説明

物品の取付部構造

【課題】本発明は、物品から突出した複数の取付足と被取付部との位置ずれを吸収することで、コスト増加を抑えることができる物品の取付部構造を提供する。
【解決手段】物品の取付部構造1は、物品としての箱本体2の外表面から突出し被取付部としての車体取付部3に重ねられる複数の取付足5、6、7と、1つの取付足7の車体取付部3から離れた側に重ねられた状態で該1つの取付足7とともに車体取付部3にボルト固定されるワッシャー8と、1つの取付足7に取り付けられ該1つの取付足7との間にワッシャー8を挟んで保持するカバー部9と、を備える。カバー部9には、ワッシャー8に設けられた第1孔部8aを露出する露出孔9aが設けられ、第1孔部8aが第2孔部7aの径よりも小さく、ワッシャー8は当該第1孔部8aが第2孔部7aと重なる範囲で移動自在に1つの取付足7とカバー部9との間に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品と、該物品を被取付部に取り付けるための物品の取付部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には、多種多様な電子機器が搭載されている。これら多種多様な電子機器に電力を分配するために、前記自動車には、電源と前記電子機器との間の適宜箇所に、コネクタ、リレー、ヒューズ等の電気部品が集約されて構成された電気接続箱が配置されている。
【0003】
上記電気接続箱には、前記電気部品を収容した物品としての箱本体を被取付部としての車体に取り付けるための複数の取付足が設けられている。図11は、従来の電気接続箱が車体に取り付けられた状態を示す斜視図である。図12は、図11に示された電気接続箱を構成する一つの取付足を拡大して示す斜視図である。図13は、図11に示された電気接続箱を構成する他の取付足を拡大して示す斜視図である。
【0004】
図11などに示された、従来の電気接続箱110は、コネクタ、リレー、ヒューズ等の電気部品を収容した箱本体102と、前記箱本体102の外表面から突出し、箱本体102を車体103にボルト固定するための2つの取付足105A、105Bと、前記箱本体102の開口を覆うカバー(図示しない)と、を備えている。箱本体102と2つの取付足105A、105Bとは、合成樹脂により一体に成形されている。また、図11においては、カバーは、箱本体102から取り外されている。(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
上記2つの取付足105A、105Bそれぞれには、車体103の表面から突出したスタッドボルト131、または、ボルト(図示しない)を通すための孔部105a、105bが設けられている。
【0006】
上記車体103には、該車体103の表面から突出したスタッドボルト131と、ボルト取付穴103aと、が設けられている。これら車体103に設けられるスタッドボルト131及びボルト取付穴103aの相対位置は、ずれが生じ易いので、電気接続箱110を車体103に取り付ける際に、電気接続箱110の2つの取付足105A、105Bの相対位置と車体103のスタッドボルト131及びボルト取付穴103aの相対位置との間にずれが生じ易かった。このため、取付足105A、105Bに設けられた孔部105a、105bの径を大きくし、電気接続箱110を車体103に対して移動させることで、電気接続箱110と車体103との間の位置ずれを吸収していた。
【0007】
上記2つの取付足105A、105Bのうち、一つの取付足105Aの孔部105aは、図12に示すように、円形に形成されている。また、他方の孔部105bは、図13に示すように、長孔形に形成されている。
【0008】
上述した電気接続箱110は、以下の手順で車体103に取り付ける。電気接続箱110を車体103に近付けて、一つの取付足105Aの孔部105aをスタッドボルト131に通す。次に、他の取付足105Bの孔部105bとボルト取付穴103aとが重ねられるように、他の取付足105Bを車体103に重ねた後、これら孔部105b及びボルト取付穴103aにボルトを螺合する。次に、孔部105aに通されたスタッドボルト131にナット(図示しない)を螺合する。こうして、電気接続箱110は車体103に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−32411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、自動車に搭載される電子機器の増加に伴い、車両取付部品の個数は増加する傾向にある。この車両取付部品の増加に伴い、電気部品を収容するための箱本体102が大型化することとなり、大型化した箱本体102を車体103に取り付けるための取付足105A、105Bの数も増加する傾向にあった。
【0011】
このため、取付足105A、105Bを車体103に取り付けるために該車体103に設けられたスタッドボルト131及びボルト取付穴103aの数が増加することとなり、取付足105A、105Bと、車体103に設けられたスタッドボルト131及びボルト取付穴103aと、の位置ずれはさらに大きくなり、さらに大きくなった位置ずれを吸収するために、孔部105a、105bをさらに大きくする必要があった。このため、外径が孔部105a、105bの径よりも大きいJISなどで定められた標準規格外のナットまたは頭部の径が孔部105a、105bよりも大きい標準規格外のボルトを特別に製造しなければならず、コストがかかってしまう問題があった。また、孔部105a、105bが大きくなると、ボルトが座屈し易いという問題があった。また、ナットまたはボルトを螺合した際に、ナットまたはボルトによって取付足105A、105Bにかけられる力が、該取付足105A、105Bの孔部105a、105bの縁のみにかけられることとなり、取付足105A、105Bが座屈してしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、物品から突出した複数の取付足と被取付部との位置ずれを吸収することで、コスト増加を抑えることができる物品の取付部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本発明は、物品を被取付部に取り付けるための物品の取付部構造であって、前記物品の外表面から突出し、前記被取付部に重ねられる複数の取付足と、前記複数の取付足のうち少なくとも1つの取付足の前記被取付部から離れた側に重ねられた状態で、該1つの取付足とともに前記被取付部にボルト固定されるワッシャーと、前記1つの取付足に取り付けられ、該1つの取付足との間に前記ワッシャーを挟んで保持するとともに、前記ワッシャーに設けられた第1孔部を露出する露出孔が設けられたカバー部と、を備え、前記第1孔部は、ボルトの軸部が通される、前記1つの取付足に設けられた第2孔部の径よりも小さく、前記ワッシャーは、少なくとも当該第1孔部が前記1つの取付足に設けられた前記第2孔部と重なる範囲で移動自在に前記1つの取付足と前記カバー部との間に保持されていることを特徴とする物品の取付部構造である。
【0014】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記1つの取付足の前記ワッシャーが重ねられる面には、前記ワッシャーより大きい凹部が設けられ、前記凹部内には、前記ワッシャーが移動自在に収容されることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の本発明において、前記第1孔部の縁から前記ワッシャーの外縁までの寸法と前記第2孔部の縁から前記凹部の外縁までの寸法とは等しく形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至は請求項3のうちいずれか一項に記載の本発明において、前記カバー部は、前記1つの取付足との間に前記ワッシャーを挟む基板部と、前記基板部の縁から立設し、前記1つの取付足の側面に重ねられる周板部と、前記周板部に設けられ、前記1つの取付足に係止する係止部と、を備え、前記カバー部は、前記1つの取付足に対してスライドすることで前記係止部が前記1つの取付足に係止するように設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載の本発明において、前記基板部の外表面から凸に形成された凸部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の本発明によれば、物品を被取付部に取り付けるための物品の取付部構造であって、前記物品の外表面から突出し、前記被取付部に重ねられる複数の取付足と、前記複数の取付足のうち少なくとも1つの取付足の前記被取付部から離れた側に重ねられた状態で、該1つの取付足とともに前記被取付部にボルト固定されるワッシャーと、前記1つの取付足に取り付けられ、該1つの取付足との間に前記ワッシャーを挟んで保持するとともに、前記ワッシャーに設けられた第1孔部を露出する露出孔が設けられたカバー部と、を備え、前記第1孔部は、ボルトの軸部が通される、前記1つの取付足に設けられた第2孔部の径よりも小さく、前記ワッシャーは、少なくとも当該第1孔部が前記1つの取付足に設けられた前記第2孔部と重なる範囲で移動自在に前記1つの取付足と前記カバー部との間に保持されているので、第2孔部の径に対応した標準規格外のナットまたは標準規格外のボルトを特別に製造せずとも、第1孔部の径に対応した標準規格のナットまたは標準規格のボルトを用いることができる。こうして、車両取付部品の個数の増加に伴って、物品が大型化して、物品が大型化することで、物品を被取付部に取り付けるための取付足の数が増加した際においても、複数の取付足と被取付部との位置ずれを吸収することで、コスト増加を抑えることができる物品の取付部構造を提供することができる。また、ワッシャーが1つの取付足とカバー部との間に保持されているので、前記1つの取付足を移動した際においても、当該ワッシャーを落としたり、なくすことがなくなるとともに、被取付部の表面から突出したスタッドボルトを、互いに重ねられた第1孔部及び第2孔部及び露出孔に通す従来と同様の容易な作業で、1つの取付足を被取付部に取り付けることができる。よって、組付け作業性の向上を図ることができる。また、ナットまたはボルトを螺合した際に、ナットまたはボルトによって1つの取付足にかけられる力が、ワッシャーが設けられていることで、1つの取付足の第1孔部の縁部のみにかけられることなくワッシャー全体で力を分散させるので、1つの取付足が座屈してしまうのを防止することができる。
【0019】
請求項2に記載の本発明によれば、前記1つの取付足の前記ワッシャーが重ねられる面には、前記ワッシャーより大きい凹部が設けられ、前記凹部内には、前記ワッシャーが移動自在に収容されるので、カバー部を1つの取付足に取り付ける際にワッシャーが1つの取付足から落ちることがなくなり、簡単な構成で、より一層、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0020】
請求項3に記載の本発明によれば、前記第1孔部の縁から前記ワッシャーの外縁までの寸法と前記第2孔部の縁から前記凹部の外縁までの寸法とは等しく形成されているので、ワッシャーが凹部内に収容されると、該ワッシャーが凹部内のいかなる位置に動いたとしても常に第1孔部の全体が第2孔部に重なる位置に位置付けられることとなり、よって、より一層、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0021】
請求項4に記載の本発明によれば、前記カバー部は、前記1つの取付足との間に前記ワッシャーを挟む基板部と、前記基板部の縁から立設し、前記1つの取付足の側面に重ねられる周板部と、前記周板部に設けられ、前記1つの取付足に係止する係止部と、を備え、前記カバー部は、前記1つの取付足に対してスライドすることで前記係止部が前記1つの取付足に係止するように設けられているので、カバー部を1つの取付足に対してスライドする容易な作業で、該カバー部を1つの取付足に取り付けることができる。
【0022】
請求項5に記載の本発明によれば、前記基板部の外表面から凸に形成された凸部が設けられているので、カバー部を1つの取付足に対してスライドする際に、凸部が滑り止めとして作用することとなり、よって、より一層、組付け作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の物品の取付部構造を備えた電気接続箱の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示された物品の取付部構造を別の角度から見た拡大図である。
【図3】図2に示された物品の取付部構造を構成する第1取付足が車体に重ねられた状態を示す斜視図である。
【図4】図2に示された物品の取付部構造を構成する第2取付足が車体に重ねられた状態を示す斜視図である。
【図5】図2に示された物品の取付部構造を構成する第3取付足が車体に重ねられた状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示された第3取付足にワッシャー及びカバー部が取り付けられる様子を示す斜視図である。
【図7】図6に示された第3取付足にワッシャー及びカバー部が取り付けられる状態を示す斜視図である。
【図8】図5に示された第3取付足の凹部にワッシャーが収容された状態を示す上面図であり、(a)は、ワッシャーが凹部の紙面方向の左側の端部に位置付けられた状態を示す図であり、(b)は、ワッシャーが凹部の紙面方向の上側の端部に位置付けられた状態を示す図である、(c)は、ワッシャーが凹部の紙面方向の下側の端部に位置付けられた状態を示す図である
【図9】図7中のI−I線に沿う断面図である。
【図10】図7中のII−II線に沿う断面図である。
【図11】従来の電気接続箱が車体に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図12】図11に示された電気接続箱を構成する一つの取付足を拡大して示す斜視図である。
【図13】図11に示された電気接続箱を構成する他の取付足を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態にかかる「物品の取付部構造」を、図1乃至図10に基づいて説明する。また、図1などに示された、本実施形態の「物品の取付部構造1」は、電気接続箱10を構成する。
【0025】
上記電気接続箱10は、自動車のエンジンルームに取り付けられて、前記自動車に搭載された多種多様な電子部品及び電気部品に電力を分配する。また、本明細書では、ジャンクションブロック、ヒューズブロック、リレーボックスを、総称して以下電気接続箱と呼ぶ。
【0026】
上記電気接続箱10は、図1、図2に示すように、コネクタ、リレー、ヒューズ等の電気部品を収容するための箱本体2と、前記箱本体2の開口を覆うカバー4(図2に示す)と、物品の取付部構造1と、を備えている。
【0027】
上記物品の取付部構造1は、箱本体2の外表面から突出し、車体取付部3に重ねられる複数の取付足5、6、7と、前記複数の取付足5、6、7のうち1つの取付足7の車体取付部3から離れた側に重ねられるワッシャー8と、前記ワッシャー8を1つの取付足7に保持するためのカバー部9と、を備えている。物品の取付部構造1は、ワッシャー8が1つの取付足7の車体取付部3から離れた側に重ねられた状態で、1つの取付足7とともに車体取付部3にボルト固定される。また、箱本体2は、特許請求の範囲に示された「物品」に相当し、車体取付部3は、特許請求の範囲に示された「被取付部」に相当する。
【0028】
上記箱本体2は、カバー4と対向する位置の底壁(図示しない)と、前記底壁の縁から立設した4つの側壁21、22、23、24と、を備えている。
【0029】
上記複数の取付足5、6、7は、本実施形態では3つ設けられている。本明細書では、説明をわかりやすくするために、3つの取付足のうち一つを第1取付足5、他の一つを第2取付足6、さらに他の一つを第3取付足7と記す。また、第1取付足5は、箱本体2の側壁21に設けられており、第2取付足6は、箱本体2の側壁21と相対する側壁22に設けられており、第3取付足7は、側壁21、22に対して交差方向に位置する側壁23に設けられている。また、第1取付足5及び第2取付足6は、箱本体2と一体であり、第3取付足7は、箱本体2と別体である。
【0030】
以下では、第1取付足5に対応する車体取付部3にボルト取付穴3aが設けられ、第2取付足6、第3取付足7に対応する車体取付部3にはスタッドボルト31が設けられている場合を例にとって説明するが、車体取付部3に設けられているものがボルト取付穴3aであるかスタッドボルト31であるかは任意であり、3つの取付足5、6、7に対応する車体取付部3として、ボルト取付穴3aとスタッドボルト31とのどちらが設けられていても本願発明を活用することには何の問題もない。要は、車体取付部3側にボルト取付穴3aがある場合にはボルトを螺合することで取り付ければよく、車体取付部3側にスタッドボルトがある場合にはナットを螺合すればよい。
【0031】
上記第1取付足5は、図1、図3に示すように、板状に形成されており、その中央部には、貫通孔である孔部5aが設けられている。この第1取付足5の孔部5aは、径が7ミリメートルの正円形に形成されている。また、この孔部5aには、図示しないワッシャー及びボルトが螺合する。このワッシャーの外径は、13.6ミリメートルに形成されている。本実施形態では、このワッシャー及びボルトは別体であるが、ワッシャー及びボルトは一体であってもよい。
【0032】
上記第2取付足6は、板状に形成された重なり板部61と、前記重なり板部61の中央部に設けられた貫通孔である長孔部6aと、側壁22から突出し、重なり板部61の外縁に連なった一対の補強部62と、を備えている。一対の補強部62は長孔部6aを互いの間に位置付けるように設けられている。
【0033】
上記第2取付足6の長孔部6aは、長手方向が13ミリメートルに形成されており、幅方向が7ミリメートルに形成されている。また、この長孔部6aには車体取付部3から突出したスタッドボルト31が通される。また、長孔部6aが通されたスタッドボルト31に図示しないワッシャー及びナットが螺合する。このワッシャーの外径は、13.6ミリメートルに形成されている。また、このナットはJISなどで定められた標準規格品である。なお、本実施形態では、このワッシャー及びナットは別体であるが、ワッシャー及びナットは一体であってもよい。
【0034】
上記第3取付足7は、図1、図5に示すように、側壁23の外表面から突出するように設けられた基部71と、前記基部71に連なり、車体取付部3に重ねられる板状の重なり部72と、を備えている。また、第3取付足7は、特許請求の範囲に示された「複数の取付足のうち少なくとも1つの取付足」に相当する。
【0035】
上記重なり部72は、図6、図7に示すように、車体取付部3に重ねられる底面(図示しない)と、前記底面と相対する天面74と、底面と天面74との間に位置する側面76、77、78と、を有している。また、重なり部72には、ワッシャー8が重ねられる凹部75と、前記凹部75に形成された貫通孔である第2孔部7aと、カバー部9を取り付けるための一対の係止突起79と、が設けられている。
【0036】
上記凹部75は、天面74の表面から凹に形成されている。また、凹部75の径はワッシャー8の外径よりも大きく形成されており、ワッシャー8は凹部75内に移動自在に収容される。
【0037】
この凹部75は、図8に示すように、第2孔部7aの縁から凹部75の外縁までの寸法L1が、ワッシャー8の後述する第1孔部8aの縁(ワッシャー8の内縁)からワッシャー8の外縁までの寸法L2と等しくなるような、平面視が楕円形に形成されている。
【0038】
図8は、第3取付足7の凹部75にワッシャー8が重ねられた状態を示す上面図である。なお、図8では、ワッシャー8は太線で描かれており、第3取付足7は細線で描かれており、第2孔部7aは点線で描かれている。図8(a)に示すように、ワッシャー8が凹部75の紙面方向の左側の端部に位置付けられても第1孔部8a全体が第2孔部7aに重なる位置に位置付けられ、(b)は、ワッシャー8が凹部75の紙面方向の上側の端部に位置付けられても第1孔部8a全体が第2孔部7aに重なる位置に位置付けられ、(c)は、ワッシャー8が凹部75の紙面方向の下側の端部に位置付けられても第1孔部8a全体が第2孔部7aに重なる位置に位置付けられる。よって、ワッシャー8が凹部75内のいかなる位置に移動した場合でも、ワッシャー8の第1孔部8a全体が第2孔部7a上に重ねられることとなる。
【0039】
上記第2孔部7aは、当該第2孔部7aの中心を通る最大径が16.2ミリメートルに形成されており、最小径が13.5ミリメートルに形成されている。また、この第2孔部7aには車体取付部3から突出したスタッドボルト31が通される。さらに、第2孔部7aにスタッドボルト31が通された後、該スタッドボルト31には前記ナットが螺合する。
【0040】
上記一対の係止受け部としての係止突起79は、図6に示すように、互いに相対する一対の側面76、77それぞれから凸に設けられている。また、一対の係止突起79は各側面76、77における基部71側の端部に設けられている。
【0041】
上記ワッシャー8は金属で構成されている。また、ワッシャー8は、図6に示すように、リング状に形成されており、中央部には、貫通孔である第1孔部8aが設けられている。この第1孔部8aの径(ワッシャー8の内径)は、前述したナットの外径よりも小さく形成されている。また、ワッシャー8の外径は、第3取付足7の第2孔部7aにおける最大径よりも大きく形成されている。
【0042】
上記カバー部9は、図7に示すように、第3取付足7との間にワッシャー8を挟む板状の基板部91と、前記基板部91に設けられた複数の凸部としてのリブ96と、基板部91の縁から立設し、第3取付足7の側面76、77、78に重ねられる周板部92、93、94と、前記周板部92、93それぞれに設けられ、前述した第3取付足7の一対の係止突起79に係止する係止部としての一対の係止孔95と、周板部92、93、94の縁に連なり、基板部91との間に第3取付足7(重なり部72)を挟む平行板部97と、を備えている。上記一対の係止孔95それぞれは、各周板部92、93を貫通している。また、カバー部9は、矢印Y方向に沿ってスライドする、即ち、重なり部72の天面74に沿ってスライドすることで、係止突起97が係止孔95に係止する、とともに、第3取付足7に取り付けられる。
【0043】
上記基板部91には、凹部75内に収容されたワッシャー8の第1孔部8aを露出するための露出孔9aが設けられている。この露出孔9aは、第3取付足7の第2孔部7aよりも大きく、ワッシャー8の外径よりも小さく形成されている。
【0044】
上記リブ96は、図6に示すように、基板部91の第3取付足7と反対側の外表面から凸に形成されている。また、リブ96は、複数設けられており、スライドする方向(矢印Y方向)に互いに間隔をあけて設けられている。各リブ96は、スライドする方向(矢印Y方向)に対して交差する方向(矢印X方向)に伸びている。
【0045】
次に、上述した物品の取付部構造1が備えられた電気接続箱10の組立手順について説明する。予め、箱本体2の内側に電気部品を収容し、電気部品を収容した箱本体2にカバー部4を取り付けておく。そして、第3取付足7の凹部75内にワッシャー8を収容した後、カバー部9を矢印Y方向に沿って箱本体2に近付けるようにスライドする。カバー部9の周板部92、93の縁が係止突起79に当接する。さらにスライドすると、周板部92、93が係止突起79を乗り上げて、周板部92、93が側面76、77から離れる方向(矢印X方向)に弾性変形する。さらにスライドすると、周板部92、93が係止突起79を乗り越えて、係止突起79が係止孔95に嵌まる、即ち、係止する。この際、周板部92、93は、弾性変形する前の状態に復元している。こうして、カバー部9を第3取付足7(重なり部72)に取り付ける。この際、ワッシャー8は、図9、図10に示すように、第1孔部8a全体が、第2孔部7a及び露出孔9aと重なるように凹部75内に収容されている。
【0046】
次に、ワッシャー8及びカバー部9が取り付けられた第3取付足7を箱本体2の側壁23に取り付ける。または、予め、第3取付足7を箱本体2の側壁23に取り付けた後、該第3取付足7にワッシャー8及びカバー部9を取り付けてもよい。こうして電気接続箱10は組み立てられる。
【0047】
次に、上述した物品の取付部構造1(電気接続箱10)を被取付部としての車体取付部3に取り付ける手順について説明する。まず、電気接続箱10を車体取付部3に近付けて、第2取付足6の長孔部6aに車体取付部3から突出したスタッドボルト31を通すと同時に、互いに重なねられた第2孔部7a及び第1孔部8a露出孔9aに車体取付部3から突出したスタッドボルト31を通す。次に、第1取付足5の孔部5aを車体取付部3に設けられたボルト取付穴3aとが重なる位置に位置付けられるように、電気接続箱10全体を動かす。そして、これら互いに重ねられた孔部5a及びボルト取付穴3aに、ワッシャー及びボルトを螺合する。
【0048】
次に、第2取付足6の長孔部6aに通されたスタッドボルト31に、ワッシャー及びナットを螺合する。また、第3取付足7及びワッシャー8及びカバー部9の孔部7a、8a、露出孔9aに通されたスタッドボルト31に、ワッシャー及びナットを螺合する。こうして、上述した物品の取付部構造1(電気接続箱10)を、被取付部としての車体取付部3に取り付ける。
【0049】
上述した実施形態によれば、物品としての箱本体2の外表面から突出し、車体取付部3に重ねられる複数の取付足5、6、7と、前記複数の取付足5、6、7のうち少なくとも1つの取付足7の車体取付部3から離れた側に重ねられた状態で、該1つの取付足7とともに車体取付部3にボルト固定されるワッシャー8と、1つの取付足7に取り付けられ、該1つの取付足7との間にワッシャー8を挟んで保持するとともに、ワッシャー8に設けられた第1孔部8aを露出する露出孔9aが設けられたカバー部9と、を備え、第1孔部8aが、ボルトの軸部が通される、1つの取付足7に設けられた第2孔部7aの径よりも小さく、ワッシャー8は、少なくとも当該第1孔部8aが1つの取付足7に設けられた第2孔部7aと重なる範囲で移動自在に1つの取付足7とカバー部9との間に保持されているので、第2孔部7aの径に対応した標準規格外のナット(または第3取付足7に対応した車体取付部3にボルト取付穴が形成された場合には標準規格外のボルト)を特別に製造せずとも、第1孔部8aの径に対応した標準規格のナット(または第3取付足7に対応した車体取付部3にボルト取付穴が形成された場合には標準規格のボルト)を用いることができる。こうして、車両取付部品の個数の増加に伴い、箱本体2が大型化して、箱本体2が大型化することで、箱本体2を被取付部に取り付けるための取付足5、6、7の数が増加した際においても、複数の取付足5、6、7と車体取付部3との位置ずれを吸収することで、コスト増加を抑えることができる物品の取付部構造を提供することができる。また、ワッシャー8が第3取付足7とカバー部9との間に保持されているので、第3取付足7を移動した際においても、当該ワッシャー8を落としたり、なくすことがなくなるとともに、車体取付部3の表面から突出したスタッドボルトを、互いに重ねられた第1孔部8a及び第2孔部7a及び露出孔9aに通す従来と同様の容易な作業で、第3取付足7を車体取付部3に取り付けることができる。よって、組付け作業性の向上を図ることができる。また、ナット(または第3取付足7に対応した車体取付部3にボルト取付穴が形成された場合にはボルト)を螺合した際に、ナット(または第3取付足7に対応した車体取付部3にボルト取付穴が形成された場合にはボルト)によって1つの取付足7にかけられる力が、ワッシャー8が設けられていることで、1つの取付足7の第1孔部8aの縁部のみにかけられることなくワッシャー8全体で力を分散させるので、1つの取付足が座屈してしまうのを防止することができる。
【0050】
また、第3取付足7のワッシャー8が重ねられる面には、ワッシャー8より大きい凹部75が設けられ、凹部75内には、ワッシャー8が移動自在に収容されるので、カバー部9を第3取付足7に取り付ける際にワッシャー8が第3取付足7から落ちることがなくなり、簡単な構成で、より一層、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0051】
また、第1孔部8aの縁からワッシャー8の外縁までの寸法L2と第2孔部7aの縁から凹部75の外縁までの寸法L1とは等しく形成されているので、ワッシャー8が凹部75内に収容されると、該ワッシャー8が凹部75内のいかなる位置に動いたとしても常に第1孔部8aの全体が第2孔部7aに重なる位置に位置付けられることとなり、よって、より一層、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0052】
また、カバー部9は、1つの取付足7との間にワッシャー8を挟む基板部91と、前記基板部91の縁から立設し、1つの取付足7の側面76、77、78に重ねられる周板部92、93、94と、前記周板部92、93、94に設けられ、1つの取付足7に係止する係止部としての係止孔95と、を備え、カバー部9は、1つの取付足7に対してスライドすることで係止孔95が1つの取付足7に係止するように設けられているので、カバー部9を1つの取付足7に対してスライドする容易な作業で、カバー部9を1つの取付足7に取り付けることができる。
【0053】
また、基板部91の外表面から凸に形成された凸部としてのリブ96が設けられているので、カバー部9を1つの取付足7に対してスライドする際に、リブ96が滑り止めとして作用することとなり、よって、より一層、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0054】
なお、上述した実施形態では、「物品の取付部構造1」が電気接続箱に用いられる例を説明したが、本発明の「物品の取付部構造1」は、電気接続箱以外にも用いることができる。即ち、本発明における「物品」は、前述した箱本体2だけでなく、機器本体、プロテクタ等を含んでいる。
【0055】
また、上述した実施形態では、「1つの取付足」としての第3取付足7が1つのみ設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、「1つの取付足」は2つ以上であってもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、ワッシャー8は金属によって構成されていたが、本発明はこれに限ったものではなく、ワッシャー8は樹脂によって構成されていてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、凹部75は第3取付足7に設けられていたが、本発明はこれに限ったものではなく、凹部75はカバー部9のワッシャー8が重ねられる基板部91の面に設けられていてもよい。
【0058】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 物品の取付部構造
2 箱本体(物品)
3 車体取付部(被取付部)
5 第1取付足(複数の取付足)
6 第2取付足(複数の取付足)
7 第3取付足(複数の取付足のうちの一つの取付足)
7a 第2孔部
75 凹部
76、77 側面
8 ワッシャー
8a 第1孔部
9 カバー部
9a 露出孔
91 基板部
92、93 周板部
95 係止孔(係止部)
96 リブ(凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を被取付部に取り付けるための物品の取付部構造であって、
前記物品の外表面から突出し、前記被取付部に重ねられる複数の取付足と、
前記複数の取付足のうち少なくとも1つの取付足の前記被取付部から離れた側に重ねられた状態で、該1つの取付足とともに前記被取付部にボルト固定されるワッシャーと、
前記1つの取付足に取り付けられ、該1つの取付足との間に前記ワッシャーを挟んで保持するとともに、前記ワッシャーに設けられた第1孔部を露出する露出孔が設けられたカバー部と、を備え、
前記第1孔部は、ボルトの軸部が通される、前記1つの取付足に設けられた第2孔部の径よりも小さく、
前記ワッシャーは、少なくとも当該第1孔部が前記1つの取付足に設けられた前記第2孔部と重なる範囲で移動自在に前記1つの取付足と前記カバー部との間に保持されていることを特徴とする物品の取付部構造。
【請求項2】
前記1つの取付足の前記ワッシャーが重ねられる面には、前記ワッシャーより大きい凹部が設けられ、
前記凹部内には、前記ワッシャーが移動自在に収容されることを特徴とする請求項1に記載の物品の取付部構造。
【請求項3】
前記第1孔部の縁から前記ワッシャーの外縁までの寸法と前記第2孔部の縁から前記凹部の外縁までの寸法とは等しく形成されていることを特徴とする請求項2に記載の物品の取付部構造。
【請求項4】
前記カバー部は、前記1つの取付足との間に前記ワッシャーを挟む基板部と、
前記基板部の縁から立設し、前記1つの取付足の側面に重ねられる周板部と、
前記周板部に設けられ、前記1つの取付足に係止する係止部と、を備え、前記カバー部は、前記1つの取付足に対してスライドすることで前記係止部が前記1つの取付足に係止するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の物品の取付部構造。
【請求項5】
前記基板部の外表面から凸に形成された凸部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の物品の取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−170216(P2012−170216A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28684(P2011−28684)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】