燃料電池
本発明は、固形アニオン交換膜を含む燃料電池を動作させる方法であって、燃料電池においてアノードを、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩と接触させること、およびカソードを酸化体と接触させることを含み、それによって電気を発生させる方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特にアニオン交換膜を含む燃料電池の使用のための方法に関し、それは電気を発生させるために燃料として尿素、アンモニア、またはアンモニウム塩を消費する。本発明はまた、アニオン交換膜および尿素、アンモニア、またはアンモニウム塩を含む燃料電池を、およびそのような燃料電池を含む装置を、および燃料電池を動作させることから発生する電気を利用することによって装置に動力を供給する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池技術は目下、化石燃料の世界的に有限な供給が使い果たされるような、エネルギー危機に対処するのに役立つ可能性があるとして、よく認識されている。このように、燃料電池技術の適用は、差し迫るエネルギー危機、そして更には気候変動の双方での対策(闘い)において重要な役割を演じる公算が高い。
【0003】
知られているように、燃料電池は、それに供給される燃料および酸化体(酸化剤)から電気を発生させる電気化学的装置である。燃料電池では、燃料が消費され、そして電子はアノード(電池の負極)側で発生する。発生した電子は、外部回路を通してカソードに強制的に押し出され、そこではそれらが酸化体、典型的に空気中に存在する酸素と反応する。アノードおよびカソードは電解質によって分けられるが、発生した電子がアノードからカソードまで流れる外部回路によって接続され、それによって電力が利用されるようになる。
【0004】
非常に大まかに言えば、多くの燃料電池は、2つのカテゴリー(範疇)に分類される。最初に、いわゆるプロトン交換膜燃料電池、時にはポリマー電解質膜燃料電池(双方ともPEMFC)では、水素または他の基質は、陽子およびアノードでの電子の発生をもたらす燃料として機能する。電子は外部回路をカソードまで通り抜け、陽子は重合体の電解質膜をカソードまで通り抜ける。そこでは、陽子、電子および酸化体(典型的には酸素)は、結びついて水分子を形成する。PEMFCsは、酸性のプロトン伝導性重合体膜、典型的には、適切な厚さのキャストフィルムまたは押出しフィルムを採用し、機械的なバリア特性を提供し(カソードおよびアノードを分けるために)、まだ陽子の迅速な輸送を許容する。PEMFCsで使用されている最もよく知られる膜はDuPont(デュポン社)のNafionTM〔ナフィオン(商品名)〕、米国特許第3,718,627号に記載されたポリ-スルホン化ペルフルオロポリマー(perfluoropolymeric)材料である〔Grot(グロット)らへのもの〕。
【0005】
水素をそれ自体、たとえば、PEMFCsを含む燃料電池における燃料として用いることに加え、多様な水素含有燃料が燃料電池において使用されており、それらは水素燃料を提供するために改質される。その上、いわゆる直接燃料電池は、燃料を、間接燃料電池においてアノードにて反応が起こされる水素を提供するためにそれに最初に改質ステップを受けさせることなく、酸化させる(そしてそのように燃料を直接使う)。したがって、水素を燃料供給する燃料電池は「直接水素型燃料電池」として考えられていた。しかし典型的に、水素以外の燃料の使用は、ここに含まれ、直接燃料電池に言及するとき、それが意図される。これまで報告された直接燃料電池の例には、ボロロハイドライド(bororohydrides)、メタノールおよびギ酸に基づくものが含まれる。
【0006】
多くの燃料電池が入る第2の範疇は、陽子の電解質を通じての通過ではなく、むしろ水酸化物アニオン(陰イオン)の通過に依存する。「古典的な」アルカリ型燃料電池は、Francis Bacon(フランシス・ベーコン)によって開発され(そして時に、ベーコン燃料電池と称され)、そしてたとえば水酸化カリウムのような液状アルカリ電解質を含み、多孔性無電解支持体内で典型的に飽和される。しかし、最近、固形膜、即ち、水酸化物アニオン交換膜を含むアルカリ型燃料電池、事実上すべてのソリッドステート(固体)のアルカリ型燃料電池を開発するために、取組みが行われた。しかし、「アルカリ型燃料電池」というそのような語がベーコン燃料電池に言及するために、この技術で主に使われる点に注目しなければならない。このことから、アルカリ膜(alkaline membrane)燃料電池(AMFCs)は正確な説明であるが、「ソリッドステートアルカリ型燃料電池」にどのように言及するかに関する意見の一致は少ないと考えられる。
【0007】
PEMFCsまたはAMFCsが、陽子および電子をアノードで発生する燃料として、水素を用いるかどうかは、アノードで陽子を発生する能力がPEMFCsでの必要条件であり、−直接メタノール型燃料電池で、たとえば、陽子、電子および二酸化炭素がメタノールおよび水からアノードにて発生するので−、オンボード水素吸蔵施設(on-board hydrogen storage facility)を提供する能力は、難問として、および輸送の用途での燃料電池の使用への制限として残る。水素は、アンモニア、メタンおよびメタノールのような低分子量の化合物中に蓄えられることができ、それらの分子はそれぞれ17.6、25.0および12.5重量%の水素を含む。とりわけ、特に液状アンモニアのエネルギー密度は非常に高い。このように、4kgの水素のオンボード貯蔵のために、500バール(bar)(1バール=0.1MPaとして50MPa)の圧力で125リットルが必要とされ、液体水素が使われるならば47リットルであり、しかし、45リットルの水素だけが液状アンモニアによって提供される。尿素のエネルギー密度はまた、圧縮したか、または液状の水素より高く、それはそれをポテンシャル(潜在的)エネルギー担体にする。固形粉体として、尿素は特に簡単に蓄えられ、そして輸送される。尿素は、効果的に10重量%の水素を含み、そして潜在的な間接水素貯蔵物質である。
【0008】
最近まで、説明されていた燃料電池においてアンモニアを用いるためのアプローチ(研究方法)のほとんどが、アンモニアの高温での水素および窒素への転換(改質)に関与する〔たとえば、L Li(リー)とJ A Hurley(ハーリー)(Inter. J. Hydrogen Energy、32、6-10(2007年))参照〕。アンモニアを水および窒素に酸化するためのアンモニア燃料電池の米国特許第7,140,187号〔Amendola(アメンドラ)への〕でも言及されている。この特許は、燃料電池の例として、固形酸化物燃料電池および溶融炭酸塩型燃料電池のような高温燃料電池およびアルカリ型燃料電池およびリン酸燃料電池のような低温燃料電池に言及する。溶融KOH電解質に基づくアンモニア燃料電池は、J C Ganley(ガンリー)によって解説された(J. Power Sources、178(1)、2008年、44-47)。
【0009】
上記したように、アンモニアがPEMFCsで使用される最も普通のアプローチは、高温でアンモニアを水素および窒素に転換することである(L Liら、下記)。しかし、なんらかの転換されてない(改質されてない)アンモニアが、PEMFCsに存在する酸性電解質を害する。アンモニアをPEMFCsと共に用いる問題に対処する1つのやり方が、アルカリ型燃料電池において燃料としてアンモニアを用いることにあると最近報告された〔T Hejze(ホーゼ)ら(J. Power Sources、176、(2008年)、490-493)〕〕。知られているように、アルカリ型燃料電池は、電解質を含み、それはアルカリ性水溶液、例は、多孔性マトリクス内に溶液として存在する水酸化カリウムによって構成されるカソードおよびアノードの間に介在される。Hejzeら〔同個所(ibid)〕は、白金(プラチナ)をカソードおよびアノードに含む85℃で分けられたアルカリ型燃料電池を記述する。
【0010】
燃料電池のための燃料源としての尿素の使用は、アンモニアでのものよりも報告されなかったようにさえ思われる。米国特許第7,140,187号(下記)は、尿素および水を含む組成からエネルギーを発生させる方法および装置を記述する。しかし、ほとんどの具体化において、尿素は、アンモニアまたは水素のいずれかを提供するのに用いられ、そのいずれかは、水およびエネルギーを形成するために酸化され、またはアンモニアは窒素および水素にまで改質され(reformed)、そして次にその水素成分は水およびエネルギーを形成するために酸化される。およそ室温からおよそ200℃までのいずれかの温度での尿素燃料電池において、またはおよそ700℃およびおよそ1000℃の間の温度にて動作させる固形酸化物燃料電池または溶融炭酸塩型燃料電池において、尿素の酸化が言及されている。本発明者の知識の及ぶ限りでは、燃料電池における尿素の直接使用が何らの他の報告にあったようにも考えられない。
【0011】
尿素は、非毒性の低コストの工業製品であり、広く肥料として使用される。それは大量に、天然ガスまたは石炭から生産されたアンモニアから合成することができる。AdBlue(アドブルー、商標)、欧州のアドブルー尿素選択的触媒還元(SCR)プロジェクトによって開発された32.5%尿素溶液は、ディーゼル駆動の乗り物によって生成されるNOxを除去するために世界中で利用可能である。尿素が広く利用されているにもかかわらず、尿素またはアドブルーから電気を生成することができる技術は今のところない。
【0012】
尿素の産業による合成の間、様々な尿素濃度を有する大量の汚水が形成される。およそ2-2.5重量%の尿素を含有する人間または動物の大量の尿が、毎日生じる。都市下水中に著しいレベルの尿素が存在するが、利用可能な脱窒技術は、高価で、そして非効率的である。最近では、尿または尿素が豊富な汚水から、水素が電気分解により生成できることが報告されている〔B. K. Boggs(ボッグズ)、R. L. King(キング)、G. G. Botte(ボッテ)、Chem. Comm.、2009年、32、4859〕。しかし、尿または尿素が豊富な汚水から直接電気を発生させることがより一層効率的である。
【0013】
K Asazawa(アサザワ)ら〔Angew. Chem. Int. Ed.、46、8024-8027(2007年)〕は、固形水酸化物アニオン交換ポリマー膜を含む直接ヒドラジン燃料電池を報告し、そして乗り物用のそのような燃料電池の使用を示唆した。しかし、ヒドラジンの変異原性に対処するため、著者らはヒドラジンの固定を伴う解毒技術の併用を報告した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,140,187号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、水素以外の燃料を直接的に用いる燃料電池を含む、経済的および環境的に許容可能な燃料電池、特に、輸送用途でのような非定常的(non-stationary)適用での使用に適したものの開発において、対処すべき重要な難問が残る。本発明は、これらの難問の少なくとも若干に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の概略を記載する。本発明は、固形の陰イオン(アニオン)交換膜を含む燃料電池が、燃料として尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩の直接使用を通して動作させることができるという知見に基づく。この知見は、これらの下地(substrates)およびその重要性(emphasis)に基づく直接燃料電池の報告の貧弱さ(sparcity)からすれば、驚かされることであり、そこでは、アンモニアがPEMFC技術を用いる燃料電池のための間接的な燃料としてのその使用に関し用いられた。
【0017】
したがって、一つの見地から見て、固形アニオン交換膜を含む燃料電池を動作する方法が提供され、その方法は、燃料電池においてのアノードを、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩と接触させること、およびカソードを酸化体(酸化剤)と接触させることを、それによって電気を生成するために含む。
【0018】
第二の見地から見ると、本発明は、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩の使用を、固形アニオン交換膜を含む燃料電池のための直接の燃料として提供する。
【0019】
第三の見地から見ると、本発明は、固形アニオン交換膜、および尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩を含む燃料電池を提供する。
【0020】
さらなる見地から見て、本発明は、少なくとも二つの本発明の燃料電池(燃料セル)を含む燃料電池スタックを提供する。
【0021】
さらなる見地から見ると、本発明は、本発明に係る燃料電池を動作する方法を遂行すること、および発生した電気を、それによってデバイスへの動力を供給するために用いることを含む、デバイスへ動力を供給する方法を提供する。
【0022】
本発明のさらなる見地および具体化は、以下に続く議論から証明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1(a)】アニオン交換膜を通過する水酸化物イオンを示す本発明の直接アンモニア燃料電池の動作原理(作用機構)の概略図を示す。
【図1(b)】アニオン交換膜を通過する炭酸/重炭酸イオンを示す本発明の直接アンモニア燃料電池の動作原理(作用機構)の概略図を示す。
【図2】(a)はそれぞれ25から90℃までの温度範囲にわたってアンモニア/酸素および水素/酸素の燃料電池の理論的オープンセル電圧(OCV)を示す。(b)は20から90℃までの温度範囲にわたるこれら二つの燃料電池の理論効率を示す。
【図3】(a)はアンモニアが以下で説明する燃料電池(セルA)に導入される時間に対するOCVの変化を示す。(b)はMnO2/CカソードおよびNi/Cアノードを含むセルAについての室温でのアンモニア/酸素の燃料電池の性能を示す。
【図4】(a)および(b)は、水素および32.5%の尿素(アドブルー)溶液(a)、およびガスおよびアンモニア水の燃料電池(b)の性能プロットを、異なる燃料電池(セルB)を用いて示し、その調製を以下に記載する。ウェット酸素を酸化体として用いた。
【図5】(a)は水素およびアンモニアがさらに燃料電池(セルCはMnO2/Cカソード、Ni/CアノードおよびCPPO-PVAに基づく膜電解質を含む)に導入されているときにどのようにOCVが変化するかを示し、その調製を、以下に記載する。(b)は室温でセルCを動作させるとき、室温でのH2/O2およびNH3/O2燃料電池の性能プロットを示す。
【図6】濃アンモニア/酸素燃料電池およびアドブルー/酸素燃料電池の燃料電池性能を示す。
【図7】(a)は、それぞれ25から90℃までの温度範囲にわたる尿素/酸素および水素/酸素の燃料電池の理論的なオープンセル電圧(OCV)を示す。(b)は20から90℃までの温度範囲にわたるこれら二つの燃料電池の理論効率を示す。
【図8】(a)および(b)は、燃料電池(セルD)を用い、種々の濃度の尿素溶液での性能プロットを示し、その調製を以下で説明する。ウェット酸素を酸化体として用いた。
【図9】(a)および(b)は、燃料電池(セルE)を用い、種々の濃度の尿素溶液での性能プロットを示し、その調製を以下で説明する。ウェット酸素を酸化体として用いた。
【図10】(a)および(b)は、燃料電池(セルF)を用い、種々の濃度の尿素溶液での性能プロットを示し、その調製を以下で説明する。ウェット酸素を酸化体として用いた。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明を記載する。本発明は固形膜を含む燃料電池が、反応物質燃料として直接に尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩を用いて動作されうるという認識に原因する。
【0025】
熟練者は、燃料電池の基本的な原則および特色の多くに気づいており、たとえば、これらは酸化体がカソード側に導入されるとき、すべての燃料のアノード側に供給される反応物質燃料の酸化により電気を発生させる装置である。この酸化によって発生する電気は、外部回路、この外部回路によって接続され、そして電解質のいずれかの側に配置される燃料電池のアノードおよびカソードによる反応物質燃料の酸化により発生する電子を、通路を通して送ること(channelling)によって利用される。言い換えると、ここに記載するような燃料電池は、外部回路を通しての電気通信におけるアノードおよびカソードを含み、アノードが、燃料の酸化および酸化体のカソード還元に触媒作用を及ぼすことが可能な触媒を備えることが理解される。その上、燃料電池は、電解質、本発明においては、固形アルカリ膜を備え、アノードおよびカソードにて起こる酸化および還元の反応を物理的に切り離すのに役立つ。典型的に、この技術で知られるように、電解質膜が固形体である場合、それは、電極と共におよび関連した触媒が、いわゆる膜電極アセンブリー(MEA)としてこの技術に言及されるものを構成する。典型的なMEAの電極物質には、炭素(カーボン)〔例は、カーボンクロス(炭素布)、フェルトまたはカーボン紙〕が含まれ、その中あるいは上で触媒が適用される。
【0026】
そのうえ、燃料電池のアノードおよびカソードの領域の各々への入口、およびそれからの出口が、燃料および酸化体の導入、および燃料の酸化と酸化体の還元から形成される生成物の排出を適切に許すように提供される。前述の特色のすべては、そのようにカソードおよびアノードの間で配置される電解膜の供給を含み、すべての燃料電池に対して標準的であり、そしてそのようにしてこの技術における熟練の者に知られている。したがって、これらの構成要素の詳細な説明も、燃料電池が造られる方法も、ここに記載することはしない。しかし、とは言え、燃料電池のこれらの特色の典型的で特定の具体化、および本発明を実践することができる方法は本発明のより一層十分な理解のために以下に説明する。
【0027】
水酸化物イオン輸送およびカルボナート(炭酸塩)またはビカルボナート(重炭酸塩)の輸送に基づく本発明の直接アンモニア燃料電池の動作の概略図を、それぞれ図1(a)および(b)に描く。AMFCであるアンモニア燃料電池の作用メカニズムは、燃料として水素を使うものとわずかに異なる。水酸化物イオンが導電性種として用いられる場合、これらはカソードにて水の存在下に酸素が水酸化物(OH-)イオンに還元されることによって発生し、それは水素を燃料供給される(hydrogen-fuelled)アルカリ燃料電池において起こるのと同じメカニズムである。重炭酸または炭酸イオンが導電性種として用いられる場合、これらはカソードにて二酸化炭素の存在下に酸素を還元することによって発生する。次いで、発生するイオンは、アノードに移り、そして窒素および水を形成するために、アンモニアと反応する。窒素は、非毒性の、非温室効果ガスである。アルカリ膜電解質を用いる直接アンモニア燃料電池の動作メカニズムを、以下に記載する。すなわち
【0028】
CO32-/HCO3-イオンが膜中の電荷担体であるなら、カソードで提供される酸素およびCO2(または空気)は、CO32-/HCO3-イオンを形成し、そしてCO32-/HCO3-イオンはアノードにまで膜を通して移され、N2、H2OおよびCO2を形成するためにアンモニア(または尿素またはアンモニウム塩)と反応する。
【0029】
尿素が燃料として用いられる場合、尿素の加水分解は、それによってアンモニアおよび二酸化炭素を提供するために、窒素への酸化によって消費されるアンモニアをインシトゥで(原位置で)提供するのに役立つ。理論に拘束されることは望まないが、尿素の加水分解は、燃料電池の動作の間、アンモニアの消費によって駆動されると信じられる。アルカリ膜電解質を用いる直接尿素燃料電池の動作メカニズムを、以下に記載する。すなわち
【0030】
本発明の特徴的特色は、固形アニオン交換膜の提供である。本発明の燃料電池、および本発明に従う使用は、このように、アルカリ電解質が、溶液中または液体として存在する燃料電池とは区別される。また、もちろん、本発明において電解質として機能する膜はPEMFCsで使用される酸性の膜とは完全に異なる。
【0031】
したがって、ここで用いる「固形アニオン交換膜」によって、アニオン伝導、例は、水酸化物、炭酸、または重炭酸のアニオンの、膜の第1の面から膜の第2の面への輸送を許容することが可能な固形電解質物質を意味する。典型的に、そのような膜は、およそ1-500μmの厚さ、例は、約10-250μmの厚さである。数多くの適合した固形膜が適切であり、産業的な水の精製、金属分離および触媒的応用(catalytic application)に用いられる商業的に広く利用可能なアニオン交換ポリマーおよび樹脂〔双方の水酸化物またはハロゲン化物(典型的に塩化物)の形態で利用可能なもの〕のようなものである。ハロゲン化物カチオン(典型的に塩化物イオン)を含む膜は、OH-、HCO3-またはCO32-または混合されたOH-/HCO3-/CO32-アニオン伝導性膜に転換するNaOH、NaHCO3、Na2CO3のような金属水酸化物、炭酸または重炭酸と交換する。アニオン交換は、燃料電池アセンブリーに先立ち、例は、適切な水酸化物、炭酸または重炭酸を用いる塩化物含有膜の浸漬によって行うことができる。あるいはまた、1またはそれよりも多くの水酸化物、重炭酸、または炭酸が燃料と共に含まれる場合、または実際にアンモニアに基づく燃料が用いられる場合、アニオン交換はインシトゥで起こることがあり、水酸化アンモニウム自体が塩基である。
【0032】
本発明の一定の具体化によれば、膜は固形アルカリ膜であり、換言すると、水酸化物アニオンを含有する固形アニオン交換膜である。多数のそのような固形アルカリ膜が適しており、これらは概して2つのクラスに入る。
【0033】
まず、この技術において、固形ポリマーを含有するアルカリ膜が知られており、それには典型的に、金属水酸化物をドープした材料が含まれる。ポリ(スルホンエーテル)類、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)(PVC)のようなビニルポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)およびポリ(エチレングリコール)(PEG)のような様々なポリマーは、金属水酸化物でドープされ、例えば、ガラス板の上に、1またはそれよりも多く(1以上)のポリマーおよび水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムのような1以上の金属水酸化物の液状混合物をキャスティングし、そして溶媒(群)を蒸発させることによってドープすることができる。特定の例としては、CC Yang(ヤン)によって記述されるPVA-TiO2の材料である〔J. Memb. Sci.、288、(2007年)、51-16〕。しかし、そのような金属水酸化物を含有する固形アルカリ膜は、金属イオンの存在下にカソードでの酸化体(例は、酸素)と共に存在する二酸化炭素の汚染物質との反応の結果としての炭酸塩/重炭酸塩の望ましくない形成のため、一定の状況下において決して理想的とは言えないことがある。さらに、そのような水酸化物をドープしたポリマーの使用は、燃料電池の動作中に発生する膜での金属水酸化物の濃度における任意の低下のバランスをとるために、燃料への更なる金属水酸化物の有利な混和の誘引となることがある。
【0034】
金属水酸化物の存在により付与される欠点の結果として、固形アルカリ膜の第二のタイプが開発され、それらが所望の水酸化物アニオンに対する不在金属対イオン(absent metal countercations)であることは、部分的に、アルカリ燃料電池に関連して遭遇した問題である。これらは、ポリマーに結合したカチオン(陽イオン)および水酸化物対イオンを含む永久に荷電したポリマーである。アルカリ型燃料電池技術に関連して、直接メタノール型燃料電池に用いる重合体電解膜のような、文献に記載されているこれらのものの多数の例がある。そのような固形アルカリアニオン交換膜は、固形アルカリ型燃料電池で用いるための膜を生成するのを試みるために開発され、それは大体はPEMFCsにおいて用いられる商業上入手可能なNafion(R)〔ナフィオン(商標)〕膜に似ている。ナフィオン(商標)において、膜を通して導かれる(being conducted)陽子に対する対イオン(スルホン酸基)は、ポリマー骨格に結合される。したがって、同じように、多数の固形アルカリ膜は記載されており、それは、燃料電池の動作中に膜を通過することができる水酸化物イオンに対するポリマー結合カチオン性対イオンを含む。これらには、第四級アンモニウム含有固形アルカリ膜が含まれる〔たとえば、TN Danks(ダンクス)ら、J. Mater. Chem.、2003年、13、712-721;H Herman(ハーマン)ら、J. Membr. Sci.、2003年、218、147-163;RCT Slade(スレイド)およびJ R Varcoe(ヴァーコー)、Solid State Ionics(ソリッドステートイオニクス)、2005年、176、585-597およびa cross-linked development of the lattermost(最後のものの架橋発達)(J R Varcoeら、Chem. Commun.、2006年、1428-1429年);NJ Robertson(ロバートソン)、J. Am. Chem. Soc.、132、2010年、3400-3404;およびB. Sorenson(ソレンセン)、Hydrogen and Fuel Cells(水素および燃料電池)、Elsevier Academic Press(エルゼビア・アカデミック・プレス社)、2005年、p217参照〕。また、国際公開第2009/007922号〔Acta SpA(アクタ社)〕には、第四級アンモニウムイオンのアルキレン連結した組(ペア)を運ぶベンゼン環上にグラフトされた化学的に安定な有機ポリマー、そのようなアルキレン連結された1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N,N,N',N'-テトラメチルメチレンジアミン(TMMDA)、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N',N'-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン(TMBDA)、N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMHDA)およびN,N,N',N'-テトラエチル-1,3-プロパンジアミン(TEPDA)を含む熱可塑性エラストマー系の二相性マトリクスが記載されている。
【0035】
燃料電池の動作中に膜を通過することができる水酸化物イオンに対するポリマーに結合した第四アンモニウムイオンの対イオンを含む固形アルカリ膜に加え、金属対イオンを伴わないOH-イオン含有ポリマーを燃料電池において電解質またはイオンマー(ionmer)として用いることができる。1種のそのような例は、S Gu(グー)らにより記載されたトリス(2,4,6-トリメトキシフェニル)ポリスルホン-メチレン四級ホスホニウム水酸化物(TPQPOH)である〔Angew. Chem. Int. Ed,、48(2009年)6499-6502〕。
【0036】
アルカリアニオン交換膜は、商業上入手可能なMorgane(モルガーヌ)ADP100-2をアルカリ化することによって、LA Adams(アダムス)らによって記載されている〔ChemSusChem、1、(2008年)、79-81〕ように製造することができる〔Solvay(ソルベイ)S.A.、ベルギー所在によって販売されている架橋した、部分的にフッ素化した第四級アンモニウムを含有するアニオン交換膜〕。
【0037】
他の固形アルカリ膜は、この技術における熟練の者に知られており、ポリスチレンおよびポリ(スルホンエーテル)群に基づく膜を含み、随意に、たとえば、そこでは重合体の骨格が架橋される。G Wang(ワン)ら〔J. Membr. Sci.、326、(2009年)4-8〕は、最近、潜在的な燃料電池の応用のための官能化したポリ(エーテルイミド)のポリマーに基づく代替膜の調製を報告した。このものの開発は、航空宇宙産業のためにもともと開発された高性能の材料としての芳香族ポリイミドの有用性の知識、および高い熱安定性、耐薬品性および有用な機械的性質のような有利な機能上の特性の認識によって動かされた。固形アルカリ膜のさらなる例は、有利な疎水性、高いガラス温度およびポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)(PPO)の加水分解安定性の認識の結果として、L Wu(ウー)らによって開発された膜のブレンドであり〔J. Membr. Sci.、310、2008年、577-585〕:クロロアセチル化PPO(CPPO)およびブロモメチル化PPO(BPPO))をブレンドし、このブレンドを、直接メタノール型燃料電池で使用するための固形水酸化物導電性アニオン交換膜を調製するためにアルカリ化を受けさせた。
【0038】
この技術における熟練者(当業者)に知られているように、ここで直前に記載されたポリマーのすべては、共通して、誘導体化される(dervatised)能力を、それによって永久荷電された金属イオンが含まれない固形アルカリ膜を提供するために有する。
【0039】
多くの商業上入手可能なアニオン交換ポリマーは、架橋ポリスチレンまたはスチレンジビニルベンゼン共重合体のような第四級アンモニウム塩に基づく。これら、および他のアニオン交換ポリマーにおいて、アニオン(例は、水酸化物イオン)に対しての、ポリマーに結合したカチオンの対イオンは、典型的には、ハロゲン化物で誘導体化されたポリマーおよび第三級アミンの間の反応によって導入され、次いでたとえば金属水酸化物溶液、例は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムとの反応によるアルカリ化(ヒドロオキシアニオンの導入)が続き、結果として生じる金属イオンで汚染された膜が脱イオン化された水で(典型的に)繰返し洗浄されることによって、基本的に金属イオンがなく満足のいくようにされる。例は、S F Lu(ルー)らによってQAPS(第四級アンモニウムポリスルホン)として記載されるアルカリ第四級アンモニウムの官能化されたポリ(スルホンエーテル)である〔Proc. Natl. Sci.、 USA、105、20611-20611-20614(2008年)〕。A201、A901のようなアルカリ膜は、Tokuyama Corp(トクヤマ社)、日本によって開発され〔H. ヤナギ、ECS Transactions、16(2008年) 257-262〕、およびFuMA-Thech GmbH(フーマテク社)、ドイツ国〔T Xu(スー)、J. Membrane Science、263(2005年) 1-29〕によって開発されたFAAシリーズの膜が、上述の燃料電池で用いることができる。
【0040】
そのような金属を含まない、アルカリの、および永久に荷電されたポリマーおよびポリマーブレンドが、本発明に従う固形アルカリ膜として用いることができる。
【0041】
先に記述したソリッドステートのアルカリ膜の調製によって与えられる利益の1つが膜に結合した対カチオンの使用を通して金属炭酸塩の生成の回避であることを、この技術の熟練の者は認めるであろう。このことから、本発明の種々の見地に従う燃料電池を動作させるために、アニオン交換膜について、それから燃料電池が水酸化物イオンを含むようにして製造され、それが水酸化物イオン交換膜として機能させられることは必要ではない。このことは、L A Adams(アダムズ)ら(下記)によって例示され、その者らは、炭酸塩で官能化された(carbonate-functionalised)Morgane(モーガン)ADP100-2の炭酸含量が、水素/空気およびメタノール空気の燃料電池において用いられるときに減少することを示した。M Unlu(ウンル)ら〔Electrochemical and Solid-State Letters、12(3) B27-B30(2009年)〕はまた、炭酸塩を導電性イオンとして用いるアニオン交換膜燃料電池を記載する。カソードに供給される酸化体がCO2を含む空気である場合、二酸化炭素は、重炭酸(HCO3-)または炭酸(CO32-)を形成するために燃料電池内で酸化状態下に反応することができ、重炭酸イオンが水(ならびに酸素および二酸化炭素)の存在下で発生する。あるいはまた、CO2は燃料からインシトゥ(原位置)に、例は、尿素から発生することができ、または炭酸または重炭酸イオンは燃料と共に供給されうる。これらのイオンが沈殿しないので(炭酸塩または重炭酸塩の塩類として)、本発明に従うアニオン交換膜を含む燃料電池が動作するとき、炭酸または重炭酸を含む膜は原位置に発生しうるだけでなく、アニオン交換膜は、そのようなもの、または他のアニオンに基づくか、または1つまたはそれよりも多くの水酸化物、重炭酸または炭酸イオンの混合物に基づくことができ、例は、L Aアダムズら(下記)によって記述された炭酸を交換されたモーガンADP100-2である。実際、モーガンADP100-2は、陰イオン交換膜の例として、燃料電池中に直接組み込むことができ、または本発明の種々の見地に従って用いることができる。このようにして、アニオン交換膜は、水酸化物イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、またはこれらの混合物を含むことができる。典型的に、膜はアルカリ膜であり、即ち、少なくとも若干の水酸化物イオン、随意に重炭酸および/または炭酸イオンを含むことができ、それらは原位置に生成することができ、または生成することができない。
【0042】
固形のアニオン交換膜、例は、アルカリ膜が、異なるポリマーのブレンドによって構成されうることは理解されるであろうが、たとえば、L Wuら(下記)により記載されたCPPO/BPPOブレンド膜をアルカリ化することによって導き出される。さらに、当業者は、機能(例は、水酸化物イオン伝導度)および機械的特性の満足な組合せが、物質の混合物を与えることによって適切に提供されうることを認識するであろうし、その一つ以上は望ましいアニオン伝導性の機能特性を提供し、その一つ以上の更なる構成要素は適切な機械的強度または他の特性を提供する。このように、本発明において有用な固形水酸化物イオン交換膜が提供されえ、それらは、前述したもののような水酸化物アニオン伝導性ポリマー、およびそのような水酸化物アニオン伝導特性を有しない他のポリマー、例は、PVC、ポリ(ビニルアルコール)PVA、PEG、ポリ(ビニルベンゼン)(PVB)、PTFEおよびPVDFのようなものの混合物である。中性のポリマーによって、ポリマーに共有結合したカチオンを伴わないポリマーが意味される。水酸化物イオン伝導性ポリマー、および水酸化物または他のアニオンを伝導しないけれども、たとえば、役に立つ機械的特性を有するポリマーの混合物との共働によって、溶液および分散物からのキャスティングで、それによって適切な厚さおよび他の寸法(次元)の膜を提供するためのような、この技術における熟練の者に手軽に親しまれている技術を通して、機械的および機能的な特性の望ましい組合せを理解することができる。このものの例として、そして本発明の特定の具体化において、本発明者は、CPPO〔または商業上入手可能なアニオン交換樹脂またはポリマー、たとえば、MTO-Amberlite(アンバーライト)-IRA-400〕〕およびPVAのブレンドを、およそ20:80から-80:20w/wの比率(典型的に、およそ40:60からおよそ60:40まで、例は、およそ50:50)においてアルカリ化することによって生産したアルカリ膜が適切な膜強さおよび水酸化物アニオン運搬能力を有することを見出した。
【0043】
そのような固形アニオン交換膜は、本発明のまだそのうえ更なる態様を形成する。この見地から見ると、本発明は、アルカリアニオン交換樹脂またはポリマー、たとえば、MTO-アンバーライト-IRA-400)およびPVAのブレンドを、およそ20:80から-80:20(典型的に、およそ40:60からおよそ60:40まで、例は、およそ50:50)のw/w比率で含む固形アニオン交換膜を提供する。
【0044】
中性または他の非アニオン伝導性ポリマーを包含することに加え、また、アニオン交換膜は、二酸化チタンまたは二酸化ケイ素のような無機物質、例は、そのために膜を通して分散した粒子として含むことができる。熟練者は、そのような物質、例は、CC Yang(ヤン)(下記)によって記載されたPVA-TiO2物質であるものを含む膜をよく知っている。
【0045】
燃料電池設計のための機構としての陽子交換の代わりに、水酸化物(または他のアニオン、例は、重炭酸または炭酸)交換に基づく燃料電池技術の1つの特定の利益は、非酸性(non-acidic)、例は、アルカリ性の、電解質の使用が、燃料電池におけるアノードおよびカソードの構成での貴金属触媒への依存を少なくし、そして実際にその使用を避けることができることであり、それはPEMFCsにおける酸性の環境への曝露に耐えることができない他の触媒がAMFCsにおけるアルカリ環境で用いられることができるからである。このように、本発明に係る方法を実践するとき、白金およびパラジウム系(特に、白金系の、白金および白金/ルテニウム系のものを含むもの)の触媒をアノードおよびカソードの双方として用いることができる一方、そのような高価で希少な金属が、ニッケルおよび銀のような非貴金属の触媒の代わりに作成された電極を用いて、本発明によって避けることができる。
【0046】
アノードで触媒として用いることができる適切な物質には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、白金(プラチナ)、パラジウム、タンタル、タングステン、ビスマス、スズ、アンチモン、鉛、および上記のいずれかのものの金属合金、酸化物、窒化物または炭化物、たとえば、金属窒化物のようなもので、例は、窒化クロム、コバルトモリブデン窒化物、炭化モリブデン、白金および白金/ルテニウムが含まれる。少なくとも一つのリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド(ランタン含む)ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズおよび鉛、および少なくとも一つのバナジウムクロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅(cooper、copper)、ニオブ、モリブデン、タンタルおよびタングステンを含む酸化物、窒化物または炭化物はまた、アノード用触媒として用いることができる。
【0047】
カソードで存在する触媒は、アノード触媒を製造することができるものと同様な物質から作成することができ、適切でありうる特定の物質には、銅、ニッケル、ニッケル含有合金、アルミニウム含有合金、リチウムニッケル酸化物のようなニッケル含有酸化物、リチウムマンガン酸化物およびリチウムコバルト酸化物;窒化クロム、炭化モリブデン、銀、銀含有合金および二酸化マンガン、たとえば、ニッケル、リチウムニッケル酸化物のようなニッケル含有酸化物、リチウムマンガン酸化物およびリチウムコバルト酸化物;窒化クロム、炭化モリブデン、銀および二酸化マンガンが含まれる。二酸化マンガンと同様に、Mn(IV)酸化物、他のマンガン酸化物、またはマンガン酸化物の混合物を参照すると当業者によって理解され、たとえば、Mn(III/IV)酸化物およびマンガン(II/III)酸化物のようなものを用いることができる。また、慣習的なアルカリ型燃料電池およびアルカリバッテリー〔アルカリセル(電池)〕のために用いられる電解二酸化マンガン(EMD)(たとえば、米国特許第5348726、5516604、5746902、6585881号参照)を、カソードとして用いることができる。
【0048】
触媒は、炭素粉、カーボンペーパー、カーボンクロス(炭素布)、ニッケルフォームのような導電媒体を有する粉体、メッシュ、発泡体(フォーム)または粉体の形態において用いることができる 〔F Bidault(ビドー)ら、Inter. J. Hydrogen Energy、34(2009年)6799-6808、および35(2010年)1783-1788〕。
【0049】
本発明の特定の具体化では、アノードは、カーボン(炭素)、上記の触媒物質を含むナノサイズの粒子、金属、金属酸化物、金属炭化物および金属窒化物のナノサイズ粒子が含まれるものを混合することによって形成することができる。ここで、ナノサイズの粒子によって、粒子が、1から100nmまで、たとえば、1から10nmまでの範囲内のサイズを有する粒子を意味し、それはこのような小さな粒子のサイズが、材料の所定量の触媒のために利用可能な比表面積を増加させるからである。ナノサイズの金属粒子の例は、TEMによって測定されるように直径でおよそ2nm(たとえば、直径で約1から3nmまで)のニッケル粒子である。このようなナノ粒子は概して、S Luらの教示(下記)に従って調製することができる。サイズは透過型電子顕微鏡を使用することによって確立することができる。手順は、Luらによって記載され、ナノサイズのニッケル粒子を調製するとき、Na3C6H5O7・2H2Oを含めることによって変えることができる。本発明者らは、粒子が室温で乾燥させることができることを見出す。
【0050】
本発明の特定の具体化では、カソードは炭素およびナノサイズの二酸化マンガン粒子の混合物によって構成されていてもよい。適切な粒子はC Xuらの教示に従って調製することができる〔J. Power Sources、180(2008年)664-670〕。得られる二酸化マンガン粒子は、他の方法によって調製されるマンガン酸化物を超えた有利に高い表面積を提供する。
【0051】
本発明は、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩の燃料電池への直接供給を頼りにする。典型的に、アンモニアを燃料として用いる場合、これをガス状アンモニアまたはアンモニアの水溶液として供給する。アンモニウム塩、またはその溶液は、使用することもできる。したがって、本発明は、先行技術とは異なり、そこでは、これらの化学物質の燃料としての使用が記載され、そしてこれらの化合物の1つが、たとえば、水素を提供するために最初に改質され、それは燃料電池に供給され、そして燃料電池によって直接消費される燃料である。
【0052】
アンモニアは、燃料として用いられ、これが燃料電池に供給される場合、これはアンモニアガス、またはアンモニアの水溶液のいずれかとして、たとえば、約0.001 Mからの溶液が飽和するまでの濃度で配送することができる。アンモニアガスまたはアンモニアの水溶液のいずれかを、これが便利な場合、液体アンモニアの貯蔵庫から生成することができる。代わりに、塩化アンモニウムのようなアンモニウム塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩またはシュウ酸塩の溶液を用いることができる。典型的に、そのような塩は採用されないが、しかし、それはアンモニウムイオンの酸化によって形成された結果としての酸が、水酸化物含有重合体電解質膜を損傷することがあるからである。さらなる代わりのものとして、アンモニアの炭酸塩、炭酸アンモニウムおよびカルバミン酸アンモニウムのような、二酸化炭素を産生させるイオンを含むアンモニウム塩を、本発明に従って用いることができる。
【0053】
尿素を燃料として用いる場合、これは水溶液として、燃料電池に好都合に導入することができる。用いられうる尿素の濃度には、特に制限はない。任意の好都合な濃度は、約0.01%または約1%w/v、または約10%w/vから、最高で尿素の水溶液が飽和する濃度までで用いることができる。代わりに、尿素の溶液以外の調剤物、ペーストまたはゲルのようなものを(典型的には、連続相として水と共に)用いることができ、これらが適切なポンプ圧送装置の使用により燃料電池中に操作される。知られているように、商業上の尿素は、一定の汚染物質を伴っていることが多く、そして用語の「尿素」はこれらの汚染物質の不存在下での尿素の存在を必要とすることを意図するものではなく、それには、アンモニアカルバメート、炭酸塩、重炭酸塩、ギ酸塩および酢酸塩を一つ以上含むことができる。
【0054】
本発明の一定の具体化では、第四級アンモニウム水酸化物、水酸化アルカリNH4HCO3、(NH4)2CO3、NaHCO3およびNa2CO3のような1つ以上の溶解性の無機または有機水酸化物、重炭酸および炭酸を、アニオン伝導性膜のイオン伝導度を増加させ、およびアノード分極抵抗を減らすために燃料に添加することができる。
【0055】
本発明の特に便利な見地は、肥料としての農業での使用のための、および自動車において亜酸化窒素をトラップするための添加剤として、尿素の供給のために存在する既存の商品流通網があるということである。そのような商業上入手可能な尿素溶液の例は、本発明による使用に適しており、商品名アドブルーの下に、商用ディーゼル乗り物に使用される亜酸化窒素の除去のための尿素の純粋な水溶液で販売される、水中32.5%の溶液として商業上入手可能である。
【0056】
あるいは、尿素燃料電池は、燃料としての尿を用いることができる。このようにして使用される尿は、人間/動物の排泄の生成物であり、廃棄物でないが、エネルギー源である。1日あたりに1.5リットルの尿を生産するすべての成体の場合、2重量%の尿素を含み、尿素の11kgが毎年生産される。これは2700kmについて車を運転するために使用できる液体水素の18kg中のエネルギーに相当する。
【0057】
アンモニアはまた、安全に処理することができる普通に用いられる産業上および農業上の化学物質である。
【0058】
アンモニアの場合の配送のための適切な装置は、鋼またはステンレス鋼の、チューブのような導管によるもので、当業者に明らかであろう。同様に、当業者は、たとえば、アンモニア塩の、または尿素の溶液を操作可能にする装置を構築する方法を認識する。概して、燃料は、重力供給法によって、またはポンプ圧送によって導入することができる。
【0059】
カソードでは、酸化体を、還元によって水酸化物アニオンを提供することができる任意の酸素を含有する種であってよい。便利には、そして典型的には、酸化体(酸化剤)はそれ自体酸素であってよく、また好都合には空気として供給されうる。あるいはまた、精製した酸素は、必ずしも使用することが必要でないことがある。酸化剤は、ガス状または液状であってもよい。典型的には、特に水酸化物(または重炭酸)イオンが電解質をアノードまで通過する導電性の種として使用される場合、液状の水または蒸気を、カソードに酸化剤と共に供給する。酸化剤に加え、重炭酸または炭酸について、電解質をアノードまで通過する導電性種として用いるのが望ましい場合、酸化剤に加えて二酸化炭素が有利に、カソードにて、そのようにしてか、または空気中でその存在を手段として導入することができる。
【0060】
この技術において知られているように、燃料電池スタックは、高い電圧が得られるか、またはより一層強い電流が引き込まれることが許容されるかのいずれかになるように、連続または並列に構成された複数の燃料電池である。本発明は、方法の実践において、および本発明の他の具体化に従い燃料電池スタックの使用を意図する。
【0061】
本発明は、さまざまなデバイス(装置)で、それは静止または非定常であることができるものに供給する電気の生成を可能にするのに役立つ。デバイスは、燃料電池、または燃料電池スタックを含むか、または含まなくてよいが、典型的には含んでおり、本発明に従って動作される。定常(静止)デバイスは、固定された機械のような携帯できないデバイスまたは、より一層典型的には、携帯電話、デジタルカメラ、ラップトップコンピュータまたはポータブル電源パックのような携帯可能なデバイスであることができ、そこでは本発明の使用は、既存のバッテリー技術の交換または補完を可能にすることができる。本発明の特定の具体化では、その方法は、乗り物のような非定常デバイスに動力を供給するのために用いることができる。本発明の特定の具体化の更なる例には、潜水艦のような水中機、およびロケットおよび他の航空応用が含まれる。また、本発明は、都市汚水を清掃し、そして電気を生成させるために用いることができる。この発明に基づいて、再生可能および持続可能な尿の燃料電池を開発することが可能である。
【0062】
本発明は、このようにして、低コストのアルカリ膜電解質、およびニッケル、銀およびMnO2のような非貴金属触媒に基づく直接的な尿素/尿、およびアンモニアまたはアンモニウム塩型燃料電池を提供する。定常発電のために、高出力密度は、セルそれ自体のコストが低い限り、厳しい条件ではない。高い出力は、拡大した燃料電池の領域または単一セルの数を増加させて使用することによって達成することができる。
【0063】
本発明の利益の一つは、この方法が、必要に応じて著しく低い温度で、それが、たとえば、Ganley(ギャンリー)ら(下記)によって報告されたように、200および450℃の間で実行できることである。このように、本発明の方法は、およそ周囲温度(約20から25℃まで)のような低い温度で、最大約150-200℃までで実行することができる。典型的に、これらの方法は、約5から約200℃まで、例は、15から約150℃までの範囲の温度で実行される。一定の具体化では、この方法は、望ましくは約20℃より高い、約50℃よりも高い、または約80℃よりも高い温度で実行することができる。
【実施例】
【0064】
本発明を、下記に続く非制限的な例で例示する。
理論的な開回路(オープンサーキット)電圧(OCV)および効率の計算のための熱力学パラメータ。
反応:
2CO(NH2)2+3O2 ---> 2N2+2CO2+4H2O
【0065】
【表1】
*CRC Handbook of Chemistry and Physics(化学および物理学のCRCハンドブック)、編集者:R. C. Weast(ウェアスト)、第63版、CRC Press, Inc.(CRCプレス社)、Boca Raton(ボーカラトーン)、フロリダ州、1983年からのデータ。
【0066】
【表2】
*以下からのデータ:
Charles(チャールズ)A. Liberko(リーベルコ)およびStephanie Terry(ステファニー・テリー)、A Simplified Method for Measuring the Entropy Change of Urea Dissolution(尿素溶解のエントロピー変化を測定するための簡略化された方法)、J. Chem. Edu.、78、1087-1088(2001年)。
§希薄尿素溶液の熱容量を水のそれに同等と仮定する。
【0067】
評価の間、化合物の熱キャパシタンスが温度範囲において変化しないことを仮定した。現実の状態では、それらは変化するが、自由エネルギー変化にほとんど貢献しない。
【0068】
例1:
次のアルカリの膜を含む燃料電池を構築した:
商業上のアニオン交換樹脂に基づく複合膜の調製:
【0069】
ポリビニルアルコール(PVA)、分子量50,000〔Aldrich(アルドリッチ社)(2g)を、ガラスビーカー中に入れた。12mlの脱イオン水を、PVAと混合するためにビーカー中に加えた。次いで混合物を、ゲルが得られるまで2時間85℃(水浴)で加熱した。室温にまで冷却した後、ゲルを更なる使用のために貯蔵した。2グラムの商業上のアニオン交換樹脂MTO-アンバーライト-IRA-400(アルドリッチ社)を、めのう乳鉢(モルタル)に入れ、そして粉体にグラインドした。PVAゲルを、樹脂粉と一緒に混合し、混合物を形成するために、乳鉢に移した。ガラスプレート上に混合物をキャスティングし、夜通し空気中で(または真空オーブン中で)室温にて乾燥させた後、複合膜をAMFC用の膜電解質アセンブリー(MEA)のために作成した。膜は、将来の使用のために、0.5MのNaOH溶液中に蓄えることができる。NaOH溶液から取り出した後、膜を、MEAのために使う前に、数回について水で洗浄することができる。
セルA
【0070】
50:50の重量比を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(アルドリッチ社、60重量%の分散物および水)およびKOHを混合して、15分間150℃で乾燥させた。結果として生じるPTFE-KOH複合物を、膜に押し込み、そして電解質として使った。
【0071】
膜電極アセンブリー(MEA)を、MnO2/C(20重量%のMnO2)カソードおよびニッケルアノードと共に製造した。これらは、以下の通りに製造した:
【0072】
カソードは、KMnO4、Mn(CH3COO)2および炭素〔Cabot Valcun(カボート・バルカン)XC72R〕の共沈法からC Xuらによって記述されたように調製した〔J. Power Sources、180、664-670(2008年)〕。
【0073】
ニッケルアノードを、S F Luら〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA、105、20611-20614(2008年)〕に従いNiCl2.6H2OおよびKBH4から調製した。TEMで観察されるように、ナノサイズのニッケル粒子〔ニッケル粒度(粒径)が約2nm〕を得るために、若干のクエン酸三ナトリウムを、水性NiCl2溶液に加えた。調製されたままのニッケルを炭素と、50:50の重量比で混合して、そしてアノードとして使った。
【0074】
カソードおよびアノードの負荷は、それぞれ20mg/cm2および10mg/cm2であった。
【0075】
カーボン紙〔Toroy(トロイ)090、E-TEK〕を、双方のセルのための集電装置として使った。
セルB
【0076】
市販の強塩基性アニオン交換樹脂MTO-アンバーライト-IRA-400(アルドリッチ社)をOH-イオン伝導性成分として用いた。MTO-アンバーライト-IRA-400およびPVAの重量比は50:50である。PVAは、温度〜85℃に加熱することによってフォームPVAゲルのために脱イオン水において溶解した。粉体に粉砕したアニオン交換樹脂は、次いでPVAゲルと共に混合し、ガラス板上にキャストして、MEAに使用する複合膜を形成するために夜通し(overhight)室温で乾燥させた。60重量%のPtRu/C(E-TEK)を1mg/cm2の負荷でアノードに使用し、およびMnO2/C(20重量%MnO2)をカソードとして使用した。カソードはセルAで使用されるのと同じであった。
セルC
【0077】
アルカリ膜を、L Wuら〔J. Membr. Sci、310、577-585(2008年)〕によって記載された方法で合成したクロロアセチルポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)(CPPO)のブレンドから作成した。合成されたCPPOを、ポリ酢酸ビニル(PVA)(セルBに記載されたようなゲル状の形態において)と複合膜を形成するために、50:50の重量比でブレンドし、それは24時間の架橋のためにトリメチルアミン中に置き、次いで電解質として使用する前に、アニオン交換のために24時間水において2 MのKOH溶液での浸漬を続けた。
【0078】
電極はセルAに記載のとおりであった。
燃料電池の動作
【0079】
水素、アンモニア、アンモニア溶液および尿素溶液(アド・ブルー)を、燃料電池のテストのための燃料として用い、そしてカソードに供給される酸化剤として酸素を用いた。酸素を、燃料電池に入れる前に、室温で水を通過させた。水は、周囲温度であることができ、または蒸気としてカソードに供給することができる。
【0080】
CO32-/HCO3-イオンが固形アルカリ膜においてアニオンとして働く場合、二酸化炭素はまた、カソードに供給される。これは、それ自体で供給することができ、または空気において供給される。CorrWare(コルウェア)/CorrView(コルビュー)ソフトウェアを組み込んだSolartron(ソーラートロン)1287A電気化学的インタフェース(界面)を、燃料電池の性能を測定するために使用した。
結果:
アンモニア/酸素および水素/酸素の燃料電池の開回路電圧(OCV)および効率の比較
【0081】
図2(a)に描くように、アンモニア/酸素燃料電池の理論的なOCVは、室温で1.17Vであり、同じ温度での水素/酸素の燃料電池のための1.22 Vのものよりもわずかに低い。これらのOCVsが、温度範囲20-90℃において大きく変動しないことに注目される。
【0082】
アンモニア/酸素の燃料電池のより一層低い理論的OCVにもかかわらず、燃料電池の理論効率は、室温(25℃)で88.7%であり、同じ温度での水素/酸素の燃料電池のそれ(83%)よりもわずかに高い。したがって、直接アンモニア燃料電池の動作が室温でも実現可能であることは明らかである。
セルAの動作
【0083】
これらの結果を図3(a)および(b)に描く。
図 3(a)は、セルAの動作の間の時間に対するOCV変化を示し、そして空気中で観察された0.48Vの初期のOCVを示す。これはニッケルアノードおよびMnO2カソード間の電位差である。ウェット酸素の導入は、OCVに有意な影響を与えない。しかし、アンモニアを燃料電池のアノード側に導入した時、OCVはすぐに減少し、ニッケルが、室温でさえも、アルカリ性媒体においてアンモニアが窒素および水に変換する活性な触媒であることが示される。
【0084】
図3(b)は、セルAについてのアンモニア/酸素の燃料電池の性能を示す。11.6mA/cm2の密度の最大電流および2.5mW/cm2の出力密度が室温で達成されたことを示す。セルAのOCVが理論値よりもさらに低く(図2(a)参照)、これは電極の分極に起因すと信じられることに注目される。OCVの増大は、日常的な材料組成および微細構造の最適化によって達成することができる。
【0085】
ニッケルおよびMnO2電極によって生成された初期OCVより低くセルを動作させることが、避けるべきであり、それはニッケルがアンモニアと並行して酸化されうるからであることに注目される。
セルBの動作
【0086】
図4は、セルAに似ているが、PtRu/Cアノードに基づいたセルBについての燃料電池の性能を描く。室温で、セルBのOCVは、H2が燃料として使用されたとき、最大電流密度2.9mA/cm2を有する0.74Vである(図4a)。同様のOCVは達成されたが最大電流密度は、アドブルー(32.5%尿素水溶液)を燃料として直接用いたときに倍増した。図4bは、アンモニアおよびアンモニア溶液をそれぞれ燃料として用いたとき、セルBの性能を示す。アンモニア溶液を用いたときOCVは0.85 Vに達した。アンモニアガスはまた燃料として用いることができるが、性能はアンモニア溶液のそれよりも低い。結論として、水素、アンモニア、アンモニア溶液および尿素溶液は、すべてAMFCsのための燃料として用いることができる。妥当な性能は、室温で達成することができる。
【0087】
これらの実験は、これらのセルで用いる負荷では、ニッケルは、室温で、直接アンモニア燃料電池用負極として使用したとき、白金に匹敵する活性を(より一層良好ではないにしても)見せたことを示す。
セルCの動作
【0088】
図5(a)は、セルCの動作の際、水素およびアンモニアを燃料として用いるとき、どのようにOCVが変化するかを示す。電極の動力学的プロセスは、水素を燃料として用いるとき室温で非常に低速であり、水素を燃料として用いるとき、OCVが10分後に0.61 Vに達することを観察することができる。しかし、アンモニアを用いると、電極のプロセスはより一層速く、OCVが6分以内に0.81Vに達する。カソードが同じであるので、二つの異なる燃料を伴うセルのOCVの差がアノードでの触媒プロセスによるものであることが推測される。したがって、ニッケルは、このようにして、双方の室温のアンモニア燃料電池のための極めて良好なアノードとして例証され、そして触媒プロセスは、負けず劣らずのものであり(それより良好ではないにしても)、燃料として水素を用いて動作する燃料電池と共に観測される。
【0089】
図5(b)は、二つの異なる種類の燃料を伴うセルの性能を示す。セルは室温ででも妥当な性能を見せた。燃料として水素およびアンモニアを用いるセルのOCVは、それぞれ0.65Vおよび0.84Vであった。室温では、最大出力密度は、それぞれ水素およびアンモニアについて10.8および16.4mW/cm2であった。したがって、水素と比較して、アンモニアはアルカリ膜燃料電池の実際に負けず劣らずの燃料である。
例2:
アルカリ膜の調製:
【0090】
複合膜は、市販の強アニオン交換樹脂(AER)(アンバーライトIRA 78、水酸化物の形態、アルドリッチ社)およびポリビニルアルコール(PVA)、(MW 50,000、アルドリッチ社)を、60/40の重量比で作成した。PVAを、脱イオン化した水に溶解して、ゲルを形成するために、2時間85℃でかき回した。ゲルを室温にまで冷却した後、市販の樹脂を、最初に、めのう乳鉢において粉体に粉砕して、それからPVAゲルと混ぜ合わせ、ガラスプレート上にキャスティングし、そしてAER-PVAのブレンド膜を形成するために、室温で真空オーブンにおいて乾燥させた。
セルD
【0091】
燃料電池計測のための膜電極アセンブリー(MEAs)を、Pt/CアノードおよびAER-PVAブレンド膜と共に製造した。Pt/C(30重量%、E-TEK)を、0.6mg/cm2の負荷でのアノードとして用いた。カーボン紙〔Toray(東レ)090、アノード用に耐水性、カソード用にプレーン、E-TEK〕を、集電装置として用いた。
セルE
【0092】
ナノサイズのニッケルを、S Luら(下記)によって、NiCl2・6H2O(アルファ、99.3%)、CrCl3・6H2O(アルファ、99.5%)およびKBH4(アルファ、98%)から調製した。若干のクエン酸三ナトリウムを、ナノサイズのニッケル粒子(一次粒径〜2nm)を得るために、NiCh水溶液に加えた。ニッケルを、室温だけで乾燥させた。調製したままのナノサイズのニッケルをカーボン(カボート・バルカンXC-72R)と、アノードとして使うために、50/50の重量比で混ぜ合わせた。ナノサイズの銀を、前駆体としてAgNO3(アルファ、99.9+%)を使うニッケルの調製のためのものに類似した方法によって調製した。銀は、50/50の重量比によって、炭素(カボート・バルカンXC-72R)と混ぜ合わせた。カソードでのAgおよびアノードでのNiの負荷は、〜20mg/cm2であった。他のパラメータは、セルDでと同じである。
セルF
【0093】
セルEでと同じNi/Cアノードを用いた。20重量%のMnO2/Cは、KMnO4〔Avacado(アバカド社)、99%〕、Mn(CH3COO)2・4H2O(アルドリッチ社、99.99%)および炭素(カボート・バルカンXC-72R)から、C Xuら(下記)による共沈法によって調製した。カソードでのMnO2およびアノードでのNiの負荷は、〜20mg/cm2であった。他のパラメータは、セルDでのと同じである。
燃料電池の動作
【0094】
異なる濃度での尿素溶液を、尿素〔Alfa Aesar(アルファ・エーサー)、ACS等級〕および脱イオン化した水から調製した。市販のアドブルー(32.5%の尿素溶液)はローカルガレージによって供給した。また、人間の尿を、燃料電池テストのための燃料として用いた。尿素溶液は、ペリスタ(蠕動)ポンプ〔Watson Marlow(ワトソン・マーロー)323D〕によって、アノード側にポンプ圧送した。ウェット空気は、空気を室温水に通すことによってカソードに供給した。セル面積は1cm2であった。コルウェア/コルビュー・ソフトウェアと一体となったソーラートロン1287A電気化学的インターフェースを、燃料電池性能を測定するのに用いた。
結果:
尿素/酸素および水素/酸素の燃料電池の開回路電圧(OCV)および効率の比較
【0095】
25-90℃の温度範囲での水素および尿素の燃料電池の理論的なOCVおよび効率を、利用可能な熱力学データを通して推定した〔図7(a)および7(b)〕。
【0096】
図7(a)に描くように、尿素/酸素の燃料電池の理論的なOCVは、室温で1.146Vであり、同じ温度での水素/酸素の燃料電池のための1.23Vのそれよりもわずかに低い。これらのOCVsが温度範囲20-90℃で大きく変動しないことに注目される。
【0097】
尿素/酸素の燃料電池のより一層低い理論的なOCVにもかかわらず、燃料電池の理論的な効率は、室温(25℃)で102.9%であり、それは同じ温度での水素/酸素の燃料電池(83%)のものよりおよそ20%高い〔図7(b)参照〕。
【0098】
尿素燃料電池の高い理論的な効率は、反応のポジティブなエントロピー変化によるものである。効率が100%を超えるとき、物理的に、燃料電池は環境から熱を吸収し、そして慣習的な水素PEMFCsの場合でのように熱交換問題を軽減する反応物質の化学エネルギーと一緒にそれを完全に電気に変える〔S. G. Kandlikar(カンドリカー)、Z. J. Lu(ルー)、Appl. Thermal Eng.、2009年、29、1276〕。
セルDからEまでの動作
【0099】
尿素燃料電池は、アルカリ膜を用い、双方の電極としてどちらもPt/Cを用い(セルD)、非貴金属Niアノード、およびAg/Cカソード(セルE)またはNi/CアノードおよびMnO2/Cカソード(セルF)のいずれかを用いて研究した。
セルDの動作
【0100】
セルDについての尿素/空気の燃料電池性能を、図8(a)および(b)に描く。
図8(a)は、1Mの尿素水溶液を燃料として用いたとき、尿素/空気について0.5VのOCVが観察されたことを示す。室温でのより一層低いOCVは、室温でのPtの触媒活性が双方の電極上で分極損失(polarisation loss)を起こすことを示した。3Mおよび5Mの尿素溶液が使われるとき、セルのOCVは減少した。希薄な尿素溶液の性能はまた、より一層高いことが示され、高濃度が動作状況の下で必要でないことが示された。
【0101】
この現象を確かめるために、異なる尿素供給源を、燃料電池で用いた。図8(b)は、アドブルー、市販の32.5%(~5M)の尿素水溶液がテストされたときの燃料電池性能を示す。アドブルーの種々の濃度を燃料として用いるとき、より一層高いOCVsが相当する尿素濃度について観察された。最大出力(電力)密度はアドブルーについて0.3mW/cm2であり、5Mの尿素を用いるとき0.2mW/cm2よりも高いものが達成された(図8(a))。より一層高い電力密度は、最大電流密度がわずかに低いが、相対的なより一層高い電圧から利益を享受する。これらの実験は、尿素の異なる供給源での不純物の痕跡量が燃料電池性能に影響を及ぼすことを示す。
【0102】
異なる濃度でのアドブルー溶液(脱イオン水を添加することによる)を、燃料として用いたとき、尿素溶液と同じ傾向が観察され;希薄アドブルー溶液は純粋なアドブルーよりも良好な性能を見せた。10%アドブルー溶液は、最高の電流および電力密度を示す。10%アドブルー溶液の尿素濃度は、尿と同じ尿素のレベルを有し、尿が良好な燃料でありうることが示された。
セルEの動作
【0103】
アルカリ膜燃料電池の利益の一つは、低コストの触媒を電極として使用できることである。セルEおよびFは、上記で詳細に説明したように、アノードとしてNi/Cを、カソードとしてAg/CまたはMnO2/Cを用いて構築した。セルEについて、1Mの尿素溶液を燃料として用いたとき、室温で、0.29VのOCVが観察され、それはPt/Cが双方の電極で用いられたとき、達成された0.5Vより低い。電力密度は、セルDでのものに比べて約75%低く、Ptがまだ尿素燃料電池のためのより一層良好な触媒であることを示す。3Mの尿素溶液を使用した場合、性能が再び低下した(図9(a))。また、異なる濃度でのアドブルーを、燃料として使用した。セルDで注目されたように、希薄なアドブルー溶液は、より一層良好な性能見せる(図9(b))。人間の尿の性能もまた、セルEの燃料として試験した。性能がわずかにアドブルーのものよりも低いが、3Mの尿素溶液と同程度であることが見出された。この結果は、尿が燃料電池のために使用できることを示す。
セルFの動作
【0104】
セルFを伴い、MnO2/Cをカソードとして用いた場合、セルのOCVは、Ag/Cを用いたときの、セルのそれよりも高かった(図10(a))。電力密度はまた、わずかに高くなり、それは相対的により一層高いOCVから利益を享受する。
【0105】
概して、電極での触媒活性は高温で増加する。このことは、セルFの動作温度が50℃まで上昇したとき、より一層高いOCVおよび電力密度によって確認される。1.7mW/cm2の最大電力密度は燃料として1Mの尿素溶液を用いて達成された(図10(b))。これは、室温で動作するセルに比べ6倍も高い(図10(a))。50℃での低コストの触媒に基づくアルカリ膜燃料電池の性能は、室温でのPt電極を用いたものよりも良好である。低コストの触媒が尿素燃料電池において用いられるとき、より一層高い動作温度が望まれる。アドブルーの性能は、1Mの尿素溶液とほぼ同じであり、アドブルーがまた、低コストの触媒に基づくセルFのための燃料として用いることができることを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特にアニオン交換膜を含む燃料電池の使用のための方法に関し、それは電気を発生させるために燃料として尿素、アンモニア、またはアンモニウム塩を消費する。本発明はまた、アニオン交換膜および尿素、アンモニア、またはアンモニウム塩を含む燃料電池を、およびそのような燃料電池を含む装置を、および燃料電池を動作させることから発生する電気を利用することによって装置に動力を供給する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池技術は目下、化石燃料の世界的に有限な供給が使い果たされるような、エネルギー危機に対処するのに役立つ可能性があるとして、よく認識されている。このように、燃料電池技術の適用は、差し迫るエネルギー危機、そして更には気候変動の双方での対策(闘い)において重要な役割を演じる公算が高い。
【0003】
知られているように、燃料電池は、それに供給される燃料および酸化体(酸化剤)から電気を発生させる電気化学的装置である。燃料電池では、燃料が消費され、そして電子はアノード(電池の負極)側で発生する。発生した電子は、外部回路を通してカソードに強制的に押し出され、そこではそれらが酸化体、典型的に空気中に存在する酸素と反応する。アノードおよびカソードは電解質によって分けられるが、発生した電子がアノードからカソードまで流れる外部回路によって接続され、それによって電力が利用されるようになる。
【0004】
非常に大まかに言えば、多くの燃料電池は、2つのカテゴリー(範疇)に分類される。最初に、いわゆるプロトン交換膜燃料電池、時にはポリマー電解質膜燃料電池(双方ともPEMFC)では、水素または他の基質は、陽子およびアノードでの電子の発生をもたらす燃料として機能する。電子は外部回路をカソードまで通り抜け、陽子は重合体の電解質膜をカソードまで通り抜ける。そこでは、陽子、電子および酸化体(典型的には酸素)は、結びついて水分子を形成する。PEMFCsは、酸性のプロトン伝導性重合体膜、典型的には、適切な厚さのキャストフィルムまたは押出しフィルムを採用し、機械的なバリア特性を提供し(カソードおよびアノードを分けるために)、まだ陽子の迅速な輸送を許容する。PEMFCsで使用されている最もよく知られる膜はDuPont(デュポン社)のNafionTM〔ナフィオン(商品名)〕、米国特許第3,718,627号に記載されたポリ-スルホン化ペルフルオロポリマー(perfluoropolymeric)材料である〔Grot(グロット)らへのもの〕。
【0005】
水素をそれ自体、たとえば、PEMFCsを含む燃料電池における燃料として用いることに加え、多様な水素含有燃料が燃料電池において使用されており、それらは水素燃料を提供するために改質される。その上、いわゆる直接燃料電池は、燃料を、間接燃料電池においてアノードにて反応が起こされる水素を提供するためにそれに最初に改質ステップを受けさせることなく、酸化させる(そしてそのように燃料を直接使う)。したがって、水素を燃料供給する燃料電池は「直接水素型燃料電池」として考えられていた。しかし典型的に、水素以外の燃料の使用は、ここに含まれ、直接燃料電池に言及するとき、それが意図される。これまで報告された直接燃料電池の例には、ボロロハイドライド(bororohydrides)、メタノールおよびギ酸に基づくものが含まれる。
【0006】
多くの燃料電池が入る第2の範疇は、陽子の電解質を通じての通過ではなく、むしろ水酸化物アニオン(陰イオン)の通過に依存する。「古典的な」アルカリ型燃料電池は、Francis Bacon(フランシス・ベーコン)によって開発され(そして時に、ベーコン燃料電池と称され)、そしてたとえば水酸化カリウムのような液状アルカリ電解質を含み、多孔性無電解支持体内で典型的に飽和される。しかし、最近、固形膜、即ち、水酸化物アニオン交換膜を含むアルカリ型燃料電池、事実上すべてのソリッドステート(固体)のアルカリ型燃料電池を開発するために、取組みが行われた。しかし、「アルカリ型燃料電池」というそのような語がベーコン燃料電池に言及するために、この技術で主に使われる点に注目しなければならない。このことから、アルカリ膜(alkaline membrane)燃料電池(AMFCs)は正確な説明であるが、「ソリッドステートアルカリ型燃料電池」にどのように言及するかに関する意見の一致は少ないと考えられる。
【0007】
PEMFCsまたはAMFCsが、陽子および電子をアノードで発生する燃料として、水素を用いるかどうかは、アノードで陽子を発生する能力がPEMFCsでの必要条件であり、−直接メタノール型燃料電池で、たとえば、陽子、電子および二酸化炭素がメタノールおよび水からアノードにて発生するので−、オンボード水素吸蔵施設(on-board hydrogen storage facility)を提供する能力は、難問として、および輸送の用途での燃料電池の使用への制限として残る。水素は、アンモニア、メタンおよびメタノールのような低分子量の化合物中に蓄えられることができ、それらの分子はそれぞれ17.6、25.0および12.5重量%の水素を含む。とりわけ、特に液状アンモニアのエネルギー密度は非常に高い。このように、4kgの水素のオンボード貯蔵のために、500バール(bar)(1バール=0.1MPaとして50MPa)の圧力で125リットルが必要とされ、液体水素が使われるならば47リットルであり、しかし、45リットルの水素だけが液状アンモニアによって提供される。尿素のエネルギー密度はまた、圧縮したか、または液状の水素より高く、それはそれをポテンシャル(潜在的)エネルギー担体にする。固形粉体として、尿素は特に簡単に蓄えられ、そして輸送される。尿素は、効果的に10重量%の水素を含み、そして潜在的な間接水素貯蔵物質である。
【0008】
最近まで、説明されていた燃料電池においてアンモニアを用いるためのアプローチ(研究方法)のほとんどが、アンモニアの高温での水素および窒素への転換(改質)に関与する〔たとえば、L Li(リー)とJ A Hurley(ハーリー)(Inter. J. Hydrogen Energy、32、6-10(2007年))参照〕。アンモニアを水および窒素に酸化するためのアンモニア燃料電池の米国特許第7,140,187号〔Amendola(アメンドラ)への〕でも言及されている。この特許は、燃料電池の例として、固形酸化物燃料電池および溶融炭酸塩型燃料電池のような高温燃料電池およびアルカリ型燃料電池およびリン酸燃料電池のような低温燃料電池に言及する。溶融KOH電解質に基づくアンモニア燃料電池は、J C Ganley(ガンリー)によって解説された(J. Power Sources、178(1)、2008年、44-47)。
【0009】
上記したように、アンモニアがPEMFCsで使用される最も普通のアプローチは、高温でアンモニアを水素および窒素に転換することである(L Liら、下記)。しかし、なんらかの転換されてない(改質されてない)アンモニアが、PEMFCsに存在する酸性電解質を害する。アンモニアをPEMFCsと共に用いる問題に対処する1つのやり方が、アルカリ型燃料電池において燃料としてアンモニアを用いることにあると最近報告された〔T Hejze(ホーゼ)ら(J. Power Sources、176、(2008年)、490-493)〕〕。知られているように、アルカリ型燃料電池は、電解質を含み、それはアルカリ性水溶液、例は、多孔性マトリクス内に溶液として存在する水酸化カリウムによって構成されるカソードおよびアノードの間に介在される。Hejzeら〔同個所(ibid)〕は、白金(プラチナ)をカソードおよびアノードに含む85℃で分けられたアルカリ型燃料電池を記述する。
【0010】
燃料電池のための燃料源としての尿素の使用は、アンモニアでのものよりも報告されなかったようにさえ思われる。米国特許第7,140,187号(下記)は、尿素および水を含む組成からエネルギーを発生させる方法および装置を記述する。しかし、ほとんどの具体化において、尿素は、アンモニアまたは水素のいずれかを提供するのに用いられ、そのいずれかは、水およびエネルギーを形成するために酸化され、またはアンモニアは窒素および水素にまで改質され(reformed)、そして次にその水素成分は水およびエネルギーを形成するために酸化される。およそ室温からおよそ200℃までのいずれかの温度での尿素燃料電池において、またはおよそ700℃およびおよそ1000℃の間の温度にて動作させる固形酸化物燃料電池または溶融炭酸塩型燃料電池において、尿素の酸化が言及されている。本発明者の知識の及ぶ限りでは、燃料電池における尿素の直接使用が何らの他の報告にあったようにも考えられない。
【0011】
尿素は、非毒性の低コストの工業製品であり、広く肥料として使用される。それは大量に、天然ガスまたは石炭から生産されたアンモニアから合成することができる。AdBlue(アドブルー、商標)、欧州のアドブルー尿素選択的触媒還元(SCR)プロジェクトによって開発された32.5%尿素溶液は、ディーゼル駆動の乗り物によって生成されるNOxを除去するために世界中で利用可能である。尿素が広く利用されているにもかかわらず、尿素またはアドブルーから電気を生成することができる技術は今のところない。
【0012】
尿素の産業による合成の間、様々な尿素濃度を有する大量の汚水が形成される。およそ2-2.5重量%の尿素を含有する人間または動物の大量の尿が、毎日生じる。都市下水中に著しいレベルの尿素が存在するが、利用可能な脱窒技術は、高価で、そして非効率的である。最近では、尿または尿素が豊富な汚水から、水素が電気分解により生成できることが報告されている〔B. K. Boggs(ボッグズ)、R. L. King(キング)、G. G. Botte(ボッテ)、Chem. Comm.、2009年、32、4859〕。しかし、尿または尿素が豊富な汚水から直接電気を発生させることがより一層効率的である。
【0013】
K Asazawa(アサザワ)ら〔Angew. Chem. Int. Ed.、46、8024-8027(2007年)〕は、固形水酸化物アニオン交換ポリマー膜を含む直接ヒドラジン燃料電池を報告し、そして乗り物用のそのような燃料電池の使用を示唆した。しかし、ヒドラジンの変異原性に対処するため、著者らはヒドラジンの固定を伴う解毒技術の併用を報告した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,140,187号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、水素以外の燃料を直接的に用いる燃料電池を含む、経済的および環境的に許容可能な燃料電池、特に、輸送用途でのような非定常的(non-stationary)適用での使用に適したものの開発において、対処すべき重要な難問が残る。本発明は、これらの難問の少なくとも若干に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の概略を記載する。本発明は、固形の陰イオン(アニオン)交換膜を含む燃料電池が、燃料として尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩の直接使用を通して動作させることができるという知見に基づく。この知見は、これらの下地(substrates)およびその重要性(emphasis)に基づく直接燃料電池の報告の貧弱さ(sparcity)からすれば、驚かされることであり、そこでは、アンモニアがPEMFC技術を用いる燃料電池のための間接的な燃料としてのその使用に関し用いられた。
【0017】
したがって、一つの見地から見て、固形アニオン交換膜を含む燃料電池を動作する方法が提供され、その方法は、燃料電池においてのアノードを、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩と接触させること、およびカソードを酸化体(酸化剤)と接触させることを、それによって電気を生成するために含む。
【0018】
第二の見地から見ると、本発明は、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩の使用を、固形アニオン交換膜を含む燃料電池のための直接の燃料として提供する。
【0019】
第三の見地から見ると、本発明は、固形アニオン交換膜、および尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩を含む燃料電池を提供する。
【0020】
さらなる見地から見て、本発明は、少なくとも二つの本発明の燃料電池(燃料セル)を含む燃料電池スタックを提供する。
【0021】
さらなる見地から見ると、本発明は、本発明に係る燃料電池を動作する方法を遂行すること、および発生した電気を、それによってデバイスへの動力を供給するために用いることを含む、デバイスへ動力を供給する方法を提供する。
【0022】
本発明のさらなる見地および具体化は、以下に続く議論から証明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1(a)】アニオン交換膜を通過する水酸化物イオンを示す本発明の直接アンモニア燃料電池の動作原理(作用機構)の概略図を示す。
【図1(b)】アニオン交換膜を通過する炭酸/重炭酸イオンを示す本発明の直接アンモニア燃料電池の動作原理(作用機構)の概略図を示す。
【図2】(a)はそれぞれ25から90℃までの温度範囲にわたってアンモニア/酸素および水素/酸素の燃料電池の理論的オープンセル電圧(OCV)を示す。(b)は20から90℃までの温度範囲にわたるこれら二つの燃料電池の理論効率を示す。
【図3】(a)はアンモニアが以下で説明する燃料電池(セルA)に導入される時間に対するOCVの変化を示す。(b)はMnO2/CカソードおよびNi/Cアノードを含むセルAについての室温でのアンモニア/酸素の燃料電池の性能を示す。
【図4】(a)および(b)は、水素および32.5%の尿素(アドブルー)溶液(a)、およびガスおよびアンモニア水の燃料電池(b)の性能プロットを、異なる燃料電池(セルB)を用いて示し、その調製を以下に記載する。ウェット酸素を酸化体として用いた。
【図5】(a)は水素およびアンモニアがさらに燃料電池(セルCはMnO2/Cカソード、Ni/CアノードおよびCPPO-PVAに基づく膜電解質を含む)に導入されているときにどのようにOCVが変化するかを示し、その調製を、以下に記載する。(b)は室温でセルCを動作させるとき、室温でのH2/O2およびNH3/O2燃料電池の性能プロットを示す。
【図6】濃アンモニア/酸素燃料電池およびアドブルー/酸素燃料電池の燃料電池性能を示す。
【図7】(a)は、それぞれ25から90℃までの温度範囲にわたる尿素/酸素および水素/酸素の燃料電池の理論的なオープンセル電圧(OCV)を示す。(b)は20から90℃までの温度範囲にわたるこれら二つの燃料電池の理論効率を示す。
【図8】(a)および(b)は、燃料電池(セルD)を用い、種々の濃度の尿素溶液での性能プロットを示し、その調製を以下で説明する。ウェット酸素を酸化体として用いた。
【図9】(a)および(b)は、燃料電池(セルE)を用い、種々の濃度の尿素溶液での性能プロットを示し、その調製を以下で説明する。ウェット酸素を酸化体として用いた。
【図10】(a)および(b)は、燃料電池(セルF)を用い、種々の濃度の尿素溶液での性能プロットを示し、その調製を以下で説明する。ウェット酸素を酸化体として用いた。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明を記載する。本発明は固形膜を含む燃料電池が、反応物質燃料として直接に尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩を用いて動作されうるという認識に原因する。
【0025】
熟練者は、燃料電池の基本的な原則および特色の多くに気づいており、たとえば、これらは酸化体がカソード側に導入されるとき、すべての燃料のアノード側に供給される反応物質燃料の酸化により電気を発生させる装置である。この酸化によって発生する電気は、外部回路、この外部回路によって接続され、そして電解質のいずれかの側に配置される燃料電池のアノードおよびカソードによる反応物質燃料の酸化により発生する電子を、通路を通して送ること(channelling)によって利用される。言い換えると、ここに記載するような燃料電池は、外部回路を通しての電気通信におけるアノードおよびカソードを含み、アノードが、燃料の酸化および酸化体のカソード還元に触媒作用を及ぼすことが可能な触媒を備えることが理解される。その上、燃料電池は、電解質、本発明においては、固形アルカリ膜を備え、アノードおよびカソードにて起こる酸化および還元の反応を物理的に切り離すのに役立つ。典型的に、この技術で知られるように、電解質膜が固形体である場合、それは、電極と共におよび関連した触媒が、いわゆる膜電極アセンブリー(MEA)としてこの技術に言及されるものを構成する。典型的なMEAの電極物質には、炭素(カーボン)〔例は、カーボンクロス(炭素布)、フェルトまたはカーボン紙〕が含まれ、その中あるいは上で触媒が適用される。
【0026】
そのうえ、燃料電池のアノードおよびカソードの領域の各々への入口、およびそれからの出口が、燃料および酸化体の導入、および燃料の酸化と酸化体の還元から形成される生成物の排出を適切に許すように提供される。前述の特色のすべては、そのようにカソードおよびアノードの間で配置される電解膜の供給を含み、すべての燃料電池に対して標準的であり、そしてそのようにしてこの技術における熟練の者に知られている。したがって、これらの構成要素の詳細な説明も、燃料電池が造られる方法も、ここに記載することはしない。しかし、とは言え、燃料電池のこれらの特色の典型的で特定の具体化、および本発明を実践することができる方法は本発明のより一層十分な理解のために以下に説明する。
【0027】
水酸化物イオン輸送およびカルボナート(炭酸塩)またはビカルボナート(重炭酸塩)の輸送に基づく本発明の直接アンモニア燃料電池の動作の概略図を、それぞれ図1(a)および(b)に描く。AMFCであるアンモニア燃料電池の作用メカニズムは、燃料として水素を使うものとわずかに異なる。水酸化物イオンが導電性種として用いられる場合、これらはカソードにて水の存在下に酸素が水酸化物(OH-)イオンに還元されることによって発生し、それは水素を燃料供給される(hydrogen-fuelled)アルカリ燃料電池において起こるのと同じメカニズムである。重炭酸または炭酸イオンが導電性種として用いられる場合、これらはカソードにて二酸化炭素の存在下に酸素を還元することによって発生する。次いで、発生するイオンは、アノードに移り、そして窒素および水を形成するために、アンモニアと反応する。窒素は、非毒性の、非温室効果ガスである。アルカリ膜電解質を用いる直接アンモニア燃料電池の動作メカニズムを、以下に記載する。すなわち
【0028】
CO32-/HCO3-イオンが膜中の電荷担体であるなら、カソードで提供される酸素およびCO2(または空気)は、CO32-/HCO3-イオンを形成し、そしてCO32-/HCO3-イオンはアノードにまで膜を通して移され、N2、H2OおよびCO2を形成するためにアンモニア(または尿素またはアンモニウム塩)と反応する。
【0029】
尿素が燃料として用いられる場合、尿素の加水分解は、それによってアンモニアおよび二酸化炭素を提供するために、窒素への酸化によって消費されるアンモニアをインシトゥで(原位置で)提供するのに役立つ。理論に拘束されることは望まないが、尿素の加水分解は、燃料電池の動作の間、アンモニアの消費によって駆動されると信じられる。アルカリ膜電解質を用いる直接尿素燃料電池の動作メカニズムを、以下に記載する。すなわち
【0030】
本発明の特徴的特色は、固形アニオン交換膜の提供である。本発明の燃料電池、および本発明に従う使用は、このように、アルカリ電解質が、溶液中または液体として存在する燃料電池とは区別される。また、もちろん、本発明において電解質として機能する膜はPEMFCsで使用される酸性の膜とは完全に異なる。
【0031】
したがって、ここで用いる「固形アニオン交換膜」によって、アニオン伝導、例は、水酸化物、炭酸、または重炭酸のアニオンの、膜の第1の面から膜の第2の面への輸送を許容することが可能な固形電解質物質を意味する。典型的に、そのような膜は、およそ1-500μmの厚さ、例は、約10-250μmの厚さである。数多くの適合した固形膜が適切であり、産業的な水の精製、金属分離および触媒的応用(catalytic application)に用いられる商業的に広く利用可能なアニオン交換ポリマーおよび樹脂〔双方の水酸化物またはハロゲン化物(典型的に塩化物)の形態で利用可能なもの〕のようなものである。ハロゲン化物カチオン(典型的に塩化物イオン)を含む膜は、OH-、HCO3-またはCO32-または混合されたOH-/HCO3-/CO32-アニオン伝導性膜に転換するNaOH、NaHCO3、Na2CO3のような金属水酸化物、炭酸または重炭酸と交換する。アニオン交換は、燃料電池アセンブリーに先立ち、例は、適切な水酸化物、炭酸または重炭酸を用いる塩化物含有膜の浸漬によって行うことができる。あるいはまた、1またはそれよりも多くの水酸化物、重炭酸、または炭酸が燃料と共に含まれる場合、または実際にアンモニアに基づく燃料が用いられる場合、アニオン交換はインシトゥで起こることがあり、水酸化アンモニウム自体が塩基である。
【0032】
本発明の一定の具体化によれば、膜は固形アルカリ膜であり、換言すると、水酸化物アニオンを含有する固形アニオン交換膜である。多数のそのような固形アルカリ膜が適しており、これらは概して2つのクラスに入る。
【0033】
まず、この技術において、固形ポリマーを含有するアルカリ膜が知られており、それには典型的に、金属水酸化物をドープした材料が含まれる。ポリ(スルホンエーテル)類、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)(PVC)のようなビニルポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)およびポリ(エチレングリコール)(PEG)のような様々なポリマーは、金属水酸化物でドープされ、例えば、ガラス板の上に、1またはそれよりも多く(1以上)のポリマーおよび水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムのような1以上の金属水酸化物の液状混合物をキャスティングし、そして溶媒(群)を蒸発させることによってドープすることができる。特定の例としては、CC Yang(ヤン)によって記述されるPVA-TiO2の材料である〔J. Memb. Sci.、288、(2007年)、51-16〕。しかし、そのような金属水酸化物を含有する固形アルカリ膜は、金属イオンの存在下にカソードでの酸化体(例は、酸素)と共に存在する二酸化炭素の汚染物質との反応の結果としての炭酸塩/重炭酸塩の望ましくない形成のため、一定の状況下において決して理想的とは言えないことがある。さらに、そのような水酸化物をドープしたポリマーの使用は、燃料電池の動作中に発生する膜での金属水酸化物の濃度における任意の低下のバランスをとるために、燃料への更なる金属水酸化物の有利な混和の誘引となることがある。
【0034】
金属水酸化物の存在により付与される欠点の結果として、固形アルカリ膜の第二のタイプが開発され、それらが所望の水酸化物アニオンに対する不在金属対イオン(absent metal countercations)であることは、部分的に、アルカリ燃料電池に関連して遭遇した問題である。これらは、ポリマーに結合したカチオン(陽イオン)および水酸化物対イオンを含む永久に荷電したポリマーである。アルカリ型燃料電池技術に関連して、直接メタノール型燃料電池に用いる重合体電解膜のような、文献に記載されているこれらのものの多数の例がある。そのような固形アルカリアニオン交換膜は、固形アルカリ型燃料電池で用いるための膜を生成するのを試みるために開発され、それは大体はPEMFCsにおいて用いられる商業上入手可能なNafion(R)〔ナフィオン(商標)〕膜に似ている。ナフィオン(商標)において、膜を通して導かれる(being conducted)陽子に対する対イオン(スルホン酸基)は、ポリマー骨格に結合される。したがって、同じように、多数の固形アルカリ膜は記載されており、それは、燃料電池の動作中に膜を通過することができる水酸化物イオンに対するポリマー結合カチオン性対イオンを含む。これらには、第四級アンモニウム含有固形アルカリ膜が含まれる〔たとえば、TN Danks(ダンクス)ら、J. Mater. Chem.、2003年、13、712-721;H Herman(ハーマン)ら、J. Membr. Sci.、2003年、218、147-163;RCT Slade(スレイド)およびJ R Varcoe(ヴァーコー)、Solid State Ionics(ソリッドステートイオニクス)、2005年、176、585-597およびa cross-linked development of the lattermost(最後のものの架橋発達)(J R Varcoeら、Chem. Commun.、2006年、1428-1429年);NJ Robertson(ロバートソン)、J. Am. Chem. Soc.、132、2010年、3400-3404;およびB. Sorenson(ソレンセン)、Hydrogen and Fuel Cells(水素および燃料電池)、Elsevier Academic Press(エルゼビア・アカデミック・プレス社)、2005年、p217参照〕。また、国際公開第2009/007922号〔Acta SpA(アクタ社)〕には、第四級アンモニウムイオンのアルキレン連結した組(ペア)を運ぶベンゼン環上にグラフトされた化学的に安定な有機ポリマー、そのようなアルキレン連結された1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N,N,N',N'-テトラメチルメチレンジアミン(TMMDA)、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N',N'-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン(TMBDA)、N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMHDA)およびN,N,N',N'-テトラエチル-1,3-プロパンジアミン(TEPDA)を含む熱可塑性エラストマー系の二相性マトリクスが記載されている。
【0035】
燃料電池の動作中に膜を通過することができる水酸化物イオンに対するポリマーに結合した第四アンモニウムイオンの対イオンを含む固形アルカリ膜に加え、金属対イオンを伴わないOH-イオン含有ポリマーを燃料電池において電解質またはイオンマー(ionmer)として用いることができる。1種のそのような例は、S Gu(グー)らにより記載されたトリス(2,4,6-トリメトキシフェニル)ポリスルホン-メチレン四級ホスホニウム水酸化物(TPQPOH)である〔Angew. Chem. Int. Ed,、48(2009年)6499-6502〕。
【0036】
アルカリアニオン交換膜は、商業上入手可能なMorgane(モルガーヌ)ADP100-2をアルカリ化することによって、LA Adams(アダムス)らによって記載されている〔ChemSusChem、1、(2008年)、79-81〕ように製造することができる〔Solvay(ソルベイ)S.A.、ベルギー所在によって販売されている架橋した、部分的にフッ素化した第四級アンモニウムを含有するアニオン交換膜〕。
【0037】
他の固形アルカリ膜は、この技術における熟練の者に知られており、ポリスチレンおよびポリ(スルホンエーテル)群に基づく膜を含み、随意に、たとえば、そこでは重合体の骨格が架橋される。G Wang(ワン)ら〔J. Membr. Sci.、326、(2009年)4-8〕は、最近、潜在的な燃料電池の応用のための官能化したポリ(エーテルイミド)のポリマーに基づく代替膜の調製を報告した。このものの開発は、航空宇宙産業のためにもともと開発された高性能の材料としての芳香族ポリイミドの有用性の知識、および高い熱安定性、耐薬品性および有用な機械的性質のような有利な機能上の特性の認識によって動かされた。固形アルカリ膜のさらなる例は、有利な疎水性、高いガラス温度およびポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)(PPO)の加水分解安定性の認識の結果として、L Wu(ウー)らによって開発された膜のブレンドであり〔J. Membr. Sci.、310、2008年、577-585〕:クロロアセチル化PPO(CPPO)およびブロモメチル化PPO(BPPO))をブレンドし、このブレンドを、直接メタノール型燃料電池で使用するための固形水酸化物導電性アニオン交換膜を調製するためにアルカリ化を受けさせた。
【0038】
この技術における熟練者(当業者)に知られているように、ここで直前に記載されたポリマーのすべては、共通して、誘導体化される(dervatised)能力を、それによって永久荷電された金属イオンが含まれない固形アルカリ膜を提供するために有する。
【0039】
多くの商業上入手可能なアニオン交換ポリマーは、架橋ポリスチレンまたはスチレンジビニルベンゼン共重合体のような第四級アンモニウム塩に基づく。これら、および他のアニオン交換ポリマーにおいて、アニオン(例は、水酸化物イオン)に対しての、ポリマーに結合したカチオンの対イオンは、典型的には、ハロゲン化物で誘導体化されたポリマーおよび第三級アミンの間の反応によって導入され、次いでたとえば金属水酸化物溶液、例は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムとの反応によるアルカリ化(ヒドロオキシアニオンの導入)が続き、結果として生じる金属イオンで汚染された膜が脱イオン化された水で(典型的に)繰返し洗浄されることによって、基本的に金属イオンがなく満足のいくようにされる。例は、S F Lu(ルー)らによってQAPS(第四級アンモニウムポリスルホン)として記載されるアルカリ第四級アンモニウムの官能化されたポリ(スルホンエーテル)である〔Proc. Natl. Sci.、 USA、105、20611-20611-20614(2008年)〕。A201、A901のようなアルカリ膜は、Tokuyama Corp(トクヤマ社)、日本によって開発され〔H. ヤナギ、ECS Transactions、16(2008年) 257-262〕、およびFuMA-Thech GmbH(フーマテク社)、ドイツ国〔T Xu(スー)、J. Membrane Science、263(2005年) 1-29〕によって開発されたFAAシリーズの膜が、上述の燃料電池で用いることができる。
【0040】
そのような金属を含まない、アルカリの、および永久に荷電されたポリマーおよびポリマーブレンドが、本発明に従う固形アルカリ膜として用いることができる。
【0041】
先に記述したソリッドステートのアルカリ膜の調製によって与えられる利益の1つが膜に結合した対カチオンの使用を通して金属炭酸塩の生成の回避であることを、この技術の熟練の者は認めるであろう。このことから、本発明の種々の見地に従う燃料電池を動作させるために、アニオン交換膜について、それから燃料電池が水酸化物イオンを含むようにして製造され、それが水酸化物イオン交換膜として機能させられることは必要ではない。このことは、L A Adams(アダムズ)ら(下記)によって例示され、その者らは、炭酸塩で官能化された(carbonate-functionalised)Morgane(モーガン)ADP100-2の炭酸含量が、水素/空気およびメタノール空気の燃料電池において用いられるときに減少することを示した。M Unlu(ウンル)ら〔Electrochemical and Solid-State Letters、12(3) B27-B30(2009年)〕はまた、炭酸塩を導電性イオンとして用いるアニオン交換膜燃料電池を記載する。カソードに供給される酸化体がCO2を含む空気である場合、二酸化炭素は、重炭酸(HCO3-)または炭酸(CO32-)を形成するために燃料電池内で酸化状態下に反応することができ、重炭酸イオンが水(ならびに酸素および二酸化炭素)の存在下で発生する。あるいはまた、CO2は燃料からインシトゥ(原位置)に、例は、尿素から発生することができ、または炭酸または重炭酸イオンは燃料と共に供給されうる。これらのイオンが沈殿しないので(炭酸塩または重炭酸塩の塩類として)、本発明に従うアニオン交換膜を含む燃料電池が動作するとき、炭酸または重炭酸を含む膜は原位置に発生しうるだけでなく、アニオン交換膜は、そのようなもの、または他のアニオンに基づくか、または1つまたはそれよりも多くの水酸化物、重炭酸または炭酸イオンの混合物に基づくことができ、例は、L Aアダムズら(下記)によって記述された炭酸を交換されたモーガンADP100-2である。実際、モーガンADP100-2は、陰イオン交換膜の例として、燃料電池中に直接組み込むことができ、または本発明の種々の見地に従って用いることができる。このようにして、アニオン交換膜は、水酸化物イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、またはこれらの混合物を含むことができる。典型的に、膜はアルカリ膜であり、即ち、少なくとも若干の水酸化物イオン、随意に重炭酸および/または炭酸イオンを含むことができ、それらは原位置に生成することができ、または生成することができない。
【0042】
固形のアニオン交換膜、例は、アルカリ膜が、異なるポリマーのブレンドによって構成されうることは理解されるであろうが、たとえば、L Wuら(下記)により記載されたCPPO/BPPOブレンド膜をアルカリ化することによって導き出される。さらに、当業者は、機能(例は、水酸化物イオン伝導度)および機械的特性の満足な組合せが、物質の混合物を与えることによって適切に提供されうることを認識するであろうし、その一つ以上は望ましいアニオン伝導性の機能特性を提供し、その一つ以上の更なる構成要素は適切な機械的強度または他の特性を提供する。このように、本発明において有用な固形水酸化物イオン交換膜が提供されえ、それらは、前述したもののような水酸化物アニオン伝導性ポリマー、およびそのような水酸化物アニオン伝導特性を有しない他のポリマー、例は、PVC、ポリ(ビニルアルコール)PVA、PEG、ポリ(ビニルベンゼン)(PVB)、PTFEおよびPVDFのようなものの混合物である。中性のポリマーによって、ポリマーに共有結合したカチオンを伴わないポリマーが意味される。水酸化物イオン伝導性ポリマー、および水酸化物または他のアニオンを伝導しないけれども、たとえば、役に立つ機械的特性を有するポリマーの混合物との共働によって、溶液および分散物からのキャスティングで、それによって適切な厚さおよび他の寸法(次元)の膜を提供するためのような、この技術における熟練の者に手軽に親しまれている技術を通して、機械的および機能的な特性の望ましい組合せを理解することができる。このものの例として、そして本発明の特定の具体化において、本発明者は、CPPO〔または商業上入手可能なアニオン交換樹脂またはポリマー、たとえば、MTO-Amberlite(アンバーライト)-IRA-400〕〕およびPVAのブレンドを、およそ20:80から-80:20w/wの比率(典型的に、およそ40:60からおよそ60:40まで、例は、およそ50:50)においてアルカリ化することによって生産したアルカリ膜が適切な膜強さおよび水酸化物アニオン運搬能力を有することを見出した。
【0043】
そのような固形アニオン交換膜は、本発明のまだそのうえ更なる態様を形成する。この見地から見ると、本発明は、アルカリアニオン交換樹脂またはポリマー、たとえば、MTO-アンバーライト-IRA-400)およびPVAのブレンドを、およそ20:80から-80:20(典型的に、およそ40:60からおよそ60:40まで、例は、およそ50:50)のw/w比率で含む固形アニオン交換膜を提供する。
【0044】
中性または他の非アニオン伝導性ポリマーを包含することに加え、また、アニオン交換膜は、二酸化チタンまたは二酸化ケイ素のような無機物質、例は、そのために膜を通して分散した粒子として含むことができる。熟練者は、そのような物質、例は、CC Yang(ヤン)(下記)によって記載されたPVA-TiO2物質であるものを含む膜をよく知っている。
【0045】
燃料電池設計のための機構としての陽子交換の代わりに、水酸化物(または他のアニオン、例は、重炭酸または炭酸)交換に基づく燃料電池技術の1つの特定の利益は、非酸性(non-acidic)、例は、アルカリ性の、電解質の使用が、燃料電池におけるアノードおよびカソードの構成での貴金属触媒への依存を少なくし、そして実際にその使用を避けることができることであり、それはPEMFCsにおける酸性の環境への曝露に耐えることができない他の触媒がAMFCsにおけるアルカリ環境で用いられることができるからである。このように、本発明に係る方法を実践するとき、白金およびパラジウム系(特に、白金系の、白金および白金/ルテニウム系のものを含むもの)の触媒をアノードおよびカソードの双方として用いることができる一方、そのような高価で希少な金属が、ニッケルおよび銀のような非貴金属の触媒の代わりに作成された電極を用いて、本発明によって避けることができる。
【0046】
アノードで触媒として用いることができる適切な物質には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、白金(プラチナ)、パラジウム、タンタル、タングステン、ビスマス、スズ、アンチモン、鉛、および上記のいずれかのものの金属合金、酸化物、窒化物または炭化物、たとえば、金属窒化物のようなもので、例は、窒化クロム、コバルトモリブデン窒化物、炭化モリブデン、白金および白金/ルテニウムが含まれる。少なくとも一つのリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド(ランタン含む)ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズおよび鉛、および少なくとも一つのバナジウムクロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅(cooper、copper)、ニオブ、モリブデン、タンタルおよびタングステンを含む酸化物、窒化物または炭化物はまた、アノード用触媒として用いることができる。
【0047】
カソードで存在する触媒は、アノード触媒を製造することができるものと同様な物質から作成することができ、適切でありうる特定の物質には、銅、ニッケル、ニッケル含有合金、アルミニウム含有合金、リチウムニッケル酸化物のようなニッケル含有酸化物、リチウムマンガン酸化物およびリチウムコバルト酸化物;窒化クロム、炭化モリブデン、銀、銀含有合金および二酸化マンガン、たとえば、ニッケル、リチウムニッケル酸化物のようなニッケル含有酸化物、リチウムマンガン酸化物およびリチウムコバルト酸化物;窒化クロム、炭化モリブデン、銀および二酸化マンガンが含まれる。二酸化マンガンと同様に、Mn(IV)酸化物、他のマンガン酸化物、またはマンガン酸化物の混合物を参照すると当業者によって理解され、たとえば、Mn(III/IV)酸化物およびマンガン(II/III)酸化物のようなものを用いることができる。また、慣習的なアルカリ型燃料電池およびアルカリバッテリー〔アルカリセル(電池)〕のために用いられる電解二酸化マンガン(EMD)(たとえば、米国特許第5348726、5516604、5746902、6585881号参照)を、カソードとして用いることができる。
【0048】
触媒は、炭素粉、カーボンペーパー、カーボンクロス(炭素布)、ニッケルフォームのような導電媒体を有する粉体、メッシュ、発泡体(フォーム)または粉体の形態において用いることができる 〔F Bidault(ビドー)ら、Inter. J. Hydrogen Energy、34(2009年)6799-6808、および35(2010年)1783-1788〕。
【0049】
本発明の特定の具体化では、アノードは、カーボン(炭素)、上記の触媒物質を含むナノサイズの粒子、金属、金属酸化物、金属炭化物および金属窒化物のナノサイズ粒子が含まれるものを混合することによって形成することができる。ここで、ナノサイズの粒子によって、粒子が、1から100nmまで、たとえば、1から10nmまでの範囲内のサイズを有する粒子を意味し、それはこのような小さな粒子のサイズが、材料の所定量の触媒のために利用可能な比表面積を増加させるからである。ナノサイズの金属粒子の例は、TEMによって測定されるように直径でおよそ2nm(たとえば、直径で約1から3nmまで)のニッケル粒子である。このようなナノ粒子は概して、S Luらの教示(下記)に従って調製することができる。サイズは透過型電子顕微鏡を使用することによって確立することができる。手順は、Luらによって記載され、ナノサイズのニッケル粒子を調製するとき、Na3C6H5O7・2H2Oを含めることによって変えることができる。本発明者らは、粒子が室温で乾燥させることができることを見出す。
【0050】
本発明の特定の具体化では、カソードは炭素およびナノサイズの二酸化マンガン粒子の混合物によって構成されていてもよい。適切な粒子はC Xuらの教示に従って調製することができる〔J. Power Sources、180(2008年)664-670〕。得られる二酸化マンガン粒子は、他の方法によって調製されるマンガン酸化物を超えた有利に高い表面積を提供する。
【0051】
本発明は、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩の燃料電池への直接供給を頼りにする。典型的に、アンモニアを燃料として用いる場合、これをガス状アンモニアまたはアンモニアの水溶液として供給する。アンモニウム塩、またはその溶液は、使用することもできる。したがって、本発明は、先行技術とは異なり、そこでは、これらの化学物質の燃料としての使用が記載され、そしてこれらの化合物の1つが、たとえば、水素を提供するために最初に改質され、それは燃料電池に供給され、そして燃料電池によって直接消費される燃料である。
【0052】
アンモニアは、燃料として用いられ、これが燃料電池に供給される場合、これはアンモニアガス、またはアンモニアの水溶液のいずれかとして、たとえば、約0.001 Mからの溶液が飽和するまでの濃度で配送することができる。アンモニアガスまたはアンモニアの水溶液のいずれかを、これが便利な場合、液体アンモニアの貯蔵庫から生成することができる。代わりに、塩化アンモニウムのようなアンモニウム塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩またはシュウ酸塩の溶液を用いることができる。典型的に、そのような塩は採用されないが、しかし、それはアンモニウムイオンの酸化によって形成された結果としての酸が、水酸化物含有重合体電解質膜を損傷することがあるからである。さらなる代わりのものとして、アンモニアの炭酸塩、炭酸アンモニウムおよびカルバミン酸アンモニウムのような、二酸化炭素を産生させるイオンを含むアンモニウム塩を、本発明に従って用いることができる。
【0053】
尿素を燃料として用いる場合、これは水溶液として、燃料電池に好都合に導入することができる。用いられうる尿素の濃度には、特に制限はない。任意の好都合な濃度は、約0.01%または約1%w/v、または約10%w/vから、最高で尿素の水溶液が飽和する濃度までで用いることができる。代わりに、尿素の溶液以外の調剤物、ペーストまたはゲルのようなものを(典型的には、連続相として水と共に)用いることができ、これらが適切なポンプ圧送装置の使用により燃料電池中に操作される。知られているように、商業上の尿素は、一定の汚染物質を伴っていることが多く、そして用語の「尿素」はこれらの汚染物質の不存在下での尿素の存在を必要とすることを意図するものではなく、それには、アンモニアカルバメート、炭酸塩、重炭酸塩、ギ酸塩および酢酸塩を一つ以上含むことができる。
【0054】
本発明の一定の具体化では、第四級アンモニウム水酸化物、水酸化アルカリNH4HCO3、(NH4)2CO3、NaHCO3およびNa2CO3のような1つ以上の溶解性の無機または有機水酸化物、重炭酸および炭酸を、アニオン伝導性膜のイオン伝導度を増加させ、およびアノード分極抵抗を減らすために燃料に添加することができる。
【0055】
本発明の特に便利な見地は、肥料としての農業での使用のための、および自動車において亜酸化窒素をトラップするための添加剤として、尿素の供給のために存在する既存の商品流通網があるということである。そのような商業上入手可能な尿素溶液の例は、本発明による使用に適しており、商品名アドブルーの下に、商用ディーゼル乗り物に使用される亜酸化窒素の除去のための尿素の純粋な水溶液で販売される、水中32.5%の溶液として商業上入手可能である。
【0056】
あるいは、尿素燃料電池は、燃料としての尿を用いることができる。このようにして使用される尿は、人間/動物の排泄の生成物であり、廃棄物でないが、エネルギー源である。1日あたりに1.5リットルの尿を生産するすべての成体の場合、2重量%の尿素を含み、尿素の11kgが毎年生産される。これは2700kmについて車を運転するために使用できる液体水素の18kg中のエネルギーに相当する。
【0057】
アンモニアはまた、安全に処理することができる普通に用いられる産業上および農業上の化学物質である。
【0058】
アンモニアの場合の配送のための適切な装置は、鋼またはステンレス鋼の、チューブのような導管によるもので、当業者に明らかであろう。同様に、当業者は、たとえば、アンモニア塩の、または尿素の溶液を操作可能にする装置を構築する方法を認識する。概して、燃料は、重力供給法によって、またはポンプ圧送によって導入することができる。
【0059】
カソードでは、酸化体を、還元によって水酸化物アニオンを提供することができる任意の酸素を含有する種であってよい。便利には、そして典型的には、酸化体(酸化剤)はそれ自体酸素であってよく、また好都合には空気として供給されうる。あるいはまた、精製した酸素は、必ずしも使用することが必要でないことがある。酸化剤は、ガス状または液状であってもよい。典型的には、特に水酸化物(または重炭酸)イオンが電解質をアノードまで通過する導電性の種として使用される場合、液状の水または蒸気を、カソードに酸化剤と共に供給する。酸化剤に加え、重炭酸または炭酸について、電解質をアノードまで通過する導電性種として用いるのが望ましい場合、酸化剤に加えて二酸化炭素が有利に、カソードにて、そのようにしてか、または空気中でその存在を手段として導入することができる。
【0060】
この技術において知られているように、燃料電池スタックは、高い電圧が得られるか、またはより一層強い電流が引き込まれることが許容されるかのいずれかになるように、連続または並列に構成された複数の燃料電池である。本発明は、方法の実践において、および本発明の他の具体化に従い燃料電池スタックの使用を意図する。
【0061】
本発明は、さまざまなデバイス(装置)で、それは静止または非定常であることができるものに供給する電気の生成を可能にするのに役立つ。デバイスは、燃料電池、または燃料電池スタックを含むか、または含まなくてよいが、典型的には含んでおり、本発明に従って動作される。定常(静止)デバイスは、固定された機械のような携帯できないデバイスまたは、より一層典型的には、携帯電話、デジタルカメラ、ラップトップコンピュータまたはポータブル電源パックのような携帯可能なデバイスであることができ、そこでは本発明の使用は、既存のバッテリー技術の交換または補完を可能にすることができる。本発明の特定の具体化では、その方法は、乗り物のような非定常デバイスに動力を供給するのために用いることができる。本発明の特定の具体化の更なる例には、潜水艦のような水中機、およびロケットおよび他の航空応用が含まれる。また、本発明は、都市汚水を清掃し、そして電気を生成させるために用いることができる。この発明に基づいて、再生可能および持続可能な尿の燃料電池を開発することが可能である。
【0062】
本発明は、このようにして、低コストのアルカリ膜電解質、およびニッケル、銀およびMnO2のような非貴金属触媒に基づく直接的な尿素/尿、およびアンモニアまたはアンモニウム塩型燃料電池を提供する。定常発電のために、高出力密度は、セルそれ自体のコストが低い限り、厳しい条件ではない。高い出力は、拡大した燃料電池の領域または単一セルの数を増加させて使用することによって達成することができる。
【0063】
本発明の利益の一つは、この方法が、必要に応じて著しく低い温度で、それが、たとえば、Ganley(ギャンリー)ら(下記)によって報告されたように、200および450℃の間で実行できることである。このように、本発明の方法は、およそ周囲温度(約20から25℃まで)のような低い温度で、最大約150-200℃までで実行することができる。典型的に、これらの方法は、約5から約200℃まで、例は、15から約150℃までの範囲の温度で実行される。一定の具体化では、この方法は、望ましくは約20℃より高い、約50℃よりも高い、または約80℃よりも高い温度で実行することができる。
【実施例】
【0064】
本発明を、下記に続く非制限的な例で例示する。
理論的な開回路(オープンサーキット)電圧(OCV)および効率の計算のための熱力学パラメータ。
反応:
2CO(NH2)2+3O2 ---> 2N2+2CO2+4H2O
【0065】
【表1】
*CRC Handbook of Chemistry and Physics(化学および物理学のCRCハンドブック)、編集者:R. C. Weast(ウェアスト)、第63版、CRC Press, Inc.(CRCプレス社)、Boca Raton(ボーカラトーン)、フロリダ州、1983年からのデータ。
【0066】
【表2】
*以下からのデータ:
Charles(チャールズ)A. Liberko(リーベルコ)およびStephanie Terry(ステファニー・テリー)、A Simplified Method for Measuring the Entropy Change of Urea Dissolution(尿素溶解のエントロピー変化を測定するための簡略化された方法)、J. Chem. Edu.、78、1087-1088(2001年)。
§希薄尿素溶液の熱容量を水のそれに同等と仮定する。
【0067】
評価の間、化合物の熱キャパシタンスが温度範囲において変化しないことを仮定した。現実の状態では、それらは変化するが、自由エネルギー変化にほとんど貢献しない。
【0068】
例1:
次のアルカリの膜を含む燃料電池を構築した:
商業上のアニオン交換樹脂に基づく複合膜の調製:
【0069】
ポリビニルアルコール(PVA)、分子量50,000〔Aldrich(アルドリッチ社)(2g)を、ガラスビーカー中に入れた。12mlの脱イオン水を、PVAと混合するためにビーカー中に加えた。次いで混合物を、ゲルが得られるまで2時間85℃(水浴)で加熱した。室温にまで冷却した後、ゲルを更なる使用のために貯蔵した。2グラムの商業上のアニオン交換樹脂MTO-アンバーライト-IRA-400(アルドリッチ社)を、めのう乳鉢(モルタル)に入れ、そして粉体にグラインドした。PVAゲルを、樹脂粉と一緒に混合し、混合物を形成するために、乳鉢に移した。ガラスプレート上に混合物をキャスティングし、夜通し空気中で(または真空オーブン中で)室温にて乾燥させた後、複合膜をAMFC用の膜電解質アセンブリー(MEA)のために作成した。膜は、将来の使用のために、0.5MのNaOH溶液中に蓄えることができる。NaOH溶液から取り出した後、膜を、MEAのために使う前に、数回について水で洗浄することができる。
セルA
【0070】
50:50の重量比を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(アルドリッチ社、60重量%の分散物および水)およびKOHを混合して、15分間150℃で乾燥させた。結果として生じるPTFE-KOH複合物を、膜に押し込み、そして電解質として使った。
【0071】
膜電極アセンブリー(MEA)を、MnO2/C(20重量%のMnO2)カソードおよびニッケルアノードと共に製造した。これらは、以下の通りに製造した:
【0072】
カソードは、KMnO4、Mn(CH3COO)2および炭素〔Cabot Valcun(カボート・バルカン)XC72R〕の共沈法からC Xuらによって記述されたように調製した〔J. Power Sources、180、664-670(2008年)〕。
【0073】
ニッケルアノードを、S F Luら〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA、105、20611-20614(2008年)〕に従いNiCl2.6H2OおよびKBH4から調製した。TEMで観察されるように、ナノサイズのニッケル粒子〔ニッケル粒度(粒径)が約2nm〕を得るために、若干のクエン酸三ナトリウムを、水性NiCl2溶液に加えた。調製されたままのニッケルを炭素と、50:50の重量比で混合して、そしてアノードとして使った。
【0074】
カソードおよびアノードの負荷は、それぞれ20mg/cm2および10mg/cm2であった。
【0075】
カーボン紙〔Toroy(トロイ)090、E-TEK〕を、双方のセルのための集電装置として使った。
セルB
【0076】
市販の強塩基性アニオン交換樹脂MTO-アンバーライト-IRA-400(アルドリッチ社)をOH-イオン伝導性成分として用いた。MTO-アンバーライト-IRA-400およびPVAの重量比は50:50である。PVAは、温度〜85℃に加熱することによってフォームPVAゲルのために脱イオン水において溶解した。粉体に粉砕したアニオン交換樹脂は、次いでPVAゲルと共に混合し、ガラス板上にキャストして、MEAに使用する複合膜を形成するために夜通し(overhight)室温で乾燥させた。60重量%のPtRu/C(E-TEK)を1mg/cm2の負荷でアノードに使用し、およびMnO2/C(20重量%MnO2)をカソードとして使用した。カソードはセルAで使用されるのと同じであった。
セルC
【0077】
アルカリ膜を、L Wuら〔J. Membr. Sci、310、577-585(2008年)〕によって記載された方法で合成したクロロアセチルポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)(CPPO)のブレンドから作成した。合成されたCPPOを、ポリ酢酸ビニル(PVA)(セルBに記載されたようなゲル状の形態において)と複合膜を形成するために、50:50の重量比でブレンドし、それは24時間の架橋のためにトリメチルアミン中に置き、次いで電解質として使用する前に、アニオン交換のために24時間水において2 MのKOH溶液での浸漬を続けた。
【0078】
電極はセルAに記載のとおりであった。
燃料電池の動作
【0079】
水素、アンモニア、アンモニア溶液および尿素溶液(アド・ブルー)を、燃料電池のテストのための燃料として用い、そしてカソードに供給される酸化剤として酸素を用いた。酸素を、燃料電池に入れる前に、室温で水を通過させた。水は、周囲温度であることができ、または蒸気としてカソードに供給することができる。
【0080】
CO32-/HCO3-イオンが固形アルカリ膜においてアニオンとして働く場合、二酸化炭素はまた、カソードに供給される。これは、それ自体で供給することができ、または空気において供給される。CorrWare(コルウェア)/CorrView(コルビュー)ソフトウェアを組み込んだSolartron(ソーラートロン)1287A電気化学的インタフェース(界面)を、燃料電池の性能を測定するために使用した。
結果:
アンモニア/酸素および水素/酸素の燃料電池の開回路電圧(OCV)および効率の比較
【0081】
図2(a)に描くように、アンモニア/酸素燃料電池の理論的なOCVは、室温で1.17Vであり、同じ温度での水素/酸素の燃料電池のための1.22 Vのものよりもわずかに低い。これらのOCVsが、温度範囲20-90℃において大きく変動しないことに注目される。
【0082】
アンモニア/酸素の燃料電池のより一層低い理論的OCVにもかかわらず、燃料電池の理論効率は、室温(25℃)で88.7%であり、同じ温度での水素/酸素の燃料電池のそれ(83%)よりもわずかに高い。したがって、直接アンモニア燃料電池の動作が室温でも実現可能であることは明らかである。
セルAの動作
【0083】
これらの結果を図3(a)および(b)に描く。
図 3(a)は、セルAの動作の間の時間に対するOCV変化を示し、そして空気中で観察された0.48Vの初期のOCVを示す。これはニッケルアノードおよびMnO2カソード間の電位差である。ウェット酸素の導入は、OCVに有意な影響を与えない。しかし、アンモニアを燃料電池のアノード側に導入した時、OCVはすぐに減少し、ニッケルが、室温でさえも、アルカリ性媒体においてアンモニアが窒素および水に変換する活性な触媒であることが示される。
【0084】
図3(b)は、セルAについてのアンモニア/酸素の燃料電池の性能を示す。11.6mA/cm2の密度の最大電流および2.5mW/cm2の出力密度が室温で達成されたことを示す。セルAのOCVが理論値よりもさらに低く(図2(a)参照)、これは電極の分極に起因すと信じられることに注目される。OCVの増大は、日常的な材料組成および微細構造の最適化によって達成することができる。
【0085】
ニッケルおよびMnO2電極によって生成された初期OCVより低くセルを動作させることが、避けるべきであり、それはニッケルがアンモニアと並行して酸化されうるからであることに注目される。
セルBの動作
【0086】
図4は、セルAに似ているが、PtRu/Cアノードに基づいたセルBについての燃料電池の性能を描く。室温で、セルBのOCVは、H2が燃料として使用されたとき、最大電流密度2.9mA/cm2を有する0.74Vである(図4a)。同様のOCVは達成されたが最大電流密度は、アドブルー(32.5%尿素水溶液)を燃料として直接用いたときに倍増した。図4bは、アンモニアおよびアンモニア溶液をそれぞれ燃料として用いたとき、セルBの性能を示す。アンモニア溶液を用いたときOCVは0.85 Vに達した。アンモニアガスはまた燃料として用いることができるが、性能はアンモニア溶液のそれよりも低い。結論として、水素、アンモニア、アンモニア溶液および尿素溶液は、すべてAMFCsのための燃料として用いることができる。妥当な性能は、室温で達成することができる。
【0087】
これらの実験は、これらのセルで用いる負荷では、ニッケルは、室温で、直接アンモニア燃料電池用負極として使用したとき、白金に匹敵する活性を(より一層良好ではないにしても)見せたことを示す。
セルCの動作
【0088】
図5(a)は、セルCの動作の際、水素およびアンモニアを燃料として用いるとき、どのようにOCVが変化するかを示す。電極の動力学的プロセスは、水素を燃料として用いるとき室温で非常に低速であり、水素を燃料として用いるとき、OCVが10分後に0.61 Vに達することを観察することができる。しかし、アンモニアを用いると、電極のプロセスはより一層速く、OCVが6分以内に0.81Vに達する。カソードが同じであるので、二つの異なる燃料を伴うセルのOCVの差がアノードでの触媒プロセスによるものであることが推測される。したがって、ニッケルは、このようにして、双方の室温のアンモニア燃料電池のための極めて良好なアノードとして例証され、そして触媒プロセスは、負けず劣らずのものであり(それより良好ではないにしても)、燃料として水素を用いて動作する燃料電池と共に観測される。
【0089】
図5(b)は、二つの異なる種類の燃料を伴うセルの性能を示す。セルは室温ででも妥当な性能を見せた。燃料として水素およびアンモニアを用いるセルのOCVは、それぞれ0.65Vおよび0.84Vであった。室温では、最大出力密度は、それぞれ水素およびアンモニアについて10.8および16.4mW/cm2であった。したがって、水素と比較して、アンモニアはアルカリ膜燃料電池の実際に負けず劣らずの燃料である。
例2:
アルカリ膜の調製:
【0090】
複合膜は、市販の強アニオン交換樹脂(AER)(アンバーライトIRA 78、水酸化物の形態、アルドリッチ社)およびポリビニルアルコール(PVA)、(MW 50,000、アルドリッチ社)を、60/40の重量比で作成した。PVAを、脱イオン化した水に溶解して、ゲルを形成するために、2時間85℃でかき回した。ゲルを室温にまで冷却した後、市販の樹脂を、最初に、めのう乳鉢において粉体に粉砕して、それからPVAゲルと混ぜ合わせ、ガラスプレート上にキャスティングし、そしてAER-PVAのブレンド膜を形成するために、室温で真空オーブンにおいて乾燥させた。
セルD
【0091】
燃料電池計測のための膜電極アセンブリー(MEAs)を、Pt/CアノードおよびAER-PVAブレンド膜と共に製造した。Pt/C(30重量%、E-TEK)を、0.6mg/cm2の負荷でのアノードとして用いた。カーボン紙〔Toray(東レ)090、アノード用に耐水性、カソード用にプレーン、E-TEK〕を、集電装置として用いた。
セルE
【0092】
ナノサイズのニッケルを、S Luら(下記)によって、NiCl2・6H2O(アルファ、99.3%)、CrCl3・6H2O(アルファ、99.5%)およびKBH4(アルファ、98%)から調製した。若干のクエン酸三ナトリウムを、ナノサイズのニッケル粒子(一次粒径〜2nm)を得るために、NiCh水溶液に加えた。ニッケルを、室温だけで乾燥させた。調製したままのナノサイズのニッケルをカーボン(カボート・バルカンXC-72R)と、アノードとして使うために、50/50の重量比で混ぜ合わせた。ナノサイズの銀を、前駆体としてAgNO3(アルファ、99.9+%)を使うニッケルの調製のためのものに類似した方法によって調製した。銀は、50/50の重量比によって、炭素(カボート・バルカンXC-72R)と混ぜ合わせた。カソードでのAgおよびアノードでのNiの負荷は、〜20mg/cm2であった。他のパラメータは、セルDでと同じである。
セルF
【0093】
セルEでと同じNi/Cアノードを用いた。20重量%のMnO2/Cは、KMnO4〔Avacado(アバカド社)、99%〕、Mn(CH3COO)2・4H2O(アルドリッチ社、99.99%)および炭素(カボート・バルカンXC-72R)から、C Xuら(下記)による共沈法によって調製した。カソードでのMnO2およびアノードでのNiの負荷は、〜20mg/cm2であった。他のパラメータは、セルDでのと同じである。
燃料電池の動作
【0094】
異なる濃度での尿素溶液を、尿素〔Alfa Aesar(アルファ・エーサー)、ACS等級〕および脱イオン化した水から調製した。市販のアドブルー(32.5%の尿素溶液)はローカルガレージによって供給した。また、人間の尿を、燃料電池テストのための燃料として用いた。尿素溶液は、ペリスタ(蠕動)ポンプ〔Watson Marlow(ワトソン・マーロー)323D〕によって、アノード側にポンプ圧送した。ウェット空気は、空気を室温水に通すことによってカソードに供給した。セル面積は1cm2であった。コルウェア/コルビュー・ソフトウェアと一体となったソーラートロン1287A電気化学的インターフェースを、燃料電池性能を測定するのに用いた。
結果:
尿素/酸素および水素/酸素の燃料電池の開回路電圧(OCV)および効率の比較
【0095】
25-90℃の温度範囲での水素および尿素の燃料電池の理論的なOCVおよび効率を、利用可能な熱力学データを通して推定した〔図7(a)および7(b)〕。
【0096】
図7(a)に描くように、尿素/酸素の燃料電池の理論的なOCVは、室温で1.146Vであり、同じ温度での水素/酸素の燃料電池のための1.23Vのそれよりもわずかに低い。これらのOCVsが温度範囲20-90℃で大きく変動しないことに注目される。
【0097】
尿素/酸素の燃料電池のより一層低い理論的なOCVにもかかわらず、燃料電池の理論的な効率は、室温(25℃)で102.9%であり、それは同じ温度での水素/酸素の燃料電池(83%)のものよりおよそ20%高い〔図7(b)参照〕。
【0098】
尿素燃料電池の高い理論的な効率は、反応のポジティブなエントロピー変化によるものである。効率が100%を超えるとき、物理的に、燃料電池は環境から熱を吸収し、そして慣習的な水素PEMFCsの場合でのように熱交換問題を軽減する反応物質の化学エネルギーと一緒にそれを完全に電気に変える〔S. G. Kandlikar(カンドリカー)、Z. J. Lu(ルー)、Appl. Thermal Eng.、2009年、29、1276〕。
セルDからEまでの動作
【0099】
尿素燃料電池は、アルカリ膜を用い、双方の電極としてどちらもPt/Cを用い(セルD)、非貴金属Niアノード、およびAg/Cカソード(セルE)またはNi/CアノードおよびMnO2/Cカソード(セルF)のいずれかを用いて研究した。
セルDの動作
【0100】
セルDについての尿素/空気の燃料電池性能を、図8(a)および(b)に描く。
図8(a)は、1Mの尿素水溶液を燃料として用いたとき、尿素/空気について0.5VのOCVが観察されたことを示す。室温でのより一層低いOCVは、室温でのPtの触媒活性が双方の電極上で分極損失(polarisation loss)を起こすことを示した。3Mおよび5Mの尿素溶液が使われるとき、セルのOCVは減少した。希薄な尿素溶液の性能はまた、より一層高いことが示され、高濃度が動作状況の下で必要でないことが示された。
【0101】
この現象を確かめるために、異なる尿素供給源を、燃料電池で用いた。図8(b)は、アドブルー、市販の32.5%(~5M)の尿素水溶液がテストされたときの燃料電池性能を示す。アドブルーの種々の濃度を燃料として用いるとき、より一層高いOCVsが相当する尿素濃度について観察された。最大出力(電力)密度はアドブルーについて0.3mW/cm2であり、5Mの尿素を用いるとき0.2mW/cm2よりも高いものが達成された(図8(a))。より一層高い電力密度は、最大電流密度がわずかに低いが、相対的なより一層高い電圧から利益を享受する。これらの実験は、尿素の異なる供給源での不純物の痕跡量が燃料電池性能に影響を及ぼすことを示す。
【0102】
異なる濃度でのアドブルー溶液(脱イオン水を添加することによる)を、燃料として用いたとき、尿素溶液と同じ傾向が観察され;希薄アドブルー溶液は純粋なアドブルーよりも良好な性能を見せた。10%アドブルー溶液は、最高の電流および電力密度を示す。10%アドブルー溶液の尿素濃度は、尿と同じ尿素のレベルを有し、尿が良好な燃料でありうることが示された。
セルEの動作
【0103】
アルカリ膜燃料電池の利益の一つは、低コストの触媒を電極として使用できることである。セルEおよびFは、上記で詳細に説明したように、アノードとしてNi/Cを、カソードとしてAg/CまたはMnO2/Cを用いて構築した。セルEについて、1Mの尿素溶液を燃料として用いたとき、室温で、0.29VのOCVが観察され、それはPt/Cが双方の電極で用いられたとき、達成された0.5Vより低い。電力密度は、セルDでのものに比べて約75%低く、Ptがまだ尿素燃料電池のためのより一層良好な触媒であることを示す。3Mの尿素溶液を使用した場合、性能が再び低下した(図9(a))。また、異なる濃度でのアドブルーを、燃料として使用した。セルDで注目されたように、希薄なアドブルー溶液は、より一層良好な性能見せる(図9(b))。人間の尿の性能もまた、セルEの燃料として試験した。性能がわずかにアドブルーのものよりも低いが、3Mの尿素溶液と同程度であることが見出された。この結果は、尿が燃料電池のために使用できることを示す。
セルFの動作
【0104】
セルFを伴い、MnO2/Cをカソードとして用いた場合、セルのOCVは、Ag/Cを用いたときの、セルのそれよりも高かった(図10(a))。電力密度はまた、わずかに高くなり、それは相対的により一層高いOCVから利益を享受する。
【0105】
概して、電極での触媒活性は高温で増加する。このことは、セルFの動作温度が50℃まで上昇したとき、より一層高いOCVおよび電力密度によって確認される。1.7mW/cm2の最大電力密度は燃料として1Mの尿素溶液を用いて達成された(図10(b))。これは、室温で動作するセルに比べ6倍も高い(図10(a))。50℃での低コストの触媒に基づくアルカリ膜燃料電池の性能は、室温でのPt電極を用いたものよりも良好である。低コストの触媒が尿素燃料電池において用いられるとき、より一層高い動作温度が望まれる。アドブルーの性能は、1Mの尿素溶液とほぼ同じであり、アドブルーがまた、低コストの触媒に基づくセルFのための燃料として用いることができることを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形アニオン交換膜を含む燃料電池を作動させる方法であって、燃料電池においてのアノードを、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩と接触させること、およびカソードを酸化体と接触させることを、それによって電気を生成させるために含む、方法。
【請求項2】
固形アニオン交換膜には、水酸化物イオンが含まれる、請求項1の方法。
【請求項3】
固形アニオン交換膜には、炭酸および/または重炭酸イオンが含まれる、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
前記固形の膜には、金属水酸化物をドープしたポリマーまたはポリマーに結合したカチオンおよび水酸化物対イオンを含む永久に荷電したポリマーが含まれる、請求項1から3までのいずれか一項の方法。
【請求項5】
前記固形の膜には、ポリマーに結合したカチオンおよび水酸化物イオンを含む永久に荷電したポリマーが含まれる、請求項4の方法。
【請求項6】
ポリマーに結合したカチオンには、第四級アンモニウムイオンが含まれる、請求項4または請求項5の方法。
【請求項7】
前記固形の膜には、さらに、1またはそれよりも多くの中性ポリマーが含まれる、請求項1から6までのいずれか一項の方法。
【請求項8】
1またはそれよりも多くの中性ポリマーは、PVC、PVA、PEG、PVB、PTFEおよびPVDFを含む群から選ばれる、請求項7の方法。
【請求項9】
前記固形の膜には、アルカリアニオン交換樹脂またはポリマーおよびPVAのブレンドが、約20:80から約80:20までのw/ w比で含まれる、請求項1の方法。
【請求項10】
アノードには、ナノサイズのニッケル含有粒子または金属窒化物含有粒子が含まれる、いずれか一項の先行する請求項の方法。
【請求項11】
アノードには、コバルトモリブデン窒化物のような金属窒化物が含まれる、請求項10の方法。
【請求項12】
ナノサイズの粒子は約2 nmの粒度を有する、請求項10または請求項11の方法。
【請求項13】
カソードには、マンガン酸化物、ニッケル合金、ニッケルフォームまたはニッケル含有酸化物のナノサイズ粒子が含まれる、いずれか一項の先行する請求項の方法。
【請求項14】
カソードには、二酸化マンガンの、またはニッケル含有酸化物のナノサイズ粒子が含まれる、請求項13の方法。
【請求項15】
粉体、メッシュ、フォーム、または炭素粉、カーボンペーパー、カーボンクロス、ニッケルメッシュ、ニッケルフォームまたはメッキニッケルフォームのような導電性物質と混合された粉体から触媒が形成される、請求項13または請求項14の方法。
【請求項16】
アンモニアは、アンモニアガスまたはアンモニア水として燃料電池に導入される、いずれか一項の先行する請求項の方法。
【請求項17】
アンモニウム塩は、燃料電池に導入され、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムおよびカルバミン酸アンモニウムから選ばれる、請求項16の方法。
【請求項18】
尿素は水溶液として燃料電池に導入される、請求項1から15までのいずれか一項の方法。
【請求項19】
固形水酸化物イオン交換膜を含む燃料電池のための直接燃料としての尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩の使用。
【請求項20】
請求項1から18までのいずれか一項に定義する方法が含まれる、請求項19の使用。
【請求項21】
請求項2から9までのいずれか一項に、たとえば定義する固形水酸化物イオン交換膜、および尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩を含む燃料電池。
【請求項22】
請求項21で定義される少なくとも二つの燃料電池を含む燃料電池スタック。
【請求項23】
請求項1から18までのいずれか一項に従う燃料電池を動作させる方法を遂行すること、および発生した電気を、それによってデバイスに動力を供給するために用いることを含む、デバイスに動力を供給する方法。
【請求項24】
デバイスは乗り物またはサブマリンである、請求項23の方法。
【請求項25】
アルカリアニオン交換樹脂またはポリマーおよびPVAのブレンドが、約20:80から約80:20までのw/w比で含まれる、固形アニオン交換膜。
【請求項1】
固形アニオン交換膜を含む燃料電池を作動させる方法であって、燃料電池においてのアノードを、尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩と接触させること、およびカソードを酸化体と接触させることを、それによって電気を生成させるために含む、方法。
【請求項2】
固形アニオン交換膜には、水酸化物イオンが含まれる、請求項1の方法。
【請求項3】
固形アニオン交換膜には、炭酸および/または重炭酸イオンが含まれる、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
前記固形の膜には、金属水酸化物をドープしたポリマーまたはポリマーに結合したカチオンおよび水酸化物対イオンを含む永久に荷電したポリマーが含まれる、請求項1から3までのいずれか一項の方法。
【請求項5】
前記固形の膜には、ポリマーに結合したカチオンおよび水酸化物イオンを含む永久に荷電したポリマーが含まれる、請求項4の方法。
【請求項6】
ポリマーに結合したカチオンには、第四級アンモニウムイオンが含まれる、請求項4または請求項5の方法。
【請求項7】
前記固形の膜には、さらに、1またはそれよりも多くの中性ポリマーが含まれる、請求項1から6までのいずれか一項の方法。
【請求項8】
1またはそれよりも多くの中性ポリマーは、PVC、PVA、PEG、PVB、PTFEおよびPVDFを含む群から選ばれる、請求項7の方法。
【請求項9】
前記固形の膜には、アルカリアニオン交換樹脂またはポリマーおよびPVAのブレンドが、約20:80から約80:20までのw/ w比で含まれる、請求項1の方法。
【請求項10】
アノードには、ナノサイズのニッケル含有粒子または金属窒化物含有粒子が含まれる、いずれか一項の先行する請求項の方法。
【請求項11】
アノードには、コバルトモリブデン窒化物のような金属窒化物が含まれる、請求項10の方法。
【請求項12】
ナノサイズの粒子は約2 nmの粒度を有する、請求項10または請求項11の方法。
【請求項13】
カソードには、マンガン酸化物、ニッケル合金、ニッケルフォームまたはニッケル含有酸化物のナノサイズ粒子が含まれる、いずれか一項の先行する請求項の方法。
【請求項14】
カソードには、二酸化マンガンの、またはニッケル含有酸化物のナノサイズ粒子が含まれる、請求項13の方法。
【請求項15】
粉体、メッシュ、フォーム、または炭素粉、カーボンペーパー、カーボンクロス、ニッケルメッシュ、ニッケルフォームまたはメッキニッケルフォームのような導電性物質と混合された粉体から触媒が形成される、請求項13または請求項14の方法。
【請求項16】
アンモニアは、アンモニアガスまたはアンモニア水として燃料電池に導入される、いずれか一項の先行する請求項の方法。
【請求項17】
アンモニウム塩は、燃料電池に導入され、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムおよびカルバミン酸アンモニウムから選ばれる、請求項16の方法。
【請求項18】
尿素は水溶液として燃料電池に導入される、請求項1から15までのいずれか一項の方法。
【請求項19】
固形水酸化物イオン交換膜を含む燃料電池のための直接燃料としての尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩の使用。
【請求項20】
請求項1から18までのいずれか一項に定義する方法が含まれる、請求項19の使用。
【請求項21】
請求項2から9までのいずれか一項に、たとえば定義する固形水酸化物イオン交換膜、および尿素、アンモニアまたはアンモニウム塩を含む燃料電池。
【請求項22】
請求項21で定義される少なくとも二つの燃料電池を含む燃料電池スタック。
【請求項23】
請求項1から18までのいずれか一項に従う燃料電池を動作させる方法を遂行すること、および発生した電気を、それによってデバイスに動力を供給するために用いることを含む、デバイスに動力を供給する方法。
【請求項24】
デバイスは乗り物またはサブマリンである、請求項23の方法。
【請求項25】
アルカリアニオン交換樹脂またはポリマーおよびPVAのブレンドが、約20:80から約80:20までのw/w比で含まれる、固形アニオン交換膜。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−527721(P2012−527721A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511343(P2012−511343)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001031
【国際公開番号】WO2010/133854
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(598097622)ユニバーシティ オブ ストラスクライド (15)
【氏名又は名称原語表記】University of Strathclyde
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001031
【国際公開番号】WO2010/133854
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(598097622)ユニバーシティ オブ ストラスクライド (15)
【氏名又は名称原語表記】University of Strathclyde
【Fターム(参考)】
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