説明

燃料電池

【課題】簡単且つ経済的な構成で、セパレータ間に横ずれが発生することを良好に抑制することを可能にする。
【解決手段】燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12と第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16とを備える。第2金属セパレータ16の面16bには、冷却媒体流路38を構成する第2波状凸部38c及び第2波状凹部38dが交互に形成される。各第2波状凸部38cには、少なくとも第1波状凸部と接触する部位に、外部から付与される衝撃力の方向に交差する方向に延在する複数の溝部42bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側にそれぞれ電極が設けられる電解質・電極構造体が、一対のセパレータ間に挟持される単位セルを備え、複数の前記単位セルが積層されるとともに、互いに隣接する前記セパレータ間には、電極面方向に沿って冷却媒体を流通させる冷却媒体流路が形成される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード電極及びカソード電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、一対のセパレータによって挟持した単位セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の単位セルを積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池では、一方のセパレータの面内に、アノード電極に対向して燃料ガスを流すための燃料ガス流路が設けられるとともに、他方のセパレータの面内に、カソード電極に対向して酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路が設けられている。さらに、各燃料電池を構成し、互いに隣接するセパレータ間には、電極範囲内に冷却媒体を流すための冷却媒体流路が形成されている。
【0004】
通常、セパレータには、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体をシールするために、シール部材が一体又は別体に設けられている。そして、セパレータ及び電解質膜・電極構造体が積層される際には、各シール部材は、直接又は電解質膜を介装して互いに積層方向に圧接されている。
【0005】
この種の燃料電池は、車載用燃料電池スタックとして使用される際、外部からの荷重が単位セルの積層方向に交差する横方向に付与される場合がある。従って、単位セル間にずれが発生し、シール界面がずれるおそれがある。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池スタックでは、図15に示すように、電解質膜1の一方の面にアノード電極2aが配設され、他方の面にカソード電極2bが配設されるMEA3と、前記MEA3の両側に配設されるセパレータ4a、4bとを備えた単セル5が複数積層されている。
【0007】
互いに隣接する単セル5では、一方の単セル5のセパレータ4aと他方の単セル5のセパレータ4bとの間に、冷却水流路6が形成されている。冷却水流路6は、セパレータ4aの複数の凸状部分7aとセパレータ4bの複数の凸状部分7bとの間に形成される複数の溝部からなっている。
【0008】
各凸状部分7aには、係合凹部8aが形成される一方、各凸状部分7bには、前記係合凹部8aに嵌合する複数の係合凸部8bが形成されている。これにより、積層された各単セル5は、係合凹部8aと係合凸部8bとの係合により、互いに横ずれが生じることを抑制することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−309989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の燃料電池スタックでは、セパレータ4aの各凸状部分7aに係合凹部8aが形成される一方、セパレータ4bの各凸状部分7bに係合凹部8aが形成されており、前記セパレータ4a、4bの製造コストが相当に高騰するという問題がある。しかも、係合凹部8aと係合凸部8bとを係合させるために、極めて高度な加工精度が要求されており、実際上、製品として採用することが困難である。
【0011】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的な構成で、セパレータ間に横ずれが発生することを良好に抑制することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電解質の両側にそれぞれ電極が設けられる電解質・電極構造体が、一対のセパレータ間に挟持される単位セルを備え、複数の前記単位セルが積層されるとともに、互いに隣接する前記セパレータ間には、電極面方向に沿って冷却媒体を流通させる冷却媒体流路が形成される燃料電池に関するものである。
【0013】
この燃料電池では、冷却媒体流路は、一方のセパレータに設けられて波形状を有する複数の第1波状凸部間と、他方のセパレータに設けられて波形状を有し且つ前記第1波状凸部とは位相の異なる複数の第2波状凸部間と、の間に形成されている。
【0014】
そして、第1波状凸部と第2波状凸部とには、少なくとも互いに接触する部位に、それぞれ外部から付与される衝撃力の方向に交差する方向に延在する複数の溝部が設けられている。
【0015】
また、この燃料電池では、一方のセパレータである第1金属セパレータには、第1波状凸部の裏面形状である燃料ガス流路が形成されるとともに、他方のセパレータである第2金属セパレータには、第2波状凸部の裏面形状である酸化剤ガス流路が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1波状凸部と第2波状凸部とには、それぞれ外部から付与される衝撃力の方向に交差する方向に延在する複数の溝部が設けられている。このため、冷却媒体流路を形成する一対のセパレータ間の摩擦力を増加させることができる。しかも、複数の溝部を設けるだけでよく、簡単且つ経済的な構成で、セパレータ間に横ずれ(積層方向に交差するセパレータ面方向のずれ)が発生することを良好に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池が組み込まれる燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池の、図2中、III−III線断面説明図である。
【図4】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータの一方の正面の説明図である。
【図5】前記燃料電池を構成する第1金属セパレータの一方の正面の説明図である。
【図6】前記第2金属セパレータの他方の正面の説明図である。
【図7】前記燃料電池を構成する冷却媒体流路の要部斜視説明図である。
【図8】前記第1金属セパレータの、図5中、VIII−VIII線断面図である。
【図9】前記冷却媒体流路を構成する波状凸部に溝部を形成するための溝部形成装置の概略説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を構成する第1金属セパレータの冷却媒体流路側の面の正面説明図である。
【図11】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータの冷却媒体流路側の面の正面説明図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図13】前記燃料電池を構成する第1金属セパレータの一方の正面の説明図である。
【図14】前記燃料電池を構成する第2金属セパレータの一方の正面の説明図である。
【図15】特許文献1に開示されている燃料電池スタックの要部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図3に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、矢印A方向に複数積層されて燃料電池スタック11を構成する。燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12と、前記電解質膜・電極構造体12を挟持する第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16とを備える。
【0019】
図1に示すように、燃料電池10の積層方向両端には、エンドプレート15a、15bが配設されるとともに、前記エンドプレート15a、15bは、複数本のタイロッド17により締め付け保持される。燃料電池スタック11は、燃料電池自動車(図示せず)の走行方向と積層方向とを一致させて前記燃料電池自動車に搭載される。なお、燃料電池スタック11は、積層方向を上下にして搭載してもよい。また、走行方向と積層方向とは、交差していてもよい。
【0020】
図3に示すように、第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板により構成される。第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16は、平面が矩形状を有するとともに、金属製薄板を波形状にプレス加工することにより、断面凹凸形状に成形される。
【0021】
図2に示すように、第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16は、縦長形状を有するとともに、長辺が重力方向(矢印C方向)に向かい且つ短辺が水平方向(矢印B方向)に向かう(水平方向の積層)ように構成される。なお、長辺が水平方向に向かい且つ短辺が重力方向に向かうように構成してもよく、また、セパレータ面が水平方向に向かう(鉛直方向の積層)ように構成してもよい。
【0022】
燃料電池10の長辺方向(矢印C方向)の上端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔18aと、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔20aとが設けられる。
【0023】
燃料電池10の長辺方向の下端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔20bと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔18bとが設けられる。
【0024】
燃料電池10の短辺方向(矢印B方向)の両端縁部上方には、矢印A方向に互いに連通して、冷却媒体を供給するための2つの冷却媒体供給連通孔22aが設けられる。燃料電池10の短辺方向の両端縁部下方には、冷却媒体を排出するための2つの冷却媒体排出連通孔22bが設けられる。
【0025】
電解質膜・電極構造体12は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜24と、前記固体高分子電解質膜24を挟持するカソード電極26及びアノード電極28とを備える。
【0026】
カソード電極26及びアノード電極28は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜24の両面に形成される。
【0027】
第1金属セパレータ14の電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、酸化剤ガス供給連通孔18aと酸化剤ガス排出連通孔18bとを連通する酸化剤ガス流路30が形成される。酸化剤ガス流路30は、矢印C方向に延在する複数本の波状凸部30a間に形成される複数本の波状凹部(溝部)30bを有するとともに、前記酸化剤ガス流路30の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部32a及び出口バッファ部32bが設けられる。
【0028】
図4に示すように、第2金属セパレータ16の電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、燃料ガス供給連通孔20aと燃料ガス排出連通孔20bとを連通する燃料ガス流路34が形成される。燃料ガス流路34は、矢印C方向に延在する複数本の波状凸部34a間に形成される複数本の波状凹部(溝部)34bを有するとともに、前記燃料ガス流路34の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部36a及び出口バッファ部36bが設けられる。
【0029】
第2金属セパレータ16の面16bと第1金属セパレータ14の面14bとの間には、冷却媒体供給連通孔22a、22aと冷却媒体排出連通孔22b、22bとに連通する冷却媒体流路38が形成される(図2、図5及び図6参照)。この冷却媒体流路38は、電解質膜・電極構造体12の電極範囲にわたって冷却媒体を流通させる。
【0030】
図2及び図5に示すように、第1金属セパレータ14の面14bには、酸化剤ガス流路30を構成する波状凹部30b及び波状凸部30aの裏面形状である第1波状凸部38a及び第1波状凹部38bが交互に形成される。図2及び図6に示すように、第2金属セパレータ16の面16bには、燃料ガス流路34を構成する波状凹部34b及び波状凸部34aの裏面形状である第2波状凸部38c及び第2波状凹部38dが交互に形成される。
【0031】
図7に示すように、第1金属セパレータ14の第1波状凹部38bと第2金属セパレータ16の第2波状凹部38dとを、重ね合わせることにより、冷却媒体流路38が形成される。すなわち、冷却媒体流路38は、互いに位相の異なる第1波状凸部38aと第2波状凸部38cとの間に形成される。
【0032】
冷却媒体流路38の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ入口バッファ部36a及び出口バッファ部36bの裏面形状である入口バッファ形状部40a及び出口バッファ形状部40bが設けられる(図5及び図6参照)。
【0033】
図5に示すように、各第1波状凸部38aには、少なくとも第2波状凸部38cと接触する部位に、外部から付与される衝撃力の方向(例えば、車幅方向である矢印B方向)に交差する方向(矢印C方向)に延在する複数の溝部42aが設けられる。溝部42aは、第1波状凹部38bが延在する方向と同一方向に延在する。図8に示すように、第1金属セパレータ14は、板厚方向に凹凸形状を設けることがなく、板厚が一定の表面に一定深さの溝を形成することにより溝部42aが構成される。
【0034】
図6に示すように、各第2波状凸部38cには、少なくとも第1波状凸部38aと接触する部位に、外部から付与される衝撃力の方向(例えば、矢印B方向)に交差する方向(矢印C方向)に延在する複数の溝部42bが設けられる。溝部42bは、第2波状凹部38dが延在する方向と同一方向に延在する。
【0035】
第1金属セパレータ14の面14a、14bには、この第1金属セパレータ14の外周端縁部を周回して第1シール部材44aが一体成形される。第2金属セパレータ16の面16a、16bには、この第2金属セパレータ16の外周端縁部を周回して第2シール部材44bが一体成形される。第1シール部材44a及び第2シール部材44bとしては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0036】
図2に示すように、第1金属セパレータ14の面14aには、第1シール部材44aを切り欠いて酸化剤ガス供給連通孔18aと酸化剤ガス流路30とを連通する複数の連結通路46aが形成される。面14aには、第1シール部材44aを切り欠いて酸化剤ガス排出連通孔18bと酸化剤ガス流路30とを連通する複数の連結通路46bが形成される。
【0037】
図4に示すように、第2金属セパレータ16の面16aには、第2シール部材44bを切り欠いて燃料ガス供給連通孔20aと燃料ガス流路34とを連通する複数の連結通路50aが形成される。面16aには、第2シール部材44bを切り欠いて燃料ガス排出連通孔20bと燃料ガス流路34とを連通する複数の連結通路50bが形成される。
【0038】
図5及び図6に示すように、第1金属セパレータ14の面14b及び第2金属セパレータ16の面16bには、第1及び第2シール部材44a、44bを切り欠いて一対の冷却媒体供給連通孔22a、22aと冷却媒体流路38とを連通する複数の入口接続通路52aが形成される。面14b、16bには、第1及び第2シール部材44a、44bを切り欠いて、一対の冷却媒体排出連通孔22b、22bと冷却媒体流路38とを連通する複数の出口接続通路52bが形成される。
【0039】
第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16には、図9に示すように、溝部形成装置60により複数の溝部42a、42bが形成される。溝部形成装置60は、モータ62により回転駆動されるローラ64を備えるとともに、前記ローラ64の外周には、複数の針状加工具66が所望の分布状態で設けられる。
【0040】
第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16の基板を構成する金属プレート68は、図示しない搬送機構に保持されて矢印T方向に移動される一方、ローラ64は、モータ62を介して回転される。このため、金属プレート68の表面には、所望の間隔且つ個数の溝部42a(又は42b)が形成される。
【0041】
溝部42a、42bは、深さが0.02mm〜0.1mm、幅が0.02mm〜0.05mm程度であり、長さが2mm〜10mm程度である。また、溝部42a、42bは、一定の方向に指向している。
【0042】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0043】
先ず、図2に示すように、酸化剤ガス供給連通孔18aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス供給連通孔20aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体供給連通孔22aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0044】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔18aから第1金属セパレータ14の酸化剤ガス流路30に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路30に沿って矢印C方向(重力方向)に移動し、電解質膜・電極構造体12のカソード電極26に供給される。
【0045】
一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔20aから第2金属セパレータ16の燃料ガス流路34に供給される。燃料ガスは、図4に示すように、燃料ガス流路34に沿って重力方向(矢印C方向)に移動し、電解質膜・電極構造体12のアノード電極28に供給される(図2及び図3参照)。
【0046】
従って、電解質膜・電極構造体12では、カソード電極26に供給される酸化剤ガスと、アノード電極28に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0047】
次いで、電解質膜・電極構造体12のカソード電極26に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔18bに沿って矢印A方向に排出される。一方、電解質膜・電極構造体12のアノード電極28に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔20bに沿って矢印A方向に排出される。
【0048】
また、一対の冷却媒体供給連通孔22aに供給された冷却媒体は、図2に示すように、第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16間の冷却媒体流路38に導入される。冷却媒体は、図5及び図6に示すように、一旦矢印B方向(水平方向)内方に沿って流動した後、矢印C方向(重力方向)に移動して電解質膜・電極構造体12を冷却する。この冷却媒体は、矢印B方向外方に移動した後、一対の冷却媒体排出連通孔22bに排出される。
【0049】
この場合、第1の実施形態では、図5及び図6に示すように、第1金属セパレータ14の第1波状凸部38aと第2金属セパレータ16の第2波状凸部38cとには、それぞれ外部から付与される衝撃力の方向(矢印B方向)に交差する方向(矢印C方向)に延在する複数の溝部42a、42bが設けられている。
【0050】
このため、冷却媒体流路38を形成する第1金属セパレータ14と第2金属セパレータ16との間における摩擦力を増加させることができる。しかも、複数の溝部42a、42bを設けるだけでよく、簡単且つ経済的な構成で、第1金属セパレータ14と第2金属セパレータ16との間に、横ずれ(積層方向に交差するセパレータ面方向のずれ)が発生することを良好に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0051】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を構成する第1金属セパレータ70の冷却媒体流路38側の面70bの正面説明図であり、図11は、前記燃料電池を構成する第2金属セパレータ72の冷却媒体流路38側の面72bの正面説明図である。
【0052】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0053】
図10に示すように、第1金属セパレータ70の面70bには、第1波状凸部38a及び第1波状凹部38bが交互に形成されるとともに、前記第1波状凸部38aには、矢印C方向に延在する複数の溝部74aが該第1波状凸部38aの全面にわたって設けられる。溝部74aは、第1波状凹部38bが延在する方向と同一方向に延在する。
【0054】
図11に示すように、第2金属セパレータ72の面72bには、第2波状凸部38c及び第2波状凹部38dが交互に形成されるとともに、前記第2波状凸部38cには、矢印C方向に延在する複数の溝部74bが該第2波状凸部38cの全面にわたって設けられる。溝部74bは、第2波状凹部38dが延在する方向と同一方向に延在する。
【0055】
このように構成される第2の実施形態では、冷却媒体流路38を形成する第1金属セパレータ70と第2金属セパレータ72との間における摩擦力を増加させることができ、簡単且つ経済的な構成で、前記第1金属セパレータ70と前記第2金属セパレータ72との間に横ずれが発生することを良好に抑制することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
図12は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池80の要部分解斜視説明図である。燃料電池80は、複数積層されて燃料電池スタック81を構成するとともに、横長形状を有する。
【0057】
燃料電池80は、電解質膜・電極構造体82と、前記電解質膜・電極構造体82を挟持する第1金属セパレータ84及び第2金属セパレータ86とを備える。燃料電池80の長辺方向(矢印B方向)の一端縁部には、酸化剤ガス供給連通孔18aと燃料ガス排出連通孔20bとが設けられるとともに、前記長辺方向の他端縁部には、燃料ガス供給連通孔20aと酸化剤ガス排出連通孔18bとが設けられる。燃料電池80の短辺方向(矢印C方向)の上端縁部には、2つ(又は1つ)の冷却媒体供給連通孔22aが設けられる一方、前記短辺方向の下端縁部には、2つ(又は1つ)の冷却媒体排出連通孔22bが設けられる。
【0058】
酸化剤ガス流路30は、酸化剤ガスが水平方向(矢印B方向)に流通するとともに、燃料ガス流路34は、燃料ガスが水平方向に且つ前記酸化剤ガスと対向流に流通する。冷却媒体流路38は、冷却媒体が重力方向(矢印C方向)に流通する。
【0059】
図13に示すように、第1金属セパレータ84の冷却媒体流路38側の面84bには、前記冷却媒体流路38を構成する第1波状凸部38aが設けられる。
【0060】
図14に示すように、第2金属セパレータ86の冷却媒体流路38側の面86bには、前記冷却媒体流路38を構成する第2波状凸部38cが設けられる。
【0061】
図13に示すように、各第1波状凸部38aには、少なくとも第2波状凸部38cと接触する部位(第3の実施形態では全面)に、外部から付与される衝撃力の方向(例えば、車幅方向である矢印B方向)に交差する方向(矢印C方向)に延在する複数の溝部88aが設けられる。溝部88aは、第1波状凹部38bが延在する方向と交差する方向に延在する。
【0062】
図14に示すように、各第2波状凸部38cには、少なくとも第1波状凸部38aと接触する部位(第3の実施形態では全面)に、外部から付与される衝撃力の方向(例えば、矢印B方向)に交差する方向(矢印C方向)に延在する複数の溝部88bが設けられる。溝部88bは、第2波状凹部38dが延在する方向と交差する方向に延在する。
【0063】
このように構成される第3の実施形態では、冷却媒体流路38を形成する第1金属セパレータ84と第2金属セパレータ86との間における摩擦力を増加させることができ、簡単且つ経済的な構成で、前記第1金属セパレータ84と前記第2金属セパレータ86との間に横ずれが発生することを良好に抑制することが可能になる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0064】
10、80…燃料電池 11、81…燃料電池スタック
12、82…電解質膜・電極構造体
14、16、70、72、84、86…金属セパレータ
18a…酸化剤ガス供給連通孔 18b…酸化剤ガス排出連通孔
20a…燃料ガス供給連通孔 20b…燃料ガス排出連通孔
22a…冷却媒体供給連通孔 22b…冷却媒体排出連通孔
24…固体高分子電解質膜 26…カソード電極
28…アノード電極 30…酸化剤ガス流路
30a、34a、38a、38c…波状凸部
30b、34b、38b、38d…波状凹部
34…燃料ガス流路 38…冷却媒体流路
42a、42b、74a、74b、88a、88b…溝部
44a、44b…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側にそれぞれ電極が設けられる電解質・電極構造体が、一対のセパレータ間に挟持される単位セルを備え、複数の前記単位セルが積層されるとともに、互いに隣接する前記セパレータ間には、電極面方向に沿って冷却媒体を流通させる冷却媒体流路が形成される燃料電池であって、
前記冷却媒体流路は、一方の前記セパレータに設けられて波形状を有する複数の第1波状凸部間と、他方の前記セパレータに設けられて波形状を有し且つ前記第1波状凸部とは位相の異なる複数の第2波状凸部間と、の間に形成されるとともに、
前記第1波状凸部と前記第2波状凸部とには、少なくとも互いに接触する部位に、それぞれ外部から付与される衝撃力の方向に交差する方向に延在する複数の溝部が設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、一方の前記セパレータである第1金属セパレータには、前記第1波状凸部の裏面形状である燃料ガス流路が形成されるとともに、
他方の前記セパレータである第2金属セパレータには、前記第2波状凸部の裏面形状である酸化剤ガス流路が形成されることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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