説明

燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池及び電子機器

【課題】 高出力の燃料電池を構成できる燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】 セパレータ2は、シリコン基板20に、各々が互いに平行な直線形状をした流路7を形成して形成されている。また、セパレータ2において、流路7が形成されている面及び側面部分に、ボロンをドーピングしシリコンの導電性を向上させることによって電極が形成されている。そして、電極が形成された電極面に微細な凹凸が形成され、該微細な凹凸に触媒を付着させることによって触媒層が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料と空気等の酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電する燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造方法、該燃料電池用セパレータを用いて構成された燃料電池及び該燃料電池を備える電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的に電解質膜の表面に触媒を担持した膜電極複合体を、燃料や酸化剤ガスの供給と電気化学反応により生じた電気を集める(集電)機能とを有するセパレータで挟み込んだ構造(サンドイッチ型セル)を有している。このような構造を有する燃料電池の中で、電解質膜として固体電解質膜を用い、燃料としてメタノール水溶液を用いる燃料電池をダイレクトメタノール型燃料電池と呼ぶ。
【0003】
近年、上述のダイレクトメタノール型燃料電池を小型化した燃料電池、即ち、携帯機器等に用いることができる超小型燃料電池の研究開発が行われている。例えば、半導体プロセス等において利用されている微細加工技術を利用して、シリコンを微細加工したセパレータを用いた超小型燃料電池の試作等が行われている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0004】
【非特許文献1】逢坂 哲彌、他6名、「MEMS技術により作製したμDMFCの特性評価」、電気化学会第71回大会、2004年3月、P.331
【非特許文献2】早瀬 仁則、川瀬 貴彦、初澤 毅、「一体化したシリコン電極による超薄型燃料電池」、電気化学会第71回大会、2004年3月、P.363
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の非特許文献1においては、流路が形成されたシリコン基板上に、集電層として金(Au)の薄膜を成膜した上に触媒層を形成している。また、上述の非特許文献2においては、低抵抗なシリコン基板に形成された流路の一部を、フッ酸中の陽極酸化により多孔質化し、多孔質化された部分に触媒を付着させている。しかしながら、非特許文献1又は非特許文献2に記載の方法により形成された燃料電池の出力は非常に小さく、携帯機器等に必要な電力を発電できないという問題がある。
【0006】
この発明の課題は、高い出力を有する燃料電池を構成することができる燃料電池用セパレータ、該燃料電池用セパレータの製造方法、該燃料電池用セパレータを用いて構成された燃料電池及び該燃料電池を備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る燃料電池用セパレータは、陽イオン導電性を有する電解質膜を燃料極側のシリコン製セパレータと空気極側のシリコン製セパレータとで挟み込んだ燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータにおいて、前記燃料極側のセパレータは、燃料を供給する燃料流路が形成された面に、電極及び触媒層を備え、前記空気極側のセパレータは、空気を供給する空気流路が形成された面に、電極及び触媒層を備え、前記触媒層は、前記セパレータの電極が形成された電極面に形成された、前記触媒に対するアンカー効果を有する微細な凹凸に、触媒を付着させて構成されていることを特徴とする。
【0008】
この燃料電池用セパレータによれば、シリコン製セパレータの流路が形成されている面を低抵抗化することによって電極を形成している。そして、電極が形成された電極面に触媒に対してアンカー効果を有する微細な凹凸を形成し、形成された微細な凹凸に触媒粒子を付着させることによって触媒層を形成している。即ち、電極面に微細な凹凸を形成することによって、微粒子状態で触媒粒子を付着しやすくしているため、従来の小型燃料電池に比べて触媒と燃料又は触媒と空気との接触面積を増やすことができる。
【0009】
従来構成では電極面に微細な凹凸がない場合、付着させた触媒粒子が凝集しやすくなるため、電気化学反応に有効な触媒面積が減少してしまい、その結果出力が非常に低くなると考えられる。従って、この燃料電池用セパレータを用いることによって、高い出力を有する燃料電池を製造することができる。
【0010】
また、この発明に係る燃料電池用セパレータは、電極層をボロンをドーピングすることにより形成されることを特徴とする。
【0011】
この燃料電池用セパレータによれば、シリコン基板を用いたセパレータにおいて、容易に、低抵抗の電極を形成することが可能となる。
【0012】
また、この発明に係る燃料電池用セパレータは、前記セパレータの電極面上の微細な凹凸が、不活性ガスを用いた逆スパッタリング法を用いて前記電極面を粗すことにより形成されていることを特徴とする。
【0013】
この燃料電池用セパレータによれば、不活性ガスを用いた逆スパッタリング法、例えば、アルゴンガスを用いた逆スパッタリング法により電極面上に微細な凹凸が形成されている。上記微細な凹凸により、触媒として用いられる貴金属の粒子、例えば、白金微粒子の合一を防ぎ燃料電池の活性が低下することを防止することができる。
【0014】
また、この発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、陽イオン導電性を有する電解質膜を燃料極側のシリコン製セパレータと空気極側のシリコン製セパレータとで挟み込んだ燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータの製造方法において、基板に流路を形成する流路形成工程と、前記セパレータにボロンをドーピングすることにより、前記流路形成工程において流路が形成される面に電極を形成する電極形成工程と、前記電極が形成された電極面に、前記触媒に対するアンカー効果を有する微細な凹凸を形成する凹凸形成工程と、前記凹凸形成工程において前記電極面に形成された微細な凹凸に、触媒を付着させて触媒層を形成する触媒層形成工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
この燃料電池用セパレータの製造方法によれば、シリコン製のセパレータにボロンをドーピングして流路が形成される面を低抵抗化して電極を形成している。そして、電極が形成された電極面に触媒に対してアンカー効果を有する微細な凹凸を形成し、形成された微細な凹凸に触媒粒子を付着させることによって触媒層を形成している。従って、従来の小型燃料電池に比べて触媒と燃料又は空気との接触面積を増やすことができ、この燃料電池用セパレータを用いることによって、高い出力を有する燃料電池を製造することができる。
【0016】
また、この発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、前記凹凸形成工程において、不活性ガスを用いた逆スパッタリング法を用いて前記電極面を粗すことによって、前記微細な凹凸を形成することを特徴とする。
【0017】
この燃料電池用セパレータの製造方法によれば、不活性ガスを用いた逆スパッタリング法、例えば、アルゴンガスを用いた逆スパッタリング法により、触媒として用いられる貴金属の粒子、例えば、白金微粒子に対してアンカー効果を有する状態に電極面を粗すことによって微細な凹凸を形成している。従って、白金微粒子等の触媒粒子の合一を防ぎ燃料電池の活性が低下することを防止することができる。
【0018】
また、この発明に係る燃料電池は、この発明に係る燃料電池用セパレータを用いて構成されていることを特徴とする。この燃料電池によれば、電極及び触媒層を一体的に備え、電極面に形成された、触媒に対してアンカー効果を有する微細な凹凸に触媒を付着させて触媒層が形成された燃料電池用セパレータを用いて構成されている。即ち、触媒の合一を防ぎ、触媒活性の低下を防止した燃料電池用セパレータを用いて構成されているため、高い出力を実現することができる。
【0019】
また、この発明に係る電子機器は、この発明に係る燃料電池を電力供給源として備えることを特徴とする。この電子機器によれば、地球環境に適切に配慮したクリーンエネルギーを電力供給源として備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータの製造工程について説明する。なお、以下においては、ダイレクトメタノール型燃料電池の燃料極側に用いられるセパレータ(燃料極側のセパレータ)を製造する場合を例として説明する。
【0021】
まず、図1(a)に示すような矩形平板状の基板20、即ち、シリコン基板の表面にレジスト溶液を塗布する。ここで、レジスト溶液は、図1(b)に示すように、図中、手前方向から奥に向かって所定の間隔をおいて直線状に塗布される。即ち、基板20において、メタノール水溶液を供給するための流路を形成する部分を残して、それ以外の部分に対してのみレジスト溶液が塗布される。
【0022】
次に、所定の位置にレジスト溶液が塗布された基板20(図1(b)参照)の表面に、流路を形成するために行われるエッチング用の溶剤、例えば、フッ酸水溶液を塗布する。この時、基板20の表面には、流路を形成する部分以外の部分にはレジスト溶液が塗布されているため、レジスト溶液が塗布されていない部分がフッ酸水溶液によりエッチングされ、図2(a)に示すように、流路7が形成される。即ち、基板20に形成された互いに略平行な複数の凹部により、基板20の一方の側面から他方の側面に延びる断面コ字形状の流路7が形成される。また、図2(a)に示すように流路7が形成された基板20をレジスト除去液に浸漬しレジストの除去が行われ、図2(b)に示すように流路7が形成されたセパレータ2が形成される。なお、基板20に対するレジスト溶液やフッ酸水溶液の塗布は、インクジェット式の吐出装置等を用いて行われ、流路幅が狭い微細な流路7が形成される。また、微細な流路7を、例えば、半導体プロセス等において利用されている微細加工技術を基本とするMEMS(Micro Electro Mechanical System)やサンドブラスト法等を用いて形成してもよい。
【0023】
次に、セパレータ2を形成する基板20として用いられているシリコン基板に、ボロンをドーピングすることにより低抵抗化し電極を形成する。即ち、シリコンのような半導体に不純物としてボロンを加えることによって、セパレータ2の導電性を向上させセパレータ2の一部を電極として機能させることができる。
【0024】
図3は、電極が形成されたセパレータ2の一例を示す図である。セパレータ2には、図3に示すように、基板20に流路7及び電極22が形成されている。電極22は、図3に示すように、流路7が形成されている面及び側面部分に形成されており、裏面には形成されていない。セパレータ2に形成された電極22は、酸化還元反応により発生する電子を集める(集電する)集電層としても機能し、この集電層は集電と共に空気極と燃料極とを電気的に接続された状態にする役割を果たす必要がある。そのため、流路7が形成されている面のみならず、セパレータ2の側面も低抵抗化され集電層としての機能を果たすことができるようになっている。即ち、一つの燃料電池セルでは出力が不足する場合等には、出力要求に応じて複数の燃料電池セルを積層させることによって燃料電池スタックが形成される。この場合、燃料電池スタックは、燃料電池セルを構成する燃料極(空気極)側のセパレータの裏面(流路が形成されていない面)と、空気極(燃料極)側のセパレータの裏面とを貼り合わせることによって形成されるため、セパレータを介して空気極と燃料極とを電気的に接続された状態にすべく、セパレータの側面部分も低抵抗化されている。なお、図3においては、流路7内には電極が形成されていないが、流路7内も流路が形成されている面の表面と同様に低抵抗化されていてもよい。
【0025】
次に、セパレータ2の電極22が形成された電極面を粗すことによって微細な凹凸を形成する。この時、燃料極側に用いられるセパレータ2には、触媒として用いられる貴金属の微粒子、例えば、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)のナノ粒子(触媒粒子)を付着させることによって触媒層が形成される。従って、電極面に付着させた触媒粒子が容易に電極面から剥がれたり、凝集しないよう、触媒粒子に対してアンカー効果を有する状態に電極面を粗す。
【0026】
電極面を粗す方法としては、触媒粒子に対してアンカー効果を有する状態に粗すことができる方法であれば、何れの方法を用いてもよい。ここで、電極面を粗す方法としては、例えば、サンドブラスト法や逆スパッタリング法等が考えられるが、サンドブラスト法では、触媒粒子、即ち、ナノ粒子のような微細な粒子に対するアンカー効果を得ることができない。アンカー効果を得ることができない場合、触媒層を形成する触媒粒子が電極面に付着しにくいため、燃料電池の出力を高めることが難しい。従って、電極面を粗す方法としては、ナノ粒子のような微細な粒子に対してアンカー効果を有する状態に粗すことができる不活性ガスを用いた逆スパッタリング法を用いることが好ましく、不活性ガスとしてはアルゴンガスを用いることが好ましい。なお、アルゴンガスを用いた逆スパッタリング法は、アルゴンガスのビーム又はアルゴンガスのイオンを電極面に照射してエッチングすることによって、電極面を粗す方法である。従って、ビームのパワー、イオン強度、照射角等を制御することにより、エッチング量を調整し適切な状態に電極面を粗すことができる。この時、電極面が適切な状態に粗されているか否かは、例えば、電子顕微鏡等を用いて確認される。
【0027】
次に、触媒粒子に対してアンカー効果を有する状態に電極面を粗すことによって形成された微細な凹凸に触媒粒子を付着させて触媒層を形成する。触媒粒子を付着させる方法としては、スパッタリング法、電界メッキ法、電界パルスメッキ法等の各種方法が存在する。しかし、スパッタリング法や電界メッキ法を用いた場合、触媒粒子の合一が生じやすく、触媒活性が大きく低下することが知られている。従って、触媒粒子を微粒子状、即ち、ナノ粒子の状態で電極面に付着可能な電界パルスメッキ法を用いて、電極面に形成された微細な凹凸に触媒粒子を付着させることが最も好ましい。
【0028】
電界パルスメッキ法とは、周期的に通電するパルス電界にてパルスメッキを施す金属メッキ方法であり、パルス電界の条件として、波形、パルス周波数、電流密度、パルス周波数のデューティ比、休止時間(電流の流れていない非通電時間)等がある。従って、波形等をパラーメタとして調整することにより、触媒粒子の付着、成長を適切に制御することができる。また、セパレータ2の電極面に形成された微細な凹凸に触媒粒子を付着させる際には、パルス周波数が特に重要なパラメータであり、一般的には周波数を高周波数にすることで粒子径が小さいままの状態で、安定的に触媒粒子を電極面に形成された微細な凹凸に付着させて触媒層を形成することができる。
【0029】
ここで、燃料極側のセパレータ2については、電極22が形成された電極面に白金及びルテニウムの触媒粒子を付着させる必要があるため、2回に分けて触媒粒子を付着させる処理が行われる。例えば、1回目は、HPtClのメッキ液を用いて電界パルスメッキを行うことによって電極面上に白金を析出させ、2回目は、KRuClのメッキ液を用いて電界パルスメッキを行うことによって電極面上にルテニウムを析出させることによって、白金、ルテニウムの触媒粒子を電極面に形成された微細な凹凸に付着させ、触媒層を形成する。
【0030】
なお、空気極側のセパレータについては、触媒として白金が用いられるため、電界パルスメッキ法により触媒を付着させる処理は燃料極側における1回目の処理、即ち、HPtClのメッキ液を用いて電界パルスメッキを行うことによって白金を電極面上に析出させ、電極面に形成された微細な凹凸に白金の触媒粒子を付着させる処理のみが行われる。
【0031】
次に、電極及び触媒層が形成されたセパレータを用い、一般的な手法を用いて図4に示すような燃料電池が製造される。図4は、製造された燃料電池の一例を示す図である。燃料電池(燃料電池セル)は、図4に示すように、電解質膜1を電極及び触媒層が形成されたセパレータ2、3により挟み込み、セル保持冶具4、5により緩衝部材(ゴム)6を介してセル固定冶具8により固定されることによって製造される。
【0032】
ここで、電解質膜としては、パーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂からなるイオン交換膜が用いられ、例えば、デュポン社製のNafion(登録商標)や、旭硝子株式会社製のFlemion(登録商標)等が用いられる。そして、この電解質膜をセパレータで挟み込み接合させることによって、燃料電池が製造される。なお、製造された燃料電池は、電子機器、例えば、携帯電話等の携帯用電子機器等に電力供給源として組み込むことができる。
【0033】
この実施の形態に係る燃料電池用セパレータによれば、シリコン製のセパレータにボロンをドーピングして流路が形成されている面を低抵抗化することによって電極を形成する。そして、電極が形成された電極面に、触媒に対してアンカー効果を有する微細な凹凸を形成し、形成された微細な凹凸に触媒粒子を付着させることによって触媒層を形成している。従って、電極面に触媒粒子が付着しやすくなり、燃料と触媒、空気と触媒との接触面積を増大させ触媒の活性効率が高い触媒層を形成することができる。そのため、本実施の形態に係る燃料電池用セパレータを用いることにより、高い出力を有する燃料電池を容易に製造することができる。
【0034】
また、この実施の形態に係る燃料電池用セパレータによれば、電極面に形成される微細な凹凸を、不活性ガスであるアルゴンガスを用いた逆スパッタリング法により形成している。従って、この燃料電池用セパレータを用いることにより、触媒粒子、即ち、ナノ粒子に対するアンカー効果を有する微細な凹凸を電極面に形成することができ、触媒活性が高く出力の高い燃料電池を製造することができる。
【0035】
また、この実施の形態に係る燃料電池用セパレータによれば、電極面に形成されたナノ粒子に対するアンカー効果を有する微細な凹凸に、電界パルスメッキ法を用いて触媒粒子を付着させている。即ち、触媒を付着させる際に触媒の合一が発生することを適切に防止することができる電界パルスメッキ法を用いて触媒を付着させているため、本実施の形態に係る燃料電池用セパレータを用いることにより、出力の高い小型燃料電池を容易に製造することができる。
【0036】
また、この実施の形態に係る燃料電池によれば、上述の実施の形態に係るセパレータを用いて構成されているため、高い出力を実現することができる。また、この燃料電池を電子機器の電力供給源として用いることにより、廃棄される際にも有毒物質等が流出する心配のない、地球環境に配慮したクリーンなエネルギーを電子機器の電力供給源とすることができる。
【0037】
なお、上述の実施の形態においては、セパレータの電極面に微細な凹凸を形成する際に使用する不活性ガスとしてアルゴンガスを用いてるが、ナノ粒子である触媒粒子に対してアンカー効果を有する微細な凹凸を形成することができれば、その他の不活性ガスを用いてもよい。
【0038】
また、上述の実施の形態においては、ダイレクトメタノール型燃料電池を例として燃料にメタノール水溶液が用いられる場合を例としているが、燃料としてジメチルエーテル水溶液等を用いるようにしてもよい。また、上述の実施の形態に係る燃料電池用セパレータを用いてダイレクトメタノール型燃料電池以外の燃料電池を製造するようにしてもよい。
【0039】
また、上述の実施の形態においては、燃料電池セルを製造しているが、出力要求に応じて燃料電池セルを複数個組み合わせた燃料電池スタックを製造するようにしてもよい。即ち、燃料電池セルを複数積層して燃料電池スタックを製造するようにしてもよい。この場合には、燃料電池スタックを、例えば、携帯用パーソナルコンピュータやプリンタ等の電力供給源として用いることができる。
【実施例1】
【0040】
シリコンにボロンをドーピングすることにより電極が形成された基板の電極面にアルゴンガスを用いた逆スパッタリング法により微細な凹凸を形成し、形成された微細な凹凸に電界パルスメッキ法を用いて触媒粒子を付着させることによって触媒層が形成されたセパレータを用いて構成されたダイレクトメタノール型燃料電池の発電試験を以下の条件で行った。
【0041】
燃料:5%のメタノール水溶液
温度:25℃
外部抵抗:1000Ω
ここで、燃料を20mg/minで供給すると共に空気を自然供給した場合の出力は、最大出力で182μW/cmであり、携帯電子機器等の電力供給源に必要な電力を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態に係るセパレータの製造工程を説明する図。
【図2】実施の形態に係るセパレータの製造工程を説明する図。
【図3】実施の形態に係るセパレータの電極を説明する図。
【図4】実施の形態に係る燃料電池を説明する図。
【符号の説明】
【0043】
1・・・電解質膜、2、3・・・セパレータ、4、5・・・セル保持冶具、6・・・緩衝部材、8・・・セル固定冶具、20・・・基板、22・・・電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン導電性を有する電解質膜を燃料極側のシリコン製セパレータと空気極側のシリコン製セパレータとで挟み込んだ燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータにおいて、
前記燃料極側のセパレータは、燃料を供給する燃料流路が形成された面に、電極及び触媒層を備え、
前記空気極側のセパレータは、空気を供給する空気流路が形成された面に、電極及び触媒層を備え、
前記触媒層は、前記セパレータの電極が形成された電極面に形成された、前記触媒に対するアンカー効果を有する微細な凹凸に、触媒を付着させて構成されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記電極は、シリコン製セパレータにボロンをドーピングすることにより形成されることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
前記セパレータの電極面上の微細な凹凸は、不活性ガスを用いた逆スパッタリング法を用いて前記電極面を粗すことにより形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
陽イオン導電性を有する電解質膜を燃料極側のシリコン製セパレータと空気極側のシリコン製セパレータとで挟み込んだ燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータの製造方法において、
基板に流路を形成する流路形成工程と、
前記セパレータにボロンをドーピングすることにより、前記流路形成工程において流路が形成される面に電極を形成する電極形成工程と、
前記電極が形成された電極面に、前記触媒に対するアンカー効果を有する微細な凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸形成工程において前記電極面に形成された微細な凹凸に、触媒を付着させる触媒層形成工程と
を含むことを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項5】
前記凹凸形成工程においては、
不活性ガスを用いた逆スパッタリング法を用いて前記電極面を粗すことによって、前記微細な凹凸を形成することを特徴とする請求項4記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータを用いて構成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
請求項4又は請求項5記載の燃料電池用セパレータの製造方法により製造された燃料電池用セパレータを用いて構成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の燃料電池を電力供給源として備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−252991(P2006−252991A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68695(P2005−68695)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】