燃料電池
【課題】二重シールを簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することを可能にする。
【解決手段】燃料電池10を構成するセルユニット12は、第1電解質膜・電極構造体14、第1金属セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体18及び第2金属セパレータ20を備える。第1及び第2電解質膜・電極構造体14、18は、外周に樹脂枠部材28a、28bを有する。樹脂枠部材28aに設けられた二重シール51は、外側シール部材48及び内側シール部材50を有するとともに、前記外側シール部材48の先端が、樹脂枠部材28bに当接する一方、前記内側シール部材50の先端が、第1金属セパレータ16の外周端縁面に当接する。外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の高さ寸法に設定される。
【解決手段】燃料電池10を構成するセルユニット12は、第1電解質膜・電極構造体14、第1金属セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体18及び第2金属セパレータ20を備える。第1及び第2電解質膜・電極構造体14、18は、外周に樹脂枠部材28a、28bを有する。樹脂枠部材28aに設けられた二重シール51は、外側シール部材48及び内側シール部材50を有するとともに、前記外側シール部材48の先端が、樹脂枠部材28bに当接する一方、前記内側シール部材50の先端が、第1金属セパレータ16の外周端縁面に当接する。外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の高さ寸法に設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体と金属セパレータとが積層される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池では、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ電極触媒層と多孔質カーボンからなるアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持することによりセルユニット(単位セル)が構成されている。通常、このセルユニットを所定数だけ積層した燃料電池スタックが、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
一般的に、この種の燃料電池では、セルユニットの積層方向に貫通して燃料ガスを流すための燃料ガス入口連通孔及び燃料ガス出口連通孔と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス入口連通孔及び酸化剤ガス出口連通孔と、冷却媒体を流すための冷却媒体入口連通孔及び冷却媒体出口連通孔とを内部に備える、所謂、内部マニホールド型燃料電池を構成する場合が多い。
【0004】
従って、セパレータには、複数の流体連通孔である燃料ガス入口連通孔、燃料ガス出口連通孔、酸化剤ガス入口連通孔、酸化剤ガス出口連通孔、冷却媒体入口連通孔及び冷却媒体出口連通孔が設けられるため、前記セパレータの面積が相当に大きなものとなる。特に、セパレータとして金属セパレータが用いられる際には、高価なステンレス等の素材の使用量が増大し、部品単価が高騰するという問題がある。
【0005】
そこで、電解質膜・電極構造体と金属セパレータとが積層される燃料電池において、前記電解質・電極構造体の外周には、樹脂製の額縁部(樹脂枠部材)が設けられるとともに、この額縁部には、各流体連通孔が貫通形成される一方、金属セパレータは、前記流体連通孔の内方に配置される構成が考えられる。
【0006】
この種の燃料電池では、一対の額縁部間に金属セパレータを挟持するため、特別なシール構造が必要になる。例えば、特許文献1には、上記の額縁付き電解質膜・電極構造体とは異なるものの、二重シール構造を採用する燃料電池が開示されている。
【0007】
この燃料電池では、図27に示すように、膜・電極構造体1の外部に突出する固体電解質膜2を第1のセパレータ3と第2のセパレータ4とで挟持するとともに、前記第1のセパレータ3には、二重シール5が設けられている。二重シール5は、固体電解質膜2に当接する内側シール5aと、第2のセパレータ4側に設けられた平面シール部材6に当接する外側シール5bとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−276820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、二重シール5では、内側シール5aの高さと外側シール5bの高さとが異なっており、シールリップ形状も異なっている。このため、内側シール5aと外側シール5bとで、2種類のシール設計が必要になり、経済的ではないという問題がある。
【0010】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、二重シールを簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体と金属セパレータとが積層される燃料電池に関するものである。
【0012】
この燃料電池では、電解質・電極構造体の外周には、樹脂枠部材が一体に設けられ、前記樹脂枠部材には、積層方向に貫通し、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体である各流体を流通させる複数の流体連通孔が設けられている。一方、金属セパレータは、樹脂枠部材の外周端部よりも流体連通孔の内方に位置して一対の樹脂枠部材間に配置されている。
【0013】
そして、一方の樹脂枠部材には、金属セパレータに先端が当接する内側シール部材と、他方の樹脂枠部材に先端が当接し且つ前記内側シール部材と同一の高さ寸法に設定される外側シール部材とを有する二重シールが設けられている。
【0014】
また、この燃料電池では、一方の樹脂枠部材は、内側シール部材が設けられる部位の厚さが、外側シール部材が設けられる部位の厚さよりも肉薄に設定されるとともに、他方の樹脂枠部材は、前記内側シール部材に対向する部位から前記外側シール部材が当接する部位にわたって同一平面に形成されることが好ましい。
【0015】
さらに、この燃料電池では、金属セパレータは、電解質・電極構造体を挟持する第1の金属セパレータ及び第2の金属セパレータと備え、少なくとも前記第1の金属セパレータ又は前記第2の金属セパレータは、内部に冷却媒体流路が形成される2枚のプレートで構成されることが好ましい。
【0016】
さらにまた、この燃料電池では、2枚のプレートは、互いに外形が同一形状を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、二重シールを構成する内側シール部材と外側シール部材とは、同一の高さ寸法に設定されている。従って、内側シール部材及び外側シール部材は、同一のシールリップ形状を有することもでき、前記内側シール部材及び前記外側シール部材は、同一の、すなわち、1種類のシール設計により製造することが可能になる。これにより、二重シールを簡単且つ経済的に構成することができ、燃料電池全体の製造コストを有効に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面図である。
【図3】前記燃料電池を構成する第1電解質膜・電極構造体のカソード面の説明図である。
【図4】前記第1電解質膜・電極構造体のアノード面の説明図である。
【図5】前記燃料電池を構成する第2電解質膜・電極構造体のカソード面の説明図である。
【図6】前記第2電解質膜・電極構造体のアノード面の説明図である。
【図7】前記燃料電池を構成する第1金属セパレータのカソード面の説明図である。
【図8】前記第1金属セパレータのアノード面の説明図である。
【図9】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータのカソード面の説明図である。
【図10】前記第2金属セパレータのアノード面の説明図である。
【図11】前記燃料電池の、図1中、XI−XI線断面図である。
【図12】前記燃料電池の、図1中、XII−XII線断面図である。
【図13】前記燃料電池の、図1中、XIII−XIII線断面図である。
【図14】前記燃料電池の、図1中、XIV−XIV線断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の分解斜視説明図である。
【図16】前記燃料電池の、図15中、XVI−XVI線断面図である。
【図17】前記燃料電池を構成する第1電解質膜・電極構造体のカソード面の説明図である。
【図18】前記第1電解質膜・電極構造体のアノード面の説明図である。
【図19】前記燃料電池を構成する第2電解質膜・電極構造体のカソード面の説明図である。
【図20】前記第2電解質膜・電極構造体のアノード面の説明図である。
【図21】前記燃料電池を構成する第1金属セパレータのカソード面の説明図である。
【図22】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータのカソード面の説明図である。
【図23】前記第2金属セパレータのアノード面の説明図である。
【図24】前記燃料電池の、図15中、XXIV−XXIV線断面図である。
【図25】前記燃料電池の、図15中、XXV−XXV線断面図である。
【図26】前記燃料電池の、図15中、XXVI−XXVI線断面図である。
【図27】特許文献1の燃料電池の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、複数のセルユニット12を矢印A方向(水平方向)に積層して構成される。
【0020】
セルユニット12は、第1電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)14、第1金属セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)18及び第2金属セパレータ20を備える。セルユニット12が積層されることにより、第1電解質膜・電極構造体14は、第2及び第1金属セパレータ20、16に挟持される一方、第2電解質膜・電極構造体18は、前記第1及び第2金属セパレータ16、20に挟持される。
【0021】
第1電解質膜・電極構造体14と第2電解質膜・電極構造体18とは、それぞれ、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(電解質)22と、前記固体高分子電解質膜22を挟持するカソード側電極24及びアノード側電極26とを備える(図2参照)。
【0022】
固体高分子電解質膜22は、カソード側電極24及びアノード側電極26と同一の表面積に設定される。なお、固体高分子電解質膜22の外周部が、カソード側電極24及びアノード側電極26よりも突出してもよく、また、前記カソード側電極24と前記アノード側電極26との表面積が、互いに異なっていてもよい。
【0023】
第1電解質膜・電極構造体14では、固体高分子電解質膜22、カソード側電極24及びアノード側電極26の外周端縁部には、絶縁性を有する高分子材料で形成される樹脂枠部材28aが、例えば、射出成形等により一体に成形される。第2電解質膜・電極構造体18では、同様に固体高分子電解質膜22、カソード側電極24及びアノード側電極26の外周端縁部には、高分子材料で形成される樹脂枠部材28bが、例えば、射出成形等により一体に成形される。高分子材料としては、汎用プラスチックの他、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック等が採用される。
【0024】
樹脂枠部材28a、28bは、図1に示すように、矢印C方向に長尺な略長方形状を有するとともに、各長辺の中央部には、内方に切り欠くことにより、それぞれ一対の凹部29a、29bが形成される。
【0025】
カソード側電極24及びアノード側電極26は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子を前記ガス拡散層の表面に一様に塗布して形成された電極触媒層(図示せず)とを有する。
【0026】
図1に示すように、樹脂枠部材28a、28bの矢印C方向(鉛直方向)の一端縁部(上端縁部)には、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔30a及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔32aが、矢印B方向(水平方向)に配列して設けられる。
【0027】
樹脂枠部材28a、28bの矢印C方向の他端縁部(下端縁部)には、燃料ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔32b及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔30bが、矢印B方向に配列して設けられる。
【0028】
樹脂枠部材28a、28bの矢印B方向の両端縁部上方には、矢印A方向に互いに連通して、冷却媒体を供給するための一対の冷却媒体入口連通孔34aが設けられるとともに、前記樹脂枠部材28a、28bの矢印B方向の両端縁部下方には、前記冷却媒体を排出するための一対の冷却媒体出口連通孔34bが設けられる。
【0029】
各冷却媒体入口連通孔34a、34aは、酸化剤ガス入口連通孔30a及び燃料ガス入口連通孔32aに近接し、且つ、それぞれ矢印B方向両端の各辺(他方の2辺)に振り分けられる。各冷却媒体出口連通孔34b、34bは、酸化剤ガス出口連通孔30b及び燃料ガス出口連通孔32bにそれぞれ近接し、且つ、それぞれ矢印B方向両側の各辺に振り分けられる。なお、冷却媒体入口連通孔34aと冷却媒体出口連通孔34bとは、上下逆にして、すなわち、前記冷却媒体入口連通孔34aを酸化剤ガス出口連通孔30b及び燃料ガス出口連通孔32bに近接して設けてもよい。
【0030】
第1及び第2電解質膜・電極構造体14、18では、互いに対向する一方の2辺にある上下両短辺に、酸化剤ガス入口連通孔30a及び燃料ガス入口連通孔32aと、酸化剤ガス出口連通孔30b、燃料ガス出口連通孔32bとが設けられる一方、互いに対向する他方の2辺である左右両長辺には、一対の冷却媒体入口連通孔34a及び一対の冷却媒体出口連通孔34bが設けられる。
【0031】
図3に示すように、樹脂枠部材28aには、第1電解質膜・電極構造体14のカソード面(カソード側電極24が設けられる面)14a側の上部に、酸化剤ガス入口連通孔30aの下側近傍に位置して複数の入口溝部36aが設けられる。樹脂枠部材28aのカソード面14a側の幅方向(矢印B方向)両端部上方には、各冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に複数の入口溝部38aが設けられるとともに、前記冷却媒体入口連通孔34aの上側近傍に複数の入口孔部40aが貫通形成される。
【0032】
樹脂枠部材28aのカソード面14a側の下部には、酸化剤ガス出口連通孔30bの上側近傍に位置して複数の出口溝部36bが設けられる。樹脂枠部材28aのカソード面14a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に複数の出口溝部38bが設けられるとともに、前記冷却媒体出口連通孔34bの下側近傍に複数の出口孔部40bが貫通形成される。
【0033】
図4に示すように、樹脂枠部材28aには、第1電解質膜・電極構造体14のアノード面(アノード側電極26が設けられる面)14b側の幅方向両端部上方に、各冷却媒体入口連通孔34aの上側近傍に複数の入口溝部42aが設けられる。樹脂枠部材28aのカソード面14a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの下側近傍に複数の出口溝部42bが設けられる。
【0034】
樹脂枠部材28aには、燃料ガス入口連通孔32aの下方に位置して複数の入口溝部46aが設けられるとともに、燃料ガス出口連通孔32bの上方に位置して複数の出口溝部46bが設けられる。
【0035】
樹脂枠部材28aのアノード面14b側には、外側シール部材(外側シールライン)48及び内側シール部材(内側シールライン)50が一体又は別体に成形されて二重シール51が構成される。外側シール部材48及び内側シール部材50には、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。なお、以下に説明する各シール部材は、上記の外側シール部材48及び内側シール部材50と同様に構成されており、その詳細な説明は省略する。
【0036】
外側シール部材48は、樹脂枠部材28aの外周縁部から全流体連通孔である酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、酸化剤ガス出口連通孔30b、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32bの外周並びに反応面(発電面)外周を周回する。この外側シール部材48は、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32bを囲繞する。外側シール部材48により、入口溝部42a及び入口孔部40aが、冷却媒体入口連通孔34aと一体に囲繞され、出口溝部42b及び出口孔部40bが、冷却媒体出口連通孔34bと一体に囲繞される。
【0037】
内側シール部材50は、外側シール部材48の内方に位置するとともに、アノード側電極26と入口溝部46a及び出口溝部46bとを一体に囲繞する。内側シール部材50は、第1金属セパレータ16の外形形状に対応する輪郭線に沿って設けられ、前記第1金属セパレータ16の外周端縁面全周(セパレータ面内)に接する(図2参照)。外側シール部材48は、第1金属セパレータ16の外周端外方(セパレータ面外)に配置され、先端が樹脂枠部材28bに当接する。外側シール部材48及び内側シール部材50により、全流体連通孔が周回密封される。
【0038】
図2に示すように、樹脂枠部材28a(一方の樹脂枠部材)は、外側シール部材48が設けられる部位の厚さt1が、内側シール部材50が設けられる部位の厚さt2よりも肉厚(t1>t2)に設定される。厚さt1と厚さt2との差は、第1金属セパレータ16の厚さt3に等しく設定される(t1−t2=t3)。
【0039】
樹脂枠部材28b(他方の樹脂枠部材)は、外側シール部材48に対向する部位から内側シール部材50が当接する部位にわたって同一平面に形成される。外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有する。
【0040】
図3に示すように、樹脂枠部材28aのカソード面14a側には、入口孔部40aを囲繞するリング状入口シール部材52aと、出口孔部40bを囲繞するリング状出口シール部材52bとが設けられる。
【0041】
図5に示すように、樹脂枠部材28bには、第2電解質膜・電極構造体18のカソード面(カソード側電極24が設けられる面)18a側の上部に、酸化剤ガス入口連通孔30aの下側近傍に位置して複数の入口溝部56aが設けられる。
【0042】
樹脂枠部材28bのカソード面18a側の幅方向両端部上方には、各冷却媒体入口連通孔34aの上側近傍に複数の入口溝部58aが設けられるとともに、前記冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に複数の入口孔部60aが形成される。第2電解質膜・電極構造体18の入口孔部60aは、第1電解質膜・電極構造体14の入口孔部40aと積層方向に互いに重なり合わない位置にオフセットして配置される。
【0043】
樹脂枠部材28bのカソード面18a側の上部には、燃料ガス入口連通孔32aの下側近傍に位置して複数の入口溝部62aが設けられるとともに、前記入口溝部62aの下端部には、複数の入口孔部64aが貫通形成される。各入口孔部64aの下方には、所定の間隔だけ離間して複数の入口孔部66aが貫通形成される。
【0044】
樹脂枠部材28bのカソード面18a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの下側近傍に複数の出口溝部58bが設けられるとともに、前記冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に複数の出口孔部60bが形成される。第2電解質膜・電極構造体18の出口孔部60bは、第1電解質膜・電極構造体14の出口孔部40bと積層方向に互いに重なり合わない位置にオフセットして配置される。
【0045】
樹脂枠部材28bのカソード面18a側の下部には、燃料ガス出口連通孔32bの上側近傍に位置して複数の出口溝部62bが設けられるとともに、前記出口溝部62bの上端部には、複数の出口孔部64bが貫通形成される。各出口孔部64bの上方には、所定の間隔だけ離間して複数の出口孔部66bが貫通形成される。
【0046】
図6に示すように、樹脂枠部材28bには、第2電解質膜・電極構造体18のアノード面(アノード側電極26が設けられる面)18b側の幅方向両端部上方に、各冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に複数の入口溝部68aが設けられる。樹脂枠部材28bには、燃料ガス入口連通孔32aの下方に位置して入口孔部64a、66aを連通する複数の入口溝部72aが設けられる。
【0047】
樹脂枠部材28bのアノード面18b側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に複数の出口溝部68bが設けられるとともに、燃料ガス出口連通孔32bの上方に位置して出口孔部64b、66bを連通する複数の出口溝部72bが設けられる。
【0048】
樹脂枠部材28bには、アノード面18b側に外側シール部材(外側シールライン)74及び内側シール部材(内側シールライン)76が一体又は別体に成形されて二重シール77が構成される。外側シール部材74は、樹脂枠部材28bの外周縁部から全流体連通孔である酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、酸化剤ガス出口連通孔30b、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32bの外周を周回する。
【0049】
外側シール部材74は、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32bを囲繞する。外側シール部材74により、入口溝部68a及び入口孔部60aが、冷却媒体入口連通孔34aと一体に囲繞され、出口溝部68b及び出口孔部60bが、冷却媒体出口連通孔34bと一体に囲繞される。
【0050】
内側シール部材76は、外側シール部材74の内方に位置するとともに、アノード側電極26と入口孔部64a、66a、入口溝部72a、出口孔部64b、66b及び出口溝部72bとを一体に囲繞する。内側シール部材76は、第2金属セパレータ20の外形形状に対応する輪郭線に沿って設けられ、前記第2金属セパレータ20の外周端縁面全周に接する。外側シール部材74は、第2金属セパレータ20の外周端外方に配置され、先端が樹脂枠部材28aに当接する。外側シール部材74及び内側シール部材76により、全流体連通孔が周回密封される。
【0051】
図2に示すように、樹脂枠部材28b(一方の樹脂枠部材)は、外側シール部材74が設けられる部位の厚さt4が、内側シール部材76が設けられる部位の厚さt5よりも肉厚(t4>t5)に設定される。厚さt4と厚さt5との差は、第2金属セパレータ20の厚さt6に等しく設定される(t4−t5=t6)。
【0052】
樹脂枠部材28a(他方の樹脂枠部材)は、外側シール部材74に対向する部位から内側シール部材76が当接する部位にわたって同一平面に形成される。外側シール部材74及び内側シール部材76は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有する。
【0053】
図5に示すように、樹脂枠部材28bのカソード面18a側には、入口孔部60a、66aを囲繞するリング状入口シール部材78a、80aと、出口孔部60b、66bを囲繞するリング状出口シール部材78b、80bとが設けられる。
【0054】
第1及び第2金属セパレータ16、20の外形は、樹脂枠部材28a、28bの外周端部よりも酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、酸化剤ガス出口連通孔30b、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32b(全流体連通孔)の内方に配置される寸法に設定される。
【0055】
図2に示すように、第1金属セパレータ16は、外形が同一形状を有して互いに積層される2枚の金属プレート(例えば、ステンレスプレート)82a、82bを備え、前記金属プレート82a、82bは、外周縁部を、例えば、溶接や接着により一体化され、且つ内部が密閉される。金属プレート82aには、カソード側電極24に対向して酸化剤ガス流路84が形成されるとともに、金属プレート82bには、アノード側電極26に対向して燃料ガス流路86が形成される。金属プレート82a、82b間には、冷却媒体流路88が形成される。
【0056】
図7に示すように、第1金属セパレータ16は、金属プレート82aの面内に、矢印C方向(鉛直方向)に延在する複数の波状流路溝を有した酸化剤ガス流路84を設ける。酸化剤ガス流路84の上流及び下流には、入口バッファ部85a及び出口バッファ部85bが設けられる。入口バッファ部85aの上方には、酸化剤ガス入口連通孔30aの下方に位置して複数の入口溝部87aが形成される。出口バッファ部85bの下方には、酸化剤ガス出口連通孔30bの上方に位置して複数の出口溝部87bが形成される。
【0057】
第1金属セパレータ16は、矢印C方向に長尺な長方形状を有するとともに、短辺方向(矢印B方向)両端側には、冷却媒体入口連通孔34aの下方側に突出する一対の突起部89aと、冷却媒体出口連通孔34bの上方側に突出する一対の突起部89bとが設けられる。金属プレート82aには、突起部89aに第2電解質膜・電極構造体18の複数の入口孔部60aに連通する複数の穴部90aが形成される。金属プレート82aには、突起部89bに第2電解質膜・電極構造体18の複数の出口孔部60bに連通する複数の穴部90bが形成される。
【0058】
金属プレート82aの上部には、第2電解質膜・電極構造体18の入口孔部66aに連通する複数の孔部92aが形成されるとともに、前記金属プレート82aの下部には、前記第2電解質膜・電極構造体18の出口孔部66bに連通する複数の孔部92bが形成される。孔部92a、92bは、金属プレート82bにも形成され、第1金属セパレータ16を貫通する。
【0059】
図8に示すように、第1金属セパレータ16は、金属プレート82bの面内に、矢印C方向(鉛直方向)に延在する複数の波状流路溝を有した燃料ガス流路86を設ける。燃料ガス流路86の上流及び下流には、入口バッファ部96a及び出口バッファ部96bが設けられる。入口バッファ部96aの上方には、酸化剤ガス入口連通孔30aの下方に位置して複数の入口溝部98aが形成されるとともに、出口バッファ部96bの下方には、酸化剤ガス出口連通孔30bの上方に位置して複数の出口溝部98bが形成される。
【0060】
金属プレート82bには、突起部89aに冷却媒体入口連通孔34aの下方に位置して、複数の入口溝部100aが形成される。金属プレート82bには、各突起部89bに冷却媒体出口連通孔34bの上方に位置して複数の出口溝部100bが形成される。
【0061】
図2に示すように、第2金属セパレータ20は、外形が同一形状を有して互いに積層される2枚の金属プレート(例えば、ステンレスプレート)102a、102bを備え、前記金属プレート102a、102bは、外周縁部を、例えば、溶接や接着により一体化され、且つ内部が密閉される。金属プレート102aには、カソード側電極24に対向して酸化剤ガス流路84が形成されるとともに、金属プレート102bには、アノード側電極26に対向して燃料ガス流路86が形成される。金属プレート102a、102b間には、冷却媒体流路88が形成される。
【0062】
図9に示すように、第2金属セパレータ20は、矢印C方向両端にそれぞれ矢印B方向外方に突出して一対の突起部103a、103bが形成される。金属プレート102aの面内に、矢印C方向(鉛直方向)に延在する複数の流路溝を有した酸化剤ガス流路84を設ける。酸化剤ガス流路84の上流及び下流には、入口バッファ部104a及び出口バッファ部104bが設けられる。
【0063】
金属プレート102aには、各突起部103aに冷却媒体入口連通孔34aの上方に位置し、第1電解質膜・電極構造体14の複数の入口孔部40aに連通する複数の穴部106aが形成される。金属プレート102aには、各突起部103bに冷却媒体出口連通孔34bの下方に位置し、第1電解質膜・電極構造体14の複数の出口孔部40bに連通する複数の穴部106bが形成される。
【0064】
図10に示すように、第2金属セパレータ20は、金属プレート102bの面内に、矢印C方向(鉛直方向)に延在する複数の流路溝を有した燃料ガス流路86を設ける。燃料ガス流路86の上流及び下流には、入口バッファ部110a及び出口バッファ部110bが設けられる。
【0065】
金属プレート102bの各突起部103aには、冷却媒体入口連通孔34aの上側近傍に位置して複数の入口溝部112aが形成される一方、前記金属プレート102bの各突起部103bには、冷却媒体出口連通孔34bの下側近傍に位置して複数の出口溝部112bが形成される。入口溝部112a及び出口溝部112bは、それぞれ第2金属セパレータ20の内部に冷却媒体通路を形成するための凹凸構造を有する。
【0066】
図11に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材28a、28b間には、酸化剤ガス入口連通孔30aと第2電解質膜・電極構造体18の酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路113aと、前記酸化剤ガス入口連通孔30aと第1電解質膜・電極構造体14の酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路113bとが形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材28a、28b間には、酸化剤ガス出口連通孔30bと酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路が形成される。
【0067】
図12に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材28a、28b間には、燃料ガス入口連通孔32aと燃料ガス流路86とを連通する燃料ガス連結流路114が形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材28a、28b間には、燃料ガス出口連通孔32bと燃料ガス流路86とを連通する燃料ガス連結流路が形成される。
【0068】
図13及び図14に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材28a、28b間には、冷却媒体入口連通孔34aと第2金属セパレータ20の冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路116aと、前記冷却媒体入口連通孔34aと第1金属セパレータ16の冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路116bとが形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材28a、28b間には、冷却媒体出口連通孔34bと冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路が形成される。
【0069】
冷却媒体連結流路116a、116bは、樹脂枠部材28aの外側シール部材48及び内側シール部材50と、樹脂枠部材28bの外側シール部材74及び内側シール部材76とが積層方向に異なる位置に配置されることにより形成される。
【0070】
図13に示すように、冷却媒体連結流路116aは、セパレータ面方向に沿って設けられる入口溝部42a、58aと、樹脂枠部材28aに積層方向に形成される入口孔部(第1孔部)40aと、第2金属セパレータ20を構成する金属プレート102aに前記積層方向に形成される穴部(第2孔部)106aとを有する。入口溝部42aと入口溝部58aとは、端部同士が連通する。
【0071】
図14に示すように、冷却媒体連結流路116bは、セパレータ面方向に沿って設けられる入口溝部68a、38aと、樹脂枠部材28bに積層方向に形成される入口孔部(第1孔部)60aと、第1金属セパレータ16を構成する金属プレート82aに前記積層方向に形成される穴部(第2孔部)90aとを有する。入口溝部68aと入口溝部38aとは、端部同士が連通する。
【0072】
樹脂枠部材28aの入口孔部40a及び穴部106aと、樹脂枠部材28bの入口孔部60a及び穴部90aとは、積層方向に対して互いに重なり合わない位置に設定される。
【0073】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0074】
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔32aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体入口連通孔34aには、純水やエチレングリコール等の冷却媒体が供給される。
【0075】
各セルユニット12では、酸化剤ガス入口連通孔30aに供給された酸化剤ガスが、図1及び図11に示すように、第1電解質膜・電極構造体14の入口溝部36aと第2電解質膜・電極構造体18の間から入口溝部56aに導入される。
【0076】
入口溝部36aに導入された酸化剤ガスは、第2金属セパレータ20の酸化剤ガス流路84に供給される。酸化剤ガス流路84に供給された酸化剤ガスは、第1電解質膜・電極構造体14のカソード側電極24に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口溝部36b間から酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0077】
一方、入口溝部56a間に導入された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体18と第1金属セパレータ16との間の入口溝部87aを通って前記第1金属セパレータ16の酸化剤ガス流路84に供給される。酸化剤ガス流路84に供給された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体18のカソード側電極24に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口溝部87b、56bを通って酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0078】
また、燃料ガス入口連通孔32aに供給された燃料ガスは、図1及び図12に示すように、第2電解質膜・電極構造体18のカソード側の入口溝部62aに導入される。燃料ガスは、入口溝部62aから入口孔部64aを通ってアノード側に移動し、一部分が入口溝部72aから第2金属セパレータ20の燃料ガス流路86に供給される。
【0079】
燃料ガスの残余の部分は、入口孔部66a及び第1金属セパレータ16の孔部92aを通って前記第1金属セパレータ16と第1電解質膜・電極構造体14との間に導入され、前記第1金属セパレータ16の燃料ガス流路86に供給される。
【0080】
第2金属セパレータ20の燃料ガス流路86を流通した使用済みの燃料ガスは、出口溝部72bに排出され、さらに出口孔部64bから出口溝部62bを通って燃料ガス出口連通孔32bに排出される。一方、第1金属セパレータ16の燃料ガス流路86を流通した使用済みの燃料ガスは、孔部92bから出口孔部66bを通って出口溝部72bに排出され、同様に燃料ガス出口連通孔32bに排出される。
【0081】
これにより、第1電解質膜・電極構造体14及び第2電解質膜・電極構造体18では、それぞれカソード側電極24に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極26に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0082】
さらにまた、一対の冷却媒体入口連通孔34aに供給された冷却媒体の一部は、図1及び図13に示すように、第1電解質膜・電極構造体14の入口溝部42aに導入され、入口溝部58aから入口孔部40aに供給される。冷却媒体は、入口孔部40aから第2金属セパレータ20の穴部106aを通って前記第2金属セパレータ20の内部に導入される。
【0083】
冷却媒体は、第2金属セパレータ20内を各入口溝部112aに沿って矢印B方向に且つ互いに内側方向に流通し、冷却媒体流路88に供給される。互いに内側方向に流通する冷却媒体は、冷却媒体流路88の矢印B方向中央部側で衝突し、重力方向(矢印C方向下方)に移動した後、前記冷却媒体流路88の下部側で矢印B方向両側に振り分けられる。そして、各出口溝部112bから穴部106bを通って第2金属セパレータ20から排出される。さらに、この冷却媒体は、出口孔部40bから出口溝部58b、42bを通って冷却媒体出口連通孔34bに排出される。
【0084】
一方、冷却媒体入口連通孔34aに供給された冷却媒体の他の一部は、図1及び図14に示すように、第2電解質膜・電極構造体18の入口溝部68aに導入され、入口溝部38aから入口孔部60aに供給される。冷却媒体は、入口孔部60aから第1金属セパレータ16の穴部90aを通って前記第1金属セパレータ16内部に導入される。
【0085】
冷却媒体は、第1金属セパレータ16内を入口溝部100aに沿って矢印B方向に且つ互いに内側方向に流通し、冷却媒体流路88に供給される。冷却媒体は、冷却媒体流路88に沿って重力方向(矢印C方向下方)に移動した後、矢印B方向両側に振り分けられる。冷却媒体は、各出口溝部100bから穴部90bを通って第1金属セパレータ16から排出される。さらに、この冷却媒体は、出口孔部60bから出口溝部38b、68bを通って冷却媒体出口連通孔34bに排出される。
【0086】
このため、第1電解質膜・電極構造体14及び第2電解質膜・電極構造体18は、第1金属セパレータ16内の冷却媒体流路88及び第2金属セパレータ20内の冷却媒体流路88を流通する冷却媒体により冷却される。
【0087】
この場合、第1の実施形態では、図2、図12〜図14に示すように、樹脂枠部材28aに設けられた二重シール51は、外側シール部材48及び内側シール部材50を有するとともに、前記外側シール部材48の先端が、樹脂枠部材28bに当接する一方、前記内側シール部材50の先端が、第1金属セパレータ16の外周端縁面に当接している。そして、外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有することができる。
【0088】
従って、外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の、すなわち、1種類のシール設計により製造することが可能になる。これにより、二重シール51を簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0089】
また、図2、図12〜図14に示すように、樹脂枠部材28bに設けられた二重シール77は、外側シール部材74及び内側シール部材76を有するとともに、前記外側シール部材74の先端が、樹脂枠部材28aに当接する一方、前記内側シール部材76の先端が、第2金属セパレータ20の外周端縁面に当接している。そして、外側シール部材74及び内側シール部材76は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有することができる。
【0090】
従って、外側シール部材74及び内側シール部材76は、同一の、すなわち、1種類のシール設計により製造することが可能になる。これにより、二重シール77を簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0091】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池120の分解斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0092】
図15及び図16に示すように、燃料電池120は、複数のセルユニット122を積層して構成されるとともに、前記セルユニット122は、第1電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)124、第1金属セパレータ126、第2電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)128及び第2金属セパレータ130を備える。
【0093】
第1電解質膜・電極構造体124及び第2電解質膜・電極構造体128は、樹脂枠部材132a及び樹脂枠部材132bを設ける。図17に示すように、樹脂枠部材132aのカソード面124a側の幅方向両端部上方には、各冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に入口溝部38aを設けることがなく、前記冷却媒体入口連通孔34aの幅方向(矢印C方向)にわたって複数の入口孔部134aが形成される。入口孔部134aは、リング状入口シール部材136aにより囲繞される。
【0094】
樹脂枠部材132aのカソード面124a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に出口溝部38bを設けることがなく、前記冷却媒体出口連通孔34bの幅方向(矢印C方向)にわたって複数の出口孔部134bが形成される。出口孔部134bは、リング状出口シール部材136bにより囲繞される。
【0095】
図18に示すように、樹脂枠部材132aのアノード面124b側の幅方向両端部上方には、複数の入口孔部134aに対応する複数の入口溝部138aが設けられる一方、前記アノード面124b側の幅方向両端部下方には、複数の出口孔部134bに対応する複数の出口溝部138bが設けられる。
【0096】
図19に示すように、樹脂枠部材132bのカソード面128a側の幅方向両端部上方には、各冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に入口孔部60aを設けることがなく、前記冷却媒体入口連通孔34aの幅方向にわたって複数の入口溝部140aが形成される。
【0097】
樹脂枠部材132bのカソード面128a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に出口孔部60bを設けることがなく、前記冷却媒体出口連通孔34bの幅方向にわたって複数の出口溝部140bが形成される。
【0098】
図20に示すように、樹脂枠部材132bのアノード面128b側には、入口溝部68a及び出口溝部68bが設けられていない。
【0099】
第1金属セパレータ126は、単一の金属プレート部材で構成される。図21に示すように、第1金属セパレータ126の一方の面に設けられる酸化剤ガス流路84の上方には、複数の孔部92aと複数の入口溝部87aとが形成される一方、酸化剤ガス流路84の下方には、複数の孔部92bと複数の出口溝部87bとが形成される。
【0100】
第1金属セパレータ126の幅方向両端部には、それぞれ一対の突起部89a、89bが設けられることがなく、それぞれ複数の穴部90a、90bが設けられない。
【0101】
図16に示すように、第2金属セパレータ130は、外形が同一形状を有して互いに積層される2枚の金属プレート(例えば、ステンレスプレート)142a、142bを備え、前記金属プレート142a、142bは、外周縁部を、例えば、溶接や接着により一体化され、且つ内部が密閉される。金属プレート142aには、カソード側電極24に対向して酸化剤ガス流路84が形成されるとともに、金属プレート142bには、アノード側電極26に対向して燃料ガス流路86が形成される。金属プレート142a、142b間には、冷却媒体流路88が形成される。
【0102】
図22に示すように、金属プレート142aの幅方向両端部上方には、矢印C方向に比較的長尺な一対の突起部143aが設けられる。突起部143aには、各冷却媒体入口連通孔34aの幅方向にわたって複数の穴部144aが形成される。金属プレート142aの幅方向両端部下方には、矢印C方向に比較的長尺な一対の突起部143bが設けられる。突起部143bには、各冷却媒体出口連通孔34bの幅方向にわたって複数の穴部144bが形成される。
【0103】
図23に示すように、金属プレート142bの一対の突起部143aには、各冷却媒体入口連通孔34aの幅方向にわたって複数の入口溝部146aが形成される。金属プレート142bの一対の突起部143bには、各冷却媒体出口連通孔34bの幅方向にわたって複数の出口溝部146bが形成される。
【0104】
図24に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材132a、132b間には、酸化剤ガス入口連通孔30aと第1電解質膜・電極構造体124の酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路150aと、前記酸化剤ガス入口連通孔30aと第2電解質膜・電極構造体128の酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路150bとが形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材132a、132b間には、酸化剤ガス出口連通孔30bと酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路が形成される。
【0105】
図25に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材132a、132b間には、燃料ガス入口連通孔32aと燃料ガス流路86とを連通する燃料ガス連結流路152が形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材132a、132b間には、燃料ガス出口連通孔32bと燃料ガス流路86とを連通する燃料ガス連結流路が形成される。
【0106】
図26に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材132a、132b間には、冷却媒体入口連通孔34aと第2金属セパレータ130の冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路154が形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材132a、132b間には、冷却媒体出口連通孔34bと冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路が形成される。
【0107】
冷却媒体連結流路154は、樹脂枠部材132aの外側シール部材48及び内側シール部材50と、樹脂枠部材132bの外側シール部材74及び内側シール部材76とが積層方向に異なる位置に配置されることにより形成される。
【0108】
冷却媒体連結流路154は、セパレータ面方向に沿って設けられる入口溝部138a、140aと、樹脂枠部材132aに積層方向に形成される入口孔部(第1孔部)134aと、金属プレート142aに前記積層方向に形成される穴部(第2孔部)144aとを有する。入口溝部138aと入口溝部140aとは、端部同士が連通する。
【0109】
図16に示すように、樹脂枠部材132a(一方の樹脂枠部材)は、外側シール部材48が設けられる部位の厚さt7が、内側シール部材50が設けられる部位の厚さt8よりも肉厚(t7>t8)に設定される。厚さt7と厚さt8との差は、第1金属セパレータ126の厚さt9に等しく設定される(t7−t8=t9)。
【0110】
樹脂枠部材132b(他方の樹脂枠部材)は、外側シール部材48に対向する部位から内側シール部材50が当接する部位にわたって同一平面に形成される。外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有する。
【0111】
樹脂枠部材132b(一方の樹脂枠部材)は、外側シール部材74が設けられる部位の厚さt10が、内側シール部材76が設けられる部位の厚さt11よりも肉厚(t10>t11)に設定される。厚さt10と厚さt11との差は、第2金属セパレータ130の厚さt12に等しく設定される(t10−t11=t12)。
【0112】
樹脂枠部材132a(他方の樹脂枠部材)は、外側シール部材74に対向する部位から内側シール部材76が当接する部位にわたって同一平面に形成される。外側シール部材74及び内側シール部材76は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有する。
【0113】
このように構成される燃料電池120の動作について、以下に概略的に説明する。
【0114】
各セルユニット122では、酸化剤ガス入口連通孔30aに供給された酸化剤ガスが、図15及び図24に示すように、第1電解質膜・電極構造体124の入口溝部36a間と第2電解質膜・電極構造体128の入口溝部56a間に導入される。
【0115】
入口溝部36aに導入された酸化剤ガスは、第2金属セパレータ130の酸化剤ガス流路84に供給される。酸化剤ガス流路84に供給された酸化剤ガスは、第1電解質膜・電極構造体124のカソード側電極24に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口溝部36b間から酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0116】
一方、入口溝部56a間に導入された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体128と第1金属セパレータ126との間の入口溝部87aを通って前記第1金属セパレータ126の酸化剤ガス流路84に供給される。酸化剤ガス流路84に供給された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体128のカソード側電極24に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口溝部87b、56b間を通って酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0117】
また、燃料ガス入口連通孔32aに供給された燃料ガスは、図15及び図25に示すように、第2電解質膜・電極構造体128のカソード側の入口溝部62aに導入される。燃料ガスは、入口溝部62aから入口孔部64aを通ってアノード側に移動し、一部分が入口溝部72aから第2金属セパレータ130の燃料ガス流路86に供給される。
【0118】
燃料ガスの残余の部分は、入口孔部66a及び第1金属セパレータ126の孔部92aを通って前記第1金属セパレータ126と第1電解質膜・電極構造体124との間に導入され、前記第1金属セパレータ126の燃料ガス流路86に供給される。
【0119】
第2金属セパレータ130の燃料ガス流路86を流通した使用済みの燃料ガスは、出口溝部72bに排出され、さらに出口孔部64bから出口溝部62bを通って燃料ガス出口連通孔32bに排出される。一方、第1金属セパレータ126の燃料ガス流路86を流通した使用済みの燃料ガスは、孔部92bから出口孔部66bを通って出口溝部72bに排出され、同様に燃料ガス出口連通孔32bに排出される。
【0120】
これにより、第1電解質膜・電極構造体124及び第2電解質膜・電極構造体128では、それぞれカソード側電極24に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極26に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0121】
さらにまた、一対の冷却媒体入口連通孔34aに供給された冷却媒体は、図15及び図26に示すように、第1電解質膜・電極構造体124の入口溝部138aに導入され、入口溝部140aから入口孔部134aに供給される。冷却媒体は、入口孔部134aから第2金属セパレータ130の穴部144aを通って前記第2金属セパレータ130の内部に導入される。
【0122】
冷却媒体は、第2金属セパレータ130内を各入口溝部146aに沿って矢印B方向に且つ互いに内側方向に流通し、冷却媒体流路88に供給される。互いに内側方向に流通する冷却媒体は、冷却媒体流路88の矢印B方向中央部側で衝突し、重力方向に移動した後、前記冷却媒体流路88の下部側で矢印B方向両側に振り分けられる。そして、各出口溝部146bから穴部144bを通って前記第2金属セパレータ130から排出される。さらに、冷却媒体は、出口孔部134bから出口溝部140b、138bを通って冷却媒体出口連通孔34bに排出される。
【0123】
このため、第1電解質膜・電極構造体124及び第2電解質膜・電極構造体128は、第2金属セパレータ130内の冷却媒体流路88を流通する冷却媒体により間引き冷却される。
【0124】
この場合、第2の実施形態では、二重シール51、77を簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0125】
10、120…燃料電池 12、122…セルユニット
14、18、124、128…電解質膜・電極構造体
16、20、126、130…セパレータ
22…固体高分子電解質膜 24…カソード側電極
26…アノード側電極
28a、28b、132a、132b…樹脂枠部材
30a…酸化剤ガス入口連通孔 30b…酸化剤ガス出口連通孔
32a…燃料ガス入口連通孔 32b…燃料ガス出口連通孔
34a…冷却媒体入口連通孔 34b…冷却媒体出口連通孔
36a、38a、42a、46a、56a、58a、62a、68a、72a、87a、98a、100a、112a、138a、140a、146a…入口溝部
36b、38b、42b、46b、56b、58b、62b、68b、72b、87b、98b、100b、112b、138b、140b、146b…出口溝部
40a、60a、64a、66a、134a…入口孔部
40b、60b、64b、66b、134b…出口孔部
48、74…外側シール部材 50、76…内側シール部材
51、77…二重シール
82a、82b、102a、102b、142a、142b…金属プレート
84…酸化剤ガス流路 86…燃料ガス流路
88…冷却媒体流路
90a、90b、106a、106b、144a、144b…穴部
92a、92b…孔部
116a、116b、154…冷却媒体連結流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体と金属セパレータとが積層される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池では、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ電極触媒層と多孔質カーボンからなるアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持することによりセルユニット(単位セル)が構成されている。通常、このセルユニットを所定数だけ積層した燃料電池スタックが、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
一般的に、この種の燃料電池では、セルユニットの積層方向に貫通して燃料ガスを流すための燃料ガス入口連通孔及び燃料ガス出口連通孔と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス入口連通孔及び酸化剤ガス出口連通孔と、冷却媒体を流すための冷却媒体入口連通孔及び冷却媒体出口連通孔とを内部に備える、所謂、内部マニホールド型燃料電池を構成する場合が多い。
【0004】
従って、セパレータには、複数の流体連通孔である燃料ガス入口連通孔、燃料ガス出口連通孔、酸化剤ガス入口連通孔、酸化剤ガス出口連通孔、冷却媒体入口連通孔及び冷却媒体出口連通孔が設けられるため、前記セパレータの面積が相当に大きなものとなる。特に、セパレータとして金属セパレータが用いられる際には、高価なステンレス等の素材の使用量が増大し、部品単価が高騰するという問題がある。
【0005】
そこで、電解質膜・電極構造体と金属セパレータとが積層される燃料電池において、前記電解質・電極構造体の外周には、樹脂製の額縁部(樹脂枠部材)が設けられるとともに、この額縁部には、各流体連通孔が貫通形成される一方、金属セパレータは、前記流体連通孔の内方に配置される構成が考えられる。
【0006】
この種の燃料電池では、一対の額縁部間に金属セパレータを挟持するため、特別なシール構造が必要になる。例えば、特許文献1には、上記の額縁付き電解質膜・電極構造体とは異なるものの、二重シール構造を採用する燃料電池が開示されている。
【0007】
この燃料電池では、図27に示すように、膜・電極構造体1の外部に突出する固体電解質膜2を第1のセパレータ3と第2のセパレータ4とで挟持するとともに、前記第1のセパレータ3には、二重シール5が設けられている。二重シール5は、固体電解質膜2に当接する内側シール5aと、第2のセパレータ4側に設けられた平面シール部材6に当接する外側シール5bとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−276820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、二重シール5では、内側シール5aの高さと外側シール5bの高さとが異なっており、シールリップ形状も異なっている。このため、内側シール5aと外側シール5bとで、2種類のシール設計が必要になり、経済的ではないという問題がある。
【0010】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、二重シールを簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体と金属セパレータとが積層される燃料電池に関するものである。
【0012】
この燃料電池では、電解質・電極構造体の外周には、樹脂枠部材が一体に設けられ、前記樹脂枠部材には、積層方向に貫通し、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体である各流体を流通させる複数の流体連通孔が設けられている。一方、金属セパレータは、樹脂枠部材の外周端部よりも流体連通孔の内方に位置して一対の樹脂枠部材間に配置されている。
【0013】
そして、一方の樹脂枠部材には、金属セパレータに先端が当接する内側シール部材と、他方の樹脂枠部材に先端が当接し且つ前記内側シール部材と同一の高さ寸法に設定される外側シール部材とを有する二重シールが設けられている。
【0014】
また、この燃料電池では、一方の樹脂枠部材は、内側シール部材が設けられる部位の厚さが、外側シール部材が設けられる部位の厚さよりも肉薄に設定されるとともに、他方の樹脂枠部材は、前記内側シール部材に対向する部位から前記外側シール部材が当接する部位にわたって同一平面に形成されることが好ましい。
【0015】
さらに、この燃料電池では、金属セパレータは、電解質・電極構造体を挟持する第1の金属セパレータ及び第2の金属セパレータと備え、少なくとも前記第1の金属セパレータ又は前記第2の金属セパレータは、内部に冷却媒体流路が形成される2枚のプレートで構成されることが好ましい。
【0016】
さらにまた、この燃料電池では、2枚のプレートは、互いに外形が同一形状を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、二重シールを構成する内側シール部材と外側シール部材とは、同一の高さ寸法に設定されている。従って、内側シール部材及び外側シール部材は、同一のシールリップ形状を有することもでき、前記内側シール部材及び前記外側シール部材は、同一の、すなわち、1種類のシール設計により製造することが可能になる。これにより、二重シールを簡単且つ経済的に構成することができ、燃料電池全体の製造コストを有効に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面図である。
【図3】前記燃料電池を構成する第1電解質膜・電極構造体のカソード面の説明図である。
【図4】前記第1電解質膜・電極構造体のアノード面の説明図である。
【図5】前記燃料電池を構成する第2電解質膜・電極構造体のカソード面の説明図である。
【図6】前記第2電解質膜・電極構造体のアノード面の説明図である。
【図7】前記燃料電池を構成する第1金属セパレータのカソード面の説明図である。
【図8】前記第1金属セパレータのアノード面の説明図である。
【図9】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータのカソード面の説明図である。
【図10】前記第2金属セパレータのアノード面の説明図である。
【図11】前記燃料電池の、図1中、XI−XI線断面図である。
【図12】前記燃料電池の、図1中、XII−XII線断面図である。
【図13】前記燃料電池の、図1中、XIII−XIII線断面図である。
【図14】前記燃料電池の、図1中、XIV−XIV線断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の分解斜視説明図である。
【図16】前記燃料電池の、図15中、XVI−XVI線断面図である。
【図17】前記燃料電池を構成する第1電解質膜・電極構造体のカソード面の説明図である。
【図18】前記第1電解質膜・電極構造体のアノード面の説明図である。
【図19】前記燃料電池を構成する第2電解質膜・電極構造体のカソード面の説明図である。
【図20】前記第2電解質膜・電極構造体のアノード面の説明図である。
【図21】前記燃料電池を構成する第1金属セパレータのカソード面の説明図である。
【図22】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータのカソード面の説明図である。
【図23】前記第2金属セパレータのアノード面の説明図である。
【図24】前記燃料電池の、図15中、XXIV−XXIV線断面図である。
【図25】前記燃料電池の、図15中、XXV−XXV線断面図である。
【図26】前記燃料電池の、図15中、XXVI−XXVI線断面図である。
【図27】特許文献1の燃料電池の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、複数のセルユニット12を矢印A方向(水平方向)に積層して構成される。
【0020】
セルユニット12は、第1電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)14、第1金属セパレータ16、第2電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)18及び第2金属セパレータ20を備える。セルユニット12が積層されることにより、第1電解質膜・電極構造体14は、第2及び第1金属セパレータ20、16に挟持される一方、第2電解質膜・電極構造体18は、前記第1及び第2金属セパレータ16、20に挟持される。
【0021】
第1電解質膜・電極構造体14と第2電解質膜・電極構造体18とは、それぞれ、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(電解質)22と、前記固体高分子電解質膜22を挟持するカソード側電極24及びアノード側電極26とを備える(図2参照)。
【0022】
固体高分子電解質膜22は、カソード側電極24及びアノード側電極26と同一の表面積に設定される。なお、固体高分子電解質膜22の外周部が、カソード側電極24及びアノード側電極26よりも突出してもよく、また、前記カソード側電極24と前記アノード側電極26との表面積が、互いに異なっていてもよい。
【0023】
第1電解質膜・電極構造体14では、固体高分子電解質膜22、カソード側電極24及びアノード側電極26の外周端縁部には、絶縁性を有する高分子材料で形成される樹脂枠部材28aが、例えば、射出成形等により一体に成形される。第2電解質膜・電極構造体18では、同様に固体高分子電解質膜22、カソード側電極24及びアノード側電極26の外周端縁部には、高分子材料で形成される樹脂枠部材28bが、例えば、射出成形等により一体に成形される。高分子材料としては、汎用プラスチックの他、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック等が採用される。
【0024】
樹脂枠部材28a、28bは、図1に示すように、矢印C方向に長尺な略長方形状を有するとともに、各長辺の中央部には、内方に切り欠くことにより、それぞれ一対の凹部29a、29bが形成される。
【0025】
カソード側電極24及びアノード側電極26は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子を前記ガス拡散層の表面に一様に塗布して形成された電極触媒層(図示せず)とを有する。
【0026】
図1に示すように、樹脂枠部材28a、28bの矢印C方向(鉛直方向)の一端縁部(上端縁部)には、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔30a及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔32aが、矢印B方向(水平方向)に配列して設けられる。
【0027】
樹脂枠部材28a、28bの矢印C方向の他端縁部(下端縁部)には、燃料ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔32b及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔30bが、矢印B方向に配列して設けられる。
【0028】
樹脂枠部材28a、28bの矢印B方向の両端縁部上方には、矢印A方向に互いに連通して、冷却媒体を供給するための一対の冷却媒体入口連通孔34aが設けられるとともに、前記樹脂枠部材28a、28bの矢印B方向の両端縁部下方には、前記冷却媒体を排出するための一対の冷却媒体出口連通孔34bが設けられる。
【0029】
各冷却媒体入口連通孔34a、34aは、酸化剤ガス入口連通孔30a及び燃料ガス入口連通孔32aに近接し、且つ、それぞれ矢印B方向両端の各辺(他方の2辺)に振り分けられる。各冷却媒体出口連通孔34b、34bは、酸化剤ガス出口連通孔30b及び燃料ガス出口連通孔32bにそれぞれ近接し、且つ、それぞれ矢印B方向両側の各辺に振り分けられる。なお、冷却媒体入口連通孔34aと冷却媒体出口連通孔34bとは、上下逆にして、すなわち、前記冷却媒体入口連通孔34aを酸化剤ガス出口連通孔30b及び燃料ガス出口連通孔32bに近接して設けてもよい。
【0030】
第1及び第2電解質膜・電極構造体14、18では、互いに対向する一方の2辺にある上下両短辺に、酸化剤ガス入口連通孔30a及び燃料ガス入口連通孔32aと、酸化剤ガス出口連通孔30b、燃料ガス出口連通孔32bとが設けられる一方、互いに対向する他方の2辺である左右両長辺には、一対の冷却媒体入口連通孔34a及び一対の冷却媒体出口連通孔34bが設けられる。
【0031】
図3に示すように、樹脂枠部材28aには、第1電解質膜・電極構造体14のカソード面(カソード側電極24が設けられる面)14a側の上部に、酸化剤ガス入口連通孔30aの下側近傍に位置して複数の入口溝部36aが設けられる。樹脂枠部材28aのカソード面14a側の幅方向(矢印B方向)両端部上方には、各冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に複数の入口溝部38aが設けられるとともに、前記冷却媒体入口連通孔34aの上側近傍に複数の入口孔部40aが貫通形成される。
【0032】
樹脂枠部材28aのカソード面14a側の下部には、酸化剤ガス出口連通孔30bの上側近傍に位置して複数の出口溝部36bが設けられる。樹脂枠部材28aのカソード面14a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に複数の出口溝部38bが設けられるとともに、前記冷却媒体出口連通孔34bの下側近傍に複数の出口孔部40bが貫通形成される。
【0033】
図4に示すように、樹脂枠部材28aには、第1電解質膜・電極構造体14のアノード面(アノード側電極26が設けられる面)14b側の幅方向両端部上方に、各冷却媒体入口連通孔34aの上側近傍に複数の入口溝部42aが設けられる。樹脂枠部材28aのカソード面14a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの下側近傍に複数の出口溝部42bが設けられる。
【0034】
樹脂枠部材28aには、燃料ガス入口連通孔32aの下方に位置して複数の入口溝部46aが設けられるとともに、燃料ガス出口連通孔32bの上方に位置して複数の出口溝部46bが設けられる。
【0035】
樹脂枠部材28aのアノード面14b側には、外側シール部材(外側シールライン)48及び内側シール部材(内側シールライン)50が一体又は別体に成形されて二重シール51が構成される。外側シール部材48及び内側シール部材50には、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。なお、以下に説明する各シール部材は、上記の外側シール部材48及び内側シール部材50と同様に構成されており、その詳細な説明は省略する。
【0036】
外側シール部材48は、樹脂枠部材28aの外周縁部から全流体連通孔である酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、酸化剤ガス出口連通孔30b、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32bの外周並びに反応面(発電面)外周を周回する。この外側シール部材48は、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32bを囲繞する。外側シール部材48により、入口溝部42a及び入口孔部40aが、冷却媒体入口連通孔34aと一体に囲繞され、出口溝部42b及び出口孔部40bが、冷却媒体出口連通孔34bと一体に囲繞される。
【0037】
内側シール部材50は、外側シール部材48の内方に位置するとともに、アノード側電極26と入口溝部46a及び出口溝部46bとを一体に囲繞する。内側シール部材50は、第1金属セパレータ16の外形形状に対応する輪郭線に沿って設けられ、前記第1金属セパレータ16の外周端縁面全周(セパレータ面内)に接する(図2参照)。外側シール部材48は、第1金属セパレータ16の外周端外方(セパレータ面外)に配置され、先端が樹脂枠部材28bに当接する。外側シール部材48及び内側シール部材50により、全流体連通孔が周回密封される。
【0038】
図2に示すように、樹脂枠部材28a(一方の樹脂枠部材)は、外側シール部材48が設けられる部位の厚さt1が、内側シール部材50が設けられる部位の厚さt2よりも肉厚(t1>t2)に設定される。厚さt1と厚さt2との差は、第1金属セパレータ16の厚さt3に等しく設定される(t1−t2=t3)。
【0039】
樹脂枠部材28b(他方の樹脂枠部材)は、外側シール部材48に対向する部位から内側シール部材50が当接する部位にわたって同一平面に形成される。外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有する。
【0040】
図3に示すように、樹脂枠部材28aのカソード面14a側には、入口孔部40aを囲繞するリング状入口シール部材52aと、出口孔部40bを囲繞するリング状出口シール部材52bとが設けられる。
【0041】
図5に示すように、樹脂枠部材28bには、第2電解質膜・電極構造体18のカソード面(カソード側電極24が設けられる面)18a側の上部に、酸化剤ガス入口連通孔30aの下側近傍に位置して複数の入口溝部56aが設けられる。
【0042】
樹脂枠部材28bのカソード面18a側の幅方向両端部上方には、各冷却媒体入口連通孔34aの上側近傍に複数の入口溝部58aが設けられるとともに、前記冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に複数の入口孔部60aが形成される。第2電解質膜・電極構造体18の入口孔部60aは、第1電解質膜・電極構造体14の入口孔部40aと積層方向に互いに重なり合わない位置にオフセットして配置される。
【0043】
樹脂枠部材28bのカソード面18a側の上部には、燃料ガス入口連通孔32aの下側近傍に位置して複数の入口溝部62aが設けられるとともに、前記入口溝部62aの下端部には、複数の入口孔部64aが貫通形成される。各入口孔部64aの下方には、所定の間隔だけ離間して複数の入口孔部66aが貫通形成される。
【0044】
樹脂枠部材28bのカソード面18a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの下側近傍に複数の出口溝部58bが設けられるとともに、前記冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に複数の出口孔部60bが形成される。第2電解質膜・電極構造体18の出口孔部60bは、第1電解質膜・電極構造体14の出口孔部40bと積層方向に互いに重なり合わない位置にオフセットして配置される。
【0045】
樹脂枠部材28bのカソード面18a側の下部には、燃料ガス出口連通孔32bの上側近傍に位置して複数の出口溝部62bが設けられるとともに、前記出口溝部62bの上端部には、複数の出口孔部64bが貫通形成される。各出口孔部64bの上方には、所定の間隔だけ離間して複数の出口孔部66bが貫通形成される。
【0046】
図6に示すように、樹脂枠部材28bには、第2電解質膜・電極構造体18のアノード面(アノード側電極26が設けられる面)18b側の幅方向両端部上方に、各冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に複数の入口溝部68aが設けられる。樹脂枠部材28bには、燃料ガス入口連通孔32aの下方に位置して入口孔部64a、66aを連通する複数の入口溝部72aが設けられる。
【0047】
樹脂枠部材28bのアノード面18b側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に複数の出口溝部68bが設けられるとともに、燃料ガス出口連通孔32bの上方に位置して出口孔部64b、66bを連通する複数の出口溝部72bが設けられる。
【0048】
樹脂枠部材28bには、アノード面18b側に外側シール部材(外側シールライン)74及び内側シール部材(内側シールライン)76が一体又は別体に成形されて二重シール77が構成される。外側シール部材74は、樹脂枠部材28bの外周縁部から全流体連通孔である酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、酸化剤ガス出口連通孔30b、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32bの外周を周回する。
【0049】
外側シール部材74は、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32bを囲繞する。外側シール部材74により、入口溝部68a及び入口孔部60aが、冷却媒体入口連通孔34aと一体に囲繞され、出口溝部68b及び出口孔部60bが、冷却媒体出口連通孔34bと一体に囲繞される。
【0050】
内側シール部材76は、外側シール部材74の内方に位置するとともに、アノード側電極26と入口孔部64a、66a、入口溝部72a、出口孔部64b、66b及び出口溝部72bとを一体に囲繞する。内側シール部材76は、第2金属セパレータ20の外形形状に対応する輪郭線に沿って設けられ、前記第2金属セパレータ20の外周端縁面全周に接する。外側シール部材74は、第2金属セパレータ20の外周端外方に配置され、先端が樹脂枠部材28aに当接する。外側シール部材74及び内側シール部材76により、全流体連通孔が周回密封される。
【0051】
図2に示すように、樹脂枠部材28b(一方の樹脂枠部材)は、外側シール部材74が設けられる部位の厚さt4が、内側シール部材76が設けられる部位の厚さt5よりも肉厚(t4>t5)に設定される。厚さt4と厚さt5との差は、第2金属セパレータ20の厚さt6に等しく設定される(t4−t5=t6)。
【0052】
樹脂枠部材28a(他方の樹脂枠部材)は、外側シール部材74に対向する部位から内側シール部材76が当接する部位にわたって同一平面に形成される。外側シール部材74及び内側シール部材76は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有する。
【0053】
図5に示すように、樹脂枠部材28bのカソード面18a側には、入口孔部60a、66aを囲繞するリング状入口シール部材78a、80aと、出口孔部60b、66bを囲繞するリング状出口シール部材78b、80bとが設けられる。
【0054】
第1及び第2金属セパレータ16、20の外形は、樹脂枠部材28a、28bの外周端部よりも酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔34a、燃料ガス入口連通孔32a、酸化剤ガス出口連通孔30b、冷却媒体出口連通孔34b及び燃料ガス出口連通孔32b(全流体連通孔)の内方に配置される寸法に設定される。
【0055】
図2に示すように、第1金属セパレータ16は、外形が同一形状を有して互いに積層される2枚の金属プレート(例えば、ステンレスプレート)82a、82bを備え、前記金属プレート82a、82bは、外周縁部を、例えば、溶接や接着により一体化され、且つ内部が密閉される。金属プレート82aには、カソード側電極24に対向して酸化剤ガス流路84が形成されるとともに、金属プレート82bには、アノード側電極26に対向して燃料ガス流路86が形成される。金属プレート82a、82b間には、冷却媒体流路88が形成される。
【0056】
図7に示すように、第1金属セパレータ16は、金属プレート82aの面内に、矢印C方向(鉛直方向)に延在する複数の波状流路溝を有した酸化剤ガス流路84を設ける。酸化剤ガス流路84の上流及び下流には、入口バッファ部85a及び出口バッファ部85bが設けられる。入口バッファ部85aの上方には、酸化剤ガス入口連通孔30aの下方に位置して複数の入口溝部87aが形成される。出口バッファ部85bの下方には、酸化剤ガス出口連通孔30bの上方に位置して複数の出口溝部87bが形成される。
【0057】
第1金属セパレータ16は、矢印C方向に長尺な長方形状を有するとともに、短辺方向(矢印B方向)両端側には、冷却媒体入口連通孔34aの下方側に突出する一対の突起部89aと、冷却媒体出口連通孔34bの上方側に突出する一対の突起部89bとが設けられる。金属プレート82aには、突起部89aに第2電解質膜・電極構造体18の複数の入口孔部60aに連通する複数の穴部90aが形成される。金属プレート82aには、突起部89bに第2電解質膜・電極構造体18の複数の出口孔部60bに連通する複数の穴部90bが形成される。
【0058】
金属プレート82aの上部には、第2電解質膜・電極構造体18の入口孔部66aに連通する複数の孔部92aが形成されるとともに、前記金属プレート82aの下部には、前記第2電解質膜・電極構造体18の出口孔部66bに連通する複数の孔部92bが形成される。孔部92a、92bは、金属プレート82bにも形成され、第1金属セパレータ16を貫通する。
【0059】
図8に示すように、第1金属セパレータ16は、金属プレート82bの面内に、矢印C方向(鉛直方向)に延在する複数の波状流路溝を有した燃料ガス流路86を設ける。燃料ガス流路86の上流及び下流には、入口バッファ部96a及び出口バッファ部96bが設けられる。入口バッファ部96aの上方には、酸化剤ガス入口連通孔30aの下方に位置して複数の入口溝部98aが形成されるとともに、出口バッファ部96bの下方には、酸化剤ガス出口連通孔30bの上方に位置して複数の出口溝部98bが形成される。
【0060】
金属プレート82bには、突起部89aに冷却媒体入口連通孔34aの下方に位置して、複数の入口溝部100aが形成される。金属プレート82bには、各突起部89bに冷却媒体出口連通孔34bの上方に位置して複数の出口溝部100bが形成される。
【0061】
図2に示すように、第2金属セパレータ20は、外形が同一形状を有して互いに積層される2枚の金属プレート(例えば、ステンレスプレート)102a、102bを備え、前記金属プレート102a、102bは、外周縁部を、例えば、溶接や接着により一体化され、且つ内部が密閉される。金属プレート102aには、カソード側電極24に対向して酸化剤ガス流路84が形成されるとともに、金属プレート102bには、アノード側電極26に対向して燃料ガス流路86が形成される。金属プレート102a、102b間には、冷却媒体流路88が形成される。
【0062】
図9に示すように、第2金属セパレータ20は、矢印C方向両端にそれぞれ矢印B方向外方に突出して一対の突起部103a、103bが形成される。金属プレート102aの面内に、矢印C方向(鉛直方向)に延在する複数の流路溝を有した酸化剤ガス流路84を設ける。酸化剤ガス流路84の上流及び下流には、入口バッファ部104a及び出口バッファ部104bが設けられる。
【0063】
金属プレート102aには、各突起部103aに冷却媒体入口連通孔34aの上方に位置し、第1電解質膜・電極構造体14の複数の入口孔部40aに連通する複数の穴部106aが形成される。金属プレート102aには、各突起部103bに冷却媒体出口連通孔34bの下方に位置し、第1電解質膜・電極構造体14の複数の出口孔部40bに連通する複数の穴部106bが形成される。
【0064】
図10に示すように、第2金属セパレータ20は、金属プレート102bの面内に、矢印C方向(鉛直方向)に延在する複数の流路溝を有した燃料ガス流路86を設ける。燃料ガス流路86の上流及び下流には、入口バッファ部110a及び出口バッファ部110bが設けられる。
【0065】
金属プレート102bの各突起部103aには、冷却媒体入口連通孔34aの上側近傍に位置して複数の入口溝部112aが形成される一方、前記金属プレート102bの各突起部103bには、冷却媒体出口連通孔34bの下側近傍に位置して複数の出口溝部112bが形成される。入口溝部112a及び出口溝部112bは、それぞれ第2金属セパレータ20の内部に冷却媒体通路を形成するための凹凸構造を有する。
【0066】
図11に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材28a、28b間には、酸化剤ガス入口連通孔30aと第2電解質膜・電極構造体18の酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路113aと、前記酸化剤ガス入口連通孔30aと第1電解質膜・電極構造体14の酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路113bとが形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材28a、28b間には、酸化剤ガス出口連通孔30bと酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路が形成される。
【0067】
図12に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材28a、28b間には、燃料ガス入口連通孔32aと燃料ガス流路86とを連通する燃料ガス連結流路114が形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材28a、28b間には、燃料ガス出口連通孔32bと燃料ガス流路86とを連通する燃料ガス連結流路が形成される。
【0068】
図13及び図14に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材28a、28b間には、冷却媒体入口連通孔34aと第2金属セパレータ20の冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路116aと、前記冷却媒体入口連通孔34aと第1金属セパレータ16の冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路116bとが形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材28a、28b間には、冷却媒体出口連通孔34bと冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路が形成される。
【0069】
冷却媒体連結流路116a、116bは、樹脂枠部材28aの外側シール部材48及び内側シール部材50と、樹脂枠部材28bの外側シール部材74及び内側シール部材76とが積層方向に異なる位置に配置されることにより形成される。
【0070】
図13に示すように、冷却媒体連結流路116aは、セパレータ面方向に沿って設けられる入口溝部42a、58aと、樹脂枠部材28aに積層方向に形成される入口孔部(第1孔部)40aと、第2金属セパレータ20を構成する金属プレート102aに前記積層方向に形成される穴部(第2孔部)106aとを有する。入口溝部42aと入口溝部58aとは、端部同士が連通する。
【0071】
図14に示すように、冷却媒体連結流路116bは、セパレータ面方向に沿って設けられる入口溝部68a、38aと、樹脂枠部材28bに積層方向に形成される入口孔部(第1孔部)60aと、第1金属セパレータ16を構成する金属プレート82aに前記積層方向に形成される穴部(第2孔部)90aとを有する。入口溝部68aと入口溝部38aとは、端部同士が連通する。
【0072】
樹脂枠部材28aの入口孔部40a及び穴部106aと、樹脂枠部材28bの入口孔部60a及び穴部90aとは、積層方向に対して互いに重なり合わない位置に設定される。
【0073】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0074】
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔32aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体入口連通孔34aには、純水やエチレングリコール等の冷却媒体が供給される。
【0075】
各セルユニット12では、酸化剤ガス入口連通孔30aに供給された酸化剤ガスが、図1及び図11に示すように、第1電解質膜・電極構造体14の入口溝部36aと第2電解質膜・電極構造体18の間から入口溝部56aに導入される。
【0076】
入口溝部36aに導入された酸化剤ガスは、第2金属セパレータ20の酸化剤ガス流路84に供給される。酸化剤ガス流路84に供給された酸化剤ガスは、第1電解質膜・電極構造体14のカソード側電極24に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口溝部36b間から酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0077】
一方、入口溝部56a間に導入された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体18と第1金属セパレータ16との間の入口溝部87aを通って前記第1金属セパレータ16の酸化剤ガス流路84に供給される。酸化剤ガス流路84に供給された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体18のカソード側電極24に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口溝部87b、56bを通って酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0078】
また、燃料ガス入口連通孔32aに供給された燃料ガスは、図1及び図12に示すように、第2電解質膜・電極構造体18のカソード側の入口溝部62aに導入される。燃料ガスは、入口溝部62aから入口孔部64aを通ってアノード側に移動し、一部分が入口溝部72aから第2金属セパレータ20の燃料ガス流路86に供給される。
【0079】
燃料ガスの残余の部分は、入口孔部66a及び第1金属セパレータ16の孔部92aを通って前記第1金属セパレータ16と第1電解質膜・電極構造体14との間に導入され、前記第1金属セパレータ16の燃料ガス流路86に供給される。
【0080】
第2金属セパレータ20の燃料ガス流路86を流通した使用済みの燃料ガスは、出口溝部72bに排出され、さらに出口孔部64bから出口溝部62bを通って燃料ガス出口連通孔32bに排出される。一方、第1金属セパレータ16の燃料ガス流路86を流通した使用済みの燃料ガスは、孔部92bから出口孔部66bを通って出口溝部72bに排出され、同様に燃料ガス出口連通孔32bに排出される。
【0081】
これにより、第1電解質膜・電極構造体14及び第2電解質膜・電極構造体18では、それぞれカソード側電極24に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極26に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0082】
さらにまた、一対の冷却媒体入口連通孔34aに供給された冷却媒体の一部は、図1及び図13に示すように、第1電解質膜・電極構造体14の入口溝部42aに導入され、入口溝部58aから入口孔部40aに供給される。冷却媒体は、入口孔部40aから第2金属セパレータ20の穴部106aを通って前記第2金属セパレータ20の内部に導入される。
【0083】
冷却媒体は、第2金属セパレータ20内を各入口溝部112aに沿って矢印B方向に且つ互いに内側方向に流通し、冷却媒体流路88に供給される。互いに内側方向に流通する冷却媒体は、冷却媒体流路88の矢印B方向中央部側で衝突し、重力方向(矢印C方向下方)に移動した後、前記冷却媒体流路88の下部側で矢印B方向両側に振り分けられる。そして、各出口溝部112bから穴部106bを通って第2金属セパレータ20から排出される。さらに、この冷却媒体は、出口孔部40bから出口溝部58b、42bを通って冷却媒体出口連通孔34bに排出される。
【0084】
一方、冷却媒体入口連通孔34aに供給された冷却媒体の他の一部は、図1及び図14に示すように、第2電解質膜・電極構造体18の入口溝部68aに導入され、入口溝部38aから入口孔部60aに供給される。冷却媒体は、入口孔部60aから第1金属セパレータ16の穴部90aを通って前記第1金属セパレータ16内部に導入される。
【0085】
冷却媒体は、第1金属セパレータ16内を入口溝部100aに沿って矢印B方向に且つ互いに内側方向に流通し、冷却媒体流路88に供給される。冷却媒体は、冷却媒体流路88に沿って重力方向(矢印C方向下方)に移動した後、矢印B方向両側に振り分けられる。冷却媒体は、各出口溝部100bから穴部90bを通って第1金属セパレータ16から排出される。さらに、この冷却媒体は、出口孔部60bから出口溝部38b、68bを通って冷却媒体出口連通孔34bに排出される。
【0086】
このため、第1電解質膜・電極構造体14及び第2電解質膜・電極構造体18は、第1金属セパレータ16内の冷却媒体流路88及び第2金属セパレータ20内の冷却媒体流路88を流通する冷却媒体により冷却される。
【0087】
この場合、第1の実施形態では、図2、図12〜図14に示すように、樹脂枠部材28aに設けられた二重シール51は、外側シール部材48及び内側シール部材50を有するとともに、前記外側シール部材48の先端が、樹脂枠部材28bに当接する一方、前記内側シール部材50の先端が、第1金属セパレータ16の外周端縁面に当接している。そして、外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有することができる。
【0088】
従って、外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の、すなわち、1種類のシール設計により製造することが可能になる。これにより、二重シール51を簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0089】
また、図2、図12〜図14に示すように、樹脂枠部材28bに設けられた二重シール77は、外側シール部材74及び内側シール部材76を有するとともに、前記外側シール部材74の先端が、樹脂枠部材28aに当接する一方、前記内側シール部材76の先端が、第2金属セパレータ20の外周端縁面に当接している。そして、外側シール部材74及び内側シール部材76は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有することができる。
【0090】
従って、外側シール部材74及び内側シール部材76は、同一の、すなわち、1種類のシール設計により製造することが可能になる。これにより、二重シール77を簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0091】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池120の分解斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0092】
図15及び図16に示すように、燃料電池120は、複数のセルユニット122を積層して構成されるとともに、前記セルユニット122は、第1電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)124、第1金属セパレータ126、第2電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)(MEA)128及び第2金属セパレータ130を備える。
【0093】
第1電解質膜・電極構造体124及び第2電解質膜・電極構造体128は、樹脂枠部材132a及び樹脂枠部材132bを設ける。図17に示すように、樹脂枠部材132aのカソード面124a側の幅方向両端部上方には、各冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に入口溝部38aを設けることがなく、前記冷却媒体入口連通孔34aの幅方向(矢印C方向)にわたって複数の入口孔部134aが形成される。入口孔部134aは、リング状入口シール部材136aにより囲繞される。
【0094】
樹脂枠部材132aのカソード面124a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に出口溝部38bを設けることがなく、前記冷却媒体出口連通孔34bの幅方向(矢印C方向)にわたって複数の出口孔部134bが形成される。出口孔部134bは、リング状出口シール部材136bにより囲繞される。
【0095】
図18に示すように、樹脂枠部材132aのアノード面124b側の幅方向両端部上方には、複数の入口孔部134aに対応する複数の入口溝部138aが設けられる一方、前記アノード面124b側の幅方向両端部下方には、複数の出口孔部134bに対応する複数の出口溝部138bが設けられる。
【0096】
図19に示すように、樹脂枠部材132bのカソード面128a側の幅方向両端部上方には、各冷却媒体入口連通孔34aの下側近傍に入口孔部60aを設けることがなく、前記冷却媒体入口連通孔34aの幅方向にわたって複数の入口溝部140aが形成される。
【0097】
樹脂枠部材132bのカソード面128a側の幅方向両端部下方には、各冷却媒体出口連通孔34bの上側近傍に出口孔部60bを設けることがなく、前記冷却媒体出口連通孔34bの幅方向にわたって複数の出口溝部140bが形成される。
【0098】
図20に示すように、樹脂枠部材132bのアノード面128b側には、入口溝部68a及び出口溝部68bが設けられていない。
【0099】
第1金属セパレータ126は、単一の金属プレート部材で構成される。図21に示すように、第1金属セパレータ126の一方の面に設けられる酸化剤ガス流路84の上方には、複数の孔部92aと複数の入口溝部87aとが形成される一方、酸化剤ガス流路84の下方には、複数の孔部92bと複数の出口溝部87bとが形成される。
【0100】
第1金属セパレータ126の幅方向両端部には、それぞれ一対の突起部89a、89bが設けられることがなく、それぞれ複数の穴部90a、90bが設けられない。
【0101】
図16に示すように、第2金属セパレータ130は、外形が同一形状を有して互いに積層される2枚の金属プレート(例えば、ステンレスプレート)142a、142bを備え、前記金属プレート142a、142bは、外周縁部を、例えば、溶接や接着により一体化され、且つ内部が密閉される。金属プレート142aには、カソード側電極24に対向して酸化剤ガス流路84が形成されるとともに、金属プレート142bには、アノード側電極26に対向して燃料ガス流路86が形成される。金属プレート142a、142b間には、冷却媒体流路88が形成される。
【0102】
図22に示すように、金属プレート142aの幅方向両端部上方には、矢印C方向に比較的長尺な一対の突起部143aが設けられる。突起部143aには、各冷却媒体入口連通孔34aの幅方向にわたって複数の穴部144aが形成される。金属プレート142aの幅方向両端部下方には、矢印C方向に比較的長尺な一対の突起部143bが設けられる。突起部143bには、各冷却媒体出口連通孔34bの幅方向にわたって複数の穴部144bが形成される。
【0103】
図23に示すように、金属プレート142bの一対の突起部143aには、各冷却媒体入口連通孔34aの幅方向にわたって複数の入口溝部146aが形成される。金属プレート142bの一対の突起部143bには、各冷却媒体出口連通孔34bの幅方向にわたって複数の出口溝部146bが形成される。
【0104】
図24に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材132a、132b間には、酸化剤ガス入口連通孔30aと第1電解質膜・電極構造体124の酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路150aと、前記酸化剤ガス入口連通孔30aと第2電解質膜・電極構造体128の酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路150bとが形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材132a、132b間には、酸化剤ガス出口連通孔30bと酸化剤ガス流路84とを連通する酸化剤ガス連結流路が形成される。
【0105】
図25に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材132a、132b間には、燃料ガス入口連通孔32aと燃料ガス流路86とを連通する燃料ガス連結流路152が形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材132a、132b間には、燃料ガス出口連通孔32bと燃料ガス流路86とを連通する燃料ガス連結流路が形成される。
【0106】
図26に示すように、積層方向に隣接する樹脂枠部材132a、132b間には、冷却媒体入口連通孔34aと第2金属セパレータ130の冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路154が形成される。なお、図示しないが、樹脂枠部材132a、132b間には、冷却媒体出口連通孔34bと冷却媒体流路88とを連通する冷却媒体連結流路が形成される。
【0107】
冷却媒体連結流路154は、樹脂枠部材132aの外側シール部材48及び内側シール部材50と、樹脂枠部材132bの外側シール部材74及び内側シール部材76とが積層方向に異なる位置に配置されることにより形成される。
【0108】
冷却媒体連結流路154は、セパレータ面方向に沿って設けられる入口溝部138a、140aと、樹脂枠部材132aに積層方向に形成される入口孔部(第1孔部)134aと、金属プレート142aに前記積層方向に形成される穴部(第2孔部)144aとを有する。入口溝部138aと入口溝部140aとは、端部同士が連通する。
【0109】
図16に示すように、樹脂枠部材132a(一方の樹脂枠部材)は、外側シール部材48が設けられる部位の厚さt7が、内側シール部材50が設けられる部位の厚さt8よりも肉厚(t7>t8)に設定される。厚さt7と厚さt8との差は、第1金属セパレータ126の厚さt9に等しく設定される(t7−t8=t9)。
【0110】
樹脂枠部材132b(他方の樹脂枠部材)は、外側シール部材48に対向する部位から内側シール部材50が当接する部位にわたって同一平面に形成される。外側シール部材48及び内側シール部材50は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有する。
【0111】
樹脂枠部材132b(一方の樹脂枠部材)は、外側シール部材74が設けられる部位の厚さt10が、内側シール部材76が設けられる部位の厚さt11よりも肉厚(t10>t11)に設定される。厚さt10と厚さt11との差は、第2金属セパレータ130の厚さt12に等しく設定される(t10−t11=t12)。
【0112】
樹脂枠部材132a(他方の樹脂枠部材)は、外側シール部材74に対向する部位から内側シール部材76が当接する部位にわたって同一平面に形成される。外側シール部材74及び内側シール部材76は、同一の高さ寸法に設定されるとともに、同一のシールリップ形状を有する。
【0113】
このように構成される燃料電池120の動作について、以下に概略的に説明する。
【0114】
各セルユニット122では、酸化剤ガス入口連通孔30aに供給された酸化剤ガスが、図15及び図24に示すように、第1電解質膜・電極構造体124の入口溝部36a間と第2電解質膜・電極構造体128の入口溝部56a間に導入される。
【0115】
入口溝部36aに導入された酸化剤ガスは、第2金属セパレータ130の酸化剤ガス流路84に供給される。酸化剤ガス流路84に供給された酸化剤ガスは、第1電解質膜・電極構造体124のカソード側電極24に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口溝部36b間から酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0116】
一方、入口溝部56a間に導入された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体128と第1金属セパレータ126との間の入口溝部87aを通って前記第1金属セパレータ126の酸化剤ガス流路84に供給される。酸化剤ガス流路84に供給された酸化剤ガスは、第2電解質膜・電極構造体128のカソード側電極24に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口溝部87b、56b間を通って酸化剤ガス出口連通孔30bに排出される。
【0117】
また、燃料ガス入口連通孔32aに供給された燃料ガスは、図15及び図25に示すように、第2電解質膜・電極構造体128のカソード側の入口溝部62aに導入される。燃料ガスは、入口溝部62aから入口孔部64aを通ってアノード側に移動し、一部分が入口溝部72aから第2金属セパレータ130の燃料ガス流路86に供給される。
【0118】
燃料ガスの残余の部分は、入口孔部66a及び第1金属セパレータ126の孔部92aを通って前記第1金属セパレータ126と第1電解質膜・電極構造体124との間に導入され、前記第1金属セパレータ126の燃料ガス流路86に供給される。
【0119】
第2金属セパレータ130の燃料ガス流路86を流通した使用済みの燃料ガスは、出口溝部72bに排出され、さらに出口孔部64bから出口溝部62bを通って燃料ガス出口連通孔32bに排出される。一方、第1金属セパレータ126の燃料ガス流路86を流通した使用済みの燃料ガスは、孔部92bから出口孔部66bを通って出口溝部72bに排出され、同様に燃料ガス出口連通孔32bに排出される。
【0120】
これにより、第1電解質膜・電極構造体124及び第2電解質膜・電極構造体128では、それぞれカソード側電極24に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極26に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0121】
さらにまた、一対の冷却媒体入口連通孔34aに供給された冷却媒体は、図15及び図26に示すように、第1電解質膜・電極構造体124の入口溝部138aに導入され、入口溝部140aから入口孔部134aに供給される。冷却媒体は、入口孔部134aから第2金属セパレータ130の穴部144aを通って前記第2金属セパレータ130の内部に導入される。
【0122】
冷却媒体は、第2金属セパレータ130内を各入口溝部146aに沿って矢印B方向に且つ互いに内側方向に流通し、冷却媒体流路88に供給される。互いに内側方向に流通する冷却媒体は、冷却媒体流路88の矢印B方向中央部側で衝突し、重力方向に移動した後、前記冷却媒体流路88の下部側で矢印B方向両側に振り分けられる。そして、各出口溝部146bから穴部144bを通って前記第2金属セパレータ130から排出される。さらに、冷却媒体は、出口孔部134bから出口溝部140b、138bを通って冷却媒体出口連通孔34bに排出される。
【0123】
このため、第1電解質膜・電極構造体124及び第2電解質膜・電極構造体128は、第2金属セパレータ130内の冷却媒体流路88を流通する冷却媒体により間引き冷却される。
【0124】
この場合、第2の実施形態では、二重シール51、77を簡単且つ経済的に構成することができ、製造コストを有効に抑制することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0125】
10、120…燃料電池 12、122…セルユニット
14、18、124、128…電解質膜・電極構造体
16、20、126、130…セパレータ
22…固体高分子電解質膜 24…カソード側電極
26…アノード側電極
28a、28b、132a、132b…樹脂枠部材
30a…酸化剤ガス入口連通孔 30b…酸化剤ガス出口連通孔
32a…燃料ガス入口連通孔 32b…燃料ガス出口連通孔
34a…冷却媒体入口連通孔 34b…冷却媒体出口連通孔
36a、38a、42a、46a、56a、58a、62a、68a、72a、87a、98a、100a、112a、138a、140a、146a…入口溝部
36b、38b、42b、46b、56b、58b、62b、68b、72b、87b、98b、100b、112b、138b、140b、146b…出口溝部
40a、60a、64a、66a、134a…入口孔部
40b、60b、64b、66b、134b…出口孔部
48、74…外側シール部材 50、76…内側シール部材
51、77…二重シール
82a、82b、102a、102b、142a、142b…金属プレート
84…酸化剤ガス流路 86…燃料ガス流路
88…冷却媒体流路
90a、90b、106a、106b、144a、144b…穴部
92a、92b…孔部
116a、116b、154…冷却媒体連結流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体と金属セパレータとが積層される燃料電池であって、
電解質・電極構造体の外周には、樹脂枠部材が一体に設けられ、前記樹脂枠部材には、積層方向に貫通し、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体である各流体を流通させる複数の流体連通孔が設けられる一方、
前記金属セパレータは、前記樹脂枠部材の外周端部よりも前記流体連通孔の内方に位置して一対の樹脂枠部材間に配置されるとともに、
一方の前記樹脂枠部材には、前記金属セパレータに先端が当接する内側シール部材と、
他方の前記樹脂枠部材に先端が当接し且つ前記内側シール部材と同一の高さ寸法に設定される外側シール部材と、
を有する二重シールが設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、一方の前記樹脂枠部材は、前記内側シール部材が設けられる部位の厚さが、前記外側シール部材が設けられる部位の厚さよりも肉薄に設定されるとともに、
他方の前記樹脂枠部材は、前記内側シール部材に対向する部位から前記外側シール部材が当接する部位にわたって同一平面に形成されることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池において、前記金属セパレータは、前記電解質・電極構造体を挟持する第1の金属セパレータ及び第2の金属セパレータと備え、
少なくとも前記第1の金属セパレータ又は前記第2の金属セパレータは、内部に冷却媒体流路が形成される2枚のプレートで構成されることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池において、2枚の前記プレートは、互いに外形が同一形状を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極を配設した電解質・電極構造体と金属セパレータとが積層される燃料電池であって、
電解質・電極構造体の外周には、樹脂枠部材が一体に設けられ、前記樹脂枠部材には、積層方向に貫通し、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体である各流体を流通させる複数の流体連通孔が設けられる一方、
前記金属セパレータは、前記樹脂枠部材の外周端部よりも前記流体連通孔の内方に位置して一対の樹脂枠部材間に配置されるとともに、
一方の前記樹脂枠部材には、前記金属セパレータに先端が当接する内側シール部材と、
他方の前記樹脂枠部材に先端が当接し且つ前記内側シール部材と同一の高さ寸法に設定される外側シール部材と、
を有する二重シールが設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、一方の前記樹脂枠部材は、前記内側シール部材が設けられる部位の厚さが、前記外側シール部材が設けられる部位の厚さよりも肉薄に設定されるとともに、
他方の前記樹脂枠部材は、前記内側シール部材に対向する部位から前記外側シール部材が当接する部位にわたって同一平面に形成されることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池において、前記金属セパレータは、前記電解質・電極構造体を挟持する第1の金属セパレータ及び第2の金属セパレータと備え、
少なくとも前記第1の金属セパレータ又は前記第2の金属セパレータは、内部に冷却媒体流路が形成される2枚のプレートで構成されることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池において、2枚の前記プレートは、互いに外形が同一形状を有することを特徴とする燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−243615(P2012−243615A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113319(P2011−113319)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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