物体の外縁端だけを検出し、その外縁端が1つの大きな物体を規定すると想定するデータ収集アルゴリズムを用いて、タッチパッド上において多数の物体を検出し追跡する方法
タッチパッドまたはタッチスクリーン上において多数の物体を検出し追跡するシステムおよび方法において、この方法は新たなデータ収集アルゴリズムを提供する。この方法は、検出および追跡アルゴリズムを実行するプロセッサにかかる計算の負担を軽減する。多数の物体は、別個の物体ではなく、1つの物体の要素として扱われる。これらの物体の位置は、2つの物体が検出されたときには、終点として扱われ、2つよりも多い物体が検出されたときには周囲または境界として扱われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
本文書は、2007年11月9日に出願され出願番号が第60/986,867号である仮特許出願(代理人整理番号4086,CIRQ.PR)、および2008年5月22日に出願され出願番号が第61/128,530号である、仮特許出願(代理人整理番号4268.CIRQ.PR)の優先権を主張し、これらに含まれる主題の全ては、これらの仮特許出願をここで引用したことにより、本願にも含まれるものとする。
発明の分野
本発明は、一般に、タッチパッドに入力を供給する方法に関する。具体的には、本発明は、接触感応面上において多数の物体を、1つの物体として検出し追跡する方法に関し、多数の物体を1つの物体として扱い、これら多数の物体が1つの物体の周囲または終点を規定することとして、検出および追跡アルゴリズムを簡素化しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器の利用範囲が広がるにつれて、これらを効率的に制御する必要性が増々重要になりつつある。接触感応面をユーザ入力を供給する手段として用いることによって便益が得られる広範囲の電子デバイスには、音楽プレーヤ、DVDプレーヤ、ビデオ・ファイル・プレーヤ、パーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)、ディジタル・カメラおよびカムコーダ、移動体電話機、ラップトップおよびノートブック型コンピュータ、汎地球測地衛星(GPS)デバイス、ならびに多くの異なる携帯用デバイスが含まれるが、これらに限定されると見なしてはならない。デスクトップ・コンピュータのような据置型電子機器でさえも、高機能化をユーザに提供するタッチパッドに入力を供給するシステムおよび方法の改良を利用することができる。
【0003】
多くの携帯用電子機器が有する主な問題の1つに、それら自体のサイズのために、機器との通信を可能にする方法の数が限られることが挙げられる。可搬性が重要な特徴である場合、インターフェースに利用可能な空間は非常に限定されるのが通例である。例えば、スマート・フォンと呼ばれることも多い移動体電話機は、今では電話機およびパーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)の機能を提供している。通例、PDAは、実用的となるためには、入力および表示画面にかなりの量の表面積を必要とする。
【0004】
移動体電話機の市場に最近参入した製品に、接触感応画面能力を有するLCDがある。スマート・フォンが可搬型であることのために、表示画面空間に利用可能な空間量が有限であるため、表示されているデータの相対的なサイズを拡大および縮小する手段が生み出された。更に具体的に、通常に近い解像度で表示すると、通常の1枚の紙とほぼ同じサイズを満たすデータのページについて考える。このデータのページ全体を表示画面上に示すことができるが、典型的な1枚の紙のサイズに比較して、表示画面の物理的寸法が小さいために、著しく縮小したサイズとなる。ここで問題となったのは、いかにして使用可能なサイズでデータをページ上に表示するかということである。その解決策は、ページの小さな一部ずつ拡大することであった。つまり、一度に見ることができるのは、ページ全体の一部だけであった。その効果は、ページの一部を徐々に大きくする(zoom in)こと、または拡大することであった。そのために、ページ全体を一度に見られないという妥協を余儀なくされる。したがって、ユーザは、ページの異なる部分が表出するように、ページ上でデータを移動させる、即ち、「ドラッグする」必要がある。
【0005】
このように、画面全体が見えるようにウェブ・ページ全体を表示するが、表示画面の物理的サイズが各辺数インチでしかない場合について考える。このページ上のデータは、このような小さいサイズでは判読できない。ユーザは、ページの一部を選択して拡大することになる。ページ上のデータが大きくなればなる程、そのページの外縁は表示画面の境界を超えて消失するのは必至である。次いで、ユーザは表示画面上で指をドラッグすることにより、表示画面上で見ることができるページの部分を変える。それに応じて、以前は隠れていたページの部分が見られるようになると共に、他の部分が隠されることになる。
【0006】
タッチスクリーンまたはタッチパッド上においてページの拡大および縮小を実行するために行うことができる動きの1つに、挟み合わせ動作(pinching motion)またはその逆がある。例えば、ページを拡大するためにズーム動作を実行するには、ユーザは、親指および人差し指が接触するまで、これらを近付け、次いで親指および人差し指の一方側が接触感応面と接触するように親指および人差し指を接触感応面上に置く。次いで、ユーザは、接触感応面との接触を維持しつつ、親指および人差し指を互いに離れるように広げることが必須である。親指および人差し指が離れるように移動する限り、表示画面上のページの倍率は増大する。同様に、表示画面上におけるページの倍率は、単に接触感応面との接触を維持しつつ親指および人差し指の間を狭めることによって、逆の動作となる。ユーザは、この挟み合わせ動作および引き離し動作(reverse pinching motion)を繰り返し行うことにより、倍率が増大および減少して、ページを拡大または縮小させることができる。
【0007】
ところが、タッチパッド面上で親指および人差し指の検出および追跡を行うための、従来より周知の方法の1つでは、親指および人差し指(または、挟むおよび離すために用いられるあらゆる指)を接触感応面上における別個の物体として検出し追跡する。多数の物体の追跡は、1つの物体について実行する計算を、物体毎に行わなければならないことを意味する。つまり、いずれのタッチパッド・プロセッサにおいても、追跡している指またはポインティング・デバイス(以後、相互交換可能に用いる)毎に、計算の負担が著しく増大する。
【0008】
タッチパッドまたはタッチスクリーン(以後、タッチパッドと呼ぶ)のような接触感応面上において多数の物体を検出および追跡するプロセスを簡略化することができれば、先行技術に対する改善となろう。タッチパッドまたはタッチスクリーンのような接触感応面上における多数の物体の検出および追跡のプロセスを簡略化することができれば、先行技術に対する改善となろう。
【0009】
本発明において用いることができるタッチパッドおよびタッチスクリーンの一実施形態について説明することは有用である。具体的には、本発明を実現するために、CIRQUE(登録商標)社の容量感応タッチパッドおよびタッチスクリーン技術を用いることができる。CIRQUE(登録商標)社のタッチパッドは、相互容量検知デバイスであり、一例を図1に示す。このタッチパッドは、不透明面を用いてまたは透過面を用いて実現することができる。つまり、このタッチパッドは、従来のタッチパッドのように動作させることができ、または表示画面上の接触感応面として、つまりタッチ・スクリーンとしても動作させることができる。
【0010】
このCIRQUE(登録商標)社のタッチパッドでは、行および列電極の格子を用いて、タッチパッドのタッチ感応区域を定める。通例、タッチパッドは約16個×12個の電極、または空間に制約がある場合は8個×6個の電極からなる矩形格子である。これらの行および列電極の内部または周囲には、1つの検知電極が織りまぜられている。全ての位置測定は、検知電極を通じて行われる。しかしながら、行および列電極は、検知電極としても作用することができるので、重要な側面は、少なくとも1つの電極が信号を駆動し、他の電極が信号の検出に用いられることである。
【0011】
更に詳細には、図1は、CIRQUE(登録商標)社が教示する容量検知タッチパッド10を示し、タッチパッド電極格子の中に行(12)および列(14)(即ち、XおよびY)電極の格子を含む。タッチパッド・パラメータの測定値は全て、タッチパッドの電極格子上に配置されている1つの検知電極16によって取り込まれるのであり、XまたはY電極12、14によってではない。測定には、固定の基準点は用いられない。タッチパッド・センサ制御回路20が、P、N発生器22、24から信号(正および負)を発生し、これらの信号は直接XおよびY電極12、14に種々のパターンで送られる。したがって、タッチパッド電極格子上の電極数と、タッチ・センサ制御回路20上の駆動ピンの数との間には、1対1の対応があるのが通例である。しかしながら、この構成は、電極の多重化を用いて変更することができる。
【0012】
タッチパッド10は、タッチパッド表面上またはその近傍における指(またはその他の容量性物体)の場所を決定する際に、絶対容量測定に依存しない。タッチパッド10は、検知ライン16に対する電荷の不均衡を測定する。タッチパッド10上に指示物体がない場合、タッチ・センサ制御回路20は均衡状態にあり、検知ライン16上には信号がない。電極12、14上には容量性電荷があってもなくてもよい。CIRQUE(登録商標)社の方法では、これは無関係である。ポインティング・デバイスが容量性結合のために不均衡を生ずると、タッチパッド電極格子を構成する複数の電極12、14上で容量変化が発生する。測定するのは容量変化であって、電極12、14上における絶対容量値ではない。タッチパッド10は、容量変化を判定する際、検知ライン上において均衡を再確立即ち再現するために、検知ライン16に注入しなければならない電荷量を測定する。
【0013】
タッチパッド10は、指のような指示物体の位置を判定するために、X電極12およびY電極14について2回の完全な測定サイクル(4回の完全な測定)を実行しなければならない。X12およびY14電極双方について、ステップは次の通りである。
【0014】
最初に、P、N発生器22からの第1信号によって、電極の一群(例えば、X電極12の選択群)を駆動し、相互容量測定デバイス26を用いた第1測定を行って最も大きな信号の場所を判定する。しかしながら、この1回の測定からは、この最大信号に対して指が最も近い電極の一方側にあるのかまたは他方側にあるのか、知ることができない。
【0015】
次に、最も近い電極の一方側に電極1つだけずらして、再度電極の一群を信号によって駆動する。言い換えると、電極群の一方側に隣接する電極を追加する一方で、もはや元の電極群の逆側にある電極を駆動しない。
【0016】
第3に、新しい一群の電極を駆動し、第2測定を行う。
最後に、測定した2つの信号の大きさを比較する方程式を用いて、指の場所を判定する。
【0017】
このように、タッチパッド10は、指の場所を判定するために、容量変化を測定する。前述したこのハードウェアおよび方法の全ては、タッチ・センサ制御回路20がタッチパッド10の電極12、14を直接駆動することを想定している。つまり、典型的な12×16電極格子のタッチパッドでは、タッチ・センサ回路20から合計28本のピン(12+16=28)が利用可能であり、これらを用いて電極格子の電極12、14を駆動する。
【0018】
CIRQUE(登録商標)社のタッチパッドの感度または分解能は、16×12格子の行および列電極が含意するよりも遥かに高い。分解能は、通例、1インチ当たり約960カウント以上である。正確な分解能は、構成素子の感度、同じ行および列上にある電極間の間隔、そして本発明にとっては重要でないその他の要因によって決定される。
【0019】
前述したCIRQUE(登録商標)社のタッチパッドは、XおよびY電極の格子、ならびに別個の単独検知電極を用いるが、多重化を用いることによって、検知電極もXまたはY電極にすることができる。いずれの設計も、本発明が機能することを可能にする。
【0020】
CIRQUE(登録商標)社のタッチパッドの基盤技術は、容量センサを基本とする。しかしながら、本発明には他のタッチパッド技術も用いることができる。これら他の近接感応および接触感応タッチパッド技術には、電磁、誘導、圧力検知、静電、超音波、光、抵抗性メンブレーン、半導電性メンブレーン、あるいはその他の指またはスタイラス感応技術が含まれる。
【0021】
先行技術は、タッチパッド上にある多数のオブジェクトの検出および追跡が既に可能であるタッチパッドの記載を含む。この先行技術の特許は、タッチバッドが、当該タッチパッド上のどこででも個々の物体を検出し追跡することを教示し、これを特許請求している。この特許は、ポインティング・デバイスの存在および位置を示す曲線としてグラフ化された信号上において、物体が「極大値」として現れるようにするシステムについて記載する。このため、信号グラフの下位部分となる「極小値」もあり、これは指示物体が検出されていないことを示す。
【0022】
図2は、第1極大値30、第1極小値32、および第2極大値34の概念を示すグラフであり、タッチパッド上においてギャップを挟んだ2つの物体の検出結果である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この先行技術は、複数の物体を常に別個の個別物体として追跡しており、その結果、各物体がタッチパッド中を移動するにしたがって、これに追従しなければならない。
タッチパッド面上に物体がいくつあるかシステムが判定する必要なく、それでもなおそれらの存在を確認することができる、新たな検出および追跡方法を提供することができれば、先行技術に対する利点となろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
好適な実施形態では、本発明は、タッチパッドまたはタッチスクリーン上において多数の物体を検出し追跡するシステムおよび方法である。この方法は、新たなデータ収集アルゴリズムを提供する。この方法は、検出および追跡アルゴリズムを実行するプロセッサにかかる計算の負担を軽減する。多数の物体は、別個の物体ではなく、1つの物体の要素として扱われる。これらの物体の位置は、2つの物体が検出されたときには、終点として扱われ、2つよりも多い物体が検出されたときには周囲または境界として扱われる。
【0025】
本発明の第1の態様では、既存のタッチパッドおよびタッチスクリーン(以後まとめて「タッチパッド」と呼ぶ)のハードウェアおよび走査ルーチンを、この新たな分析アルゴリズムと共に用いることができる。
【0026】
本発明の第2の態様では、前述の新たな分析アルゴリズムは、ハードウェアの変更なく、ファームウェアで実装することができる。
第3の態様では、タッチパッドは、通常の走査手順を実行して、タッチパッド上にある全ての電極からデータを入手する。タッチパッドの外縁端において開始し、次いで内側に移動しながら物体を探すことによって、データを分析する。物体の縁端がデータの中で検出されたときに、データ分析は終了する。次いで、最初の外縁端と対向する外縁端即ち境界上において分析を開始し、次いで内側に進んで行く。この場合も、物体の縁端がデータの中で検出されたときに、データ分析は終了する。次いで、直交する向き(dimension)にこのプロセスを繰り返す。つまり、最初の境界がタッチパッドの横方向の両境界である場合、縦方向の両境界を用いて分析を開始する。分析は、各方向から最初の物体の縁端を越えてタッチパッド上で検出されたものを捕らえることはない。つまり、タッチパッドは、当該タッチパッド上にある物体の総数を判定することはなく、4つの方向からの物体の縁端以外は何も計算する必要がなく、こうすることによってタッチパッド・プロセッサにかかる計算オーバーヘッドを大幅に軽減する。
【0027】
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴、利点、ならびに代替的態様は、添付図面と組み合わせて以下の詳細な説明を検討することから、当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、CIRQUE(登録商標)社によって製造され、本発明の原理にしたがって動作することができる、容量感応タッチパッドの構成素子のブロック図である。
【図2】図2は、先行技術によって教示されたタッチパッド上における2つの物体の検出を示すグラフである。
【図3】図3は、ユーザの手が、親指および人差し指でタッチパッドの表面に接触していることを示す、本発明のタッチパッドの上面図である。
【図4】図4は、親指および人差し指が接触しているときに、タッチパッドが1つの物体を捕らえていることを示す、タッチパッドの上面図である。
【図5】図5は、親指および人差し指が離れているときに、タッチパッドは2つの物体を捕らえているが、1つの物体として扱われていることを示す、タッチパッドの上面図である。
【図6】図6は、3本以上の指がタッチパッドと接触しているときに、タッチパッドは多数の物体を捕らえているが、なおも1つの物体として扱われていることを示す、タッチパッドの上面図である。
【図7】図7は、多数の物体を回転させたときに、これら多数の物体を1つの大きな物体として追跡できることを示す、タッチパッドの上面図である。
【図8】図8は、親指および人差し指が広がっておりタッチパッドの表面に接触しているユーザの手を示す、本発明のタッチパッドの上面図である。
【図9A】図9Aは、本発明の原理にしたがって動作する、簡略化した新たなデータ収集アルゴリズムを示す、本発明のタッチパッドの上面図である。
【図9B】図9Bは、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムの結果を示すグラフである。
【図10】図10は、2つの指示物体の外境界を表す四辺形の輪郭を示す、タッチパッドの上面図である。
【図11】図11は、各指示物体が他のいずれよりもタッチパッドの少なくとも1つの縁端に近いときに、新たな分析アルゴズムはどのように3つの指示物体を捕らえることができるかを示す、タッチパッドの上面図である。
【図12】図12は、四辺形のどの角に、検出した物体が実際に位置しているかを知ることは可能でないことを示す、タッチパッドの上面図である。
【図13】図13は、外側にある指示物体の境界の中にいくつの指示物体があるかを判断できない事実を示すタッチパッドの上面図である。
【図14】図14は、同様に本発明の新たな分析アルゴリズムと共に用いることができる一次元タッチスクリプトの上面図である。
【図15】図15は、物体から物体に移動する形状当てはめ境界と四辺形の境界を置き換えた、本発明の代替実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
これより、本発明の種々の要素に参照番号が与えられた図面を参照する。この図面において、当業者が本発明を実施し使用することを可能にするように本発明について論ずる。尚、以下の説明は本発明の原理の一例に過ぎず、以下に続く特許請求の範囲を狭めるように見なしてはならないことは言うまでもない。
【0030】
本発明の実施形態について説明する前に、本発明のタッチパッド・ハードウェアがタッチパッド電極の全てを走査することを理解するのは重要なことである。CIRQUE(登録商標)社のタッチパッドは、先行技術の図2に示されるのと同じ生データを常に収集することができる。更に、タッチパッドの電極を走査する仕方は、本特許の要素ではない。本発明において用いられるCIRQUE(登録商標)社のタッチパッドは、電極を、同時にではなく、グループ単位で順次走査することにおいて、独特であると思われる。しかしながら、本発明に関連するのは、どのようにしてタッチパッドの電極からデータを収集するのかではなく、むしろどのようにそのデータを用い分析するかである。新たなデータ収集アルゴリズムの重要性は、以下の開示によって明らかとなろう。
【0031】
図3は、本発明の原理にしたがって作られたタッチパッド10の上面図として示す。タッチパッド10は、多数の物体を同時に検出し追跡することができる。親指36および人差し指38同士を突き合わせて、タッチパッド10上のいずれかの位置に置いた場合を考える。親指36および人差し指38の組み合わせが、タッチパッド10によって1つの物体として見られることは、あり得ることである。このようなことが生ずる可能性があるのは、タッチパッド10に向けて押し付けたときに、親指36および人差し指38の組織が変形し、それらの間に本質的に隙間を残さない程強く突き合わされる可能性があるからである。通常の検出アルゴリズムは、1つの物体を検出するときにそれが現在動作するように動作する。即ち、検出した物体について、中心点即ち重心を決定する。この重心は、タッチパネル10上において検出された物体の位置であると見なされる。
【0032】
図4は、タッチパッド10上の親指36および人差し指38の位置において、タッチパッド10が検出し得るものの上面図である。例えば、タッチパッド10は、中心点42の位置がクロスヘアー(crosshair)で示された、不規則であるがほぼ円形の輪郭40を検出する可能性がある。物体40は近似に過ぎず、タッチパッド10が検出するものの正確な表現と見なしてはならない。理解すべき重要なことは、全体的に1つの物体だけが検出されるということである。
【0033】
親指36および人差し指38を引き離すように引き離し動作で移動させると、タッチパッド10は2つの別個の物体を検出することができる。タッチパッドは、多数の物体の初期発現以来これらを検出することができるが、タッチパッド表面上における1つよりも多い物体の検出および追跡は常に望ましくないことと見なされているので、検出した物体の内1つを無視しつつ、所望の物体の位置を追跡し続けるようにアルゴリズムが実現されている。どの物体を追跡すべきかについての決定を変更できることは明らかである。しかしながら、先行技術においては、最も大きい物体を追跡し、それよりも小さい物体を無視することが慣例であった。とは言え、これは任意の決定であり、最初に検出する物体だけを追跡するというような、どの物体を追跡すべきか選択する他の何らかの手段を用いることもできる。
【0034】
本発明は、多数の物体の検出および追跡をどのように扱うかということに関する新たな方法である。本質的に、2つの異なる想定場面がある。第1の想定場面は、2つの物体だけが検出されたときに生ずる。第2の想定場面は、2つよりも多い物体が検出されたときに生ずる。
【0035】
第1の想定場面の一例の図を図5に示す。図5は、親指36および人差し指38が離れている場合、親指および人差し指がタッチパッド10に対して横に並んでいるときに、タッチパッド10が何を検出することができるかを示す。図5は、2つの物体36、38が検出されていることを示し、各物体は、それぞれ、クロスヘアーで示すようにそれら自体の重心46、48を有する。本発明の方法は2つの物体36、38からのデータをどのように用いるかを例示するために、点線44が示されている。点線44は、本発明の方法が2つの物体36、38を1つの大きな物体として扱うことを示すために用いられている。この1つの物体は細長く、したがって2つの終点46、48を有するように見える。
【0036】
図5に示すように、親指36および人差し指38を移動させて引き離すと、本発明の方法は、タッチパッド10上における更に大きな1つの物体として、その物体を扱う。同様に、親指36および人差し指38を互いに近付けるように移動させると、本方法は、親指および人差し指が接触しているか否かには拘わらず、タッチパッド10上において更に小さな物体を見ることになる。1つの物体を追跡するために必要とされるアルゴリズムは、その物体が大きくてもまたは小さくても、その方法が1つの物体のみを追跡しつつ、意図的に第2の物体を無視しなければならない場合よりも簡単であることを強調しておく。
【0037】
第1実施形態を簡潔に述べると、本発明は、2つの物体がタッチパネル10上に実際に存在することを認識するが、第1実施形態のデータ収集アルゴリズムは、2つの物体が1つの物体であるかのように、これらを扱う。
【0038】
尚、この1つの大きな物体を検出するという想定場面は、手のひらがタッチパッド10上に置かれたときにも起こることは、認められてしかるべきである。実際、1つの大きな物体が検出されたときの状況を扱うアルゴリズムを開発するのが通例である。1つの典型的な想定場面では、ユーザが意図せずに手のひらをタッチパッド上に載せたのであって、接触するつもりではなかったと想定して、大きな物体を無視する。
【0039】
手のひらの手首に接する部分がタッチパッド10上に置かれている場合を考える。手首に接する部分は、比較的小さく、1つの物体である。ここで、手のひらがより多くタッチパッド10と接触するように手のひらを前方に揺すると、手のひらが大きくなるが、なおも1つの物体であり、タッチパッド10には1つの物体として見える。このように、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムは、1つの大きな物体が検出されたときも、2つの物体が検出されたときも同じ機能を果たす。第1実施形態は、複数の接触点を捕らえて、これらが手のひらのような1つの物体で形成されていても、または親指36および人差し指38のような2つの以上の物体で形成されていても、これらを1つの大きな物体の外縁端として扱うようにプログラミングされている。尚、親指36および人差し指38は、ユーザの1つの手の内いずれの2本の指であっても、または2つの異なる手の指であっても可能である。
【0040】
本発明の第1実施形態は、本質的に、2つよりも多い物体がタッチパッド10上で検出されたときと同様に動作する。終点を捕らえる代わりに、本発明は、1つの大きな物体の周囲または境界を示す物体を捕らえる。つまり、1つの大きな物体の重心は、本アルゴリズムによって判断される周囲の中心となることもできる。
【0041】
ここで、図6において、2つよりも多い物体がタッチパッド10と接触している想定場面を示す。第2実施形態では、タッチパッド10は、多数の接触点の重心を用いるようにプログラミングされている。これらの重心は、これらが手の平のような1つの物体で形成されていても、または親指36、人差し指38、および少なくとも1本の別の指のような多数の物体で形成されていても、1つの大きな物体の外縁端となる。尚、親指36および人差し指38は、ユーザの手の他のいずれの指とでも置き換えることができ、あるいは異なる手の指とでさえも置き換えることができることは明白なはずである。
【0042】
つまり、図6では、この場合3つの物体36、38および50が検出される。点線46は、検出された物体を1つの物体の周囲として用いることによって、物体のサイズが決定されることを示すために用いられる。
【0043】
この場合、タッチパッド10が多数の物体を1つの物体として扱うことができると判断したが、この情報は、表示画面上に示されているページのデータを拡大(zoom in)および縮小(zoom out)するための前述した動作を実行するために、本発明によって用いることができる。
【0044】
2つの物体が検出された想定場面では、親指36および人差し指38が引き離し動作(action)を実行している場合、1つの物体が拡大しつつあると判断する。物体が拡大しつつあると判断した場合、ズーム・イン機能が実行されていれば、表示画面上の画像を拡大する。同様に、親指36および人差し指38が挟み合わせ動作(action)を実行している場合、1つの物体のサイズが縮小していると判断する。物体のサイズ縮小に応答して、表示画面上の画像の倍率を下げ、こうしてユーザはページを縮小する。
【0045】
本発明は、2つ以上の物体がタッチパッド10上で検出されたときも同じ動作を行う。物体のサイズが増大していると判断した場合、倍率を高めて、表示画面上に表示されているデータを拡大する。物体のサイズが縮小していると判断した場合、倍率を下げて、より多くのデータを示すように表示画面を縮小(zoom out)する。以下に、新たなデータ収集アルゴリズムの使用を例示する他の例について説明する。
【0046】
本発明の別の態様では、タッチパッド10上における大きな物体の回転を検出できる。多数の物体がタッチパッド10と接触している図7について検討する。この例では、5つの物体がタッチパッドに接触している。これら5つの物体は、例えば、4本の指60および親指62の先端とすることができる。これらよりも多い物体、または少ない物体も用いることができる。重要なのは、5つの物体がここでは回転するということである。この大まかな円運動は、何らかの形式のコマンドと解釈することができる。例えば、時計回り方向の回転64は、リストを下にスクロールすることと解釈することができ、反時計回り方向の回転66は、リストを上にスクロールすることと解釈することができる。実際に行われる機能は重要ではない。重要なのは、本発明の実施形態が、ある機能を実行できるように、回転方向の判断を可能にすることである。
【0047】
記載した本発明の実施形態の全てにおいて、タッチパッド10上にある多数の物体によって定められる境界の縁端を発見するために、新たなデータ収集アルゴリズムが用いられることを述べた。つまり、第1の物体がタッチパッド10上で検出されたとき、既存の検出および追跡方法が通常通りに動作する。しかし、物体のサイズまたは形状が変化したように見えたとき、または第2の物体およびそれ以上の物体が検出されたとき、新たなデータ収集アルゴリズムを実施する。
【0048】
図8において、タッチパッド10上に2つの物体が置かれている。これら2つの物体は、ユーザの右手の親指36および人差し指38である。タッチパッド10上における物体36、38の着地(touchdown)は同時でない場合もあり、その場合タッチパッドは、単一物体検出および追跡アルゴリズムを実行する可能性が最も高いか、またはその実行を開始させている。単一物体検出アルゴリズムでは、四分儀を特定し、物体が位置する四分儀内の位置を特定するために、広く狭い走査アルゴリズムが用いられる。
【0049】
一旦四分儀を特定したなら、狭域走査アルゴリズムを実行するが、物体が検出された四分儀内のみで実行する。しかしながら、第2の物体が検出された場合、本発明の新たな分析アルゴリズムを優先し、単一物体アルゴリズムを補助とする。
【0050】
本発明の新たなデータ収集アルゴリズムでは、矩形を形成する4つの辺を有すると想定されるタッチパッド10上において分析を行う。尚、本発明はこの形状に限定されるのではなく、本発明はそのように限定されると考えてはならないことは、明白なはずである。重要なのは、外縁端の数に拘わらず、データ収集アルゴリズムが外縁端において開始し、タッチパッドを横切って進むことである。
【0051】
例示だけを目的として、タッチパッド10が4つの辺を有すると仮定する。典型的な矩形タッチパッド10におけるX電極アレイおよびY電極アレイの走査によって、データが発生する。
【0052】
電極アレイから、そして電極アレイのいずれの縁端または境界からでも、データの分析を開始することができる。4つの辺を有するタッチパッド10では、その外縁端の双方から各電極アレイを分析するために、合計で4回の分析を実行し、物体が検出されるまで、対向する縁端に向かってタッチパッドを横切って進む。
【0053】
図9Aでは、XおよびY電極アレイから取り込んだデータ集合について検討する。X電極アレイの第1縁端70(任意に選択した)から収集したデータの分析は、物体36が点線80において検出されるまで、矢印72で示すように内側に、即ち、アレイを横切るように進む。検出される物体の部分は、通例、その物体の縁端だけである。次いで、第1縁端に対向する縁端、即ち、縁端74から、X電極アレイについて収集したデータの分析を繰り返す。矢印76の方向に移動して、物体38の縁端が点線82において検出されると直ぐに、分析は停止する。2つの物体36、38が1本の垂直線上にある場合、検出された物体は同じ物体である可能性があるが、この例では、第2の物体38がある。X電極アレイからのデータの収集は完了する。
【0054】
次いで、Y電極アレイから取り込んだデータ集合についての分析を開始する。X電極アレイと同様、2つの外縁端90、92から、矢印94および96の方向に移動して、それぞれ、物体の縁端が検出されるまで分析を行う。つまり、走査データ一通りの完全な分析には、4回の別個の走査動作が必要となる。この分析は、1つよりも多い物体がタッチパッド10によって検出される限り、繰り返し行われる。
【0055】
殆どのタッチパッドは、四辺形または円形のいずれかである。四辺形として構成されている場合、新たなデータ収集アルゴリズムは、4つの縁端全てから、タッチパッドを横切って内側に進んで、走査データを評価する。本発明のタッチパッド・ハードウェアは、一度に1つの縁端のみからしか、新たなデータ収集アルゴリズムを実行することができない。しかしながら、本発明は、4つの外縁端から同時に新たなデータ収集アルゴリズムを実行する概念も含む。
【0056】
タッチパッド10が円形またはその他の何らかの楕円形として構成されている場合、新たなデータ収集アルゴリズムを用いることができるのは、四辺形XY電極格子を用いてこれを円形に切断してタッチパッドを作成した場合、または実際のXY電極格子は四辺形であっても、円形のオーバーレイをその上に重ね合わせてタッチパッドを作成した場合に限られる。理解すべきことは、新たなデータ収集アルゴリズムはいずれのタッチパッドの形状にも適応できることである。
【0057】
代替実施形態では、真円、環のような、更に高度な形状でも、新たなデータ収集アルゴリズムを用いることができる。分析は、常に、外縁端からタッチパッドの対向する区域即ち内側の区域に向かって実行するとよい。
【0058】
図9Aは、タッチパッド10の上面図を調べることによって得られた、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムの結果を示す。タッチパッド10上において親指36が接触している位置を示すために、円が用いられている。以後、円は、タッチパッド10と接触している指示物体の位置に相当するものとする。同様に、タッチパッド10上において指38が接触している位置を示すために、異なる円が用いられている。
【0059】
新たなデータ収集アルゴリズムを実行するために、タッチパッドは、電極を纏めて集合体を作る。タッチパッド10の左縁端70からデータを集めて、点線80で示すように、円36に到達したときに収集は停止する。データ収集ステップは、タッチパッド10の右縁端74からデータを収集し、点線82で示すように、円38に達したときに停止する。同様に、タッチパッド10の上縁端90からデータを収集し、点線84で示すように、円38に達したときにデータ収集は停止する。最後に、タッチパッド10の下縁端92からデータを収集し、点線86で示すように、円36に達したときにデータ収集は停止する。以上のデータ収集シーケンスは、例示を目的とするに過ぎず、限定と見なしてはならない。つまり、データはいずれの縁端から始めても、収集することができる。
【0060】
本発明の他の重要な態様は、いずれかの物体の縁端が検出されると直ぐにデータ収集が停止することである。外境界のみを決定するので、データ収集を停止することにより、データ収集アルゴリズムの速度の大幅な上昇をもたらす。物体の一方または双方がタッチパッド10の外縁端付近にある場合、データ収集は比較的素早く行われる。何故なら、データ収集は各物体の縁端において停止するからである。
【0061】
図9Bは、本発明のタッチパッド10によって収集された生走査データのグラフであり、先行技術の図2のグラフに相当する。タッチパッドは、タッチパッド10の外縁端から、物体を検出するまでデータを収集する。尚、検出された物体36、38の外縁端66、68間にあるいずれの物体についても、データは得られないことを注意しておく。新たなデータ収集アルゴリズムには、検出された物体は1つの大きな物体のように見える。何故なら、一旦物体36、38の外縁端が検出されたなら、情報が得られなくなるからである。このアルゴリズムは、外縁端66および68間のギャップ内にデータをありのままに満たすことを選択してもよいが、その必要はない。
【0062】
図10は、タッチパッド10の上面図である。ボックス100は、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムを用いて検出されたオブジェクトの形状を示す。この実施形態では、新たなデータ収集アルゴリズムによって結果的に生成された形状は、四辺形のように見え、その対向する辺は平行となっている。つまり、形状は常に矩形であり、辺の寸法のみが異なる。
【0063】
図11に示す代替実施形態において、タッチパッド10上に示されている3つの物体102、104、および106について考える。本発明の収集アルゴリズムは、輪郭108によって示されるように、境界を作成する。輪郭108は、3つの物体102、104、および106によって作られ、図9Aでは同じ形状のボックスが2つの物体36および38のみを用いて作られている。
【0064】
本発明の新たなデータ収集アルゴリズムについて、直ちには明らかにはならないが重要な注目点がいくつかある。
図12は、四辺形110を示すタッチパッド10の上面図である。この四辺形の角には4つの円がある。これらの円は、四辺形110を作ることができる、異なる2対の物体を表す。つまり、円112は1対の物体を表し、円114は第2の対の物体を表す。本発明は、タッチバッドのユーザに、どの対の物体がタッチパッド10上にあるか分からせるデータを発生しない。タッチパッドに対する分析を行うタッチパッド・プロセッサは、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムを用いて、どんな物体があるか判断することができない。
【0065】
代替実施形態では、本発明は、四辺形のどの角に物体が実際に配置されているか検出することができる分析を実行する。
有利なこととして、この情報を有用に用いるためには、どの対の物体があるのかを知る必要がないことがあげられる。例えば、四辺形110の全体的なサイズが縮小している場合、タッチパッド10上にある指示物体の一方または双方が互いに向かって移動している。例えば、双方の指示物体は挟み合わせ動作で移動することができ、あるいは一方の指示物体は静止したままでいて、他方の物体がそれに向かって移動することができる。
【0066】
本発明の別の注目点は、本発明の検出および追跡アルゴリズムを用いると、2つよりも多い物体を捕らえることができる場合とできない場合があることである。例えば、図13は、円120、122、および124を含むタッチパッド10の上面図である。中央の指示物体122は、新たなデータ収集アルゴリズムには捕らえられない。何故なら、指示物体を検出するアルゴリズムは、円120および124で示された物体に達したときに停止するからである。つまり、円122は、四辺形126の境界内に完全に納まっており、データ収集アルゴリズムには全く捕らえられないである。
【0067】
対照的に、図11は、3つの指示物体102、104、および106の異なる配置を示す。このように配置されると、3つの円全てが新たなデータ収集アルゴリズムには見えるようになる。四辺形108は、データ収集アルゴリズムが3つの円102、104、および106の各々に達することを示す。したがって、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムは、これらの円の各々が、他の円のいずれよりも、タッチパッド10の少なくとも1つの縁端の近くにある限り、3つの円全てを検出することができる。
【0068】
図14は、本発明の代替実施形態として提示する。本発明の特殊事例の1つは、一次元において動作するタッチパッドに適用することができる。このようなタッチパッドは、タッチストリップ(touchstrip)と呼ばれることもある。タッチストリップは、1本の軸において動作する。この軸は、当該タッチストリップの最も長い軸であるが、必ずしもそうでなくてもよい。図14は、着地、および長手方向軸に沿った移動を検出するタッチストリップ130を示す。
【0069】
本発明の新たな分析アルゴリズムは、既に述べた汎用タッチパッド上で動作する態様と同様の態様で動作する。しかしながら、4つの外縁端から新たなアルゴリズムを実行する代わりに、タッチストリップ70は、動作軸132の終点である外縁端134、136から走査手順を実行する。
【0070】
タッチストリップ130であっても、1つの指示物体の検出および追跡を行うことができる。タッチストリップが多数の物体を検出すると、新たな分析アルゴリズムは、外縁端134、136の各々から走査し始める。走査が停止するのは、外縁端134から走査する場合には第1指示物体140を検出したときであり、外縁端136から走査する場合には第2指示物体142を検出したときである。新たな分析アルゴリズムは、第1および第2指示物体間において更に別の指示物体の着地があっても、そのいずれも検出しない。何故なら、第2次元における追跡はなく、いずれの外縁端から内側に移動した場合でも、第1指示物体を検出したときにデータ収集は常に停止するからである。
【0071】
タッチストリップ130は、一次元の移動だけを必要とする用途に用いられることが多い。例えば、タッチストリップ130は、スクロール、変数の値の増大、変数の値の減少等に用いることができる。
【0072】
他の注目点は、タッチパッド上で多数の指示物体を検出することができる先行技術のタッチパッドは、タッチパッド上にある各指示物体を、タッチパッド上にある他の物体に対するその位置には無関係に、常に捕らえていることである。例えば、図13に示す3つの円120、122、124の全てが従来技術では検出可能であるが、本発明では可能ではない。
【0073】
別の注目点は、新たなデータ収集アルゴリズムを用いて、タッチパッド10上で行うことができるいくつかの独特なジェスチャがあることである。これらのジェスチャは、そのジェスチャを認識するために、タッチパッド上にある多数の個々の指示物体の追跡を行う必要がないという点で独特である。
【0074】
1組のジェスチャにおいて、第1の指示物体が着地したが移動していない場合を考える。第2の指示物体が着地して、次いで新たなデータ収集アルゴリズムによって観察可能な行為を実行する。この行為の結果、ある種の行為が実行されることになる。
【0075】
例えば、第1の指示物体が第1ゾーンにおいて着地する。この第1ゾーンは、第2の指示物体が実行すべき機能を示すことを示すタッチパッド上の特定領域として定められている。第2の指示物体は、タッチパッドをタップする(tap)こと、特定の位置でタップすること、2回タップすること、特定の位置で2回タップすること、特定の方向に向かってはじき飛ぶ(flick)こと、着地し次いでドラッグすること、着地して次いでタッチパッドの特定の縁端に向かってドラッグすることまたはその特定の縁端に接触すること、全く動かずに着地すること、あるいは全く動かずに特定の位置に着地することができる。この第2の指示物体の行為は、以上の具体的な例に限定されると見なしてはならない。
【0076】
実行することができる別のジェスチャに、ステークおよびアクション・ジェスチャ(stake and action gesture:区画設定および実行ジェスチャ)と呼ばれるものがある。つまり、特定のゾーンを用いる代わりに、第1の指示物体は、タッチパッド上の都合のよい場所であればどこにでも着地し、次いで第2の指示物体が、どの機能を実行すべきかを定める行為を実行する。第2の指示物体の行為には、前述した行為の全てが含まれ、第1のゾーンと組み合わせることができる。
【0077】
図15は、本発明の別の代替実施形態を示すために提示されている。これまでの実施形態では、物体の周囲に沿った輪郭は常に四辺形の形状をなしていた。この実施形態では、検出した物体の各々に沿うように、輪郭が作られる。つまり、この例では、図15は、3つの物体120、122、および14があり、これらが、輪郭128で示すような三角形を形成することを示す。この実施形態は、データ収集アルゴリズムの修正を必要とする場合もある。
【0078】
本発明の一態様は、検出された物体によって形成される四辺形のサイズを決定することに関する。更に具体的には、これは、サイズが増大または縮小しているのか否かに関する。機能の動作は、四辺形のサイズの関数とすることができる。例えば、四辺形が縮小しているとき、ユーザは親指および人差し指で挟み合わせ動作を行っていることが考えられる。対照的に、四辺形が増大している場合、ユーザは引き離し動作を行っていることが考えられる。四辺形のサイズの増大または縮小を機能に結び付けることができる。つまり、挟み合わせ動作が拡大(zoom in)を制御することができ、引き離し動作が縮小(zoom out)を制御することができる。拡大(magnification)または拡大/縮小(zooming)は、四辺形のサイズ変更に結び付けることができる多くの機能の内の1つに過ぎず、限定と見なしてはならない。
【0079】
本発明の最後の態様は、タッチパッド上において、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムに専用の領域を選択できることである。つまり、新たなデータ収集アルゴリズムは、タッチパッドまたはタッチストリップのアクティブな検知区域全体を使用する必要はない。その中の小さい部分または領域を、新たなデータ収集アルゴリズムに専用とすることができる。
【0080】
本発明は、新たなデータ収集アルゴリズムについて教示した。このアルゴリズムは、外側の縁端において始まり、内側に向けてまたはタッチパッドを横切って移動する。あるいは、データ収集アルゴリズムは、中央において開始し、タッチパッドの外縁端に向けて外側に移動することもできる。
【0081】
また、本発明は、矩形のタッチパッド上における物体の検出および追跡を中心に述べた。円形タッチパッドでは、円形検出区域は、単に矩形グリッド上のオーバーレイとすることも可能である。しかしながら、円形の電極格子を用いてもよい。円形の第1実施形態では、データ収集アルゴリズムがタッチパッドの一方の外縁端から中心に向かって移動するとき、または中心からあらゆる方向に外縁端に向かって外側に移動するときには、最初の物体に到達するとアルゴリズムは停止する。
【0082】
しかしながら、円形の第2実施形態では、円形電極格子を、パイの一切れずつのような四分儀に区分することもできる。つまり、このデータ収集アルゴリズムは、別個の四分儀の各々において1つの物体を検出する。
【0083】
尚、前述の構成は、本発明の原理の応用の例示に過ぎないことは言うまでもない。本発明の主旨や範囲から逸脱することなく、数多くの変更や代替構成が当業者には考案することができよう。添付した特許請求の範囲は、このような変更や構成も包含することを意図している。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
本文書は、2007年11月9日に出願され出願番号が第60/986,867号である仮特許出願(代理人整理番号4086,CIRQ.PR)、および2008年5月22日に出願され出願番号が第61/128,530号である、仮特許出願(代理人整理番号4268.CIRQ.PR)の優先権を主張し、これらに含まれる主題の全ては、これらの仮特許出願をここで引用したことにより、本願にも含まれるものとする。
発明の分野
本発明は、一般に、タッチパッドに入力を供給する方法に関する。具体的には、本発明は、接触感応面上において多数の物体を、1つの物体として検出し追跡する方法に関し、多数の物体を1つの物体として扱い、これら多数の物体が1つの物体の周囲または終点を規定することとして、検出および追跡アルゴリズムを簡素化しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器の利用範囲が広がるにつれて、これらを効率的に制御する必要性が増々重要になりつつある。接触感応面をユーザ入力を供給する手段として用いることによって便益が得られる広範囲の電子デバイスには、音楽プレーヤ、DVDプレーヤ、ビデオ・ファイル・プレーヤ、パーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)、ディジタル・カメラおよびカムコーダ、移動体電話機、ラップトップおよびノートブック型コンピュータ、汎地球測地衛星(GPS)デバイス、ならびに多くの異なる携帯用デバイスが含まれるが、これらに限定されると見なしてはならない。デスクトップ・コンピュータのような据置型電子機器でさえも、高機能化をユーザに提供するタッチパッドに入力を供給するシステムおよび方法の改良を利用することができる。
【0003】
多くの携帯用電子機器が有する主な問題の1つに、それら自体のサイズのために、機器との通信を可能にする方法の数が限られることが挙げられる。可搬性が重要な特徴である場合、インターフェースに利用可能な空間は非常に限定されるのが通例である。例えば、スマート・フォンと呼ばれることも多い移動体電話機は、今では電話機およびパーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)の機能を提供している。通例、PDAは、実用的となるためには、入力および表示画面にかなりの量の表面積を必要とする。
【0004】
移動体電話機の市場に最近参入した製品に、接触感応画面能力を有するLCDがある。スマート・フォンが可搬型であることのために、表示画面空間に利用可能な空間量が有限であるため、表示されているデータの相対的なサイズを拡大および縮小する手段が生み出された。更に具体的に、通常に近い解像度で表示すると、通常の1枚の紙とほぼ同じサイズを満たすデータのページについて考える。このデータのページ全体を表示画面上に示すことができるが、典型的な1枚の紙のサイズに比較して、表示画面の物理的寸法が小さいために、著しく縮小したサイズとなる。ここで問題となったのは、いかにして使用可能なサイズでデータをページ上に表示するかということである。その解決策は、ページの小さな一部ずつ拡大することであった。つまり、一度に見ることができるのは、ページ全体の一部だけであった。その効果は、ページの一部を徐々に大きくする(zoom in)こと、または拡大することであった。そのために、ページ全体を一度に見られないという妥協を余儀なくされる。したがって、ユーザは、ページの異なる部分が表出するように、ページ上でデータを移動させる、即ち、「ドラッグする」必要がある。
【0005】
このように、画面全体が見えるようにウェブ・ページ全体を表示するが、表示画面の物理的サイズが各辺数インチでしかない場合について考える。このページ上のデータは、このような小さいサイズでは判読できない。ユーザは、ページの一部を選択して拡大することになる。ページ上のデータが大きくなればなる程、そのページの外縁は表示画面の境界を超えて消失するのは必至である。次いで、ユーザは表示画面上で指をドラッグすることにより、表示画面上で見ることができるページの部分を変える。それに応じて、以前は隠れていたページの部分が見られるようになると共に、他の部分が隠されることになる。
【0006】
タッチスクリーンまたはタッチパッド上においてページの拡大および縮小を実行するために行うことができる動きの1つに、挟み合わせ動作(pinching motion)またはその逆がある。例えば、ページを拡大するためにズーム動作を実行するには、ユーザは、親指および人差し指が接触するまで、これらを近付け、次いで親指および人差し指の一方側が接触感応面と接触するように親指および人差し指を接触感応面上に置く。次いで、ユーザは、接触感応面との接触を維持しつつ、親指および人差し指を互いに離れるように広げることが必須である。親指および人差し指が離れるように移動する限り、表示画面上のページの倍率は増大する。同様に、表示画面上におけるページの倍率は、単に接触感応面との接触を維持しつつ親指および人差し指の間を狭めることによって、逆の動作となる。ユーザは、この挟み合わせ動作および引き離し動作(reverse pinching motion)を繰り返し行うことにより、倍率が増大および減少して、ページを拡大または縮小させることができる。
【0007】
ところが、タッチパッド面上で親指および人差し指の検出および追跡を行うための、従来より周知の方法の1つでは、親指および人差し指(または、挟むおよび離すために用いられるあらゆる指)を接触感応面上における別個の物体として検出し追跡する。多数の物体の追跡は、1つの物体について実行する計算を、物体毎に行わなければならないことを意味する。つまり、いずれのタッチパッド・プロセッサにおいても、追跡している指またはポインティング・デバイス(以後、相互交換可能に用いる)毎に、計算の負担が著しく増大する。
【0008】
タッチパッドまたはタッチスクリーン(以後、タッチパッドと呼ぶ)のような接触感応面上において多数の物体を検出および追跡するプロセスを簡略化することができれば、先行技術に対する改善となろう。タッチパッドまたはタッチスクリーンのような接触感応面上における多数の物体の検出および追跡のプロセスを簡略化することができれば、先行技術に対する改善となろう。
【0009】
本発明において用いることができるタッチパッドおよびタッチスクリーンの一実施形態について説明することは有用である。具体的には、本発明を実現するために、CIRQUE(登録商標)社の容量感応タッチパッドおよびタッチスクリーン技術を用いることができる。CIRQUE(登録商標)社のタッチパッドは、相互容量検知デバイスであり、一例を図1に示す。このタッチパッドは、不透明面を用いてまたは透過面を用いて実現することができる。つまり、このタッチパッドは、従来のタッチパッドのように動作させることができ、または表示画面上の接触感応面として、つまりタッチ・スクリーンとしても動作させることができる。
【0010】
このCIRQUE(登録商標)社のタッチパッドでは、行および列電極の格子を用いて、タッチパッドのタッチ感応区域を定める。通例、タッチパッドは約16個×12個の電極、または空間に制約がある場合は8個×6個の電極からなる矩形格子である。これらの行および列電極の内部または周囲には、1つの検知電極が織りまぜられている。全ての位置測定は、検知電極を通じて行われる。しかしながら、行および列電極は、検知電極としても作用することができるので、重要な側面は、少なくとも1つの電極が信号を駆動し、他の電極が信号の検出に用いられることである。
【0011】
更に詳細には、図1は、CIRQUE(登録商標)社が教示する容量検知タッチパッド10を示し、タッチパッド電極格子の中に行(12)および列(14)(即ち、XおよびY)電極の格子を含む。タッチパッド・パラメータの測定値は全て、タッチパッドの電極格子上に配置されている1つの検知電極16によって取り込まれるのであり、XまたはY電極12、14によってではない。測定には、固定の基準点は用いられない。タッチパッド・センサ制御回路20が、P、N発生器22、24から信号(正および負)を発生し、これらの信号は直接XおよびY電極12、14に種々のパターンで送られる。したがって、タッチパッド電極格子上の電極数と、タッチ・センサ制御回路20上の駆動ピンの数との間には、1対1の対応があるのが通例である。しかしながら、この構成は、電極の多重化を用いて変更することができる。
【0012】
タッチパッド10は、タッチパッド表面上またはその近傍における指(またはその他の容量性物体)の場所を決定する際に、絶対容量測定に依存しない。タッチパッド10は、検知ライン16に対する電荷の不均衡を測定する。タッチパッド10上に指示物体がない場合、タッチ・センサ制御回路20は均衡状態にあり、検知ライン16上には信号がない。電極12、14上には容量性電荷があってもなくてもよい。CIRQUE(登録商標)社の方法では、これは無関係である。ポインティング・デバイスが容量性結合のために不均衡を生ずると、タッチパッド電極格子を構成する複数の電極12、14上で容量変化が発生する。測定するのは容量変化であって、電極12、14上における絶対容量値ではない。タッチパッド10は、容量変化を判定する際、検知ライン上において均衡を再確立即ち再現するために、検知ライン16に注入しなければならない電荷量を測定する。
【0013】
タッチパッド10は、指のような指示物体の位置を判定するために、X電極12およびY電極14について2回の完全な測定サイクル(4回の完全な測定)を実行しなければならない。X12およびY14電極双方について、ステップは次の通りである。
【0014】
最初に、P、N発生器22からの第1信号によって、電極の一群(例えば、X電極12の選択群)を駆動し、相互容量測定デバイス26を用いた第1測定を行って最も大きな信号の場所を判定する。しかしながら、この1回の測定からは、この最大信号に対して指が最も近い電極の一方側にあるのかまたは他方側にあるのか、知ることができない。
【0015】
次に、最も近い電極の一方側に電極1つだけずらして、再度電極の一群を信号によって駆動する。言い換えると、電極群の一方側に隣接する電極を追加する一方で、もはや元の電極群の逆側にある電極を駆動しない。
【0016】
第3に、新しい一群の電極を駆動し、第2測定を行う。
最後に、測定した2つの信号の大きさを比較する方程式を用いて、指の場所を判定する。
【0017】
このように、タッチパッド10は、指の場所を判定するために、容量変化を測定する。前述したこのハードウェアおよび方法の全ては、タッチ・センサ制御回路20がタッチパッド10の電極12、14を直接駆動することを想定している。つまり、典型的な12×16電極格子のタッチパッドでは、タッチ・センサ回路20から合計28本のピン(12+16=28)が利用可能であり、これらを用いて電極格子の電極12、14を駆動する。
【0018】
CIRQUE(登録商標)社のタッチパッドの感度または分解能は、16×12格子の行および列電極が含意するよりも遥かに高い。分解能は、通例、1インチ当たり約960カウント以上である。正確な分解能は、構成素子の感度、同じ行および列上にある電極間の間隔、そして本発明にとっては重要でないその他の要因によって決定される。
【0019】
前述したCIRQUE(登録商標)社のタッチパッドは、XおよびY電極の格子、ならびに別個の単独検知電極を用いるが、多重化を用いることによって、検知電極もXまたはY電極にすることができる。いずれの設計も、本発明が機能することを可能にする。
【0020】
CIRQUE(登録商標)社のタッチパッドの基盤技術は、容量センサを基本とする。しかしながら、本発明には他のタッチパッド技術も用いることができる。これら他の近接感応および接触感応タッチパッド技術には、電磁、誘導、圧力検知、静電、超音波、光、抵抗性メンブレーン、半導電性メンブレーン、あるいはその他の指またはスタイラス感応技術が含まれる。
【0021】
先行技術は、タッチパッド上にある多数のオブジェクトの検出および追跡が既に可能であるタッチパッドの記載を含む。この先行技術の特許は、タッチバッドが、当該タッチパッド上のどこででも個々の物体を検出し追跡することを教示し、これを特許請求している。この特許は、ポインティング・デバイスの存在および位置を示す曲線としてグラフ化された信号上において、物体が「極大値」として現れるようにするシステムについて記載する。このため、信号グラフの下位部分となる「極小値」もあり、これは指示物体が検出されていないことを示す。
【0022】
図2は、第1極大値30、第1極小値32、および第2極大値34の概念を示すグラフであり、タッチパッド上においてギャップを挟んだ2つの物体の検出結果である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この先行技術は、複数の物体を常に別個の個別物体として追跡しており、その結果、各物体がタッチパッド中を移動するにしたがって、これに追従しなければならない。
タッチパッド面上に物体がいくつあるかシステムが判定する必要なく、それでもなおそれらの存在を確認することができる、新たな検出および追跡方法を提供することができれば、先行技術に対する利点となろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
好適な実施形態では、本発明は、タッチパッドまたはタッチスクリーン上において多数の物体を検出し追跡するシステムおよび方法である。この方法は、新たなデータ収集アルゴリズムを提供する。この方法は、検出および追跡アルゴリズムを実行するプロセッサにかかる計算の負担を軽減する。多数の物体は、別個の物体ではなく、1つの物体の要素として扱われる。これらの物体の位置は、2つの物体が検出されたときには、終点として扱われ、2つよりも多い物体が検出されたときには周囲または境界として扱われる。
【0025】
本発明の第1の態様では、既存のタッチパッドおよびタッチスクリーン(以後まとめて「タッチパッド」と呼ぶ)のハードウェアおよび走査ルーチンを、この新たな分析アルゴリズムと共に用いることができる。
【0026】
本発明の第2の態様では、前述の新たな分析アルゴリズムは、ハードウェアの変更なく、ファームウェアで実装することができる。
第3の態様では、タッチパッドは、通常の走査手順を実行して、タッチパッド上にある全ての電極からデータを入手する。タッチパッドの外縁端において開始し、次いで内側に移動しながら物体を探すことによって、データを分析する。物体の縁端がデータの中で検出されたときに、データ分析は終了する。次いで、最初の外縁端と対向する外縁端即ち境界上において分析を開始し、次いで内側に進んで行く。この場合も、物体の縁端がデータの中で検出されたときに、データ分析は終了する。次いで、直交する向き(dimension)にこのプロセスを繰り返す。つまり、最初の境界がタッチパッドの横方向の両境界である場合、縦方向の両境界を用いて分析を開始する。分析は、各方向から最初の物体の縁端を越えてタッチパッド上で検出されたものを捕らえることはない。つまり、タッチパッドは、当該タッチパッド上にある物体の総数を判定することはなく、4つの方向からの物体の縁端以外は何も計算する必要がなく、こうすることによってタッチパッド・プロセッサにかかる計算オーバーヘッドを大幅に軽減する。
【0027】
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴、利点、ならびに代替的態様は、添付図面と組み合わせて以下の詳細な説明を検討することから、当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、CIRQUE(登録商標)社によって製造され、本発明の原理にしたがって動作することができる、容量感応タッチパッドの構成素子のブロック図である。
【図2】図2は、先行技術によって教示されたタッチパッド上における2つの物体の検出を示すグラフである。
【図3】図3は、ユーザの手が、親指および人差し指でタッチパッドの表面に接触していることを示す、本発明のタッチパッドの上面図である。
【図4】図4は、親指および人差し指が接触しているときに、タッチパッドが1つの物体を捕らえていることを示す、タッチパッドの上面図である。
【図5】図5は、親指および人差し指が離れているときに、タッチパッドは2つの物体を捕らえているが、1つの物体として扱われていることを示す、タッチパッドの上面図である。
【図6】図6は、3本以上の指がタッチパッドと接触しているときに、タッチパッドは多数の物体を捕らえているが、なおも1つの物体として扱われていることを示す、タッチパッドの上面図である。
【図7】図7は、多数の物体を回転させたときに、これら多数の物体を1つの大きな物体として追跡できることを示す、タッチパッドの上面図である。
【図8】図8は、親指および人差し指が広がっておりタッチパッドの表面に接触しているユーザの手を示す、本発明のタッチパッドの上面図である。
【図9A】図9Aは、本発明の原理にしたがって動作する、簡略化した新たなデータ収集アルゴリズムを示す、本発明のタッチパッドの上面図である。
【図9B】図9Bは、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムの結果を示すグラフである。
【図10】図10は、2つの指示物体の外境界を表す四辺形の輪郭を示す、タッチパッドの上面図である。
【図11】図11は、各指示物体が他のいずれよりもタッチパッドの少なくとも1つの縁端に近いときに、新たな分析アルゴズムはどのように3つの指示物体を捕らえることができるかを示す、タッチパッドの上面図である。
【図12】図12は、四辺形のどの角に、検出した物体が実際に位置しているかを知ることは可能でないことを示す、タッチパッドの上面図である。
【図13】図13は、外側にある指示物体の境界の中にいくつの指示物体があるかを判断できない事実を示すタッチパッドの上面図である。
【図14】図14は、同様に本発明の新たな分析アルゴリズムと共に用いることができる一次元タッチスクリプトの上面図である。
【図15】図15は、物体から物体に移動する形状当てはめ境界と四辺形の境界を置き換えた、本発明の代替実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
これより、本発明の種々の要素に参照番号が与えられた図面を参照する。この図面において、当業者が本発明を実施し使用することを可能にするように本発明について論ずる。尚、以下の説明は本発明の原理の一例に過ぎず、以下に続く特許請求の範囲を狭めるように見なしてはならないことは言うまでもない。
【0030】
本発明の実施形態について説明する前に、本発明のタッチパッド・ハードウェアがタッチパッド電極の全てを走査することを理解するのは重要なことである。CIRQUE(登録商標)社のタッチパッドは、先行技術の図2に示されるのと同じ生データを常に収集することができる。更に、タッチパッドの電極を走査する仕方は、本特許の要素ではない。本発明において用いられるCIRQUE(登録商標)社のタッチパッドは、電極を、同時にではなく、グループ単位で順次走査することにおいて、独特であると思われる。しかしながら、本発明に関連するのは、どのようにしてタッチパッドの電極からデータを収集するのかではなく、むしろどのようにそのデータを用い分析するかである。新たなデータ収集アルゴリズムの重要性は、以下の開示によって明らかとなろう。
【0031】
図3は、本発明の原理にしたがって作られたタッチパッド10の上面図として示す。タッチパッド10は、多数の物体を同時に検出し追跡することができる。親指36および人差し指38同士を突き合わせて、タッチパッド10上のいずれかの位置に置いた場合を考える。親指36および人差し指38の組み合わせが、タッチパッド10によって1つの物体として見られることは、あり得ることである。このようなことが生ずる可能性があるのは、タッチパッド10に向けて押し付けたときに、親指36および人差し指38の組織が変形し、それらの間に本質的に隙間を残さない程強く突き合わされる可能性があるからである。通常の検出アルゴリズムは、1つの物体を検出するときにそれが現在動作するように動作する。即ち、検出した物体について、中心点即ち重心を決定する。この重心は、タッチパネル10上において検出された物体の位置であると見なされる。
【0032】
図4は、タッチパッド10上の親指36および人差し指38の位置において、タッチパッド10が検出し得るものの上面図である。例えば、タッチパッド10は、中心点42の位置がクロスヘアー(crosshair)で示された、不規則であるがほぼ円形の輪郭40を検出する可能性がある。物体40は近似に過ぎず、タッチパッド10が検出するものの正確な表現と見なしてはならない。理解すべき重要なことは、全体的に1つの物体だけが検出されるということである。
【0033】
親指36および人差し指38を引き離すように引き離し動作で移動させると、タッチパッド10は2つの別個の物体を検出することができる。タッチパッドは、多数の物体の初期発現以来これらを検出することができるが、タッチパッド表面上における1つよりも多い物体の検出および追跡は常に望ましくないことと見なされているので、検出した物体の内1つを無視しつつ、所望の物体の位置を追跡し続けるようにアルゴリズムが実現されている。どの物体を追跡すべきかについての決定を変更できることは明らかである。しかしながら、先行技術においては、最も大きい物体を追跡し、それよりも小さい物体を無視することが慣例であった。とは言え、これは任意の決定であり、最初に検出する物体だけを追跡するというような、どの物体を追跡すべきか選択する他の何らかの手段を用いることもできる。
【0034】
本発明は、多数の物体の検出および追跡をどのように扱うかということに関する新たな方法である。本質的に、2つの異なる想定場面がある。第1の想定場面は、2つの物体だけが検出されたときに生ずる。第2の想定場面は、2つよりも多い物体が検出されたときに生ずる。
【0035】
第1の想定場面の一例の図を図5に示す。図5は、親指36および人差し指38が離れている場合、親指および人差し指がタッチパッド10に対して横に並んでいるときに、タッチパッド10が何を検出することができるかを示す。図5は、2つの物体36、38が検出されていることを示し、各物体は、それぞれ、クロスヘアーで示すようにそれら自体の重心46、48を有する。本発明の方法は2つの物体36、38からのデータをどのように用いるかを例示するために、点線44が示されている。点線44は、本発明の方法が2つの物体36、38を1つの大きな物体として扱うことを示すために用いられている。この1つの物体は細長く、したがって2つの終点46、48を有するように見える。
【0036】
図5に示すように、親指36および人差し指38を移動させて引き離すと、本発明の方法は、タッチパッド10上における更に大きな1つの物体として、その物体を扱う。同様に、親指36および人差し指38を互いに近付けるように移動させると、本方法は、親指および人差し指が接触しているか否かには拘わらず、タッチパッド10上において更に小さな物体を見ることになる。1つの物体を追跡するために必要とされるアルゴリズムは、その物体が大きくてもまたは小さくても、その方法が1つの物体のみを追跡しつつ、意図的に第2の物体を無視しなければならない場合よりも簡単であることを強調しておく。
【0037】
第1実施形態を簡潔に述べると、本発明は、2つの物体がタッチパネル10上に実際に存在することを認識するが、第1実施形態のデータ収集アルゴリズムは、2つの物体が1つの物体であるかのように、これらを扱う。
【0038】
尚、この1つの大きな物体を検出するという想定場面は、手のひらがタッチパッド10上に置かれたときにも起こることは、認められてしかるべきである。実際、1つの大きな物体が検出されたときの状況を扱うアルゴリズムを開発するのが通例である。1つの典型的な想定場面では、ユーザが意図せずに手のひらをタッチパッド上に載せたのであって、接触するつもりではなかったと想定して、大きな物体を無視する。
【0039】
手のひらの手首に接する部分がタッチパッド10上に置かれている場合を考える。手首に接する部分は、比較的小さく、1つの物体である。ここで、手のひらがより多くタッチパッド10と接触するように手のひらを前方に揺すると、手のひらが大きくなるが、なおも1つの物体であり、タッチパッド10には1つの物体として見える。このように、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムは、1つの大きな物体が検出されたときも、2つの物体が検出されたときも同じ機能を果たす。第1実施形態は、複数の接触点を捕らえて、これらが手のひらのような1つの物体で形成されていても、または親指36および人差し指38のような2つの以上の物体で形成されていても、これらを1つの大きな物体の外縁端として扱うようにプログラミングされている。尚、親指36および人差し指38は、ユーザの1つの手の内いずれの2本の指であっても、または2つの異なる手の指であっても可能である。
【0040】
本発明の第1実施形態は、本質的に、2つよりも多い物体がタッチパッド10上で検出されたときと同様に動作する。終点を捕らえる代わりに、本発明は、1つの大きな物体の周囲または境界を示す物体を捕らえる。つまり、1つの大きな物体の重心は、本アルゴリズムによって判断される周囲の中心となることもできる。
【0041】
ここで、図6において、2つよりも多い物体がタッチパッド10と接触している想定場面を示す。第2実施形態では、タッチパッド10は、多数の接触点の重心を用いるようにプログラミングされている。これらの重心は、これらが手の平のような1つの物体で形成されていても、または親指36、人差し指38、および少なくとも1本の別の指のような多数の物体で形成されていても、1つの大きな物体の外縁端となる。尚、親指36および人差し指38は、ユーザの手の他のいずれの指とでも置き換えることができ、あるいは異なる手の指とでさえも置き換えることができることは明白なはずである。
【0042】
つまり、図6では、この場合3つの物体36、38および50が検出される。点線46は、検出された物体を1つの物体の周囲として用いることによって、物体のサイズが決定されることを示すために用いられる。
【0043】
この場合、タッチパッド10が多数の物体を1つの物体として扱うことができると判断したが、この情報は、表示画面上に示されているページのデータを拡大(zoom in)および縮小(zoom out)するための前述した動作を実行するために、本発明によって用いることができる。
【0044】
2つの物体が検出された想定場面では、親指36および人差し指38が引き離し動作(action)を実行している場合、1つの物体が拡大しつつあると判断する。物体が拡大しつつあると判断した場合、ズーム・イン機能が実行されていれば、表示画面上の画像を拡大する。同様に、親指36および人差し指38が挟み合わせ動作(action)を実行している場合、1つの物体のサイズが縮小していると判断する。物体のサイズ縮小に応答して、表示画面上の画像の倍率を下げ、こうしてユーザはページを縮小する。
【0045】
本発明は、2つ以上の物体がタッチパッド10上で検出されたときも同じ動作を行う。物体のサイズが増大していると判断した場合、倍率を高めて、表示画面上に表示されているデータを拡大する。物体のサイズが縮小していると判断した場合、倍率を下げて、より多くのデータを示すように表示画面を縮小(zoom out)する。以下に、新たなデータ収集アルゴリズムの使用を例示する他の例について説明する。
【0046】
本発明の別の態様では、タッチパッド10上における大きな物体の回転を検出できる。多数の物体がタッチパッド10と接触している図7について検討する。この例では、5つの物体がタッチパッドに接触している。これら5つの物体は、例えば、4本の指60および親指62の先端とすることができる。これらよりも多い物体、または少ない物体も用いることができる。重要なのは、5つの物体がここでは回転するということである。この大まかな円運動は、何らかの形式のコマンドと解釈することができる。例えば、時計回り方向の回転64は、リストを下にスクロールすることと解釈することができ、反時計回り方向の回転66は、リストを上にスクロールすることと解釈することができる。実際に行われる機能は重要ではない。重要なのは、本発明の実施形態が、ある機能を実行できるように、回転方向の判断を可能にすることである。
【0047】
記載した本発明の実施形態の全てにおいて、タッチパッド10上にある多数の物体によって定められる境界の縁端を発見するために、新たなデータ収集アルゴリズムが用いられることを述べた。つまり、第1の物体がタッチパッド10上で検出されたとき、既存の検出および追跡方法が通常通りに動作する。しかし、物体のサイズまたは形状が変化したように見えたとき、または第2の物体およびそれ以上の物体が検出されたとき、新たなデータ収集アルゴリズムを実施する。
【0048】
図8において、タッチパッド10上に2つの物体が置かれている。これら2つの物体は、ユーザの右手の親指36および人差し指38である。タッチパッド10上における物体36、38の着地(touchdown)は同時でない場合もあり、その場合タッチパッドは、単一物体検出および追跡アルゴリズムを実行する可能性が最も高いか、またはその実行を開始させている。単一物体検出アルゴリズムでは、四分儀を特定し、物体が位置する四分儀内の位置を特定するために、広く狭い走査アルゴリズムが用いられる。
【0049】
一旦四分儀を特定したなら、狭域走査アルゴリズムを実行するが、物体が検出された四分儀内のみで実行する。しかしながら、第2の物体が検出された場合、本発明の新たな分析アルゴリズムを優先し、単一物体アルゴリズムを補助とする。
【0050】
本発明の新たなデータ収集アルゴリズムでは、矩形を形成する4つの辺を有すると想定されるタッチパッド10上において分析を行う。尚、本発明はこの形状に限定されるのではなく、本発明はそのように限定されると考えてはならないことは、明白なはずである。重要なのは、外縁端の数に拘わらず、データ収集アルゴリズムが外縁端において開始し、タッチパッドを横切って進むことである。
【0051】
例示だけを目的として、タッチパッド10が4つの辺を有すると仮定する。典型的な矩形タッチパッド10におけるX電極アレイおよびY電極アレイの走査によって、データが発生する。
【0052】
電極アレイから、そして電極アレイのいずれの縁端または境界からでも、データの分析を開始することができる。4つの辺を有するタッチパッド10では、その外縁端の双方から各電極アレイを分析するために、合計で4回の分析を実行し、物体が検出されるまで、対向する縁端に向かってタッチパッドを横切って進む。
【0053】
図9Aでは、XおよびY電極アレイから取り込んだデータ集合について検討する。X電極アレイの第1縁端70(任意に選択した)から収集したデータの分析は、物体36が点線80において検出されるまで、矢印72で示すように内側に、即ち、アレイを横切るように進む。検出される物体の部分は、通例、その物体の縁端だけである。次いで、第1縁端に対向する縁端、即ち、縁端74から、X電極アレイについて収集したデータの分析を繰り返す。矢印76の方向に移動して、物体38の縁端が点線82において検出されると直ぐに、分析は停止する。2つの物体36、38が1本の垂直線上にある場合、検出された物体は同じ物体である可能性があるが、この例では、第2の物体38がある。X電極アレイからのデータの収集は完了する。
【0054】
次いで、Y電極アレイから取り込んだデータ集合についての分析を開始する。X電極アレイと同様、2つの外縁端90、92から、矢印94および96の方向に移動して、それぞれ、物体の縁端が検出されるまで分析を行う。つまり、走査データ一通りの完全な分析には、4回の別個の走査動作が必要となる。この分析は、1つよりも多い物体がタッチパッド10によって検出される限り、繰り返し行われる。
【0055】
殆どのタッチパッドは、四辺形または円形のいずれかである。四辺形として構成されている場合、新たなデータ収集アルゴリズムは、4つの縁端全てから、タッチパッドを横切って内側に進んで、走査データを評価する。本発明のタッチパッド・ハードウェアは、一度に1つの縁端のみからしか、新たなデータ収集アルゴリズムを実行することができない。しかしながら、本発明は、4つの外縁端から同時に新たなデータ収集アルゴリズムを実行する概念も含む。
【0056】
タッチパッド10が円形またはその他の何らかの楕円形として構成されている場合、新たなデータ収集アルゴリズムを用いることができるのは、四辺形XY電極格子を用いてこれを円形に切断してタッチパッドを作成した場合、または実際のXY電極格子は四辺形であっても、円形のオーバーレイをその上に重ね合わせてタッチパッドを作成した場合に限られる。理解すべきことは、新たなデータ収集アルゴリズムはいずれのタッチパッドの形状にも適応できることである。
【0057】
代替実施形態では、真円、環のような、更に高度な形状でも、新たなデータ収集アルゴリズムを用いることができる。分析は、常に、外縁端からタッチパッドの対向する区域即ち内側の区域に向かって実行するとよい。
【0058】
図9Aは、タッチパッド10の上面図を調べることによって得られた、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムの結果を示す。タッチパッド10上において親指36が接触している位置を示すために、円が用いられている。以後、円は、タッチパッド10と接触している指示物体の位置に相当するものとする。同様に、タッチパッド10上において指38が接触している位置を示すために、異なる円が用いられている。
【0059】
新たなデータ収集アルゴリズムを実行するために、タッチパッドは、電極を纏めて集合体を作る。タッチパッド10の左縁端70からデータを集めて、点線80で示すように、円36に到達したときに収集は停止する。データ収集ステップは、タッチパッド10の右縁端74からデータを収集し、点線82で示すように、円38に達したときに停止する。同様に、タッチパッド10の上縁端90からデータを収集し、点線84で示すように、円38に達したときにデータ収集は停止する。最後に、タッチパッド10の下縁端92からデータを収集し、点線86で示すように、円36に達したときにデータ収集は停止する。以上のデータ収集シーケンスは、例示を目的とするに過ぎず、限定と見なしてはならない。つまり、データはいずれの縁端から始めても、収集することができる。
【0060】
本発明の他の重要な態様は、いずれかの物体の縁端が検出されると直ぐにデータ収集が停止することである。外境界のみを決定するので、データ収集を停止することにより、データ収集アルゴリズムの速度の大幅な上昇をもたらす。物体の一方または双方がタッチパッド10の外縁端付近にある場合、データ収集は比較的素早く行われる。何故なら、データ収集は各物体の縁端において停止するからである。
【0061】
図9Bは、本発明のタッチパッド10によって収集された生走査データのグラフであり、先行技術の図2のグラフに相当する。タッチパッドは、タッチパッド10の外縁端から、物体を検出するまでデータを収集する。尚、検出された物体36、38の外縁端66、68間にあるいずれの物体についても、データは得られないことを注意しておく。新たなデータ収集アルゴリズムには、検出された物体は1つの大きな物体のように見える。何故なら、一旦物体36、38の外縁端が検出されたなら、情報が得られなくなるからである。このアルゴリズムは、外縁端66および68間のギャップ内にデータをありのままに満たすことを選択してもよいが、その必要はない。
【0062】
図10は、タッチパッド10の上面図である。ボックス100は、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムを用いて検出されたオブジェクトの形状を示す。この実施形態では、新たなデータ収集アルゴリズムによって結果的に生成された形状は、四辺形のように見え、その対向する辺は平行となっている。つまり、形状は常に矩形であり、辺の寸法のみが異なる。
【0063】
図11に示す代替実施形態において、タッチパッド10上に示されている3つの物体102、104、および106について考える。本発明の収集アルゴリズムは、輪郭108によって示されるように、境界を作成する。輪郭108は、3つの物体102、104、および106によって作られ、図9Aでは同じ形状のボックスが2つの物体36および38のみを用いて作られている。
【0064】
本発明の新たなデータ収集アルゴリズムについて、直ちには明らかにはならないが重要な注目点がいくつかある。
図12は、四辺形110を示すタッチパッド10の上面図である。この四辺形の角には4つの円がある。これらの円は、四辺形110を作ることができる、異なる2対の物体を表す。つまり、円112は1対の物体を表し、円114は第2の対の物体を表す。本発明は、タッチバッドのユーザに、どの対の物体がタッチパッド10上にあるか分からせるデータを発生しない。タッチパッドに対する分析を行うタッチパッド・プロセッサは、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムを用いて、どんな物体があるか判断することができない。
【0065】
代替実施形態では、本発明は、四辺形のどの角に物体が実際に配置されているか検出することができる分析を実行する。
有利なこととして、この情報を有用に用いるためには、どの対の物体があるのかを知る必要がないことがあげられる。例えば、四辺形110の全体的なサイズが縮小している場合、タッチパッド10上にある指示物体の一方または双方が互いに向かって移動している。例えば、双方の指示物体は挟み合わせ動作で移動することができ、あるいは一方の指示物体は静止したままでいて、他方の物体がそれに向かって移動することができる。
【0066】
本発明の別の注目点は、本発明の検出および追跡アルゴリズムを用いると、2つよりも多い物体を捕らえることができる場合とできない場合があることである。例えば、図13は、円120、122、および124を含むタッチパッド10の上面図である。中央の指示物体122は、新たなデータ収集アルゴリズムには捕らえられない。何故なら、指示物体を検出するアルゴリズムは、円120および124で示された物体に達したときに停止するからである。つまり、円122は、四辺形126の境界内に完全に納まっており、データ収集アルゴリズムには全く捕らえられないである。
【0067】
対照的に、図11は、3つの指示物体102、104、および106の異なる配置を示す。このように配置されると、3つの円全てが新たなデータ収集アルゴリズムには見えるようになる。四辺形108は、データ収集アルゴリズムが3つの円102、104、および106の各々に達することを示す。したがって、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムは、これらの円の各々が、他の円のいずれよりも、タッチパッド10の少なくとも1つの縁端の近くにある限り、3つの円全てを検出することができる。
【0068】
図14は、本発明の代替実施形態として提示する。本発明の特殊事例の1つは、一次元において動作するタッチパッドに適用することができる。このようなタッチパッドは、タッチストリップ(touchstrip)と呼ばれることもある。タッチストリップは、1本の軸において動作する。この軸は、当該タッチストリップの最も長い軸であるが、必ずしもそうでなくてもよい。図14は、着地、および長手方向軸に沿った移動を検出するタッチストリップ130を示す。
【0069】
本発明の新たな分析アルゴリズムは、既に述べた汎用タッチパッド上で動作する態様と同様の態様で動作する。しかしながら、4つの外縁端から新たなアルゴリズムを実行する代わりに、タッチストリップ70は、動作軸132の終点である外縁端134、136から走査手順を実行する。
【0070】
タッチストリップ130であっても、1つの指示物体の検出および追跡を行うことができる。タッチストリップが多数の物体を検出すると、新たな分析アルゴリズムは、外縁端134、136の各々から走査し始める。走査が停止するのは、外縁端134から走査する場合には第1指示物体140を検出したときであり、外縁端136から走査する場合には第2指示物体142を検出したときである。新たな分析アルゴリズムは、第1および第2指示物体間において更に別の指示物体の着地があっても、そのいずれも検出しない。何故なら、第2次元における追跡はなく、いずれの外縁端から内側に移動した場合でも、第1指示物体を検出したときにデータ収集は常に停止するからである。
【0071】
タッチストリップ130は、一次元の移動だけを必要とする用途に用いられることが多い。例えば、タッチストリップ130は、スクロール、変数の値の増大、変数の値の減少等に用いることができる。
【0072】
他の注目点は、タッチパッド上で多数の指示物体を検出することができる先行技術のタッチパッドは、タッチパッド上にある各指示物体を、タッチパッド上にある他の物体に対するその位置には無関係に、常に捕らえていることである。例えば、図13に示す3つの円120、122、124の全てが従来技術では検出可能であるが、本発明では可能ではない。
【0073】
別の注目点は、新たなデータ収集アルゴリズムを用いて、タッチパッド10上で行うことができるいくつかの独特なジェスチャがあることである。これらのジェスチャは、そのジェスチャを認識するために、タッチパッド上にある多数の個々の指示物体の追跡を行う必要がないという点で独特である。
【0074】
1組のジェスチャにおいて、第1の指示物体が着地したが移動していない場合を考える。第2の指示物体が着地して、次いで新たなデータ収集アルゴリズムによって観察可能な行為を実行する。この行為の結果、ある種の行為が実行されることになる。
【0075】
例えば、第1の指示物体が第1ゾーンにおいて着地する。この第1ゾーンは、第2の指示物体が実行すべき機能を示すことを示すタッチパッド上の特定領域として定められている。第2の指示物体は、タッチパッドをタップする(tap)こと、特定の位置でタップすること、2回タップすること、特定の位置で2回タップすること、特定の方向に向かってはじき飛ぶ(flick)こと、着地し次いでドラッグすること、着地して次いでタッチパッドの特定の縁端に向かってドラッグすることまたはその特定の縁端に接触すること、全く動かずに着地すること、あるいは全く動かずに特定の位置に着地することができる。この第2の指示物体の行為は、以上の具体的な例に限定されると見なしてはならない。
【0076】
実行することができる別のジェスチャに、ステークおよびアクション・ジェスチャ(stake and action gesture:区画設定および実行ジェスチャ)と呼ばれるものがある。つまり、特定のゾーンを用いる代わりに、第1の指示物体は、タッチパッド上の都合のよい場所であればどこにでも着地し、次いで第2の指示物体が、どの機能を実行すべきかを定める行為を実行する。第2の指示物体の行為には、前述した行為の全てが含まれ、第1のゾーンと組み合わせることができる。
【0077】
図15は、本発明の別の代替実施形態を示すために提示されている。これまでの実施形態では、物体の周囲に沿った輪郭は常に四辺形の形状をなしていた。この実施形態では、検出した物体の各々に沿うように、輪郭が作られる。つまり、この例では、図15は、3つの物体120、122、および14があり、これらが、輪郭128で示すような三角形を形成することを示す。この実施形態は、データ収集アルゴリズムの修正を必要とする場合もある。
【0078】
本発明の一態様は、検出された物体によって形成される四辺形のサイズを決定することに関する。更に具体的には、これは、サイズが増大または縮小しているのか否かに関する。機能の動作は、四辺形のサイズの関数とすることができる。例えば、四辺形が縮小しているとき、ユーザは親指および人差し指で挟み合わせ動作を行っていることが考えられる。対照的に、四辺形が増大している場合、ユーザは引き離し動作を行っていることが考えられる。四辺形のサイズの増大または縮小を機能に結び付けることができる。つまり、挟み合わせ動作が拡大(zoom in)を制御することができ、引き離し動作が縮小(zoom out)を制御することができる。拡大(magnification)または拡大/縮小(zooming)は、四辺形のサイズ変更に結び付けることができる多くの機能の内の1つに過ぎず、限定と見なしてはならない。
【0079】
本発明の最後の態様は、タッチパッド上において、本発明の新たなデータ収集アルゴリズムに専用の領域を選択できることである。つまり、新たなデータ収集アルゴリズムは、タッチパッドまたはタッチストリップのアクティブな検知区域全体を使用する必要はない。その中の小さい部分または領域を、新たなデータ収集アルゴリズムに専用とすることができる。
【0080】
本発明は、新たなデータ収集アルゴリズムについて教示した。このアルゴリズムは、外側の縁端において始まり、内側に向けてまたはタッチパッドを横切って移動する。あるいは、データ収集アルゴリズムは、中央において開始し、タッチパッドの外縁端に向けて外側に移動することもできる。
【0081】
また、本発明は、矩形のタッチパッド上における物体の検出および追跡を中心に述べた。円形タッチパッドでは、円形検出区域は、単に矩形グリッド上のオーバーレイとすることも可能である。しかしながら、円形の電極格子を用いてもよい。円形の第1実施形態では、データ収集アルゴリズムがタッチパッドの一方の外縁端から中心に向かって移動するとき、または中心からあらゆる方向に外縁端に向かって外側に移動するときには、最初の物体に到達するとアルゴリズムは停止する。
【0082】
しかしながら、円形の第2実施形態では、円形電極格子を、パイの一切れずつのような四分儀に区分することもできる。つまり、このデータ収集アルゴリズムは、別個の四分儀の各々において1つの物体を検出する。
【0083】
尚、前述の構成は、本発明の原理の応用の例示に過ぎないことは言うまでもない。本発明の主旨や範囲から逸脱することなく、数多くの変更や代替構成が当業者には考案することができよう。添付した特許請求の範囲は、このような変更や構成も包含することを意図している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触感応面上において複数の物体を検出する方法であって、
1)センサ格子を形成する複数の電極を設けるステップであって、前記複数の電極が、4つの縁端を有する四辺形を形成する、ステップと、
2)前記接触感応面上において少なくとも2つの物体の存在を検出するステップと、
3)1つの縁端から開始して対向する縁端に向かって移動して、前記複数の電極からデータを収集することにより、データ収集あるアルゴリズムを開始するステップと、
4)物体を検出したときに、データ収集を停止するステップと、
5)前記4つの縁端の各々についてステップ3および4を繰り返すステップであって、前記少なくとも2つの物体によって形成される周囲が四辺形となり、前記少なくとも2つの物体の各々が前記周囲の内部にある、ステップと、
を備えている、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、センサ格子を形成する複数の電極を設ける前記ステップは、更に、センサ格子を形成する複数のXおよびY電極を設けるステップを備えており、前記XおよびY電極が互いに直交する1つの平面内に位置する、方法。
【請求項3】
タッチパッド上にある複数の物体を検出する方法であって、
1)センサ格子を形成する複数のXおよびY電極を設けるステップであって、前記XおよびY電極が互いに直交する1つの平面内に位置し、4つの辺を有する四辺形を形成する、ステップと、
2)第1の物体検出アルゴリズムを用いて、前記接触感応面上において少なくとも2つの物体の存在を検出するステップと、
3)前記四辺形の1つの縁端から始めて対向する縁端まで移動させて、前記複数の電極からデータを収集することにより、第2のデータ収集アルゴリズムを開始するステップと、
4)物体を検出したときにデータ収集を停止するステップと、
5)前記4つの縁端の各々についてステップ3および4を繰り返すステップであって、前記少なくとも2つの物体によって形成される周辺が四辺形となり、前記少なくとも2つの物体の各々が前記周囲の内部にある、ステップと、
を備えている、方法。
【請求項4】
接触感応面上にある複数の物体を検出する方法であって、
1)センサ格子を形成する複数の電極を設けるステップと、
2)前記接触感応面上において少なくとも2つの物体の存在を検出するステップと、
3)第1の縁端から始めてそこから遠ざかるように移動して、前記複数の電極からデータを収集することによって、データ収集アルゴリズムを開始するステップと、
4)物体を検出したときにデータ収集を停止するステップと、
5)前記センサ格子の各縁端についてステップ3および4を繰り返すステップであって、前記少なくとも2つの物体によって形成される周囲が四辺形となり、前記少なくとも2つの物体の各々が前記周囲の内側にある、ステップと、
を備えている、方法。
【請求項1】
接触感応面上において複数の物体を検出する方法であって、
1)センサ格子を形成する複数の電極を設けるステップであって、前記複数の電極が、4つの縁端を有する四辺形を形成する、ステップと、
2)前記接触感応面上において少なくとも2つの物体の存在を検出するステップと、
3)1つの縁端から開始して対向する縁端に向かって移動して、前記複数の電極からデータを収集することにより、データ収集あるアルゴリズムを開始するステップと、
4)物体を検出したときに、データ収集を停止するステップと、
5)前記4つの縁端の各々についてステップ3および4を繰り返すステップであって、前記少なくとも2つの物体によって形成される周囲が四辺形となり、前記少なくとも2つの物体の各々が前記周囲の内部にある、ステップと、
を備えている、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、センサ格子を形成する複数の電極を設ける前記ステップは、更に、センサ格子を形成する複数のXおよびY電極を設けるステップを備えており、前記XおよびY電極が互いに直交する1つの平面内に位置する、方法。
【請求項3】
タッチパッド上にある複数の物体を検出する方法であって、
1)センサ格子を形成する複数のXおよびY電極を設けるステップであって、前記XおよびY電極が互いに直交する1つの平面内に位置し、4つの辺を有する四辺形を形成する、ステップと、
2)第1の物体検出アルゴリズムを用いて、前記接触感応面上において少なくとも2つの物体の存在を検出するステップと、
3)前記四辺形の1つの縁端から始めて対向する縁端まで移動させて、前記複数の電極からデータを収集することにより、第2のデータ収集アルゴリズムを開始するステップと、
4)物体を検出したときにデータ収集を停止するステップと、
5)前記4つの縁端の各々についてステップ3および4を繰り返すステップであって、前記少なくとも2つの物体によって形成される周辺が四辺形となり、前記少なくとも2つの物体の各々が前記周囲の内部にある、ステップと、
を備えている、方法。
【請求項4】
接触感応面上にある複数の物体を検出する方法であって、
1)センサ格子を形成する複数の電極を設けるステップと、
2)前記接触感応面上において少なくとも2つの物体の存在を検出するステップと、
3)第1の縁端から始めてそこから遠ざかるように移動して、前記複数の電極からデータを収集することによって、データ収集アルゴリズムを開始するステップと、
4)物体を検出したときにデータ収集を停止するステップと、
5)前記センサ格子の各縁端についてステップ3および4を繰り返すステップであって、前記少なくとも2つの物体によって形成される周囲が四辺形となり、前記少なくとも2つの物体の各々が前記周囲の内側にある、ステップと、
を備えている、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2011−503714(P2011−503714A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533118(P2010−533118)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/012634
【国際公開番号】WO2009/064379
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(501146007)サーク・コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/012634
【国際公開番号】WO2009/064379
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(501146007)サーク・コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】
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