燃料電池
【課題】温度差を抑制することで、安定して高い出力を得ることが可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜17と、電解質膜17の一方の面に配置されたアノード13と、電解質膜17の他方の面に配置されたカソード16と、を有する膜電極接合体2と、膜電極接合体2のアノード側に配置され、アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構3と、燃料供給機構3とアノード13との間に配置されるとともに燃料供給機構3に接する熱伝導体40と、を備えたことを特徴とする燃料電池。
【解決手段】電解質膜17と、電解質膜17の一方の面に配置されたアノード13と、電解質膜17の他方の面に配置されたカソード16と、を有する膜電極接合体2と、膜電極接合体2のアノード側に配置され、アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構3と、燃料供給機構3とアノード13との間に配置されるとともに燃料供給機構3に接する熱伝導体40と、を備えたことを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体燃料を用いた燃料電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
【0003】
高温で作動する燃料電池において、燃料電池を収納する機器の筐体が高温になることを防止する目的で、燃料電池を覆う断熱体の外表面を伝熱体で覆う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方で、燃料電池セパレータなどの用途に好適な高い熱伝導性を有する熱伝導性成形体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特に、この熱伝導性成形体によれば、熱伝導率の異方性により電気・電子機器用の筐体、部材とした場合に、筐体の放熱設計などにおいて有用であることが開示されている。
【0005】
単位電池を複数個積層して積層体を形成してなる燃料電池において、温度分布を均一化する目的で、平面方向の熱伝導率が積層方向の熱伝導率よりも大きいガス分離板と単位電池とを交互に積層して、上下端部に冷却板を配置した構成が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−202611号公報
【特許文献2】特開2006−49878号公報
【特許文献3】特開平9−289026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池として、例えば、メタノールを燃料として用いた直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源として有望視されている。
【0008】
DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。これらのうち、内部気化型等のパッシブ方式はDMFCの小型化に対して有利である。パッシブ型DMFCは、例えば燃料極、電解質膜および空気極を有する膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を備えて構成されている。
【0009】
このような膜電極接合体の面内において、意図しない温度ばらつきが生じることがある。特に、膜電極接合体の周辺部では比較的放熱が促進されるのに対して、中央部では熱が逃げにくく、周辺部と中央部とで大きな温度差が生じやすくなる。
【0010】
また、このような温度差に伴って液体の燃料が気化して生じる燃料の気化成分の蒸気圧にも差が生じ、膜電極接合体において発電反応に必要な燃料の授受が阻害され、結果として、出力の低下や不安定化を招くおそれがある。このような気化成分の供給の不安定は、燃料電池全体の温度が高く且つ気化燃料の蒸気圧が全体に高く保たれている場合には余り生じない。しかし、携帯用電子機器等の電源として用いる燃料電池では、安全性等の観点から、燃料電池全体の温度も低く抑制する必要があり、この場合には、気化成分の蒸気圧が全体に低いため、僅かな温度差による蒸気圧の差が、出力の安定性に対して大きく影響することになる。
【0011】
この発明の目的は、安定して高い出力を得ることが可能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の一態様によれば、
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置されたアノードと、前記電解質膜の他方の面に配置されたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に配置されるとともに前記燃料供給機構に接する熱伝導体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【0013】
この発明の他の態様によれば、
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置されたアノードと、前記電解質膜の他方の面に配置されたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に配置された気液分離膜と、
前記燃料供給機構と前記気液分離膜との間に配置されるとともに前記気液分離膜から離間した熱伝導体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、安定して高い出力を得ることが可能な燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態における燃料電池のカソード側の外観を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示した燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示した燃料電池の燃料供給機構における燃料分配板を膜電極接合体が重なる上面から見た上面図である。
【図4】図4は、図2に示した燃料電池に適用可能な熱伝導体の構造を概略的に示す斜視図である。
【図5】図5は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図6】図6は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図7】図7は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図8】図8は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図9】図9は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図10】図10は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図11】図11は、性能評価を行った際の出力密度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施の形態に係る燃料電池について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、この実施の形態に係る燃料電池(DMFC)1のカソード側の外観を示す平面図である。
【0018】
この燃料電池1は、略矩形平板状に形成されている。図1に示した平面図では、燃料電池1は、長方形状であり、第1方向Xに沿って延びた一対の長辺L1及び長辺L2と、第1方向Xに直交する第2方向Yに沿って延びた一対の短辺S1及び短辺S2と、を有している。
【0019】
燃料電池1は、起電部を構成する膜電極接合体(MEA)2を備えている。この膜電極接合体2は、略矩形状に形成されている。この膜電極接合体2は、その詳細な構造については後に説明するが、ここでは複数、たとえば4つの単セルCL1乃至CL4を備えている。単セルCL1乃至CL4のそれぞれは、同一平面上において、第1方向Xに沿って延在した略長方形状であり、第2方向Yに間隔をおいて並んで配置されている。
【0020】
膜電極接合体2のカソード側に位置する燃料電池1の表面には、カバープレート21が配置されている。カバープレート21は、外観が略矩形状であり、例えばステンレス鋼(SUS)によって形成されている。このカバープレート21には、主として酸化剤である空気、特に酸素の取り込みを可能とする複数の開口部21Hが形成されている。
【0021】
なお、膜電極接合体2のアノード側には、膜電極接合体2に燃料を供給する燃料供給機構(図示しない)が配置されている。カバープレート21は、燃料供給機構との間に膜電極接合体2を保持した状態で、燃料電池1の各長辺L1及びL2、及び、各短辺S1及びS2において燃料供給機構に締結されている。
【0022】
図2は、図1に示した燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0023】
燃料電池1は、膜電極接合体2を備えている。膜電極接合体2は、アノード(燃料極)13と、カソード(空気極あるいは酸化剤極)16と、アノード13とカソード16とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜17と、を備えて構成されている。アノード13は、アノード触媒層11と、このアノード触媒層11に積層されたアノードガス拡散層12とを有している。アノード触媒層11は、電解質膜17の一方の面17Aに積層されている。カソード16は、カソード触媒層14と、このカソード触媒層14に積層されたカソードガス拡散層15とを有している。カソード触媒層14は、電解質膜17の他方の面17Cに積層されている。
【0024】
図1に示した各単セルCL1乃至CL4は、電解質膜17を挟んで対向するアノード13及びカソード16によって構成されている。つまり、図1に示した4つの単セルCL1乃至CL4を備えた膜電極接合体2では、詳述しない4つのアノード13が単一の電解質膜17における一方の面17Aの上において第2方向Yに間隔をおいて配置され、また、4つのカソード16が電解質膜17における他方の面17Cの上において第2方向Yに間隔をおいて配置されている。
【0025】
このような膜電極接合体2は、本実施の形態においては集電体18によって挟持されている。集電体18は、ベース絶縁層BF、ベース絶縁層BFの上に配置されたアノード集電部18A、及び、ベース絶縁層BFのアノード集電部18Aが配置された同一面上に配置されたカソード集電部18Cを有している。
【0026】
アノード集電部18A及びカソード集電部18Cは、例えば、金、銅、ニッケルなどの金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などをそれぞれ使用して形成可能であり、さらには、グラファイト(黒鉛)などの炭素質材料を使用して形成しても良い。
【0027】
図2に示した例では、アノード集電部18Aは、アノードガス拡散層12に積層されている。このアノード集電部18Aには、アノード13に向けて発電反応に必要な燃料の供給を可能とする開口部18AHが形成されている。また、カソード集電部18Cは、カソードガス拡散層15に積層されている。このカソード集電部18Cには、カソード16に向けて発電反応に必要な酸素の供給を可能とするとともに発電反応に伴って生成された二酸化炭素や過剰な水蒸気などの気体の外部への排出を可能とする開口部18CHが形成されている。このような構成の集電体18は、図1に示したような膜電極接合体2に備えられた複数の単セルCL1乃至CL4を電気的に直列に接続している。
【0028】
集電体18は、本実施の形態のように、集電体18を二つ折りして膜電極接合体2を挟持した構造となっているが、この構造に限られるものではない。例えば、アノード集電部18Aおよびカソード集電部18Cを個々に独立して設けた個別の集電体を準備し、その個別の集電体により膜電極接合体2を挟持し、それら集電体の集電部同士を導電性の接続部材により、図1に示したような膜電極接合体2に備えられた複数の単セルCL1乃至CL4を電気的に直列に接続しても良い。
【0029】
膜電極接合体2は、電解質膜17の一方の面17Aと集電体18との間及び電解質膜17の他方の面17Cと集電体18との間にそれぞれ挟持されたゴム製のOリング等のシール部材19によってシールされている。これにより、膜電極接合体2からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止されている。なお、膜電極接合体2において、電解質膜17のうち、アノード触媒層11及びカソード触媒層14にともに接しておらず、かつシール部材19によって囲まれた内側に相当する位置に、1個乃至複数個のガス排出孔(図示せず)を設けても良い。
【0030】
膜電極接合体2のカソード16の側において、集電体18とカバープレート21との間には、通気性を有する絶縁材料によって形成された板状体20が配置されている。この板状体20は、主に保湿層として機能する。すなわち、この板状体20は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて水の蒸散を抑制するとともに、カバープレート21の開口部21Hから取り込んだ空気のカソード触媒層14への取入れ量を調整し且つ空気の均一拡散を促進するものである。このような板状体20は、例えば、ポリエチレン製多孔質フィルム等からなる平板で構成される。
【0031】
膜電極接合体2のアノード13の側には、燃料供給機構3が配置されている。つまり、膜電極接合体2は、アノード13の側に配置された燃料供給機構3とカソード16の側に配置されたカバープレート21との間に配置されている。燃料供給機構3は、膜電極接合体2のアノード13に対して燃料を供給するように構成されているが、特に、特定の構成に限定されるものではない。このような燃料供給機構3は、液体燃料Fを収容する燃料収容部4に流路5を介して接続されている。
【0032】
流路5は、配管などで構成されている。流路5は、燃料供給機構3や燃料収容部4と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料供給機構3と燃料収容部4とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料Fの流路であってもよい。すなわち、燃料供給機構3は、流路等を介して燃料収容部4と連通されていればよい。
【0033】
燃料収容部4に収容された液体燃料Fは、重力を利用して流路5を介して燃料供給機構3まで落下させて送液することができる。また、流路5に多孔体等を充填して、毛細管現象により燃料収容部4に収容された液体燃料Fを燃料供給機構3まで送液してもよい。さらに、流路5の一部にポンプ6を介在させて、燃料収容部4に収容された液体燃料Fを燃料供給機構3まで強制的に送液してもよい。
【0034】
なお、適用されるポンプ6は、燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部4から燃料供給機構3に向けて液体燃料Fを送液する燃料供給ポンプである。燃料供給機構3から膜電極接合体2に供給された燃料は、発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部4に戻されることはない。ポンプ6の種類は、特に限定されるものではないが、少量の液体燃料Fを制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能なものが好ましい。
【0035】
この実施の形態の燃料電池1は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料の供給にポンプ6を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。図2に示す燃料電池1は、例えばセミパッシブ型と呼称される方式を適用したものである。
【0036】
また、燃料供給機構3において、ポンプ6と直列に燃料遮断バルブを配置してもよい。また、燃料収容部4や流路5には、燃料収容部4内の圧力を外気とバランスさせるバランスバルブを装着してもよい。
【0037】
燃料収容部4には、膜電極接合体2に応じた液体燃料Fが収容されている。液体燃料Fとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。なお、液体燃料Fは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Fは、例えば、エタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料Fであってもよい。いずれにしても、燃料収容部4には、膜電極接合体2に応じた液体燃料Fが収容される。
【0038】
以下に、燃料供給機構3の一例について説明する。
【0039】
燃料供給機構3は、箱状に形成された容器30、及び、膜電極接合体2のアノード13の面方向(つまり、図中のX−Y平面内の方向)に燃料を分散並びに拡散させつつ供給する燃料分配板31を備えている。容器30は、流路5が接続される図示しない燃料導入口を有している。このような容器30を形成する樹脂材料としては、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルペンテン、ポリフェニルサルファイド(PPS)などが挙げられる。また、この容器30は、樹脂材料に代えてステンレス(SUS)や金属クラッド材などの金属材料を用いて形成することも可能である。
【0040】
燃料分配板31は、容器30の内側に形成された凹部に配置されている。この燃料分配板31は、平板状に形成されている。このような燃料分配板31には、複数の燃料排出口33が形成されている。このような燃料分配板31は、容器30の燃料導入口から供給された液体燃料をアノード13に向けて燃料排出口33から排出する。このような燃料分配板31は、液体燃料やその気化成分を透過させない材料によって形成され、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリイミド系樹脂などの各種樹脂材料を用いて形成されている。
【0041】
なお、この燃料分配板31は、たとえば、液体燃料とその気化成分とを分離し、気化成分を膜電極接合体2に向けて透過させる気液分離膜で構成しても良い。この気液分離膜には、例えば、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などが適用可能である。
【0042】
燃料供給機構3と膜電極接合体2のアノード13との間には、熱伝導体40が配置されている。この熱伝導体40は、燃料供給機構3に接している。このような熱伝導体40は、X−Y平面に略平行な平板状に形成されている。ここで、『熱伝導体40が燃料供給機構3に接している』状態とは、X−Y平面における熱伝導体40の下面が燃料供給機構3に接している状態に相当し、図2に示した例では、熱伝導体40は、燃料分配板31に接している。
【0043】
上述した熱伝導体40としては、液体燃料や水、酸素等によって溶解や腐食、酸化等を生じることがなく、かつ熱伝導率の高い材料によって形成されることが望ましい。また、熱伝導体40は、少なくとも燃料の気化成分を透過するための通気性を確保する必要があり、多孔質性の材料あるいは貫通孔を有する材料によって形成されている。このうち、多孔質性の熱伝導体40としては、炭素繊維素材が好適であり、例えば、東レ社製のカーボンペーパー(TGP−Hシリーズ)や、SGLカーボンジャパン社製のカーボンペーパー(GDLシリーズ)などが適用可能である。また、貫通孔を有する熱伝導体40としては、黒鉛(グラファイト)などの炭素質の材料をシート状に加工したグラファイトシート(例えば、グラフテック社製のグラファイトシート(eGrafシリーズ)に貫通孔を形成したものなどが適用可能である。図2に示した例では、熱伝導体40には貫通孔40Hが形成されている。
【0044】
さらに、熱伝導体40としては、熱伝導性に優れた金、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン等の金属、または、ステンレスなどのこれらの金属の合金に貫通孔を形成したものなどが適用可能である。
【0045】
熱伝導体40として金属材料を用いた場合、カソード16で生成した水や、アノードにおける反応の副生成物であるギ酸等によって酸化、腐食を生じる可能性がある。それを防ぐために、熱伝導体40としては、ステンレス等の腐食しにくい材料を用いるか、または、熱伝導体40の表面に、金などの酸化しにくい金属をメッキしたり、炭素質の物質や、樹脂もしくはゴムでコーティングを施したり、液体燃料の気化成分に溶解しない塗料で塗装する等しても良い。
【0046】
上記のようにコーティングを施すための樹脂もしくはゴムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、シリコーン樹脂等の樹脂、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム等のゴムが使用可能である。これらの樹脂やゴムは、金属材料に比べて熱伝導率が低いため、コーティングを施す場合には、コーティングする樹脂もしくはゴムはできるだけ薄くするのが望ましい。
【0047】
また、図2に示した例のように、熱伝導体40がアノード集電部18Aに接する構成の場合、膜電極接合体2の単セル間でのショートを防止するために、熱伝導体40が絶縁体として構成される、あるいは、熱伝導体40の少なくともアノード集電部18Aに接する面が上述したような樹脂やゴムなどの絶縁体によって覆われていることが望ましい。
【0048】
この熱伝導体40は、燃料供給機構3に平行な平面方向(つまり、図2に示した例ではX−Y平面と平行な方向)の熱伝導率λplが、10W/mK以上であることが望ましい。熱伝導率λplの値が大きいほど、X−Y平面と平行な面内での熱分布の均一化に対する効果が大きいためである。
【0049】
更に、この熱伝導体40において、その厚み方向(つまり、図2に示した例ではZ方向)の熱伝導率λtよりも面内での熱伝導率λplの方が大きい熱伝導異方性を有していればなお望ましい。これは、厚み方向の熱伝導率λtの方が面内での熱伝導率λplよりも大きい場合には、厚み方向への熱の移動が促進され、面内つまり膜電極接合体2の高温部から低温部への熱の移動が阻害されてしまうおそれがあるためである。なお、ここで説明した熱伝導率λpl及びλtは、レーザーフラッシュ法によって測定したものである。
【0050】
また、この熱伝導体40において、その中央部での気孔率(または開口率)が周辺部より小さいことが望ましい。すなわち、膜電極接合体2のアノード13の側に配置される熱伝導体40は、アノード13への燃料の導入を阻害しないように通気性を有している。その一方で、熱伝導体40の気孔率は、その熱伝導率をコントロールするファクターの1つであり、気孔率が高いほど熱伝導体40の内部が気体成分で満たされ、放熱性能の低下を招く。つまり、気孔率が高いほど熱伝導率は低下する。このように、熱伝導体40には、熱伝導性を確保しつつ、通気性を確保することが要求される。
【0051】
膜電極接合体2の面内の温度分布は、中央部で高く、その周辺部(つまり、容器30に近接する部分)で低い場合が多い。これに対応するため、熱伝導体40においては、その中央部での気孔率が周辺部より小さいことが望ましい。つまり、熱伝導体40において、膜電極接合体2の中央部に対向する部分では比較的熱伝導率が高く、熱の移動を促進するとともに、周辺部に対向する部分では比較的熱伝導率が低い半面、通気性が高く発電反応を促進することが可能となる。
【0052】
このとき、熱伝導体40は、その気孔率が中央部から周辺部に向かって連続的に大きくなるように構成しても良い。この場合、熱伝導体40の面内での熱伝導率が一定ではなく、中央部から周辺部にかけて連続的に大きくなる。
【0053】
図2に示したように、熱伝導体40に形成された貫通孔40Hは、燃料分配板31の燃料排出口33の直上に位置している。
【0054】
図3は、燃料供給機構3における燃料分配板31の上面図である。
【0055】
燃料分配板31は、第1方向Xに延びた略長方形状に形成されている。このような燃料分配板31には、燃料注入口32及び燃料排出口33が形成されている。燃料注入口32は、例えば1箇所に形成されている。この燃料注入口32は、容器30の燃料導入口30Aに連通している。燃料排出口33は、複数、ここでは128個(16×8)形成されている。これらの燃料排出口33は、燃料注入口32と流路34を介して接続されている。この流路34は、燃料分配板31の容器30と密着する面に形成された溝であっても良いし、燃料分配板31の内部を通る管であっても良く、特に形態に制限はない。
【0056】
図4は、熱伝導体40の斜視図である。
【0057】
この熱伝導体40は、第1方向Xに延びた略長方形状に形成されている。このような熱伝導体40には、複数、ここでは128個(16×8)の貫通孔40Hが形成されている。これらの貫通孔40Hのそれぞれは、燃料排出口33の直上に位置している。このような貫通孔40Hは、燃料排出口33の径と同等以上の径を有している。なお、熱伝導体40には、図示した128個の貫通孔40Hに加えて、さらに複数の貫通孔が形成されても良い。熱伝導体40に形成される貫通孔40Hの個数は、熱伝導体40に要求される熱伝導性を考慮して適宜設定しても良い。
【0058】
上述した燃料電池1においては、燃料収容部4から流路5を介して燃料分配板31に導入された液体燃料Fは、液体成分のまま、もしくは液体成分と気体成分とが混在する状態で、燃料分配板31の燃料排出口33から排出される。排出された燃料は、熱伝導体40及び集電体18のアノード集電部18Aを介して膜電極接合体2のアノード13に供給される。
【0059】
アノード13に供給された燃料の気体成分は、アノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起させる、あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
【0060】
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
この反応で生成した電子(e-)は、集電体18を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、集電体18を経由してカソード16に導かれる。(1)式の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は、電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には、酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と下記の(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
【0061】
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
上述した燃料電池1の発電反応において、発電する電力を増大させるためには触媒反応を円滑に行わせるとともに、膜電極接合体2の電極全体に均一に燃料を供給し、電極全体をより有効に発電に寄与させることが重要となる。
【0062】
本実施形態によれば、膜電極接合体2の面内においては、その中央部は比較的放熱されにくく高温となりやすく、逆に、その周辺部は中央部と比較して低温となりやすい。この場合、熱伝導体40を配置したことにより、膜電極接合体2の中央部から周辺部への熱移動が促進され、膜電極接合体2の中央部と周辺部とでの温度差を低減することが可能となる。つまり、膜電極接合体2の面内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0063】
また、温度差に起因した液体燃料の気化成分の蒸気圧差も低減され、膜電極接合体2の面内の中央部及び周辺部のいずれにおいても、発電反応に必要な物質の授受を促進することが可能となる。特に、携帯用電子機器などの電源として用いる燃料電池1において、燃料電池全体の温度を低く抑制したとしても、蒸気圧差が低減されているため、安定して高い出力を得ることが可能となる。
【0064】
次に、本実施形態で採用可能な燃料電池1のバリエーションについて説明する。なお、図2に示した例と同一の構成については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
図5は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0066】
図5に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50が配置されている点で相違している。この絶縁体50は、熱伝導体40の上面に接し、且つ、アノード集電部18Aの背面側に接している。このような絶縁体50は、例えば、燃料拡散板あるいは気液分離膜として機能するものが適用可能である。また、この絶縁体50は、熱伝導体40と略同一の形状であって且つ略同一の外形寸法に形成されている。
【0067】
燃料拡散板である絶縁体50は、例えば、ポリエチレン製多孔質フィルム等からなる平板で構成される。このような絶縁体50は、気化した燃料の平面方向(図1のX−Y平面と平行な方向)に拡散させ、このような気化燃料の供給の均一性を促進する役割を果たす。
【0068】
気液分離膜である絶縁体50は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の微多孔膜などの上述したような各種材料からなる平板で構成される。このような絶縁体50は、燃料供給機構3からアノード13に向けて供給される燃料のうち、液体燃料とその気化成分とを分離し、燃料の気化成分をアノード13に向けて透過するものである。
【0069】
図6は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0070】
図6に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に空気層61を形成するためのスペーサ60が配置されている点で相違している。このスペーサ60は、燃料供給機構3から供給された燃料が膜電極接合体2に向かって供給される経路よりも外側に配置されている。
【0071】
すなわち、スペーサ60は、熱伝導体40の貫通孔40Hよりも外側の外縁部に沿った上面に接し、且つ、アノード集電部18Aの外縁部に沿った背面側に接している。このようなスペーサ60は、例えばOリングなどの絶縁性の弾性体によって形成されている。
【0072】
図7は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0073】
図7に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50として気液分離膜が配置され、しかも、燃料供給機構3が燃料分配板31と熱伝導体40との間に配置された燃料拡散板35を有している点で相違している。
【0074】
絶縁体50は、平板状に形成され、熱伝導体40の上面に接し、且つ、アノード集電部18Aの背面側に接している。また、この絶縁体50は、熱伝導体40と略同一の形状であって且つ略同一の外形寸法に形成されている。このような絶縁体50は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の微多孔膜などの上述したような各種材料で構成される。
【0075】
燃料拡散板35は、平板状に形成され、燃料分配板31の上面に接し、且つ、熱伝導体40の背面に接している。このような燃料拡散板35は、例えば、ポリエチレン製多孔質フィルム等で構成される。
【0076】
なお、この図7に示した例においては、絶縁体50として気液分離膜を適用したが、図5で示した例と同様に絶縁体50として燃料拡散板を適用しても良い。また、この例においては、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50を配置したが、図6に示した例と同様に空気層61を形成するためのスペーサ60が配置されても良い。
【0077】
図8は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0078】
図8に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50としての気液分離膜及びアノードフィルム70が配置された点で相違している。
【0079】
アノードフィルム70は、平板状に形成され、熱伝導体40の上面に接している。このアノードフィルム70は、熱伝導体40と略同一の形状であって且つ略同一の外形寸法に形成されている。
【0080】
このアノードフィルム70には、複数の開孔70Hが形成されている。ここでは、アノードフィルム70には、燃料分配板31の燃料排出口33と同数である128個(16×8)の開孔70Hが形成されている。これらの開孔70Hのそれぞれは、燃料排出口33の直上に位置している。このような開孔70Hは、燃料排出口33の径と同等以上の径を有している。なお、アノードフィルム70には、128個の開孔70Hに加えて、さらに複数の開孔が形成されても良い。
【0081】
このようなアノードフィルム70は、メタノールなどの燃料に対して十分な耐性を有する材料によって形成され、例えば、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、液晶ポリマー(LCP)などによって形成されている。また、アノードフィルム70は、表面に耐酸性処理が施された金属板や、ガラス、シリコンなどを用いて形成しても良い。
【0082】
絶縁体50は、平板状に形成され、アノードフィルム70の上面に接し、アノードフィルム70の開孔70Hを塞ぐように配置されている。この絶縁体50は、熱伝導体40及びアノードフィルム70と略同一の形状であって且つ略同一の外形寸法に形成されている。
【0083】
図9は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0084】
図9に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50及び空気層61を形成するためのスペーサ60が配置された点で相違している。
【0085】
絶縁体50は、例えば、気液分離膜であり、平板状に形成されている。この絶縁体50は、アノード集電部18Aの背面側に接している。
【0086】
スペーサ60は、図6に示した例と同様に、燃料供給機構3から供給された燃料が膜電極接合体2に向かって供給される経路よりも外側に位置し、熱伝導体40の貫通孔40Hよりも外側の外縁部に沿った上面に接し、且つ、絶縁体50の外縁部に沿った背面に接している。
【0087】
図10は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0088】
図10に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50としての気液分離膜及びアノードフィルム70が配置され、且つ、燃料供給機構3が燃料分配板31と熱伝導体40との間に配置された燃料拡散板35を有している点で相違している。
【0089】
燃料拡散板35は、平板状に形成され、燃料分配板31の上に配置され、燃料分配板31に形成されたすべての燃料排出口33に重なっている。熱伝導体40は、燃料拡散板35の上に配置されている。図示した例では、燃料拡散板35と熱伝導体40とが接している。熱伝導体40に形成された貫通孔40Hは、燃料排出口33の直上に位置している。
【0090】
アノードフィルム70は、熱伝導体40の上に配置されている。図示した例では、熱伝導体40とアノードフィルム70とは接している。アノードフィルム70に形成された開孔70Hは、燃料排出口33の直上に位置している。つまり、燃料排出口33、貫通孔40H、及び、開孔70Hは、Z方向に沿って同軸上に位置している。
【0091】
気液分離膜である絶縁体50は、平板状に形成され、アノードフィルム70の上面に接し、アノードフィルム70の開孔70Hを塞ぐように配置されている。図示した例では、絶縁体50は、アノード集電部18Aの背面側で接している。
【0092】
以上、図5乃至図10に示した各バリエーションにおいても、上記したのと同様の効果が得られる。
【0093】
《性能評価》
(実施例1)
アノード用触媒粒子(Pt:Ru=1:1)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをアノードガス拡散層12としての多孔質カーボンペーパ(55.5mm×8.7mmの長方形)に塗布することにより、厚さが100μmのアノード触媒層11を得た。
【0094】
カソード用触媒粒子(Pt)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、カソード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをカソードガス拡散層15としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより、厚さが100μmのカソード触媒層14を得た。
【0095】
なお、アノードガス拡散層12及びカソードガス拡散層15は、同一形状かつ同一の大きさであり、厚さも等しく、それぞれのガス拡散層に塗布されたアノード触媒層11及びカソード触媒層14も同一形状かつ同一の大きさである。
【0096】
上記したように作製したアノード触媒層11とカソード触媒層14との間に、電解質膜17として厚さが30μmで、含水率が10〜20重量%のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(商品名:nafion膜、デュポン社製)を、4つのアノードガス拡散層12および4つのカソードガス拡散層15が、それぞれの長手方向が略平行で、その間隔が1.2mmとなるように並んで配置し、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向するように位置を合わせた状態で、ホットプレスを施すことにより、膜電極接合体2を得た。
【0097】
このように作成した膜電極接合体2は、集電体18によって挟持され、アノードガス拡散層12とアノード集電部18Aとが対向するとともに、カソードガス拡散層15とカソード集電部18Cとが対向している。すなわち、カソード集電部18Cとして、カソードガス拡散層15の上に金箔を積層した。また、アノード集電部18Aとして、アノードガス拡散層12の上に金箔を積層した。これらのアノード集電部18A及びカソード集電部18Cは、上記した4対のアノード触媒層11とカソード触媒層14とが電気的に直列に接続されるように形成されている。なお、アノード集電部18Aには、燃料分配板31の燃料排出口33に対応した位置に開口が形成されている。また、カソード集電部18Cには、カバープレート21の開口部21Hに対応した位置に開口が形成されている。
【0098】
膜電極接合体2の電解質膜17と集電体18との間には、アノード側及びカソード側の双方について、シール部材19として、それぞれ幅が2mmのゴム製のOリングを挟持してシールを施した。
【0099】
カソード集電部18Cの上には、板状体20として、厚さが0.75mmであり、透気度が3.0秒/100cm3(JIS P 8117:2009に規定の測定方法による)であり、透湿度が3000g/(m2・24h)(JIS L 1099:2006 A−1に規定の測定方法による)のポリエチレン製多孔質フィルムを、長さ59.5mm、幅42.4mmの長方形に切り、積層した。外気からカソード16に供給される空気は、この板状体20を透過することとなる。
【0100】
この板状体20の上には、カバープレート21として、外形が64.5mm×44.5mmの長方形であり、厚さが0.3mmのステンレス板(SUS304)を積層した。このカバープレート21には、5.6mm×2.8mmの長方形の64個の開口部21Hが均等に形成されている。
【0101】
燃料分配板31の上には、熱伝導体40として、厚さが80μmのグラファイトシート(グラフテック社製;型番SS400)を59.5mm×42.4mmの長方形状に切り抜き、積層した。この熱伝導体40であるグラファイトシートは、平面方向(図5に示したX−Y平面に平行な方向)の熱伝導率λplが400W/mKであり、その厚み方向(図5のZ方向)の熱伝導率λtが3.5W/mKである。この熱伝導体40には、燃料分配板31の燃料排出口33に対応した位置に直径1.8mmの開口が形成されている。
【0102】
熱伝導体40とアノード集電部18Aとの間には、燃料拡散板である絶縁体50として、厚さ0.5mm、気孔率26%のポリエチレン製多孔質フィルムを挿入した。この絶縁体50は、熱伝導体40と同一形状かつ同一の大きさである。この絶縁体50は、電気的な絶縁と共に、気化した燃料を平面方向に拡散させ、気化燃料の供給の均一性を促進する役割を果たす。
【0103】
上述した構成の実施例1は、図5に示した燃料電池1に相当する。
【0104】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で説明した燃料電池1において、熱伝導体40とアノード集電部18Aとの間に絶縁体50を配置する代わりに、熱伝導体40とアノード集電部18Aとの間に、Z方向の距離が0.5mmの空気層61を形成するためのスペーサ60を設けた以外は、実施例1と同様である。
【0105】
上述した構成の実施例2は、図6に示した燃料電池1に相当する。
【0106】
(実施例3)
実施例3では、実施例1で説明した燃料電池1において、燃料分配板31と熱伝導体40との間に燃料拡散板35を配置し、熱伝導体40とアノード集電部18Aとの間に気液分離膜である絶縁体50を配置した以外は、実施例1と同様である。絶縁体50としては、厚さ0.1mm、気孔率68%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の微多孔膜を適用した。
【0107】
上述した構成の実施例3は、図7に示した燃料電池1に相当する。
【0108】
(比較例)
実施例1で説明した燃料電池1において、熱伝導体40を設けない以外は、実施例1と同様である。
【0109】
上述した実施例1乃至3及び比較例の各燃料電池1について、性能評価を行った。
【0110】
まず、温度が25℃、相対湿度が50%の環境の下、上記したように作成した各燃料電池1に、純度99.9重量%の純メタノールを供給した。ここで、カバープレート21の中央部の表面に熱電対を取り付け、この熱電対で測定した温度が45℃で一定になるように、純メタノールの供給量を制御した場合と、熱電対で測定した温度が50℃で一定になるように、純メタノールの供給量を制御した場合との2つの条件に対して、以下の測定を行なっている。
【0111】
そして、定電圧電源を接続して、燃料電池1の出力電圧が直列に接続した4対の単セルの中の1対あたり0.35Vで一定になるように、燃料電池1に流れる電流を制御し、このとき、燃料電池1から得られる出力密度を計測した。
【0112】
ここで、燃料電池1の出力密度(mW/cm2)とは、燃料電池1に流れる電流密度(発電部の面積1cm2当りの電流値(mA/cm2))に燃料電池1の出力電圧を乗じたものである。また、発電部の面積とは、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向している部分の面積である。ここで説明した各実施例及び比較例では、アノード触媒層11とカソード触媒層14の面積が等しく、かつ完全に対向しているので、発電部の面積はこれらの触媒層の面積に等しい。
【0113】
以上の測定結果を纏めて示したものが、図11である。なお、燃料電池1の出力密度を計測した結果は、それぞれの制御温度で測定した比較例の値を100とした相対値で示してある。
【0114】
カバープレート21の表面温度が45℃になるように燃料供給を制御した際には、比較例の出力密度を100%としたとき、実施例1では107%となり、実施例2では109%となり、実施例3では102%となり、いずれの実施例においても比較例より高い出力密度が得られることを確認した。
【0115】
カバープレート21の表面温度が50℃になるように燃料供給を制御した際には、比較例の出力密度を100%としたとき、実施例1では104%となり、実施例2では105%となり、実施例3では102%となり、いずれの実施例においても比較例より高い出力密度が得られることを確認した。
【0116】
このように、特に50℃よりも低い温度になるように燃料供給を制御した際には、実施例1乃至3の構成は、比較例の構成よりも大きな出力密度が得られている点で、効果が高い。
【0117】
なお、図11に示した測定結果では、比較例に対する相対値のみが示されているが、出力密度の絶対値では、どの構成であっても45℃制御よりも50℃制御の方が高い出力密度が得られる。
【0118】
以上説明したように、この実施の形態によれば、燃料電池1の温度を低く抑制した場合においても、安定して高い出力を得ることが可能となる。
【0119】
上述した実施形態の燃料電池1は、各種の液体燃料を使用した場合に効果を発揮し、液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、燃料を面方向に分散させつつ供給する燃料分配板31は、特に燃料濃度が濃い場合に有効である。このため、実施形態の燃料電池1は、濃度が80wt%以上のメタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる。したがって、実施形態は、メタノール濃度が80wt%以上のメタノール水溶液や純メタノールを液体燃料として用いた燃料電池1に好適である。
【0120】
さらに、上述した実施形態は、本発明をセミパッシブ型の燃料電池1に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、内部気化型の純パッシブ型の燃料電池に対しても適用可能である。
【0121】
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、膜電極接合体に供給される燃料の全てが液体燃料Fの蒸気、全てが液体燃料F、または一部が液体状態で供給される液体燃料Fの蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合わせたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除したりする等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
1…燃料電池
2…膜電極接合体 13…アノード 16…カソード 17…電解質膜
18…集電体 18A…アノード集電部 18C…カソード集電部
21…カバープレート 21H…開口部
3…燃料供給機構 30…容器 31…燃料分配板 35…燃料拡散板
40…熱伝導体 40H…貫通孔
50…絶縁体(気液分離膜または燃料拡散板)
60…スペーサ 61…空気層
70…アノードフィルム 70H…開孔
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体燃料を用いた燃料電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
【0003】
高温で作動する燃料電池において、燃料電池を収納する機器の筐体が高温になることを防止する目的で、燃料電池を覆う断熱体の外表面を伝熱体で覆う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方で、燃料電池セパレータなどの用途に好適な高い熱伝導性を有する熱伝導性成形体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特に、この熱伝導性成形体によれば、熱伝導率の異方性により電気・電子機器用の筐体、部材とした場合に、筐体の放熱設計などにおいて有用であることが開示されている。
【0005】
単位電池を複数個積層して積層体を形成してなる燃料電池において、温度分布を均一化する目的で、平面方向の熱伝導率が積層方向の熱伝導率よりも大きいガス分離板と単位電池とを交互に積層して、上下端部に冷却板を配置した構成が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−202611号公報
【特許文献2】特開2006−49878号公報
【特許文献3】特開平9−289026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池として、例えば、メタノールを燃料として用いた直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源として有望視されている。
【0008】
DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。これらのうち、内部気化型等のパッシブ方式はDMFCの小型化に対して有利である。パッシブ型DMFCは、例えば燃料極、電解質膜および空気極を有する膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を備えて構成されている。
【0009】
このような膜電極接合体の面内において、意図しない温度ばらつきが生じることがある。特に、膜電極接合体の周辺部では比較的放熱が促進されるのに対して、中央部では熱が逃げにくく、周辺部と中央部とで大きな温度差が生じやすくなる。
【0010】
また、このような温度差に伴って液体の燃料が気化して生じる燃料の気化成分の蒸気圧にも差が生じ、膜電極接合体において発電反応に必要な燃料の授受が阻害され、結果として、出力の低下や不安定化を招くおそれがある。このような気化成分の供給の不安定は、燃料電池全体の温度が高く且つ気化燃料の蒸気圧が全体に高く保たれている場合には余り生じない。しかし、携帯用電子機器等の電源として用いる燃料電池では、安全性等の観点から、燃料電池全体の温度も低く抑制する必要があり、この場合には、気化成分の蒸気圧が全体に低いため、僅かな温度差による蒸気圧の差が、出力の安定性に対して大きく影響することになる。
【0011】
この発明の目的は、安定して高い出力を得ることが可能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の一態様によれば、
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置されたアノードと、前記電解質膜の他方の面に配置されたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に配置されるとともに前記燃料供給機構に接する熱伝導体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【0013】
この発明の他の態様によれば、
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置されたアノードと、前記電解質膜の他方の面に配置されたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に配置された気液分離膜と、
前記燃料供給機構と前記気液分離膜との間に配置されるとともに前記気液分離膜から離間した熱伝導体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、安定して高い出力を得ることが可能な燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態における燃料電池のカソード側の外観を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示した燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示した燃料電池の燃料供給機構における燃料分配板を膜電極接合体が重なる上面から見た上面図である。
【図4】図4は、図2に示した燃料電池に適用可能な熱伝導体の構造を概略的に示す斜視図である。
【図5】図5は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図6】図6は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図7】図7は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図8】図8は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図9】図9は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図10】図10は、他の実施形態における燃料電池を第1方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図11】図11は、性能評価を行った際の出力密度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施の形態に係る燃料電池について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、この実施の形態に係る燃料電池(DMFC)1のカソード側の外観を示す平面図である。
【0018】
この燃料電池1は、略矩形平板状に形成されている。図1に示した平面図では、燃料電池1は、長方形状であり、第1方向Xに沿って延びた一対の長辺L1及び長辺L2と、第1方向Xに直交する第2方向Yに沿って延びた一対の短辺S1及び短辺S2と、を有している。
【0019】
燃料電池1は、起電部を構成する膜電極接合体(MEA)2を備えている。この膜電極接合体2は、略矩形状に形成されている。この膜電極接合体2は、その詳細な構造については後に説明するが、ここでは複数、たとえば4つの単セルCL1乃至CL4を備えている。単セルCL1乃至CL4のそれぞれは、同一平面上において、第1方向Xに沿って延在した略長方形状であり、第2方向Yに間隔をおいて並んで配置されている。
【0020】
膜電極接合体2のカソード側に位置する燃料電池1の表面には、カバープレート21が配置されている。カバープレート21は、外観が略矩形状であり、例えばステンレス鋼(SUS)によって形成されている。このカバープレート21には、主として酸化剤である空気、特に酸素の取り込みを可能とする複数の開口部21Hが形成されている。
【0021】
なお、膜電極接合体2のアノード側には、膜電極接合体2に燃料を供給する燃料供給機構(図示しない)が配置されている。カバープレート21は、燃料供給機構との間に膜電極接合体2を保持した状態で、燃料電池1の各長辺L1及びL2、及び、各短辺S1及びS2において燃料供給機構に締結されている。
【0022】
図2は、図1に示した燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0023】
燃料電池1は、膜電極接合体2を備えている。膜電極接合体2は、アノード(燃料極)13と、カソード(空気極あるいは酸化剤極)16と、アノード13とカソード16とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜17と、を備えて構成されている。アノード13は、アノード触媒層11と、このアノード触媒層11に積層されたアノードガス拡散層12とを有している。アノード触媒層11は、電解質膜17の一方の面17Aに積層されている。カソード16は、カソード触媒層14と、このカソード触媒層14に積層されたカソードガス拡散層15とを有している。カソード触媒層14は、電解質膜17の他方の面17Cに積層されている。
【0024】
図1に示した各単セルCL1乃至CL4は、電解質膜17を挟んで対向するアノード13及びカソード16によって構成されている。つまり、図1に示した4つの単セルCL1乃至CL4を備えた膜電極接合体2では、詳述しない4つのアノード13が単一の電解質膜17における一方の面17Aの上において第2方向Yに間隔をおいて配置され、また、4つのカソード16が電解質膜17における他方の面17Cの上において第2方向Yに間隔をおいて配置されている。
【0025】
このような膜電極接合体2は、本実施の形態においては集電体18によって挟持されている。集電体18は、ベース絶縁層BF、ベース絶縁層BFの上に配置されたアノード集電部18A、及び、ベース絶縁層BFのアノード集電部18Aが配置された同一面上に配置されたカソード集電部18Cを有している。
【0026】
アノード集電部18A及びカソード集電部18Cは、例えば、金、銅、ニッケルなどの金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などをそれぞれ使用して形成可能であり、さらには、グラファイト(黒鉛)などの炭素質材料を使用して形成しても良い。
【0027】
図2に示した例では、アノード集電部18Aは、アノードガス拡散層12に積層されている。このアノード集電部18Aには、アノード13に向けて発電反応に必要な燃料の供給を可能とする開口部18AHが形成されている。また、カソード集電部18Cは、カソードガス拡散層15に積層されている。このカソード集電部18Cには、カソード16に向けて発電反応に必要な酸素の供給を可能とするとともに発電反応に伴って生成された二酸化炭素や過剰な水蒸気などの気体の外部への排出を可能とする開口部18CHが形成されている。このような構成の集電体18は、図1に示したような膜電極接合体2に備えられた複数の単セルCL1乃至CL4を電気的に直列に接続している。
【0028】
集電体18は、本実施の形態のように、集電体18を二つ折りして膜電極接合体2を挟持した構造となっているが、この構造に限られるものではない。例えば、アノード集電部18Aおよびカソード集電部18Cを個々に独立して設けた個別の集電体を準備し、その個別の集電体により膜電極接合体2を挟持し、それら集電体の集電部同士を導電性の接続部材により、図1に示したような膜電極接合体2に備えられた複数の単セルCL1乃至CL4を電気的に直列に接続しても良い。
【0029】
膜電極接合体2は、電解質膜17の一方の面17Aと集電体18との間及び電解質膜17の他方の面17Cと集電体18との間にそれぞれ挟持されたゴム製のOリング等のシール部材19によってシールされている。これにより、膜電極接合体2からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止されている。なお、膜電極接合体2において、電解質膜17のうち、アノード触媒層11及びカソード触媒層14にともに接しておらず、かつシール部材19によって囲まれた内側に相当する位置に、1個乃至複数個のガス排出孔(図示せず)を設けても良い。
【0030】
膜電極接合体2のカソード16の側において、集電体18とカバープレート21との間には、通気性を有する絶縁材料によって形成された板状体20が配置されている。この板状体20は、主に保湿層として機能する。すなわち、この板状体20は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて水の蒸散を抑制するとともに、カバープレート21の開口部21Hから取り込んだ空気のカソード触媒層14への取入れ量を調整し且つ空気の均一拡散を促進するものである。このような板状体20は、例えば、ポリエチレン製多孔質フィルム等からなる平板で構成される。
【0031】
膜電極接合体2のアノード13の側には、燃料供給機構3が配置されている。つまり、膜電極接合体2は、アノード13の側に配置された燃料供給機構3とカソード16の側に配置されたカバープレート21との間に配置されている。燃料供給機構3は、膜電極接合体2のアノード13に対して燃料を供給するように構成されているが、特に、特定の構成に限定されるものではない。このような燃料供給機構3は、液体燃料Fを収容する燃料収容部4に流路5を介して接続されている。
【0032】
流路5は、配管などで構成されている。流路5は、燃料供給機構3や燃料収容部4と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料供給機構3と燃料収容部4とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料Fの流路であってもよい。すなわち、燃料供給機構3は、流路等を介して燃料収容部4と連通されていればよい。
【0033】
燃料収容部4に収容された液体燃料Fは、重力を利用して流路5を介して燃料供給機構3まで落下させて送液することができる。また、流路5に多孔体等を充填して、毛細管現象により燃料収容部4に収容された液体燃料Fを燃料供給機構3まで送液してもよい。さらに、流路5の一部にポンプ6を介在させて、燃料収容部4に収容された液体燃料Fを燃料供給機構3まで強制的に送液してもよい。
【0034】
なお、適用されるポンプ6は、燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部4から燃料供給機構3に向けて液体燃料Fを送液する燃料供給ポンプである。燃料供給機構3から膜電極接合体2に供給された燃料は、発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部4に戻されることはない。ポンプ6の種類は、特に限定されるものではないが、少量の液体燃料Fを制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能なものが好ましい。
【0035】
この実施の形態の燃料電池1は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料の供給にポンプ6を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。図2に示す燃料電池1は、例えばセミパッシブ型と呼称される方式を適用したものである。
【0036】
また、燃料供給機構3において、ポンプ6と直列に燃料遮断バルブを配置してもよい。また、燃料収容部4や流路5には、燃料収容部4内の圧力を外気とバランスさせるバランスバルブを装着してもよい。
【0037】
燃料収容部4には、膜電極接合体2に応じた液体燃料Fが収容されている。液体燃料Fとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。なお、液体燃料Fは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Fは、例えば、エタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料Fであってもよい。いずれにしても、燃料収容部4には、膜電極接合体2に応じた液体燃料Fが収容される。
【0038】
以下に、燃料供給機構3の一例について説明する。
【0039】
燃料供給機構3は、箱状に形成された容器30、及び、膜電極接合体2のアノード13の面方向(つまり、図中のX−Y平面内の方向)に燃料を分散並びに拡散させつつ供給する燃料分配板31を備えている。容器30は、流路5が接続される図示しない燃料導入口を有している。このような容器30を形成する樹脂材料としては、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルペンテン、ポリフェニルサルファイド(PPS)などが挙げられる。また、この容器30は、樹脂材料に代えてステンレス(SUS)や金属クラッド材などの金属材料を用いて形成することも可能である。
【0040】
燃料分配板31は、容器30の内側に形成された凹部に配置されている。この燃料分配板31は、平板状に形成されている。このような燃料分配板31には、複数の燃料排出口33が形成されている。このような燃料分配板31は、容器30の燃料導入口から供給された液体燃料をアノード13に向けて燃料排出口33から排出する。このような燃料分配板31は、液体燃料やその気化成分を透過させない材料によって形成され、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリイミド系樹脂などの各種樹脂材料を用いて形成されている。
【0041】
なお、この燃料分配板31は、たとえば、液体燃料とその気化成分とを分離し、気化成分を膜電極接合体2に向けて透過させる気液分離膜で構成しても良い。この気液分離膜には、例えば、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などが適用可能である。
【0042】
燃料供給機構3と膜電極接合体2のアノード13との間には、熱伝導体40が配置されている。この熱伝導体40は、燃料供給機構3に接している。このような熱伝導体40は、X−Y平面に略平行な平板状に形成されている。ここで、『熱伝導体40が燃料供給機構3に接している』状態とは、X−Y平面における熱伝導体40の下面が燃料供給機構3に接している状態に相当し、図2に示した例では、熱伝導体40は、燃料分配板31に接している。
【0043】
上述した熱伝導体40としては、液体燃料や水、酸素等によって溶解や腐食、酸化等を生じることがなく、かつ熱伝導率の高い材料によって形成されることが望ましい。また、熱伝導体40は、少なくとも燃料の気化成分を透過するための通気性を確保する必要があり、多孔質性の材料あるいは貫通孔を有する材料によって形成されている。このうち、多孔質性の熱伝導体40としては、炭素繊維素材が好適であり、例えば、東レ社製のカーボンペーパー(TGP−Hシリーズ)や、SGLカーボンジャパン社製のカーボンペーパー(GDLシリーズ)などが適用可能である。また、貫通孔を有する熱伝導体40としては、黒鉛(グラファイト)などの炭素質の材料をシート状に加工したグラファイトシート(例えば、グラフテック社製のグラファイトシート(eGrafシリーズ)に貫通孔を形成したものなどが適用可能である。図2に示した例では、熱伝導体40には貫通孔40Hが形成されている。
【0044】
さらに、熱伝導体40としては、熱伝導性に優れた金、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン等の金属、または、ステンレスなどのこれらの金属の合金に貫通孔を形成したものなどが適用可能である。
【0045】
熱伝導体40として金属材料を用いた場合、カソード16で生成した水や、アノードにおける反応の副生成物であるギ酸等によって酸化、腐食を生じる可能性がある。それを防ぐために、熱伝導体40としては、ステンレス等の腐食しにくい材料を用いるか、または、熱伝導体40の表面に、金などの酸化しにくい金属をメッキしたり、炭素質の物質や、樹脂もしくはゴムでコーティングを施したり、液体燃料の気化成分に溶解しない塗料で塗装する等しても良い。
【0046】
上記のようにコーティングを施すための樹脂もしくはゴムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、シリコーン樹脂等の樹脂、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム等のゴムが使用可能である。これらの樹脂やゴムは、金属材料に比べて熱伝導率が低いため、コーティングを施す場合には、コーティングする樹脂もしくはゴムはできるだけ薄くするのが望ましい。
【0047】
また、図2に示した例のように、熱伝導体40がアノード集電部18Aに接する構成の場合、膜電極接合体2の単セル間でのショートを防止するために、熱伝導体40が絶縁体として構成される、あるいは、熱伝導体40の少なくともアノード集電部18Aに接する面が上述したような樹脂やゴムなどの絶縁体によって覆われていることが望ましい。
【0048】
この熱伝導体40は、燃料供給機構3に平行な平面方向(つまり、図2に示した例ではX−Y平面と平行な方向)の熱伝導率λplが、10W/mK以上であることが望ましい。熱伝導率λplの値が大きいほど、X−Y平面と平行な面内での熱分布の均一化に対する効果が大きいためである。
【0049】
更に、この熱伝導体40において、その厚み方向(つまり、図2に示した例ではZ方向)の熱伝導率λtよりも面内での熱伝導率λplの方が大きい熱伝導異方性を有していればなお望ましい。これは、厚み方向の熱伝導率λtの方が面内での熱伝導率λplよりも大きい場合には、厚み方向への熱の移動が促進され、面内つまり膜電極接合体2の高温部から低温部への熱の移動が阻害されてしまうおそれがあるためである。なお、ここで説明した熱伝導率λpl及びλtは、レーザーフラッシュ法によって測定したものである。
【0050】
また、この熱伝導体40において、その中央部での気孔率(または開口率)が周辺部より小さいことが望ましい。すなわち、膜電極接合体2のアノード13の側に配置される熱伝導体40は、アノード13への燃料の導入を阻害しないように通気性を有している。その一方で、熱伝導体40の気孔率は、その熱伝導率をコントロールするファクターの1つであり、気孔率が高いほど熱伝導体40の内部が気体成分で満たされ、放熱性能の低下を招く。つまり、気孔率が高いほど熱伝導率は低下する。このように、熱伝導体40には、熱伝導性を確保しつつ、通気性を確保することが要求される。
【0051】
膜電極接合体2の面内の温度分布は、中央部で高く、その周辺部(つまり、容器30に近接する部分)で低い場合が多い。これに対応するため、熱伝導体40においては、その中央部での気孔率が周辺部より小さいことが望ましい。つまり、熱伝導体40において、膜電極接合体2の中央部に対向する部分では比較的熱伝導率が高く、熱の移動を促進するとともに、周辺部に対向する部分では比較的熱伝導率が低い半面、通気性が高く発電反応を促進することが可能となる。
【0052】
このとき、熱伝導体40は、その気孔率が中央部から周辺部に向かって連続的に大きくなるように構成しても良い。この場合、熱伝導体40の面内での熱伝導率が一定ではなく、中央部から周辺部にかけて連続的に大きくなる。
【0053】
図2に示したように、熱伝導体40に形成された貫通孔40Hは、燃料分配板31の燃料排出口33の直上に位置している。
【0054】
図3は、燃料供給機構3における燃料分配板31の上面図である。
【0055】
燃料分配板31は、第1方向Xに延びた略長方形状に形成されている。このような燃料分配板31には、燃料注入口32及び燃料排出口33が形成されている。燃料注入口32は、例えば1箇所に形成されている。この燃料注入口32は、容器30の燃料導入口30Aに連通している。燃料排出口33は、複数、ここでは128個(16×8)形成されている。これらの燃料排出口33は、燃料注入口32と流路34を介して接続されている。この流路34は、燃料分配板31の容器30と密着する面に形成された溝であっても良いし、燃料分配板31の内部を通る管であっても良く、特に形態に制限はない。
【0056】
図4は、熱伝導体40の斜視図である。
【0057】
この熱伝導体40は、第1方向Xに延びた略長方形状に形成されている。このような熱伝導体40には、複数、ここでは128個(16×8)の貫通孔40Hが形成されている。これらの貫通孔40Hのそれぞれは、燃料排出口33の直上に位置している。このような貫通孔40Hは、燃料排出口33の径と同等以上の径を有している。なお、熱伝導体40には、図示した128個の貫通孔40Hに加えて、さらに複数の貫通孔が形成されても良い。熱伝導体40に形成される貫通孔40Hの個数は、熱伝導体40に要求される熱伝導性を考慮して適宜設定しても良い。
【0058】
上述した燃料電池1においては、燃料収容部4から流路5を介して燃料分配板31に導入された液体燃料Fは、液体成分のまま、もしくは液体成分と気体成分とが混在する状態で、燃料分配板31の燃料排出口33から排出される。排出された燃料は、熱伝導体40及び集電体18のアノード集電部18Aを介して膜電極接合体2のアノード13に供給される。
【0059】
アノード13に供給された燃料の気体成分は、アノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起させる、あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
【0060】
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
この反応で生成した電子(e-)は、集電体18を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、集電体18を経由してカソード16に導かれる。(1)式の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は、電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には、酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と下記の(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
【0061】
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
上述した燃料電池1の発電反応において、発電する電力を増大させるためには触媒反応を円滑に行わせるとともに、膜電極接合体2の電極全体に均一に燃料を供給し、電極全体をより有効に発電に寄与させることが重要となる。
【0062】
本実施形態によれば、膜電極接合体2の面内においては、その中央部は比較的放熱されにくく高温となりやすく、逆に、その周辺部は中央部と比較して低温となりやすい。この場合、熱伝導体40を配置したことにより、膜電極接合体2の中央部から周辺部への熱移動が促進され、膜電極接合体2の中央部と周辺部とでの温度差を低減することが可能となる。つまり、膜電極接合体2の面内における温度分布を均一化することが可能となる。
【0063】
また、温度差に起因した液体燃料の気化成分の蒸気圧差も低減され、膜電極接合体2の面内の中央部及び周辺部のいずれにおいても、発電反応に必要な物質の授受を促進することが可能となる。特に、携帯用電子機器などの電源として用いる燃料電池1において、燃料電池全体の温度を低く抑制したとしても、蒸気圧差が低減されているため、安定して高い出力を得ることが可能となる。
【0064】
次に、本実施形態で採用可能な燃料電池1のバリエーションについて説明する。なお、図2に示した例と同一の構成については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
図5は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0066】
図5に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50が配置されている点で相違している。この絶縁体50は、熱伝導体40の上面に接し、且つ、アノード集電部18Aの背面側に接している。このような絶縁体50は、例えば、燃料拡散板あるいは気液分離膜として機能するものが適用可能である。また、この絶縁体50は、熱伝導体40と略同一の形状であって且つ略同一の外形寸法に形成されている。
【0067】
燃料拡散板である絶縁体50は、例えば、ポリエチレン製多孔質フィルム等からなる平板で構成される。このような絶縁体50は、気化した燃料の平面方向(図1のX−Y平面と平行な方向)に拡散させ、このような気化燃料の供給の均一性を促進する役割を果たす。
【0068】
気液分離膜である絶縁体50は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の微多孔膜などの上述したような各種材料からなる平板で構成される。このような絶縁体50は、燃料供給機構3からアノード13に向けて供給される燃料のうち、液体燃料とその気化成分とを分離し、燃料の気化成分をアノード13に向けて透過するものである。
【0069】
図6は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0070】
図6に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に空気層61を形成するためのスペーサ60が配置されている点で相違している。このスペーサ60は、燃料供給機構3から供給された燃料が膜電極接合体2に向かって供給される経路よりも外側に配置されている。
【0071】
すなわち、スペーサ60は、熱伝導体40の貫通孔40Hよりも外側の外縁部に沿った上面に接し、且つ、アノード集電部18Aの外縁部に沿った背面側に接している。このようなスペーサ60は、例えばOリングなどの絶縁性の弾性体によって形成されている。
【0072】
図7は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0073】
図7に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50として気液分離膜が配置され、しかも、燃料供給機構3が燃料分配板31と熱伝導体40との間に配置された燃料拡散板35を有している点で相違している。
【0074】
絶縁体50は、平板状に形成され、熱伝導体40の上面に接し、且つ、アノード集電部18Aの背面側に接している。また、この絶縁体50は、熱伝導体40と略同一の形状であって且つ略同一の外形寸法に形成されている。このような絶縁体50は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の微多孔膜などの上述したような各種材料で構成される。
【0075】
燃料拡散板35は、平板状に形成され、燃料分配板31の上面に接し、且つ、熱伝導体40の背面に接している。このような燃料拡散板35は、例えば、ポリエチレン製多孔質フィルム等で構成される。
【0076】
なお、この図7に示した例においては、絶縁体50として気液分離膜を適用したが、図5で示した例と同様に絶縁体50として燃料拡散板を適用しても良い。また、この例においては、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50を配置したが、図6に示した例と同様に空気層61を形成するためのスペーサ60が配置されても良い。
【0077】
図8は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0078】
図8に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50としての気液分離膜及びアノードフィルム70が配置された点で相違している。
【0079】
アノードフィルム70は、平板状に形成され、熱伝導体40の上面に接している。このアノードフィルム70は、熱伝導体40と略同一の形状であって且つ略同一の外形寸法に形成されている。
【0080】
このアノードフィルム70には、複数の開孔70Hが形成されている。ここでは、アノードフィルム70には、燃料分配板31の燃料排出口33と同数である128個(16×8)の開孔70Hが形成されている。これらの開孔70Hのそれぞれは、燃料排出口33の直上に位置している。このような開孔70Hは、燃料排出口33の径と同等以上の径を有している。なお、アノードフィルム70には、128個の開孔70Hに加えて、さらに複数の開孔が形成されても良い。
【0081】
このようなアノードフィルム70は、メタノールなどの燃料に対して十分な耐性を有する材料によって形成され、例えば、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、液晶ポリマー(LCP)などによって形成されている。また、アノードフィルム70は、表面に耐酸性処理が施された金属板や、ガラス、シリコンなどを用いて形成しても良い。
【0082】
絶縁体50は、平板状に形成され、アノードフィルム70の上面に接し、アノードフィルム70の開孔70Hを塞ぐように配置されている。この絶縁体50は、熱伝導体40及びアノードフィルム70と略同一の形状であって且つ略同一の外形寸法に形成されている。
【0083】
図9は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0084】
図9に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50及び空気層61を形成するためのスペーサ60が配置された点で相違している。
【0085】
絶縁体50は、例えば、気液分離膜であり、平板状に形成されている。この絶縁体50は、アノード集電部18Aの背面側に接している。
【0086】
スペーサ60は、図6に示した例と同様に、燃料供給機構3から供給された燃料が膜電極接合体2に向かって供給される経路よりも外側に位置し、熱伝導体40の貫通孔40Hよりも外側の外縁部に沿った上面に接し、且つ、絶縁体50の外縁部に沿った背面に接している。
【0087】
図10は、他の実施形態における燃料電池1を第1方向Xに沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0088】
図10に示した例は、図2に示した例と比較して、熱伝導体40と集電体18との間に絶縁体50としての気液分離膜及びアノードフィルム70が配置され、且つ、燃料供給機構3が燃料分配板31と熱伝導体40との間に配置された燃料拡散板35を有している点で相違している。
【0089】
燃料拡散板35は、平板状に形成され、燃料分配板31の上に配置され、燃料分配板31に形成されたすべての燃料排出口33に重なっている。熱伝導体40は、燃料拡散板35の上に配置されている。図示した例では、燃料拡散板35と熱伝導体40とが接している。熱伝導体40に形成された貫通孔40Hは、燃料排出口33の直上に位置している。
【0090】
アノードフィルム70は、熱伝導体40の上に配置されている。図示した例では、熱伝導体40とアノードフィルム70とは接している。アノードフィルム70に形成された開孔70Hは、燃料排出口33の直上に位置している。つまり、燃料排出口33、貫通孔40H、及び、開孔70Hは、Z方向に沿って同軸上に位置している。
【0091】
気液分離膜である絶縁体50は、平板状に形成され、アノードフィルム70の上面に接し、アノードフィルム70の開孔70Hを塞ぐように配置されている。図示した例では、絶縁体50は、アノード集電部18Aの背面側で接している。
【0092】
以上、図5乃至図10に示した各バリエーションにおいても、上記したのと同様の効果が得られる。
【0093】
《性能評価》
(実施例1)
アノード用触媒粒子(Pt:Ru=1:1)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをアノードガス拡散層12としての多孔質カーボンペーパ(55.5mm×8.7mmの長方形)に塗布することにより、厚さが100μmのアノード触媒層11を得た。
【0094】
カソード用触媒粒子(Pt)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、カソード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをカソードガス拡散層15としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより、厚さが100μmのカソード触媒層14を得た。
【0095】
なお、アノードガス拡散層12及びカソードガス拡散層15は、同一形状かつ同一の大きさであり、厚さも等しく、それぞれのガス拡散層に塗布されたアノード触媒層11及びカソード触媒層14も同一形状かつ同一の大きさである。
【0096】
上記したように作製したアノード触媒層11とカソード触媒層14との間に、電解質膜17として厚さが30μmで、含水率が10〜20重量%のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(商品名:nafion膜、デュポン社製)を、4つのアノードガス拡散層12および4つのカソードガス拡散層15が、それぞれの長手方向が略平行で、その間隔が1.2mmとなるように並んで配置し、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向するように位置を合わせた状態で、ホットプレスを施すことにより、膜電極接合体2を得た。
【0097】
このように作成した膜電極接合体2は、集電体18によって挟持され、アノードガス拡散層12とアノード集電部18Aとが対向するとともに、カソードガス拡散層15とカソード集電部18Cとが対向している。すなわち、カソード集電部18Cとして、カソードガス拡散層15の上に金箔を積層した。また、アノード集電部18Aとして、アノードガス拡散層12の上に金箔を積層した。これらのアノード集電部18A及びカソード集電部18Cは、上記した4対のアノード触媒層11とカソード触媒層14とが電気的に直列に接続されるように形成されている。なお、アノード集電部18Aには、燃料分配板31の燃料排出口33に対応した位置に開口が形成されている。また、カソード集電部18Cには、カバープレート21の開口部21Hに対応した位置に開口が形成されている。
【0098】
膜電極接合体2の電解質膜17と集電体18との間には、アノード側及びカソード側の双方について、シール部材19として、それぞれ幅が2mmのゴム製のOリングを挟持してシールを施した。
【0099】
カソード集電部18Cの上には、板状体20として、厚さが0.75mmであり、透気度が3.0秒/100cm3(JIS P 8117:2009に規定の測定方法による)であり、透湿度が3000g/(m2・24h)(JIS L 1099:2006 A−1に規定の測定方法による)のポリエチレン製多孔質フィルムを、長さ59.5mm、幅42.4mmの長方形に切り、積層した。外気からカソード16に供給される空気は、この板状体20を透過することとなる。
【0100】
この板状体20の上には、カバープレート21として、外形が64.5mm×44.5mmの長方形であり、厚さが0.3mmのステンレス板(SUS304)を積層した。このカバープレート21には、5.6mm×2.8mmの長方形の64個の開口部21Hが均等に形成されている。
【0101】
燃料分配板31の上には、熱伝導体40として、厚さが80μmのグラファイトシート(グラフテック社製;型番SS400)を59.5mm×42.4mmの長方形状に切り抜き、積層した。この熱伝導体40であるグラファイトシートは、平面方向(図5に示したX−Y平面に平行な方向)の熱伝導率λplが400W/mKであり、その厚み方向(図5のZ方向)の熱伝導率λtが3.5W/mKである。この熱伝導体40には、燃料分配板31の燃料排出口33に対応した位置に直径1.8mmの開口が形成されている。
【0102】
熱伝導体40とアノード集電部18Aとの間には、燃料拡散板である絶縁体50として、厚さ0.5mm、気孔率26%のポリエチレン製多孔質フィルムを挿入した。この絶縁体50は、熱伝導体40と同一形状かつ同一の大きさである。この絶縁体50は、電気的な絶縁と共に、気化した燃料を平面方向に拡散させ、気化燃料の供給の均一性を促進する役割を果たす。
【0103】
上述した構成の実施例1は、図5に示した燃料電池1に相当する。
【0104】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で説明した燃料電池1において、熱伝導体40とアノード集電部18Aとの間に絶縁体50を配置する代わりに、熱伝導体40とアノード集電部18Aとの間に、Z方向の距離が0.5mmの空気層61を形成するためのスペーサ60を設けた以外は、実施例1と同様である。
【0105】
上述した構成の実施例2は、図6に示した燃料電池1に相当する。
【0106】
(実施例3)
実施例3では、実施例1で説明した燃料電池1において、燃料分配板31と熱伝導体40との間に燃料拡散板35を配置し、熱伝導体40とアノード集電部18Aとの間に気液分離膜である絶縁体50を配置した以外は、実施例1と同様である。絶縁体50としては、厚さ0.1mm、気孔率68%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の微多孔膜を適用した。
【0107】
上述した構成の実施例3は、図7に示した燃料電池1に相当する。
【0108】
(比較例)
実施例1で説明した燃料電池1において、熱伝導体40を設けない以外は、実施例1と同様である。
【0109】
上述した実施例1乃至3及び比較例の各燃料電池1について、性能評価を行った。
【0110】
まず、温度が25℃、相対湿度が50%の環境の下、上記したように作成した各燃料電池1に、純度99.9重量%の純メタノールを供給した。ここで、カバープレート21の中央部の表面に熱電対を取り付け、この熱電対で測定した温度が45℃で一定になるように、純メタノールの供給量を制御した場合と、熱電対で測定した温度が50℃で一定になるように、純メタノールの供給量を制御した場合との2つの条件に対して、以下の測定を行なっている。
【0111】
そして、定電圧電源を接続して、燃料電池1の出力電圧が直列に接続した4対の単セルの中の1対あたり0.35Vで一定になるように、燃料電池1に流れる電流を制御し、このとき、燃料電池1から得られる出力密度を計測した。
【0112】
ここで、燃料電池1の出力密度(mW/cm2)とは、燃料電池1に流れる電流密度(発電部の面積1cm2当りの電流値(mA/cm2))に燃料電池1の出力電圧を乗じたものである。また、発電部の面積とは、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向している部分の面積である。ここで説明した各実施例及び比較例では、アノード触媒層11とカソード触媒層14の面積が等しく、かつ完全に対向しているので、発電部の面積はこれらの触媒層の面積に等しい。
【0113】
以上の測定結果を纏めて示したものが、図11である。なお、燃料電池1の出力密度を計測した結果は、それぞれの制御温度で測定した比較例の値を100とした相対値で示してある。
【0114】
カバープレート21の表面温度が45℃になるように燃料供給を制御した際には、比較例の出力密度を100%としたとき、実施例1では107%となり、実施例2では109%となり、実施例3では102%となり、いずれの実施例においても比較例より高い出力密度が得られることを確認した。
【0115】
カバープレート21の表面温度が50℃になるように燃料供給を制御した際には、比較例の出力密度を100%としたとき、実施例1では104%となり、実施例2では105%となり、実施例3では102%となり、いずれの実施例においても比較例より高い出力密度が得られることを確認した。
【0116】
このように、特に50℃よりも低い温度になるように燃料供給を制御した際には、実施例1乃至3の構成は、比較例の構成よりも大きな出力密度が得られている点で、効果が高い。
【0117】
なお、図11に示した測定結果では、比較例に対する相対値のみが示されているが、出力密度の絶対値では、どの構成であっても45℃制御よりも50℃制御の方が高い出力密度が得られる。
【0118】
以上説明したように、この実施の形態によれば、燃料電池1の温度を低く抑制した場合においても、安定して高い出力を得ることが可能となる。
【0119】
上述した実施形態の燃料電池1は、各種の液体燃料を使用した場合に効果を発揮し、液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、燃料を面方向に分散させつつ供給する燃料分配板31は、特に燃料濃度が濃い場合に有効である。このため、実施形態の燃料電池1は、濃度が80wt%以上のメタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる。したがって、実施形態は、メタノール濃度が80wt%以上のメタノール水溶液や純メタノールを液体燃料として用いた燃料電池1に好適である。
【0120】
さらに、上述した実施形態は、本発明をセミパッシブ型の燃料電池1に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、内部気化型の純パッシブ型の燃料電池に対しても適用可能である。
【0121】
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、膜電極接合体に供給される燃料の全てが液体燃料Fの蒸気、全てが液体燃料F、または一部が液体状態で供給される液体燃料Fの蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合わせたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除したりする等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0122】
1…燃料電池
2…膜電極接合体 13…アノード 16…カソード 17…電解質膜
18…集電体 18A…アノード集電部 18C…カソード集電部
21…カバープレート 21H…開口部
3…燃料供給機構 30…容器 31…燃料分配板 35…燃料拡散板
40…熱伝導体 40H…貫通孔
50…絶縁体(気液分離膜または燃料拡散板)
60…スペーサ 61…空気層
70…アノードフィルム 70H…開孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置されたアノードと、前記電解質膜の他方の面に配置されたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に配置されるとともに前記燃料供給機構に接する熱伝導体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
さらに、前記カソードに接するカソード集電部及び前記アノードと前記熱伝導体との間に配置されるとともに前記膜電極接合体の前記アノードに接するアノード集電部を有し、
前記アノード集電部と前記熱伝導体との間に配置された気液分離膜または燃料拡散板からなる絶縁体、あるいは、前記熱伝導体と前記アノード集電部との間に空気層を形成するためのスペーサと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置されたアノードと、前記電解質膜の他方の面に配置されたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に配置された気液分離膜と、
前記燃料供給機構と前記気液分離膜との間に配置されるとともに前記気液分離膜から離間した熱伝導体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
さらに、前記カソードに接するカソード集電部及び前記アノードと前記気液分離膜との間に配置されるとともに前記膜電極接合体の前記アノードに接するアノード集電部を有し、
前記気液分離膜との間に配置されたアノードフィルム、あるいは、前記熱伝導体と前記気液分離膜との間に空気層を形成するためのスペーサと、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記燃料供給機構は、前記アノードに向けて燃料を排出する複数の燃料排出口が形成された燃料分配板と、前記燃料分配板と前記熱伝導体との間に配置されるとともに前記熱伝導体と接する燃料拡散板と、を有することを特徴とする請求項1または3に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記熱伝導体には、前記燃料分配板に形成された燃料排出口の直上に位置する複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記アノードフィルムには、複数の開孔が形成されたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記熱伝導体は、前記燃料供給機構に平行な平面方向の熱伝導率が10W/mK以上であることを特徴とする請求項1または3に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記熱伝導体は、多孔質性の部材、あるいは、貫通孔を有する部材によって形成されたことを特徴とする請求項1または3に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記熱伝導体において、その中央部での気孔率または開口率が周辺部より小さいことを特徴とする請求項1または3に記載の燃料電池。
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置されたアノードと、前記電解質膜の他方の面に配置されたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に配置されるとともに前記燃料供給機構に接する熱伝導体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
さらに、前記カソードに接するカソード集電部及び前記アノードと前記熱伝導体との間に配置されるとともに前記膜電極接合体の前記アノードに接するアノード集電部を有し、
前記アノード集電部と前記熱伝導体との間に配置された気液分離膜または燃料拡散板からなる絶縁体、あるいは、前記熱伝導体と前記アノード集電部との間に空気層を形成するためのスペーサと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置されたアノードと、前記電解質膜の他方の面に配置されたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体のアノード側に配置され、前記アノードに向けて燃料を供給する燃料供給機構と、
前記燃料供給機構と前記アノードとの間に配置された気液分離膜と、
前記燃料供給機構と前記気液分離膜との間に配置されるとともに前記気液分離膜から離間した熱伝導体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
さらに、前記カソードに接するカソード集電部及び前記アノードと前記気液分離膜との間に配置されるとともに前記膜電極接合体の前記アノードに接するアノード集電部を有し、
前記気液分離膜との間に配置されたアノードフィルム、あるいは、前記熱伝導体と前記気液分離膜との間に空気層を形成するためのスペーサと、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記燃料供給機構は、前記アノードに向けて燃料を排出する複数の燃料排出口が形成された燃料分配板と、前記燃料分配板と前記熱伝導体との間に配置されるとともに前記熱伝導体と接する燃料拡散板と、を有することを特徴とする請求項1または3に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記熱伝導体には、前記燃料分配板に形成された燃料排出口の直上に位置する複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記アノードフィルムには、複数の開孔が形成されたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記熱伝導体は、前記燃料供給機構に平行な平面方向の熱伝導率が10W/mK以上であることを特徴とする請求項1または3に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記熱伝導体は、多孔質性の部材、あるいは、貫通孔を有する部材によって形成されたことを特徴とする請求項1または3に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記熱伝導体において、その中央部での気孔率または開口率が周辺部より小さいことを特徴とする請求項1または3に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−113882(P2011−113882A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270599(P2009−270599)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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