説明

物理量センサー

【課題】比較的簡単な構成でありながら、より高い検出精度で所定の物理量を検出可能な物理量センサーを提供すること。
【解決手段】物理量センサー1は、第1、第2の共振器11、21の各共振周波数と対応づけられた周波数の第1、第2の周波数信号12、22をそれぞれ発生する第1、第2の周波数信号発生部10、20と、第1、第2の周波数信号の各周期数をそれぞれカウントする第1、第2のカウント部30、40と、第1、第2のカウント部の各カウント値32、42に基づいて、第1、第2の周波数信号の周期数の差を表すデジタル値52を計算するデジタル演算部50と、デジタル値52に基づいて、物理量に応じたデジタル値の検出信号62を生成する検出信号生成部60と、を含む。第2の共振器21の共振周波数は加速度の変化に応じて変化し、加速度が加わっていない状態における第1、第2の周波数信号の周波数が一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の速度や移動距離等の物理量を検出するために、用途に応じて様々なセンサーが用いられている。例えば、送波器から信号反射面に向けてパルス変調された送波信号を出射し、信号反射面で散乱された送波信号を各受波器で受信して、ドップラー効果によって生じた周波数差等から移動体の走行速度を検出する速度センサーが知られている。
【0003】
この速度センサーに対し、特許文献1の速度センサーは送波信号を必要とせず、少なくとも一方が加速度検出片である2つの周波数信号発生源からの信号に基づいて、より簡単な構成で速度を検出することができるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−76166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の速度センサーでは、検波信号に対してローパスフィルターでアナログ処理するため、最終的な速度値出力にはアナログ回路で発生するノイズが重畳される。従って、特許文献1の速度センサーは、高い検出精度が要求される用途にそのまま利用することが難しい場合もある。
【0006】
また、特許文献1の速度センサーは、2つの周波数信号の位相差が0°〜180°の範囲を超えると、誤った検出結果を出力する可能性があるため、加速度検出素子の検出感度が高い場合には適用することが難しい。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、比較的簡単な構成でありながら、より高い検出精度で所定の物理量(速度、移動距離、加速度、力等)を検出可能な物理量センサーを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、所定の物理量を検出する物理量センサーであって、第1の共振器を有し、前記第1の共振器の共振周波数と対応づけられた周波数の第1の周波数信号を発生する第1の周波数信号発生部と、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する第2の共振器を有し、前記第2の共振器の共振周波数と対応づけられた周波数の第2の周波数信号を発生する第2の周波数信号発生部と、前記第1の周波数信号の周期数をカウントする第1のカウント部と、前記第2の周波数信号の周期数をカウントする第2のカウント部と、前記第1のカウント部のカウント値と前記第2のカウント部のカウント値に基づいて、前記第1の周波数信号の周期数と前記第2の周波数信号の周期数の差を表すデジタル値を計算するデジタル演算部と、前記デジタル演算部が計算した前記デジタル値に基づいて、前記物理量に応じたデジタル値の検出信号を生成する検出信号生成部と、を含み、加速度が加わっていない状態における前記第1の周波数信号の周波数と前記第2の周波数信号の周波数が一致する。
【0009】
本発明の物理量センサーに加速度が加わっている状態では、加わった加速度に応じて第2の周波数信号の周波数が変化するので、第2のカウント部のカウントスピードも加わった加速度に応じて変化する。そのため、加速度が加わっている間は、第1のカウント部のカウント値と第1のカウント部のカウント値の差が変化する。一方、本発明の物理量センサーに加速度が加わっていない状態(静止時又は定速時)では、第1の周波数信号の周波数と第2の周波数信号の周波数が一致するので、第1のカウント部と第2のカウント部のカウントスピードも一致する。そのため、加速度が加わらなければ、第1のカウント部のカウント値と第1のカウント部のカウント値の差は変化しない。従って、本発明の物理量センサーによれば、第1のカウント部のカウント値と第1のカウント部のカウント値の差に基づいて速度、移動距離、加速度等の物理量を検出することができる。
【0010】
そして、本発明の物理量センサーは、第1のカウント部のカウント値と第2のカウント部のカウント値に基づいて第1の周波数信号の周期数と第2の周波数信号の周期数の差をデジタル演算で求めるという比較的簡単な構成でありながら、2つの周波数信号の位相差に基づくアナログ処理により物理量を検出する場合と比較して、より高い精度で物理量を検出することができる。
【0011】
また、本発明の物理量センサーによれば、第1のカウント部のカウント値と第2のカウント部のカウント値の差に基づいて物理量を検出するので、第1の周波数信号と第2の周波数信号の位相差が0°〜180°の範囲を超えても誤った検出結果を出力しない。従って、第2の共振器として検出感度の高い加速度センサーを用いることができる。
【0012】
(2)この物理量センサーにおいて、前記第1の共振器は、加速度の変化に応じて共振周波数が変化するようにしてもよい。
【0013】
(3)この物理量センサーにおいて、前記第1の共振器及び前記第2の共振器は、加速度の検出方向が互いに逆方向になるように配置されているようにしてもよい。
【0014】
本発明の物理量センサーでは、第1の共振器と第2の共振器はともに加速度センサーであり、加速度が加わると互いに共振周波数の変化の方向が逆になる。そのため、本発明の物理量センサーによれば、第2の共振器のみが加速度センサーである場合と比較して、第1のカウント部のカウント値と第2のカウント部のカウント値の差が大きくなるので、物理量の検出感度をより高くすることができる。
【0015】
(4)この物理量センサーは、前記第1の周波数信号の周波数及び前記第2の周波数信号の周波数のいずれよりも高い周波数のクロック信号に基づいて、前記第1の周波数信号を前記クロック信号に同期化させた第1の同期化周波数信号を生成する第1の同期化回路と、前記クロック信号に基づいて、前記第2の周波数信号を前記クロック信号に同期化させた第2の同期化周波数信号を生成する第2の同期化回路と、を含み、前記第1のカウント部は、前記第1の同期化周波数信号に基づいて、前記第1の周波数信号の周期数をカウントし、前記第2のカウント部は、前記第2の同期化周波数信号に基づいて、前記第2の周波数信号の周期数をカウントするようにしてもよい。
【0016】
第1の周波数信号と第2の周波数信号は非同期であるため、第1のカウント部のカウント値の変化点と第2のカウント部のカウント値の変化点も非同期である。本発明の物理量センサーでは、第1の周波数信号及び第2の周波数信号はより高い周波数の同一のクロック信号によって同期化された後に周期数がカウントされるので、第1のカウント部のカウント値の変化点と第2のカウント部のカウント値の変化点が同期している。従って、本発明の物理量センサーによれば、第1のカウント部のカウント値の変化点と第2のカウント部のカウント値の変化点を避けてデジタル演算を行うことができるため、誤った検出結果を出力する可能性を低減することができる。
【0017】
(5)この物理量センサーにおいて、前記検出信号生成部は、前記デジタル演算部が計算した前記デジタル値に所定の係数を乗算し、速度に応じたデジタル値の前記検出信号を生成するようにしてもよい。
【0018】
本発明の物理量センサーによれば、比較的簡単な構成でありながら、2つの周波数信号の位相差に基づくアナログ処理により速度を検出する場合と比較して、より高い精度で速度を検出することができる。
【0019】
(6)この物理量センサーにおいて、前記検出信号生成部は、前記速度信号を積分し、移動距離に応じたデジタル値の前記検出信号を生成するようにしてもよい。
【0020】
本発明の物理量センサーによれば、比較的簡単な構成でありながら、2つの周波数信号の位相差に基づくアナログ処理により移動距離を検出する場合と比較して、より高い精度で移動距離を検出することができる。
【0021】
(7)この物理量センサーにおいて、前記検出信号生成部は、前記速度信号を微分し、加速度に応じたデジタル値の前記検出信号を生成するようにしてもよい。
【0022】
本発明の物理量センサーによれば、比較的簡単な構成でありながら、2つの周波数信号の位相差に基づくアナログ処理により加速度を検出する場合と比較して、より高い精度で加速度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る物理量センサーのブロック図の一例。
【図2】第1実施形態の速度センサーの構成を示す図。
【図3】水晶発振器の構成例を示す図。
【図4】水晶発振器の構成例を示す図。
【図5】第1実施形態の速度センサーにおける水晶振動子の一例について説明するための図。
【図6】第1実施形態の速度センサーの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図7】第1実施形態の速度センサーの動作の他の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図8】第2実施形態の速度センサーの構成を示す図。
【図9】第2実施形態の速度センサーにおける水晶振動子の一例について説明するための図。
【図10】第2実施形態の速度センサーの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図11】第2実施形態の速度センサーの動作の他の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図12】第3実施形態の速度センサーの構成を示す図。
【図13】本実施形態の距離センサーの構成を示す図。
【図14】本実施形態の加速度センサーの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0025】
1.物理量センサー
図1は、本実施形態に係る物理量センサーのブロック図の一例である。
【0026】
物理量センサー1は、第1の周波数信号発生部10を含む。第1の周波数信号発生部10は、第1の共振器11を有し、第1の共振器11の共振周波数と対応づけられた周波数の第1の周波数信号12を発生する。第1の共振器11は、加速度が加わっているか否かによらず共振周波数が一定の共振器であってもよいし、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する加速度センサーであってもよい。
【0027】
物理量センサー1は、第2の周波数信号発生部20を含む。第2の周波数信号発生部20は、第2の共振器21を有し、第2の共振器21の共振周波数と対応づけられた周波数の第2の周波数信号22を発生する。第2の共振器21は、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する加速度センサーであり、加速度が加わっていない状態における第1の周波数信号12の周波数と第2の周波数信号22の周波数が一致する。ここで、加速度が加わっていない状態とは、物理量センサー1が静止している状態か一定の速度で移動している状態のいずれであってもよい。
【0028】
第1の周波数信号12及び第2の周波数信号22の各周波数は、第1の共振器11及び第2の共振器21の各共振周波数とそれぞれ対応づけられていればよく、必ずしも第1の共振器11及び第2の共振器21の各共振周波数とそれぞれ一致している必要はない。例えば、第1の周波数信号12及び第2の周波数信号22の各周波数は、第1の共振器11及び第2の共振器21の各共振周波数のP/Q倍(P、Qはあらかじめ決められた所定の整数)の周波数であってもよい。
【0029】
第1の共振器及び第2の共振器は、振動子を用いて構成してもよく、例えば、水晶振動子やセラミック振動子、ニオブ酸リチウム振動子、タンタル酸リチウム振動子などの単結晶材料を用いた振動子や、酸化亜鉛圧電薄膜振動子、酸化アルミニウム圧電薄膜振動子などの圧電性薄膜を用いた振動子等のいずれであってもよい。
【0030】
物理量センサー1は、第1のカウント部30を含む。第1のカウント部30は、第1の周波数信号12の周期数をカウントする。
【0031】
物理量センサー1は、第2のカウント部40を含む。第2のカウント部40は、第2の周波数信号22の周期数をカウントする。
【0032】
物理量センサー1は、デジタル演算部50を含む。デジタル演算部50は、第1のカウント部30のカウント値32と第2のカウント部40のカウント値42に基づいて、第1の周波数信号12の周期数と第2の周波数信号22の周期数の差を表すデジタル値52を計算する。
【0033】
物理量センサー1は、検出信号生成部60を含む。検出信号生成部60は、デジタル演算部50が計算したデジタル値52に基づいて、所定の物理量に応じたデジタル値の検出信号62を生成する。ここで、所定の物理量は、例えば、物理量センサー1の速度、加速度、移動距離、力等である。
【0034】
以下では、物理量センサーの一例として速度センサー、距離センサー、加速度センサーを例にとり、それぞれの具体的な実施形態について順番に説明する。
【0035】
2.速度センサー
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態の速度センサーの構成を示す図である。
【0036】
第1実施形態の速度センサー1Aは、水晶発振器14を含んで構成されている。水晶発振器14は、水晶振動子100及び発振回路110を含んで構成されている。本実施形態では、水晶振動子100は共振周波数が一定の水晶発振子として構成されている。図3に、水晶発振器14のより具体的な構成例を示す。図3に示すように、発振回路110に含まれるキャパシター111、112、抵抗113、114、インバーター115により水晶振動子100を発振させる発振ループが形成され、水晶振動子100は共振周波数に等しい周波数で発振する。そして、水晶振動子100の駆動信号すなわちインバーター115の出力信号がクロック信号120として出力される。
【0037】
なお、水晶発振器14は図1における第1の共振器11に対応し、クロック信号120は図1における第1の周波数信号12に対応する。
【0038】
第1実施形態の速度センサー1Aは、水晶発振器24を含んで構成されている。水晶発振器24は、水晶振動子200及び発振回路210を含んで構成されている。本実施形態では、水晶振動子200は、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する水晶発振子として構成されている。図4に、水晶発振器24のより具体的な構成例を示す。図4に示すように、発振回路210に含まれるキャパシター211、212、抵抗213、214、インバーター215により水晶振動子200を発振させる発振ループが形成され、水晶振動子200は共振周波数(加わった加速度に応じて変化する)に等しい周波数で発振する。そして、水晶振動子200の駆動信号すなわちインバーター215の出力信号がクロック信号220として出力される。すなわち、水晶発振器24は加速度に応じて出力信号(クロック信号220)の周波数が変化する加速度センサーとして機能する。
【0039】
なお、水晶発振器24は図1における第2の共振器21に対応し、クロック信号220は図1における第2の周波数信号22に対応する。
【0040】
第1実施形態の速度センサー1Aは、同期式カウンター300及び400を含んで構成されている。同期式カウンター300は、クロック信号120のクロック数(周期数)をカウントするNビットカウンターとして構成され、Nビットのカウント値302を出力する。同様に、同期式カウンター400は、クロック信号220のクロック数(周期数)をカウントするNビットカウンターとして構成され、Nビットのカウント値402を出力する。
【0041】
なお、同期式カウンター300及び400は、それぞれ、図1における第1のカウント部30及び第2のカウント部40に対応し、カウント値302及びカウント値402は、それぞれ、図1におけるカウント値32及びカウント値42に対応する。
【0042】
第1実施形態の速度センサー1Aは、減算処理部500及びレジスター510を含んで構成されている。減算処理部500は、デジタル処理により、Nビットのカウント値302とNビットのカウント値402の一方から他方を減算する処理を行い、Nビットの減算値502を出力する。減算処理部500は、専用のデジタル回路として実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)が減算プログラムを実行することによりその機能を実現するようにしてもよい。Nビットの減算値502は、所定のタイミング、例えば、クロック信号120の立ち下がりエッジでレジスター510に格納される。
【0043】
なお、減算処理部500とレジスター510により構成される回路は図1におけるデジタル演算部50に対応し、レジスター510に格納された減算値512は図1におけるデジタル値52に対応する。
【0044】
第1実施形態の速度センサー1Aは、乗算処理部600を含んで構成されている。乗算処理部600は、デジタル処理により、Nビットの減算値512とMビットの所定の係数kを乗算して乗算結果を速度検出信号602として出力する。乗算結果(速度検出信号602)の最下位ビットの計算において必要に応じて丸め処理を行ってもよい。乗算処理部600は、専用のデジタル回路として実現してもよいし、CPUが乗算プログラムを実行することによりその機能を実現するようにしてもよい。例えば、α=2(nは正の整数)であれば、乗算処理部600はnビットシフト回路として簡易な構成で実現することができる。
【0045】
なお、乗算処理部600は図1における検出信号生成部60に対応し、速度検出信号602は図1における検出信号62に対応する。
【0046】
図5(A)〜図5(C)は、本実施形態における水晶振動子200の一例について説明するための図である。水晶振動子200は、図5(A)〜図5(C)に示す双音叉振動片201とカンチレバー206がパッケージ(図示せず)の内部に気密封止された双音叉振動子として構成される。水晶振動子200として、優れた安定性と速い応答性を有する双音叉型振動子を使用することで正確な加速度検出を行うことができる。
【0047】
図5(A)は、双音叉振動片201の正面図であり、双音叉振動片201の概略的な構造を示している。図5(A)において、202、203は基部であり、2つの振動腕204、205がそれらをつないでいる。
【0048】
図5(B)は、カンチレバー206に固定された双音叉振動片201を示す側面図である。図5(B)において、カンチレバー206は、固定端部207と自由端部208を有し、連結部209がそれらをつないでいる。固定端部207は直接に、又はパッケージ(図示せず)などにより間接的に、速度センサー1Aに固定されている。そして、双音叉振動片201の基部203はカンチレバー206の固定端部207に固着され、双音叉振動片201の基部202はカンチレバー206の自由端部208に固着されている。
【0049】
図5(C)は、速度センサー1Aが加速したときの双音叉振動片201の形状の変化を示している。速度センサー1Aが、カンチレバー206の固定端部207、連結部209、自由端部208で作られる軸に対して垂直方向に、かつ、カンチレバー206から双音叉振動片201へ向かう方向に加速した場合、カンチレバー206の自由端部208に加速と反対方向に慣性力Fが作用するので、カンチレバー206の連結部209は加速と反対方向に曲がる。
【0050】
双音叉振動片201はカンチレバー206に固着されているため、圧縮力Fが作用する。この圧縮力Fの作用により双音叉振動片201の共振周波数が低くなる。例えば、速度センサー1Aが加速していないときの双音叉振動片201の共振周波数が4000kHzであったとすると、図5(C)の場合の双音叉振動片201の共振周波数は例えば39.99kHzに変化する。双音叉振動片201は接続電極(図示せず)を介して発振回路210と接続されており、水晶発振器24の発振周波数が低くなる。
【0051】
逆に、速度センサー1Aが図5(C)の場合と逆方向に加速したときには、慣性力Fも図5(C)の場合と反対方向に作用するので、双音叉振動片201を伸ばそうとする引張力が作用する。例えば、速度センサー1Aが加速していないときの双音叉振動片201の共振周波数が4000kHzであったとすると、速度センサー1Aが図5(C)の場合と逆方向に加速したときの双音叉振動片201の共振周波数は例えば40.01kHzに変化する。そのため、水晶発振器24の発振周波数が高くなる。
【0052】
図6は、本実施形態の速度センサー1Aの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0053】
図6は、速度センサー1Aが、時刻t以前は静止しており、時刻t〜tにかけて加速度αで加速し、時刻t以降は一定の速度で移動するケースのタイミングチャート図である。
【0054】
図6において、時刻t以前は、速度センサー1Aが静止しているので、水晶発振器14の発振周波数と水晶発振器24の発振周波数は等しい。そのため、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数も等しい。
【0055】
そして、同期式カウンター300がクロック信号120の立ち上がりエッジでカウントアップ動作を行うことによりカウント値302がカウントアップされる。同様に、同期式カウンター400がクロック信号220の立ち上がりエッジでカウントアップ動作を行うことによりカウント値402がカウントアップされる。
【0056】
時刻t以前は、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数が等しいため、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップのスピードは同じである。
【0057】
ここで、減算処理部500がカウント値302からカウント値402を減算して減算値502を出力し、レジスター510がクロック信号120の立ち下がりエッジで減算値502を取り込むとすると、減算値512(レジスター510の出力)は0のまま変化しない。
【0058】
時刻t〜tにかけて速度センサー1Aに加速度αが加わると、水晶振動子200が図5(C)に示した状態になるため、水晶発振器24の発振周波数が低くなる。そのため、クロック信号220の周波数がクロック信号120の周波数よりも低くなる。従って、時刻t〜tでは、カウント値402のカウントアップがカウント値302のカウントアップよりも遅くなる。その結果、減算値512は、時刻t、t、tの各タイミングで1、2、3と増えていく。
【0059】
時刻tにおいて、加速度が0になり、速度センサー1Aが一定の速度で移動するようになると、水晶発振器14の発振周波数と水晶発振器24の発振周波数が等しくなる。そのため、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数も等しくなる。従って、時刻t以降は、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップが同じスピードになる。その結果、減算値512は3のまま変化しない。
【0060】
このように、図6のケースでは、減算値512が0、1、2、3と増加するので、速度検出信号602のデジタル値は0、k、2k、3kと段階的に増加する。ここで、係数kを減算値512が1である時の速度vに設定しておけば、速度検出信号602のデジタル値は、時刻t〜tにかけて加わった加速度αに応じて0から3vまで3段階に上昇する速度の軌跡を示すことになる。
【0061】
図7は、本実施形態の速度センサー1Aの動作の他の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0062】
図7は、速度センサー1Aが、時刻t以前は図6の時刻t以降の定速状態であり、時刻t〜t10にかけて加速度−α(図6のケースと逆向きかつ同じ大きさの加速度)で減速し、時刻t10以降は静止するケースのタイミングチャート図である。
【0063】
図7において、時刻t以前は、速度センサー1Aに加速度が加わっていないので、水晶発振器14の発振周波数と水晶発振器24の発振周波数は等しい。そのため、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数も等しく、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップのスピードも同じである。従って、減算値512は、図6の時刻t以降の一定値である3のまま変化しない。
【0064】
時刻t〜t10にかけて速度センサー1Aに加速度−αが加わると、水晶振動子200が図5(C)と逆向きに曲がった状態になるため、水晶発振器24の発振周波数が高くなる。そのため、クロック信号220の周波数がクロック信号120の周波数よりも高くなる。従って、時刻t〜t10では、カウント値402のカウントアップがカウント値302のカウントアップよりも速くなる。その結果、減算値512は、時刻t、t、tの各タイミングで2、1、0と減っていく。
【0065】
時刻t10において、加速度が0になり、速度センサー1Aが静止すると、水晶発振器14の発振周波数と水晶発振器24の発振周波数が等しくなる。そのため、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数も等しくなる。従って、時刻t10以降は、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップが同じスピードになる。その結果、減算値512は0のまま変化しない。
【0066】
このように、図7のケースでは、減算値512が3、2、1、0と減少するので、速度検出信号602のデジタル値は3k、2k、k、0と段階的に減少する。ここで、係数kを前述の速度vに設定しておけば、速度検出信号602のデジタル値は、時刻t〜t10にかけて加わった加速度−αに応じて3vから0まで3段階に下降する速度の軌跡を示すことになる。
【0067】
以上説明したように、第1実施形態の速度センサー1Aに加速度が加わっている状態では、加わった加速度に応じてクロック信号220の周波数が変化するので同期式カウンター400のカウントスピードも加わった加速度に応じて変化するが、クロック信号120の周波数は変化しないので同期式カウンター300のカウントスピードは変化しない。そのため、加速度が加わっている間は、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差が変化する。一方、第1実施形態の速度センサー1Aに加速度が加わっていない状態(静止時又は定速時)では、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数が一致するので、同期式カウンター300と同期式カウンター400のカウントスピードも一致する。そのため、加速度が加わらなければ、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差は変化しない。従って、第1実施形態の速度センサー1Aによれば、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差に基づいて速度を検出することができる。
【0068】
そして、第1実施形態の速度センサー1Aは、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差をデジタル演算で求めるという比較的簡単な構成でありながら、2つのクロック信号の位相差に基づくアナログ処理により速度を検出する場合と比較して、より高い精度で速度を検出することができる。
【0069】
また、第1実施形態の速度センサー1Aによれば、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差に基づいて速度を検出するので、クロック信号120とクロック信号220の位相差が0°〜180°の範囲を超えても誤った検出結果を出力しない。従って、検出感度の高い加速度センサーを用いることができる。
【0070】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の速度センサーの構成を示す図である。
【0071】
第2実施形態の速度センサー1Bの構成は、図2〜図4に示した第1実施形態の速度センサー1Aの構成と同様である。ただし、第2実施形態においては、水晶発振器24だけでなく水晶発振器14も加速度センサーとして構成される。また、乗算処理部600は、第1実施形態の速度センサー1Aにおける乗算時の係数kの1/2の係数(k/2)で乗算処理を行う。
【0072】
図9(A)及び図9(B)は、本実施形態における水晶振動子100及び水晶振動子200の一例について説明するための図である。
【0073】
本実施形態では、図9(A)に示すように、水晶振動子100及び水晶振動子200は、検出方向が互いに逆方向になるように配置されている。ここで、本実施形態における水晶振動子200は、図5(A)及び図5(B)に示した構造と同じであるため、図9(A)において、水晶振動子200の各要素に対して図5(A)及び図5(B)と同じ番号を付しており、その説明を省略する。また、水晶振動子100の構造は水晶振動子200の構造と同じであり、水晶振動子100の各要素101〜109は、それぞれ水晶振動子200の各要素201〜209に対応する。
【0074】
図9(B)は、速度センサー1Bが加速したときの双音叉振動片101、201の形状の変化を示している。速度センサー1Bが、カンチレバー206の固定端部207、連結部209、自由端部208で作られる軸に対して垂直方向に、かつ、カンチレバー206から双音叉振動片201へ向かう方向に加速した場合、双音叉振動片201の変化は図5(C)と同じであり、双音叉振動片201の共振周波数が低くなる。そのため、水晶発振器24の発振周波数が低くなる。
【0075】
一方、カンチレバー106の自由端部108にも加速と反対方向に慣性力Fが作用するので、カンチレバー106の自由端部108も加速と反対方向に曲がる。双音叉振動片101はカンチレバー106に固着されているため、引張力Fが作用する。この引張力Fの作用により双音叉振動片101の共振周波数が高くなる。例えば、速度センサー1Bが加速していないときの双音叉振動片101の共振周波数が4000kHzであったとすると、図9(B)の場合の双音叉振動片101の共振周波数は例えば40.01kHzに変化する。双音叉振動片101は接続電極(図示せず)を介して発振回路110と接続されており、水晶発振器14の発振周波数が高くなる。
【0076】
逆に、速度センサー1Aが図9(B)の場合と逆方向に加速したときには、慣性力Fも図9(B)の場合と反対方向に作用するので、双音叉振動片201を伸ばそうとする引張力が作用するとともに双音叉振動片101を縮めようとする圧縮力が作用する。この引張力と圧縮力の作用により、双音叉振動片201の共振周波数が高くなるとともに双音叉振動片101の共振周波数が低くなる。例えば、速度センサー1Aが加速していないときの双音叉振動片101及び201の共振周波数が4000kHzであったとすると、速度センサー1Aが図9(B)の場合と逆方向に加速したときの双音叉振動片201の共振周波数は例えば40.01kHzに変化し、双音叉振動片101の共振周波数は例えば39.99kHzに変化する。そのため、水晶発振器24の発振周波数が高くなり、水晶発振器14の発振周波数が低くなる。
【0077】
このように、水晶振動子100と水晶振動子200を検出方向が互いに逆方向になるように配置すると、水晶発振器14と水晶発振器24は互いに発振周波数の変化の方向が逆になる。そのため、第2実施形態の速度センサー1Bでは、減算値502の変化量が第1実施形態の速度センサー1Aの2倍になることで速度の検出感度を高めることができる。
【0078】
なお、水晶振動子100と水晶振動子200が同じ特性であることが好ましい。このようにすれば、例えば、温度ドリフトに伴うクロック信号120とクロック信号220の周波数差の誤差を抑えることができるので、温度変化に対しても安定した速度検出を行うことが可能となる。
【0079】
図10は、本実施形態の速度センサー1Bの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0080】
図10は、図6のケースと同様に、速度センサー1Bが、時刻t以前は静止しており、時刻t〜tにかけて加速度αで加速し、時刻t以降は一定の速度で移動するケースのタイミングチャート図である。ここで、加速度αの大きさと向きは図6のケースと同じであり、加速度αが加わる時間も図6のケースと同じであるものとする。
【0081】
図10において、時刻t以前は、速度センサー1Bが静止しているので、水晶発振器14の発振周波数と水晶発振器24の発振周波数は等しい。そのため、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数も等しく、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップのスピードも同じである。従って、減算値512は0のまま変化しない。
【0082】
時刻t〜tにかけて速度センサー1Bに加速度αが加わると、水晶振動子100と水晶振動子200が図9(B)に示した状態になるため、水晶発振器14の発振周波数が高くなるとともに水晶発振器24の発振周波数が低くなる。そのため、クロック信号120の周波数が高くなるとともにクロック信号220の周波数が低くなるので、カウント値302のカウントアップスピードが上昇するとともにカウント値402のカウントアップスピードが低下する。その結果、減算値512は、時刻t、t、t、t、t、tの各タイミングで1、2、3、4、5、6と増えていく。
【0083】
時刻tにおいて、加速度が0になり、速度センサー1Bが一定の速度で移動するようになると、水晶発振器14の発振周波数と水晶発振器24の発振周波数が等しくなる。そのため、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数も等しくなる。従って、時刻t以降は、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップが同じスピードになる。その結果、減算値512は6のまま変化しない。
【0084】
このように、図10のケースでは、減算値512が0、1、2、3、4、5、6と増加するので、速度検出信号602のデジタル値は0、0.5k、k、1.5k、2k、2.5k、3kと段階的に増加する。ここで、係数kを前述の速度v(減算値512が1である時の速度)に設定しておけば、速度検出信号602のデジタル値は、時刻t〜tにかけて加わった加速度αに応じて0から3vまで6段階に上昇する速度の軌跡を示すことになる。
【0085】
図11は、本実施形態の速度センサー1Bの動作の他の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0086】
図11は、図7のケースと同様に、速度センサー1Bが、時刻t以前は図10の時刻t以降の定速状態であり、時刻t〜t16にかけて加速度−α(図10のケースと逆向きかつ同じ大きさの加速度)で減速し、時刻t16以降は静止するケースのタイミングチャート図である。ここで、加速度−αの大きさと向きは図7のケースと同じであり、加速度−αが加わる時間も図7のケースと同じであるものとする。
【0087】
図11において、時刻t以前は、速度センサー1Bに加速度が加わっていないので、水晶発振器14の発振周波数と水晶発振器24の発振周波数は等しい。そのため、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数も等しく、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップのスピードも同じである。従って、減算値512は、図10の時刻t以降の一定値である6のまま変化しない。
【0088】
時刻t〜t16にかけて速度センサー1Bに加速度−αが加わると、水晶振動子100と水晶振動子200がそれぞれ図9(B)と逆向きに曲がった状態になるため、水晶発振器14の発振周波数が低くなるとともに水晶発振器24の発振周波数が高くなる。そのため、クロック信号120の周波数が低くなるとともにクロック信号220の周波数が高くなるので、カウント値302のカウントアップスピードが低下するとともにカウント値402のカウントアップスピードが上昇する。その結果、減算値512は、時刻t10、t11、t12、t13、t14、t15の各タイミングで5、4、3、2、1、0と減っていく。
【0089】
時刻t16において、加速度が0になり、速度センサー1Bが静止すると、水晶発振器14の発振周波数と水晶発振器24の発振周波数が等しくなる。そのため、クロック信号120の周波数とクロック信号220の周波数も等しくなる。従って、時刻t16以降は、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップが同じスピードになる。その結果、減算値512は0のまま変化しない。
【0090】
このように、図11のケースでは、減算値512が6、5、4、3、2、1、0と減少するので、速度検出信号602のデジタル値は3k、2.5k、2k、1.5k、k、0.5k、0と段階的に減少する。ここで、係数kを前述の速度vに設定しておけば、速度検出信号602のデジタル値は、時刻t〜t16にかけて加わった加速度−αに応じて3vから0まで6段階に下降する速度の軌跡を示すことになる。
【0091】
以上説明したように、第2実施形態の速度センサー1Bでは、水晶発振器14と水晶振発振器24がともに加速度センサーであり、検出軸の正方向が互いに逆方向を向いているので、水晶発振器24のみが加速度センサーである第1実施形態の速度センサー1Aに対して、減算値512が2倍になる。従って、第2実施形態の速度センサー1Bでは、第1実施形態の速度センサー1Aに対して、速度検出信号602の分解能が2倍になる。すなわち、第2実施形態の速度センサー1Bによれば、速度の検出感度をより高くすることができる。
【0092】
また、第2実施形態の速度センサー1Bによれば、同じ特性を有する水晶振動子100及び水晶振動子200を用いることにより、例えば、温度ドリフトに伴う発振周波数誤差をキャンセルすることができるので、検出時の温度によらず安定した検出結果を出力することができる。
【0093】
(第3実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態において、クロック信号120とクロック信号220が非同期であるため、カウント値302とカウント値402が変化するタイミングも非同期である。そのため、減算値502がその変化点でレジスター510に取り込まれて、結果として速度検出信号602が示す速度値が不定値となる可能性がある。そこで、第3実施形態の速度センサーでは、クロック信号120とクロック信号220を同期させてから、カウント値302及びカウント値402が生成される。
【0094】
図12は第3実施形態の速度センサーの構成を示す図である。図12において、図8と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0095】
図12に示すように、第3実施形態の速度センサー1Cは、2つの同期化回路70(本発明における第1の同期化回路に相当する)及び同期化回路80(本発明における第2の同期化回路に相当する)を含む。同期化回路70は、クロック信号120をクロック信号90に同期化させたクロック信号72(本発明における第1の同期化周波数信号に相当する)を生成する。同様に、同期化回路80は、クロック信号220をクロック信号90に同期化させたクロック信号82(本発明における第2の同期化周波数信号に相当する)を生成する。ここで、クロック信号90は、クロック信号120の周波数及びクロック信号220の周波数のいずれよりも高い周波数のクロック信号である。
【0096】
同期化回路70及び同期化回路80は、例えば、2個以上のフリップフロップを直列に接続し、各フリップフロップのクロック端子にクロック信号90が入力される既知の同期化回路として構成することができる。
【0097】
そして、同期式カウンター300及び同期式カウンター400は、それぞれ、クロック信号72及びクロック信号82のクロック数(周期数)をカウントし、カウント値302とカウント値402の減算値502がクロック信号90に同期した所定のタイミングでレジスター510に取り込まれる。ここで、所定のタイミングは、減算値502の変化点でない任意のタイミングを選択することができる。例えば、クロック信号90、クロック信号72、クロック信号82のいずれかの立ち上がり又は立ち下がりのタイミングであってもよい。
【0098】
以上説明したように、第3実施形態の速度センサー1Cによれば、減算値502がその変化点以外でレジスター510に取り込まれるので、結果として速度検出信号602が示す速度値が不定値となることを防止することができる。
【0099】
なお、検出精度を高めるためには、クロック信号90の周波数は、クロック信号120の周波数及びクロック信号220の周波数に対して十分に高いことが望ましい。
【0100】
3.距離センサー
図13は、本実施形態の距離センサーの構成を示す図である。
【0101】
速度を積分すると積分開始時点からの距離を得ることができる。そこで、図13に示すように、本実施形態の距離センサー1Dでは、図8に示した第2実施形態の速度センサー1Bの出力に積分処理部610が追加されている。図13において、図8と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0102】
積分処理部610は、デジタル処理により、速度検出信号602の離散時間での積分計算を行い積分結果を距離検出信号612として出力する。積分結果(距離検出信号612)の最下位ビットの計算において必要に応じて丸め処理を行ってもよい。積分処理部610は、専用のデジタル回路として実現してもよいし、CPUが積分計算プログラムを実行することによりその機能を実現するようにしてもよい。
【0103】
なお、乗算処理部600と積分処理部610により構成される回路は図1における検出信号生成部60に対応し、距離検出信号612は図1における検出信号62に対応する。
【0104】
本実施形態の距離センサー1Dによれば、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差に基づいて移動距離を検出することができる。
【0105】
そして、本実施形態の距離センサー1Dは、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差をデジタル演算で求めるという比較的簡単な構成でありながら、より高い精度で移動距離を検出することができる。
【0106】
4.加速度センサー
図14は、本実施形態の加速度センサーの構成を示す図である。
【0107】
速度を微分すると加速度を得ることができる。そこで、図14に示すように、本実施形態の加速度センサー1Eでは、図8に示した第2実施形態の速度センサー1Bの出力に微分処理部620が追加されている。図14において、図8と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0108】
微分処理部620は、デジタル処理により、速度検出信号602の離散時間での微分計算を行い微分結果を加速度検出信号622として出力する。微分結果(加速度検出信号622)の最下位ビットの計算において必要に応じて丸め処理を行ってもよい。微分処理部620は、専用のデジタル回路として実現してもよいし、CPUが微分計算プログラムを実行することによりその機能を実現するようにしてもよい。
【0109】
なお、乗算処理部600と微分処理部620により構成される回路は図1における検出信号生成部60に対応し、加速度検出信号622は図1における検出信号62に対応する。
【0110】
本実施形態の加速度センサー1Eによれば、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差に基づいて加速度を検出することができる。
【0111】
そして、本実施形態の加速度センサー1Eは、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差をデジタル演算で求めるという比較的簡単な構成でありながら、より高い精度で加速度を検出することができる。
【0112】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0113】
例えば、図2に示した第1実施形態の速度センサー1Aにおいて、水晶発振器14と水晶発振器24を入れ替えた構成にしてもよい。
【0114】
また、例えば、第1実施形態〜第3実施形態の速度センサー1A〜1Cにおいて、同期式カウンター300及び同期式カウンター400をともにアップカウンターとして構成しているが、同期式カウンター300及び同期式カウンター400をともにダウンカウンターとして構成することもできる。また、同期式カウンター300と同期式カウンター400の一方をアップカウンター、他方をダウンカウンターとして構成し、減算処理部500を、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402を加算する処理を行う加算処理部に置き換えて構成してもよい。
【0115】
また、例えば、図6や図10では、時刻t以前の静止状態においてクロック信号120とクロック信号220が同位相になっており、かつ、カウント値302とカウント値402が同じ値になっている。しかし、起動時の温度等の要因によって、水晶発振器14の発振安定時間と水晶発振器24の発振安定時間が変化すると、クロック信号120とクロック信号220の位相差やカウント値302とカウント値402の差が図6や図10と異なる場合もある。そのため、静止状態における減算値512が0にならない場合もあるが、例えば、起動時に、水晶発振器14の発振と水晶発振器24の発振がともに安定した後の減算値512を基準値として記憶しておき、その後の減算値512から当該基準値を減算した値に基づいて速度値を計算するようにしてもよい。
【0116】
また、第3実施形態の速度センサー1Cの一例として、図12では、図8に示した第2実施形態の速度センサー1Bに同期化回路70と同期化回路80を追加した構成を示したが、例えば、図2に示した第1実施形態の速度センサー1Aに対して同様に同期化回路70と同期化回路80を追加した構成としてもよい。さらに、図13に示した距離センサー1Dや図14に示した加速度センサー1Eについても、同様に、同期化回路70と同期化回路80を追加した構成とすることもできる。
【0117】
また、例えば、図13に示した距離センサー1Dや図14に示した加速度センサー1Eにおいて、水晶発振器14と水晶発振器24の一方が加速度センサーでない構成にしてもよい。
【0118】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0119】
1 物理量センサー、1A〜1C 速度センサー、10 第1の周波数信号発生部、11 第1の共振器、12 第1の周波数信号、14 水晶発振器、20 第2の周波数信号発生部、21 第2の共振器、22 第2の周波数信号、24 水晶発振器、30 第1のカウント部、32 カウント値、40 第2のカウント部、42 カウント値、50 デジタル演算部、52 デジタル値、60 検出信号生成部、62 検出信号、70 同期化回路、72 クロック信号、80 同期化回路、82 クロック信号、90 クロック信号、100 水晶振動子、101 双音叉振動片、102〜103 基部、104〜105 振動腕、106 カンチレバー、107 固定端部、108 自由端部、109 連結部、110 発振回路、111〜112 キャパシター、113〜114 抵抗、115 インバーター、120 クロック信号、200 水晶振動子、201 双音叉振動片、202〜203 基部、204〜205 振動腕、206 カンチレバー、207 固定端部、208 自由端部、209 連結部、210 発振回路、211〜212 キャパシター、213〜214 抵抗、215 インバーター、220 クロック信号、300 同期式カウンター、302 カウント値、400 同期式カウンター、402 カウント値、500 減算処理部、502 減算値、510 レジスター、512 減算値、600 乗算処理部、602 速度検出信号、610 積分処理部、612 距離検出信号、620 微分処理部、622 加速度検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理量を検出する物理量センサーであって、
第1の共振器を有し、前記第1の共振器の共振周波数と対応づけられた周波数の第1の周波数信号を発生する第1の周波数信号発生部と、
加速度の変化に応じて共振周波数が変化する第2の共振器を有し、前記第2の共振器の共振周波数と対応づけられた周波数の第2の周波数信号を発生する第2の周波数信号発生部と、
前記第1の周波数信号の周期数をカウントする第1のカウント部と、
前記第2の周波数信号の周期数をカウントする第2のカウント部と、
前記第1のカウント部のカウント値と前記第2のカウント部のカウント値に基づいて、前記第1の周波数信号の周期数と前記第2の周波数信号の周期数の差を表すデジタル値を計算するデジタル演算部と、
前記デジタル演算部が計算した前記デジタル値に基づいて、前記物理量に応じたデジタル値の検出信号を生成する検出信号生成部と、を含み、
加速度が加わっていない状態における前記第1の周波数信号の周波数と前記第2の周波数信号の周波数が一致する、物理量センサー。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の共振器は、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する、物理量センサー。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の共振器及び前記第2の共振器は、加速度の検出方向が互いに逆方向になるように配置されている、物理量センサー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第1の周波数信号の周波数及び前記第2の周波数信号の周波数のいずれよりも高い周波数のクロック信号に基づいて、前記第1の周波数信号を前記クロック信号に同期化させた第1の同期化周波数信号を生成する第1の同期化回路と、
前記クロック信号に基づいて、前記第2の周波数信号を前記クロック信号に同期化させた第2の同期化周波数信号を生成する第2の同期化回路と、を含み、
前記第1のカウント部は、
前記第1の同期化周波数信号に基づいて、前記第1の周波数信号の周期数をカウントし、
前記第2のカウント部は、
前記第2の同期化周波数信号に基づいて、前記第2の周波数信号の周期数をカウントする、物理量センサー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記検出信号生成部は、
前記デジタル演算部が計算した前記デジタル値に所定の係数を乗算し、速度に応じたデジタル値の前記検出信号を生成する、物理量センサー。
【請求項6】
請求項5において、
前記検出信号生成部は、
前記速度信号を積分し、移動距離に応じたデジタル値の前記検出信号を生成する、物理量センサー。
【請求項7】
請求項5において、
前記検出信号生成部は、
前記速度信号を微分し、加速度に応じたデジタル値の前記検出信号を生成する、物理量センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−47809(P2011−47809A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196801(P2009−196801)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)