説明

燃料電池排気ガス組成分析装置及びガス分析方法

【課題】燃料電池の排気ガスの組成を、組成成分の影響を受けずに正確に分析する。
【解決手段】本燃料電池モジュールにおける排気ガス組成分析システムは、燃料電池100と、燃料電池100の排気ガスを分析するガス分析計200と、燃料電池100からの排気ガスをガス分析計200に導くバルブ21と、ガス分析計200に送出する排気ガスの質量流量を調節するマスフローコントローラ22と、燃料電池100からの排気ガスをサンプリングしてガス分析計200に円滑に送出するサンプリングポンプ23と、を備えて構成される。これにより、組成成分の影響を受けずに一定量の質量流量からサンプリングされる排気ガスをガス分析計200に送出することを可能にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池排気ガス組成分析装置及びガス分析方法に係り、特に燃料電池(本体)から排出される排気ガスの組成を分析するための排気ガス組成分析システムを備えた燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池モジュールの運転に際しては、その運転条件を良好に維持することや、生活環境に対する負荷の軽減等を考慮して、燃料電池(本体)から排出される排気ガスの組成を正確に把握することが重要な課題となっている。特に、燃料電池モジュールの運転条件に正確な排気ガスの組成が反映されない場合は、適切でない運転条件下において、燃料電池モジュールの稼働中に燃料電池スタックの電解質膜から水分が蒸発することで、電解質膜の含水率が低下する。さらに、この時、アノード(陰極)極側から燃料ガス(例えば水素)がカソード(陽極)極側に移動する際に同時に水分子も移動し、特にアノード極側において乾燥が生じ易くなる。これらの現象を放置すると、電解質膜の電気抵抗が増大して発熱し、燃料電池の出力低下や故障を来たすことになる。
【0003】
このため、従来は、図4に示すような排気ガス組成分析システムによって燃料電池から排出される排気ガスの組成を分析していた。図4は、従来の燃料電池モジュールにおける排気ガス組成分析システムを示す構成図である。
【0004】
図4に示すように、従来の燃料電池モジュールにおける排気ガス組成分析システムは、燃料電池90から排出される排気ガスをサンプリングしてガス分析計91で分析するものであるが、燃料電池90とガス分析計91との間には、燃料電池90から排出される排気ガスの流量を絞って調節するサンプル流量調整用オリフィス92と、排気ガスをサンプリングして円滑にガス分析計91に送出するサンプリングポンプ93とを配置している。
【0005】
サンプル流量調整用オリフィス92が、燃料電池90から排出される排気ガスの流量を一定量に絞って調節し、さらにサンプリングポンプ93でサンプリングすることにより、排気ガスラインを流れる排気ガスからサンプリングされた排気ガスのサンプリング流量は、所定の一定量に調整されてガス分析計91に送出される。図4に示す構成によれば、ガス分析計91に送出される排気ガスのサンプル流量が一定に維持されるので、ガス分析計91の応答速度の変化に起因する測定データの誤差を回避することができる。
【0006】
なお、この分野に関連する特許出願として、特開2004−221020号公報には、燃料電池スタック内の乾燥(特にアノード極側における乾燥)を防ぐための加湿器(より具体的には反応ガスの気化器)に供給される反応ガスの供給量を所望量に調節するためにマスフローコントローラを使用する技術が開示されている(特許文献1)。
【0007】
また、特開2006−145341号公報には、燃料ガスモジュールの各部を流れるガスの正確な定量分析を可能にするため、サンプリングガスを調量するための音速ノズルの上流に、サンプリングガスの主成分とは異なる成分を有する希釈ガスと、サンプリング流量測定用のトレーサガスとを導入することで、サンプリングガスの主成分ガス組成が変化することに起因するサンプリグ誤差の増加を防止するガスサンプリング法が開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−221020号公報(段落0039、0040等)
【特許文献2】特開2006−145341号公報(段落0038等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術にあっては、燃料電池の排気ガスの組成成分によってガス粘性が異なりサンプル流量が変化することまでは考慮されていなかった。排気ガスの組成に応じて粘性が変化するとサンプル流量が変化することになり、希釈率が変化し、正確な濃度の測定ができないという問題点があった。
【0009】
また、燃料電池からサンプリングされる排気ガスの流量が変化すると、燃料電池自体の性能も変化させてしまう可能性も生じるので、性能や排気ガスデータ等の試験データの信頼度も低下するという問題点があった。
【0010】
具体的には、排気ガスの正確な組成分析を行うためには、ガス分析計(図4参照)として質量分析計を使用する必要が有り、この場合、従来のようにサンプル流量の調整をオリフィスで行うと、燃料電池の排気ガスには水分が含まれるため、組成毎のガス粘性の差によって最大2倍もの流量誤差が生じることが判明している。
【0011】
より具体的には、燃料電池の排気ガスは、運転条件やサンプリングポイントによっては、サンプル中に高濃度の水分(最大50〔vol%〕程度)と、最大80〔%〕程度の水素(H2)とが含まれる。例えば、空気雰囲気を100〔ml/分〕でサンプリングしていても、ガス組成が変化し、水素(H2)が高濃度になると、オリフィスを通過する排気ガスの流量は約2倍になることがある。これは、オリフィスを通過する際に排気ガスの粘性に違いが作用し、ガス種によって、流れ易い場合と流れ難い場合との違いが生じるからである。
【0012】
なお、前述の特許文献1に開示されている技術は、本発明と同様にマスフローコントローラを使用する技術ではあっても、このマスフローコントローラが使用されている部位は、本発明とは違って、反応ガスの供給路であり、反応ガスを所望量に正確に加湿する機能は加湿器(より具体的には反応ガスの気化器)が独自に備える機能としており、この機能の実現と、マスフローコントローラの使用とは、直接的にも間接的にも因果関係を有していない。
【0013】
また、前述の特許文献2に開示されている技術は、サンプリング流量測定用のトレーサガスの導入を必要とし、製造コストと運転コストとが共に高くなり、さらに、生活環境に対して新たな負荷を負わせることになる。
【0014】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、燃料電池の排気ガスの組成を、組成成分の粘性の相違による影響を受けずに正確に分析することができる燃料電池排気ガス組成分析装置を提供することを目的としている。
【0015】
本発明の他の目的は、燃料電池の排気ガスの組成を、組成成分の粘性の相違による影響を受けずに正確に分析することを可能として、燃料電池スタックの電解質膜の乾燥による電気抵抗の増大に起因する発熱を防止し、燃料電池の出力低下を抑止すると共に、故障を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池排気ガス組成分析装置は、燃料電池から排出される排気ガスを分析する分析手段を備えた燃料電池排気ガス組成分析装置であって、燃料電池から排出される排気ガスをサンプリングするサンプリング手段と、前記サンプリング手段の前(上流)又は前記サンプリング手段の後(下流)に、前記排気ガスの質量流量を調節するマスフローコントローラと、前記質量流量が調節された前記排気ガスの組成を分析するガス分析手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
このような構成により、燃料電池の排気ガスの組成を、組成成分の粘性の相違による影響を受けずに正確に分析することを可能にしている。そして、燃料電池スタックの電解質膜の乾燥による電気抵抗の増大に起因する発熱を防止し、燃料電池の出力低下を抑止すると共に、故障を防止することを可能にしている。ここでサンプリング手段としては、バブルやオリフィス等の流量制限手段とポンプ等の強制流通手段との組合せが考えられる。
【0018】
また、前記燃料電池排気ガス組成分析装置において、前記マスフローコントローラは、前記ガス分析手段による分析結果に基づいて前記排気ガスの質量流量の調節を行うことを特徴とする。
【0019】
このような構成により、ガス分析手段で分析される排気ガスの質量流量が自動的に調節されるように制御している。
【0020】
また、前記燃料電池排気ガス組成分析装置において、前記ガス分析手段による分析結果を表示器に表示する手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0021】
このような構成により、ガス分析手段で分析される排気ガスの質量流量を表示器で表示して把握できるようにしている。
【0022】
さらに、前記燃料電池排気ガス組成分析装置は、前記マスフローコントローラとして、加熱可能な構造のものを備えることが可能である。
【0023】
このような構成により、マスフローコントローラを加熱することによって水分の凝縮を防止し、粘度の差異によって測定誤差が生じることを防止している。
【0024】
また、本発明は、燃料電池モジュールの燃料電池から排出される排気ガスを分析するガス分析方法であって、燃料電池から排出される排気ガスをサンプリングするサンプリング工程と、前記サンプリング工程の実行前又は前記サンプリング工程の実行後に、マスフローコントローラを用いて前記排気ガスの質量流量を調節する工程と、前記質量流量が調節された前記排気ガスの組成を分析するガス分析工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
このような構成により、燃料電池の排気ガスの組成を、組成成分の粘性の相違による影響を受けずに正確に分析することを可能にする。そして、燃料電池スタックの電解質膜の乾燥による電気抵抗の増大に起因する発熱を防止し、燃料電池の出力低下を抑止すると共に、故障を防止することができるガス分析方法を実現している。
【発明の効果】
【0026】
本発明の燃料電池排気ガス組成分析装置によれば、燃料電池から排出される排気ガスをサンプリングするサンプリング手段、サンプリング手段の前又はサンプリング手段の後に、排気ガスの質量流量を調節するマスフローコントローラ、及び質量流量が調節された排気ガスの組成を分析するガス分析手段を備えたので、燃料電池の排気ガスの組成を、組成成分の粘性の相違による影響を受けずに正確に分析することを可能にし、ひいては、燃料電池スタックの電解質膜の乾燥による電気抵抗の増大に起因する発熱を防止し、燃料電池の出力低下を抑止すると共に、故障の発生を防止できる燃料電池モジュールを提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に本発明を実施するための好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明の実施形態は、例えば、電気自動車に搭載するハイブリッド燃料電池システムに適用することができる。しかし、以下の実施形態は本発明の適用形態の単なる例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0028】
この実施形態は、燃料電池の排気ガスを、マスフローコントローラで一定の流量質量に調節してガス分析計に送出することにより、ガス組成の変化による流量の変化率を最大10〔%〕程度に抑制できるように制御するものである。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る排気ガス組成分析システムを示す構成図である。
図1に示すように、本燃料電池モジュールにおける排気ガス組成分析システムは、燃料電池100と、燃料電池100の排気ガスを分析するガス分析計200と、燃料電池100からの排気ガスをガス分析計200に導くバルブ21と、ガス分析計200に送出する排気ガスの質量流量を調節するマスフローコントローラ22と、燃料電池100からの排気ガスをサンプリングしてガス分析計200に円滑に送出するサンプリングポンプ23と、を備える。
【0030】
燃料電池100は、水の電気分解の逆反応を起こすものであり、アノード(陰極)極側には燃料ガス供給系統1からアノードガスである水素ガスが供給される。カソード(陽極)極側にはカソードガス供給系統から酸素を含んだカソードガスである空気が供給される。アノード極側では式(1)のような反応を、カソード極側では式(2)のような反応を生じさせて電子を循環させ電流を流すものである。
【0031】
2 → 2H++2e- …(1)
2H++2e-+(1/2)O2 → H2O …(2)
【0032】
アノードガス供給系としては、アノードガス供給源としての水素タンク、アノードガス供給路、アノードオフガス排出路を備える(いずれも図示は省略する)。その他、図示しないが、水素ガスを流通させるための水素ポンプ、水素ガスの管理制御のために必要な元弁や調整弁、遮断弁、逆止弁、気液分離器等を備えていてもよい。
【0033】
ガス分析計200は、排気ガスの組成を分析するものであるが、含水率等を計測する際の希釈率を正確に求めるために、質量分析計を備えていてもよい。このガス分析計200はオプショナルなものであり、排気ガスサンプリングの目的に応じて種々に変更可能なものである。
【0034】
バルブ21は、電磁式に排気ガスの流通を遮断・開放するシャットバルブ(遮断弁)としての構成を備えており、燃料電池100からの排気ガスをガス分析計200に導くためのものであるが、排気ガスの組成分析を行わない場合は閉じられていてよい。
【0035】
マスフローコントローラ22は、ガス分析計200に送出する排気ガスの質量流量を調節するための構成要素であり、具体的な構成は後述する。マスフローコントローラ22としては、排気ガスの組成に起因する調整誤差を10〔%〕程度か、或いは10〔%〕以下に抑えるものを使用することが好ましい。サンプル流量を設定することにより、サンプル組成が変化したとしても10〔%〕以内の流量変化に制限されるように流量制御するような構成となっている。マスフローコントローラ22の流入口と流出口における排気ガスの差圧は0.05〔%〕以上を確保するものとする。
【0036】
なお、マスフローコントローラ22として、市販のマスフローコントローラを使用することができるが、市販のマスフローコントローラでは、排気ガスの組成に起因する調整誤差の指標として選んだコンバージョンファクタ(即ち、ガス濃度100〔vol%〕において、各社の製品を比較すると、窒素ガス(N2)を基準にした流量)には、余り差が見られない。ちなみに、各社の製品で、最も変化量の大きい成分は水(H2O)であるが、この成分(即ち水)がサンプル中に100〔%〕存在する状態は実際には有り得ず、即ち、他のガス成分が混入されている状態が常態であるので、マスフローコントローラを使用すれば、流量変化は、実質的には5〔%〕程度に制御することが可能となる。
【0037】
なお、燃料電池100とガス分析計200との間に設置された設備全体は、水分の凝縮を防止するために加熱するように構成しておくことが好ましい。ちなみに、マスフローコントローラも加熱できる構造のものを利用する。加熱手段に限定はなく、発熱体も用いるものや一定温度の媒体を周囲に流通させるものを利用可能である。
【0038】
図1に示す排気ガス組成分析システムでは、サンプリングポンプ23をマスフローコントローラ22の後段に配置しているので、サンプリングポンプ23はマスフローコントローラ22で質量流量が調整された排気ガスをサンプリングしてガス分析計200に送出することになる。
【0039】
図3は、本排気ガス組成分析システムを構成するマスフローコントローラの詳細な構成を示す構成図である。
図3に示すマスフローコントローラ22は、質量流量を検出する流量検出センサ部1、排気ガスが流入する金属細管2、金属細管2の上流と下流の温度により抵抗値が変化する2つの発熱感温抵抗線3、2つの発熱感温抵抗線3の抵抗値の差をセンス電圧値の差として検出し出力するブリッジ回路4、ブリッジ回路4の出力電圧を増幅する増幅回路5、電気回路用の電源6、後述する比較回路9の比較結果を表示する表示器7、比較回路9に比較の基準となる基準電圧値を設定する設定器8、増幅回路5の出力電圧値と設定器8で設定された基準電圧値とを比較する比較制御回路9、比較制御回路9による比較結果に基づいて制御されるソレノイドバルブ10、及びソレノイドバルブ10によって開閉されるバルブ11を備える。
【0040】
流量検出センサ部1を構成する金属細管2は、排気ガス流路のバイパス流路となっている。金属細管2の2箇所(上流部と下流部)には発熱感温抵抗線3が巻き付けられている。発熱感温抵抗線3を構成する素材は例えば温度に感応する抵抗電線である。
【0041】
金属細管2の上流部に巻き付けられた発熱感温抵抗線3は、金属細管2の該上流部の温度に対応した抵抗値を検出するためのものである。また、金属細管2の下流部に巻き付けられた発熱感温抵抗線3は、金属細管2の該下流部の温度に対応した抵抗値を検出するためのものである。
【0042】
ここで、金属細管2に排気ガスが流れると、排気ガスが金属細管2の前記上流部の温度が奪われる。このとき、金属細管2の前記下流部の温度も前記排気ガスによって奪われるが、この下流部には、前記上流部から奪われた温度が熱伝導されるので、この下流部の温度は前記上流部の温度よりも高くなる。この金属細管2における上流部と下流部との温度差は、金属細管2を流れる排気ガスの質量流量に比例する。この温度差は、前記2つの発熱感温抵抗線3の抵抗値の差異を生じさせ、ブリッジ回路4を介してセンス電圧の差(即ちブリッジ回路4の出力電圧値)として検出される。
【0043】
次に、ブリッジ回路4の出力電圧は増幅回路5で増幅され、センサ流量信号として比較制御回路9の比較電圧端子の一方に入力される。比較制御回路9の比較電圧端子の他方には、設定器8により設定された基準電圧(即ち設定流量信号)が入力されている。
【0044】
比較制御回路9の比較結果である排気ガスの流量は、表示器7で表示されると共に、ソレノイドバルブ10に伝達されてソレノイドバルブ10のソレノイド部に掛かる電流を制御する。これにより、バルブ11が開または閉の方向に回され、排気ガスの流量が変化する。排気ガスの流量が変化すると、前述のセンサ流量信号が変化する。
【0045】
このような一連のフィードバックシステムにより、設定流量信号とセンサ流量信号とが同じになるまでバルブ11の開度が調整され、設定流量信号で設定した質量流量が自動的に維持されて流路に流される。
【0046】
なお、燃料電池100から排出される排気ガス、及びガス分析系200から排出される分析済の排気ガスは、大気中に廃棄されるものとは限らず、適当な処理を施した後、循環的に再使用することも可能である。
【0047】
以上、本実施形態1によれば、マスフローコントローラ22の設置により、排気ガスの質量流量が正確に調節されてサンプリングされ、ガス分析計200に送出されるので、燃料電池の排気ガスの組成成分の粘性によらずに燃料電池から排出される排気ガスの組成に応じた流量を正確に分析することが可能となり、燃料電池から排出される排気ガスの組成を正確に分析することができる。また、燃料電池スタックの電解質膜の乾燥による電気抵抗の増大に起因する発熱を防止し、燃料電池の出力低下を抑止すると共に、故障を防止することが可能となる効果が得られる。
【0048】
本実施形態1によれば、マスフローコントローラ22は、ガス分析計200による分析結果に基づいて排気ガスの質量流量の調節を行うので、ガス分析計200で分析される排気ガスの質量流量を自動的に調節できる。
【0049】
また、本実施形態1によれば、ガス分析計200による分析結果を表示器7に表示することが可能なので、ガス分析計200で分析される排気ガスの質量流量を表示器7で表示して把握することで、運転者が排気ガスの質量流量を確認することができる。
【0050】
さらに、本実施形態1によれば、マスフローコントローラとして加熱可能な構造のものを使用すれば、加熱することによって水分の凝縮を防止し、粘性の差異による測定誤差をさらに緩和することができる燃料電池ガス組成分析装置を提供することができる。
【0051】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、ガス組成分析装置の異なる構成を示す。
図2は、本発明の実施形態に係る燃料電池モジュールにおける排気ガス組成分析システムを示す構成図である。
【0052】
図2に示すように、本燃料電池モジュールにおける排気ガス組成分析システムは、燃料電池100と、燃料電池100の排気ガスを分析するガス分析計200と、燃料電池100からの排気ガスをガス分析計200に導くバルブ21と、ガス分析計200に送出する排気ガスの質量流量を調節するマスフローコントローラ22と、燃料電池100からの排気ガスをサンプリングしてガス分析計200に円滑に送出するサンプリングポンプ23と、を備える。
【0053】
特に、本実施形態2の排気ガス組成分析システムでは、サンプリングポンプ23をマスフローコントローラ22の前段に配置している点で、上記実施形態1と異なる。個々の構成要素については実施形態1と同様なので説明を省略する。
【0054】
このようにサンプリングポンプ23をマスフローコントローラ22の前段に設けたことにより、マスフローコントローラ22はサンプリングポンプ23でサンプリングされた排気ガスの質量流量を調整してガス分析計200に送出することになる。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態以外にも種々に変更して適用することが可能である。
例えば、上記実施形態では、サンプリング手段としてバルブ21とサンプリングポンプ23を設置したが、このバルブ21をオリフィスとする構成も可能である。また、サンプリングポンプ23としては、強制的に排気ガスを流通させることができるものであれば、その構成に限定はない。
【0056】
さらに、上記実施形態ではガス分析手段としてガス分析計を用いていたが、これに限定されず、定流量化された排気ガスを利用することでメリットがある構成であれば、測定手段であるか積極的な利用手段であるかを問わず適用可能である。このとき、流通させるガスは燃料電池の排気ガスに限定されない。よって、ガス分析に代えて定量的にサンプリングされるガスの利用目的を任意に変更可能である。どのような利用目的があるにせよ、混合ガスの組成によって流量が変動するようなことがなく、一定量の混合ガスを供給可能であるため、定量的なガス利用を図る目的の発明に適用可能である。
【0057】
すなわち、本発明は、所定の混合ガスを利用するガス利用装置において、所定の混合ガスをサンプリングするサンプリング手段と、前記サンプリング手段の前又は前記サンプリング手段の後に前記混合ガスの質量流量を調節するマスフローコントローラと、前記質量流量が調節された前記混合ガスを利用するガス利用手段と、を備えたことを特徴とする混合ガス利用装置として構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る排気ガス組成分析システムを示す構成図
【図2】本発明の実施形態に係る排気ガス組成分析システムを示す構成図
【図3】本排気ガス組成分析システムを構成するマスフローコントローラの構成図
【図4】従来の排気ガス組成分析システムを示す構成図
【符号の説明】
【0059】
1…流量検出センサ部、2…ソレノイド、3…金属細管、4…ブリッジ回路、5…増幅回路、6…電源、7…表示器、8…設定器、9…比較制御回路、10…ソレノイドバルブ、11…バルブ(電磁駆動)、21…バルブ(手動)、22…マスフローコントローラ、23…サンプリングポンプ、100…燃料電池、200…ガス分析計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池から排出される排気ガスを分析する分析手段を備えた燃料電池排気ガス組成分析装置であって、
前記燃料電池から排出される排気ガスをサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段の前又は前記サンプリング手段の後に、前記排気ガスの質量流量を調節するマスフローコントローラと、
前記質量流量が調節された前記排気ガスの組成を分析するガス分析手段と、
を備えたことを特徴とする燃料電池排気ガス組成分析装置。
【請求項2】
前記マスフローコントローラは、前記ガス分析手段による分析結果に基づいて前記排気ガスの質量流量を調節することを特徴とする請求項1記載の燃料電池排気ガス組成分析装置。
【請求項3】
前記ガス分析手段による分析結果を表示器に表示する手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の燃料電池排気ガス組成分析装置。
【請求項4】
前記マスフローコントローラとして、加熱可能な構造のものを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池排気ガス組成分析装置。
【請求項5】
燃料電池から排出される排気ガスを分析するガス分析方法であって、
前記燃料電池から排出される排気ガスをサンプリングするサンプリング工程と、
前記サンプリング工程の実行前又は前記サンプリング工程の実行後に、マスフローコントローラを用いて前記排気ガスの質量流量を調節する工程と、
前記質量流量が調節された前記排気ガスの組成を分析するガス分析工程と、
を有することを特徴とするガス分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−130456(P2008−130456A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316019(P2006−316019)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(594207610)株式会社ベスト測器 (13)
【Fターム(参考)】