説明

燃焼装置

【課題】送風機5によって燃焼用空気の供給を行っている燃焼装置4において、送風機モータの稼働開始を短時間に繰り返し行うことによって送風機モータが過熱されることを防止する。
【解決手段】燃焼を停止する場合には燃料供給停止から所定の遅延時間分遅らせて送風機5を停止するようにしている燃焼装置4において、送風機稼働開始からの時間を送風機稼働時間として計測しておき、送風機稼働時間が所定時間Tを越えた以降に燃焼指令の停止を受けた場合には、燃料供給停止後に比較的短時間に設定している短時間遅延分送風機を稼働した後に送風機5を停止し、送風機稼働時間が所定時間Tを越える前に燃焼指令の停止を受けた場合には、比較的長時間に設定している長時間遅延分送風機を稼働した後に送風機5を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機によって燃焼用空気を供給している燃焼装置に関するものであり、より具体的には、送風機稼働開始の間隔が短くなることで送風機モータに悪影響が発生することを防止することのできる燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送風機を設けておき、燃焼室内へ燃焼用空気を送り込みながら燃焼を行う燃焼装置がある。この燃焼装置では、燃焼停止後に未燃の燃料分が燃焼室内に残留することを防止するため、燃料供給を停止した後も所定の遅延時間分は送風機の稼働を継続しておき、燃焼室内の換気(ポストパージ)を行っている。また、燃焼を開始する場合にも、燃料供給を開始する前に送風機を所定時間稼働することによる燃焼室内の換気(プレパージ)を行っている。燃焼装置では、燃焼指令を受けると、燃焼準備の工程を行った後で燃焼を開始し、燃焼指令が途切れると、燃料供給を停止することで燃焼を停止し、引き続き行うポストパージを終了すると送風機の稼働も停止して燃焼待機状態となる。
【0003】
送風機停止の遅延時間(ポストパージの実施時間)は、所定の時間をあらかじめ設定しておくのが一般的であるが、特開平7−260142号公報に記載されている発明のように、燃焼状態に応じてポストパージの時間を変更する場合もある。特開平7−260142号公報記載の発明では、燃焼継続時間を計時する計時手段を設けておき、燃焼継続時間が長いほどポストパージの時間を長く設定する構成が記載されている。これは、燃焼継続時間が長いほど漏洩燃焼ガスの量が多くなるため、燃焼継続時間が長い場合にはポストパージを長い時間実行させることで、漏洩している燃焼ガスを的確に排出するというものである。
【0004】
ところで、送風機モータでは、稼働開始時に大量の電流が流れる。直入れ始動の場合は定格電流の約6倍、スターデルタ起動としていても定格電流の2倍を越える電流が流れる。燃焼指令の開始によって送風機の稼働を開始するが、送風機稼働開始後すぐに燃焼指令が停止して送風機の稼働を停止、さらにその後すぐに燃焼指令が再開されるというように、燃焼指令の発停が短時間で繰り返し発せられた場合には、送風機の発停を短時間で繰り返すことになる。この場合、送風機の稼働を開始するごとに供給される大量の電流によって送風機モータの平均電流値が高くなり、モータの冷却能力を超えるとモータが過熱される。モータが過熱された場合には、モータ軸受部のグリスが熱によって劣化したり、さらには送風機モータが焼損に至るという問題があった。実際に送風機を10秒作動し20秒停止するという制御を30分間繰り返した場合における送風機モータの温度を測定したところ、送風機を連続運転していた場合に比べて約40℃高くなっていた。
【特許文献1】特開平7−260142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、送風機によって燃焼用空気の供給を行っている燃焼装置において、送風機モータの稼働開始を短時間の間に繰り返し行うことによって送風機モータが過熱される、ということを防止することのできる燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、送風機による空気供給と、燃料供給制御装置による燃料供給を制御する制御装置を持ち、送風機からの空気と燃料供給制御装置からの燃料を混合して燃焼室で燃焼を行う燃焼装置であって、制御装置は燃焼指令を受けて燃焼装置による燃焼を開始させ、燃焼指令の停止を受けて燃焼を停止するようにしており、燃焼を停止する場合には燃料供給停止から所定の遅延時間分遅らせて送風機を停止するようにしている燃焼装置において、制御装置は、送風機稼働開始からの時間を送風機稼働時間として計測しておき、送風機稼働時間が所定時間Tを越えた以降に燃焼指令の停止を受けた場合には、燃料供給停止後に比較的短時間に設定している短時間遅延分送風機を稼働した後に送風機を停止し、送風機稼働時間が所定時間Tを越える前に燃焼指令の停止を受けた場合には、比較的長時間に設定している長時間遅延分送風機を稼働した後に送風機を停止する制御を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記の燃焼装置において、前記の長時間遅延分とは、計測しておいた送風機稼働時間を所定時間Tから減算して求めた値に基づいて定めるものであることを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、前記の燃焼装置において、所定時間Tから送風機稼働時間を減算することで求めた長時間遅延分の値が、前記短時間遅延分の値より短くなった場合には、少なくとも短時間遅延分は送風機を稼働した後に送風機を停止する制御を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記の燃焼装置において、燃焼停止後の送風機停止遅延時間中に燃焼指令を受けた場合には、送風機停止遅延の工程を終了してプレパージを開始するものとし、送風機が稼働している状態でプレパージを開始する場合には、プレパージ時間を通常よりも短縮する制御を行うことを特徴とする。請求項5に記載の発明は、前記の燃焼装置において、所定時間Tの時間は、送風機モータが過熱されることを防止するために必要な送風機稼働開始間隔に基づいて設定していることを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、前記の燃焼装置において、送風機と燃焼室の間に空気の流れを遮るダンパ装置を設け、送風機からの空気を燃焼室へ送る場合にはダンパ装置を開いて空気を送るようにしておき、送風機稼働時間が所定時間Tを越える前に燃焼指令の停止を受けたために、燃焼停止後には比較的長時間に設定している長時間遅延分送風機を稼働する制御を行う場合、短時間遅延分経過後の燃焼停止後の送風機稼働中に、前記ダンパを閉じる制御を行うことを特徴とする。また、請求項7に記載の発明は、前記のダンパ装置を設けた燃焼装置において、燃焼停止後の送風機稼働中にも、前記ダンパを最小開度で開いておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施することによって、燃焼指令の発停が短い間隔で繰り返されたとしても、送風機の稼働を開始する間隔は所定の時間より短くなることはないため、送風機稼働開始時の大量の電流によって送風機モータが過熱するということがなくなる。なお、送風機停止の遅延時間を長くすると、電気消費量や放熱量が多くなるという問題が発生するが、送風機稼働時間が短かいために送風機稼働開始の間隔を開ける必要がある場合にのみ送風機停止の遅延時間を長くするようにしており、送風機稼働時間が設定時間Tよりも長かった場合には短時間遅延としているので、電気消費量や放熱量の無駄な増大を防止することができる。また、長時間遅延分は送風機稼働開始間隔を開けるために必要なものであり、一定の間隔時間(所定時間T)は必要であるが、その必要時間を越えて長くする必要はない。そのため、長時間遅延分は計測しておいた送風機稼働時間を所定時間Tから減算することで求めるようにしておけば、長時間遅延が長くなりすぎることなく必要十分な時間とすることができる。
【0011】
なお、送風機停止までの遅延時間を長くせずに送風機の再稼働禁止時間を設定しても、送風機モータの稼働開始間隔は長くすることができる。しかしこの場合には、送風機の再稼働禁止時間が終了するまで送風機を稼働できないため、燃焼の開始が遅れることになる。この点についても本発明では、送風機の稼働時間を延長しており、遅延時間の途中で燃焼開始時のプレパージを開始することができるため、燃焼開始が遅れるといった問題を発生させることなく送風機モータの焼損を防止することができる。
【0012】
また、送風機稼働状態でプレパージを開始する場合には、プレパージ時間の最初から空気供給を行うことができるため、通常よりもプレパージ時間を短縮することができる。プレパージは、最大燃焼量時風量の50%以上の空気を、燃焼ガス側空間容積の4倍以上供給するといった基準に基づいて行う。送風機からの空気量は、送風機稼働開始時点は0であってその後増加していくため、送風機稼働開始時からプレパージ時間を設定する場合には、送風機稼働開始から一定の時間は無効とし、プレパージ時間はその分だけ長く設定する必要がある。しかし、プレパージ開始時点で既に送風機は通常の稼働を行っている場合には、プレパージ開始時点で必要量の空気を供給することができるため、プレパージ時間を短縮できる。プレパージ時間を短縮することで燃焼開始までの準備に必要な時間を短縮することができ、燃焼の追従性を向上させることができる。
【0013】
そして、送風機と燃焼室の間にダンパ装置を設けている場合において、燃焼停止後に長時間遅延分送風機を稼働する場合に、ダンパ装置を閉じる制御を行うことで、燃焼室へ送られる空気の流れを遮ることができるため、燃焼室からの放熱量を少なくすることができ、ボイラなど熱を利用する機器の場合には効率を高めることができる。逆に、燃焼停止後に長時間遅延分送風機を稼働する場合に、ダンパ装置を開いておいた場合には、送風機の温度をより低く維持することができ、送風機軸受部のグリスが劣化するなどの悪影響が発生することを抑えることができる。なお、ダンパ装置を開く場合、ダンパ開度は最小の開度(低燃焼用の開度)とすることで、送風機モータの冷却を妨げず、かつ燃焼室へ送られる空気量は少なくなるために放熱量の増大を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明の燃焼装置をボイラに設置した場合におけるボイラシステムの構成図、図2は一実施例における送風機停止遅延時間設定プログラムのフローチャート、図3は本発明を実施している場合の送風機稼働状況などを示したタイムチャート、図4は比較のための従来例における送風機稼働状況を示したタイムチャートである。
【0015】
まず図1に基づき、機器の構成を説明する。図1は本発明の燃焼装置を持ったボイラシステムに関するものであり、蒸気を発生するボイラを3台設置している。各ボイラ1には、それぞれ燃焼装置4を設けており、燃焼装置4は送風機5によって燃焼用空気の供給を行い、燃料供給制御装置6によって燃料の供給を制御する。送風機5からの空気を通す送風路の途中には、送風機5からの空気供給量を調節するダンパ装置8を設けておく。送風機5の稼働や、燃料供給制御装置6の操作、ダンパ装置8の開度設定は、各ボイラに設けている制御装置7によって自動制御するようにしている。燃焼装置は、停止、低燃焼、高燃焼の3位置で燃焼を制御するものであり、燃焼量に応じて燃料供給制御装置6から供給する燃料量を調節する。ダンパ装置8も、運転停止時用開度(全閉)、低燃焼時用開度(LO)、高燃焼時用開度(HI)の3位置で制御するようにしており、燃焼量にあわせて空気量も調節する。
【0016】
各ボイラ1は、共通の蒸気ヘッダー2と接続しており、各ボイラで発生させた蒸気は蒸気ヘッダー2へ集合させ、蒸気ヘッダー2から蒸気使用機器へ蒸気を供給する。各ボイラの運転は、蒸気ヘッダー2の蒸気圧力に基づいてボイラの燃焼台数を決定する台数制御装置3によって制御する。台数制御装置3は各ボイラ1の制御装置と接続しており、必要台数分のボイラ1に対して燃焼指令を出力する。台数制御装置3では、蒸気ヘッダー2での蒸気圧力が低いほど多くのボイラに対して燃焼指令を出力し、ボイラの燃焼量も低燃焼から高燃焼へと変更していくことで、ボイラ全体における蒸気発生量を増加させる。また、蒸気圧力が高まると燃焼指令を出力するボイラの台数を減少し、ボイラの燃焼量も高燃焼から低燃焼へと変更していくことで、ボイラ全体における蒸気発生量を減少させる。台数制御装置3から燃焼指令を受けた制御装置7は、当該ボイラ1の燃焼を開始し、燃焼指令が停止されるとボイラ1の燃焼を停止する。
【0017】
ボイラ1は台数制御装置3から燃焼指令の出力を受けると、燃焼準備の工程を開始する。燃焼準備の工程では、ダンパ装置8を開いておき、送風機5のみを稼働することで燃焼室内の換気を行うプレパージを行う。所定時間のプレパージが終了すると、送風機5の作動は継続したままで点火装置(図示せず)の作動を行い、燃料供給制御装置6によって燃料の供給を開始することで燃焼を行う。蒸気ヘッダー2の蒸気圧力が所定の値まで上昇すると、台数制御装置3では燃焼指令を出力するボイラの台数を減少する。燃焼を行っている状態で台数制御装置3からの燃焼指令が途切れると、当該ボイラ1では燃焼を停止する。燃焼を停止する場合は、燃料供給制御装置6によって燃料の供給を停止することで燃焼を停止するとともに、燃焼を停止しても送風機5の稼働は継続しておき、送風機の稼働停止は所定時間遅らせる。燃焼停止後に送風機の稼働を継続しておき、燃焼室内へ空気を送り込むことで、燃焼室内の換気を行うポストパージを行う。
【0018】
燃焼停止後に行う送風機停止遅延時間とプレパージ時間は、送風機稼働時間に基づいて設定するようにしておく。送風機停止遅延時間とプレパージ時間の設定を行うプログラムのフローチャートを記した図2に基づいて、設定方法を説明する。本実施例では、送風機モータの過熱を防止するためには送風機の稼働を開始する間隔を45秒より長くしておかなければならない場合のものである。また、燃焼室内で燃焼を行った場合には4秒間のポストパージが必要としておく。本プログラムでは、送風機停止遅延時間を決定するための設定時間Tも45秒としておく。長時間遅延と設定時間Tは、送風機モータに悪影響が発生することを防止するために必要な送風機稼働開始間隔の時間から定め、短時間遅延は燃焼室内で燃焼を行った場合に必要なポストパージ時間から定める。短時間遅延はポストパージ時間であるため4秒の固定とし、長時間遅延は設定時間Tの45秒から送風機稼働時間を減算した値とする。ただし、送風機稼働時間が41秒〜45秒の間であり、設定時間の45秒から送風機稼働時間を減算した値が4秒より小さくなる場合は遅延時間を4秒とする。送風機稼働開始時からプレパージ時間を設定する場合には、送風機稼働開始から所定の送風量となるまでの時間分だけプレパージ時間を長く設定する必要がある。しかし、プレパージ開始時点で既に送風機は通常の稼働を行っている場合には、プレパージ開始時点から必要量の空気を供給することができるため、プレパージ時間を短縮できる。そこで、プレパージ時間は長時間プレパージと短時間プレパージの2段階とし、プレパージ開始時点の送風機稼働状況に応じて、長時間プレパージと短時間プレパージを設定するようにしており、長時間プレパージは25秒、短時間プレパージは10秒の設定値としておく。
【0019】
プログラムは端子(1)から始まる。次のステップである判断(4)で、まず送風機停止中か否かの判断を行う。送風機が停止中の場合には、処理(12)にて送風機稼働時間をクリア、処理(13)でプレパージ時間を長時間(25秒)に設定、処理(14)で停止遅延時間を設定時間T(45秒)としておき、端子(3)へ移行する。端子(3)の次のステップは処理(18)であり、処理(18)では前回燃焼指令を現在の燃焼指令に置き換える。その後プログラムは端子(1)に戻る。なお、ここで停止遅延時間の設定を行っても、このプログラムは遅延時間を設定するだけのものであり、送風機停止遅延は燃焼指令が停止した場合に行うものであるため、ここで送風機停止遅延を実行するものではない。
【0020】
判断(4)にて送風機が稼働していた場合には、処理(5)へ移行する。処理(5)では、送風機稼働開始から送風機が稼働している時間である送風機稼働時間のカウントを行う。次に判断(6)に移り、燃焼指令の確認を行う。ここで、燃焼指令がオンであった場合には端子(2)へ、燃焼指令がオフであった場合には判断(7)へ分岐する。燃焼指令がオンであった場合には端子(2)から判断(15)へ移行し、判断(15)で前回燃焼指令によって分岐する。ここで前回燃焼指令がオンであった場合、つまり燃焼指令オンは前回以前から継続していた場合には端子(3)へ、前回燃焼指令がオフであった場合、つまり直前までは燃焼指令オフであったのが現在は燃焼指令オンに変化したという場合は、判断(16)に分岐する。判断(16)では、送風機の運転状態に基づき分岐する。本実施では送風機はスターデルタ起動を行っており、現在が起動直後のスター運転中であれば端子(3)へ、通常運転のデルタ運転中であれば処理(17)へ移行する。
【0021】
燃焼指令がオンに変わった直後である場合にはプレパージ中であり、プレパージ時間を決定する。本実施例では、送風機がスター運転状態でプレパージを開始する場合(送風機稼働開始と同時にプレパージを開始する場合や、送風機稼働の方が早くてもまだスター運転の状態でプレパージを開始する場合)は、プレパージ時間を長時間とし、送風機がデルタ運転状態でプレパージを開始する場合には、通常の稼働を行っている状態でプレパージを開始するものとしてプレパージ時間を短時間とする。送風機がデルタ運転状態でプレパージを開始した場合には、処理(17)でプレパージ時間を短時間(10秒)に設定、送風機はまだ稼働開始直後のスター運転中であった場合は、先の処理(13)で設定しておいた通りの長時間(25秒)のプレパージから変更しない。処理(17)での処理後は、判断(15)及び判断(16)で端子(3)へ移行したものと合流し、処理(18)で前回燃焼指令を現在の燃焼指令に置き換えた後に端子(1)へ戻る。
【0022】
判断(6)で燃焼指令がオンであって判断(7)へ移行した場合は、判断(7)にて前回燃焼指令に基づき分岐する。判断(7)では、前回燃焼指令がオンであった場合、つまり直前までは燃焼指令オンであったのが現在は燃焼指令オフに変化したという場合は判断(8)へ、前回燃焼指令がオフであった場合、つまり前回以前から燃焼指令オフが継続していた場合には端子(3)へ移行する。ここで燃焼指令がオフに変化した場合には、この時点から送風機停止遅延時間後に送風機の稼働を停止することになるため、判断(8)以降に送風機停止遅延時間の決定を行う。判断(8)では、処理(5)でカウントを行っていた送風機稼働時間を設定時間Tと比較する。送風機稼働時間が設定時間Tよりも大きかった場合、つまり送風機稼働開始間隔を広げるための遅延時間は必要ない場合は、処理(11)にて停止遅延時間はポストパージに必要な時間だけである4秒に設定する。送風機稼働時間が設定時間Tよりも小さかった場合、つまり送風機稼働開始間隔を広げるための遅延時間が必要である場合は、判断(9)にて設定時間Tから送風機稼働時間を減算した時間とポストパージに必要な時間である4秒を比較する。判断(9)にて設定時間Tから送風機稼働時間を減算した時間の方が4秒よりも短かった場合は、処理(11)に移行して、停止遅延時間は4秒に設定する。設定時間Tから送風機稼働時間を減算した時間の方が4秒よりも長かった場合は、処理(10)に移行して、停止遅延時間は設定時間Tから送風機稼働時間を減算した時間に設定する。停止遅延時間を設定した後は端子(3)を通じて処理(18)へ移行し、処理(18)の後に端子(1)へ戻る。
【0023】
タイムチャートに基づいて説明する。図3は本発明の実施例におけるタイムチャート、図4は従来制御におけるタイムチャートである。図3及び図4のタイムチャートでは、燃焼指令出力時間が長い場合と短い場合の2パターンにおける送風機停止遅延の状況を示している。図では、最初に50秒間の燃焼指令が出力され、以降は20秒間の燃焼指令停止と10秒間の燃焼指令出力が繰り返されており、1回目の燃焼指令出力開始時を時刻0秒としている。
【0024】
図3に沿って説明する。時刻0秒にて燃焼指令の出力が開始されると、ボイラでは送風機の稼働とダンパ開度をHIとする制御を行い、送風機稼働開始と同時に送風機稼働時間のカウントを開始する。送風機は、燃焼指令が出力されている間は常に稼働しており、プレパージ中と高燃焼中はダンパ開度をHIとすることで、より多くの空気を供給する。燃焼指令の出力が開始された時には、プレパージを実施するためプレパージ時間の設定を行う。プレパージ時間は、送風機を既にデルタ運転で稼働させていた状態で開始する場合には短時間設定(10秒)とするが、時刻0秒の時点では送風機は稼働していなかったため、ここでのプレパージ時間は長時間設定(25秒)となっている。送風機を停止していた状態から稼働を開始する場合、スターデルタ起動としていればスター運転で稼働を開始するが、稼働開始時には送風機モータには大量の電流が流れるため、電流値は突出しており、電流値はその後低下して安定する。プレパージ設定時間分のプレパージが終了すると、ボイラは燃焼を開始する。ボイラ燃焼中の場合、低燃焼時には低燃焼用の燃料を供給し、ダンパ開度は低燃焼用開度のLOとし、高燃焼時には高燃焼用の燃料を供給し、ダンパ開度は高燃焼用開度のHIとする。
【0025】
時刻0秒で燃焼指令の出力が始まった後、燃焼指令は時刻50秒で途切れているため、時刻50秒で燃料の供給を停止して燃焼を終了し、ポストパージを行う。制御装置7では、送風機が稼働している場合にカウントしていた送風機稼働時間と設定時間T(45秒)を比較する。燃焼指令が出力されていたのは時刻0秒から時刻50秒までであるため、送風機稼働時間は50秒となる。送風機稼働時間の50秒は、設定時間Tの45秒よりも長いため、ここでの送風機停止遅延は短時間遅延となる。短時間遅延は4秒の固定と設定しておいたため、ここでは燃焼停止後に送風機の稼働を4秒間継続することでポストパージを行う。ポストパージの場合、燃焼室へ空気を送り込む必要があるためにダンパは開いておく。ポストパージを終了し、送風機の稼働を停止すると、ダンパも閉じて燃焼待機の状態となる。
【0026】
その後、時刻70秒で二度目の燃焼指令が出力されている。今回も燃焼指令の出力が始まるとすぐに送風機の稼働を開始し、送風機稼働開始と同時に送風機稼働時間のカウントを開始する。時刻70秒からの燃焼指令出力の場合も、送風機は稼働していない状態からプレパージを開始するものであるため、プレパージ時間は長時間設定(25秒)となる。また、送風機稼働開始時には大量の電流が流れているが、前回の大量電流が流れた時刻0秒からは十分な間隔が開いているため、平均の電流値が高くなって送風機モータが焼損するといったことは発生しない。時刻70秒で燃焼指令の出力が始まったが、燃焼指令は時刻80秒で途切れているため、時刻80秒で燃焼を停止してポストパージを行う。時刻80秒の時点ではまだプレパージ中であって燃焼は開始していなかったが、すぐに送風機を停止することはなく稼働を継続する。送風機稼働時間は、燃焼指令が出力されていた時刻70秒から時刻80秒までの10秒間であり、設定時間Tの45秒よりも短いため、ここでの送風機停止遅延は長時間遅延を行う。
【0027】
時刻70秒から開始する長時間遅延は、設定時間Tの45秒から送風機稼働時間の10秒を減算した35秒であるため、時刻115秒までは送風機停止遅延として送風機の稼働を継続することになる。時刻80秒の時点ではプレパージ実施中であったため、ダンパの開度はHIとしていたが、時刻80秒からはプレパージを終了してポストパージとなるため、ダンパ開度はLOとしている。ダンパ開度のLOは、この場合における最小開度である。送風機を稼働している状態でダンパ装置を閉じた場合、送風機から送り込んだ空気はダンパ装置の手前で滞留することになるため、空気は圧縮されて温度が上昇する。そのため送風機の温度も上昇し、送風機温度が上昇すると軸受部のグリスが劣化するなどの問題が発生することがある。そこで、ここでは長時間遅延時にもダンパ装置は開いておくことで、送風機の温度を低く維持することができ、送風機の保守頻度を低下させることができるようにしている。この場合、ダンパの開度は最小の開度であるLO開度としておく。ダンパ開度を大きくすると、燃焼室へ送られる空気量が多くなり、燃焼室からの放熱量が大きくなるため、ダンパ開度は最小開度とすることで燃焼室への空気供給量を減少させ、放熱量を少なくする。
【0028】
なお、燃焼停止後に長時間遅延分の送風機稼働を行うのは、送風機の稼働間隔を確保するためのものであって、燃焼室内を換気するポストパージ時間が長く必要というわけではない。ポストパージが必要なのは先に記した通り4秒間だけであるため、ダンパ装置を開けておくのは燃焼停止から4秒間のみとし、その後はダンパ装置を閉じる制御を行ってもよい。長時間遅延によって送風機を稼働している途中でダンパ装置を閉じる制御を行うと、送風機から燃焼室へ送られる空気量が減少するため、燃焼室からの放熱を減少することができる。ボイラなど放熱は少ない方がよい装置の場合には、ダンパ装置を閉じることで装置側の効率を向上させることができる。
【0029】
長時間遅延は時刻115秒までと設定しておいたが、長時間遅延の実施中である時刻100秒で燃焼指令の出力が再び開始されている。そのため、送風機停止遅延としての送風機稼働は時刻100秒の段階で終了し、引き続いて燃焼準備工程での換気であるプレパージを開始する。プレパージのダンパ開度はHIであるため、時刻100秒からはダンパ開度をHIとする。この場合、送風機は稼働を継続したままであるため、この段階では送風機モータに大量の電流が流れるということは発生しない。また、送風機が稼働している状態でプレパージを開始するため、プレパージ開始の時点から所定量の空気を送ることができる。そのため、ここでのプレパージは短時間プレパージ(10秒)に設定している。
【0030】
時刻100秒から開始された燃焼指令も、時刻110秒で停止となっている。時刻110秒の時点における送風機稼働時間は、時刻70秒から時刻110秒の40秒間であり、この場合の送風機稼働時間も設定時間Tの45秒よりも短い。そのため、時刻40秒から開始する送風機停止遅延も長時間遅延とする。ここでの長時間遅延は設定時間Tの45秒から送風機稼働時間の40秒を減算した5秒間となり、時刻110秒から時刻115秒までの5秒間だけ送風機の停止を遅延することになる。なお、送風機稼働時間が41秒から45秒の間であった場合、設定時間Tから送風機稼働時間を減算すると4秒より小さくなる。この場合には、送風機停止遅延時間として4秒を設定することで、ポストパージ必要時間を下回ることがないようにする。このように燃焼指令停止時点で送風機稼働時間が短い場合、送風機停止を遅延させることで、送風機の稼働間隔が所定の間隔よりも短くなることを防止でき、送風機稼働時に送風機モータが過熱されて、送風機モータが焼損するということは発生しなくなる。
【0031】
これに対して図4の場合、燃焼指令の発停が行われるタイミングは図3の場合と同じにしているが、送風機稼働時間が設定時間Tよりも短い場合に長時間の送風機停止遅延を行っていないため、送風機モータに大量の電流が流れる間隔が短くなっている。図4の場合、燃焼指令の出力を受けて送風機の稼働を開始し、燃焼指令が途切れると通常の短いポストパージを行って送風機の稼働を停止している。そのため、時刻70秒と時刻100秒のそれぞれで送風機の稼働を開始することになり、燃焼指令が出力されるたびに送風機モータには大量の電流が流れている。このように短い間隔で何度も送風機モータに大量電流を流していると、送風機モータは過熱していく。送風機モータの過熱度が高くなると、送風機モータは焼損することになる。
【0032】
本発明を実施することで、燃焼指令の発停が短い間隔で繰り返されたとしても、送風機の稼働を開始する間隔が所定時間よりも短くなることにはならない。そのため、大量の電流供給が繰り返されることによって送風機モータが過熱するということも発生しなくなる。また、送風機停止遅延時間を長くすると、電気消費量や放熱量が多くなるという問題が発生するが、送風機稼働時間が短かく、送風機稼働開始の間隔を開ける必要がある場合にのみ送風機停止遅延時間を長くしており、しかも必要な時間だけ送風機停止を遅延させるようにしているので、電気消費量や放熱量の無駄な増大を防止することができる。
【0033】
また、送風機稼働状態でプレパージを開始する場合には、プレパージ時間を短縮することで燃焼開始までの準備に必要な時間を短縮することができ、燃焼の追従性を向上させることができる。そして、送風機と燃焼室の間にダンパ装置を設けている場合においては、燃焼停止後に長時間遅延分送風機を稼働する場合に、ダンパ装置を閉じる制御を行うことで、燃焼室へ送られる空気の流れを遮ることができるため、燃焼室からの放熱量を少なくすることができ、ボイラなど熱を利用する機器の場合には効率を高めることができる。逆に、燃焼停止後に長時間遅延分送風機を稼働する場合に、ダンパ装置を開いておいた場合には、送風機の温度をより低く維持することができ、送風機軸受部のグリスが劣化するなどの悪影響が発生することを抑えることができる。なお、ダンパ装置を開く場合、ダンパ開度は最小の開度(低燃焼用の開度)とすることで、送風機モータの冷却を妨げず、かつ燃焼室へ送られる空気量は少なくなるために放熱量の増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の燃焼装置をボイラに設置した場合におけるボイラシステムの構成図
【図2】一実施例における送風機停止遅延時間設定プログラムのフローチャート
【図3】本発明を実施している場合の送風機稼働状況を示したタイムチャート
【図4】本発明を実施していない場合の送風機稼働状況を示したタイムチャート
【符号の説明】
【0035】
1 ボイラ
2 蒸気ヘッダー
3 台数制御装置
4 燃焼装置
5 送風機
6 燃料供給制御装置
7 制御装置
8 ダンパ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機による空気供給と、燃料供給制御装置による燃料供給を制御する制御装置を持ち、送風機からの空気と燃料供給制御装置からの燃料を混合して燃焼室で燃焼を行う燃焼装置であって、制御装置は燃焼指令を受けて燃焼装置による燃焼を開始させ、燃焼指令の停止を受けて燃焼を停止するようにしており、燃焼を停止する場合には燃料供給停止から所定の遅延時間分遅らせて送風機を停止するようにしている燃焼装置において、制御装置は、送風機稼働開始からの時間を送風機稼働時間として計測しておき、送風機稼働時間が所定時間Tを越えた以降に燃焼指令の停止を受けた場合には、燃料供給停止後に比較的短時間に設定している短時間遅延分送風機を稼働した後に送風機を停止し、送風機稼働時間が所定時間Tを越える前に燃焼指令の停止を受けた場合には、比較的長時間に設定している長時間遅延分送風機を稼働した後に送風機を停止する制御を行うことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置において、前記の長時間遅延分とは、計測しておいた送風機稼働時間を所定時間Tから減算して求めた値に基づいて定めるものであることを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃焼装置において、所定時間Tから送風機稼働時間を減算することで求めた長時間遅延分の値が、前記短時間遅延分の値より短くなった場合には、短時間遅延分送風機を稼働した後に送風機を停止することで、長時間遅延が短時間遅延より短くなることを防止する制御を行うことを特徴とする燃焼装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の燃焼装置において、燃焼停止後の送風機停止遅延時間中に燃焼指令を受けた場合には、送風機停止遅延の工程を終了してプレパージを開始するものとし、送風機が稼働している状態でプレパージを開始する場合には、プレパージ時間を通常よりも短縮する制御を行うことを特徴とする燃焼装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の燃焼装置において、所定時間Tの時間は、送風機モータが過熱されることを防止するために必要な送風機稼働開始間隔に基づいて設定していることを特徴とする燃焼装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の燃焼装置において、送風機と燃焼室の間に空気の流れを遮るダンパ装置を設け、送風機からの空気を燃焼室へ送る場合にはダンパ装置を開いて空気を送るようにしておき、送風機稼働時間が所定時間Tを越える前に燃焼指令の停止を受けたために、燃焼停止後には比較的長時間に設定している長時間遅延分送風機を稼働する制御を行う場合、短時間遅延分経過後の燃焼停止後の送風機稼働中に、前記ダンパを閉じる制御を行うことを特徴とする燃焼装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の燃焼装置において、送風機と燃焼室の間に空気の流れを遮るダンパ装置を設け、送風機からの空気を燃焼室へ送る場合にはダンパ装置を開いて空気を送るようにしておき、送風機稼働時間が所定時間Tを越える前に燃焼指令の停止を受けたために、燃焼停止後には比較的長時間に設定している長時間遅延分送風機を稼働する制御を行う場合、燃焼停止後の送風機稼働中には、前記ダンパを最小開度で開いておくことを特徴とする燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−39215(P2008−39215A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210874(P2006−210874)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000130651)株式会社サムソン (164)
【Fターム(参考)】