説明

燃料電池

【課題】カートリッジから燃料電池本体への燃料充填時における液体燃料の漏洩が無く、簡単な構成で安全に液体燃料を充填することが可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】カートリッジ3の燃料出口2と燃料電池本体5の燃料受入口4とを着脱自在に構成した燃料電池において、上記カートリッジ3は燃料出口2を開閉する第1の弁体6と、この第1の弁体6に弾性力を付与し燃料出口2を常時は閉止する第1の弾性体7とを備える一方、上記燃料電池本体5は燃料受入口4を開閉する第2の弁体8と、この第2の弁体8に弾性力を付与し燃料受入口4を常時は閉止する第2の弾性体9とを備え、上記第1の弾性体7の弾性力が第2の弾性体9の弾性力より大きくなるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に係り、特に液体燃料を収容したカートリッジと、上記カートリッジからの液体燃料を適宜受け入れる燃料電池本体とを備え、上記カートリッジと燃料電池本体とを着脱自在に構成した燃料電池において、燃料充填時における液体燃料の漏洩が無く、簡単な構成で安全に液体燃料を充填することが可能な燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯音響機器等の各種電子機器は、半導体技術の発達と共に小型化され、燃料電池をこれらの小型機器用の電源に用いることが試みられている。燃料電池は、燃料と酸化剤としての空気とを供給するだけで発電することが可能であり、実質的に燃料のみを補給すれば長時間連続して発電できるという利点を有しているため、小型化が実現すれば携帯電子機器の作動電源として極めて有利なシステムといえる。特に、直接メタノール型燃料電池(DMFC;direct methanol fuel cell)は、エネルギー密度が高いメタノールを燃料として用い、メタノールから電極触媒上で直接電流を取り出せるため、改質器も不要なことから小型化が可能であり、燃料の取り扱いも水素ガスを燃料として使用する電池と比較して容易なことから小型機器用電源として有望である。
【0003】
上記DMFCにおける発電部への燃料の供給方法としては、液体燃料を気化してからブロア等で燃料電池内に送り込む気体供給型DMFCと、液体燃料をそのままポンプ等で燃料電池内に送り込む液体供給型DMFC等が知られている。
【0004】
従来の燃料カートリッジと燃料電池とから成る燃料電池装置としては、例えば特許文献1に示すような燃料電池装置が知られている。この燃料電池装置は、電解質膜を介してメタノール水溶液と空気とを化学反応させて電力を発生する直接型メタノール燃料電池部と、メタノール水溶液を収容した燃料カートリッジが着脱自在に装着されるカートリッジ装着部と、このカートリッジ装着部に装着された燃料カートリッジに収納されているメタノール水溶液を前記直接型メタノール燃料電池部に供給する送液ポンプと、前記カートリッジ装着部への前記燃料カートリッジの装着およびこの燃料電池装置が発電した電力を供給する電子機器への装着を認識する認識手段とを具備して構成される。
【0005】
液体燃料としてのメタノールは、燃料カートリッジ内に収容されており、燃料電池本体に一体に組み付けられた燃料タンクに適宜充填される。例えば、燃料タンク内に手動で燃料を注入する場合には、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材料やガラスから構成されメタノールが収容された燃料カートリッジの注入口が、燃料タンクの受入口に装着された状態でカートリッジの胴部が押圧されて内部のメタノールが加圧された状態で燃料タンクに注入される。
【特許文献1】特開2004−71262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の燃料電池に使用される燃料カートリッジを燃料電池本体の燃料タンクの受入口にねじ装着する場合には、完全にねじを締着する前の不完全な段階で燃料カートリッジ側面を押圧して燃料を押出すことが多く、装着部で液漏れを生じ易く安全性に問題があった。また完全に締着するためには、燃料タンク側のねじとカートリッジ側のねじとを正確に一致させてねじ込む必要があるために、装着操作が煩雑になる難点もあった。また、両方のねじの中心が一致しない状態で無理にねじ込む結果、ねじ山が損傷して以後の装着が困難になる場合もあった。いずれにしても、ねじ装着式の場合においては、ねじ部の加工操作が煩雑であり加工費が増大化するために、より簡易で安価な脱着構造が求められていた。
【0007】
特に燃料注入操作時においては、燃料を収容した軟質の樹脂材で成形したカートリッジを強く握った状態でカートリッジを燃料電池本体側に押圧して燃料受入口に装着しているために、カートリッジの注入口と燃料電池本体の受入口とが完全に接続される前の段階で、カートリッジ内の液体燃料の圧力が高まっている。したがって、この状態でカートリッジの注入口が開き燃料電池本体側の受入口が開いていない場合には、カートリッジの接続部から液体燃料が内圧により噴出し、周辺に可燃性の液体燃料が飛散するため安全性が低下する問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、液体燃料を収容したカートリッジと、上記カートリッジからの液体燃料を適宜受け入れる燃料電池本体とを備え、上記カートリッジと燃料電池本体とを着脱自在に構成した燃料電池において、燃料充填時における液体燃料の漏洩が無く、簡単な構成で安全に液体燃料を充填することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明者らは燃料カートリッジの注入口と燃料電池本体の受入口との種々の脱着構造を創案して、各脱着構造が装着状態の完全さ、燃料漏れの生じ易さ及び構造の簡素さに及ぼす影響を実験により比較検討した。その結果、特に燃料電池側の受入口を先に開放し燃料電池本体側の受入口とカートリッジ側の注入口とが完全に結合するまではカートリッジ側の注入口を開放しないように構成した場合に、燃料電池本体側の受入口が開いた後にカートリッジ側の注入口が開くために、カートリッジ内の加圧された液体燃料の受入通路が確保された状態で液体燃料が円滑に充填されるために、カートリッジと燃料電池本体との接続部において液体燃料の漏洩は皆無であり、簡単な構成で安全に液体燃料を充填することが可能な燃料電池が初めて得られるという知見を得た。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち本発明に係る燃料電池は、収容した液体燃料を射出する燃料出口を有するカートリッジと、上記カートリッジからの液体燃料を受け入れる燃料受入口を有する燃料電池本体とを備え、上記カートリッジの燃料出口と燃料電池本体の燃料受入口とを着脱自在に構成した燃料電池において、上記カートリッジは燃料出口を開閉する第1の弁体と、この第1の弁体に弾性力を付与し燃料出口を常時は閉止する第1の弾性体とを備える一方、上記燃料電池本体は燃料受入口を開閉する第2の弁体と、この第1の弁体に弾性力を付与し燃料受入口を常時は閉止する第2の弾性体とを備え、上記第1の弾性体の弾性力が第2の弾性体の弾性力より大きくなるように設定し、上記カートリッジの燃料出口を燃料電池本体の燃料受入口に押圧力によって装着した時に、カートリッジの第1弁体が第2弁体に当接し第2弾性体の弾性力に抗して第2弁体を押し下げて燃料受入口を開放した状態を維持し、しかる後に第2弾性体の弾性力より大きい押圧力をカートリッジに付与して第2弁体からの反作用によって第1弾性体の弾性力に抗して第1弁体を押し上げてカートリッジの燃料出口を開放するように構成したことを特徴とする。
【0011】
上記燃料電池において、カートリッジの燃料出口を燃料電池本体の燃料受入口に押圧力によって装着した場合には、第1の弾性体の弾性力が第2の弾性体の弾性力より大きくなるように設定されているために、カートリッジの第1弁体が第2弁体に当接し第2弾性体の弾性力に抗して第2弁体を押し下げて燃料受入口を開放する。そして、第2弾性体は最小高さになるまで圧縮される。しかる後に第2弾性体の弾性力より大きい押圧力をカートリッジに付与すると、第2弁体からの反作用によって第1弾性体の弾性力に抗して第1弁体を押し上げて燃料出口が開放される。
【0012】
したがって、上記燃料電池によれば、燃料電池本体側の燃料受入口が開いた後にカートリッジ側の燃料注入口が開くために、カートリッジ内の加圧された液体燃料の受入通路が確保された状態で液体燃料が円滑に充填される。そのために、カートリッジと燃料電池本体との接続部において液体燃料の漏洩は皆無であり、簡単な構成で安全に液体燃料を充填することが可能な燃料電池が得られる。
【0013】
また上記燃料電池において、前記燃料出口は、第1弁体および第1弾性体を収容する燃料注入筒に形成されている一方、前記燃料受入口は、第2弁体および第2弾性体を収容する燃料受入筒に形成されており、上記燃料注入筒が嵌挿されて燃料注入筒を所定の軸方向位置に案内する案内筒を上記燃料受入筒に一体に形成することが好ましい。
【0014】
上記燃料注入筒を嵌挿する案内筒を燃料注入筒と同心状に設けることにより、燃料注入筒を所定の軸方向位置に正確に案内できる。さらに、案内筒に燃料注入筒を嵌挿した段階で燃料注入筒と燃料受入筒との内部には密閉空間が形成されるため、この状態で第1弁体または第2弁体が開いても、内圧によって加圧された内容物が外部に吹き出す恐れは無く燃料注入操作を安全に遂行することが可能になる。
【0015】
また上記燃料電池において、前記第1弾性体および第2弾性体がそれぞれコイルばねから構成されていることが好ましい。このコイルばねから構成された第1弾性体および第2弾性体によれば、コイルばねの材料種類、線径、巻き数、ばね定数等を選択することにより、弾性体の弾性力および伸縮量を任意に設定することが容易である。
【0016】
さらに上記燃料電池において、前記燃料注入筒と第1弁体との間に第1シール材を介装することが好ましい。上記第1シール材を介装することにより、燃料注入筒と第1弁体との間が液密に保持でき、燃料注入口の閉止状態をより確実に維持することができる。
【0017】
また上記燃料電池において、前記燃料受入筒と第2弁体との間に第2シール材を介装することが好ましい。上記第2シール材を介装することにより、燃料受入筒と第2弁体との間が液密に保持でき、燃料受入口の閉止状態をより確実に維持することができる。
【0018】
さらに上記燃料電池において、前記案内筒に燃料注入筒が嵌挿されたときに、案内筒と燃料注入筒とを液密に保持する第3シール材を案内筒の内部に配置することが好ましい。
【0019】
上記第3シール材を案内筒の内部に配置することにより、燃料注入筒が案内筒に完全に嵌挿されたときに両者間の間隙を封止することができ、間隙からの燃料漏れを完全に防止することができる。
【0020】
上記弾性体を構成する材料としては、第1弁体または第2弁体を所定の弾性力で動作せしめて燃料出口または燃料受入口を開閉させるために、Hv硬度が55以上のばね鋼、Si−Mn鋼、Cr鋼、Cr−Mn鋼、Si−Mn−Cr鋼、Cr−V鋼等のばね用特殊鋼、JIS(日本工業規格)のSUP材等の金属材料を用いることが好適である。上記弾性体は、その耐久性を高めるために上記金属材料を所定形状に加工した後に、焼入焼戻しの熱処理を施して形成することが好ましい。また、メタノール等の液体燃料に対する耐食性を高めるために、金属材料表面に金めっき等のめっき層や樹脂コーティング層を形成する表面処理を実施することも好ましい。
【0021】
また、上記弾性体として適度な弾性力を有するゴム材を使用することも可能である。ゴム材を使用した場合には、弾性体と弁体、更にはシール材の機能を併せ持つ構造体を一体成型にて作成することも可能であり、工業的な価値が高いものとなる。
【0022】
上記カートリッジ容器を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS),ポリエチレンテレフタレート(PET),酢酸ビニル樹脂、ビニルアセタール樹脂、スチロール樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネ―ト、ポリ四フッ化エチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、繊維索系プラスチック、などの1種の材料または2種以上組み合わせた複合材が好適に使用できる。特に、繰り返しの押圧力に耐える機械的強度、燃料管理上必要な透明性、燃料に対する耐食性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)が好適である。また、結晶化し易く分子間の結合強度が高くなる結晶性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリ四フッ化エチレン樹脂、等が好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る燃料電池によれば、燃料電池本体側の燃料受入口が開いた後にカートリッジ側の燃料出口が開くために、カートリッジ内の加圧された液体燃料の受入通路が確保された状態で液体燃料が円滑に充填される。そのために、カートリッジと燃料電池本体との接続部において液体燃料の漏洩は皆無であり、簡単な構成で安全に液体燃料を充填することが可能な燃料電池が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明に係る燃料電池の実施形態について、以下の実施例および添付図面を参照してより具体的に説明する。
【0025】
図1〜図3は本発明に係る燃料電池の一実施例を示し、カートリッジの燃料出口部および燃料電池本体の燃料受入部をそれぞれ開閉する弁体を設けた燃料電池の構成を示している。具体的に、図1は本実施例に係る燃料電池において、液体燃料を充填したカートリッジの燃料出口と燃料電池本体の燃料受入口とを装着していない段階におけるそれぞれの構成を示す断面図であり、図2は燃料電池本体側の第2弁体が下降し燃料受入口が開放された状態を示す断面図であり、図3はカートリッジの燃料出口および燃料電池本体の燃料受入口が共に開放された状態を示す断面図である。
【0026】
すなわち、本実施例に係る燃料電池は、収容した液体燃料1を射出する燃料出口2を有するカートリッジ3と、このカートリッジ3からの液体燃料1を受け入れる燃料受入口4を有する燃料電池本体5とを備え、上記カートリッジ3の燃料出口2と燃料電池本体5の燃料受入口4とを着脱自在に構成した燃料電池において、上記カートリッジ3は燃料出口2を開閉する第1の弁体6と、この第1の弁体6に弾性力を付与し燃料出口2を常時は閉止する第1の弾性体7とを備える一方、上記燃料電池本体5は燃料受入口4を開閉する第2の弁体8と、この第2の弁体に弾性力を付与し燃料受入口4を常時は閉止する第2の弾性体9とを備え、上記第1の弾性体7の弾性力が第2の弾性体9の弾性力より大きくなるように設定し、上記カートリッジ3の燃料出口2を燃料電池本体5の燃料受入口4に押圧力によって装着した時に、カートリッジ3の第1弁体6が第2弁体8に当接し第2弾性体9の弾性力に抗して第2弁体8を押し下げて燃料受入口4を開放した状態を維持し、しかる後に第2弾性体9の弾性力より大きい押圧力をカートリッジ3に付与して第2弁体8からの反作用によって第1弾性体7の弾性力に抗して第1弁体6を押し上げてカートリッジ3の燃料出口2を開放するように構成したことを特徴とする。
【0027】
また上記燃料電池において、前記燃料出口2は、第1弁体6および第1弾性体7を収容する燃料注入筒10に形成されている一方、前記燃料受入口4は、第2弁体8および第2弾性体9を収容する燃料受入筒11に形成されており、上記燃料注入筒10が嵌挿されて燃料注入筒10を所定の軸方向位置に案内する案内筒12が上記燃料受入筒11に一体に形成されている。
【0028】
また上記燃料電池において、前記第1弾性体および第2弾性体がそれぞれコイルばねから構成されている。さらに、上記燃料注入筒10と第1弁体6との間に第1シール材13が介装される一方、上記燃料受入筒11と第2弁体8との間に第2シール材14が介装されており、さらに上記案内筒12に燃料注入筒10が嵌挿されたときに、案内筒12と燃料注入筒10とを液密に保持する第3シール材15が案内筒12の内部に配置されている。
【0029】
また、カートリッジ3側の第1弁体6は、燃料注入筒10内を軸方向に遊嵌状態で往復動する頭部6aと、上記燃料注入筒10の先端部に形成された燃料出口2を軸方向に遊嵌状態で往復動する突出部6bとから成り、上記頭部6aには第1弾性体としてのコイルばねの一端(図1において下端)を嵌入固定するための凹部6cが形成されている。
【0030】
燃料注入筒10の内部には、第1弁体6に対向して第1弾性体7の他端(図1において上端)を嵌入固定するための凹部16aを形成したばね座16が配設されており、このばね座16の外周部には、液体燃料1が流通する複数の流通口17が形成されている。ばね座16と第1弁体6との間には、第1弾性体7としてのコイルばねが介装されており、この第1弾性体7の弾性力が第1弁体6を燃料出口2方向に付勢しているために、第1シール材13のシール作用とも相俟って燃料出口2は常時は閉止されている。
【0031】
一方、燃料電池本体5側の第2弁体8は、燃料受入筒11内を軸方向に遊嵌状態で往復動する頭部8aと、上記燃料受入筒11の先端部に形成された燃料受入口4を軸方向に遊嵌状態で往復動する突出部8bとから成り、上記頭部8aには第2弾性体としてのコイルばねの一端(図1において上端)を嵌入固定するための凹部8cが形成されている。
【0032】
燃料受入筒11の内部には、第2弁体8に対向して第2弾性体9の他端(図1において下端)を嵌入固定するための凹部17aを形成したばね座17が配設されており、このばね座17の外周部には、液体燃料1が流通する複数の流通口18が形成されている。ばね座17と第2弁体8との間には、第2弾性体9としてのコイルばねが介装されている。第2弾性体9は第1弾性体7を構成するばね材よりも線径が小さいばね材で形成されているために、第2弾性体9の弾性力は第1弾性体7の弾性力よりも小さく設定されている。そして、この第2弾性体9の弾性力が第2弁体8を燃料受入口4方向に付勢しているために、第2シール材14のシール作用とも相俟って燃料受入口4は常時は閉止されている。
【0033】
上記のように構成した本実施例に係る燃料電池において、カートリッジ3の燃料出口2を燃料電池本体5の燃料受入口4に押圧力によって装着した場合には、図2に示すように、第1弾性体7としてのコイルばねの弾性力が第2弾性体9としてのコイルばねの弾性力より大きくなるように設定されているために、カートリッジ3の第1弁体6の突出部6bが第2弁体8の突出部8bに当接し第2弾性体9の弾性力に抗して第2弁体8が押し下げられることにより燃料受入口4が先に開放される。そして、第2弾性体9は最小高さになるまで圧縮される。
【0034】
しかる後に第2弾性体9の弾性力より大きい押圧力がカートリッジ3に付与されると、図3に示すように、第2弁体8からの反作用によって第1弾性体7の弾性力に抗して第1弁体6が押し上げられてカートリッジ3側の燃料出口2が開放される。
【0035】
したがって、上記燃料電池によれば、燃料電池本体5側の燃料受入口4が開いた後にカートリッジ3側の燃料出口2が開くために、図3において矢印で示すように、カートリッジ3内の加圧された液体燃料1の受入通路が確保された状態で液体燃料がカートリッジ3から燃料電池本体5側の燃料タンク等に円滑に流通し充填される。そのために、カートリッジ3と燃料電池本体5との接続部において液体燃料1の漏洩は皆無であり、簡単な構成で安全に液体燃料1を充填することが可能な燃料電池が得られる。
【0036】
また上記燃料電池において、前記燃料出口2は、第1弁体6および第1弾性体7を収容する燃料注入筒10に形成されている一方、前記燃料受入口4は、第2弁体8および第2弾性体9を収容する燃料受入筒11に形成されており、上記燃料注入筒11が嵌挿されて燃料注入筒11を所定の軸方向位置に案内する案内筒12が上記燃料受入筒11に同心状に設けられているために、燃料注入筒10を燃料受入筒11に対して所定の軸方向位置に正確に案内することが可能になる。
【0037】
さらに、案内筒12に燃料注入筒11を嵌挿した段階で燃料注入筒10と燃料受入筒11との内部には密閉空間が形成されるため、この状態で第1弁体6または第2弁体8が開放されても、内圧によって加圧された内容物(液体燃料)が外部に吹き出す恐れは無く燃料注入操作を安全に遂行することが可能になる。
【0038】
また上記燃料電池において、前記第1弾性体7および第2弾性体9がそれぞれコイルばねから構成されているため、コイルばねの材料種類、線径、巻き数、ばね定数等を適宜選択することにより、各弾性体7,9の弾性力および伸縮量を任意に設定することが容易である。
【0039】
さらに上記燃料電池において、前記燃料注入筒10と第1弁体6との間に第1シール材13を介装しているために、燃料注入筒10と第1弁体6との間が液密に保持でき、燃料出口2の閉止状態をより確実に維持することができ、液体燃料1の漏洩をより確実に防止できる。
【0040】
また上記燃料電池において、前記燃料受入筒11と第2弁体8との間に第2シール材14を介装しているために、燃料受入筒11と第2弁体8との間が液密に保持でき、燃料受入口4の閉止状態をより確実に維持することができる。
【0041】
さらに上記燃料電池において、前記案内筒12に燃料注入筒10が嵌挿されたときに、案内筒12と燃料注入筒10とを液密に保持する第3シール材15を案内筒12の内底部に配置しているために、燃料注入筒10が案内筒12に完全に嵌挿されたときに両者間の間隙を液密に封止することができ、間隙からの燃料漏れをより完全に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る燃料電池によれば、燃料電池本体側の燃料受入口が開いた後にカートリッジ側の燃料出口が開くために、カートリッジ内の加圧された液体燃料の受入通路が確保された状態で液体燃料が円滑に充填される。そのために、カートリッジと燃料電池本体との接続部において液体燃料の漏洩・飛散は皆無であり、簡単な構成で安全に液体燃料を充填することが可能な燃料電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る燃料電池の一実施例を示し、液体燃料を充填したカートリッジの燃料出口と燃料電池本体の燃料受入口とを装着していない段階におけるそれぞれの構成を示す断面図。
【図2】図1に示す燃料電池の一実施例で燃料電池本体側の第2弁体が下降し燃料受入口が開放された状態を示す断面図。
【図3】図1に示す燃料電池の一実施例で、カートリッジの燃料出口および燃料電池本体の燃料受入口が共に開放された状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0044】
1…液体燃料(メタノール)、2…燃料出口、3…カートリッジ、4…燃料受入口、5…燃料電池本体(燃料タンク)、6…第1弁体、6a…頭部、6b…突出部、6c…凹部、7…第1弾性体、8…第2弁体、8a…頭部、8b…突出部、8c…凹部、9…第2弾性体、10…燃料注入筒、11…燃料受入筒、12…案内筒、13…第1シール材、14…第2シール材、15…第3シール材、16…ばね座、16a…凹部、17…ばね座、17a…凹部、18…流通口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容した液体燃料を射出する燃料出口を有するカートリッジと、上記カートリッジからの液体燃料を受け入れる燃料受入口を有する燃料電池本体とを備え、上記カートリッジの燃料出口と燃料電池本体の燃料受入口とを着脱自在に構成した燃料電池において、
上記カートリッジは燃料出口を開閉する第1の弁体と、この第1の弁体に弾性力を付与し燃料出口を常時は閉止する第1の弾性体とを備える一方、
上記燃料電池本体は燃料受入口を開閉する第2の弁体と、この第2の弁体に弾性力を付与し燃料受入口を常時は閉止する第2の弾性体とを備え、
上記第1の弾性体の弾性力が第2の弾性体の弾性力より大きくなるように設定し、上記カートリッジの燃料出口を燃料電池本体の燃料受入口に押圧力によって装着した時に、カートリッジの第1弁体が第2弁体に当接し第2弾性体の弾性力に抗して第2弁体を押し下げて燃料受入口を開放した状態を維持し、しかる後に第2弾性体の弾性力より大きい押圧力をカートリッジに付与して第2弁体からの反作用によって第1弾性体の弾性力に抗して第1弁体を押し上げてカートリッジの燃料出口を開放するように構成したことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記燃料出口は、第1弁体および第1弾性体を収容する燃料注入筒に形成されている一方、前記燃料受入口は、第2弁体および第2弾性体を収容する燃料受入筒に形成されており、上記燃料注入筒が嵌挿されて燃料注入筒を所定の軸方向位置に案内する案内筒を上記燃料受入筒に一体に形成したことを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記第1弾性体および第2弾性体の少なくとも一方がコイルばねから構成されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項4】
前記カートリッジの燃料注入筒と第1弁体との間に第1シール材を介装したことを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項5】
前記カートリッジの燃料受入筒と第2弁体との間に第2シール材を介装したことを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項6】
前記案内筒に燃料注入筒が嵌挿されたときに、案内筒と燃料注入筒とを液密に保持する第3シール材を案内筒の内部に配置したことを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
【請求項7】
前記第1弾性体と第1弁体および第2弾性体と第2弁体の少なくとも一方の組み合わせが一体化された構造を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−66618(P2007−66618A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249410(P2005−249410)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221339)東芝電子エンジニアリング株式会社 (238)
【Fターム(参考)】