説明

片手握持型手動作業具

【課題】微妙な荷重調整が容易にでき、また、作業部に損耗破損限界以上の力が加わる前に作業者が作業を止める判断が容易にできる片手握持型手動作業具を提供する。
【解決手段】第一半体1と第二半体2とを枢着して、夫々の一端側に作業部3,他端側に握持部4を設け、この握持部4は、一方に指を掛け他方に掌を当接した状態の片手で握持して握り込むことで、若しくは一方に親指を当接し、他方に他の指の指先を当接した状態で挟持可動することで作業部3を閉動させて切断作業若しくは掴み作業を行う金属製の片手握持型手動作業具であって、握持部4の基端側に撓み部5を設け、握持部4を片手で握持しながら握り込んでいき所定の荷重以上の荷重を加えていった際にこの撓み部5を起点として握持部4が徐々に内側に撓んでいくように構成した片手握持型手動作業具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ニッパーやペンチなどの作業者が片手で握持しながら開閉操作して被工作物を掴んだり切断したりする片手握持型手動作業具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のニッパーやペンチなどの片手握持型手動作業具は、作業者が握持する力をてこの原理を用いて小さな握持力を大きな切断力や掴持力に変えて被工作物を切断したり掴んだりするのもであった。
【0003】
そのため、できるだけ片手握持型手動作業具の先端部の開閉作動する作業部に効率よく力が加わるように片手握持型手動作業具全体の剛性強度を高めた鍛造製品のものが一般的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、剛性強度の確保を主体とする鍛造品の片手握持型手動作業具は、開閉作動する作業部に必要以上の荷重が掛かりやすく、繊細微細な作業或いは軟らかいものを切断したり掴んだりする作業において、被工作物を破損させたり傷つけてしまったりするという問題があった。
【0005】
そのため、作業者は繊細微細な作業或いは軟らかいものを切断したり掴んだりする場合は被工作物を破損させたり傷つけたりしないように微妙な荷重に調整しようとするがこの操作は非常に難しいものであった。
【0006】
また、開閉作動する作業部に損耗破損限界以上の力が加えられることもしばしばあり、このように限界以上の荷重が加えられた場合には、例えば、ニッパーなどの場合は刃を傷めたりするなど作業部の破損が生じることがあった。
【0007】
このような場合においても、片手握持型手動作業具の作業部に損耗破損限界以上の力が加わらないように荷重を調整することは容易ではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、微妙な荷重調整が容易にでき、また、作業部に損耗破損限界以上の力が加わる前に作業者が作業を止める判断が容易にできる画期的な片手握持型手動作業具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
金属製の第一半体1と金属製の第二半体2とを枢着して、夫々の一端側に開閉作動する作業部3,他端側に握持操作する握持部4を設け、この握持部4は、前記第一半体1と前記第二半体2の一方に指を掛け、他方の前記第二半体2若しくは前記第一半体1に掌を当接した状態の片手で握持して握り込むことで、若しくは前記第一半体1と前記第二半体2の一方に親指を当接し、他方の前記第二半体2若しくは前記第一半体1に他の指の指先を当接した状態で挟持可動することで、前記作業部3を閉動させて切断作業若しくは掴み作業を行う金属製の片手握持型手動作業具であって、前記握持部4の基端側に撓み部5を設け、前記握持部4を片手で握持しながら握り込んでいき若しくは親指と他の指の指先で挟持可動して所定の荷重以上の荷重を加えていった際にこの撓み部5を起点として前記握持部4が徐々に内側に撓んでいくように構成し、前記握持部4が撓むことによって作業者が前記握持部4に加えている力を把握できるように構成したことを特徴とする片手握持型手動作業具に係るものである。
【0011】
また、前記握持部4に5kgf〜30kgfの範囲のいずれかの荷重を加えた際に、夫々の握持部4が内側方向へ撓み移動し、前記第一半体1の握持部4と前記第二半体2の握持部4との対向間隔が撓み移動する前の対向間隔に比し10mm〜20mm狭くなる形状に設定したことを特徴とする請求項1記載の片手握持型手動作業具に係るものである。
【0012】
また、前記撓み部5は、前記第一半体1及び前記第二半体2の夫々の前記握持部4を湾曲形状に形成し、前記第一半体1及び前記第二半体2を、前記握持部4が外側に凸となる湾曲形状となるように枢着し、この湾曲形状の握持部4の荷重が加えられる箇所を力点部6とし、前記握持部4に5kgf〜30kgfの範囲のいずれかの荷重を加えた際に、夫々の力点部6が内側方向へ撓み移動し、前記第一半体1の力点部6と前記第二半体2の力点部6との対向間隔が撓み移動する前の対向間隔に比し10mm〜20mm狭くなる形状に設定したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の片手握持型手動作業具に係るものである。
【0013】
また、前記握持部4は、この握持部4の基端部から前記力点部6間に、前記握持部4の基端部から前記力点部6に向って徐々に肉薄形状となる前記撓み部5を設けて、前記力点部6に荷重を加えていった際に前記握持部4が徐々に撓んでいき、この握持部4が撓む際の撓みの起点が前記力点部6側から前記握持部4の基端部側に移動するように構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の片手握持型手動作業具に係るものである。
【0014】
また、金属製の第一半体1と金属製の第二半体2とを枢着して、夫々の一端側に開閉作動する作業部3,他端側に握持操作する握持部4を設け、この握持部4は、前記第一半体1と前記第二半体2の一方に指を掛け、他方の前記第二半体2若しくは前記第一半体1に掌を当接した状態の片手で握持して握り込むことで、若しくは前記第一半体1と前記第二半体2の一方に親指を当接し、他方の前記第二半体2若しくは前記第一半体1に他の指の指先を当接した状態で挟持可動することで、前記作業部3を閉動させて切断作業若しくは掴み作業を行う金属製の片手握持型手動作業具であって、前記握持部4は、この握持部4に5kgf〜20kgfの範囲の荷重を加えたときの撓み度が0.5mm/kgf〜2.6mm/kgfの範囲のいずれかになる形状に設定し、この握持部4が撓むことによって作業者が前記握持部4に加えている力を把握できるように構成したことを特徴とする片手握持型手動作業具に係るものである。
【0015】
また、金属製の第一半体1と金属製の第二半体2とを枢着して、夫々の一端側に開閉作動する作業部3,他端側に握持操作する握持部4を設け、この握持部4は、前記第一半体1と前記第二半体2の一方に指を掛け、他方の前記第二半体2若しくは前記第一半体1に掌を当接した状態の片手で握持して握り込むことで、若しくは前記第一半体1と前記第二半体2の一方に親指を当接し、他方の前記第二半体2若しくは前記第一半体1に他の指の指先を当接した状態で挟持可動することで、前記作業部3を閉動させて切断作業若しくは掴み作業を行う金属製の片手握持型手動作業具であって、前記握持部4に5kgfの荷重を加えたときにこの握持部4が5mm〜15mmの範囲のいずれかの撓み移動量、若しくは、前記握持部4に20kgfの荷重を加えたときにこの握持部4が10mm〜20mmの範囲のいずれかの撓み移動量となるように構成したことを特徴とする片手握持型手動作業具に係るものである。
【0016】
また、前記撓み度は、前記第一半体1及び前記第二半体2の夫々の前記握持部4を湾曲形状に形成し、この湾曲形状の握持部4の荷重が加えられる箇所を力点部6とし、前記握持部4に荷重を加えたときに前記第一半体1及び前記第二半体2の夫々の力点部6が内側方向へ移動する単位荷重あたりの撓み移動量であることを特徴とする請求項5,6のいずれか1項に記載の片手握持型手動作業具に係るものである。
【0017】
また、前記作業部3は、対向挟持部7に切断刃部8を形成して、片手で握持して握り込む若しくは親指と他の指の指先で挟持可動することで、前記作業部3を閉動させて切断作業を行うように構成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の片手握持型手動作業具に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、被工作物を切断したり掴んだりする際に、握持部を握持状態で握り込みながら、若しくは親指と他の指の指先で挟持可動して所定の荷重以上の荷重を掛けていくとこの握持部に設けた撓み部が起点となって徐々に撓んでいき、作業者がこの撓みを視認でき、或いは手で感じることができるので、撓み具合で握持部に加える荷重を微妙に調整することも容易にでき、繊細微細な作業或いは軟らかいものを挟持若しくは切断する場合でも被工作物を破損させたり傷つけたりすることなく作業することができる。
【0019】
また、作業者が必要以上の力で無理に握持部を握り込んでいったり、指先で挟持したりしていくと、撓み量が大きくなり、作業者が必要以上の荷重を加えていることを容易に把握できるので、作業部に損耗破損限界以上の力が加わる前に作業を止めることができ、作業部を損耗破損させることが無い実用性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【0020】
また、請求項2,3,5,6記載の発明においては、握持部に所定の荷重を加えたときの握持部の撓み移動量が明確となっているので、握持部に加えている荷重を撓み具合によって容易に把握することができ、作業部に必要以上の荷重を加えて被工作物を傷つけたり破損させたりする前に作業者が必要以上の荷重を掛けていることに気付くので、被工作物を傷つけたり破損させたりすることがない実用性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【0021】
また、請求項4の発明においては、撓み部を握持部の基端部から前記力点部に向って握持部の厚みを徐々に肉薄となる形状としたことで撓みの起点が移動するので、一箇所だけに繰返し応力が集中することがなく、金属疲労による破損が起こり難い実用性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【0022】
また、請求項7記載の発明においては、握持部の形状を握持し易い形状に形成した操作性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【0023】
また、請求項8記載の発明においては、例えば、内部に硬い被工作物、外側に軟らかい被工作物で構成されている被工作物で外側の被工作物だけを切断する作業を行う場合(例えば、導線の芯部を残して、外側の被覆物を切断する処理を行う場合など)に微妙な荷重の調整が容易にでき、切断したいものだけを容易に切断でき、また、損耗破損限界以上の荷重を掛けないので、切断刃部が欠けることなく使用寿命を延命化することができる経済性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施例をニッパーに構成した場合を示す斜視図である。
【図2】本実施例の使用状態を示す説明正面図である。
【図3】本実施例をニッパーに構成した場合の第一半体を示す正面図である。
【図4】本実施例をペンチに構成した場合を示す斜視図である。
【図5】本実施例をペンチに構成した場合を示す説明正面図である。
【図6】本実施例の握持部に荷重を加えていった時の撓み状態を示す説明図である。
【図7】本実施例と従来例の荷重と撓み移動量の関係を示すグラフである。
【図8】本実施例の第一半体若しくは第二半体のいずれか一方だけに撓みが生じるように構成した場合を示す説明正面図である。
【図9】本実施例を精密ニッパーに構成して指先で握持した状態を示す説明正面図である。
【図10】本実施例の対向挟持部を湾曲形状に形成したペンチに構成した場合を示す正面図である。
【図11】本実施例の対向挟持部を湾曲形状に形成し握持部先端に指先係止部を形成した精密ペンチに構成した場合を示す正面図である。
【図12】別実施例の撓み部を示す正面図である。
【図13】別実施例の撓み部を示す正面図である。
【図14】別実施例の撓み部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0026】
本発明の片手握持型手動作業具を用いて被工作物9を切断したり掴んだりするために、第一半体1と第二半体2の一方に指を掛け、他方の第二半体2若しくは第一半体1に掌を当接した状態の片手で握持部4を握持して、被工作物9を作業部3の間に挿入し、握持部4を握り込んでいく、若しくは第一半体1と第二半体2の一方に親指を当接し、他方の第二半体2若しくは第一半体1に他の指の指先を当接した状態で挟持可動していくと作業部3が閉動して被工作物9に当接し挟持状態となる。
【0027】
この被工作物9を挟持した状態から更に握持部4を握り込んで、若しくは親指と他の指の指先で挟持して荷重を加えていくと、この被工作物9によって作業部3の閉動作動に抵抗が生じ、この抵抗力以上の荷重が必要となり、この握持部4に更に荷重を加えることで所定の荷重以上の荷重が加わり、握持部4に設けた撓み部5を起点にして握持部4が内側方向に撓み始め、第一半体1と第二半体2に設けた夫々の握持部4の対向間隔が狭くなっていきながら枢着部10を支点とした、てこの原理で作業部3に握持部4に加えた荷重よりも大きな荷重を作用させて、作業部3を更に閉動方向に移動させることで被工作物9を切断したり掴んだ状態で保持したりすることができる。
【0028】
したがって、例えば、作業部3で被工作物9を切断したり掴んだりしようとした際に、この被工作物9が非常に硬いものであった場合は、従来の片手握持型手動作業具ではどの程度の荷重を加えているかを把握することができず、作業部3に損耗破損限界以上の荷重を加えて作業部3を損傷させてしまうことがあったが、本発明は、作業者が握持部4に必要以上の荷重を加えることで握持部4の撓みが多くなるので、この握持部4が大きく撓んだことによって、作業部3に必要以上の荷重が加えられていることを作業者が容易に把握することができ、作業部3に損耗破損限界以上の力が加えられる前に作業者は切断作業を中止することができる。
【0029】
また、例えば、作業部3で被工作物9を切断したり掴んだりしようとした際に、この被工作物9が非常に軟らかく繊細微細な作業が必要な場合は、被工作物9に加える荷重は微妙な調整が必要な小さな荷重が要求されるが、従来の片手握持型手動作業具では、作業部3に荷重が加わり易く、そのため微妙な荷重の調整が容易で無いため、被工作物9に必要以上の荷重を加えてしまい被工作物9を傷つけたり破損させたりすることがあったが、本発明は握持部4に加える荷重が小さくてもこの握持部4が撓むので、作業者が軽く握持若しくは指先で挟持しただけでも握持部4が撓むことによって作業部3が被工作物9を切断したということ若しくは掴んだということを容易に把握できるので作業部3に必要以上の荷重を加えずに被工作物9を傷つけることなく切断したり掴み保持したりすることができる。
【0030】
このように、握持部4に所定の荷重以上の荷重を加えたときの握持部4の撓み度が、従来の片手握持型手動作業具よりも大きく撓むように構成しているので、作業者は握持部4にどの程度の荷重を掛けているかを容易に把握でき、しかも、作業者の手若しくは指先にはこの握持部4が撓む際に生じる弾性力の反作用としての荷重も感じられることとなるので、より一層握持部4に加えている荷重を把握することができることとなる。
【0031】
したがって、握持部4に加える荷重を微妙に調整することも容易にできるので、繊細微細な作業或いは軟らかいものを切断する若しくは掴んだ状態で保持する場合でも被工作物9を破損させたり傷つけたりすることなく作業できる。
【0032】
しかも、握持部4に必要以上の荷重を掛けた場合は、握持部4の撓みによって第一半体1と第二半体2の握持部4間隔が狭くなり過ぎることで握持する力が入れにくくなり、必要以上の荷重が加えにくくなり、作業者が必要以上の力で無理に握持部4を握り込んで作業部3に損耗破損限界以上の荷重を加えるようなこともなくなるので、作業部3が損耗破損することがない実用性に優れた画期的な片手握持型手動作業具となる。
【実施例】
【0033】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0034】
本実施例は、金属製の第一半体1と金属製の第二半体2とを枢着して、夫々の一端側に開閉作動する作業部3,他端側に握持操作する握持部4を設け、この握持部4の基端側に撓み部5を設け、この握持部4を片手で握持しながら握り込んでいき所定の荷重以上の荷重を加えていった際にこの撓み部5を起点にして握持部4が徐々に内側に撓んでいくように構成した片手握持型手動作業具である。
【0035】
具体的には、第一半体1及び第二半体2は、適宜な金属製の部材を略S字状に形成し、第一半体1若しくは第二半体2の先端側寄りに夫々枢着部10を設け、この枢着部10よりも先端側に対向挟持部7を設け、第一半体1と第二半体2との対向挟持部7が一対となって作業部3を形成し、枢着部10よりも基端側に握持部4を設けた構成で、更にこれらを一体成形した構成とし耐久性にも非常に優れた片手握持型手動作業具となっている。
【0036】
尚、本実施例では作業部3を形成する対向挟持部7に切断刃部8を設けたニッパーに構成しているが、ペンチやプライヤーなど本実施例の特性を発揮するものであれば適宜採用し得るものである。
【0037】
また、上述のように構成した第一半体1及び第二半体2を枢着部10で交差状態に連結して、第一半体1と第二半体2との握持部4を片手で握り込んで閉動するとこれに同期して作業部3が閉動する構成となっている。
【0038】
更に詳しく説明すると、第一半体1及び第二半体2の握持部4は、湾曲形状に形成し、この湾曲形状の握持部4の荷重が加えられる箇所を力点部6とし、本実施例では、対向する第一半体1と第二半体2の夫々の握持部4間隔において、この力点部6の間隔が最も広くなる構成としている。
【0039】
尚、握持部4を握持して操作する場合は、握持部4の頂部が力点部6となり、指先で挟持して操作する場合は、握持部4の先端部が力点部6となる。
【0040】
また、この握持部4は、人の平均的な握力値である20kgf〜30kgf程度の荷重で弾性変形する厚みの金属部材を、断面形状が略長方形状になるように形成し、更に、握持部4の基端部から力点部6に向って徐々に厚みが肉薄となるような形状に形成しており、この厚みが徐々に肉薄となる箇所を撓み部5としている。
【0041】
このように握持部4を形成して、作業者が第一半体1と第二半体2の一方の握持部4に指を掛け、他方の第二半体2若しくは第一半体1の握持部4に掌を当接した状態の片手で握持部4を握持しながら握り込んで所定の荷重を掛けた際に、この撓み部5が大きく弾性変形する(見た目では撓み部5のみが弾性変形し、他の握持部4は弾性変形していないように見える程度の変形)ように構成している。
【0042】
即ち、撓み部5の厚みを握持部4の基端部から力点部6に向って徐々に肉薄な形状にすることで、撓み部5の断面二次モーメントを力点部6側ほど小さくして、握持部4の基端部側ほど大きくし握持部4に加えられる荷重に対して撓みの起点となる箇所を移動させるように構成している。
【0043】
即ち、作業者が握持部4に荷重を掛けていくと、荷重が小さな時点では力点部6に近いところが撓みの起点となり、握持部4に加わる荷重が徐々に大きくなっていくに連れて撓みの起点が握持部4の基端部側に移動していく構成としている。
【0044】
このような構成にすることで、握持部4内の同一箇所に撓みの起点が集中することがなくなり、握持部4が金属疲労によって容易に破損してしまうことを抑制している。
【0045】
また、本実施例では、握持部4を人の平均的な握力値である20kgf〜30kgf程度の荷重で弾性変形する厚みで形成しているが、この握持部4に設けた撓み部5の最も肉薄の部分の厚みを1mm〜3mmの範囲内のいずれかの厚みに設定し、人の平均的な握力値である20kgf〜30kg以下の小さな荷重でも撓み部5の弾性変形が見た目で分かるくらい変形するようにして、この撓み部5を起点にした握持部4の撓みが容易に生じるように構成している。
【0046】
尚、本実施例では、撓み部5を容易に弾性変形するように厚みを薄くした構成としたが、図12〜図14に示すように、この撓み部5の内部に空間部を設けたり、或いは側面部を凹凸状やギザギザ状に形成したりするなどして本実施例と同様の特性を発揮する構成のものであれば適宜採用し得るものである。
【0047】
上述した人の平均的な握力値である20kgf〜30kg以下の小さな荷重でも撓み部5の弾性変形が見た目で分かるくらい変形する握持部4の撓み移動量に関して具体的に説明すると、本実施例の撓み移動量の定義は、握持部4が撓み始める直前の力点部6間の対向間隔と、握持部4の力点部6に荷重が加わり握持部4が撓んでこの力点部6が内側方向に移動したときの力点部6間の対向間隔との差であり、言い換えると、第一半体1と第二半体2の夫々の握持部4に設けた力点部6の移動量の和である。
【0048】
更に具体的には、例えば、片手握持型手動作業具の作業部3の先端部から枢着部10までの距離と握持部4の荷重が加えられる力点部6から枢着部10までの距離との比を略1:5に構成した片手握持型手動作業具において、従来の一般的なニッパーやペンチなどの片手握持型手動作業具は、握持部4に概ね30kgfの荷重を加えたときに作業部3に作用する荷重は約150kgfとなり、図7中の第一従来例及び第二従来例に示すように、このときの握持部4の撓み移動量は、3mm〜4mm程度となり、即ち撓み度(単位荷重あたりの撓み移動量)で0.1mm/kgf〜0.13mm/kgfとなる。
【0049】
これに対して、本実施例は、撓み部5の最も肉薄な部分の厚みを2.5mmに設定することで同じ30kgfの荷重を握持部4に加えた際に、作業部3に作用する荷重は約150kgfと同じであるが、図7中の第一実施例に示すように、握持部4の撓み移動量は約20mmとなり、また、撓み度では約0.7mm/kgfとなるので、従来品の約6倍前後の撓み移動量(撓み度)となるので、見た目にも容易に握持部4が撓んだことが分かる撓み移動量となる。
【0050】
また、撓み度を0.7mm/kgfに設定したことで、図7中の第一実施例に示すように、握持部4に20kgfの荷重を加えたときには、撓み移動量が約14mmとなり、また、10kgfの荷重を加えたときには撓み移動量が約7.0mmとなり、また更に、5kgfの荷重を加えたときには撓み移動量が約3.5mmとなるので、このように小さい荷重でも従来の片手握持型手動作業具に比して撓み移動量が多いので、握持部4を握り込んで荷重を加え始めると略同時に握持部4が撓んでいくことを容易に把握でき、例えば、上述したように所定荷重を加えたときの撓み量が既知である片手握持型手動作業具とすることで、握持部4を握り込んでいった際の握持部4の撓み具合でどの程度の荷重を加えているかも容易に把握することができる。
【0051】
また、この撓みによって生じる握持部4の弾性エネルギーの反作用的な力を作業者の手が感じることができるので、より一層握持部4に加えている荷重を認識できる実用性に優れた画期的な片手握持型手動作業具となる。
【0052】
また、握持部4に30kgf以上の荷重を加えることで、握持部4の撓み移動量は20mm以上になるが、この撓み移動量が20mm以上となった場合は、第一半体1と第二半体2との握持部4間隔が、人の手が握持部4を強く握れる範囲以下の狭い間隔となるように構成しているので、作業者は必然的に握持部4に30kgf以上の荷重を加えることが容易でなくなり、このような状態となることで作業者が握持部4に必要以上の荷重を加えていることを分からせることができ、これによって、作業者は直ぐに握持部4にこれ以上の荷重を加えることを中止するので、作業部3にも必要以上の荷重が加わらなくなる。
【0053】
即ち、作業部3となる対向挟持部7に設けた切断刃部8に損耗破損限界以上の荷重が加わることがなくなり、切断刃部8が欠けるなどの破損が生じることもなくなり、片手握持型手動作業具の使用寿命を延命することができるので経済性にも優れた片手握持型手動作業具となる。
【0054】
また、繊細微細な作業或いは軟らかいものを挟持若しくは切断処理する場合のような被工作物9にあまり大きな荷重を加えたくない場合は、上述した荷重よりもより一層小さな荷重で撓み部5が同様に撓む構成とした片手握持型手動作業具を用いることが好ましく、例えば、撓み部5以外の片手握持型手動作業具の構成は上述した構成と同様にし、撓み部5の最も肉薄な部分の厚みを1.5mmにして、この握持部4の撓み度を2.4mm/kgfに設定すれば、図7中の第三実施例に示すように、握持部4に5kgfの荷重を加えたときには、握持部4の撓み移動量が約12mmとなり、また、2kgfの荷重を加えたときでも撓み移動量は約5mmとなるので、非常に小さな荷重でも見た目で握持部4が撓んだことが容易に把握でき、また、この撓みによって生じる弾性力を手で感じることができるので、握持部4に加える荷重を微妙に調整することも容易にできる実用性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【0055】
また、上述と同様に、例えば、撓み部5の最も肉薄な部分の厚みを2.0mmにして、この握持部4の撓み度を1.3mm/kgfに設定すれば、図7中の第二実施例に示すように、握持部4に15kgfの荷重を加えたときには握持部4の撓み移動量が約20mmとなり、また、10kgfの荷重を加えたときには撓み移動量は約13mmとなり、このように、被工作物9の硬さや処理内容に応じた所望の荷重に合わせた片手握持型手動作業具を用いて作業すること、即ち、最適荷重を加えることができる片手握持型手動作業具を用いて作業を行うことで、被工作物9に加える荷重が必要以上とならずに、被工作物9を傷つけたり破損させたりすることがない非常に実用性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【0056】
また、本実施例では、握持部4に撓み部5を設け、この撓み部5が弾性変形することで握持部4全体が内側方向に撓む構成としているが、例えば、この撓み部5を設けずに、握持部4を所定の撓み度に設定して、握持部4に荷重を加えた際に、握持部4の任意の箇所が起点となって本実施例と同様の効果を発揮する構成であれば、適宜採用し得るものである。
【0057】
また、図8に示すように、この撓み部5や握持部4の任意の箇所が起点となって撓む構成を第一半体1または第二半体2の一方のみに設けた構成としてもよく、このように構成したことによって第一半体1と第二半体2の両方が撓む場合に比し、一方だけが撓む場合はその撓み量が二倍になるため、より撓みによって生じる弾性力を手で感じることができることとなる。
【0058】
また更に、第一半体1と第二半体2の夫々の撓み部5の厚みを異ならせて握持部4の撓み度が異なる構成としても良い。
【0059】
また、本実施例は、作業者が第一半体1と第二半体2の一方の握持部4に指を掛け、他方の第二半体2若しくは第一半体1の握持部4に掌を当接した状態の片手で握持部4を握持しながら握持操作する一般的な大きさの片手握持型手動作業具について述べたが、例えば、作業者が前記第一半体1と前記第二半体2の一方に親指を当接し、他方の前記第二半体2若しくは前記第一半体1に他の指の指先を当接した状態で挟持して、指先と指先との挟持可動(摘まみ動)で操作するような精密作業具にも同様な構成を用いれば、より一層微細な作業を行うことができる操作性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【0060】
また、上述のように握持部4を指先で挟持して操作する場合には、握持部4の先端側を外側に反らせた形状の指先係止部11を設けた形状に構成すると良い。
【0061】
具体的には、図9及び図11に示すように、一対の握持部4を正面視ベル形状に構成し、この指先係止部11に指先を当接する(引っ掛ける)ことで、より一層挟持し易くなり、この片手握持型手動作業具を上下方向に向けたり、或いは水平方向に向けたりして操作する場合でも、容易に操作できる操作性且つ実用性に優れた片手握持型手動作業具となる。
【0062】
また、例えば、本実施例の作業部3を形成する対向挟持部7をペンチに構成した場合、この対向挟持部7を図4,図5に示すような一般的なペンチの先端形状のほかに、図10,図11に示すように、この対向挟持部7の形状を先端部から枢着部10にかけて湾曲部12を設けた湾曲形状に形成し、即ち、先端部が当接状態でも、この対向挟持部7の先端部と枢着部10との途中の内側面が非接触状態となる形状、具体的には例えばピンセットのような形状に形成し、且つ湾曲部12に所定の力が加わった際に撓む構造とすることで、この作業部3の挟持力を低減することができ、より一層繊細な掴み作業ができる実用性に優れた画期的な片手握持型手動作業具となる。
【0063】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0064】
1 第一半体
2 第二半体
3 作業部
4 握持部
5 撓み部
6 力点部
7 対向挟持部
8 切断刃部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第一半体と金属製の第二半体とを枢着して、夫々の一端側に開閉作動する作業部,他端側に握持操作する握持部を設け、この握持部は、前記第一半体と前記第二半体の一方に指を掛け、他方の前記第二半体若しくは前記第一半体に掌を当接した状態の片手で握持して握り込むことで、若しくは前記第一半体と前記第二半体の一方に親指を当接し、他方の前記第二半体若しくは前記第一半体に他の指の指先を当接した状態で挟持可動することで、前記作業部を閉動させて切断作業若しくは掴み作業を行う金属製の片手握持型手動作業具であって、前記握持部の基端側に撓み部を設け、前記握持部を片手で握持しながら握り込んでいき若しくは親指と他の指の指先で挟持可動して所定の荷重以上の荷重を加えていった際にこの撓み部を起点として前記握持部が徐々に内側に撓んでいくように構成し、前記握持部が撓むことによって作業者が前記握持部に加えている力を把握できるように構成したことを特徴とする片手握持型手動作業具。
【請求項2】
前記握持部に5kgf〜30kgfの範囲のいずれかの荷重を加えた際に、夫々の握持部が内側方向へ撓み移動し、前記第一半体の握持部と前記第二半体の握持部との対向間隔が撓み移動する前の対向間隔に比し10mm〜20mm狭くなる形状に設定したことを特徴とする請求項1記載の片手握持型手動作業具。
【請求項3】
前記撓み部は、前記第一半体及び前記第二半体の夫々の前記握持部を湾曲形状に形成し、前記第一半体及び前記第二半体を、前記握持部が外側に凸となる湾曲形状となるように枢着し、この湾曲形状の握持部の荷重が加えられる箇所を力点部とし、前記握持部に5kgf〜30kgfの範囲のいずれかの荷重を加えた際に、夫々の力点部が内側方向へ撓み移動し、前記第一半体の力点部と前記第二半体の力点部との対向間隔が撓み移動する前の対向間隔に比し10mm〜20mm狭くなる形状に設定したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の片手握持型手動作業具。
【請求項4】
前記握持部は、この握持部の基端部から前記力点部間に、前記握持部の基端部から前記力点部に向って徐々に肉薄形状となる前記撓み部を設けて、前記力点部に荷重を加えていった際に前記握持部が徐々に撓んでいき、この握持部が撓む際の撓みの起点が前記力点部側から前記握持部の基端部側に移動するように構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の片手握持型手動作業具。
【請求項5】
金属製の第一半体と金属製の第二半体とを枢着して、夫々の一端側に開閉作動する作業部,他端側に握持操作する握持部を設け、この握持部は、前記第一半体と前記第二半体の一方に指を掛け、他方の前記第二半体若しくは前記第一半体に掌を当接した状態の片手で握持して握り込むことで、若しくは前記第一半体と前記第二半体の一方に親指を当接し、他方の前記第二半体若しくは前記第一半体に他の指の指先を当接した状態で挟持可動することで、前記作業部を閉動させて切断作業若しくは掴み作業を行う金属製の片手握持型手動作業具であって、前記握持部は、この握持部に5kgf〜20kgfの範囲の荷重を加えたときの撓み度が0.5mm/kgf〜2.6mm/kgfの範囲のいずれかになる形状に設定し、この握持部が撓むことによって作業者が前記握持部に加えている力を把握できるように構成したことを特徴とする片手握持型手動作業具。
【請求項6】
金属製の第一半体と金属製の第二半体とを枢着して、夫々の一端側に開閉作動する作業部,他端側に握持操作する握持部を設け、この握持部は、前記第一半体と前記第二半体の一方に指を掛け、他方の前記第二半体若しくは前記第一半体に掌を当接した状態の片手で握持して握り込むことで、若しくは前記第一半体と前記第二半体の一方に親指を当接し、他方の前記第二半体若しくは前記第一半体に他の指の指先を当接した状態で挟持可動することで、前記作業部を閉動させて切断作業若しくは掴み作業を行う金属製の片手握持型手動作業具であって、前記握持部に5kgfの荷重を加えたときにこの握持部が5mm〜15mmの範囲のいずれかの撓み移動量、若しくは、前記握持部に20kgfの荷重を加えたときにこの握持部が10mm〜20mmの範囲のいずれかの撓み移動量となるように構成したことを特徴とする片手握持型手動作業具。
【請求項7】
前記撓み度は、前記第一半体及び前記第二半体の夫々の前記握持部を湾曲形状に形成し、この湾曲形状の握持部の荷重が加えられる箇所を力点部とし、前記握持部に荷重を加えたときに前記第一半体及び前記第二半体の夫々の力点部が内側方向へ移動する単位荷重あたりの撓み移動量であることを特徴とする請求項5,6のいずれか1項に記載の片手握持型手動作業具。
【請求項8】
前記作業部は、対向挟持部に切断刃部を形成して、片手で握持して握り込む若しくは親指と他の指の指先で挟持可動することで、前記作業部を閉動させて切断作業を行うように構成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の片手握持型手動作業具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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