燃料電池用セパレータプレートの製造方法及びそれを利用した燃料電池
【課題】燃料電池のセパレータプレートにおける反応ガスの流通経路のパターンをスクリーン印刷により非印刷部分を設けつつ高精度に形成する。
【解決手段】導電性材料を含むインク組成物を用いてベースプレート10a上にスクリーン印刷によって反応ガスの流通経路15となる所定のパターンの隔壁11を形成する燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、流通経路15を形成する隔壁11となる部分以外の部分に印刷を行わない非印刷部分21を設けることによりインク組成物の使用量を節約する。
【解決手段】導電性材料を含むインク組成物を用いてベースプレート10a上にスクリーン印刷によって反応ガスの流通経路15となる所定のパターンの隔壁11を形成する燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、流通経路15を形成する隔壁11となる部分以外の部分に印刷を行わない非印刷部分21を設けることによりインク組成物の使用量を節約する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータプレートの製造方法及びそれを利用した燃料電池に関し、さらに詳しくは、低温駆動電源を必要とする自動車用、家庭用、携帯電子機器等の固体高分子型燃料電池用セパレータプレートの製造方法、前記製造方法によって得られるセパレータプレート、および前記セパレータプレートを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(PEFC)は他の燃料システムと比較して出力密度が高いことから自動車用、可搬用の動力源としての利用が研究されている。ここで、PEFCの単位セルの構成を図11に示す。セル1は、電解質膜3を挟んで支持集電体5aを備えた水素電極5と、支持集電体7aを備えた酸素電極7とがそれぞれ両側に配置され一体化されて膜/電極接合体(MEA)を形成している。この単位セル1の起電力は通常0.6〜1.0V程度なのでこれを複数積層して必要な出力を得る。このように燃料電池本体はセル1が積層されていることからセルスタックと呼ばれ、セルとセルの間にはセパレータプレート10が配置される。
【0003】
セパレータプレート10の表面或いは裏面又はその両方には反応ガスである水素や酸素(空気)を流通させる1mmから1mm弱の深さの溝が穿設されている。そして、反応ガスが混合することなく反応面全体に供給される必要があることからセパレータプレート10にはガス不透過性が要求される。また、隣り合うセル同士を電気的に接続するために良好な導電性が必要とされる。さらに、電解質膜は強酸性を示すため耐食性も要求される。そのため、セパレータプレート10は従来は黒鉛材料を薄板状に切り出し、その表裏面に反応ガスを供給するための流通経路をエンドミル等の切削工具を用いて切削加工によって形成していた。
【0004】
しかし、燃料電池の製造工程中にこのような機械加工を介在させることはセパレータプレートの加工コストひいては燃料電池自体の製造コストを増大させる大きな要因となっていた。すなわち、反応ガスの流通経路の形状は電池によって多様、かつ微細で複雑なものが多いので、それぞれ流通経路パターンに対応してエンドミルを制御しながら個々のセパレータプレートを対象としてその都度精密な機械加工を施すことはセパレータプレートの製造コストを増加させる主因となる。自動車用電源として用いられる燃料電池の製造コストのうちセパレータプレートのコストがその約40%を占めるといわれている。
【0005】
このため反応ガスの流路経路の形成にスクリーン印刷等の手法を適用することが提案されている(特開2000−294257:特許文献1)。特許文献1にはセパレータプレートに導電性ペーストをスクリーン印刷法で塗布することによりガス流路構成用のリブを形成すること、これによって燃料電池の製造工程が簡略化され製造コストを低下させることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−294257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に燃料電池用のセパレータプレートにおける反応ガスの流通経路はそれぞれの電池の仕様によって定められる所要のガス流量を正確かつ均一に確保する必要がある。そのためには反応ガスの流通経路となる溝の幅や隔壁の高さ等の立体的なパターン形状を高精度に形成することができ、形成されたそれらのパターン形状を燃料電池の組立製造後においても変わりなく維持できることが必要である。この点、スクリーン印刷方法では反応ガスの流通経路となる溝をインク組成物による隔壁によって形成しているので、印刷時および印刷直後の流動状態にあるインク組成物の流動性により隔壁や溝の形状が切削加工の場合に比較してくずれやすいという懸念がある。溝の断面形状が変化したり、隔壁の欠損により流通経路間に漏域を生じた場合には所望のガス流量が得られなくなり電池の性能の低下やばらつきを生じることが避けられない。
【0008】
本発明者らは予備実験として幅0.8mm、長さ22mm、厚さが0.3mmのオープニングを18本有する印刷用メッシュクロスを用いて導電性のインク組成物を1回の塗布でカーボンプレート上にスクリーン印刷によって反応ガスの流通経路パターンを形成することを試みた。しかし、形成された導電性インキ層としての隔壁は頂部その他にくずれやだれ等の変形がみられると共に、縁部にぎざぎざを生じてセパレータプレートにおける所望の溝形状のパターンを得ることができなかった。したがって、スクリーン印刷による場合でもインク組成物の1回の塗布で実用的な反応ガスの流通経路となる溝の幅や隔壁の高さ等の立体的なパターン形状を形成することが極めて困難であることがわかった。
【0009】
上述のように、燃料電池のセパレータプレートにおける反応ガスの流通経路の形成にスクリーン印刷法を適用して実用的なセパレータプレートを得るためには、反応ガスの流通経路に要求される高精度なパターン形状をその形成時において常に確保できることが必要である。また、スクリーン印刷法によって実用的なセパレータプレートを製造するに際してはインク組成物の使用量を節約することが求められる。
【0010】
そこで、本発明の主たる目的は、燃料電池に用いられるセパレータプレートにスクリーン印刷法を用いつつインク組成物の使用量を節約し、実用的で高精度かつインタクトな微細なガス流路経路を得ることのできる燃料電池用セパレータプレート製造方法を提供することにある。
また、本発明は、前記製造方法によって得られるセパレータプレートおよび当該セパレータプレートを用いた燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、導電性材料を含むインク組成物を用いてベースプレート上にスクリーン印刷によって反応ガスの流通経路となる所定のパターンの隔壁を形成する燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、隔壁によって流通経路が形成される部分以外の部分に印刷を行わない非印刷部分を設けることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、非印刷部分は隔壁が形成される流通経路形成部以外の前記ベースプレートの周囲の部分に設けることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータプレートの製造方法によって得られる燃料電池用セパレータプレートを提供する。
【0014】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項3記載の燃料電池用セパレータプレートを用いた燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反応ガスの流通経路を画定する隔壁の立体的パターンをスクリーン印刷法で高精度で欠陥なく形成すると共に、流通経路を形成する隔壁となる部分以外の部分に印刷を行わない非印刷部分を設けることによりインク組成物の使用量を節約することができるのでセパレータプレートひいては燃料電池の製造コストを大幅に低下させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る燃料電池用セパレータプレートの製造方法の一実施形態のフローチャートである。
【図2】反応ガスの流通経路のパターンが形成されたセパレータプレートの断面図である。
【図3】上部側に行くほど狭くなった隔壁が形成されたセパレータプレートの断面図である。
【図4】セパレータプレートの平面図である。
【図5】本発明方法によって得られたセパレータプレートの印刷回数と導電性インキ層全体の厚さとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明方法により形成した導電性インキ層の膜厚と電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図7】140℃で10分乾燥を行ったセパレータプレートと市販のセパレータプレートとの性能の比較をしたグラフである。
【図8】図7のエージング後の両者の性能を比較したグラフである。
【図9】140℃でプレス処理による加圧加熱処をしたセパレータプレートと市販のセパレータプレートとの性能の比較をしたグラフである。
【図10】250℃でプレス処理による加圧加熱処をしたセパレータプレートと市販のセパレータプレートとの性能の比較をしたグラフである。
【図11】PEFCの単位セルの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る燃料電池用セパレータプレートの製造方法及びそれを利用した燃料電池について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明に係る燃料電池用セパレータプレートの製造方法の一実施形態のフローチャート、図2は反応ガスの流通経路のパターンが形成されたセパレータプレートの断面図である。
はじめに、本発明に係る燃料電池用セパレータプレートの製造方法に用いられる印刷用インクとなるインク組成物は、バインダとしての樹脂成分と、導電性フィラーとしてのグラファイトやカーボンブラック等の導電性材料と、溶媒と、必要に応じて公知の適宜助剤を混合して構成される。
【0018】
これらの各成分は、たとえば、ロールミル等で混練して調整することができる。導電性材料の混合量は、印刷および乾燥後の体積収縮を考えると多い方が好ましいが、導電性材料の割合が増大するとインク組成物の流動性が低下して印刷が困難になる。この場合、溶媒の量を増加することにより流動性を高めることができるが、使用量が多すぎると乾燥時に体積が減少して好ましくない。
【0019】
スクリーン印刷に用いる印刷用のメッシュクロスはインク組成物の透過量や導電性インキ層の形成状態等を考慮して適宜のものが選定される。スクリーンメッシュとしては100メッシュ程度のものが好ましい。メッシュの値が大きくなるとインク転移量が減少し、一方小さくなると形状性が悪くなる。たとえば50メッシュの印刷用メッシュクロスでは溝のパターンにぎざぎざを生じる可能性が高くなる。
【0020】
このような印刷用メッシュクロスに反応ガスの流通経路の所望のパターンに対応するオープニングのパターンを形成し、スキージによりインク組成物を押出し、被印刷物であるベースプレート10a上に塗布して反応ガスの流通経路となる溝15を画定する隔壁11をインク組成物の印刷塗膜である導電性インキ層11a〜11eによって形成する(ステップS1)。
【0021】
ベースプレート10aとしては従来燃料電池にセパレータとして用いられている任意の材質のもの、たとえばカーボンプレート等を使用することができる。従来技術ではこのようなカーボン製のベースプレートにエンドミル等により所望のパターンで溝を穿設して形成していたが、これがセパレータの製造コストひいては燃料電池の製造コストを増加させる主因となっていた。なお、長期の耐久性を要求されない用途の燃料電池の場合、ベースプレートにステンレス等の金属材料を用いることもできる。
【0022】
これに対して本願発明では、所定形状を有する反応ガスの流通経路に対応するパターンを印刷用メッシュクロスに製版しておき、このスクリーンを用いてベースプレート10aに対して1パスの印刷を施す工程を複数回反復するだけで良いので、加工が著しく簡単であると共に大型の機械加工設備の導入が不要となり、製造コストを大幅に低下させることができる。
【0023】
スクリーン印刷によって形成される隔壁11はそのインク組成物の流動性により印刷中もしくは印刷直後には変形もしくはくずれを生じやすく、これによって溝15の断面形状が変化したり、隔壁11の欠損を生じる恐れがある。反応ガスの流通経路間に漏域を生じた場合には所望のガス流量が得られなくなることから、本発明においては所定の高さの隔壁11を形成するに際して導電性インキ層11a〜11eを何回かの刷り重ねを行うことによって形成するようにしている。すなわち、1回毎のスクリーン印刷で比較的薄膜の導電性インキ層11a〜11eによって流通経路パターンを形成し、所望の高さの隔壁11が得られるまでこの導電性インキ層11a〜11eの塗工層を反復して刷り重ねる。この方法によれば、1回毎の印刷により形成される導電性インキ層11a〜11eはその厚さが薄いためその形状が比較的安定しており、“われ”や“はがれ”などの欠陥を生じるおそれが少ない。
【0024】
また、形成された最初の導電性インキ層11aに引きつづく次層の導電性インキ層11bの印刷前に導電性インキ層11aを乾燥させるための加熱処理を行う(ステップS2)。導電性インキ層11aを加熱乾燥した後でその上に引きつづく印刷工程により同様な導電性インキ層11bを形成して行くことを複数回繰り返すことで1回塗りの場合に比較して全体として形状にくずれや変形を生じることが少なく、われ、はがれ、めくれ等の欠陥も少ない隔壁11を形成することができる(ステップS3)。
【0025】
このような刷り重ねにおいても、導電性インキ層11a〜11eのパターン形状や幅サイズなどの要因により印刷回数を重ねて隔壁11の高さが増加するにつれて上層側の印刷部に「だれ」等が生じて隔壁11の形状が不安定になる場合がある。
【0026】
その場合には、図3に示すように、刷り重ねの際の導電性インキ層11a〜11eの印刷幅を上層に向かうにしたがって次第に狭くして行くことが好ましい。導電性インキ層11a〜11eの印刷幅を次第に狭くするには、たとえば印刷用メッシュクロスのパターンをそれに対応させて狭くしたものを幾通りか用意しておき、それらを順番に使用することによって得ることができる。
【0027】
ここで、本発明の燃料電池においては、その動作中における電流や化学反応などによる発熱で、インク組成物の構成材料であるバインダ樹脂が分解し、電池内部の触媒に被毒を生じさせ性能を低下させるおそれがある。そのためこのような被毒成分の発生を防止するためにセパレータプレート10に対して反応ガスの流通経路を導電性インキ層11a〜11eによって形成した後に加熱処理を施すことが好ましい。この場合の加熱処理温度は使用するインク組成物の構成によっても異なるが、ほとんどのバインダ樹脂の分解温度が250℃〜300℃の範囲にあり、使用するバインダ樹脂によって前記範囲内の所定の温度で加熱処理を行うことにより前記目的とする除去効果が得られる。
【0028】
尚、この加熱処理は、各導電性インキ層11a〜11eの印刷が完了した後にその都度施してもよい。これによってインク組成物が各層の印刷毎に加熱硬化されることになるので、刷り重ねによる隔壁形状の安定化の効果もより増大する。
【0029】
一方、導電性インキ層11a〜11eによって反応ガスの流通経路となる溝15が形成される部分以外の部分に印刷を行わない箇所を設けることでインク組成物の使用量を節約することができる。すなわち、図4に示すようにベースプレート10aの反応ガスの流通経路となる溝15が形成される部分である流通経路形成部13以外の周囲の部分にインク組成物による印刷を行わない非印刷部21を設けることでインク組成物の使用量を節約することができる。また、印刷が行なわれない部分と印刷用メッシュクロスのパターンとの係合による位置決め効果も期待できる。尚、図4における符号23はマニホールド孔、25はボルト孔である。
【0030】
ガス流通路となる溝15の形成の終了後、セパレータプレートの周縁部に対して導電性インキ層11a〜11eの形成と同様なスクリーン印刷法によって弾力性を有する弾性材料を所定の厚さで塗布することにより所定のパターンでガスケット20を形成する(ステップS4)。流通経路パターンを形成する導電性インキ層11a〜11eの場合は溝15を精密に形成する必要があるため複数回の印刷を行うこととしたが、ガスケットの場合は流通経路とは異なり若干縁がぎざぎざでもきちんとシールがなされればよいので印刷回数は特に限定する必要はない。もちろん、複数回に分けて印刷を行うことで導電性インキ層11a〜11eの場合のように精密なガスケット層20a〜20eを形成することができることはいうまでもない。そして、ガスケット20のパターンを形成した後、弾性材料に含まれる樹脂成分によって電池内部の触媒に被毒を生じさせることがないように前記と同様な熱処理を施す(ステップS5)。但し、ガスケット20の場合は樹脂成分が熱分解するような高温に晒すとシール性を損なうおそれがあるので樹脂成分の反応を進める程度の温度で熱処理することが好ましい。
【実施例1】
【0031】
カーボンセパレータにおける導電性材料の印刷によるガス流通経路の作製
インク組成物の作製方法
ポリエステル系樹脂をバインダ樹脂とする「ドータイト」(藤倉化成製)50gにグラファイト10gを加え、遠心回転させながら撹拌できる混合機で混合した後、3本ロールミルで造粒、混合して印刷用のインク組成物とした。
【0032】
100メッシュのスクリーンを用いて、所定のガス流通経路となる溝をかたどった印刷原版を作製しスクリーン印刷を必要回数行った。すなわち、各回毎に厚さ25μmの導電性インキ層が得られるようにスキージによってインク組成物をカーボンプレート上に印刷して各層を形成し、この印刷工程を所定の時間をおいて20回反復して行なうことで合計で500μmの高さ(厚さ)の隔壁が得られた。各印刷工程の後、140℃に加熱し溶媒を蒸発乾燥させた。この場合、各層の印刷工程毎に上層の印刷幅が減少するように印刷用メッシュクロスのパターンを幾通りかに異ならせたものを用意して用いた。
【0033】
流通経路のパターン形成後、パターンの導電性インキ層中のバインダ樹脂が電池使用中に熱分解して触媒被毒成分を発生しないようにするためにセパレータプレートを約270℃に加熱した。尚、この加熱は1回の導電性インキ層の印刷が完了する都度行っても良い。これによって刷り重ねの際の各層の形状を一層安定化させることもできる。
【0034】
ガス流通路の形成後、セパレータプレートの周縁部に対して前記と同様なスクリーン印刷法によりシリコンゴム系組成物「RTV」(信越シリコン製)によりガスケットのパターンを形成しその後前記と同様な熱処理を施した。「RTV」の場合、室温でも硬化反応は進行するが、反応を早めるため適宜加熱処理を行ってもよい。
【0035】
このようにして得られたセパレータプレートは、図1及び図2に示すように、くずれや変形のない隔壁11によって所望の形状のガス流通経路となる溝15が形成されている。また、導電性インキ層の刷り重ねの回数に対応して反応ガスの流通経路の隔壁11の厚みが直線的に増大していることが確認された。(図5参照)。また、刷り重ねによる塗工層の厚みの増大に伴って電気抵抗も増大するが、この場合プレス処理による加圧加熱処理によって抵抗値の増加を抑えることもできる(図6参照)。
【0036】
また、インク組成物に含まれるバインダとしての樹脂成分の分解による被毒の影響を図7に示す。図7は、樹脂成分としてポリエステル系樹脂をバインダとして使用して140℃で10分乾燥を行ったセパレータプレートと、市販のセパレータプレートとの性能の比較をしたグラフであり、樹脂成分による被毒の影響が顕著に現れている。一方、図8は80℃、600mA/cm2でエージングを行った後の両者の性能を比較したグラフであり、エージングを行うことによって樹脂成分による被毒の影響が少なくなることが示されているが、市販のセパレータプレートと比べて性能が一定していない。そこで、140℃、1MPa、1minと、250℃、1MPa、1minでそれぞれプレス処理による加圧加熱処理を行ったところ140℃による処理では市販のセパレータプレートとの性能差が見られたが、250℃による処理では市販のセパレータプレートとほぼ同様な性能を発揮させることが可能であることがわかった。
【0037】
このようにして得られたセパレータプレートを市販の燃料電池のセパレートプレートと入れかえて用い、単位燃料電池として組立て、その電池出力を測定したところ、表1に示すように市販品と比較してほとんど変わりのない出力特性が得られ、充分に実用に耐える燃料電池であることが示された。
【0038】
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1 セル
3 電解質膜
5 水素電極
5a 支持集電体
7 酸素電極
7a 支持集電体
10 セパレータプレート
10a ベースプレート
11 隔壁
11a〜11e 導電性インキ層
13 流通経路形成部
15 溝
20 ガスケット
20a〜20e ガスケット層
21 非印刷部
23 マニホールド孔
25 ボルト孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータプレートの製造方法及びそれを利用した燃料電池に関し、さらに詳しくは、低温駆動電源を必要とする自動車用、家庭用、携帯電子機器等の固体高分子型燃料電池用セパレータプレートの製造方法、前記製造方法によって得られるセパレータプレート、および前記セパレータプレートを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(PEFC)は他の燃料システムと比較して出力密度が高いことから自動車用、可搬用の動力源としての利用が研究されている。ここで、PEFCの単位セルの構成を図11に示す。セル1は、電解質膜3を挟んで支持集電体5aを備えた水素電極5と、支持集電体7aを備えた酸素電極7とがそれぞれ両側に配置され一体化されて膜/電極接合体(MEA)を形成している。この単位セル1の起電力は通常0.6〜1.0V程度なのでこれを複数積層して必要な出力を得る。このように燃料電池本体はセル1が積層されていることからセルスタックと呼ばれ、セルとセルの間にはセパレータプレート10が配置される。
【0003】
セパレータプレート10の表面或いは裏面又はその両方には反応ガスである水素や酸素(空気)を流通させる1mmから1mm弱の深さの溝が穿設されている。そして、反応ガスが混合することなく反応面全体に供給される必要があることからセパレータプレート10にはガス不透過性が要求される。また、隣り合うセル同士を電気的に接続するために良好な導電性が必要とされる。さらに、電解質膜は強酸性を示すため耐食性も要求される。そのため、セパレータプレート10は従来は黒鉛材料を薄板状に切り出し、その表裏面に反応ガスを供給するための流通経路をエンドミル等の切削工具を用いて切削加工によって形成していた。
【0004】
しかし、燃料電池の製造工程中にこのような機械加工を介在させることはセパレータプレートの加工コストひいては燃料電池自体の製造コストを増大させる大きな要因となっていた。すなわち、反応ガスの流通経路の形状は電池によって多様、かつ微細で複雑なものが多いので、それぞれ流通経路パターンに対応してエンドミルを制御しながら個々のセパレータプレートを対象としてその都度精密な機械加工を施すことはセパレータプレートの製造コストを増加させる主因となる。自動車用電源として用いられる燃料電池の製造コストのうちセパレータプレートのコストがその約40%を占めるといわれている。
【0005】
このため反応ガスの流路経路の形成にスクリーン印刷等の手法を適用することが提案されている(特開2000−294257:特許文献1)。特許文献1にはセパレータプレートに導電性ペーストをスクリーン印刷法で塗布することによりガス流路構成用のリブを形成すること、これによって燃料電池の製造工程が簡略化され製造コストを低下させることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−294257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に燃料電池用のセパレータプレートにおける反応ガスの流通経路はそれぞれの電池の仕様によって定められる所要のガス流量を正確かつ均一に確保する必要がある。そのためには反応ガスの流通経路となる溝の幅や隔壁の高さ等の立体的なパターン形状を高精度に形成することができ、形成されたそれらのパターン形状を燃料電池の組立製造後においても変わりなく維持できることが必要である。この点、スクリーン印刷方法では反応ガスの流通経路となる溝をインク組成物による隔壁によって形成しているので、印刷時および印刷直後の流動状態にあるインク組成物の流動性により隔壁や溝の形状が切削加工の場合に比較してくずれやすいという懸念がある。溝の断面形状が変化したり、隔壁の欠損により流通経路間に漏域を生じた場合には所望のガス流量が得られなくなり電池の性能の低下やばらつきを生じることが避けられない。
【0008】
本発明者らは予備実験として幅0.8mm、長さ22mm、厚さが0.3mmのオープニングを18本有する印刷用メッシュクロスを用いて導電性のインク組成物を1回の塗布でカーボンプレート上にスクリーン印刷によって反応ガスの流通経路パターンを形成することを試みた。しかし、形成された導電性インキ層としての隔壁は頂部その他にくずれやだれ等の変形がみられると共に、縁部にぎざぎざを生じてセパレータプレートにおける所望の溝形状のパターンを得ることができなかった。したがって、スクリーン印刷による場合でもインク組成物の1回の塗布で実用的な反応ガスの流通経路となる溝の幅や隔壁の高さ等の立体的なパターン形状を形成することが極めて困難であることがわかった。
【0009】
上述のように、燃料電池のセパレータプレートにおける反応ガスの流通経路の形成にスクリーン印刷法を適用して実用的なセパレータプレートを得るためには、反応ガスの流通経路に要求される高精度なパターン形状をその形成時において常に確保できることが必要である。また、スクリーン印刷法によって実用的なセパレータプレートを製造するに際してはインク組成物の使用量を節約することが求められる。
【0010】
そこで、本発明の主たる目的は、燃料電池に用いられるセパレータプレートにスクリーン印刷法を用いつつインク組成物の使用量を節約し、実用的で高精度かつインタクトな微細なガス流路経路を得ることのできる燃料電池用セパレータプレート製造方法を提供することにある。
また、本発明は、前記製造方法によって得られるセパレータプレートおよび当該セパレータプレートを用いた燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、導電性材料を含むインク組成物を用いてベースプレート上にスクリーン印刷によって反応ガスの流通経路となる所定のパターンの隔壁を形成する燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、隔壁によって流通経路が形成される部分以外の部分に印刷を行わない非印刷部分を設けることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、非印刷部分は隔壁が形成される流通経路形成部以外の前記ベースプレートの周囲の部分に設けることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータプレートの製造方法によって得られる燃料電池用セパレータプレートを提供する。
【0014】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項3記載の燃料電池用セパレータプレートを用いた燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反応ガスの流通経路を画定する隔壁の立体的パターンをスクリーン印刷法で高精度で欠陥なく形成すると共に、流通経路を形成する隔壁となる部分以外の部分に印刷を行わない非印刷部分を設けることによりインク組成物の使用量を節約することができるのでセパレータプレートひいては燃料電池の製造コストを大幅に低下させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る燃料電池用セパレータプレートの製造方法の一実施形態のフローチャートである。
【図2】反応ガスの流通経路のパターンが形成されたセパレータプレートの断面図である。
【図3】上部側に行くほど狭くなった隔壁が形成されたセパレータプレートの断面図である。
【図4】セパレータプレートの平面図である。
【図5】本発明方法によって得られたセパレータプレートの印刷回数と導電性インキ層全体の厚さとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明方法により形成した導電性インキ層の膜厚と電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図7】140℃で10分乾燥を行ったセパレータプレートと市販のセパレータプレートとの性能の比較をしたグラフである。
【図8】図7のエージング後の両者の性能を比較したグラフである。
【図9】140℃でプレス処理による加圧加熱処をしたセパレータプレートと市販のセパレータプレートとの性能の比較をしたグラフである。
【図10】250℃でプレス処理による加圧加熱処をしたセパレータプレートと市販のセパレータプレートとの性能の比較をしたグラフである。
【図11】PEFCの単位セルの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る燃料電池用セパレータプレートの製造方法及びそれを利用した燃料電池について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明に係る燃料電池用セパレータプレートの製造方法の一実施形態のフローチャート、図2は反応ガスの流通経路のパターンが形成されたセパレータプレートの断面図である。
はじめに、本発明に係る燃料電池用セパレータプレートの製造方法に用いられる印刷用インクとなるインク組成物は、バインダとしての樹脂成分と、導電性フィラーとしてのグラファイトやカーボンブラック等の導電性材料と、溶媒と、必要に応じて公知の適宜助剤を混合して構成される。
【0018】
これらの各成分は、たとえば、ロールミル等で混練して調整することができる。導電性材料の混合量は、印刷および乾燥後の体積収縮を考えると多い方が好ましいが、導電性材料の割合が増大するとインク組成物の流動性が低下して印刷が困難になる。この場合、溶媒の量を増加することにより流動性を高めることができるが、使用量が多すぎると乾燥時に体積が減少して好ましくない。
【0019】
スクリーン印刷に用いる印刷用のメッシュクロスはインク組成物の透過量や導電性インキ層の形成状態等を考慮して適宜のものが選定される。スクリーンメッシュとしては100メッシュ程度のものが好ましい。メッシュの値が大きくなるとインク転移量が減少し、一方小さくなると形状性が悪くなる。たとえば50メッシュの印刷用メッシュクロスでは溝のパターンにぎざぎざを生じる可能性が高くなる。
【0020】
このような印刷用メッシュクロスに反応ガスの流通経路の所望のパターンに対応するオープニングのパターンを形成し、スキージによりインク組成物を押出し、被印刷物であるベースプレート10a上に塗布して反応ガスの流通経路となる溝15を画定する隔壁11をインク組成物の印刷塗膜である導電性インキ層11a〜11eによって形成する(ステップS1)。
【0021】
ベースプレート10aとしては従来燃料電池にセパレータとして用いられている任意の材質のもの、たとえばカーボンプレート等を使用することができる。従来技術ではこのようなカーボン製のベースプレートにエンドミル等により所望のパターンで溝を穿設して形成していたが、これがセパレータの製造コストひいては燃料電池の製造コストを増加させる主因となっていた。なお、長期の耐久性を要求されない用途の燃料電池の場合、ベースプレートにステンレス等の金属材料を用いることもできる。
【0022】
これに対して本願発明では、所定形状を有する反応ガスの流通経路に対応するパターンを印刷用メッシュクロスに製版しておき、このスクリーンを用いてベースプレート10aに対して1パスの印刷を施す工程を複数回反復するだけで良いので、加工が著しく簡単であると共に大型の機械加工設備の導入が不要となり、製造コストを大幅に低下させることができる。
【0023】
スクリーン印刷によって形成される隔壁11はそのインク組成物の流動性により印刷中もしくは印刷直後には変形もしくはくずれを生じやすく、これによって溝15の断面形状が変化したり、隔壁11の欠損を生じる恐れがある。反応ガスの流通経路間に漏域を生じた場合には所望のガス流量が得られなくなることから、本発明においては所定の高さの隔壁11を形成するに際して導電性インキ層11a〜11eを何回かの刷り重ねを行うことによって形成するようにしている。すなわち、1回毎のスクリーン印刷で比較的薄膜の導電性インキ層11a〜11eによって流通経路パターンを形成し、所望の高さの隔壁11が得られるまでこの導電性インキ層11a〜11eの塗工層を反復して刷り重ねる。この方法によれば、1回毎の印刷により形成される導電性インキ層11a〜11eはその厚さが薄いためその形状が比較的安定しており、“われ”や“はがれ”などの欠陥を生じるおそれが少ない。
【0024】
また、形成された最初の導電性インキ層11aに引きつづく次層の導電性インキ層11bの印刷前に導電性インキ層11aを乾燥させるための加熱処理を行う(ステップS2)。導電性インキ層11aを加熱乾燥した後でその上に引きつづく印刷工程により同様な導電性インキ層11bを形成して行くことを複数回繰り返すことで1回塗りの場合に比較して全体として形状にくずれや変形を生じることが少なく、われ、はがれ、めくれ等の欠陥も少ない隔壁11を形成することができる(ステップS3)。
【0025】
このような刷り重ねにおいても、導電性インキ層11a〜11eのパターン形状や幅サイズなどの要因により印刷回数を重ねて隔壁11の高さが増加するにつれて上層側の印刷部に「だれ」等が生じて隔壁11の形状が不安定になる場合がある。
【0026】
その場合には、図3に示すように、刷り重ねの際の導電性インキ層11a〜11eの印刷幅を上層に向かうにしたがって次第に狭くして行くことが好ましい。導電性インキ層11a〜11eの印刷幅を次第に狭くするには、たとえば印刷用メッシュクロスのパターンをそれに対応させて狭くしたものを幾通りか用意しておき、それらを順番に使用することによって得ることができる。
【0027】
ここで、本発明の燃料電池においては、その動作中における電流や化学反応などによる発熱で、インク組成物の構成材料であるバインダ樹脂が分解し、電池内部の触媒に被毒を生じさせ性能を低下させるおそれがある。そのためこのような被毒成分の発生を防止するためにセパレータプレート10に対して反応ガスの流通経路を導電性インキ層11a〜11eによって形成した後に加熱処理を施すことが好ましい。この場合の加熱処理温度は使用するインク組成物の構成によっても異なるが、ほとんどのバインダ樹脂の分解温度が250℃〜300℃の範囲にあり、使用するバインダ樹脂によって前記範囲内の所定の温度で加熱処理を行うことにより前記目的とする除去効果が得られる。
【0028】
尚、この加熱処理は、各導電性インキ層11a〜11eの印刷が完了した後にその都度施してもよい。これによってインク組成物が各層の印刷毎に加熱硬化されることになるので、刷り重ねによる隔壁形状の安定化の効果もより増大する。
【0029】
一方、導電性インキ層11a〜11eによって反応ガスの流通経路となる溝15が形成される部分以外の部分に印刷を行わない箇所を設けることでインク組成物の使用量を節約することができる。すなわち、図4に示すようにベースプレート10aの反応ガスの流通経路となる溝15が形成される部分である流通経路形成部13以外の周囲の部分にインク組成物による印刷を行わない非印刷部21を設けることでインク組成物の使用量を節約することができる。また、印刷が行なわれない部分と印刷用メッシュクロスのパターンとの係合による位置決め効果も期待できる。尚、図4における符号23はマニホールド孔、25はボルト孔である。
【0030】
ガス流通路となる溝15の形成の終了後、セパレータプレートの周縁部に対して導電性インキ層11a〜11eの形成と同様なスクリーン印刷法によって弾力性を有する弾性材料を所定の厚さで塗布することにより所定のパターンでガスケット20を形成する(ステップS4)。流通経路パターンを形成する導電性インキ層11a〜11eの場合は溝15を精密に形成する必要があるため複数回の印刷を行うこととしたが、ガスケットの場合は流通経路とは異なり若干縁がぎざぎざでもきちんとシールがなされればよいので印刷回数は特に限定する必要はない。もちろん、複数回に分けて印刷を行うことで導電性インキ層11a〜11eの場合のように精密なガスケット層20a〜20eを形成することができることはいうまでもない。そして、ガスケット20のパターンを形成した後、弾性材料に含まれる樹脂成分によって電池内部の触媒に被毒を生じさせることがないように前記と同様な熱処理を施す(ステップS5)。但し、ガスケット20の場合は樹脂成分が熱分解するような高温に晒すとシール性を損なうおそれがあるので樹脂成分の反応を進める程度の温度で熱処理することが好ましい。
【実施例1】
【0031】
カーボンセパレータにおける導電性材料の印刷によるガス流通経路の作製
インク組成物の作製方法
ポリエステル系樹脂をバインダ樹脂とする「ドータイト」(藤倉化成製)50gにグラファイト10gを加え、遠心回転させながら撹拌できる混合機で混合した後、3本ロールミルで造粒、混合して印刷用のインク組成物とした。
【0032】
100メッシュのスクリーンを用いて、所定のガス流通経路となる溝をかたどった印刷原版を作製しスクリーン印刷を必要回数行った。すなわち、各回毎に厚さ25μmの導電性インキ層が得られるようにスキージによってインク組成物をカーボンプレート上に印刷して各層を形成し、この印刷工程を所定の時間をおいて20回反復して行なうことで合計で500μmの高さ(厚さ)の隔壁が得られた。各印刷工程の後、140℃に加熱し溶媒を蒸発乾燥させた。この場合、各層の印刷工程毎に上層の印刷幅が減少するように印刷用メッシュクロスのパターンを幾通りかに異ならせたものを用意して用いた。
【0033】
流通経路のパターン形成後、パターンの導電性インキ層中のバインダ樹脂が電池使用中に熱分解して触媒被毒成分を発生しないようにするためにセパレータプレートを約270℃に加熱した。尚、この加熱は1回の導電性インキ層の印刷が完了する都度行っても良い。これによって刷り重ねの際の各層の形状を一層安定化させることもできる。
【0034】
ガス流通路の形成後、セパレータプレートの周縁部に対して前記と同様なスクリーン印刷法によりシリコンゴム系組成物「RTV」(信越シリコン製)によりガスケットのパターンを形成しその後前記と同様な熱処理を施した。「RTV」の場合、室温でも硬化反応は進行するが、反応を早めるため適宜加熱処理を行ってもよい。
【0035】
このようにして得られたセパレータプレートは、図1及び図2に示すように、くずれや変形のない隔壁11によって所望の形状のガス流通経路となる溝15が形成されている。また、導電性インキ層の刷り重ねの回数に対応して反応ガスの流通経路の隔壁11の厚みが直線的に増大していることが確認された。(図5参照)。また、刷り重ねによる塗工層の厚みの増大に伴って電気抵抗も増大するが、この場合プレス処理による加圧加熱処理によって抵抗値の増加を抑えることもできる(図6参照)。
【0036】
また、インク組成物に含まれるバインダとしての樹脂成分の分解による被毒の影響を図7に示す。図7は、樹脂成分としてポリエステル系樹脂をバインダとして使用して140℃で10分乾燥を行ったセパレータプレートと、市販のセパレータプレートとの性能の比較をしたグラフであり、樹脂成分による被毒の影響が顕著に現れている。一方、図8は80℃、600mA/cm2でエージングを行った後の両者の性能を比較したグラフであり、エージングを行うことによって樹脂成分による被毒の影響が少なくなることが示されているが、市販のセパレータプレートと比べて性能が一定していない。そこで、140℃、1MPa、1minと、250℃、1MPa、1minでそれぞれプレス処理による加圧加熱処理を行ったところ140℃による処理では市販のセパレータプレートとの性能差が見られたが、250℃による処理では市販のセパレータプレートとほぼ同様な性能を発揮させることが可能であることがわかった。
【0037】
このようにして得られたセパレータプレートを市販の燃料電池のセパレートプレートと入れかえて用い、単位燃料電池として組立て、その電池出力を測定したところ、表1に示すように市販品と比較してほとんど変わりのない出力特性が得られ、充分に実用に耐える燃料電池であることが示された。
【0038】
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1 セル
3 電解質膜
5 水素電極
5a 支持集電体
7 酸素電極
7a 支持集電体
10 セパレータプレート
10a ベースプレート
11 隔壁
11a〜11e 導電性インキ層
13 流通経路形成部
15 溝
20 ガスケット
20a〜20e ガスケット層
21 非印刷部
23 マニホールド孔
25 ボルト孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料を含むインク組成物を用いてベースプレート上にスクリーン印刷によって反応ガスの流通経路となる所定のパターンの隔壁を形成する燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、
前記隔壁によって前記流通経路が形成される部分以外の部分に印刷を行わない非印刷部分を設けることを特徴とする燃料電池用セパレータプレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、
前記非印刷部分は前記流通経路が形成される流通経路形成部以外の前記ベースプレートの周囲の部分に設けることを特徴とする燃料電池用セパレータプレートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータプレートの製造方法によって得られる燃料電池用セパレータプレート。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池用セパレータプレートを用いた燃料電池。
【請求項1】
導電性材料を含むインク組成物を用いてベースプレート上にスクリーン印刷によって反応ガスの流通経路となる所定のパターンの隔壁を形成する燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、
前記隔壁によって前記流通経路が形成される部分以外の部分に印刷を行わない非印刷部分を設けることを特徴とする燃料電池用セパレータプレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用セパレータプレートの製造方法において、
前記非印刷部分は前記流通経路が形成される流通経路形成部以外の前記ベースプレートの周囲の部分に設けることを特徴とする燃料電池用セパレータプレートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータプレートの製造方法によって得られる燃料電池用セパレータプレート。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池用セパレータプレートを用いた燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−8706(P2013−8706A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227142(P2012−227142)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2009−520544(P2009−520544)の分割
【原出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(503368133)有限会社パラマウントエナジー研究所 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2009−520544(P2009−520544)の分割
【原出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(503368133)有限会社パラマウントエナジー研究所 (2)
【Fターム(参考)】
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