説明

燃料電池用の性能増強層

実施例は、1つ、またはそれ以上の電気伝導性材料およびバインダを有し、上記電気伝導性材料の少なくとも1つが粒子を含み、当該粒子が形態学的な異方性を有して当該層に異方性伝導性を付与するように配向される、燃料電池用性能像競争に関し、バインダは粒子を相互に接触させて位置づける。
【代表図】 図4A

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
燃料電池は、漸増する大規模用途、例えば、材料ハンドリング(例えばフォークリフト)、交通(例えば電気またはハイブリッド自動車)、およびオフグリッド電力源(例えば非常電力源または通信)のための電力源として採用できる。より小型の燃料電池は可搬型の消費者用途、例えば、ノートブックコンピュータ、セルラー電話、パーソナルデジタルアシスタンツ(PDA)、その他に向けて、現在開発されている。
【0002】
燃料電池は慣用的な燃料電池スタックの形態で結合して良い。多くの慣用的な燃料電池スタックはガス拡散層(GDL)を採用して1つのユニット電池の触媒層(例えばアノード)から電流を集めてこれを次のユニット電池の対向する触媒層(例えばカソード)に搬送する。多くの慣用的な燃料電池スタックにおいて、電流の流れの優勢な方向は燃料電池およびGDLの平面と直交する方向である。
【0003】
燃料電池は、端部集結構造、例えば平坦構造で、結合されても良い。そのような実施例においては、電子の流れの優勢な方向は、慣用的な燃料電池スタックにおける電子の流れの優勢な方向と異なって良い。慣用的な燃料電池スタックで用いられるGDLは端部集結燃料電池システムとともに使用されて最適ではないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0130527号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0168526号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0151847号明細書
【発明の開示】
【0005】
実施例は、1またはそれ以上の電子電導性材料を有し、これら電子伝導性材料の少なくとも1つが、形態学的に異方性を有して層およびバインダにおいて異方性伝導性を付与するように配向された粒子を含み、バインダが粒子を相互に接触するように位置づける、燃料電池用の性能増強層に関する。
【0006】
この発明の実施例は、電極コーティングを具備する燃料電池層ようの性能増強層を製造する方法に関し、この方法は、スラリーを生成するのに充分な、1またはそれ以上の電気電導性材料、バインダ、および溶媒を混合するステップ、湿潤なフィルムを生成するのに充分なスラリーを成型するステップ、浸潤なフィルムフィルムを完成させるのに充分なだけ湿潤なフィルムを乾燥するステップ、およびフィルムを燃料電池層にボンディングするステップを含む。
【0007】
実施例は、1つのイオン伝導性要素、および、2つまたはそれ以上の電子伝導性要素を含む複合体と、各々、イオン伝導性要素とイオン性接触を行い電子伝導性要素の少なくとも1つと電気的に接触する、2つの電極コーティングと、性能増強層とを含み、当該電極コーティングの各々は内側表面および外側表面を有し、当該性能増強層は、電極コーティングのうちの1つとその1つの表面で接触するように配置され、または近接して配置される、燃料電池に関する。当該層は、関連する電子伝導性要素への、または、それからの、電気伝導性経路を実現する。
【0008】
添付の実施例はこの発明の非制約的な事例の実施例を図説する。図面において、同様の番号は類似の要素を記述するけれども、必ずしも同一である必要はない。異なるサフィックス文字を伴う同様の番号は類似の要素の異なる例を表すけれども、同一である必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】慣用的な燃料電池スタックの断面模式図である。
【図1A】図1の慣用的な燃料電池スタックの従来のユニット燃料電池の拡大模式図である。
【図2A】第1の例の平面燃料電池層の断面図である。
【図2B】第1の例の平面燃料電池層の断面図である。
【図3】図2の事例的な平面燃料電池層の事例的なユニット燃料電池の断面星傷である。
【図4A】事例の実施例に従う、性能増強層(PEL)を具備する事例の平面燃料電池層の断面図である。
【図4B】第2の事例の実施例に従う、PELを具備する事例の平面燃料電池層の断面図である。
【図4C】第3の事例の実施例に従う、PELを具備する事例の平面燃料電池層の断面図である。
【図5A】事例の平面燃料電池における電子の流れの断面模式図である。
【図5B】事例の実施例に従う、PELを具備する、事例の平面燃料電池における電子の流れの断面模式図である。
【図6】第4の事例の実施例に従う、PELを具備する事例の平面燃料電池層の断面図である。
【図7】事例の実施例に従う、PELを具備する燃料電池層を準備する方法のプロセスブロック図である。
【図8】PELを具備しない燃料電池層、および、事例の実施例に従う、PELを具備する燃料電池層の性能を示すグラフである。
【図9】事例の実施例に従う、PELを具備する燃料電池層の頂部を示す図である。
【図10】具体的な事例の実施例に従い準備されたPELフィルムから切り出した試片に対する、抵抗・対・角度および伝導性・対・角度のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、具体的な詳細はこの発明の理解をより確実にするために提示される。しかしながら、この発明はこのような詳細を伴うことなく実施できる。他の例においては、この発明が不必要に不明瞭にならないようにするために周知の事柄は示されないし、説明されない。図は、理解を助けるために、この発明が実施できる具体的な実施例を示す。この発明の趣旨を逸脱することなく、これら実施例は組み合わされて良く、他の要素または構造上、または論理状の修正を行って良い。したがって、明細書および図面は説明のためのものであり、制約的でないものとして理解されなくてはならない。
【0011】
この文書において参照されている文献、特許、および特許文書は、個々に参照してここに組み入れているけれども、ここで、すべて参照して組み入れることとする。当該文書とそれら文書との間で一貫性のない用例がある場合には、それら組み入れられた文書中の用例は当該文書の用例を補充するものと理解すべきであり、調整ができない場合には当該文書の用例が採用される。
【0012】
当該文書においては、用語「1」が用いられる場合には、特許文献で通常のように、1または1より大きな場合を含み、これは任意の他の事例、または「少なくとも1つ」や「1または複数」の用例とは別である。当該文書においては、用語「または」は、そうでないと示される場合を除いて、非排他的なものを指すものとして用いられ、例えば、「A、B、またはC」は「A」のみ、「B」のみ、「C」のみ、「AおよびB」、「BおよびC」、「AおよびC」、および「A、BおよびC」を含む。
【0013】
添付の側面およびいずれの請求項においても、用語「第1」、「第2」、および「第3」等は単にラベルとして採用され、それらの対象の数的な要求を課すものでないことに留意されたい。
【0014】
端部集結燃料電池用の性能増強層(PEL)がここに実現される。PELは、1つのユニット燃料電池における電極コーティングから電流コレクタ(または電子伝導性要素)へ、次のユニット電池の反対側の電極コーティングへの電流の流れのための経路を実現する。PELは、異方性伝導性を有して良い。PELは粒子を具備する電気伝導性材料を含む。粒子は形態学的な異方性を有し、性能増強層において大きな平面内伝導性を付与するように配向されてよい。PELおよびPELを含む燃料電池層を準備する方法も提供される。
【0015】
この発明の実施例は、プロトン交換膜(PEM)燃料電池、またはPEM燃料電池の部品として説明される。しかしながら、実施例は、他のタイプの燃料電池、例えば、アルカリ燃料電池または固体酸化燃料電池において実施できる。実施例は、他のタイプの電気化学電池、例えば、電解槽または塩素アルカリ電池にも適用できる。
【0016】
いくつかの実施例に従う燃料電池システムは、種々の用途の給電源として採用されて良い。例えば、燃料電池システムは、可搬型の消費者用途の装置、例えば、ノートブックコンピュータ、セルラー電話、またはPDAを給電するのに採用されて良い。しかしながら、この発明は携帯型のアプリケーションに制約されるものではなく、実施例は、大規模用途、例えば、材料ハンドリングアプリケーション、交通アプリケーション、およびオフグリッド電力源、または他のより小型のアプリケーションに給電するのにも実施できる。
【0017】
この発明の実施例は異なる設計の種々の燃料電池とともに実施できる。いくつかの端部集結燃料電池の実施がここで説明され、これは一般的には平面層からなる。ただし、代替的には、同一または他の実施例を他の端部集結燃料電池とともに採用して良く、これは存在していても、したいなくても良い。参照を容易にするために、ここでの説明を通じて、そのような端部集結燃料電池および関連技術は「平面」(planar)燃料電池、「平面」燃料電池システム、または「平面」燃料電池層と呼ばれる。しかしながら、いくつかの実施例において、そのような燃料電池は、この発明とともに実施するために平面でなくてよいことに留意されたい。例えば、ユニット燃料電池のすべてが同一平面に横たわらないかもしれない(例えば、それらは柔軟性があり、螺旋状であり、筒状であり、または波状であってよい)。他の例において、ユニット燃料電池のすべてまたは一部が同一平面に横たわってよい。
【0018】
[定義]
ここで使用されるように、「複合層」または「複合体」は、厚さを伴う少なくとも2つの表面を含む層であって、1または複数のイオン伝導性の通路および1または複数の電気伝導性通路がそれら表面の間に設けられているものを指す。複合体のイオン伝導性および電気伝導性は、イオン伝導性通路および電気伝導性通路を異なる寸法、形状、密度、または配列で設けることにより、当該複合体の異なる領域で変化されてよい。複合層は1または複数のインターフェース領域を含んでよい。複合層は、流体、または具体的なタイプの流体(例えば気体または液体)に対して非透過性であってよい。いくつかの実施例において、層は、いくつかの流体には実質的に非透過性であり、他には透過性であってよい。例えば、層は、燃料から加えられるガス圧には実質的に非透過性であり、それでいて、水は、イオン伝導性要素に渡って浸入することができる。
【0019】
ここで使用されるように、「電子伝導性要素」は電気的な伝導性通路を形成する複合層の要素を指す。電子伝導性要素は、電気的に伝導性の材料、たとえば、金属、金属フォーム、炭素質材料、電気伝導性セラミック、電気伝導性ポリマー、これらの組み合わせ等の1つまたは複数を含む。電子伝導性要素は電気伝導性でない材料を含んでも良い。電子伝導性要素はここでは「電流伝導性要素」または「電流コレクタ」も指すことがある。
【0020】
ここで使用されるように、「イオン伝導性要素」はイオン伝導性通路を形成する要素を指す。イオン伝導性要素は複合体の要素であってよい。イオン伝導性要素はイオン伝導性材料、例えば、フルオロポリマー基礎のイオン伝導性材料、または炭化水素基礎の伝導性材料を含む。イオン伝導性要素は「電解質」または「電解質膜」とも呼ばれる。
【0021】
ここで使用されるように、「インターフェース領域」は、電気的に伝導性でない、複合層の要素を指す。インターフェース領域は、例えば、無視可能なイオン伝導性および無視可能な電気伝導性を有する材料を含んで良い。インターフェース領域は電子伝導性領域と件連付けて用いられて電流コネクタを形成してよく、この場合、インターフェース領域は電子伝導性領域に隣接して電子伝導性領域の一方の側または両側に被着される。電子伝導性領域はインターフェース領域中に埋め込まれて電流コレクタを形成して良い。インターフェース領域は電流コレクタにおいてオプションの要素であり、必須の要素でないことに留意されたい。電流コレクタの要素として使用されるときには、インターフェース領域は、電子伝導性領域およびイオン伝導性領域の間の接着性を向上させるために使用でき、および/または、隣接電気化学電池の間の電気絶縁を実現するのに使用できる。
【0022】
ここで使用されるように、「粒子」は材料の部分、ピース、フラグメントを指す。例えば、電気伝導性粒子は電気化学層の繊維、フレーク、フラグメント、または非連続な部分を含んでよい。
【0023】
ここで使用されるように、「平面」(plane)は、既知拡張および空間方向または位置を伴う2次元仮想表面を指す。例えば、矩形ブロックは、相互に直交する、1つの垂直の平面および2つの水平な平面を具備して良い。平面は相互との関係で、例えば、90°より大きな、または小さな角度を用いて定義されて良い。
【0024】
ここで使用されるように、「燃料」は、燃料電池における燃料として使用して好適な任意の材料を指す。燃料の例は、これに限定されないけれども、水素、メタノール、エタノール、ブタン、水素化ホウ素化合物、例えば、水素化ホウ素ナトリウムまたはカリウム、蟻酸、アンモニア、およびアンモニア誘導体、例えば、アミンおよびヒドラジン、金属錯体水素化物化合物、例えば、アルミニウム水素化ホウ素、ボラン例えばジボラン、炭化水素、例えば、シクロヘキサン、カルバゾール、例えば、ドデカヒドロ−n−エチルカルバゾール、および他の飽和環状、多環式炭化水素、飽和アミノボラン、例えば、シクロトリボラザンを含んでよい。
【0025】
慣用的な従来の燃料電池スタック10は図1に示される。燃料電池スタック10は個々の燃料電池20を具備し、これらは直列に配置される。燃料電池20は例えばプロトン交換膜(PEM)燃料電池を含んで良い。燃料電池スタック10はマニホールド(図示しない)を有し、このマニホールドに燃料、例えば水素ガス、および、酸化剤、例えば空気または酸素が案内される。
【0026】
燃料および酸化剤は、ユニポーラプレート11およびバイポーラプレート12を介してユニット燃料電池20へ移動し、これらは流れチャネル22および陸部24を具備する。燃料はバイポーラプレート12A中の流れチャネル22から多孔性の電流搬送層またはガス拡散層(GDL)14Aを介してアノード触媒層16Aへと移動する。アノード触媒層16Aにおいて、燃料は化学反応を経験して自由電子および正帯電イオン(典型的にはプロトン)を生成する。自由電子はGDL14Aによって集められ、バイポーラプレート12Aを通過して次のユニット燃料電池のGDL14Cへと進む。イオンは電子絶縁性のイオン交換膜18を通じて反対方向へ移動する。イオン交換膜18はアノード触媒層16Aおよびカソード触媒層16Cの間に横たわる。
【0027】
図1Aは、図1の慣用的な燃料電池スタック10のユニット燃料電池20の断面模式図である。燃料電池20において、電子はアノード触媒層16Aの化学反応サイトからGDL14Aへと移動する。プロトン(または他の正に帯電したイオン)はイオン交換膜18を入り、この中を電子の流れる方向と逆の方向に流れていく。GDL14Aにおいて回収された電子はバイポーラプレート12Aの陸部24を通じて次のユニット電池のGDL14Cへと移動する。そのような燃料電池において、電子の流れ、および、イオンの流れは一般的には逆方向であり、両者は、イオン交換膜18、GDL14および触媒層16の平面に対して実質的に直交である。
【0028】
触媒層16Cにおいて、プロトンおよび負帯電の酸素イオンが結合して水を形成する。生成された水はGDL14Cに残り、あるいはイオン交換膜18に吸収されて、バイポーラプレート12Cの流れチャネル22へと移動し、または、これらが組合わさる。
【0029】
GDL14は、電子をバイポーラから触媒層に案内し、またはその逆に案内するので、GDL14はしばしば大きな平面内伝導性を必要とし、例えば、燃料電池およびGDLの平面に直交する方向に電気伝導性を必要とする。
【0030】
典型的には、燃料電池スタックに圧縮力が加えられて燃料および酸化剤の漏洩を防止し、触媒層、GDL、およびバイポーラプレートの間の接触抵抗を減少させる。具体的には、多くの燃料電池スタックは、GDLおよびバイポーラプレートの間の良好な電気接触を実現するために圧縮力を必要とする。燃料電池スタックは、そのために、多くの部品(例えばクランプ)を必要とし、組立が極めて複雑になる。
【0031】
図2Aおよび2Bは、第1例の平面燃料電池層100および第2例の平面燃料電池110の断面図を示し、これらは本出願人の出願に係る米国特許第11/047,560号および特許協力条約出願第CA2009/000253号に説明され、これらの名称はそれぞれ、「電気化学反応層の下に設けた電流搬送構造を具備する電気化学電池」および「電気化学電池およびこれに関連する膜」である。事例の平面燃料電池層100、110は複合層124、124'を有し、これがイオン伝導性要素118、118'、および電子伝導性要素112、112'を具備する。オプションとして、複合体124、124'はインターフェースまたは基体領域122、122'を具備しても良い。インターフェースまたは基体領域122、122'は、電気的かつイオン的絶縁性を有する材料を含む。燃料電池層100、110は、2つのタイプの電極コーティング、すなわち、カソードコーティング116C、116C'、およびアノードコーティング116A、116A'を具備する。カソードコーティング116C、116C'は複合層124、124'の第1の側に配され、複合層124、124'の第1の表面に接着される。アノードコーティング116A、116A'は複合層124、124'の第2の側に配され、複合層124、124'の第2の表面に接着される。カソードコーティング116C、116C'およびアノードコーティング116A、116A'はギャップまたは誘電体領域120、120'によって相互に分離される。
【0032】
図3は、事例の平面燃料電池層100のユニット燃料電池140の断面模式図である。図示の実施例において、燃料および酸化剤はそれぞれ水素および酸素である。ただし、この発明の実施例は燃料および酸化剤の他の組み合わせを採用した燃料電池とともに採用されてよいことに留意されたい。水素はアノードコーティング116Aに接触し、プロトンおよび電子に分解する。電子は、アノードコーティング116Aの平面と主に平行な方向にアノードコーティング116Aを通じて移動し、電子伝導性要素112Bに入りこれを通じて移動し、この電子伝導性要素112Bは次のユニット電池と共有される。プロトンは、アノードコーティング116A内の化学反応サイトから移動し、アノードコーティング116Aを通じて電子が移動する方向と実質的に直交する方向に移動する。電子伝導性要素112bにおいて収集された電子は次のユニット電池のカソードコーティングへと移動していく。電子は電子伝導性要素112aからカソードコーティングを通じて、カソードコーティング116Cの平面と主に平行な方向に移動する。酸素はカソードコーティング116Cと接触し、化学反応サイトへと移動する。酸素は還元され、その結果、水が生成され、これはカソードコーティング116Cから出て、または、そこに残る。
【0033】
いくつかの端部集結燃料電池層では、電極コーティングまたは他の層が、当該コーティングの平面に平行な方向(例えば、多くの慣用的な燃料電池と同様に、コーティングの平面と直角な方向と逆に)に対して良好な電気伝導性を伴うことが好ましいであろう。いくつかの端部集結燃料電池層は非常に小さな個々の燃料電池を採用して電子の流れが移動する距離を小さくし、これにより、オーム損失を最小化する。いくつかの端部集結燃料電池の電極コーティングは、電気化学作用に必要なものより大きい、触媒充填を伴う。そのような端部集結燃料電池では、触媒は、電流を案内すると共に電気化学反の触媒作用を起こすために利用される。いくつかの端部集結燃料電池層では、電極コーティングはクラックを生じやすく、これはコーティングの平面の電気抵抗を増大させる。いくつかの端部集結燃料電池の電極コーティングは伝導性が大きな材料を採用して電極コーティングの電気伝導性を大きくし、これは本出願人の出願に係る「改良された伝導性を伴う触媒層を具備する平面燃料電池」という名称の米国特許出願第12/275,020号に説明され、その内容は参照してここに組み入れる。この発明の実施例は、電極コーティングの平面に平行に良好な伝導性を有する電気経路を利用する燃料電池層を説明する。
【0034】
図4Aは、事例の実施例に従う性能増強層を具備する平面燃料電池層の断面図である。平面燃料電池層150は、イオン伝導性要素118および電子伝導性要素112を具備する複合層124を含む。オプションとして複合層124はインターフェース領域122を具備しても良い。カソードコーティング116Cは複合体124の第1の側に配置され複合体124の第1の表面に接着される。アノードコーティング116Aは複合体124の第2の側に配置され複合体124の第2の表面に接着される。カソードコーティング116Cおよびアノードコーティング116Aは各々ギャップまたは誘電体領域120によって分離される。
【0035】
平面燃料電池層150は1またはそれ以上のユニット燃料電池140を具備する。理解できるように、燃料電池層として組み立てられると、ユニット電池において、カソードコーティングは関連するイオン伝導性要素の第1の表面に配され、実質的に当該イオン伝導性要素と同一領域まで伸びる。アノードコーティングは関連するイオン伝導性要素の第2の表面に配され、実質的に当該イオン伝導性要素と同一領域まで伸びる。カソードコーティングおよびアノードコーティングの双方はイオン伝導性要素とイオン的に接触し、電子伝導性要素の1つに電気接触する。ユニット電池のカソードコーティングは第1の電子伝導性要素を実質的にカバーするように伸び、アノードコーティングは第2の電子伝導性要素を実質的にカバーするように伸びる。図示の例では、ユニット電池は直列に接続される。しかしながら、ユニット電池は、代替的には、並列にも、直列・並列の組み合わせの態様でも接続されて良い。
【0036】
平面燃料電池層150は性能増強層(PEL)152Cおよび152Aを具備する。カソードPEL152Cはカソードコーティング116Cの外側に配されカソードコーティング116Cの外側表面に接着される。アノードPEL152Aはアノードコーティング116Aの外側に配されアノードコーティング116Aの外側表面に接着される。カソードPEL152CおよびアノードPEL152Aは各々ギャップまたは誘電体領域120によって分離される。ここでの説明を通して、用語「外側」および「内側」は、複合体またはイオン伝導性要素の中心を基準にして、それぞれ、より離れている方向、より近い方向を指すために用いられる。イオン伝導性要素は説明を容易にするために矩形のものとして示されているけれども、いくつかの実施例において、イオン伝導性要素は被規則的な形状を有し、凹または凸の表面を具備し、あるいは燃料電池層の中央を基準にして非対称に配されて良いことは、本発明者の理解し、意図するところである。さらに、イオン伝導性要素(および電子伝導性要素)のそのような潜在的な非対称性は、本出願人の出願に係る、「燃料電池および非対称性構造を具備する燃料電池要素ならびにその方法」という名称の米国特許出願第61/290,448号、および、その優先権を主張する関連出願において見いだすことができ、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0037】
ここでの記述を通じて、用語「性能増強」層は採用される。しかしながら、性能増強層は燃料電池層の電気性能を改善する必要がないことに留意されたい。PELを含む燃料電池層は、PELを伴わない燃料電池層に対して、以下の性能改善の1または複数を発揮して良い。すなわち、改善された電気性能、コストの低減;製造の大幅な容易化;劣化率の低減(改善された寿命性能);性能ばらつきの低減、または、より大きな環境条件に渡る性能上の満足度;および環境汚染(例えば窒素酸化物、硫黄酸化物、炭素酸化物、その他)への耐性の改善である。
【0038】
PELは、電極コーティングの反応サイトと、関連する電子伝導性要素との間の電気経路を増強する。PELを伴う燃料電池層では、電極コーティングの厚さをより薄くでき、このため触媒充填量を減少でき、よい経費効率を増強できる。PELを伴う燃料電池層では、電気抵抗を小さくでき、そのため、PELを伴わない燃料電池層にくらべて良好な性能を発揮できる。
【0039】
図示の実施例において、カソードPEL152CおよびアノードPEL152Aは実質的にカソードコーティング116Cおよびアノードコーティング116Aとそれぞれ同一の広がりを有する。しかしながら、カソードPEL152CおよびアノードPEL152Aは関連する電極コーティングと同一の広がりを有しなくとも良い。いくつかの実施例において、PELは電極領域の全体まで広がらず、その表面面積は関連する電極コーティングの表面面積より小さい。他の実施例において、PELは電極領域の全体を覆って広がり、その表面面積は関連する電極コーティングの表面面積より大きい。
【0040】
図4Bは、第2の例の実施例に従う、PELを伴う事例の燃料電池層の断面図である。平面燃料電池層160は、カソードコーティング117Cおよびアノードコーティング117Aを具備する。図示の実施例において、カソードコーティング117Cおよびアノードコーティング117Aは関連するイオン伝導性要素118と実質的に同一の広がりを有し、関連する電子伝導性要素112とはまったく、またはほとんど物理的に接触しない。平面燃料電池層160はカソードPEL154CおよびアノードPEL154Aを具備する。図示の実施例において、カソードPEL154CおよびアノードPEL154Aの各々は関連する電極コーティング117の外側表面の実質的にすべて、また関連する電子伝導性要素112の外側表面の実質的にすべてを覆うように伸びる。カソードPEL154Cはカソードコーティング117Cおよび関連する電子伝導性要素112の間の電気接続を実現する。アノードPEL154Aはアノードコーティング117Aおよび関連する電子伝導性要素112の間の電気接続を実現する。
【0041】
燃料電池層160では、図説の実施例のPELを伴うので、電極コーティングの厚さがまたは面積が小さくなり、したがって、触媒充填が小さくなる。この結果、図説の実施例のPELによれば、平面燃料電池層の経費効率をより良好にすることとなる。これに加えて、あるいは、代替的に、PELを伴う燃料電池層では、電気抵抗が小さくなり、このため、性能が大きくなる。PELを伴う燃料電池層の準備方法では、触媒が燃料電池層の電子伝導性要素を被覆する必要がないので、PELを伴わない燃料電池層に較べて精密性が要請されない。
【0042】
図4Cは、第3の例の実施例に従う、PELを伴う事例の燃料電池層の断面図である。平面燃料電池層170は、カソードコーティング116C'およびアノードコーティング116A'を具備する。図示の実施例において、カソードコーティング116C'およびアノードコーティング116A'は関連するイオン伝導性要素118'と実質的に同一の広がりを有し、関連する電子伝導性要素112の少なくとも一部を被覆するように広がる。燃料電池層はカソードPEL156CおよびアノードPEL156Aを具備する。カソードPEL156CおよびアノードPEL156Aは、各々、関連する電極コーティング116'の一部を被覆するように伸びる。図示の実施例において、PEL156の表面面積は関連する電極コーティング116'の表面面積より小さい。図説の実施例のPELを伴う燃料電池層では、PELを伴わない燃料電池層に較べて、個々の電極コーティングの電気絶縁を簡便にできる。この結果、PEL157を伴う燃料電池層は準備するのがより簡便になる。
【0043】
PELは種々の材料を含んで良く、また、燃料電池層において、種々の異なる機能または目的のうちの1つまたは複数を達成してよい。PELは、触媒充填を削減した電極コーティングを可能にすることによりコストを低減できる。これに加えて、または代替的に、PELはユニット田地内の電気伝導性を改善し、これにより、燃料電池層の抵抗損失を減少させることができる。
【0044】
PELは大木の異なる態様で電気伝導性を改善して良い。例えば、PELは電極コーティングにおけるクラック間の橋渡しをおこなってよい。図5Aおよび図5BはPELと伴わない事例の平面燃料電池のユニット燃料電池180、事例の実施例に従う、PELを伴う平面燃料電池のユニット電池185のそれぞれの断面模式図である。燃料電池180、185は、各々、カソードコーティング176C、186Cおよびアノードコーティング176A、186Aを具備する。カソードコーティング176C、186Cおよびアノードコーティング176A、186Aは各々クラック126を具備する。燃料電池185はカソードPEL188CおよびアノードPEL188Aを具備する。
【0045】
燃料電池180、185では先行するユニット電池からの電子が電子伝導性要素を通じてカソードコーティング176C、186Cに入る。燃料電池180のカソードコーティング176Cでは、電子は曲がりくねった経路と取って反応サイトに至る。アノードコーティング176Aにおいて、電子は、反応サイトから電子伝導性要素へ至る、曲がりくねった経路と取る。しかしながら、クラック126'がアノードコーティング176Aの厚さ全体に渡って伸びているので、電子は電子伝導性要素に到達できず、燃料電池180は作用しない。
【0046】
燃料電池185のカソードコーティング186Cでは、電子は、カソードコーティング186Cの厚さを通じ、PEL188Cの平面と平行な方向にPEL188Cを通じ、さらに、再び、触媒コーティング186Cの厚さを通じて移動することにより、反応サイトに到着する。アノード側で、電子は類似の経路をとる。電極コーティングがクラックを伴う事例の平面燃料電池において、PELは電極コーティング内のクラックを超える架橋を形成することにより伝導性を改善できる。そのような燃料電池、すなわち、触媒充填が減少した電極を伴う燃料電池では、PELが付加的な電気伝導性経路を付与して電圧損失を減少させることができる。
【0047】
PELは電気的に伝導性であり、多くの実施例において、PELは大きな面内電気伝導性を伴う。いくつかの実施例において、PELは電気的に異方性を伴い、例えば、それらは、1またはそれ以上の方向で1またはそれ以上の他の方向に較べて大きくなる電気伝導性を発現する。いくつかの実施例において、PELは、PELの面内の1またはそれ以上の方向で、PELの平面と直角な方向の電気伝導性より大きな電気伝導性を伴う。いくつかの事例の実施例において、PELは、PELの平面内の第1の方向で、PELの平面と直角な第2の方向、および、PELの平面内の第3の方向の双方の電気伝導性より大きな電気伝導性を伴う。第3の方向は、第1の方向と直交で良く、また、第1の方向から他の角度だけ方位付けられていて良い。具体的な例の実施例では、PELは、1つの電子伝導性要素から次の電子伝導性要素へ伸びる方向、および、その逆に伸びる方向に最も大きな電気伝導性を伴う。
【0048】
PELは、種々の電気伝導性材料を含んで良い。PELは、腐食抵抗性である1またはそれ以上の電気伝導性材料を含んで良い。例えば、PELは、カーボンブラック、グラファイト、カーボン繊維、カーボンフォーム、カーボンフレーク、カーボンナノチューブ、カーボン針、非晶質カーボンのような炭素を含んでよい。PELは、付加的に、または代替的に、貴金属、腐食抵抗性金属または金属合金、および伝導性ポリマー(例えば(ポリアニリン)のような他の電気伝導性材料を含んで良い。
【0049】
電気伝導性材料はPELの不連続な粒子または部分、例えば、フラグメント、フレークまたは繊維を含んで良い。いくつかの実施例において、電気伝導性材料は形態学的に異方性がある粒子を含む。例えば、電子伝導性材料は、形態学的に異方性がある、カーボン粒子、例えばカーボン繊維を含んで良い。電気伝導性材料は短いカーボン繊維(例えばユニット燃料電池の長さより小さな大きさのオーダーの平均長を伴う繊維)または長いカーボン繊維(例えばユニット燃料電池の長さと同じ大きさのオーダーの平均長を伴う繊維)を含んで良い。1の例の実施例では、繊維はイオン伝導性要素の厚さより短い。そのような実施例は繊維がイオン伝導性要素中へ侵入することにより起こされる電気ショートの発生を回避できる。
【0050】
いくつかの実施例において、電気伝導性材料の異方性粒子は、PEL中に異方性(例えば電気または熱の伝導性の異方性)を付与するように配向される。事例の実施例において、異方性粒子は、好ましい方位に剪断応力を加えることにより、配向される。そのような実施例は、異方性粒子を含むスラリーを引き出すことにより準備され、結果物のPEL中の異方性粒子は引き出した方向に整合される。他の実施例では、電気伝導性材料中の異方性の利点を有する。そのような実施例では、電気伝導性材料は織物または非織物のカーボン繊維の形態でカーボン繊維を含む。
【0051】
いくつかの実施例において、PELは強固または堅固であってよく、あるいは強固または堅固な材料を含んで良い。そのような実施例では、PELをイオン伝導性要素の支持体を構成できる。他の実施例において、PELは柔らかく、または弾力性があって良い。いくつかの実施例において、PELは柔軟性があり、柔軟な、または屈曲可能な燃料電池層、例えば、本出願人の出願に係る、「屈曲可能な燃料電池により電力供給されるデバイス」という名称の米国特許第7,474,075号、または、それぞれ、「外部サポートを伴う柔軟な燃料電池構造」および「省スペース流体プレナムを含む燃料電池システムおよび関連方法」という名称の米国特許出願第11/327,516号、および同第12/238,241号に説明される燃料電池層と共に用いて良い。1つの事例の実施例において、PELは、燃料電池の通常の動作において存在する応力または歪みが加えられたときに、弾力的であってよい。
【0052】
PELは異方性ある弾力性を伴っても良く、例えば、PELは1またはそれ以上の方向で、1またはそれ以上の他の方向に較べて大きな弾力性を伴って良い。いくつかの実施例において、PELは、PELの平面内の1またはその以上の方向で、PELの平面に直角な方向の弾力性に較べて大きな弾力性を有する。いくつかの事例の実施例において、PELは、PELの平面内の第1の方向で、PELの平面と直角な第2の方向、および、PELの平面内の第3の方向の双方の弾力性より大きな弾力性を伴う。第3の方向は、第1の方向と直交で良く、また、第1の方向から他の角度だけ方位付けられていて良い。具体的な例の実施例では、PELは、1つの電子伝導性要素から次の電子伝導性要素へ伸びる方向、および、その逆に伸びる方向に最も大きな弾力性を伴う。
【0053】
いくつかの実施例において、PELは電極コーティング中にクラックが形成されるのを防ぎ、または減少させることにより電圧損失を減少させて良い。燃料電池の通常の動作の間、イオン伝導性要素は、水を吸収して拡大することになる。そのような実施例において、PELをイオン伝導性要素の拡張を減少させて良く、あるいは、そのような拡張が電極コーティングに付与する応力を減少させて良い。例えば、PELが堅固であれば、あるいは部分的に堅固であれば、PELはイオン伝導性要素の変形を減少させることができる。
【0054】
PELはバインダまたは母材として機能する材料を含んでよい。いくつかの実施例において、バインダまたは母材として機能する材料は触媒層への接着を容易にする材料であって良い。バインダ材料は、電気伝導性粒子を一緒に保持するように働き、または電気伝導性材料を電極コーティングに結合するように働き、あるいはその両方として働いて良い。バインダ材料は、付加的な役割、例えば、燃料電池層中の熱や水を管理する役割を有して良い。バインダ材料は、電極コーティング、電子伝導性材料、またはイオン伝導性材料と良く結合して良い。バインダ材料は化学的に負活性または腐食に対して抵抗性を有して良い。バインダ材料は変形可能、水に対して不溶性、または、燃料の存在下で安定であってよい。例えば、PELは、熱可塑性または熱硬化性のポリマーのようなプラスチックであるバインダ材料を含んで良い。例えば、PELは、以下のうちの1つまたはそれ以上を含んで良い。すなわち、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびペルフルオロスルホン酸(例えば、E.I.DuPont de Nemours and Companyから入手できるNafion(商標)フルオロスルホン酸)のようなフルオロポリマー;非フッ素化アイオノマー;ポリエチレン、およびポリプロピレンのような非フッ素化熱可塑性材料;またはポリウレタンである。
【0055】
いくつかの実施例において、触媒層が、当該触媒層を、電気連続性を完全に破壊すること無しにより変形可能にするバインダを含んで良い。これらバインダは、触媒層およびPELの間の結合も増強させ、よい頑強な燃料電池層を実現して良い。そのようなバインダ材料は、例えば、プラスチックまたは伝導性プラスチックである。例えば、Nofionのようなアイオノマー分散剤を触媒層用のバインダとして利用して良い。他の適切なバインダ材料はポリテトラフルオロエチレン(例えばTeflon、商標)、ポリプロピレン、または、他の相対的に負活性な、触媒層の弾性を増強させることが可能な添加剤を含んで良い。
【0056】
平面燃料電池の触媒層は、クラックが生じるのを防ぐ手段、または当該層を通じて電気的非連続性が生成されるのを防ぐ手段を採用して良い。例えば、触媒層は伝導性材料から製造されたマイクロ構造または伝導性材料でコーティングされた非伝導性構造を採用して良い。そのようなマイクロ構造は長くて薄くて良く、全体の寸法は材料を包囲する流れ、例えば、反応剤および副産物を邪魔しない程度であり、ここでは、「クラック架橋」マイクロ構造と呼んで良い。潜在的なクラック架橋マイクロ構造の例は、様々の種類のカーボン繊維、カーボンナノチューブ、プラスチックまたはセラミック繊維上に配される伝導性材料(例えば白金、金)を含む。
【0057】
触媒層は、「クラックピニング」(クラックピン止め)マイクロ構造も採用して良く、ここで、触媒層中のクラックの伝播が、触媒層中に構造強化剤を付加することにより阻止される。そのようなマイクロ構造は、電気伝導性であってもなくても良い。クラックピン止めマイクロ構造の例は、例えば、イオン伝導性要素または触媒層を汚染しない不活性材料を含んで良く、比較的非弾性敵であって良く、例えばプラスチック、セラミック、または、ある種の有機材料であって良い。
【0058】
燃料電池層にPELを使用すると、触媒充填を減少でき、そのような減少により、クラッキング傾向がより少ない、より延性のある触媒も実現できる。触媒層はさらに任意の数の添加剤、例えば、カーボン担持白金、金、カーボンまたはグラファイトを採用して良く、これが触媒層の耐久性を増大させ、ある場合には、PELが燃料電池層へ結合するのを増強し、また、当該層内の電気伝導性を増大させても良い。
【0059】
いくつかの実施例において、PELは、電極コーティング、電子伝導性要素、またはオプションとしてイオン伝導性要素に確実に結合することを可能にする特性を有して良い。この結果、そのようなPELは電子伝導性要素および電極コーティングとの電気的接触を維持するための圧縮力を必要としないことになる。そのようなPELを組み込んだ燃料電池システムは組立がより簡便になる。
【0060】
いくつかの実施例において、PELは、燃料電池層、または燃料電池層の電極コーティングに、熱、および/または圧力、あるいは、PELを結合するための任意の適切な手段を用いて結合されて良い。
【0061】
他の実施例において、PELは燃料電池に結合されなくても良く、そのため、燃料電池カバー、または、伝導性層に力を加えて燃料電池との接触を維持させる他の構造的機構を必要とするかもしれない。いくつかの例では、複数の別々の部品を構造体にくみ上げれば、有益なことに、結合させる必要がなくなり、またPELにギャップを絵規制する必要もなくなる。1つの事例の実施例において、燃料電池はそれ自体で非対称であって良く、イオン伝導性要素の1側が一般的にはプロフィール上、凹んでいて良い。そのような実施例において、イオン伝導性要素の、電流コレクタの平面を基準にして凹んだ部分により形成された空洞は、多孔性伝導性材料、例えば、カーボン布地、カーボン粉末、腐食耐性金属布地、腐食耐性金属粉末、グラファイト粉末、またはPELにより充填され、または支持されて良い。そのような実施例において、外部支持構造が、多孔性インサートを職場移送中に押圧してよく、これにより、電気的接触が増強され、電流が多孔性構造中に流れることが可能になり、たとえ触媒にクラックがあっても、低抵抗の電流計路を実現できる。燃料電池中の凹んだ領域に挿入された多孔性伝導性材料の他の機械的および化学的特性は、燃料電池の働きを最も良好にするように選択されて良く、例えば、PELは圧縮可能な層で良く、また、水の管理を容易にするのに適した水保持特性を伴っても良い。そのような実施例において、支持構造は、燃料電池層(例えば電流コレクタ)および/またはPELに結合されて構造支持を確実にして良い。
【0062】
いくつかの実施例において、PELは燃料電池層に結合するのに先立って、活性化処理または事前処理されて良い。事例の実施例において、PELは活性化処理または事前処理されて電極コーティングとの結合または接着を改善され、あるいはPELおよび電極コーティングの間の接触抵抗を減少させる。
【0063】
いくつかの実施例において、カソードおよびアノードPELは充分に多孔性があって、酸化剤または燃料をそれぞれ大量に搬送できるようにして良い。いくつかの実施例において、PELは水または熱の管理を改善するように設計されて良い。例えば、PELの空隙率を操作して水または熱の保持の度合いを操作してよい。空隙率、疎水性、および熱伝動性のような特性を種々の層(例えば、カソードコーティング、アノードコーティング、カソードPEL、およびアノードPEL)において変化させて水または熱の管理を行って良い。PELは疎水性または親水性に影響を与える材料、例えば、アイオノマー(ペルフルオロスルホン酸、ポリアリーレンスルホン酸、および、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー)、PTFE、ナイロン、酸化物(例えばシリカ、酸化錫)、または、その他を含んで良い。
【0064】
事例の実施例において、PELの厚さは約1mmより小さい。この厚さは、例えば、約35μmから約750μmの間、約50μmから約500μmの間、または約100μmから約350μmの間である。いくつかの実施例において、PELの厚さは約50μmから約200μmの範囲であって良い。
【0065】
いくつかの実施例において、PELは、アノードコーティングまたはカソードコーティングの内側表面に隣接した複合層の1つまたはそれ以上の表面に配される。図6は、事例の実施例に従う、PELを具備する、事例の平面燃料電池層190の断面図である。燃料電池層190は、アノードコーティング116A、カソードコーティング196C、アノードPEL152A、および、カソードPEL192Cを具備する。カソードコーティング196CおよびカソードPEL192Cの位置は、アノードコーティング116AおよいアノードPEL152Aの位置、先に説明した実施例の電極コーティングおよびPELの位置を基準にして逆になっている。カソードPEL192Cは複合体124の第1の側に配され、複合体124の第1の表面に接着される。
【0066】
ユニット燃料電池内で、カソードコーティング196CはカソードPEL192Cの外側に配され、カソードPEL192Cの外側表面に接着される。燃料電池の動作中、プロトン(または他のイオン)は、アノードコーティング116Aの反応サイトから、イオン伝導性要素110を通じ、さらにカソードPEL192Cを通じ、カソードコーティング106C中の反応サイトへと移動する。電子は、電子伝導性要素112からカソードPEL192Cを通じカソードコーティング196C中の反応サイトへと移動する。酸化剤はカソードコーティング196C中を移動し、反応サイトで還元される。
【0067】
カソードPEL192Cは異なった特性を伴って良く、上述した実施例のPELと異なった材料を含んで良い。カソードPEL192Cは、カソードコーティング192Cの内側表面に配されているので、PEL192Cは酸化剤に対して透過性である必要がない。PEL192Cはプロトンまたは他のイオンに対して透過性であって良い。例えば、PEL192Cはイオン伝導性経路、例えばアイオノマー(例えばペルフルオロスルホン酸、またはスチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマー)を含んで良い。
【0068】
燃料電池層190は、相互に異なり、対応する電極コーティングを基準にして異なる配列を伴う、カソードPELおよびアノードPELを具備する。他の実施例において、カソードPELおよびアノードPELは、同一であって良く、対応する電極コーティングを基準にして同一の配列を伴って良い。
【0069】
図4A、4B、および4Cにそれぞれ示される燃料電池層150、160、および170の各々は、対応する電極コーティングを基準にして同一の配列であるカソードPELおよびアノードPELを具備する。しかしながら、燃料電池層のカソードPELおよびアノードPELは、組成物、特性、寸法および機能の点で同一でも異なっていても良いことにも、また、留意されたい。燃料電池層内のカソードPELはすべて同一であっても異なっていても良い。燃料電池層内のアノードPELはすべて同一であっても異なっていても良い。燃料電池層はカソードPELおよびアノードPELの双方を具備しても良いし、カソードPELのみ、またはアノードPELのみを具備しても良い。
【0070】
図示の実施例において、PELは連続的であり、電極コーティングまたはイオン伝導性要素の表面を実質的に被覆するように伸びる。しかしながら、他の実施例では、PELは空間的に非連続であって良い。例えば、PELは、開口またはスリットまたは他の非連続部分を具備して良く、指状または蛇行したパターンを伴って良い。そのような非連続性またはパターンにより、反応物質、燃料、またはプロトンの電極コーティングへの大量の搬送が改善でき、また水の電極コーティングからの除去を改善できる。いくつかの実施例において、PELは当該層に渡って部分的にしか伸びなくて良く、また、各ユニット電池に沿って部分的にまたは完全に伸びても良い。
【0071】
PELは種々の慣用的な、または非慣用的な燃料電池層に適用されて良い。例えば、PELは従来の電気化学電池に適用されて良く、これは、例えば、「電池のサイド・バイ・サイドの配列を伴う電気化学電池システム」という名称の米国特許第5,989,741号、「燃料電池」という名称の米国特許出願第12/153,764号、および「いくつかの電池を含有する膜線条として形状付けられたバッテリ」という名称の米国特許第5,861,221号に説明されるものである。
【0072】
PELは、燃料電池層、電子伝導性要素、イオン伝導性要素、またはこれらの組み合わせへと結合され、または、接着されて良い。この結果、いくつかの実施例において、PELを具備する燃料電池層は、付加的なまたは外部的な圧縮力を最小限にし、またはまったく用いることなく、PELと電極コーティングまたは電子伝導性要素との間の接触抵抗を小さくできる。いくつかの例において、PELは、例えば、膜の変形、触媒のクラック、または双方を減らすことにより、付加的な構造支持および堅牢性を燃料電池層に設けて良い。
【0073】
図7は、PELを具備する燃料電池層を準備する1つの潜在的な方法のプロセスブロック図である。この方法200において、スラリー要素202が混合段階240で処理されてスラリー214を生成して良い。スラリー214は成型段階250で処理されて湿潤なフィルム216を生成して良い。湿潤なフィルム216は乾燥段階260で処理されて良く、オプションとして孔生成段階265、および、さらにオプションとして活性化段階267で処理されて、PELフィルム218を形成して良い。PELフィルム218は燃料電池層とともに燃料電池付加段階270で処理され、オプションとして、ギャップ形成段階275で処理され、PELを具備する燃料電地層222を形成して良い。
【0074】
混合段階240では、スラリー要素202が組みあわされ混合されて良い。スラリー要素202は、1つまたはそれ以上の電気伝導性材料204、1つまたはそれ以上のバインダ206、および1つまたはそれ以上の溶媒208を含んで良い。電気伝導性材料204は粒子、例えばフラグメントまたは繊維を含んで良い。電気伝導性材料は異方性のある粒子を含んで良い。そのような電気伝導性材料を含むPELは電気的な異方性を発現して良い。
【0075】
スラリー要素202は、フィラーとして作用し、またはスラリー214のレオロジーに影響を与え、例えば、ずれ流動性を付与することによりそのようになす、電気伝導性材料を含んで良い。スラリー要素202は、PELのマイクロ構造に影響し、例えば、孔またはマイクロ孔を形成し、あるいは、他の電気伝導性材料の粒子とリンクすることによりそのようになす、電気伝導性材料を含んで良い。電気伝導性材料204はPEL中に所望のマイクロ構造を形成するのに最適化された平均径または寸法を伴う粒子(フラグメント)を含んで良い。1例の実施例では、粒子は、PEL中に充分な空隙性を付与するのに充分なだけ大きく、容易にスラリー214を成型するのに充分なだけ小さい。具体的な例の実施例では、電気伝導性材料204はカーボンファイバー、カーボンブラック、およびグラファイトの1または複数を含む。
【0076】
スラリー要素202は電気伝導性材料への接着および/または接触を助長するためにバインダ206を含んで良い。スラリー要素202はPEL中に弾性または延性を付与するバインダを含んで良い。スラリー要素202は、腐食耐性のあるバインダを含んで良い。一例の実施例において、スラリー要素202では、バインダ206の電気伝導性材料204に対する比は、電気伝導性材料204の粒子が一緒に保持されるに足るだけ大きく、PELフィルム218が充分な空隙性および伝導性を有するに充分なだけ小さなものである。具体的な事例の実施例では、スラリー要素202はPVDFを含む。スラリー要素202はバインダを溶かす溶媒208を含んで良い。
【0077】
スラリー要素202はオプションとして孔生成剤を含んで良い。スラリー要素202は、例えば、溶解、蒸発、または焼成によって除去される材料を含んで良い。例えば、スラリー要素202は1つまたはそれ以上の孔生成剤、例えば、塩、ワックス、および他の変形しやすい材料を含んで良い。
【0078】
スラリー要素202は、種々の手段、例えば、攪拌、混合、揺動、または回転により混合されて、スラリー214を生成してよい。スラリー214は種々の特性を有して良い。スラリー214は、成型段階250で用いられるコーティングまたはプリント方法のタイプに適合できる特性を伴って良い。例えば、スラリー214は引き出しを可能にする特性を伴って良い。躯体的な事例の実施例において、スラリー214は、表面に渡ってドクターブレードを引くことにより成型できるように固体内容物およびレオロジーを伴う。
【0079】
成型段階250では、スラリー240は転写フィルム215に塗布されて湿潤なPELフィルム216を生成して良い。転写フィルム215は化学的に不活性で、温度耐性があり、変形可能な材料を含んで良い。いくつかの事例の実施例では転写フィルム215はポリテトラフルオロエチレン(PEFE)を含んで良い。スラリー214は種々の異なる方法を用いて塗布または成型されて良い。例えば、スラリー214は剪断応力をスラリー214に加える方法により成型されて良い。事例の実施例では、スラリー214は表面に渡ってそれを引き出すことにより成型される。しかしながら、スラリー214は、代替的には、他のタイプのフィルム成型(例えばテープ成型)、スクリーン印刷、または他の慣用的なコーティングまたはプリント方法を用いて塗布されて良い。
【0080】
いくつかの実施例において、成型段階250は、形態学的に異方性を有する湿潤PELフィルム216、例えば、主に1つの方向に配向された異方性電気伝導性材料の粒子を伴う湿潤フィルムを製造する。具体的な事例の実施例では、成型段階250は、湿潤PELフィルム216の平面上の1つの方向に主に配向された異方性電気伝導性材料の粒子を伴う湿潤フィルムを製造する。
【0081】
乾燥段階260では、溶媒を蒸発可能にして、実質的に溶媒を含まない、PELフィルム218を形成する。湿潤PELフィルム216はある温度、ある圧力で所定の時間歓送されよい。事例的な実施例において、湿潤PELフィルム216は、バインダのガラス転移温度または溶融温度以下の温度で乾燥されて良い。事例の実施例において、湿潤PELフィルム216は、それを迅速に乾燥させることができる温度および圧力で乾燥されて、電気伝導性材料のマイグレーションが阻止できるようになし、かつ、蒸発する溶媒がマイクロ構造を破壊するほど迅速ではないようにする。具体的な事例の実施例では、湿潤PELフィルム216は約80°C〜約120°Cの範囲の温度、約1気圧未満の圧力で、約20〜約40分の間の時間だけ、加熱されて良い。
【0082】
燃料電池付加段階270では、PELフィルム218が燃料電池層220上に付加される。燃料電池層220は平面燃料電池であって良い。燃料電池層は、個々の電極コーティングの間にギャップまたは誘電体領域を伴う完成した燃料電池層220aであっても良く、個々の電極コーティングの間にギャップまたは誘電体領域を伴わない不完全な燃料電池層220bであっても良い。
【0083】
事例の燃料電池付加段階270においては、PELフィルム218は燃料電池層220の上または下に配置され、PELフィルム218および燃料電池層220が、所定の時間だけ、ある温度に加熱され、ある圧力に置かれて良い。PELフィルム218および燃料電池層220は、例えば、燃料電池沿う中のイオン伝導性要素のガラス転移温度より高い温度で、かつ、イオン伝導性要素が劣化する温度、バインダ206のガラス転移温度より若干高い温度より低い温度で加熱されて良い。PELフィルム218は、PELフィルム218および燃料電池層220の電極コーティングを密接な接触の下におくのに充分な圧力にさらして良い。事例の実施例において、PELフィルム218および燃料電池層220は、約10分より短い時間間隔だけ、約110°C〜約150°Cの範囲の温度に加熱され、約25psi〜約200psiの範囲の圧力の下に置かれて良い。
【0084】
いくつかの実施例において、PELフィルム218は、平坦ではない電極コーティングを具備する燃料電池層220に適用されて良い。例えば、PELフィルム218は、本出願人の出願に係る、「非対称構造を伴う燃料電池および燃料電池要素ならびにその方法」という名称の米国特許出願に説明されるような、非対称燃料電池層、または波条あるいは非規則的な燃料電池層に適用されて良い。例えば、PELフィルムは、変形可能な材料(例えば、オープンセルスポンジのようなスポンジ)をPELフィルムの外側に配して、アノードコーティングの表面形状を保ったままで、PELおよびアノードコーティングの間を密に接触させて、凹の、またはたる型形状のアノードコーティングを伴う円両電池層に結合させて良い。そのような実施例において、燃料電池層は、さらに、支持構造を燃料電池層および/またはPELに結合させて付加的な支持を実現して良い。そのような支持構造は、当該層のアノード側、当該層のカソード側、または双方に結合されて良い。例えば、支持構造は寸法的に安定した多孔性材料を含んで良く、これは、燃料電池層の電流コレクタに結合されて良い。そのような支持構造は付加的な圧縮または結合力を付与してPELおよび電極コーティングの間の接触を増強させて良い。
【0085】
結合されたPELフィルムおよび燃料電池層は、オプションとして、パターン処理段階275で処理されてPELを具備する燃料電池層222を形成して良い。パターン処理段階275では、個々のPELの間で、オプションとして個々の電極コーティングの間で、非連続性が形成されて良い。そのような非連続性は、隣接する電気化学電池を電気的に絶縁することができる。いくつかの実施例において、非連続性は、コーティング段階250の間に、ギャップまたは誘電体領域として湿潤PELフィルム216に前置パターン処理されて良く、またはコーティング段階250の後に形成されて良い。いくつかの実施例において、非連続性は、燃料電池付加段階270に先立って、ギャップまたは誘電体領域として湿潤PELフィルム216に形成されて良い。本出願人の出願に係る、「非連続性の領域を含む電気化学電子組立体」という名称の米国特許出願第12/341,294号は実現可能な非連続性用の配列を説明し、その内容は参照してここに組み入れる。
【0086】
スラリー要素202が孔生成剤を含むならば、方法200はオプションの孔生成段階265を含んで良い。孔生成段階265では、孔生成剤が、例えば、溶媒中での溶解または蒸発により除去されて良い。孔生成段階265は、それがある場合には、乾燥段階260の前、期間、またはその後に実行されて良い。
【0087】
いくつかの実施例において、方法200はオプションの活性化段階267を含む。オプションの活性化段階267では、湿潤PELフィルム216、PELフィルム218、または燃料電池層220が活性化処理または前処理を受けて良い。活性化処理は、媒介剤217の塗布を含んで良い。媒介剤217は、例えば、PELフィルム218と燃料電池層220の電極コーティングとの間の結合または接着を改善させる。媒介剤217は、PELフィルム218または燃料電池層220の電極コーティング中に存在する材料、例えば、バインダ206、触媒、アイオノマー、または電子伝導性材料204を含んで良い。他の実施例において、オプションの活性化段階は、湿潤PELフィルム216、PELフィルム218、または燃料電池層220を活性化させる他の方法を含んで良い。活性化段階267がある場合には、この活性化段階267は乾燥段階260の前、途中、または、その後に実行されて良く、また、オプションの孔生成段階がある場合にはその前、途中、または、その後に実行されて良い。
【0088】
方法200またはそのいずれの段階も、燃料電池層がカソードおよびアノードPELの双方を有すべきなのか、カソードPELまたはアノードPELの一方のみを有すべきなのかに応じて、繰り返されて良い。
【0089】
[例]
事例の実施例において、方法200に従って準備されたPELフィルムが図2Bの事例の平面燃料電池層と類似の燃料電池層に結合された。図8は性能増強層を伴うそのような燃料電池層の事例の性能データを、性能増強層を伴わない燃料電池層の性能と比較して図説する。図から理解できるように、PELをともなう燃料電池層の性能はPELを伴わない燃料電池層の性能に較べて顕著に大きい。
【0090】
図9は、方法200に従って準備された燃料電池層の模式的平面図であり、ここでは、PELフィルムは、ファイバ286を含むスラリーを引き出してそのようなファイバを図9において示すY方向に整合させることにより準備された。図説の実施例では、ファイバ286の配向の主たる方向は、PEL282の平面中にあり、各ユニット燃料電池の1つの側から他の側へ伸びる、1つ方向である(図ではY方向として示される)。
【0091】
上述の事例の実施例に従って準備されたPELフィルムについて抵抗測定が行われた。これらの測定から、伝導性が計算された。1インチ×2インチの寸法を各々有する3つの試片がPELフィルムから切り出された。各試片は、引っ張り方向(例えば、剪断応力が加えられた方向)を基準にした3つの異なる配向を伴っていた。すなわち、(1)引っ張り方向と平行、(2)引っ張り方向と45°、および、(3)引っ張り方向と90度である。
【0092】
試片の各々の平面内抵抗が、試片に接触された2つのアームの間に電圧を印可して結果としての電流を測定することにより、測定された。表1および図10の各々は試片の抵抗および伝導性を示す。
【表1】

【0093】
理解できるように、引っ張り、または引き出しの方向からの角度(例えば剪断応力が加えられた方向からの角度)が増加すると、PELフィルムの抵抗が増大し、その伝導性が減少する。したがって、異方性電気特性を伴うPELフィルムが準備された。PELフィルムは好ましい配向で燃料電池層に適用されて予め定められた方向の伝導性が大きなPELを形成して良い。例えば、剪断応力が加えられた方向が個々のユニット燃料電池の長さ方向と直交するようにPELフィルムを配向させることにより、PELフィルムを燃料電池層に適用して良い。
【0094】
方法200は、PELを伴う燃料電池層を準擬する方法の1例である。他の実施例において、アノードコーティングまたはカソードコーティングの内側にPELを配した燃料電池層が、PELを複合体に結合させ;電極コーティングをPELフィルムの外側に付加し;オプションとして複合体、PELフィルムおよび電極コーティングを結合させ;オプションとしてPELフィルムまたは電極コーティングにギャップを形成することにより、準備されて良い。
【0095】
他の実施例は、電極コーティングを直接にPELフィルムに付加し;PELフィルムおよび電極コーティングを燃料電池層に結合し;オプションとしてPELフィルムまたは電極コーティングにギャップを形成することにより、準備されるPELを伴う燃料電池層を含む。
【0096】
さらに他の実施例において、PELフィルムは、バインダ、およびオプションとして電気伝導性材料を混合してスラリーを形成し;スラリーを異方性粒子を含む電気伝導性材料に成型して湿潤PELフィルムを形成し;湿潤PELフィルムを乾燥させてPELフィルムを形成することにより、準備されて良い。
【0097】
[付加的な実施例]
この発明は以下の事例的な実施例を実現し、その符号付けは必ずしも図において説明された実施例の番号付けと関連しない。
【0098】
実施例1は、燃料電池用の性能増強層において:1またはそれ以上の電気伝導性材料であって、少なくともそのうちの1つが、形態学的に異方性を有し、当該層内において異方性伝導性をもたらす粒子を含むものと;バインダとを有し;上記バインダは上記粒子を相互に接触するように位置づけることを特徴とする性能増強層を実現する。
【0099】
実施例2は、上記1またはそれ以上の電気伝導性材料のうちの少なくとも1つにある上記粒子が、上記層において、上記層の平面内の第1の方向に、上記層の上記平面と直角な第2方向に較べて、大きくなる伝導性を付与するように配向される実施例1記載の性能増強層を実現する。
【0100】
実施例3は、上記1またはそれ以上の電気伝導性材料のうちの少なくとも1つにある上記粒子が、上記層において、上記層の平面内の第1の方向に、上記層の上記平面内の第3の方向に較べて、大きくなる伝導性を付与するように配向される実施例1または2記載の性能増強層を実現する。
【0101】
実施例4は、上記粒子は上記第1の方向に剪断応力を加えることにより配向される実施例1〜3記載の性能増強層を実現する。
【0102】
実施例5は、上記電気伝導性材料は炭素を有する実施例1〜4記載の性能増強層を実現する。
【0103】
実施例6は、上記電気伝導性材料はカーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、またはこれらの組み合わせを有する実施例1〜5記載の性能増強層を実現する。
【0104】
実施例7は、上記異方性粒子はカーボンファイバーである実施例1〜6記載の性能増強層を実現する。
【0105】
実施例8は、上記電気伝導性材料はカーボンブラックを有する実施例1〜7記載の性能増強層を実現する。
【0106】
実施例9は、上記電気伝導性材料はグラファイトを有する実施例1〜8記載の性能増強層を実現する。
【0107】
実施例10は、上記バインダはポリビニリデンフロライドを有する実施例1〜9記載の性能増強層を実現する。
【0108】
実施例11は、上記バインダは上記層中に弾力性、可塑性、または双方を付与する実施例1〜10記載の性能増強層。
【0109】
実施例12は、上記層は多孔性であり、上記層の一側から他側へ流体を大量に搬送可能にする実施例1〜11記載の性能増強層を実現する。
【0110】
実施例13は、上記層の厚さは1mmより小さい実施例1〜12記載の性能増強層。
【0111】
実施例14は、上記層の厚さは約50μmから約200μmの範囲である実施例1〜13記載の性能増強層を実現する。
【0112】
実施例15は、上記層はイオンの流れに対して透過性を有する実施例1〜14記載の性能増強層を実現する。
【0113】
実施例16は、さらに、上記バインダと接触する、2またはそれ以上の電極コーティングを有する実施例1〜15記載の性能増強層を実現する。
【0114】
実施例17は、電極コーティングを具備する燃料電池用の性能増強層を製造する方法において:1またはそれ以上の電気伝導性材料、バインダ、および溶媒を十分に混合してスラリーを形成するステップと;上記スラリーを十分に成型して湿潤フィルムを製造するステップと;上記湿潤フィルムを十分に乾燥させてフィルムを製造するステップと;上記フィルムを燃料電池層に結合するステップとを有することを特徴とする、上記方法を実現する。
【0115】
実施例18は、上記性能増強層、上記電極コーティング、上記性能増強層を伴う上記燃料電池層、またはこれらの組み合わせをパターン処理するステップを有する実施例17記載の方法を実現する。
【0116】
実施例19は、上記スラリーは固体成分を有し、それを成型するレオロジーを有する実施例17〜19記載の方法を実現する。
【0117】
実施例20は、上記成型のステップは、上記スラリーを転写フィルムに成型することを含む実施例17〜19記載の方法を実現する。
【0118】
実施例21は、上記フィルムを活性化させて上記電極コーティングの表面への接着を改善させるステップを有する実施例17〜20記載の方法を実現する。
【0119】
実施例22は、上記活性化のステップは、上記電極コーティングへの接着を助長する材料を塗布することを有する実施例21記載の方法を実現する。
【0120】
実施例23は、実質的に平坦な層を形成するように隣接して配された1または複数の燃料電池と;1つのイオン伝導性要素および2つまたはそれ以上の電子伝導性要素を含む複合体と;それぞれ上記イオン伝導性要素とイオン性接触を行い、上記電子伝導性要素の少なくとも1つと電気接触を行う2つの電極コーティングであって、それぞれ内側表面および外側表面を含むものと;上記電極コーティングのうちの1つの1の表面と接触し、または近接して配される性能増強層であって、関連する電子伝導性要素への、または、それからの電気伝導性経路を形成するものとを有することを特徴とする燃料電池層を実現する。
【0121】
実施例24は、上記性能増強層は、少なくとも1つの電気伝導性材料と1つのバインダとを有する実施例23記載の燃料電池層を実現する。
【0122】
実施例25は、上記電気伝導性材料のうちの1つは形態学的な異方性を伴う粒子を有する実施例23〜24記載の燃料電池層を実現する。
【0123】
実施例26は、上記粒子は上記層中に伝導性異方性を付与するように配向される実施例23〜25記載の燃料電池層を実現する。
【0124】
実施例27は、上記性能増強層は上記電極コーティングの上記内側表面に隣接して配される実施例23〜26記載の燃料電池層を実現する。
【0125】
実施例28は、上記性能増強層は上記電極コーティングの上記外側表面に隣接して配される実施例23〜27記載の燃料電池層を実現する。
【0126】
実施例29は、上記性能増強層は、上記燃料電池層に対して構造的支持を実現する実施例23〜28記載の燃料電池層を実現する。
【0127】
実施例30は、上記性能増強層は、上記燃料電池層を変形しにくくする実施例23〜29記載の燃料電池層を実現する。
【0128】
以上の記述は説明的であることを意図しており、制約的ではない。他の実施例も利用でき、例えば、当業者は以上の記述を検討することにより採用できる。また、以上の発明の詳細な説明において、種々の特徴をグループ化して説明を簡便にしている。これは、特許請求の範囲に記載されていない特徴がいずれかの請求項において基本的であると理解されてはならない。したがって、特許請求の範囲は発明の詳細な説明に組み込まれ、各請求項はそれ自体で個別の実施例を表す。この発明の範囲は、特許請求の範囲や、そのような特許請求の範囲の権限が及ぶ均等の全範囲を参照にして決定されるべきである。
【0129】
要約は規則(37C.F.R 1.72(b))に適合するものであり読者に技術的開示の本質を即座に把握させることを可能にする。これは、請求項の範囲の意味を解釈したり範囲を限定するのに使用されないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0130】
112 電子伝導性要素
116A アノードコーティング
116C カソードコーティング
118 イオン伝導性要素
120 誘電体領域(インターフェース領域)
124 複合層(複合体)
126 クラック
140 ユニット燃料電池
150 平面燃料電池層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用の性能増強層において、
1またはそれ以上の電気伝導性材料であって、少なくともそのうちの1つが、形態学的に異方性を有し、当該層内において異方性伝導性をもたらす粒子を含むものと、
バインダとを有し、
上記バインダは上記粒子を相互に接触するように位置づけることを特徴とする性能増強層。
【請求項2】
上記1またはそれ以上の電気伝導性材料のうちの少なくとも1つにある上記粒子が、上記層において、上記層の平面内の第1の方向に、上記層の上記平面と直角な第2方向に較べて、大きくなる伝導性を付与するように配向される請求項1記載の性能増強層。
【請求項3】
上記1またはそれ以上の電気伝導性材料のうちの少なくとも1つにある上記粒子が、上記層において、上記層の平面内の第1の方向に、上記層の上記平面内の第3の方向に較べて、大きくなる伝導性を付与するように配向される請求項1または2記載の性能増強層。
【請求項4】
上記粒子は上記第1の方向に剪断応力を加えることにより配向される請求項3記載の性能増強層。
【請求項5】
上記電気伝導性材料は炭素を有する請求項1または2記載の性能増強層。
【請求項6】
上記電気伝導性材料はカーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、またはこれらの組み合わせを有する請求項5記載の性能増強層。
【請求項7】
上記異方性粒子はカーボンファイバーである請求項5記載の性能増強層。
【請求項8】
上記電気伝導性材料はカーボンブラックを有する請求項6記載の性能増強層。
【請求項9】
上記電気伝導性材料はグラファイトを有する請求項6記載の性能増強層。
【請求項10】
上記バインダはポリビニリデンフロライドを有する請求項1または2記載の性能増強層。
【請求項11】
上記バインダは上記層中に弾力性、可塑性、または双方を付与する請求項1または2記載の性能増強層。
【請求項12】
上記層は多孔性であり、上記層の一側から他側へ流体を大量に搬送可能にする請求項1または2記載の性能増強層。
【請求項13】
上記層の厚さは1mmより小さい請求項1または2記載の性能増強層。
【請求項14】
上記層の厚さは約50μmから約200μmの範囲である請求項13記載の性能増強層。
【請求項15】
上記層はイオンの流れに対して透過性を有する請求項1または2記載の性能増強層。
【請求項16】
さらに、上記バインダと接触する、2またはそれ以上の電極コーティングを有する請求項1記載の性能増強層。
【請求項17】
電極コーティングを具備する燃料電池用の性能増強層を製造する方法において、
1またはそれ以上の電気伝導性材料、バインダ、および溶媒を十分に混合してスラリーを形成するステップと、
上記スラリーを十分に成型して湿潤フィルムを製造するステップと、
上記湿潤フィルムを十分に乾燥させてフィルムを製造するステップと、
上記フィルムを燃料電池層に結合するステップとを有することを特徴とする、上記方法。
【請求項18】
上記性能増強層、上記電極コーティング、上記性能増強層を伴う上記燃料電池層、またはこれらの組み合わせをパターン処理するステップを有する請求項17記載の方法。
【請求項19】
上記スラリーは固体成分を有し、それを成型するレオロジーを有する請求項17記載の方法。
【請求項20】
上記成型のステップは、上記スラリーを転写フィルムに成型することを含む請求項17記載の方法。
【請求項21】
上記フィルムを活性化させて上記電極コーティングの表面への接着を改善させるステップを有する請求項17記載の方法。
【請求項22】
上記活性化のステップは、上記電極コーティングへの接着を助長する材料を塗布することを有する請求項21記載の方法。
【請求項23】
実質的に平坦な層を形成するように隣接して配された1または複数の燃料電池と、
1つのイオン伝導性要素および2つまたはそれ以上の電子伝導性要素を含む複合体と、
それぞれ上記イオン伝導性要素とイオン性接触を行い、上記電子伝導性要素の少なくとも1つと電気接触を行う2つの電極コーティングであって、それぞれ内側表面および外側表面を含むものと、
上記電極コーティングのうちの1つの1の表面と接触し、または近接して配される性能増強層であって、関連する電子伝導性要素への、または、それからの電気伝導性経路を形成するものとを有することを特徴とする燃料電池層。
【請求項24】
上記性能増強層は、少なくとも1つの電気伝導性材料と1つのバインダとを有する請求項23記載の燃料電池層。
【請求項25】
上記電気伝導性材料のうちの1つは形態学的な異方性を伴う粒子を有する請求項23記載の燃料電池層。
【請求項26】
上記粒子は上記層中に伝導性異方性を付与するように配向される請求項23記載の燃料電池層。
【請求項27】
上記性能増強層は上記電極コーティングの上記内側表面に隣接して配される請求項23記載の燃料電池層。
【請求項28】
上記性能増強層は上記電極コーティングの上記外側表面に隣接して配される請求項23記載の燃料電池層。
【請求項29】
上記性能増強層は、上記燃料電池層に対して構造的支持を実現する請求項23記載の燃料電池層。
【請求項30】
上記性能増強層は、上記燃料電池層を変形しにくくする請求項23記載の燃料電池層。

【図1】
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【図1A】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−516039(P2013−516039A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546295(P2012−546295)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/CA2010/002026
【国際公開番号】WO2011/079378
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(501436665)ソシエテ ビック (73)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
【Fターム(参考)】