HO )が生成される。
【0007】
この時、触媒層・拡散層2(アノード側)及び触媒層・拡散層3(カソード側)間の外部負荷を接続することにより、触媒層・拡散層2側(アノード側)で発生した電子(e )を取り出す、言い換えれば、直流電流を取り出すことが可能になる。
【0008】
図6及び図7は従来の過電圧を測定することが可能な燃料電池の一例を示す断面図である。図6は燃料電池の電解質膜に対して垂直な面における断面図、図7は燃料電池におけるガス流路に平行な面における断面図である。
【0009】
図6において、4は電解質膜、5及び7はアノード側の触媒層・拡散層、6及び8はカソード側の触媒層・拡散層、9はアノード側に形成された燃料ガス(例えば、水素等)のガス流路、10はカソード側に形成された酸化ガス(酸素や空気等)のガス流路、11及び13はアノード側に形成された導電性を有するセパレータ、12及び14はカソード側に形成された導電性を有するセパレータ、15及び16は絶縁部材である。
【0010】
電解質膜4の両面には触媒層・拡散層5と触媒層・拡散層7及び触媒層・拡散層6と触媒層・拡散層8がそれぞれ形成される。また、触媒層・拡散層5及び触媒層・拡散層7の上には燃料ガス(例えば、水素等)のガス流路9が形成され、触媒層・拡散層6及び触媒層・拡散層8の上には酸化ガス(例えば、酸素や空気等)のガス流路10が形成される。
【0011】
例えば、ガス流路9及びガス流路10は図7中”GT11”に示すように触媒層・拡散層5と触媒層・拡散層7及び触媒層・拡散層6と触媒層・拡散層8上を蛇行するように形成されている。
【0012】
また、セパレータ11とセパレータ13との間には絶縁部材15が形成され、セパレータ12とセパレータ14との間には絶縁部材16が形成される。
【0013】
さらに、触媒層・拡散層5と触媒層・拡散層7との間はガス流路9によって分離され、触媒層・拡散層6と触媒層・拡散層8との間はガス流路10によって分離される。
【0014】
すなわち、アノード側の触媒層・拡散層5(セパレータ11)と触媒層・拡散層7(セパレータ13)とは電気的に分離され、同様に、カソード側の触媒層・拡散層6(セパレータ12)と触媒層・拡散層8(セパレータ14)ともまた電気的に分離されている。但し、ガス流路9はアノード側で共通であり、ガス流路10はカソード側で共通である。
【0015】
また、アノード側のセパレータ13及び触媒層・拡散層7とカソード側のセパレータ14及び触媒層・拡散層8は外部負荷が接続されて直流電流を取り出すための電極として機能し、アノード側のセパレータ11及び触媒層・拡散層5とカソード側にセパレータ12及び触媒層・拡散層6は外部負荷が接続されず、直流電流を取り出すことのない参照電極として機能する。
【0016】
ここで、図6及び図7に示す従来例の動作を説明する。ガス流路9には燃料ガス(例えば、水素等)が供給され、ガス流路10には酸化ガス(例えば、酸素や空気等)が供給される。例えば、図7中”IN11”に示す供給口から燃料ガスや酸化ガスが供給され、図7中”OT11”に示す排気口から反応しなかったガス等が放出される。
【0017】
アノード側の触媒層・拡散層7では水素が水素イオン(H )になり電子(e )を放出し、一方、カソード側の触媒層・拡散層8側では電解質膜4を伝播してきた水素イオン(H )と酸素原子が電子(e )と反応して水(HO )が生成される。
【0018】
この時、アノード側の触媒層・拡散層7及びカソード側の触媒層・拡散層8(具体的には、セパレータ13とセパレータ14)と間の外部負荷を接続することにより、アノード側の触媒層・拡散層7で発生した電子(e )を取り出す、言い換えれば、直流電流を取り出すことが可能になる。
【0019】
このような燃料電池の動作状態において、カソード側のセパレータ11とセパレータ13との間の電位差を図示しない電圧測定手段で測定することにより、カソード側の過電圧を測定することができる。
【0020】
同様に、アノード側のセパレータ12とセパレータ14との間の電位差を図示しない電圧測定手段で測定することにより、アノード側の過電圧を測定することができる。
【0021】
また、カソード側のセパレータ13とアノード側のセパレータ14との間の負荷電流に交流成分を重畳し、電圧の応答性(ゲインと位相)を図示しない測定手段で測定することにより、アノード側及びカソード側のインピーダンスを測定することができる。
【0022】
この結果、アノード側の触媒層・拡散層及びセパレータを電気的に分離して参照電極を形成し、カソード側に触媒層・拡散層及びセパレータを電気的に分離して参照電極を形成し、アノード側及びカソード側の参照電極間の電位差を測定することにより、過電圧を測定することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかし、図6及び図7に示す従来例では、参照電極として機能するアノード側のセパレータ13及び触媒層・拡散層7とカソード側のセパレータ14及び触媒層・拡散層8は、電解質膜4を介して互いに対向して形成する必要性があり、また、対向する触媒層・拡散層の電圧安定性を確保するために参照電極は燃料ガス及び酸化ガスの供給口近傍に形成する必要性があった。
【0024】
このため、図6及び図7に示す従来例では、燃料ガス及び酸化ガスの流し方として”コフロー”若しくは”不完全なカウンターフロー”にしか対応することができないと言った問題点があった。
【0025】
図8、図9及び図10は”コフロー”、”不完全なカウンターフロー”及び”(完全な)カウンターフロー”を説明する説明図である。
【0026】
図8において、”SP21”、”SP22”、”SP23”及び”SP24”はセパレータ、”GT21”及び”GT22”はガス流路、”IS21”及び”IS22”は絶縁部材、”CA21”、”CA22”、”CA23”及び”CA24”は触媒層・拡散層をそれぞれ示している。但し、電解質膜の記載は省略してある。
【0027】
図8において、参照電極に相当する”SP23(CA23)”や”SP24(CA24)”に示すセパレータは図示しない電解質膜を介して互いに対向して形成されている。
【0028】
このため、例えば、燃料ガスは図8中”IN21”に示す供給口から供給され、酸化ガスは図8中”IN22”に示す供給口から供給される。すなわち、燃料ガスの供給口と酸化ガスの供給口ともまた図示しない電解質膜を介して互いに対向している。
【0029】
図8に示すアノード側及びカソード側のガス流路は、図示しない電解質膜を介して互いに対向するように形成されているので、燃料ガス及び酸化ガスは、図8中の矢印に示すように同じ方向に向かって流れる(コフロー)ことになる。
【0030】
一方、図9において、”SP31”、”SP32”、”SP33”及び”SP34”はセパレータ、”GT31”及び”GT32”はガス流路、”IS31”及び”IS32”は絶縁部材、”CA31”、”CA32”、”CA33”及び”CA34”は触媒層・拡散層をそれぞれ示している。但し、電解質膜の記載は省略してある。
【0031】
図9において、参照電極に相当する”SP33(CA33)”や”SP34(CA34)”に示すセパレータは図示しない電解質膜を介して互いに対向して形成されている。
【0032】
但し、参照電極に相当するセパレータ(触媒層・拡散層)は、図8に比べて1ライン分ガス流路に渡って形成されているので、燃料ガスの供給口と酸化ガスの供給口とを図示しない電解質膜を介して互いに対向しないように形成することができる。
【0033】
例えば、燃料ガスは図9中”IN31”に示す供給口から供給させ、酸化ガスは図9中”IN32”に示す供給口から供給させることにより、燃料ガスの供給口と酸化ガスの供給口とが図示しない電解質膜を介して互いに対向しなくなる。
【0034】
図9に示すアノード側及びカソード側のガス流路は、図示しない電解質膜を介して横方向(具体的には、燃料電池の長手方向に垂直な方向)にのみ互いに対向するように形成されているので、燃料ガス及び酸化ガスは、横方向においては図9中の矢印に示すように互いに対向して流れる(不完全なカウンターフロー)ことになる。
【0035】
また、図10において、SP41”及び”SP42”はセパレータ、”GT41”及び”GT42”はガス流路をそれぞれ示している。但し、触媒層・拡散層及び電解質膜の記載は省略してあり、また、参照電極を形成しない構成となっている。
【0036】
例えば、燃料ガスは図10中”IN41”に示す供給口から供給され、酸化ガスは図10中”IN42”に示す供給口から供給される。すなわち、燃料ガスの供給口と酸化ガスの供給口とはセパレータであって燃料電池の対角線方向に相対する位置に形成される。
【0037】
図10に示すアノード側及びカソード側のガス流路は、図示しない電解質膜等を介して完全に対向するように形成されているので、燃料ガス及び酸化ガスは、図10中の矢印に示すように完全に対向して流れる((完全な)カウンターフロー)ことになる。
【0038】
但し、参照電極として機能するセパレータ(触媒層・拡散層)同士は互いに対向して形成する必要性があり、燃料ガスの供給口と酸化ガスの供給口とはセパレータの全く異なる位置に形成されるような(完全な)カウンターフローには対応できない。
従って本発明が解決しようとする課題は、過電圧の測定が可能で燃料ガス及び酸化ガスをカウンターフローで流すことが可能な燃料電池を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0039】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池において、
電解質膜と、この電解質膜の両面に形成される第1及び第2の触媒層・拡散層と、この第1の触媒層・拡散層に形成される燃料ガスのガス流路と、前記第2の触媒層・拡散層に前記燃料ガスのガス流路と流路が互いに対向すると共にそれぞれの供給口が燃料電池の対角線方向の相対する位置になるように形成される酸化ガスのガス流路と、前記第1及び第2の触媒層・拡散層、前記各ガス流路上にそれぞれ形成される第1及び第2のセパレータと、前記燃料ガスの供給口の近傍に形成されたアノード側の参照電極と、前記酸化ガスの供給口の近傍に形成されたカソード側の参照電極と、2つの前記参照電極に前記電解質膜を介して対向する前記第1及び第2の触媒層・拡散層の部分にそれぞれ形成された絶縁部材とを備えたことにより、過電圧の測定が可能で燃料ガス及び酸化ガスをカウンターフローで流すことが可能な燃料電池を実現することができる。
【0040】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の発明である燃料電池において、
前記参照電極が、
絶縁部材により前記第1若しくは前記第2のセパレータと絶縁され、前記酸化ガスのガス流路若しくは前記酸化ガスのガス流路を貫通して前記電解質膜に接続する白金電極で構成されることにより、過電圧の測定が可能で燃料ガス及び酸化ガスをカウンターフローで流すことが可能な燃料電池を実現ことができる。
【0041】
請求項3記載の発明は、
請求項1若しくは請求項2記載の発明である燃料電池の動作状態において、
測定装置が、
前記第1のセパレータと前記アノード側の参照電極との間の電位差を測定することにより、アノード側の過電圧を測定することができる。
【0042】
請求項4記載の発明は、
請求項1若しくは請求項2記載の発明である燃料電池の動作状態において、
測定装置が、
前記第1のセパレータと前記カソード側の参照電極との間の電位差を測定することにより、カソード側の過電圧を測定することができる。
【0043】
請求項5記載の発明は、
請求項1若しくは請求項2記載の発明である燃料電池の動作状態において、
測定装置が、
前記第1及び第2のセパレータの間の負荷電流に交流成分を重畳し、電圧の応答性を測定することにより、アノード側及びカソード側のインピーダンスを測定することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば次のような効果がある。
請求項1及び請求項2の発明によれば、燃料ガス及び酸化ガスのガス流路を互いに完全に対向すると共にそれぞれの供給口が燃料電池の対角線方向の相対する位置になるように形成し、燃料ガスの供給口の近傍にアノード側の参照電極を、酸化ガスの供給口の近傍にカソード側の参照電極をそれぞれ形成し、2つの参照電極に電解質膜を介して対向する部分の触媒層・拡散層を除去して絶縁部材を形成することにより、過電圧の測定が可能で燃料ガス及び酸化ガスをカウンターフローで流すことが可能になる。
【0045】
また、請求項3の発明によれば、燃料電池の動作状態において、測定装置が、前記第1のセパレータと前記アノード側の参照電極との間の電位差を測定することにより、アノード側の過電圧を測定することができる。
【0046】
また、請求項4の発明によれば、燃料電池の動作状態において、測定装置が、前記第1のセパレータと前記カソード側の参照電極との間の電位差を測定することにより、カソード側の過電圧を測定することができる。
【0047】
また、請求項5の発明によれば、燃料電池の動作状態において、測定装置が、前記第1及び第2のセパレータの間の負荷電流に交流成分を重畳し、電圧の応答性を測定することにより、アノード側及びカソード側のインピーダンスを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る燃料電池の一実施例を示す断面図である。図1は燃料電池の電解質膜に対して垂直な面における断面図である。
【0049】
図1において、17は電解質膜、18はアノード側の触媒層・拡散層、19及び20はカソード側の触媒層・拡散層、21はアノード側に形成された燃料ガス(例えば、水素等)のガス流路、22はカソード側に形成された酸化ガス(酸素や空気等)のガス流路、23はアノード側に形成された導電性を有するセパレータ、24及び25はカソード側に形成された導電性を有するセパレータ、26及び27は絶縁部材である。
【0050】
電解質膜17の両面には触媒層・拡散層18と触媒層・拡散層19及び触媒層・拡散層20がそれぞれ形成される。また、触媒層・拡散層18の上には燃料ガス(例えば、水素等)のガス流路21が形成され、触媒層・拡散層19及び触媒層・拡散層20の上には酸化ガス(例えば、酸素や空気等)のガス流路22が形成される。
【0051】
例えば、ガス流路21及びガス流路22は、図10に示すように図示しない電解質膜等を介して互いに完全に対向するように形成されている。
【0052】
また、セパレータ24とセパレータ25との間には絶縁部材26が形成され、触媒層・拡散層19と触媒層・拡散層20との間も分離される。さらに、触媒層・拡散層20に対向する触媒層・拡散層18の一部分は除去されて絶縁部材27が形成される。
【0053】
すなわち、カソード側の触媒層・拡散層19及びセパレータ24と触媒層・拡散層20及びセパレータ25は電気的に分離されている。また、アノード側の触媒層・拡散層18及びセパレータ23と図示しない触媒層・拡散層及びセパレータ(破線等で表記)とも電気的に分離されている。但し、ガス流路21はアノード側で共通であり、ガス流路22はカソード側で共通である。
【0054】
また、アノード側のセパレータ23及び触媒層・拡散層18とカソード側のセパレータ24及び触媒層・拡散層19は外部負荷が接続されて直流電流を取り出すための電極として機能し、図示しないアノード側のセパレータ及び触媒層・拡散層とカソード側にセパレータ25及び触媒層・拡散層20は外部負荷が接続されず、直流電流を取り出すことのない参照電極として機能する。
【0055】
ここで、図1に示す実施例の動作を図2を用いて説明する。図2は(完全な)カウンターフロー”を説明する説明図である。但し、従来例と同様の動作に関しては説明を適宜省略する。
【0056】
図2において、”SP51”、”SP52”、”SP53”及び”SP54”はセパレータ、”GT51”及び”GT52”はガス流路、”IS51”、”IS52”、”IS53”及び”IS54”は絶縁部材、”CA51”、”CA52”、”CA53”及び”CA54”は触媒層・拡散層をそれぞれ示している。但し、電解質膜の記載は省略してある。
【0057】
図2において、参照電極に相当する”SP53”及び”CA53”や”SP54”及び”CA54”に示すセパレータは図示しない電解質膜を介して燃料電池の対角線方向の相対する位置に形成されている。また、燃料ガスの供給口と酸化ガスの供給口とは図示しない電解質膜を介して燃料電池の対角線方向の相対する位置に形成されている。
【0058】
また、図2に示すアノード側及びカソード側のガス流路は、図示しない電解質膜等を介して互いに完全に対向するように形成されているので、燃料ガス及び酸化ガスは、図2中の矢印に示すように互いに完全に対向して流れる((完全な)カウンターフロー)ことになる。
【0059】
また、図2中”SP53”及び”SP54”に示すセパレータは非発電部位になるので、当該セパレータに対向する図2中”CA52”及び”CA51”に示す触媒層・拡散層の部分を除去し、図2中”IS53”及び”IS54”に示す絶縁部材を形成することにより、対向するセパレータとの電気的な絶縁を確保している。
【0060】
ガス流路21には燃料ガス(例えば、水素等)が供給され、ガス流路22には酸化ガス(例えば、酸素や空気等)が供給される。
【0061】
例えば、図2中”IN51”に示す供給口から燃料ガスが供給され、図2中”OT51”に示す排気口から反応しなかったガス等が放出される。同様に、図2中”IN52”に示す供給口から酸化ガスが供給され、図2中”OT52”に示す排気口から反応しなかったガス等が放出される。
【0062】
アノード側の触媒層・拡散層18(図2中”CA51”)では水素が水素イオン(H )になり電子(e )を放出し、一方、カソード側の触媒層・拡散層19(図2中”CA52”)では電解質膜17を伝播してきた水素イオン(H )と酸素原子が電子(e )と反応して水(HO )が生成される。
【0063】
この時、アノード側の触媒層・拡散層18及びカソード側の触媒層・拡散層19(図2中”SP51”と”SP52”)と間の外部負荷を接続することにより、アノード側の触媒層・拡散層18で発生した電子(e )を取り出す、言い換えれば、直流電流を取り出すことが可能になる。
【0064】
このような燃料電池の動作状態において、アノード側のセパレータ23(図2中”SP51”)と図示しないセパレータ(図2中”SP53”)との間の電位差を図示しない電圧測定手段で測定することにより、アノード側の過電圧を測定することができる。
【0065】
同様に、カソード側のセパレータ24(図2中”SP52”)とセパレータ25(図2中”SP54”)との間の電位差を図示しない電圧測定手段で測定することにより、カソード側の過電圧を測定することができる。
【0066】
また、このような燃料電池の動作状態において、アノード側のセパレータ23(図2中”SP51”)とカソード側のセパレータ24(図2中”SP52”)との間の負荷電流に交流成分を重畳し、アノード側及びカソード側の過電圧の応答性(ゲインと位相)を図示しない測定手段で測定することにより、アノード側及びカソード側のインピーダンスを測定することができる。
【0067】
この結果、燃料ガス及び酸化ガスのガス流路を互いに完全に対向すると共にそれぞれの供給口が燃料電池の対角線方向の相対する位置になるように形成し、燃料ガスの供給口の近傍にアノード側の参照電極を、酸化ガスの供給口の近傍にカソード側の参照電極をそれぞれ形成し、2つの参照電極に電解質膜を介して対向する部分の触媒層・拡散層を除去して絶縁部材を形成することにより、過電圧の測定が可能で燃料ガス及び酸化ガスをカウンターフローで流すことが可能な燃料電池を実現する。
【0068】
なお、図1等に示す実施例を一般的な参照電極付セル(RHE:Reversible Hydrogen Electrode)に適用しても構わない。
【0069】
図3はこのような燃料電池の他の実施例を示す平面図、図4は図3の部分平面図及び断面図である。一般的な参照電極付セルではアノード側にのみ白金電極が設けられている。
【0070】
図4は図3中”PT61”に示すアノード側の参照電極(白金電極)近傍を拡大したものであり、図4において、”SP71”、”SP72”及び”SP73”はセパレータ、”GT71”はガス流路、”IS71”は絶縁部材、”CA71”は触媒層・拡散層、”GK71”はガスケット、”ED71”は白金電極、”PE71”は電解質膜をそれぞれ示している。
【0071】
図4中”ED71”に示す白金電極は図4中”IS71”に示す絶縁部材を介して図4中”SP71”及び”SP72”に示すセパレータ内に設置され、図4中”GT71”に示すガス流路を貫通して図4中”PE71”に示す電解質膜に電気的に接続する。
【0072】
このような構成の白金電極をカソード側に設ける。但し、アノード側及びカソード側の白金電極は、燃料電池の対角線方向の相対する位置に形成することにより、図1等に示す実施例と同様の効果を奏することになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る燃料電池の一実施例を示す断面図である。
【図2】カウンターフローを説明する説明図である。
【図3】燃料電池の他の実施例を示す平面図である。
【図4】図3の部分平面図及び断面図である。
【図5】従来の燃料電池システムの一例を示す構成ブロック図である。
【図6】従来の過電圧を測定することが可能な燃料電池の一例を示す断面図である。
【図7】従来の過電圧を測定することが可能な燃料電池の一例を示す断面図である。
【図8】コフローを説明する説明図である。
【図9】不完全なカウンターフローを説明する説明図である。
【図10】カウンターフローを説明する説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1,4,17 電解質膜
2,3,5,6,7,8,18,19,20 触媒層・拡散層
9,10,21,22 ガス流路
11,12,13,14,23,24,25 セパレータ
15,16,26,27 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素とを化学反応させることにより発電を行う燃料電池において、
電解質膜と、
この電解質膜の両面に形成される第1及び第2の触媒層・拡散層と、
この第1の触媒層・拡散層に形成される燃料ガスのガス流路と、
前記第2の触媒層・拡散層に前記燃料ガスのガス流路と流路が互いに対向すると共にそれぞれの供給口が燃料電池の対角線方向の相対する位置になるように形成される酸化ガスのガス流路と、
前記第1及び第2の触媒層・拡散層、前記各ガス流路上にそれぞれ形成される第1及び第2のセパレータと、
前記燃料ガスの供給口の近傍に形成されたアノード側の参照電極と、
前記酸化ガスの供給口の近傍に形成されたカソード側の参照電極と、
2つの前記参照電極に前記電解質膜を介して対向する前記第1及び第2の触媒層・拡散層の部分にそれぞれ形成された絶縁部材と
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記参照電極が、
絶縁部材により前記第1若しくは前記第2のセパレータと絶縁され、前記酸化ガスのガス流路若しくは前記酸化ガスのガス流路を貫通して前記電解質膜に接続する白金電極で構成されることを特徴とする
請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
請求項1若しくは請求項2記載の燃料電池の動作状態において、
前記第1のセパレータと前記アノード側の参照電極との間の電位差を測定することを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1若しくは請求項2記載の燃料電池の動作状態において、
前記第1のセパレータと前記カソード側の参照電極との間の電位差を測定することを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1若しくは請求項2記載の燃料電池の動作状態において、
前記第1及び第2のセパレータの間の負荷電流に交流成分を重畳し、電圧の応答性を測定することを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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