説明

物体検出装置

【課題】物体の検出精度を向上させる。
【解決手段】物体検出装置10の物標対象位置推定部25は、レーダ装置11から出力された前回のフレームのデータに対して物標対象生成部23により生成された物標対象の今回のフレームにおける推定位置EPを推定する。距離算出部27は、推定位置EPと今回のフレームにおいて物標対象生成部23により生成された複数の物標対象の各実位置APとの距離を算出する。探索領域設定部28は、距離算出部27により算出された距離が最も短い物標対象を基準物標対象SMとし、基準物標対象SMの実位置APを基準位置SPとした所定範囲を探索領域IAとして設定する。物標統合部29は、今回のフレームの複数の物標対象のうち、探索領域IA内に存在する複数の物標対象を統合して単一の物標対象とし、単一の物標対象を前回のフレームの物標対象と同一であると認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両に搭載されたレーダ装置により車両外部の物体を検知する際に、1つのグループを構成していた複数の物標が分離された場合に、車両の走行車線を考慮してトラッキングの連続性を判定する物体検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−204027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る物体検知装置によれば、車両の走行車線に検知されていた物標のグループと、他車線に分離された物標のグループとを誤って関連付けてしまうことを防止するだけであって、例えば、隣り合う走行車線を跨いだ位置に存在する物体などに対しては適切な検知を行なうことができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、物体の検出精度を向上させることが可能な物体検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る物体検出装置は、車両の進行方向の物体の位置を検出する物体検出手段(例えば、実施の形態でのレーダ装置11および反射点検出部21およびセグメント生成部22および物標対象生成部23)と、前記物体検出手段により過去に検出された前記物体の現在の位置を推定する位置推定手段(例えば、実施の形態での物標対象位置推定部25)と、前記位置推定手段により推定された前記物体の現在の位置と、前記物体検出手段により現在に検出された複数の前記物体の各位置との距離を算出する距離算出手段(例えば、実施の形態での距離算出部27)と、前記物体検出手段により現在に検出された複数の前記物体の各位置のうち、前記距離算出手段により算出された前記距離が最も短い前記物体の位置を基準とした所定範囲を設定する所定範囲設定手段(例えば、実施の形態での探索領域設定部28)と、前記物体検出手段により現在に検出された複数の前記物体のうち、前記所定範囲設定手段により設定された前記所定範囲内に存在する複数の前記物体を統合して単一の物体とし、該単一の物体を前記物体検出手段により過去に検出された前記物体と同一であると認識する認識手段(例えば、実施の形態での物標統合部29)と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る物体検出装置によれば、現在に検出された複数の物体のうち、過去に検出された物体の現在の推定位置に基づく所定範囲内に存在する複数の物体を統合して単一の物体とし、該単一の物体を過去に検出された物体と同一であると認識することから、単一の物体が複数の異なる物体として認識されてしまうことを抑制し、物体の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る物体検出装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る物体検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る物体検出装置において前回のフレームにて生成された単一の物標対象と今回のフレームにて生成された複数の物標対象との例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る物体検出装置において前回のフレームにて生成された単一の物標対象の形状に応じて設定される探索領域の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る物体検出装置において今回のフレームにて生成された複数の物標対象を統合して単一の物標対象とする例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る物体検出装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による物体検出装置10は、例えば車両に搭載され、図1に示すように、レーダ装置11と、ヨーレートセンサ12と、車速センサ13と、処理装置14とを備えて構成されている。
【0010】
レーダ装置11は、発信部11aと受信部11bとを備え、車両の外界(例えば、車両の進行方向の前方など)に設定された検出対象領域を複数の角度領域に分割し、各角度領域を走査するようにして、赤外光レーザやミリ波などの電磁波の発信信号を発信部11aから発信する。
そして、各発信信号が車両の外部の物体(例えば、他車両や構造物や路面など)や歩行者などによって反射されることで生じた反射波の反射信号を受信部11bにより受信する。
そして、この検出対象領域を構成する複数の角度領域に対する一連の走査毎に1つのフレームを対応付けて、各一連の走査毎で得られる複数の発信信号および反射信号に係る信号を、各フレーム毎のデータとして、逐次フレーム単位で処理装置14に出力する。
【0011】
ヨーレートセンサ12は、ヨーレートつまり車両重心の上下方向軸回りの回転角速度を検出し、この検出結果の信号を出力する。
車速センサ13は、自車両の速度(車速)を検出し、この検出結果の信号を出力する。
【0012】
処理装置14は、例えば図1に示すように、反射点検出部21と、セグメント生成部22と、物標対象生成部23と、物標対象記憶部24と、物標対象位置推定部25と、距離算出部27と、探索領域設定部28と、物標統合部29とを備えて構成されている。
【0013】
反射点検出部21は、レーダ装置11から逐次フレーム単位で出力される信号に基づき、フレーム単位において、反射波の反射点の位置を検出する。
セグメント生成部22は、フレーム単位において、反射点検出部21により検出された複数の反射点を反射点の位置に基づきセグメントに分類する。
【0014】
例えば、セグメント生成部22は、隣り合う反射点同士間の距離が所定の閾値未満である場合には隣り合う反射点を同一のセグメントに分類し、隣り合う反射点同士間の距離が所定の閾値以上である場合には隣り合う反射点を異なるセグメントに分類する。
【0015】
物標対象生成部23は、フレーム単位において、セグメント生成部22により分類された複数のセグメントの位置に基づき、所定距離範囲内に存在する複数のセグメントを、固有の物標(つまり、対象物を識別するための識別子)を有する物標対象として統合する。
なお、所定距離範囲内に単一のセグメントのみが存在する場合には、この単一のセグメントに対して、固有の物標を有する物標対象を生成する。
【0016】
物標対象記憶部24は、物標対象生成部23により生成されたフレーム単位での物標対象の位置(実位置AP)をフレームに対応付けて記憶する。
【0017】
物標対象位置推定部25は、物標対象記憶部24に記憶されている過去の複数のフレーム毎の物標対象の位置(実位置AP)の履歴と、走行状態検出部26から出力される車両の走行軌跡とに基づき、物標対象の位置(実位置AP)の変化を追跡するトラッキング処理を実行し、過去に物標対象生成部23により生成された物標対象の所定時間後の所定時刻(例えば、現在など)の位置(推定位置EP)を推定する。
【0018】
例えば、物標対象位置推定部25は、レーダ装置11から出力された前回のフレームのデータに対して物標対象生成部23により生成された物標対象の今回のフレームのデータにおける位置(推定位置EP)を推定する。
【0019】
走行状態検出部26は、車両のヨーレートおよび車速に基づき車両の走行軌跡を算出する。
【0020】
距離算出部27は、物標対象位置推定部25により推定された所定時刻に対する推定位置EPと、この所定時刻において物標対象生成部23により生成された物標対象の実位置APとの距離を算出する。
【0021】
例えば、距離算出部27は、物標対象位置推定部25により推定された前回のフレームの物標対象の今回のフレームにおける推定位置EPと、今回のフレームにおいて物標対象生成部23により生成された複数の物標対象の各実位置AP(APa,…)との距離を算出する。
【0022】
探索領域設定部28は、所定時刻において物標対象生成部23により生成された複数の物標対象のうち、距離算出部27により算出された距離が最も短い物標対象を基準物標対象SMとし、この基準物標対象SMの実位置APを基準位置SPとした所定範囲を探索領域IAとして設定する。
【0023】
例えば、探索領域設定部28は、レーダ装置11から出力された前回のフレームのデータに対して物標対象生成部23により生成された物標対象(前回のフレームの物標対象)の形状に基づき、基準位置SPの周囲を前回のフレームの物標対象の形状範囲によって取り囲むようにして形成される所定範囲を探索領域IAとして設定する。
【0024】
物標統合部29は、所定時刻において物標対象生成部23により生成された複数の物標対象のうち探索領域設定部28により設定された所定範囲内に存在する複数の物標対象を統合して単一の物標対象(後述する新たな基準物標対象SM)とし、この単一の物標対象を、過去に物標対象生成部23により生成された物標対象と同一であると認識する。
【0025】
例えば、物標統合部29は、今回のフレームに対して物標対象生成部23により生成された複数の物標対象のうち、基準位置SPと前回のフレームの物標対象の形状範囲とに基づいて設定された探索領域IA内に存在する複数の物標対象を統合して単一の物標対象(後述する新たな基準物標対象SM)とし、この単一の物標対象を、前回のフレームの物標対象と同一であると認識する。
【0026】
本実施の形態による物体検出装置10は上記構成を備えており、次に、この物体検出装置10の動作について説明する。
【0027】
先ず、例えば図2に示すステップS01においては、前回のフレームのデータに対して物標対象生成部23により生成された物標対象の今回のフレームのデータにおける位置(推定位置EP)を推定する。
【0028】
これにより、例えば図3(A),(B)に示すように、前回のフレームにて単一の物標対象Nが生成され、今回のフレームにて前回の物標対象Nが分解されてなる複数の物標対象M(Ma,…)が生成された場合に、前回の物標対象Nの位置(例えば、中心位置など)NPに対して今回のフレームでの推定位置EPが推定される。
【0029】
次に、ステップS02においては、前回のフレームの物標対象の今回のフレームにおける推定位置EPと、今回のフレームにおいて物標対象生成部23により生成された複数の物標対象の各実位置AP(APa,…)との距離を算出する。
【0030】
次に、ステップS03においては、今回のフレームにおいて物標対象生成部23により生成された複数の物標対象のうち、距離算出部27により算出された距離が最も短い物標対象を基準物標対象SMとして推定位置EPに関連付け、この基準物標対象SMの実位置APを基準位置SPとする。
【0031】
これにより、例えば図3(B)に示す複数の物標対象M(Ma,…)のうち、物標対象Mbが基準物標対象SMとされ、この基準物標対象SMの実位置APbが基準位置SPとして推定位置EPに関連付けられる。
【0032】
次に、ステップS04においては、同一の物標対象に対して以下のステップS05〜S10に示す統合処理を実行したフレームの数は所定フレーム数未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合、つまり同一の物標対象に対して所定フレーム数以上の回数で分解および統合が繰り返された場合には、以下のステップS05〜S10に示す統合処理の実行を省略して、前回のフレームの単一の物標対象が分解されてなる複数の物標対象を無条件で統合して、統合後の物標対象を前回のフレームの単一の物標対象と同一であるとして、エンドに進む。
【0033】
次に、ステップS05においては、推定位置EPに関連付けた基準物標対象SMの基準位置SPに対し、前回のフレームの物標対象の形状に基づく探索領域IAを設定する。
【0034】
これにより、例えば図4(A)〜(E)に示すように、前回のフレームの物標対象の形状が長方形Sである場合には、この長方形の各4隅に基準物標対象SMが配置されてなる4つの形状範囲S1〜S4によって、基準物標対象SMの基準位置SPの周囲を前回のフレームの物標対象の形状範囲によって取り囲むようにして形成される所定範囲が探索領域IAとして設定される。
【0035】
次に、ステップS06においては、探索領域IA内に今回のフレームにおいて物標対象生成部23により生成された物標対象が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
【0036】
次に、ステップS07においては、今回のフレームにおいて物標対象生成部23により生成され、かつ探索領域IA内に存在する物標対象の位置と、基準位置SPとの距離を算出する。
次に、ステップS08においては、基準位置SPに対して最短距離の物標対象と基準物標対象SMとを統合して新たな基準物標対象SMとし、この新たな基準物標対象SMを推定位置EPに関連付ける。
【0037】
次に、ステップS09においては、新たな基準物標対象SMの形状および位置を設定する。
次に、ステップS10においては、新たな基準物標対象SMの形状の大きさは、前回のフレームの物標対象の形状の大きさと同一であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS05に戻る。
【0038】
これにより、例えば図5(A)〜(B)に示すように、物標対象Mbを基準物標対象SMとして設定された探索領域IA内に存在する複数の物標対象M(Ma,Mc)のうち、先ず、物標対象Maが基準物標対象SMに統合されて、新たな基準物標対象SMが生成される。
【0039】
なお、この新たな基準物標対象SMに対する新たな基準位置SPは、例えば前回と同一位置、つまり前回に基準物標対象SMであった物標対象Mbの実位置APbに維持される。
そして、新たな基準物標対象SMの基準位置SPに対し、例えば前回の探索領域IAと同様にして、前回のフレームの物標対象Nの形状に基づく新たな探索領域IAが設定される。
【0040】
そして、例えば図5(B)〜(C)に示すように、新たな探索領域IA内に存在する物標対象M(Mc)が基準物標対象SMに統合されて、新たな基準物標対象SMが生成される。
そして、新たな基準物標対象SMの形状の大きさが、前回のフレームの物標対象Nの形状の大きさと同一であると判定されたことに応じて、新たな基準物標対象SMを、前回のフレームの物標対象Nと同一であると認識する。
【0041】
上述したように、本実施の形態による物体検出装置10によれば、今回のフレームにおいて物標対象生成部23により生成された複数の物標対象のうち、前回のフレームの物標対象の今回のフレームにおける推定位置に基づく所定範囲内に存在する複数の物標対象を統合して単一の物標対象とし、この単一の物標対象を過去に生成された物標対象と同一であると認識することから、単一の物標対象が複数の異なる物標対象として認識されてしまうことを抑制し、物標対象および物標対象に応じた物体の検出精度を向上させることができる。
【0042】
なお、上述した実施の形態において、ステップS10の処理は省略されてもよく、この場合には、ステップS09の処理を実行した後にステップS05に戻る。
【符号の説明】
【0043】
10 物体検出装置
11 レーダ装置(物体検出手段)
21 反射点検出部(物体検出手段)
22 セグメント生成部(物体検出手段)
23 物標対象生成部(物体検出手段)
25 物標対象位置推定部(位置推定手段)
27 距離算出部(距離算出手段)
28 探索領域設定部(所定範囲設定手段)
29 物標統合部(認識手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向の物体の位置を検出する物体検出手段と、
前記物体検出手段により過去に検出された前記物体の現在の位置を推定する位置推定手段と、
前記位置推定手段により推定された前記物体の現在の位置と、前記物体検出手段により現在に検出された複数の前記物体の各位置との距離を算出する距離算出手段と、
前記物体検出手段により現在に検出された複数の前記物体の各位置のうち、前記距離算出手段により算出された前記距離が最も短い前記物体の位置を基準とした所定範囲を設定する所定範囲設定手段と、
前記物体検出手段により現在に検出された複数の前記物体のうち、前記所定範囲設定手段により設定された前記所定範囲内に存在する複数の前記物体を統合して単一の物体とし、該単一の物体を前記物体検出手段により過去に検出された前記物体と同一であると認識する認識手段と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate