説明

燻蒸装置

【課題】穀物やその他農業生産物をはじめ、有害生物、昆虫、その他害虫・寄生虫を含む可能性があるバラ積みの材料、物品等の生産物を安全で且つ環境を考慮した燻蒸処理出来る燻蒸装置の提供。
【解決手段】生産物を収容可能な燻蒸室を燻蒸するための燻蒸装置であり、この装置は(a)前記燻蒸室の開口部内又はこの開口部に着脱可能に配置できるモジュール8、(b)前記モジュールに連結され燻蒸剤を前記燻蒸室に流入させるオリフィス12及び送出弁システムから成る燻蒸剤導入手段、(c)前記モジュールに連結され前記燻蒸剤の大部分を前記燻蒸室から取り出すオリフィス30に接続されたパイプ28及び前記パイプに接続されたファン(34)から成る抽出手段、及び(d)前記抽出手段のパイプに連結可能であり、前記燻蒸室から抽出された実質的に全ての燻蒸剤を吸収することができる着脱可能なカートリッジ40から成る吸収手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して燻蒸装置に関する。本発明は、主として、穀物やその他農業生産物の燻蒸への利用例に関連して説明されるが、本発明はそれに限らず、有害生物、昆虫、その他の害虫・寄生虫を含む可能性があるために燻蒸処理を必要とする、バラ積みの材料、物品等の生産物に広く適用できる。
【背景技術】
【0002】
多くの農作物、穀物、その他の農業生産物には、有害生物、昆虫、その他の害虫・寄生虫、例えば、せん孔性害虫 シラミ、ダニ、ノミ、シロアリ等が含まれている。この様なバラ積み材は、昆虫や害虫の拡散を防ぐためにその場で処理し、以降、商品としてその原産地から出荷されるまでに重複した処理をする必要性をなくすのが好ましい。
【0003】
従来、バラ積み材を、重く不透過性の毛布状カバーやその他のカバー材で覆った後で、該毛布状カバーの下に毒性のあるガスを流すことにより被覆された物品を燻蒸するようにしたバラ積み材用燻蒸装置が知られている。毛布状カバーの下で燻蒸を行なう現在の方法では、ガスがバラ積み材間にうまく混入しない可能性があり、害虫を完全に抹殺する狙いからすると大雑把なもので高い効果は期待できない。また、効果的な燻蒸を行うためには極めて高い毒性を持つガスを使用する必要があり、労働衛生の観点からすると非常に危険なものとなる。更に、臭化メチルのような燻蒸用ガスはオゾンを減少させる化学物質であり、このガスが大気中に放出されるのは非常に好ましくない。
【0004】
特許文献1には、ガス状燻蒸剤を一旦燻蒸室から排出、即ち、取り出した後に大気中に放出する、具体的には、ガス状燻蒸剤を燃焼させた後に、このガス状燻蒸剤を燃焼済燻蒸剤として大気中に放出するようにした燻蒸システムが開示されている。また、この公報には、燻蒸剤又は燻蒸剤の副生成物を処理する方法として、燻蒸用コンテナに設けられた排気ファン、または、自動車に設置したシステム関連の装置に接続された排気ファンのいずれかによって大気中に放出することが開示されている。
【特許文献1】特開平2−303442公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、生産物を収容可能な燻蒸室を燻蒸するための燻蒸モジュールを有する燻蒸装置であって、
前記燻蒸室の開口部内に又はこの開口部に、直接取り付けることができ且つ着脱可能に配置できるパネルと、
前記パネルに連結されることにより、燻蒸剤を前記燻蒸室に流入させることができる燻蒸剤導入手段と、
前記パネルに連結されることにより、前記燻蒸剤の大部分を前記燻蒸室から取り出す抽出手段と、
前記抽出手段に連結可能であり、前記燻蒸室から抽出された実質的に全ての燻蒸剤を吸収することが可能な吸収手段を備えた燻蒸モジュールが提供される。
【0006】
また、本願発明に係る燻蒸室換気システムによれば、燻蒸剤抽出時に、燻蒸剤又は燻蒸剤副生成物を大気に放出することなく吸収できるので有利である。
【0007】
本願の他の発明によれば、前記のモジュールと剛体の支持構造を有し、生産物を収容可能な燻蒸室を備えた燻蒸組立体が提供される。この構造は、典型的には、少なくとも剛体のフレームを有するサイロ、格納庫、倉庫等とすることができる。
【0008】
好ましくは、前記それぞれの燻蒸モジュールは、このモジュールに連結されることにより、燻蒸室に流入する燻蒸剤の流量を制御できる制御手段を更に備えている。
【0009】
また、好ましくは、前記制御手段は、システム制御ボックス、及び、使用時、供給源から前記燻蒸室に燻蒸剤を供給する燻蒸剤送出パイプ・弁システムを備える。
【0010】
さらに、好ましくは、前記吸収手段は、抽出された前記燻蒸剤少なくとも一部を付着させる活性炭を含む吸収層を備える。
【0011】
また、さらに好ましくは、前記モジュールは、前記燻蒸剤をガス化するために使用される加熱源に直接関連付けられた前記燻蒸剤の供給源に対し取り付けるようにされる。燻蒸剤に加えられた熱エネルギーは、燻蒸剤が外気に対し浮揚し易いように設定する必要がある。
【0012】
また、さらに好ましくは、前記燻蒸剤導入手段は、例えば、燻蒸剤の容器を搭載した自動車両のような燻蒸剤の移動可能な供給源に着脱可能に連結されるようにする。
【0013】
また、さらに好ましくは、前記燻蒸剤導入手段は、使用時に、前記燻蒸室に収容された生産物の上方に配置される散布パイプシステムを備える。この配置により、一般的に、空気よりも重い燻蒸剤を、燻蒸室内に搬入されている物品の上面から下方に向かって分散するように落下させることができる。
【0014】
また、さらに好ましくは、使用時に配置される前記パネルは、燻蒸剤の通路に対して確実に固定され、例えば、バネ式クリップ装置で固定されるようにした固定用外部カム装置と係合する。
【0015】
また、さらに好ましくは、使用時に配置される前記パネルは、例えば前記モジュールに取り付けられたコンプレッサにより膨張させることができる膨張可能なシールによって、燻蒸剤及びガス通路に対して確実に固定される。このことは、処理中に燻蒸装置のオペレータがパネルの傍に立っていたとしても、このオペレータに燻蒸室からの毒性ガスによる労働衛生上のリスクが生じないという点で重要な意味を持つ。
【0016】
また、さらに好ましくは、前記モジュールは、燻蒸剤及びガスを前記燻蒸室内に循環させることができる複数の混合用ファンを備える。この構成により、燻蒸剤及びガスが燻蒸室に導入され分散される際、より均一に且つ全体的に分散させることが可能となる。
【0017】
また、さらに好ましくは、前記抽出手段は、前記パネルの低部領域に設けられたオリフィスに取り付けられたパイプを備え、前記パイプは、起動用蝶形弁、及び、前記燻蒸剤を抽出するための吸引力を作り出す二重反転ファンに順次接続される。更に好ましくは、この抽出手段は、前記モジュールより上方まで上下方向に延びる排気筒を備え、前記排気筒の最上端には、ガスディフューザー兼防雨部が取り付けられ、且つ、前記排気筒は、燻蒸剤を取除いた抽出ガスを受け入れるようにする。
【0018】
また、さらに好ましくは、前記モジュールには、モジュールに設けられた燻蒸剤サンプリングおよび検出メータユニットに、タップ及びコネクタ機構を介して個々に接続された複数の小径パイプが取り付けられる。
【0019】
また、さらに好ましくは、前記モジュールは、燻蒸剤サンプリングおよび検出ユニットと、混合用ファン、排気ファン、及び、弁アクチュエータ用の電力供給スイッチとを備える。
【0020】
更に、モジュールの好ましい実施形態においては、操作上、一体的に連結可能な第一のモジュール部分と第二のモジュール部分から構成される。好ましくは、前記第一のモジュール部分は、前記燻蒸剤導入手段を備え、前記第二のモジュール部分は、前記燻蒸剤抽出手段と前記吸収手段とを備えるのがよい。
【0021】
本発明のいずれの好ましい実施形態において、前記燻蒸モジュールは、突出したフレームを外側表面に有する矩形パネルとして構成され、該パネル自体が直立できるようにする。熟練したオペレータによる生産物の効果的な燻蒸により、現場で材料を安全に処理することが可能となり、周囲環境に昆虫や害虫が逃げ出したり生産物が汚染された状態で輸送されるという可能性を排除できる。また、本発明は、優れた健康面、安全面、環境面での利点を持ち、且つ、現行技術よりも高い燻蒸処理速度を実現できる。
【0022】
本願発明の他の態様は、生産物を燻蒸する方法であって、燻蒸室に取り外し可能に取付けられるようにしたパネルと、前記パネルに連結可能な燻蒸剤導入手段と燻蒸剤抽出手段と燻蒸剤吸収手段とを準備する段階と、前記燻蒸室に、燻蒸処理の対象となる生産物を配置する段階と、前記燻蒸室の開口内又はこの開口に前記パネルを直接取り付ける段階と、燻蒸剤を、前記燻蒸剤導入手段を介して前記燻蒸室に流入させる段階と、前記燻蒸剤の大部分を、前記燻蒸室から前記燻蒸剤抽出手段を介して抽出する段階と、前記抽出された燻蒸剤の実質的に全てを、前記燻蒸剤吸収手段を使用して吸収する段階を有する。
【0023】
また、本願発明の他の生産物を燻蒸する方法は、燻蒸室に取り外し可能に取付けられるようにしたパネルを備えた第一部分と前記パネルに連結可能な燻蒸剤導入手段を準備する段階と、前記燻蒸室に、燻蒸処理の対象となる生産物を配置する段階と、前記燻蒸室の開口内又はこの開口に前記パネルを直接取り付ける段階と、燻蒸剤を、前記燻蒸剤導入手段を介して前記燻蒸室に流入させる段階と、前記パネルに取り外し可能に取付けるようにした第二の部分と、この第二の部分に連結可能な燻蒸剤抽出手段と燻蒸剤吸収手段とを準備する段階と、前記燻蒸剤の大部分を、前記燻蒸室から前記燻蒸剤抽出手段を介して抽出する段階と、前記抽出された燻蒸剤の実質的に全てを、前記燻蒸剤吸収手段を使用して吸収する段階を有する。
好ましくは、前記燻蒸室から抽出された燻蒸剤は、吸収層に吸収させる。また、前記方法は、前記吸収層の少なくとも一部を洗浄し、前記吸着された燻蒸剤を除去する段階を更に含む。
【0024】
典型的には、前記吸着層は、臭化物やメチルチオスルホン酸ナトリウムのような1つ又は複数の塩を生成するようにチオ硫酸ナトリウム等の洗浄溶液で洗浄される。一般的な前記燻蒸剤としては、臭化メチル等のハロゲン化アルキルを挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
1.本燻蒸装置は、任意の密閉空間の壁に配置するようになっているので、従来技術に比し、より簡便で製作が容易である。
【0026】
2.本燻蒸装置は、従来技術に比し、生産物をより有効に燻蒸処理できる。
【0027】
3.本燻蒸装置は、「環境を考慮した」燻蒸処理、燻蒸剤の放出を行なうことができる。
【0028】
4.熟練したオペレータによる生産物の効果的な燻蒸により、現場で材料を安全に処理することが可能となり、周囲環境に昆虫や害虫が逃げ出したり生産物が汚染された状態で国中を輸送されるという可能性を排除できる。また、本発明は、優れた健康面、安全面、環境面での利点を持ち、且つ、最新技術よりも高い燻蒸処理速度を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、その範囲に包含される各種形態で実施できることは言うまでもない。 以下、添付図面に示す実施例に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態による燻蒸装置を示し、この燻蒸装置は、使用時、燻蒸室を形成するように密閉空間の開口内に又はその開口に配置可能なモジュール8の形とされる。典型的な密閉空間として、気密状態で密封可能なサイロ、格納庫、倉庫、部屋等を挙げることができるが、それらの外径寸法や容量は自由に選択し得る。この密閉空間につながる典型的な開口部は、モジュール8を受け入れるようにした出入口、窓、点検ポート又はのぞき窓、特設の入口とすることができる。典型的には、開口部又は入口部は、モジュール8の側面全体を構成するパネル10と同等の寸法とされる。従って、使用時、パネル10は、前記密閉空間に対して前記開口部を閉鎖することになる。
【0031】
燻蒸剤を前記燻蒸室に直接流入させることができるように、オリフィス12の形とした燻蒸剤導入手段がパネル10に設けられる。ガスの外部供給源は、適切に加熱されてガス化された状態で前記燻蒸室に送る空気中に分散された、例えば臭化メチルのような高い毒性を有するガス分子を供給する。燻蒸剤は、加熱源を使用してガス状とされる。燻蒸剤に加える熱エネルギーは、該燻蒸剤が外気に対して浮揚し易くなるよう設定する必要がある。オリフィス12は、適切な加熱装置を備えるとともに燻蒸剤供給源用容器を搭載した自動車等の移動可能な燻蒸用ガス供給源に対し取り外し可能に連結される。また、オリフィス12は、ガスの外部供給源に連結できるように適切なホース継手又は連結金具と係合することが可能である。
【0032】
本実施例の場合、2つの混合用ファン16,18が設けられ、これらファンを作動することにより、燻蒸室内のガスは燻蒸室の隅々まで循環される。混合用ファン16,18は、使用時に燻蒸室の内部方向に向くパネル10の表面に適切な壁取り付け具により設置され、ガスを充分循環させて、空気より重い毒性ガスが燻蒸室の下部に偏在するのを防止する。
【0033】
パネル10に配置され、前記燻蒸剤送出オリフィス12及び関連する弁システムに連結されたシステム制御ボックス14がモジュール8に設けられる。このシステム制御ボックス14は、燻蒸室内に流入する毒性ガスの流量を制御する機能を持つ。この構成により、燻蒸用ガスの使用量を手動で確実に制御することが可能となり、高い安全性を確保しつつシステム操作を行なうことができる。貫通路を有するプラスチック製の散布パイプ20の形とした燻蒸剤送出パイプがオリフィス12に接続されているのが図示されており、このパイプ20は燻蒸室内に置かれた物品よりも上方に配置される。この配置により、全体的に空気よりも重い燻蒸剤を、燻蒸室内に搬入されている物品の上面から下方に向かって分散するように降下させることができる。
【0034】
使用時にパネル10が配置されると、パネル10は、そのリップ状外周縁の周りに設けられた膨張可能なゴムシールによって、燻蒸剤及びガスの通路が形成されるのを防止した状態で固定される。即ち、パネル10が、前記密閉空間に対して前記開口部内に又はその開口部に配置されると、使用直前、モジュール8に取り付けられたコンプレッサ24が前記シール22を膨らませるようになっている。これは、処理中に燻蒸装置のオペレータがモジュール8の傍に立っていたとしても、このオペレータに燻蒸室からの毒性ガスによる労働衛生上のリスクが生じないという点で重要な意味を持つ。図1a及び図1bに示すように、パネル10は、例えばバネ式クリップ機構によりパネル10を隣接する壁に固定することができる角部固定用外部カム装置25と係合する。
【0035】
燻蒸室内のガスを排出するための抽出手段は、パイプ28を備え、このパイプ28は、パネル10の下部に設けられたオリフィス30に取り付けられるとともに、二重反転ファン34、起動用蝶形弁32、パイプ状排気筒36に順次接続される。排気筒36の最上端には、ガスディフューザー兼防雨部38が取り付けられる。起動用蝶形弁32及び二重反転ファン34は、システム制御ボックス14によって制御される。この構成により、毒性があり空気より重いガスを、ファンの発生する吸引力によって、前記ガス分子が循環せず滞留しがちな燻蒸室の適切な低い位置から排出し、燻蒸装置近傍のオペレータ等を労働衛生上のリスクに曝すことなく、燻蒸室内のガス成分を安全に換気可能な高さの排気筒36から外気中に分散されることが可能となる。前記抽出ファンは、二重反転型である必要はなく、遠心ファン等の任意の形式のファンとすることも可能である。
【0036】
燻蒸室から抽出された燻蒸剤の大部分を吸収する吸収手段が前記抽出手段に設けられる。この吸収手段は、着脱可能な吸収層型カートリッジ40の形とされ、このカートリッジ40は、前記弁32の上流側のパイプ28に配置され、燻蒸剤(本実施形態の場合は臭化メチル)を付着又は吸収し、燻蒸室より抽出されたガス/燻蒸剤から燻蒸剤を取除く。複数の直列配置された吸収用カートリッジを使用することも本発明の範囲内にある。
【0037】
複数のプラスチック製で可撓性のガスサンプリング管路がパネル10に設けられた複数のオリフィス42に取り付けられ、ガスサンプリング管路の各々は、適切なパイプ/コネクタ系を介して、システム制御ボックス14内部に設けられたガス流量計に個々に接続される。この構成により、燻蒸室内の微量のガス成分を吸引し、換気中に燻蒸室に残留する毒性ガスの濃度をガス流量検査ユニットで計測することが可能となる。このモニタリングを行なうことによって、モジュール8近傍のオペレータ等を労働衛生上のリスクに曝すことなく安全性を確保した状態で、燻蒸室に搬入されている生産物を取り出すためにパネル10を燻蒸室から取り外すことができる。
【0038】
システム制御ボックス14は、電源スイッチおよび回路を備え、前述したように、混合用ファン16,18、及び、起動用蝶形弁32、二重反転ファン34を作動させる。この構成により、全ての電気的に作動する装置を集中的に且つ信頼性を持って操作することができ、これは連続な操作が必要とされる際に重要となる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、モジュールは、突出したフレーム44を外側表面に有する矩形パネル10を備え、パネル10が密閉すべき空間の開口部内又はその開口部に配置されていない時には、パネル10自身は独立して直立させておくことができるようにする。密閉空間から取り外した際、パネルを安全に据え置くことが可能な他のフレームの形状、例えば、一辺に突出脚部または底ウイング部を有するパネル、外方に伸張可能な伸縮自在な支持脚部を有するパネル等も本発明の範囲内にある。
【0040】
使用中、燻蒸処理の対象となる生産物は、その搬入に利用される開口部または他の装入物のための気密入口を介して燻蒸室内に装入される。次に、モジュール8を移動してパネル10を開口部を所定位置で密封し、液状燻蒸試薬を加熱源で加熱することにより生成した加熱毒性ガスを、パイプ20及びオリフィス12を介して燻蒸室に直接導入する。システム制御ボックス14は、燻蒸室に導入される毒性ガス(toxic gases)の流量を制御するよう機能する。使用時、混合用ファン16,18は、毒性ガスが該搬入された材料即ち生産物に良好に混入するように燻蒸室内のガスを循環させる。燻蒸処理が完了すると、循環ファン16,18はオフされるとともに、燻蒸室への毒性ガスの導入が停止され、モジュール内のガスは、燻蒸室から、オリフィス30、パイプ40、起動用蝶形弁32、二重反転ファン34、及び、パイプ状排気筒を介して排出される。燻蒸室に残留する毒性ガスの濃度の安全性を検査するため、パネル10に設けられた複数のオリフィス42に接続された複数のガスサンプリング管路を介して、システム制御ボックス14内に設けられたガス流量検査ユニットにサンプルガスが吸引され、残留毒性ガス濃度が計測されるので、燻蒸処理後に該生産物に近づくためにパネル10を取り外しモジュール8を開口部から移動する際のオペレータの安全を確保することができる。
【0041】
前記燻蒸剤/ガス混合気が燻蒸装置から放出される前に、臭化メチルは、吸着層型カートリッジ40の活性炭に付着する。吸着層型カートリッジ40は、チオ硫酸ナトリウムのような洗浄溶液で定期的に洗浄される。この実施形態において吸着層型カートリッジ40の内容物をチオ硫酸ナトリウムで洗浄すると、外気に安全性を確保した状態で放出可能な毒性のない塩である臭化物及びメチルチオスルホン酸ナトリウムが生成される。このようにして、燻蒸後のメチル臭化ガスは変性された後に燻蒸装置から排出される。
【0042】
本発明の他の実施形態では、燻蒸の状況に応じ、異なる種類の燻蒸用ガスを使用するすることができる。例えば、ホスフィン、フッ化硫黄、炭酸ガスを使用した燻蒸方法も本発明の範囲内にある。ホスフィンを使用する場合、ウェットカーボンを使用した吸収カートリッジにガスを通すことにより、このガスが変換されてカーボンの外表面にリン酸塩が形成される。これら塩は、後にカーボンから洗い落とすことができる。フッ化硫黄を使用する場合は、炭酸カルシウムを使用した吸収カートリッジに該ガスを通すことにより、このガスが変換され、安全に処理可能な色々な硫黄塩が形成される。さらに、有害生物等を窒息死させるように炭酸ガスが使用される場合には、炭酸を形成するように水を入れた容器又はカートリッジ内で泡立てることにより簡単に燻蒸室から排除し後に処置できる。
【0043】
本発明は、燻蒸用ガスを燻蒸室から抽出した後、抽出燻蒸用ガス中の燻蒸剤を化学吸着し、その後で燻蒸剤(又は燻蒸剤副生成物)を実質的に含まない状態で大気中に放出することにより、燻蒸用ガスを排出することを教示する。この追加されたガス処理は、環境上及び労働衛生上重要な意味があり、これにより、上述したような燻蒸方法を、人間又は動物の近くでも或いは市街地周辺であっても安全に行なうことが可能となる。本明細書に記載された吸着方法は、従来技術に開示された排ガスを燃焼させる又は希釈する方法を進歩させることを意味する。臭化メチルのような燻蒸試薬を、安全に且つ環境に無害な形で使用できるこのような燻蒸システムは、世界の大きな関心事でもある。
【0044】
本発明の他の実施形態において、モジュールは、一体に結合されて密閉空間に取り付けられ燻蒸室を形成する時に、本発明の燻蒸方法に使用することが可能となる、2つの部分で構成することができる。この実施形態では、第一モジュール部分には、パネル及び該パネルに対し操作可能に連結された燻蒸剤送出手段を備えるとともに、該第一モジュール部分を密閉空間に対し取り付けることができる。燻蒸用ガスを該燻蒸室に導入し燻蒸処理を開始することができる。前記混合用ファン制御装置、ガスサンプリング管路、及び、ガス流量計測ユニットは、第一モジュール部分に設けられる。燻蒸処理が完了した後、大部分の燻蒸用ガスを燻蒸室から抽出して該抽出燻蒸用ガス中の燻蒸剤の実質的に全てを吸着するために、前記抽出手段及び吸着手段を備えた第二モジュール部分を前記第一モジュール部分に結合又はクリップで固定することができる。この第二のモジュール部分は、前記の二重反転ファン、ガス排気筒、及び、吸着層型カートリッジを備えることができる。このような2分割型装置の利点は、複数の隣接する燻蒸室を少なくとも第一モジュール部分に形成し且つ各燻蒸室が単一の第二のモジュールを共用した状態で同時に作動できる点にあり、これにより、本発明のモジュール構成の全体コストが低減される。一例を挙げると、第一のモジュールに形成された数個の燻蒸室の燻蒸処理の完了時期を異ならせ、ある燻蒸室での燻蒸処理が完了した際、他の燻蒸室で使用していた第二モジュールをその燻蒸室に移動して燻蒸剤の抽出及び吸着を行なうことができる。これと並行して、燻蒸、抽出、及び、吸着の段階を既に完了した燻蒸室では、燻蒸処理した生産物を搬出し新たに燻蒸処理する生産物を搬入することができる。このような連続的作業により、使用設備への投資コストを最小限に抑えながらより効率的に「連続的」に燻蒸処理を行なうことができる。
【0045】
本明細書に記載された発明に関し、当業者であれば、上述した具体的実施形態の他に、種々の変形や変更を想定し得ると考えるのは当然である。例えば、燻蒸剤の供給源は必ずしも小型トラックのような自動車に搭載する必要はなく、モジュール自体の外側に取り付けてもよい。また、本発明における燻蒸剤は、臭化メチルに限る必要はなく、生産物の燻蒸に適し、有害生物、寄生生物、昆虫、又は、害虫を殺すあらゆる物質に及ぶものである。 さらに、本発明は、上述した具体的な形状や構成的特徴に限定されるものではなく、例えば排気筒を備えないものであってもよい。
【0046】
このような変形や変更は、全て本発明の範囲に含まれると考えるべきであって、本発明の本質は、上記特許請求の範囲の記載により決定されるべきである。
【0047】
以上、本発明のいくつかの好ましい実施形態を詳細に説明したが、本燻蒸装置が従来技術に勝る少なくとも前述したとおりの利点を有することは、当業者の理解する所であろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態による燻蒸装置の概略斜視図である。図1aは、図1に示す装置の一部の概略斜視図である。図1bは、図1に示す装置の一部の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
8 モジュール
10 パネル
12 燻蒸剤送出オリフィス
14 システム制御ボックス
16,18 混合用ファン
20 散布パイプ
25 固定用カム装置
28 パイプ
30 オリフィス
32 起動用蝶形弁
34 二重反転ファン
36 パイプ状排気筒
40 吸収層型カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産物を収容する燻蒸室を燻蒸するための燻蒸モジュールを有する燻蒸装置であって、
前記燻蒸モジュールは、
前記燻蒸室の開口内、または、この開口に、直接取り付けることができ、且つ着脱可能に配置できるパネルと、
前記パネルと操作上連結され、燻蒸剤を前記燻蒸室に流入させることができる燻蒸剤導入手段と、
前記パネルと操作上連結され、前記燻蒸剤の大部分を前記燻蒸室から除去する抽出手段と、
前記抽出手段と操作上連結され、前記燻蒸室から抽出された実質的に全ての燻蒸剤を吸収することが可能な吸収手段を備えた燻蒸装置。
【請求項2】
前記モジュールと、剛体の支持構造を有し、生産物を収容可能な燻蒸室を備えた燻蒸組立体を有する請求項1に記載の燻蒸装置。
【請求項3】
前記燻蒸モジュールは、燻蒸室に流入する燻蒸剤の流量を制御できる制御手段を連結できるようにした請求項1または請求項2に記載の燻蒸装置。
【請求項4】
前記制御手段は、システム制御ボックスと、使用時に、供給源から前記燻蒸室に燻蒸剤を供給する燻蒸剤送出パイプ・弁システムを備えた請求項3に記載の燻蒸装置。
【請求項5】
前記吸収手段は、抽出された前記燻蒸剤の少なくとも一部を付着させる活性炭を含む吸収層を備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項6】
前記モジュールは、加熱源に直接取り付けられた燻蒸剤の供給源に取り付けられ、その燻蒸剤は、ガス状に転換されて使用される請求項1から請求項5のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項7】
前記燻蒸剤導入手段は、燻蒸剤の移動可能な供給源に着脱可能に連結されている請求項1から請求項6のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項8】
前記燻蒸剤導入手段は、使用時に、前記燻蒸室に収容された生産物の上方に配置された散布パイプシステムを備えている請求項1から請求項7のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項9】
前記パネルは、使用時に際しては、燻蒸剤の通路に対して確実に固定され、且つ、固定用外部カム装置と係合している請求項1から請求項8のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項10】
前記パネルは、使用時には、燻蒸剤とガスの通路に対して膨張可能なシールによって、確実にシールされている請求項9に記載の燻蒸装置。
【請求項11】
前記シールは、前記モジュールに取り付けられたコンプレッサにより膨張させることができる請求項10に記載の燻蒸装置。
【請求項12】
燻蒸剤ガスを前記燻蒸室内で循環させることができる複数の混合用ファンを備えた請求項1から請求項11のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項13】
前記抽出手段は、前記パネルの低部領域に設けられたオリフィスに取り付けられたパイプを備え、このパイプは、起動用蝶形弁、及び、前記燻蒸剤を抽出するための吸引力を作り出す二重反転ファンに順次接続された請求項1から請求項12のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項14】
前記抽出手段は、前記モジュールより上方まで上下方向に延びる排気筒を備え、前記排気筒の最上端には、ガスディフューザー兼防雨部が取り付けられ、更に、前記排気筒は、燻蒸剤を取り除いた抽出ガスを受け入れるようにした請求項13に記載の燻蒸装置。
【請求項15】
前記モジュールは、燻蒸剤サンプリング・検出ユニットを備えるとともに、前記燻蒸剤サンプリング・検出ユニットに、タップ及びコネクタ機構を介して個々に接続された複数の小径パイプが取り付けられた請求項1から請求項14のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項16】
前記モジュールは、燻蒸剤サンプリング・検出ユニットと、混合用ファンと排気ファンと弁アクチュエータ用の電力供給スイッチとを備えた請求項1から請求項15のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項17】
前記モジュールは、操作上、一体的に連結可能な二つの部分から構成された請求項1から請求項16のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項18】
第一のモジュール部分は、燻蒸剤導入手段を備え、第二のモジュール部分は、燻蒸剤抽出手段と吸収手段とを備えた請求項17に記載の燻蒸装置。
【請求項19】
前記吸収手段の少なくとも一部から、吸収された燻蒸剤を除去する除去手段を更に備えた請求項1から請求項18のいずれかに記載の燻蒸装置。
【請求項20】
前記除去手段が、前記吸収された燻蒸剤を変性または変換する手段を備える請求項19に記載の燻蒸装置。
【請求項21】
前記吸収された燻蒸剤を変性または変換する手段が、前記吸収手段を洗浄するために使用される溶液である請求項20に記載の燻蒸装置。
【請求項22】
前記吸収手段を洗浄するために使用される溶液が、チオ硫酸ナトリウムを含む請求項21に記載の燻蒸装置。
【請求項23】
燻蒸室に取り外し可能に取付けられるようにしたパネルと、前記パネルに連結可能な燻蒸剤導入手段と燻蒸剤抽出手段と燻蒸剤吸収手段とを準備する段階と、
前記燻蒸室に、燻蒸処理の対象となる生産物を配置する段階と、
前記燻蒸室の開口内又はこの開口に前記パネルを直接取り付ける段階と、
燻蒸剤を、前記燻蒸剤導入手段を介して前記燻蒸室に流入させる段階と、
前記燻蒸剤の大部分を、前記燻蒸室から前記燻蒸剤抽出手段を介して抽出する段階と、
前記抽出された燻蒸剤の実質的に全てを、前記燻蒸剤吸収手段を使用して吸収する段階を有する生産物を燻蒸する方法。
【請求項24】
燻蒸室に取り外し可能に取付けられるようにしたパネルを備えた第一部分と前記パネルに連結可能な燻蒸剤導入手段を準備する段階と、
前記燻蒸室に、燻蒸処理の対象となる生産物を配置する段階と、
前記燻蒸室の開口内又はこの開口に前記パネルを直接取り付ける段階と、
燻蒸剤を、前記燻蒸剤導入手段を介して前記燻蒸室に流入させる段階と、
前記パネルに取り外し可能に取付けるようにした第二部分と、この第二部分に連結可能な燻蒸剤抽出手段と燻蒸剤吸収手段とを準備する段階と、
前記燻蒸剤の大部分を、前記燻蒸室から前記燻蒸剤抽出手段を介して抽出する段階と、
前記抽出された燻蒸剤の実質的に全てを、前記燻蒸剤吸収手段を使用して吸収する段階を有する生産物を燻蒸する方法。
【請求項25】
前記燻蒸室から抽出された燻蒸剤は、吸収層に吸収される請求項23または請求項24に記載の生産物を燻蒸する方法。
【請求項26】
吸収された燻蒸剤を変性または変換する段階を更に有する請求項25に記載の生産物を燻蒸する方法。
【請求項27】
吸収された燻蒸剤を変性または変換する段階が、前記吸収層の少なくとも一部を洗浄し、前記吸収された燻蒸剤を除去する段階を更に含む請求項26に記載の生産物を燻蒸する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−259861(P2007−259861A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133151(P2007−133151)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【分割の表示】特願2002−508263(P2002−508263)の分割
【原出願日】平成13年7月12日(2001.7.12)
【出願人】(503021560)アジア ワールド シッピング サービシーズ ピー・ティー・ワイ リミッテッド (2)
【Fターム(参考)】