物品搬送装置
【課題】多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、概ね一定量ずつ排出すること。
【解決手段】物品搬送装置であって、複数の固定床20の各個の床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、複数の移動床30の各個を各固定床20に対し搬送方向の側傍に隣接配置するとともに、各移動床30を同時にそれらの床面31が隣接する固定床20の床面21に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返し、上位に位置付けされた各移動床30の床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置したもの。
【解決手段】物品搬送装置であって、複数の固定床20の各個の床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、複数の移動床30の各個を各固定床20に対し搬送方向の側傍に隣接配置するとともに、各移動床30を同時にそれらの床面31が隣接する固定床20の床面21に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返し、上位に位置付けされた各移動床30の床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置したもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品搬送装置として、特許文献1に記載の如く、多数の棒状材料(11)を、その搬送の途次において1本ずつに分離して次工程に供給する装置であって、前記棒状材料(11)の搬送方向の上流側面が、上方に向かうにつれて搬送方向下流側に変位する階段状に形成された固定床(41)と、前記固定床(41)と平行に隣接位置すると共に、前記棒状材料(11)の搬送方向の上流側面が、上方に向かうにつれて搬送方向下流側に変位する階段状に形成された移動床(42)と、前記移動床(42)の下方に配置され、該移動床(42)をその段部(45)を、前記固定床(41)における段部(43)の上方および下方に往復移動させる往復駆動手段(47)とを備えてなるものがある。この物品搬送装置は、往復駆動手段(47)の駆動により、移動床側の段部(45)が固定床側の段部(43)よりも上方のレベルに向かう際に、その移動床側の段部(45)が、固定床側の段部(43)に載置した棒状材料群から1本の棒状材料(11)を捕捉し、これを固定床側における上段の段部(43)に順次移載するものである。
【特許文献1】実開平7-23731
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の物品搬送装置では、固定床と移動床が平行に隣接位置しており、搬送対象物品たる棒状材料を、搬送方向に直交する方向に並置されている一対の移動床側の段部により捕捉し、これを同じく並置されている一対の固定床側の段部に移載するものになる。従って、物品は一対の移動床の間隔を越える長さ、かつ一対の固定床の間隔を越える長さをもつ長尺物品であることが必要とされる。また、物品の投入姿勢は一対の固定床の段部に受け入れられ得るように、搬送方向に直交する姿勢をとる必要がある。即ち、従来技術では、多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、概ね一定量ずつ排出することができない。
【0004】
本発明の課題は、多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、概ね一定量ずつ排出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、複数の固定床の各個の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、複数の移動床の各個を各固定床に対し搬送方向の側傍に隣接配置するとともに、各移動床を同時にそれらの床面が隣接する固定床の床面に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返し、上位に位置付けされた各移動床の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、各固定床の床面を搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させるとともに、各移動床の床面も搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させてなる物品搬送装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
物品搬送装置10は、図1〜図3に示す如く、架台11の一端側から他端側に向かう方向を物品搬送方向とし、その一端側に入口シュート12を設け、入口シュート12の裏面に搬送力を高めるためのバイブレータ13を装備してある。
【0007】
物品搬送装置10は、架台11に設けた支持部材14に複数の固定床20を支持する。物品搬送装置10は、複数の固定床20の各個の床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する角度θ:例えば5〜35度)(図4)をなすように配置している。このとき、各固定床20の床面21は、それ自体でも、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した斜面とされている。固定床20にバイブレータを装備し、搬送力を高めても良い。
【0008】
物品搬送装置10は、架台11に支持した昇降駆動装置15に左右のサイドガイド板16を連結し、架台11に支持したスライド軸17にサイドガイド板16に固定してあるスライド部18をスライド自在に嵌合している。また、架台11とスライド部18の間には、衝撃緩和ダンパ19を介装している。左右のサイドガイド板16は、入口シュート12と固定床20の巾方向の両側に配置されるとともに、複数の移動床30を挟んで備える。複数の移動床30の各個を各固定床20に対し搬送方向の側傍(本実施例では上流側の側傍)に隣接配置する。固定床20と移動床30は一定の間隔を介して搬送方向に沿って交互に配置されるものになる。物品搬送装置10は、昇降駆動装置15により、サイドガイド板16及び移動床30の昇降動作を繰り返す(移動床30を昇降駆動装置15に直に連結し、サイドガイド板16は必ずしも昇降させる必要はない)。即ち、各移動床30を同時にそれらの床面31が隣接する固定床20の床面21に対する上位(図4(A))と下位(図4(B))に位置付ける昇降動作を繰り返す。
【0009】
各移動床30の床面31は、上位において固定床20の床面21より上に突出し、下位において固定床20の床面21より下に没入する。本発明における「没入」とは、移動床30が固定床20の下方に位置することをいい、具体的には、移動床30全体が完全に固定床20の床面21より下方に位置する完全に没入した場合は勿論、移動床30の床面31が下位状態で固定床20の床面21とほぼ同一位置で停止した場合も含まれる。「ほぼ同一位置での停止」とは、図17(A)に示すように、複数の固定床20の床面21の最下部を結ぶ線に対して各移動床30の床面31の下位状態における最高部を結ぶ線との高さ差yが0〜+5mm、もしくは、yが図7に示す物品の最小寸法aの2〜10%のいずれかになるように位置することをいう。尚、図17(B)は、y=約0mmで、移動床30の床面31が下位状態において固定床20の床面21とほぼ同一位置となった状態を示す。尚、図17(C)は、yがマイナス値となり、移動床30の床面31が下位状態において固定床20の床面21に完全に没入した状態を示す。
【0010】
上位に位置付けられた各移動床30の床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する角度θ:例えば5〜35度)をなすように配置する。このとき、各移動床30の床面31は、それ自体でも、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した斜面とされている(図4)。
【0011】
この移動床配置についての角度θ(θ1)は、固定床配置についての角度θ(θ2)とほぼ同一に一致させたほうが物品搬送時の物品挙動が安定して好ましい。θの値は、物品と固定床20や移動床30との摩擦状態によって適宜調整される。一例として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS等の樹脂製キャップやアルミ製等の金属製キャップ等の物品を、(a)表面を一般的な機械加工にて仕上げたステンレス製やアルミ製等の金属製の固定床20や移動床30、(b)表面を一般的な機械加工にて仕上げたポリアセタールやポリ塩化ビニル等の樹脂製の固定床20や移動床30、(c)更にこれらの表面に滑り性の良いテープ材を貼った固定床20や移動床30にて搬送する場合の角度θは、好ましくは8〜25度、更に好ましくは12度〜20度にすると良い。尚、移動床配置についての角度θ1と、固定床配置についての角度θ2を異なるものとすれば、上流と下流での移動挙動を変化させることも可能である。
【0012】
移動床配置及び固定床配置が水平に対する角度θ、固定床20の床面21が水平に対する角度α、移動床30の床面31が水平に対する角度βの関係を図16に示す。
【0013】
第1の形態として、一般的な各角度の関係を図16(A)に示す。固定床20の床面21が水平に対する角度αは、移動床配置についての角度θ1に対し、−5〜+15度程度と、ほぼ同等もしくは僅かに大きく設定される。これは、固定床20の床面21において物品を下流の移動床30の床面31へゆっくりと安定的に搬送させるためである。仮に物品が自ら滑ることのない角度であっても、上流からの他物品に押されて搬送される。次に、移動床30の床面31が水平に対する角度βは、固定床20の床面21が水平に対する角度αに対し、+5〜+25度程度と大きく設定される。これは、移動床30の床面31が突出中に、確実に物品を下流の固定床20の床面21へと搬送させるためである。
【0014】
第2の形態として、物品を特にスムースに搬送させたい際の各角度の関係を図16(B)に示す。固定床20の床面21が水平に対する角度αは、移動床配置についての角度θ1と概同一に設定される。更に、移動床30の床面31が水平に対する角度βも、移動床配置についての角度θ1と概同一に設定される。これは、移動床30の床面31が没入時に、物品をガタつかせることなくスムースに下流の固定床20の床面21へ確実に搬送させるためである。従って、移動床30の没入位置は、図16(C)に示すように、移動床30の床面31が固定床20の床面21に対して没入せず、固定床20の床面21と移動床30の床面31が概直線関係をなすことができる位置、もしくは移動床30の床面31が、0.5〜3mm程度極僅かに没入する位置(不図示)とすることが好ましい。
【0015】
昇降駆動装置15は、昇降速度や昇降ストロークを変更制御できる電動シリンダを用いることができる。昇降駆動装置15は、電動モータの回転を直線運動に変換する機構、又は空圧シリンダ等でも良い。
【0016】
以下、物品搬送装置10による物品搬送状態を、参考例としての物品搬送装置10Aによる物品搬送状態と比較して示す(図5、図6)。
【0017】
図5の物品搬送装置10Aは、複数の固定床20の床面21を互いに水平配置するとともに、複数の移動床30の床面31も互いに水平に保ちながら昇降させるようにしたものであり、相隣る移動床30のピッチpより小寸法の物品1(図5(A))は各移動床30の昇降動作の繰り返しにより、固定床20と移動床30の床面21、31自体の斜面に沿って滑ることにて搬送できるが、大寸法の物品1(図5(B))は各移動床30の昇降動作を繰り返しても同一地点で突き上げられることを繰り返すのみで搬送されない。
【0018】
図6の物品搬送装置10では、複数の固定床20の床面21を互いに下り勾配をなすように配置するとともに、複数の移動床30の床面31も互いに下り勾配をなすように配置したものであり、相隣る移動床30のピッチpより小寸法の物品1(図6(A))も、大寸法の物品1(図6(B))も、各移動床30の昇降動作の繰り返しにより搬送される。即ち、移動床30の上昇により、移動床30の床面31が固定床20の床面21上にある物品1を突き上げると、移動床30の床面31自体の傾斜が物品1に下流側への搬送力を付与する。搬送力を付与された物品1は、移動床30の下降により、下流側の搬送方向に沿って下り勾配をなす固定床20の床面21上に移載され、固定床20の床面21自体の傾斜、更には複数の互いに搬送方向に沿って下り勾配をなす固定床20の床面21相互の傾斜に載って滑り、下流側へと搬送される。固定床20の床面21の傾斜に載って滑る過程で、図6(C)に示す如く、下流側の固定床20に引っ掛かっても、移動床30の次の上昇により固定床20から突き上げられ、下流側へと搬送される。
【0019】
従って、物品搬送装置10にあっては、固定床20と移動床30が搬送方向に沿って交互に隣接配置され、しかもそれらの床面21、31が互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置されるものであり、物品1の寸法形状や投入姿勢に関係なく、あらゆる物品1を固定床20の床面21に載せ、移動床30の床面31により突き上げ、上述(a)の搬送動作を行ない、概ね一定量ずつ排出できる。
【0020】
物品搬送装置10は、移動床30の昇降動作の1サイクル(最下降位置〜最上昇位置〜最下降位置の1サイクル)において、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間割合を、該固定床20の床面21より下に没入している時間割合より小さく制御することができる。これにより、物品1を移動床30の床面31より突き上げている時間より、物品1を固定床20の床面21に載せて滑らせる時間のほうが長くなり、物品1の排出量を増加できる。
【0021】
尚、移動床30の上昇加速度が大きい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が大きく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が大きくなり、物品1の排出量を増加できる。
【0022】
また、物品搬送装置10は、移動床30の昇降動作の1サイクルにおいて、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間割合を、該固定床20の床面21より下に没入している時間割合より大きく制御することもできる。これにより、物品1を移動床30の床面31により突き上げている時間より、物品1を固定床20の床面21に載せて滑らせる時間のほうが短くなり、物品1の排出量を低減できる。
【0023】
尚、移動床30の上昇加速度が小さい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が小さく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が小さくなり、物品1の排出量を低減できる。
【0024】
また、移動床30の上昇時速度の最大値は、搬送物品の重さや固定床配置角度や移動床配置角度θ等によって、所望の速度で安定搬送できるように適宜調整される。一例として、重量4〜10g程度の物品1としてのキャップをθ=15度で搬送する際における移動床30の上昇時速度は、好ましくは、50〜300mm/sec。更に好ましくは、100〜200mm/secである。
【0025】
上記好適値より小さいと、物品1に充分な搬送力を与えることが困難となり、上記好適値より大きいと、物品1の搬送速度も大きくなりすぎて、安定した搬送が不可能となる。
【0026】
次に、物品1の形態と物品搬送装置10による当該物品1の搬送性の関係について説明する。物品搬送装置10の搬送対象物品1として、図7に示す如く、円形キャップ1A、楕円形キャップ1B、チューブ付キャップ1C、くの字状チューブ付キャップ1Dを考慮するとき、円形キャップ1Aの最小寸法aを高さhとし、楕円形キャップ1Bの最小寸法aを楕円短径eとし、チューブ付キャップ1Cの最小寸法aをキャップ最小径t1とし、くの字状チューブ付キャップ1Dの最小寸法aをポンプヘッド部の幅t2とする。図7の円形キャップ、楕円キャップにおいては、h、eが最小となる形状例であるが、もちろん円形キャップにおいて円の直径のほうがhよりも小さくなる場合もあるし、楕円キャップにおいてキャップ高さのほうがeよりも小さくなる場合もある。以下の説明はこれら物品1の最小寸法を基準とした説明である。
【0027】
(1)物品搬送装置10による円形キャップ1A(楕円形キャップ1Bも概ね同じ)の搬送性(図8)
【0028】
円形キャップ1Aの良好な搬送性を確保するためには、相隣る移動床30の間隔xを、円形キャップ1Aの最小寸法a(h、e)の0.3〜2.0倍、より好ましくは0.4〜1.5倍とするのが良い(図8(A))。相隣る移動床30の間隔xが上記好適値より過大になると、移動床30が円形キャップ1Aを突き上げず、搬送できない(図8(B))。尚、1.0倍を超える範囲でも、上記好適値内であれば、上流からの物品1に押されることで搬送は可能である。
【0029】
相隣る移動床30の間隔xが上記好適値より過小になると、固定床20や移動床30が円形キャップ1Aの搬送に対する適度な障害物にならず、円形キャップ1Aは固定床20の床面21と移動床30の床面31の上を転がり続けて適度に一旦停止せしめられることがなく、安定排出できない円形キャップ1Aの比率が高くなる(図8(C)、(D))。
【0030】
円形キャップ1Aの良好搬送を確保するためには、複数の固定床20の床面21を互いに結ぶ線と、複数の移動床30の最上昇位置にある床面31を互いに結ぶ線のレベル差d(図12(B))を、円形キャップ1Aの最小寸法aの0.3〜3.0倍、より好ましくは0.5〜2.5倍とするのが良い。
【0031】
上記好適値より小さいと搬送力が不充分であり、上記好適値より大きいと搬送力が強すぎて安定的な搬送が困難となる。
【0032】
(2)物品搬送装置10による円形キャップ1A(楕円形キャップ1Bも概ね同じ)の整列性(図9)
【0033】
有天面の円形キャップ1Aは、重心側(天面側)が下位となるように整列されて排出される。
【0034】
図9において、固定床20または移動床30と円形キャップ1Aの接触部に描かれた点は回転中心rであり、移動床30に描かれた上向きの矢印の終点は、回転力の作用点fである。
【0035】
移動床30が最上昇位置にあるとき(図9(A))が、円形キャップ1Aの整列のための回転開始起点となる。
【0036】
移動床30が下降中(図9(B))、円形キャップ1Aは移動しつつ下流への搬送力が付与される。
【0037】
移動床30が最下降位置にあるとき(図9(C))、円形キャップ1Aの回転中心rは固定床20の頂点にあり、回転力の作用点fは移動床30の頂点にある。円形キャップ1Aには下流への搬送力が働いているため、僅かな回転力で回転できる。
【0038】
移動床30が上昇中(図9(D))、円形キャップ1Aは回転移動しつつ、円形キャップ1Aの回転中心rは下流の移動床30の頂点に移動し、回転力の作用点fは同一の移動床30上で下流側に移動する。
【0039】
移動床30が最上昇位置にあるとき(図9(E))、円形キャップ1Aの重心側の天面が下方となるように回転した後、回転は停止し、安定姿勢になる。
【0040】
移動床30が下降中(図9(F))、円形キャップ1Aは固定床20上で滑り移動し、回転しない。即ち、円形キャップ1Aの回転移動により、円形キャップ1Aの重心側を下方とする整列がなされた。
【0041】
円形キャップ1Aの良好な重心側を下方とする整列性を確保するためには、複数の固定床20の床面21を互いに結ぶ線と、複数の移動床30の最上昇位置にある床面31を互いに結ぶ線のレベル差d(図12(B))を、円形キャップ1Aの最小寸法aの0.2〜1.7倍、より好ましくは0.3〜1.2倍とするのが良い。
【0042】
上記好適値より小さいと回転力や搬送力が不充分であり、上記好適値より大きいと回転力が強すぎて重心側を下方とする整列が困難となる。
【0043】
物品搬送装置10は、図10に示す如く、小型円形キャップ1Aを搬送し、かつ円形キャップ1Aの重心側を下方とする整列状態で排出できる。尚、ここでは、小型円形キャップ1Aの重心側を下方とする整列状態で排出できることについて説明したが、楕円形キャップ1Bでも同様の整列が可能である。更に、四角形や長楕円等の円形以外のキャップ、箱の蓋のような桶形状、円形の桶形状の物品等、重心の偏りを有す物品においても重心側を下方とする整列が可能である。
【0044】
また、物品搬送装置10は、図11に示す如く、大型円形キャップ1Aを搬送し、かつ円形キャップ1Aの重心側を下方とする整列状態で排出できる。但し、相隣る移動床30の間隔xの範囲が上述の好適範囲を超えていると、定量供給性は若干低下する。
【0045】
(3)物品搬送装置10によるチューブ付キャップ1C(長尺物品)の搬送性(図12〜図14)
【0046】
チューブ付キャップ1Cの良好な搬送性を確保するためには、相隣る移動床30のピッチpを、チューブ付キャップ1Cの最小寸法a(t1)(図7)の0.9〜1.95倍、より好ましくは1.1〜1.7倍とするのが良い。尚、この際、最小寸法aの選択はチューブ部を考慮せずに定められる。
【0047】
相隣る移動床30のピッチpが上記好適値より過大になると、移動床30がチューブ付キャップ1Cを突き上げず、チューブ付キャップ1C同士を分離できない。
【0048】
相隣る移動床30のピッチpが上記好適値より過小になると、相隣る移動床30の間にチューブ付キャップ1Cが嵌まり込まず、チューブ付キャップ1C同士を分離できない。
【0049】
チューブ付キャップ1Cの最大寸法bをキャップ最大径t3とするとき(図12(A))、チューブ付キャップ1Cの良好な搬送性を確保するためには、複数の固定床20の床面21を互いに結ぶ線と、複数の移動床30の最上昇位置にある床面31を互いに結ぶ線のレベル差d(図12(B))を、チューブ付キャップ1Cの最大寸法b(t3)の0.3〜3.0倍、より好ましくは0.5〜2.0倍とするのが良い。
【0050】
固定床20と移動床30のレベル差dが上記好適値より過大になると、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間が長くなり、物品の排出量が低減する。
【0051】
固定床20と移動床30のレベル差dが上記好適値より過小になると、相隣る移動床30の間にチューブ付キャップ1Cが嵌まり込まず、チューブ付キャップ1C同士を分離できない。
【0052】
物品搬送装置10は、図13に示す如く、チューブ付キャップ1Cの最小寸法aが相隣る移動床30のピッチp以内にあり、チューブ付キャップ1Cの全長が機巾(両サイドガイド板16に挟まれる固定床20と移動床30の全巾)以内にあるとき、投入された多数のチューブ付キャップ1Cを分離して1個ずつ排出できる。チューブ付キャップ1Cが相隣る移動床30の間に嵌まり込んで分離され、搬送される。
【0053】
物品搬送装置10は、図14に示す如く、チューブ付キャップ1Cの最小寸法aが相隣る移動床30のピッチp以内にあり、チューブ付キャップ1Cの全長が機巾より大きいとき、投入された多数のチューブ付キャップ1Cを分離して1個ずつ排出できる。チューブ付キャップ1Cは固定床20と移動床30の下り勾配の床面21、31に載って滑り、搬送される。
【0054】
図15の物品搬送装置10は、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出するストロークS1、S2を、搬送方向の上流側L1の移動床30については大きく(図15(A)のS1)、下流側L2の移動床30については小さく(図15(A)のS2)制御するようにしたものである。これによれば、例えばチューブ付キャップ1C、くの字状チューブ付キャップ1Dのような絡み易い物品1について、搬送方向の上流側でそれらの投入物品1を互いにばらけさせるように分離容易にし、下流側ではそれらの物品1の排出量を経時的に増減変化させずに、それらの物品1を安定的に排出できる。S2は、上記固定床20と移動床30のレベル差dとして定められる。S1はS2の1.4〜4.0倍、好ましくは、1.8〜3.0倍程度に設定すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は物品搬送装置の移動床が没入している状態を示す斜視図である。
【図2】図2は物品搬送装置の移動床が突出している状態を示す斜視図である。
【図3】図3は物品搬送装置を示す正面図である。
【図4】図4は移動床の昇降動作を示す模式図である。
【図5】図5は参考例における物品搬送状態を示す模式図である。
【図6】図6は本発明例における物品搬送状態を示す模式図である。
【図7】図7は各種物品を示す模式図である。
【図8】図8は移動床の間隔と搬送性の関係を示す模式図である。
【図9】図9は物品搬送時の整列動作を示す模式図である。
【図10】図10は円形キャップの搬送状態を示す模式図である。
【図11】図11は大型円形キャップの搬送状態を示す模式図である。
【図12】図12はチューブ付キャップの搬送性を示す模式図である。
【図13】図13はチューブ付キャップの搬送状態を示す模式図である。
【図14】図14は大型チューブ付キャップの搬送状態を示す模式図である。
【図15】図15は移動床の突出ストロークに関する変形例を示す模式図である。
【図16】図16は固定床と移動床の角度や配置の関係を示す模式図である。
【図17】図17は移動床の固定床に対する没入状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 物品
10 物品搬送装置
15 昇降駆動装置
20 固定床
21 床面
30 移動床
31 床面
【技術分野】
【0001】
本発明は物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品搬送装置として、特許文献1に記載の如く、多数の棒状材料(11)を、その搬送の途次において1本ずつに分離して次工程に供給する装置であって、前記棒状材料(11)の搬送方向の上流側面が、上方に向かうにつれて搬送方向下流側に変位する階段状に形成された固定床(41)と、前記固定床(41)と平行に隣接位置すると共に、前記棒状材料(11)の搬送方向の上流側面が、上方に向かうにつれて搬送方向下流側に変位する階段状に形成された移動床(42)と、前記移動床(42)の下方に配置され、該移動床(42)をその段部(45)を、前記固定床(41)における段部(43)の上方および下方に往復移動させる往復駆動手段(47)とを備えてなるものがある。この物品搬送装置は、往復駆動手段(47)の駆動により、移動床側の段部(45)が固定床側の段部(43)よりも上方のレベルに向かう際に、その移動床側の段部(45)が、固定床側の段部(43)に載置した棒状材料群から1本の棒状材料(11)を捕捉し、これを固定床側における上段の段部(43)に順次移載するものである。
【特許文献1】実開平7-23731
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の物品搬送装置では、固定床と移動床が平行に隣接位置しており、搬送対象物品たる棒状材料を、搬送方向に直交する方向に並置されている一対の移動床側の段部により捕捉し、これを同じく並置されている一対の固定床側の段部に移載するものになる。従って、物品は一対の移動床の間隔を越える長さ、かつ一対の固定床の間隔を越える長さをもつ長尺物品であることが必要とされる。また、物品の投入姿勢は一対の固定床の段部に受け入れられ得るように、搬送方向に直交する姿勢をとる必要がある。即ち、従来技術では、多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、概ね一定量ずつ排出することができない。
【0004】
本発明の課題は、多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、概ね一定量ずつ排出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、複数の固定床の各個の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、複数の移動床の各個を各固定床に対し搬送方向の側傍に隣接配置するとともに、各移動床を同時にそれらの床面が隣接する固定床の床面に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返し、上位に位置付けされた各移動床の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、各固定床の床面を搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させるとともに、各移動床の床面も搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させてなる物品搬送装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
物品搬送装置10は、図1〜図3に示す如く、架台11の一端側から他端側に向かう方向を物品搬送方向とし、その一端側に入口シュート12を設け、入口シュート12の裏面に搬送力を高めるためのバイブレータ13を装備してある。
【0007】
物品搬送装置10は、架台11に設けた支持部材14に複数の固定床20を支持する。物品搬送装置10は、複数の固定床20の各個の床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する角度θ:例えば5〜35度)(図4)をなすように配置している。このとき、各固定床20の床面21は、それ自体でも、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した斜面とされている。固定床20にバイブレータを装備し、搬送力を高めても良い。
【0008】
物品搬送装置10は、架台11に支持した昇降駆動装置15に左右のサイドガイド板16を連結し、架台11に支持したスライド軸17にサイドガイド板16に固定してあるスライド部18をスライド自在に嵌合している。また、架台11とスライド部18の間には、衝撃緩和ダンパ19を介装している。左右のサイドガイド板16は、入口シュート12と固定床20の巾方向の両側に配置されるとともに、複数の移動床30を挟んで備える。複数の移動床30の各個を各固定床20に対し搬送方向の側傍(本実施例では上流側の側傍)に隣接配置する。固定床20と移動床30は一定の間隔を介して搬送方向に沿って交互に配置されるものになる。物品搬送装置10は、昇降駆動装置15により、サイドガイド板16及び移動床30の昇降動作を繰り返す(移動床30を昇降駆動装置15に直に連結し、サイドガイド板16は必ずしも昇降させる必要はない)。即ち、各移動床30を同時にそれらの床面31が隣接する固定床20の床面21に対する上位(図4(A))と下位(図4(B))に位置付ける昇降動作を繰り返す。
【0009】
各移動床30の床面31は、上位において固定床20の床面21より上に突出し、下位において固定床20の床面21より下に没入する。本発明における「没入」とは、移動床30が固定床20の下方に位置することをいい、具体的には、移動床30全体が完全に固定床20の床面21より下方に位置する完全に没入した場合は勿論、移動床30の床面31が下位状態で固定床20の床面21とほぼ同一位置で停止した場合も含まれる。「ほぼ同一位置での停止」とは、図17(A)に示すように、複数の固定床20の床面21の最下部を結ぶ線に対して各移動床30の床面31の下位状態における最高部を結ぶ線との高さ差yが0〜+5mm、もしくは、yが図7に示す物品の最小寸法aの2〜10%のいずれかになるように位置することをいう。尚、図17(B)は、y=約0mmで、移動床30の床面31が下位状態において固定床20の床面21とほぼ同一位置となった状態を示す。尚、図17(C)は、yがマイナス値となり、移動床30の床面31が下位状態において固定床20の床面21に完全に没入した状態を示す。
【0010】
上位に位置付けられた各移動床30の床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する角度θ:例えば5〜35度)をなすように配置する。このとき、各移動床30の床面31は、それ自体でも、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した斜面とされている(図4)。
【0011】
この移動床配置についての角度θ(θ1)は、固定床配置についての角度θ(θ2)とほぼ同一に一致させたほうが物品搬送時の物品挙動が安定して好ましい。θの値は、物品と固定床20や移動床30との摩擦状態によって適宜調整される。一例として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS等の樹脂製キャップやアルミ製等の金属製キャップ等の物品を、(a)表面を一般的な機械加工にて仕上げたステンレス製やアルミ製等の金属製の固定床20や移動床30、(b)表面を一般的な機械加工にて仕上げたポリアセタールやポリ塩化ビニル等の樹脂製の固定床20や移動床30、(c)更にこれらの表面に滑り性の良いテープ材を貼った固定床20や移動床30にて搬送する場合の角度θは、好ましくは8〜25度、更に好ましくは12度〜20度にすると良い。尚、移動床配置についての角度θ1と、固定床配置についての角度θ2を異なるものとすれば、上流と下流での移動挙動を変化させることも可能である。
【0012】
移動床配置及び固定床配置が水平に対する角度θ、固定床20の床面21が水平に対する角度α、移動床30の床面31が水平に対する角度βの関係を図16に示す。
【0013】
第1の形態として、一般的な各角度の関係を図16(A)に示す。固定床20の床面21が水平に対する角度αは、移動床配置についての角度θ1に対し、−5〜+15度程度と、ほぼ同等もしくは僅かに大きく設定される。これは、固定床20の床面21において物品を下流の移動床30の床面31へゆっくりと安定的に搬送させるためである。仮に物品が自ら滑ることのない角度であっても、上流からの他物品に押されて搬送される。次に、移動床30の床面31が水平に対する角度βは、固定床20の床面21が水平に対する角度αに対し、+5〜+25度程度と大きく設定される。これは、移動床30の床面31が突出中に、確実に物品を下流の固定床20の床面21へと搬送させるためである。
【0014】
第2の形態として、物品を特にスムースに搬送させたい際の各角度の関係を図16(B)に示す。固定床20の床面21が水平に対する角度αは、移動床配置についての角度θ1と概同一に設定される。更に、移動床30の床面31が水平に対する角度βも、移動床配置についての角度θ1と概同一に設定される。これは、移動床30の床面31が没入時に、物品をガタつかせることなくスムースに下流の固定床20の床面21へ確実に搬送させるためである。従って、移動床30の没入位置は、図16(C)に示すように、移動床30の床面31が固定床20の床面21に対して没入せず、固定床20の床面21と移動床30の床面31が概直線関係をなすことができる位置、もしくは移動床30の床面31が、0.5〜3mm程度極僅かに没入する位置(不図示)とすることが好ましい。
【0015】
昇降駆動装置15は、昇降速度や昇降ストロークを変更制御できる電動シリンダを用いることができる。昇降駆動装置15は、電動モータの回転を直線運動に変換する機構、又は空圧シリンダ等でも良い。
【0016】
以下、物品搬送装置10による物品搬送状態を、参考例としての物品搬送装置10Aによる物品搬送状態と比較して示す(図5、図6)。
【0017】
図5の物品搬送装置10Aは、複数の固定床20の床面21を互いに水平配置するとともに、複数の移動床30の床面31も互いに水平に保ちながら昇降させるようにしたものであり、相隣る移動床30のピッチpより小寸法の物品1(図5(A))は各移動床30の昇降動作の繰り返しにより、固定床20と移動床30の床面21、31自体の斜面に沿って滑ることにて搬送できるが、大寸法の物品1(図5(B))は各移動床30の昇降動作を繰り返しても同一地点で突き上げられることを繰り返すのみで搬送されない。
【0018】
図6の物品搬送装置10では、複数の固定床20の床面21を互いに下り勾配をなすように配置するとともに、複数の移動床30の床面31も互いに下り勾配をなすように配置したものであり、相隣る移動床30のピッチpより小寸法の物品1(図6(A))も、大寸法の物品1(図6(B))も、各移動床30の昇降動作の繰り返しにより搬送される。即ち、移動床30の上昇により、移動床30の床面31が固定床20の床面21上にある物品1を突き上げると、移動床30の床面31自体の傾斜が物品1に下流側への搬送力を付与する。搬送力を付与された物品1は、移動床30の下降により、下流側の搬送方向に沿って下り勾配をなす固定床20の床面21上に移載され、固定床20の床面21自体の傾斜、更には複数の互いに搬送方向に沿って下り勾配をなす固定床20の床面21相互の傾斜に載って滑り、下流側へと搬送される。固定床20の床面21の傾斜に載って滑る過程で、図6(C)に示す如く、下流側の固定床20に引っ掛かっても、移動床30の次の上昇により固定床20から突き上げられ、下流側へと搬送される。
【0019】
従って、物品搬送装置10にあっては、固定床20と移動床30が搬送方向に沿って交互に隣接配置され、しかもそれらの床面21、31が互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置されるものであり、物品1の寸法形状や投入姿勢に関係なく、あらゆる物品1を固定床20の床面21に載せ、移動床30の床面31により突き上げ、上述(a)の搬送動作を行ない、概ね一定量ずつ排出できる。
【0020】
物品搬送装置10は、移動床30の昇降動作の1サイクル(最下降位置〜最上昇位置〜最下降位置の1サイクル)において、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間割合を、該固定床20の床面21より下に没入している時間割合より小さく制御することができる。これにより、物品1を移動床30の床面31より突き上げている時間より、物品1を固定床20の床面21に載せて滑らせる時間のほうが長くなり、物品1の排出量を増加できる。
【0021】
尚、移動床30の上昇加速度が大きい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が大きく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が大きくなり、物品1の排出量を増加できる。
【0022】
また、物品搬送装置10は、移動床30の昇降動作の1サイクルにおいて、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間割合を、該固定床20の床面21より下に没入している時間割合より大きく制御することもできる。これにより、物品1を移動床30の床面31により突き上げている時間より、物品1を固定床20の床面21に載せて滑らせる時間のほうが短くなり、物品1の排出量を低減できる。
【0023】
尚、移動床30の上昇加速度が小さい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が小さく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が小さくなり、物品1の排出量を低減できる。
【0024】
また、移動床30の上昇時速度の最大値は、搬送物品の重さや固定床配置角度や移動床配置角度θ等によって、所望の速度で安定搬送できるように適宜調整される。一例として、重量4〜10g程度の物品1としてのキャップをθ=15度で搬送する際における移動床30の上昇時速度は、好ましくは、50〜300mm/sec。更に好ましくは、100〜200mm/secである。
【0025】
上記好適値より小さいと、物品1に充分な搬送力を与えることが困難となり、上記好適値より大きいと、物品1の搬送速度も大きくなりすぎて、安定した搬送が不可能となる。
【0026】
次に、物品1の形態と物品搬送装置10による当該物品1の搬送性の関係について説明する。物品搬送装置10の搬送対象物品1として、図7に示す如く、円形キャップ1A、楕円形キャップ1B、チューブ付キャップ1C、くの字状チューブ付キャップ1Dを考慮するとき、円形キャップ1Aの最小寸法aを高さhとし、楕円形キャップ1Bの最小寸法aを楕円短径eとし、チューブ付キャップ1Cの最小寸法aをキャップ最小径t1とし、くの字状チューブ付キャップ1Dの最小寸法aをポンプヘッド部の幅t2とする。図7の円形キャップ、楕円キャップにおいては、h、eが最小となる形状例であるが、もちろん円形キャップにおいて円の直径のほうがhよりも小さくなる場合もあるし、楕円キャップにおいてキャップ高さのほうがeよりも小さくなる場合もある。以下の説明はこれら物品1の最小寸法を基準とした説明である。
【0027】
(1)物品搬送装置10による円形キャップ1A(楕円形キャップ1Bも概ね同じ)の搬送性(図8)
【0028】
円形キャップ1Aの良好な搬送性を確保するためには、相隣る移動床30の間隔xを、円形キャップ1Aの最小寸法a(h、e)の0.3〜2.0倍、より好ましくは0.4〜1.5倍とするのが良い(図8(A))。相隣る移動床30の間隔xが上記好適値より過大になると、移動床30が円形キャップ1Aを突き上げず、搬送できない(図8(B))。尚、1.0倍を超える範囲でも、上記好適値内であれば、上流からの物品1に押されることで搬送は可能である。
【0029】
相隣る移動床30の間隔xが上記好適値より過小になると、固定床20や移動床30が円形キャップ1Aの搬送に対する適度な障害物にならず、円形キャップ1Aは固定床20の床面21と移動床30の床面31の上を転がり続けて適度に一旦停止せしめられることがなく、安定排出できない円形キャップ1Aの比率が高くなる(図8(C)、(D))。
【0030】
円形キャップ1Aの良好搬送を確保するためには、複数の固定床20の床面21を互いに結ぶ線と、複数の移動床30の最上昇位置にある床面31を互いに結ぶ線のレベル差d(図12(B))を、円形キャップ1Aの最小寸法aの0.3〜3.0倍、より好ましくは0.5〜2.5倍とするのが良い。
【0031】
上記好適値より小さいと搬送力が不充分であり、上記好適値より大きいと搬送力が強すぎて安定的な搬送が困難となる。
【0032】
(2)物品搬送装置10による円形キャップ1A(楕円形キャップ1Bも概ね同じ)の整列性(図9)
【0033】
有天面の円形キャップ1Aは、重心側(天面側)が下位となるように整列されて排出される。
【0034】
図9において、固定床20または移動床30と円形キャップ1Aの接触部に描かれた点は回転中心rであり、移動床30に描かれた上向きの矢印の終点は、回転力の作用点fである。
【0035】
移動床30が最上昇位置にあるとき(図9(A))が、円形キャップ1Aの整列のための回転開始起点となる。
【0036】
移動床30が下降中(図9(B))、円形キャップ1Aは移動しつつ下流への搬送力が付与される。
【0037】
移動床30が最下降位置にあるとき(図9(C))、円形キャップ1Aの回転中心rは固定床20の頂点にあり、回転力の作用点fは移動床30の頂点にある。円形キャップ1Aには下流への搬送力が働いているため、僅かな回転力で回転できる。
【0038】
移動床30が上昇中(図9(D))、円形キャップ1Aは回転移動しつつ、円形キャップ1Aの回転中心rは下流の移動床30の頂点に移動し、回転力の作用点fは同一の移動床30上で下流側に移動する。
【0039】
移動床30が最上昇位置にあるとき(図9(E))、円形キャップ1Aの重心側の天面が下方となるように回転した後、回転は停止し、安定姿勢になる。
【0040】
移動床30が下降中(図9(F))、円形キャップ1Aは固定床20上で滑り移動し、回転しない。即ち、円形キャップ1Aの回転移動により、円形キャップ1Aの重心側を下方とする整列がなされた。
【0041】
円形キャップ1Aの良好な重心側を下方とする整列性を確保するためには、複数の固定床20の床面21を互いに結ぶ線と、複数の移動床30の最上昇位置にある床面31を互いに結ぶ線のレベル差d(図12(B))を、円形キャップ1Aの最小寸法aの0.2〜1.7倍、より好ましくは0.3〜1.2倍とするのが良い。
【0042】
上記好適値より小さいと回転力や搬送力が不充分であり、上記好適値より大きいと回転力が強すぎて重心側を下方とする整列が困難となる。
【0043】
物品搬送装置10は、図10に示す如く、小型円形キャップ1Aを搬送し、かつ円形キャップ1Aの重心側を下方とする整列状態で排出できる。尚、ここでは、小型円形キャップ1Aの重心側を下方とする整列状態で排出できることについて説明したが、楕円形キャップ1Bでも同様の整列が可能である。更に、四角形や長楕円等の円形以外のキャップ、箱の蓋のような桶形状、円形の桶形状の物品等、重心の偏りを有す物品においても重心側を下方とする整列が可能である。
【0044】
また、物品搬送装置10は、図11に示す如く、大型円形キャップ1Aを搬送し、かつ円形キャップ1Aの重心側を下方とする整列状態で排出できる。但し、相隣る移動床30の間隔xの範囲が上述の好適範囲を超えていると、定量供給性は若干低下する。
【0045】
(3)物品搬送装置10によるチューブ付キャップ1C(長尺物品)の搬送性(図12〜図14)
【0046】
チューブ付キャップ1Cの良好な搬送性を確保するためには、相隣る移動床30のピッチpを、チューブ付キャップ1Cの最小寸法a(t1)(図7)の0.9〜1.95倍、より好ましくは1.1〜1.7倍とするのが良い。尚、この際、最小寸法aの選択はチューブ部を考慮せずに定められる。
【0047】
相隣る移動床30のピッチpが上記好適値より過大になると、移動床30がチューブ付キャップ1Cを突き上げず、チューブ付キャップ1C同士を分離できない。
【0048】
相隣る移動床30のピッチpが上記好適値より過小になると、相隣る移動床30の間にチューブ付キャップ1Cが嵌まり込まず、チューブ付キャップ1C同士を分離できない。
【0049】
チューブ付キャップ1Cの最大寸法bをキャップ最大径t3とするとき(図12(A))、チューブ付キャップ1Cの良好な搬送性を確保するためには、複数の固定床20の床面21を互いに結ぶ線と、複数の移動床30の最上昇位置にある床面31を互いに結ぶ線のレベル差d(図12(B))を、チューブ付キャップ1Cの最大寸法b(t3)の0.3〜3.0倍、より好ましくは0.5〜2.0倍とするのが良い。
【0050】
固定床20と移動床30のレベル差dが上記好適値より過大になると、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間が長くなり、物品の排出量が低減する。
【0051】
固定床20と移動床30のレベル差dが上記好適値より過小になると、相隣る移動床30の間にチューブ付キャップ1Cが嵌まり込まず、チューブ付キャップ1C同士を分離できない。
【0052】
物品搬送装置10は、図13に示す如く、チューブ付キャップ1Cの最小寸法aが相隣る移動床30のピッチp以内にあり、チューブ付キャップ1Cの全長が機巾(両サイドガイド板16に挟まれる固定床20と移動床30の全巾)以内にあるとき、投入された多数のチューブ付キャップ1Cを分離して1個ずつ排出できる。チューブ付キャップ1Cが相隣る移動床30の間に嵌まり込んで分離され、搬送される。
【0053】
物品搬送装置10は、図14に示す如く、チューブ付キャップ1Cの最小寸法aが相隣る移動床30のピッチp以内にあり、チューブ付キャップ1Cの全長が機巾より大きいとき、投入された多数のチューブ付キャップ1Cを分離して1個ずつ排出できる。チューブ付キャップ1Cは固定床20と移動床30の下り勾配の床面21、31に載って滑り、搬送される。
【0054】
図15の物品搬送装置10は、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出するストロークS1、S2を、搬送方向の上流側L1の移動床30については大きく(図15(A)のS1)、下流側L2の移動床30については小さく(図15(A)のS2)制御するようにしたものである。これによれば、例えばチューブ付キャップ1C、くの字状チューブ付キャップ1Dのような絡み易い物品1について、搬送方向の上流側でそれらの投入物品1を互いにばらけさせるように分離容易にし、下流側ではそれらの物品1の排出量を経時的に増減変化させずに、それらの物品1を安定的に排出できる。S2は、上記固定床20と移動床30のレベル差dとして定められる。S1はS2の1.4〜4.0倍、好ましくは、1.8〜3.0倍程度に設定すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は物品搬送装置の移動床が没入している状態を示す斜視図である。
【図2】図2は物品搬送装置の移動床が突出している状態を示す斜視図である。
【図3】図3は物品搬送装置を示す正面図である。
【図4】図4は移動床の昇降動作を示す模式図である。
【図5】図5は参考例における物品搬送状態を示す模式図である。
【図6】図6は本発明例における物品搬送状態を示す模式図である。
【図7】図7は各種物品を示す模式図である。
【図8】図8は移動床の間隔と搬送性の関係を示す模式図である。
【図9】図9は物品搬送時の整列動作を示す模式図である。
【図10】図10は円形キャップの搬送状態を示す模式図である。
【図11】図11は大型円形キャップの搬送状態を示す模式図である。
【図12】図12はチューブ付キャップの搬送性を示す模式図である。
【図13】図13はチューブ付キャップの搬送状態を示す模式図である。
【図14】図14は大型チューブ付キャップの搬送状態を示す模式図である。
【図15】図15は移動床の突出ストロークに関する変形例を示す模式図である。
【図16】図16は固定床と移動床の角度や配置の関係を示す模式図である。
【図17】図17は移動床の固定床に対する没入状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 物品
10 物品搬送装置
15 昇降駆動装置
20 固定床
21 床面
30 移動床
31 床面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定床の各個の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、
複数の移動床の各個を各固定床に対し搬送方向の側傍に隣接配置するとともに、各移動床を同時にそれらの床面が隣接する固定床の床面に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返し、上位に位置付けされた各移動床の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、
各固定床の床面を搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させるとともに、各移動床の床面も搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させてなる物品搬送装置。
【請求項2】
前記移動床の昇降動作の1サイクルにおいて、移動床の床面が隣接する固定床の床面より上に突出している時間割合を、該固定床の床面より下に没入している時間割合より小さく制御する請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記移動床の昇降動作の1サイクルにおいて、移動床の床面が隣接する固定床の床面より上に突出している時間割合を、該固定床の床面より下に没入している時間割合より大きく制御する請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記移動床の床面が隣接する固定床の床面より上に突出するストロークを、搬送方向の上流側の移動床については大きく、下流側の移動床については小さく制御する請求項1〜3のいずれかに記載の物品搬送装置。
【請求項1】
複数の固定床の各個の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、
複数の移動床の各個を各固定床に対し搬送方向の側傍に隣接配置するとともに、各移動床を同時にそれらの床面が隣接する固定床の床面に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返し、上位に位置付けされた各移動床の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、
各固定床の床面を搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させるとともに、各移動床の床面も搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させてなる物品搬送装置。
【請求項2】
前記移動床の昇降動作の1サイクルにおいて、移動床の床面が隣接する固定床の床面より上に突出している時間割合を、該固定床の床面より下に没入している時間割合より小さく制御する請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記移動床の昇降動作の1サイクルにおいて、移動床の床面が隣接する固定床の床面より上に突出している時間割合を、該固定床の床面より下に没入している時間割合より大きく制御する請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記移動床の床面が隣接する固定床の床面より上に突出するストロークを、搬送方向の上流側の移動床については大きく、下流側の移動床については小さく制御する請求項1〜3のいずれかに記載の物品搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−150143(P2008−150143A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338649(P2006−338649)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]