燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池
【課題】燃料電池の動作温度(例えば、70℃以上)、発電時に生成する水分、発電反応に伴う電位差等の燃料電池の発電環境下でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータであって、前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有する。
【解決手段】金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータであって、前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に燃料電池は、電解質膜と、触媒層及び拡散層を含む一対の電極(アノード極及びカソード極)と、電極を挟持する一対の燃料電池用セパレータ(アノード極側セパレータ及びカソード側セパレータ)とを有する。燃料電池の発電時には、アノード極に供給するアノードガスを水素ガス、カソード極に供給するカソードガスを酸素ガスとした場合、アノード極側では、水素イオンと電子とにする反応が行われ、水素イオンは電解質膜中を通りカソード極側に、電子は外部回路を通じてカソード極に到達する。一方、カソード極側では、水素イオン、電子及び酸素ガスが反応して水を生成する反応が行われ、エネルギを放出する。
【0003】
上記燃料電池用セパレータとしては、カーボンを基板としたもの、金属を基板としたもの等が挙げられる。
【0004】
金属を基板とした燃料電池用セパレータは、カーボンを基板とした燃料電池用セパレータと比較して機械強度、成形性の点で優れている。しかし、上記説明したように、燃料電池は、発電時に水分を生成するため、カーボンを基板とした燃料電池用セパレータと比較して金属を基板とした燃料電池用セパレータは腐食しやすい。金属を基板とした燃料電池用セパレータが腐食してしまうと、接触抵抗が高くなり、燃料電池の性能低下を招く場合がある。なお、本明細書中、単に、燃料電池用セパレータの接触抵抗と記載している場合には、同種材接触抵抗(燃料電池用セパレータ同士の接触抵抗)及び拡散層接触抵抗(燃料電池用セパレータと拡散層との接触抵抗)両方の意味を有する。
【0005】
例えば、金属基板の腐食を抑えるために、金属基板に、Au、Pt等の貴金属めっき等を施した燃料電池用セパレータが知られている。しかし、上記貴金属は高価であり、めっき等では貴金属の使用量も多く実用的ではない。また、金属基板に黒鉛の層を形成することにより、金属基板の腐食を抑えることは可能であるが、黒鉛の層を形成することは、技術的に困難である。
【0006】
また、例えば、特許文献1には、金属基板の腐食を抑えるために、金属基板にダイヤモンドライクカーボンを被覆した燃料電池用セパレータが提案されている。
【0007】
また、例えば、特許文献2には、金属基板の腐食を抑えるために、金属基板に金属含有のダイヤモンドライクカーボンを被覆した燃料電池用セパレータが提案されている。
【0008】
また、例えば、特許文献3には、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制するために、金属基板に酸化物層を形成し、さらにその表面上に導電層を形成した燃料電池用セパレータが提案されている。
【0009】
また、例えば、特許文献4には、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制するために、金属基板表面上に、低電気抵抗層、耐食性層を形成した燃料電池用セパレータが提案されている。
【0010】
また、例えば、特許文献5には、燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制するために、金属基板に島状に分散したカーボン粒子がクロムカーバイト層を介して金属基板上に結合している燃料電池用セパレータが提案されている。
【0011】
【特許文献1】国際公開第01−006585号パンフレット
【特許文献2】特開2003−123781号公報
【特許文献3】特開2002−151110号公報
【特許文献4】特開2000−164228号公報
【特許文献5】特開2001−283872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の燃料電池用セパレータでは、例えば、燃料電池の動作温度(例えば、70℃以上)、発電時に生成する水分、発電反応に伴う電位差等の燃料電池の発電環境によって、ダイヤモンドライクカーボンが腐食してしまい、燃料電池用セパレータの接触抵抗が増加してしまう。
【0013】
また、特許文献2の燃料電地用セパレータでは、上記燃料電池の発電環境によって、ダイヤモンドライクカーボンとともに、金属が腐食されて、金属酸化物となり、燃料電池用セパレータの接触抵抗がより増加してしまう。
【0014】
また、特許文献3、4の燃料電池用セパレータでは、導電層、低電気抵抗層、耐食性層は、いずれも金属材料を使用しているため、上記燃料電池の発電環境によって、導電層、低電気抵抗層、耐食性層が腐食してしまい、燃料電池用セパレータの接触抵抗が増加してしまう。
【0015】
また、特許文献5の燃料電池用セパレータでは、金属基板全体が、クロムカーバイト層及びカーボン粒子で覆われていないため、上記燃料電池の発電環境によって、金属基板が腐食してしまい、燃料電池用セパレータの接触抵抗が増加してしまう。
【0016】
本発明は、燃料電池の動作温度(例えば、70℃以上)、発電時に生成する水分、発電反応に伴う電位差等の燃料電池の発電環境下でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータ、当該燃料電池用セパレータの製造方法、及び当該燃料電池用セパレータを備える燃料電池である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータであって、前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有する。
【0018】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記導電部は、黒鉛粒子から構成される黒鉛部であることが好ましい。
【0019】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層表面から前記黒鉛部の少なくとも一部が露出した状態で配置されることが好ましい。
【0020】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部は、島状に分散配置されることが好ましい。
【0021】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部のうち粒径が1μm未満の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに12.6個以上存在することが好ましい。
【0022】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部のうち粒径が1μm以上〜3μm未満の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに1.8個以上存在することが好ましい。
【0023】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部のうち粒径が3μm以上の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに0.1個以上存在することが好ましい。
【0024】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記アモルファスカーボン層の膜厚は、30nm〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0025】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記被覆層の腐食電流値が1.5μA/cm2以下であることが好ましい。
【0026】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記金属基板の材質はチタンであり、前記金属基板と前記被覆層との間に前記金属基板のチタンよりチタン純度の高いチタンを材質とするチタン層を配置することが好ましい。
【0027】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記チタン層の膜厚は、25nm〜10μmの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【0028】
また、本発明は、金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータを備える燃料電池であって、前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有する。
【0029】
また、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成するアモルファスカーボン層形成工程と、前記物理蒸着法又は前記化学蒸着法と同一か若しくは異なる方法を用いて前記アモルファスカーボン層に導電部を形成する導電部形成工程とを備える。
【0030】
また、前記燃料電池用セパレータの製造方法において、前記アモルファスカーボン層形成工程及び前記導電部形成工程の物理蒸着法は、フィルターレスアークイオンプレーティング法であり、前記フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いて前記アモルファスカーボン層を形成するとともに、前記導電部としての黒鉛部を形成することが好ましい。
【0031】
また、前記燃料電池用セパレータの製造方法において、前記アモルファスカーボン層及び前記黒鉛部を形成する際に、前記金属基板に印加するバイアス電圧が、150V〜1000Vの範囲であることが好ましい。
【0032】
また、前記燃料電池用セパレータの製造方法において、前記アモルファスカーボン層及び前記黒鉛部を形成する際に、前記金属基板に印加するバイアス電圧が、150V〜250Vの範囲であることが好ましい。
【0033】
また、本発明の燃料電池用セパレータは、前記燃料電池用セパレータの製造方法により得られる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、金属基板上の被覆層が、アモルファスカーボン層及び導電部であることによって、上記燃料電池の発電環境下でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータ及び当該燃料電池用セパレータを備える燃料電池を提供することができる。
【0035】
また、本発明によれば、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成するアモルファスカーボン層形成工程と、前記物理蒸着法又は前記化学蒸着法と同一か若しくは異なる方法を用いて前記アモルファスカーボン層に導電部を形成する導電部形成工程とを備えることにより、上記燃料電池の発電環境下でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池の構成の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、燃料電池1は、電解質膜10と、アノード極12と、カソード極14と、燃料電池用セパレータ16とを備えるものである。電解質膜10は、例えば、パーフルオロスルホン酸系のイオン交換樹脂膜等である。アノード極12、カソード極14は、カーボンペーパ等を用いた拡散層と、貴金属触媒がカーボン等の担体に担持されたシート状の触媒層とにより構成されており、拡散層は燃料電池用セパレータ16側に、触媒層は電解質膜10側に、配置される。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池1は、電解質膜10の一方の表面にアノード極12が、もう一方の表面にカソード極14が、電解質膜10を挟んでそれぞれ対向するように形成された膜−電極アッセンブリ18と、膜−電極アッセンブリ18の両外側を挟持する一対の燃料電池用セパレータ16とを備える。燃料電池用セパレータ16により、アノード極12又はカソード極14に反応ガスを供給する反応ガス流路20が形成されている。
【0039】
図2は、本実施形態に係る燃料電池用セパレータの構成の一例を示す模式断面図である。図2に示すように、燃料電池用セパレータ16は、反応ガス流路20が形成された金属基板22と、金属基板22上に形成された被覆層24とを備える。本実施形態では、被覆層24が反応ガス流路20側(図1に示すアノード極12又はカソード極14と対向する側)の金属基板22上に形成されたものを例としているが、これに限定されるものではない。例えば、被覆層24は、反応ガス流路20の反対側(図1に示すアノード極12又はカソード極14と対向する側と反対側)の金属基板22上に形成されたものであってもよいし、反応ガス流路20及び反応ガス流路20の反対側の金属基板22上に形成されたものであってもよい。
【0040】
次に被覆層24の構成の概要について説明する。図3(イ)〜(ニ)は、図2に示す燃料電池用セパレータの一部拡大模式断面図である。図3(イ)〜(ニ)に示すように、被覆層24は、アモルファスカーボン層26と導電部28(又は28a〜28c)とを備えるものである。アモルファスカーボン層26は、主に金属基板22の腐食を抑制するためのものである。また導電部28は、主に燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制するためのものである。ここで、図3(イ)は、導電部28がアモルファスカーボン層26中及び層上に分散配置された状態を示す図であり、図3(ロ)〜(ニ)は、導電部28がアモルファスカーボン層26上に配置された状態を示す図である。
【0041】
本実施形態の導電部は、導電部の一部が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態(例えば、図3(イ)に示す導電部28a)、導電部の全体が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態(図3(イ)に示す導電部28b、図3(ロ)〜(ニ)に示す導電部28)、導電部の全体が、アモルファスカーボン層の内部に埋没した状態(図3(イ)に示す導電部28c)のうち少なくともいずれかの状態で配置されていることが好ましい。上記いずれかの状態で導電部が配置されていれば、導電部の形態は、図3(イ),(ロ)に示すように、島状のものでも、図3(ハ)に示すように櫛型状のものでも、図3(二)に示すように、層状のもの等でも、特に制限されるものではない。しかし、被覆層の形成が容易である点等から、導電部の形態は、島状であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の導電部は、導電材料から構成されているものであり、例えば、Au、Pt、Ag、Ru、Ir等の貴金属から構成されるもの、黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)、カーボンナノホーン又はカーボンナノチューブから構成されるもの等である。耐腐食性、導電性等の点から、上記貴金属又は黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)であることが好ましく、製造コストの点から黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)であることがより好ましい。
【0043】
また、図3(イ)に示す導電部28a〜28cとしては、導電部の形成が容易である等の点から、黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)であることが好ましい。図3(ロ)に示す導電部28としては、導電部の形成が容易である等の点から、Au、Pt、Ag、Ru、Ir等の貴金属から構成されるものであることが好ましい。図3(ハ)、(ニ)に示す導電部28としては、導電部の形成が容易である等の点から、カーボンナノホーン又はカーボンナノチューブから構成されるものである。
【0044】
アモルファスカーボン層26は、黒鉛(固体)を原料として、公知のスパッタリング法、フィルタードアークイオンプレーティング法、後述するフィルターレスアークイオンプレーティング法により形成されたアモルファスカーボンから構成されるものである。又は、炭化水素系化合物(液体、気体)を原料として、公知のプラズマCVD法、イオン化蒸着法によってもアモルファスカーボン層26を形成することができる。また、アモルファスカーボン層26に代えて、Au、Pt、Ag、Ru、Ir等の貴金属を原料として、公知のスパッタリング法、プラズマCVD法、イオン化蒸着法、フィルタードアークイオンプレーティング法により、上記貴金属から構成される層でもよい。
【0045】
被覆層24は、導電部を有することにより、燃料電池1の発電環境下で、被覆層24を構成するアモルファスカーボン層26が腐食(損傷)しても、燃料電池用セパレータ16の接触抵抗の増加を抑制することができる。そして、被覆層24の構成として好ましいものは、図3(イ)に示すようなアモルファスカーボン層26と導電部28a〜28cの構成であり、導電部28a〜28cが黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)である。上記構成は、アモルファスカーボン層26及び導電部28a〜28cがともにカーボン材であるため、アモルファスカーボンと導電部との界面強度は強い。したがって、アモルファスカーボン層から導電部が剥離し難くなり、導電部の剥離による接触抵抗の増加を抑制することができる。以下、図3(イ)に示すアモルファスカーボン層26と黒鉛粒子から構成される導電部28a〜28cとを有する被覆層24を例として説明する。
【0046】
本実施形態に係る燃料電池用セパレータは、図3(イ)に示すように、金属基板22と、アモルファスカーボン層26と黒鉛粒子から構成される導電部28a〜28c(以下、黒鉛部28a〜28cと呼ぶ)とを有する被覆層24とを備える。
【0047】
本実施形態の黒鉛部は、黒鉛部の一部が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態(例えば、図3(イ)に示す導電部28a)、黒鉛部の全体が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態(図3(イ)に示す導電部28b)、黒鉛部の全体が、アモルファスカーボン層の内部に埋没した状態(図3(イ)に示す導電部28c)のうち少なくともいずれかの状態で配置されていることが好ましい。被覆層の高い導電性を確保する点で、少なくとも黒鉛部の一部が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態であることが好ましい。また、黒鉛部の脱落を防ぐ点で、黒鉛部がアモルファスカーボン層に保持された構成となっていること、すなわち、黒鉛部の一部がアモルファスカーボン層表面から露出した状態及び黒鉛部の全体が、アモルファスカーボン層の内部に埋没した状態で配置されていることが好ましい。また、黒鉛部の形態は、被覆層の形成が容易である点等から、島状であることが好ましい。
【0048】
黒鉛部28a〜28cは、黒鉛粒子から構成され、アモルファスカーボン層26より結晶性が高いものである。結晶性の評価は、ラマンスペクトル分析において、 1540cm−1〜1560cm−1の範囲にあるピークのピーク強度(G)と、1370cm−1〜1390cm−1の範囲にあるピークのピーク強度(D)との強度比(D/G)を算出することによって行われる。強度比(D/G)が、小さいほど、結晶性が高いことを示している。ラマンスペクトルは、公知の方法を用いて測定することができる。具体的には、波長514.5nmのアルゴンレーザを試料に照射し、試料からの散乱光のうち照射光と90度の角度をなす光を分光測定することによって測定することができる。測定装置は、Jobin Yvon社のレーザラマン分光測定装置RAMANOR S−320が挙げられる。
【0049】
黒鉛部28a〜28cのうち粒径が1μm未満の黒鉛部は、アモルファスカーボン層(26)1μm2当たりに12.6個以上存在することが好ましい。粒径が1μm未満である黒鉛部の個数が、上記値より少ないと、燃料電池用セパレータの接触抵抗が高くなる場合がある。粒径が1μm未満の黒鉛部の個数は、アモルファスカーボン層表面を走査型電子顕微鏡写真により撮影し、得られた写真中のアモルファスカーボン層の面積(例えば50μm2)から、目視により粒径が1μm未満の黒鉛部をカウントすることにより求めることができる。
【0050】
また、黒鉛部28a〜28cのうち粒径が1μm以上〜3μm未満の黒鉛部は、アモルファスカーボン層(26)1μm2当たりに1.8個以上存在することがより好ましい。さらに、黒鉛部28a〜28cのうち粒径が3μm以上の黒鉛部は、アモルファスカーボン層(26)1μm2当たりに0.1個以上存在することがより好ましい。粒径が1μm以上〜3μm未満、3μm以上の黒鉛部の個数が、上記それらの値より少ないと、燃料電池用セパレータの接触抵抗が高くなる場合がある。黒鉛部の個数は、上記と同様の方法によって測定することができる。
【0051】
アモルファスカーボン層26は、炭素原子の結合にアモルファス状の結合状態を有するアモルファスカーボン(ダイヤモンドライクカーボンとも呼ばれる)から構成されている。また、アモルファスカーボン層26を形成する際に含まれる水素含有濃度は、抵抗の点から、1%未満であることが好ましい。さらに、アモルファスカーボン層26の導電性を高める点で、アモルファスカーボン層26に金属を含有させたものであってもよいが、燃料電池の発電環境下では、含有金属が腐食する場合がある。そのため、本実施形態では、アモルファスカーボン層26に金属を含有させないことが好ましい。
【0052】
アモルファスカーボン層26の膜厚は、30nm〜10μmの範囲であることが好ましい。図4は、本実施形態に係る燃料電池用セパレータの拡散層接触抵抗とアモルファスカーボン層の膜厚との関係を示す図である。図4に示すようにアモルファスカーボン層の膜厚が、30nmより薄いと、拡散層接触抵抗が増加してしまう。これは、30nmより薄いアモルファスカーボン層を形成すると、膜ではなく島状のアモルファスカーボンとなっているためである。また、10μmより厚いと、燃料電池用セパレータとして実用的でない。
【0053】
被覆層24の腐食電流値は、3.0μA/cm2以下が好ましく、1.5μA/cm2以下であることがより好ましい。被覆層24の腐食電流値が、3.0μA/cm2より高くなると、燃料電池の発電環境下で、被覆層24の破壊が起こりやすくなる場合がある。
【0054】
本実施形態に用いられる金属基板22の材質としては、耐食性に優れたものであることが好ましく、例えば、ステンレス鋼、銅及び銅合金、アルミ及びアルミ合金、チタン及びチタン合金のいずれか1種、またはその複合材等を用いることができる。金属イオン溶出防止の点でチタンを金属基板として用いることが好ましい。
【0055】
図5は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池の構成の一例を示す模式断面図である。図5に示すように、燃料電池2は、電解質膜30と、アノード極32と、カソード極34と、燃料電池用セパレータ36とを備えるものである。電解質膜30は、パーフルオロスルホン酸系のイオン交換樹脂膜等である。アノード極32、カソード極34は、カーボンペーパ等を用いた拡散層と、貴金属触媒がカーボン等の担体に担持されたシート状の触媒層とにより構成されており、拡散層は、燃料電池用セパレータ36側に、触媒層は、電解質膜30側に、配置されている。
【0056】
図5に示すように、本実施形態に係る燃料電池2は、電解質膜30の一方の表面にアノード極32が、もう一方の表面にカソード極34が、電解質膜30を挟んでそれぞれ対向するように形成された膜−電極アッセンブリ38と、膜−電極アッセンブリ38の両外側を挟持する一対の燃料電池用セパレータと36を備える。燃料電池用セパレータ36により、アノード極32又はカソード極34に反応ガスを供給する反応ガス流路40が形成されている。
【0057】
図6は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池用セパレータの構成の一例を示す模式断面図である。図6に示すように、燃料電池用セパレータ36は、反応ガス流路40が形成された金属基板42と、金属基板42上に形成された中間層44と被覆層46とを備える。本実施形態では、中間層44及び被覆層46が反応ガス流路40側(図5に示すアノード極32又はカソード極34と対向する側)の金属基板42上に形成されたものを例としているが、これに限定されるものではない。例えば、中間層44及び被覆層46は、反応ガス流路40の反対側(図5に示すアノード極32又はカソード極34と対向する側と反対側)の金属基板42上に形成されたものであってもよいし、反応ガス流路40及び反応ガス流路40の反対側の金属基板42上に形成されたものであってもよい。
【0058】
本実施形態に用いられる金属基板42の材質としては、耐腐食性に優れたものであることが好ましく、例えば、ステンレス鋼、銅及び銅合金、アルミ及びアルミ合金、チタン及びチタン合金のいずれか1種、またはその複合材等を用いることができる。金属基板の耐腐食性の点で、チタンを金属基板42として用いることが好ましい。また、金属基板42と被覆層46との間に、金属基板42のチタン純度より純度の高いチタン層(中間層44)を配置することが好ましい。このような構成とすることによって、被覆層46の剥離を抑えることができる。また、純度の高い金属の使用量を抑えることができ、製造コストの点でも好ましい。チタン層は、スパッタリング法等により形成される。
【0059】
また、チタン層(中間層44)の膜厚は、25nm〜10μmの範囲であることが好ましい。25nmより薄いチタン層を欠陥なく均一に形成することは、技術的に困難であるため、金属基板42に残存する酸化チタンを核とした酸化物層が生成し、燃料電池用セパレータの接触抵抗を増加させる場合や、金属基板42から被覆層46が剥離し易くなる場合がある。10μmより厚いと、燃料電池用セパレータとして実用的でない。
【0060】
本実施形態では、チタン層を中間層44としたが、金属基板が変わればこれに限定されるものではなく、中間層44は、金属基板を構成する元素で構成されており、C(炭素)との密着性が良好であればよい。
【0061】
次に、本実施形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法について説明する。
【0062】
本実施形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成するアモルファスカーボン層形成工程と、上記物理蒸着法又は上記化学蒸着法と同一若しくは異なる方法を用いてアモルファスカーボン層に導電部を形成する導電部形成工程とを備えるものである。
【0063】
<アモルファスカーボン層形成工程>
アモルファスカーボン層形成工程では、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成する。具体的には、黒鉛(固体)等を原料として、公知のスパッタリング法、フィルタードアークイオンプレーティング法、又は後述するフィルターレスアークイオンプレーティング法等を用いて、アモルファスカーボン層を形成することができる。又は、炭化水素系化合物(液体、気体)を原料として、公知のプラズマCVD法、イオン化蒸着法によってもアモルファスカーボン層を形成することができる。
【0064】
<導電部形成工程>
導電部形成工程では、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上に導電部を形成する。具体的には、Au、Pt、Ag、Co等の貴金属、黒鉛(固体)等のカーボン材料を原料として、公知のインクジェット法、スパッタリング法、アークイオンプレーティング法、プラズマCVD法、イオン化蒸着法、又は後述するフィルターレスアークイオンプレーティング法等を用いて導電部を形成することができる。
【0065】
図3(イ)に示す導電部28a〜28cを形成する場合、例えば、黒鉛(固体)等のカーボン材料を原料として、後述するフィルターレスアークイオンプレーティング法等を用いて、黒鉛部を形成することができる。図3(ロ)に示す導電部28を形成する場合、例えば、Au、Pt、Ag等の貴金属を原料として、公知のインクジェット法、気相合成法、めっき法等を用いて、貴金属から構成される導電部を形成することができる。図3(二)に示す導電部28を形成する場合、メタンガス、エタンガス等の炭化水素ガスを原料として、公知のプラズマCVD法等を用いて、導電部を形成することができる。図3(ハ)に示す導電部28を形成する場合、メタンガス、エタンガス等の炭化水素ガスを原料として、公知のプラズマCVD法等を用いて、導電部を形成した後、反応性イオンエッチングにより櫛型状にすることができる。
【0066】
アモルファスカーボン層及び導電部を形成する物理蒸着法としては、上記列挙した方法のうち、フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いることが好ましい。この方法を用いることによって、アモルファスカーボン層の形成とともに、導電部としての黒鉛部を形成することができ、製造方法を簡略化することができる。また、この方法を用いることによって、図3(イ)に示すようなアモルファスカーボン層26及び黒鉛部28a〜28cを形成することができる。
【0067】
図7は、フィルターレスアークイオンプレーティング法によりアモルファスカーボン層及び黒鉛部を形成することができるフィルターレスアークイオンプレーティング装置の構成の一例を示す模式図である。図7に示すように、フィルターレスアークイオンプレーティング装置3は、真空排気ポンプ(不図示)により真空に排気される真空容器48と、被処理物である金属基板50を保持する装着用治具52と、陰極を構成するターゲット54と、陽極56と、ターゲット54及び陽極56との間に接続されたアーク電源58と、金属基板50にバイアス電圧を印加するバイアス電源60とを有する。
【0068】
金属基板50上にアモルファスカーボン層及び黒鉛部を形成するためには、まず、アーク電源58を起動させ、陽極56とターゲット54との間でアーク放電を生じさせる。このアーク放電により、ターゲット54は、局部的に溶解し、蒸発すると同時にイオン化する。イオン化した物質(ターゲットが蒸発し、イオン化したものであり、以下イオン化蒸発物質と呼ぶ)は、バイアス電源60からバイアス電圧を金属基板50に印加することで、加速され、金属基板50にコーティングされ、アモルファスカーボン層が形成される。
【0069】
上記のアモルファスカーボン層の形成は、フィルターレスアークイオンプレーティング法及び公知のフィルタードアークイオンプレーティング法も同様である。フィルターレスアークイオンプレーティング法及びフィルタードアークイオンプレーティング法では、ターゲットが蒸発しイオン化する際に、溶融粒子(ドロップレット)が発生する。この溶融粒子が、金属基板50に付着すると均一なアモルファスカーボン層を形成することができなくなる。そのため、公知のフィルタードアークイオンプレーティング法では、金属基板50とターゲット54との間に、溶融粒子を通過させないフィルタ(遮蔽板)を備えている。本実施形態で用いるフィルターレスアークイオンプレーティング法は、上記フィルタを使用せず、イオン化蒸発物質と溶融粒子とを金属基板50にコーティングさせる。本実施形態で用いられる、ターゲット54は、カーボン材料である。そして、ターゲット54(カーボン材料)から生成する溶融粒子は、結晶性の高い黒鉛である。したがって、フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いることにより、イオン化蒸発物質によりアモルファスカーボン層が形成されると共に、溶融粒子が金属基板50上に付着することにより黒鉛部が形成される。
【0070】
金属基板50に印加するバイアス電圧は、接触抵抗の低い燃料電池用セパレータを製造する点で、150V〜1000Vの範囲であることが好ましい。金属基板50に印加するバイアス電圧が150Vより低いと、燃料電池用セパレータとして使用することができるレベルの接触抵抗(例えば、10mΩ・cm2)が得られない場合があり、1000Vより高いと、金属基板50に負荷かかり、破損の原因となる場合がある。また、接触抵抗が低く、腐食電流値が低い燃料電池用セパレータを製造する点で、金属基板50に印加するバイアス電圧は、150V〜250Vの範囲又は700V〜1000Vの範囲であることがより好ましく、さらに、燃料電池用セパレータの製造時の消費電力等の点で、150V〜250Vの範囲がより好ましい。
【0071】
上記本実施形態に係る燃料電池は、例えば、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源、自動車用電源、定置用電源等として使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を変えない限り、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0073】
<燃料電池用セパレータの作製>
<実施例1〜8>
図7に示すようなフィルターレスアークイオンプレーティング装置3を用いて、図3(イ)に示すような被覆層を形成した。具体的には、カーボン材をターゲット54として用い、陽極56との間でアーク放電させ、金属基板50としてのチタン板にバイアス電圧50Vを印加し、アモルファスカーボン層及び導電部としての黒鉛部を有する被覆層をチタン板上に形成した。これを実施例1とした。また、実施例2〜8は、実施例1のバイアス電圧に代えて、バイアス電圧150V印加、バイアス電圧200V印加、バイアス電圧250V印加、バイアス電圧500V印加、バイアス電圧750V印加、バイアス電圧1000V印加、バイアス電圧印加無しとしたものである。
【0074】
<比較例1〜3>
スパッタリング法により、カーボン材をターゲットとして用い、チタン板にアモルファスカーボン層を形成したものを比較例1とした。また、フィルタードアークイオンプレーティング法により、カーボン材をターゲットとして用いて、陽極との間でアーク放電させ、アモルファスカーボン層を形成したものを比較例2とした。また、チタン板にAuめっきをしたものを比較例3とした。
【0075】
<接触抵抗の測定>
所定寸法(2cm×2cm)に裁断した各実施例をそれぞれ2枚用意し、各実施例のうち被覆層を形成した面と面とを重ね、それらの両外側を銅板により挟持し、荷重1MPaを加え、一般的に用いられる交流4端子法(電流1A)を用いて、上記各実施例同士の接触抵抗(同種材接触抵抗)を測定した。また、所定寸法(2cm×2cm)に裁断した各実施例とカーボンペーパ(拡散層)とを用意し、各実施例のうち被覆層を形成した面と拡散層(カーボンペーパ)とを重ね、それらの両外側を銅板により挟持し、荷重1MPaを加え、一般的に用いられる交流4端子法(電流1A)を用いて、上記各実施例と拡散層との接触抵抗(拡散層接触抵抗)を測定した。また、上記各比較例も同様の方法で測定した。
【0076】
<腐食電流値の測定>
電解液として80℃の硫酸水溶液(pH4)300mlに対極(Pt板(4cm×4cm))、参照極(Pt板(4cm×4cm))及び作用電極(各実施例(4cm×4cm))を浸漬させ、スタンダードボルタンメトリツール(北斗電工株式会社製、SV−100)を用いて、保持電位1000mV(vs.SHE)、測定時間50時間として、上記各実施例の腐食電流値を測定した。また、上記各比較例も同様の方法で測定した。
【0077】
図8は、実施例1〜8の接触抵抗(同種材接触抵抗+拡散層接触抵抗)と腐食電流値の結果を示す図である。ここで、説明を容易とするために図8の横軸は、実施例1〜8の被覆層を形成する際にチタン板に印加したバイアス電圧で表している。図8に示すように、実施例1〜8の同種材接触抵抗+拡散層接触抵抗の値は、燃料電池用セパレータとして実用的なレベル(例えば、10mΩ・cm2以下)より低い値を示した(特に、バイアス電圧が150〜1000Vの範囲(実施例2〜7))。また図8に示すように、実施例1〜8の腐食電流値は、2.5μA/cm2以下であり、燃料電池用セパレータとして実用的なレベル(例えば、3μA/cm2以下)より低い値を示した。特に、バイアス電圧150V〜200V(実施例2,3)又は750V〜1000V(実施例6,7)の範囲では、腐食電流値は、1.5μA/cm2以下であり、且つ接触抵抗が10mΩ・cm2以下であった。また、750V〜1000V(実施例6,7)の範囲のバイアス電圧を印加するより、バイアス電圧150V〜200V(実施例2,3)の範囲のバイアス電圧を印加する方が、燃料電池用セパレータの製造時の消費電力の点で好ましい。したがって、低接触抵抗、低腐食電流値、及び低消費電力等の点で、バイアス電圧150V〜200Vの範囲で印加した実施例2,3が、最も好ましい。
【0078】
<黒鉛部の個数の測定>
実施例2,8を走査型電子顕微鏡写真により撮影した。図9(イ)は、実施例2、図9(ロ)は、実施例8の走査型電子顕微鏡写真である。また、実施例3も走査型電子顕微鏡写真により撮影した(不図示)。上記得られた写真中のアモルファスカーボン層の面積(50μm×50μm)から粒径が1μm未満、1μ以上〜3μm未満、3μmの黒鉛部の個数を目視により求め、1μm2当たりの個数に換算した結果を表1にまとめた。
【0079】
【表1】
【0080】
上記表からわかるように、バイアス電圧が、0V(実施例10)、150V(実施例2)、250V(実施例3)と高くなるにつれて黒鉛部の個数が増加していることがわかる。そして、上記でも説明したように、バイアス電圧が150〜1000Vの範囲(実施例2〜7)では、バイアス電圧印加無し(実施例10)、バイアス電圧50V(実施例1)より、同種材接触抵抗が低い値(10mΩ・cm2以下)である(図8参照)。したがって、燃料電池用セパレータの接触抵抗を低くする点で、粒径が1μm未満の黒鉛部の個数は、12.6個/μm2が好ましく、また、粒径が1μ以上〜3μm未満の黒鉛部の個数は、1.8個/μm2が好ましく、さらに、粒径が3μm以上の黒鉛部の個数は、0.1個/μm2であることが好ましい。
【0081】
図10は、実施例2及び比較例1〜3の電池環境模擬試験前後の同種材接触抵抗を示す図である。図10に示すように、比較例1,2は、アモルファスカーボン層のみ(黒鉛部が形成されていない)であるため、比較例1,2の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、それぞれ1.0mΩ・cm2以上増加した。一方、実施例2は、黒鉛部を有するため、実施例2の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗値は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、0.2mΩ・cm2増加しただけであった。これは、非常に腐食しにくいAuをめっきした比較例3と同等の値(比較例3は、試験前後で0.1mΩ・cm2の変化)であった。
【0082】
図11は、実施例2及び比較例1,3の電池環境模擬試験前後の拡散層接触抵抗を示す図である。図11に示すように、比較例1の電池環境模擬試験後の拡散層接触抵抗値は、電池環境模擬試験前の拡散層接触抵抗より、5.0mΩ・cm2増加した。一方、実施例2の電池環境模擬試験後の拡散層接触抵抗は、電池環境模擬試験前の拡散層接触抵抗より、0.5mΩ・cm2増加しただけであった。これは、非常に腐食しにくいAuをめっきした比較例3と同等の値(比較例3は、試験前後で0.1mΩ・cm2の変化)であった。
【0083】
このように、被覆層に黒鉛部を有する上記実施例は、燃料電池の発電環境下でも、燃料電池の接触抵抗の増加を抑えることができるものであった。
【0084】
<実施例9>
図7に示すようなフィルターレスアークイオンプレーティング装置3を用いて、以下のように被覆層を形成した。カーボン材をターゲット54として用い、陽極56との間でアーク放電させ、金属基板50としてのチタンの多孔体にバイアス電圧150Vを印加し、アモルファスカーボン層及び黒鉛部を有する被覆層をチタンの多孔体上に形成した。これを実施例9とした。
【0085】
<比較例4,5>
また、フィルタードアークイオンプレーティング法により、カーボンをターゲットとして用いて、陽極との間でアーク放電させ、チタンの多孔体に、アモルファスカーボン層を形成したものを比較例4とした。チタンの多孔体にAuめっきをしたものを比較例5とした。
【0086】
図12は、実施例9及び比較例4,5の電池環境模擬試験前後の同種材接触抵抗を示す図である。図12に示すように、比較例4の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、6.0mΩ・cm2増加した。一方、実施例9の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗値は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、0.2mΩ・cm2増加しただけであった。これは、Auをめっきした比較例5と同等の値(比較例5は、試験前後で0.1mΩ・cm2の変化)であった。
【0087】
図13は、実施例9及び比較例4,5の電池環境模擬試験前後の拡散層接触抵抗を示す図である。図13に示すように、比較例4の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、14.5mΩ・cm2増加した。一方、実施例9の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、0.2mΩ・cm2増加しただけであった。これは、比較例5と同等の値であった(比較例5は、試験前後で0.1mΩ・cm2の変化)であった。
【0088】
このように、金属基板だけでなく多孔体に黒鉛部を有する被覆層を形成した上記実施例でも、燃料電池の発電環境下において、燃料電池セパレータの接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0089】
<実施例10〜13>
スパッタリング法により、チタンをターゲットとして用い、チタン基板上にチタン層(膜厚2.5nm)を形成した。次に、図7に示すようなフィルターレスアークイオンプレーティング装置3を用いて、以下のように被覆層を形成した。カーボン材をターゲット54として用い、陽極56との間でアーク放電させ、金属基板50としてのチタン板にバイアス電圧250Vを印加し、アモルファスカーボン層及び黒鉛部を有する被覆層をチタン層上に形成した。これを実施例10とした。また、実施例11〜13は、チタン層の膜厚をそれぞれ、7.5nm,25nm,50nmとする以外は、実施例10と同様である。
【0090】
<被覆層の剥離試験>
実施例10〜13をそれぞれ1000個用意し、それらにセロハンテープを貼った後、セロハンテープを剥離し、被覆層の状態を目視により観察した。
【0091】
実施例10,11では、被覆層の剥離が観察されたが、実施例12,13では、被覆層の剥離が確認されなかった。したがって、密着性の高い被覆層を形成することができる点で、チタン層の膜厚を25nm以上とした実施例12,13が好ましい。
【0092】
以上のように、金属基板に形成された被覆層が、アモルファスカーボン層及び黒鉛部であることにより、燃料電池の発電環境でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータが得られる。
【0093】
また、金属基板を構成する材料としてチタンを用い、金属基板と被覆層との間にチタン層を配置することによって、被覆層の密着性を高めた燃料電池用セパレータが得られる。特に、チタン層の膜厚を25nm以上にすることが効果的である。
【0094】
また、フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いることによって、簡易な製造工程により、アモルファスカーボン層及び黒鉛部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池の構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態に係る燃料電池用セパレータの構成の一例を示す模式断面図である。
【図3】図2に示す燃料電池用セパレータの一部拡大模式断面図である。
【図4】本実施形態に係る燃料電池用セパレータの拡散層接触抵抗とアモルファスカーボン層の膜厚との関係を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る燃料電池の構成の一例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る燃料電池用セパレータの構成の一例を示す模式断面図である。
【図7】フィルターレスアークイオンプレーティング法によりアモルファスカーボン層及び黒鉛部を形成することができるフィルターレスアークイオンプレーティング装置の構成の一例を示す模式図である。
【図8】実施例1〜8の接触抵抗(同種材接触抵抗+拡散層接触抵抗)と腐食電流値の結果を示す図である。
【図9】実施例2,8の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例2及び比較例1〜3の電池環境模擬試験前後の同種材接触抵抗を示す図である。
【図11】実施例2及び比較例1,3の電池環境模擬試験前後の拡散層接触抵抗を示す図である。
【図12】実施例9及び比較例4,5の電池環境模擬試験前後の同種材接触抵抗を示す図である。
【図13】実施例9及び比較例4,5の電池環境模擬試験前後の拡散層接触抵抗を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1,2 燃料電池、3 フィルターレスアークイオンプレーティング装置、10,30 電解質膜、12,32 アノード極、14,34 カソード極、16,36 燃料電池用セパレータ、18,38 膜−電極アッセンブリ、20,40 反応ガス流路、22,42,50 金属基板、24,46 被覆層、26 アモルファスカーボン層、28,28a〜28c 導電部、44 中間層、48 真空容器、52 装着用治具、54 ターゲット、56 陽極、58 アーク電源、60 バイアス電源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造方法及び燃料電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に燃料電池は、電解質膜と、触媒層及び拡散層を含む一対の電極(アノード極及びカソード極)と、電極を挟持する一対の燃料電池用セパレータ(アノード極側セパレータ及びカソード側セパレータ)とを有する。燃料電池の発電時には、アノード極に供給するアノードガスを水素ガス、カソード極に供給するカソードガスを酸素ガスとした場合、アノード極側では、水素イオンと電子とにする反応が行われ、水素イオンは電解質膜中を通りカソード極側に、電子は外部回路を通じてカソード極に到達する。一方、カソード極側では、水素イオン、電子及び酸素ガスが反応して水を生成する反応が行われ、エネルギを放出する。
【0003】
上記燃料電池用セパレータとしては、カーボンを基板としたもの、金属を基板としたもの等が挙げられる。
【0004】
金属を基板とした燃料電池用セパレータは、カーボンを基板とした燃料電池用セパレータと比較して機械強度、成形性の点で優れている。しかし、上記説明したように、燃料電池は、発電時に水分を生成するため、カーボンを基板とした燃料電池用セパレータと比較して金属を基板とした燃料電池用セパレータは腐食しやすい。金属を基板とした燃料電池用セパレータが腐食してしまうと、接触抵抗が高くなり、燃料電池の性能低下を招く場合がある。なお、本明細書中、単に、燃料電池用セパレータの接触抵抗と記載している場合には、同種材接触抵抗(燃料電池用セパレータ同士の接触抵抗)及び拡散層接触抵抗(燃料電池用セパレータと拡散層との接触抵抗)両方の意味を有する。
【0005】
例えば、金属基板の腐食を抑えるために、金属基板に、Au、Pt等の貴金属めっき等を施した燃料電池用セパレータが知られている。しかし、上記貴金属は高価であり、めっき等では貴金属の使用量も多く実用的ではない。また、金属基板に黒鉛の層を形成することにより、金属基板の腐食を抑えることは可能であるが、黒鉛の層を形成することは、技術的に困難である。
【0006】
また、例えば、特許文献1には、金属基板の腐食を抑えるために、金属基板にダイヤモンドライクカーボンを被覆した燃料電池用セパレータが提案されている。
【0007】
また、例えば、特許文献2には、金属基板の腐食を抑えるために、金属基板に金属含有のダイヤモンドライクカーボンを被覆した燃料電池用セパレータが提案されている。
【0008】
また、例えば、特許文献3には、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制するために、金属基板に酸化物層を形成し、さらにその表面上に導電層を形成した燃料電池用セパレータが提案されている。
【0009】
また、例えば、特許文献4には、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制するために、金属基板表面上に、低電気抵抗層、耐食性層を形成した燃料電池用セパレータが提案されている。
【0010】
また、例えば、特許文献5には、燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制するために、金属基板に島状に分散したカーボン粒子がクロムカーバイト層を介して金属基板上に結合している燃料電池用セパレータが提案されている。
【0011】
【特許文献1】国際公開第01−006585号パンフレット
【特許文献2】特開2003−123781号公報
【特許文献3】特開2002−151110号公報
【特許文献4】特開2000−164228号公報
【特許文献5】特開2001−283872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の燃料電池用セパレータでは、例えば、燃料電池の動作温度(例えば、70℃以上)、発電時に生成する水分、発電反応に伴う電位差等の燃料電池の発電環境によって、ダイヤモンドライクカーボンが腐食してしまい、燃料電池用セパレータの接触抵抗が増加してしまう。
【0013】
また、特許文献2の燃料電地用セパレータでは、上記燃料電池の発電環境によって、ダイヤモンドライクカーボンとともに、金属が腐食されて、金属酸化物となり、燃料電池用セパレータの接触抵抗がより増加してしまう。
【0014】
また、特許文献3、4の燃料電池用セパレータでは、導電層、低電気抵抗層、耐食性層は、いずれも金属材料を使用しているため、上記燃料電池の発電環境によって、導電層、低電気抵抗層、耐食性層が腐食してしまい、燃料電池用セパレータの接触抵抗が増加してしまう。
【0015】
また、特許文献5の燃料電池用セパレータでは、金属基板全体が、クロムカーバイト層及びカーボン粒子で覆われていないため、上記燃料電池の発電環境によって、金属基板が腐食してしまい、燃料電池用セパレータの接触抵抗が増加してしまう。
【0016】
本発明は、燃料電池の動作温度(例えば、70℃以上)、発電時に生成する水分、発電反応に伴う電位差等の燃料電池の発電環境下でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータ、当該燃料電池用セパレータの製造方法、及び当該燃料電池用セパレータを備える燃料電池である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータであって、前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有する。
【0018】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記導電部は、黒鉛粒子から構成される黒鉛部であることが好ましい。
【0019】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層表面から前記黒鉛部の少なくとも一部が露出した状態で配置されることが好ましい。
【0020】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部は、島状に分散配置されることが好ましい。
【0021】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部のうち粒径が1μm未満の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに12.6個以上存在することが好ましい。
【0022】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部のうち粒径が1μm以上〜3μm未満の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに1.8個以上存在することが好ましい。
【0023】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記黒鉛部のうち粒径が3μm以上の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに0.1個以上存在することが好ましい。
【0024】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記アモルファスカーボン層の膜厚は、30nm〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0025】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記被覆層の腐食電流値が1.5μA/cm2以下であることが好ましい。
【0026】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記金属基板の材質はチタンであり、前記金属基板と前記被覆層との間に前記金属基板のチタンよりチタン純度の高いチタンを材質とするチタン層を配置することが好ましい。
【0027】
また、前記燃料電池用セパレータにおいて、前記チタン層の膜厚は、25nm〜10μmの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【0028】
また、本発明は、金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータを備える燃料電池であって、前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有する。
【0029】
また、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成するアモルファスカーボン層形成工程と、前記物理蒸着法又は前記化学蒸着法と同一か若しくは異なる方法を用いて前記アモルファスカーボン層に導電部を形成する導電部形成工程とを備える。
【0030】
また、前記燃料電池用セパレータの製造方法において、前記アモルファスカーボン層形成工程及び前記導電部形成工程の物理蒸着法は、フィルターレスアークイオンプレーティング法であり、前記フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いて前記アモルファスカーボン層を形成するとともに、前記導電部としての黒鉛部を形成することが好ましい。
【0031】
また、前記燃料電池用セパレータの製造方法において、前記アモルファスカーボン層及び前記黒鉛部を形成する際に、前記金属基板に印加するバイアス電圧が、150V〜1000Vの範囲であることが好ましい。
【0032】
また、前記燃料電池用セパレータの製造方法において、前記アモルファスカーボン層及び前記黒鉛部を形成する際に、前記金属基板に印加するバイアス電圧が、150V〜250Vの範囲であることが好ましい。
【0033】
また、本発明の燃料電池用セパレータは、前記燃料電池用セパレータの製造方法により得られる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、金属基板上の被覆層が、アモルファスカーボン層及び導電部であることによって、上記燃料電池の発電環境下でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータ及び当該燃料電池用セパレータを備える燃料電池を提供することができる。
【0035】
また、本発明によれば、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成するアモルファスカーボン層形成工程と、前記物理蒸着法又は前記化学蒸着法と同一か若しくは異なる方法を用いて前記アモルファスカーボン層に導電部を形成する導電部形成工程とを備えることにより、上記燃料電池の発電環境下でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池の構成の一例を示す模式断面図である。図1に示すように、燃料電池1は、電解質膜10と、アノード極12と、カソード極14と、燃料電池用セパレータ16とを備えるものである。電解質膜10は、例えば、パーフルオロスルホン酸系のイオン交換樹脂膜等である。アノード極12、カソード極14は、カーボンペーパ等を用いた拡散層と、貴金属触媒がカーボン等の担体に担持されたシート状の触媒層とにより構成されており、拡散層は燃料電池用セパレータ16側に、触媒層は電解質膜10側に、配置される。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池1は、電解質膜10の一方の表面にアノード極12が、もう一方の表面にカソード極14が、電解質膜10を挟んでそれぞれ対向するように形成された膜−電極アッセンブリ18と、膜−電極アッセンブリ18の両外側を挟持する一対の燃料電池用セパレータ16とを備える。燃料電池用セパレータ16により、アノード極12又はカソード極14に反応ガスを供給する反応ガス流路20が形成されている。
【0039】
図2は、本実施形態に係る燃料電池用セパレータの構成の一例を示す模式断面図である。図2に示すように、燃料電池用セパレータ16は、反応ガス流路20が形成された金属基板22と、金属基板22上に形成された被覆層24とを備える。本実施形態では、被覆層24が反応ガス流路20側(図1に示すアノード極12又はカソード極14と対向する側)の金属基板22上に形成されたものを例としているが、これに限定されるものではない。例えば、被覆層24は、反応ガス流路20の反対側(図1に示すアノード極12又はカソード極14と対向する側と反対側)の金属基板22上に形成されたものであってもよいし、反応ガス流路20及び反応ガス流路20の反対側の金属基板22上に形成されたものであってもよい。
【0040】
次に被覆層24の構成の概要について説明する。図3(イ)〜(ニ)は、図2に示す燃料電池用セパレータの一部拡大模式断面図である。図3(イ)〜(ニ)に示すように、被覆層24は、アモルファスカーボン層26と導電部28(又は28a〜28c)とを備えるものである。アモルファスカーボン層26は、主に金属基板22の腐食を抑制するためのものである。また導電部28は、主に燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制するためのものである。ここで、図3(イ)は、導電部28がアモルファスカーボン層26中及び層上に分散配置された状態を示す図であり、図3(ロ)〜(ニ)は、導電部28がアモルファスカーボン層26上に配置された状態を示す図である。
【0041】
本実施形態の導電部は、導電部の一部が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態(例えば、図3(イ)に示す導電部28a)、導電部の全体が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態(図3(イ)に示す導電部28b、図3(ロ)〜(ニ)に示す導電部28)、導電部の全体が、アモルファスカーボン層の内部に埋没した状態(図3(イ)に示す導電部28c)のうち少なくともいずれかの状態で配置されていることが好ましい。上記いずれかの状態で導電部が配置されていれば、導電部の形態は、図3(イ),(ロ)に示すように、島状のものでも、図3(ハ)に示すように櫛型状のものでも、図3(二)に示すように、層状のもの等でも、特に制限されるものではない。しかし、被覆層の形成が容易である点等から、導電部の形態は、島状であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の導電部は、導電材料から構成されているものであり、例えば、Au、Pt、Ag、Ru、Ir等の貴金属から構成されるもの、黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)、カーボンナノホーン又はカーボンナノチューブから構成されるもの等である。耐腐食性、導電性等の点から、上記貴金属又は黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)であることが好ましく、製造コストの点から黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)であることがより好ましい。
【0043】
また、図3(イ)に示す導電部28a〜28cとしては、導電部の形成が容易である等の点から、黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)であることが好ましい。図3(ロ)に示す導電部28としては、導電部の形成が容易である等の点から、Au、Pt、Ag、Ru、Ir等の貴金属から構成されるものであることが好ましい。図3(ハ)、(ニ)に示す導電部28としては、導電部の形成が容易である等の点から、カーボンナノホーン又はカーボンナノチューブから構成されるものである。
【0044】
アモルファスカーボン層26は、黒鉛(固体)を原料として、公知のスパッタリング法、フィルタードアークイオンプレーティング法、後述するフィルターレスアークイオンプレーティング法により形成されたアモルファスカーボンから構成されるものである。又は、炭化水素系化合物(液体、気体)を原料として、公知のプラズマCVD法、イオン化蒸着法によってもアモルファスカーボン層26を形成することができる。また、アモルファスカーボン層26に代えて、Au、Pt、Ag、Ru、Ir等の貴金属を原料として、公知のスパッタリング法、プラズマCVD法、イオン化蒸着法、フィルタードアークイオンプレーティング法により、上記貴金属から構成される層でもよい。
【0045】
被覆層24は、導電部を有することにより、燃料電池1の発電環境下で、被覆層24を構成するアモルファスカーボン層26が腐食(損傷)しても、燃料電池用セパレータ16の接触抵抗の増加を抑制することができる。そして、被覆層24の構成として好ましいものは、図3(イ)に示すようなアモルファスカーボン層26と導電部28a〜28cの構成であり、導電部28a〜28cが黒鉛粒子から構成されるもの(黒鉛部)である。上記構成は、アモルファスカーボン層26及び導電部28a〜28cがともにカーボン材であるため、アモルファスカーボンと導電部との界面強度は強い。したがって、アモルファスカーボン層から導電部が剥離し難くなり、導電部の剥離による接触抵抗の増加を抑制することができる。以下、図3(イ)に示すアモルファスカーボン層26と黒鉛粒子から構成される導電部28a〜28cとを有する被覆層24を例として説明する。
【0046】
本実施形態に係る燃料電池用セパレータは、図3(イ)に示すように、金属基板22と、アモルファスカーボン層26と黒鉛粒子から構成される導電部28a〜28c(以下、黒鉛部28a〜28cと呼ぶ)とを有する被覆層24とを備える。
【0047】
本実施形態の黒鉛部は、黒鉛部の一部が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態(例えば、図3(イ)に示す導電部28a)、黒鉛部の全体が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態(図3(イ)に示す導電部28b)、黒鉛部の全体が、アモルファスカーボン層の内部に埋没した状態(図3(イ)に示す導電部28c)のうち少なくともいずれかの状態で配置されていることが好ましい。被覆層の高い導電性を確保する点で、少なくとも黒鉛部の一部が、アモルファスカーボン層表面から露出した状態であることが好ましい。また、黒鉛部の脱落を防ぐ点で、黒鉛部がアモルファスカーボン層に保持された構成となっていること、すなわち、黒鉛部の一部がアモルファスカーボン層表面から露出した状態及び黒鉛部の全体が、アモルファスカーボン層の内部に埋没した状態で配置されていることが好ましい。また、黒鉛部の形態は、被覆層の形成が容易である点等から、島状であることが好ましい。
【0048】
黒鉛部28a〜28cは、黒鉛粒子から構成され、アモルファスカーボン層26より結晶性が高いものである。結晶性の評価は、ラマンスペクトル分析において、 1540cm−1〜1560cm−1の範囲にあるピークのピーク強度(G)と、1370cm−1〜1390cm−1の範囲にあるピークのピーク強度(D)との強度比(D/G)を算出することによって行われる。強度比(D/G)が、小さいほど、結晶性が高いことを示している。ラマンスペクトルは、公知の方法を用いて測定することができる。具体的には、波長514.5nmのアルゴンレーザを試料に照射し、試料からの散乱光のうち照射光と90度の角度をなす光を分光測定することによって測定することができる。測定装置は、Jobin Yvon社のレーザラマン分光測定装置RAMANOR S−320が挙げられる。
【0049】
黒鉛部28a〜28cのうち粒径が1μm未満の黒鉛部は、アモルファスカーボン層(26)1μm2当たりに12.6個以上存在することが好ましい。粒径が1μm未満である黒鉛部の個数が、上記値より少ないと、燃料電池用セパレータの接触抵抗が高くなる場合がある。粒径が1μm未満の黒鉛部の個数は、アモルファスカーボン層表面を走査型電子顕微鏡写真により撮影し、得られた写真中のアモルファスカーボン層の面積(例えば50μm2)から、目視により粒径が1μm未満の黒鉛部をカウントすることにより求めることができる。
【0050】
また、黒鉛部28a〜28cのうち粒径が1μm以上〜3μm未満の黒鉛部は、アモルファスカーボン層(26)1μm2当たりに1.8個以上存在することがより好ましい。さらに、黒鉛部28a〜28cのうち粒径が3μm以上の黒鉛部は、アモルファスカーボン層(26)1μm2当たりに0.1個以上存在することがより好ましい。粒径が1μm以上〜3μm未満、3μm以上の黒鉛部の個数が、上記それらの値より少ないと、燃料電池用セパレータの接触抵抗が高くなる場合がある。黒鉛部の個数は、上記と同様の方法によって測定することができる。
【0051】
アモルファスカーボン層26は、炭素原子の結合にアモルファス状の結合状態を有するアモルファスカーボン(ダイヤモンドライクカーボンとも呼ばれる)から構成されている。また、アモルファスカーボン層26を形成する際に含まれる水素含有濃度は、抵抗の点から、1%未満であることが好ましい。さらに、アモルファスカーボン層26の導電性を高める点で、アモルファスカーボン層26に金属を含有させたものであってもよいが、燃料電池の発電環境下では、含有金属が腐食する場合がある。そのため、本実施形態では、アモルファスカーボン層26に金属を含有させないことが好ましい。
【0052】
アモルファスカーボン層26の膜厚は、30nm〜10μmの範囲であることが好ましい。図4は、本実施形態に係る燃料電池用セパレータの拡散層接触抵抗とアモルファスカーボン層の膜厚との関係を示す図である。図4に示すようにアモルファスカーボン層の膜厚が、30nmより薄いと、拡散層接触抵抗が増加してしまう。これは、30nmより薄いアモルファスカーボン層を形成すると、膜ではなく島状のアモルファスカーボンとなっているためである。また、10μmより厚いと、燃料電池用セパレータとして実用的でない。
【0053】
被覆層24の腐食電流値は、3.0μA/cm2以下が好ましく、1.5μA/cm2以下であることがより好ましい。被覆層24の腐食電流値が、3.0μA/cm2より高くなると、燃料電池の発電環境下で、被覆層24の破壊が起こりやすくなる場合がある。
【0054】
本実施形態に用いられる金属基板22の材質としては、耐食性に優れたものであることが好ましく、例えば、ステンレス鋼、銅及び銅合金、アルミ及びアルミ合金、チタン及びチタン合金のいずれか1種、またはその複合材等を用いることができる。金属イオン溶出防止の点でチタンを金属基板として用いることが好ましい。
【0055】
図5は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池の構成の一例を示す模式断面図である。図5に示すように、燃料電池2は、電解質膜30と、アノード極32と、カソード極34と、燃料電池用セパレータ36とを備えるものである。電解質膜30は、パーフルオロスルホン酸系のイオン交換樹脂膜等である。アノード極32、カソード極34は、カーボンペーパ等を用いた拡散層と、貴金属触媒がカーボン等の担体に担持されたシート状の触媒層とにより構成されており、拡散層は、燃料電池用セパレータ36側に、触媒層は、電解質膜30側に、配置されている。
【0056】
図5に示すように、本実施形態に係る燃料電池2は、電解質膜30の一方の表面にアノード極32が、もう一方の表面にカソード極34が、電解質膜30を挟んでそれぞれ対向するように形成された膜−電極アッセンブリ38と、膜−電極アッセンブリ38の両外側を挟持する一対の燃料電池用セパレータと36を備える。燃料電池用セパレータ36により、アノード極32又はカソード極34に反応ガスを供給する反応ガス流路40が形成されている。
【0057】
図6は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池用セパレータの構成の一例を示す模式断面図である。図6に示すように、燃料電池用セパレータ36は、反応ガス流路40が形成された金属基板42と、金属基板42上に形成された中間層44と被覆層46とを備える。本実施形態では、中間層44及び被覆層46が反応ガス流路40側(図5に示すアノード極32又はカソード極34と対向する側)の金属基板42上に形成されたものを例としているが、これに限定されるものではない。例えば、中間層44及び被覆層46は、反応ガス流路40の反対側(図5に示すアノード極32又はカソード極34と対向する側と反対側)の金属基板42上に形成されたものであってもよいし、反応ガス流路40及び反応ガス流路40の反対側の金属基板42上に形成されたものであってもよい。
【0058】
本実施形態に用いられる金属基板42の材質としては、耐腐食性に優れたものであることが好ましく、例えば、ステンレス鋼、銅及び銅合金、アルミ及びアルミ合金、チタン及びチタン合金のいずれか1種、またはその複合材等を用いることができる。金属基板の耐腐食性の点で、チタンを金属基板42として用いることが好ましい。また、金属基板42と被覆層46との間に、金属基板42のチタン純度より純度の高いチタン層(中間層44)を配置することが好ましい。このような構成とすることによって、被覆層46の剥離を抑えることができる。また、純度の高い金属の使用量を抑えることができ、製造コストの点でも好ましい。チタン層は、スパッタリング法等により形成される。
【0059】
また、チタン層(中間層44)の膜厚は、25nm〜10μmの範囲であることが好ましい。25nmより薄いチタン層を欠陥なく均一に形成することは、技術的に困難であるため、金属基板42に残存する酸化チタンを核とした酸化物層が生成し、燃料電池用セパレータの接触抵抗を増加させる場合や、金属基板42から被覆層46が剥離し易くなる場合がある。10μmより厚いと、燃料電池用セパレータとして実用的でない。
【0060】
本実施形態では、チタン層を中間層44としたが、金属基板が変わればこれに限定されるものではなく、中間層44は、金属基板を構成する元素で構成されており、C(炭素)との密着性が良好であればよい。
【0061】
次に、本実施形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法について説明する。
【0062】
本実施形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成するアモルファスカーボン層形成工程と、上記物理蒸着法又は上記化学蒸着法と同一若しくは異なる方法を用いてアモルファスカーボン層に導電部を形成する導電部形成工程とを備えるものである。
【0063】
<アモルファスカーボン層形成工程>
アモルファスカーボン層形成工程では、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成する。具体的には、黒鉛(固体)等を原料として、公知のスパッタリング法、フィルタードアークイオンプレーティング法、又は後述するフィルターレスアークイオンプレーティング法等を用いて、アモルファスカーボン層を形成することができる。又は、炭化水素系化合物(液体、気体)を原料として、公知のプラズマCVD法、イオン化蒸着法によってもアモルファスカーボン層を形成することができる。
【0064】
<導電部形成工程>
導電部形成工程では、物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上に導電部を形成する。具体的には、Au、Pt、Ag、Co等の貴金属、黒鉛(固体)等のカーボン材料を原料として、公知のインクジェット法、スパッタリング法、アークイオンプレーティング法、プラズマCVD法、イオン化蒸着法、又は後述するフィルターレスアークイオンプレーティング法等を用いて導電部を形成することができる。
【0065】
図3(イ)に示す導電部28a〜28cを形成する場合、例えば、黒鉛(固体)等のカーボン材料を原料として、後述するフィルターレスアークイオンプレーティング法等を用いて、黒鉛部を形成することができる。図3(ロ)に示す導電部28を形成する場合、例えば、Au、Pt、Ag等の貴金属を原料として、公知のインクジェット法、気相合成法、めっき法等を用いて、貴金属から構成される導電部を形成することができる。図3(二)に示す導電部28を形成する場合、メタンガス、エタンガス等の炭化水素ガスを原料として、公知のプラズマCVD法等を用いて、導電部を形成することができる。図3(ハ)に示す導電部28を形成する場合、メタンガス、エタンガス等の炭化水素ガスを原料として、公知のプラズマCVD法等を用いて、導電部を形成した後、反応性イオンエッチングにより櫛型状にすることができる。
【0066】
アモルファスカーボン層及び導電部を形成する物理蒸着法としては、上記列挙した方法のうち、フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いることが好ましい。この方法を用いることによって、アモルファスカーボン層の形成とともに、導電部としての黒鉛部を形成することができ、製造方法を簡略化することができる。また、この方法を用いることによって、図3(イ)に示すようなアモルファスカーボン層26及び黒鉛部28a〜28cを形成することができる。
【0067】
図7は、フィルターレスアークイオンプレーティング法によりアモルファスカーボン層及び黒鉛部を形成することができるフィルターレスアークイオンプレーティング装置の構成の一例を示す模式図である。図7に示すように、フィルターレスアークイオンプレーティング装置3は、真空排気ポンプ(不図示)により真空に排気される真空容器48と、被処理物である金属基板50を保持する装着用治具52と、陰極を構成するターゲット54と、陽極56と、ターゲット54及び陽極56との間に接続されたアーク電源58と、金属基板50にバイアス電圧を印加するバイアス電源60とを有する。
【0068】
金属基板50上にアモルファスカーボン層及び黒鉛部を形成するためには、まず、アーク電源58を起動させ、陽極56とターゲット54との間でアーク放電を生じさせる。このアーク放電により、ターゲット54は、局部的に溶解し、蒸発すると同時にイオン化する。イオン化した物質(ターゲットが蒸発し、イオン化したものであり、以下イオン化蒸発物質と呼ぶ)は、バイアス電源60からバイアス電圧を金属基板50に印加することで、加速され、金属基板50にコーティングされ、アモルファスカーボン層が形成される。
【0069】
上記のアモルファスカーボン層の形成は、フィルターレスアークイオンプレーティング法及び公知のフィルタードアークイオンプレーティング法も同様である。フィルターレスアークイオンプレーティング法及びフィルタードアークイオンプレーティング法では、ターゲットが蒸発しイオン化する際に、溶融粒子(ドロップレット)が発生する。この溶融粒子が、金属基板50に付着すると均一なアモルファスカーボン層を形成することができなくなる。そのため、公知のフィルタードアークイオンプレーティング法では、金属基板50とターゲット54との間に、溶融粒子を通過させないフィルタ(遮蔽板)を備えている。本実施形態で用いるフィルターレスアークイオンプレーティング法は、上記フィルタを使用せず、イオン化蒸発物質と溶融粒子とを金属基板50にコーティングさせる。本実施形態で用いられる、ターゲット54は、カーボン材料である。そして、ターゲット54(カーボン材料)から生成する溶融粒子は、結晶性の高い黒鉛である。したがって、フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いることにより、イオン化蒸発物質によりアモルファスカーボン層が形成されると共に、溶融粒子が金属基板50上に付着することにより黒鉛部が形成される。
【0070】
金属基板50に印加するバイアス電圧は、接触抵抗の低い燃料電池用セパレータを製造する点で、150V〜1000Vの範囲であることが好ましい。金属基板50に印加するバイアス電圧が150Vより低いと、燃料電池用セパレータとして使用することができるレベルの接触抵抗(例えば、10mΩ・cm2)が得られない場合があり、1000Vより高いと、金属基板50に負荷かかり、破損の原因となる場合がある。また、接触抵抗が低く、腐食電流値が低い燃料電池用セパレータを製造する点で、金属基板50に印加するバイアス電圧は、150V〜250Vの範囲又は700V〜1000Vの範囲であることがより好ましく、さらに、燃料電池用セパレータの製造時の消費電力等の点で、150V〜250Vの範囲がより好ましい。
【0071】
上記本実施形態に係る燃料電池は、例えば、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源、自動車用電源、定置用電源等として使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を変えない限り、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0073】
<燃料電池用セパレータの作製>
<実施例1〜8>
図7に示すようなフィルターレスアークイオンプレーティング装置3を用いて、図3(イ)に示すような被覆層を形成した。具体的には、カーボン材をターゲット54として用い、陽極56との間でアーク放電させ、金属基板50としてのチタン板にバイアス電圧50Vを印加し、アモルファスカーボン層及び導電部としての黒鉛部を有する被覆層をチタン板上に形成した。これを実施例1とした。また、実施例2〜8は、実施例1のバイアス電圧に代えて、バイアス電圧150V印加、バイアス電圧200V印加、バイアス電圧250V印加、バイアス電圧500V印加、バイアス電圧750V印加、バイアス電圧1000V印加、バイアス電圧印加無しとしたものである。
【0074】
<比較例1〜3>
スパッタリング法により、カーボン材をターゲットとして用い、チタン板にアモルファスカーボン層を形成したものを比較例1とした。また、フィルタードアークイオンプレーティング法により、カーボン材をターゲットとして用いて、陽極との間でアーク放電させ、アモルファスカーボン層を形成したものを比較例2とした。また、チタン板にAuめっきをしたものを比較例3とした。
【0075】
<接触抵抗の測定>
所定寸法(2cm×2cm)に裁断した各実施例をそれぞれ2枚用意し、各実施例のうち被覆層を形成した面と面とを重ね、それらの両外側を銅板により挟持し、荷重1MPaを加え、一般的に用いられる交流4端子法(電流1A)を用いて、上記各実施例同士の接触抵抗(同種材接触抵抗)を測定した。また、所定寸法(2cm×2cm)に裁断した各実施例とカーボンペーパ(拡散層)とを用意し、各実施例のうち被覆層を形成した面と拡散層(カーボンペーパ)とを重ね、それらの両外側を銅板により挟持し、荷重1MPaを加え、一般的に用いられる交流4端子法(電流1A)を用いて、上記各実施例と拡散層との接触抵抗(拡散層接触抵抗)を測定した。また、上記各比較例も同様の方法で測定した。
【0076】
<腐食電流値の測定>
電解液として80℃の硫酸水溶液(pH4)300mlに対極(Pt板(4cm×4cm))、参照極(Pt板(4cm×4cm))及び作用電極(各実施例(4cm×4cm))を浸漬させ、スタンダードボルタンメトリツール(北斗電工株式会社製、SV−100)を用いて、保持電位1000mV(vs.SHE)、測定時間50時間として、上記各実施例の腐食電流値を測定した。また、上記各比較例も同様の方法で測定した。
【0077】
図8は、実施例1〜8の接触抵抗(同種材接触抵抗+拡散層接触抵抗)と腐食電流値の結果を示す図である。ここで、説明を容易とするために図8の横軸は、実施例1〜8の被覆層を形成する際にチタン板に印加したバイアス電圧で表している。図8に示すように、実施例1〜8の同種材接触抵抗+拡散層接触抵抗の値は、燃料電池用セパレータとして実用的なレベル(例えば、10mΩ・cm2以下)より低い値を示した(特に、バイアス電圧が150〜1000Vの範囲(実施例2〜7))。また図8に示すように、実施例1〜8の腐食電流値は、2.5μA/cm2以下であり、燃料電池用セパレータとして実用的なレベル(例えば、3μA/cm2以下)より低い値を示した。特に、バイアス電圧150V〜200V(実施例2,3)又は750V〜1000V(実施例6,7)の範囲では、腐食電流値は、1.5μA/cm2以下であり、且つ接触抵抗が10mΩ・cm2以下であった。また、750V〜1000V(実施例6,7)の範囲のバイアス電圧を印加するより、バイアス電圧150V〜200V(実施例2,3)の範囲のバイアス電圧を印加する方が、燃料電池用セパレータの製造時の消費電力の点で好ましい。したがって、低接触抵抗、低腐食電流値、及び低消費電力等の点で、バイアス電圧150V〜200Vの範囲で印加した実施例2,3が、最も好ましい。
【0078】
<黒鉛部の個数の測定>
実施例2,8を走査型電子顕微鏡写真により撮影した。図9(イ)は、実施例2、図9(ロ)は、実施例8の走査型電子顕微鏡写真である。また、実施例3も走査型電子顕微鏡写真により撮影した(不図示)。上記得られた写真中のアモルファスカーボン層の面積(50μm×50μm)から粒径が1μm未満、1μ以上〜3μm未満、3μmの黒鉛部の個数を目視により求め、1μm2当たりの個数に換算した結果を表1にまとめた。
【0079】
【表1】
【0080】
上記表からわかるように、バイアス電圧が、0V(実施例10)、150V(実施例2)、250V(実施例3)と高くなるにつれて黒鉛部の個数が増加していることがわかる。そして、上記でも説明したように、バイアス電圧が150〜1000Vの範囲(実施例2〜7)では、バイアス電圧印加無し(実施例10)、バイアス電圧50V(実施例1)より、同種材接触抵抗が低い値(10mΩ・cm2以下)である(図8参照)。したがって、燃料電池用セパレータの接触抵抗を低くする点で、粒径が1μm未満の黒鉛部の個数は、12.6個/μm2が好ましく、また、粒径が1μ以上〜3μm未満の黒鉛部の個数は、1.8個/μm2が好ましく、さらに、粒径が3μm以上の黒鉛部の個数は、0.1個/μm2であることが好ましい。
【0081】
図10は、実施例2及び比較例1〜3の電池環境模擬試験前後の同種材接触抵抗を示す図である。図10に示すように、比較例1,2は、アモルファスカーボン層のみ(黒鉛部が形成されていない)であるため、比較例1,2の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、それぞれ1.0mΩ・cm2以上増加した。一方、実施例2は、黒鉛部を有するため、実施例2の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗値は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、0.2mΩ・cm2増加しただけであった。これは、非常に腐食しにくいAuをめっきした比較例3と同等の値(比較例3は、試験前後で0.1mΩ・cm2の変化)であった。
【0082】
図11は、実施例2及び比較例1,3の電池環境模擬試験前後の拡散層接触抵抗を示す図である。図11に示すように、比較例1の電池環境模擬試験後の拡散層接触抵抗値は、電池環境模擬試験前の拡散層接触抵抗より、5.0mΩ・cm2増加した。一方、実施例2の電池環境模擬試験後の拡散層接触抵抗は、電池環境模擬試験前の拡散層接触抵抗より、0.5mΩ・cm2増加しただけであった。これは、非常に腐食しにくいAuをめっきした比較例3と同等の値(比較例3は、試験前後で0.1mΩ・cm2の変化)であった。
【0083】
このように、被覆層に黒鉛部を有する上記実施例は、燃料電池の発電環境下でも、燃料電池の接触抵抗の増加を抑えることができるものであった。
【0084】
<実施例9>
図7に示すようなフィルターレスアークイオンプレーティング装置3を用いて、以下のように被覆層を形成した。カーボン材をターゲット54として用い、陽極56との間でアーク放電させ、金属基板50としてのチタンの多孔体にバイアス電圧150Vを印加し、アモルファスカーボン層及び黒鉛部を有する被覆層をチタンの多孔体上に形成した。これを実施例9とした。
【0085】
<比較例4,5>
また、フィルタードアークイオンプレーティング法により、カーボンをターゲットとして用いて、陽極との間でアーク放電させ、チタンの多孔体に、アモルファスカーボン層を形成したものを比較例4とした。チタンの多孔体にAuめっきをしたものを比較例5とした。
【0086】
図12は、実施例9及び比較例4,5の電池環境模擬試験前後の同種材接触抵抗を示す図である。図12に示すように、比較例4の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、6.0mΩ・cm2増加した。一方、実施例9の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗値は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、0.2mΩ・cm2増加しただけであった。これは、Auをめっきした比較例5と同等の値(比較例5は、試験前後で0.1mΩ・cm2の変化)であった。
【0087】
図13は、実施例9及び比較例4,5の電池環境模擬試験前後の拡散層接触抵抗を示す図である。図13に示すように、比較例4の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、14.5mΩ・cm2増加した。一方、実施例9の電池環境模擬試験後の同種材接触抵抗は、電池環境模擬試験前の同種材接触抵抗より、0.2mΩ・cm2増加しただけであった。これは、比較例5と同等の値であった(比較例5は、試験前後で0.1mΩ・cm2の変化)であった。
【0088】
このように、金属基板だけでなく多孔体に黒鉛部を有する被覆層を形成した上記実施例でも、燃料電池の発電環境下において、燃料電池セパレータの接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0089】
<実施例10〜13>
スパッタリング法により、チタンをターゲットとして用い、チタン基板上にチタン層(膜厚2.5nm)を形成した。次に、図7に示すようなフィルターレスアークイオンプレーティング装置3を用いて、以下のように被覆層を形成した。カーボン材をターゲット54として用い、陽極56との間でアーク放電させ、金属基板50としてのチタン板にバイアス電圧250Vを印加し、アモルファスカーボン層及び黒鉛部を有する被覆層をチタン層上に形成した。これを実施例10とした。また、実施例11〜13は、チタン層の膜厚をそれぞれ、7.5nm,25nm,50nmとする以外は、実施例10と同様である。
【0090】
<被覆層の剥離試験>
実施例10〜13をそれぞれ1000個用意し、それらにセロハンテープを貼った後、セロハンテープを剥離し、被覆層の状態を目視により観察した。
【0091】
実施例10,11では、被覆層の剥離が観察されたが、実施例12,13では、被覆層の剥離が確認されなかった。したがって、密着性の高い被覆層を形成することができる点で、チタン層の膜厚を25nm以上とした実施例12,13が好ましい。
【0092】
以上のように、金属基板に形成された被覆層が、アモルファスカーボン層及び黒鉛部であることにより、燃料電池の発電環境でも、金属基板の腐食を抑え、且つ燃料電池用セパレータの接触抵抗の増加を抑制することができる燃料電池用セパレータが得られる。
【0093】
また、金属基板を構成する材料としてチタンを用い、金属基板と被覆層との間にチタン層を配置することによって、被覆層の密着性を高めた燃料電池用セパレータが得られる。特に、チタン層の膜厚を25nm以上にすることが効果的である。
【0094】
また、フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いることによって、簡易な製造工程により、アモルファスカーボン層及び黒鉛部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池の構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態に係る燃料電池用セパレータの構成の一例を示す模式断面図である。
【図3】図2に示す燃料電池用セパレータの一部拡大模式断面図である。
【図4】本実施形態に係る燃料電池用セパレータの拡散層接触抵抗とアモルファスカーボン層の膜厚との関係を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る燃料電池の構成の一例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る燃料電池用セパレータの構成の一例を示す模式断面図である。
【図7】フィルターレスアークイオンプレーティング法によりアモルファスカーボン層及び黒鉛部を形成することができるフィルターレスアークイオンプレーティング装置の構成の一例を示す模式図である。
【図8】実施例1〜8の接触抵抗(同種材接触抵抗+拡散層接触抵抗)と腐食電流値の結果を示す図である。
【図9】実施例2,8の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例2及び比較例1〜3の電池環境模擬試験前後の同種材接触抵抗を示す図である。
【図11】実施例2及び比較例1,3の電池環境模擬試験前後の拡散層接触抵抗を示す図である。
【図12】実施例9及び比較例4,5の電池環境模擬試験前後の同種材接触抵抗を示す図である。
【図13】実施例9及び比較例4,5の電池環境模擬試験前後の拡散層接触抵抗を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1,2 燃料電池、3 フィルターレスアークイオンプレーティング装置、10,30 電解質膜、12,32 アノード極、14,34 カソード極、16,36 燃料電池用セパレータ、18,38 膜−電極アッセンブリ、20,40 反応ガス流路、22,42,50 金属基板、24,46 被覆層、26 アモルファスカーボン層、28,28a〜28c 導電部、44 中間層、48 真空容器、52 装着用治具、54 ターゲット、56 陽極、58 アーク電源、60 バイアス電源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータであって、
前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池用セパレータであって、前記導電部は、黒鉛粒子から構成される黒鉛部であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層表面から前記黒鉛部の少なくとも一部が露出した状態で配置されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部は、島状に分散配置されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部のうち粒径が1μm未満の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに12.6個以上存在することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項4記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部のうち粒径が1μm以上〜3μm未満の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに1.8個以上存在することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項7】
請求項4記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部のうち粒径が3μm以上の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに0.1個以上存在することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータであって、前記アモルファスカーボン層の膜厚は、30nm〜10μmの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータであって、前記被覆層の腐食電流値が1.5μA/cm2以下であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータであって、前記金属基板の材質はチタンであり、前記金属基板と前記被覆層との間に前記金属基板のチタンよりチタン純度の高いチタンを材質とするチタン層を配置することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項11】
請求項10記載の燃料電池用セパレータであって、前記チタン層の膜厚は、25nm〜10μmの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項12】
金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータを備える燃料電池であって、
前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有することを特徴とする燃料電池。
【請求項13】
物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成するアモルファスカーボン層形成工程と、前記物理蒸着法又は前記化学蒸着法と同一若しくは異なる方法を用いて前記アモルファスカーボン層に導電部を形成する導電部形成工程とを備えることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記アモルファスカーボン層形成工程及び前記導電部形成工程の物理蒸着法は、フィルターレスアークイオンプレーティング法であり、前記フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いて前記アモルファスカーボン層を形成するとともに、前記導電部としての黒鉛部を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記アモルファスカーボン層及び前記黒鉛部を形成する際に、前記金属基板に印加するバイアス電圧が、150V〜1000Vの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記アモルファスカーボン層及び前記黒鉛部を形成する際に、前記金属基板に印加するバイアス電圧が、150V〜250Vの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法により得られた燃料電池用セパレータ。
【請求項1】
金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータであって、
前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池用セパレータであって、前記導電部は、黒鉛粒子から構成される黒鉛部であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層表面から前記黒鉛部の少なくとも一部が露出した状態で配置されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部は、島状に分散配置されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部のうち粒径が1μm未満の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに12.6個以上存在することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項4記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部のうち粒径が1μm以上〜3μm未満の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに1.8個以上存在することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項7】
請求項4記載の燃料電池用セパレータであって、前記黒鉛部のうち粒径が3μm以上の黒鉛部は、前記アモルファスカーボン層1μm2当たりに0.1個以上存在することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータであって、前記アモルファスカーボン層の膜厚は、30nm〜10μmの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータであって、前記被覆層の腐食電流値が1.5μA/cm2以下であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータであって、前記金属基板の材質はチタンであり、前記金属基板と前記被覆層との間に前記金属基板のチタンよりチタン純度の高いチタンを材質とするチタン層を配置することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項11】
請求項10記載の燃料電池用セパレータであって、前記チタン層の膜厚は、25nm〜10μmの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項12】
金属基板上に被覆層を有する燃料電池用セパレータを備える燃料電池であって、
前記被覆層は、アモルファスカーボン層と導電部とを有することを特徴とする燃料電池。
【請求項13】
物理蒸着法又は化学蒸着法を用いて金属基板上にアモルファスカーボン層を形成するアモルファスカーボン層形成工程と、前記物理蒸着法又は前記化学蒸着法と同一若しくは異なる方法を用いて前記アモルファスカーボン層に導電部を形成する導電部形成工程とを備えることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記アモルファスカーボン層形成工程及び前記導電部形成工程の物理蒸着法は、フィルターレスアークイオンプレーティング法であり、前記フィルターレスアークイオンプレーティング法を用いて前記アモルファスカーボン層を形成するとともに、前記導電部としての黒鉛部を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記アモルファスカーボン層及び前記黒鉛部を形成する際に、前記金属基板に印加するバイアス電圧が、150V〜1000Vの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記アモルファスカーボン層及び前記黒鉛部を形成する際に、前記金属基板に印加するバイアス電圧が、150V〜250Vの範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法により得られた燃料電池用セパレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−204876(P2008−204876A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41592(P2007−41592)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]