説明

物品包装体およびこれが貼付された食品包装体

【課題】 安定して製造でき、寸法安定性および外観に優れ、安定してかつ充分なシール強度で容器に熱融着できる物品包装体;安定して生産でき、容器に物品包装体が充分なシール強度で熱融着され、廃棄する際には物品包装体を容器から容易に剥がすことができる食品包装体を提供する。
【解決手段】 第1のフィルム14および第2のフィルム16の周縁部13,15を熱融着して物品を収容した物品包装体において、第1のフィルム14を、シーラント層21と最外層22とを有する多層フィルムとし、第2のフィルム16を、シーラント層23と最外層24とを有する多層フィルムとし、シーラント層21の樹脂の融点を最外層22の樹脂の融点よりも低くし、シーラント層23の樹脂の融点を最外層24の樹脂よりも低くし、最外層24の樹脂の融点を最外層22の樹脂よりも低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロー等の物品が包装された物品包装体、および飲料等の食品を収納した容器に物品包装体が貼付された食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ストロー、スプーン、フォーク、箸等の物品をフィルム等で包装した物品包装体、および食品を収納した容器に物品包装体が貼付された食品包装体は、よく知られている。該食品包装体としては、例えば、牛乳、ジュース等の飲料を収納した容器に、ストローをフィルムで包装したストロー包装体が貼付された飲料パックが挙げられる。
【0003】
飲料パックの容器は、紙基材の両面がポリエチレン等の樹脂によって被覆された包材からなる。また、ストロー包装体は、周縁部が熱融着によってシールされた2枚のフィルムにストローが包まれているものである。ストロー包装体の容器への貼付は、ホットメルト接着剤による接着、または、容器の表面樹脂とストロー包装体のフィルムとの熱融着によって行われる。
【0004】
使用後の飲料パックは、ストロー包装体のフィルムを容器から剥がして廃棄される。しかし、ホットメルト接着剤にて容器に接着されたフィルムは、接着力が高いため、容器から剥がすときにかなりの力が必要である。よって、容器にストロー包装体がホットメルト接着剤によって接着された飲料パックは、分別廃棄を促す上で好ましくない。また、容器とストロー包装体のフィルムとを分別したところで、ホットメルト接着剤が、容器またはフィルムに残ったまま、分別されずに廃棄されることになる。
【0005】
容器にストロー包装体が熱融着によって付着された飲料パックは、ストロー包装体のフィルムを容器から容易に剥がすことができ、容器とフィルムとを分別して廃棄できる点において好ましい。ストロー包装体のフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の単層フィルムがよく知られている。しかし、低密度ポリエチレンの単層フィルムは、自己支持特性に劣り、端部がカールしやすいという問題を有する。これを解決するために、中間層を密度0.945g/cm3 以上のポリエチレン、両外層を0.925g/cm3 以下のポリエチレンまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体としたストロー包装用積層フィルムが提案されている(特許文献1参照)。この積層フィルムは、容器への熱融着性に優れ、かつ自己支持特性に優れているとされている。
【0006】
しかし、従来の単層フィルムまたは積層フィルムは、フィルムの周縁部を熱融着してストローを包装する際、または容器にストロー包装体を熱融着する際に、熱融着面だけではなく、熱融着面とは反対側のヒーターと接触する表面も溶融し、溶融した樹脂がヒーターに付着し、さらには、ヒーターに付着した樹脂が、つぎの別のフィルムに付着するという問題を有する。ヒーターまたはフィルムに樹脂が付着すると、熱融着面への熱の伝達が妨げられ、シール強度の低下につながり、また、シール部分の外観不良ともなる。
【0007】
そのため、フィルムと接触するヒーターの表面には、フッ素樹脂加工等の特殊な表面加工が必要となり、メンテナンスが大変であり、生産性を低下させる原因となっている。また、ストロー包装体のフィルムは、20μm程度と薄いため、熱融着後の熱収縮によりフィルムに皺がよってしまう。さらに、正面視長方形のストロー包装体が短尺方向に連なったストローラダーにおいては、熱収縮によってストロー包装体間のピッチにバラツキが発生し、ストローラダーからストロー包装体を1つずつ切り離し、容器にストロー包装体を熱融着するアプリケーター装置において、ストロー包装体が切れる、容器への貼付ミスが発生する等のトラブルが発生し、安定した製造ができなくなる。
このため、ヒーターのメンテナンス頻度を抑えることができるフィルムを用いたストロー包装体が要望されていた。
【0008】
特許文献2には、上フィルムが中密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを混合し、融点125〜130℃、結晶化温度100〜115℃のポリエチレンフィルムであり、下フィルムが融点115〜125℃、結晶化温度90〜110℃の低密度ポリエチレンフィルムであるストロー包装体が開示されている。このストロー包装体は、下フィルムの融点を上フィルムより若干低くなるようにしたため、ストロー包装体を容器に貼着する際、ヒーターの当たる上フィルムは下フィルムに較べ耐熱性があり、ヒーターによる穴明き等のダメージを受け難く、ヒーターの温度設定を広くできるとされている。
【0009】
しかし、上フィルムおよび下フィルムの周縁部を熱融着してストローを包装する際、上フィルムおよび下フィルムの両方にヒーターが当たることになるため、下フィルムに当たるヒーターの表面には、溶融樹脂の付着を防ぐ特別な処置、例えばフッ素樹脂加工等の特殊な表面加工が必要であった。
【特許文献1】特公平3−76832号公報
【特許文献2】特開2004−249999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、本発明の目的は、安定して製造でき、寸法安定性および外観に優れ、容器に熱融着する際にトラブルが発生することがなく、容器に充分なシール強度で熱融着できる物品包装体、および、安定して生産でき、容器に物品包装体が充分なシール強度で熱融着され、廃棄する際には物品包装体を容器から容易に剥がすことができる食品包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の物品包装体は、第1のフィルムおよび第2のフィルムの周縁部を熱融着して第1のフィルムと第2のフィルムとの間に形成される空間に物品を収容した物品包装体において、第1のフィルムが、第2のフィルムと熱融着するシーラント層と、シーラント層とは反対側の表面の最外層とを有する多層フィルムであり、第2のフィルムが、第1のフィルムと熱融着するシーラント層と、シーラント層とは反対側の表面の最外層とを有する多層フィルムであり、第1のフィルムのシーラント層の樹脂の融点TmA(℃)、第1のフィルムの最外層の樹脂の融点TmB(℃)、第2のフィルムのシーラント層の樹脂の融点TmC(℃)、および第2のフィルムの最外層の樹脂の融点TmD(℃)が、下記式(1)〜(3)の関係を満たすことを特徴とするものである。
TmA<TmB ・・・(1)
TmC<TmD ・・・(2)
TmD<TmB ・・・(3)
【0012】
前記シーラント層の樹脂および前記最外層の樹脂は、ポリエチレン系樹脂であることが望ましい。
第1のフィルムおよび/または第2のフィルムのシーラント層の樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体であることが望ましい。
第2のフィルムの最外層の樹脂は、密度および/または融点の異なる複数のポリエチレン系樹脂の混合物であることが望ましい。
また、第1のフィルムのシーラント層の樹脂が、密度が0.930g/cm3 以下のポリエチレンであり、第1のフィルムの最外層の樹脂が、密度が0.945g/cm3 以上のポリエチレンであり、第2のフィルムのシーラント層の樹脂が、密度が0.925g/cm3 以下のポリエチレンであり、第2のフィルムの最外層の樹脂が、密度が0.925g/cm3 を超えるポリエチレンであり、第1のフィルムの最外層の樹脂の密度が、第2のフィルムの最外層の樹脂より高いことが望ましい。
【0013】
物品は、ストローであることが望ましい。
本発明の食品包装体は、食品を収納した容器と、該容器に貼付された本発明の物品包装体とを有し、物品包装体の第2のフィルムの最外層と、容器の表面とが熱融着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の物品包装体は、安定して製造でき、寸法安定性および外観に優れ、容器に熱融着する際にトラブルが発生することがなく、容器に充分なシール強度で熱融着できる。
また、本発明の食品包装体は、安定して生産でき、容器に物品包装体が充分なシール強度で熱融着され、廃棄する際には物品包装体を容器から容易に剥がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<物品包装体>
本発明の物品包装体は、物品と、該物品を収容する膨出部が形成された第1のフィルムと、第2のフィルムとを有し、第1のフィルムおよび第2のフィルムの周縁部を熱融着して第1のフィルムと第2のフィルムとの間に形成される空間に物品を収納したものである。
物品としては、ストロー、スプーン、フォーク、箸等の棒状物;食玩、菓子、薬等が挙げられる。
以下、物品包装体の一例として、物品がストローであるストロー包装体について説明する。
【0016】
(ストロー包装体)
図1〜図3は、本発明の物品包装体であるストロー包装体の一例を示す図である。このストロー包装体10は、ストロー11(物品)と、ストロー11を収容する縦長の膨出部12が形成され、その周縁部13が平坦な第1のフィルム14と、全体的に平坦な第2のフィルム16とを有し、第1のフィルム14の周縁部13と第2のフィルム16の周縁部15とを熱融着して第1のフィルム14の膨出部12と第2のフィルム16との間に形成される空間17にストロー11が収容されたものである。
【0017】
第1のフィルム14は、ストロー11を透視できる程度の透明性を有していることが好ましい。第1のフィルム14および第2のフィルム16の厚さは、10〜40μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。
【0018】
図4は、第1のフィルム14の周縁部13と第2のフィルム16の周縁部15とを熱融着した部分の拡大断面図である。
第1のフィルム14は、第2のフィルム16と熱融着するシーラント層21と、シーラント層21とは反対側の表面の最外層22とを有する多層フィルムである。最外層22は、第1のフィルム14と第2のフィルム16とを熱融着する際、およびストロー包装体10と容器とを熱融着する際に、ヒーター表面と接する面となる。
また、第2のフィルム16は、第1のフィルム14と熱融着するシーラント層23と、シーラント層23とは反対側の表面の最外層24とを有する多層フィルムである。最外層24は、第1のフィルム14と第2のフィルム16とを熱融着する際にヒーター表面と接する面となり、ストロー包装体10と容器とを熱融着する際にシーラント層となる。
【0019】
第1のフィルム14のシーラント層21、第1のフィルム14の最外層22、第2のフィルム16のシーラント層23、および第2のフィルム16の最外層24は、シーラント層21の樹脂の融点をTmA(℃)、最外層22の樹脂の融点をTmB(℃)、シーラント層23の樹脂の融点をTmC(℃)、および最外層24の樹脂の融点をTmD(℃)とすると、下記式(1)〜(3)の関係を満たす。
TmA<TmB ・・・(1)
TmC<TmD ・・・(2)
TmD<TmB ・・・(3)
【0020】
式(1)〜(3)における融点の差は5℃以上あることが好ましく、10℃以上あることがより好ましい。本発明における「融点」は、JIS K 7121に準じ、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した値である。
【0021】
シーラント層21の樹脂、最外層22の樹脂、シーラント層23の樹脂、および最外層24の樹脂は、ストロー11を透視できる程度の透明性を有していることが好ましい。樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリエチレン系樹脂;ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等のポリプロピレン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド66、ポリアミド6等のポリアミド系樹脂;これら樹脂の混合物等が挙げられる。これらのうち、低温熱融着性に優れることからポリエチレン系樹脂が好ましい。また、ポリエチレン系樹脂のうち、ポリエチレンまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、充分な低温熱融着性が必要な層にはエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0022】
ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。
ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートは、0.1g/10分〜20g/10分が好ましい。メルトフローレートは、JIS K 7210に準拠し、190℃、荷重21.18Nで求められる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル単位の含有量は、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、4〜10質量%が特に好ましい。
【0023】
シーラント層21およびシーラント層23は、熱融着の際のシーラント層となるため、シーラント層21の樹脂およびシーラント層23の樹脂は、シール強度の点から、同じ種類の樹脂とすることが好ましい。また、ストロー包装体10の製造時における熱融着時間はきわめて短時間であるため、シーラント層21の樹脂および/またはシーラント層23の樹脂としては、低温熱融着性の高いエチレン酢酸−ビニル共重合体が好ましい。
最外層22の樹脂は、融点TmBが最も高い樹脂である。よって、ストロー包装体のフィルムを全てポリエチレン系樹脂から製造する場合には、最外層22の樹脂としては、密度が0.945g/cm3 以上の高密度ポリエチレンエチレンが好ましい。
【0024】
第2のフィルム16の最外層24の樹脂としては、容器表面のポリエチレンとの熱融着が容易であることから、ポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。また、最外層24の樹脂を、密度および/または融点の異なる複数のポリエチレン系樹脂の混合物とし、低温熱融着性を高めることが好ましい。なお、複数の樹脂の混合物の融点は、加重平均とする。例えば、融点135℃のポリエチレン80質量%と融点100℃のポリエチレン20質量%との混合物の融点は、135×0.8+100×0.2=128℃とする。
【0025】
樹脂をすべてポリエチレンとすることにより、第1のフィルム14および第2のフィルム16を回収して溶融再生し、原料樹脂として再利用することができる。この場合、シーラント層21の樹脂を、密度が0.930g/cm3 以下のポリエチレンとし、最外層22の樹脂を、密度が0.945g/cm3 以上のポリエチレンとし、シーラント層23の樹脂を、密度が0.925g/cm3 以下のポリエチレンとし、最外層24の樹脂を、密度が0.925g/cm3 を超えるポリエチレンとし、かつ最外層22の樹脂の密度を最外層24の樹脂より高くすることが、ストロー包装体の製造工程での原料樹脂としての再利用を容易にする点で、好ましい。ポリエチレンの密度は、JIS K 7112 D法の密度勾配管法に準じて測定した値等、各層に用いられる原料樹脂のメーカーのカタログに記載された値である。
【0026】
(ストロー包装体の製造方法)
つぎに、ストロー包装体10の製造方法について説明する。
図5は、ストロー包装体10の製造装置の一例を示す図である。この製造装置は、ストロー11が収納されたホッパー31と、ホッパー31から供給されたストロー11が保持される複数の溝32および該溝32に設けられた吸引孔33とを有する回転自在なメインドラム34と、第1のフィルム14をメインドラム34の溝32に押し込む複数の凸条35を有する押し込みロール36と、メインドラム34表面において溝32以外で重なっている第1のフィルム14および第2のフィルム16を熱融着させる第1加熱ロール37と、第1のフィルム14および第2のフィルム16の両縁を熱融着させる第2加熱ロール38と、第1のフィルム14および第2のフィルム16の両縁の余分な部分をカットするカッター(図示略)と、正面視長方形のストロー包装体10が短尺方向に連なったストローラダー20を巻き取る巻き取り機39とを具備して概略構成されるものである。
【0027】
この製造装置を用いたストロー包装体10の製造は、以下のようにして行われる。
第1のフィルムロール(図示略)から供給される第1のフィルム14は、メインドラム34に同期して回転する押し込みロール36の凸条35によってメインドラム34の外周の溝32に押し込まれると同時に、溝32に設けられた吸引孔33によって吸引され、メインドラム34の溝32に密着させられる。このようにして、第1のフィルム14の膨出部12が形成される。
【0028】
ついで、溝32に密着させられた第1のフィルム14の上にホッパー31からストロー11が供給される。ついで、第2のフィルムロール(図示略)から供給される第2のフィルムが、ストロー11を被うようにメインドラム34上に供給される。メインドラム34表面において溝32以外で重なっている第1のフィルム14および第2のフィルム16は、第1加熱ロール37によって熱融着される。
【0029】
ストロー11を挟んだ状態で熱融着された第1のフィルム14および第2のフィルム16は、メインドラム34から離れた後、第2加熱ロール38によってその両端が熱融着され、カッター(図示略)によって第1のフィルム14および第2のフィルム16の両側の余分な部分がカットされる。このようにして得られた、ストロー包装体10が短尺方向に連なったストローラダー20は、巻き取り機39によって巻き取られる。
【0030】
(作用)
以上説明したストロー包装体10にあっては、シーラント層21の樹脂の融点TmAおよび最外層22の樹脂の融点TmBが、上記式(1)を満たすことによって、第1のフィルム14において最外層22は、シーラント層21よりも耐熱性を有する耐熱層となり、シーラント層21は耐熱層より低温で溶融する層となる。また、シーラント層23の樹脂の融点TmCおよび最外層24の樹脂の融点TmDが、上記式(2)を満たすことによって、第2のフィルム16において最外層24は、シーラント層23よりも耐熱性を有する耐熱層となり、シーラント層23は耐熱層より低温で溶融する層となる。また、最外層22の樹脂の融点TmBおよび最外層24の樹脂の融点TmDが、上記式(3)を満たすことによって、ストロー包装体10において最外層22は、最外層24よりも耐熱性を有する耐熱層となり、最外層24は最外層22よりも低温で溶融するシーラント層となる。
【0031】
このように、シーラント層21、最外層22、シーラント層23、および最外層24の各層の樹脂を式(1)〜(3)を満たすように選択することにより、第1のフィルム14と第2のフィルム16とを熱融着する際に、ヒーター表面に常に耐熱層(最外層22、最外層24)が接することとなり、ヒーターの温度を耐熱層の融点より低くしても、シーラント層21およびシーラント層23は溶融する。また、ストロー包装体10と容器とを熱融着する際に、ヒーター表面に常に耐熱層(最外層22)が接することとなり、ヒーターの温度を耐熱層の融点より低くしても、シーラント層(最外層24)は溶融する。すなわち、熱融着時に過大な熱を加えなくとも、シーラント層が溶融するため、耐熱層の樹脂がヒーターに付着することがなく、結果、熱融着面への熱の伝達が妨げられることがなく、シール強度が低下せず、シール部分の外観も良好となる。また、ヒーターの温度を耐熱層の融点より低くすることによって、熱によるフィルムの損傷が抑制される。また、熱融着後の熱収縮が少なくなり、ストローラダーの寸法変化も抑えられ、結果、ストロー包装体10を容器に貼付する際にトラブルが発生することがなくる。したがって、安定して、高速で、かつ連続して熱融着を行うことができ、ストロー包装体10および、食品包装体を安定して製造できる。
【0032】
また、ストロー包装体10は、比較的融点の高い最外層22および最外層24が第1のフィルム14および第2のフィルム16に腰を与えることによって、寸法安定性および切断適性が良好となる。
また、ストロー包装体10は、容器への付着を熱融着によって行うことができるため、ホットメルト接着剤による接着に比べ、ストロー包装体10を容器から容易に剥がすことができる。
【0033】
なお、図示例においては、第1のフィルム14および第2のフィルム16が2層フィルムの例であるが、第1のフィルムおよび第2のフィルムを構成するシーラント層、最外層、シーラント層、および最外層の各層の樹脂の融点が式(1)〜(3)を満たし、本発明の効果を失わない限り、第1のフィルムおよび第2のフィルムとして、シーラント層と最外層との間に他の層を設けた3層以上のフィルムを用いても構わない。また、本発明の物品包装体には、図示例のストロー包装体10が短尺方向に連なったストローラダー20のように、複数の物品包装体が連なったものも包含される。また、容器への付着には、熱融着以外のホットメルト接着剤または両面テープを用いた方法も、もちろん採用できる。
【0034】
<食品包装体>
本発明の食品包装体は、食品を収納した容器と、該容器に貼付された本発明の物品包装体とを有し、物品包装体の第2のフィルムの最外層と、容器の表面とが熱融着されているものである。
食品としては、牛乳、ジュース、豆乳等の飲料等が挙げられる。
容器としては、トップ部分が傾斜したゲーブルトップ型の容器、トップ部分が平坦なブリック型の容器、カップ型の容器、円筒型紙容器であるカートカン(登録商標)等が挙げられる。
以下、食品包装体の一例として、飲料を収納したブリック型の容器に、上記ストロー包装体10が貼付された飲料パックについて説明する。
【0035】
(飲料パック)
図6は、本発明の食品包装体である飲料パックの一例を示す図である。この飲料パック40は、飲料を収納したブリック型の容器41と、該容器41の側面に貼付されたストロー包装体10とを有し、ストロー包装体10の第2のフィルムの最外層24と、容器41の側面とが熱融着されているものである。
容器41は、基材の表面が樹脂によって被覆されたものが好ましい。樹脂としては、低温熱融着性に優れることからポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。なお、樹脂被覆されていなくても熱融着できる基材からなる容器であれば、樹脂被覆を設けなくてもよい。
【0036】
この飲料パック40にあっては、ストロー包装体10と容器41とを熱融着する際に、過大な熱を加えなくとも、シーラント層(最外層24)が耐熱層(最外層22)より先に溶融するため、耐熱層(最外層22)の樹脂がヒーターに付着することがなく、結果、熱融着面への熱の伝達が妨げられることがなく、シール強度が低下しない。したがって、安定して、高速で、かつ連続して熱融着を行うことができ、飲料パック40を安定して製造できる。
また、この飲料パック40は、ストロー包装体10の容器41への付着を熱融着によって行っているため、ホットメルト接着剤による接着に比べ、ストロー包装体10を容器41から容易に剥がすことができ、結果、分別廃棄性に優れる。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
シーラント層の樹脂として、低密度ポリエチレン(密度0.918g/cm3 、メルトフローレート2g/10分、融点108℃)を用い、最外層の樹脂として、高密度ポリエチレン(密度0.960g/cm3 、メルトフローレート3g/10分、融点135℃)を用い、これらを、ダイ径100mmφのインフレーションフィルム成形機により、ダイ温度190℃、ブロー比2.0の条件で製膜し、厚さ30μmの第1のフィルムを得た。
また、シーラント層の樹脂として、低密度ポリエチレン(密度0.918g/cm3 、メルトフローレート2g/10分、融点108℃)を用い、最外層の樹脂として、中密度ポリエチレン(密度0.928g/cm3 、メルトフローレート2g/10分、融点123℃)を用い、これらを、ダイ径100mmφのインフレーションフィルム成形機により、ダイ温度190℃、ブロー比2.0の条件で製膜し、厚さ25μmの第2のフィルムを得た。
【0038】
得られた第1のフィルム、第2のフィルム、および直径6mm、縮んだときの長さ88mmの2段式ストローを、図5に示す製造装置に供給して、ストロー包装体が連続したストローラダーを製造した。第1加熱ロールの温度は130℃に設定し、第2加熱ロールの温度は125℃に設定した。
アプリケーター装置にて、ストローラダーからストロー包装体を1つずつ切り離し、幅15mm、長さ101mm、膨出部の高さ約6mmのストロー包装体とし、ストロー包装体の第2のフィルムの最外層を飲料を収納した容器の側面に熱融着し、飲料パックを得た。アプリケーター装置におけるヒーターの温度は120℃に設定した。容器としては、紙基材の外面がポリエチレンで被覆されたものを用いた。
【0039】
[実施例2]
第2のフィルムの最外層の樹脂として、高密度ポリエチレン(密度0.960g/cm3 、メルトフローレート3g/10分、融点135℃)80質量%と、低密度ポリエチレン(密度0.910g/cm3 、メルトフローレート2g/10分、融点100℃)20質量%との混合物(混合物の融点128℃、混合物の密度0.950g/cm3 (計算値))を用いた以外は、実施例1と同様にして、ストロー包装体および飲料パックを得た。
【0040】
[比較例1]
第1のフィルムおよび第2のフィルムを高密度ポリエチレン(密度0.960g/cm3 、メルトフローレート3g/10分、融点135℃)からなる単層フィルムとした以外は、実施例1と同様にして、ストロー包装体および飲料パックを得た。
【0041】
実施例1、2においては、ストロー包装体を製造する際、第1のフィルムおよび第2のフィルムの収縮が少なく、ストローラダーにおけるストローの包装ピッチの狂いが少なく、加熱ロールへの樹脂の溶着もなく、安定した熱融着ができた。ストロー包装体の容器への熱融着の際にも、ストローラダーにおけるストローの包装ピッチの狂いが少ないため、安定してアプリケーター装置の切断用ドラムに供給でき、ストロー包装体の容器への熱融着も安定して行うことができた。また、ストロー包装体を容器から剥がすことも容易であった。
【0042】
比較例1においては、ストロー包装体を製造する際、フィルムが溶融し、熱融着面が荒れて、ストロー包装体の外観が悪くなり、また、加熱ロールに樹脂の付着が発生し、安定してストロー包装体を製造できなかった。また、ストロー包装体の容器への熱融着の際に、ストローラダーの切れが発生する等のトラブルが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の物品包装体は、寸法安定性および外観に優れ、容器に貼付する際にトラブルが発生することがなく、容器に充分なシール強度で熱融着できることから、容器への貼付用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の物品包装体の一例を示す正面図である。
【図2】本発明の物品包装体の一例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の物品包装体の一例を示す横断面図である。
【図4】図3における周縁部の拡大断面図である。
【図5】物品包装体の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の食品包装体の一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 ストロー包装体(物品包装体)
11 ストロー(物品)
13 周縁部
14 第1のフィルム
15 周縁部
16 第2のフィルム
17 空間
21 シーラント層
22 最外層
23 シーラント層
24 最外層
40 飲料パック(食品包装体)
41 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルムおよび第2のフィルムの周縁部を熱融着して第1のフィルムと第2のフィルムとの間に形成される空間に物品を収容した物品包装体において、
第1のフィルムが、第2のフィルムと熱融着するシーラント層と、シーラント層とは反対側の表面の最外層とを有する多層フィルムであり、
第2のフィルムが、第1のフィルムと熱融着するシーラント層と、シーラント層とは反対側の表面の最外層とを有する多層フィルムであり、
第1のフィルムのシーラント層の樹脂の融点TmA(℃)、第1のフィルムの最外層の樹脂の融点TmB(℃)、第2のフィルムのシーラント層の樹脂の融点TmC(℃)、および第2のフィルムの最外層の樹脂の融点TmD(℃)が、下記式(1)〜(3)の関係を満たすことを特徴とする物品包装体。
TmA<TmB ・・・(1)
TmC<TmD ・・・(2)
TmD<TmB ・・・(3)
【請求項2】
前記シーラント層の樹脂および前記最外層の樹脂が、ポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の物品包装体。
【請求項3】
第1のフィルムおよび/または第2のフィルムのシーラント層の樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物品包装体。
【請求項4】
第2のフィルムの最外層の樹脂が、密度および/または融点の異なる複数のポリエチレン系樹脂の混合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の物品包装体。
【請求項5】
第1のフィルムのシーラント層の樹脂が、密度が0.930g/cm3 以下のポリエチレンであり、
第1のフィルムの最外層の樹脂が、密度が0.945g/cm3 以上のポリエチレンであり、
第2のフィルムのシーラント層の樹脂が、密度が0.925g/cm3 以下のポリエチレンであり、
第2のフィルムの最外層の樹脂が、密度が0.925g/cm3 を超えるポリエチレンであり、
第1のフィルムの最外層の樹脂の密度が、第2のフィルムの最外層の樹脂より高いことを特徴とする請求項1に記載の物品包装体。
【請求項6】
物品が、ストローである請求項1ないし5のいずれか一項に記載の物品包装体。
【請求項7】
食品を収納した容器と、該容器に貼付された請求項1ないし6のいずれか一項に記載の物品包装体とを有し、
物品包装体の第2のフィルムの最外層と、容器の表面とが熱融着されていることを特徴とする食品包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−188246(P2006−188246A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85(P2005−85)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【出願人】(595159530)昭和電工プラスチックプロダクツ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】