説明

物品収納装置及び建物

【課題】収納スペースの有効利用を図って新たなスペースの確保を不要にする。
【解決手段】インナガレージ21の内壁に設けられた物品収納装置33により、フォークに支持された自転車34は天井面に近接した位置まで持ち上げられる。これにより、インナガレージ21に駐車された自動車25との干渉を回避した状態で自転車34が収納されることになり、インナガレージ21の有効利用を図ることができ、別途収納用のスペースを確保しなくても済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納スペースの内壁に設けられる可動式の物品収納装置、及びそれが設けられた収納スペースを有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガレージや物置等の収納スペースには、物品を収納するための工夫が施されており、その工夫の一つとして、収納スペースを拡張するという技術が知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1では、ガレージに二輪車を収納するために、ガレージの内壁面の一部に二輪車収納用の凹部が設けられている。
【0003】
この点、新たに別の物品を収納スペースに収納しようとする場合、前述した従来技術のように収納スペースを拡張し、その拡張部分に当該別の物品を収納すれば、もともと収納スペースに収納されていた物品との干渉を回避しながら収納することが可能となる。
【0004】
しかしながら、この従来技術では、収納スペースを拡張する以上、その拡張分のスペースを新たに確保しなければならなくなるという点で、多くの問題点を生じさせることになる。例えば、敷地面積等に起因する各種の制約により別のスペースを新たに確保することが困難な場合もあり、そのような場合は上記従来技術の適用も困難となる。また、収納スペースが建物内に設けられた場合であれば、スペース確保のために他の部屋の間取りを犠牲にせざるを得なくなってしまう。
【特許文献1】特開平11−350752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、収納スペースの有効利用を図って新たなスペースの確保を不要にできる物品収納装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、物品を支持する物品支持部材を有し、該物品支持部材に支持された物品を持ち上げて収納する物品収納装置であって、
収納スペースの内壁に、該内壁に沿って水平方向に延びる軸部材を回動中心とする回動部材を設け、前記回動部材の回動先端部に前記物品支持部材を連結し、その連結部分に、前記物品支持部材を前記回動部材の回動位置にかかわらず水平状態に保持する水平維持機構を設け、前記回動部材を回動させることにより物品を持ち上げるようにした。
【0008】
この発明によれば、物品を持ち上げることで収納スペースの床面から、より高い位置でその物品が収納されることなる。そして、収納スペースの床面に置かれた他物品との干渉を回避できるような位置までその物品を持ち上げれば、他物品との関係で収納スペースの床面に置くことが困難な物品を収納スペースに収納することが可能となる。これにより、収納スペースが有効に利用されることとなり、余分に新たなスペースを確保しなくても済む。その結果、新たなスペースの確保を必要とする従来技術の問題点を解消できる。すなわち、別のスペースを新たに確保することが困難な場合にも適用可能であるし、収納スペースが建物内に設けられた場合に他の部屋の間取りを犠牲にすることもなくなる。また、水平維持機構により物品支持部材は回動部材の回動位置(物品支持部材の昇降位置)にかかわらず水平状態に保持されるため、回動部材の回動中においても物品は物品支持部材によって安定した状態で支持されることになる。これにより、物品支持部材による物品の支持を確実に行うことができる。
【0009】
持ち上げられた状態の前記物品は、収納スペースの天井面寄りの位置、より好ましくは天井面寄りに近接した位置に配置されることが好ましい。これにより、収納スペースの床面に置かれた他物品との干渉をほとんど回避できる。このように、ユーザの手が届かなかったり届きにくかったりするために従来特に利用されていなかった天井面寄りのデッドスペースを利用している点で、前述したスペースの有効利用に大きく寄与できる。
【0010】
前記回動部材が鉛直方向上向きとなる位置から、鉛直方向下向きとなる位置までの回動範囲を有するように、前記回動部材を前記収納スペースの内壁に設けることが好ましい。これによれば、最大の回動範囲が設定されるため、他物品と干渉を回避できるような位置への持ち上げも可能となる。また、収納スペースの床面寄りに近接した位置に回動先端部を配置することも可能となるため、回動先端部に連結された物品支持部材に物品を支持させる作業が行い易くなる。
【0011】
そして、前記物品支持部材が前記収納スペースの床面上に置かれた状態に配置されるように、前記回動部材を前記収納スペースの内壁に設けることが好ましい。これにより、例えば物品としての車椅子を収納する場合に、その車椅子を床面から持ち上げることなく物品支持部材に支持させることが可能となり、車椅子を支持させる作業が容易となる。
【0012】
また、前記軸部材に沿った前記回動部材の幅を調整可能とすれば、持ち上げて収納する物品に応じて任意に幅を設定することが可能となり、ユーザの利便性を高めることができる。前記回動部材を前記収納スペースの内壁に対して着脱自在とすれば、持ち上げて収納する物品に応じて回動部材の個数を増減させることが可能となり、持ち上げ可能な物品の種類を増やせる。したがって、これによってもユーザの利便性を高めることができる。
【0013】
上記幅調整や着脱を可能とする具体的構成としては、次のような構成を採用できる。すなわち、前記回動部材は複数のアームからなるとともに、該複数のアーム同士は長手方向に幅調整可能な連結部材によって連結されており、前記複数のアームを前記収納スペースの内壁にアーム取付部材を介して着脱自在に設け、前記アーム取付部材には水平方向に沿ってガイド溝を形成し、該ガイド溝に沿って前記各アームをスライド移動させてアーム間の幅を調整可能とする。
【0014】
さらに、前記回動部材を回動させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する回動制御手段と、前記物品支持部材の床面に対する高さを検出する支持高さ検出手段とを備え、前記物品支持部材に対して物品の支持又は取り出し作業を行う場合における該物品支持部材の高さを予め設定可能とし、前記回動制御手段は、支持高さ検出手段から得られる物品支持部材の高さ情報に基づいて物品支持部材が設定高さになると前記回動部材の回動を自動停止させるように構成することが好ましい。これにより、回動部材を回動させて物品を持ち上げたり下ろしたりすることを自動的に行えることは勿論、物品支持部材に対して物品を支持させたり取り出したりする作業をユーザが所望する高さで行うことが可能となり、その作業が行いやすくなる。
【0015】
その他、前記回動部材を回動させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する回動制御手段と、前記物品支持部材の床面に対する高さを検出する支持高さ検出手段とを備え、前記収納スペースはガレージであり、該ガレージに駐車された他物品である自動車の荷台の高さを検出する荷台高さ検出手段を設け、前記回動制御手段は前記支持高さ検出手段から得られる物品支持部材の高さ情報と、前記荷台高さ検出手段から得られる自動車の荷台の高さ情報とを比較し、両者が一致した場合に前記回動部材の回動を自動停止させるように構成してもよい。これにより、自動車の荷台の高さに合わせた位置に物品支持部材が配置された状態で回動部材の回動が停止されるため、物品支持部材と自動車の荷台や後部の車載キャリアとの間の積み替えを容易に行うことができる。
【0016】
そして、上記物品収納装置が建物の収納スペースに設けられることで、その収納スペースの有効利用が可能となった建物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は二階建て建物の正面図である。図1に示すように、建物11には一階部分12と二階部分13とを有している。建物11において、一階部分12には収納スペースとしてのインナガレージ21、玄関ドア22が設けられた玄関スペース23及び一階居室24(図2参照)等が設けられている。インナガレージ21は一階部分12において他の部位(玄関スペース23及び一階居室24等)と同じ階高で形成されている。また、インナガレージ21には例えば自動車一台分の駐車スペースが確保されており、その駐車スペースに自動車25が駐車可能となっている。建物11の二階部分13には、二階居室26(図2参照)やバルコニ(図示略)等が設けられている。
【0019】
図2は自動車25を駐車させた状態のインナガレージ21を示す縦断面図である。図2に示すように、インナガレージ21には、建物11の正面側に自動車25の出入り口31が設けられており、その出入り口31を通じて自動車25が出入り可能となっている。出入り口31を形成する上部には、昇降式のシャッタ32が設けられている。自動車25の駐車時にはこのシャッタ32を降ろして閉じておけば、インナガレージ21内への不審者の侵入等を防止できる。インナガレージ21の奥部(出入り口31の反対側)には、可動式の物品収納装置33が設けられている。
【0020】
次に、この物品収納装置33について詳述する。なお、本実施の形態では、この装置33によって持ち上げられる物品として自転車34を想定している。
【0021】
図3は物品収納装置33を示す斜視図である。図3に示すように、物品収納装置33は長尺状をなすアーム取付部材41を有している。アーム取付部材41は、水平方向に延びる向きでインナガレージ21の奥部の内壁に設けられる。アーム取付部材41にはその長手方向に沿ってガイド溝42が形成されている。ガイド溝42が形成された部分には一対のヒンジ部材43が着脱自在に取り付けられている。両ヒンジ部材43はガイド溝42に沿ってスライド移動可能であり、任意の位置で固定されるようになっている。
【0022】
両ヒンジ部材43は、アーム取付部材41の長手方向と平行な軸部材としての回転軸44を有している。各回転軸44には、それぞれ回動部材としてのアーム45の基端部が固定されている。このため、各アーム45はヒンジ部材43を介してアーム取付部材41に取り付けられるとともに、回転軸44を中心として回動可能となっている。
【0023】
そして、各アーム45の回動範囲Xは、アーム45が鉛直方向上向きとなる位置(上位置)と、アーム45が鉛直方向下向きとなる位置(下位置)との間である(図5参照)。また、前述したようにヒンジ部材43をガイド溝42に沿ってスライド移動させれば、左右の両アーム45間の幅を調整することが可能となっている。さらに、前述したようにヒンジ部材43をアーム取付部材41に対して装着又は離脱させることで、アーム45の個数を任意に(例えば、一本又は3本以上に)変更することも可能となっている。
【0024】
ここで、アーム取付部材41の設置位置やアーム45の長さは、アーム45が上位置にある状態において、図2に示すように、自転車34とインナガレージ21に駐車された自動車25との干渉が回避できるように適宜設定される。すなわち、インナガレージ21の天井面寄りの位置、より好ましくは天井面寄りに近接した位置に自転車34が配置されるように設定される。
【0025】
各アーム45の回動先端部は、自転車34を支持する物品支持部材としてのフォーク46の基端部と連結されている。各フォーク46の基端部には連結部材としての連結アーム48の両端部が取り付けられ、フォーク46同士が連結されている。そして、この連結アーム48により、左右のアーム45及び左右のフォーク46が一体的に回動するようになっている。なお、アーム45の個数が増加した場合には、その増やしたアーム45との間を連結する連結アーム48がさらに設けられることになる。連結アーム48は入れ子構造を有しており、両アーム45間の幅調整に伴って連結アーム48の長さも調整可能となっている。
【0026】
また、各フォーク46のアーム45との連結部分には、回動するアーム45の位置にかかわらずフォーク46をその長手方向が水平方向と平行となる状態(水平状態)に維持させる水平維持機構47が設けられている。水平維持機構47により、アーム45はフォーク46に対して回動可能とされる一方、フォーク46はアーム45に対して回動不能とされて水平状態のまま維持される。これにより、左右の両アーム45がその回動範囲X内で回動する間、フォーク46による自転車34の支持状態が維持される。なお、水平維持機構47は、ラチェット歯車及び係止爪を備えたラチェット機構等、公知の機械的手段を適宜利用することが可能であり、その詳細な説明は省略する。
【0027】
物品収納装置33は上述した構成に加え、両アーム45を回動させる駆動装置51を備えている。駆動装置51はアーム45の個数に合わせて設けられた二本のワイヤ52と、ワイヤ52の巻取り又は引出しを行う巻取り装置53とを備えている。巻取り装置53はインナガレージ21の奥部の内壁に取り付けられている。
【0028】
二本のワイヤ52は左右のアーム45にそれぞれ対応して設けられ、一端がアーム45に取り付けられている。そして、各ワイヤ52は2つの転向滑車54を介して巻取り装置53に至り、巻取り装置53に内蔵された巻取りプーリ61に他端が取り付けられている。この巻取りプーリ61によるワイヤ52の巻取り又は引出しにより、左右の両アーム45がその回動範囲X内で一体的に回動することになる。なお、転向滑車54もアーム45間の幅調整に伴って設置位置が変更されるようになっている。
【0029】
巻取り装置53は前記巻取りプーリ61の他、ラチェット機構62、ラチェット機構62を作動状態又は解除状態を切り替える切替装置63、巻取りプーリ61を回転駆動する電動モータ等の駆動部64及び両アーム45の回動制御を司る回動制御手段としてのコントローラ65を備えている。
【0030】
ラチェット機構62はラチェット歯車と係止爪とを備え、逆回転防止の機能を有する公知の歯車機構である。ラチェット機構62はその作動状態又は解除状態が切替装置63によって切り替え可能となっている。ラチェット機構62が作動状態に切り替えられると、両アーム45が上位置に向けて回動する場合、すなわち巻取りプーリ61がワイヤ52を巻取る場合に、巻取りプーリ61がワイヤ52の引出し方向へ逆回転できなくなる。一方、ラチェット機構62が解除状態に切り替えられると、ワイヤ52の引出し方向への巻取りプーリ61の回転が許容される。
【0031】
次に、コントローラ65によって両アーム45の回動を制御する制御システムを説明する。図4はその制御システムの概要を示すブロック図である。
【0032】
コントローラ65は、CPUやメモリ等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されている。コントローラ65は、フォーク46に設けられてフォーク46の床面に対する高さを検出する支持高さ検出手段としての高さ検出センサ66から、その高さ情報を無線受信するようになっている。
【0033】
コントローラ65にはユーザによって入力操作される入力部材67が接続されている。入力部材67は、ワイヤ52を巻き取って両アーム45を上位置に向けて回動させる上昇ボタン71、ワイヤ52を引き出して両アーム45を下位置に向けて回動させる下降ボタン72、巻取りプーリ61の駆動を停止させる停止ボタン73等であり、巻取り装置53のケース表面に設けられている(図3参照)。これら各種の入力部材67が押し操作されることにより、ユーザの要求に応じた制御がなされるようになっている。なお、巻取り装置53から離れた場所から無線で制御ができるように、操作リモコンがさらに設けられる構成としてもよい。
【0034】
コントローラ65には前記切替装置63が接続されている。そして、コントローラ65は切替信号を切替装置63に出力し、その切替信号に基づいて切替装置63によるラチェット機構62の作動状態と解除状態との切り替えを制御する。また、コントローラ65には前記駆動部64が接続されている。そして、コントローラ65は駆動信号を駆動部64に出力し、その駆動信号に基づいて駆動部64による巻取りプーリ61の回転駆動を制御する。
【0035】
ここで、コントローラ65においては、上位置に向けて回動する両アーム45を自動的に停止させる位置(持ち上げ位置)の高さ、及び下位置に向けて回動する各アーム45を自動的に停止させる位置(下ろし位置)の高さを、ユーザによって予め設定することが可能となっている。持ち上げ位置については、例えば前述した上位置等に設定可能である。一方、下ろし位置については、例えば自動車25のサイクルキャリアに自転車34を載せかえるのに最適な位置、床面で自転車34を起立させた状態でフォーク46によって自転車34を支持させやすい位置等に設定可能である。コントローラ65は、フォーク46の高さが設定された高さになった場合に駆動部64への駆動信号の出力を停止し、巻取りプーリ61の回転を停止させる。
【0036】
次に、以上のような構成を有する物品収納装置33によって自転車34を持ち上げたり、下ろしたりする作用を説明する。図5はその作用を説明するための概略図である。
【0037】
物品収納装置33を用いて自転車34を持ち上げて収納しようとする場合、まず初期操作としてユーザは入力部材67の中の下降ボタン72を押す。すると、コントローラ65は切替装置63を制御してラチェット機構62を解除状態に切り替えるとともに、駆動部64を制御して巻取りプーリ61をワイヤ52の引出し方向に回転させる。これによりワイヤ52が巻取りプーリ61から引き出され、両アーム45は下位置に向けて一体的に回動する。
【0038】
コントローラ65は、高さセンサ66からの信号に基づきフォーク46が予め設定された下ろし位置に到達したと判断すると、駆動部64を制御して巻取りプーリ61の回転を停止させる。それとともに、コントローラ65は切替装置63を制御してラチェット機構62を作動状態に切り替える。これにより、両アーム45は設定された下ろし位置で停止し、かつ巻取りプーリ61がワイヤ52の引出し方向へ逆回転しないようになる。そして、この下ろし位置において、ユーザは両フォーク46に自転車34を支持させる(下ろし位置の例として図5のA位置)。
【0039】
次に、ユーザが入力部材67の中の上昇ボタン71を押すと、コントローラ65は駆動部64を制御して巻取りプーリ61をワイヤ52の巻取り方向に回転させる。これによりワイヤ52が巻取りプーリ61に巻取られ、両アーム45は上位置に向けて一体的に回動する。このとき、水平維持機構47によりフォーク46の水平状態が維持されるため、両アーム45の回動途中でフォーク46から自転車34がずり落ちてしまうことが防止される。また、ラチェット機構62が作動状態に切り替えられているため、巻取りプーリ61がワイヤ52の引出し方向へ逆回転し、両アーム45が下位置に向けて回動してしまうことも防止されている。
【0040】
その後、コントローラ65は、高さセンサ66からの信号に基づきフォーク46が予め設定された持ち上げ位置に到達したと判断すると、駆動部64を制御して巻取りプーリ61の回転を停止させる。これにより、自転車34は持ち上げ位置に持ち上げられることになる(持ち上げ位置の例として図5のB位置)。そして、この状態で自転車34はインナガレージ21内に収納される。この持ち上げ位置においてもラチェット機構62の作動状態が維持されている。このため、巻取りプーリ61がワイヤ52の引出し方向へ逆回転し、両アーム45が下位置に向けて回動してしまうことが引き続き防止されている。
【0041】
次に、持ち上げ位置に持ち上げられた自転車34を下ろす場合、ユーザが下降ボタン72を押す。すると、前述した作用と同様の作用により両アーム45は下位置に向けて回動する。そして、下ろし位置(A位置)に到達すればその位置で停止する。これにより、ユーザはその下ろし位置において自転車34を取り出すことができる。
【0042】
また、上昇ボタン71又は下降ボタン72が操作された後に、ユーザが入力部材67の中の停止ボタン73を押すと、コントローラ65は駆動部64を制御して巻取りプーリ61の回転を停止させる。これにより、ユーザが所望する任意の位置で両アーム45の回動が停止されることになる(例として図5のC位置)。
【0043】
以上より、本実施の形態においては以下に示す有利な効果が得られる。
【0044】
自転車34を持ち上げることでインナガレージ21の天井面寄りに近接した位置でその自転車34が収納されることなる。このため、インナガレージ21に駐車された自動車25との干渉を回避できる。このように、ユーザの手が届かなかったり届きにくかったりするために従来特に利用されていなかったインナガレージ21内の天井寄りのデッドスペースを利用している点で、スペースを有効利用できる。これにより、自転車収納用のスペースを別に確保しなくても済む。
【0045】
水平維持機構47によりフォーク46はアーム45の回動位置にかかわらず水平状態に保持されるため、アーム45の回動中においても自転車34はフォーク46によって安定した状態で支持されることになる。これにより、フォーク46による自転車34の支持を確実に行うことができる。
【0046】
両アーム45の回動範囲Xは上位置から下位置までであり、最大の回動範囲が設定されている。このため、インナガレージ21の天井面寄りに近接した位置への持ち上げも可能となる。また、反対に、床面寄りに近接した位置に回動先端部を配置することも可能となるため、回動先端部に連結されたフォーク46にユーザが自転車34を支持させる作業が行い易くなる。
【0047】
両アーム45間の幅が調整可能となっているため、自転車34のサイズ等に応じて任意に幅を設定することが可能となり、ユーザの利便性を高めることができる。また、各アーム45はアーム取付部材41に対して着脱自在となっているため、自転車34のサイズや重量に応じてアーム45の個数を増減させることが可能となり、この点でもユーザの利便性を高めることができる
コントローラ65によって駆動装置51が制御されるため、アーム45を回動させて自転車34を持ち上げたり下ろしたりすることが自動的に行われる。そして、アーム45の回動を停止させる位置(持ち上げ位置又は下ろし位置)をユーザが任意に設定可能であるため、フォーク46に対して自転車34を支持させたり取り出したりする作業をユーザが所望する高さで行うことができる。
【0048】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0049】
図6に示すように、左右の両アーム45が斜め上向きを指向する状態を持ち上げ位置として設定した場合に、その両アーム45を吊り下げ支持する吊下げ部材81を天井面に設けてもよい。
【0050】
上記実施の形態では、巻取り装置53によってワイヤ52の巻取り又は引出しを自動的に行うようにしたが、巻取りアーム等の手動操作部材を設けて巻取りプーリ61が手動で操作されるように構成してもよい。これにより、自動巻取り・引出しのための構成が不要となり、その分製品コストを低減させることができる。
【0051】
上記実施の形態では、ワイヤ52を利用した駆動装置51を例としているが、駆動装置の構成としてはこれに限定されるものではない。例えば、両アーム45に共通する回転軸に両アーム45が固定されるようにして、その回転軸を駆動する回転駆動部が設けられた構成等であってもよい。
【0052】
上記実施の形態では、ヒンジ部材43をアーム取付部材41に設けたが、アーム取付部材41を省略してヒンジ部材43を直接インナガレージ21の内壁に設けた構成としてもよい。これにより、物品収納装置33の部品点数を少なくできる。
【0053】
上記実施の形態では、回動部材の具体的構成としてアーム45を用いたが、回動部材としてはこれに限定されるものではなく、例えば、入れ子構造として回転軸方向に伸縮自在とした板状部材等であってもよい。
【0054】
上記実施の形態では、持ち上げ位置においてもラチェット機構62を作動させて両アーム45が下位置に向けて回動してしまうことを防いでいるが、これとともに又はこれに代えて、各アーム45にダンパを連結してもよい。このダンパにより、持ち上げられた状態の両アーム45は下方から支持されることになる。また、持ち上げ状態が維持されることを補助する補助手段を別途設けてもよい。補助手段としては、例えば内壁に設けられた係止部(図示略)によって係止される被係止部(図示略)を各アーム45に設けた構成等が考えられる。これにより、両アーム45を持ち上げた状態を確実に維持できる。
【0055】
上記実施の形態では、物品として自転車34を例として説明したが、物品の種類は限定されず、例えば、車椅子、サーフボード、自動車タイヤ、工具類等、ユーザが所望する適宜の物であればよい。これにより、自転車34以外の物も物品収納装置33を利用してインナガレージ21で収納できる。この場合、物品支持部材として左右のフォーク46の間に網(ネット)を設けた構成としたり、フォーク46に代わる荷台を設けたりしてもよい。荷台の構成は特に限定されるものではないが、例えば図7に示すように底板83と側面ストッパ84とを有する荷台82とすれば、物品の落下を防止できる。また、フォーク46か荷台かの二者択一ではなく、図7に示すように両者が設けられた構成とすれば、物品収納装置33を用いて収納できる物品の種類を増やすことができる。
【0056】
上記実施の形態では、下位置におけるフォーク46の高さについて特に言及していないが、下位置においてフォーク46又は荷台が床面上に置かれた状態となるようにアーム取付部材41の設置位置やアーム45の長さ等を設定してもよい。これにより、例えば物品が車椅子等である場合に、それを持ち上げることなく荷台に載せることができる。
【0057】
上記実施の形態では、フォーク46に設けられた高さセンサ66によってフォーク46の高さ情報を得ているが、支持高さ検出手段としてはこの高さセンサ66に限定されるものではなく、回転軸44の回動角度を検出する角度センサによって高さ情報を得るようにしてもよい。
【0058】
上記実施の形態では、フォーク46の高さを検出する高さセンサ66を設けているが、インナガレージ21に駐車された自動車25の荷台の高さを検出する荷台高さ検出手段としての荷台高さセンサを設けて、これを利用した制御を行うようにしてもよい。すなわち、コントローラ65は高さセンサ66から得られるフォーク46の高さ情報と、荷台高さセンサから得られる自動車25の荷台の高さ情報とを比較し、両者が一致した場合に両アーム45の回動を自動停止させるようにする。これにより、フォーク46と自動車25の荷台や自動車25の後部に設けられたサイクルキャリア等との間で、自転車34等の物品の積み替えを容易に行うことができる。
【0059】
上記実施の形態では、収納スペースとしてインナガレージ21を例として説明したが、収納スペースはこれに限定されるものではない。例えば、建物11から独立したガレージや物置であって内壁を有するものや、建物11内の一室となる収納スペース等、自動車を駐車するスペースとは異なる収納スペース等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】二階建て建物の正面図。
【図2】自動車を駐車させた状態のインナガレージを示す縦断面図。
【図3】物品収納装置を示す斜視図。
【図4】物品収納装置の制御システムの概要を示すブロック図。
【図5】物品収納装置の作用を説明するための概略図。
【図6】物品収納装置の別例を示す概略図。
【図7】荷台を設けた別例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0061】
11…建物、21…インナガレージ(収納スペース)、25…自動車(他物品)、33…物品収納装置、34…自転車(物品)、41…アーム取付部材、42…ガイド溝、44…回転軸(軸部材)、45…アーム(回動部材)、46…フォーク(物品支持部材)、47…水平維持機構、48…連結アーム(連結部材)、51…駆動装置、65…コントローラ(回動制御手段)、66…高さセンサ(支持高さ検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を支持する物品支持部材を有し、該物品支持部材に支持された物品を持ち上げて収納する物品収納装置であって、
収納スペースの内壁に、該内壁に沿って水平方向に延びる軸部材を回動中心とする回動部材を設け、前記回動部材の回動先端部に前記物品支持部材を連結し、その連結部分に、前記物品支持部材を前記回動部材の回動位置にかかわらず水平状態に保持する水平維持機構を設け、前記回動部材を回動させることにより物品を持ち上げるようにしたことを特徴とする物品収納装置。
【請求項2】
持ち上げられた状態の前記物品は、収納スペースの天井面寄りに配置されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の物品収納装置。
【請求項3】
前記回動部材が鉛直方向上向きとなる位置から、鉛直方向下向きとなる位置までの回動範囲を有するように、前記回動部材を前記収納スペースの内壁に設けたことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の物品収納装置。
【請求項4】
前記物品支持部材が前記収納スペースの床面上に置かれた状態に配置されるように、前記回動部材を前記収納スペースの内壁に設けたことを特徴とする請求項3に記載の物品収納装置。
【請求項5】
前記軸部材に沿った前記回動部材の幅を調整可能としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の物品収納装置。
【請求項6】
前記回動部材を前記収納スペースの内壁に対して着脱自在としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の物品収納装置。
【請求項7】
前記回動部材を回動させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御する回動制御手段と、
前記物品支持部材の床面に対する高さを検出する支持高さ検出手段と
を備え、前記物品支持部材に対して物品の支持又は取り出し作業を行う場合における該物品支持部材の高さを予め設定可能とし、前記回動制御手段は、支持高さ検出手段から得られる物品支持部材の高さ情報に基づいて物品支持部材が設定高さになると前記回動部材の回動を自動停止させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の物品収納装置。
【請求項8】
前記回動部材を回動させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御する回動制御手段と、
前記物品支持部材の床面に対する高さを検出する支持高さ検出手段と
を備え、
前記収納スペースはガレージであり、
該ガレージに駐車された他物品である自動車の荷台の高さを検出する荷台高さ検出手段を設け、
前記回動制御手段は前記支持高さ検出手段から得られる物品支持部材の高さ情報と、前記荷台高さ検出手段から得られる自動車の荷台の高さ情報とを比較し、両者が一致した場合に前記回動部材の回動を自動停止させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の物品収納装置。
【請求項9】
前記回動部材は複数のアームからなるとともに、該複数のアーム同士は長手方向に幅調整可能な連結部材によって連結されており、
前記複数のアームを前記収納スペースの内壁にアーム取付部材を介して着脱自在に設け、前記アーム取付部材には水平方向に沿ってガイド溝を形成し、該ガイド溝に沿って前記各アームをスライド移動させてアーム間の幅を調整可能としたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の物品収納装置。
【請求項10】
物品の収納スペースを有する建物であって、前記収納スペースの内壁に請求項1乃至9のいずれか1項に記載の物品収納装置が設けられた建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−46900(P2009−46900A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214642(P2007−214642)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)