説明

爪付き油圧ジヤッキ

【課題】単独の油圧ジヤッキに、特定の構造物を組み合わせて、単独の油圧ジヤッキが本来もっている負荷能力に近い能力を、爪付きジヤッキとして持たせる方法を提供する。
【解決手段】単独の油圧ジヤッキ3本体を、三組の面で囲んだ、床に置く構造の固定可能な台と、それに上方向に、垂直方向に立てられた、一対の脚1−3,1−4を設け、脚を案内として、脚をはめることのできる、脚と同数の箱2−1,2ー2を持ち、脚に対して相対運動のできる可動組立体2から構成し、可動組立体の頂部に、複数の箱にまたがるように設けた、油圧ジヤッキの頭部を受ける頭部受け部材2−13をもち、また複数の箱にまたがるように、前面板2−11を箱に固定し、前面板に、荷重をうける爪2−12を設けた構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械・装置の据付、移動、修理作業などの分野において、高い利便性を持って使われる、上下動用の油圧ジヤッキに関する。特に爪付きの方式に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ジヤッキは、単独で使う場合、高い負荷能力を持つが、爪付きとした場合には、爪えの、片寄った負荷状態のために、負荷能力は大きく減少される。油圧ジヤッキ派、本来単独で使われるが、負荷の状態によっては、爪を装備する必要が出てくる。しかし初めから爪付きにした場合、重量的にも容積的にも大きくなり、移動などが不便になり、また使い勝手が悪くなる。爪を分離できるものとしては、特許文献1(特許公開2007−153589)に開示されているが、この文献のものでは、爪部えの負荷の増加は困難である。本発明は、移動の利便性に加え、単独の油圧ジヤッキに付加して使え、爪部えの負荷の増加を可能にする方法を提供する。
【特許文献】 特開2007−153598
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
油圧ジヤッキは標準的な構造としては、ジヤッキ本体とプランジヤーポンプが一体化されたもの、あるいはポンプは別に置かれ、ジヤッキ本体と、高圧ゴムホース、あるいは銅パイプで結合したものがある。プランジャーポンプは、多くの場合、手動レバーで駆動される。油圧としては20−65MPaのものが使われ、ジヤッキの定格荷重としては、0.5−300t程度まで造られている。
【0004】
いずれの場合であつてもジヤッキ自体は、ラム(ピストン)を持ち、シリンダー内で、ラムの底部に加わった油圧によって、ラムを上方に移動させる。ラムの上端は頭部として、持ち上げようとする物を載せる。
【0005】
製品として完成された油圧ジヤッキは、ラムの頭部で直接、荷重を受けるものと、ラムの上下動に同期して上下する、ラムに固定された、L型の爪を持ったものに分けることがでる。後者の方式は爪付き油圧ジヤッキと呼ばれる。持ち上げようとするものは爪に載せられる。
【0006】
爪型にした場合、爪部分えの許容荷重は、頭部に直接加えることのできる許容荷重に対して、一般的に4から7割程度に減少されており、油圧ジヤッキが本来持っている能力が、有効に使われていない。
【0007】
本発明は、爪部分えの許容荷重を、油圧ジヤッキの頭部えの許容荷重と同程度に出来る機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般的な爪付き油圧ジヤッキにおいて、爪部分えの許容荷重が、頭部えの許容荷重より、充分に低いのは、爪付き油圧ジヤッキが、油圧ジヤッキの本体の頭部から、一定の距離を置いて爪部分を置くという、構造上の限界によるものである。実際に、荷重は、爪部分に直接的に加えられる。したがって、爪部分えの荷重は、頭部に対しては、片寄った荷重になり、その荷重は、頭部に対しては、過大のものになる。
【0009】
しかも、頭部に対しては、垂直的な荷重ではなく、偏芯的であり、本来、垂直的荷重を想定して造られた油圧ジヤッキ本体は、構造的に耐えられず、垂直状態を保持できなくなる。そして破壊に到り得る。
【0010】
本発明は、油圧ジヤッキ本体に、垂直荷重だけを主として負担させ、偏芯は別の機構によってふたんさせ、爪部分えの許容荷重を、油圧ジヤッキ本体の頭部えの許容荷重と、同程度にしようとするものである。
【発明の効果】
【0011】
爪部分を有しない、単独型の油圧ジヤッキを、油圧ジヤッキの本来有している負荷能力を保持したまま、爪付き油圧ジヤッキとして使うことを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明を実施するための、最良の一形態を説明する。図1は、本発明の主要機構を構成する機素を示し、固定台組立体1と、可動組立体2から構成されている。
【0013】
固定台組立体1は、床上に置くための水平足1−1と、水平足1−2をもっている。水平足1−1、水平足1−2は、各各、一定の幅と一定の長さ、及び一定の厚みをもった板状になっている。二つの水平足1−1と、1−2は、互いに平行に、同一面上に並べられる。水平足1−1には、板状の脚1−3が、垂直に固定され、水平足1−2には、板状の脚1−4が垂直に固定されている。水平足1−1、水平足1−2、脚1−3、脚1−4は、共に鋼材で造られ、水平足と脚は、溶接などで固定されている。
【0014】
脚1−3の、水平足1−1えの固定は、水平足の幅方向の一端側に、水平足1−1の長手方向に沿って位置決めされている。脚1−4の、水平足1−2えの固定は、水平足1−2の幅方向の一端側に、水平足1−2の長手方向に沿って位置決めされている。脚1−3と脚1−4は、水平足1−1と水平足1−2が平行に並べられた時に、直接、片面が相互に対向するように、固定できるように、幅方向の一端が決められている。
【0015】
水平足1−1と水平足1−2は一定の距離を置いて平行に並べられ、水平足1−1と水平足1−2の、長手方向の端部にまたがって置かれた接続棒1−5を、水平足1−1及び水平足1−2の上部表面上に、溶接等で固定することによって、水平足1−1と水平足1−2の距離は固定される。さらに二つの脚1−3,1−4の互いの頂部を、接続板1−6で接続することによって、距離の固定は、上部と下部で行われ、強固なものになる。
【0016】
接続板1−6の、脚1−3、脚1−4えの固定は、可動組立体2と固定台組立体1が組み合わされた後に、ネジ止め、あるいは溶接によって行われる。
【0017】
可動組立体2は、図2に詳細に示すように、二つの箱2−1と箱2−2から成っている。箱2−1は溝2−3をもち、箱2−2は溝2−4をもっている。図3に固定台組立体1と可動組立体2の組み合わせの断面を示すように、図2に示す箱2−1の溝2−3にわ、固定台組立体1の脚1−3が、箱2−2の溝2−4には、固定台組立体の脚1−4が、各各、適当な、間隙をもって、はめ込まれる。
【0018】
箱2−1は溝2−3を構成するように外側板2−5と、内側板2−6を一定の距離(溝2−3の幅)を置いて対向させ、裏板2−7を使って、溶接等により固定している。箱2−2は溝2−4を構成するように外側板2−8と、内側板2−9を一定の距離(溝2−4の幅)を置いて、対向させ、裏板2−10を使って、溶接等によって固定している。箱2−1、箱2−2をまたがるようにして、前面板2−11が、箱2−1の外側板2−5、内側板2−6、外側板2−8、内側板2−9の、各各の端面(裏板2−7及び裏板2−10が置かれているのとの反対側)に、溶接等で固定されている。
【0019】
以上の構造により、箱2−1及び箱2−2、りょうは、図2の状態で示すように、上下は開放され、両側端面は閉じられた構造となっている。溝2−3と溝2−4の間の距離を、図1に示す、脚1−3と脚1−4の距離と一致させることにより、溝2−3と溝2−4は、固定台組立体1の脚1−3と脚1−4を組み込むことができる。それにより可動組立体2は、固定台組立体1の脚1−3、脚1−4に案内されて、上下に移動することができる。
【0020】
固定台組立体1の、脚1−3、足1−4の幅d、溝2−3、溝2−4の幅Dより、いくぶん、狭くしてあり、可動組立体2が滑らかに移動できるようにしてある。図2に示すように前面板2−11は垂直の姿勢を持った板であり、下端に、爪2−12を水平な姿勢で、溶接等により固定されている。前面板2−1と一体的に製作されていてもよい。
【0021】
可動組立体2の、二枚の内側板2−6と内側板2−9の、最上端には、ジヤッキ頭受け2−13が溶接等で固定されており、可動組立体2を剛性の高いものにしている。ジヤッキ頭受け2ー13は、図4に示すように、可動組立体2の、箱2−1、箱2−2に挟まれて、中央に置かれた油圧ジヤッキ3の、油圧ジヤッキ頭部3−1を、下面で受ける。
【0022】
固定台組立体1の、脚1−3、脚1−4は、図3、図4に示すように、固定台組立体1の脚1−3、脚1−4を案内として、油圧ジヤッキ頭部3−1の上に乗せた、ジヤッキ頭受け2−13をもった可動組立体2は、油圧ジヤッキ3の油圧ジヤッキ頭部3−1の移動と同期して、上下移動する。したがって、可動組立体2に設けた爪2−12は、持ち上げるものの、重量という負荷を受けながら、上下移動し、全体として、爪付き油圧ジヤッキの機能を果たすことになる。固定台組立体1の脚1−3、脚1−4は、油圧ジヤッキ頭部3−1の移動可能な範囲を実現可能な高さにする。可動組立体2の高さは、無論、固定台組立体1の高さに比較して低いが、本発明の目的である、油圧ジヤッキ3の傾きを防止するのに足りる、脚1−3、脚1−4との接触範囲を得られるように、きめられる。
【0023】
可動組立体2は、固定台組立体1の上端にある接続板1−6をはずした状態で、固定台組立体1に、はめ込むことが可能であり、はめ込んだ後に、接続板1−6を取り付けることによって、固定台組立体1の剛性を高めることができる。
【0024】
図5に示すように、爪2−12に荷重Lが加わっていない状態(a)から、爪2−12に荷重Lが加わった状態(b)になった時、可動組立体2の裏板2−7、裏板2−10の上部と、前面板2−11の下部が、剛性をもって立っている脚1−3、脚1−4の端面に当たり、ここで荷重が保持されることになる。その結果、油圧ジヤッキ3自体には、偏芯的な荷重は加わらず、油圧ジャッキ頭部3−1に、通常加えることのできる荷重近くまで、爪2−12で受けることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
爪を持った機構と単独油圧ジヤッキを組み合わせて、爪付き油圧ジヤッキを構成できるだけではなく、爪に加えることのできる、許容荷重を、単独油圧ジヤッキ本来の値まで高めることができ、また単独油圧ジヤッキに無理がかからないことから、油圧ジヤッキ自体の寿命を長くすることができ、産業上での有利性を高める効果をもつ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による爪付き油圧ジヤッキを構成する要素をしめす。
【図2】本発明による爪付き油圧ジャッキを構成する要素の一方を示す。
【図3】本発明による爪付き油圧ジヤッキの要素の組み合わせの断面を示す。
【図4】本発明による爪付き油圧ジヤッキの全体の組み合わせの、一側面を示す。
【図5】本発明による爪付き油圧ジヤッキの、負荷による、状態の変化を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 固定台組立体
1−1 水平足
1−2 水平足
1−3 脚
1−4 脚
1−5 接続棒
1−6 接続板
2 可動組立体
2−1 箱
2−2 箱
2−3 溝
2−4 溝
2−5 箱2−1の外側板
2−6 箱2−1の内側板
2−7 箱2−1の裏板
2−8 箱2−2の外側板
2−9 箱2−2の内側板
2−10 箱2−2の裏板
2−11 前面板
2−12 爪
2−13 ジヤッキ頭受け
3 油圧ジヤッキ
3−1 油圧ジヤッキ頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を上下させるための、物上げジヤッキのシステムにおいて、油圧ジヤッキ本体を、少なくとも三っの面によって囲めるようにした、床に置く構造の固定可能な台と、台に、上方向に、垂直方向に立てられた、少なくとも一対の脚を設け、当該脚を案内として、脚をはめることのできる、脚の数と同じ数の箱を持ち、当該脚に対して相対運動をできるようにした可動組立体から構成し、可動組立体の頂部に、複数の箱にまたがるように設けた、油圧ジヤッキの頭部を受けるようにした、頭部受け部材をもち、また複数の箱にまたがるように、前面板を箱に固定し、前面板に、荷重を受ける爪を設けた構造を特徴とする、爪付き油圧ジヤッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−222141(P2010−222141A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97423(P2009−97423)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(592151476)伝導工業株式会社 (3)