説明

燃料電池

【課題】発電効率の低下を抑制可能な燃料電池の構造を提供する。
【解決手段】燃料電池は、水素および酸素の供給を受けて発電するMEA40と、このMEA40に水素を供給する多孔体41(42)とを備えている。多孔体41(42)は、逆台形状の形状を有しており、燃料ガスが供給される上辺からこれに対向する下辺にかけて、その幅が漸減していく形状となっている。このような構成によれば、多孔体41(42)の上辺から下辺に向けてスムーズにガスを分散させていくことができるので、発電効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ガスと燃料ガスの供給を受けて発電する燃料電池の内部構造を示す文献として、例えば、下記特許文献1がある。この特許文献1には、イオン交換膜を一対の電気触媒電極と、一対のガスケットフレームと、一対の集電極と、一対の二極板とで狭持する構成が開示されている。集電極は、メッシュ構造を有する矩形状の金属部材であり、このメッシュ部分を反応ガスが流れることで、イオン交換膜に対して反応ガスが供給されることになる。
【0003】
【特許文献1】特開平6−349508号公報
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の燃料電池の構造では、イオン交換膜に対して反応ガスを供給する集電極が矩形状であるため、ガスの供給が行われる穴から遠い部分(例えば、特許文献1の図3に記載されたガスケットフレームにおいて、中央の中空部の右上隅および左下隅)に対して、反応ガスをスムーズに供給(あるいは排出)することが困難であり、また、このような部分に、電気化学反応に伴って発生した水や窒素などの不純物が滞留する場合があった。この結果、燃料電池の発電効率が低下してしまうおそれがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、発電効率の低下を抑制可能な燃料電池の構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を踏まえ、本発明の燃料電池を次のように構成した。すなわち、
酸化ガスおよび燃料ガスの供給を受けて発電する発電層と、
前記発電層に面して配置され、対向する2つの辺を少なくとも有しており、内部に前記燃料ガスを流すことにより前記発電層に対して前記燃料ガスを供給するガス拡散層と、
前記ガス拡散層の第1の辺に対して前記燃料ガスを供給するガス供給部とを備え、
前記ガス拡散層は、前記第1の辺から、これに対向する第2の辺にかけて、幅が漸減していく形状であることを要旨とする。
【0007】
本発明の燃料電池では、燃料ガスが供給される辺から、これに対向する辺にかけて、その幅が漸減していく形状を有するガス拡散層を発電層に面して設けるものとした。このような構成であれば、ガス拡散層の幅の広い辺から、その対辺に向けて燃料ガスをスムーズに流すことができるので、発電効率を向上させることができる。また、上述したガス拡散層は、比較的単純な構造であるため、このようなすぐれた効果を有する燃料電池を、容易に製造することが可能になる。なお、上記構成においてガス供給部が燃料ガスを供給する「辺」とは、その辺の近傍の領域を含む意味であるものとする。
【0008】
上記構成の燃料電池において、
更に、前記発電に供された燃料ガスを前記第2の辺から排出するガス排出部を備えるものとしてもよい。
【0009】
このような構成によれば、ガス拡散層は、ガス供給部からガス排出部にかけてその幅が漸減する形状であるため、燃料ガスの流線上に淀み点が無い構成となり、スムーズにガスを排出することが可能になる。この結果、ガス拡散層に水や窒素などの不純物が滞留することが抑制され、発電効率の低下を抑制することが可能になる。なお、燃料ガスを排出する「辺」とは、上述のように、その辺近傍の領域を含む意味であるものとする。
【0010】
かかる構成において、ガス拡散層の第2の辺は、第1の辺に対して重力方向下側に位置していれば好適である。このような構成であれば、重力の作用によって不純物をスムーズに排出することができるからである。
【0011】
なお、本発明の燃料電池は、通常運転時に、前記ガス拡散層に接続された各種流路のうち、前記ガス供給部を除く流路を閉塞した状態で発電を行うものとしてもよい。
【0012】
このようにすることで、通常運転時においてアノードオフガスが排出されない、いわゆるアノードデッドエンド型の燃料電池を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、上述した本発明の作用・効果を一層明らかにするため、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.燃料電池の概略構成:
B.燃料電池の詳細な構成:
C.燃料電池内におけるガスの流れ:
D.効果:
E.変形例:
【0014】
A.燃料電池の概略構成:
図1は、本発明の実施例としての燃料電池100の概略構成を示す説明図である。燃料電池100は、固体高分子型の燃料電池であり、単セルとガスセパレータとからなる燃料電池モジュール110を複数積層することで構成されている。複数の燃料電池モジュール110からなる積層体の両端には、集電板120と、絶縁板130と、エンドプレート140とがそれぞれ配置されている。両端に位置する2つのエンドプレート140は、テンションプレート150によって相互に結合されている。
【0015】
燃料電池100の内部には、燃料ガスとしての水素を供給するための燃料ガス供給マニホールド200と、これを排出するための燃料ガス排出マニホールド205と、酸化ガスとしての空気を供給するための酸化ガス供給マニホールド210と、これを排出するための酸化ガス排出マニホールド215と、冷却媒体としての水を供給する冷却媒体供給マニホールド220と、これを排出する冷却媒体排出マニホールド225とが形成されている。
【0016】
上述した燃料ガス供給マニホールド200には、高圧水素を貯蔵する水素タンク300が接続されており、燃料ガス排出マニホールド205には、アノードオフガス排出管310が接続されている。また、酸化ガス供給マニホールド210には、圧縮空気の供給を行うコンプレッサ320が接続されており、酸化ガス排出マニホールド215には、カソードオフガス排出管330が接続されている。冷却媒体供給マニホールド220および冷却媒体排出マニホールド225には、冷却媒体としての水を循環させる循環ポンプ340とラジエータ350とが接続されている。
【0017】
燃料ガス排出マニホールド205に接続されるアノードオフガス排出管310には、パージ弁315が設けられている。燃料電池100は、通常運転時には、パージ弁315を閉じ、燃料電池100内に水素ガスを滞留させた状態で発電を行う、いわゆるアノードデッドエンド型の燃料電池である。しかし、燃料電池100は、通常運転中の所定のタイミングや運転終了時には、パージ弁315を開状態とするパージ処理を行なう。燃料電池100の発電の過程では、燃料電池100のカソード側に供給した空気中の窒素や、酸素と水素の電気化学反応によって生成された水が、内部の電解質膜を介して、アノード側へと透過する。そのため、所定のタイミングでこのパージ弁315を開状態とすることで、アノード側に滞留した窒素や水等の不純物を燃料電池100の外部に排出することができる。
【0018】
B.燃料電池の詳細な構成:
図2は、燃料電池100の詳細な構成を表わす断面図である。本実施例の燃料電池100は、発電層としてのMEA(膜−電極接合体、Membrane Electrode Assembly)40と、ガス拡散層としての多孔体41,42と、ガスセパレータ45と、を順次積層することによって形成されている。
【0019】
MEA40は、電解質層と、電解質層の両面に形成された触媒電極(アノードおよびカソード)とを備えている。電解質層は、固体高分子材料、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸を備えるフッ素系樹脂から成るプロトン伝導性のイオン交換膜によって形成することができる。触媒電極は、電気化学反応を促進する触媒であり、例えば、白金、あるいは白金と他の金属から成る合金によって形成されている。なお、本実施例では、MEA40の両面には、さらに、カーボンペーパやカーボンクロスからなるカーボン多孔質層が形成されている。
【0020】
多孔体41,42は、導電性及びガス透過性を有する板状部材によって構成されており、この多孔体41,42の内部に形成される気孔は、電気化学反応に供されるガスの流路となる。多孔体41,42は、例えばチタンなどの金属から成る多孔質体によって形成することができる。このような金属多孔質体としては、例えば、発泡金属焼結体や、球状あるいは繊維状の微小な金属を焼結させた焼結体を用いることができる。
【0021】
MEA40および多孔体41,42の外周部には、弾性を有するシール部43が一体成形されている。シール部43は、例えば、シリコンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどの絶縁性樹脂材料によって形成することができる。シール部43は、例えば、シール部43に対応する形状の金型のキャビティ内にMEA40の外周部が収まるようにMEA40を配設し、上記樹脂材料を射出成形することによってMEA40に一体成形することができる。以下の説明では、シール部43を含むMEA40と多孔体41,42とをまとめて「単セル50」と呼ぶものとする。
【0022】
図3は、MEA40およびシール部43の概略構成を表わす平面図である。図3に示すように、シール部43は、略四角形状の薄板状部材であり、外周部に6つの穴部(穴部60〜65)が設けられており、中央部にMEA40が組み込まれている。図示するように、本実施例では、MEA40は、図中の上辺からこれに対向する重力方向下側の下辺にかけてその幅が漸減する逆台形状の形状を有している。
【0023】
シール部43は図2の断面図に示すように所定の凹凸形状を有している。図2および図3では、この凸部を、「シールラインSL」として表している。図3に示すようにシールラインSLは、上記6つの穴およびMEA40を取り囲む位置に設けられている。シール部43は、このシールラインSLの位置で、隣接するガスセパレータ45に接触する。シール部43は、弾性を有する樹脂材料であるため、図1に示したテンションプレート150によって燃料電池100に積層方向に押圧力が加えられると、上記シールラインSLの位置においてガスセパレータ45とともにガスシール性が実現される。
【0024】
図3には、MEA40に隣接して配置される多孔体41,42の平面形状を破線によって表している。図示するように、多孔体41,42は、MEA40と同様に、図中の上辺からこれに対向する下辺にかけてその幅が漸減する逆台形状の形状を有している。なお、図3では、便宜上、MEA40と多孔体41の外形をずらして表示しているが、これらは同一の大きさとすることができる。
【0025】
図4ないし図6は、ガスセパレータ45の詳細な構成を示す説明図である。図2に示したように、ガスセパレータ45は、多孔体41に接するアノード側プレート46と、多孔体42に接するカソード側プレート48と、アノード側プレート46およびカソード側プレート48に挟持される中間プレート47とを備えている。図4は、これらのうち、アノード側プレート46の形状を示す平面図であり、図5は、カソード側プレート48の形状を示す平面図である。また、図6は、中間プレート47の形状を示す平面図である。これらの図に示すように、ガスセパレータ45は、外周の大きさがシール部43とほぼ等しい板状の部材である。
【0026】
アノード側プレート46(図4)およびカソード側プレート48(図5)は、いずれも、その外周部においてシール部43に形成された穴部(60〜65)と同様の位置に、6つの穴部(60〜65)を備えている。穴部60は、アノード側プレート46およびカソード側プレート48の外周の一辺の近傍に形成されている。また、この穴部60が形成された辺と対向する辺の近傍には、穴部61が形成されている。さらに、他の2辺のうちの一方の辺の近傍には穴部62,64が形成されており、他方の辺の近傍には穴部63,65が形成されている。
【0027】
上述した6つの穴部は、燃料電池100の内部で互いに重なり合って、燃料電池内部において積層方向と平行に流体を導くマニホールドを形成する。具体的には、ガスセパレータ45およびシール部43が備える穴部60は、各単セル50の多孔体42に酸化ガスを供給する酸化ガス供給マニホールド210を形成し(図3〜6中、O2 inと表わす)、穴部61は、各単セル50の多孔体42から排出された酸化ガスを外部へと導く酸化ガス排出マニホールド215を形成する(図3〜6中、O2 outと表わす)。また、穴部62は、逆台形状の多孔体41の上辺近傍に燃料ガスを供給する燃料ガス供給マニホールド200を形成し(図3〜6中、H2 inと表わす)、穴部63は、多孔体42の下辺から排出された燃料ガスを外部へと導く燃料ガス排出マニホールド205を形成する(図3〜6中、H2 outと表わす)。さらに、穴部64は、燃料電池100に対して供給された冷却媒体としての水を各ガスセパレータ45内に分配する冷却媒体供給マニホールド220を形成し(図3〜5中、水 inと表わす)、穴部65は、各ガスセパレータ45から排出された冷媒を外部へと導く冷却媒体排出マニホールド225を形成する(図3〜5中、水 outと表わす)。
【0028】
図4に示すように、アノード側プレート46は、穴部62の近傍に、穴部62よりも小さく、穴部62に平行に配列する複数の連通孔70を備えている。また、穴部63の近傍には、穴部63に平行に配列する複数の連通孔71を備えている。一方、図5に示すように、カソード側プレート48は、穴部60の近傍に、穴部60よりも小さく、MEA40の右斜辺(図3参照)に平行に配列する複数の連通孔72を備えており、穴部61の近傍には、MEA40の左斜辺に平行に配列する複数の連通孔73を備えている。
【0029】
図6に示すように、中間プレート47に設けられた穴部62の形状は、他のプレートに設けられた穴部62の形状とは異なっている。具体的には、中間プレート47の穴部62は、この穴部62のプレート中央部側の辺が、プレート中央部方向へと突出する複数の突出部を備える形状となっている。穴部62が有する上記複数の突出部を、連通部74と呼ぶものとする。この連通部74は、中間プレート47とアノード側プレート46とが積層されたときに、その先端部がアノード側プレート46の連通孔70と重なり合うように形成されている。また、中間プレート47の他の穴部63,60,61が有する連通部75,76,77の形状についても、その先端が、アノード側プレート46またはカソード側プレート48の連通孔71,72,73と重なり合うように形成されている。
【0030】
また、中間プレート47は、多孔体41,42と重なる領域に、穴部64と穴部65とを結ぶ細長い冷媒孔78を備えている。冷媒孔78は、中間プレート47の両面をアノード側プレート46と48とで狭持した際に、ガスセパレータ45内に冷媒が流れるための冷媒流路を形成する。
【0031】
ガスセパレータ45を構成する上記3種のプレートは、導電性材料、例えばステンレス鋼あるいはチタンやチタン合金といった金属によって形成される薄板状部材である。そして、穴部60〜65、連通孔70〜73および冷媒孔78は、打ち抜き加工によって形成されている。ガスセパレータ45を形成する際には、アノード側プレート46、中間プレート47、カソード側プレート48の順に、各穴部を位置合わせしつつ重ね合わせて、例えば拡散接合により接合させている。
【0032】
C.燃料電池内におけるガスの流れ:
燃料電池100が発電する際には、図3から図6に示した穴部60が形成する酸化ガス供給マニホールド210を流れる酸化ガスが、中間プレート47(図6)の連通部76が形成する空間と、カソード側プレート48(図5)の連通孔72とを介して、多孔体42へと流入する。多孔体42内において酸化ガスは、多孔体42に平行な方向(面方向)に流れると共に、面方向に垂直な方向(積層方向)へとさらに拡散する。積層方向に拡散した酸化ガスは、触媒電極(カソード)に至り、電気化学反応に供される。このように電気化学反応に多孔体42を通過した酸化ガスは、電気化学反応により生じた生成水と共に、カソード側プレート48の連通孔73および中間プレート47の連通部77が形成する空間を介して、穴部61が形成する酸化ガス排出マニホールド215へと排出される。
【0033】
一方、図3から図6に示した穴部62が形成する燃料ガス供給マニホールド200を流れる燃料ガスは、中間プレート47(図6)の連通部74が形成する空間と、アノード側プレート46(図4)の連通孔70とを介して、多孔体41内へと流入する。燃料電池100の通常運転時には、図1に示したパージ弁315が閉じられているため、多孔体41に流入した燃料ガスは、この多孔体41の内部で滞留することになる。これに対して、燃料電池100の運転が停止された場合等には、多孔体41に滞留した燃料ガスは、MEA40を介してカソード側から透過した窒素や水とともに、アノード側プレート46の連通孔71および中間プレート47の連通部75が形成する空間を介して、穴部63が形成する燃料ガス排出マニホールド205から排出される。なお、図3ないし図6に示したA−A断面の位置は、図2に示した断面図に相当する位置を表わしている。図2では、燃料ガス供給マニホールド200および燃料ガス排出マニホールド205近傍における燃料ガスの流出入の様子を矢印で示している。
【0034】
また、図3から図6に示した穴部64が形成する冷却媒体供給マニホールド220を流れる冷媒は、中間プレート47(図6)の冷媒孔78によって形成される冷媒流路を通り、穴部65が形成する冷却媒体排出マニホールド225に排出される。冷却媒体排出マニホールド225から排出された冷却媒体は、ラジエータ350によって冷却され、循環ポンプ340によって、再び冷却媒体供給マニホールド220に供給される。
【0035】
D.効果:
以上のように構成された本実施例の燃料電池100では、MEA40に対して反応ガスを供給する多孔体41,42は、ガスの供給される上辺からこれに対向する下辺にかけてその幅が漸減する形状であるものとした。このような構成によれば、多孔体41,42の上辺から下辺に向けてスムーズにガスを分散させていくことができるので、発電効率を向上させることができる。
【0036】
また、本実施例では、多孔体41,42の形状を上記のようにしたため、パージ処理時に、ガスの流れに淀み点が無いこととなり、スムーズにガスを排出することが可能になる。この結果、ガス拡散層に水や窒素などの不純物が滞留することが抑制され、発電効率の低下を抑制することが可能になる。
【0037】
E.変形例:
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以下のような変形が可能である。
【0038】
(E1)変形例1:
図7ないし図9は、多孔体41,42およびMEA40の形状の変形例を示す説明図である。これらの図では、図の上部がガスの供給側で、下部が排出側であるものとする。図示するように図7には、左右の辺が内側に窪んだ形状を示し、図8には、外側に膨んだ形状を示している。また、図9には、ガスの排出側の辺が右側に寄っている形状を示している。これらの形状であっても、ガスが供給される上辺からこれに対向する下辺にかけて幅が漸減しているため、スムーズにガスを供給することができるとともに、パージ処理時に淀みなくガスを排出することが可能になる。
【0039】
(E2)変形例2:
上記実施例では、アノード側の多孔体41とカソード側の多孔体42とが同一の形状を有するものとした。しかし、カソード側に配置される多孔体42からは酸化ガス排出マニホールド215を通じて常に不純物が排出されるのに対して、アノード側の多孔体41には、通常運転時にパージ弁315が閉じられる関係上、水や窒素等の不純物が滞留する可能性が高い。そのため、少なくとも、アノード側の多孔体41のみがガスの供給側から排出側にかけて幅が漸減する形状を有していれば発電効率の低下を抑制することが可能になる。つまり、カソード側の多孔体42は、矩形状であってもよく、また、カソード側に配置されるガス拡散層は、多孔体42によらずとも、例えば、複数の溝によって流路を形成する部材によって構成するものとしてもよい。
【0040】
(E3)変形例3:
上記実施例では、図3〜6に示したように、MEA40や多孔体41,42の形状が逆台形状であるのに対して、シール部43やガスセパレータ45は、矩形状であるものとした。しかし、シール部43やガスセパレータ45についても、MEA40や多孔体41,42の形状と略相似の関係になるように、逆台形状に構成するものとしてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、MEA40のアノード側に配置される多孔体41に水素を上下方向に流し、カソード側に配置される多孔体42に酸素を左右方向に流すものとしたが(図3〜6参照)、これらは、MEA40を挟んで平行に、あるいは対向させて流すこととしてもよい。
【0042】
(E4)変形例4:
上記実施例の燃料電池100は、通常発電時においてパージ弁315を閉塞することで、アノードオフガスの排出を行うことなく発電を行うものとした。これに対して、燃料電池100は、パージ弁315を完全に閉塞することなくアノードオフガスの排出量を少量に制限した運転(少量排気運転)を行うものとしてもよい。このような運転を行う燃料電池では、アノードオフガスの排出量が制限されているため、水素循環系を有する燃料電池のようにアノードオフガスの排出量を制限することなく発電を行う燃料電池よりもカソード側からMEA40を介してアノード側に透過する窒素等の影響によって発電効率が低下するおそれがある。しかし、上記実施例のように、MEA40に対して反応ガスを供給する多孔体41,42の形状を、ガスの供給される上辺からこれに対向する下辺にかけてその幅が漸減する形状とすれば、アノード側に透過した窒素等がスムーズに排出されることになるため、発電効率を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】燃料電池100の概略構成を示す説明図である。
【図2】燃料電池100の詳細な構成を表わす断面図である。
【図3】MEA40およびシール部43の概略構成を表わす平面図である。
【図4】アノード側プレート46の形状を示す平面図である。
【図5】カソード側プレート48の形状を示す平面図である。
【図6】中間プレート47の形状を示す平面図である。
【図7】多孔体41,42およびMEA40の形状の変形例を示す説明図である。
【図8】多孔体41,42およびMEA40の形状の変形例を示す説明図である。
【図9】多孔体41,42およびMEA40の形状の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
40...MEA
41,42...多孔体
43...シール部
45...ガスセパレータ
46...アノード側プレート
47...中間プレート
48...カソード側プレート
50...単セル
60〜65...穴部
70〜73...連通孔
74〜77...連通部
78...冷媒孔
100...燃料電池
110...燃料電池モジュール
120...集電板
130...絶縁板
140...エンドプレート
150...テンションプレート
200...燃料ガス供給マニホールド
205...燃料ガス排出マニホールド
210...酸化ガス供給マニホールド
215...酸化ガス排出マニホールド
220...冷却媒体供給マニホールド
225...冷却媒体排出マニホールド
300...水素タンク
310...アノードオフガス排出管
315...パージ弁
320...コンプレッサ
330...カソードオフガス排出管
340...循環ポンプ
350...ラジエータ
SL...シールライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
酸化ガスおよび燃料ガスの供給を受けて発電する発電層と、
前記発電層に面して配置され、対向する2つの辺を少なくとも有しており、内部に前記燃料ガスを流すことにより前記発電層に対して前記燃料ガスを供給するガス拡散層と、
前記ガス拡散層の第1の辺に対して前記燃料ガスを供給するガス供給部とを備え、
前記ガス拡散層は、前記第1の辺から、これに対向する第2の辺にかけて、幅が漸減していく形状である
燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池であって、
更に、前記発電に供された燃料ガスを前記第2の辺から排出するガス排出部を備える
燃料電池。
【請求項3】
通常運転時に、前記ガス拡散層に接続された各種流路のうち、前記ガス供給部を除く流路を閉塞した状態で発電を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−34251(P2008−34251A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206614(P2006−206614)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】