説明

燃料電池

【課題】液体燃料を収容する燃料タンクの姿勢に応じて、燃料タンク内に残存する液体燃料の残存量を出力する燃料電池を提供する。
【解決手段】 発電部と、前記発電部に供給される液体燃料を収容する燃料タンクと、前記燃料タンクに収容された液体燃料の液面を検出し、検出した液面に対応した液面検出値を出力する液面検出手段と、前記燃料タンクが所定の検出姿勢であるか否かを検出し、検出した姿勢に対応した姿勢検出信号を出力する姿勢検出手段と、を具備したことを特徴とする燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これらの携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされており、一部で市販が始まっている。このような燃料電池は、燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池は、小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムとなりえる。
【0003】
このような燃料電池に供給される燃料としては、水素に代表される気体燃料、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール等の液体燃料が広く用いられている。携帯電子機器においては、機器の小型化、燃料補充の容易性等から、液体燃料、なかでもメタノール(メチルアルコール)を燃料として用いる、直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)が、携帯用電子機器の電源として有望視されている。
【0004】
DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、燃料カートリッジを直接燃料電池本体へ装着し燃料カートリッジからポンプ等の送液手段にて燃料電池発電部へ供給する方式や、燃料電池本体内部へ燃料タンクを具備し燃料カートリッジから適宜燃料を補充し燃料タンクから燃料電池発電部へ送液手段にて燃料を供給する方法がある。これらはIECの命名に基づき、前者をインサートカートリッジ型と称し、後者をサテライトカートリッジ型と称している。
【0005】
これらのうち、燃料電池本体内部へ燃料タンクを具備するサテライトカートリッジ型は、燃料カートリッジが複数の携帯電子機器用燃料電池で共通化できる、必要な分だけ燃料を継ぎ足し補充できる、携帯電子機器毎に燃料カートリッジを設計することが不要になる等のメリットがあり、今後の携帯機器用液体燃料型燃料電池において主流となると考えられている。
【0006】
このように液体燃料型燃料電池は、携帯電子機器用電源として適した方式であるが、携帯電子機器では、その使用される姿勢が固定できないことが多く、液体燃料の残存量を精度良く計測、表示することが困難となっている。
【0007】
圧縮気体燃料において使用されている、燃料収容加圧容器の内圧を測定することによる残存燃料量計測手法は、液体燃料の場合、燃料タンク内の圧力は液体燃料の蒸気圧で左右され、残存量に依存しないため適用できない。液面を直接目視することで残存量の確認を行う手法は広く用いられているが、姿勢が適切でないと液面が正しい値を示さないほか、電気信号として出力されないため、携帯電子機器への適用に際し障害となる場合がある。
【0008】
燃料タンクの姿勢に依存しない残存量の検出手法として、多数の検出手段を多方向に設置する手段も存在するが、多数の検出手段を必要とすることから、占有体積が大きくなるほか、製品コストに占める検出手段のコストも増大し、携帯電子機器用燃料電池への適用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−302471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本実施形態の目的は、液体燃料を収容する燃料タンクの姿勢に応じて、燃料タンク内に残存する液体燃料の残存量を出力する燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態によれば、
発電部と、前記発電部に供給される液体燃料を収容する燃料タンクと、前記燃料タンクに収容された液体燃料の液面を検出し、検出した液面に対応した液面検出値を出力する液面検出手段と、前記燃料タンクが所定の検出姿勢であるか否かを検出し、検出した姿勢に対応した姿勢検出信号を出力する姿勢検出手段と、を具備したことを特徴とする燃料電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1実施形態による燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、第2実施形態による燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図2に示した出力端から出力される液面検出値と、姿勢検出部から出力される姿勢検出信号及び記憶部への液面検出値の書込タイミングとの関係を示す図である。
【図4】図4は、第3実施形態による燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【図5】図5は、図4に示した出力端から出力される液面検出値と、姿勢検出部から出力される姿勢検出信号との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、第1実施形態による燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【0015】
すなわち、燃料電池1は、発電部2と、燃料タンク3と、液面検出手段に対応する液面検出部4と、姿勢検出手段に対応する姿勢検出部5と、を具備している。
【0016】
発電部2は、詳述しないが、アノード(燃料極)21とカソード(空気極)22との間に電解質膜23が挟持された膜電極接合体24や、膜電極接合体24に対して発電に必要な燃料を供給する燃料供給機構25などを備えて構成されている。発電部2の燃料供給機構25と燃料タンク3との間は、流路6によって接続されている。流路6の途中には、図示しないが、適宜バルブやポンプが介在していても良い。なお、燃料供給機構25から膜電極接合体24に供給される燃料は、液体燃料Lであっても良いし、液体燃料Lの気化成分であっても良く、また、これらの混合物であっても良い。
【0017】
燃料タンク3は、発電部2に供給される液体燃料Lを収容している。この燃料タンク3の材質は、燃料電池システムの要求に応えうる強度と収容する液体燃料Lに耐えうる耐薬品性を有し、液面検出部4による液体燃料Lの液面検出を妨げなければ、その種類を問わない。この燃料タンク3の形状については、特に問わないが、例えば、円柱状や角柱状に形成されている。
【0018】
燃料タンク3に収容される液体燃料Lとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料Lは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Lは、例えば、エタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。このような液体燃料Lは、燃料タンク3から流路6を介して燃料供給機構25に供給される。
【0019】
液面検出部4は、燃料タンク3に収容された液体燃料Lの液面を検出し、検出した液面に対応した液面検出値を出力する。この液面検出部4は、例えば、燃料タンク3に設置されているが、液面を検出可能な位置であれば、設置場所は問わない。このような液面検出部4は、燃料電池1が電源ONの状態で、常に動作(つまり、液面を検出し液面検出値を出力する)しても良いし、所定時間毎あるいは所定のタイミングで動作しても良い。
【0020】
液面検出部4の構成は、燃料タンク3に収容された液体燃料Lの液面を検出できれば、その検出原理を問わないが、携帯用小型電子機器に収容しうるという観点からは、光の反射や光の干渉、光の屈折等を利用して光学的に液面を検出するセンサー類の適用が好ましい。なお、液面検出部4の他の構成としては、誘電率を応用して液面を検出するものや、超音波の反射を応用して液面を検出するもの、浮きを使用して液面を検出するもの等が適用可能である。
【0021】
なお、液面検出部4が光学的に液面を検出する構成の場合には、燃料タンク3は、少なくともその液面検出部4が装着される箇所は、使用される光の波長において、透過性を有することが要求される。具体的には、燃料タンク3の材質として、COC(環状ポリオレフィン)、PES(ポリエーテルサルホン)等の樹脂、ガラス、石英等の無機材料を用いることができる。光学的な検出手段を用いない場合は、燃料タンク3が透過性を有する必要が無く、PPS、LCP、PEEK等、使用される液体燃料に対する耐薬品性と機械的な強度の観点から選定することが可能となる。また腐食等の耐薬品性を満足することが出来れば、金属材料を使用することも可能である。
【0022】
姿勢検出部5は、燃料タンク3に収容された液体燃料Lの液面が液面検出部4によって検出される際に、燃料タンク3が所定の検出姿勢であるか否かを検出し、検出した姿勢に対応した姿勢検出信号を出力する。つまり、この姿勢検出部5は、液面検出部4が適正な液面を検出しているか否かを判断する、あるいは、液面検出部4が適正な液面検出値を出力しているか否かを判断する。
【0023】
ここで、所定の検出姿勢とは、燃料電池1本体あるいは燃料電池1を搭載した電子機器がほぼ固定された姿勢(多くの場合は燃料タンク3が正立した姿勢)で使用される頻度が高い場合にはそのときの姿勢に相当し、燃料電池1本体あるいは電子機器を使用する際の姿勢が不特定の場合にはある特定の姿勢、例えば、燃料タンク3が正立した姿勢などに設定される。
【0024】
姿勢検出部5は、液面検出部4の液面検出原理に応じて、その検出原理に使い分けが必要となる場合があるが、液面検出部4が検出した液面検出値が燃料タンク3に収容されている液体燃料Lの量に何らかの相関を有する検出値となるか否かの検出ができれば、その検出原理は問わない。多くの場合、燃料タンク3が正立の姿勢の場合に適正な液面検出値となる場合が多く、この場合には、姿勢検出部5の構成は、錘や加速度センサーを用いた姿勢検出センサーの適用が可能である。
【0025】
液面検出部4から出力された液面検出値は、出力端O1に出力される。姿勢検出部5から出力された姿勢検出信号は、出力端O2に出力される。これらの出力端O1及びO2は、燃料電池システムの構成に応じて、例えば、制御用マイクロコンピュータ(図示せず)の入力端に相当し、入力された液面検出値や姿勢検出信号に基づいて表示の制御や燃料電池の運転制御に役立てられたりする。また、これらの出力端O1及びO2は、簡易なシステムにおいては、例えば、表示装置の入力端に相当し、入力された液面検出値や姿勢検出信号に基づいてユーザへ液体燃料Lの残存量や検出姿勢の適否等の表示に役立てられたりする。
【0026】
図1においては、例えば、出力端O1に出力された液面検出値及び出力端O2に出力された姿勢検出信号に基づいて、液体燃料Lの残存量及び検出姿勢の適否を表示するインジケータ30の一例が図示されているが、ここに示した以外の構成であっても良い。このインジケータ30では、液面検出値に基づいて残存量31が表示され、また、姿勢検出信号に基づいて検出姿勢の適否に対応したランプ32が点灯または消灯する。例えば、検出姿勢が適正である場合にはランプ32が点灯することで、表示された残存量31が適正な値であることをユーザに報知することができる。
【0027】
このような第1実施形態の具体例として、燃料タンク3を有する燃料電池1を作成し、実施例1とした。この実施例1において、液体燃料Lとしては、純メタノールを使用した。また、燃料タンク3は、COC(ポリプラスチックス製)によって形成した。液面検出部4は、光学的に液面を検出する反射型液面計を使用した。この反射型液面計は、赤色LEDから出射された光をレンズで集光し、液体燃料Lの液面で反射した反射光を多分割したフォトダイオードで受光して三角測量の原理で液面を検出するものである。姿勢検出部5は、錘を用いた重力式の姿勢検出スイッチを使用し、燃料タンク3が所定の検出姿勢となった場合(燃料タンク3の姿勢が適切)に姿勢検出信号として出力し(本実施例ではHレベル)、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではない場合(燃料タンク3の姿勢が不適切)に姿勢検出信号としてLレベルを出力するように設定した。
【0028】
実施例1と比較して、姿勢検出部5及び出力端O2を取り外した燃料電池1を作成し、比較例1とした。実施例1及び比較例1の燃料電池1をそれぞれ携帯型情報端末へ装着し、実際に日常環境にて使用試験を行った。姿勢検出部5を有する実施例1においては、液面検出部4からの液面検出値に応じて表示される液体燃料Lの残存量が適正か否かが容易に判断できたが、比較例1においては表示された残存量が適正か否かが不明であるため、携帯型情報端末の姿勢によっては液体燃料Lの残存量を過大に評価し、突然の燃料切れに陥ることがたびたびあった。
【0029】
次に、第2実施形態について説明する。
【0030】
図2は、第2実施形態による燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【0031】
この第2実施形態は、図1に示した第1実施形態と比較して、液面検出部4と出力端O1との間に記憶手段に対応する記憶部7を備えた点で相違している。この記憶部7は、燃料タンク3が所定の検出姿勢である期間に少なくとも1回、液面検出部4から出力された液面検出値を記憶するように構成されている。記憶部7の構成については、適宜、液面検出部4から出力された液面検出値を記憶し、最新の液面検出値を更新できるものであればその種類は問わない。
【0032】
記憶部7は、姿勢検出部5から出力される姿勢検出信号に基づいて制御される。すなわち、記憶部7は、燃料タンク3が所定の検出姿勢であることを示す姿勢検出信号(本実施例においてはHレベル)を姿勢検出部5から受信したのに基づいて、液面検出部4から出力された液面検出値の記憶が可能となる。つまり、記憶部7は、所定の検出姿勢であることを示す姿勢検出信号を受信している期間は、記憶されている液面検出値を液面検出部4から出力された液面検出値で更新し続ける。このため、燃料タンク3が所定の検出姿勢である場合には、記憶部7から出力される液面検出値は、常に最新の値であり、その液面検出値が出力端O1に出力される。
【0033】
一方、記憶部7は、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではないことを示す姿勢検出信号(本実施例ではLレベル)を姿勢検出部5から受信すると、液面検出部4から出力された液面検出値を更新することはなく、姿勢検出信号が変化する直前に入力された液面検出値を最新の値として記憶・保持する。つまり、記憶部7は、姿勢検出信号が所定の検出姿勢でないことを示している期間は、記憶・保持している液面検出値を出力端O1に出力する。
【0034】
図3は、図2に示した出力端O1から出力される液面検出値と、姿勢検出部5から出力される姿勢検出信号Sig1及び記憶部7への液面検出値の記憶(書込)を制御する記憶更新信号Sig2との関係を示す図である。
【0035】
姿勢検出部5は、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではないと判断すると、記憶部7に対してLレベルの姿勢検出信号Sig1を出力する。記憶部7は、このようなLレベルの姿勢検出信号Sig1を受信したのに基づいて、記憶更新信号Sig2をHレベルとする。記憶部7は、記憶更新信号Sig2がHレベルの期間には、液面検出部4から出力された液面検出値を更新することはなく、保持している最新の液面検出値を出力端O1に出力する。
【0036】
このため、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではない期間においては、出力端O1から出力される液面検出値は、一定値となる。つまり、燃料タンク3が所定の検出姿勢でない場合には、例え液体燃料Lを消費していたとしても、液体燃料Lの残存量は実測値とは異なる一定値が出力端O1から出力されることになる。
【0037】
姿勢検出部5は、燃料タンク3が所定の検出姿勢であると判断すると、記憶部7に対してHレベルの姿勢検出信号Sig1を出力する。記憶部7は、このようなHレベルの姿勢検出信号Sig1を受信したのに基づいて、記憶更新信号Sig2をLレベルとする。記憶部7は、記憶更新信号Sig2がLレベルの期間には、液面検出部4から出力された最新の液面検出値に更新するとともにこの最新の液面検出値を出力端O1に出力する。
【0038】
このため、燃料タンク3が所定の検出姿勢である期間においては、出力端O1から出力される液面検出値は、液面検出部4で検出された値の変化に応じて変化する。つまり、燃料タンク3が所定の検出姿勢である場合には、液体燃料Lの消費に伴い、実測された正確な残存量を出力端O1から出力することが可能となる。
【0039】
その後、液面検出部により、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではないと判断され、Lレベルの姿勢検出信号Sig1が出力されると、記憶更新信号Sig2を速やかにHレベルとなり、記憶部7に記憶された液面検出値は、その時点の値で固定される。
【0040】
なお、燃料タンク3に収容された液体燃料Lの液面は、燃料タンク3の姿勢が変化した直後はゆれ等のために安定しないことが多い。つまり、姿勢検出部5によって燃料タンク3が所定の検査姿勢であると判断された直後は、液面検出部4によって検出された液面検出値は正確な値であるとは限らない。
【0041】
このため、記憶部7は、姿勢検出信号Sig1がLレベルからHレベルに変化した直後には、液面検出部4によって検出された液面検出値を記憶しないことが望ましい。つまり、図3に示したように、記憶更新信号Sig2は、姿勢検出信号Sig1がLレベルからHレベルに変化した直後にHレベルからLレベルに変化するのではなく、姿勢検出信号Sig1がLレベルからHレベルに変化してから所定の遅れ時間Tを持ってHレベルからLレベルに変化することが望ましい。これにより、より正確な液面検出値が記憶部7に記憶されるとともに出力端O1から出力される。
【0042】
なお、図3において、記憶更新信号Sig2がLレベルからHレベルへ変化した際に出力端O1へ出力される信号がDだけ低下している。これは、記憶部7が記憶・保持していた期間中に燃料が消費されることにより変化した液面検出値に対応している。
【0043】
このような第2実施形態においては、液面検出値を記憶する記憶部7を追加することにより、姿勢検出部5によって燃料タンク3が所定の検査姿勢ではないと判断され、液体燃料Lの液面検出が行えていない場合には、直前に記憶部7に記憶・保持された液面検出値が出力端O1から出力されるため、燃料電池1あるいは燃料電池1を搭載した携帯型情報端末を使用するユーザの利便性は大幅に改善された。
【0044】
なお、燃料タンク3が所定の検査姿勢ではない場合、出力端O1から出力される液面検出値は必ずしも実測された正確な値であるとは限らない。このため、ユーザに燃料タンク3の姿勢が不適切である旨を報知するため、図1に示した例のようなランプ32などの報知器を追加することが望ましい。
【0045】
次に、第3実施形態について説明する。
【0046】
図4は、第3実施形態による燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【0047】
この第3実施形態は、図1に示した第1実施形態と比較して、液面検出部4と出力端O1との間に記憶手段に対応する記憶部7を備え、しかも、記憶部7と出力端O1との間に液面補正手段に対応する補正部8を備えた点で相違している。記憶部7は、第2実施形態で説明したのと同様に、燃料タンク3が所定の検出姿勢である期間に記憶された液面検出部4からの液面検出値を、所定の検出姿勢でない期間は保持。出力するように構成されており、その種類は問わない。
【0048】
図示した例では、液面検出部4と記憶部7との間にスイッチSWが設けられている。このスイッチSWは、姿勢検出部5から出力される姿勢検出信号に基づいて制御される。すなわち、スイッチSWは、燃料タンク3が所定の検出姿勢であることを示す姿勢検出信号(本実施例ではHレベル)に基づいて閉じ、液面検出部4と記憶部7とを導通状態(ON)とする。これにより、記憶部7は、液面検出部4から出力された液面検出値を適宜記憶するとともに、出力端O1に液面検出値を出力する。
【0049】
また、スイッチSWは、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではないことを示す姿勢検出信号(本実施例ではLレベル)に基づいて開き、液面検出部4と記憶部7とを非導通状態(OFF)とする。これにより、記憶部7には、液面検出部4から出力された液面検出値が入力されることはない。このとき、記憶部7は、直近に入力された液面検出値を最新の値として保持する。
【0050】
補正部8は、姿勢検出部5から出力される姿勢検出信号に基づいて制御される。すなわち、補正部8は、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではないことを示す姿勢検出信号(本実施例ではLレベル)を受信したのに基づいて動作する一方で、燃料タンク3が所定の検出姿勢であることを示す姿勢検出信号(本実施例ではHレベル)を受信した場合には動作することなく、記憶部7を介して液面検出部4から出力された液面検出値を出力端O1に出力する。
【0051】
この補正部8は、第1演算部81及び第2演算部82を含んでいる。第1演算部81は、燃料タンク3が所定の検出姿勢でないことを示す姿勢検出信号(本実施例ではLレベル)を受信している期間に、燃料タンク3から発電部2に供給された液体燃料Lの供給量(燃料タンク3から減少した液体燃料Lの減少量)を演算する。第2演算部82は、記憶部7に保持されている最新の液面検出値と、第1演算部81によって演算された供給量とに基づいて液面検出値の推定値を算出し、算出した液面検出値(推定値)を出力端O1に出力する。
【0052】
図示した例では、燃料タンク3から発電部2までの流路6の途中に液体燃料Lを送液する送液手段に対応する送液部9、燃料タンク3から発電部2に送液された液体燃料Lの送液量を検出する送液量検出手段に対応する送液量検出部10などが備えられている。送液部9は、各種ポンプなどで構成されている。送液量検出部10は、マスフローメータなどの送液量センサーで構成されている。
【0053】
第1演算部81には、送液部9を駆動する駆動信号、送液量検出部10によって検出された検出値、及び、発電部2の出力値の少なくとも一部が入力される。第1演算部81は、これらの入力に基づいて燃料タンク3から発電部2に供給された液体燃料Lの供給量を演算する。
【0054】
図5は、図4に示した出力端O1から出力される液面検出値と、姿勢検出部5から出力される姿勢検出信号Sig1との関係を示す図である。
【0055】
姿勢検出部5は、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではないと判断すると、スイッチSW及び補正部8に対してLレベルの姿勢検出信号Sig1を出力する。スイッチSWは、このようなLレベルの姿勢検出信号Sig1を受信したのに基づいて開く。このため、記憶部7に記憶された直近の液面検出値はその後に更新されることなく保持される。
【0056】
また、補正部8は、Lレベルの姿勢検出信号Sig1を受信したのに基づいて、記憶部7に記憶されている最新の液面検出値を補正する補正動作を開始する。すなわち、第1演算部81は、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではない期間に燃料タンク3から発電部2に供給された液体燃料Lの供給量を算出する。第2演算部82は、第1演算部81によって演算された供給量に基づいて燃料タンク3における液面の減少量を演算し、算出した液面減少量を、記憶部7に保持された最新の液面検出値から減算し、現状の液面検出値を算出する。そして、この第2演算部82は、算出した液面検出値を推定値として出力端O1に出力する。
【0057】
このため、燃料タンク3が所定の検出姿勢ではない期間においては、液体燃料Lの消費に伴って推定された液面検出値が出力端O1から出力されることになる。
【0058】
一方で、姿勢検出部5は、燃料タンク3が所定の検出姿勢であると判断すると、スイッチSW及び補正部8に対してHレベルの姿勢検出信号Sig1を出力する。スイッチSWは、このようなHレベルの姿勢検出信号Sig1を受信したのに基づいて閉じる。このため、液面検出部4によって検出された液面検出値が記憶部7に入力され、記憶部7にて入力された液面検出値が記憶されるとともに出力端O1に出力される。
【0059】
このとき、補正部8は補正動作を行わないため、燃料タンク3が所定の検出姿勢である期間においては、出力端O1から出力される液面検出値は、液面検出部4で検出された値の変化に応じて変化する。つまり、燃料タンク3が所定の検出姿勢である場合には、液体燃料Lの消費に伴い、実測された正確な残存量を出力することが可能となる。
【0060】
このような第3実施形態においては、液面検出値を記憶する記憶部7と、燃料タンク3が所定の検査姿勢ではない期間において記憶部7に記憶された液面検出値を補正する補正部8を追加したことにより、燃料タンク3が所定の検査姿勢である期間においては液面検出部4によって検出された液面検出値が実測値として出力端O1に出力され、燃料タンク3が所定の検査姿勢ではない期間においては補正された液面検出値が推定値として出力端O1に出力される。
【0061】
このため、燃料タンク3が所定の検査姿勢ではない期間が長く継続したとしても、出力端O1から出力される液面検出値と、実際に燃料タンク3に収容されている液体燃料Lの液面すなわち残存量との間の乖離を抑制することができる。したがって、燃料電池1あるいは燃料電池1を搭載した携帯情報端末を使用するユーザは燃料電池1の発電に伴い変化する液体燃料Lの残存量を、燃料電池1を使用する姿勢によらず、常に把握することが可能となる。
【0062】
なお、補正部8による補正動作が長時間継続すると、送液部9を駆動する駆動信号、送液量検出部10によって検出された検出値、及び、発電部2の出力値といった第1演算部81に入力される各種信号の誤差や、第1演算部81での演算誤差などにより、補正された液面検出値と実際の液面との間に乖離が生じるおそれがある。このため、姿勢検出部5によって燃料タンク3が所定の検査姿勢であると判断された際にその乖離分Xを補正するようにしてもよい。
【0063】
このように、本実施形態の燃料電池1では、燃料タンク3に収容された液体燃料Lの液面が液面検出部4によって検出された際に、燃料タンク3が所定の検出姿勢であるか否かが姿勢検出部5によって判断される。これにより、簡易な液面検出部4が適用可能となる。さらに、これらに液面検出部4の出力を記憶する記憶部7、さらには、燃料タンク3から発電部2へ送液されたる液体燃料Lの送液量を検出あるいは発電部2の発電量等により液体燃料Lの送液量を演算する補正部8を具備することにより、姿勢検出部5によって燃料タンク3が所定の検出姿勢ではないと判断された場合においても、液体燃料Lの消費に伴って変化する残存量を出力することが可能となる。これによって、燃料電池の小型化等を損なうことなく、ユーザの利便性の向上を図ることが可能となる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、液体燃料を収容する燃料タンクの姿勢に応じて、燃料タンク内に残存する液体燃料の残存量を出力する燃料電池を提供することができる。
【0065】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…燃料電池
2…発電部 21…アノード 22…カソード 23…電解質膜
24…膜電極接合体 25…燃料供給機構
3…燃料タンク L…液体燃料
4…液面検出部
5…姿勢検出部
7…記憶部
8…補正部 81…第1演算部 82…第2演算部
9…送液部
10…送液量検出部
SW…スイッチ
O1…出力端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部と、
前記発電部に供給される液体燃料を収容する燃料タンクと、
前記燃料タンクに収容された液体燃料の液面を検出し、検出した液面に対応した液面検出値を出力する液面検出手段と、
前記燃料タンクが所定の検出姿勢であるか否かを検出し、検出した姿勢に対応した姿勢検出信号を出力する姿勢検出手段と、
を具備したことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
さらに、前記液面検出手段と液面検出値が出力される出力端との間に記憶手段を備え、
前記姿勢検出手段からの姿勢検出信号に基づいて前記燃料タンクが所定の検出姿勢である期間に少なくとも1回、前記液面検出手段から出力された液面検出値が前記記憶手段に記憶されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記燃料タンクが所定の検出姿勢である期間は前記液面検出手段からの液面検出値が前記出力端に出力され、前記燃料タンクが所定の検出姿勢ではない期間は前記記憶手段に記憶された液面検出値が前記出力端に出力されることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
さらに、前記記憶手段と前記出力端との間に液面補正手段を備え、
前記姿勢検出手段からの姿勢検出信号に基づいて前記燃料タンクが所定の検出姿勢ではない期間に前記燃料タンクから前記発電部へ供給された液体燃料の供給量に応じて前記記憶手段に記憶されている液面検出値が前記液面補正手段によって補正されることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項5】
さらに、前記燃料タンクから前記発電部に液体燃料を送液する送液手段を備え、
前記液面補正手段は、前記送液手段の駆動信号に基づき前記燃料タンクから前記発電部に供給された液体燃料の供給量を演算することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項6】
さらに、前記燃料タンクから前記発電部に送液された液体燃料の送液量を検出する送液量検出手段を備え、
前記液面補正手段は、前記送液量検出手段からの検出値に基づき前記前記燃料タンクから前記発電部に供給された液体燃料の供給量を演算することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記液面補正手段は、前記発電部の出力値に基づき前記前記燃料タンクから前記発電部に供給された液体燃料の供給量を演算することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記液面検出手段は、光学的に液体燃料の液面を検出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記液体燃料は、メタノール燃料であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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