説明

燃料電池

【課題】排水効率が向上し、燃料もしくは酸化剤の効率的供給が可能な、発電効率のよい燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池の電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が設置されており、前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ流路の入口からの電解質膜に対して平行方向の距離が異なる2つの点における拡散用部材の位置をx1およびx2とし、x1およびx2における拡散用部材の水に対する接触角をθc(x1)およびθc(x2)とすると、入口からの距離が異なる2つの点における接触角の関係が、x1<x2であるとき、θc(x1)<θc(x2)の関係を満足する燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に関し、特に燃料及び酸化剤を供給する際の流路におけるガス拡散を改良した燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池の断面形状の典型を図6に示す。固体高分子型燃料電池は固体高分子の電解質膜5を中央部に有する。その片側の面に燃料が供給されアノードとなる燃料極と、もう片側の面に酸化剤が供給されカソードとなる酸化極を有しており、これらの構成はまとめて一般にMEA(Membrane Electrode Assembiy)と呼ばれる。さらにそれぞれの極には、電解質膜5の外側に燃料もしくは酸化剤を拡散し、かつ発電した電力を集電する為の拡散層3,6を有し、さらにその外側に燃料もしくは酸化剤を供給する為の流路2,7を有している。1はカソード側のセパレータ、4はシール、8はアノード側のセパレータ、9は水素の漏れを防ぐためのシール、10は酸化剤である酸素を含む空気の取り入れ口、11は水素の供給口を表す。
【0003】
前記拡散層3もしくは6は一般的に導電性のある多孔質媒体として例えばカーボンクロスなどが用いられる。また流路2もしくは7の部分にも支持部材として空孔率の高い多孔質媒体を用いる場合がある。
【0004】
燃料もしくは酸化剤は、流路2,7の中を例えば圧力勾配などを利用して強制的に供給され、拡散層3,6を通して拡散し、それぞれアノードもしくはカソードに到達する。
アノードでは到達した燃料がアノードの触媒による酸化作用により酸化されプロトンとなり、高分子電解質膜中をカソードに向けて移動する。この燃料としては水素などの気体やメタノール・エタノール等の液体が使用される。
【0005】
カソードでは酸化剤流路より拡散層を通じて到達した酸化剤、例えば酸素と、電解質膜を移動してきたプロトンが酸化剤と反応して水が生成される。そしてこの一連の化学反応によりエネルギーの一部が電気エネルギーとして取り出される。
【0006】
前述の通り、カソードでは発電反応によって水が生成される。この水は、通常水蒸気もしくは水分液滴となって酸化剤の拡散層から流路に移動し、排出される。また、MEAを透過してアノード側から排出される場合もある。この際、燃料もしくは酸化剤の供給を、圧力勾配を用いて行う場合には、そのまま燃料もしくは酸化剤と一緒に水も移動し、排出口より排出される。
【0007】
一般に燃料電池は単体では十分な電力を得られないため、図7に示す様に、上記のような構造(セル)12をいくつか直列に積層したスタックの構造を有する。このような形式の燃料電池は主にガソリンに替わる自動車の動力源や業務用もしくは家庭用のコジェネレーション用途として注目を浴びている。
【0008】
さらに、近年ではノートパソコンや、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯用電子機器のバッテリーとしてもその用途が期待され、開発が進められている。この場合、燃料電池そのものは極端に小型化しなくてはならず、そのため、圧力勾配を利用した燃料もしくは酸化剤の供給装置などの制御機構が利用できない場合もある。このような場合には燃料及び酸化剤を拡散や自然対流によって供給せざるを得ない。
【0009】
例えば、特許文献1には、酸化剤である酸素を自然拡散によって供給するパッシブ型燃料電池の技術が開示されている。特許文献1中の図4はそのセル構造を示した図であり、酸化剤である酸素は拡散セルユニット39を拡散しMEA55に到達する。また、燃料である水素は58から供給されMEA55に到達する。
【0010】
このようなパッシブ型燃料電池の特徴としては、酸素は酸化剤入口から濃度勾配を利用して供給され、同時に同じ場所から濃度勾配によって水蒸気が排出する必要がある。一般的には酸化剤として空気中の酸素を利用するため、この部分を大気に開放させる。このようなパッシブ型燃料電池の場合、その他の流路入口と出口が明確に定義できる燃料電池とは異なる設計思想を要する。
【0011】
特にパッシブ型燃料電池においては、水分の排出機構においては能動的に反応できなかった燃料気体及び反応によって生成された水分を移動させて排出する制御機構がない。そのため、前述の通り燃料及び酸化剤を自然拡散によって供給するだけではなく、排水も自然に行われるような機構をもたなくてはならない。
【0012】
また、強制的な循環機構がある場合は、燃料もしくは酸化剤を供給する供給口と、水や水蒸気などを排出する排出口が明確に分かれるが、パッシブ型の燃料電池の場合、それらが同一の場合もありうる。例えば特許文献1の場合、酸化剤である酸素を供給する供給口と反応によって発生した水分を排出する排出口は同一である。
【0013】
このような場合、燃料電池の小型化のためには酸化剤である酸素を効率よく供給し、かつ、水分を効率よく排出する機構が必要となる。水分を効率よく排出するための例としては特許文献2が挙げられる。この特許文献2では拡散層の下流領域の拡散率を上流領域の拡散率に比べて大きくする構成を用いることで水分の排出を容易にする。しかし、この方法は燃料もしくは酸化剤を強制的に循環させるシステムが必須であり、パッシブ型の燃料電池にはそのまま適用できない。
【特許文献1】米国特許第6,423,437号明細書
【特許文献2】特開2004−273392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、燃料もしくは酸化剤を主に自然拡散によって供給するパッシブ型燃料電池において、流路に撥水性の多孔質媒体からなる拡散用部材を設置することにより、排水効率が向上し、燃料もしくは酸化剤の効率的供給が可能な、発電効率のよい燃料電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための第一の燃料電池は、電解質膜の両面にアノードとカソードが形成され、アノード側に燃料を供給し、カソード側に酸化剤を供給し燃料と酸化剤をそれぞれ反応させることにより電力を発生させる燃料電池において、
前記燃料電池は電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が連続して設置されており、
前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ水に対する接触角が異なる二種類以上の拡散用部材が電解質膜に対して平行方向に連続して設置されており、かつ流路の入口からの電解質膜に対して平行方向のそれぞれの拡散用部材の水に対する接触角は、流路の入口に近い位置に配置された拡散用部材の水に対する接触角が、該拡散用部材よりも相対的に遠い位置に配置された拡散用部材の接触角よりも小さいことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するための第二の燃料電池は、電解質膜の両面にアノードとカソードが形成され、アノード側に燃料を供給し、カソード側に酸化剤を供給し燃料と酸化剤をそれぞれ反応させることにより電力を発生させる燃料電池において、
前記燃料電池は電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が設置されており、
前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ流路の入口からの電解質膜に対して平行方向の距離が異なる2つの点における拡散用部材の位置をx1およびx2とし、x1およびx2における拡散用部材の水に対する接触角をθc(x1)およびθc(x2)とすると、入口からの距離が異なる2つの点における接触角の関係が、x1<x2であるとき、θc(x1)<θc(x2)の関係を満足することを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するための第三の燃料電池は、電解質膜の両面にアノードとカソードが形成され、アノード側に燃料を供給し、カソード側に酸化剤を供給し燃料と酸化剤をそれぞれ反応させることにより電力を発生させる燃料電池において、
前記燃料電池は電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が連続して設置されており、
前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ水に対する接触角が異なる二種類以上の拡散用部材が電解質膜に対して垂直方向に連続して設置されており、かつ流路の電解質膜に対して垂直方向に設置されたそれぞれの拡散用部材の水に対する接触角は、電解質膜に近い位置に配置された拡散用部材の水に対する接触角が、該拡散用部材よりも相対的に遠い位置に配置された拡散用部材の接触角よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するための第四の燃料電池は、電解質膜の両面にアノードとカソードが形成され、アノード側に燃料を供給し、カソード側に酸化剤を供給し燃料と酸化剤をそれぞれ反応させることにより電力を発生させる燃料電池において、
前記燃料電池は電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が設置されており、
前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ流路の電解質膜に対して垂直方向の距離が異なる2つの点における拡散用部材の位置をy1およびy2とし、y1およびy2における拡散用部材の水に対する接触角をθc(y1)およびθc(y2)とすると、電解質膜からの距離が異なる2つの点における接触角の関係が、y1<y2であるとき、θc(y1)>θc(y2)の関係を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、パッシブ型燃料電池において、流路に撥水性の多孔質媒体からなる拡散用部材を設置することにより、排水効率が向上し、燃料もしくは酸化剤の効率的供給が可能な、発電効率のよい燃料電池を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を説明する。
本発明は、燃料もしくは酸化剤を主に自然拡散によって供給するパッシブ型燃料電池において、発電によって発生した水、特に液化した水を排出することによって、燃料もしくは酸化剤を効率的に触媒層に供給する。
【0021】
具体的には、燃料電池の発電によって発生した水が液化する個所において、流路に撥水性の多孔質媒体からなる拡散用部材を設置し、その多孔質媒体の水に対する接触角を変化させることにより、撥水性を変化させ、液滴に対するドライビングフォース(駆動力)を生じさせ、液滴を排出する。
【0022】
液滴を排出する方法は、(1)流路に設けられた拡散用部材の撥水性を電解質膜に対して水平な方向に対しては燃料もしくは酸化剤の入口から遠くなるほど大きくして液滴を排出する方法が挙げられる。また、(2)流路に設けられた拡散用部材の撥水性を電解質膜に対して垂直な方向に対しては電解質膜から遠くなるほど小さくして液滴を排出する方法が挙げられる。
【0023】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
パッシブ型の小型燃料電池のモデルとして、図1に示したような直方体形状の燃料電池セルの断面構造を示す。アノード側は縦方向に水素が供給され、カソード側で横方向に酸化剤である酸素を含む空気が供給される。アノード側では水素が酸化反応を起こしプロトンとなってカソード側へ移動する、カソード側ではプロトンと酸素が反応して水が生成する。このエネルギーの差分が電力となって燃料電池に接続された機器に供給される。
【0024】
発生した水は水蒸気となり酸素が通ってきた経路をさかのぼり拡散によって外へと排出される。しかし、一部の水蒸気は液化しセル内に滞留する。この滞留した水は最終的に燃料もしくは酸化剤の供給を阻害し燃料電池を機能しなくする(フラッディング現象)。そのためにこの液滴をセル外に排出する機構は別に必要となる。
【0025】
強制的に燃料ないし酸化剤を循環させるシステムを有する燃料電池の場合、この液滴は圧力勾配によって流路内の液滴を強制的に排除することも可能である。しかしながら、パッシブ型の燃料電池の場合、液体に対するドライビングフォースは無いために液滴が気化して拡散によって排出されるのを期待するしかない。また、そのため入口より遠い箇所で発生した液滴を取り除くことは難しいという問題があった。
【0026】
そこで、能動的に水を排出するための機構として、拡散層の撥水性を変化させ、ドライビングフォースを発生させる方法がある。
多孔質媒体中における液体の移動は、多孔質媒体の接触角(親水性、撥水性)や空孔率等の勾配に依存する。一般に多孔質媒体中の液体のキャピラリープレッシャー(Capillary Pressure/毛細管圧)Pcは、特に多孔質媒体が撥水傾向が高いほど高くなる(C.Y.Wang,P.Cheng,“Adv. Heat Transfer”,30(1997年)p.93)。
【0027】
つまり、このキャピラリープレッシャーPcの勾配を、液滴を移動させるドライビングフォースに利用することにより、液滴を排出する機構を作ることが可能となる。
液滴を排出する機構の具体的な構成を以下に述べる。構成は大きく分けて2つに分けられる。一つは液滴を排出孔(気体吸入孔)に誘導するために、固体電解質膜面に水平な方向に対して液滴を移動する構成である。もう一つは、フラッディングを防止する目的で、固体電解質面から液滴を遠ざけるために、固体電解質面に対して垂直な方向に対して液滴を移動する構成である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
固体電解質面に対して水平な方向に液滴を移動する構成について述べる。この場合、前述の通り水が効率良く外に誘導されることが重要である。そのためには、流路内に設けられた多孔質媒体からなる拡散用部材の撥水性を入口から奥になるほど大きくすることが望ましい。
【0029】
図2は本発明の燃料電池の一実施例を示す概略図である。以下の実施例ではすべてカソードについて述べるが、同様の構成はアノードにおける水の排水時にも有効である。
図2は図1の構成のうち、カソードの流路内に、多孔質媒体からなる水に対する接触角が異なる二種類以上の拡散用部材が電解質膜に対して平行方向に連続して設置された場合である。
【0030】
通常、流路内には何も配置しないか、空孔率の大きい多孔質媒体を使用するが、本実施例では、この多孔質媒体に疎水処理を施した。また、この多孔質媒体の水に対する接触角が入口付近で最小になるように撥水処理によるグラデーションをかけた。
【0031】
この場合、多孔質媒体内の水滴は疎水性の影響によりキャピラリープレッシャーによるドライビングフォースをうける。接触角が大きく、撥水性の高い部材では液滴が受けるキャピラリープレッシャーが大きく、同じ撥水性でも接触角が小さく、撥水性の低い部材は液滴が受けるキャピラリープレッシャーが小さいため、その差圧により水は入口の方向へと誘導される。より強い撥水処理をほどこし、その勾配差を大きく取ることによりドライビングフォースは増大し、より効率的に液体を排出することができる。
【0032】
撥水処理の例としてはプラズマ処理による表面フッ化や、疎水性の表面処理剤を塗布するなどの方法が挙げられる。
また、同様の構成はガス拡散層に対しても適用可能である。
【0033】
実施例2
効率的な液体の排出を実現するためには、実施例1で説明したような拡散用部材の多孔質媒体に撥水性にグラデーションをつけることが最も望ましいが、そのような構成をとることができない場合、撥水性が異なる多孔質媒体をいくつかつなぎ合わせる方法がある。
【0034】
図3は本発明の燃料電池の他の実施例を示す概略図である。図3は図1の構成のうち、カソードの流路内に、多孔質媒体からなる水に対する接触角が異なる二種類の拡散用部材が電解質膜に対して平行方向に設置された場合である。流路の入口に近い位置x1における拡散用部材1の撥水性(水に対する接触角をθc(x1))と、遠い位置x2の拡散用部材2の撥水性(θc(x2))を変え、遠い位置の拡散用部材の水に対する接触角がより大きくなるように、θc(x1)<θc(x2)の関係を満足する強い撥水処理を施すことにより二つの部材の界面でドライビングフォースが発生する。液滴が少しでもより入口に近い個所へ誘導されることにより、排水効率は実施例1に比べると劣るものの、均一な撥水性の部材を使用した場合に比べて向上する。
【0035】
すなわち、本発明の最低限の構成要因としては、流路内の拡散用部材の多孔質媒体における任意の2つの点において、その入口からの距離が遠い位置における撥水性が、入口から近い位置の撥水性に比べて大きい構成が層内に一箇所以上存在することである。
【0036】
実施例3
実施例1、2は、多孔質媒体からなる水に対する接触角が異なる拡散用部材が電解質膜に対して平行方向に設置された場合であるが、本実施例は多孔質媒体からなる水に対する接触角が異なる拡散用部材が電解質膜に対して垂直方向に設置された場合である。
【0037】
図4は本発明の燃料電池の他の実施例を示す概略図である。図4は、カソードの流路内に、多孔質媒体からなる水に対する接触角が異なる二種類以上の拡散用部材が電解質膜に対して垂直方向に連続して設置された場合である。
【0038】
この場合、重要な事はフラッディング現象を防ぐため、触媒で発生し液化した水分が速やかに触媒層から遠ざかるようドライビングフォースをかける構成にすることである。
そのために図4に示す通り、拡散用部材の撥水性をMEAの電解質膜に近い位置で大きくとり、かつ電解質膜から遠い位置で小さくなるようなグラデーションを持つ構造とする。すなわち、MEAに近い側で拡散用部材の接触角が大きく、遠くなるに従って接触角が小さくなるような処理を施した拡散用部材を用いる。
【0039】
これによって液滴に対して電解質膜から流路へのドライビングフォースが生じ、液滴が流路へと誘導され、フラッディングが回避される。
実施例4
図5のように、流路内に二種類以上の拡散用部材を設ける方法である。
【0040】
図5は本発明の燃料電池の他の実施例を示す概略図である。図5は、カソードの流路内に、多孔質媒体からなる水に対する接触角が異なる二種類の拡散用部材が電解質膜に対して垂直方向に設置された場合である。
【0041】
二種類の拡散用部材の撥水性をMEAの電解質膜に近い位置で大きくとり、かつ電解質膜から遠い位置で小さくなるような構造とする。
電解質膜に近い位置y1における拡散用部材1の撥水性(水に対する接触角をθc(y1))と、遠い位置y2の拡散用部材2の撥水性(θc(y2))を変え、遠い位置の拡散用部材の水に対する接触角がより小さくなるように、θc(y1)>θc(y2)の関係を満足することにより、二つの部材の界面でドライビングフォースが発生する。
【0042】
以上の実施例より、多孔質媒体が疎水性の場合において、本発明を満たすための最小構成要素とは、多孔質媒体層内において任意の2つの点において、MEAの電解質膜からの距離が近い点における撥水性が、入口から遠い点の撥水性に比べて大きい構成が層内に一箇所以上存在することである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、流路に撥水性の多孔質媒体からなる拡散用部材を設置することにより、排水効率が向上し、燃料もしくは酸化剤の効率的供給が可能なために、発電効率のよいパッシブ型燃料電池に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】直方体形状の燃料電池セルの断面構造を示す断面図である。
【図2】本発明の燃料電池の一実施例を示す概略図である。
【図3】本発明の燃料電池の他の実施例を示す概略図である。
【図4】本発明の燃料電池の他の実施例を示す概略図である。
【図5】本発明の燃料電池の他の実施例を示す概略図である。
【図6】従来の固体高分子型燃料電池の断面形状の構成を示す断面図である。
【図7】燃料電池セルを直列に積層した構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1 セパレータ
2 流路
3 拡散層
4 シール部材
5 電解質膜
6 拡散層
7 流路
8 セパレータ
9 シール部材
10 空気の取り入れ口
11 水素の供給口
12 セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面にアノードとカソードが形成され、アノード側に燃料を供給し、カソード側に酸化剤を供給し燃料と酸化剤をそれぞれ反応させることにより電力を発生させる燃料電池において、
前記燃料電池は電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が連続して設置されており、
前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ水に対する接触角が異なる二種類以上の拡散用部材が電解質膜に対して平行方向に連続して設置されており、かつ流路の入口からの電解質膜に対して平行方向のそれぞれの拡散用部材の水に対する接触角は、流路の入口に近い位置に配置された拡散用部材の水に対する接触角が、該拡散用部材よりも相対的に遠い位置に配置された拡散用部材の接触角よりも小さいことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
電解質膜の両面にアノードとカソードが形成され、アノード側に燃料を供給し、カソード側に酸化剤を供給し燃料と酸化剤をそれぞれ反応させることにより電力を発生させる燃料電池において、
前記燃料電池は電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が設置されており、
前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ流路の入口からの電解質膜に対して平行方向の距離が異なる2つの点における拡散用部材の位置をx1およびx2とし、x1およびx2における拡散用部材の水に対する接触角をθc(x1)およびθc(x2)とすると、入口からの距離が異なる2つの点における接触角の関係が、x1<x2であるとき、θc(x1)<θc(x2)の関係を満足することを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
電解質膜の両面にアノードとカソードが形成され、アノード側に燃料を供給し、カソード側に酸化剤を供給し燃料と酸化剤をそれぞれ反応させることにより電力を発生させる燃料電池において、
前記燃料電池は電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が連続して設置されており、
前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ水に対する接触角が異なる二種類以上の拡散用部材が電解質膜に対して垂直方向に連続して設置されており、かつ流路の電解質膜に対して垂直方向に設置されたそれぞれの拡散用部材の水に対する接触角は、電解質膜に近い位置に配置された拡散用部材の水に対する接触角が、該拡散用部材よりも相対的に遠い位置に配置された拡散用部材の接触角よりも大きいことを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
電解質膜の両面にアノードとカソードが形成され、アノード側に燃料を供給し、カソード側に酸化剤を供給し燃料と酸化剤をそれぞれ反応させることにより電力を発生させる燃料電池において、
前記燃料電池は電解質膜の両側に燃料もしくは酸化剤を供給するための流路を有し、該流路内の少なくとも一箇所以上に多孔質媒体からなる拡散用部材が設置されており、
前記多孔質媒体からなる拡散用部材の水に対する接触角が90度より大きく撥水性であり、かつ流路の電解質膜に対して垂直方向の距離が異なる2つの点における拡散用部材の位置をy1およびy2とし、y1およびy2における拡散用部材の水に対する接触角をθc(y1)およびθc(y2)とすると、電解質膜からの距離が異なる2つの点における接触角の関係が、y1<y2であるとき、θc(y1)>θc(y2)の関係を満足することを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−305533(P2007−305533A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135441(P2006−135441)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】