説明

燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置

【課題】導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータの製造方法において、より均一に火炎処理することである。
【解決手段】導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータの製造方法であって、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部24を火炎処理する凸部火炎処理工程(S12)と、燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部に伝わる熱量を低減して凹部を選択的に火炎処理する凹部火炎処理工程(S14)とを有する。そして、凸部火炎処理工程(S12)は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部26をマスキングして火炎処理し、凹部火炎処理工程(S14)は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部24をマスキングして火炎処理することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置に係り、特に、導電性材料を含む樹脂で凹凸状に予備成形される燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、高効率と優れた環境特性を有する電池として近年脚光を浴びている。燃料電池は、一般的に、燃料ガスである水素に空気中の酸素を化学反応させて、電気エネルギをつくりだしている。そして、水素と酸素とが化学反応した結果として、水が生成される。燃料電池の種類は、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、アルカリ型、固体高分子型等がある。この中でも、常温で起動しかつ起動時間が速い等の利点を有する固体高分子型の燃料電池が注目されている。固体高分子型の燃料電池に用いられる単セルは、電解質膜と、触媒層と、ガス拡散層と、セパレータとを含んで構成される。このうち電解質膜と、触媒層と、ガス拡散層とを一体化したものは、一般的に、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)と呼ばれている。
【0003】
図8は、燃料電池に使用される単セル60の構成を示す模式図である。燃料電池に使用される単セル60は、図8に示すように、電解質膜62の両側にそれぞれ触媒層64が積層され、各々の触媒層64にガス拡散層66が積層されて構成される膜電極接合体68に、更に、燃料電池用セパレータ70が積層されることにより構成される。
【0004】
燃料電池用セパレータは、チタンやステンレス等の金属材料または焼成カーボン材料等を機械加工等することにより製造される。また、燃料電池用セパレータは、導電性材料、例えば、カーボン材料を含む樹脂を射出成形等で成形することにより製造される。そして、燃料電池用セパレータの表面には、燃料ガス、酸化ガスまたは冷却液(Long Life Coolant:LLC)の流路が形成されている。
【0005】
燃料電池用セパレータは、生成した水を効率的に排水し、フラッデング(Flooding)を抑制するために親水性機能を有している。そして、燃料電池用セパレータの親水性は、例えば、導電性材料を含む樹脂を用いて予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を火炎処理することにより、燃料電池用セパレータに付与される。
【0006】
特許文献1には、黒鉛粉と樹脂からなる材料を成形又は機械加工をして得られる燃料電池用セパレータ材の表面を、バーナからの火炎と接触させて500〜1200℃の火炎温度で、0.5〜30secの処理時間でフレーム処理することにより親水性が付与された燃料電池用セパレータ等が示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−313356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体をガスバーナ等で火炎処理する場合には、例えば、燃料電池用セパレータ予備成形体に対して略垂直にガスバーナのノズルを配置して、燃料電池用セパレータ予備成形体を火炎処理する。このような方法により燃料電池用セパレータ予備成形体を火炎処理する場合には、燃料電池用セパレータ予備成形体が凹凸状であるため、火炎処理されて製造された燃料電池用セパレータにばらつきが生じる場合がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、より均一に火炎処理して製造される燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータの製造方法であって、燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部に伝わる熱量を低減して凹部を選択的に火炎処理する凹部火炎処理工程を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法において、凹部火炎処理工程は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部における側面に沿って凹部を火炎処理することが好ましい。
【0012】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法において、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部を火炎処理する凸部火炎処理工程を有し、凸部火炎処理工程は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部をマスキングして火炎処理し、凹部火炎処理工程は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部をマスキングして火炎処理することが好ましい。
【0013】
本発明に係る燃料電池用セパレータは、導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータであって、燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部に伝わる熱量を低減して凹部を選択的に火炎処理して製造されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る燃料電池用セパレータは、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部を、凹部における側面に沿って火炎処理して製造されることが好ましい。
【0015】
本発明に係る燃料電池用セパレータは、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部を、凹部をマスキングして火炎処理し、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部を、凸部をマスキングして火炎処理して製造されることが好ましい。
【0016】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造装置は、導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータの製造装置であって、燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部に伝わる熱量を低減して凹部を選択的に火炎処理する凹部火炎処理手段を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造装置は、凹部火炎処理手段は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部における側面に沿って凹部を火炎処理することが好ましい。
【0018】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造装置は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部を火炎処理する凸部火炎処理手段を有し、凸部火炎処理手段は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部をマスキングして火炎処理し、凹部火炎処理手段は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部をマスキングして火炎処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上記燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置によれば、より均一に火炎処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、燃料電池用セパレータの製造方法を示すフローチャートである。
【0021】
燃料電池用セパレータ予備成形工程(S10)は、導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に燃料電池用セパレータ予備成形体を予備成形する工程である。
【0022】
樹脂は、燃料電池用セパレータ予備成形体を所定の形状に予備成形するために用いられる。樹脂には、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が用いられる。これらの樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、液晶性ポリマ(LCP)等を使用することができる。勿論、樹脂は、これらの熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂に限定されることはない。また、これらの樹脂には、樹脂を溶かすための溶剤や樹脂を硬化させるための硬化剤等を添加することができる。
【0023】
導電性材料は、導電性を付与するために樹脂に添加される。導電性材料には、炭素材料や黒鉛材料等を用いることができる。そして、これらの材料には、例えば、カーボンブラックや黒鉛粉末等が用いられる。カーボンブラックには、ケッチェンブラック(ライオン社製)やデンカブラック(電気化学工業社製)等を用いることができる。また、炭素材料には、カーボンファイバまたはカーボンナノチューブ等を使用してもよい。勿論、他の条件次第では、導電性材料として、金またはニッケル等の金属粉末等を用いてもよく、これらの材料に限定されることはない。
【0024】
燃料電池用セパレータ予備成形体は、導電性材料を含む樹脂を射出成形して予備成形されることが好ましい。射出成形は、複雑形状の樹脂成形品についても成形可能であり、生産性が高い成形方法であるからである。勿論、他の条件次第では、燃料電池用セパレータ予備成形体は、圧縮成形等により成形することができる。
【0025】
燃料電池用セパレータ予備成形体は、樹脂と導電性材料とを所定の割合で混合機により混合した導電性材料を含む樹脂を、所定の形状を有する金型に射出することにより予備成形される。ここで、金型は、予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体が凹凸状となるような形状に機械加工されて製造される。燃料電池用セパレータ予備成形体を凹凸状とするのは、燃料ガス、酸化ガスまたは冷却液等の流路を形成するためである。そして、金型の中で導電性材料を含む樹脂を固化または硬化させた後、脱型することにより燃料電池用セパレータ予備成形体が予備成形される。
【0026】
そして、燃料電池用セパレータ予備成形体の表面には、その内部よりも樹脂比率が高い樹脂リッチ層が略40μm〜略50μm形成される。これは、燃料電池用セパレータ予備成形体の予備成形時において、樹脂の流動性が導電性材料、特に、カーボン材料の流動性よりも高いために、燃料電池用セパレータ予備成形体の表面に樹脂が流れやすいからである。
【0027】
図2は、予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体10を示す図である。燃料電池用セパレータ予備成形体10は、酸化ガスマニホールド入口12と、酸化ガスマニホールド出口14と、燃料ガスマニホールド入口16と、燃料ガスマニホールド出口18と、冷却液マニホールド入口20と、冷却液マニホールド出口22と、ガス流路突出部である凸部24と、ガス流路溝である凹部26と、シール部28とを有している。
【0028】
凸部火炎処理工程(S12)は、燃料電池用セパレータ予備成形体10の凸部24を火炎処理する工程である。燃料電池用セパレータ予備成形体10の凸部24を火炎処理するのは、燃料電池用セパレータ予備成形体10の凸部24表面に形成された樹脂リッチ層を、火炎処理により樹脂を炭化させて除去するためである。
【0029】
凸部火炎処理工程(S12)は、燃料電池用セパレータ予備成形体10の凹部26をマスキングして凸部24を火炎処理することが好ましい。このように、燃料電池用セパレータ予備成形体10の凹部26をマスキング材でマスキングすることにより、凹部26への火炎処理の影響を抑えて凸部24を火炎処理することができる。
【0030】
図3は、凹部26をマスキングした燃料電池用セパレータ予備成形体30を示す図である。燃料電池用セパレータ予備成形体30は、図3に示すように、凹部26だけでなく酸化ガスマニホールド入口12等についてもマスキング材32によりマスキングされる。ここで、マスキング材32の材料には、耐熱性を有する炭素材料、黒鉛材料またはセラミックスを用いることができる。勿論、他の条件次第では、高融点金属材料等を用いることができ、これらの材料に限定されることはない。マスキング材32は、燃料電池用セパレータ予備成形体10の凸部24に対応する部分が開口となるように機械加工等して製造される。
【0031】
マスキング材32は、燃料電池用セパレータ予備成形体10に、マスキング材32の開口と燃料電池用セパレータ予備成形体10の凸部24とが合うようにして取り付けられる。また、マスキング材32は、火炎処理中のズレを抑えるために、支持部材等により支持されて取り付けられてもよい。勿論、他の条件次第では、マスキング材32と燃料電池用セパレータ予備成形体10とを接着等により仮止めすることもできる。
【0032】
凹部26をマスキングした燃料電池用セパレータ予備成形体30の凸部24は、凸部火炎処理手段により火炎処理される。図4は、燃料電池用セパレータ予備成形体30の凸部24における火炎処理を示す模式図である。凸部火炎処理手段には、一般的に、火炎処理で用いられるガスバーナ火炎処理装置34を使用することができる。
【0033】
ガスバーナ火炎処理装置34のノズルは、燃料電池用セパレータ予備成形体30に対して略垂直となるようにして配置される。そして、ガスバーナ火炎処理装置34のノズルから噴射された火炎は、マスキング材32の開口35を通って、燃料電池用セパレータ予備成形体30の凸部24と接触する。ガスバーナ火炎処理装置34は、1本のノズルだけでなく複数本のノズルを用いることができる。凸部24における火炎処理は、ガスバーナ火炎処理装置34のノズルを、例えば、凸部24に沿って移動させることにより処理することができる。そして、凸部24における火炎処理は、ガスバーナ火炎処理装置34のノズルを、順次、平行移動させることにより全ての凸部24を火炎処理して終了する。また、シール部28についても凸部24と同様に火炎処理される。
【0034】
凸部24における火炎処理条件は、火炎処理により樹脂を炭化して、燃料電池用セパレータ予備成形体30の凸部24表面に形成された樹脂リッチ層を除去できる処理条件で処理される。凸部24における火炎処理条件は、表面温度が略500℃以上略1000℃以下、処理時間が略1秒間以上略5秒間以下とすることが好ましい。勿論、他の条件次第では、このような火炎処理条件に限定されることはない。そして、燃料電池用セパレータ予備成形体30の凸部24とシール部28とにおける火炎処理が終了した後、マスキング材32が取り外される。
【0035】
このように、燃料電池用セパレータ予備成形体30の凸部24を火炎処理することにより、燃料電池用セパレータ予備成形体30の凸部24表面に形成された樹脂リッチ層が除去される。そして、凸部24の樹脂リッチ層が除去されることにより、膜電極接合体と接触するガス流路突出部の表面抵抗を10mΩ・cm以下にすることができる。
【0036】
凹部火炎処理工程(S14)は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部26を火炎処理する工程である。燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部26を火炎処理するのは、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部26表面に形成された樹脂リッチ層を、火炎処理により樹脂を炭化させて除去するためである。凹部火炎処理工程(S14)は、燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部24に伝わる熱量を低減して凹部26を選択的に火炎処理することができる。このように、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部24に伝わる熱量を低減することにより、凸部24への火炎処理の影響を抑えて凹部26が火炎処理される。
【0037】
凹部火炎処理工程(S14)は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部24をマスキングして凹部26を火炎処理することが好ましい。このように、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部24をマスキング材によりマスキングすることにより、凸部24への火炎処理の影響を抑えて凹部26を火炎処理することができる。
【0038】
図5は、凸部24をマスキングした燃料電池用セパレータ予備成形体40を示す図である。燃料電池用セパレータ予備成形体40は、凸部24を火炎処理した燃料電池用セパレータ予備成形体41にマスキング材42でマスキングしたものである。そして、燃料電池用セパレータ予備成形体40は、図5に示すように、凸部24だけでなく、シール部28や酸化ガスマニホールド入口12等についてもマスキング材42でマスキングされる。
【0039】
マスキング材42には、上述した耐熱性を有する炭素材料等を用いることができる。そして、マスキング材42は、燃料電池用セパレータ予備成形体41の凹部26に対応する部分が開口となるようにして機械加工等して製造される。マスキング材42は、凸部24が火炎処理された燃料電池用セパレータ予備成形体41に、マスキング材42の開口と燃料電池用セパレータ予備成形体41の凹部26とが合うようにして、上述したような方法により取り付けられる。
【0040】
凸部24をマスキングした燃料電池用セパレータ予備成形体40の凹部26は、凹部火炎処理手段により火炎処理される。図6は、燃料電池用セパレータ予備成形体40の凹部26における火炎処理を示す模式図である。凹部火炎処理手段には、上述したように、一般的に、火炎処理で用いられるガスバーナ火炎処理装置36を使用することができる。また、ガスバーナ火炎処理装置36は、燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部24に伝わる熱量を低減して凹部26を選択的に火炎処理することができる。これにより、凸部24をマスキングしない場合においても、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部24に伝わる熱量を低減することにより、凸部24への火炎処理の影響を抑えて凹部26を火炎処理することができる。勿論、ガスバーナ火炎処理装置36は、凸部24をマスキングする場合においても、凸部24に伝わる熱量を低減して凹部26を選択的に火炎処理してもよい。
【0041】
ガスバーナ火炎処理装置36のノズルは、燃料電池用セパレータ予備成形体40に対して所定の角度となるように傾けることができる。ガスバーナ火炎処理装置36のノズルを所定の角度に傾けることにより、凹部26の底面だけでなく凹部26の側面についても火炎処理することができる。そして、ガスバーナ火炎処理装置36のノズルから噴射された火炎は、マスキング材42の開口37を通って、燃料電池用セパレータ予備成形体40の凹部26と接触する。ガスバーナ火炎処理装置36は、1本のノズルだけでなく複数本のノズルを用いることができる。
【0042】
凹部26における火炎処理は、ガスバーナ火炎処理装置36のノズルを、凹部26における側面に沿って移動させることにより凹部26を処理することができる。そして、凹部26における火炎処理は、ガスバーナ火炎処理装置36のノズルを、順次、平行移動させることにより全ての凹部26を火炎処理して終了する。
【0043】
凹部26における火炎処理条件は、火炎処理により樹脂を炭化して、燃料電池用セパレータ予備成形体40の凹部26表面に形成された樹脂リッチ層を除去できる処理条件で処理される。凹部26における火炎処理条件は、燃料電池用セパレータ予備成形体の表面温度が略500℃以上略1000℃以下、処理時間が略1秒間以上略5秒間以下とすることが好ましい。勿論、他の条件次第では、このような火炎処理条件に限定されることはない。そして、燃料電池用セパレータ予備成形体40の凹部26の火炎処理が終了した後、マスキング材42が取り外される。
【0044】
このように、燃料電池用セパレータ予備成形体40の凹部26を火炎処理することにより、燃料電池用セパレータ予備成形体40の凹部26表面に形成された樹脂リッチ層が除去される。そして、凹部26の樹脂リッチ層が除去されることにより、ガス流路溝部の親水性を、焼成カーボンを機械加工して製造された燃料電池用セパレータの親水性と略同等にすることができる。
【0045】
ぬれ張力測定工程(S16)は、凸部と凹部とが火炎処理された燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部26をぬれ張力測定して、凹部26の親水性を評価する工程である。ぬれ張力測定は、JIS K6768におけるシートぬれ張力試験法により行うことができる。図7は、火炎処理された燃料電池用セパレータのシートぬれ張力試験方法を示す図である。ぬれ張力測定は、エチレングリコールモノエチルエーテルと、ホルムアルデヒドと、メタノールと、純水とを所定の割合で混合した混合試薬50を綿棒52等に浸み込ませた後、混合試薬50を浸み込ませた綿棒52を凹部26に塗布して測定する。そして、凹部26の親水性は、焼成カーボンを機械加工して製造された燃料電池用セパレータと略同等の親水性レベル70以上であることが確認される。
【0046】
表面抵抗測定工程(S18)は、凸部と凹部とが火炎処理された燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部24におけるガス流路突出部の表面抵抗を測定して導電性を評価する工程である。表面抵抗の測定は、一般的な、表面抵抗測定方法により行うことができる。そして、凸部24の表面抵抗は、火炎処理前の50mΩ・cm以上500mΩ・cm以下に対して10mΩ・cm以下であることが確認される。
【0047】
以上により燃料電池用セパレータの製造が完了する。なお、上記構成における燃料電池用セパレータの製造方法では、凸部火炎処理工程(S12)を行った後に、凹部火炎処理工程(S14)を行って燃料電池用セパレータを製造する方法について説明したが、勿論、凹部火炎処理工程(S14)を行った後に、凸部火炎処理工程(S12)を行って燃料電池用セパレータを製造することもできる。
【0048】
上記構成の燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置によれば、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部と凹部との火炎処理を分けることにより、ガスバーナ火炎処理装置のノズルから燃料電池用セパレータ予備成形体の表面までの距離または角度等を略同じとすることができ、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部と凹部との火炎処理におけるムラ、ばらつきを抑制し、より均一に火炎処理することができる。また、燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部に伝わる熱量を低減して凹部を選択的に火炎処理することにより、凸部への火炎処理の影響を抑えて凹部を火炎処理することができる。
【0049】
上記構成の燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置によれば、マスキングして火炎処理するので、凸部を火炎処理するときは凹部への影響を抑制し、凹部を火炎処理するときは凸部への影響を抑制して火炎処理される。そのため、凸部と凹部とが、より均一に火炎処理された燃料電池用セパレータを製造することができる。
【0050】
上記構成の燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置によれば、火炎処理により凸部の樹脂リッチ層が除去されるので燃料電池用セパレータにおけるガス流路突出部の表面抵抗をより低減することができ、燃料電池用セパレータと膜電極接合体との導電性を更に高めることができる。そして、燃料電池用セパレータと膜電極接合体との接触抵抗をより小さくし、抵抗損失を少なくすることで燃料電池の発電効率を高めることができる。
【0051】
上記構成の燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置によれば、火炎処理により凹部の樹脂リッチ層が除去されるので燃料電池用セパレータにおけるガス流路溝部の親水性を更に高めることができる。そのため、燃料電池の高出力時においてもフラッデングを抑制することができる。
【0052】
上記構成の燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置によれば、燃料電池用セパレータの外周であるシール部にシール剤を塗布する場合や絶縁シートを貼り付ける場合においても、火炎処理により燃料電池用セパレータのシール部に親水性を付与することでシール剤または絶縁シートの付着性を、更に、高めることができる。
【0053】
上記構成の燃料電池用セパレータの製造方法、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータの製造装置によれば、樹脂リッチ層を火炎処理により除去することにより、高価な機械加工により除去するよりも燃料電池用セパレータの製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明における実施の形態である燃料電池用セパレータの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明における実施の形態である予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を示す図である。
【図3】本発明における実施の形態である凹部をマスキングした燃料電池用セパレータ予備成形体を示す図である。
【図4】本発明における実施の形態である燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部における火炎処理を示す模式図である。
【図5】本発明における実施の形態である凸部をマスキングした燃料電池用セパレータ予備成形体を示す図である。
【図6】本発明における実施の形態である燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部における火炎処理を示す模式図である。
【図7】本発明における実施の形態である火炎処理された燃料電池用セパレータのシートぬれ張力試験方法を示す図である。
【図8】燃料電池に使用される単セルの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
10 燃料電池用セパレータ予備成形体、12 酸化ガスマニホールド入口、14 酸化ガスマニホールド出口、16 燃料ガスマニホールド入口、18 燃料ガスマニホールド出口、20 冷却液マニホールド入口、22 冷却液マニホールド出口、24 凸部、26 凹部、28 シール部、32,42 マスキング材、34,36 ガスバーナ火炎処理装置、50 混合試薬、52 綿棒、60 単セル、62 電解質膜、64 触媒層、66 ガス拡散層、68 膜電極接合体、70 燃料電池用セパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータの製造方法であって、
燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部に伝わる熱量を低減して凹部を選択的に火炎処理する凹部火炎処理工程を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
凹部火炎処理工程は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部における側面に沿って凹部を火炎処理することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部を火炎処理する凸部火炎処理工程を有し、
凸部火炎処理工程は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部をマスキングして火炎処理し、
凹部火炎処理工程は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部をマスキングして火炎処理することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータであって、
燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部に伝わる熱量を低減して凹部を選択的に火炎処理して製造されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池用セパレータであって、
燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部を、凹部における側面に沿って火炎処理して製造されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項4または5に記載の燃料電池用セパレータであって、
燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部を、凹部をマスキングして火炎処理し、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部を、凸部をマスキングして火炎処理して製造されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項7】
導電性材料を含む樹脂を用いて凹凸状に予備成形された燃料電池用セパレータ予備成形体を、火炎処理して製造される燃料電池用セパレータの製造装置であって、
燃料電池用セパレータ予備成形体に対し、凸部に伝わる熱量を低減して凹部を選択的に火炎処理する凹部火炎処理手段を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造装置であって、
凹部火炎処理手段は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部における側面に沿って凹部を火炎処理することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の燃料電池用セパレータの製造装置であって、
燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部を火炎処理する凸部火炎処理手段を有し、
凸部火炎処理手段は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凹部をマスキングして火炎処理し、
凹部火炎処理手段は、燃料電池用セパレータ予備成形体の凸部をマスキングして火炎処理することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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