説明

物品にマーキングを印加するためのシステム及び方法

【課題】個人専用としてカスタマイズするために小規模にマーキングを印加するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】所望のマーキングに一致するように成形される染料パッド102を準備すること;染料パッド102に注入染料を印加すること;注入染料に活性液を印加し、それによって注入染料混合物を形成すること;染料パッドを、製造された物品の外表面の分離区域と接触させること;室温及び加圧下に、染料パッドの、製造された物品の外表面との接触をそのまま放置すること、放置は、注入染料混合物が、外表面の材料のポリマー構造を開放し、注入染料が外表面に浸透し、物品の基質内部に所望のマーキングを形成することを可能とするほど十分な持続時間実行される;及び、染料パッドを、外表面から取り除くこと、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品にマーキングを印加するためのシステム及び方法に関し、より詳細には、ゴルフボールなどの製造された物品に対し、マーク、符号、ラベル、図形、証印、ロゴ、数字、及びその他のマーキングを印加するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品デザイナー及び製造メーカーは、ゴルフボールなどの製造された物品に対し、マーク、符号、ラベル、図形、証印、ロゴ、数字、又はその他のマーキングを印字したいと思う場合がよくある。ゴルフボールの場合、従来法としては、パッド印刷、インクジェット印刷、及び、その他の、ボール表面の頂上にインクを堆積する方法が挙げられる。これらの従来法の場合、マーキングは、ボール表面の頂上層として印加されるために、マーキングは、使用時摩耗しやすい。さらに、マーキングは、ボールの外表面の頂上に印加されるために、摩耗率は、ボールの外表面そのものよりも急速である可能性がある。
【0003】
マーキングの摩耗特徴を改善するために、昇華印刷プロセスが開発された。これは、熱及び圧を用いて物品の表面にインクを昇華浸透させる。熱及び圧が必要なのは、染料の固体粒子を気体又は蒸気状態に変換し、それによって、染料の分散蒸気が、物品の表面に浸透、接着するようにするためである。
【0004】
昇華印刷の一例は、Gosettiに賦与される特許文献1に開示される。この特許は、ゴルフボールの上に証印を形成するのに、熱及び圧を印加することによって昇華性インクを成分の表面中に分散させることによって実行する。この明細書は、昇華を、染料固体粒子の、気体又は蒸気状態への変換と定義する。
【0005】
昇華印刷の別の例が、O'Brienに賦与される特許文献2に開示される。この特許は、複合材料から形成される物品の昇華染色を主題とする。O'Brienは、コンポジット混合物の中に最外側繊維層を埋設させるコンポジット品であって、ある一定量の光学的に明るい顔料、及び、その上に印加される、視覚的に異なる昇華プリントを有する物品を開示する。このO'Brienのプロセスは、光学的に明るい繊維・樹脂のコンポジット材料の最外側表面に昇華印刷を適用して証印を形成する。Gosettiと同様、O'Brienも、熱及び圧による、昇華染料の、コンポジット外面への転移を開示する。
【0006】
昇華の他、プラスチック品の表面内部にインクを印加するためのもう一つの製造プロセスは、一般に、注入染色と呼ばれるものである。典型的には、注入染色の場合、プラスチック品が染料液に漬けられると、染料は、該プラスチックの表面に浸透し、それによって表面コーティングとなるのではなく、むしろプラスチック分子の間に定着する。したがって、注入された染料の色は、擦っても簡単には剥がれない可能性がある。この染色法が開発されたのは、成形又は製造プロセス中に、プラスチック原料に着色剤を加える必要なく、プラスチック部品にカラーを印加し、それによって低い製造コストで、注文に合わせた、又は、小バッチ着色を可能とするためであった。カラー効果の量は、染料液の中で消費される時間量によって調節することが可能である。
【0007】
注入染色の例が、Witmanに賦与される、一般に、コートされる物品の着色を主題とする特許文献3に開示される。スーパーストレートが、物品の基質(サブストレート)の、少なくとも一部に対し固定的に接合されて、コート物品を生産する。後続ステップにおいて、着色染料含有材料システムが、着色染料をスーパーストレート中に注入する条件下において、該コート物品に印加される。特に、ポリマーコーティング(スーパーストレート)が、先ず、対象物に印加され、次いで、スーパーストレートが、(i)水、(ii)担体、(iii)染料、及び、(iv)ジオールを含む材料システムに、該染料をスーパーストレート中に拡散させる条件下で接触させられる。Witmanは、漬け込み、スプレイ、及びフローコーティングを含む、水性染色材料システムにスーパーストレートを接触させるための浸漬技術を開示する。
【0008】
注入染色の他の例が、Pylesらに賦与される特許文献4、及びPylesらに賦与される特許文献5に開示される。これらの特許は、プラスチック品に色づけする方法を開示する。この開示の注入染料印加法は、プラスチック品の浸漬を、例えば、漬け込み、スプレイ、カーテン(部品を、染料の滝カーテンの中を通過させる)コーティング、フローコーティング、スピン塗布、及び浸漬染色によって実行することを含む。
【0009】
最終製品を生産するために、昇華インクプロセス及び注入染色などの、物品をマークするための従来法を、全体的製造プロセスの中に組み込んでもよい。しかしながら、これらの技術は、通常、大がかりな装置、及び、製造後過程では都合良く実現することができないような製造条件を必要とする。昇華インクプロセスは相当な熱及び圧の印加を必要とし、それは、多くの場合、最終製品が耐えられないほどで、エンドユーザーの能力を超えるものである。同様に、従来の注入染色プロセスは、漬け込み、スプレイ、カーテンコーティング、フローコーティング、スピン塗布、及び浸漬染色などの全体浸漬コーティング法を受け容れるための特別装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,935,240号
【特許文献2】米国特許第6,004,900号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0256255号
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0089942号
【特許文献5】米国特許第6,733,543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、これらの従来法は、物品の製造後マーキングには不適である。製造者は、消費者に対し、購入時又は購入後に、製造された物品をマークするか、又はその他のやり方でその個人の所有物であることの銘記を可能とすることによって、該製造された物品をカスタマイズする能力を賦与したいと思う場合がよくある。例えば、ゴルフボールの消費者は、そのゴルフボールを社名及びロゴによって個人専用のものとしたいと思うことがよくある。そして、典型的には、所望の数の個人化ゴルフボールは、大規模な生産努力と相容れない。したがって、小規模の、製造後条件下に物品に対しマーキングを印加するためのシステム及び方法は依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施態様は、ゴルフボールなどのプラスチック部品の表面に選択的に印加される注入染料使用による、物品に対してマーキングを印加するためのシステム及び方法を提供する。この選択的に印加される注入染料は、物品の表面に取り込まれ、プラスチック表面と同じ速度で摩耗する、摩耗耐性マーキング、又は、該マーキングが注入されるコーティングを提供する。
【0013】
一局面は、所望のマーキングによって製造された物品をマークするための方法であって、所望のマーキングに一致するように成形される染料パッドを準備すること;該染料パッドに注入染料を印加すること;該注入染料に活性液を印加し、それによって注入染料混合物を形成すること;該染料パッドを、製造された物品の外表面の分離区域と接触させること;室温及び加圧下に、染料パッドの、製造された物品の外表面との接触をそのまま放置すること、放置は、注入染料混合物が、外表面材料のポリマー構造を開放し、注入染料が外表面に浸透し、該物品の基質内部に所望のマーキングを形成することを可能とするほど十分な持続時間実行される;及び、染料パッドを、外表面から取り除くこと、を含む方法を提供する。
【0014】
別局面では、活性液は、水及びアルコールの一方を含んでもよい。
【0015】
別局面では、注入染料に対する活性液の印加は、染料パッドにおいて、破断可能な障壁によって注入染料から隔離される活性液を保存すること、及び、該障壁を破断することを含んでもよい。
【0016】
別局面では、活性液の保存は、該活性液を破断可能なカプセル内に保存することを含んでもよい。
【0017】
別局面では、活性液の保存は、不透過性破断可能層の背後に活性液を含むことを含んでもよい。
【0018】
別局面では、製造された物品はゴルフボールを含んでもよい。
【0019】
別局面では、注入染料に対する活性液の印加、外表面に対する染料パッドの当接、外表面に対し染料パッドを接触させたままの放置、及び、染料パッドの除去は、エンドユーザーによって完了されてもよい。
【0020】
別局面では、所望のマーキングに一致するように成形される染料パッドを準備することは、複数の選択可能なマーキングを表示すること、該複数の選択可能なマーキングの中から所望マーキングの選択を消費者から受容すること、及び、該所望マーキングにしたがって成形されるように染料パッドを形成することを含んでもよい。
【0021】
別局面では、所望のマーキングに一致するように成形される染料パッドを準備することは、消費者が、所望のマーキングとなるようにカスタムマーキングを創出することを可能とし、該カスタムマーキングにしたがって成形されるように染料パッドを形成することを含んでもよい。
【0022】
別局面では、所望のマーキングに一致するように成形される染料パッドを準備することは、エンドユーザーから物品の特定名を受容すること;該特定名から、該物品の表面特徴を決定すること;及び、染料パッドの接触面上に、物品の該表面特徴に一致する相補的特徴を形成することを含んでもよい。
【0023】
別局面では、物品はゴルフボールを含んでもよく、特定名は、メーカー及び該ゴルフボールに関連するモデルを含んでもよく、及び、表面特徴は、メーカー及び該ゴルフボールのモデルに関連するディンプルパターンを含んでもよい。
【0024】
別局面では、方法はさらに、染料パッドの接触面に表面特徴を形成することを含み、その際、該表面特徴は、該染料パッドと接触される物品の外面上の、対応表面特徴と嵌合するように構成されてもよい。
【0025】
別局面では、染料パッドを、製造された物品の外表面の分離区域と接触させることは、該物品を受容する大きさ及び形状を有する金型を準備することを含み、受容は、該金型と物品の間で染料パッドが加圧されるように行われてもよい。
【0026】
別局面は、所望のマーキングによって製造された物品をマークするための注入染色キットであって、注入染料、及び、該所望のマーキングに一致するように成形され、該製造された物品の外面の分離区域に接触する染料パッドを含み、該染料パッドは、注入染料を吸収するように構成され、注入染料は、室温及び加圧下に活性液によって活性化するように構成され、そのため、注入染料は、染料パッドが当接される製造された物品の表面に浸透することが可能とされるキットを提供する。
【0027】
別局面では、活性液は、水及びアルコールの一方を含んでもよい。
【0028】
別局面では、活性液は、パッド内に含まれ、破断可能障壁によって注入染料から隔離されていてもよい。
【0029】
別局面では、破断可能障壁は破断可能なカプセルを含んでもよい。
【0030】
別局面では、染料パッドは、該染料パッドに力が印加されるとき、破断可能な障壁を刺入するように構成される内部構造を含んでもよい。
【0031】
別局面では、注入染色キットはさらに、染料パッドの第1側面に不透性裏打ち、及び、第1側面の反対の、染料パッドの第2側面に排除可能カバーを含んでいてもよい。
【0032】
別局面では、染料パッドは、製造された物品に接触するように構成される接触面、及び、該接触面の反対の外表面を含んでもよく、キットはさらに、該外表面の上に接着層を含み、該接着層は、製造された物品の表面に接着し、染料パッドを製造された物品の表面に押しつけるように構成されてもよい。
【0033】
別局面では、製造された物品はゴルフボールを含んでもよい。
【0034】
別局面では、染料パッドは、染料パッドの第1部分を、染料パッドの第2部分から隔離する分割器であって、分割は、第1部分に印加される第1染料が、第2部分に印加される第2染料と混じることがないように行われる分割器を含んでもよい。
【0035】
別局面では、物品はゴルフボールを含んでもよく、該ゴルフボールの表面に接触する染料パッドの表面は、ゴルフボールの対応ディンプルと嵌合するように構成される突起を含んでもよい。
【0036】
別局面では、注入染色キットはさらに、製造された物品の形状と適合する金型を含んでもよく、その際、注入染色キットは、金型と物品との間に染料パッドを加圧するように構成される。
【0037】
別局面では、製造された物品はゴルフボールを含んでもよく、染料パッドは、ゴルフボールの全体的表面湾曲に一致するように曲面状であってもよい。
【0038】
別局面では、製造された物品に接触される染料パッドの表面は、指定の色及びデザインによってあらかじめマークされていてもよい。
【0039】
別局面は、ゴルフボールを所望のマーキングによってマークするための注入染色キットを供給するための方法を提供する。この方法は、消費者から、所望のマーキングの指示、及び、マークされるゴルフボールの特定名を受容すること;所望のマーキング、及び、マークされるゴルフボールの特定名にしたがって染料パッドを形成すること;該消費者に、該染料パッド、注入染料、及び活性液を供給すること;及び、染料パッド上において、該注入染料及び活性液を混ぜ合わせて注入染料混合物とし、その染料パッドをゴルフボールに印加するための案内を消費者に提供すること、を含んでもよい。
【0040】
別局面では、染料パッド、注入染料、及び活性液を消費者に供給することは、染料パッドに、注入染料及び活性液の内の一方を含浸させること、及び、破断可能な障壁の後ろに、注入染料及び活性液の内の他方を含むこと、を含んでもよく、その際、案内は、該破断可能な障壁を破断する方法を説明する。
【0041】
別局面では、消費者から、所望のマーキングの指示を受容することは、複数の選択可能なマーキングの中からの選択を受容すること、及び、該消費者によってデザインされるカスタムマーキングを受容すること、の内の一方を含んでもよい。
【0042】
別局面では、ゴルフボールの特定名は、該ゴルフボールのモデルを含んでもよく、染料パッドの形成は、ゴルフボールの該モデルのディンプルパターンを決めること、及び、ゴルフボールのモデルの該ディンプルパターンにマッチする突起を持つ、染料パッド接触面を形成することを含んでもよい。
【0043】
本発明の他のシステム、方法、特色、及び利点は、当業者には明白であろうし、或いは、下記の図面及び詳細な説明を精査することによって明白となろう。そのような追加のシステム、方法、特色、及び利点は全て、本明細書及び本概要の範囲に含まれ、本発明の範囲に含まれ、かつ、下記の特許請求項によって保護されることが意図される。
【0044】
本発明は、下記の図面及び説明を参照することによってさらによく理解することが可能である。図面の成分は必ずしも実尺に合致するものではなく、強調はむしろ本発明の原理の具体的説明に置かれる。さらに、図面において、同じ参照数字は、種々の投影図を通じて対応する部品を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】物品にマーキングを印加するシステムの例示実施態様の等尺模式図である。
【図2】層状構造を有する染料パッドの例示実施態様の断面模式図である。
【図3】2色の円マーキングを印加することが可能なパッドの例示実施態様の等尺模式図を示す。
【図4】文字デザインに成形される染料パッドの例示実施態様の等尺模式図である。
【図5】隆起部分、及び、該隆起部分を囲む陥凹部分を有する染料パッドの例示実施態様の等尺模式図を示す。
【図6】マークされる物品の外面における相補的陥凹と協力し合う、突起を持つ接触面を有する染料パッドの例示実施態様の等尺模式図を示す。
【図7】物品の表面に対し染料パッドを保持する接着層を有する、マーキング印加システムの例示実施態様の斜視模式図を示す。
【図8】活性化注入染料が表面を浸透し、基質をマークした後における、物品の表面と接触する染料パッドの例示実施態様の断面模式図を示す。
【図9】物品にマーキングを印加する方法の例示実施態様を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施態様は、物品に対しマーキングを選択的に印加するための注入染色システム及び方法を提供する。選択的印加は、物品の比較的大きな表面内に、孤立すなわち分離マーキングを供給する。
【0047】
図1は、物品にマーキングを印加するためのシステム100の例示実施態様の等尺図である。一実施態様では、システム100は、パッチパッド又は刺青パッドなどのパッド形状を取ってもよい。分かり易くするために、下記の詳細な説明は好ましい実施態様を論ずることにするが、本発明は、そうしようと思えば、例えば、シート、スタンプ、又はローラーを用いてパッドを印加する、他の形態を取ることも可能であることを念頭に置かなければならない。したがって、本明細書において論ぜられる特定パッドの利益にかかわらず、染料を吸収し、及び/又は、分配することが可能である限り、いずれの材料及び/又は成分に対しても本発明は広く適用することが可能であることを考慮しなければならない。
【0048】
図示のように、システム100は、染料パッド102、バッキング104、及び排除可能カバー106を含んでもよい。染料パッド102は、注入染色プロセスに好適な染料を吸収するように構成されてもよい。染料パッド102はさらに、活性液108を含んでもよく、この液は、システム100の使用前は、好ましくは、障壁によって染料から隔離される。障壁は、破断可能容器、例えば、カプセル又は複数のマイクロカプセルであってもよい。障壁はさらに、不透過ではあるが、破断が可能な材料から成る、一つ以上の包囲層であって、その後ろに活性液が含まれる層を含んでもよい。一例として、図2は、層状構造を有する染料パッド200の断面図を示し、該パッドにおいて、活性液208は、上層210、下層212、及び側面パネル214の間に含まれる。活性液208とは反対の、上層210及び下層212側に、染料パッド200は、染料によって含浸される上方部分216及び下方部分218を含んでもよい。それとは別に、図2に示される二つの層210、212及び二つの部分216、218の代わりに、染料パッドは、染料で含浸される単一部分の染料パッドから活性液を隔離する単一不透過層を含んでもよい。
【0049】
染料パッドにおいて活性液から染料を隔離することによって、マーキング印加システムの製造、保存、包装、及び販売がすぐに使用可能な状態で行われることが可能となる。エンドユーザーは、望むときに、例えば、染料パッドを、マーキングが印加される物品に接触させるときに、注入染料を活性化することが可能である。エンドユーザーは、注入染料から活性液を隔離する障壁を破壊することによって注入染料を活性化する。例えば、活性液がカプセル又はマイクロカプセルの中に含まれるか、又は層の間に含まれる場合、エンドユーザーは、例えば、加圧する、捻る、捏ねる、又は折り曲げることによって、障壁を破壊するのに十分な力を印加してもよい。
【0050】
ある実施態様では、マーキング印加システムは、障壁を刺入するための準備器具を含んでもよい。例えば、ピック又はナイフなどの独立ツールを、注入染料を含浸させた染料パッドの外方部分を貫き、該パッド内部の障壁を刺入するのに使用してもよい。このような実施態様では、染料パッドの外方部分は、簡単に刺入され、次いで、事実上その元の形状に復帰して刺入孔を閉鎖し、そのようにして、パッド全体に分散可能な活性液を含む材料から製造されてもよい。染料パッドの外方部分のための適切な材料は、弾性材料、例えば、記憶フォーム(ポリウレタン)、又は自己修復材料、例えば、自己修復ポリマー及び繊維強化ポリマーコンポジットを含んでもよい。障壁を刺入するための外的準備器具の外に、染料パッドはさらに、内的準備器具、例えば、特定の力がパッドに印加されたときに障壁を刺入する、例えば、鋭利構造をパッド内に含んでもよい。例えば、染料パッドは、鋭利な先端を持つ三角形構造が含まれる屈曲性カプセルを含んでもよく、そのため、該屈曲性カプセルは、揉まれると、該三角形構造の鋭い角によって刺入される。
【0051】
必要に応じて、物理的障壁によって活性液を注入染料から隔離する代わりに、活性液は、パッド全体に亘って注入染料の間に分散されるが、空気に暴露されるまでは、注入液を活性化しないようになっていてもよい。この場合、使用直前まで、染料パッドは密封されていてもよい。使用時、カバーを取り除いて、染料パッドを空気に暴露し、該パッドを物品に接触させて所望のマーキングを印加してもよい。
【0052】
別の実施態様では、活性液は、使用時に染料パッドに印加されてもよい。例えば、注入染料を含浸させた染料パッドは、独立容器に保存される活性液を備えていてもよい。マーキング印加システムの使用準備が整ったならば、活性液を染料パッドに印加し、染料パッドをマークされる物品に接触させる。活性液は、染料パッドに対し、例えば、該パッドに活性液を刷毛塗りすることによって、パッドに活性液を噴霧することによって、パッドに別のパッド、泡ブラシ、又は綿棒を用いて活性液を滲ませることによって、又は、活性液を、マークされる物品状の区域に印加し、染料パッドを該区域に接触させることによって、印加してもよい。
【0053】
それとは別に、パッドに対する染料及び活性液の印加は逆転させてもよく、その場合、パッドは先ず活性液によって含浸され、次いで、使用時、染料がパッドに印加される。
【0054】
別の実施態様では、一方で注入染料及び活性液は独立容器において供給される、空のパッドが準備されてもよい。使用時、注入染料及び活性液は、パッドに供給されてもよい。次に、活性化注入染料を含むパッドを、マークされる物品に接触させてもよい。
【0055】
使用時に(製造時とは反対に)、注入染料をパッドに印加することによって、エンドユーザーは、パッドによって生みだされるマーキングの外観を、デザイン及びカラーの点でカスタマイズすることが可能となる。一実施態様では、ユーザーは、みずから染料を、所望のデザイン及びカラーを選びながら、パッドに印加してもよい。別の実施態様では、パッドの上面は、例えば、ガイドライン、輪郭、及び符号を用い、指定のカラー及びデザインによってあらかじめマークされていてもよい。次に、エンドユーザーは、符号によって指定される通りに種々の色の染料を、ガイドライン及び輪郭によって表示される区域内に印加してもよい。カスタムマーキングが可能な染料パッドのために、注入染料について、個別の要求及び趣味を受け容れるよう広範なカラー選択が準備されてもよい。
【0056】
マーキング印加システムはさらに、染料パッドのある区域内に、手で印加される注入染料及び/又は活性液を含む準備器具を含んでもよい。例えば、図3は、2色の円マーキングを印加することが可能なパッド300の等尺図を示す。パッド300は、パッド300の外方部分304を、パッド300の内方部分306から隔離し、円状マーキングを定める不透過分割器302を含んでもよい。ユーザーは、内方部分306に第1着色染料、及び、外方部分304に、第2の、異なる着色染料を印加してもよい。分割器302は、これらの異なる着色染料を隔離し、それらが混じり合って、望まないカラー変動を引き起こすことを回避する。分割器302は、もちろん、他のデザインを実現するように別の形状、位置取りを有してもよいし、さらにパッド300を分割してさらに新たな部分に分けて所望のマーキングを生みだすように、追加の連続又は分離セクションを含んでもよい。パッドを部分に分離する分割器は、任意の所望のマーキング、例えば、文字、数字、ロゴ、アイコン、及び絵柄を生みだすように配置されてもよく、次に、ユーザーはそれらを彼又は彼女の好みに合わせて着色してもよい。
【0057】
別実施態様では、染料パッドは、所望のマーキングを形どるように形成されてもよい。例えば、染料パッドの辺縁は、所望のマーキングを生みだすように成形されてもよい。図4は、文字デザイン、この場合は"ABC"文字デザインである、に成形される例示の染料パッド402の等尺図を示す。一局面では、染料パッドは、製造時に所望のマーキングに合わせて裁断される。別局面では、染料は、四角形、正方形、又は円などの一般的形状として与えられ、ユーザーはそれを、特定の所望の形に裁断又はパンチしてもよい。例えば、文字又は数字の形に合わせた形状を持つ金型又はパンチツールが、一般的形状の染料パッドを成形して、所望の文字又は数字に変えるようになっていてもよい。別局面では、複数の独立染料パッドであって、それぞれが成形されて、デザイン、単独数字、又は文字に変えられるパッドを供給し、ユーザーは、これらを配置して、所望のデザイン、数字、単語、又はそれらの組み合わせを得るようになっていてもよい。
【0058】
それとは別に、図4の染料パッド402に示すように、染料パッドの辺縁を裁断して所望のマーキングに変える代わりに、染料パッドは、所望のマーキングを定める隆起又は浮上部分であって、該染料パッドの陥凹又は沈下部分によって囲まれる部分を含んでもよい。図5は、この実施態様による例示染料パッド500であって、所望のマーキングを実現するための隆起部分510、及び、該隆起部分510を囲む陥凹部分512を有する染料パッド500の等尺図を示す。この構成では好都合にも、ユーザーは、陥凹部分512に染料を与えず、隆起部分510のみに染料を印加するだけでよい。
【0059】
再び図1を参照すると、マーキング印加システム100はさらに、染料パッドを保護及び操作するため、及び、マークされる物品に対し染料パッドを軸揃えし、位置づけるための準備器具を含んでもよい。図示のように、システム100は、使用のその時まで、染料パッド102の接触面110を保護、密閉する排除可能カバー106を含んでもよい。カバー106によって、注入染料又は活性液の蒸発、及び、染料パッド102がマークされる物品に接触させられる前の、物体に対する意図しないマーキングの回避が可能とされる。マーキング印加システム100はさらに、バッキングであって、染料パッド102に固定的に付着され、染料パッド102の背面を密封し、該マーキング印加システム100を保持するための構造を提供するバッキング104を含んでもよい。適切なハンドルを提供するよう、バッキング104は、染料パッド102よりも堅固であり、図1に示すように、染料パッド102の辺縁からはみ出して延びてもよい。
【0060】
マークされる物品の表面との均等な接触及び軸揃えを可能とするために、ある実施態様は、染料パッド102の接触面110の上に、マークされる物品の各表面特徴と協力し合う表面特徴を提示する。例えば、染料パッド102の接触面110とマークされる物品の表面の上に、対応する突起及び陥凹が供給されてもよい。これによって、二つの表面は、マーキングが望まれる全域において互いに接触し、そのため、染料は、物品に対し均等に、できるだけ印加範囲及び透明度に変動が無いように印加することが確保されると考えられる。この対応的突起及び陥凹によってさらに、染料パッド102は、マークされる物品に対し適正に軸揃えされるので、該物品に対する、マーキングの、所望の場所及び軸における印加が確保されると考えられる。
【0061】
例として、図6は、マークされる物品の外面における相補的陥凹と協力し合う、突起614を持つ接触面610を有する染料パッド600の等尺図を示す。例えば、突起614は、ゴルフボールの対応的形状及び位置のディンプルの内部に位置づけられ、それによって、該ディンプル内及び周囲における均等な接触を確保するようにすることが可能である。図6は、単純な長方形パッド600における突起614を示すが、突起は、ゴルフボールなど、突起に対応する陥凹を有する物品との接触をより良くするために、図4のパッド402などの特定デザインを持つように成形される染料パッドの接触面に組み込まれてもよい。
【0062】
別実施態様では、染料パッドそのものが、マークされる物品の輪郭とマッチするように湾曲、又はその他の形状を持つ。一実施態様では、染料パッドは、ゴルフボールのディンプルパターン及び全体表面にマッチする、形状、湾曲、及び突起を持つようにあらかじめ成形される。
【0063】
物品の表面輪郭及び特徴にマッチするように染料パッドを成形することによって、前述のように、均等な接触が助長され、物品にマーキングを印加するのに十分なものとなる可能性がある。しかしながら、マークされる物品に染料パッドを当接させる際、マーキングの全域に亘って染料が、物品の表面に均一に移行することを助けるために、染料パッドは、該物品の表面に対し物理的に均等に加圧されることが好ましいと考えられる。一実施態様では、エンドユーザーによって、染料パッドは手によって所定の場所に保持され、加圧されてもよい。別実施態様では、マーキング印加システム100は、物品の表面に染料パッドを保持し、加圧するための準備器具を含んでもよい。例えば、物品の表面に染料パッドを接触させた後、物品を、該物品の形状にマッチする金型に納め、金型と物品の間で染料パッドがプレスされるようにすることも、しようと思えば可能と考えられる。物品の重量又は金型の重量(どちらが上に置かれるかに依存する)は、染料パッドが物品の表面に対し均等なプレスを持続するのに十分な力を供給してもよい。さらに、マークされる物品の表面に対し染料パッドをプレスするために、クランプ、バイス、又はその他の把持デバイスを使用してもよい。
【0064】
一実施態様にしたがって、図7は、物品720、この例ではゴルフボールである、の表面に対し染料パッド702を保持する接着層716を有する、マーキング印加システム700の斜視図を示す。図7に示すように、接着層716は透明であり、そのため、染料パッド702及びその位置どり及び条件が、接着層716越しに目視可能となっていてもよい。物品720に直面する接着層716の側は、接着剤によって完全に覆われていてもよい。或いは、図7の例に示すように、接着剤は、接着層716の、物品720に直面する側に選択的に印加されていてもよい。例えば、接着剤は、図7に示すように、接着層716の辺縁に沿うストリップ719として印加されてもよい。物品720の表面に接着層716を接着することによって、ユーザーに対し手でパッド702をプレスすることを要求することなく、接着層716を染料パッドの周囲に引き下ろし、染料パッド702を物品720の表面に対ししっかりと接触させてプレスすることが可能となる。接着層716は、染料パッド702に対して一定の力を印加してもよく、印加は、パッドを物品720に対し押し続け、それは、注入染料が物品720の表面に浸透し、それをマークすることを可能とするほど十分に長い期間行われる。
【0065】
図8は、活性化注入染料が表面804に浸透し、基質をマークした後における、物品806の表面804と接触する染料パッド802の断面図を示す。図示のように、物品806(例えば、ゴルフボールであってもよい)は、例えば、ペイント又は射出成形プラスチックであってもよい、第1透明コート層808及び基底層810を有する。注入染料は、基底層810の上及び内部にマーキング812を創出したところである。マーキング812は、表面804の下に停留するので、マーキング812は簡単には剥がし落とされることがなく、マーキングが表面804の上に印加された場合にこうなるだろうと予想される耐久時間よりも長持ちがする。
【0066】
上述のマーキング印加システムを念頭において、図9は、物品にマーキングを印加するための例示の方法900のフローチャートを示す。図示のように、ステップ901において、方法は、所望のマーキングに一致する形状を持つ染料パッドを準備することによって開始する。この染料パッドは、所望の形状を取るように製造され、ユーザーに提供されるか、又はそれとは別に、ユーザーによって所望の形に成形されてもよい。
【0067】
ステップ902において、注入染料が、染料パッドに印加されてもよい。注入染料は、水溶液及び界面活性剤を含んでもよい。染料パッドは、該パッドに注入染料を含浸させて製造されてもよく、或いはそれとは別に、エンドユーザーが、使用時、注入染料を染料パッドに印加してもよい。
【0068】
ステップ904において、注入染料は、活性液によって活性化されてもよい。活性液は、染料パッドの一部として製造されてもよく、例えば、染料パッド内に含まれてもよく、カプセル、複数のマイクロカプセル、又は封入層などの障壁によって注入染料から隔離されてもよい。この場合、障壁を破って活性液の注入染料に対する接触を可能とすることによって、注入染料を活性化してもよい。活性液はさらに、注入染料を有する染料パッド全体に亘って分散され、空気と接触することによって--その場合、染料パッドからカバーが剥がされ、染料パッドは空気に暴露される--活性化されてもよい。活性液はさらに、使用時に、別に、例えば、パッドに活性液を噴霧、刷毛塗り、又は滲ませることによって、染料パッドに印加してもよい。注入染料の活性化はさらに、先ず、染料パッドに活性液を印加し、次いで注入染料を印加することを含んでもよい。
【0069】
ステップ906において、染料パッドは、製造された物品の外面に接触させてもよい。染料パッドは、注入染料が活性化される前又は後に、物品と接触させてもよい。例えば、染料及び/又は活性液が、製造後に染料パッドに印加されて、染料パッド内には含まれない、実施態様では、染料及び活性液は、染料パッドを物品と接触させる前に、互いに接触させられてもよい。染料及び活性液が、製造済み染料パッド内に含まれる実施態様では、先ず、染料パッドが物品の上に置かれ、その後、例えば、注入染料を活性液から隔離する、染料パッド内の障壁(例えば、マイクロカプセル)を破るのに十分な力によって染料パッドを該物品に押しつけることによって、活性液を放出して注入染料を活性化してもよい。それとは別に、そうしようと思うならば、活性液を注入染料から隔離する障壁を先ず破り(例えば、染料パッドを折り曲げる、折りたたむ、プレスする、押しつぶす、又は捻ることによって)、次いで物品の表面に染料パッドを接触させることも可能であると考えられる。
【0070】
ステップ908において、染料パッドは、通常の室温条件(例えば、室温及び気圧)の下で、製造された物品の外面に接触した状態で、活性化注入染料が該外面に浸透することを可能とするのに十分な時間放置される。必要に応じて、この期間に、染料パッドに対し力を印加して、染料パッドを物品の外面に押しつけ、そうすることによって、パッドと外面の間の均等な接触、及び、注入染料の、物品の外面への定常な転送を確保してもよい。力は、ユーザーが手で印加してもよいし、或いは、独立デバイス、例えば、金型、クランプ、バイスによって、又は、上の例で記載したように、染料パッドの周囲に引き下ろされ、物品の外面に接着する接着層によって印加されてもよい。
【0071】
ステップ910において、染料パッドは、外面から取り除かれてもよい。染料が物品の外面に注入されるため、それによってマーキングが物品の上に残される。必要に応じて、物品の外面は、余分な注入染料又は活性液が少しでもあればそれを取り除くために、拭き取るか、又はその他のやり方で清浄化してもよい。例えば、物品は、脱イオン水によって濯ぎ、次いで乾燥してもよい。
【0072】
図9は、ある特定順序のステップ901-910を図示するが、別の実施態様は、ステップの記述において上に含めたいくつかの例で説明したように、これらのステップを異なる順序で実施してもよい。別の例として、所望のマーキングに一致する形状を持つ染料パッドを準備するステップ901は、注入染料が染料パッドに印加された後に実行してもよい。例えば、注入染料によって含浸される染料パッドがエンドユーザーに提供されてもよく、次に、該ユーザーは、所望のマーキングに一致する形状に染料パッドを裁断する。異なる順序に加え、図9に基づいて記載される例示のステップは、事実上同時に実行されてもよい。例えば、活性液が先ず染料パッドに印加され、次に染料の印加が続き、その後、注入染料を活性化するステップ904は、注入染料を染料パッドに印加するステップ902と事実上同時に実行されてもよい。
【0073】
さらに、別の実施態様では、物品にマーキングを印加する方法は、同じ物品に対し、又は、複数の異なる物品に対し、複数のマーキングを印加するように繰り返されてもよい。例えば、マーキング印加システムは再使用可能であって、そのため、いくつかの物品に同じマーキングを印加するために同じマーキング印加システムが使用されるようになっていてもよい。そのような場合、染料パッドは、それら全ての物品に対しマーキングを印加するのに十分な染料及び活性液を含むように構成されていてもよいし、或いは、必要に応じて染料及び活性液の再補給を受容するように構成されていてもよい。さらに、同じ物品に対し異なるマーキングを印加するために、異なるマーキング印加システムを使用してもよい。
【0074】
実施態様では、マーキング印加システムにおいて使用される染料及び活性液は、注入染料処理に適切であってもよいし、マークされる製造された物品の原料と適合してもよい。好ましくは、活性液は、染料及び物品の原料と相互作用を持ち、物品の原料分子の間に隙間を開放し、そうすることによって、染料が、基質の中に浸透、分散することを可能とする。注入染料のために使用される活性液は、染料に溶解すると同時に、穏やかな条件下に、染料分子の、物品の基質中への分散を促進してもよい。活性液は、基質を膨潤させ、開放ポリマー構造を実現してもよく、これによって、染料分子の基質中への急速な分散が可能となる。
【0075】
適切な染料、及び、溶媒を含む活性液の、非限定的例が、米国特許第6,733,543号;米国特許出願公開第2007/0256255号;米国特許出願公開第2008/0098536号(本発明の譲受人に賦与される);米国特許出願公開第2009/0089942号に開示される。なお、これらの特許文書の全体を引用により本明細書に含める。さらに、適切な染料及び活性液に関する、その他の非限定的例は、BAYER MATERIAL SCIENCE LLC、ピッツバーグ、ペンシルバニア州が開発した、プラスチック製造部品の注入着色のAURA技術から引用することが可能である。
【0076】
一実施態様では、透明ウレタンの外部コーティング、及び、不透明ウレタンペイントの基底層、又は、射出成形着色プラスチック基底層(例えば、二酸化チタンによる着色)を有するゴルフボールに注入染料を印加してもよい。活性液は、透明コーティング及び基底層のポリマー構造を開放し、染料の基底層への分散を可能とする水及び/又は別の溶媒(例えば、アルコール)を含んでもよい。注入染料は、活性液が水である場合、水溶性染料であってもよく;例えば、染料は、米国特許第4,284,729号;4,460,690号;4,732,570号;4,812,141号に記載されるように、アルキレンオキシ置換発色団などの液体染料であってもよい。注入染料はさらに、水以外の溶媒、例えば、有機溶媒(例えば、アルコール)に可溶な染料であってもよい。適切な染料としては、分散染料を含む静的染料(例えば、Disperse Blue #3、Disperse Blue #14、及びDisperse Red #17);直接染料(例えば、Solvent Blue 35、Solvent Green 3、及びAcridine Orange Base);水に不溶なアゾ、ジフェニルアミン、及びアントラキノン化合物;酸性染料;及び、非移動性静的染料(例えば、米国特許第4,284,729号;4,460,690号;4,732,570号;4,812,141号に開示されるもの)が挙げられる。一実施態様では、染料及び活性液は、一緒に混ぜ合わされると、例えば、米国特許出願公開第2007/0256255号に記載されるものと同様に、染料、水、担体溶媒、及びジオールの混合物を含んでもよい。
【0077】
ある実施態様では、染料又は活性液はさらに、二つ以上の、互いに混じり合わない液体又は固体(例えば、染料及び水)を懸濁して保持する、界面活性剤又は乳化剤を含んでもよい。適切な乳化剤としては、イオン性、非イオン性、又はそれらの混合物が挙げられる。別の実施態様では、染料又は活性液はさらに、UV安定剤、光沢剤、金型剥離剤、帯電防止剤、熱安定剤、IR吸収剤、及び抗微生物剤の少なくとも一つから選ばれる性能強化添加物を含んでもよい。
【0078】
物品にマーキングを印加するための、上述のシステム及び方法に基づき、さらに別の実施態様は、ユーザーの願望及び趣味にしたがって、物品に印加されるマーキングをカスタマイズするための準備器具を含んでもよい。一実施態様では、ユーザーは、例えば、印刷カタログ又はインターネットウェブサイトにおいて提示される、複数の、あらかじめデザインされたマーキングの中からマーキングを選んでもよい。別の実施態様では、ユーザーは、彼又は彼女自身のマーキングを、例えば、手で、又は、自分のデザインソフトウェアを用いて、又は、インターネットウェブサイトを通じて供給されるソフトウェアツールを用いてデザインしてもよい。ウェブサイトツールを通じて、ユーザーは、あらかじめデザインされたキャラクター、文字、絵柄、又はその他の画像を配置変えして、マーキングのためのカスタマイズデザインに変換してもよい。これらのウェブサイトツールによって、ユーザーはさらに、マーキング用デザインに組み込むための、又はマーキング用デザインとして使用するための、企業ロゴなどのカスタムデザインをアップロードすることが可能である。
【0079】
あらかじめデザインされたマーキングから選ばれたものであれ、ユーザーによってカスタムデザインされたものであれ、一旦デザインが最終決定されたならば、染料パッドは、そのデザインにしたがって製造されてよい。一実施態様では、染料パッドは、デザインにマッチするように成形され、別の染料及び活性液と共にユーザーに提供され、これらは、ユーザーによってパッドに添加されることが意図される。別の実施態様では、染料及び/又は活性液は、ユーザーに提供される前に、カスタム成形染料パッドの中に含まれてもよい。
【0080】
一実施態様では、あらかじめデザインされたマーキング又はカスタムデザインマーキングに関するユーザーの選択を受容する他、マーキング印加システムの製造メーカーはさらに、ユーザーから、該マーキングが印加される物品を説明する情報を受容してもよい。このようにして、メーカーは、マークされる物品の表面輪郭及び特徴にマッチするように染料パッドを注文成形してもよい。例えば、ゴルフボールの場合、ユーザーは、マークされるボールのメーカー及びモデルを特定し、次に、マーキング印加システムのメーカーは、この情報を用いて、マークされるボールのディンプルパターンにマッチする突起を有する染料パッドをデザインし、生みだしてもよい。ユーザーはさらに、マーキングの所望の位置及び軸方向を指定し、それによって、染料パッドを、特定の位置及び軸方向に(例えば、ボール又はディンプルパターンの特定位置にそって)適合するように、さらにカスタマイズしてもよい。
【0081】
マークされる物品に関する情報を受容する際、マーキング印加システムの製造メーカーはさらに、金型、クランプ、バイス、又は、マークされる物品に対し染料パッドをプレスするための他のデバイスを提供してもよい。例えば、ボールをマークする場合、ユーザーは、ボールの直径を指定し、次に、メーカーはそれを用いて、そのボールがフィットする適切なサイズ及び形状を持つ金型を提供してもよい。
【0082】
全体として、ある実施態様では、染料は、ゴルフボールなどの製造された物品のプラスチック外表面の中に局所的に浸透し、浸み渡る。物品の外面のごく一部に対し独立に印加される染料パッドを用いることによって、マーキング印加システム及び方法は、該物品の染料浴への浸漬を要することなくマーキングを印加することが可能となる。染料の注入は、通常の室内条件で実現される、染料のプラスチック面に対する注入では、搬送溶媒に依存してもよい。そうすることによって、より複雑な昇華印刷プロセス、すなわち、昇華インキの蒸気相が表面浸透を実現するために相当の熱及び圧を要するプロセスが回避される。
【0083】
一実施態様では、注入染料パッドは、ロゴなどのデザインを供給する形状を持つ、単一色染料を含んでもよい。染料パッドはさらに、ゴルフボール又は他の物品のプラスチック部分に注入されると、より複雑なデザイン「タトゥー」を形成することが可能な、複数カラーを有する染料混合物を含んでもよく、デザインの、異なるカラー用、又は異なる部分用のサブパッドを含んでもよい。デザインは、例えば、マーク、符号、ロゴ、又は形であってもよい。マーキングは、プラスチックに対する染料の浸透のために高度の耐性を有していてもよい。パッド中の染料は、水、アルコール、又は他の搬送溶媒の印加によって活性化されてもよく、搬送溶媒は、パッドの中に取り込まれてもよいし、或いは、別にパッチに添加されてもよい。
【0084】
一実施態様では、ゴルフボールにデザインを印加するための方法は、染料パッドを、ゴルフボールの外方プラスチック部分に押しつけること、染料パッドに含まれる染料液を接触区域に注入すること、及び、該パッド-ボール接触域において、ゴルフボール外表面にデザインの鏡像を印加すること、を含んでもよい。数秒から数分又はそれ以上の範囲に亘る期間の後、パッドは取り去ってもよい。この方法は、製造後に、消費者、又は、ゴルフプロショップ従業員などによる、ゴルフボールに対する染料パッチの印加を含んでもよい。本法はさらに、消費者によるカスタムデザインの創出を含んでもよく、これは成形されて、該デザインの鏡像であるカスタム染料パッドとされてもよい。
【0085】
この注入染色技術によって、染料はプラスチック表面に浸透することが可能となる。色の濃淡は、物品が、染料及び活性液に接触している時間の長さによって調節することが可能である。この色は削ぎ落とされることがない。なぜならそれはプラスチックそのものの中に取り込まれるからである。したがって、この注入染料法によって、物品が成形された後、又はその他のやり方で製造された後の、物品の経済的なカスタマイズ製造が可能とされる。
【0086】
これまで本発明の各種実施態様が説明されてきたわけであるが、この説明は、限定的であるよりはむしろ例示的であることを意図するものであり、本発明の範囲内において、さらに多くの実施態様及び実行例が可能であることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求項及びその等価物に徴することを除き、限定されてはならない。さらに、種々の改変及び変更が、添付の特許請求項の範囲内において実行することが可能である。
【0087】
さらに、代表的実施態様を記述する際、本特許明細書は、方法及び/又はプロセスを、特定順序のステップとして提示したことがあるかもしれない。しかしながら、その方法又はプロセスは、本明細書に記載される、ステップの特定順序に依存することがないのと同じ程度に、方法又はプロセスは、記載のステップの特定順序に限定されない。当業者の一人であれば了解するであろうように、他の順序のステップも可能と考えられる。したがって、本明細書に記載される特定順序のステップは、特許請求項に対する制限と見なしてはならない。さらに、方法及び/又はプロセスを主題とする特許請求項を、記載の順序におけるそのステップの性能に限定すべきではなく、当業者であれば、順序は変動してもよく、その変動順序も、依然として本発明の精神及び範囲内に留まることを直ちに了解することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
100 システム
102 染料パッド
104 バッキング
106 排除可能カバー
108 活性液
110 接触面
200 染料パッド
208 活性液
210 上層
212 下層
214 側面パネル
216 上方部分
218 下方部分
300 パッド
302 分割器
304 外方部分
306 内方部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造された物品を、所望のマーキングによってマークするための方法であって:
該所望のマーキングに一致するように成形される染料パッドを準備すること;
該染料パッドに注入染料を印加すること;
該注入染料に活性液を印加し、それによって注入染料混合物を形成すること;
該染料パッドを、該製造された物品の外表面の分離区域と接触させること;
室温及び加圧下に、該染料パッドを、該製造された物品の外表面に接触させたまま放置すること、放置は、該注入染料混合物が、該外表面の材料のポリマー構造を開放し、該注入染料が該外表面に浸透し、該物品の基質内部に所望のマーキングを形成することを可能とするほど十分な持続時間実行される;及び、
該染料パッドを、該外表面から取り除くこと、
を含む前記方法。

【請求項2】
前記活性液が、水及びアルコールの一方を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記注入染料に前記活性液を印加すること:
前記染料パッドにおいて破断可能な障壁によって該注入染料から隔離される前記活性液を保存すること;及び、
該障壁を破断すること、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項4】
前記活性液の保存が、該活性液を破断可能なカプセル内に保存することを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【請求項5】
前記活性液の保存が、不透過性破断可能層の背後に該活性液を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【請求項6】
前記製造された物品がゴルフボールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項7】
前記注入染料に前記活性液を印加すること、前記染料パッドを、前記外表面と接触させること、該染料パッドを、前記外表面に接触させたまま放置すること、及び、該染料パッドを取り除くこと、がエンドユーザーによって完了されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項8】
前記所望のマーキングに一致するように成形される染料パッドを準備することが:
複数の選択可能なマーキングを表示すること;
該複数の選択可能なマーキングの中から所望マーキングの選択を消費者から受容すること;及び、
該所望マーキングにしたがって成形されるように染料パッドを形成すること、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項9】
前記所望のマーキングに一致するように成形される染料パッドを準備することが:
消費者が、該所望のマーキングとなるカスタムマーキングを創出することを可能とすること;及び、
該カスタムマーキングにしたがって成形されるように染料パッドを形成すること、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項10】
前記所望のマーキングに一致するように成形される染料パッドを準備することが:
エンドユーザーから前記物品の特定名を受容すること;
該特定名から、該物品の表面特徴を決定すること;及び、
前記染料パッドの接触面上に、該物品の表面特徴に一致する相補的特徴を形成すること、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項11】
前記物品がゴルフボールを含み、前記特定名が、メーカー、及び該ゴルフボールに関連するモデルを含み、且つ、前記表面特徴が、該メーカー、及び該ゴルフボールのモデルに関連するディンプルパターンを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。

【請求項12】
前記染料パッドの接触面に表面特徴を形成することをさらに含み、その際、該表面特徴が、該染料パッドと接触する前記物品の外面上の、対応表面特徴と嵌合するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項13】
前記染料パッドを、前記製造された物品の外表面の分離区域と接触させることが、該物品を受容する大きさ及び形状を有する金型を準備することを含み、受容は、該金型と該物品の間で該染料パッドが加圧されるように行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項14】
前記染料パッドを前記外表面に接触させたまま放置することが、該染料パッドに力を印加して、該染料パッドを該外表面に押しつけることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項15】
所望のマーキングによって製造された物品をマークするための注入染色キットであって:
注入染料;及び、
該所望のマーキングに一致するように成形され、該製造された物品の外面の分離区域に接触する染料パッドを含み、
該染料パッドは、該注入染料を吸収するように構成され、かつ、
該注入染料は、室温及び加圧下に活性液によって活性化されて注入染料混合液を形成するように構成され、該混合液は、前記外面の材料のポリマー構造を開放し、該注入染料が、その外面に浸透して、該染料パッドが当接される該製造された物品の基質内に該所望のマーキングを形成することを可能とすることを特徴とする、前記キット。

【請求項16】
前記活性液が、水及びアルコールの一方を含んでもよいことを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項17】
前記活性液が、前記パッド内に含まれ、破断可能障壁によって前記注入染料から隔離されることを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項18】
前記破断可能障壁が破断可能なカプセルを含むことを特徴とする、請求項17に記載の注入染色キット。

【請求項19】
前記染料パッドは、該染料パッドに力が印加されるとき、前記破断可能な障壁を刺入するように構成される内部構造を含むことを特徴とする、請求項17に記載の注入染色キット。

【請求項20】
前記染料パッドの第1側面に不透過性裏打ち、及び、第1側面の反対の、該染料パッドの第2側面に排除可能カバーをさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項21】
前記染料パッドが、前記製造された物品に接触するように構成される接触面、及び、該接触面の反対の外表面を含み、該外表面の上に接着層をさらに含み、該接着層は該製造された物品の表面に接着して、該染料パッドを該製造された物品の表面に押しつけるように構成されることを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項22】
前記製造された物品がゴルフボールを含むことを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項23】
前記染料パッドが、該染料パッドの第1部分を、該染料パッドの第2部分から隔離する分割器であって、分割は、該第1部分に印加される第1染料が、該第2部分に印加される第2染料と混じることがないように行われる分割器を含むことを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項24】
前記物品がゴルフボールを含み、該ゴルフボールの表面に接触する染料パッドの表面が、該ゴルフボールの対応ディンプルと嵌合するように構成される突起を含むことを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項25】
前記製造された物品の形状にマッチする金型をさらに含み、その際、前記注入染色キットは、該金型と該物品の間に前記染料パッドを加圧するように構成されることを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項26】
前記製造された物品がゴルフボールを含み、前記染料パッドが、該ゴルフボールの全体的表面湾曲にマッチするように曲面状であることを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項27】
前記製造された物品に接触される前記染料パッドの表面が、指定の色及びデザインによってあらかじめマークされていることを特徴とする、請求項15に記載の注入染色キット。

【請求項28】
ゴルフボールを所望のマーキングによってマークするための注入染色キットを供給するための方法であって:
消費者から、所望のマーキングの指示、及び、マークされるゴルフボールの特定名を受容すること;
該所望のマーキング、及び、マークされるゴルフボールの該特定名にしたがって染料パッドを形成すること;
該消費者に、該染料パッド、注入染料、及び活性液を供給すること;及び、
該染料パッド上において、該注入染料及び該活性液を混ぜ合わせて注入染料混合物とし、該染料パッドを該ゴルフボールに印加するための案内を該消費者に提供すること、
を含む前記方法。

【請求項29】
前記染料パッド、前記注入染料、及び前記活性液を前記消費者に供給することが、該染料パッドに、該注入染料及び該活性液の内の一方を含浸させること、及び、破断可能な障壁の後ろに、該注入染料及び該活性液の内の他方を含むこと、を含み、その際、前記案内は、該破断可能な障壁を破断する方法を説明することを特徴とする、請求項28に記載の方法。

【請求項30】
前記消費者から、前記所望のマーキングの指示を受容することが、複数の選択可能なマーキングの中からの選択を受容すること、及び、該消費者によってデザインされるカスタムマーキングを受容すること、の内の一方を含むことを特徴とする、請求項28に記載の方法。

【請求項31】
前記ゴルフボールの前記特定名が、該ゴルフボールのモデルを含み、前記染料パッドの形成が、該ゴルフボールの該モデルのディンプルパターンを決定すること、及び、該ゴルフボールの該モデルの該ディンプルパターンにマッチする突起を持つ、該染料パッドの接触面を形成することを含むことを特徴とする、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−173111(P2011−173111A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−4003(P2011−4003)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】