説明

燃料電池用セパレータ用組成物、燃料電池用セパレータ及びその製造方法

【課題】流動性及び強度を兼ね備え、射出成形可能で導電性の高い燃料電池用セパレータ用組成物、並びに前記燃料電池用セパレータ用組成物からなり、導電性や強度、寸法精度、耐熱性に優れる燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】燃料電池用セパレータを成形するための成形材料であって、(A)ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤 及び(D)炭素材料を含む燃料電池用セパレータ用組成物、並びに前記燃料電池用セパレータ用組成物を射出成形して得られる燃料電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用セパレータ、並びに前記燃料電池用セパレータを得るための成形材料及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図1に概略斜視図で示すように、燃料電池用セパレータ10は、平板部11の両面に所定間隔で複数の隔壁12を立設して形成されている。燃料電池とするには、多数の燃料電池用セパレータ10を、隔壁12の突出方法(図中、上下方向)に積層する。そして、この積層により、隣接する一対の隔壁12で形成されるチャネル13に反応ガス(水素や酸素)を流通させる構成となっている。燃料電池用セパレータは、樹脂材料と、黒鉛等の導電性材料を含む組成物を上述したような形状に成形して製造される。
【0003】
燃料電池用セパレータの成形方法としては、樹脂材料をフェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂とする上記組成物を、ガスや冷却水の流路を設けた金型に入れ、これを熱間でプレスする熱圧縮成形により成形したものが一般的である。この成形方法において、特に炭素材料として膨張黒鉛を使用するものは高い導電性が発現するため、燃料電池用セパレータとしては好ましいとされている(例えば、特許文献1参照)。また、近年では熱圧縮成形に代わり、成形サイクル短縮のために射出成形で製造することも検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000-285931号公報
【特許文献2】特開2004-327136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、高い導電性の成形体を得る場合は、組成物に含まれる導電性材料の割合を高くする必要があるが、導電性材料の割合が高すぎる場合は組成物の流動性が低下して寸法精度が悪化したり、強度が低くなるなどの問題点がある。特に、成形方法として射出成形を行う場合、流動性の低下は金型内に充填できない現象、すなわちショートショットを誘発しやすい。逆に、導電性材料の割合を低くすると、導電性が低下するため燃料電池用セパレータとしては問題である。また、同一組成物であっても射出成形で成形された成形体は熱圧縮成形で成形された成形体よりも導電性に劣るものとなることも問題である。
【0006】
このように、導電性と、流動性や強度とは相反する特性であり、本発明では導電性、流動性及び強度を兼ね備え、射出成形可能で導電性の高い燃料電池用セパレータ用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このような燃料電池用セパレータ用組成物からなり、導電性や強度、寸法精度、耐熱性に優れる燃料電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下を提供する。
(1)燃料電池用セパレータを成形するための成形材料であって、(A)ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤 及び(D)炭素材料を含むことを特徴とする燃料電池用セパレータ用組成物。
(2)(B)硬化剤が、2個以上のフェノール性水酸基を有することを特徴とする上記(1)記載の燃料電池用セパレータ用組成物。
(3)(D)炭素材料の含有量が組成物全量の35−85質量%であり、かつ、(D)炭素材料の5〜100質量%を膨張黒鉛が占めることを特徴とする上記(1)または(2)記載の燃料電池用セパレータ用組成物。
(4)上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ用組成物からなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
(5)上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ用組成物を射出成形することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂成分としてナフタレン環を有するエポキシ樹脂を用いることにより、導電性、流動性、更には高温での強度に優れる燃料電池用セパレータを射出成形により効率よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0010】
本発明の燃料電池用セパレータ用組成物(以下、「本発明の組成物」という)は、(A)ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤 及び(D)炭素材料を必須成分として含む。
【0011】
ナフタレン環を有するエポキシ樹脂を用いることにより、得られる燃料電池用セパレータの強度や耐熱性の向上を図ることができる。一般に、エポキシ樹脂の強度や耐熱性を向上させるにはガラス転移点を上昇させることが必要であり、ガラス転移点を上昇させる手段としては、多官能型エポキシ樹脂や単量体エポキシ樹脂を用いて架橋密度を高めることが有効である。また、低架橋密度においても剛直な骨格構造を持つもエポキシ樹脂を用いることも有効である。ナフタレン環を有するエポキシ樹脂は、ナフタレン環による剛直構造となり、ガラス転移点を上昇させ、高い強度や耐熱性を示すようになる。また、ナフタレン環は平面構造であり、立体障害が極端に少ない構造をとるため、後述する炭素材料として、同じく平面構造の黒鉛結晶を用いることで、空隙が少ない、より高強度の燃料電池用セパレータが得られる。このような効果は、膨張黒鉛のような薄片上の黒鉛を使用した場合に顕著となる。
【0012】
ナフタレン環を有するエポキシ樹脂としては、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンモノマー型エポキシ樹脂等が挙げられる。尚、エポキシ当量は好ましくは50以上500以下であり、さらに好ましくは100以上300以下である。エポキシ当量が低すぎる場合は、得られる燃料電池用セパレータが脆くなる。一方、エポキシ当量が高すぎる場合は耐熱性と強度の低い燃料電池用セパレータしか得られなくなる。
【0013】
ナフタレン環を有するエポキシ樹脂は、硬化剤と反応することによって、エポキシ硬化物を生成する。硬化剤は、各種公知の化合物を使用することができる。例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の脂肪族、脂環式、芳香族のポリアミンまたはその炭酸塩;無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物等の酸無水物;フェノールノボラック、クレゾールノボラックのようなポリフェノール;ポリメルカプタン;トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、イミダゾール、エチルメチルイミダゾール等のアニオン重合触媒;BF3やその錯体のようなカチオン重合触媒;さらには熱分解や光分解によって上記化合物を生成する潜在性硬化剤等が挙げられるが、これらに限定されない。複数の硬化剤を併用することもできる。上記の内、ポリアミンやその炭酸塩、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等の硬化剤は、自身がエポキシ化合物と重付加反応してエポキシ硬化物を構成するので、重付加型硬化剤と呼ばれる。重付加型硬化剤の過不足は未反応官能基の残存につながる故、添加量には適正域が存在する。一般に、エポキシ樹脂前駆体のエポキシ基1個当たり0.7〜1.2当量の、特に0.8〜1.1当量の重付加型硬化剤を使用するのが好ましい。一方、アニオン重合触媒及びカチオン重合触媒は、エポキシ基の付加重合触媒として作用するものであり、それ故、適正添加域は存在せず、添加量は反応速度に応じて決定することができる。これら触媒は、触媒型硬化剤あるいは付加型硬化剤と呼ばれる。また、これら触媒を重付加型硬化剤と併用して用いる場合は、重合付加型硬化剤による硬化反応を促進させるため、硬化促進剤とも呼ばれる。これら硬化剤の種類、量と熱硬化性樹脂樹脂の種類、硬化促進剤の種類、量を種々に選択することにより、熱硬化性樹脂樹脂の硬化速度を任意に変化させることができる。当業者であれば、所望の硬化条件に合わせ、熱硬化性樹脂や硬化剤や硬化促進剤の種類及び使用量を決定することは容易であろう。
【0014】
上記の中でも、フェノール性水酸基を2個以上を有する化合物が好ましい。このような化合物としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、アラルキル型フェノールノボラック、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ナフトールノボラック、フェノールジシクロペンタジエン樹脂のような上述したポリフェノールやビスフェノールAが挙げられる。これらフェノール性水酸基を2個以上有する硬化剤を用いることで、耐熱性の高い燃料電池用セパレータを得ることが出来る。
【0015】
また、硬化促進剤を使用する。硬化促進剤は、エポキシ樹脂と重付加型硬化剤の硬化剤の反応を加速させるものであり、ルイス塩基またはそのドナーとなる物質の中から選択される。硬化促進剤の種類としては特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、トリ-2,4-キリルホスフィン、トリ-2,5-キリルホスフィン、トリ-3,5-キリルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチル(トリフェニル)ホスホニウムブロマイド、メチル(トリフェニル)ホスホニウムクロライド、エチル(トリフェニル)ホスホニウムブロマイド、n-プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、2−カルボキシルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、ベンジルフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレートなどのリン化合物;トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールなどのイミダゾール化合物; 1,8−ジアザビシクロ (5,4,0)ウンデセン−7(略称はDBU)または1,5−ジアザビシクロ (4,3,0)−ノネン−5(略称はDBN)及び6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ (5,4,0)ウンデセン−7などのジアザビシクロ化合物またはそれらと有機酸の塩;3−フェニル−1,1−尿素,3−(p−クロルフェニル)1,1−尿素,3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−尿素,3−(o−メチルフェニル)−1,1−尿素,3−(p−メチルフェニル)−1,1−尿素,3−(メトキシフェニル)−1,1−尿素,3−(ニトロフェニル)−1,1−尿素などの尿素化合物を挙げることが出来るが、これらに限定されない。このうちトリフェニルホスフィンが安価であり、入手も容易であるために好ましい硬化促進剤である。
【0016】
炭素材料とは、主成分を炭素原子とする導電性材料であり、具体的には膨張黒鉛、鱗辺状人造黒鉛、球状人造黒鉛、天然の鱗辺状黒鉛、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、ダイヤモンドライクカーボン、フラーレン、カーボンナノホーン等を使用できるが、これらに限定されない。
【0017】
通常の鱗辺状黒鉛は薄板状の結晶が積層されたものである。これに対して、膨張黒鉛とは、鱗片状黒鉛を濃硫酸や硝酸や過酸化水素水等で処理し、薄板状結晶の隙間にこれら薬液をインターカレートさせ、さらに加熱してインターカレートされた薬液が気化する際に薄板状結晶の隙間を広げることによって得られる黒鉛である。膨張黒鉛は、鱗片状黒鉛や球状黒鉛と比較して嵩密度が低く、表面積が大きく、粒子はより薄い薄板状となっている。このため、樹脂と混合した際に容易に導電パスを形成し、高導電性の燃料電池用セパレータを得ることが出来る。また、膨張黒鉛は薄板状となっているため、人造黒鉛や天然黒鉛と比較して柔軟であり、これを使用する燃料電池用セパレータも柔軟なものとなる。
【0018】
そのため、上述した強度や耐熱性を向上させる効果も含め、炭素材料は膨張黒鉛を含むことが好ましい。その際、炭素材料の全てを膨張黒鉛としてもよく、一部を膨張黒鉛とし、それ以外を上述した他の炭素材料としてもよい。即ち、炭素材料における膨張黒鉛の含有量は、5〜100質量%が好ましく、より好ましくは10〜100質量%であり、更に好ましくは20〜80質量%であり、より更に好ましくは30〜80質量であり、特に好ましくは30〜70質量%であり、最も好ましくは40〜60質量%である。膨張黒鉛の比率が低い場合は、接触抵抗が高くなる。また、膨張黒鉛は嵩密度が低いため、膨張黒鉛の比率が高い場合はコンパウンド作製の混練時の材料ハンドリング性が悪く、作業環境を汚す懸念がある。
【0019】
炭素材料の含有量は、炭素材料の種類によるもよるが、組成物全量の35〜85質量%とすることが好ましい。炭素材料の比率が低すぎる場合は導電性が低下する。一方で、炭素材料の比率が高すぎる場合は強度が低くなり、また、コンパウンドの流動性が低くなるため、成形の際に金型内に射出した際に金型内で成形材料の圧力分布が大きくなり、得られる燃料電池用セパレータの寸法精度が悪くなる。特に、このような問題は、成形効率の点で好ましい射出成形を行う際に顕著となる。
【0020】
本発明の組成物は、種々の慣用の方法によって製造することができる。例えば、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂と、炭素材料等の他の成分とをドライミックスによって組成物を得ても良い。また、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂を加熱溶融または溶剤に溶解させて、炭素材料等の他の成分を添加してもよい。また、ドライミックスによって予備混合を行った材料を加熱溶融させるなど、複数の混合方法を併用しても良い。
【0021】
混合に使用する装置としては各種の混合装置を使用することができる。例えば、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、プラネタリーミキサー、モルタルミキサー、コーンミキサー、Vミキサー、加圧ニーダー、パドルミキサー、二軸押出機、単軸押出機、バンバリーミキサー、二本ロールミル、三本ロールミル等が挙げられるがこれらに限定されない。さらに必要に応じて、混合した材料を粉砕又は造粒化さらに分級することもできる。
【0022】
こうして得られた組成物を成形することで、本発明の燃料電池用セパレータが得られる。成形方法としては、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形等の公知の方法が可能であるが、成形効率の点で射出成形が好ましい。尚、何れの成形方法においても、成形条件は組成物の配合成分に応じて適宜設定される。また、必要に応じて、成形後に切削加工を施すことも可能である。
【0023】
尚、燃料電池用セパレータの形状や構造には制限がなく、例えば図1に例示した形状とすることができる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明に更に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0025】
(実施例1〜8、比較例1〜6)
表1に示す配合に従い、材料合計500gを10Lのヘンシェルミキサーで予備混合した後、1Lの加圧ニーダーで、チャンバー温度80℃で3分間混練した。これを粉砕機で粒径約1mmの粒子状に粉砕して成形材料とし、射出成形を行った。尚、表1の配合の単位は質量%である。また、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂及びナフタレンモノマー型4官能エポキシ樹脂の構造式を以下に示す。
【0026】
【化1】

【0027】
成形条件は、射出成形機として型締め力80tの熱硬化性樹脂用成形機(菱屋精工製)を用い、シリンダー温度はホッパ下50℃、ノズルは90℃とし、金型温度は170℃とし、射出速度20mm/sec、硬化時間は60〜180秒とした。成形圧力は30〜70MPaの範囲で適宜設定した。この成形により、一辺100mm、厚さ2mmの正方形薄板状の試料を作製し、下記の評価を行った。結果を表1に併記する。
【0028】
(1)導電性の評価
図2に示す方法で貫通方向の抵抗を測定し、導電性の評価を行った。試料21を、カーボンペーパー22を介して電極23にセットし、電極間に流した電流(電流計24で測定)とカーボンペーパー間の電圧(電圧計25で測定)から、電気抵抗を計算し、さらにこれに試料面積を掛けて貫通方向の抵抗率とした。
(2)熱間曲げ強さの測定
JIS K7171のプラスチック−曲げ特性の試験方法に準じて求めた。試験は恒温槽付きのインストロン型万能試験機を使用し、試験雰囲気100℃で行った。
(3)流動性の評価
JIS K6911の熱硬化性プラスチック一般試験方法「押出式流れ,フェノール樹脂の流れの良いもの」に準じて求めた。流出量を流動性の指標とした。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示すように、本発明に従い樹脂成分としてナフタレン環を有するエポキシ樹脂を用いることにより、導電性、流動性、更には高温での強度に優れる燃料電池用セパレータを射出成形により効率よく製造できることは明らかである。
【0031】
また、図3に炭素材料含有量と3点曲げ強さとの関係、図4に炭素材料含有量と貫通抵抗との関係、図5に炭素材料含有量と流動性との関係を、それぞれグラフ化して示すが、炭素材料の含有量が同じでも、本発明に従いナフタレン環を有するエポキシ樹脂を用いることにより、機械的強度が高く、低抵抗となり、また、流動性に優れ成形性にも優れるようになることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明及び従来の燃料電池用セパレータの一例を示す斜線図である。
【図2】接触抵抗の測定方法を示す模式図である。
【図3】実施例で得られた炭素材料含有量と3点曲げ強さとの関係を示すグラフである。
【図4】実施例で得られた炭素材料含有量と貫通抵抗との関係を示すグラフである。
【図5】実施例で得られた炭素材料含有量と流動性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0033】
10 燃料電池用セパレータ
11 平板部
12 隔壁
13 チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用セパレータを成形するための成形材料であって、(A)ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤 及び(D)炭素材料を含むことを特徴とする燃料電池用セパレータ用組成物。
【請求項2】
(B)硬化剤が、2個以上のフェノール性水酸基を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池用セパレータ用組成物。
【請求項3】
(D)炭素材料の含有量が組成物全量の35−85質量%であり、かつ、(D)炭素材料の5〜100質量%を膨張黒鉛が占めることを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池用セパレータ用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ用組成物からなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池用セパレータ用組成物を射出成形することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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