説明

物品のための保護フィルム及び方法

コーティングされた基材を調製する方法が開示される。この基材は、Si、O、C及びHを特定の原子比で含む、プラズマで生じさせたポリマーで被覆され、このポリマーは一定の官能基も含む。プラズマ重合プロセスにおいては106〜108J/kgのパワー密度を使用する。

【発明の詳細な説明】
物品のための保護フィルム及び方法 本発明は、プラズマに支援される化学気相成長(PECVD)技術を利用し、モノマーのオルガノシリコーン化合物と酸素を使って、基材上に透明保護コーティングを作るための方法に関する。
ポリマーのシリコーン化合物を保護層として使って種々の表面、例えばプラスチック、金属等の磨耗抵抗を向上させる技術は、以前から知られている。種々のPECVD法が開発されているが、それらには全て1又は2以上の欠陥に悩まされている。それらの欠陥のうちの一部には、シリコーン化合物コーティングの割れ、基材表面の積層剥離、及びコーティングがわずかに着色することが含まれる。コーティング技術のうちの一部は、不経済でもあり、また一部の方法は、有毒な物質を使用することを必要とする。得られる保護コーティングも、磨耗に対して時としてそれほど耐性があるわけではない。
例えば割れのような、欠陥のうちの一部のものを克服するために、PECVDオルガノシリコーンプロセスが開発されているが、それらは多工程を必要とし、従ってコーティングを適用する費用を増加させる(例えば米国特許第4927704号明細書)。
本発明は、これらの問題の多くを克服して、必要な工程がより少ない単純なプロセススキームを使用することで付着性の、非常に硬質で、割れのないコーティングを提供する。本発明の原理を使用して、薄いプラスチックフィルム基材をコーティングすることができ、コーティングの実質的な割れなしに折り重ね、折り目をつけることができる。
基材上に耐磨耗性の保護コーティングを形成する方法が提供される。この方法では、プラズマに支援される化学気相成長法(PECVD)を利用して、プラズマ法の重合生成物を基材表面に付着させるのに適当な表面を有する基材の存在下で、106〜108J/kgの範囲のパワー密度を使ってオルガノシリコーン化合物と過剰の酸素の重合反応を開始する。酸素は、オルガノシリコーン化合物中の全てのケイ素と炭素を酸化するのに化学量論上必要な量を超える量で存在する。
パワー密度はW/FMの値であり、Wはプラズマの発生のために適用されるJ/secで表した投入パワー、Fはモル/secで表した反応物ガスの流量、Mはkg/モルで表した反応物の分子量である。ガスの混合物については、パワー密度はW/ΣFiiから計算することができ、iは混合物中の第i番目のガス成分を表す。上記のパワー密度の範囲内で且つ過剰の酸素を用いて実施することによって、基材表面上に単一の重合した保護層を形成することができ、この層は実質的に割れがなく、透き通っていて、無色で、硬く、基材表面へ強固に付着している、ということが発見された。
本発明は、SiO1.8-2.40.3-1.0及びH0.7-4.0の組成を有する硬質の耐磨耗性ポリマーで被覆された表面を有する基材の態様を含み、これらの数字は電子プローブ分析、ラザフォード後方散乱分光分析及び弾性反跳分光分析(elastic recoil spectrometric analysis)に基づく原子比である。ポリマーは赤外分光分析に基づき、次の官能基、すなわち、



のうちの少なくとも一つと、捕捉された(trapped)水を含有している高度に架橋したポリマーであるとして更に特徴付けられる。
この耐磨耗性コーティングは、ここではSiOxyzとして一般的に称される。
第1図は、例において使用したプラズマ重合装置の概要図である。このほかのタイプのプラズマ重合装置を本発明を実施するために使用してもよい。
第2図は、第1図に示した装置で使用した陰極の概要図である。このほかの形態の陰極を使用してもよい。
第3図は、第2図に示した陰極の分解図である。このほかの形態の陰極を使用してもよい。
本発明のプラズマにより生じるオルガノシリコーンのポリマーコーティングを形成する方法は、任意の既知のタイプのプラズマ重合装置を使用して実施される。化学系へエネルギーを導入するために静電型結合(capacitive coupling)モード又は誘導型結合(induc-tive coupling)モードを使用することができる。これらのどちらか一方に磁場による閉じ込めを含めることができる。
第1図は、本発明のプラズマ重合フィルムを基材の表面に形成する装置を図示している。この装置は、可変周波数電源を使用する。この装置は、反応容器10を含み、この容器には気体の反応物がオルガノシリコーンモノマー源11と酸素源12から、また任意的に不活性ガス源13及び14から、質量流量制御器15、16、17及び18を通して導入される。所望ならば、図示された源からの別別のガスや蒸気を、反応容器へ導入する前にミキサー19で混合することができる。
反応容器10の中に配置されているのは、一対の対向電極20及び21である。一方の電極20、すなわち陽極は、回転式の支持電極であり、これに処理すべき基材22を付着させる。処理すべき基材22は電極20と21の間に配置される。電極21、すなわち陰極は、可変周波数電源23に接続され、そして回転式支持電極20は反応容器の壁を介して接地される。電極21はシャワーヘッドタイプのものであって、これを通してガス供給管路28から容器の内部へ気体反応物を分散させる。電極21は、好ましくは磁場閉じ込めタイプのものであり、第2図と第3図により十分に示される。支持電極20が反応容器の上部にそして電極21が下部に示されてはいるが、これらは入れ換えることができ、あるいは別の位置に配置することができる。同様に、処理すべき基材22は電極20にくっつけて示されてはいるが、所望ならば、それはウェブ又はベッドを含んで電極に沿って移動させることができよう。反応容器10は、この容器を排気するための真空系24につながれる。任意的に、反応容器には、コーティングの厚さを測定するための監視装置、例えば光学的モニター25、及び/又はプラズマ中に形成された反応性の種を連続的に監視するための分光計26を備えつけることができよう。回転式の支持電極は、この態様では容器10の外側に位置するモーター27により回転される。
運転時には、反応容器10を最初に真空ポンプ24により排気してから、気体反応物、すなわちオルガノシリコーンと酸素、そしてもしもあるならば不活性ガスを供給管路28を通して予め定められた流量で容器へ導入する。ガスの流量が一定になったなら、可変周波数電源23を予め定められた値にして、反応物を重合させそして基材22上にプラズマ重合したフィルムを形成させるプラズマを発生させる。
第2図は、磁場に閉じ込められる電極21の構成をより詳細に図示している。
この電極21は、気体反応物が反応器10の内部で反応性プラズマを形成する前に磁場50を直接通って流れるように、マグネトロンシャワーヘッドの形態を含む。このように、磁場は、プラズマが形成される帯域に直ぐ隣接する帯域に含まれる。第2図で、陰極21は磁場50を発生させるための内部磁気手段(第2図には示されていない)を有する本体51を含む。この本体には、磁場50を通して気体反応物を運ぶための内部導管手段が入っている。この流れは、内部導管手段とガス供給導管28に相互につながる一連の出口54により提供される。第2図の陰極の態様は第3図の分解図で説明される。陰極21は、その中に配置された流路(チャンネル)61及び62を有するヘッダー60から構成され、これらの流路はN極/S極の永久磁石63及びS極/N極の永久磁石64と対になっている。プレート65は、上部流路61と62に磁石63と64を保持するため流路61の外側の境界を完全にふさぐ。プレート65と上部ヘッダーの内側の壁66は、陰極を組み立てると整合する一連の口67及び54を有する。下部のプレート69は、陰極を組み立てると気密のシールをもたらすようにヘッダーの溝71に整合する、上部を巡る隆起部(リッジ)を有する。下部プレート69には、陰極を組み立てるとプレート65の下部と下部プレート69の上部との間に位置する室72へ気体反応物を導入するための入口導管28も備えつけられる。電極は、溶接によるような、固定手段、例えばボルト、リベット等を使用するような、適当な手段でもって組み立てられる。運転時には、気体反応物を入口導管28を通して室72へ、そして整合した口67と54を通して導入する。次いで、気体反応物は口54から出て、磁石63と64のN極とS極により形成された磁場50を通って進む。磁場を通して気体反応物を流すことは、プラズマの最も強力な部分にそれらを集中させて、プロセスをより効率的にする。これは、ガスを反応室へ、そして電極を通す代わりに反応室全体を取り囲む磁場を通して導入することに優る改良である。磁石は、少なくとも100ガウスを提供するのに十分な強さを有するべきである。ガスの流れは、第2図と第3図に示したようなシャワーヘッド陰極を使用するようにして、陽極の方向に本質的に垂直な方向に供給するのが好ましい。この構成を使用することは、ガスの流れが基材の表面を長手方向に横切る場合よりも基材の表面を横切ってより均一な重合コーティングをもたらす。
重合させて耐磨耗性の材料を堆積させるためのPECVDを使用する次に述べる一般的手順を使用することができる。ガス反応物に低圧で放電を発生させると反応物はイオン化してプラズマを形成する。この物質の一部分は、基材上にフィルムを形成する前にプラズマ中に発生したイオン、電子、及び遊離基といったような反応性の種の形態をしている。これらの反応性の種の大部分は遊離基からなる。基材上でのフィルムの形成の大部分は、反応性の種がプラズマから堆積面へ拡散するときに起きると考えられる。反応性の種は、適当に準備した基材表面上で反応して所望の層を形成する。通常の化学気相成長法に優るPECVDの紛れもない利点は、適用された電場が反応性の種の形成を増進して、それによりポリカーボネートのような基材に対する損傷を防ぐのに十分低い成長温度、すなわち130℃未満の温度の使用を可能にするという事実にある。更に、ここに開示されたプロセス条件下で使用する場合には、PECVDは通常のCVDで可能であるよりもはるかに高い割合の反応性種で実施することができる。
本発明により得られる優れた結果を達成するためには、PECVD法をここに開示された処理パラメーターと組成パラメーターの範囲内で使用すべきである。
PECVDにより耐磨耗性層を適用する際には、電場をその中に発生させることができる反応室内に基材を配置する。反応室は、実質的に排気することが、すなわち10-3〜1Torr、好ましくは10-2〜10-1Torrの範囲内の圧力まで排気することができなくてはならない。
電場を発生させて適用する方法はこの方法にとって重要ではない。例えば、電場は、一例としてJ.VossenによりGlow Discharge Phe-nomena in Plasma Etching and Plasma Deposition,J.Electro-chemical Society,pp.319-324(1979年2月)に記載されたように、誘導型結合法により発生させることができる。
静電型結合系も電場を発生させるために使用することができ、ここで使用するのにはこちらの方がより好ましい。この技術によると、二つの電極を反応室内に配置し、そしてプラズマをそれらの間で形成させる。各電極は、良好な電気導体材料、例えばアルミニウムのプレートでよい。これらの電極は、好ましくはおのおのが他方の電極に対して平行な平面を有する。本発明において有用な陰極の好ましい態様は第2図と第3図に示されている。
静電容量式に結合された系を利用する本発明の方法の好ましい態様では、電極は水平に配列され、すなわち上方の電極は反応室の上部の領域に、平らな表面を真空室の下方の領域に固定された下方電極の平らな表面に向けて配置される。電極間の間隔は、適用される電場の所望の強さにも、コーティングされる物品の大きさ、形状及び化学組成にも依存する。気相成長技術の熟練者は、これらのプロセス変数の相互関係を認識しており、従って本発明を個々に利用するのにむやみな実験を行わずに調整することができる。好ましい態様においては、基材は、下方の電極に面する上方の電極の表面に、被覆すべき基材表面が下方電極の向き合う表面と平行になるように配置される。下方電極は、好ましくは、気体反応物がそれを通ってプラズマ中へ流入しなくてはならない磁場を提供するシャワーヘッドタイプである。
フィルムを形成する物質は、PECVD法のためには気体の形態でなくてはならない。気体の反応物、例えばオルガノシリコーンモノマーは、反応室に入る前に液体の形態から気化させる。十分な蒸気圧を得るのが困難な場合に好ましい技術は、反応室内で不揮発性反応物を蒸発させることである。
液体材料は、冷却し次いで真空にさらして脱気してもよい。その個々の沸点に応じて、液体は次に、反応室への流路系を通して流すのに十分な実際的蒸気圧を与えるために周囲温度又はそれより高い温度まで加熱される。あるいはまた、不活性のキャリヤガス、例えばヘリウムのようなものを液を通してブローさせて、所望の組成の希釈蒸気混合物を得ることができる。
例えば酸素のような気体反応物は、単独で、又は不活性キャリヤガスとともにして反応室への適切な計量を保証して、プラズマ中での反応のために適している。
気体反応物は、外部の源から一連の入口管を通して反応室へ供給することができる。種々のガスを反応室へ流す技術的な詳細は当該技術分野でよく知られており、ここで詳しく説明する必要はない。例えば、各ガス導管を反応室へガスを運ぶ中央の供給管路につなぐことができる。好ましい態様においては、気体反応物をアルゴンのようなキャリヤガスと混合して反応室への反応物の流動を改善する。キャリヤガスと反応物ガスの反応室への流量は、当該技術分野でよく知られていてガスの流量を測定するのにもそのような流量を制御するのにも役立つ質量流量制御器により調節することができる。更に、キャリヤガスを使用する場合にはこれを、気体反応物と前もって混合してもよく、あるいは個別の管路により中央の供給管路へ供給してもよい。キャリヤガスは本発明にとって重要ではないものの、それを用いることは反応室内のプラズマ密度とガス圧力の均一性を向上させる。更に、キャリヤガスを用いることは、プラズマで生成されたコーティング物質が気相で粒子化するのを防ぐ傾向があり、そしてまた透明性(所望とされる場合)と耐磨耗性に関してフィルムの品質を向上させる。
静電型の結合法を使用する場合には、中央の供給弁から反応室に入る気体反応物は上方の電極と下方の電極との間且つコーティングすべき基材の下を進む。基材上のコーティングの品質は、反応物の流量と流動力学とに大きく依存する。例えば、過剰の流量は、気体反応物が反応して基材上にコーティングを形成する前にそれらを成長面の下方の帯域を通り過ぎさせよう。逆に、流量が小さすぎる場合には、反応物は急速に使い尽くされて、フィルムの厚さの不均一性を招く。ここには、表面基材に本質的に垂直な線に、すなわち第二の電極に対して垂直であってそれの長手方向に沿うのではない線に、気体反応物を分散させるシャワーヘッド陰極を使用することによる改良された方法が記載される。反応物の流量は5〜250sccmの範囲にあることができ、20〜100sccmが好ましい。より大きな反応室を必要とするであろう10ft2より大きいコーティング表面については、適切なポンプ装置を用いて、より大きい流量、例えば2000sccmまでの流量が望ましかろう。下記において更に説明するように、界面物質(interfacial material)の反応物をキャリヤガスとともに反応室へ送ってもよい。
好ましくは、反応室への全ガス流量はコーティングの成長中は一定であるべきである。これは、良好な品質のコーティングにとって絶対的に必要なことと見なすべきでなく、プロセス制御のためのより効率的な手段と見なすべきである。
成長表面に関する気体反応物の流量は、厚さと、例えば硬さ、透明度、付着力、及び熱膨張補償能力のような特性とに関してコーティングの均一性を増進するので重要である。
基材表面は、通常、ポリマー層を適用する前にイソプロパノール、メタノール等の如きアルコール溶媒で洗浄して清浄にされる。この工程は、表面から汚れ、汚染物、そして湿潤剤のような添加剤を除去する。
洗浄後、基材は周知の方法で真空乾燥させて、後に成長させる層の付着を妨げるであろう表面領域の水分を除去することができる。乾燥温度は、周囲温度から120℃までの範囲に及び、好ましい範囲は80〜90℃である。乾燥時間は2時間から16時間までの範囲に及び、この範囲内のより長い方の時間はより低い温度を補償し、その逆の場合も同様である。
所望ならば、基材の表面は反応室内に配置後にエッチングすることができる。
エッチング技術は、当該技術分野で一般によく知られており、これを使用してその上に遊離基種を作ることもでき、これらの遊離基種は後にプラズマで適用された物質の遊離基種と結合して、これらの層の間の付着を向上させる。反応性又は非反応性プラズマ処理、イオンビームスパッタリング等のような表面活性化技術を使用してもよい。
コーティング表面を上記のように処理後に気体反応物が反応室に入る時に、予め選定した周波数とパワー条件下で電場を発生させてガス混合物をイオン化させ、それによりプラズマを形成する。電極間に電場を発生させる方法は当該技術分野でよく知れており、従ってここで徹底的に説明する必要はない。直流から10GHzまでの電場を使用することができる。例えば、直流電圧、交流電流(交流周波数)及びマイクロ波周波数を使用することができる。
この方法にとって特に適した電場発生手段は、高周波電源を使用してプラズマを開始させそして維持することである。そのような電源を使用する場合、好ましい運転周波数は40kHzである。使用する特定の周波数と電力の値は、一部分はコーティング物質についての特定の成長要件に依存する。例えば、オルガノシリコーンモノマーをプラズマ中で反応させる場合には、上述の範囲内のより低い周波数とより高い電力値とが、固定した流量でより低い反応室圧力という条件下で特に、物質の成長速度を増大させる。
しかし、先に述べたように、これらの全てのパラメーターは基材をPECVDコーティングする間上述の範囲内のパワー密度を提供するように調整される。
プラズマを有益に変更する可能性を提供する、当該技術分野でよく知られている特別な工夫(例えばイオン化を増加させそしてプラズマの空間的制御を改善することによる)は、電場と共に別個の磁場を利用する。そのような磁場支援の例はECR(電子サイクロトロン共鳴)マイクロ波プラズマ技術である。
コーティングすべき表面上を通過後に、キャリヤガスと気体の反応物あるいは基材表面上に堆積しなかった生成物は、反応室から出口弁を通り次にガス排気装置へ導くことができる。反応室から過剰の物質を追い出すための手段は当該技術分野でよく知られている。第1図には一般的な排気系24が示されている。
本発明からは、耐磨耗性のコーティングを有する物品が製作される。更に、この方法を透明材料を作るために利用する場合には、基材上に結果として得られたフィルムは非常に滑らかであり且つ微小割れがない。成長した層は、物品を加熱/冷却サイクルにかける際に熱膨張の大きい差を調整することができる。このコーティングはまた、一定の化学物質に大して耐性があり、そして酸素や水のような一定の流体の透過性を減少させる。
コーティングすべき基材は柔軟性でも非柔軟性(すなわち剛性)でもよく、そして有機物、例えばプラスチック、又は金属もしくは他の無機材料を構成することができる。基材は、任意の形態、例えば発泡体、フィルム、棒、管、不規則形状等をとることができる。プラスチックは熱可塑性でも熱硬化性でもよい。使用することができる熱可塑性材料の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリメタクリレートエステル、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルクロライド、フッ素含有樹脂、及びポリスルホンである。
熱硬化性プラスチックの例はエポキシと尿素メラミンである。
本発明においてオルガノシリコーン化合物として使用されるものは、少なくとも一つのケイ素原子が少なくとも一つの炭素原子に結合している有機化合物であり、例えばシラン類、シロキサン類及びシラザン類を包含する。これらのオルガノシリコーン化合物は、個別的に使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。シラン類の例には、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、そしてジメトキシジフェニルシランが含まれる。
シロキサン類の例には、テトラメチルジシロキサンとヘキサメチルジシロキサンが含まれる。
シラザン類の例には、ヘキサメチルシラザンとテトラメチルシラザンが含まれる。
PECVD法を106〜108J/kgの範囲のパワー密度を使用して実行するということが、本発明の実施にとって重要なことである。より高いパワー密度では容易に割れるフィルムができ、その一方、より低い密度では耐磨耗性がより小さいフィルムができる。パワー密度は、反応に関連するガス、例えばモノマーと酸素、そしてもしも使用する場合には不活性ガス、によって消費される個別のパワーの合計を含む。
基材の温度は重要ではなく、周囲温度から基材のプラスチックのガラス転移温度までの範囲にわたることができる。
重合ガスの流量は、主として、反応を実施するのに使用される装置に依存し、そして必要とされるパワー密度に直接関係する。
コーティングの最高の厚さは、使用される基材のタイプにある程度依存する。
例えば、硬質の基材、例えばシリコンウェーハにはより厚いコーティングを適用することができる。プラスチック基材についての好ましい厚さは、基材の用途に応じて2〜8ミクロンである。
オルガノシリコーンコーティングは、コーティングの表面をより親水性にするか又は疎水性にするためそれぞれ酸素又はオルガノシリコーンプラズマで後処理してもよい。
この方法は、多くの様々な種類の基材上に保護コーティングを与えるのに用いることができる。例えば、このコーティングを、光学レンズ、例えば眼鏡レンズ等、配管工事用固定具、航空機エンジンで用いられる翼板、光記憶ディスク、テープ及びカード、窓ガラス、カムコーダーとカメラのケーシング、飛行機の窓ガラス、ソーラーパネル、LCDウィンドウ、繊維その他の耐磨耗性を向上させるために使用することができる。
次に掲げる例は、本発明の種々の態様を更に例示する。
第1、2、3図に示したようにシャワーヘッドプレーナマグネトロン陰極を備えたステンレス鋼のPECVDボックスでSiOxyzの成長を行った。種々の基材(個々の例において)を陰極の3.2cm上方に配置し、陰極の中心の周りを回転させた。100sccmのO2と5sccmのテトラメチルジシロキサン(TMDSO)をシャワーヘッド陰極を通して反応室へ供給した。シャワーヘッドのガス出口の孔はマグネトロン陰極のプラズマリング上に均一に分布させた。このガス入口の構成は、分子を最大強度のプラズマ領域を通って流れさせることによってテトラメチルジシロキサンの分解の確率を最大限にした。テトラメチルジシロキサン蒸気の流量は、MKS Inc.の蒸気流量制御器(モデル1152)により制御した。
そのほかのガスはMKSガス流量制御器(モデル1160)で制御した。プラズマパワーはENIパワーサプライ(モデルPlasmaLoc 2)により供給した。成長中にプラズマに負荷したパワーは40kHzで20〜25Wであった。これにより、6.7〜8.4×106J/kgのパワー密度が発生した。コーティングを行う前の反応室の基礎圧力は1mTorr未満であった。プロセス圧力はおよそ27mTorrであった。Edward Super−pump装置(モデル E2M80/EH1200)を使って反応室を排気した。走査型電子顕微鏡により測定したフィルム厚さに基づいて、これらの条件下での成長速度は500Å/minであった。上記の条件下で被覆した種々の基材を説明すると、以下のとおりである。
a)Au(60%)−Pd(40%)のターゲットのマグネトロンスパッタリングにより前もって10〜20ÅのAu−Pd層を堆積させたいくつかのポリカーボネートの試料上におよそ6μmのSiOxyzの耐磨耗性層を成長させた。このAu−Pd中間層は、耐磨耗性層に分析に用いる容量が残っていることを保証する指標として役立てた。電子プローブ分析(EPA)、ラザフォード後方散乱分光分析(RBS)及び弾性反跳分光分析(ERS)に基づいて、フィルムの組成はSiO2.20.75-0.552.1と測定された。
b)a)で説明したおよそ2000Åの耐磨耗性層を赤外分光分析のためKBrプレート上に被覆して、次に掲げる官能基と捕捉された水の存在が示された。




c)a)で説明した3μの耐磨耗性の層を石英基材上に被覆した。Shimazuのモデル330 UV可視分光計を使って、被覆した石英基材は100%の可視光透過率を示すことが分かった。
d)a)で説明した耐磨耗性層を10cm×10cm×0.2cmのポリカーボネートシート上におよそ2、4及び6μの異なる厚さで被覆した。準備した上記の三つの試料の耐磨耗性を、GardnerのCS−10Fホイールを備えた曇り度計モデルUX10を使って測定して、500g負荷のテーバー(Taber)試験(ASTM D 1003−61(1988))で500サイクル後に1〜2%の曇り度変化(ΔHaze)が示された。このフィルムは沸騰水条件に積層剥離なしに2時間耐えることが分かった。その上、このフィルムは、タバコのライターに10秒間接触させた後にフィルムの可視光透過率が低下しないことによって指示されるように、プラスチック基材の酸化を阻止することが分かった。更に、コーティングした表面をアセトン又は塩化メチレンですすいだ場合に、観察できる攻撃が検出されないことが分かった。
例1で説明したように10〜20ÅのAu−Pdコーティングを前もって堆積させたポリカーボネート基材(2.5cm×2.5cm×0.16cmのシート)上に、およそ6μのSiOxyzコーティングを成長させた。流量は、O2が50sccm、Arが17sccm、そしてTMDSOが5sccmであり、パワーは40kHzで20〜25Wであった。この例におけるパワー密度は9〜12×106J/kgに相当した。EPA、RBS及びERSによる分析から、コーティング組成がSiO2.20.7-0.41.7として示された。Au−Pd中間層なしに基材表面上に直接コーティングしたフィルムは、コーティングした面をスチールウール(#0)で擦ると目に見えるかき傷を示さず、明らかに透明であった。ポリカーボネート基材上のコーティングは沸騰水に積層剥離することなく2時間耐えた。
例2に示した条件に従って、ABS基材(10cm×10cm×0.2cmのシート)上におよそ3μの耐磨耗性フィルムをコーティングした。基材表面を、最初に、同じ装置内で20sccm及び30W(2.1×102J/kgのパワー密度)で15秒の酸素プラズマによって前もって処理した。フィルムは、スコッチ(Scotch、商標)テープ剥離試験で立証されたように基材に強固に付着していて、良好な耐磨耗性を持っていた。
例2で説明したように生じさせたおよそ3μの耐磨耗性フィルムを、50Wのパワーで98sccmのAr及び70sccmのHeのプラズマ(パワー密度1.6×107J/kg)を用いて前処理したポリカーボネート基材(10cm×10cmx0.2cmのシート)上に成長させた。このフィルムは、Sebastian(Quadグループの商標)スタッド試験によれば22MPaの接着強さを示した。ポリカーボネート基材で積層剥離が起き、コーティングと基材との界面では起きないことが分かった。フィルムの接着強さは、沸騰水中で30分後に有意に変化しなかった。
例1に示された一般的な処理条件と装置を使って、ポリカーボネートの眼鏡レンズ上にSiOxyzのおよそ4μの耐磨耗性コーティングを作った。次に述べる具体的なプロセス条件を使用した。流量は、O2=100sccm、TMDSO=5sccmであり、パワーは20W、周波数は40kHzであり、陽極と陰極間の距離は3.2cmであり、反応時間は1時間15分、そしてパワー密度は5.4×106J/kgであった。このコーティングは、スチールウール(#0)で擦った場合にかき傷を示さなかった。また、このコーティングしたフィルムは、温水(55℃)に30分間入れた場合に積層剥離しなかった。
表面に記号化した音楽が入っているオーディオCDディスクを、例5で示した一般的処理条件を使用しておよそ3μのSiOxyzポリマーでコーティングした。この時の具体的パラメーターは、O2流量=100sccm、TMDSO流量=10sccm、パワーは20W、周波数は40kHz、時間は1時間、パワー密度は5.4×106J/kgであった。コーティング後、このCDディスクは、音楽の質に目立った変化なしにCDプレーヤーで演奏された。
15cm×15cm×0.16cmのUV安定化ポリカーボネートシート上に、次に掲げる工程により疎水性の耐磨耗性コーティングを成長させた。
工程1 表面を前もってメタノールで洗浄した。
工程2 前もって洗浄した表面を10sccm、20Wの酸素プラズマで、1.4×107J/kgのパワー密度で15秒間処理した。
工程3 この調製した表面に、50W、40kHzのパワー、O2流量=50sccm、Ar流量=17sccm、及びTMDSO流量=20sccm(1.
4×107J/kgのパワー密度に相当)で、およそ3μの耐磨耗性コーティングSiOxyzを成長させた。
工程4 この耐磨耗性コーティングの上に、50W、40kHzのパワー、TMDSO流量=20sccm(2.5×107J/kgのパワー密度に相当)で、およそ200Åのプラズマ重合したTMSDOを成長させた。
得られた疎水性表面は、脱イオン水に対して83°の接触角及び70°の後退接触角を示した。
15cm×15cm×0.16cmのUV安定化ポリカーボネートシート上に、次に掲げる工程によりSiOxyHzの親水性の耐磨耗性コーティングを成長させた。
工程1 表面を前もってメタノールで洗浄した。
工程2 前もって洗浄した表面を10sccm、20Wの酸素プラズマで、1.4×107J/kgのパワー密度で15秒間処理した。
工程3 この調製した表面に、50W、40kHzのパワー、O2流量=50sccm、Ar流量=17sccm、及びTMDSO流量=20sccm(1.
4×107J/kgのパワー密度に相当)で、およそ2μの耐磨耗性コーティングSiOxyzを成長させた。
工程4 この耐磨耗性コーティングの上に、50W、40kHz、105sccmのO2及び1sccmのTMDSO(1.5×108J/kgのパワー密度に相当)で、SiOxの非常に薄い層(100Å未満)を成長させた。
工程5 その結果得られた表面を、50Wで10sccmのO2プラズマ(2.1×109J/kgのパワー密度に相当)で1分間処理した。
こうして形成した親水性表面は、脱イオン水に対して43°の接触角及び0°の後退接触角を示した。

【特許請求の範囲】
1.プラズマ反応帯域でのオルガノシリコーンモノマーガスと酸素ガスのプラズマに支援される化学気相成長を利用し、当該オルガノシリコーンモノマーをプラズマ重合させることにより、基材の表面に耐磨耗性のコーティングを備える方法であって、過剰の酸素ガスが存在すると同時に、基材の存在下で106〜108J/kgの範囲内のパワー密度を使用することを特徴とする方法。
2.酸素ガスとオルガノシリコーンモノマーガスとを、当該基材表面に本質的に垂直な方向に、且つプラズマ帯域に隣接した帯域に本質的に含まれる少なくとも100ガウスの磁場を通して、当該プラズマ反応帯域へ導入する工程を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
3.オルガノシリコーンモノマーガスと酸素ガスとを、陽極に含まれる基材の表面に対して本質的に垂直な方向に陰極を通して流動させ、この陰極が磁場も与える、請求の範囲第1項記載の方法。
4.耐磨耗性コーティングをプラズマ重合させた別のオルガノシリコーンコーティングで処理して当該耐磨耗性コーティングをより疎水性にする後の工程を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
5.耐磨耗性層上のSiOxコーティングをO2プラズマで処理して当該コーティングをより親水性にする後の工程を含む、請求の範囲第1項記載の方法。
6.SiO1.8-2.40.3-1.0及びH0.7-4.0のケイ素−炭素ポリマーを含み、これらの下付き数字で表した比はSiに対する各元素の原子比であって、そして次の官能基、すなわち、

のうちの少なくとも一つと、捕捉された水を含有している組成物。
7.一表面を有する基材材料を含み、且つこの表面に、SiO1.8-2.40.3-1.0及びH0.7-4.0を含む組成を有し、これらの下付き数字で表した比はSiに対する各元素の原子比であって、そして次の官能基、すなわち、



のうちの少なくとも一つと、捕捉された水を含有しているケイ素炭素ポリマーが付着している積層体。
8.光記憶ディスク、テープ又はカードの形態をしている、請求の範囲第7項記載の積層体。
9.光学レンズのの形態をしている、請求の範囲第7項記載の積層体。
10.平行プレート電極を利用するプラズマを発生させるための装置であって、陰極が、当該陰極の周囲に磁場(50)を発生させるための手段(52、63及び64)
をシャワーヘッドの内に含むシャワーヘッド電極(21)であることを特徴とする装置。
11.前記ケイ素炭素ポリマーが2〜8ミクロンの範囲の厚さを有する、請求の範囲第7項記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表平8−505186
【公表日】平成8年(1996)6月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−515123
【出願日】平成5年(1993)10月5日
【国際出願番号】PCT/US93/09528
【国際公開番号】WO94/14998
【国際公開日】平成6年(1994)7月7日
【出願人】
【氏名又は名称】ザ ダウ ケミカル カンパニー