説明

燃料電池車両

【課題】供給電力が不足するのを防止しつつ、燃費を向上することが可能な燃料電池車両を提供する。
【解決手段】FC車両は、蓄電装置の可能出力を検出する可能出力検出手段124と、車速が第1車速閾値以下の場合に、反応ガス供給手段の作動量を通常運転時よりも少なくするアイドル発電抑制を実施する第1アイドル発電抑制手段126と、前記第1車速閾値より高い第2車速閾値以下の場合に、前記アイドル発電抑制を実施する第2アイドル発電抑制手段128と、蓄電装置の可能出力が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制手段を用いてアイドル発電抑制を実施し、蓄電装置の可能出力が相対的に大きいときに第2アイドル発電抑制手段128を用いてアイドル発電抑制を実施するアイドル発電抑制車速閾値変更手段130とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池と蓄電装置を用いて走行モータを駆動可能な燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の場合に燃料電池の発電を一時的に停止する技術が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、所定の一時停止条件(アイドル条件)を満たした場合、燃料電池1の発電を停止させて一時停止状態にさせ、所定の復帰条件(アイドル復帰条件)を満たした場合、燃料電池1の発電を再開する(要約)。また、燃料電池1が一時停止状態である時、燃料電池システムの性能変化を検出し、当該性能変化に応じて復帰条件を変更させて、当該復帰条件を満たした場合、燃料電池1の発電を再開させる(要約)。
【0003】
前記燃料電池システムの性能変化に関し、特許文献1では、酸化剤ガス供給量、燃料電池の総電圧、燃料電池のセル電圧又は燃料電池車両周囲の大気圧を用いて燃料電池又は単位セルの性能が停止していると判定する(請求項4〜7)。また、特許文献1では、燃料電池システムの性能が低下しているほど、アイドル復帰条件である車速を低下させる(請求項3)。これにより、燃料電池システムの劣化によって再始動(アイドル復帰)後の運転性能の低下を回避することが企図されている([0005]〜[0009])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−158006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1では、燃料電池システムの劣化による運転性能の低下を回避することが企図されている。換言すると、特許文献1では、燃料電池システムが劣化しても、劣化前の性能を保つことを狙いとしている。
【0006】
ところで、燃料電池車両では、主電源としての燃料電池に加え、補助電源としてのバッテリが設けられることが一般的であるが、燃料電池車両全体の燃費を考える際は、バッテリ(蓄電装置)の充放電効率を考慮することが必要である。しかしながら、特許文献1では、燃料電池車両全体の燃費に着目したアイドル復帰は検討されていない。加えて、特許文献1では、燃料電池車両全体の燃費に着目したアイドル停止は検討されていない。
【0007】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、供給電力が不足するのを防止しつつ、燃費を向上することが可能な燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る燃料電池車両は、走行モータと、前記走行モータに電力を供給する燃料電池と、前記走行モータに電力を供給すると共に、前記走行モータからの回生電力を充電する蓄電装置と、前記燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、車速を測定する車速測定手段と、前記蓄電装置の可能出力を検出する可能出力検出手段と、前記車速が第1車速閾値以下の場合に、前記反応ガス供給手段の作動量を通常運転時よりも少なくするアイドル発電抑制を実施する第1アイドル発電抑制手段と、前記車速が前記第1車速閾値より高い第2車速閾値以下の場合に、前記アイドル発電抑制を実施する第2アイドル発電抑制手段と、前記蓄電装置の可能出力が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制手段を用いて前記アイドル発電抑制を実施し、前記蓄電装置の可能出力が相対的に大きいときに前記第2アイドル発電抑制手段を用いて前記アイドル発電抑制を実施するアイドル発電抑制車速閾値変更手段とを有することを特徴とする。なお、アイドル発電抑制とは、通常発電時の下限発電量(発電量の制御範囲の下限値)よりも低い発電量で発電する又は発電を停止することを意味する。
【0009】
この発明によれば、蓄電装置の可能出力が相対的に大きい場合、より高い車速でアイドル発電抑制を行うことができる。これにより、燃料電池の発電を抑制し、燃費を改善することが可能となる。また、アイドル発電抑制の要否を車速閾値により判定するため、燃料電池の発電状況にかかわらずアイドル発電抑制を実現し、燃費の改善を確実に行うことが可能となる。
【0010】
前記アイドル発電抑制車速閾値変更手段は、前記蓄電装置の可能出力からエアコンディショナの電力消費量を引いた差が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制手段により前記アイドル発電抑制を実施し、前記差が相対的に大きいときに前記第2アイドル発電抑制手段により前記アイドル発電抑制を実施してもよい。これにより、第1アイドル発電抑制手段と第2アイドル発電抑制手段の選択、すなわち、アイドル発電抑制を実施する車速閾値の切替えを、蓄電装置の可能出力とエアコンディショナの電力消費量の差に基づいて行うことができる。エアコンディショナの電力消費量を考慮することにより、蓄電装置による走行モータのアシスト量を精度よく判定することが可能となる。従って、アイドル発電抑制を実施すべき車速閾値を適切に切り替えることが可能となる。
【0011】
前記第2アイドル発電抑制手段が前記アイドル発電抑制を解除する車速は、前記第1アイドル発電抑制手段が前記アイドル発電抑制を解除する車速よりも高くしてもよい。上記によれば、蓄電装置の可能出力が相対的に大きい場合、より高い車速でアイドル発電抑制の解除を行うことができる。これにより、燃料電池の発電を抑制し、燃費を改善することが可能となる。また、アイドル発電抑制の解除の要否を車速閾値により判定するため、燃料電池の発電状況にかかわらずアイドル発電抑制の解除を行い、燃費の改善を確実に行うことが可能となる。
【0012】
前記蓄電装置の可能出力は、前記蓄電装置の残容量及び温度に基づいて算出してもよい。これにより、蓄電装置の残容量のみでなく蓄電装置の温度に基づいて蓄電装置の可能出力を算出するため、蓄電装置の可能出力を高精度に判定することが可能となる。従って、蓄電装置の可能出力に誤差がある場合の不具合(例えば、蓄電装置の充放電効率の低下及びこれに伴う発電効率の低下)を防止することが可能となる。
【0013】
前記燃料電池車両は、前記蓄電装置の出力電圧を変圧して前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータを備え、前記蓄電装置の可能出力が前記コンバータの可能出力よりも大きい場合、前記アイドル発電抑制車速閾値変更手段は、前記コンバータの可能出力が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制手段により前記アイドル発電抑制を実施し、前記コンバータの可能出力が相対的に大きいときに前記第2アイドル発電抑制手段により前記アイドル発電抑制を実施してもよい。
【0014】
蓄電装置の出力電圧をコンバータにより変圧して燃料電池の出力電圧を制御する場合、蓄電装置の可能出力は、コンバータの可能出力を超えることができなくなる。上記構成によれば、蓄電装置の可能出力がコンバータの可能出力よりも大きい場合、蓄電装置の可能出力の代わりにコンバータの可能出力を用いて第1アイドル発電抑制手段又は第2アイドル発電抑制手段の選択を行う。その結果、アイドル発電抑制を実施する車速閾値を適切に選択することが可能となる。従って、蓄電装置の可能出力に誤差がある場合の不具合(例えば、蓄電装置の充放電効率の低下及びこれに伴う発電効率の低下)を防止することが可能となる。
【0015】
この発明に係る燃料電池車両は、走行モータと、前記走行モータに電力を供給する燃料電池と、前記走行モータに電力を供給すると共に、前記走行モータからの回生電力を充電する蓄電装置と、前記燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、車速を測定する車速測定手段と、前記蓄電装置の可能出力を検出する可能出力検出手段と、前記車速が第1車速閾値以上の場合に、前記反応ガス供給手段の作動量を通常運転時よりも少なくするアイドル発電抑制を解除する第1アイドル発電抑制解除手段と、前記車速が前記第1車速閾値より高い第2車速閾値以上の場合に、前記アイドル発電抑制を解除する第2アイドル発電抑制解除手段と、前記蓄電装置の可能出力が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制解除手段を用いて前記アイドル発電抑制を解除し、前記蓄電装置の可能出力が相対的に大きいときに前記第2アイドル発電抑制解除手段を用いて前記アイドル発電抑制を解除するアイドル発電抑制解除車速閾値変更手段とを有することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、蓄電装置の可能出力が相対的に大きい場合、より高い車速でアイドル発電抑制を解除することができる。これにより、燃料電池の発電を抑制し、燃費を改善することが可能となる。また、アイドル発電抑制の解除の要否を車速閾値により判定するため、燃料電池の発電状況にかかわらずアイドル発電抑制を解除し、燃費の改善を確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、蓄電装置の可能出力が相対的に大きい場合、より高い車速でアイドル発電抑制を行うことができる。これにより、燃料電池の発電を抑制し、燃費を改善することが可能となる。また、アイドル発電抑制の要否を車速閾値により判定するため、燃料電池の発電状況にかかわらずアイドル発電抑制を実現し、燃費の改善を確実に行うことが可能となる。
【0018】
また、この発明によれば、蓄電装置の可能出力が相対的に大きい場合、より高い車速でアイドル発電抑制を解除することができる。これにより、燃料電池の発電を抑制し、燃費を改善することが可能となる。また、アイドル発電抑制の解除の要否を車速閾値により判定するため、燃料電池の発電状況にかかわらずアイドル発電抑制を解除し、燃費の改善を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態に係る燃料電池車両の概略構成図である。
【図2】前記実施形態におけるDC/DCコンバータの詳細を示す図である。
【図3】電子制御装置(ECU)が実現する機能を説明する図である。
【図4】アイドル停止の開始判定のフローチャートである。
【図5】バッテリ残容量(SOC)とバッテリ可能出力との関係をバッテリ温度毎に示す図である。
【図6】コンバータ温度とコンバータ可能出力との関係を示す図である。
【図7】バッテリのアシスト上限値とアイドル停止開始車速との関係を示す図である。
【図8】アイドル停止の解除判定のフローチャートである。
【図9】前記アシスト上限値とアイドル停止解除車速との関係を示す図である。
【図10】アシスト可能量の大小によるアイドル停止の開始判定及び解除判定に関するタイムチャートである。
【図11】アイドル停止を行う車速(アイドル停止車速)と1回のアイドル停止モード中のアイドル停止時間との関係を示す図である。
【図12】アイドル停止車速と、1回のアイドル停止モード中の燃費との関係を示す図である。
【図13】前記実施形態に係る電力系の第1変形例の概略構成を示すブロック図である。
【図14】前記実施形態に係る電力系の第2変形例の概略構成を示すブロック図である。
【図15】前記実施形態に係る電力系の第3変形例の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.全体的な構成の説明
[1−1.全体構成]
図1は、この発明の一実施形態に係る燃料電池車両10(以下「FC車両10」又は「車両10」という。)の概略構成図である。FC車両10は、車両電源システム12(以下「電源システム12」ともいう。)と、走行用のモータ14と、インバータ16とを有する。
【0021】
電源システム12は、燃料電池ユニット18(以下「FCユニット18」という。)と、バッテリ20と、DC/DCコンバータ22と、電子制御装置24(以下「ECU24」という。)(車速測定手段)とを有する。
【0022】
[1−2.駆動系]
モータ14は、FCユニット18及びバッテリ20から供給される電力に基づいて駆動力を生成し、当該駆動力によりトランスミッション26を通じて車輪28を回転する。また、モータ14は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]をバッテリ20に出力する。回生電力Pregは、補機群(後述するエアポンプ36、ウォータポンプ68、エアコンディショナ140及び低電圧補機群144を含む。)に対して出力してもよい。
【0023】
インバータ16は、3相フルブリッジ型の構成とされて、直流/交流変換を行い、直流を3相の交流に変換してモータ14に供給する一方、回生動作に伴う交流/直流変換後の直流をDC/DCコンバータ22を通じてバッテリ20及び前記補機群に供給する。
【0024】
なお、モータ14とインバータ16を併せて負荷30という。但し、負荷30には、後述するエアポンプ36、ウォータポンプ68、エアコンディショナ140及び低電圧補機群144等の構成要素を含めることもできる。
【0025】
[1−3.FCユニット18]
FCユニット18の燃料電池スタック32(以下「FCスタック32」又は「FC32」という。)は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セル(以下「FCセル」又は「単セル」という。)を積層した構造を有する。FCスタック32には、水素タンク34とエアポンプ36が経路38、40を通じて接続されており、水素タンク34からは一方の反応ガスである水素(燃料ガス)が、エアポンプ36からは他方の反応ガスである圧縮空気(酸化剤ガス)が供給される。水素タンク34及びエアポンプ36からFCスタック32に供給された水素と空気がFCスタック32内で電気化学反応を起こすことにより発電が行われ、発電電力(FC電力Pfc)[W]がモータ14とバッテリ20に供給される。
【0026】
FCスタック32の発電電圧(以下「FC電圧Vfc」という。)[V]は、電圧センサ42により検出され、FCスタック32の発電電流(以下「FC電流Ifc」という。)[A]は、電流センサ44により検出され、それぞれECU24に出力される。また、FCスタック32を構成する各FCセルの発電電圧(以下「セル電圧Vcell」という。)[V]は、電圧センサ46により検出され、ECU24に出力される。
【0027】
水素タンク34とFCスタック32とを結ぶ経路38には、レギュレータ50が設けられている。このレギュレータ50には、エアポンプ36とFCスタック32とを結ぶ経路40から分岐した経路52が連結されており、エアポンプ36からの圧縮空気が供給される。レギュレータ50は、供給された圧縮空気の圧力に応じて弁の開度を変化させ、FCスタック32に供給する水素の流量を調整する。
【0028】
FCスタック32の出口側に設けられた水素用の経路54及び空気用の経路56には、出口側の水素を外部に排出するパージ弁58と、空気の圧力を調整する背圧弁60が設けられている。また、水素用の入口側の経路38と出口側の経路54とを結ぶ経路62が設けられている。FCスタック32から排出された水素は、この経路62を介してFCスタック32の入口側に戻される。出口側の経路54、56には、圧力センサ64、66が設けられ、その検出値(圧力値)は、それぞれECU24に出力される。
【0029】
さらに、FCスタック32を冷却するためのウォータポンプ68がFCスタック32に設けられている。
【0030】
[1−4.バッテリ20]
バッテリ20は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素電池又はキャパシタ等を利用することができる。本実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。バッテリ20の出力電圧(以下「バッテリ電圧Vbat」という。)[V]は、電圧センサ70により検出され、バッテリ20の出力電流(以下「バッテリ電流Ibat」という。)[A]は、電流センサ72により検出され、それぞれECU24に出力される。バッテリ20の温度(以下「バッテリ温度Tbat」という。)は、バッテリ温度センサ76(以下「温度センサ76」ともいう。)により検出され、ECU24に出力される。なお、ECU24は、電圧センサ70からのバッテリ電圧Vbatと、電流センサ72からのバッテリ電流Ibatに基づいて、バッテリ20の残容量(以下「SOC」という。)[%]を算出する。
【0031】
[1−5.DC/DCコンバータ22]
DC/DCコンバータ22は、FCユニット18からのFC電力Pfcと、バッテリ20から供給された電力(以下「バッテリ電力Pbat」という。)[W]と、モータ14からの回生電力Pregとの供給先を制御する。
【0032】
図2には、本実施形態におけるDC/DCコンバータ22の詳細が示されている。図2に示すように、DC/DCコンバータ22は、一方がバッテリ20のある1次側1Sに接続され、他方が負荷30とFCスタック32との接続点である2次側2Sに接続されている。
【0033】
DC/DCコンバータ22は、1次側1Sの電圧(1次電圧V1)[V]を2次側2Sの電圧(2次電圧V2)[V](V1≦V2)に昇圧するとともに、2次電圧V2を1次電圧V1に降圧する昇降圧型且つチョッパ型の電圧変換装置である。
【0034】
図2に示すように、DC/DCコンバータ22は、1次側1Sと2次側2Sとの間に配される相アームUAと、リアクトル80とから構成される。
【0035】
相アームUAは、上アーム素子(上アームスイッチング素子82とダイオード84)と下アーム素子(下アームスイッチング素子86とダイオード88)とで構成される。上アームスイッチング素子82と下アームスイッチング素子86には、例えば、MOSFET又はIGBTが採用される。
【0036】
リアクトル80は、相アームUAの中点(共通接続点)とバッテリ20の正極との間に挿入され、DC/DCコンバータ22により1次電圧V1と2次電圧V2との間で電圧を変換する際に、エネルギを放出及び蓄積する作用を有する。
【0037】
上アームスイッチング素子82は、ECU24から出力されるゲート駆動信号(駆動電圧)UHのハイレベルによりオンにされ、下アームスイッチング素子86は、ゲートの駆動信号(駆動電圧)ULのハイレベルによりオンにされる。
【0038】
なお、ECU24は、1次側の平滑コンデンサ92に並列に設けられた電圧センサ90により1次電圧V1を検出し、電流センサ94により1次側の電流(1次電流I1)[A]を検出する。また、ECU24は、2次側の平滑コンデンサ98に並列に設けられた電圧センサ96により2次電圧V2を検出し、電流センサ100により2次側の電流(2次電流I2)[A]を検出する。
【0039】
DC/DCコンバータ22の温度(以下「コンバータ温度Tcon」という。)は、コンバータ温度センサ102(以下「温度センサ102」という。)(図1)により検出され、ECU24に出力される。
【0040】
[1−6.ECU24]
ECU24は、通信線104を介して、モータ14、インバータ16、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22を制御する。当該制御に際しては、メモリ(ROM)に格納されたプログラムを実行し、また、電圧センサ42、46、70、90、96、電流センサ44、72、94、100、圧力センサ64、66、温度センサ76、102等の各種センサの検出値を用いる。
【0041】
ここでの各種センサには、開度センサ110及び回転数センサ112(図1)が含まれる。開度センサ110は、アクセルペダル116の開度(以下「アクセル開度θ」又は「開度θ」という。)[度]を検出する。回転数センサ112は、モータ14の回転数(以下「モータ回転数Nm」又は「回転数Nm」という。)[rpm]を検出する。さらに、ECU24には、メインスイッチ118(以下「メインSW118」という。)が接続される。メインSW118は、FCユニット18及びバッテリ20からモータ14への電力供給の可否を切り替えるものであり、ユーザにより操作可能である。
【0042】
ECU24は、マイクロコンピュータ(演算部)を含み、必要に応じて、タイマ、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェースを有する。なお、ECU24は、1つのECUのみからなるのではなく、モータ14、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22毎の複数のECUから構成することもできる。
【0043】
ECU24は、FCスタック32の状態、バッテリ20の状態、及びモータ14の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定したFC車両10全体として電源システム12に要求される負荷から、FCスタック32が負担すべき負荷と、バッテリ20が負担すべき負荷と、回生電源(モータ14)が負担すべき負荷の配分(分担)を調停しながら決定し、モータ14、インバータ16、FCユニット18、バッテリ20及びDC/DCコンバータ22に指令を送出する。
【0044】
図3は、ECU24が実現する機能を説明する図である。図3に示すように、本実施形態のECU24は、通常発電機能120及びアイドル停止制御機能122を備える。通常発電機能120は、後述する通常発電モードを制御する機能である。アイドル停止制御機能122は、後述するアイドル停止モードを制御する機能であり、さらに、可能出力検出機能124、第1アイドル発電抑制機能126、第2アイドル発電抑制機能128及びアイドル発電抑制車速閾値変更機能130とを備える。
【0045】
可能出力検出機能124は、バッテリ可能出力Pbat_e並びにこれに基づくアシスト可能量Pasi_e及びアシスト上限値Pasi_lim等を検出(算出)する機能である(バッテリ可能出力Pbat_e、アシスト可能量Pasi_e及びアシスト上限値Pasi_limについては後述する。)。第1アイドル発電抑制機能126は、アシスト上限値Pasi_limが低いときにアイドル停止を制御する機能である。第2アイドル発電抑制機能128は、アシスト上限値Pasi_limが高いときにアイドル停止を制御する機能である。アイドル発電抑制車速閾値変更機能130は、第1アイドル発電抑制機能126と第2アイドル発電抑制機能128を選択する機能である。これらの機能120、122、124、126、128、130の詳細は後述する。
【0046】
[1−7.エアコンディショナ140]
図1に示すように、車両10は、さらに、エアコンディショナ140を有する。エアコンディショナ140は、車両10内の温度を調整するものであり、ECU24からの指令に基づき作動し、その際の電力は、FC32、バッテリ20及びモータ14の少なくとも1つから得る。エアコンディショナ140としては、例えば、特開2009−046020号公報に記載のものを用いることができる。
【0047】
[1−8.ダウンバータ142及び低電圧補機群144]
図1に示すように、車両10は、さらに、ダウンバータ142(以下「DV142」ともいう。)と、低電圧補機群144とを有する。DV142からの出力は、図示しない低電圧バッテリに出力してもよい。DV142は、DC/DCコンバータ22の1次電圧V1を降圧し、低電圧補機群144に出力する。低電圧補機群144には、例えば、灯火類、各種センサ、ECU24が含まれる。
【0048】
2.本実施形態の制御
次に、ECU24における制御について説明する。
【0049】
[2−1.FC32の出力制御]
FC32の特性上、FC電圧Vfcは、基本的にDC/DCコンバータ22の2次電圧V2と等しくなる。このため、DC/DCコンバータ22により2次電圧V2を調整することにより、FC電圧Vfcを制御することが可能となる。また、FC32の電流−電圧(IV)特性上、FC電圧Vfcを制御することにより、FC電流Ifcを制御することができる。このため、本実施形態では、2次電圧V2の目標値(以下「目標2次電圧V2tgt」という。)を用いてFC電圧Vfc及びFC電流Ifcを制御する。
【0050】
[2−2.発電モード]
本実施形態では、FC32の発電に関する動作モード(発電モード)として、通常発電モードとアイドル停止モードを用いる。通常発電モードは、通常走行(アイドル停止モードではない走行)において用いるモードであり、ECU24の通常発電機能120により実現される。アイドル停止モードは、メインSW118(図1)がオンの状態においてFC32が積極的な発電を停止する(換言すると、FC32の発電を抑制する)モードであり、アイドル停止制御機能122により実現される。ここにいう積極的な発電(又は発電の抑制)とは、ECU24からの指令に基づき行うFC32の発電を指し、残留ガスによる発電を含まない。このため、反応ガス供給手段としてのFCユニット18(エアポンプ36、パージ弁58及び背圧弁60を含む。)の作動量はゼロとなる。なお、通常発電モードとアイドル停止モードの選択は、アイドル停止制御機能122により実行される。
【0051】
[2−3.アイドル停止の開始判定]
図4は、アイドル停止の開始判定のフローチャートである。ステップS1において、ECU24は、バッテリ20のSOCとバッテリ温度センサ76からのバッテリ温度Tbatとに基づいてバッテリ20の可能出力(以下「バッテリ可能出力Pbat_e」という。)[W]を算出する。バッテリ可能出力Pbat_eは、現時点のSOC及びバッテリ温度Tbatにおいてバッテリ20が出力可能な電力を示す。
【0052】
図5は、SOCとバッテリ可能出力Pbat_eとの関係をバッテリ温度Tbat毎に示す図である。図5に示すように、SOCが大きくなるほどバッテリ可能出力Pbat_eが大きくなる。また、通常の使用範囲条件では、SOCが同じ値の場合、バッテリ温度Tbatが高くなるほど、バッテリ可能出力Pbat_eが大きくなる。なお、図5では、バッテリ温度Tbatが高温の場合と低温の場合のみを示しているが、バッテリ温度Tbat毎にSOCとバッテリ可能出力Pbat_eのデータを記憶したマップをECU24の図示しない記憶装置に記憶しておき、当該データを用いる。
【0053】
ステップS2において、ECU24は、アシスト可能量Pasi_e[W]を算出する。アシスト可能量Pasi_eは、バッテリ20が可能なアシスト量を示し、以下の式(1)により求められる。
Pasi_e=バッテリ可能出力Pbat_e−エアコン消費量−DV消費量 ・・・(1)
【0054】
上記式(1)において、「エアコン消費量」は、エアコンディショナ140の消費量であり、「DV消費量」は、ダウンバータ142の消費量を示す。
【0055】
ステップS3において、ECU24は、コンバータ可能出力Pcon_e[W]を算出する。コンバータ可能出力Pcon_eは、現時点のコンバータ温度TconにおいてDC/DCコンバータ22が出力可能な電力を示す。図6は、コンバータ温度Tconとコンバータ可能出力Pcon_eとの関係を示す図である。図6に示すように、コンバータ温度Tconが高くなるほどコンバータ可能出力Pcon_eは小さくなる。なお、図6のデータは、ECU24の前記記憶装置に事前に記憶されている。
【0056】
図4のステップS4において、ECU24は、アシスト可能量Pasi_eが、コンバータ可能出力Pcon_e以上であるか否かを判定する。アシスト可能量Pasi_eがコンバータ可能出力Pcon_eを上回る場合、その上回る分は出力できないためである。アシスト可能量Pasi_eがコンバータ可能出力Pcon_e以上である場合(S4:YES)、ステップS5において、ECU24は、コンバータ可能出力Pcon_eをアシスト上限値Pasi_lim[W]として設定する。アシスト可能量Pasi_eがコンバータ可能出力Pcon_e以上でない場合(S4:NO)、ステップS6において、ECU24は、アシスト可能量Pasi_eをアシスト上限値Pasi_limとして設定する。アシスト上限値Pasi_limは、DC/DCコンバータ22の出力性能(コンバータ可能出力Pcon_e)を考慮した上で、バッテリ20が、実際に出力可能なアシスト量を示す。
【0057】
ステップS7において、ECU24は、ステップS5又はS6で設定したアシスト上限値Pasi_limに基づいてアイドル停止開始車速Visを算出する。アイドル停止開始車速Visは、アイドル停止を開始する車速V[km/h]である。なお、車速Vは、モータ回転数Nmに基づいてECU24が算出する。図7は、アシスト上限値Pasi_limとアイドル停止開始車速Visとの関係を示す図である。図7に示すように、アシスト上限値Pasi_limが高くなるほどアイドル停止開始車速Visを高くする。なお、図7のデータは、ECU24の前記記憶装置に事前に記憶されている。
【0058】
図4のステップS8において、ECU24は、車速Vが、ステップS7で算出したアイドル停止開始車速Vis以下であるか否かを判定する。車速Vがアイドル停止開始車速Vis以下でない場合(S8:NO)、ステップS9において、ECU24は、アイドル停止を開始せずに通常発電を継続する。車速Vがアイドル停止開始車速Vis以下である場合(S8:YES)、ステップS10において、ECU24は、通常発電を終了し、アイドル停止を開始する。
【0059】
[2−4.アイドル停止の解除判定]
図8は、アイドル停止の解除判定のフローチャートである。ステップS21〜S26は、図4のステップS1〜S6と同様である。
【0060】
ステップS27において、ECU24は、ステップS25又はS26で設定したアシスト上限値Pasi_limに基づいてアイドル停止解除車速Vifを算出する。アイドル停止解除車速Vifは、アイドル停止を解除する車速Vである。図9は、アシスト上限値Pasi_limとアイドル停止解除車速Vifとの関係を示す図である。図9に示すように、アシスト上限値Pasi_limが高くなるほどアイドル停止開始車速Visが高くなる。また、アシスト上限値Pasi_limが同じ値である場合、アイドル停止解除車速Vifは、アイドル停止開始車速Visよりも高く設定する。これにより、ヒステリシス特性を実現し、通常発電モードとアイドル停止モードが過度に切り替わることを防止することが可能となる。なお、図9のデータは、ECU24の前記記憶装置に事前に記憶されている。
【0061】
図8のステップS28において、ECU24は、車速Vが、ステップS27で算出したアイドル停止解除車速Vif以上であるか否かを判定する。車速Vがアイドル停止解除車速Vif以上でない場合(S28:NO)、ステップS29において、ECU24は、アイドル停止を解除せずアイドル停止を継続する。車速Vがアイドル停止解除車速Vif以上である場合(S28:YES)、ステップS30において、ECU24は、アイドル停止を解除し、通常発電を再開する。
【0062】
[2−5.制御の例]
図10は、アシスト可能量Pasi_eの大小によるアイドル停止の開始判定及び解除判定に関するタイムチャートである。上記のように、アシスト上限値Pasi_limが高い場合、アイドル停止開始車速Vis及びアイドル停止解除車速Vifが高く設定され、アシスト上限値Pasi_limが低い場合、アイドル停止開始車速Vis及びアイドル停止解除車速Vifが低く設定される。また、アシスト上限値Pasi_limが同じ値の場合、アイドル停止解除車速Vifは、アイドル停止開始車速Visよりも高く設定され、ヒステリシス特性を有するように構成されている。
【0063】
アシスト上限値Pasi_limが高く、バッテリ20のアシスト可能量Pasi_eが多い場合、時点t1において、車速Vがアイドル停止開始車速Vis(=Vis1)以下となり、アイドル停止に入る。一方、アシスト上限値Pasi_limが低く、アシスト可能量Pasi_eが少ない場合、時点t1よりも遅い時点t2において、車速Vがアイドル停止開始車速Vis(=Vis2)以下となり、アイドル停止に入る。
【0064】
時点t3において、アクセルペダル116が踏み込まれ、アクセル開度θが増加すると、モータ消費量[W]が増加を開始する。
【0065】
アシスト上限値Pasi_limが低く、アシスト可能量Pasi_eが少ない場合、時点t4において、車速Vがアイドル停止解除車速Vif(=Vif2)以上となり、アイドル停止を解除して通常発電に復帰する。一方、アシスト上限値Pasi_limが高く、アシスト可能量Pasi_eが多い場合、時点t4よりも遅い時点t5において、車速Vがアイドル停止解除車速Vis(=Vis1)以上となり、アイドル停止を解除して通常発電に復帰する。
【0066】
[2−6.効率]
図11は、アイドル停止を行う車速V(以下「アイドル停止車速Vi」という。)と1回のアイドル停止モード中のアイドル停止時間との関係を示す図である。図12は、アイドル停止車速Viと、1回のアイドル停止モード中の燃費との関係を示す図である。図11及び図12では、アイドル停止開始車速Visとアイドル停止解除車速Vifとが同一の値(すなわち、アイドル停止車速Vi)とされている。図11からわかるように、アイドル停止車速Viが高いほど、アイドル停止時間は長くなる。従って、図12に示すように、アイドル停止車速Viが高いほど、燃費は改善する。
【0067】
3.本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、バッテリ可能出力Pbat_eに基づくアシスト可能量Pasi_eが相対的に大きい場合、より高い車速Vでアイドル停止を行うことができる(図4)。これにより、FC32の発電を抑制し、燃費を改善することが可能となる。また、アイドル停止の要否を車速閾値(アイドル停止開始車速Vis)により判定するため、FC32の発電状況にかかわらずアイドル停止を実現し、燃費の改善を確実に行うことが可能となる。
【0068】
本実施形態によれば、バッテリ可能出力Pbat_eに基づくアシスト可能量Pasi_eが相対的に大きい場合、より高い車速Vでアイドル停止を解除することができる(図8)。これにより、FC32の発電を抑制し、燃費を改善することが可能となる。また、アイドル停止の解除の要否を車速閾値(アイドル停止解除車速Vif)により判定するため、FC32の発電状況にかかわらずアイドル停止を解除し、燃費の改善を確実に行うことが可能となる。
【0069】
ECU24(アイドル発電抑制車速閾値変更機能130)は、バッテリ可能出力Pbat_eからエアコン消費量及びDV消費量を差し引いたアシスト可能量Pasi_e
が相対的に小さいときに第1アイドル発電抑制機能126によりアイドル停止を実施し、アシスト可能量Pasi_eが相対的に大きいときに第2アイドル発電抑制機能128によりアイドル停止を実施する。これにより、第1アイドル発電抑制機能126と第2アイドル発電抑制機能128の選択、すなわち、アイドル停止を実施する車速閾値の切替えを、バッテリ可能出力Pbat_eとエアコン消費量及びDV消費量との差に基づいて行うことができる。エアコン消費量(エアコンディショナ140の電力消費量)を考慮することにより、バッテリアシスト量Pasiを精度よく判定することが可能となる。従って、アイドル停止を実施すべき車速閾値を適切に切り替えることが可能となる。
【0070】
本実施形態において、ECU24(第2アイドル発電抑制機能128)がアイドル停止を解除する車速V(アイドル停止解除車速Vif)は、第1アイドル発電抑制機能126がアイドル停止を解除する車速Vよりも高い。上記によれば、バッテリ可能出力Pbat_eが相対的に大きい場合、より高い車速Vでアイドル停止の解除を行うことができる。これにより、FC32の発電を抑制し、燃費を改善することが可能となる。また、アイドル停止の解除の要否を車速閾値(アイドル停止解除車速Vif)により判定するため、FC32の発電状況にかかわらずアイドル停止の解除を行い、燃費の改善を確実に行うことが可能となる。
【0071】
本実施形態において、バッテリ可能出力Pbat_eは、バッテリ20のSOC及びバッテリ温度Tbatに基づいて算出する。これにより、SOCのみでなくバッテリ温度Tbatに基づいてバッテリ可能出力Pbat_eを算出するため、バッテリ可能出力Pbat_eを高精度に判定することが可能となる。従って、バッテリ可能出力Pbat_eに誤差がある場合の不具合(例えば、バッテリ20の充放電効率の低下及びこれに伴う発電効率の低下)を防止することが可能となる。
【0072】
本実施形態において、バッテリ可能出力Pbat_eがコンバータ可能出力Pcon_eよりも大きい場合、ECU24(アイドル発電抑制車速閾値変更機能130)は、コンバータ可能出力Pcon_eが相対的に小さいときに第1アイドル発電抑制機能126によりアイドル停止を実施し、コンバータ可能出力Pcon_eが相対的に大きいときに第2アイドル発電抑制機能128によりアイドル停止を実施する。バッテリ電圧VbatをDC/DCコンバータ22により変圧してFC電圧Vfcを制御する場合、バッテリ可能出力Pbat_eは、コンバータ可能出力Pcon_eを超えることができなくなる。上記構成によれば、バッテリ可能出力Pbat_eがコンバータ可能出力Pcon_eよりも大きい場合、バッテリ可能出力Pbat_eの代わりにコンバータ可能出力Pcon_eを用いて第1アイドル発電抑制機能126又は第2アイドル発電抑制機能128の選択を行う。その結果、アイドル停止を実施する車速閾値を適切に選択することが可能となる。従って、バッテリ可能出力Pbat_eに誤差がある場合の不具合(例えば、バッテリ20の充放電効率の低下及びこれに伴う発電効率の低下)を防止することが可能となる。
【0073】
4.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0074】
[4−1.適用対象]
上記実施形態では、電源システム12をFC車両10に適用した例を示したが、これに限らず、電源システム12を別の対象に適用してもよい。例えば、電動アシスト自転車、船舶や航空機等の移動体に適用することもできる。
【0075】
[4−2.電源システム12の構成]
上記実施形態では、FC32とバッテリ20を並列に配置し、バッテリ20の手前にDC/DCコンバータ22を配置する構成としたが、これに限らない。例えば、図13に示すように、FC32とバッテリ20を並列に配置し、昇圧式、降圧式又は昇降圧式のDC/DCコンバータ150をFC32の手前に配置する構成であってもよい。或いは、図14に示すように、FC32とバッテリ20を並列に配置し、FC32の手前にDC/DCコンバータ150を、バッテリ20の手前にDC/DCコンバータ22を配置する構成であってもよい。或いは、図15に示すように、FC32とバッテリ20を直列に配置し、バッテリ20とモータ14の間にDC/DCコンバータ22を配置する構成であってもよい。
【0076】
[4−3.発電モード]
(4−3−1.アイドル停止モード)
上記実施形態では、目標FC電流Ifctgtをゼロとするアイドル停止モードを用いたが、FC32の発電を抑制するアイドル発電抑制モード(目標FC電流Ifctgtを抑制するモード)であれば、これに限らない。例えば、ゼロより大きい値を目標FC電流Ifctgtとして設定してもよい。換言すると、アイドル停止時は、反応ガス供給手段としてのFCユニット18の作動量はゼロでなくてもよい。
【0077】
(4−3−2.通常発電モードとアイドル停止モードとを切り替える条件)
上記実施形態では、通常発電モードからアイドル停止モードに切り替える条件として、車速Vがアイドル停止開始車速Vis以下であること(図4のS8:YES)を用いたが、これに限らない。例えば、アクセル開度θが、アクセルペダル116の操作が行われていないことを示す閾値以下であるときに通常発電モードからアイドル停止モードに切り替えてもよい。
【0078】
上記実施形態では、アイドル停止モードから通常発電モードに切り替える条件(抑制解除条件)として、車速Vがアイドル停止解除車速Vif以上であること(図8のS28:YES)を用いたが、これに限らない。例えば、アクセル開度θが、アクセルペダル116の操作が行われていることを示す閾値以上であるときにアイドル停止モードから通常発電モードに切り替えてもよい。
【0079】
上記実施形態では、アイドル停止開始車速Vis及びアイドル停止解除車速Vifを設定する機能として、第1アイドル発電抑制機能126及び第2アイドル発電抑制機能128の2つを用いたが、アイドル発電抑制機能は3つ以上でもよい。換言すると、アイドル停止開始車速Vis及びアイドル停止解除車速Vifのそれぞれは、マップを用いて3つ以上の値をもってもよい(図7及び図9参照)。
【0080】
(4−3−3.その他)
上記実施形態では、通常発電モードからアイドル停止モードに切り替える場合、及びアイドル停止モードから通常発電モードに切り替える場合それぞれについてアシスト上限値Pasi_limによる調整を行ったが、いずれか一方のみに当該調整を行ってもよい。
【0081】
上記実施形態では、アイドル停止開始車速Vis及びアイドル停止解除車速Vifの算出をアシスト上限値Pasi_limに基づいて行ったが、少なくともバッテリ可能出力Pbat_eに基づくものであれば、これに限らない。例えば、バッテリ可能出力Pbat_e自体又はアシスト可能量Pasi_eに基づいてアイドル停止開始車速Vis及びアイドル停止解除車速Vifの少なくとも一方を算出してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、アシスト可能量Pasi_eをバッテリ可能出力Pbat_eからエアコン消費量及びDV消費量を差し引いた値としたが{上記式(1)}、これに限らない。例えば、バッテリ可能出力Pbat_eからエアコン消費量を差し引いた値、又はバッテリ可能出力Pbat_eからDV消費量を差し引いた値であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…燃料電池車両 14…走行モータ
18…燃料電池ユニット(反応ガス供給手段)
20…バッテリ(蓄電装置) 22…DC/DCコンバータ
32…燃料電池スタック 76…バッテリ温度センサ
124…可能出力検出機能(可能出力検出手段)
126…第1アイドル発電抑制機能(第1アイドル発電抑制手段)
128…第2アイドル発電抑制機能(第2アイドル発電抑制手段)
130…アイドル発電抑制車速閾値変更機能(アイドル発電抑制車速閾値変更手段)
140…エアコンディショナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行モータと、
前記走行モータに電力を供給する燃料電池と、
前記走行モータに電力を供給すると共に、前記走行モータからの回生電力を充電する蓄電装置と、
前記燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、
車速を測定する車速測定手段と、
前記蓄電装置の可能出力を検出する可能出力検出手段と、
前記車速が第1車速閾値以下の場合に、前記反応ガス供給手段の作動量を通常運転時よりも少なくするアイドル発電抑制を実施する第1アイドル発電抑制手段と、
前記車速が前記第1車速閾値より高い第2車速閾値以下の場合に、前記アイドル発電抑制を実施する第2アイドル発電抑制手段と、
前記蓄電装置の可能出力が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制手段を用いて前記アイドル発電抑制を実施し、前記蓄電装置の可能出力が相対的に大きいときに前記第2アイドル発電抑制手段を用いて前記アイドル発電抑制を実施するアイドル発電抑制車速閾値変更手段と
を有する燃料電池車両。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池車両において、
前記アイドル発電抑制車速閾値変更手段は、前記蓄電装置の可能出力からエアコンディショナの電力消費量を引いた差が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制手段により前記アイドル発電抑制を実施し、前記差が相対的に大きいときに前記第2アイドル発電抑制手段により前記アイドル発電抑制を実施する
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池車両において、
前記第2アイドル発電抑制手段が前記アイドル発電抑制を解除する車速は、前記第1アイドル発電抑制手段が前記アイドル発電抑制を解除する車速よりも高い
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池車両において、
前記蓄電装置の可能出力は、前記蓄電装置の残容量及び温度に基づいて算出する
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池車両において、
前記蓄電装置の出力電圧を変圧して前記燃料電池の出力電圧を制御するコンバータを備え、
前記蓄電装置の可能出力が前記コンバータの可能出力よりも大きい場合、前記アイドル発電抑制車速閾値変更手段は、前記コンバータの可能出力が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制手段により前記アイドル発電抑制を実施し、前記コンバータの可能出力が相対的に大きいときに前記第2アイドル発電抑制手段により前記アイドル発電抑制を実施する
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項6】
走行モータと、
前記走行モータに電力を供給する燃料電池と、
前記走行モータに電力を供給すると共に、前記走行モータからの回生電力を充電する蓄電装置と、
前記燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、
車速を測定する車速測定手段と、
前記蓄電装置の可能出力を検出する可能出力検出手段と、
前記車速が第1車速閾値以上の場合に、前記反応ガス供給手段の作動量を通常運転時よりも少なくするアイドル発電抑制を解除する第1アイドル発電抑制解除手段と、
前記車速が前記第1車速閾値より高い第2車速閾値以上の場合に、前記アイドル発電抑制を解除する第2アイドル発電抑制解除手段と、
前記蓄電装置の可能出力が相対的に小さいときに前記第1アイドル発電抑制解除手段を用いて前記アイドル発電抑制を解除し、前記蓄電装置の可能出力が相対的に大きいときに前記第2アイドル発電抑制解除手段を用いて前記アイドル発電抑制を解除するアイドル発電抑制解除車速閾値変更手段と
を有する燃料電池車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−244714(P2012−244714A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111034(P2011−111034)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】