説明

物品落下防止装置及びこれを備えた物品棚

【課題】物品が地震等の振動によって物品棚から落下することを防止する物品落下防止装置を提供すること、及び予めこの物品落下防止装置を備えた物品棚を提供すること
【解決手段】荷受棚(10)を有する物品棚(5)に取り付け自在であって、物品棚の支柱(6)に沿って取り付けられたガイドレール(14)と、ガイドレールに沿って昇降する上下動部材(18)と、上下動部材に接続されて昇降移動し、荷受棚より上方にて停止して、振動に際して物品が荷受棚から落下するのを防止する落下防止バー(16)と、上下動部材を物品棚の支柱に沿って移動し停止する上下動部材駆動手段とを備えている。上下動部材駆動手段は、昇降駆動モータ(20)と、昇降駆動モータの回転運動を、上下動部材の上下動として伝達する伝達部材(28,30)とを有し、昇降駆動モータにより上下動部材を上下動させて、上下動部材に接続された前記落下防止バーを移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品落下防止装置及びこれを備えた物品棚に関する。
【背景技術】
【0002】
物流過程において、倉庫等に物品,商品,収納物又は荷物(以下、単に「物品」という。)を保管する際には、物品を整然と並べるために物品棚が利用される。物品棚は、物品を平面的に並べるだけでなく、高さ方向に積載することができるので、倉庫容積に対して多数の物品を効率よく収容することができる。
【0003】
地震の多い我が国においては、物品棚に対しても地震等の振動に対する対策を予め講じておく必要がある。
【0004】
従来の物品棚では、物品棚のみに注目して、耐震対策を行っている。例えば、物品棚を構成する支柱(「フレーム」,「トラス」ともいう。)の基礎部(下端部)に幅広の金属板を取り付けて、物品棚自体が転倒するのを防止している。或いは、複数個の物品棚の上部を相互に連結して、物品棚が転倒しにくい工夫を行っている。
【0005】
尚、本出願書類で使用する「物品棚」は、物品を載せることが出来るラック,保管棚,軽量棚,中軽量棚,重量棚,商品棚,荷物棚,棚等を含むものである。
【0006】
尚、本発明者及び本出願人は、以下に説明する物品棚から収納物品が落下するのを防止する物品落下防止装置を記載した特許文献又は非特許文献の存在を知らない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、物品棚は、物品を平面的に並べるだけでなく、高さ方向にも積載するため、地震等の振動によって物品棚又は収容物品が揺れて移動した場合、物品が床に落下する可能性がある。物品が落下した場合、その物品は損傷し商品価値を失ってしまう。更に、物品が落下する際に作業員が落下地点にいると、怪我を負う危険もある。
【0008】
従って、地震等の振動に対して、単に物品棚に対して耐震対策を採るだけでなく、収納物品の落下の危険性を予め除去しておく必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、物品が地震等の振動によって物品棚から落下することを防止する物品落下防止装置を提供することを目的とする。
【0010】
更に、本発明は、物品が地震等の振動によって物品棚から落下することを防止する物品落下防止装置を備えた物品棚を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的に鑑みて、本発明に係る物品落下防止装置は、荷受棚を有する物品棚に取り付け自在な物品落下防止装置であって、前記物品棚の支柱に沿って取り付けられたガイドレールと、前記ガイドレールに沿って昇降する上下動部材と、前記上下動部材を前記物品棚の支柱に沿って移動し停止する上下動部材駆動手段と、前記上下動部材に接続されて昇降移動し、前記荷受棚より上方にて停止して、振動に際して物品が該荷受棚から落下するのを防止する落下防止バーとを備えている。
【0012】
更に、上記物品落下防止装置では、前記物品棚の支柱は、一面に長さ方向に延在する溝が形成された中空の形状であり、前記上下動部材は、前記支柱内を長さ方向に沿って移動可能であり、前記落下防止バーは、前記溝を通して前記上下動部材に接続されて一体として移動してもよい。
【0013】
更に、上記物品落下防止装置では、前記落下防止バーの両端は、隣接する前記上下動部材に接続されて水平移動し、前記荷受棚より上方にて停止して、振動に際して物品が落下するのを防止してもよい。
【0014】
更に、上記物品落下防止装置では、前記上下動部材駆動手段は、昇降駆動モータと、該昇降駆動モータの回転運動を、前記上下動部材の上下動として伝達する伝達部材とを有し、前記昇降駆動モータにより前記上下動部材を上下動させて、該上下動部材に接続された前記落下防止バーを移動してもよい。
【0015】
更に、上記物品落下防止装置では、前記伝達部材は、前記昇降駆動モータの回転軸に取り付けられたスプロケットホイールと、前記スプとケットに噛合するチェーンとを有し、前記チェーンの一部に前記上下動部材を接続することにより、前記昇降駆動モータの回転運動を該上下動部材の上下運動として伝達するようにしてもよい。
【0016】
更に、上記物品落下防止装置では、前記上下動部材駆動手段は、昇降駆動モータと、操作スイッチとを有し、前記操作スイッチをONにした時、前記昇降駆動モータは回転を開始するようにしてもよい。
【0017】
更に、上記物品落下防止装置では、前記上下動部材駆動手段は、昇降駆動モータと、前記ガイドレールの近傍に設置されたリミットスイッチとを有し、前記上下動部材又は前記ガイドレールが、前記リミットスイッチに接触したとき、前記昇降駆動モータを停止して、該上下動部材及び前記落下防止バーを停止するようにしてもよい。
【0018】
更に、上記物品落下防止装置では、前記物品落下防止装置は、複数段の荷受棚を有し且つ複数の連から成る物品棚に取り付けてもよい。
【0019】
更に、上記物品落下防止装置では、前記上下動部材駆動手段は、物品棚の支柱に取り付けられた操作スイッチと、リミットスイッチとを有し、前記物品落下防止装置は、前記操作スイッチをONにすると全ての前記上下動部材を一斉に移動開始し、リミットスイッチが作動すると上限位置に達した上下動部材のみが停止する連動駆動型としてもよい。
【0020】
更に、上記物品落下防止装置では、前記物品棚は、1個の独立棚又は1個の独立棚2と必要個数nの連結棚4から成る(n+1)連の棚を1ユニットとして構成され、ユニット単位で必要数の物品落下防止装置を取り付けて、ユニット単位で駆動可能な独立駆動型としてもよい。
【0021】
更に、本発明に係る物品落下防止装置は、物品棚に取り付け可能な物品落下防止装置であって、物品棚の前面を水平に移動し、所定位置に停止する落下防止バーと、前記落下防止バーの動きを案内するガイド手段と、前記落下防止バーを前記ガイド手段の案内に従って移動し停止する落下防止バー駆動手段と、前記落下防止バーと前記駆動手段とを連結する駆動連結手段とを備えている。
【0022】
更に、上記物品落下防止装置では、前記ガイド手段は、前記支柱に沿って取り付けられ、長さ方向に溝を有する部材としてもよい。
【0023】
更に、上記物品落下防止装置では、前記落下防止バー駆動手段は、前記ガイド手段に沿って上下動可能な上下動部材と、前記上下動部材を上下方向に駆動し停止する昇降駆動モータと、前記上下動部材と前記落下防止バーとを連結する連結部材を有し、前記落下防止バーを物品棚の前面に沿って水平移動し、所定位置に停止するようにしてもよい。
【0024】
更に、本発明に係る物品棚は、予め、請求項1乃至14のいずれか一項記載の物品落下防止装置を備えた物品棚である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、物品が地震等の振動によって物品棚から落下することを防止する物品落下防止装置を提供することができる。
【0026】
更に、本発明によれば、物品が地震等の振動によって物品棚から落下することを防止する物品落下防止装置を備えた物品棚を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る物品落下防止装置及びこれを備えた物品棚の実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同じ要素に対しては同じ符号を付して、重複した説明は省略する。
[物品落下防止装置]
(物品棚)
物品落下防止装置1に関して容易に理解できるように、最初に、一般的な物品棚に関して簡単に説明する。
【0028】
図1は、物品3を収納した物品棚5の一例を示す斜視図である。図1(B)に示すように、物品棚5は、一般に、1個の独立棚2に対して必要個数の連結棚4を連結して使用される。これらの組立は、ビス,ネジ,ボルト、ボルト−ナットによる締結,楔を利用した組み込み等(以下、単に「ネジ止め」という。)によって行われる。各棚を「連」と称し、例えば、1個の独立棚2と2個の連結棚4の組み合わせから成る物品棚5を「3連の棚」と称する。更に、2つの物品棚5の背面同士を接続して、両側から物品3の出し入れが出来るように配置することもある。更に、限られた設置面積を有効に利用出来るように、物品棚に車輪を付けて、床に敷設したレール上を移動可能にした移動物品棚とすることもできる。これらは規格化され、何種類かの物品棚のサイズが標準化されている。
【0029】
図1(A)に示す物品棚5は、独立棚部分に関して説明すると、基本的には、各隅に垂直に立つ4本の支柱6f,6bと、前面側支柱6f及び後面側支柱6bの間を連結する複数本の側面側ビーム(「側つなぎ」ともいう。)12と、2本の前面側支柱6fを連結する複数本の前面側ビーム(「連つなぎ」ともいう。)8fと、2本の後面側支柱6bを連結する複数本の後面側ビーム8bと、前面側ビーム8fと後面側ビーム8bとを連結すると共に収納物品3を載せる複数本の棚受ビーム10とを備えている。連結棚4に関しても、支柱6f,6bの本数が少ないこと等を除いて、同様である。
【0030】
物品棚5のサイズ、物品棚を構成する連の数、各々の連の前面側及び後面側ビーム8f,8bの本数、側面側ビーム12の本数、棚受ビーム10の本数等は、収納する物品3のサイズ,重量等に応じて任意に変更可能である。また、棚受ビーム10の代わりに、棚受けに設置した板状の棚板を使用してもよい。
【0031】
(物品落下防止装置)
図2は、図1の物品棚5に対して、物品落下防止装置1を取り付けた状態を示す斜視図である。この物品落下防止装置1は、既存の物品棚5に対して、後付で取り付けることが出来る。物品落下防止装置1は、物品棚5の前面側及び後面側の両面又はいずれか一面に対して取り付け可能であるが、ここでは前面側に取り付けた場合を説明する。
【0032】
物品落下防止装置1は、図2で見える範囲で説明すると、前面側支柱6fに取り付けた中空のガイドレール14と、物品3の落下を防止するため前面側支柱間にわたって配置された落下防止バー(「安全バー」ともいう。)16と、これに連結されて中空のガイドレール内を上下に移動する上下動部材18と、上下動部材を上下に駆動する昇降駆動モータ20と、昇降駆動モータの上下駆動を制御する操作ボタン22とを備えている。
【0033】
ガイドレール14は、物品棚5の支柱6fとほぼ同じ長さの金属製の柱であり、その断面形状は前面に長さ方向に延在する溝24を形成した中空の矩形形状となっている。
【0034】
落下防止バー16は、前面側支柱6f間の長さを有し、物品3が地震等の振動によって物品棚5から落下することを防止出来る強度を有する剛体(例えば、板状金属)から形成される。一般に、落下防止バー16は、耐震対策としては、物品の重量の20%以上の横荷重に耐える強度とすることが好ましい。好ましくは、作業員の注意を引くため、黒色と黄色の縞状に塗装されている。
【0035】
上下動部材18は、中空のガイドレール14内部に上下方向に移動自在に収納されている。落下防止バー16と上下動部材18は、連結部材(「ブラケット」ともいう。)32によって固定されている。
【0036】
昇降駆動モータ20が、前面側支柱6fの上端部付近に設置され、上下動部材18を上下に駆動する。具体的には、昇降駆動モータ20は減速機構(図示せず。)を内蔵し、この減速された回転軸(図4の符号26参照)がガイドレール14内に延在している。この回転軸26のガイドレール内の部分にスプロケットホイール(「鎖車」ともいう。)(図4及び6の符号28参照)が取り付けられており、スプロケットホイール28に噛合するチェーン(図6の符号30参照)に対して、上下動部材18が接続されている。このため、昇降駆動モータ20の回転運動が、チェーン30を介して上下動部材18に伝達されて上下運動となる。更に、昇降駆動モータ20は、所望により、停止時には回転を防止する適当な回転防止機構を備えている。一旦停止した上下動部材18は、移動操作をしない限り上下動せずに、その位置に留まる。
【0037】
図3は、中空のガイドレール14内を昇降移動する上下動部材18を裏面側から見た斜視図である。上下動部材18は、中空のガイドレール14に間隙をもって収納される金属製の棒状体である。その断面形状は、ガイドレール14の断面形状と同じように前面に長さ方向に延在する溝(図4の符号24参照)を形成した中空の矩形形状となっている。上下動部材18の両方の側面には、長さ方向に延在する短い溝が複数個設けられ、各溝にはガイドレール14の内側側面を走行する側面走行ローラ34が設けられている。同様に、上下動部材18の両方の側面外周には、ガイドレール14の奥方向の内面を走行する複数個の奥面走行ローラ36が設けられている。これらのローラにより、上下動部材18は、中空のガイドレール内をガイドレールに沿ってスムーズに移動することができ、比較的駆動力の小さな昇降駆動モータ20によっても確実に上下に移動することが出来る。
【0038】
更に、上下動部材18には、落下防止バー16と連結するための連結部材32が、適当な手段(例えば、ネジ止め)により固着されている。連結部材32の取付位置及び個数は、落下防止バー16の位置及び枚数によって決まる。従って、上下動部材18と落下防止バー16とは、一体となって移動する。典型的には、落下防止バー16の移動距離は30cm程度である。
【0039】
図4は、物品落下防止装置1を物品棚5に対して取り付けたときの、前面側支柱6fの上端部の取り付け状態を示す図である。物品棚5に対する落下防止装置1の取り付けは、例えば、物品棚5の前面側支柱6fの先端部分に対して、これを取り囲むような上下が開放された箱形部材40を部分的にかぶせ、この箱形部材40に落下防止装置1のガイドレール14をネジ止めすることにより行われる。その他の適当な箇所で、前面側支柱6fに対して、ガイドレール14をネジ止めして固定する。
【0040】
箱形部材40の後面側に昇降駆動モータ20が設置され、減速された回転軸26が箱形部材40を貫通してガイドレール14の内部に延在し、その先端付近にスプロケットホイール28が取り付けられている。このスプロケットホイール28には、図に示していないがチェーン30が噛合し、チェーンの適所に上下動部材18が接続されている。
【0041】
図には示していないが、スプロケットホイール28の近傍に上側リミットスイッチ(図7の符号47u参照)が設置され、上下動部材18が上限位置に達したときに上側リミットスイッチ47uに接触し、昇降駆動モータ20に対する給電を遮断して、上下動部材18の上方移動を停止するようになっている。複数本のガイドレール14の各々にある上側リミットスイッチ47uは、そのガイドレール14の上端部に設置された昇降駆動モータ20だけを停止する。従って、たとえ上下動部材の間で移動速度が異なっても、遅れたガイドレール14は上昇を続けて後から直ぐ上の上側リミットスイッチ47uに到達し、落下防止バー16は最終的に所定の高さに水平状態で停止する。
【0042】
上下動部材18の溝24が形成された前面部18fに対して、連結部材32が適当な手段(例えば、穴33を介してネジ止め。)により固着されている。従って、ガイドレール14の両側に位置する2枚の落下防止バー16は、上下動部材18と一体になって上下動する。側面走行ローラ34及び奥面走行ローラ36により、上下動部材18は、ガイドレール内をスムーズに上下方向に移動することができる。
【0043】
図5は、物品落下防止装置1を物品棚5に対して取り付けたときの下端部の取り付け状態を示す図である。ガイドレール14の比較的下側に、昇降駆動モータ20の上下駆動を制御する操作ボタン22が設置されている。操作ボタン22は、上下方向に並んだ2個のスイッチ22u,22dを備え、上昇操作用スイッチ22uを押すと昇降駆動モータ20が一方の方向に回転して上下動部材18を上方に向けて移動し、下降操作用スイッチ22dを押すと昇降駆動モータ20が他方の方向に回転して上下動部材18を下方に向けて移動する。各昇降駆動モータ20の停止は、対応するリミットスイッチ47u,47dによって行われる。
【0044】
上下動部材18の溝が形成された前面側部材18fに連結部材32が適当な手段(例えば、穴33を介してネジ止め)により固着されている。従って、ガイドレール14の片側又は両側に位置する2つの落下防止バー16は、上下動部材18と一体になって上下動する。側面走行ローラ34及び奥面走行ローラ36により、上下動部材18は、ガイドレール内をスムーズに上下方向に移動することができる。
【0045】
更に、ガイドレール内に、図には示していないが、下側リミットスイッチ47dが設置されており、上下動部材18が下限位置に達したときにこの下側リミットスイッチ47dに接触し、昇降駆動モータ20を停止し上下動部材18の下方移動を停止するようになっている。上下動部材18の下限位置は、落下防止バー16の上面の高さが物品棚5の前面側ビーム8fの上面に揃ったときの位置である。
【0046】
複数本のガイドレール14の各々にある下側リミットスイッチ47dは、そのガイドレールの上端部に設置された昇降駆動モータ20だけを停止する。従って、たとえ上下動部材の間で移動速度が異なっても、遅れたガイドレール14は下降を続けて後から下側リミットスイッチ47dに到達し、落下防止バー16は最終的に所定で水平状態で停止する。このため、物品棚5への物品3の搬入・搬出の際に落下防止バー16が邪魔になることはない。
【0047】
図6は、物品落下防止装置1の機械的駆動系を説明する概要図である。上下動部材18の両端に、チェーン30の両端が夫々接続され、全体として環状となっている。所望により、チェーン30の適所に必要な個数のカウンターバランス(「カウンターウェイト」,「平衡錘」ともいう。)42を取り付けてもよい。上下動部材18及びこれに接続された落下防止バー16の重量と同じ重量のカウンターバランス42を取り付けて平衡を取ることにより、比較的弱い駆動力の昇降駆動モータ20によっても駆動可能となるからである。更には、落下防止バー16の重量とカウンターバランス42の重量が平衡していることより、昇降駆動モータ20の停止後は、何らの動力を付与せずとも、落下防止バー16は水平状態を維持して停止続ける。
【0048】
このチェーン30を、ガイドレール18の上端部付近で、昇降駆動モータ20の回転軸26に取り付けられたスプロケットホイール28に噛合する。反対の下端部付近では、ストレッチャユニット46がチェーン30を緩まないように下方に牽引している。ストレッチャユニット46は、例えば、チェーン30に噛合し、その回転軸を下方に適当な手段により牽引したスプロケットホイールを利用して実現できる。
【0049】
なお、動力伝達手段は、スプロケットホイールとチェーンに限定されない。例えば、物品棚の性質等に対応して、ワイヤロープとウィンチを使用する方法、滑車(摩擦駆動)とワイヤロープを組み合わせる方法、ラックギアとピニオン(ギア)を組み合わせる方法、リンクチェーンと鎖車を組み合わせて手動で行う方法、等でもよい。
【0050】
図7は、物品落下防止装置1を駆動する電気回路系を説明する図である。図7(A)に示すように、三相交流電源U,V,Wと、上昇操作用及び下降操作用スイッチ22u,22dを有する上昇操作ボタン22と、正転と逆転を切り換える回転制御手段48と、上側及び下側リミットスイッチ47u,47dを有するリミットスイッチ72と、昇降駆動モータ20とを備える。作業員が、昇降又は下降操作用スイッチである操作ボタン22を押すと、これに対応して回転制御手段48が昇降駆動モータ20を正転又は逆転の回転を開始する。落下防止バー16が上限又は下限位置に達して上側又は下側のリミットスイッチ47u,dを作動すると昇降駆動モータ20は停止する。操作ボタン22の操作により、全ての昇降駆動モータ20は一斉に回転を開始し、昇降駆動モータ20はリミットスイッチ72により個別的に停止する。
【0051】
図7(B)は、これを更に具体化した回路系の一例を示している。操作ボタン22の上昇操作用を押すと、モータ1のマグネットスイッチM1U及びモータM2のマグネットスイッチM2Uが入り、モータM1,M2を駆動する。各モータM1,M2の前段にリミットスイッチ47が接続され、モータ単位で回転を停止する。ここでは、昇降駆動モータ20の直前に回転制御手段48が置かれているが、回転制御手段48とリミットスイッチ72は、いずれを先に配置してもよい。
【0052】
使用する電源は単層交流100Vを利用した回路とすることもできる。更に、昇降駆動モータ20にサーマルスイッチ(図示せず。)を取り付けて、落下防止バー16が物品を噛んだりしてモータ20が加熱した場合にこれを感知してモータを停止する安全手段を追加してもよい。また、物品3が物品棚5から飛び出して落下防止バー16の移動を妨げないように、荷はみ出しセンサ(図示せず。)を追加して設置してもよい。
【0053】
(物品落下防止装置の設置及び使用法)
物品落下防止装置1は、既存の物品棚5に後付で取り付けることができる。具体的には、物品棚5の前面側支柱6fに対して、ガイドレール14を適当な手段で固定する。例えば、上端部では、前面側支柱6fの上端部に箱形部材40を部分的にかぶせ、この箱形部材40にガイドレール14を固定する。その他の適当な箇所で、前面側支柱6fに対して、ガイドレール14をネジ止めして固定する。箱形部材40の後面側に昇降駆動モータ20を設置し、その回転軸26にスプロケットホイール28を取り付ける。スプロケットホイール28に、上下動部材18を取り付けたチェーン30を噛合させ、チェーンの下方をストレッチャユニット46で伸張する。上下動部材18と落下防止バー16とを連結部材32で接続する。チェーン30の適所にカウンターバランス42を取り付ける。同様にして、物品棚5の全ての落下防止バー16を上下動部材18に接続する。
【0054】
昇降駆動モータ20,上側及び下側リミットスイッチ47u,47d及び操作ボタン22の間を、図7の電気回路ブロックに従って結線する。
【0055】
落下防止バー16が、所定の上限位置及び下限位置で停止するように、上側及び下側リミットスイッチ47u,47dの取り付け位置を調整する。最終動作確認を行う。
【0056】
以上により、操作ボタン22の上側スイッチ22uを押すと昇降駆動モータ20が一方の方向に回転して全ての上下動部材18を上方に向けて移動する。昇降駆動モータ20は同じ回転速度で回転するため、全ての上下動部材18は同じ速度で上方に移動する。更に、上下層部材間で移動速度が異なったとしても、(1)移動距離(上下ストローク)が比較的短いこと(例えば、30cm)、(2)早めに上方移動した上下動部材18はリミットスイッチ47uに接触してその上方にある昇降駆動モータ20のみを停止し他は引き続き回転駆動すること、により、実質的に全ての上下動部材18を同期をとって移動・停止させることができる。その結果、上下動部材18と一体の関係にある落下防止バー16も同期をとって移動し、水平状態で停止する。落下防止バー16を下げるときも同様である。
【0057】
図8は、図2の物品落下防止装置1を取り付けた物品棚5において、物品3の搬入又は搬出の際に落下防止バー16を最下限まで下げた状態を示す図である。落下防止バー16を物品棚5の前面側ビーム8fと同じ高さまで下げることにより、物品3の搬入又は搬出に際して、落下防止バー16が障害となることはない。
【0058】
(連動駆動型と独立駆動型)
上述した物品落下防止装置は、いずれかの操作ボタン22の上昇操作用スイッチ22uを押すと全ての落下防止バー16が一斉に上方に移動し、下降操作用スイッチ22dを押すと全ての落下防止バー16が一斉に下方に移動する連動駆動型である。
【0059】
しかし、所望により、物品棚5の特定の連に設置された操作ボタン22の上昇操作用スイッチ用22uを押すとその連に設置された落下防止バー16のみが上方に移動し、下降操作用スイッチ22dを押すとその連に設置された落下防止バー16のみが下方に移動し、他の落下防止バー16は静止したままの独立駆動型にすることもできる。
【0060】
独立駆動型とするためには、1個の独立棚2(又は1個の独立棚2と必要個数nの連結棚4から成る(n+1)連の棚)を1ユニットとして、ユニット単位で必要数の物品落下防止装置を取付ればよい。
【0061】
(物品落下防止装置を備えた物品棚)
上述した物品落下防止装置は、既存の物品棚に対して後付で設置する場合を説明した。しかし、予め、物品棚に物品落下防止装置を取り付けてある物品落下防止装置を備えた物品棚として製造・販売することもできる。
【0062】
(実施形態の利点・効果)
(1)この物品落下防止装置は、既存の物品棚に対して後付で設置することができる。従って、既存の物品棚に耐震対策を採ることができ、収納物品の落下の危険性を予め除去することができる。
【0063】
(2)この物品落下防止装置は、物品棚のサイズ、物品棚を構成する連の数、各々の連の前面側及び後面側ビームの本数が変更されても、これに対応した枚数の落下安全バーを準備することにより、取り付け可能となる。これに応じて、カウンターバランスの重量(個数)を調節する。
【0064】
(3)この物品落下防止装置は、既存の移動式物品棚に対しても後付で設置することができる。
【0065】
(4)この物品落下防止装置は、落下防止バーの上昇及び下降とも非常に簡単に操作できる。単に操作用スイッチを押圧することで上昇又は下降移動を開始し、リミットスイッチで自動停止する。
【0066】
(5)この物品落下防止装置は、全ての上下動部材を同期をとって移動し、水平状態に停止させることができる。即ち、昇降駆動モータとして回転速度が一定の誘導電動機を使用しているため、全ての上下動部材は一定速度で移動させることができること、上下動部材の移動距離(上下ストローク)が比較的短いこと、早めに移動が終了した上下動部材は上側又は下側リミットスイッチに接触して昇降駆動モータの回転を停止すること等により、全ての上下動部材を同期をとって移動し、水平状態に停止させることができる。
【0067】
(6)この物品落下防止装置は、停止状態では、何らの動力を必要とせずに落下防止バーを水平状態に停止することが出来る。即ち、落下防止バーの重量とカウンタバランスの重量とが平衡しており、所望により、昇降駆動モータは、停止時には回転を防止する回転防止機構を備えている。これにより、一旦停止した上下動部材は、操作ボタンを操作しない限り上下動せず、落下防止バーも停止して水平状態を維持する。
【0068】
(7)リミットスイッチは取り付け自在であるので、物品の高さに合わせて上側リミットスイッチを、物品棚5の前面ビーム8の高さに合わせて上側リミットスイッチを、夫々設置出来る。従って、任意の物品棚の任意の高さの物品に対して、最適な高さに落下防止バーを停止させることが出来る。
【0069】
[変形例等]
以上により、本発明に係る物品落下防止装置及びこれを備えた物品棚の実施形態に関して説明したが、これは例示であって、本発明はこれに限定されない。当業者が日常的になしえる追加・削除・変更・改良は本発明に含まれる。
【0070】
例えば、倉庫にホークリフトが入った時に、ホークリフトの侵入をセンサ(例えば、光電センサ)が感知して下降操作用操作スイッチをONにして落下防止バーを下げて搬入・搬出可能とし、ホークリフトの退出をセンサが感知して上昇操作用操作スイッチをONにして落下防止バーを上げて物品の落下を防止するようにすることもできる。
【0071】
本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、物品を収納した物品棚の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の物品棚に対して、物品落下防止装置を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、物品落下防止装置の上下動部材を裏面側から見た斜視図である。
【図4】図4は、物品落下防止装置を物品棚に対して取り付けたときの、前面側支柱の上端部の取り付け状態を示す図である。
【図5】図5は、物品落下防止装置を物品棚に対して取り付けたときの下端部の取り付け状態を示す図である。
【図6】図6は、物品落下防止装置の機械的駆動系を説明する概要図である。
【図7】図7は、物品落下防止装置を駆動する電気回路系を説明する図である。
【図8】図8は、図2の物品落下防止装置の落下防止バーを下げた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1:物品落下防止装置、 2:独立棚、 3:物品,商品,収納物,荷物、 4:連結棚、 5:物品棚,ラック,保管棚,軽量棚,中軽量棚,重量棚,商品棚,荷物棚,棚、 6:支柱,フレーム,トラス、 6f:前面側支柱、 6b:後面側支柱、 8:ビーム,連つなぎ、 8f:前面側ビーム、 8b:後面側ビーム、 10:棚受ビーム、 12:側面側ビーム,側つなぎ、 14:ガイドレール、 16:落下防止バー,安全バー、 18:上下動部材、 20:昇降駆動モータ、 22:操作ボタン、 22u:上昇操作用スイッチ、 22d:下降操作用スイッチ、 26:回転軸、 28:スプロケットホイール、 30:チェーン、 32:連結部材,ブラケット、 34:側面走行ローラ、 36:奥面走行ローラ、 40:箱形部材、 42:カウンターバランス,カウンターウェイト,平衡錘、 47:リミットスイッチ、 47u:上側リミットスイッチ、 47d:下側リミットスイッチ、 48:回転制御手段、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷受棚を有する物品棚に取り付け自在な物品落下防止装置であって、
前記物品棚の支柱に沿って取り付けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って昇降する上下動部材と、
前記上下動部材を前記物品棚の支柱に沿って移動し停止する上下動部材駆動手段と、
前記上下動部材に接続されて昇降移動し、前記荷受棚より上方にて停止して、振動に際して物品が該荷受棚から落下するのを防止する落下防止バーとを備えた、物品落下防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物品落下防止装置において、
前記ガイドレールは、一面に長さ方向に延在する溝が形成された中空の形状であり、
前記上下動部材は、前記ガイドレール内を長さ方向に沿って移動可能であり、
前記落下防止バーは、前記溝を通して前記上下動部材に接続されて一体として移動する、物品落下防止装置。
【請求項3】
請求項1に記載の物品落下防止装置において、
前記落下防止バーの両端は、隣接する前記上下動部材に接続されて水平移動し、前記荷受棚より上方にて停止して、振動に際して物品が該荷受棚から落下するのを防止する、物品落下防止装置。
【請求項4】
請求項1に記載の物品落下防止装置において、
前記上下動部材駆動手段は、
昇降駆動モータと、
該昇降駆動モータの回転運動を、前記上下動部材の上下動として伝達する伝達部材とを有し、
前記昇降駆動モータにより前記上下動部材を上下動させて、該上下動部材に接続された前記落下防止バーを移動する、物品落下防止装置。
【請求項5】
請求項4に記載の物品落下防止装置において、
前記伝達部材は、
前記昇降駆動モータの回転軸に取り付けられたスプロケットホイールと、
前記スプロケットに噛合するチェーンとを有し、
前記チェーンの一部に前記上下動部材を接続することにより、前記昇降駆動モータの回転運動を該上下動部材の上下運動として伝達する、物品落下防止装置。
【請求項6】
請求項1に記載の物品落下防止装置において、
前記上下動部材駆動手段は、
昇降駆動モータと、
操作スイッチとを有し、
前記操作スイッチをONにした時、前記昇降駆動モータは回転を開始する、物品落下防止装置。
【請求項7】
請求項1に記載の物品落下防止装置において、
前記上下動部材駆動手段は、
昇降駆動モータと、
前記ガイドレールの近傍に設置されたリミットスイッチとを有し、
前記上下動部材又は前記ガイドレールが、前記リミットスイッチに接触したとき、前記昇降駆動モータを停止して、該上下動部材及び前記落下防止バーを停止する、物品落下防止装置。
【請求項8】
請求項1に記載の物品落下防止装置において、
前記物品落下防止装置は、複数段の荷受棚を有し且つ複数の連から成る物品棚に取り付けられている、物品落下防止装置。
【請求項9】
請求項1に記載の物品落下防止装置において、
前記上下動部材駆動手段は、物品棚の支柱に取り付けられた操作スイッチと、リミットスイッチとを有し、
前記物品落下防止装置は、前記操作スイッチをONにすると全ての前記上下動部材を一斉に移動開始し、リミットスイッチが作動すると所定位置に達した上下動部材のみが停止する連動駆動型である、物品落下防止装置。
【請求項10】
請求項1に記載の物品落下防止装置において、
前記物品棚は、1個の独立棚又は1個の独立棚2と必要個数nの連結棚4から成る(n+1)連の棚を1ユニットとして構成され、ユニット単位で必要数の物品落下防止装置を取り付けて、ユニット単位で駆動可能な独立駆動型としている、物品落下防止装置。
【請求項11】
物品棚に取り付け可能な物品落下防止装置であって、
物品棚の前面を水平に移動し、所定位置に停止する落下防止バーと、
前記落下防止バーの動きを案内するガイド手段と、
前記落下防止バーを前記ガイド手段の案内に従って移動し停止する落下防止バー駆動手段と、
前記落下防止バーと前記駆動手段とを連結する駆動連結手段とを備えた、物品落下防止装置。
【請求項12】
請求項11に記載の物品落下防止装置において、
前記ガイド手段は、前記支柱に沿って取り付けられ、長さ方向に溝を有する部材である、物品落下防止装置。
【請求項13】
請求項11に記載の物品落下防止装置において、
前記落下防止バー駆動手段は、
前記ガイド手段に沿って上下動可能な上下動部材と、
前記上下動部材を上下方向に駆動し停止する昇降駆動モータと、
前記上下動部材と前記落下防止バーとを連結する連結部材を有し、
前記落下防止バーを物品棚の前面に沿って水平移動し、所定位置に停止する、物品落下防止装置。
【請求項14】
予め、請求項1乃至13のいずれか一項記載の物品落下防止装置を備えた物品棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−80139(P2008−80139A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276224(P2007−276224)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【分割の表示】特願2006−46828(P2006−46828)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(593172544)株式会社ティーディーエスコーポレーション (13)
【Fターム(参考)】