説明

物体のテキストベースの画像を自動的に拡大する方法および装置

表面上に支持された物体3に設けられたテキストベースの原画像5、5Aを撮像する方法および装置。物体3の上方に、テキストベースの画像5、5Aを撮像するためのカメラ7が位置付けられる。カメラ7は、レンズ9を通して物体3の少なくとも一部の合焦画像を生成し、カメラ7によって撮像された画像をディスプレイデバイス15での表示用に指定されたサイズに拡大するために、この画像をプロセッサ11に送る。プロセッサ11において、ディスプレイ15への表示用の、第1のフォントサイズに依存しない、第2の既定の表示用フォントサイズ19、19Aによって制御される倍率への拡大が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体のテキストベースの画像を拡大する方法および装置に関する。特に、本発明は、読み書きに支障をきたす視力障害、低視力、または他の判読上の困難を有する人々を支援するために有用な方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テキストベースの原画像内の書体はフォントサイズが大幅に変わりうるため、このような方法および装置においては、使用者によって調整される倍率を用いることが有用であることが分かっている。障害のある読者は、多くの場合、特定のサイズ範囲の書体に限定された個人的な観察要件を有しうる。公知の方法および装置においては、米国特許第6731326号明細書に開示されているように、調整可能な倍率がカメラと物体との間の距離を変えることによって得られるため、画角が変わる。この公知の構成では、テキストベースの原画像内のフォントサイズが変わるたびに、障害のある読者が手動制御具を操作する必要がある。これは、新聞の見出しと段記事との間に差がある場合によくあることである。
【0003】
特に視覚障害者、多くの場合は高齢者、のために、読み書き用拡大装置上の手動制御具の数、およびこれらを使用する必要性、をできる限り減らすことが望ましいであろう。
【0004】
フォント表示の自動拡大方法として従来技術において唯一公知の方法は、テキストの写真を取り、テキストをスキャンして認識し、このテキストを一度に1単語ずつ、または単語列として、または単語行として表示書式で、および音声で、出力するというものである。この処理方法は、使用が複雑であり、高価であり、時間がかかるという欠点があり、その出力は処理された画像の結果である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
これに対し、本発明の目的は、簡単かつ安価で瞬時に動作する方法および装置である。さらなる目的は、テキストベースの画像を拡大する方法を実施するためのデバイス上のほぼ全てのインタフェースボタンを排除することである。
【0006】
したがって、本発明の1つの目的は、従来技術の欠点のうちの少なくとも1つを克服または改善することである。操作の煩雑さがより軽減され、かつ比較的安価に製造可能な代替構造を提供することも本発明の目的である。あるいは、本発明の目的は、有用な選択肢を大衆に少なくとも提供することである。
【0007】
このため、本発明は、付属の特許請求の範囲に定義されている方法および装置を提供する。本発明によると、全ての設定のカスタマイズは1回行うだけでよい。したがって、カメラの下にあるフォントサイズが如何なるものであっても、ディスプレイ画面に表示すべき所望されたフォントサイズに自動的に拡大される。使用者の基本設定が一旦設定されたら、スキャンされる書体のサイズが変わっても、倍率の調整は必要ない。したがって、本発明による装置は、装置がオンに切り替えられると常に同じ設定を有し、必要な倍率はデバイスによって自動的に調整される。自動近接スイッチを用いることによって、手動オン/オフスイッチでさえも排除しうる。表示されるフォントサイズのほか、コントラスト、明るさ、または色の強調のような他の機能も使用者の要件に合わせて予め規定できる。したがって、本発明は、対象となる画像またはテキストをそのまま直接かつ即座にディスプレイ上の予め設定されたフォントまたは文字サイズに自動拡大する。
【0008】
本発明の別の側面によると、障害のある読者にとっては、テキストベースの原画像の書体モデルまたはフォントより識別しやすい特定モデルの書体またはフォントに書体を変換するオプションが提供されることも好都合であろう。付属の特許請求の範囲の従属請求項および好適な実施形態の詳細な説明には、さらに好都合な実施形態が定義されている。このような好適な実施形態は、以下の添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】物体上の第1のテキストベースの原画像と共に使用されている本発明による装置の概略図である。
【図2】物体上の第2のテキストベースの原画像と共に使用されている本発明による装置の概略図である。
【図3】第1の表示用サイズの設定の概略図である。
【図4】第2の表示用サイズの設定の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1には、書籍3などの物体上のテキストベースの原画像から画像を撮像するために用いられている装置1が見られる。書籍3上のテキスト5は、第1の比較的小さなフォントサイズの「ABC」として表された文字を有する。カメラ7などの撮像デバイスが、テキスト5が印刷された書籍3内のページから画像を撮像している。カメラ7には光学レンズ9が設けられている。カメラ7は、当業者には公知のように、自動焦点制御を有しうる。カメラ7は、適切な有線または無線による第1のデータ伝送接続13によってプロセッサ11にも接続されている。プロセッサ11は、有線または無線による第2のデータ伝送接続17によってディスプレイデバイス15にも接続されている。図2は図1と同じ装置1を示しているが、装置1は書籍3A上の異なるテキストベースの原画像と共に用いられている。書籍3Aは、第2の比較的大きなフォントサイズの「ABC」として表された文字の形態のテキスト5Aを有する。他のあらゆる点において、図2に示されている要素は、図1に示されている要素と同一である。したがって、同じ参照符号が付けられている。図2を図1と比較すると、原画像からの文字、それぞれ5、5A、は、同じ高さ19のフォントサイズでディスプレイデバイス15に表示されている。この高さは、図3および図4を参照してさらに説明するように、手動制御つまみ21の調整によって予め設定できる。
【0011】
図3は、表示されるフォントサイズが文字高さ19になる1つの表示用サイズの設定を示す。手動制御つまみ21が反時計回りに回転されてそのポインタ23が弧状目盛りの第1の表示用サイズ指示25に位置合わせされていることが分かる。図4においては、手動制御つまみ21が時計回りに回転されてポインタ23が弧状目盛りに沿って第2の表示用サイズ指示27に位置合わせされている。この調整により、文字がより大きな文字高さ19Aでディスプレイデバイス15上に表示される。
【0012】
使用時、テキストベースの原画像3を有する物体は、物体支持面(不図示だが従来通り)に設けられる。物体3の上方に、テキスト5を撮像するためのカメラ7が位置付けられる。カメラ7は、レンズ9を通して物体3の少なくとも一部の合焦画像を生成し、カメラ7によって撮像された画像をディスプレイデバイス15上での表示用に指定されたサイズに拡大するために、この画像をプロセッサ11に送る。あるいは、カメラ7の代わりに、スキャナなど別の撮像デバイスを用いてもよい。プロセッサ11において、ディスプレイ15上に表示される、第1のフォントサイズに依存しない、第2の既定の表示用フォントサイズ19、19Aによって制御される倍率への拡大が行われる。
【0013】
本方法は、カメラ7から得られた撮影静止画または連続映像の原画像を第1のフォントサイズに関して分析し、当該画像を撮影静止画または映像の強調表示画像としてディスプレイデバイス15に表示するための倍率を求めるステップをさらに含むことができる。プロセッサは、原テキスト内の文字の縦サイズを判定または測定し、ディスプレイデバイス15上での所望の表示サイズに基づき倍率を調整しうる。
【0014】
さらに、本方法は、撮影静止画または映像の原画像のデジタル化を含んでもよい。デジタル化を用いると、光学式文字認識も可能になる。次に、テキスト画像5、5Aから認識された情報を用いて原画像からのテキストを異なる書体、異なる行間隔、または異なる文字間隔で再生することによってさらに読みやすくすることができる。
【0015】
多くの場合、障害のある読者にとっては、書体をテキストベースの原画像の書体モデルまたはフォントより識別しやすい特定モデルの書体またはフォントに変換する選択肢があることも望ましい。第1のフォントサイズの3倍と第1のフォントサイズの30倍との間で自動的に可変であるように、第2のフォントサイズのための倍率をさらに構成することもできる。第2のフォントサイズは、10mmと150mmとの間の値を有する文字高さ19、19Aに予め選択可能であることが好ましい。コントラスト、明るさ、解像度、および/または色に関する表示パラメータの予選択は、視覚障害のある使用者のために読みやすくするための付加的な特徴として用いうる。テキストの背景に対してテキストの明るさを増すことによって、またはテキストの背景に対してテキストの暗さを増すことによって、複数のフォントを含むテキストベースの原画像5、5Aを表示用に強調することもできる。
【0016】
他の強調として、ネガティブ画像および/またはフォールスカラーが挙げられる。1つの認識された言語から既定の他言語への自動翻訳もプロセッサ11によって実行される動作として含むことができる。グレー階調または色階調のどちらか一方を減少させた表示画像を作成するために、原画像内の色情報を操作してもよい。原画像内の色を表示画像において異なる色にシフトすることによって、色覚異常のための補正を提供することができる。
【0017】
装置1のディスプレイ15は卓上型ディスプレイでもよいが、代わりに眼鏡装着型ディスプレイ(不図示だが従来どおり)の形態を取ることもできる。あらゆる変形例において、ディスプレイは液晶ディスプレイであることが好都合であり、かつ高解像度のグラフィックスアレイディスプレイであることが好ましい。また、ディスプレイデバイス15はワイドスクリーン版であると好都合でありうる。さらに、ディスプレイの位置および/または角度は、少なくとも一部の用途において、観察用に調整可能であることが好ましい。
【0018】
倍率を変えるための手段をプロセッサ11に含めてもよい。プロセッサ11は、自動フォントサイズロガリズムを操作するマイクロプロセッサも含みうる。
【0019】
カメラ7のレンズ9を合焦させるために自動焦点制御が含まれることが好ましい。原画像5、5Aを照明するために、光源などの照明手段を用いると好都合な場合もある。このような照明手段は、図面には示されていないが、全般的には従来どおりであり、当業者には公知である。さらに、装置1、すなわちプロセッサ11、にマイクロフォンを備えることも可能である。プロセッサは、音声認識手段が適切に設けられている場合、第2の既定フォントサイズ19、19Aでディスプレイデバイス15に表示するためのテキストソースを作成できるようになる。
【0020】
本発明による装置は、色付きまたはグレースケールの絵またはイラストを認識するための認識手段を含むとさらに有用である。このような手段は、テキスト認識手段によってもたらすことができる。この手段は、テキストを認識できないと、最大ズームアウトを自動的に開始し、テキスト認識用の高コントラストモードを適切な写真モードにシフトさせる。暗い背景上の明色文字が認識されたときにネガティブ表示モードに切り替わるように、テキスト拡大装置を構成することも可能である。この同じ特徴によって、原テキストがネガティブであるかポジティブであるかに拘らず、黒色の背景に白色文字での表示が所望された場合、そのような表示を使用者に提供することも可能である。
【0021】
本発明の動作および構成は前述の説明から明らかになると考えられる。本発明は、本願明細書に記載の何れの実施形態にも限定されず、当業者の範囲内において変更が可能であり、これらの変更も付属の特許請求の範囲に含まれると見なされるものとする。同様に、あらゆる運動学的逆変換は本来的に開示され、本発明の範囲に含まれるものと見なされる。用語「備える/含む(comprising)は、この明細書または付属の特許請求の範囲で用いられるとき、排他的または網羅的な意味で解釈されるべきではなく、包含的な意味で解釈されるべきである。「〜する手段(means for...)」などの表現は、「〜ために構成された構成要素(component configured for...)」または「〜するように構成された部材(member constructed to...)」として読まれるべきであり、開示された構造の均等物を含むものと解釈されるべきである。「必須の(critical)」、「好ましい(preferred)」、「特に好ましい(especially preferred)」等のような表現の使用は、本発明を限定しようとするものではない。具体的または明示的に説明または請求されていない特徴も、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明による構造にさらに含まれうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変で未確定の第1のサイズのフォントを含む物体上のテキストベースの原画像を第2の既定の表示用サイズに自動的に直接かつ瞬時に拡大する方法であって、
前記テキストベースの原画像を有する前記物体を用意するステップと、
前記物体を撮像するために、前記物体に対して撮像デバイスを位置付けるステップと、
前記物体の少なくとも一部の合焦画像を前記撮像デバイスによって生成するステップと、
前記画像をディスプレイに伝送するステップであって、前記ディスプレイへの表示用の、前記第1のフォントサイズに依存しない、前記第2の既定の表示用フォントサイズによって制御される倍率への拡大が行われるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
連続映像または撮影静止画像の原画像を前記第1のフォントサイズに関して分析し、前記画像を映像または撮影静止画像の強調表示画像として表示するために前記倍率を求めるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記映像または撮影静止画像の原画像のデジタル化ステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
光学式文字認識ステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
異なる書体、異なる行間隔、および異なる文字間隔のうちの少なくとも1つを用いて前記原画像からテキストを再生するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のフォントサイズのための前記倍率は前記第1のフォントサイズの3倍と前記第1のフォントサイズの30倍との間で自動的に可変である、先行請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のフォントサイズは、10mmと150mmとの間の高さ値に予め選択可能である、先行請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
コントラスト、明るさ、解像度、および色のうちの少なくとも1つに関する表示パラメータを予め選択するステップをさらに含む、先行請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記フォントを含むテキストベースの原画像は、背景に対して前記テキストの明るさを増すことおよび背景に対して前記テキストの暗さを増すことの少なくとも一方によって表示用に強調される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1つの認識された言語から別の既定の言語への自動翻訳ステップをさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項11】
グレー階調および色階調の何れか一方を減少させた表示画像を作成するために、前記原画像内の前記色情報が操作される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記原画像内の色を前記表示画像において異なる色にシフトすることによって色覚異常のための補正が提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
原画像がフォントまたは文字を含んでいると認識できない場合に前記撮像デバイスのズームアウトおよび異なるコントラストモードの選択を自動的に開始する、先行請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
第1の可変サイズのフォントを含む物体上のテキストベースの原画像を第2の既定の表示用サイズに自動的に拡大するための装置であって、
物体支持面と、
撮像デバイスと、
前記撮像デバイスを前記物体支持面に対して位置付けて支持するための支持体と、
前記拡大画像を表示するためのディスプレイと、
前記撮像デバイスによって撮像された画像を前記ディスプレイに伝送し拡大するためのプロセッサであって、前記ディスプレイへの表示用の、前記第1のフォントサイズに依存しない、前記第2の既定の表示用サイズに応じて前記倍率を変化させる手段を含むプロセッサと、
を備えた装置。
【請求項15】
前記ディスプレイは卓上型ディスプレイである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ディスプレイは眼鏡装着型ディスプレイである、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記ディスプレイは液晶ディスプレイである、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記ディスプレイは高解像度のグラフィックスアレイディスプレイである、先行請求項14乃至17の何れか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記ディスプレイはワイドスクリーン版である、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記ディスプレイは観察用に調整可能である、先行請求項14乃至19の何れか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記倍率を変えるための前記手段は自動フォントサイズアルゴリズムを操作するマイクロプロセッサを含む、先行請求項14乃至20の何れか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記撮像デバイスはカメラであり、前記カメラに用いられているレンズを合焦させるために自動焦点制御をさらに含む、先行請求項14乃至21の何れか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記原画像を照明するために照明手段、好ましくは光源、をさらに含む、先行請求項14乃至22の何れか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサに接続されたマイクロフォンと、前記第2の既定フォントサイズで表示するためのテキストソースを作成できる音声認識手段とをさらに含む、先行請求項14乃至23の何れか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記原画像内にテキストを認識できない場合に前記撮像デバイスのズームモードおよびコントラストモードを変更する手段をさらに含む、先行請求項14乃至24の何れか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−524584(P2011−524584A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514516(P2011−514516)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050351
【国際公開番号】WO2009/154451
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(508202566)
【氏名又は名称原語表記】OPTELEC DEVELOPMENT B.V.
【住所又は居所原語表記】Breslau 4, 2993 LT Barendrecht, The Netherlands
【Fターム(参考)】