説明

燃料電池

【課題】簡単な構成で、集電性及びガスシール性を高めることができ、発電性能及び耐久性の向上を図ることを可能にする。
【解決手段】燃料電池10は、電解質・電極接合体26をセパレータ30で挟持する。電解質・電極接合体26は、電解質20の外周部がアノード電極24の外周面からアノード電極面側の周縁部を被覆する周縁被覆部20aを構成する。燃料電池10は、セパレータ30と周縁被覆部20aとに密着し、前記セパレータ30と電解質・電極接合体26のアノード電極24側との間に形成される空間78aを封止する封止部80aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体電解質形燃料電池(SOFC)は、電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、通常、電解質・電極接合体とセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池では、電解質・電極接合体を構成するアノード電極及びカソード電極に、反応ガスとしてそれぞれ燃料ガス(例えば、水素ガス)及び酸化剤ガス(例えば、空気)を供給するために、セパレータの面方向に沿って燃料ガス通路及び酸化剤ガス通路が形成されている。
【0004】
この種の燃料電池では、良好な集電性を維持して発電性能を向上させるとともに、反応ガスのガスシール性を高めるため、セパレータと電解質・電極接合体との密着性を確保する必要がある。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている固体酸化物形燃料電池スタックが知られている。この固体酸化物形燃料電池スタックは、図14に示すように、セル1を備えるとともに、前記セル1は、空気極2、電解質3及び燃料極4からなっている。酸化物からなる電解質3は、空気極2と燃料極4とで挟持されて平板型の構造を有しており、前記電解質3の外周部3aには、セルフレーム5が平面的に接合されている。
【0006】
セルフレーム5は、外周部に延在させて設けられた曲げ構造5aによって接合部が覆われた状態の封止構造とされている。曲げ構造5aは、セル1と接合した際に、前記セル1の外周に沿って電解質3から燃料極4の側部まで立ち下がった後、前記燃料極4の側部の位置から外側にL字状に折れ曲がるクランク形状からなる折れ目構造に成形されている。
【0007】
このシール構造は、セル1を構成する電解質3の外周部3aに平面状に接するセルフレーム5を配置し、且つ、前記電解質3と前記セルフレーム5の該電解質3に接する部分とを接合してガスシール性を確保している。さらに、セルフレーム5の電解質3面と当接する部分の外周部には、セル1の外周に沿って延在させて設けた曲げ構造5aにより、接合部への余計な応力が加わることを抑止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−21038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記の特許文献1では、セル1に積層方向に荷重が付与される際(図14中、矢印参照)、このセル1に印加される荷重により、電解質3の外周部3aからセルフレーム5を剥がす方向に力が作用している。従って、セルフレーム5が、電解質3の外周部3aから剥がれてしまい、所望のガスシール性及び集電性を確保することができないという問題がある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、集電性及びガスシール性を高めることができ、発電性能及び耐久性の向上を図ることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池に関するものである。
【0012】
この燃料電池では、電解質・電極接合体は、電解質の外周部がアノード電極の外周面からアノード電極面側の周縁部を被覆する周縁被覆部を構成するとともに、前記燃料電池は、セパレータと前記周縁被覆部とに密着し、前記セパレータと前記電解質・電極接合体の前記アノード電極側との間に形成される空間を封止する封止部を備えている。
【0013】
また、この燃料電池では、封止部は、セパレータに密着する第1密着部と、周縁被覆部に密着する第2密着部とを有するとともに、前記第1密着部は、前記封止部の一方の面に設けられ、且つ前記第2密着部は、前記封止部の前記一方の面とは表裏をなす他方の面に設けられることが好ましい。
【0014】
このため、セパレータと電解質・電極接合体との密着性を高めるために積層方向に付与される荷重により、封止部と前記電解質・電極接合体との密着性を高めるための荷重を印加することができる。従って、電解質・電極接合体とシール部とに個別の荷重付与機構を設ける必要がなく、燃料電池全体の構成が容易に簡素化するとともに、経済的である。
【0015】
さらに、この燃料電池では、封止部は、フレーム状の金属板であることが好ましい。これにより、封止部自体の弾性力を介して、前記封止部と電解質・電極接合体との密着性を高めるための荷重を増加させることができ、シール性の向上が一層確実に遂行可能になる。
【0016】
さらにまた、この燃料電池では、第1密着部の密着強度は、第2密着部の密着強度よりも大きく設定されることが好ましい。第1密着部は、封止部とセパレータとを密着させる部位であり、強固に密着させる必要があるからである。一方、第2密着部は、封止部と周縁被覆部とを密着させる部位であり、少なくとも互いに接していればよいからである。
【0017】
また、この燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であることが好ましい。高温型燃料電池に適用することにより、特に懸念される熱応力による挟持部や電解質・電極接合体の熱歪等を良好に抑制することが可能になる。
【0018】
さらに、この燃料電池は、平板積層型固体酸化物形燃料電池であることが好ましい。このため、特に、平板型SOFC(固体酸化物形燃料電池)のような高温型燃料電池に好適に適用することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、セパレータと電解質・電極接合体との密着性を高めるために積層方向に付与される荷重の方向と、封止部と前記電解質・電極接合体との密着性を高めるために作用する荷重の方向とは、同一方向になる。従って、集電性及びガスシール性を確保することができ、簡単な構成で、集電性による発電性能の向上と、ガスシール性による耐久性の向上とを図ることが可能になる。
【0020】
しかも、空間内に発生する燃料ガスの圧力は、封止部と電解質・電極接合体との密着性を高めるための荷重の方向に作用する。これにより、ガスシール性が一層確実に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池が複数積層された燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図4】前記燃料電池の、図2中、IV−IV線断面図である。
【図5】前記燃料電池を構成するセパレータの平面説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の分解斜視図である。
【図7】前記燃料電池の、図6中、VII−VII線断面説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の要部断面説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池が複数積層された燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図10】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図11】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図12】前記燃料電池の概略断面説明図である。
【図13】前記セパレータを構成する第2プレートの平面説明図である。
【図14】特許文献1に開示されている燃料電池スタックの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、固体酸化物形燃料電池であり、矢印A方向に複数積層されて燃料電池スタック12を構成する。この燃料電池スタック12は、定置用の他、車載用等の種々の用途に用いられている。燃料電池10は、後述するように、平板積層型固体酸化物形燃料電池である。
【0023】
図2〜図4に示すように、燃料電池10は、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質(電解質板)20の両面に、カソード電極22及びアノード電極24が設けられた電解質・電極接合体(MEA)26を備える。電解質・電極接合体26は、円板状に形成されるとともに、図4に示すように、アノード電極24は、カソード電極22よりも肉厚に形成され、電解質20の外周部は、前記アノード電極24の外周面からアノード電極面側の周縁部を被覆して周縁被覆部20aを構成する。
【0024】
電解質・電極接合体26には、カソード電極22に接して円板状カソード集電体22aと、アノード電極24に接して円板状アノード集電体24aが配設される。カソード集電体22a及びアノード集電体24aは、例えば、発泡金属により構成されるとともに、前記アノード集電体24aは、前記カソード集電体22aよりも小径に形成される。アノード集電体24aは、電解質20の周縁被覆部20aの開口径に対応する径寸法以下に設定される(図4参照)。
【0025】
燃料電池10は、一組のセパレータ30間に2個の電解質・電極接合体26を挟んで構成される。セパレータ30は、2個の電解質・電極接合体26を挟持する挟持部32A、32Bと、それぞれの一端が前記挟持部32A、32Bに連結される幅狭な橋架部34A、34Bと、前記橋架部34A、34Bの他端が一体に連結される反応ガス供給部36とを備える。
【0026】
挟持部32A、32Bと電解質・電極接合体26との間には、カソード集電体22aを介装して酸化剤ガス通路37が形成されるとともに、アノード集電体24aを介装して燃料ガス通路38が形成される。
【0027】
セパレータ30は、例えば、2枚のプレートである第1プレート40及び第2プレート42を備え、前記第1プレート40及び前記第2プレート42は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成され、ろう付け、拡散接合やレーザ溶接等により互いに接合される。なお、セパレータ30は、3枚以上のプレートを接合して構成してもよい。
【0028】
図2及び図5に示すように、第1プレート40は、反応ガス供給部36を構成する長円形状の第1反応ガス供給部材44を備える。この第1反応ガス供給部材44には、積層方向(矢印A方向)に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔46、燃料ガス通路38を流通した前記燃料ガスを導出するための燃料ガス導出連通孔48、及び酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔50が形成される。
【0029】
反応ガス供給部36は、燃料ガス供給連通孔46と酸化剤ガス供給連通孔50との間に、燃料ガス導出連通孔48が設けられるとともに、前記燃料ガス供給連通孔46、前記燃料ガス導出連通孔48及び前記酸化剤ガス供給連通孔50は、挟持部32A、32Bの中央と橋架部34A、34Bとを結ぶ仮想直線L1(図2中、矢印B方向)に交差する方向(例えば、直交する方向)に延在する仮想直線L2(矢印C方向)に沿って配列される(図2参照)。
【0030】
図5に示すように、第1反応ガス供給部材44の両長辺には、幅狭な第1橋架部材52a、52bを介して比較的大径な第1挟持部材54a、54bが一体に設けられる。第1橋架部材52a、52bの電極面に沿う短尺側の幅寸法(図中、寸法t)の内方には、燃料ガス導出連通孔48が設けられるとともに、前記第1橋架部材52a、52bの前記幅寸法の外方には、燃料ガス供給連通孔46及び酸化剤ガス供給連通孔50が設けられる。
【0031】
燃料ガス供給連通孔46には、一対の燃料ガス供給通路56a、56bの一端が連通する。燃料ガス供給通路56a、56bの他端は、第1橋架部材52a、52bの長手方向(矢印B方向)に沿って第1挟持部材54a、54b内に延在し、前記第1挟持部材54a、54bの中心で終端する。
【0032】
燃料ガス導出連通孔48には、一対の燃料ガス戻し通路58a、58bの一端が連通する。燃料ガス戻し通路58a、58bの他端は、第1橋架部材52a、52bの長手方向(矢印B方向)に沿って第1挟持部材54a、54bの外周縁部まで延在する。
【0033】
酸化剤ガス供給連通孔50には、一対の酸化剤ガス供給通路60a、60bの一端が連通する。酸化剤ガス供給通路60a、60bの他端は、第1橋架部材52a、52bの長手方向(矢印B方向)に沿って第1挟持部材54a、54b内に延在する。
【0034】
第1橋架部材52a、52bは、燃料ガス供給通路56a、56bと酸化剤ガス供給通路60a、60bとの間に、燃料ガス戻し通路58a、58bが設けられる。
【0035】
第1挟持部材54a、54bは、電解質・電極接合体26の直径よりも大径の円板形状に設定される。第1挟持部材54a、54bには、酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給孔62a、62bが、例えば、前記第1挟持部材54a、54bの中心に対して偏心した位置に、少なくとも1つずつ形成される。酸化剤ガス供給孔62a、62bは、酸化剤ガス供給通路60a、60bの他端に連通し、この酸化剤ガス供給通路60a、60bを介して、酸化剤ガス供給連通孔50に連通する。
【0036】
図2に示すように、第2プレート42は、反応ガス供給部36を構成する長円形状の第2反応ガス供給部材64を備える。第2反応ガス供給部材64には、燃料ガス供給連通孔46、燃料ガス導出連通孔48及び酸化剤ガス供給連通孔50が形成される。第2反応ガス供給部材64の両長辺には、幅狭な第2橋架部材66a、66bを介して比較的大径な第2挟持部材68a、68bが一体に設けられる。
【0037】
第2挟持部材68a、68bには、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給孔70a、70bが、例えば、前記第2挟持部材68a、68bの中心に、少なくとも1つずつ形成される。燃料ガス供給孔70a、70bは、燃料ガス供給通路56a、56bの他端に連通し、この燃料ガス供給通路56a、56bを介して、燃料ガス供給連通孔46に連通する。
【0038】
第2挟持部材68a、68bには、電解質・電極接合体26の外周外方を周回して燃料ガス戻し溝72a、72bが設けられる。この燃料ガス戻し溝72a、72bには、燃料ガス通路38と燃料ガス戻し通路58a、58bとを連通させる燃料ガス戻し孔74a、74bが、それぞれ少なくとも1つ以上連通する。第2挟持部材68a、68bの外周部には、アノード集電体24a側に突出する周回凸部76a、76bが形成される。
【0039】
図2及び図4に示すように、挟持部32A、32Bには、前記挟持部32A、32Bと電解質・電極接合体26のアノード電極24側との間に形成される空間78a、78bを封止する封止部材(封止部)80a、80bが設けられる。封止部材80a、80bは、フレーム状、例えば、略リング形状を有する金属板で形成される。
【0040】
封止部材80a、80bは、セパレータ30を構成する第2挟持部材68a、68bに密着する第1密着部82a、82bと、各電解質・電極接合体26の周縁被覆部20aに密着する第2密着部84a、84bとを有する。第1密着部82a、82bは、封止部材80a、80bの一方の面に設けられ、且つ第2密着部84a、84bは、前記封止部材80a、80bの前記一方の面とは表裏をなす他方の面に設けられる。
【0041】
第1密着部82a、82bの密着強度は、第2密着部84a、84bの密着強度よりも大きく設定される。具体的には、第1密着部82a、82bは、第2挟持部材68a、68bの周回凸部76a、76bに対して、例えば、レーザ溶接、ろう付け(銀やニッケル等)又は拡散接合により固着される。
【0042】
なお、封止部80a、80bは、先ず、第2密着部84a、84bの接合作業が行われた後、第1密着部82a、82bの接合作業(例えば、レーザ溶接)が行われる。また、以下に説明する他の封止部でも、同様に接合作業が行われる。
【0043】
第2密着部84a、84bは、各電解質・電極接合体26の周縁被覆部20aに対して、例えば、ガラスシールまたはろう付け(銀やニッケル等)により固着され、あるいは、単に当接により密着する。なお、第1密着部82a、82bの密着面積は、第2密着部84a、84bの密着面積よりも大きく設定されることが好ましい。
【0044】
図1に示すように、燃料電池スタック12は、複数の燃料電池10の積層方向一端にエンドプレート90を配置するとともに、積層方向他端に押圧プレート92A、92B及び94を配置する。押圧プレート92A、92Bは、挟持部32A、32Bに対応して配置される一方、押圧プレート94は、反応ガス供給部36に対応して配置される。
【0045】
押圧プレート92A、92Bは、複数のボルト96によりエンドプレート90に固定されることによって、矢印A方向に積層された電解質・電極接合体26及び挟持部32A、32Bに積層方向に比較的小さな締付荷重を付与する。押圧プレート94は、複数のボルトによりエンドプレート90に固定されることによって、矢印A方向に積層された反応ガス供給部36に積層方向に比較的大きな締付荷重を付与する。
【0046】
なお、図示しないが、エンドプレート90、押圧プレート92A、92B及び94のいずれかに、燃料ガスを供給するための配管、一旦使用された燃料ガスを導出するための配管及び酸化剤ガスを供給するための配管が配設される。
【0047】
このように構成される燃料電池スタック12の動作について、以下に説明する。
【0048】
図2及び図3に示すように、燃料ガス供給連通孔46に燃料ガス(例えば、水素含有ガス)が供給されるとともに、酸化剤ガス供給連通孔50に酸化剤ガスである酸素含有ガス(以下、空気ともいう)が供給される。燃料ガスは、燃料電池スタック12の燃料ガス供給連通孔46に沿って積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池10に設けられる燃料ガス供給通路56a、56bに沿ってセパレータ30の面方向に移動する。
【0049】
燃料ガスは、燃料ガス供給通路56a、56bから第2挟持部材68a、68bに形成された燃料ガス供給孔70a、70bを通って各燃料ガス通路38に導入される。
【0050】
燃料ガス供給孔70a、70bは、電解質・電極接合体26のアノード電極24の中心位置に設定されている。このため、燃料ガスは、燃料ガス供給孔70a、70bから各アノード電極24の中心に供給された後、燃料ガス通路38に沿って前記アノード電極24の外周部に向かって移動する。
【0051】
燃料ガス通路38を流通した燃料ガスは、図3及び図4に示すように、電解質・電極接合体26の外周外方を周回する燃料ガス戻し溝72a、72bに導入され、前記燃料ガス戻し溝72a、72bに案内されて燃料ガス戻し孔74a、74bに移動する。従って、燃料ガスは、燃料ガス戻し孔74a、74bを通って燃料ガス戻し通路58a、58bに供給され、前記燃料ガス戻し通路58a、58bから燃料ガス導出連通孔48に導出される。
【0052】
一方、空気は、燃料電池スタック12の酸化剤ガス供給連通孔50に沿って積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池10に設けられる酸化剤ガス供給通路60a、60bに沿ってセパレータ30の面方向に移動する(図2及び図3参照)。
【0053】
空気は、酸化剤ガス供給通路60a、60bから第1挟持部材54a、54bに形成された酸化剤ガス供給孔62a、62bを通って各酸化剤ガス通路37に導入される。酸化剤ガス供給孔62a、62bは、各電解質・電極接合体26のカソード電極22の略中心位置に設定されている。このため、空気は、酸化剤ガス供給孔62a、62bから各カソード電極22の略中心に供給された後、酸化剤ガス通路37に沿って前記カソード電極22の外周部に向かって移動する(図4参照)。
【0054】
従って、電解質・電極接合体26では、アノード電極24の電極面の中心側から周端部側に向かって燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極22の電極面の略中心側から周端部側に向かって空気が供給される。その際、酸化物イオンが電解質20を通ってアノード電極24に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0055】
この場合、第1の実施形態では、図4に示すように、電解質20の外周部は、アノード電極24の外周面からアノード電極面側の周縁部を被覆して周縁被覆部20aを構成している。そして、燃料電池10は、セパレータ30と各電解質・電極接合体26の周縁被覆部20aとに密着し、前記セパレータ30と前記電解質・電極接合体26のアノード電極24側との間に形成される空間78a、78bを封止する封止部材80a、80bを備えている。
【0056】
このため、セパレータ30と電解質・電極接合体26との密着性を高めるために積層方向に付与される荷重の方向(図4中、矢印参照)と、封止部材80a、80bと前記電解質・電極接合体26との密着性を高めるために作用する荷重の方向とは、同一方向になる。従って、燃料電池10は、集電性及びガスシール性を確保することができ、簡単な構成で、集電性による発電性能の向上と、ガスシール性による耐久性の向上とを図ることが可能になるという効果が得られる。
【0057】
しかも、空間78a、78b内に発生する燃料ガスの圧力は、封止部材80a、80bと電解質・電極接合体26との密着性を高めるための荷重の方向に作用する。これにより、特にカソード電極22側からアノード電極24側に空気が進入することを阻止することができ、セパレータ30や電解質・電極接合体26の耐久性の向上を図ることが可能になるという利点がある。
【0058】
また、第1の実施形態では、封止部材80a、80bは、セパレータ30を構成する第2挟持部材68a、68bに密着する第1密着部82a、82と、各電解質・電極接合体26の周縁被覆部20aに密着する第2密着部84a、84bとを有している。第1密着部82a、82bは、封止部材80a、80bの一方の面に設けられ、且つ第2密着部84a、84bは、前記封止部材80a、80bの前記一方の面とは表裏をなす他方の面に設けられている。
【0059】
このため、セパレータ30と電解質・電極接合体26との密着性を高めるために積層方向に付与される荷重により、封止部材80a、80bと前記電解質・電極接合体26との密着性を高めるための荷重を印加することができる。従って、電解質・電極接合体26とガスシール部とに、個別の荷重付与機構を設ける必要がなく、燃料電池10全体の構成が容易に簡素化するとともに、経済的であるという効果がある。
【0060】
さらに、封止部材80a、80bは、フレーム状の金属板で構成されている。これにより、封止部材80a、80b自体の弾性力を介して、前記封止部材80a、80bと電解質・電極接合体26との密着性を高めるための荷重を増加させることができ、シール性の向上が一層確実に遂行可能になる。
【0061】
さらにまた、封止部材80a、80bでは、第1密着部82a、82bの密着強度は、第2密着部84a、84bの密着強度よりも大きく設定されている。第1密着部82a、82bは、封止部材80a、80bとセパレータ30とを密着させる部位であり、強固に密着させる必要があるからである。一方、第2密着部84a、84bは、封止部材80a、80bと周縁被覆部20aとを密着させる部位であり、少なくとも互いに接していればよいからである。
【0062】
また、燃料電池10は、高温型燃料電池である固体酸化物形燃料電池を構成することにより、特に懸念される熱応力による挟持部32A、32Bや電解質・電極接合体26の熱歪等を良好に抑制することが可能になる。
【0063】
さらに、燃料電池10は、平板積層型固体酸化物形燃料電池である。このため、特に、平板型SOFC(固体酸化物形燃料電池)のような高温型燃料電池に好適に適用することが可能になる。
【0064】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池100の分解斜視図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0065】
燃料電池100は、一組のセパレータ102間に2個の電解質・電極接合体26を挟んで構成される。セパレータ102は、例えば、2枚のプレートである第1プレート40及び第2プレート104を備える。第2プレート104を構成する第2挟持部材68a、68bには、周回凸部が設けられていない。
【0066】
燃料電池100は、封止部材106a、106bを備える。封止部材106a、106bは、略リング形状を有し、第2挟持部材68a、68bに燃料ガス戻し溝72a、72bを周回して密着される第1密着部108a、108bと、各電解質・電極接合体26の周縁被覆部20aに密着する第2密着部110a、110bとを有する。
【0067】
図6及び図7に示すように、第1密着部108a、108bと第2密着部110a、110bとは、封止部材106a、106bの一方の面と他方の面とに設けられるとともに、前記第1密着部108a、108bの密着面積は、前記第2密着部110a、110bの密着面積よりも大きく設定される。封止部材106a、106bは、第1密着部108a、108bと第2密着部110a、110bとの間に傾斜部112a、112bを設ける。
【0068】
このように構成される第2の実施形態では、第2密着部110a、110bに傾斜部112a、112を設けることにより、第2プレート104を構成する第2挟持部材68a、68bには、周回凸部を設ける必要がなく、前記第2プレート104の構成が簡素化されるという効果が得られる。さらに、第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池120の要部断面説明図である。
【0070】
燃料電池120は、第2の実施形態に係る燃料電池110の封止部材106a、106bに代えて、封止部材122a、122bを備える。封止部材122a、122bは、略リング形状を有し、第2挟持部材68a、68bに燃料ガス戻し溝72a、72bを周回して密着される第1密着部124a、124bと、各電解質・電極接合体26の周縁被覆部20aに密着する第2密着部126a、126bとを、それぞれ一方の面と他方の面とに有する。封止部材122a、122bは、第1密着部124a、124bと第2密着部126a、126bとの間に屈曲部128a、128bを設ける。
【0071】
このように構成される第3の実施形態では、上記の第2の実施形態と同様の効果が得られる。なお、第1〜第3の実施形態では、2個の電解質・電極接合体26を挟持する2つの挟持部32A、32Bを有しているが、これに限定されるものではなく、例えば、1個の電解質・電極接合体26を挟持する1つの挟持部や、3個以上、例えば、4個の前記電解質・電極接合体26を挟持する4つの挟持部を備えていてもよい。
【0072】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池130が複数積層された燃料電池スタック132の斜視説明図である。
【0073】
図10〜図12に示すように、燃料電池130は、例えば、長円形状(又は楕円形状)に形成される電解質・電極接合体134を備えるとともに、前記電解質・電極接合体134は、一組のセパレータ136間に挟持される。電解質・電極接合体134には、カソード電極22に接して長円形状(又は楕円形状)のカソード集電体22aが配設される一方、アノード電極24に接して長円形状(又は楕円形状)のアノード集電体24aが配設される。
【0074】
セパレータ136は、電解質・電極接合体134を挟持する挟持部138と、第1連結部140を介して前記挟持部138に連結される幅狭な橋架部142と、前記橋架部142に第2連結部144を介して一体に連結される反応ガス供給部146とを備える。第1連結部140と第2連結部144とは、挟持部138を挟んで互いに対向する位置に設定される。
【0075】
橋架部142は、反応ガス供給部146と一体に挟持部138の外周全周を周回する。橋架部142と反応ガス供給部146とは、全体として挟持部138と同様に、長円形状(又は楕円形状)に形成される。
【0076】
挟持部138と電解質・電極接合体134のカソード電極22との間には、カソード集電体22aを介装して酸化剤ガス通路37が形成されるとともに、前記電解質・電極接合体134のアノード電極24とセパレータ136との間には、アノード集電体24aを介装して燃料ガス通路38が形成される。橋架部142には、反応ガス供給部146と直交する方向に突出して位置決め部148が設けられる。
【0077】
セパレータ136は、例えば、3枚のプレートである第1プレート150、第2プレート152及び第3プレート154を備え、前記第1プレート150、前記第2プレート152及び前記第3プレート154は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成され、ろう付け、拡散接合やレーザ溶接等により互いに接合される。なお、セパレータ136は、4枚以上のプレートを接合して構成してもよい。
【0078】
第1プレート150は、反応ガス供給部146を構成する長方形状又は長円形状の第1反応ガス供給部材156を備える。この第1反応ガス供給部材156には、積層方向(矢印A方向)に沿って燃料ガス供給連通孔46、燃料ガス導出連通孔48及び酸化剤ガス供給連通孔50が形成される。
【0079】
反応ガス供給部146は、燃料ガス供給連通孔46と燃料ガス導出連通孔48との間に、酸化剤ガス供給連通孔50が設けられるとともに、前記燃料ガス供給連通孔46、前記酸化剤ガス供給連通孔50及び前記燃料ガス導出連通孔48は、挟持部138の外形形状に沿って配列される。
【0080】
第1反応ガス供給部材156には、第2連結部144aを介して橋架部142を構成する幅狭な第1橋架部材158が連結されるとともに、前記第1橋架部材158には、第1連結部140aを介して比較的大径な第1挟持部材160が一体に設けられる。
【0081】
第1挟持部材160は、挟持部138を構成し、電解質・電極接合体134の直径よりも大径な長円形状に設定される。第1挟持部材160には、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給孔70が、例えば、前記第1挟持部材160の長円の各中心に対応して、少なくとも2つ形成される。第1挟持部材160の外周縁部には、燃料ガス通路38を流通した燃料ガスを戻すための複数の燃料ガス戻し孔74が、電解質・電極接合体134の外形形状の外周を周回する長円形状(又は楕円形状)の仮想線上に形成される。第1挟持部材160の外周部には、アノード集電体24a側に突出する周回凸部76が形成される。
【0082】
第2プレート152は、反応ガス供給部146を構成する長方形状又は長円形状の第2反応ガス供給部材162を備える。第2反応ガス供給部材162には、燃料ガス供給連通孔46、酸化剤ガス供給連通孔50及び燃料ガス導出連通孔48が設けられる。第2反応ガス供給部材162には、第2連結部144bを介して幅狭な第2橋架部材164が連結されるとともに、前記第2橋架部材164には、第1連結部140bを介して比較的大径な第2挟持部材166が一体に設けられる。
【0083】
第2橋架部材164の表面側(第1プレート150との接合面側)には、第1及び第2連結部140b、144bにより仕切られる各円弧状部分に燃料ガス供給通路56と燃料ガス戻し通路58とが設けられる。具体的には、橋架部142の一方の辺部142a側に燃料ガス供給通路56が形成されるとともに、前記橋架部142の他方の辺部142b側に燃料ガス戻し通路58が形成される。
【0084】
燃料ガス供給通路56は、一端が燃料ガス供給連通孔46に連通する一方、他端が第1連結部140bを通って第2挟持部材166内に延在し、前記第2挟持部材166の中央部で長円状の燃料ガス室56eを形成する。この燃料ガス室56eには、必要に応じて燃料ガスを改質するための改質触媒(例えば、発泡ニッケルと触媒)168が配設される。
【0085】
燃料ガス戻し通路58は、一端が燃料ガス導出連通孔48に連通する一方、他端が第1連結部140bを通って第2挟持部材166内に延在する。この他端は、第1挟持部材160の燃料ガス戻し孔74の位置に対応しており、第2挟持部材166の外周縁部に沿って長円形状(又は楕円形状)に形成される。
【0086】
図13に示すように、第2橋架部材164の裏面側(第3プレート154との接合面側)には、酸化剤ガス供給連通孔50に連通する酸化剤ガス供給通路60が設けられる。この酸化剤ガス供給通路60は、第1連結部140bを通って第2挟持部材166内に延在し、前記第2挟持部材166の中央部で長円状の終端部60eを形成する。
【0087】
図10に示すように、第3プレート154は、反応ガス供給部146を構成する長方形状又は長円形状の第3反応ガス供給部材170を備える。第3反応ガス供給部材170には、燃料ガス供給連通孔46、酸化剤ガス供給連通孔50及び燃料ガス導出連通孔48が設けられる。第3反応ガス供給部材170には、第2連結部144cを介して幅狭な第2橋架部材172が連結されるとともに、前記第2橋架部材172には、第1連結部140cを介して比較的大径な第3挟持部材174が一体に設けられる。
【0088】
第3挟持部材174には、酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給孔62が、例えば、前記第3挟持部材174の長円の各中心に対応して、少なくとも2つ形成される。酸化剤ガス供給孔62は、第2挟持部材166の終端部60eに対応する位置に設けられる。
【0089】
図10及び図12に示すように、挟持部138には、前記挟持部138と電解質・電極接合体134のアノード電極24側との間に形成される空間78を封止する封止部材176が設けられる。封止部材176は、第1の実施形態に使用される封止部材80a(80b)と同様に構成されているが、第2及び第3の実施形態に使用される封止部材106a(106b)又は122a(122b)と同様に構成してもよい。
【0090】
封止部材176は、長円リング形状を有し、セパレータ136を構成する第1挟持部材160の周回凸部76に密着する第1密着部178aと、各電解質・電極接合体26の周縁被覆部20aに密着する第2密着部178bとを有する。第1密着部178aは、封止部材176の一方の面に設けられ、且つ第2密着部178bは、前記封止部材176の前記一方の面とは表裏をなす他方の面に設けられる。
【0091】
図10に示すように、燃料電池130では、挟持部138の外周と橋架部142及び反応ガス供給部146の内周との間に、略リング状の空間部が形成される。この空間部は、酸化剤ガス通路37を流通した酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔180を構成する。
【0092】
図9に示すように、燃料電池スタック132は、複数の燃料電池130の積層方向一端(下端)にエンドプレート182を配置する。このエンドプレート182は、燃料電池130の外形形状と相似形状で且つ大きな寸法に設定される。エンドプレート182には、燃料ガス供給連通孔46、燃料ガス導出連通孔48及び酸化剤ガス供給連通孔50にそれぞれ連通する燃料ガス供給配管184、燃料ガス導出配管186及び酸化剤ガス供給配管188が設けられる。
【0093】
エンドプレート182には、挟持部138に積層方向に締め付け荷重を付与する第1荷重付与機構190が設けられる。第1荷重付与機構190は、最上位に配置される燃料電池130を構成する反応ガス供給部146上に配置される押圧部材192を備える。エンドプレート182上には、複数のボルト194が押圧部材192に挿入されて前記エンドプレート182にねじ込まれることにより、挟持部138に所望の締め付け荷重が付与される。各挟持部138間には、例えば、シール部材(図示せず)が介装される。エンドプレート182には、位置決めピン196が立設されており、この位置決めピン196が各セパレータ136の位置決め部148に係合する。
【0094】
最上位に配置される燃料電池130を構成する挟持部138上には、第2荷重付与機構として、例えば、錘部材198が載置される。矢印A方向に積層された反応ガス供給部146には、積層方向に挟持部138よりも大きな締付荷重が付与される。なお、第2荷重付与機構としては、錘部材198に代えて、例えば、ばね部材の弾性力を使用する構造や、熱により膨張する部材を使用する構造等が採用可能である。
【0095】
このように構成される燃料電池スタック132の動作について、以下に説明する。
【0096】
図9に示すように、エンドプレート182に設けられた燃料ガス供給配管184から燃料ガス供給連通孔46に燃料ガス(例えば、水素含有ガス)が供給されるとともに、酸化剤ガス供給配管188から酸化剤ガス供給連通孔50に酸化剤ガスである酸素含有ガス(以下、空気ともいう)が供給される。
【0097】
図11及び図12に示すように、燃料ガスは、燃料電池130の燃料ガス供給連通孔46に沿って積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池130に設けられる燃料ガス供給通路56に沿ってセパレータ136の面方向に移動する。
【0098】
燃料ガスは、挟持部138内に形成された燃料ガス室56eに導入され、この燃料ガス室56eに設けられた改質触媒168により改質される。改質された燃料ガスは、水素リッチガスとして第1挟持部材160に形成された一対の燃料ガス供給孔70を通って燃料ガス通路38に導入される。
【0099】
一対の燃料ガス供給孔70は、電解質・電極接合体134のアノード電極24の略中心位置に設定されている。このため、燃料ガスは、一対の燃料ガス供給孔70からアノード電極24の略中心に供給された後、燃料ガス通路38に沿って前記アノード電極24の外周部に向かって移動する。
【0100】
燃料ガス通路38を流通した燃料ガスは、電解質・電極接合体134の外周外方に形成された複数の燃料ガス戻し孔74に移動する。従って、燃料ガスは、燃料ガス戻し孔74を通って燃料ガス戻し通路58に供給され、前記燃料ガス戻し通路58を通って燃料ガス導出連通孔48に導出される。
【0101】
一方、空気は、燃料電池スタック132の酸化剤ガス供給連通孔50に沿って積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池130に設けられる酸化剤ガス供給通路60に沿ってセパレータ136の面方向に移動する。
【0102】
空気は、酸化剤ガス供給通路60の終端部60eに流通した後、第3挟持部材174に形成された一対の酸化剤ガス供給孔62を通って酸化剤ガス通路37に導入される。一対の酸化剤ガス供給孔62は、電解質・電極接合体134のカソード電極22の略中心位置に設定されている。このため、空気は、酸化剤ガス供給孔62からカソード電極22の略中心に供給された後、酸化剤ガス通路37に沿って前記カソード電極22の外周部に向かって移動する。
【0103】
従って、電解質・電極接合体134では、アノード電極24の電極面の中心側から周端部側に向かって燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極22の電極面の中心側から周端部側に向かって空気が供給される。その際、酸化物イオンが電解質20を通ってアノード電極24に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0104】
この場合、第4の実施形態では、図12に示すように、電解質20の外周部は、アノード電極24の外周面からアノード電極面側の周縁部を被覆して周縁被覆部20aを構成している。そして、燃料電池130は、セパレータ136と各電解質・電極接合体134の周縁被覆部20aとに密着し、前記セパレータ136と前記電解質・電極接合体134のアノード電極24側との間に形成される空間78を封止する封止部材176を備えている。
【0105】
このため、セパレータ136と電解質・電極接合体134との密着性を高めるために積層方向に付与される荷重の方向と、封止部材176と前記電解質・電極接合体134との密着性を高めるために作用する荷重の方向とは、同一方向になる。これにより、第4の実施形態は、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0106】
なお、第4の実施形態では、電解質・電極接合体134及び挟持部138は、長円形状(又は楕円形状)に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、円形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0107】
10、100、110、120、130…燃料電池
12、132…燃料電池スタック 20…電解質
22…カソード電極 22a…カソード集電体
24…アノード電極 24a…アノード集電体
26、134…電解質・電極接合体 30、102、136…セパレータ
32A、32B、138…挟持部 34A、34B、142…橋架部
36、146…反応ガス供給部 37…酸化剤ガス通路
38…燃料ガス通路
40、42、104、150、152、154…プレート
44、64、156、162、170…反応ガス供給部材
46…燃料ガス供給連通孔 48…燃料ガス導出連通孔
50…酸化剤ガス供給連通孔
52a、52b、66a、66b、158、164、172…橋架部材
54a、54b、68a、68b、160、166、174…挟持部材
56、56a、56b…燃料ガス供給通路
58、58a、58b…燃料ガス戻し通路
60、60a、60b…酸化剤ガス供給通路
62、62a、62b…酸化剤ガス供給孔
70、70a、70b…燃料ガス供給孔
72a、72b…燃料ガス戻し溝 74、74a、74b…燃料ガス戻し孔
76、76a、76b…周回凸部 78、78a、78b…空間
80a、80b、106a、106b、122a、122b、176…封止部材
82a、82b、84a、84b、108a、108b、110a、110b、124a、124b、126a、126b、178a、178b…密着部
90、182…エンドプレート 112a、112b…傾斜部
128a、128b…屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池であって、
前記電解質・電極接合体は、前記電解質の外周部が前記アノード電極の外周面からアノード電極面側の周縁部を被覆する周縁被覆部を構成するとともに、
前記燃料電池は、前記セパレータと前記周縁被覆部とに密着し、前記セパレータと前記電解質・電極接合体の前記アノード電極側との間に形成される空間を封止する封止部を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記封止部は、前記セパレータに密着する第1密着部と、
前記周縁被覆部に密着する第2密着部と、
を有するとともに、
前記第1密着部は、前記封止部の一方の面に設けられ、且つ前記第2密着部は、前記封止部の前記一方の面とは表裏をなす他方の面に設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池において、前記封止部は、フレーム状の金属板であることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項2又は3記載の燃料電池において、前記第1密着部の密着強度は、前記第2密着部の密着強度よりも大きく設定されることを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池において、前記固体酸化物形燃料電池は、平板積層型固体酸化物形燃料電池であることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−129038(P2012−129038A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278730(P2010−278730)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】