燃料電池用のセパレータおよびその製造方法
【課題】 強度、耐食性に優れ、接続抵抗が小さい燃料電池用のセパレータとその製造方法を提供する。
【解決手段】 燃料電池用のセパレータを、金属基体を被覆するように電着により形成された導電性の保護層を備えたものとし、この保護層は導電材料を含有した樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチな層とする。このようなセパレータは、電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成し、この樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成する工程、を複数回行って多層構造の保護層を形成することにより製造する。
【解決手段】 燃料電池用のセパレータを、金属基体を被覆するように電着により形成された導電性の保護層を備えたものとし、この保護層は導電材料を含有した樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチな層とする。このようなセパレータは、電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成し、この樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成する工程、を複数回行って多層構造の保護層を形成することにより製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレータに関し、特に固体高分子電解質膜の両側に電極を配した単位セルを複数個接続した燃料電池の各単位セルに使用するセパレータと、このようなセパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、簡単には、外部より燃料(還元剤)と酸素または空気(酸化剤)を連続的に供給し、電気化学的に反応させて電気エネルギーを取り出す装置で、その作動温度、使用燃料の種類、用途などで分類される。また、最近では、主に使用される電解質の種類によって、大きく、固体酸化物型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、リン酸型燃料電池、固体高分子電解質型燃料電池、アルカリ水溶液型燃料電池の5種類に分類させるのがー般的である。
これらの燃料電池は、メタン等から生成された水素ガスを燃料とするものであるが、最近では、燃料としてメタノール水溶液をダイレクトに用いるダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCとも言う)も知られている。
このような燃料電池のなかで、固体高分子膜を2種類の触媒で挟み込み、更に、これらの部材をガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)とセパレータで挟んだ構成の固体高分子型燃料電池(以下、PEFCとも言う)が注目されている。
【0003】
このPEFCにおいては、固体高分子電解質膜の両側に、空気極(酸素極)、燃料極(水素極)を配置した単位セルを、所望の起電力を得るために、複数個積層したスタック構造、あるいは、平面状に複数個を直列に接続した構造となっている。例えば、上記のスタック構造の場合、単位セル間に配設されるセパレータは、そのー方の面に、隣接するー方の単位セルに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用溝部が形成され、他方の面に、隣接する他方の単位セルに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給用溝部が形成されている。
このようなセパレータとしては、コスト、強度の点から、金属製のセパレータが好ましいが、耐食性に問題があった。このため、導電性の電着塗膜を形成して耐食性を付与した金属セパレータが開発されている(特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開2004−31166号公報
【特許文献2】特開2003−249240号公報
【特許文献3】特開2004−197225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電着塗膜を金属基材上に形成した従来の金属セパレータでは、電着塗膜にピンホールが発生したり、厚みムラによる薄い部位が生じ易く、耐食性の劣化、接続抵抗の増大を来たすという問題があった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、強度、耐食性に優れ、接続抵抗が小さい燃料電池用のセパレータとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明のセパレータは、金属基体と、該金属基体を被覆するように電着により形成された保護層とを備え、該保護層は樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であるとともに導電材料を含有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基体は少なくとも一方の面に溝部を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基体は複数の貫通孔を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基体は、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金のいずれかからなるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であるような構成とした。
【0006】
本発明の燃料電池用のセパレータの製造方法は、電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成し、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成する工程、を複数回行って多層構造の保護層を形成するような構成とした。
また、本発明の燃料電池用のセパレータの製造方法は、電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成する工程、を複数回行って多層構造の樹脂層を形成し、その後、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記炭化処理の温度は、前記樹脂層の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲内であるような構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセパレータでは、保護層はピンホールや厚みムラがなく、高い強度と優れた耐食性を具備するとともに、この保護層が炭素リッチであり、かつ、導電材料を含有するので、電気抵抗が低いものである。
また、本発明のセパレータの製造方法では、各樹脂層の形成段階でピンホールや厚みの薄い部位が生じても、このような部位は他の樹脂層により埋められ、樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチな層とすることにより、高い強度と優れた耐食性を具備し、かつ、接続抵抗の低い保護層を備えたセパレータの製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[セパレータ]
図1は本発明の燃料電池用のセパレータの一実施形態を示す部分断面図である。図1において、本発明のセパレータ1は、金属基体2と、この金属基体2の両面に形成された溝部3と、金属基体2の両面を被覆するように配設された保護層5とを備えている。この保護層5は、樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であり、かつ、導電材料を含有するものである。
【0009】
また、図2は本発明の燃料電池用のセパレータの他の実施形態を示す部分断面図である。図2において、本発明のセパレータ11は、金属基体12と、この金属基体12に形成された複数の貫通孔13と、これらの貫通孔13の内壁面を含む金属基体12の両面を被覆するように配設された保護層15とを備えている。そして、この保護層15は、樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であるとともに、導電材料を含有するものである。
セパレータ1,11を構成する金属基体2,12の材質は、電気導電性が良く、所望の強度が得られ、加工性の良いものが好ましく、例えば、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金等が挙げられる。
【0010】
金属基体2が有する溝部3は、セパレータ1が燃料電池に組み込まれたときに、一方が、隣接する単位セルに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用溝部となり、他方が、隣接する別の単位セルに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給用溝部となるものである。また、溝部3の一方が燃料ガス供給用溝部、酸化剤ガス供給用溝部のいずれかとなり、他方が冷却水用溝となるものであってもよい。さらに、金属基体2の一方の面のみに溝部3を備えるものであってもよい。このような溝部3の形状は、特に制限はなく、蛇行した連続形状、櫛形状等であってよく、また、深さ、幅、断面形状も特に制限はない。また、金属基体2の表裏で、溝部3の形状が異なるものであってもよい。
また、金属基体12が有する貫通孔13は、セパレータ11が燃料電池に組み込まれたときに、燃料ガス、あるいは、酸化剤ガスを単位セルに供給するための流路となるものである。このような貫通孔13の大きさ、個数、配設密度には特に制限はない。
【0011】
セパレータ1,11を構成する保護層5,15は、導電性を有するとともに、金属基体2,12に耐食性を付与するためのものである。この保護層5,15は、例えば、電着性を有する各種アニオン性、またはカチオン性の合成高分子樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて電着により多層構造の樹脂層を成膜し、その後、樹脂層に炭化処理を施して形成することができる。保護層5,15を形成するための樹脂層の多層構造は、2層以上であれば特に制限はないが、例えば、2層構造〜5層構造とすることが好ましい。
【0012】
アニオン性合成高分子樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン化油樹脂、ポリブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができ、これらを単独で、あるいは任意の組み合わせによる混合物として使用することができる。また、上記のアニオン性合成高分子樹脂とメラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の架橋性樹脂とを併用してもよい。一方、カチオン性合成高分子樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができ、これらを単独で、あるいは任意の組み合わせによる混合物として使用することができる。また、上記のカチオン性合成高分子樹脂とポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の架橋性樹脂とを併用してもよい。
また、上記の電着性を有する合成高分子樹脂に粘着性を付与するために、ロジン系、テルペン系、石油樹脂等の粘着性付与樹脂を必要に応じて添加してもよい。
【0013】
このような電着性の合成高分子樹脂は、アルカリ性または酸性物質により中和して水に可溶化された状態、あるいは水分散状態で電着に供される。すなわち、アニオン性合成高分子樹脂は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類、アンモニア、苛性カリ等の無機アルカリで中和する。また、カチオン性合成高分子樹脂は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸等の酸で中和する。そして、中和された水可溶の高分子樹脂は、水分散型または溶解型として水に希釈された状態で使用される。
【0014】
本発明では、保護層5,15形成のための多層構造の樹脂層に施す炭化処理は、例えば、樹脂層の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲で行うことができる。このような炭化処理を施した多層構造の樹脂層は、構成する各樹脂層におけるピンホールや厚みムラの薄い部位が、積層される他の樹脂層により埋められ、炭素リッチで均一な保護層となる。このため、保護層5,15は全体として均一なものとなり、高い強度と優れた耐食性を発現する。上記の炭化処理の温度が(T+30)℃未満では、炭化処理の効果が十分に得られず、また、500℃を超えると、保護層の材料が脆くなったり、材料痩せや金属基体の焼なまし(軟化)が生じるので好ましくない。
尚、上記の材料の5%重量減少温度T(℃)とは、材料の熱重量分析において、室温(25℃)での重量に対する重量減少が5%に達した温度を意味する。ここで、熱重量分析は試料を窒素雰囲気中に置き、5℃/分の速度で昇温して測定する。以下においても同様である。
【0015】
また、本発明において、樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層とは、炭化処理によって炭素含有率が増大して緻密となり、硬度が向上した層を意味する。しかし、炭化処理前後の樹脂層と保護層における炭素含有量を分析的に測定することは困難である。このため、本発明では、炭化処理後に鉛筆硬度試験(JIS K 5401)により硬度を測定して、5H未満であった硬度が5H以上に向上している場合に、炭素リッチな層になっていると判断する。
樹脂層の炭化処理により形成された保護層5,15の厚みは、0.1〜100μm、好ましくは3〜30μmの範囲とすることができる。保護層5,15の厚みが0.1μm未満であると、ピンホール等の発生により、良好な耐食性が確保できないことがあり、100μmを超えると、乾燥固化後のヒビ割れ等の発生や、生産性の低下、コスト高といった問題が発生し好ましくない。
【0016】
保護層5,15に含有される導電材料としては、例えば、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等のカーボン素材、耐食性金属等が挙げられるが、耐酸性かつ導電性が所望のものが得られれば、これらの導電材料に限定されない。特に、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等の微細繊維状炭素材料は、保護層5,15に導電性を付与するために好適である。保護層5,15における導電材料の含有量は、保護層5,15に要求される導電性に応じて適宜設定することができ、例えば、30〜90重量%の範囲で設定することができる。
尚、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等の微細繊維状炭素材料は、ナノテクノロジーの素材として、複合材料、電子デバイス等の種々の分野に適用が期待されているものであり、これらをフィラーとして複合材料に用いた場合には、これらが有する物性を複合材料に付与することができる。例えば、カーボンナノチューブは、導電性、耐酸性、加工性、機械的強度等の面で優れており、フィラーとして複合材料に用いられた場合には、このようなカーボンナノチューブの優れた物性を複合材料に付与することができる。
上述の本発明のセパレータの実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
[セパレータの製造方法]
次に、本発明のセパレータの製造方法について説明する。
図3は、図1に示されるセパレータ1を例として本発明の製造方法を説明するための工程図である。本発明の製造方法では、まず、金属板材2′の両面にフォトリソグラフィーにより所望のパターンでレジスト7,7を形成し(図3(A))、このレジスト7,7をマスクとして両面から金属板材2′をエッチングして溝部3,3を形成する(図3(B))。その後、レジスト7,7を剥離して金属基体2を得る(図3(C))。
【0018】
次に、この金属基体2の両面に、電着性を有する各種アニオン性、またはカチオン性の合成高分子樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて電着により保護層を形成し、次いで、この保護層に炭化処理を施して炭素リッチな層とする工程を複数回繰り返し、保護層5を形成する(図3(D))。この電着による成膜と炭化処理とからなる工程の繰り返し回数は、形成する保護層5の厚み、樹脂材料、導電材料の含有量等を考慮して適宜設定することができ、例えば、2〜5回とすることができる。このように、複数回の成膜工程により多層構造の保護層5を形成するので、各層の成膜段階でピンホールや厚みの薄い部位が生じても、このような部位は他の層により埋められ、多層構造の保護層5全体として優れた耐食性を具備し、接続抵抗の低いものとなる。
また、本発明では、多層構造の樹脂層を成膜し、その後、炭化処理を施して保護層を形成してもよい。
【0019】
上述の炭化処理の温度は、樹脂層5の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲内で適宜設定することができる。このような炭化処理を施すことにより、ピンホールや厚みムラの薄い部位に膜が流動して均一なものとなり、高い強度と優れた耐食性を具備する保護層の形成が可能となる。上記の炭化処理の温度が(T+30)℃未満では、熱処理の効果が十分に得られず、また、500℃を超えると、保護層の材料が脆くなったり、材料痩せや金属基体の焼なまし(軟化)が生じるので好ましくない。
【0020】
図4は、図2に示されるセパレータ11を例として本発明の製造方法を説明するための工程図である。図4において、金属板材12′の両面にフォトリソグラフィーにより所望のパターンでレジスト17,17を形成する(図4(A))。このレジスト17,17は複数の開口部を有し、各開口部は金属板材12′を介して対向するように位置している。次いで、レジスト17,17をマスクとして両面から金属板材12′をエッチングして複数の貫通孔13を穿設する(図4(B))。その後、レジスト17,17を剥離して金属基体12を得る(図4(C))。
貫通孔13の形成は、上述のエッチングによる方法の他に、サンドブラスト法、レーザー加工法、ドリル加工法等により行うことも可能である。
次に、貫通孔13の内壁面を含む金属基体12に、保護層15を形成する(図4(D))。この保護層15の形成は、上述の保護層5の形成と同様に行うことができる。これにより、セパレータ11が得られる。
上述のセパレータの製造方法の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0021】
[本発明のセパレータを用いた燃料電池の例]
ここで、本発明のセパレータを用いた高分子電解質型燃料電池の一例を、図5〜図8を参照して説明する。図5は高分子電解質型燃料電池の構造を説明するための部分構成図であり、図6は高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図であり、図7および図8は、それぞれ高分子電解質型燃料電池のセパレータと膜電極複合体を離間させた状態を異なった方向から示す斜視図である。
図5〜図8において、高分子電解質型燃料電池21は、膜電極複合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)31とセパレータ41とからなる単位セルが複数個積層されたスタック構造を有している。
【0022】
MEA31は、図6に示されるように、高分子電解質膜32の一方の面に配設された触媒層33とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)34とからなる燃料極(水素極)35と、高分子電解質膜32の他方の面に配設された触媒層36とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)37とからなる空気極(酸素極)38を備えている。
セパレータ41は、一方の面に燃料ガス供給用溝部43aを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部44aを備えたセパレータ41Aと、一方の面に燃料ガス供給用溝部43aを備え、他方の面に冷却水用溝部44bを備えたセパレータ41Bと、一方の面に冷却水用溝部43bを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部44aを備えたセパレータ41Cとからなっている。このようなセパレータ41A,41B,41Cは、本発明のセパレータであり、その両面に、図1に示されるような保護層5が形成されているが、図示例では、省略している。
【0023】
各セパレータ41A,41B,41Cと上記の高分子電解質膜32の所定位置には、2個の燃料ガス供給孔45a,45b、2個の酸化剤ガス供給孔46a,46b、2個の冷却水供給孔47a,47bが貫通孔として形成されている。そして、セパレータ41Aの酸化剤ガス供給用溝部44aが形成されている面に、MEA31の空気極(酸素極)38が当接し、セパレータ41Bの燃料ガス供給用溝部43aが形成されている面に、MEA31の燃料極(水素極)35が当接するように、また、セパレータ41Bの冷却水用溝部44bが形成された面とセパレータ41Cの冷却水用溝部43bが形成された面とが当接するように、各セパレータ41A,41B,41Cと単位セルであるMEA31が積層され、この繰り返しで高分子電解質型燃料電池21が構成されている。このように積層された状態で、上記の2個の燃料ガス供給孔45a,45bはそれぞれ積層方向に貫通する燃料ガスの供給路を形成し、2個の酸化剤ガス供給孔46a,46bはそれぞれ積層方法に貫通する酸化剤ガスの供給路を形成し、2個の冷却水供給孔47a,47bはそれぞれ積層方向に貫通する冷却水の供給路を形成している。
【0024】
また、本発明のセパレータを用いた高分子電解質型燃料電池の他の例を、図9〜図11を参照して説明する。図9は高分子電解質型燃料電池の構造を説明するための平面図であり、図10は図9に示される高分子電解質型燃料電池のA−A線での縦断面図であり、図11は高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図である。
図9および図10に示されるように、高分子電解質型燃料電池51は、膜電極複合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)61とセパレータ71A,71Bとからなる単位セル52を平面状に複数個配列し、これらを電気的に直列に接続し、単位セルの個数分(図9では4個分)の電圧を取り出す高分子電解質型燃料電池である。また、各単位セル52の周りには、これと略同じ厚さの絶縁部55を設け、全体を平面状にしている。すなわち、平板状の絶縁部55のくり抜き部に単位セル52を嵌め込んだ状態とすることにより、単位セル52と絶縁部55とを平面状に設けているものである。
【0025】
この高分子電解質型燃料電池51は、絶縁部55のうち、隣接する単位セル間に位置する絶縁部55に、貫通してその表裏の接続を行うための表裏接続部57cを設けている。そして、この表裏接続部57cを、接続配線57aを介して、隣接する一方の単位セルのセパレータ71A(例えば、燃料極側セパレータ)に接続し、また、接続配線57bを介して、隣接する他方の単位セルのセパレータ71B(例えば、空気極側セパレータ)に接続している。これにより、隣接する単位セル間が電気的に直列に接続されている。そして、直列に接続された一方の端部に位置する単位セル52のセパレータ71Aと、他方の端部に位置する単位セル52のセパレータ71Bには、配線75,76が接続されている。
尚、図示例では単位セルの個数を4個としているが、単位セルの個数には制限はない。
【0026】
絶縁部55は、接続部57(接続配線57a,57bおよび表裏接続部57c)で接続される以外は、隣接する単位セル間を互いに絶縁するものである。このような絶縁部55の材質は、処理性、耐久性の面で優れたものであれば特に限定はされず、例えば、ガラスエポキシ、ポリイミド樹脂等が使用される。また、絶縁部55は、絶縁性材料のみからなるものでも、導電性材料を一部含むものでもよい。
接続部57の表裏接続部57cとしては、スルホール接続部、あるいは、充填ビア接続部、バンプ接続部のいずれかを、隣接する単位セル間に位置する絶縁部55中に設けたものとすることができる。これらの表裏接続部57cは、従来の配線基板技術の応用として形成できる。
【0027】
また、MEA61は、図11に示されるように、高分子電解質膜62の一方の面に配設された触媒層63とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)64とからなる燃料極(水素極)65と、高分子電解質膜62の他方の面に配設された触媒層66とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)67とからなる空気極(酸素極)68を備えている。
セパレータ71A,71Bは、図2に示されるような本発明のセパレータであり、複数の貫通孔を備えた金属基体に導電性の保護層を有するものである。
【実施例】
【0028】
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
金属板材として、厚み0.8mmのSUS304(80mm×80mm)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、このSUS304の両面に、感光材料(カゼインと重クロム酸アンモニウムとの混合物)をディップコート法により塗布して厚み7μmの塗膜を形成し、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により60秒間照射)、現像(40℃温水をスプレー)してレジストを形成した。
【0029】
次いで、上記のレジストを介してステンレス板の両面から70℃に加熱した塩化第二鉄溶液をスプレーして、所定の深さまでハーフエッチングを行った。その後、80℃の苛性ソーダ水溶液でレジストを剥離し、洗浄処理を施した。これにより、幅が1mm、深さが0.3mmのほぼ半円形状の断面を有し、振れ幅50mm、ピッチ2mmで蛇行した長さ1300mmの溝部を備えた金属基体を得た。
次に、金属基体に対して、40℃の塩酸水溶液(水9部に35%塩酸1部を添加)を用いて前処理を施し水洗した。
次いで、エポキシ電着液に、導電材料としてカーボンブラック(Cabot(株)製 Vulcan XC−72)を樹脂固形分に対して75重量%添加し分散させて、電着液とした。
【0030】
この電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで30秒間電着を行い、引き上げた金属基体を純水洗浄した。この操作を更に1回繰り返して2層構造の樹脂層を形成した。その後、ドライヤーで熱風乾燥(150℃、3分間)し、さらに、酸素雰囲気中で350℃、2時間の炭化処理を施した。これにより、金属基体を被覆するように厚み15μmの保護層が形成され、セパレータが得られた。
ここで、上記の樹脂層の材料の5%重量減少温度Tを、熱重量分析により測定(試料を窒素雰囲気中に置き、5℃/分の速度で昇温して測定)した結果、308.4℃であった。また、炭化処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであったが、炭化処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は5Hまで向上しており、炭素リッチであることが確認された。
【0031】
尚、使用したエポキシ電着液は下記のようにして調製した。
まず、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(エポキシ当量910)1000重量部を撹拌下に70℃に保ちながら、エチレングリコールモノエチルエーテル463重量部に溶解させ、さらに、ジエチルアミン80.3重量部を加えて100℃で2時間反応させてアミンエポキシ付加物(A)を調製した。
また、コロネートL(日本ポリウレタン(株)製 ジイソシアネート:NCO13%の不揮発分75重量%)875重量部にジブチル錫ラウレート0.05重量部を加え50℃に加熱し、これに2−エチルヘキサノール390重量部を添加し、その後、120℃で90分間反応させた。得られた反応生成物をエチレングリコールモノエチルエーテル130重量部で希釈した成分(B)を得た。
【0032】
次に、上記のアミンエポキシ付加物(A)1000重量部と成分(B)400重量部からなる混合物を、氷酢酸30重量部で中和した後、脱イオン水570重量部を用いて希釈し、不揮発分50重量%の樹脂Aを調製した。この樹脂A200.2重量部(樹脂成分86.3容量)、脱イオン水583.3重量部、およびジブチル錫ラウレート2.4重量部を配合してエポキシ電着液を調製した。
【0033】
作製した上記のセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を下記の方法で測定した結果、4.2mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
(電気抵抗の測定方法)
セパレータをガス拡散層(東レ(株)製 TGP−H−060 190μm厚)
で両側から挟み込み、さらに、これらを銅に金めっきを施した厚さ5mmの電極
で挟み込んで圧着(圧力:20kgf/cm2)し、電極間の抵抗を測定する。
【0034】
また、上記のセパレータについて、下記の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
(耐食性試験の条件)
5%の塩水に塩化第二銅(二水和物)0.027重量%を添加した噴霧試験液を
用い、噴霧槽内の温度を50℃としてキャス(CASS)試験を行い、1000
時間後に赤錆の発生が見られない場合を、耐食性が良好であるとする。
【0035】
[実施例2]
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
また、実施例1と同様にして電着液を調製した。
この電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで30秒間電着を行って樹脂層を形成し、引き上げた金属基体を純水洗浄した後、ドライヤーで熱風乾燥(150℃、3分間)し、さらに、酸素雰囲気中で350℃、2時間の炭化処理を施して炭素リッチな層を形成した。この操作を更に1回繰り返した。これにより、金属基体を被覆するように厚み15μmの2層構造の保護層が形成され、セパレータが得られた。
【0036】
ここで、炭化処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであったが、炭化処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は5Hまで向上しており、炭素リッチであることが確認された。
このように作製したセパレータについて、表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、5.4mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
【0037】
[実施例3]
金属板材として、80mm×80mm、厚み0.8mmのアルミニウム合金(A5052P)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、このアルミニウム合金の両面に、ドライフィルムレジスト(ニチゴー・モートン(株)製)をラミネートして35μm厚の感光性レジスト層を形成し、その後、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により15秒間照射)、現像(30℃の2%炭酸水素ナトリウム水溶液をスプレー)してレジストを形成した。
次いで、上記のレジストを介してアルミニウム合金の両面から45℃に加熱した塩化第二鉄水溶液をスプレーして、所定の深さまでハーフエッチングを行った。その後、50℃の5%炭酸水素ナトリウム水溶液でレジストを剥離し、洗浄処理を施した。これにより、幅が1mm、深さが0.3mmのほぼ半円形状の断面を有し、振れ幅50mm、ピッチ2mmで蛇行した長さ1300mmの溝部を備えた金属基体を得た。
【0038】
次に、上記の金属基体に対して、硝酸水溶液を用いて前処理(不動態膜除去)を施し、水洗した。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。
上記のように作製したセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、4.9mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
【0039】
[実施例4]
金属板材として、80mm×80mm、厚み0.8mmの銅合金(銅−クロム−錫合金)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、この銅合金の両面に、感光材料(カゼインと重クロム酸アンモニウムとの混合物)をディップコート法により塗布して厚み7μmの塗膜を形成し、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により60秒間照射)、現像(40℃温水をスプレー)してレジストを形成した。
【0040】
次いで、上記のレジストを介して銅合金の両面から70℃に加熱した塩化第二銅水溶液をスプレーして、所定の深さまでハーフエッチングを行った。その後、80℃の苛性ソーダ水溶液でレジストを剥離し、洗浄処理を施した。これにより、幅が1mm、深さが0.3mmのほぼ半円形状の断面を有し、振れ幅50mm、ピッチ2mmで蛇行した長さ1300mmの溝部を備えた金属基体を得た。
次に、金属基体に対して、50℃の硫酸(硫酸1部に水5部を添加)を用いて前処理を施し水洗した。
次いで、金属基体上に、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。
上記のように作製したセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、4.8mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
【0041】
[比較例1]
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。但し、実施例2の炭化処理の代わりに、酸素雰囲気中で310℃(樹脂層の材料の5%重量減少温度T)、2時間の加熱処理を施した。この加熱処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであり、加熱処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は4Hまで向上したものの、炭素リッチでないことが確認された。
このように作製されたセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、7.2mΩであり、実施例1〜4のセパレータに比べて電気抵抗が大きいものであった。
【0042】
[比較例2]
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。但し、実施例2の炭化処理の代わりに、酸素雰囲気中で550℃、2時間の炭化処理を施した。この炭化処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであったが、炭化処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は6Hまで向上しており、炭素リッチであることが確認された。
このように作製されたセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、5.2mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
しかし、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、600時間経過で赤錆が発生しており、実施例1〜4のセパレータに比べて耐食性が劣るものであった。
【0043】
[比較例3]
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
また、実施例1と同様にして電着液を調製した。
この電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで1分間電着を行って樹脂層を形成し、引き上げた金属基体を純水洗浄した後、ドライヤーで熱風乾燥(150℃、3分間)し、さらに、窒素雰囲気中で180℃、1時間の熱処理を施した。これにより、金属基体を被覆するように厚み15μmの保護層が形成され、セパレータが得られた。
【0044】
このように作製されたセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、8.4mΩであり、実施例1〜4のセパレータに比べて電気抵抗が大きいものであった。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、600時間経過で赤錆が発生しており、実施例1〜4のセパレータに比べて耐食性が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、固体高分子電解質膜の両側に電極を配した単位セルを複数個接続した燃料電池の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の燃料電池用のセパレータの一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】本発明の燃料電池用のセパレータの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図3】本発明のセパレータの製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図4】本発明のセパレータの製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
【図5】本発明のセパレータを使用した高分子電解質型燃料電池の一例を説明するための部分構成図である。
【図6】図5に示される高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図である。
【図7】図5に示される高分子電解質型燃料電池のセパレータと膜電極複合体を離間させた状態を示す斜視図である。
【図8】図5に示される高分子電解質型燃料電池のセパレータと膜電極複合体を離間させた状態を図7とは異なった方向から示す斜視図である。
【図9】本発明のセパレータを使用した高分子電解質型燃料電池の他の例を説明するための平面図である。
【図10】図9に示される高分子電解質型燃料電池のA−A線での縦断面図である。
【図11】図9に示される高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
1…セパレータ
2…金属基体
3…溝部
5…保護層
11…セパレータ
12…金属基体
13…貫通孔
15…保護層
21,51…高分子電解質型燃料電池
31,61…膜電極複合体(MEA)
41A,41B,41C,71A,71B…セパレータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレータに関し、特に固体高分子電解質膜の両側に電極を配した単位セルを複数個接続した燃料電池の各単位セルに使用するセパレータと、このようなセパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、簡単には、外部より燃料(還元剤)と酸素または空気(酸化剤)を連続的に供給し、電気化学的に反応させて電気エネルギーを取り出す装置で、その作動温度、使用燃料の種類、用途などで分類される。また、最近では、主に使用される電解質の種類によって、大きく、固体酸化物型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、リン酸型燃料電池、固体高分子電解質型燃料電池、アルカリ水溶液型燃料電池の5種類に分類させるのがー般的である。
これらの燃料電池は、メタン等から生成された水素ガスを燃料とするものであるが、最近では、燃料としてメタノール水溶液をダイレクトに用いるダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCとも言う)も知られている。
このような燃料電池のなかで、固体高分子膜を2種類の触媒で挟み込み、更に、これらの部材をガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)とセパレータで挟んだ構成の固体高分子型燃料電池(以下、PEFCとも言う)が注目されている。
【0003】
このPEFCにおいては、固体高分子電解質膜の両側に、空気極(酸素極)、燃料極(水素極)を配置した単位セルを、所望の起電力を得るために、複数個積層したスタック構造、あるいは、平面状に複数個を直列に接続した構造となっている。例えば、上記のスタック構造の場合、単位セル間に配設されるセパレータは、そのー方の面に、隣接するー方の単位セルに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用溝部が形成され、他方の面に、隣接する他方の単位セルに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給用溝部が形成されている。
このようなセパレータとしては、コスト、強度の点から、金属製のセパレータが好ましいが、耐食性に問題があった。このため、導電性の電着塗膜を形成して耐食性を付与した金属セパレータが開発されている(特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開2004−31166号公報
【特許文献2】特開2003−249240号公報
【特許文献3】特開2004−197225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電着塗膜を金属基材上に形成した従来の金属セパレータでは、電着塗膜にピンホールが発生したり、厚みムラによる薄い部位が生じ易く、耐食性の劣化、接続抵抗の増大を来たすという問題があった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、強度、耐食性に優れ、接続抵抗が小さい燃料電池用のセパレータとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明のセパレータは、金属基体と、該金属基体を被覆するように電着により形成された保護層とを備え、該保護層は樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であるとともに導電材料を含有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基体は少なくとも一方の面に溝部を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基体は複数の貫通孔を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基体は、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金のいずれかからなるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であるような構成とした。
【0006】
本発明の燃料電池用のセパレータの製造方法は、電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成し、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成する工程、を複数回行って多層構造の保護層を形成するような構成とした。
また、本発明の燃料電池用のセパレータの製造方法は、電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成する工程、を複数回行って多層構造の樹脂層を形成し、その後、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記炭化処理の温度は、前記樹脂層の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲内であるような構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセパレータでは、保護層はピンホールや厚みムラがなく、高い強度と優れた耐食性を具備するとともに、この保護層が炭素リッチであり、かつ、導電材料を含有するので、電気抵抗が低いものである。
また、本発明のセパレータの製造方法では、各樹脂層の形成段階でピンホールや厚みの薄い部位が生じても、このような部位は他の樹脂層により埋められ、樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチな層とすることにより、高い強度と優れた耐食性を具備し、かつ、接続抵抗の低い保護層を備えたセパレータの製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[セパレータ]
図1は本発明の燃料電池用のセパレータの一実施形態を示す部分断面図である。図1において、本発明のセパレータ1は、金属基体2と、この金属基体2の両面に形成された溝部3と、金属基体2の両面を被覆するように配設された保護層5とを備えている。この保護層5は、樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であり、かつ、導電材料を含有するものである。
【0009】
また、図2は本発明の燃料電池用のセパレータの他の実施形態を示す部分断面図である。図2において、本発明のセパレータ11は、金属基体12と、この金属基体12に形成された複数の貫通孔13と、これらの貫通孔13の内壁面を含む金属基体12の両面を被覆するように配設された保護層15とを備えている。そして、この保護層15は、樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であるとともに、導電材料を含有するものである。
セパレータ1,11を構成する金属基体2,12の材質は、電気導電性が良く、所望の強度が得られ、加工性の良いものが好ましく、例えば、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金等が挙げられる。
【0010】
金属基体2が有する溝部3は、セパレータ1が燃料電池に組み込まれたときに、一方が、隣接する単位セルに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用溝部となり、他方が、隣接する別の単位セルに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給用溝部となるものである。また、溝部3の一方が燃料ガス供給用溝部、酸化剤ガス供給用溝部のいずれかとなり、他方が冷却水用溝となるものであってもよい。さらに、金属基体2の一方の面のみに溝部3を備えるものであってもよい。このような溝部3の形状は、特に制限はなく、蛇行した連続形状、櫛形状等であってよく、また、深さ、幅、断面形状も特に制限はない。また、金属基体2の表裏で、溝部3の形状が異なるものであってもよい。
また、金属基体12が有する貫通孔13は、セパレータ11が燃料電池に組み込まれたときに、燃料ガス、あるいは、酸化剤ガスを単位セルに供給するための流路となるものである。このような貫通孔13の大きさ、個数、配設密度には特に制限はない。
【0011】
セパレータ1,11を構成する保護層5,15は、導電性を有するとともに、金属基体2,12に耐食性を付与するためのものである。この保護層5,15は、例えば、電着性を有する各種アニオン性、またはカチオン性の合成高分子樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて電着により多層構造の樹脂層を成膜し、その後、樹脂層に炭化処理を施して形成することができる。保護層5,15を形成するための樹脂層の多層構造は、2層以上であれば特に制限はないが、例えば、2層構造〜5層構造とすることが好ましい。
【0012】
アニオン性合成高分子樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン化油樹脂、ポリブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができ、これらを単独で、あるいは任意の組み合わせによる混合物として使用することができる。また、上記のアニオン性合成高分子樹脂とメラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の架橋性樹脂とを併用してもよい。一方、カチオン性合成高分子樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができ、これらを単独で、あるいは任意の組み合わせによる混合物として使用することができる。また、上記のカチオン性合成高分子樹脂とポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の架橋性樹脂とを併用してもよい。
また、上記の電着性を有する合成高分子樹脂に粘着性を付与するために、ロジン系、テルペン系、石油樹脂等の粘着性付与樹脂を必要に応じて添加してもよい。
【0013】
このような電着性の合成高分子樹脂は、アルカリ性または酸性物質により中和して水に可溶化された状態、あるいは水分散状態で電着に供される。すなわち、アニオン性合成高分子樹脂は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類、アンモニア、苛性カリ等の無機アルカリで中和する。また、カチオン性合成高分子樹脂は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸等の酸で中和する。そして、中和された水可溶の高分子樹脂は、水分散型または溶解型として水に希釈された状態で使用される。
【0014】
本発明では、保護層5,15形成のための多層構造の樹脂層に施す炭化処理は、例えば、樹脂層の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲で行うことができる。このような炭化処理を施した多層構造の樹脂層は、構成する各樹脂層におけるピンホールや厚みムラの薄い部位が、積層される他の樹脂層により埋められ、炭素リッチで均一な保護層となる。このため、保護層5,15は全体として均一なものとなり、高い強度と優れた耐食性を発現する。上記の炭化処理の温度が(T+30)℃未満では、炭化処理の効果が十分に得られず、また、500℃を超えると、保護層の材料が脆くなったり、材料痩せや金属基体の焼なまし(軟化)が生じるので好ましくない。
尚、上記の材料の5%重量減少温度T(℃)とは、材料の熱重量分析において、室温(25℃)での重量に対する重量減少が5%に達した温度を意味する。ここで、熱重量分析は試料を窒素雰囲気中に置き、5℃/分の速度で昇温して測定する。以下においても同様である。
【0015】
また、本発明において、樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層とは、炭化処理によって炭素含有率が増大して緻密となり、硬度が向上した層を意味する。しかし、炭化処理前後の樹脂層と保護層における炭素含有量を分析的に測定することは困難である。このため、本発明では、炭化処理後に鉛筆硬度試験(JIS K 5401)により硬度を測定して、5H未満であった硬度が5H以上に向上している場合に、炭素リッチな層になっていると判断する。
樹脂層の炭化処理により形成された保護層5,15の厚みは、0.1〜100μm、好ましくは3〜30μmの範囲とすることができる。保護層5,15の厚みが0.1μm未満であると、ピンホール等の発生により、良好な耐食性が確保できないことがあり、100μmを超えると、乾燥固化後のヒビ割れ等の発生や、生産性の低下、コスト高といった問題が発生し好ましくない。
【0016】
保護層5,15に含有される導電材料としては、例えば、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等のカーボン素材、耐食性金属等が挙げられるが、耐酸性かつ導電性が所望のものが得られれば、これらの導電材料に限定されない。特に、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等の微細繊維状炭素材料は、保護層5,15に導電性を付与するために好適である。保護層5,15における導電材料の含有量は、保護層5,15に要求される導電性に応じて適宜設定することができ、例えば、30〜90重量%の範囲で設定することができる。
尚、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等の微細繊維状炭素材料は、ナノテクノロジーの素材として、複合材料、電子デバイス等の種々の分野に適用が期待されているものであり、これらをフィラーとして複合材料に用いた場合には、これらが有する物性を複合材料に付与することができる。例えば、カーボンナノチューブは、導電性、耐酸性、加工性、機械的強度等の面で優れており、フィラーとして複合材料に用いられた場合には、このようなカーボンナノチューブの優れた物性を複合材料に付与することができる。
上述の本発明のセパレータの実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
[セパレータの製造方法]
次に、本発明のセパレータの製造方法について説明する。
図3は、図1に示されるセパレータ1を例として本発明の製造方法を説明するための工程図である。本発明の製造方法では、まず、金属板材2′の両面にフォトリソグラフィーにより所望のパターンでレジスト7,7を形成し(図3(A))、このレジスト7,7をマスクとして両面から金属板材2′をエッチングして溝部3,3を形成する(図3(B))。その後、レジスト7,7を剥離して金属基体2を得る(図3(C))。
【0018】
次に、この金属基体2の両面に、電着性を有する各種アニオン性、またはカチオン性の合成高分子樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて電着により保護層を形成し、次いで、この保護層に炭化処理を施して炭素リッチな層とする工程を複数回繰り返し、保護層5を形成する(図3(D))。この電着による成膜と炭化処理とからなる工程の繰り返し回数は、形成する保護層5の厚み、樹脂材料、導電材料の含有量等を考慮して適宜設定することができ、例えば、2〜5回とすることができる。このように、複数回の成膜工程により多層構造の保護層5を形成するので、各層の成膜段階でピンホールや厚みの薄い部位が生じても、このような部位は他の層により埋められ、多層構造の保護層5全体として優れた耐食性を具備し、接続抵抗の低いものとなる。
また、本発明では、多層構造の樹脂層を成膜し、その後、炭化処理を施して保護層を形成してもよい。
【0019】
上述の炭化処理の温度は、樹脂層5の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲内で適宜設定することができる。このような炭化処理を施すことにより、ピンホールや厚みムラの薄い部位に膜が流動して均一なものとなり、高い強度と優れた耐食性を具備する保護層の形成が可能となる。上記の炭化処理の温度が(T+30)℃未満では、熱処理の効果が十分に得られず、また、500℃を超えると、保護層の材料が脆くなったり、材料痩せや金属基体の焼なまし(軟化)が生じるので好ましくない。
【0020】
図4は、図2に示されるセパレータ11を例として本発明の製造方法を説明するための工程図である。図4において、金属板材12′の両面にフォトリソグラフィーにより所望のパターンでレジスト17,17を形成する(図4(A))。このレジスト17,17は複数の開口部を有し、各開口部は金属板材12′を介して対向するように位置している。次いで、レジスト17,17をマスクとして両面から金属板材12′をエッチングして複数の貫通孔13を穿設する(図4(B))。その後、レジスト17,17を剥離して金属基体12を得る(図4(C))。
貫通孔13の形成は、上述のエッチングによる方法の他に、サンドブラスト法、レーザー加工法、ドリル加工法等により行うことも可能である。
次に、貫通孔13の内壁面を含む金属基体12に、保護層15を形成する(図4(D))。この保護層15の形成は、上述の保護層5の形成と同様に行うことができる。これにより、セパレータ11が得られる。
上述のセパレータの製造方法の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0021】
[本発明のセパレータを用いた燃料電池の例]
ここで、本発明のセパレータを用いた高分子電解質型燃料電池の一例を、図5〜図8を参照して説明する。図5は高分子電解質型燃料電池の構造を説明するための部分構成図であり、図6は高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図であり、図7および図8は、それぞれ高分子電解質型燃料電池のセパレータと膜電極複合体を離間させた状態を異なった方向から示す斜視図である。
図5〜図8において、高分子電解質型燃料電池21は、膜電極複合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)31とセパレータ41とからなる単位セルが複数個積層されたスタック構造を有している。
【0022】
MEA31は、図6に示されるように、高分子電解質膜32の一方の面に配設された触媒層33とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)34とからなる燃料極(水素極)35と、高分子電解質膜32の他方の面に配設された触媒層36とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)37とからなる空気極(酸素極)38を備えている。
セパレータ41は、一方の面に燃料ガス供給用溝部43aを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部44aを備えたセパレータ41Aと、一方の面に燃料ガス供給用溝部43aを備え、他方の面に冷却水用溝部44bを備えたセパレータ41Bと、一方の面に冷却水用溝部43bを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部44aを備えたセパレータ41Cとからなっている。このようなセパレータ41A,41B,41Cは、本発明のセパレータであり、その両面に、図1に示されるような保護層5が形成されているが、図示例では、省略している。
【0023】
各セパレータ41A,41B,41Cと上記の高分子電解質膜32の所定位置には、2個の燃料ガス供給孔45a,45b、2個の酸化剤ガス供給孔46a,46b、2個の冷却水供給孔47a,47bが貫通孔として形成されている。そして、セパレータ41Aの酸化剤ガス供給用溝部44aが形成されている面に、MEA31の空気極(酸素極)38が当接し、セパレータ41Bの燃料ガス供給用溝部43aが形成されている面に、MEA31の燃料極(水素極)35が当接するように、また、セパレータ41Bの冷却水用溝部44bが形成された面とセパレータ41Cの冷却水用溝部43bが形成された面とが当接するように、各セパレータ41A,41B,41Cと単位セルであるMEA31が積層され、この繰り返しで高分子電解質型燃料電池21が構成されている。このように積層された状態で、上記の2個の燃料ガス供給孔45a,45bはそれぞれ積層方向に貫通する燃料ガスの供給路を形成し、2個の酸化剤ガス供給孔46a,46bはそれぞれ積層方法に貫通する酸化剤ガスの供給路を形成し、2個の冷却水供給孔47a,47bはそれぞれ積層方向に貫通する冷却水の供給路を形成している。
【0024】
また、本発明のセパレータを用いた高分子電解質型燃料電池の他の例を、図9〜図11を参照して説明する。図9は高分子電解質型燃料電池の構造を説明するための平面図であり、図10は図9に示される高分子電解質型燃料電池のA−A線での縦断面図であり、図11は高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図である。
図9および図10に示されるように、高分子電解質型燃料電池51は、膜電極複合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)61とセパレータ71A,71Bとからなる単位セル52を平面状に複数個配列し、これらを電気的に直列に接続し、単位セルの個数分(図9では4個分)の電圧を取り出す高分子電解質型燃料電池である。また、各単位セル52の周りには、これと略同じ厚さの絶縁部55を設け、全体を平面状にしている。すなわち、平板状の絶縁部55のくり抜き部に単位セル52を嵌め込んだ状態とすることにより、単位セル52と絶縁部55とを平面状に設けているものである。
【0025】
この高分子電解質型燃料電池51は、絶縁部55のうち、隣接する単位セル間に位置する絶縁部55に、貫通してその表裏の接続を行うための表裏接続部57cを設けている。そして、この表裏接続部57cを、接続配線57aを介して、隣接する一方の単位セルのセパレータ71A(例えば、燃料極側セパレータ)に接続し、また、接続配線57bを介して、隣接する他方の単位セルのセパレータ71B(例えば、空気極側セパレータ)に接続している。これにより、隣接する単位セル間が電気的に直列に接続されている。そして、直列に接続された一方の端部に位置する単位セル52のセパレータ71Aと、他方の端部に位置する単位セル52のセパレータ71Bには、配線75,76が接続されている。
尚、図示例では単位セルの個数を4個としているが、単位セルの個数には制限はない。
【0026】
絶縁部55は、接続部57(接続配線57a,57bおよび表裏接続部57c)で接続される以外は、隣接する単位セル間を互いに絶縁するものである。このような絶縁部55の材質は、処理性、耐久性の面で優れたものであれば特に限定はされず、例えば、ガラスエポキシ、ポリイミド樹脂等が使用される。また、絶縁部55は、絶縁性材料のみからなるものでも、導電性材料を一部含むものでもよい。
接続部57の表裏接続部57cとしては、スルホール接続部、あるいは、充填ビア接続部、バンプ接続部のいずれかを、隣接する単位セル間に位置する絶縁部55中に設けたものとすることができる。これらの表裏接続部57cは、従来の配線基板技術の応用として形成できる。
【0027】
また、MEA61は、図11に示されるように、高分子電解質膜62の一方の面に配設された触媒層63とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)64とからなる燃料極(水素極)65と、高分子電解質膜62の他方の面に配設された触媒層66とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)67とからなる空気極(酸素極)68を備えている。
セパレータ71A,71Bは、図2に示されるような本発明のセパレータであり、複数の貫通孔を備えた金属基体に導電性の保護層を有するものである。
【実施例】
【0028】
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
金属板材として、厚み0.8mmのSUS304(80mm×80mm)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、このSUS304の両面に、感光材料(カゼインと重クロム酸アンモニウムとの混合物)をディップコート法により塗布して厚み7μmの塗膜を形成し、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により60秒間照射)、現像(40℃温水をスプレー)してレジストを形成した。
【0029】
次いで、上記のレジストを介してステンレス板の両面から70℃に加熱した塩化第二鉄溶液をスプレーして、所定の深さまでハーフエッチングを行った。その後、80℃の苛性ソーダ水溶液でレジストを剥離し、洗浄処理を施した。これにより、幅が1mm、深さが0.3mmのほぼ半円形状の断面を有し、振れ幅50mm、ピッチ2mmで蛇行した長さ1300mmの溝部を備えた金属基体を得た。
次に、金属基体に対して、40℃の塩酸水溶液(水9部に35%塩酸1部を添加)を用いて前処理を施し水洗した。
次いで、エポキシ電着液に、導電材料としてカーボンブラック(Cabot(株)製 Vulcan XC−72)を樹脂固形分に対して75重量%添加し分散させて、電着液とした。
【0030】
この電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで30秒間電着を行い、引き上げた金属基体を純水洗浄した。この操作を更に1回繰り返して2層構造の樹脂層を形成した。その後、ドライヤーで熱風乾燥(150℃、3分間)し、さらに、酸素雰囲気中で350℃、2時間の炭化処理を施した。これにより、金属基体を被覆するように厚み15μmの保護層が形成され、セパレータが得られた。
ここで、上記の樹脂層の材料の5%重量減少温度Tを、熱重量分析により測定(試料を窒素雰囲気中に置き、5℃/分の速度で昇温して測定)した結果、308.4℃であった。また、炭化処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであったが、炭化処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は5Hまで向上しており、炭素リッチであることが確認された。
【0031】
尚、使用したエポキシ電着液は下記のようにして調製した。
まず、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(エポキシ当量910)1000重量部を撹拌下に70℃に保ちながら、エチレングリコールモノエチルエーテル463重量部に溶解させ、さらに、ジエチルアミン80.3重量部を加えて100℃で2時間反応させてアミンエポキシ付加物(A)を調製した。
また、コロネートL(日本ポリウレタン(株)製 ジイソシアネート:NCO13%の不揮発分75重量%)875重量部にジブチル錫ラウレート0.05重量部を加え50℃に加熱し、これに2−エチルヘキサノール390重量部を添加し、その後、120℃で90分間反応させた。得られた反応生成物をエチレングリコールモノエチルエーテル130重量部で希釈した成分(B)を得た。
【0032】
次に、上記のアミンエポキシ付加物(A)1000重量部と成分(B)400重量部からなる混合物を、氷酢酸30重量部で中和した後、脱イオン水570重量部を用いて希釈し、不揮発分50重量%の樹脂Aを調製した。この樹脂A200.2重量部(樹脂成分86.3容量)、脱イオン水583.3重量部、およびジブチル錫ラウレート2.4重量部を配合してエポキシ電着液を調製した。
【0033】
作製した上記のセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を下記の方法で測定した結果、4.2mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
(電気抵抗の測定方法)
セパレータをガス拡散層(東レ(株)製 TGP−H−060 190μm厚)
で両側から挟み込み、さらに、これらを銅に金めっきを施した厚さ5mmの電極
で挟み込んで圧着(圧力:20kgf/cm2)し、電極間の抵抗を測定する。
【0034】
また、上記のセパレータについて、下記の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
(耐食性試験の条件)
5%の塩水に塩化第二銅(二水和物)0.027重量%を添加した噴霧試験液を
用い、噴霧槽内の温度を50℃としてキャス(CASS)試験を行い、1000
時間後に赤錆の発生が見られない場合を、耐食性が良好であるとする。
【0035】
[実施例2]
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
また、実施例1と同様にして電着液を調製した。
この電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで30秒間電着を行って樹脂層を形成し、引き上げた金属基体を純水洗浄した後、ドライヤーで熱風乾燥(150℃、3分間)し、さらに、酸素雰囲気中で350℃、2時間の炭化処理を施して炭素リッチな層を形成した。この操作を更に1回繰り返した。これにより、金属基体を被覆するように厚み15μmの2層構造の保護層が形成され、セパレータが得られた。
【0036】
ここで、炭化処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであったが、炭化処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は5Hまで向上しており、炭素リッチであることが確認された。
このように作製したセパレータについて、表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、5.4mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
【0037】
[実施例3]
金属板材として、80mm×80mm、厚み0.8mmのアルミニウム合金(A5052P)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、このアルミニウム合金の両面に、ドライフィルムレジスト(ニチゴー・モートン(株)製)をラミネートして35μm厚の感光性レジスト層を形成し、その後、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により15秒間照射)、現像(30℃の2%炭酸水素ナトリウム水溶液をスプレー)してレジストを形成した。
次いで、上記のレジストを介してアルミニウム合金の両面から45℃に加熱した塩化第二鉄水溶液をスプレーして、所定の深さまでハーフエッチングを行った。その後、50℃の5%炭酸水素ナトリウム水溶液でレジストを剥離し、洗浄処理を施した。これにより、幅が1mm、深さが0.3mmのほぼ半円形状の断面を有し、振れ幅50mm、ピッチ2mmで蛇行した長さ1300mmの溝部を備えた金属基体を得た。
【0038】
次に、上記の金属基体に対して、硝酸水溶液を用いて前処理(不動態膜除去)を施し、水洗した。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。
上記のように作製したセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、4.9mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
【0039】
[実施例4]
金属板材として、80mm×80mm、厚み0.8mmの銅合金(銅−クロム−錫合金)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、この銅合金の両面に、感光材料(カゼインと重クロム酸アンモニウムとの混合物)をディップコート法により塗布して厚み7μmの塗膜を形成し、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により60秒間照射)、現像(40℃温水をスプレー)してレジストを形成した。
【0040】
次いで、上記のレジストを介して銅合金の両面から70℃に加熱した塩化第二銅水溶液をスプレーして、所定の深さまでハーフエッチングを行った。その後、80℃の苛性ソーダ水溶液でレジストを剥離し、洗浄処理を施した。これにより、幅が1mm、深さが0.3mmのほぼ半円形状の断面を有し、振れ幅50mm、ピッチ2mmで蛇行した長さ1300mmの溝部を備えた金属基体を得た。
次に、金属基体に対して、50℃の硫酸(硫酸1部に水5部を添加)を用いて前処理を施し水洗した。
次いで、金属基体上に、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。
上記のように作製したセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、4.8mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
【0041】
[比較例1]
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。但し、実施例2の炭化処理の代わりに、酸素雰囲気中で310℃(樹脂層の材料の5%重量減少温度T)、2時間の加熱処理を施した。この加熱処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであり、加熱処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は4Hまで向上したものの、炭素リッチでないことが確認された。
このように作製されたセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、7.2mΩであり、実施例1〜4のセパレータに比べて電気抵抗が大きいものであった。
【0042】
[比較例2]
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。但し、実施例2の炭化処理の代わりに、酸素雰囲気中で550℃、2時間の炭化処理を施した。この炭化処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであったが、炭化処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は6Hまで向上しており、炭素リッチであることが確認された。
このように作製されたセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、5.2mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
しかし、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、600時間経過で赤錆が発生しており、実施例1〜4のセパレータに比べて耐食性が劣るものであった。
【0043】
[比較例3]
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
また、実施例1と同様にして電着液を調製した。
この電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで1分間電着を行って樹脂層を形成し、引き上げた金属基体を純水洗浄した後、ドライヤーで熱風乾燥(150℃、3分間)し、さらに、窒素雰囲気中で180℃、1時間の熱処理を施した。これにより、金属基体を被覆するように厚み15μmの保護層が形成され、セパレータが得られた。
【0044】
このように作製されたセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、8.4mΩであり、実施例1〜4のセパレータに比べて電気抵抗が大きいものであった。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、600時間経過で赤錆が発生しており、実施例1〜4のセパレータに比べて耐食性が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、固体高分子電解質膜の両側に電極を配した単位セルを複数個接続した燃料電池の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の燃料電池用のセパレータの一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】本発明の燃料電池用のセパレータの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図3】本発明のセパレータの製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図4】本発明のセパレータの製造方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
【図5】本発明のセパレータを使用した高分子電解質型燃料電池の一例を説明するための部分構成図である。
【図6】図5に示される高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図である。
【図7】図5に示される高分子電解質型燃料電池のセパレータと膜電極複合体を離間させた状態を示す斜視図である。
【図8】図5に示される高分子電解質型燃料電池のセパレータと膜電極複合体を離間させた状態を図7とは異なった方向から示す斜視図である。
【図9】本発明のセパレータを使用した高分子電解質型燃料電池の他の例を説明するための平面図である。
【図10】図9に示される高分子電解質型燃料電池のA−A線での縦断面図である。
【図11】図9に示される高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
1…セパレータ
2…金属基体
3…溝部
5…保護層
11…セパレータ
12…金属基体
13…貫通孔
15…保護層
21,51…高分子電解質型燃料電池
31,61…膜電極複合体(MEA)
41A,41B,41C,71A,71B…セパレータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基体と、該金属基体を被覆するように電着により形成された保護層とを備え、該保護層は樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であるとともに導電材料を含有することを特徴とする燃料電池用のセパレータ。
【請求項2】
前記金属基体は少なくとも一方の面に溝部を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項3】
前記金属基体は複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項4】
前記金属基体は、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金のいずれかからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項5】
前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項6】
電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成し、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成する工程、を複数回行って多層構造の保護層を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成する工程、を複数回行って多層構造の樹脂層を形成し、その後、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
前記炭化処理の温度は、前記樹脂層の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲内であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項1】
金属基体と、該金属基体を被覆するように電着により形成された保護層とを備え、該保護層は樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であるとともに導電材料を含有することを特徴とする燃料電池用のセパレータ。
【請求項2】
前記金属基体は少なくとも一方の面に溝部を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項3】
前記金属基体は複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項4】
前記金属基体は、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金のいずれかからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項5】
前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項6】
電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成し、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成する工程、を複数回行って多層構造の保護層を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成する工程、を複数回行って多層構造の樹脂層を形成し、その後、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
前記炭化処理の温度は、前記樹脂層の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲内であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−41269(P2008−41269A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209876(P2006−209876)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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