説明

物品保管設備

【課題】 物品の運び入れ又は運び出し作業における作業性及び安全性を向上させることができる物品保管設備の提供を目的とする。
【解決手段】 物品保管設備1は、ビーム51、リミットスイッチ52及びロープ53とからなる操作手段5を、各搬入出口部33に対応して備えており、荷捌き処理後一旦停止する待機エリアにて、運転手81がフォークリフト8に乗ったままロープ53を引っ張ることを可能とし、ロープ53が引っ張られると、進行指令(搬送開始信号)が出力される構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品保管設備に関し、特に、フォークリフトが所定の待機エリアに位置するとき、フォークリフトの運転手が乗車したままロープを引っ張ることができ、ロープが引っ張られると搬送開始信号が出力される構成とすることによって、作業性及び安全性を向上させることができる物品保管設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動倉庫などの物品保管設備は、スペースの有効利用や作業効率の向上を目的として広く使用されてきた。
上記物品保管設備は、使用目的などに応じて、様々な構成の設備が開発されてきた。たとえば、優れた機能を有する完全自動倉庫や、周辺設備が自動化されていない物品保管設備などがある。
この周辺設備が自動化されていない物品保管設備では、フォークリフト、天井クレーン、ハンドリフターなどの搬送手段を用いて、物品搬送手段の搬入出口部に対して、物品の運び入れ又は運び出しが行なわれている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、物品を収納する複数の物品収納部と、この物品収納部と所定の搬入出口部との間で物品の搬送を行なう物品搬送手段とを備え、搬入出口部において物品の運び入れ又は運び出しを行なうように構成された物品保管設備の技術が記載されている。
【0004】
上記複数の物品収納部は、段方向及び番地方向に並設される。並設された複数の物品収納部は、平らな壁状の棚となり、通常、複数の棚が列方向に立設される。
また、物品搬送手段は、出し入れ装置(スタッカークレーンとも呼称される。)を備えている。出し入れ装置は、棚に沿って走行する走行車体、この走行車体に垂設されたマストに沿って昇降される昇降台、及び、この昇降台上に設けられ、物品収納部と搬入出口部においてフォークを出退させて物品の受け渡しを行なうフォーク装置(物品の受け渡し手段)を有している。
この出し入れ装置によって、搬入出口部と物品収納部との間で物品の搬送(物品収納部に対する物品の出し入れを含む。)が行なわれ、また、棚の一つの物品収納部とこれと異なる物品収納部との間で物品の搬送が行なわれる。
さらに、物品搬送手段は、荷捌き装置をも備える場合がある。荷捌き装置は、搬入出口部と受け渡し部の間を移動する自走台車を有しており、かかる場合、出し入れ装置によって、受け渡し部と物品収納部との間で物品の搬送が行なわれる。
【0005】
上記物品搬送手段への入出庫の作業データは、通常、入庫、出庫などの作業モードの情報と、物品の入出庫を行なう搬入出口部の情報と、入出庫を行う物品収納部を特定する情報(棚における位置を示す番号などの情報)を有している。
この作業データは制御手段に入力され、制御手段が作業データにもとづいて、物品搬送手段を制御する。また、制御システムとしては、作業者が操作パネルまたはリモートコントローラ(リモコン)を操作して、作業しながら順次作業データを制御手段へ入力するシステムや、予め一連の作業データが制御手段に入力されており、作業者が作業データにもとづく作業リストにしたがって、搬入出口部に対して物品の運び入れ又は運び出しを行なった後、操作スイッチをオンにして搬送開始信号を制御手段へ出力するシステムなどがある。
【0006】
ところで、搬入出口部における物品の運び入れ又は運び出しに、フォークリフトが使用される場合、操作パネルにて作業データを入力するタイプの物品保管設備は、作業者が、物品の運び入れ又は運び出しを行なう度に、フォークリフトから降りて、搬入出口部付近に設けられた操作パネルを操作し、再びフォークリフトに乗り込まなければならないので、作業効率が悪いとともに、作業者の肉体的疲労が増大するといった欠点があった。
これに対し、ワイヤレスのリモートコントローラにて作業データを入力するタイプの物品保管設備は、作業者をフォークリフトの乗り降りから開放することができ、作業性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2003−221101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リモートコントローラは指先だけで操作できるので、周りにいる人にとっては、操作したのか、操作していないのか、が判りにくいといった問題があった。
また、二人以上のフォークリフトの運転手が、それぞれリモートコントローラを使用しながら作業する場合、リモートコントローラの混信が起こる危険性があるといった問題があった。
【0008】
さらに、フォークリフトの運転手が、搬入出口部に対して物品の運び入れ又は運び出しを行なった後、地上に設置された操作スイッチをオンにするには、フォークリフトから降りて、搬入出口部付近に設けられた操作スイッチをオンにし、再びフォークリフトに乗り込まなければならないので、作業効率が悪いとともに、作業者の肉体的疲労が増大するといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、物品の運び入れ又は運び出し作業における作業性及び安全性を向上させることができる物品保管設備の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明の物品保管設備は、物品を収納する複数の物品収納部と、前記物品の運び入れ又は運び出しが行なわれる搬入出口部と、前記搬入出口部と前記物品収納部との間で、前記物品の搬送を行なう物品搬送手段と、予め作業データが入力され、該作業データにもとづいて前記物品搬送手段を制御する制御手段を有する物品保管設備であって、前記搬入出口部に設けられ、前記搬入出口部に運び入れた前記物品を、前記物品収納部に収納するために、前記物品収納部に搬送させる、あるいは、前記物品収納部に収納された前記物品を、前記搬入出口部から運び出すために、前記搬入出口部に搬送させる、搬送開始信号を前記制御手段に出力する操作手段を備え、前記物品を前記搬入出口部に運び入れ、あるいは、前記物品を前記搬入出口部から運び出すための搬送手段が、前記搬入出口部に対する運び入れ又は運び出し処理を終了して設備の干渉域から外れて待機する所定の待機エリアに位置するとき、前記操作手段が、操作可能な状態になる構成としてある。
このようにすると、フォークリフトなどの搬送手段が、搬入出口部に対する運び入れ又は運び出し処理を行なっている間に、操作手段を操作することができないので、物品や物品搬送手段などが損傷を受けるといった不具合を回避するとともに、作業の安全性を向上させることができる。また、操作手段を操作するために、搬送手段が所定の待機位置に移動すると、設備の干渉域から外れた安全な位置に位置するといった位置決め機能を発揮することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記搬送手段をフォークリフトとし、前記操作手段が、吊り下げ部材とスイッチを有し、前記吊り下げ部材が、前記所定の待機エリアに移動した前記フォークリフトに乗車した運転手が操作可能な位置に吊り下げられ、かつ、前記スイッチが、前記吊り下げ部材が引かれるとオンされ、前記搬送開始信号を出力するとよい。
このようにすると、フォークリフトを運転する運転手が、運び入れ又は運び出し処理を終了し、フォークリフトを所定の待機エリアに移動させると、フォークリフトに乗車したまま吊り下げ部材を引っ張り、搬送開始信号を出力することができるので、作業性を大幅に向上させることができる。また、吊り下げ部材は、操作されると(引っ張られると)しばらく揺れ動くので、周囲の作業者は、どこが操作されたかを(どの搬入出口部において搬送開始信号が出力されたかを)容易に知ることができる。
なお、吊り下げ部材として、紐、鎖、棒及びこれらを組み合わせた部材などを挙げることができる。
【0012】
また、好ましくは、前記吊り下げ部材が、柔軟性を有する紐状部材からなるとよい。
このようにすると、たとえば、フォークリフトが吊り下げ部材と接触しても、特に支障なく安全である。
【0013】
また、好ましくは、前記制御手段及び操作手段が、前記吊り下げ部材を用いて前記物品搬送手段の搬送を停止させる非常停止機能を有しているとよい。
このようにすると、フォークリフトに乗車した運転手が吊り下げ部材を引っ張り、搬送開始信号を出力させた後、たとえば、物品搬送手段の搬送状態に異常があった場合、吊り下げ部材を用いて直ちに物品搬送手段を非常停止させることができ、安全性を向上させることができる。
【0014】
また、好ましくは、前記所定の待機エリアの後方側に、追加して前記吊り下げ部材を設けるとよい。
このようにすると、フォークリフトに乗車した運転手が、所定の待機エリアで第一の吊り下げ部材を引き忘れ、後方側に移動した場合であっても、追加した第二の吊り下げ部材を引っ張ることができ、前方にもどらなくてもすむので、作業性を向上させることができる。
【0015】
また、好ましくは、前記搬送手段をフォークリフトとし、前記操作手段が、リモコンとリモコン受信部を有し、前記リモコンが、前記フォークリフトに取り付けられ、前記搬送開始信号を出力するスイッチと、前記送信開始信号を送信するリモコン送信部を有し、かつ、前記リモコン受信部が、前記フォークリフトが前記所定の待機エリアに位置するとき、前記リモコンと通信可能な位置に取り付けられ、受信した前記搬送開始信号を前記制御部に出力するとよい。
このようにすると、フォークリフトを運転する運転手が、運び入れ又は運び出し処理を終了し、フォークリフトを所定の待機エリアに移動させると、フォークリフトに乗車したままリモコンのスイッチを操作し、搬送開始信号を出力することができるので、作業性を向上させることができる。
【0016】
また、好ましくは、前記物品収納部が、列方向に複数列配設され、前記各列に対応して設けられた前記搬入出口部が、少なくとも前記搬入出口部の幅以上のピッチだけ、前記列方向順に番地方向にずれて配設されるとよい。
このようにすると、物品保管設備のスペースを有効利用することができる。また、一部の作業エリアにおける視界が狭められるが、本発明の操作手段により、各搬入出口部において、各搬入出口部に対応する物品搬送手段に確実に搬送開始信号が出力されるので、安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明にかかる物品保管設備によれば、フォークリフトが所定の待機エリアに位置するとき、フォークリフトの運転手が乗車したまま吊り下げ部材を引っ張ることができ、吊り下げ部材が引っ張られると搬送開始信号が出力される構成とすることによって、作業性及び安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第一実施形態]
図1aは、本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の概略平面図であり、図1bは、本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の概略列方向側面図を示している。
また、図2は、本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の操作手段の概略拡大斜視図を示している。さらに、図3,4,5は、それぞれ本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の、要部の概略拡大平面図、概略拡大列方向側面図、概略拡大番地方向側面図を示している。なお、図3,5においては、理解しやすいように、第5,6列の棚20を省略してある。
図1a,1b,2,3,4,5において、物品保管設備1は、通路によって二つに区分けされた倉庫10の、一方のエリアに設置されており、複数の物品収納部2からなる6列の棚20、3組の物品搬送手段3、制御手段4、及び、6つの搬入出口部33にそれぞれ設けられた操作手段5を備えている。
なお、物品収納部2や物品搬送手段3の数量や配置構成などは、本実施形態に限定されるものではない。
【0019】
「物品収納部」
物品収納部2は、パレット91に載置された荷物9を、パレット91とともに収納する収納部としてある。複数の物品収納部2が、段方向及び番地方向に並設され、平らな壁状の棚20となり、本実施形態では、列方向に6つの棚20が立設されている。6つの棚20は、第1列と第2列の棚20、第3列と第4列の棚20、第5列と第6列の棚20がそれぞれ対をなしており、同じ番地数(第1列と第2列の棚20の番地数は21、第3列と第4列の棚20の番地数は18、第5列と第6列の棚20の番地数は15)としてある。また、各棚20は、番地数の大きい方の端面を基準に配設してある。さらに、各棚20は、第1番地が、第1段及び第2段がなく、第3,4,5段を有し、第2番地以降が、第1〜5段を有している。
【0020】
「物品搬送手段」
物品搬送手段3は、搬入出口部33と物品収納部2との間で、荷物9の搬送を行なう手段であり、3つの出し入れ装置31及び6つの荷捌き装置32とからなっている。3つの出し入れ装置31は、それぞれ第1列と第2列の棚20の間、第3列と第4列の棚20の間、及び、第5列と第6列の棚20の間に配設されており、また、6つの荷捌き装置32は、それぞれ第1〜6列の棚20の番地数の小さい方の端部に配設してある。
出し入れ装置31は、上述した従来技術の出し入れ装置と同様に、走行車体、マスト、昇降台、及び、フォーク装置を有しており、制御手段4により制御される。また、荷捌き装置32は、搬入出口部33と受け渡し部34の間を自走する自走台車321からなり、制御手段4により制御される。この荷捌き装置32を設けることにより、たとえば、荷物9を荷捌き装置32に搬出した出し入れ装置31は、次の荷物9を取りに移動することができるので、出し入れ装置31の稼働率を向上させることができる。
自走台車321は、パレット91を支持する支持部材が設けられており、この支持部材に、荷物9の載置されたパレット91がフォークリフト8によって載置される。
なお、本実施形態では、荷捌き装置32が設けられているが、本発明は、荷捌き装置32の設けられていない物品保管設備に対しても有効である。荷捌き装置32の設けられていない物品保管設備においては、通常、受け渡し部34で、フォークリフト8と出し入れ装置31との間で荷物9が直接受け渡しされる。したがって、フォークリフト8と出し入れ装置31との受け渡しのタイミングに、より細かい配慮を必要とする。
【0021】
また、本実施形態では、物品収納部2からなる棚20が、列方向に6列配設され、各棚20に対応して設けられた搬入出口部33が、少なくとも搬入出口部33の幅以上のピッチだけ、列方向順に番地方向にずれて配設されている。
すなわち、第2列の棚20に対応する搬入出口部33は、第1列の棚20に対応する搬入出口部33より、第1列と第2列のピッチだけ列方向にずれており、かつ、少なくとも搬入出口部33の幅以上のピッチだけ番地方向にずれている。
また、第3列の棚20に対応する搬入出口部33は、第2列の棚20に対応する搬入出口部33より、第2列と第3列のピッチだけ列方向にずれており、また、少なくとも搬入出口部33の幅以上のピッチだけ番地方向にずれている。
この関係は、第4列の棚20に対応する搬入出口部33から第6列の棚20に対応する搬入出口部33まで同様であり、少なくとも搬入出口部33の幅以上のピッチだけ番地方向にずれることにより、フォークリフト8が、番地方向と直交する方向に移動し、荷物9の運び込み又は運び出しを行なうことができる。
【0022】
上記のように棚20及び搬入出口部33を配設することにより、フォークリフト8の移動スペースを最小化するとともに、物品収納部2の設置数を増加させることができるので、物品保管設備1の実質的な設置スペースを有効利用することができる。
また、たとえば、二台のフォークリフト8を同時に動かして作業する場合、第1列の搬入出口部33付近で作業する運転手81にとっては、たとえば、第2列以降の搬入出口部33付近で作業する他の運転手81の動作は、斜め後方で行なわれるため、視界に入らない。ただし、各運転手81は、自分が作業している搬入出口部33に対応する操作手段5だけを操作することができ、他の操作手段5を操作することができないので、安全性を向上させることができる。
【0023】
「操作手段」
操作手段5は、各搬入出口部33に対応して設けられており、ビーム51、リミットスイッチ52及びロープ53とからなっている。
ビーム51は、各棚20の搬入出口部33側の上部からほぼ水平方向に突き出た梁としてあり、先端部にリミットスイッチ52及びロープ53が取り付けられている。
リミットスイッチ52は、図示してないが、制御手段4と接続されており、ロープ53がたとえば数cm引っ張られると、オンするように取り付けられている。
リミットスイッチ52がオンすると、搬送開始信号が制御手段4に出力される。この搬送開始信号は、搬入出口部33に運び入れた荷物9を、物品収納部2に収納するために、物品搬送手段3に搬送させるか、あるいは、物品収納部2に収納された荷物9を、搬入出口部33から運び出すために、物品搬送手段3に搬送させる信号である。また、上記いずれの信号であるかは、制御手段4が、予め入力された作業データにもとづいて判断する。
なお、リミットスイッチ52は、ロープ53がフォークリフト8の屋根と接触した程度では、オンしない構成としてある。
【0024】
また、ロープ53は、所定の待機エリアに移動したフォークリフト8に乗車した運転手81が操作可能な位置に、ビーム51を介して吊り下げられている。
ここで、所定の待機エリアは、荷物9を搬入出口部33に運び入れ、あるいは、荷物9を搬入出口部33から運び出すためのフォークリフト8が、搬入出口部33に対する運び入れ又は運び出し処理を終了して設備の干渉域(本実施形態では、自走台車321が自走する領域など)から外れて待機するエリアをいう。たとえば、図5に示すように、荷物9を運び出し所定の待機エリアに位置するフォークリフト8が荷物9を降下させたり、自走台車321が自走したりしても、安全な状態にある。なお、フォークリフト8は、図5に示す操作エリアに位置するとき、搬入出口部33(自走台車321)に対して、荷物9の運び入れ又は運び出しを行なう。
また、所定の待機エリアにフォークリフト8が位置すると、フォークリフト8に乗車した運転手81のすぐわきにロープ53が垂れ下がっているので、運転手81は、乗車したままロープ53を引っ張ることができる。これによって、運転手81がロープ53を引っ張るために、フォークリフト8を所定の待機位置に移動させると、フォークリフト8が設備の干渉域から外れた安全な位置に位置するといった位置決め機能を発揮することができ、安全に作業を行なうことができる。
また、引っ張られたロープ53は、しばらく揺れ動くので、周囲の作業者は、どこが操作されたかを(どの搬入出口部33において搬送開始信号が出力されたかを)容易に知ることができる。これにより、より安全に作業を行なうことができる。
【0025】
「制御手段」
制御手段4は、図示してないが、記憶部、情報処理部、入力部、出力部、表示部などを備えており、予め入力された作業データにもとづいて物品搬送手段3を制御する。通常、制御手段4として、コンピュータが用いられ、このコンピュータは、在庫管理機能を有している。
また、制御手段4は、各搬入出口部331付近に設けられた操作パネル41と接続されている。この操作パネル41には、図示してないが、非常停止スイッチや手動運転スイッチなどが設けられている。この操作パネル41は、定常的な操作とは異なる操作を行なう際に使用され、たとえば、非常停止された後の、復帰させるための手動操作や、メンテナンスの際に行われる手動操作が行われる。なお、上述したように、定常的な作業状況においては、操作手段5のロープ53が引っ張られることにより、搬送開始信号が制御手段4に出力される。
【0026】
ここで、好ましくは、制御手段4及び操作手段5が、ロープ53を用いて物品搬送手段3の搬送を停止させる非常停止機能を有しているとよい。
すなわち、ロープ53が所定のタイミング及び/又は所定の力(ロープ53を引っ張る通常の力より大きな力)で引っ張られると制御手段4が、非常停止信号を入力したものと判断する構成とするとよい。たとえば、本実施形態では、制御手段4が、同じリミットスイッチ52から2秒以内に2回以上搬送開始信号を入力すると、搬送停止信号が出力されたものと判断し、そのリミットスイッチ52に対応する物品搬送手段3の搬送を停止させる。
このようにすると、フォークリフト8に乗車した運転手81がロープ53を引っ張り、搬送開始信号を出力させた後、たとえば、物品搬送手段3の搬送状態に異常があった場合、ロープ53を用いて直ちに物品搬送手段3を停止させることができ、安全性を向上させることができる。
【0027】
次に、上記構成の物品保管設備1の動作について、図面を参照して説明する。
図6は、本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の作業データの説明図を示している。
同図において、作業データは、作業No、搬入出口部、作業モード、棚、番地、段、パレットNoの情報を有しており、予め制御手段4に入力される。この作業データは、たとえば、プリントアウトされ、フォークリフト8の運転手81が、印刷された作業データ(運転手81にとっては、作業リスト)にもとづいて作業する。
【0028】
まず、上記作業データが、制御手段4に入力されると、制御手段4が物品搬送手段3を制御し、作業No1のために、第4列の棚20に対応する出し入れ装置31及び荷捌き装置32を入庫待機状態にする。すなわち、出し入れ装置31が受け渡し部34に移動し、自走台車321が搬入出口部33に移動して待機する。
また、制御手段4は、作業No2のために、第5列の棚20に対応する出し入れ装置31及び荷捌き装置32を出庫待機状態にする。すなわち、出し入れ装置31が、第5列の棚20の3番地×1段の物品収納部2から、荷物9及びNo750のパレット91を受け渡し部34に位置する自走台車321に搬送し、自走台車321が搬入出口部33まで移動し待機する。
【0029】
次に、運転手81が、作業リストにもとづいて、(たとえば、工場内から)フォークリフト8でNo1201のパレット91及び荷物9を搬送し、第4列の搬入出口部33に待機する自走台車321にパレット91を載置し、フォークリフト8の爪が抜ける位置(所定の待機エリア)まで後退し一時停止する。続いて、手の届く位置に垂れ下がったロープ53を一回引っ張る。
物品保管設備1は、ロープ53が引っ張られると、リミットスイッチ52がオンとなり、制御手段4に搬送開始信号を出力する。制御手段4は、第4列のリミットスイッチ52から搬送開始信号を入力すると、この搬送開始信号が作業No1に対応するものと判断し、第4列の荷捌き装置32及び出し入れ装置31を制御して、No1201のパレット91及び荷物9を第4列の棚20の8番地×1段の物品収納部2に収納する。また、収納した後、制御手段4は、作業No3に備えて、物品搬送手段3を制御し、第4列の棚20に対応する出し入れ装置31及び荷捌き装置32を入庫待機状態にする。
【0030】
次に、運転手81は、作業No2を行なうために、フォークリフト8を第5列の搬入出口部33に移動させ、出庫待機状態のNo750のパレット91及び荷物9を自走台車321から運び出し、フォークリフト8の爪及びパレット91が自走台車321上から離れる位置(所定の待機エリア)まで後退し一時停止する。続いて、手の届く位置に垂れ下がったロープ53を一回引っ張る。
物品保管設備1は、ロープ53が引っ張られると、リミットスイッチ52がオンとなり、制御手段4に搬送開始信号を出力する。制御手段4は、第5列のリミットスイッチ52から搬送開始信号を入力すると、この搬送開始信号が作業No2に対応するものと判断する。続いて、制御手段4は、作業No4のために、第5列の棚20に対応する出し入れ装置31及び荷捌き装置32を出庫待機状態にする。すなわち、出し入れ装置31が、第5列の棚20の3番地×2段の物品収納部2から、荷物9及びNo751のパレット91を受け渡し部34に位置する自走台車321に搬送し、自走台車321が搬入出口部33まで移動し待機する。
なお、運転手81は、作業リストにもとづいて、同様に作業する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の物品保管設備1によれば、フォークリフト8の運転手81が、運び入れ又は運び出し処理を終了し、フォークリフト8を所定の待機エリアに移動させると、フォークリフト8に乗車したままロープ53を引っ張り、搬送開始信号を出力することができるので、フォークリフト8を降りて操作スイッチを押す場合(従来技術)と比べると、作業性を大幅に向上させることができる。
また、フォークリフト8が所定の待機エリアに位置しないと、ロープ53を引っ張ることができないので、無理に急いだり誤った操作などによって、荷物9や自走台車321などが損傷を受けるといった不具合を回避するとともに、作業の安全性を向上させることができる。
さらに、従来技術のようなリモートコントローラを使用する場合と比べると、混信や操作ミスといった不具合を回避でき、また、製造原価のコストダウンを図ることができる。
【0032】
<応用例>
なお、本実施形態は、様々な応用例を有している。
次に、一応用例について、図面を参照して説明する。
図7は、本発明の第一実施形態の応用例にかかる物品保管設備の、要部の概略拡大番地方向側面図を示している。
同図において、物品保管設備1aは、第一実施形態の物品保管設備1と比べて、ビーム51にビーム54を追加して約1.5m延長し、ビーム54の先端に第二リミットスイッチ55及び第二ロープ56を設けた点が相違する。他の構成要素は、ほぼ第一実施形態と同様としてある。
したがって、図7において、図5と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0033】
第二リミットスイッチ55は、リミットスイッチ52とほぼ同様な構成としてあり、第二ロープ56が一回引っ張られると、搬送開始信号を制御手段4に出力する。また、たとえば、第二ロープ56が2秒以内に2回以上引っ張られると、制御手段4が、搬送停止信号が出力されたものと判断し、そのリミットスイッチ52及び第二リミットスイッチ55に対応する物品搬送手段3の搬送を非常停止させる。
なお、本実施形態では、第二ロープ56に対応する第二リミットスイッチ55を設けているが、第二リミットスイッチ55を設けず、第二ロープ56をリミットスイッチ52に設ける構成としてもよい。
【0034】
上述したように、本応用例によれば、フォークリフト8に乗車した運転手81が、第一実施形態における所定の待機エリアで第一のロープ53を引き忘れ、後方側に移動した場合であっても、追加した第二のロープ56を引っ張ることができ、前方にもどらなくてもすむので、作業性を向上させることができる。また、第一のロープ53を引っ張った後、搬送異常に気づいた場合、第二のロープ56を連続して二回引っ張ることによって、非常停止信号を出力することができるので、緊急時における安全性を向上させることができる。
【0035】
[第二実施形態]
図8は、本発明の第二実施形態にかかる物品保管設備の、要部の概略拡大番地方向側面図を示している。
同図において、本実施形態の物品保管設備1bは、第一実施形態の物品保管設備1と比べて、操作手段5として、リモコン受信部61と、リモコン送信部62及びスイッチ63を有するリモコンを備えた点が相違する。他の構成要素は、ほぼ第一実施形態と同様としてある。
したがって、図8において、図5と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0036】
リモコン送信部62及びスイッチ63は、フォークリフト8に取り付けられている。スイッチ63は、運転手81がより操作しやすい位置に取り付けることができる。また、リモコン送信部62は、赤外線を真上方向に照射するように、フォークリフト8の屋根に取り付けられている。
また、リモコン受信部61は、フォークリフト8が所定の待機エリアに位置するとき、ビーム51を介してリモコン送信部62と通信可能な位置に取り付けられ、受信した搬送開始信号を制御手段4に出力する。
【0037】
このように、本実施形態では、ロープ53の代わりに、赤外線を使用することにより、所定の待機エリアにフォークリフト8が位置するとき、この待機エリアに対応する物品搬送手段3にだけ搬送開始信号を出力することができる。このようにすると、第一実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。また、混信を確実に防止するとともに、スイッチ63をより操作しやすい位置に設けることができる。
【0038】
以上、本発明の物品保管設備について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る物品保管設備は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
たとえば、上記実施形態では、運転手81は、プリントアウトした作業リスト(制御手段4にとっては、作業データ)にもとづいて作業しているが、各搬入出口部33付近に設けられた操作パネル41に、ELDなどからなる作業Noを表示する表示部、青色ランプ、赤色ランプなどを有する表示部を設けてもよい。この表示部は、制御手段4と接続されており、現在の作業Noを表示し、この作業Noの作業段階が、搬送開始信号の入力待ちのとき、青色ランプを点滅させ、搬送開始信号が入力されると、青色ランプを点灯させ、また、非常停止信号が入力されると、赤色ランプを点灯させるなどする。このようにすると、運転手81が作業Noを間違えるといった不具合を効果的に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の物品保管設備は、自動倉庫などの保管設備に限定されるものではなく、たとえば、仕分け装置などの物流装置などにも広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1a】本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の概略平面図を示している。
【図1b】本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の概略列方向側面図を示している。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の操作手段の概略拡大斜視図を示している。
【図3】本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の、要部の概略拡大平面図を示している。
【図4】本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の、要部の概略拡大列方向側面図を示している。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の、要部の概略拡大番地方向側面図を示している。
【図6】本発明の第一実施形態にかかる物品保管設備の作業データの説明図を示している。
【図7】本発明の第一実施形態の応用例にかかる物品保管設備の、要部の概略拡大番地方向側面図を示している。
【図8】本発明の第二実施形態にかかる物品保管設備の、要部の概略拡大番地方向側面図を示している。
【符号の説明】
【0041】
1,1a,1b 物品保管設備
2 物品収納部
3 物品搬送手段
4 制御手段
5 操作手段
8 フォークリフト
9 荷物
10 倉庫
20 棚
31 出し入れ装置
32 荷捌き装置
33 搬入出口部
34 受け渡し部
41 操作パネル
51 ビーム
52 リミットスイッチ
53 ロープ
54 ビーム
55 第二リミットスイッチ
56 第二ロープ
61 リモコン受信部
62 リモコン送信部
63 スイッチ
81 運転手
91 パレット
321 自走台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する複数の物品収納部と、前記物品の運び入れ又は運び出しが行なわれる搬入出口部と、前記搬入出口部と前記物品収納部との間で、前記物品の搬送を行なう物品搬送手段と、予め作業データが入力され、該作業データにもとづいて前記物品搬送手段を制御する制御手段を有する物品保管設備であって、
前記搬入出口部に設けられ、前記搬入出口部に運び入れた前記物品を、前記物品収納部に収納するために、前記物品収納部に搬送させる、あるいは、前記物品収納部に収納された前記物品を、前記搬入出口部から運び出すために、前記搬入出口部に搬送させる、搬送開始信号を前記制御手段に出力する操作手段を備え、
前記物品を前記搬入出口部に運び入れ、あるいは、前記物品を前記搬入出口部から運び出すための搬送手段が、前記搬入出口部に対する運び入れ又は運び出し処理を終了して設備の干渉域から外れて待機する所定の待機エリアに位置するとき、前記操作手段が、操作可能な状態になることを特徴とする物品保管設備。
【請求項2】
前記搬送手段をフォークリフトとし、
前記操作手段が、吊り下げ部材とスイッチを有し、前記吊り下げ部材が、前記所定の待機エリアに移動した前記フォークリフトに乗車した運転手が操作可能な位置に吊り下げられ、かつ、前記スイッチが、前記吊り下げ部材が引かれるとオンされ、前記搬送開始信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の物品保管設備。
【請求項3】
前記吊り下げ部材が、柔軟性を有する紐状部材からなることを特徴とする請求項2に記載の物品保管設備。
【請求項4】
前記制御手段及び操作手段が、前記吊り下げ部材を用いて前記物品搬送手段の搬送を停止させる非常停止機能を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の物品保管設備。
【請求項5】
前記所定の待機エリアの後方側に、追加して前記吊り下げ部材を設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の物品保管設備。
【請求項6】
前記搬送手段をフォークリフトとし、前記操作手段が、リモコンとリモコン受信部を有し、前記リモコンが、前記フォークリフトに取り付けられ、前記搬送開始信号を出力するスイッチと、前記送信開始信号を送信するリモコン送信部を有し、かつ、前記リモコン受信部が、前記フォークリフトが前記所定の待機エリアに位置するとき、前記リモコンと通信可能な位置に取り付けられ、受信した前記搬送開始信号を前記制御部に出力することを特徴とする請求項1に記載の物品保管設備。
【請求項7】
前記物品収納部が、列方向に複数列配設され、前記各列に対応して設けられた前記搬入出口部が、少なくとも前記搬入出口部の幅以上のピッチだけ、前記列方向順に番地方向にずれて配設されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品保管設備。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−81282(P2008−81282A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264348(P2006−264348)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】