説明

燃焼器の尾筒、これを備えているガスタービン、及び尾筒の製造方法

【課題】熱的環境がより厳しい条件下でも耐え得る燃焼器の尾筒を提供する。
【解決手段】燃焼器の尾筒20は、筒状の胴本体21と、胴本体の下流端に接合されて、胴本体と協同して胴体Bを成す筒状の出口胴体32と、出口胴体の下流端部から出口胴体の外周側に向って延びる内フランジ36と、を有する。出口胴体32と内フランジ36とは、一体成形物である。出口胴体32には、内フランジの上流側であって内フランジに沿った位置に、外周側から内周側へ凹み且つ周方向に延びる溝35が形成されていると共に、胴体Bの軸線Acに沿った方向に延び、溝で開口している冷却流体通路33が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器の尾筒、これを備えているガスタービン、及び尾筒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの燃焼器は、高温・高圧の燃焼ガスをタービンに送る尾筒を備えている。
この尾筒は、筒状に形成された胴体と、胴体の下流端に設けられ、タービンの第一段入口と接続するためのフランジと、を備えている。
【0003】
燃焼器の胴体は、一般的に、下流側に向うにつれて断面面積が小さくなり、内部を流れる燃焼ガスの流速が高まる。このため、尾筒のうちで、胴体の下流端部及びフランジに対して、燃焼ガスの熱伝達率が高まる。すなわち、尾筒のうちで、胴体の下流端部及びフランジが最も熱的に厳しい環境下にさらされる。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の尾筒には、フランジを冷却するために、この接続フランジを貫通する冷却空気通路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−38166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、タービンの熱効率を高めるために、尾筒内を流れる燃焼ガスの温度の高温化が進み、尾筒の下流側端部の熱的環境がより厳しくなっている。このため、熱的環境がより厳しい条件下でも耐え得る尾筒が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、このような要望に応えるべく、熱的環境がより厳しい条件下でも耐え得る燃焼器の尾筒、及びこれを備えているガスタービン、尾筒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明に係る燃焼器の尾筒は、
筒状に形成された胴体を有し、該胴体の内周側を高温の燃焼ガスが流れて、該燃焼ガスをタービンへ送る燃焼器の尾筒において、筒状の胴本体と、前記胴本体の下流端に接合されて、該胴本体と協同して前記胴体を成す筒状の出口胴体と、前記出口胴体の下流端部から該出口胴体の外周側に向って延びるフランジと、を有し、
前記出口胴体と前記フランジとは、一体成形物であり、前記出口胴体には、前記フランジの上流側であって該フランジに沿った位置に、外周側から内周側へ凹み且つ周方向に延びる溝が形成されていると共に、前記胴体の軸線に沿った方向に延び、該溝で開口している冷却流体通路が形成されていることを特徴とする。
【0009】
当該尾筒では、出口胴体とこの出口胴体の下流端部から外周側に延びるフランジとの一体成形品で、尾筒の下流端部の燃焼ガスに晒される部分を形成し、この部分中に溶接部をなくしているので、尾筒の下流端部の溶接部における熱疲労割れ等を回避することができる。
【0010】
また、当該尾筒では、出口胴体の冷却流体通路に冷却流体を流すことで、尾筒の下流端部を冷却することができる。しかも、当該尾筒では、冷却流体が、出口胴体の冷却流体通路から、出口胴体におけるフランジの上流側であってこのフランジに沿った位置に形成されている溝内に噴出され、この溝で上下流方向で対向している一対の溝側面のうち、下流側の溝側面、及びこの下流側の溝側面に連なっているフランジの上流端面に衝突する。よって、当該尾筒では、フランジを冷却効率の極めて高いインピンジメント冷却することができる。
【0011】
したがって、当該尾筒によれば、熱的環境がより厳しい条件下でも耐え得ることができる。
【0012】
ここで、前記燃焼器の尾筒において、前記溝から前記燃焼ガスが存在する領域側に貫通する冷却流体通路が形成されていてもよい。
【0013】
当該尾筒では、冷却流体として、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いた場合、出口胴体及びフランジを冷却した圧縮空気を燃焼ガス中に放出することができる。
【0014】
なお、冷却流体として、圧縮空気の代わりに蒸気を用いてもよい。この場合、前記出口胴体の前記冷却流体通路から前記溝を経て、該溝の開口から出た前記冷却流体を一時的に蓄えるジャケットが、該出口胴体の外周側に設けられ、このジャケット内から出た蒸気を回収できるようにすることが好ましい。
【0015】
ここで、前記燃焼器の尾筒において、前記出口胴体の内周面は、前記胴本体との接合部から下流側に向って直線状に延びていることが好ましい。
【0016】
当該尾筒では、出口胴体とフランジとの一体成形品を比較的容易に形成することができる。さらに、当該尾筒では、冷却流体通路も直線状に形成できるため、この冷却流体通路も容易に形成することができる。
【0017】
また、前記燃焼器の尾筒において、前記胴本体を形成する胴本体板には、前記胴体の軸線に沿った方向に延びる冷却流体通路が形成され、該冷却流体通路は、前記出口胴体の前記冷却流体通路と連通していることが好ましい。
【0018】
当該尾筒では、尾筒の下流端部と共に胴本体も、冷却流体により冷却することができる。よって、少ない冷却流体で尾筒の広い領域を効率よく冷却することができる。
【0019】
また、前記目的を達成するための発明に係るガスタービンは、
前記尾筒を有する前記燃焼器と、前記燃焼器へ圧縮空気を送る圧縮機と、前記燃焼器からの前記燃焼ガスにより駆動する前記タービンと、を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
当該ガスタービンでも、前記尾筒を備えているので、熱的環境がより厳しい条件下でも耐え得ることができる。よって、ガスタービンをより高温で作動させることができ、ガスタービンの高出力・高効率化を図ることができる。
【0021】
また、前記目的を達成するための尾筒の製造方法は、
筒状に形成された胴体を有し、該胴体の内周側を高温の燃焼ガスが流れて、該燃焼ガスをタービンへ送る燃焼器の尾筒の製造方法において、筒状の胴本体を製造する胴本体製造工程と、前記胴本体の下流端に接合され、該胴本体と協同して前記胴体を成す筒状の出口胴体と、前記出口胴体の下流端部から該出口胴の外周側に向って延びるフランジとが一体成形された成形品を製造する出口部製造工程と、前記胴本体の下流端と前記出口胴体の上流端とを接合して前記胴体を形成する接合工程と、を有し、
前記出口部製造工程は、前記出口胴体中で、前記フランジの上流側であって該フランジに沿った位置に、外周側から内周側へ凹み且つ周方向に延びる溝を形成する溝形成工程と、該出口胴板に、前記胴体の軸線に沿った方向に延び、該溝で開口する冷却流体通路を形成する通路形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
当該製造方法では、出口胴体とこの出口胴体の下流端部から外周側に延びるフランジとの一体成形品で、尾筒の下流端部の燃焼ガスに晒される部分を形成し、この部分中に溶接部をなくしているので、尾筒の下流端部の溶接部における熱疲労割れ等を回避することができる。
【0023】
また、当該製造方法で製造された尾筒では、出口胴体の冷却流体通路に冷却流体を流すことで、尾筒の下流端部を冷却することができる。しかも、当該製造方法で製造された尾筒では、冷却流体が、出口胴体の冷却流体通路から、出口胴体におけるフランジの上流側であってこのフランジに沿った位置に形成されている溝内に噴出され、この溝で上下流方向で対向している一対の溝側面のうち、下流側の溝側面、及びこの下流側の溝側面に連なっているフランジの上流端面に衝突する。よって、当該製造方法で製造された尾筒では、フランジを冷却効率の極めて高いインピンジメント冷却することができる。
【0024】
ここで、前記尾筒の製造方法において、前記胴本体製造工程は、前記胴本体を形成する胴本体板に、前記胴体の軸線に沿った方向に延びる冷却流体通路を形成する通路形成
工程と、該胴本体板の下流端部に該胴本体板の外周側から内周側に凹み該冷却流体通路とつながる切欠部を形成する切欠形成工程と、を含み、前記出口部製造工程は、前記出口胴体の上流端部に、該出口胴体の外周側から内周側に凹み該出口胴体の前記冷却流体通路とつながる切欠部を形成する切欠形成工程を含み、前記接合工程は、前記胴本体の下流端と前記出口胴体の上流端とを接合する胴接合工程と、前記胴本体の前記切欠部と前記出口胴体の前記切欠部とで形成される溝の開口を塞ぐ蓋を、該胴本体の下流端部と該出口胴体の上流端部とに外周側から接合する蓋接合工程と、を含んでもよい。
【0025】
当該製造方法では、胴本体及び出口胴体の冷却流体通路を簡易な構成で接続することができる。そのため、当該製造方法で製造された尾筒では、尾筒の下流端部と共に胴本体も、冷却流体により効率よく冷却することができる。
【0026】
また、前記尾筒の製造方法において、前記胴本体製造工程は、前記胴本体に、前記胴体の軸線に沿った方向に延びる冷却流体通路を形成する通路形成工程を含み、前記接合工程は、前記胴本体の下流端と前記出口胴体の上流端とを接合する胴接合工程と、前記胴本体の下流端と前記出口胴体の上流端との接合部を外周側から切り欠いて、外周側から内周側に凹んで前記胴本体の前記冷却流体通路及び前記出口胴体の前記冷却流体通路につながり、且つ周方向に伸びる溝を形成する溝形成工程と、該溝の開口を塞ぐ蓋を、該胴本体の下流端部と該出口胴体の上流端部とに外周側から接合する蓋接合工程と、を含んでもよい。
【0027】
当該製造方法では、胴本体及び出口胴体の冷却流体通路を簡易な構成で接続することができる。そのため、当該製造方法で製造された尾筒では、尾筒の下流端部と共に胴本体も、冷却流体により効率よく冷却することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、尾筒の下流端部の燃焼ガスに晒される部分を一体成形品で形成し、この部分中に溶接部をなくしているので、尾筒の下流端部の溶接部における熱疲労割れ等を回避することができる。また、本発明では、出口胴体の冷却流体通路に冷却流体を流すことで、尾筒の下流端部を冷却することができる。しかも、本発明では、フランジを冷却効率の極めて高いインピンジメント冷却することができる。
【0029】
したがって、本発明に係る尾筒によれば、熱的環境がより厳しい条件下でも耐え得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの要部を切り欠いた全体側面図である。
【図2】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの燃焼器周りの断面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における尾筒の斜視図である。
【図4】本発明に係る一実施形態における胴本体の要部切欠斜視図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における尾筒の下流端部の断面図である。
【図6】本発明に係る一実施形態における胴本体と出口部との接合過程を示す説明図(その1)である。
【図7】本発明に係る一実施形態における胴本体と出口部との接合過程を示す説明図(その2)である。
【図8】本発明に係る一実施形態の尾筒の製造手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る一実施形態の変形例における胴本体と出口部との接合過程を示す説明図であり、同図(a)は胴本体と出口胴体との溶接過程を示し、同図(b)は溝形成過程を示し、同図(c)は蓋溶接過程を示す。
【図10】本発明に係る一実施形態の尾筒の他の製造手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る一実施形態の変形例における尾筒の下流端部の断面図である。
【図12】本発明に係る一実施形態の他の変形例における尾筒の下流端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る燃焼器の尾筒、及びこれを備えているガスタービン、並びに尾筒の製造方法の実施形態について、図1〜図8を参照して詳細に説明する。
【0032】
本実施形態のガスタービンは、図1に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃料供給源からの燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器10と、燃焼ガスにより駆動するタービン2と、を備えている。
【0033】
タービン2は、ケーシング3と、このケーシング3内で回転するタービンロータ4とを備えている。このタービンロータ4は、例えば、このタービンロータ4の回転で発電する発電機(図示されていない。)と接続されている。複数の燃焼器10は、タービンロータ4の回転軸線Arを中心として、周方向に互いに等間隔でケーシング3に固定されている。
【0034】
燃焼器10は、図2に示すように、高温・高圧の燃焼ガスGをタービン2に送る尾筒20と、この尾筒20内に燃料及び圧縮空気を供給する燃料供給器11と、を備えている。燃料供給器11は、パイロット燃料X及び圧縮空気Aを尾筒20内に供給して、この尾筒20内に拡散火炎を形成するパイロットバーナ12と、メイン燃料Y及び圧縮空気Aを予混合して、予混合気体として尾筒20内に供給し、この尾筒20内に予混合火炎を形成する複数のメインノズル13と、を備えている。
【0035】
尾筒20は、図2及び図3に示すように、筒状を成し、内周側に燃焼ガスが流れる胴本体21と、胴本体21の上流端に接合され、燃料供給器11に接続される入口部27と、胴本体21の下流端に接合され、タービン2の第一段入口5と接続される出口部31と、燃料供給器11を介さずに圧縮機1からの圧縮空気Aを胴本体21内に導くバイパス配管6に接続されるバイパス接続部26と、胴本体21の外周に設けられている蒸気入ジャケット28と、出口部31の外周に設けられている蒸気出ジャケット29とを備えている。
【0036】
次に、この尾筒20の製造手順について、図8に示すフローチャートに従って説明する。
尾筒20は、胴本体21の製造工程(S10)、入口部27及びバイパス接続部26の製造工程(S18)、出口部31の製造工程(S20)、蒸気ジャケット28,29の製造工程(S28)、さらに、以上の工程で製造されたものを接合する接合工程(S30)の実行で製造される。
【0037】
胴本体21の製造工程(S10)では、まず、図4に示すように、所望の形状及び寸法に加工した2枚の板22o,22iを接合して胴本体板22を形成する。2枚の板22o,22iは、いずれも耐熱性の優れたNi基合金である。2枚の板22o,22iのうち、胴本体板22の外周側を形成する外胴板22oの内周面には、外周側に凹み且つ尾筒20の軸線Acに沿った方向に延びる複数の通路用溝23oを形成する(S11)。次に、ろう材を介して2枚に板22o,22iを重ね合わせて、例えば、真空加熱炉内で、2枚の板22o,22i相互をろう付接合して、胴本体板22を形成する(S12)。外胴板22oに形成した通路用溝23oは、この外胴板22oと内胴板22iとが接合されることで、この通路用溝23oの開口が塞がれ、冷却流体通路23を形成する。胴本体板22は、これらの工程を経て、複数枚製造する。
【0038】
次に、図6に示すように、複数の胴本体板22のうち、胴本体21の下流端部を形成する胴本体板22の下流端部に、この胴本体板22の外周側から内周側に凹み、胴本体21の周方向となる方向に延びる切欠部24を形成する(S13)。この切欠部24は、冷却流体通路23とつながるよう、胴本体板22を形成する外胴板22oのみならず、内胴板22iの一部も切り欠いて形成される。この切欠部24は、例えば、放電加工又は機械加工等により形成される。
【0039】
次に、複数の胴本体板22のそれぞれに対して曲げ加工(S14)を施した後、複数の胴本体板22相互を溶接で接合して、筒状の胴本体21を形成する(S15)。この筒状の胴本体21は、下流側に向うにつれて断面面積が次第に小さくなっている。
【0040】
出口部31は、図5に示すように、胴本体21の下流端に接合されて胴本体21と協同して尾筒20の胴体Bを成す筒状の出口胴体32と、出口胴体32の下流端部から出口胴体32の外周側に向って延びる内フランジ36と、この内フランジ36の外周に接合される外フランジ38と、尾筒20の支持するためのガセット39と、を有している。これらの部分のうち、出口胴体32と内フランジ36とは、一体成形品で、出口本体37を成す。
【0041】
出口部31の製造工程(S20)では、まず、出口本体37の鋳型に例えばNi基合金を流し込み、この出口本体37の中間品を鋳造する(S21)。なお、この中間品は、出口胴体32と内フランジ36とを有している。次に、この中間品に、冷却流体通路33、溝35及び切欠部34を形成し、出口本体37を完成させる(S22)。
【0042】
溝35は、出口胴体32における内フランジ36の上流側であって、この内フランジ36に沿った位置に、外周側から内周側へ凹み且つ周方向に延びている。また、切欠部34は、出口胴体32の上流端部に、この出口胴体32の外周側から内周側に凹み、出口胴体32の周方向に延びている。また、冷却流体通路33は、出口胴体32の上流端から出口胴体32の下流端部の溝35までの間で尾筒20(又は胴体B)の軸線Acに沿った方向、より具体的には、この軸線Ac中で出口胴体32の軸線に沿った方向に延びている。溝35は、冷却流体通路33の下流側開口の全体が溝側面から臨めるよう、出口胴体32の外周面から冷却流体通路33の尾筒20の軸線Ac側の縁までの距離より、出口胴体32の外周面から溝底までの距離の方が長くなるよう形成されている。また、切欠部34は、冷却流体通路33の上流側開口の全体が臨めるよう、出口胴体32の外周面から冷却流体通路33の尾筒20の軸線Ac側の縁までの距離より、出口胴体32の外周面から切欠部34の底までの距離の方が長くなるよう形成されている。切欠部34及び溝35は、例えば、放電加工又は機械加工等により形成される。また、冷却流体通路33は、例えば、放電加工や電解加工等により形成される。
【0043】
出口胴体32の内周面は、出口胴体32の上流端から下流側に向って直線状に延びている。なお、これは、尾筒20(又は胴体B)の軸線Acとタービンロータ4の回転軸線Ar(図1に示す)とを含む仮想平面による出口胴体32の断面形状が、図2及び図5に示すように、長方形に限定されることを意味するものではなく、図11に示すように、出口胴体32xの同断面形状が台形であってもよい。この場合、台形の斜辺が出口胴体32xの内周面の断面を示し、上辺が出口胴体32xの下流端、つまり燃焼ガスの出口縁31eを示す。
【0044】
これらの出口胴体32,32xに形成される冷却流体通路33は、これらの出口胴体32,32xの内周面に平行に、且つ前述したように尾筒20,20x(又は胴体B)の軸線Acに沿った方向に延びている。このように、出口胴体32,20xの内周面を下流側に向って直線状に形成することで、鋳造を比較的容易に行うことができる上に、冷却流体通路33をこの出口胴体32,20xに直線状に形成することができるので、冷却流体通路33を放電加工や電解加工等で容易に形成することができる。
【0045】
出口部31の製造工程(S20)では、出口本体37の形成(S21,S22)に並行して、又は前後して他の部品、つまり、外フランジ38やガセット39も形成する(S23)。
【0046】
そして、出口部31の製造工程(S20)では、一体成形品である出口本体37の出口胴体32の外周にガセット39を溶接し、出口本体37の内フランジ36の外周に外フランジ38を溶接する(S24)。以上で、出口部31の製造工程(S20)が終了する。なお、本実施形態において、内フランジ36と外フランジ38とで、尾筒20をタービン2の第一段入口5と接続するためのタービン接続フランジを構成すると共に、冷却用蒸気が一時的に溜まる蒸気出ジャケット29aも成し、これらと出口胴体32とで囲まれた領域が蒸気滞留領域になる。
【0047】
接合工程(S30)では、胴本体21、入口部27及びバイパス接続部26が完成した時点で、これら相互を溶接で接合する(S31)。さらに、接合工程(S30)では、図6に示すように、胴本体21の下流端と出口胴体32の上流端とを突き合わせて、これら相互を溶接する(S32)。この溶接で、胴本体21の下流端部と出口胴体32の上流端部とのそれぞれ形成されている切欠部24,34が向かい合い、一つの溝45が形成される。
【0048】
次に、図7に示すように、胴本体21と出口胴体32との溶接で形成された溝45中の溶接部Wの一部を研削等して、この溝45の溝底を平坦に仕上げた後、蓋41を胴本体21の下流端部及び出口胴体32の上流端部に外周側から溶接して、溝45の開口を塞ぐ(S34)。この溝45内の空間は、出口胴体32に形成された冷却流体通路33に冷却用蒸気を供給する蒸気ヘッダ室42を形成する。以上で、胴本体21と出口部31との接合が完了する。
【0049】
なお、ここでは、胴本体21、入口部27及びバイパス接続部26を相互に接合した後、胴本体21と出口部31とを接合しているが、胴本体21と出口部31とを接合した後、胴本体21、入口部27及びバイパス接続部26を相互に接合してもよい。また、ここでは、出口本体37に外フランジ38やガセット39を接合して、出口部31を完成させてから、これを胴本体21に接合しているが、外フランジ38やガセット39が接合されていない出口本体37を胴本体21に接合した後、この出口本体37に外フランジ38やガセット39を接合してもよい。
【0050】
次に、胴本体21の上下流方向のほぼ中央部に、ジャケット製造工程(S28)で製造した蒸気入ジャケット28を溶接すると共に、胴本体21の下流端部及び出口部31の出口胴体32に、ジャケット製造工程(S28)で製造した蒸気出ジャケット29を溶接する(S35)。以上で、接合工程(S30)は終了する。
【0051】
その後、胴本体21、入口部27、出口部31、バイパス接続部26等が相互に接合されたものに対して、必要に応じて熱処理、さらに、胴本体21、入口部27、出口部31、バイパス接続部26等で燃焼ガスに晒される部分に対してコーティング処理等を行って、尾筒20が完成する。
【0052】
以上のように完成した尾筒20は、その上流端部に別途製造された燃料供給器11等が取り付けられ、燃焼器10が完成する。
【0053】
尾筒20の筒状の胴体B内には、前述したように、燃料供給器11から燃料及び圧縮空気が噴射されて、この胴体B内で燃料が燃焼し、高温の燃焼ガスGが生成される。筒状の胴本体21は、前述したように、下流側に向うにつれて断面面積が次第に小さくなっている。このため、尾筒20のうちで、胴体Bの下流端部及び内フランジ36に対して、燃焼ガスGの熱伝達率が高まる。よって、この尾筒20では、尾筒20の下流端部が最も熱的に厳しい環境下に晒される。そこで、本実施形態では、尾筒20の下流端部に対して、以下の(1)(2)に示す熱対策を施している。
【0054】
(1)筒状の胴本体21の下流端に接合される筒状の出口胴体32とこの出口胴体32の下流端部から外周側に延びる内フランジ36とを一体成形した出口本体37で、尾筒20の下流端部の燃焼ガスGに晒される部分を形成し、この部分中に溶接部をなくしている。
【0055】
このため、本実施形態では、尾筒20の下流端部の溶接部における熱疲労割れ等を回避することができる。
【0056】
(2)尾筒20の下流端部を形成する出口部31の冷却流体通路33に、空気よりも熱容量の大きい蒸気を流すことで、尾筒20の下流端部を冷却する。
【0057】
冷却用蒸気Sは、外部から蒸気入ジャケット28内に流入し、この蒸気入ジャケット28内から胴本体21の複数の冷却流体通路23に流れ込む。冷却用蒸気Sは、図5に示すように、この胴本体21の各冷却流体通路23を通る過程で、胴本体21を冷却する。この冷却用蒸気Sは、胴本体21の各冷却流体通路23から胴本体21と出口胴体32との境界部に形成されている蒸気ヘッダ室42に流れ込む。この蒸気ヘッダ室42は、胴本体21と出口胴体32との溶接部Wの全体に渡って形成されているため、この溶接部W全体を蒸気ヘッダ室42内に流入した冷却用蒸気Sで確実に冷却することができる。蒸気ヘッダ室42内に流入した冷却用蒸気Sは、出口胴体32の複数の冷却流体通路33に流れ込み、ここを通る過程で出口胴体32を冷却する。
【0058】
冷却用蒸気Sは、出口胴体32の冷却流体通路33から、出口胴体32における内フランジ36の上流側であってこの内フランジ36に沿った位置に形成されている溝35内に噴出し、この溝35で上下流方向で対向している一対の溝側面のうち、下流側の溝側面、及びこの下流側の溝側面に連なっている内フランジ36の上流端面に衝突し、内フランジ36をインピンジメント冷却する。
【0059】
内フランジ36の上流端面に衝突した冷却用蒸気Sは、胴本体21の下流端部及び出口胴体32の外周側に設けられている蒸気出ジャケット29a,29内に流入し、この蒸気出ジャケット29a,29から配管を介して回収される。この蒸気出ジャケット29a,29は、胴本体21の下流端部及び出口胴体32の外周側に設けられ、内容積が比較的大きく、出口胴体32の冷却流体通路33から噴出した冷却用蒸気Sの流れ抵抗を少なくすることができるため、胴本体21及び出口胴体32の冷却流体通路23,33に流す冷却用蒸気Sの流量を多くすることができる。
【0060】
以上、本実施形態では、尾筒20の下流端部で燃焼ガスGに晒される部分を一体成形品で形成し、この部分中に溶接部をなくしていると共に、出口部31の下流端を成す内フランジ36を冷却効率の極めて高いインピンジメント冷却しているので、本実施形態の尾筒20は熱的環境が極めて厳しい条件下でも耐え得ることができる。よって、本実施形態によれば、ガスタービンをより高温で作動させることができ、ガスタービンの高出力・高効率化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、冷却用流体としての蒸気Sが尾筒20を冷却することにより加熱され、この加熱された蒸気を回収することでプラントの熱効率向上を図っている。
【0062】
なお、本実施形態では、冷却用流体としての蒸気Sを用いているが、この代わりに圧縮機1(図1に示す)からの圧縮空気Aを使用してもよい。この場合も、図12に示すように、蒸気Sと同様、圧縮空気Aは、出口胴体32の冷却流体通路33から溝35内に噴出し、この溝35の下流側の溝側面、及びこの下流側の溝側面に連なっている内フランジ36の上流端面に衝突し、内フランジ36をインピンジメント冷却する。そして、この場合、内フランジ36をインピンジメント冷却した圧縮空気Aを、内フランジ36の下流端面36eから下流側に放出させたり、出口胴体の内周面から燃焼ガス側にフィルム状に噴出させたりするとよい。すなわち、溝35から燃焼ガスGが存在する領域に貫通する冷却用流体通路33xを形成し、溝35内から圧縮空気Aを燃焼ガスGが存在する領域に放出する構成としてもよい。
【0063】
次に、図9及び図10を用いて、胴本体21と出口部31の接合方法の変形例について説明する。
【0064】
以上の実施形態は、胴本体21の下流端と出口胴体32の上流端とを突き合わせて両者を溶接(S32)する前に、蒸気ヘッダ室42を形成するための切欠き部24,34を胴本体21の下流端部と出口胴体32の上流端部とのそれぞれに予め形成(S13,S22)するものである。一方、本変形例は、胴本体21の下流端と出口胴体32の上流端とを突き合わせて両者を溶接した後に、この溶接部Wを切り欠いて、蒸気ヘッダ室42を形成するための溝45を形成するものである。
【0065】
図10のフローチャートに示すように、本変形例の胴本体21の製造工程(S10a)では、以上の実施形態における胴本体21の製造工程(S10)のように、胴本体板22に切欠部24を形成しない。また、本変形例の出口部31の製造工程(S20a)におけるステップ22aでも、以上の実施形態における出口部31の製造工程(S20)におけるステップ22のように、出口胴体32に切欠部34を形成しない。
【0066】
本変形例では、図9(a)に示すように、接合工程(S30a)において、胴本体21の下流端と出口胴体32の上流端とを突き合わせて両者を溶接した後(S32)、図9(b)に示すように、この溶接部Wを含む領域を外周側から切欠き、外周側から内周側に凹んで胴本体21の冷却流体通路23及び出口胴体32の冷却流体通路33につながり、且つ周方向に伸びる溝45を形成する(S33)。この溝45は、例えば、放電加工や機械加工等で形成する。
【0067】
そして、同図(c)に示すように、胴本体21の下流端部及び出口胴体32の上流端部に蓋41を外周側から溶接して、溝45の開口を蓋41で塞ぎ、蒸気ヘッダ室42を形成する(S34)。以上、本変形例では、胴本体21の下流端と出口胴体32の上流端との溶接(S32)、溝45の形成(S33)、蓋41の溶接(S34)で、胴本体21と出口部31との接合が完了する。
【0068】
以上、本変形例では、胴本体21の下流端と出口胴体32の上流端とを溶接した後、1胴本体21の下流端部と出口胴体32の上流端部とを切り欠くことで、1工程で溝45を形成することができる。一方、以上の実施形態では、胴本体21の下流端部の切欠部24と出口胴体32の上流端部の切欠部34とをそれぞれ別工程(S13,S22)で形成する必要があるものの、胴本体21を形成する胴本体板22が曲げられる前の平坦な状態で、そこに切欠部24を形成することができる。
【0069】
以上のように、本変形例と以上の実施形態とでは、溝45の形成手順に関して一長一短があるため、いずれの方法を採用するかは、切り欠きの加工方法等に応じて適宜決定することが好ましい。
【符号の説明】
【0070】
1:圧縮機、2:タービン、10:燃焼器、20:尾筒、21:胴本体、22:タービンロータ、10:燃焼器、20:尾筒、21:胴本体、22:胴本体板、23:冷却流体通路、24:切欠部、26:バイパス接続部、27:入口部、28:蒸気入ジャケット、29:蒸気出ジャケット、31:出口部、32:出口胴体、33,33x:冷却流体通路、34:切欠部、35:溝、36:内フランジ、37:出口本体(成形品)、38:外フランジ、41:蓋、42:蒸気ヘッダ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された胴体を有し、該胴体の内周側を高温の燃焼ガスが流れて、該燃焼ガスをタービンへ送る燃焼器の尾筒において、
筒状の胴本体と、
前記胴本体の下流端に接合されて、該胴本体と協同して前記胴体を成す筒状の出口胴体と、
前記出口胴体の下流端部から該出口胴体の外周側に向って延びるフランジと、
を有し、
前記出口胴体と前記フランジとは、一体成形物であり、
前記出口胴体には、前記フランジの上流側であって該フランジに沿った位置に、外周側から内周側へ凹み且つ周方向に延びる溝が形成されていると共に、前記胴体の軸線に沿った方向に延び、該溝で開口している冷却流体通路が形成されている、
ことを特徴とする燃焼器の尾筒。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼器の尾筒において、
前記溝から前記燃焼ガスが存在する領域側に貫通する冷却流体通路が形成されている、
ことを特徴とする燃焼器の尾筒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃焼器の尾筒において、
前記出口胴体の内周面は、前記胴本体との接合部から下流側に向って直線状に延びている、
ことを特徴とする燃焼器の尾筒。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃焼器の尾筒において、
前記胴本体を形成する胴本体板には、前記胴体の軸線に沿った方向に延びる冷却流体通路が形成され、該冷却流体通路は、前記出口胴体の前記冷却流体通路と連通している、
ことを特徴とする燃焼器の尾筒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の尾筒を有する前記燃焼器と、
前記燃焼器へ圧縮空気を送る圧縮機と、
前記燃焼器からの前記燃焼ガスにより駆動する前記タービンと、
を備えていることを特徴とするガスタービン。
【請求項6】
筒状に形成された胴体を有し、該胴体の内周側を高温の燃焼ガスが流れて、該燃焼ガスをタービンへ送る燃焼器の尾筒の製造方法において、
筒状の胴本体を製造する胴本体製造工程と、
前記胴本体の下流端に接合され、該胴本体と協同して前記胴体を成す筒状の出口胴体と、前記出口胴体の下流端部から該出口胴の外周側に向って延びるフランジとが一体成形された成形品を製造する出口部製造工程と、
前記胴本体の下流端と前記出口胴体の上流端とを接合して前記胴体を形成する接合工程と、
を有し、
前記出口部製造工程は、前記出口胴体中で、前記フランジの上流側であって該フランジに沿った位置に、外周側から内周側へ凹み且つ周方向に延びる溝を形成する溝形成工程と、該出口胴板に、前記胴体の軸線に沿った方向に延び、該溝で開口する冷却流体通路を形成する通路形成工程と、を含む、
ことを特徴とする尾筒の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の尾筒の製造方法において、
前記胴本体製造工程は、前記胴本体を形成する胴本体板に、前記胴体の軸線に沿った方向に延びる冷却流体通路を形成する通路形成工程と、該胴本体板の下流端部に該胴本体板の外周側から内周側に凹み該冷却流体通路とつながる切欠部を形成する切欠形成工程と、を含み、
前記出口部製造工程は、前記出口胴体の上流端部に、該出口胴体の外周側から内周側に凹み該出口胴体の前記冷却流体通路とつながる切欠部を形成する切欠形成工程を含み、
前記接合工程は、前記胴本体の下流端と前記出口胴体の上流端とを接合する胴接合工程と、前記胴本体の前記切欠部と前記出口胴体の前記切欠部とで形成される溝の開口を塞ぐ蓋を、該胴本体の下流端部と該出口胴体の上流端部とに外周側から接合する蓋接合工程と、を含む、
ことを特徴とする尾筒の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の尾筒の製造方法において、
前記胴本体製造工程は、前記胴本体に、前記胴体の軸線に沿った方向に延びる冷却流体通路を形成する通路形成工程を含み、
前記接合工程は、前記胴本体の下流端と前記出口胴体の上流端とを接合する胴接合工程と、前記胴本体の下流端と前記出口胴体の上流端との接合部を外周側から切り欠いて、外周側から内周側に凹んで前記胴本体の前記冷却流体通路及び前記出口胴体の前記冷却流体通路につながり、且つ周方向に伸びる溝を形成する溝形成工程と、該溝の開口を塞ぐ蓋を、該胴本体の下流端部と該出口胴体の上流端部とに外周側から接合する蓋接合工程と、を含む、
ことを特徴とする尾筒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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