説明

燃料電池電車に搭載する液体水素容器

【課題】 床下機器が配置されている鉄道車両でも十分な容積を確保することができる、燃料電池電車に搭載する液体水素容器を提供する。
【解決手段】 燃料電池電車に搭載する液体水素容器において、燃料電池電車1の底面3において、進行方向前方の一方の側と後方の他方の側とに床下機器4と5,6が搭載され、この床下機器4と床下機器5,6との間に空間部Bを有する場合に、一本の液体水素容器7が進行方向前方の直線状の液体水素容器部7Aおよび進行方向後方の直線状の液体水素容器部7Bに加えて、それらの間にオフセット状の液体水素容器部7Cを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池電車に搭載する液体水素容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、燃料電池電車の開発が行われている(下記非特許文献1,2参照)。
燃料電池電車に搭載された燃料電池、特に固体高分子膜型燃料電池に供給される水素は高圧(約35MPa)の圧縮水素として圧縮水素容器に搭載するようにしていた。また、類似の燃料電池自動車でも、同じく水素を高圧にして圧縮水素容器に搭載するようにしている。
【0003】
一方、燃料電池自動車や水素エンジン自動車において、液体水素を液体水素容器に貯蔵した例もあるが、搭載される液体水素容器はいずれも俵型のような単純な形状であり、車両に搭載する場合、艤装位置の制約があった。
図5は従来の液体水素容器を搭載する燃料電池電車(その1)の側面図、図6はその燃料電池電車の底面図である。
【0004】
これらの図において、101は燃料電池電車、102は燃料電池電車101の車輪、103は燃料電池電車101の底面、104,105,106はその底面103に配置された電気機器等の床下機器(空気だめ、砂箱、まくらばり、速度発電機等)、107,108は液体水素容器である。
図7は従来の液体水素容器を搭載する燃料電池電車(その2)の側面図、図8はその燃料電池電車の底面図である。
【0005】
これらの図において、201は燃料電池電車、202は燃料電池電車201の車輪、203は燃料電池電車201の底面、204,205,206はその底面203に配置された電気機器等の床下機器(空気だめ、砂箱、まくらばり、速度発電機等)、207は液体水素容器である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山本 貴光,古谷 勇真,米山 崇,小川 賢一、「燃料電池車両の開発〜100kW級燃料電池による走行試験結果概要〜」,RRR 2007.8,pp.14−17
【非特許文献2】山本 貴光,長谷川 均,古谷 勇真,小川 賢一、「燃料電池・バッテリーハイブリッド試験電車の概要」,RRR 2009.3,pp.2−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の高圧の圧縮水素容器は、その圧力により容器が破壊されないように、球形や俵型の形状に限られているため、圧縮水素容器として自由な形状が選べず、容積効率が低い。
また、液体水素は、常温常圧の気体水素に比べて約778分の1の容積となるため、小型の貯蔵装置で済み、鉄道車両のような移動体に搭載する場合に有利であるが、一方で、液体水素は極低温(20K)の物質であるため、断熱容器でなければ貯蔵することができない。このため、これまでは図6,8に示す液体水素容器107,108,207のような単純な形状のものしかなかった。燃料電池電車に搭載する場合、例えば、車両の床下機器として、駆動用インバータ装置のような電気機器等が既に配置されているため、単純な形状の断熱容器では十分な容積を確保することができない。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みて、床下機器が配置されている鉄道車両でも十分な容積を確保することができる、燃料電池電車に搭載する液体水素容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕燃料電池電車に搭載される液体水素容器において、燃料電池電車の底面に配置される床下機器の間の空間部にも液体水素容器の一部を配置した1本の液体水素容器を具備することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の燃料電池電車に搭載する液体水素容器において、前記液体水素容器が断熱配管を組み合わせて構成されることを特徴とする。
【0010】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の燃料電池電車に搭載する液体水素容器において、前記燃料電池電車の底面において、進行方向前方の一方の側と後方の他方の側とに前記床下機器が搭載され、この床下機器の間に前記空間部を有する場合に、前記一本の液体水素容器が、進行方向前方の直線状の液体水素容器部および進行方向後方の直線状の液体水素容器部に加えてそれらの間にオフセット状の液体水素容器部を具備することを特徴とする。
【0011】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載の燃料電池電車に搭載する液体水素容器において、前記燃料電池電車の底面において、進行方向前方および後方の同じ側に前記床下機器が搭載され、この床下機器の間に前記空間部を有する場合に、前記一本の液体水素容器が、進行方向前方の直線状の液体水素容器部および進行方向後方の直線状の液体水素容器部に加えて、それらの間に突出状の液体水素容器部を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃料電池電車に搭載する液体水素容器において、気体水素より容積の小さい液体水素を搭載するので、圧縮水素容器と比べて小型の液体水素容器とすることができる。また、単純な形状の液体水素容器と比べて床下機器が配置されている鉄道車両でも十分な容積を確保することができ、より多くの水素を貯蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例を示す液体水素容器を搭載する燃料電池電車の側面図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す液体水素容器を搭載する燃料電池電車の底面図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す液体水素容器を搭載する燃料電池電車の側面図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す液体水素容器を搭載する燃料電池電車の底面図である。
【図5】従来の液体水素容器を搭載する燃料電池電車(その1)の側面図である。
【図6】従来の液体水素容器を搭載する燃料電池電車(その1)の底面図である。
【図7】従来の液体水素容器を搭載する燃料電池電車(その2)の側面図である。
【図8】従来の液体水素容器を搭載する燃料電池電車(その2)の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の燃料電池電車に搭載する液体水素容器は、燃料電池電車の底面に配置される床下機器の間の空間部にも液体水素容器の一部を配置した1本の液体水素容器を具備する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す液体水素容器を搭載する燃料電池電車の側面図、図2はその燃料電池電車の底面図である。
これらの図において、1は燃料電池電車、2は燃料電池電車1の車輪、3は燃料電池電車1の底面、4は進行方向A後方(図面左側)の底面3に配置された電気機器等の床下機器(空気だめ、砂箱、まくらばり、速度発電機等)、5,6は進行方向A前方(図面右側)の底面3に配置された電気機器等の床下機器(空気だめ、砂箱、まくらばり、速度発電機等)であり、その床下機器4と床下機器5,6との間には空間部Bが存在している。7は床下機器4の横に配置される直線状の液体水素容器部7Aと、床下機器5,6の横に配置される直線状の液体水素容器部7Bと、床下機器4と床下機器5,6との間の空間部Bに配置されるオフセット状の液体水素容器部7Cとからなる1本の液体水素容器である。
【0016】
このように、燃料電池電車1の底面3において、床下機器4と床下機器5,6との間の空間部Bに適合するように、直線状の液体水素容器部7Aと直線状の液体水素容器部7Bに加えてオフセット状の液体水素容器部7Cをさらに含む1本の液体水素容器7を配置するようにしたので、十分な容積を確保することができ、容積効率を高めることができる。
図3は本発明の第2実施例を示す液体水素容器を搭載する燃料電池電車の側面図、図4はその燃料電池電車の底面図である。
【0017】
これらの図において、11は燃料電池電車、12は燃料電池電車11の車輪、13は燃料電池電車11の底面、14は進行方向A後方(図面左側)の底面13に配置された電気機器等の床下機器(空気だめ、砂箱、まくらばり、速度発電機等)、15,16は進行方向A前方(図面右側)の底面13に配置された電気機器等の床下機器(空気だめ、砂箱、まくらばり、速度発電機等)であり、その床下機器14と床下機器15,16との間には空間部Cが存在している。17は床下機器14の横に配置される直線状の液体水素容器部17Aと、床下機器15,16の横に配置される直線状の液体水素容器部17Bと、床下機器14と床下機器15,16との間の空間部Cに配置される突出状の液体水素容器部17Cとからなる1本の液体水素容器である。
【0018】
このように、燃料電池電車11の底面13において、床下機器14と床下機器15,16との間の空間部Cに適合するように、直線状の液体水素容器部17Aと直線状の液体水素容器部17Bに加えて突出状の液体水素容器部17Cをさらに含む1本の液体水素容器17を配置するようにしたので、十分な容積を確保することができ、容積効率を高めることができる。
【0019】
上記第1及び第2実施例の液体水素容器7,17は断熱配管からなる各液体水素容器部7A,7B,17A,17Bで構成れている。極低温(20K)である液体水素は、従来単純な形状の断熱容器でなければ貯蔵できなかったが、極低温の液体を移送するための断熱配管を組み合わせることにより、複雑な形状の液体水素容器7,17を構成することができる。
【0020】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の燃料電池電車に搭載する液体水素容器は、既存の鉄道車両に床下機器が配置されている場合でも十分な容積を確保することができる、燃料電池電車に搭載する液体水素容器として利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1,11 燃料電池電車
2,12 燃料電池電車の車輪
3,13 燃料電池電車の底面
4,5,6,14,15,16 電気機器等の床下機器
A 電車の進行方向
B,C 空間部
7,17 1本の液体水素容器
7A,7B,17A,17B 直線状の液体水素容器部
7C オフセット状の液体水素容器部
17C 突出状の液体水素容器部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池電車の底面に配置される床下機器の間の空間部にも液体水素容器の一部を配置した1本の液体水素容器を具備することを特徴とする燃料電池電車に搭載する液体水素容器。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池電車に搭載する液体水素容器において、前記液体水素容器が断熱配管を組み合わせて構成されることを特徴とする燃料電池電車に搭載する液体水素容器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池電車に搭載する液体水素容器において、前記燃料電池電車の底面において、進行方向前方の一方の側と後方の他方の側とに前記床下機器が搭載され、該床下機器の間に前記空間部を有する場合に、前記一本の液体水素容器が、進行方向前方の直線状の液体水素容器部および進行方向後方の直線状の液体水素容器部に加えてそれらの間にオフセット状の液体水素容器部を具備することを特徴とする燃料電池電車に搭載する液体水素容器。
【請求項4】
請求項1又は2記載の燃料電池電車の底面に搭載する液体水素容器において、前記燃料電池電車の底面において、進行方向前方および後方の同じ側に前記床下機器が搭載され、該床下機器の間に前記空間部を有する場合に、前記一本の液体水素容器が、進行方向前方の直線状の液体水素容器部および進行方向後方の直線状の液体水素容器部に加えて、それらの間に突出状の液体水素容器部を具備することを特徴とする燃料電池電車に搭載する液体水素容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−162129(P2012−162129A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22705(P2011−22705)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】