説明

牛体温出力装置

【課題】牛に負担をかけることなく常時牛体温を測定すること。
【解決手段】 牛の表皮に当接させる温度センサ部101と、温度センサ部101を挟み表皮と反対側から温度センサ部101を表皮にあてがうように上から覆うセンサシート体102と、センサシート体102を牛に固定する固定ベルト103と、温度センサ部101からの表皮温を直腸温に基づいて体温として補正して出力する処理出力部104と、を具備したことを特徴とする牛体温出力装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛の体温を順次出力する牛体温出力装置に関し、特に、表皮温を補正して体温として出力する牛体温出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
養牛農家にとって、牛の健康管理は、繁殖させる場合でも、肥育する場合でも、最も重要な事項であるといえる。従来、健康管理は、牛の色つや、食欲、目やになど外見や動作・行動を注視する手法がとられている。
【0003】
ここで、大規模経営であったり、近年見直されつつある放牧飼育を採用する農家にとっては、必ずしも十分に目が行き届かないこともあり、また、小規模経営の場合は、一頭でも死んでしまうようなことがあると大打撃を受けてしまう。
【0004】
そこで、健康状体を把握する基本であるところの体温測定も従来おこなわれている。これによれば、一般的な健康管理だけでなく、例えば出産間近になると平常時より0.3度〜0.5度体温が下がるという現象をとらえ出産検知にも用いることが可能となる。
【0005】
しかしながら、直腸検診は実際には常時測定するわけでなく体調が悪くなったときなど診断の一環としておこなわれるので、体調管理には不向きであるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−296312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、解決しようとする問題点は、牛に負担をかけることなく常時牛体温を測定する点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の牛体温出力装置は、牛の表皮に当接させる温度センサと、温度センサを挟み表皮と反対側から温度センサを表皮にあてがうように上から覆う断熱性被覆体と、断熱性被覆体を牛に固定する固定ベルトと、温度センサからの表皮温を直腸温に基づいて体温として補正して出力する変換出力部と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、牛が屋外にいたり寝そべったりしてもセンサに影響を与えず、所定の補正をおこなって体温の常時測定が可能となる。
【0010】
請求項2に記載の牛体温出力装置は、請求項1に記載の牛体温出力装置において、外気温および/または外気温の変化幅に基づいて牛体温または牛体温の変化幅が所定値から外れたか否かを判定する判定部を具備したことを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2に係る発明は、牛の体調変化を速やかに把握することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、牛に負担をかけることなく常時牛体温を測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】牛体温出力装置を牛に取り付けた装着概念図である。
【図2】牛体温出力装置の外観構成図である。
【図3】牛体温出力装置のブロック図である。
【図4】牛体温出力装置の他の構成例および装着態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、牛体温出力装置を牛に取り付けた装着概念図である。図2は、牛体温出力装置の外観構成図である。
また、図3は、牛体温出力装置のブロック図である。牛体温出力装置100は、温度センサ部101と、センサシート体102と、固定ベルト103と、処理出力部104と、を有する。
【0015】
温度センサ部101は、牛の表皮に当接させ表皮温度を測定するセンサである。センサは、水銀温度計でも熱電対を利用した温度計でも赤外線を利用した温度計でもよい。温度センサ部101で測定された値は処理出力部104で体温に変換される。
【0016】
センサシート体102は、温度センサ部101を挟んで表皮とは反対側から(外側から)温度センサ部101を牛の表皮にあてがうように上から覆う扁平なパッドである。牛にストレスがかからないように素材は柔軟なものとし、断熱性の高い素材を用いる。これにより、外気温の変動があっても温度センサ部101に影響を与えにくくなり、体温への補正精度が向上する。大きさも限定されないが、5cm×7cm×1cmとすることができる。温度センサ部101周囲については2.5cmまで盛り上げ、外気温の影響をより少なくする様にしても良い。
【0017】
固定ベルト103は、センサシート体102を牛に固定するベルトである。図示したように、固定ベルト103は、き甲部後ろと前脚後ろ(人間でいう脇の下)を捲回するベルトであって、脇の下にセンサシート体102が位置するように固定する。この位置は、牛が座り込んでも土に当たりにくく、また、雨にもぬれにくい場所である。なお、センサシート体102は、これに限らず、き甲部付近に取り付けるようにしても良い。
【0018】
処理出力部104は、変換部141と、出力部142と、判定部143と、通知部144と、を有する。
【0019】
変換部141は、温度センサ部101で測定された牛の表皮温を直腸温に基づいて補正して牛の体温として出力する。牛の体温は事実上直腸温とされているので、この直腸温で表皮温を補正する。直腸温と表皮温との差(たとえば、0.9℃)を予め測定し、表皮温に基づいて体温を決定する。なお、この差が時刻に依存する場合には随時補正するようにする。直腸温は常時測定できないが表皮温は常時測定できるのでこれを用いて体温の経時変化を把握することが可能となる。
【0020】
出力部142は、ここでは端子として設計しており、所定時間毎に蓄積された体温の経時変化のデータを適宜外部へ送出可能にしている。いわば出力部142はインターフェースといえ、USB端子やスマートメディア接続コネクタなどとすることができる。
【0021】
判定部143は、外気温および/または外気温の変化幅に基づいて牛体温または牛体温の変化幅が所定値から外れたか否かを判定する。これにより外気温の変動も考慮して体調変化が生じているか否かをより正確に判定できる。使用の態様によっては、発情、分娩等の検知に用いることもできる。
【0022】
通知部144は、ここではセンサシート体102にLEDを設けて外部に通知をおこなう。通知内容は、判定部143の結果に基づき、体調変化の可能性があるのであれば2秒に1回の点滅、通常の範囲内であれば10秒に1回の点滅とするように構成する。なお、このような点滅方式を採用すると電池のもちが良くなる。使用の態様によっては、出力部142と連動して、電波で牛舎や管理小屋に飛ばし、備え付けのPCでリアルタイム表示するようにしても良い。
【0023】
以上、本発明によれば、牛に負担をかけることなく、牛体温の常時測定・常時確認が可能となる。なお、図4に示したように、センサシート体102と処理出力部104を別体として構成し、固定ベルト103に沿った接続ケーブルにより両者を接続するようにしてもよい。処理出力部104をき甲部後ろに取り付けて、牛舎と無線通信するようにすることにより、経営規模の大きな畜産農家の利便性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、牛だけでなく、豚や馬にも応用することができる。
【符号の説明】
【0025】
100 牛体温出力装置
101 温度センサ部
102 センサシート体
103 固定ベルト
104 処理出力部
141 変換部
142 出力部
143 判定部
144 通知部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛の表皮に当接させる温度センサと、
温度センサを挟み表皮と反対側から温度センサを表皮にあてがうように上から覆う断熱性被覆体と、
断熱性被覆体を牛に固定する固定ベルトと、
温度センサからの表皮温を直腸温に基づいて体温として補正して出力する変換出力部と、
を具備したことを特徴とする牛体温出力装置。
【請求項2】
外気温および/または外気温の変化幅に基づいて牛体温または牛体温の変化幅が所定値から外れたか否かを判定する判定部を具備したことを特徴とする請求項1に記載の牛体温出力装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−45257(P2011−45257A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194263(P2009−194263)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度年度独立行政法人情報通信研究機構「民間基盤技術研究促進制度/(研究開発課題「牛の発情検知システムによる繁殖農家と畜産技術者との情報通信ネットワーク形成を目的とする研究開発」)」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(500133738)株式会社 ワコムアイティ (7)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【出願人】(591060980)岡山県 (96)
【Fターム(参考)】