説明

燃料電池

【課題】導電性とガス拡散性を損なうことなく、触媒層のフラッディングによるガス拡散性の低下を抑制することができる触媒層を提供する。
【解決手段】膜電極接合体20は、電解質膜22、アノード触媒層24、およびカソード触媒層26を有する。カソード触媒層26は、触媒金属担持炭素粒子およびイオン伝導体の他に、所定の相対湿度領域において相対湿度が増加するにつれて水吸着量が上昇する調湿剤を含む。調湿剤の含有量は、電子の流れの方向に沿ってカソード触媒層26の端面に接続されたインターコネクタ18に近づくにつれて少なくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式のように熱エネルギや運動エネルギの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できること、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いことなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギを有効に利用でき、環境にやさしい特性を持っているので、21世紀を担うエネルギ供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラあるいは電子辞書、電子書籍)などの電源への利用が期待されている。携帯機器用の固体高分子形燃料電池としては、単セルで構成された燃料電池が知られている(特許文献1)。燃料として水素が利用された燃料電池が特許文献1に示されている。
【0004】
固体高分子形燃料電池は、電解質膜として水素イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜を用い、その両面に触媒層が積層された構造を有する。
【0005】
固体高分子形燃料電池は、動作環境や発電条件によっては生成水が触媒層に滞留することによってフラッディングによるガス拡散性の低下が起こり、出力が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2010−50531号
【特許文献2】特開2002−270199号
【特許文献3】特開2006−244715号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、触媒層内に調湿剤を配置して調湿を行っている。触媒層には、集電のための導電性が求められている。このため、触媒層に調湿剤が存在することにより、集電に必要な導電性が十分に得られない場合がある。
【0008】
特許文献2では、触媒層と集電体との間に調湿剤を配置させているが、導電性とガス拡散性を考慮した調湿剤の配置を検討する必要がある。
【0009】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、調湿剤の添加による触媒層の導電性とガス拡散性を損なうことなく、触媒層のフラッディングによるガス拡散性の低下を抑制することができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、燃料電池である。当該燃料電池は、電解質膜と、電解質膜の一方の面に設けられたアノードと、電解質膜の他方の面に設けられたカソードと、アノードおよびカソードのうち少なくとも一方に設けられ、所定の相対湿度領域において相対湿度が増加するにつれて水吸着量が上昇する調湿剤を含む触媒層と、電解質膜の面方向における触媒層の端部と接する集電部材と、を備え、触媒層において、集電部材の近傍領域における調湿剤の含有量が、近傍領域から離れた領域における調湿剤の含有量より少ないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃料電池によれば、調湿剤の添加による触媒層の導電性とガス拡散性を損なうことなく、触媒層のフラッディングによるガス拡散性の低下を抑制することができる技術の提供にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は、実施の形態1に係る燃料電池の概略構成を示す平面図である。図1(B)は、図1(A)に示すA−A線に沿った断面図である。
【図2】変形例に係る燃料電池の概略構成を示す断面図である。
【図3】実施の形態1に係る燃料電池で用いられるカソード触媒層の形成方法を示す工程図である。
【図4】実施の形態1に係る燃料電池で用いられるカソード触媒層の形成方法を示す工程図である。
【図5】実施の形態2に係る燃料電池の概略構成を示す断面図である。
【図6】実施の形態3に係る燃料電池の概略構成を示す斜視図である。
【図7】実施の形態4に係る燃料電池の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(実施の形態1)
本実施の形態は、複数の燃料電池を平面状に配列した平面配列型の燃料電池に関する。平面配列型の燃料電池としては特許文献3で記載されるような燃料電池の構造が知られており、特許文献3に記載の燃料電池は参照により本明細書に組み込まれる。図1(A)は、実施の形態1に係る燃料電池100の概略構成を示す平面図である。図1(B)は、図1(A)に示すA−A線に沿った断面図である。燃料電池100は、複数の膜電極接合体20を有する。複数の膜電極接合体20は、基材14に形成された開口16内に配設され、平面配列されている。
【0015】
基材14は、ポリエステルなどの一般的なポリマーなどの絶縁性の材料により形成されている。基材14には、膜電極接合体20と同数の開口16が設けられている。
【0016】
膜電極接合体20は、電解質膜22、電解質膜22の一方の面に設けられたアノード触媒層24、電解質膜22の他方の面に設けられたカソード触媒層26を備える。膜電極接合体20は、基材14に設けられた開口16に対応して設けられている。アノード触媒層24には、燃料ガスとして水素が供給される。一方、カソード触媒層26には酸化剤として空気が供給される。一対のアノード触媒層24とカソード触媒層26との間に電解質膜22が狭持されることによりセルが構成され、各セルは水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0017】
このように、本実施の形態の燃料電池では、アノード触媒層24にカソード触媒層26が対となり、複数のセルが平面状に形成されている。
【0018】
以下、隣接する2つの膜電極接合体20の一方を膜電極接合体20aとし、他方を膜電極接合体20bとして、隣接する2つの膜電極接合体20の間の電気接続構造および膜電極接合体20の形態の説明を行う。
【0019】
インターコネクタ18は、隣接する膜電極接合体20の間において、基材14を貫通して設けられている。インターコネクタ18の一方の端部は、電解質膜22のアノード側において、電解質膜22に被覆されたアノード触媒層24aの端面と接続してる。また、インターコネクタ18の他方の端部は、電解質膜22のカソード側において、電解質膜22に被覆されたカソード触媒層26bの端面と接続してる。このように、インターコネクタ18は集電部材としての機能を担う。インターコネクタ18は導電性の材料で形成され、たとえば、カーボンなどが用いられる。以上の構成により、隣接する膜電極接合体(セル)20同士はインターコネクタ18により直列接続されている。
【0020】
電解質膜22は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが好ましく、アノード触媒層24とカソード触媒層26との間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。電解質膜22は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などが挙げられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0021】
アノード触媒層24は、イオン交換樹脂ならびに触媒粒子、場合によって炭素粒子を有する。
【0022】
アノード触媒層24が有するイオン交換樹脂は、触媒粒子と電解質膜22を接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。このイオン交換樹脂は、電解質膜22と同様の高分子材料から形成されてよい。触媒金属としては、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。また触媒を担持する場合には炭素粒子として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。
【0023】
カソード触媒層26は、アノード触媒層24と同様な成分に加えて、調湿剤を有する。調湿剤は、所定の相対湿度領域において相対湿度が上がるにつれて吸水量が上昇する特性を有することを特徴とする。言い換えると、調湿剤は、所定の相対湿度領域において、相対湿度が上昇するにつれて吸水量が増加し、周囲の水を吸水する。逆に、所定の相対湿度領域において、相対湿度が減少するにつれて吸水量が減少し、保持していた水を放出する。調湿剤として、メソポーラスシリカなどのメソポーラス調湿剤が挙げられる。
【0024】
温度揺らぎなどによって局所的にカソード触媒層26が乾燥状態へと移行しそうな場合に、触媒層30内のイオン伝導体近傍にある調湿剤が吸水していた水を大量に放出することによって、乾燥状態を抑制することができる。逆に、水を放出したメソポーラス調湿剤は、湿潤状態になると再び吸水を行うため、触媒層30の湿潤雰囲気を一定に保つことが可能になる。
【0025】
メソポーラス調湿剤としては、メソポーラスシリカが好適である。具体的には、メソポーラスシリカとして、太陽化学製のTMPS(登録商標)を用いることができる。TMPSは、界面活性剤のミセルを鋳型として合成される、ハニカム構造の均一なメソポアを有するシリカ多孔体(メソポーラスシリカ)である。TMPSとしては、TMPS−1.5およびTMPS−4が挙げられ、特に、TMPS−4を調湿剤として使用すること好ましい。メソポアとは、細孔直径が1〜50nmの微細な細孔を指す。ただし、メソポアは、従来のゼオライト(孔径:1nm未満)に比べて孔径が大きい。TMPSは、大きな比表面積(〜1500m/g)と細孔容積(約1cm/g)を有する。
【0026】
カソード触媒層26において、カソード触媒層26と接するインターコネクタ18の近傍領域における調湿剤の含有量は、当該近傍領域から離れた領域における調湿剤の含有量より少ない。本実施の形態では、カソード触媒層26に接続されたインターコネクタ18から近い方から順にカソード触媒層26を領域R1、領域R2、領域R3および領域R4に分割し、各領域における調湿剤の含有量をそれぞれA1、A2、A3、A4としたとき、A1<A2<A3<A4という関係が成り立つ。言い換えると、カソード触媒層26では、電子の流れ方向に並んだ領域R1〜領域R4にかけて調湿剤の含有量が段階的に増加している。なお、調湿剤の細孔容積の総和は、インターコネクタ18とカソード触媒層26が接する端部から、当該端部と反対側のインターコネクタ18と接していないカソード触媒層26の端部に向かって増えている。
【0027】
カソード触媒層26におけるメソポーラスシリカの総添加量は、単位面積当たりの水生成量および外部から供給される水蒸気が、発電時の電流密度400mA/cmで約0.009ml/minとすると、触媒層中の調湿剤の含有量は0.1〜14(重量%)が好ましく、0.4〜7(重量%)がより好ましい。また、メソポーラスシリカの細孔容積(pore volume:cm/g)は、0.3〜1.2cm/gが好ましく、0.6〜1.1cm/gがより好ましい。
【0028】
以上説明した燃料電池100によれば、温度揺らぎなどによって局所的にカソード触媒層26が乾燥状態に移行する場合には、カソード触媒層26内のイオン伝導体近傍にある調湿剤が吸水していた水を大量に放出することによって乾燥状態を抑制することができる。逆に、発電により局所的に生成水が生成した場合には、調湿剤が余分な生成水を吸収することによりフラッディングが抑制される。調湿剤の吸水量が急激に変化する相対湿度の範囲を、燃料電池100が温度揺らぎを起こすことにより変化しやすい相対湿度の範囲に合わせることにより、上述した効果がより一層発揮される。
【0029】
さらに、燃料電池100によれば、カソード触媒層26において、集電部材であるインターコネクタ18との接続箇所の近傍において、調湿剤の使用量を抑えることにより、カソード触媒層26の導電性の低下を抑制することができる。したがって、カソード触媒層26の導電性を損なうことなく、上述したような調湿剤による調湿を行うことができる。一方で、燃料電池100によれば、カソード触媒層26において、集電部材であるインターコネクタ18との接続箇所の近傍において、調湿剤の使用量を抑えることにより、カソード触媒層26のガス拡散性の低下を抑制することができる。したがって、カソード触媒層26のガス拡散性を損なうことなく、上述したような調湿剤による調湿を行うことができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、領域R1〜領域R4にかけて調湿剤の含有量が段階的に増加しているが、電子の流れ方向に並んだ領域R1〜領域R4にかけてて調湿剤の含有量が連続的に増加していてもよい。また、図2に示すように、インターコネクタ18が接する端部の反対側に位置するカソード触媒層26の領域R4にのみに調湿剤を含んでもよい。
【0031】
(カソード触媒層の形成方法)
図3乃至図4は、上述した実施の形態1に係る燃料電池100で用いられるカソード触媒層26の形成方法を示す工程図である。カソード触媒層26の形成方法について説明する。図3乃至図4において、(ii)図は、(i)図のA−A線に沿った断面図である。
【0032】
まず、メソポーラスシリカの含有量がA1、A2、A3、A4(A1<A2<A3<A4)の触媒用スラリー1〜4を用意する。触媒スラリー1〜4は、触媒金属、イオン伝導体および調湿剤を混合して作製される。触媒金属は、たとえば、白金ブラックである。イオン伝導体は、たとえば、ナフィオン(登録商標)溶液(Nafion5% 溶液、Solution Technology社製)である。調湿剤は、たとえば、メソポーラスシリカ(TMPS−1.5、TMPS−4:太陽化学製)であり、メソポーラスシリカ(TMPS−4:太陽化学製)がより好ましい。触媒スラリー1の混合比は、たとえば、白金ブラック:ナフィオン:メソポーラスシリカ=10:20:0.01(質量%)である。触媒スラリー2の混合比は、たとえば、白金ブラック:ナフィオン:メソポーラスシリカ=10:20:0.4(質量%)である。触媒スラリー3の混合比は、たとえば、白金ブラック:ナフィオン:メソポーラスシリカ=10:20:0.9(質量%)である。触媒スラリー4の混合比は、たとえば、白金ブラック:ナフィオン:メソポーラスシリカ=10:20:1.4(質量%)である。なお、メソポーラスシリカの添加量は、燃料電池の発電状態に応じて調節される。
【0033】
図3(A)に示すように、インターコネクタ18に接する領域R1を開口201とするマスクM1を介して、触媒用スラリー1を塗布する。
【0034】
次に、図3(B)に示すように、インターコネクタ18とは反対側の領域R1の辺に隣接する領域R2を開口202とするマスクM2を介して、触媒用スラリー2を塗布する。
【0035】
次に、図4(A)に示すように、インターコネクタ18は反対側の領域R2の辺に隣接する領域R3を開口203とするマスクM3を介して、触媒用スラリー3を塗布する。
【0036】
次に、図4(B)に示すように、インターコネクタ18とは反対側の領域R3の辺に隣接する領域R4を開口204とするマスクM4を介して、触媒用スラリー4を塗布する。
【0037】
以上の工程により、インターコネクタ18の側から領域R1、領域R2、領域R3、領域R4と順にメソポーラスシリカの含有量を段階的に増加させることができる。言い換えると、電子の流れ方向に並んだ領域R1〜領域R4にかけてメソポーラスシリカの含有量を段階的に増加させることができる。なお、開口の位置がずれたマスクの数、すなわち、マスクに対応する領域の数(全領域の分割数)を増やすことにより、電子の流れ方向において、実質的に連続的にメソポーラスシリカの含有量を増加させることができる。
【0038】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る燃料電池100の概略構成を示す断面図である。本実施の形態では、アノード触媒層24が実施の形態1のカソード触媒層26と同様な調湿剤を含む。
【0039】
アノード触媒層24において、アノード触媒層24と接するインターコネクタ18の近傍領域におけるメソポーラス調湿剤の含有量は、当該近傍領域から離れた領域におけるメソポーラスシリカ調湿剤の含有量より少ない。本実施の形態では、アノード触媒層24をに接続されたインターコネクタ18から近い方から順にアノード触媒層24を領域R1’、領域R2’、領域R3’および領域R4’に分割し、各領域における調湿剤の含有量をそれぞれA1’、A2’、A3’、A4’としたとき、A1’<A2’<A3’<A4’という関係が成り立つ。言い換えると、アノード触媒層24では、電子の流れ方向に並んだ領域R4’〜領域R1’にかけて調湿剤の含有量が段階的に減少している。
【0040】
カソード触媒層26における調湿剤の総含有量(A1+A2+A3+A4)は、アノード触媒層24における調湿剤の総含有量(A1’+A2’+A3’+A4’)より多い。
【0041】
本実施の形態によれば、アノード触媒層24においても、実施の形態1で説明したカソード触媒層26による効果を得ることができる。さらに、カソード触媒層26における調湿剤の総含有量をアノード触媒層24における調湿剤の総含有量より多くすることにより、アノード触媒層24およびカソード触媒層26の導電性を損なうことなく、燃料電池100全体で吸収可能な生成水の量を増やすことができる。
【0042】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3に係る燃料電池100を示す斜視図である。実施の形態3に係る燃料電池100は単セル構造である。
【0043】
カソード触媒層26の一辺に沿って、カソード触媒層26の端面にカソード集電体27が接続している。また、カソード集電体27が接続されたカソード触媒層26の一辺に対応するアノード触媒層24の一辺に沿って、アノード触媒層24の端面にアノード集電体25が接続している。
【0044】
カソード触媒層26には、上述した調湿剤が添加されており、電子の流れ方向に沿ってカソード触媒層26に接続されたカソード集電体27に近づくにつれて、調湿剤の含有量が徐々に減少している。また、アノード触媒層24には、上述した調湿剤が添加されており、電子の流れ方向に沿ってアノード触媒層24に接続されたアノード集電体25から離れるにつれて、調湿剤の含有量が徐々に増加している。
【0045】
本実施の形態によれば、単セル構造の燃料電池100において、導電性とガス拡散性を損なうことなく調湿を行うことができる。
【0046】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4に係る燃料電池100を示す斜視図である。実施の形態4に係る燃料電池100は、実施の形態3と同様に、単セル構造である。本実施の形態では、カソード集電体27は「コ」の字状であり、カソード触媒層26の3つの辺に沿って、カソード触媒層26の端面にカソード集電体27が接続している。また、アノード集電体25は「コ」の字状であり、カソード集電体27が接続されたカソード触媒層26の3つの辺に対応する、アノード触媒層24の3つの辺に沿って、アノード触媒層24の端面にアノード集電体25が接続している。
【0047】
カソード触媒層26には、上述した調湿剤が添加されており、電子の流れ方向に沿ってカソード触媒層26の3辺に接続されたカソード集電体27に近づくにつれて、調湿剤の含有量が徐々に減少している。カソード触媒層26では、カソード集電体27が接していない辺の中央近傍領域Xにおいて調湿剤の含有量が最大になっている。また、アノード触媒層24には、上述した調湿剤が添加されており、電子の流れ方向に沿ってアノード触媒層24の3辺に接続されたアノード集電体25から離れるにつれて、調湿剤の含有量が徐々に増加している。アノード触媒層24では、アノード集電体25が接していない辺の中央近傍領域Yにおいて調湿剤の含有量が最大になっている。
【0048】
本実施の形態によれば、集電体が触媒層の3辺の端面と接する単セル構造の燃料電池100において、導電性とガス拡散性を損なうことなく調湿を行うことができる。
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【符号の説明】
【0049】
10 燃料電池、14 基材、18 インターコネクタ、20 膜電極接合体、22 電解質膜、24 アノード触媒層、26 カソード触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面に設けられたアノードと、
前記電解質膜の他方の面に設けられたカソードと、
前記アノードおよび前記カソードのうち少なくとも一方に設けられ、所定の相対湿度領域において相対湿度が増加するにつれて水吸着量が上昇する調湿剤を含む触媒層と、
前記電解質膜の面方向における前記触媒層の端部と接する集電部材と、
を備え、
前記触媒層において、前記集電部材の近傍領域における前記調湿剤の含有量が、当該近傍領域から離れた領域における前記調湿剤の含有量より少ないことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記電解質膜の面方向において、前記集電部材と前記触媒層が接する前記端部の反対側に位置する前記触媒層の端部近傍のみに前記調湿剤が含有されている請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
調湿剤の含有量は、前記集電部材と前記触媒層が接する端部から、当該端部と反対側の前記集電部材と接していない前記触媒層の端部に向かって段階的にまたは連続的に増える請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
調湿剤の細孔容積の総和は、前記集電部材と前記触媒層が接する端部から、当該端部と反対側の前記集電部材と接していない前記触媒層の端部に向かって増える請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記カソードおよび前記アノードの両方が前記触媒層を有し、
前記カソードに設けられた前記触媒層における前記調湿剤の総含有量が前記アノードに設けられた前記触媒層における前記調湿剤の総含有量より多い請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記調湿剤がメソポーラスシリカである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−115016(P2013−115016A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263120(P2011−263120)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】