説明

燃料電池

【課題】半球面状の各燃料電池セルによって形成された円環状の燃料電池スタックを有する燃料電池を提供する。
【解決手段】各燃料電池セル10は、全体として半球面状に形成され、半球面状の外側面12を一方極として内側面14を他方極としている。例えば、外側面12をカソードとして内側面14をアノードとしている。複数の燃料電池セル10を積層させる際、隣接する2つの燃料電池セル10のうちの一方の外側面12と他方の内側面14とが重ね合わされる。そして、複数の燃料電池セル10を円周に沿った積層方向に積層させることにより、全体として円環状のドーナツ型の燃料電池スタック50が形成される。燃料電池スタック50には、その円環状の外周に沿って締結ベルト30が取り付けられ、燃料電池スタック50は、締結ベルト30によって外周から締め付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池セルを積層させた燃料電池スタックを有する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を含有した燃料ガスと酸素を含有した酸化ガスとを反応させて得られる化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池が知られている。一般に、燃料電池は、上述した化学反応をおこす燃料電池セルを何枚も重ねて形成される燃料電池スタックを備えている。そして、各燃料電池セルの形状や燃料電池スタックの形状について、従来から様々な提案が成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、長方形の面をもつ平板状のイオン伝導エレメント(燃料電池セル)を積層させて環状のイオン伝導モジュール(燃料電池スタック)を形成する旨の技術が記載されている。また特許文献2には、略円錐面形状に構成された燃料電池(燃料電池セル)を積層させて円柱状の燃料電池スタックを形成する旨の技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特表平8−500692号公報
【特許文献2】特開2004−47155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、各燃料電池セルの形状や燃料電池スタックの形状に関する様々な技術が提案されているなかで、本願発明者は、環状に形成される燃料電池スタックの構造について研究開発を重ねてきた。特に、環状の燃料電池スタックを構成する各燃料電池セルの形状に注目した。
【0006】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、環状の燃料電池スタックを構成する各燃料電池セルの形状を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である燃料電池は、複数の燃料電池セルを積層させた燃料電池スタックを有する燃料電池であって、前記各燃料電池セルは、全体として半球面状に形成され、半球面状の外側面を一方極として内側面を他方極とし、前記燃料電池スタックは、隣接する2つの燃料電池セルのうちの一方の外側面と他方の内側面とを重ね合わせて、複数の燃料電池セルを円周に沿った積層方向に積層させることにより、全体として円環状に形成されることを特徴とする。
【0008】
上記態様により、半球面状の各燃料電池セルによって形成された円環状の燃料電池スタックを有する燃料電池が提供される。上記態様において、各燃料電池セルは、全体的に半球面状であればよく、各燃料電池セルの一部において半球面状と異なる部分が存在してもよい。なお、半球面状は、理想的な半球面を含むが、本発明の本質を逸脱しない範囲において真の半球面を歪めたものであってもよい。また、燃料電池スタックは、全体的に円環状であればよく、燃料電池スタックの一部において円環状と異なる部分が存在してもよい。なお、円環状は、理想的な円環形を含むが、本発明の本質を逸脱しない範囲において真の円環形を歪めたものであってもよい。例えば、真の円環形に近い楕円環形なども円環状の概念に含まれる。また、真の円環形や楕円環形などを少し捻った形状なども円環状の概念に含まれる。
【0009】
望ましい態様において、前記燃料電池スタックは、その円環状の外周から締め付けられ、前記積層された複数の燃料電池セルに対して積層方向に沿った荷重がかけられることを特徴とする。この態様によれば、従来の長方形の面をもつ平板状の燃料電池セルを積層させた環状の燃料電池スタックと比べて、複数の燃料電池セルの各々に対して均一に荷重をかけることができ、各燃料電池セルの面内において均一に荷重をかけることができる。
【0010】
望ましい態様において、前記各燃料電池セルと略同形の半球面状のダミーセルを有し、前記ダミーセルは、円環状に形成される燃料電池スタック内において2つの燃料電池セルの間に挿入され、燃料電池スタックから電気を取り出すターミナルとして機能し、前記ダミーセルを介して、燃料電池スタックにガスが供給されて燃料電池スタックからガスが排出されることを特徴とする。
【0011】
望ましい態様において、前記各燃料電池セルには、内側面からセル内に供給されて外側面からセル外に排出されるガスの流路が形成され、前記燃料電池スタックには、複数の燃料電池セルの積層方向に沿って、各燃料電池セルの内側面から外側面に向かうガスの流路が形成されることを特徴とする。
【0012】
望ましい態様において、前記燃料電池スタックには、隣接する2つの燃料電池セルのうちの一方の外側面と他方の内側面との間に入り込み、各燃料電池セルの表面を流れてセルを冷却する冷却水の流路が形成されることを特徴とする。
【0013】
望ましい態様において、前記燃料電池スタックの円環状の外周に沿って取り付けられて燃料電池スタックを外周から締め付ける締結ベルトを有し、前記各燃料電池セルには、締結ベルトが接触する部分に締結ベルトを支持する支持部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、半球面状の各燃料電池セルによって形成された円環状の燃料電池スタックを有する燃料電池が提供される。例えば、本発明の好適な態様により、従来の環状の燃料電池スタックと比べて、複数の燃料電池セルの各々に対して均一に荷重をかけることができ、各燃料電池セルの面内において均一に荷重をかけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。図1は、本発明の好適な実施形態を示す図であり、図1には、燃料電池100と燃料電池セル10の斜視図が示されている。燃料電池100は、複数の燃料電池セル10を環状に積層させた燃料電池スタック50を有している。
【0016】
図1(B)に示すように、各燃料電池セル10は、全体として半球面状に形成され、半球面状の外側面12を一方極として内側面14を他方極としている。例えば、外側面12をカソードとして内側面14をアノードとしている。もちろん、外側面12をアノードとして内側面14をカソードとしてもよい。
【0017】
各燃料電池セル10は、例えば、半球面状のアノード層と半球面状の電解質膜と半球面状のカソード層とを重ね合わせて形成される。例えば、内側面14側から順に、アノードセパレータ、アノード拡散層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、カソード拡散層、カソードセパレータを積層して各燃料電池セル10が形成される。各燃料電池セル10の天頂部分に丸孔が設けられてもよい。
【0018】
図1(B)に示す燃料電池セル10を複数積層させる際、隣接する2つの燃料電池セル10のうちの一方の外側面12と他方の内側面14とが重ね合わされる。そして、複数の燃料電池セル10を円周に沿った積層方向に積層させることにより、図1(A)に示すように、全体として円環状のドーナツ型の燃料電池スタック50が形成される。
【0019】
燃料電池スタック50には、その円環状の外周に沿って締結ベルト30が取り付けられ、燃料電池スタック50は、締結ベルト30によって外周から締め付けられている。この締結ベルト30の締め付けにより、積層された複数の燃料電池セル10に対して積層方向に沿った荷重がかけられ、隣接する2つの燃料電池セル10のうちの一方の外側面12と他方の内側面14とが物理的に強く接触して、その間の電気的な接触抵抗(電気抵抗)が低減される。なお、各燃料電池セル10が半球面状であるため、例えば平板状の場合に比べて、複数の燃料電池セル10の各々に対して均一に荷重をかけることができ、各燃料電池セル10の面内において均一に荷重をかけることができる。
【0020】
燃料電池スタック50内には、各燃料電池セル10と同形の半球面状のダミーセル20が設けられている。ダミーセル20は、円環状に形成される燃料電池スタック50内において2つの燃料電池セル10の間に挿入される。ダミーセル20は、燃料電池スタック50から電気を取り出すターミナルとして機能し、また、ダミーセル20を介して、燃料電池スタック50にガスが供給されて燃料電池スタック50からガスが排出される。なお、ダミーセル20を介して、燃料電池スタック50に対して冷却水の供給や排出が行われてもよい。
【0021】
燃料電池スタック50は、燃料電池スタック50に類似した形状の恒温容器40内に封入される。そして、恒温容器40内において冷却水が循環されて、冷却水によって燃料電池スタック50の各燃料電池セル10が冷却される。
【0022】
図2は、図1に示す円環状の燃料電池スタックの製造方法の一例を示す図である。円環状の燃料電池スタックを形成する際には、例えば、図2に示すように、円環の半分に相当する半円環スタックを2つ形成し、それら2つの半円環スタックを合体させる。これにより、比較的容易に円環状の燃料電池スタックを形成することが可能になる。
【0023】
図3は、各燃料電池セル10ごとのガスの流れを説明するための図である。燃料電池スタックは、ダミーセル20を介して、外部とガスを遣り取りする。つまり、ダミーセル20には、ガス入口22Iとガス出口22Dが設けられており、ガス入口22Iから燃料電池スタック内にガスが取り込まれ、ガス出口22Dから燃料電池スタック内のガスが排出される。
【0024】
なお、ガス入口22Iから酸化ガス(例えばエア)と燃料ガス(例えば水素)のうちの一方のガスが取り込まれ、もう1つのガス入口22´Iから他方のガスが取り込まれる。また、ガス出口22Dから酸化ガスと燃料ガスのうちの一方のガスが排出され、もう1つのガス出口22´Dから他方のガスが排出される。
【0025】
ダミーセル20のガス入口22Iから取り込まれたガスは、燃料電池セル10に向かって流れ(符号62)、燃料電池セル10の発電に利用される。なお、ダミーセル20から取り込まれて燃料電池セル10に向かって流れるガス(符号62)は、燃料電池セル10を通り抜けて、図示しない次の燃料電池セル10へも送られる(符号68)。
【0026】
燃料電池セル10に到達したガス(符号62)は、燃料電池セル10の内側面からセル内に入り、セル内において拡散する(符号64)。セル内において拡散して発電に利用されたガスは、燃料電池セル10の外側面の天頂部分から排出される(符号66)。ガスが半球面の内側面から入り外側面の天頂部分から排出される構成のため分散性に優れている。また、例えば、図紙面の表側の位置から一方のガスをセル内に取り込み、図紙面の裏側の位置から他方のガスをセル内に取り込むようにしてクロスフローを実現してもよい。
【0027】
なお、ダミーセル20に冷却水入口24Iと冷却水出口24Dを設け、冷却水入口24Iから燃料電池スタック内に冷却水が取り込まれ、冷却水出口24Dから燃料電池スタック内の循環後の冷却水が排出されてもよい。
【0028】
図4は、燃料電池スタック50内におけるガスの流れを説明するための図である。ダミーセルに設けられたガス入口22Iから取り込まれたガスは、燃料電池スタック50内において、複数の燃料電池セルの積層方向に沿って、各燃料電池セルの内側面から外側面へ進む向きに流れる。例えば、図4に示すような左回りの流れ(符号72)となる。そして、各燃料電池セルにおいて発電に利用されたガスは、各燃料電池セルの天頂部分の排出通路を流れて、ガス出口22Dから排出される。
【0029】
なお、図4に示すように、ダミーセルを2つ設けて、2つのガス入口22Iから同一のガスを取り込み、2つのガス出口22Dからその同一のガスを排出するようにしてもよい。例えば、一方のガス入口22Iから燃料電池スタック50の半分のスタックへガスを供給し、反対の位置(180°異なる位置)にある一方のガス出口22Dからガスを排出する。そして、他方のガス入口22Iから燃料電池スタック50の残りの半分のスタックへガスを供給し、反対の位置にある他方のガス出口22Dからガスを排出する。同一ガスの入口と出口を複数設けることにより、圧損を低減することができる。
【0030】
図5は、恒温容器40内における冷却水の流れを説明するための図である。恒温容器40内において、冷却水は、燃料電池スタック50の積層方向に沿って、符号80の矢印の向きに流れ、燃料電池スタック50内の各燃料電池セルを冷却する。例えば、空冷などの手法により恒温容器40ごと冷却して恒温容器40内を流れる冷却水を冷却してもよい。
【0031】
図6および図7は、燃料電池セル10の表面における冷却水の流れを説明するための図である。燃料電池スタックには、隣接する2つの燃料電池セル10のうちの一方の外側面と他方の内側面との間に入り込み、各燃料電池セル10の表面を流れてセルを冷却する冷却水の流路が形成される。
【0032】
つまり、図6に示すように、隣接する2つの燃料電池セル10の赤道部分の隙間から、一方の燃料電池セル10(1)の外側面と他方の燃料電池セル10(2)の内側面との間に冷却水が入り込み、入り込んだ冷却水が燃料電池セル10(1)と燃料電池セル10(2)の冷却に利用された後に、燃料電池セル10(2)の天頂部分を通って排出される。
【0033】
例えば、図7に示すように、冷却水が燃料電池セル10(1)の外側面に沿って流れて(符号72)燃料電池セル10(1)を冷却しつつ、燃料電池セル10(1)の天頂部分に向かって流れ、燃料電池セル10(1)の天頂部分から排出される(符号74)。ちなみに、燃料電池セル10(1)の前のセルからの排水76は、燃料電池セル10(1)の中心部を通って符号74の流れに合流する。円環状の燃料電池スタックの外周を冷却水が循環して各燃料電池セル10の中心部を通って排水されることにより、例えば、ダミーセルに設ける冷却水の入口を省略することもできる。
【0034】
図8は、燃料電池スタックに取り付けられる締結ベルト30を説明するための図である。締結ベルト30は、燃料電池スタックの円環状の外周に沿って取り付けられ、図8(A)に示すように、燃料電池スタックの外周から複数の燃料電池セル10を締め付ける。これにより、円環状に積層された複数の燃料電池セル10に対して積層方向に沿った荷重がかけられ、隣接する2つの燃料電池セル10のうちの一方の外側面12と他方の内側面14とが物理的に強く接触して、その間の電気的な接触抵抗(電気抵抗)が低減される。
【0035】
各燃料電池セル10には、締結ベルト30が接触する部分に締結ベルト30を支持する支持部が形成される。例えば、図8(B)に示すように、半球面状の各燃料電池セル10に対して、締結ベルト30と接触する部分に凹み16を設ける。また、図8(C)に示すように、各燃料電池セル10に対して、締結ベルト30と接触する部分にひっかき18を設けてもよい。凹み16やひっかき18によって締結ベルト30が燃料電池スタックの外周からずれないように支持され、締結ベルト30を強力に締め付けることが可能になる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る燃料電池100と燃料電池セル10の斜視図である。
【図2】円環状の燃料電池スタックの製造方法の一例を示す図である。
【図3】各燃料電池セル10ごとのガスの流れを説明するための図である。
【図4】燃料電池スタック50内におけるガスの流れを説明するための図である。
【図5】恒温容器40内における冷却水の流れを説明するための図である。
【図6】燃料電池セル10の表面における冷却水の流れを説明するための図である。
【図7】燃料電池セル10の表面における冷却水の流れを説明するための図である。
【図8】燃料電池スタックに取り付けられる締結ベルトを説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
10 燃料電池セル、20 ダミーセル、30 締結ベルト、50 燃料電池スタック、100 燃料電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを積層させた燃料電池スタックを有する燃料電池であって、
前記各燃料電池セルは、全体として半球面状に形成され、半球面状の外側面を一方極として内側面を他方極とし、
前記燃料電池スタックは、隣接する2つの燃料電池セルのうちの一方の外側面と他方の内側面とを重ね合わせて、複数の燃料電池セルを円周に沿った積層方向に積層させることにより、全体として円環状に形成される、
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記燃料電池スタックは、その円環状の外周から締め付けられ、
前記積層された複数の燃料電池セルに対して積層方向に沿った荷重がかけられる、
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池において、
前記各燃料電池セルと略同形の半球面状のダミーセルを有し、
前記ダミーセルは、円環状に形成される燃料電池スタック内において2つの燃料電池セルの間に挿入され、燃料電池スタックから電気を取り出すターミナルとして機能し、
前記ダミーセルを介して、燃料電池スタックにガスが供給されて燃料電池スタックからガスが排出される、
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池において、
前記各燃料電池セルには、内側面からセル内に供給されて外側面からセル外に排出されるガスの流路が形成され、
前記燃料電池スタックには、複数の燃料電池セルの積層方向に沿って、各燃料電池セルの内側面から外側面に向かうガスの流路が形成される、
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池において、
前記燃料電池スタックには、隣接する2つの燃料電池セルのうちの一方の外側面と他方の内側面との間に入り込み、各燃料電池セルの表面を流れてセルを冷却する冷却水の流路が形成される、
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池において、
前記燃料電池スタックの円環状の外周に沿って取り付けられて燃料電池スタックを外周から締め付ける締結ベルトを有し、
前記各燃料電池セルには、締結ベルトが接触する部分に締結ベルトを支持する支持部が形成される、
ことを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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