説明

物理量検出デバイス、物理量検出器、および電子機器

【課題】高い検出感度を有する物理量検出デバイスを提供する。
【解決手段】本発明に係る物理量検出デバイス100は、基部10と、基部10に継ぎ手部20を介して設けられており、物理量の変化に応じて変位する可動部30を備えている検出部35と、基部10から延出しており、可動部30と間隙を介して可動部30の周囲に設けられている枠部50と、を含み、基部10は、第1固定部80を備えている第1脚部12と、第2固定部82を備えている第2脚部16と、を含み、枠部50は、枠固定部84を備えており、平面視において、第1固定部80、第2固定部82、および枠固定部84に囲まれた範囲A内に、重心Gがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出デバイス、物理量検出器、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動子などの物理量検出素子を用いた物理量検出デバイス(例えば、加速度センサー)が知られている。このような物理量検出デバイスは、検出軸方向へ力が作用することによって物理量検出素子の共振周波数が変化したときに、当該共振周波数の変化から物理量検出デバイスに印加される力(加速度)を検出するように構成されている。
【0003】
特許文献1には、ベース・アッセンブリ、たわみ、および保証質量を有する支持構造体に、両頭クリスタル音叉変換器(物理量検出素子)の両端を固定させたセンサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平4−505509号公報
【特許文献2】米国特許第5331854号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、支持構造体をパッケージに固定した場合、支持構造体とパッケージとの線膨張係数の差によって支持構造体に応力が生じ、該応力が支持構造体を介して物理量検出素子に伝達することがある。これにより、物理量検出素子の共振周波数が変動してしまい、物理量検出デバイスの検出感度が低下することがある。
【0006】
このような応力の伝達を抑制する方法として、特許文献2に開示されているように、物理量検出素子を支持する支持構造体に、保証質量を挟む梁状の屈曲部(脚部)を設け、該支持部によって応力を緩和することが考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、2つの屈曲部で支持構造体を支持している。そのため、例えば、加速度の印加によって保証質量が変位した際に、屈曲部の根元に捻じれや撓みが生じてしまう場合がある。このような捻じれや撓みが生じると、加速度を検出する感度が低下する場合がある。
【0008】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い検出感度を有する物理量検出デバイスを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記物理量検出デバイスを有する物理量検出器および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係る物理量検出デバイスは、
基部と、
前記基部に継ぎ手部を介して設けられており、物理量の変化に応じて変位する可動部を備えている検出部と、
前記基部から延出しており、前記可動部と間隙を介して前記可動部の周囲に設けられている枠部と、
を含み、
前記基部は、
第1固定部を備えている第1脚部と、
第2固定部を備えている第2脚部と、を含み、
前記枠部は、枠固定部を備えており、
平面視において、前記第1固定部、前記第2固定部、および前記枠固定部に囲まれた範囲内に、重心がある。
【0011】
このような物理量検出デバイスによれば、物理量検出デバイスの重心は、平面視において、第1固定部、第2固定部、および枠固定部に囲まれた範囲内にある。これにより、例えば、枠固定部を備えておらず第1固定部および第2固定部のみによって外部部材に固定される場合に比べて、可動部が変位した際に、第1脚部および第2脚部に捻じれや撓みが生じることを抑制できる。その結果、このような物理量検出デバイスは、高い検出感度を有することができる。
【0012】
さらに、このような物理量検出デバイスによれば、基部は、第1脚部および第2脚部を含み、第1脚部が第1固定部を備え、第2脚部が第2固定部を備えている。そのため、例えば、物理量検出素子が固定されている基部の第1部分に固定部が設けられている場合に比べて、第1固定部および第2固定部がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して第1固定部および第2固定部に発生する応力が、検出部に伝達されることを抑制できる。したがって、このような物理量検出デバイスは、より高い検出感度を有することができる。
【0013】
[適用例2]
本発明に係る物理量検出デバイスにおいて、
前記枠部は、第3脚部を含み、
前記第3脚部は、前記枠固定部を備えていてもよい。
【0014】
このような物理量検出デバイスによれば、高い検出感度を有することができる。
【0015】
[適用例3]
本発明に係る物理量検出デバイスにおいて、
前記枠部は、複数の前記枠固定部を備えており、
前記枠部は、
少なくとも一つの前記枠固定部を備えている第4脚部と、
少なくとも一つの他の前記枠固定部を備えている第5脚部と、を含んでもよい。
【0016】
このような物理量検出デバイスによれば、高い検出感度を有することができる。
【0017】
[適用例4]
本発明に係る物理量検出デバイスにおいて、
前記枠部は、前記第4脚部から前記第5脚部まで延出する間が曲がっていてもよい。
【0018】
このような物理量検出デバイスによれば、第4固定部および第5固定部がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して第4固定部および第5固定部に発生する応力を、検出部に伝達される前に、緩和することができる。
【0019】
[適用例5]
本発明に係る物理量検出デバイスにおいて、
前記第1脚部は、該第1脚部の根元の部分から前記第1固定部まで延出する間が曲がっており、
前記第2脚部は、該第2脚部の根元の部分から前記第2固定部まで延出する間が曲がっていてもよい。
【0020】
このような物理量検出デバイスによれば、第1固定部および第2固定部がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して第1固定部および第2固定部に発生する応力を、検出部に伝達される前に緩和することができる。
【0021】
[適用例6]
本発明に係る物理量検出デバイスにおいて、
前記検出部は、前記基部と前記可動部とに掛け渡されている物理量検出素子を、さらに備えていてもよい。
【0022】
このような物理量検出デバイスによれば、高い検出感度を有することができる。
【0023】
[適用例7]
本発明に係る物理量検出器は、
本発明に係る物理量検出デバイスと、
前記物理量検出デバイスを収容しているパッケージと、
を含む。
【0024】
このような物理量検出機器は、本発明に係る物理量検出デバイスを含むので、高い検出感度を有することができる。
【0025】
[適用例8]
本発明に係る電子機器は、
本発明に係る物理量検出デバイスを含む。
【0026】
このような電子機器は、本発明に係る物理量検出デバイスを含むので、高い検出感度を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る物理量検出デバイスを模式的に示す斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る物理量検出デバイスを模式的に示す平面図。
【図3】第1の実施形態に係る物理量検出デバイスを模式的に示す断面図。
【図4】第1の実施形態に係る物理量検出デバイスの動作を説明するための断面図。
【図5】第1の実施形態に係る物理量検出デバイスの動作を説明するための断面図。
【図6】第1の実施形態の変形例に係る物理量検出デバイスを模式的に示す平面図。
【図7】第2の実施形態に係る物理量検出デバイスを模式的に示す斜視図。
【図8】第2の実施形態に係る物理量検出デバイスを模式的に示す平面図。
【図9】第2の実施形態の第1変形例に係る物理量検出デバイスを模式的に示す平面図。
【図10】第2の実施形態の第2変形例に係る物理量検出デバイスを模式的に示す平面図。
【図11】第3の実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す平面図。
【図12】第3の実施形態に係る物理量検出器を模式的に示す断面図。
【図13】第4の実施形態に係る電子機器を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0029】
1. 第1の実施形態
1.1. 物理量検出デバイス
まず、第1の実施形態に係る物理量検出デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図1は、第1の実施形態に係る物理量検出デバイス100を模式的に示す斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る物理量検出デバイス100を模式的に示す平面図である。図3は、第1の実施形態に係る物理量検出デバイス100を模式的に示す図2のIII−III線断面図である。なお、便宜上、図1〜図3および後述する図4〜図10では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、Z軸を図示している。
【0030】
物理量検出デバイス100は、図1〜図3に示すように、基部10と、継ぎ手部20と、可動部30および物理量検出素子40を備えている検出部35と、を含むことができる。さらに、物理量検出デバイス100は、例えば、質量部60,62,64,66を含むことができる。なお、図2では、質量部60,62を透視し、質量部64,66を省略して図示している。
【0031】
基部10は、第1部分11と、第2部分12(第1脚部12ともいえる)と、第3部分(第2脚部16ともいえる)と、を含む。
【0032】
第1部分11は、継ぎ手部20が接続され、さらに物理量検出素子40のベース部42aが固定されている部分である。第1部分11の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、長方形である。
【0033】
第1脚部12は、第1部分11から延出している。第1脚部12は、第1部分11を支持することができる。
【0034】
第1脚部12は、第1固定部80を備えている。第1固定部80は、第1脚部12の先端近傍に設けられている。第1脚部12は、第1固定部80において、パッケージや回路基板などの外部部材に固定されることができる。すなわち、第1固定部80は、第1脚部12を外部部材に固定するための部分である。第1固定部80は、平面視において、第1脚部12を外部部材に固定するために設けられる接合部材と重なる部分であってもよい。第1固定部80の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、円形である。
【0035】
第1脚部12は、例えば、第1部分11から−X方向に延出している延出部13aと、延出部13aから+Y方向に延出している延出部13bと、を備えている。延出部13bは、第1固定部80を備えることができる。
【0036】
図示の例では、第1脚部12は、延出部13aと延出部13bとが接続することにより形成された屈曲部14を備え、曲がった構造となっている。すなわち、第1脚部12は、第1部分11から第1固定部80まで延出する間が曲がっている。つまり、第1脚部12は、第1脚部12の根元の部分15から第1固定部80まで延出する間が曲がっている。なお、曲がった構造とは、折れ曲がった形、曲線的な形など、真っ直ぐではない形を意味する。
【0037】
第2脚部16は、第1部分11から延出している。第2脚部16は、第1部分11を支持することができる。
【0038】
第2脚部16は、第2固定部82を備えている。第2固定部82は、第2脚部16の先端近傍に設けられている。第2脚部16は、第2固定部82において、パッケージや回路基板などの外部部材に固定されることができる。すなわち、第2固定部82は、第2脚部16を外部部材に固定するための部分である。第2固定部82は、平面視において、第2脚部16を外部部材に固定するために設けられる接合部材と重なる部分であってもよい。第2固定部82の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、円形である。
【0039】
第2脚部16は、例えば、第1部分11から+X方向に延出している延出部17aと、延出部17aから+Y方向に延出している延出部17bと、を備えている。延出部17bは、第2固定部82を備えることができる。
【0040】
図示の例では、第2脚部16は、延出部17aと延出部17bとが接続することにより形成された屈曲部18を備え、曲がった構造となっている。すなわち、第2脚部16は、第1部分11から第2固定部82まで延出する間が曲がっている。つまり、第2脚部16は、第2脚部16の根元の部分19から第2固定部82まで延出する間が曲がっている。
【0041】
図示の例では、脚部12,16は、物理量検出デバイス100の重心Gを通るY軸と平行な軸である中心軸(図示せず)に関して、対称に設けられている。また、固定部80,82は、重心Gを通るY軸と平行な軸である中心軸(図示せず)に関して、対称に設けられている。
【0042】
継ぎ手部20は、基部10の第1部分11と可動部30との間に設けられ、第1部分11および可動部30に接続されている。継ぎ手部20の厚みは、基部10の厚み、および可動部30の厚みよりも小さい。例えば、水晶基板の両主面側からハーフエッチングによって溝部20a,20b(図3参照)を形成して、継ぎ手部20を形成することができる。図示の例では、溝部20a,20bは、X軸に沿って形成されている。継ぎ手部20は、可動部30が基部10に対して変位(回動)する際に、支点(中間ヒンジ)としてX軸に沿った回転軸となることができる。
【0043】
可動部30は、基部10の第1部分11に継ぎ手部20を介して接続されている。すなわち、可動部30は、基部10の第1部分11に継ぎ手部20を介して設けられている。図示の例では、可動部30は、基部10の第1部分11から継ぎ手部20を介して、Y軸に沿って(+Y方向に)延出している。可動部30の平面形状は、例えば、四角形である。可動部30は、板状であり、互いに反対を向く(対向する)主面30a,30bを備えている。可動部30は、主面30a(30b)と交差する方向(Z軸方向)に加わる物理量(加速度)の変化に応じて、継ぎ手部20を支点(回転軸)として主面30aと交差する方向(Z軸方向)に変位(回動)可能である。
【0044】
枠部50は、基部10から延出しており、可動部30と間隙を介して可動部30の周囲に設けられている。図示の例では、枠部50は、脚部12,16から延出している。
【0045】
より具体的には、枠部50は、第1脚部12から+Y方向に延出している延出部51aと、延出部51aから+X方向に延出している延出部51bと、延出部51bから−Y方向に延出し第2脚部16に接続されている延出部51cと、を備えている。基部10の第1部分11と延出部51bとの間に可動部30が配置され、かつ延出部51aと延出部51cとの間に可動部30が配置されている。
【0046】
枠部50は、曲がった構造として屈曲した屈曲部52a,52bを備えることができる。図示の例では、屈曲部52aは、延出部51aと延出部51bとが接続することにより形成されている。屈曲部52bは、延出部51bと延出部51cとが接続することにより形成されている。
【0047】
枠部50は、第3固定部(枠固定部)84を備えている。図示の例では、第3固定部84は、枠部50の延出部51bに設けられている。第3固定部84は、物理量検出デバイス100の重心Gを通るY軸と平行な軸である中心軸(図示せず)上に設けられていてもよい。
【0048】
枠部50は、第3固定部84において、パッケージや回路基板などの外部部材に固定されることができる。すなわち、第3固定部84は、枠部50を外部部材に固定するための部分である。第3固定部84は、平面視において、枠部50を外部部材に固定するために設けられる接合部材と重なる部分であってもよい。第3固定部84の平面形状は、特に限定されないが、図2に示す例では、円形である。
【0049】
なお、枠部50の形状は、基部10から延出し可動部30を囲んでいれば、特に限定されず、例えば、図示はしないが、枠部50は、基部10の第1部分11から延出していてもよい。
【0050】
物理量検出デバイス100の重心Gは、図2に示すように平面視において、固定部80,82,84に囲まれた範囲A内にある。より具体的には、重心Gは、平面視において、第1固定部80の中心と第2固定部82の中心を結ぶ直線、第2固定部82の中心と第3固定部84の中心を結ぶ直線、および第3固定部84の中心と第1固定部80の中心を結ぶ直線に囲まれた範囲A(領域A)内に位置している。図2に示す例では、領域Aの形状は、二等辺三角形であり、重心Gは、可動部30と(より具体的には、物理量検出素子40のベース部42bと)重なっている。重心Gは、平面視において、可動部30の中心を通るY軸に平行な軸(図示せず)上に設けられていてもよい。
【0051】
なお、物理量検出デバイス100の重心Gが範囲A内に位置していれば、脚部12,16の形状、および固定部80,82,84の位置は、特に限定されない。
【0052】
また、図示はしないが、第1脚部12は、複数の第1固定部80を備え、第2脚部16は、複数の第2固定部82を備えていてもよい。このような形態では、複数の第1固定部80、複数の第2固定部82、および第3固定部84に囲まれた範囲内に、物理量検出デバイス100の重心Gが位置するように、複数の固定部を配置することができる。このような形態では、例えば質量部60,62,64,66を備えたことで可動部30側を積極的に重く構成することが要求される物理量検出デバイス100に対して、外部部材との固定強度を高めることができ、例えば、耐衝撃性などの信頼性において有効である。
【0053】
基部10、継ぎ手部20、可動部30、および枠部50は、例えば、水晶の原石などから所定の角度で切り出された水晶基板を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によってパターニングすることにより、一体的に形成されている。なお、基部10、継ぎ手部20、可動部30、および枠部50の材質は、水晶に限定されるものではなく、ガラスやシリコンなどの半導体材料であってもよい。
【0054】
物理量検出素子40は、基部10と可動部30とに掛け渡されて設けられている。より具体的には、物理量検出素子40は、基部10の第1部分11と可動部30とに掛け渡されて設けられている。物理量検出素子40と可動部30とは、検出部35を構成することができる。検出部35は、例えば加速度が印加されることで、検出部35に発生する物理検出情報が変化する構成であれば、特に限定されない。
【0055】
例えば、物理量検出素子40は、振動梁部41a,41bと、ベース部42a,42bと、を少なくとも有することができる。例えば、可動部30が変位することで、振動梁部41a,41bに力が生じ、振動梁部41a,41bに発生する物理検出情報が変化する。
【0056】
図示の例では、例えば振動梁部41a,41bは、可動部30の延出方向に沿って(Y軸に沿って)、ベース部42aからベース部42bまで延出している。振動梁部41a,41bの形状は、例えば、角柱状である。振動梁部41a,41bは、振動梁部41a,41bに設けられた励振電極(図示せず)に駆動信号(交流の電圧)が印加されると、X軸に沿って、互いに離間または近接するように屈曲振動することができる。
【0057】
ベース部42a,42bは、振動梁部41a,41bの両端に接続されている。図示の例では、ベース部42aは、基部10の主面10a(より具体的には第1部分11の主面)に接合部材70を介して固定され、ベース部42bは、可動部30の主面30a(基部10の主面10aと同じ側の主面)に接合部材70を介して固定されている。接合部材70としては、例えば、低融点ガラス、共晶接合可能なAu/Sn合金被膜を用いる。
【0058】
なお、振動梁部41a,41bと、基部10および可動部30と、の間には、可動部30の変位時に、振動梁部41a,41bと、基部10および可動部30と、が接触しないように、所定の間隙が設けられている。この間隙は、例えば、接合部材70の厚みで管理されていてもよい。
【0059】
また、図示はしないが、可動部30の主面30aであって、平面視おいて接合部材70と振動梁部41a,41bとの間の位置に、可動部30をハーフエッチングすることにより形成された凹部が形成されていてもよい。例えば、接合部材70が所定の位置からはみ出した場合に、該凹部によって接合部材70を受け止めることができ、接合部材70が振動梁部41a,41bに付着することを抑制できる。
【0060】
物理量検出素子40は、上記のように、2本の振動梁部41a,41bと、一対のベース部42a,42bと、を有している。すなわち、物理量検出素子40は、双音叉素子(双音叉型振動素子)である。
【0061】
物理量検出素子40は、例えば、水晶の原石などから所定の角度で切り出された水晶基板を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によってパターニングすることにより形成される。これにより、振動梁部41a,41bおよびベース部42a,42bを、一体的に形成することができる。
【0062】
なお、物理量検出素子40の材質は、水晶に限定されるものではなく、タンタル酸リチウム(LiTaO)、四ホウ酸リチウム(Li)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電材料、または酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体を皮膜として備えたシリコンなどの半導体材料であってもよい。ただし、物理量検出素子40は、基部10および可動部30との線膨張係数との差を小さくすることを考慮すれば、基部10および可動部30の材質と同質にすることが望ましい。
【0063】
物理量検出素子40のベース部42a上には、例えば、引き出し電極44a,44bが設けられている。引き出し電極44a,44bは、振動梁部41a,41bに設けられた励振電極(図示せず)と電気的に接続されている。
【0064】
引き出し電極44a,44bは、例えばAu、Alなどの金属ワイヤー48によって、第1部分11の主面10aに設けられた接続端子46a,46bと電気的に接続されている。より具体的には、引き出し電極44aは、接続端子46aと電気的に接続され、引き出し電極44bは、接続端子46bと電気的に接続されている。接続端子46a,46bは、図示しない配線によって、外部接続端子49a,49bと電気的に接続されている。より具体的には、接続端子46aは、外部接続端子49aと電気的に接続され、接続端子46bは、接続端子49bと電気的に接続されている。外部接続端子49a,49bは、例えば、脚部12,16のパッケージなどに実装される側の面(主面10aと反対側の基部10の主面10b側の面)であって、平面視において、それぞれ固定部80,82と重なる位置に設けられている。
【0065】
励振電極、引き出し電極44a,44b、接続端子部46a,46b、および外部接続端子49a,49bとしては、例えば、Cr層を下地として、その上にAu層を積層した積層体を用いる。励振電極、引き出し電極44a,44b、接続端子部46a,46b、および外部接続端子49a,49bは、例えば、スパッタ法などによって導電層(図示せず)を成膜し、該導電層をパターニングすることによって形成される。
【0066】
質量部60,62,64,66は、例えば、接合部材72を介して、可動部30の主面30a,30bに設けられている。より具体的には、質量部60,62は、主面30aに設けられ、質量部64,66は、主面30bに設けられている。質量部60,62,64,66の材質としては、例えば、Cu、Auなどの金属が挙げられる。なお、便宜上、図2では、接合部材72を透視して図示している。
【0067】
平面視において、例えば、質量部60,62,64,66の形状は、長方形であり、質量部60,62,64,66と固定部80,82,84とは、重なっていない。質量部60,62,64,66によって、物理量検出デバイス100に加わる加速度の検出感度を向上させることができる。
【0068】
接合部材72としては、例えば、シリコーン樹脂系の熱硬化型接着剤を用いる。接合部材72は、熱応力抑制の観点から、可動部30および質量部60,62,64,66の一部の範囲を接着するように塗布されることが好ましい。
【0069】
なお、図示はしないが、質量部60,62は一体的に形成されることにより、1つの質量部を構成していてもよい。同様に、質量部64,66は一体的に形成されることにより、1つの質量部を構成していてもよい。また、主面30a,30bのうち、いずれか一方の主面にのみ、質量部が設けられていてもよい。
【0070】
次に、物理量検出デバイス100の動作について説明する。図4および図5は、物理量検出デバイス100の動作を説明するための断面図である。
【0071】
図4に示すように、物理量検出デバイス100に、矢印α1方向の(+Z方向の)加速度が印加されると、可動部30には−Z方向に力が作用し、可動部30は継ぎ手部20を支点として−Z方向に変位する。これにより、物理量検出素子40には、Y軸に沿って基部42aと基部42bとが互いに離れる方向の力が加わり、振動梁部41a,41bには引っ張り応力が生じる。そのため、振動梁部41a,41bの振動周波数(共振周波数)は、高くなる。
【0072】
一方、図5に示すように、物理量検出デバイス100に、矢印α2方向の(−Z方向の)加速度が印加されると、可動部30には+Z方向に力が作用し、可動部30は、継ぎ手部20を支点として+Z方向に変位する。これにより、物理量検出素子40には、Y軸に沿って基部42aと基部42bとが互いに近づく方向の力が加わり、振動梁部41a,41bには圧縮応力が生じる。そのため、振動梁部41a,41bの共振周波数は、低くなる。
【0073】
物理量検出デバイス100では、上記のような物理量検出素子40の共振周波数の変化を検出している。より具体的には、物理量検出デバイス100に加わる加速度は、上記の検出された共振周波数の変化の割合に応じて、ルックアップテーブルなどによって定められた数値に変換することで導出される。
【0074】
なお、物理量検出デバイス100を傾斜計に用いた場合には、傾斜の姿勢の変化に応じて、傾斜計に対する重力加速度が加わる方向が変化し、振動梁部41a,41bに引っ張り応力や圧縮応力が生じる。そして、振動梁部41a,41bの共振周波数が変化する。
【0075】
また、上記の例では、物理量検出素子40として、いわゆる双音叉素子を用いた例について説明したが、可動部30の変位に応じて共振周波数が変化すれば、物理量検出素子40の形態は、特に限定されない。
【0076】
物理量検出デバイス100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0077】
物理量検出デバイス100によれば、物理量検出デバイス100の重心Gは、平面視において、第1固定部80、第2固定部82、および第3固定部84に囲まれた範囲A内にある。これにより、例えば、第3固定部を備えておらず第1固定部および第2固定部のみによって外部部材に固定される場合に比べて、物理量検出デバイス100は、可動部30が変位した際に、脚部12,16に捻じれや撓みが生じることを抑制できる。その結果、物理量検出デバイス100は、高い検出感度を有することができる。また、例えば、脚部12,16が捻じれることを抑制できるため、捻じれによって脚部に破損が生じることを抑制でき、物理量検出デバイス100は、高い信頼性を有することができる。また、物理量検出デバイス100は、例えば、いずれかの方向に傾くことなく安定した姿勢で、パッケージなどの外部部材に固定されることができる。
【0078】
さらに、物理量検出デバイス100では、基部10は、第1脚部12および第2脚部16を含み、第1脚部12が第1固定部80を備え、第2脚部16が第2固定部82を備えている。そのため、例えば、物理量検出素子が固定されている基部の第1部分に固定部が設けられている場合に比べて、固定部80,82がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して固定部80,82に発生する応力(固定部80,82とパッケージとの線膨張係数の差による応力や、固定部80,82とパッケージとを接着させる接着剤による応力)が、検出部35(より具体的には物理量検出素子40)に伝達されることを抑制できる。したがって、物理量検出デバイス100は、より高い検出感度を有することができる。
【0079】
物理量検出デバイス100によれば、第1脚部12は、屈曲部14を備えており、第1脚部12の根元の部分15から第1固定部80まで延出する間が曲がっている。また、第2脚部16は、屈曲部18を備えており、第2脚部16の根元の部分19から第2固定部82まで延出する間が曲がっている。そのため、物理量検出デバイス100では、固定部80,82がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して固定部80,82に発生する応力を、検出部35(より具体的には物理量検出素子40)に伝達される前に緩和することができる。
【0080】
物理量検出デバイス100によれば、枠部50の延出部51bは、第3固定部84を備えており、枠部50は、基部10から第3固定部84まで延出する間に、屈曲部52aまたは屈曲部52bを備えている。そのため、物理量検出デバイス100では、第3固定部84がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して第3固定部84に発生する応力を、物理量検出素子40に伝達される前に緩和することができる。
【0081】
なお、図示はしないが、物理量検出デバイス100の重心Gは、範囲A内であって、重心Gから固定部80,82,84各々までの距離が等しくなる位置に設けられていてもよい。これにより、例えばより確実に、可動部30が変位した際に、脚部12,16に捻じれや撓みが生じることを抑制できる。
【0082】
1.2. 変形例
次に、第1の実施形態の変形例に係る物理量検出デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図6は、第1の実施形態の変形例に係る物理量検出デバイス110を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図6では、質量部60,62および接合部材72を透視し、質量部64,66を省略して図示している。
【0083】
以下、物理量検出デバイス110において、上述した物理量検出デバイス100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
物理量検出デバイス100では、図2に示すように、枠部50の延出部51bは、第3固定部84を備えていた。これに対し、物理量検出デバイス110では、図6に示すように、枠部50は、延出部51bから延出している第3脚部53を含み、第3脚部53が第3固定部84を備えている。
【0085】
図示の例では、第3脚部53は、枠部50の延出部51bから+Y方向に延出している。枠部50は、延出部51bと第3脚部53とが接続することにより形成された屈曲部54を備え、曲がった構造となっている。第3脚部53の平面形状は、例えば、図示の例では、長方形である。
【0086】
なお、物理量検出デバイス110の重心Gが範囲A内に位置していれば、第3脚部53の形状および第3固定部84の位置は、特に限定されない。例えば、第3脚部53は、延出部51aまたは延出部51cから延出していてもよい。
【0087】
物理量検出デバイス200によれば、物理量検出デバイス100と同様に、可動部30が変位した際に、脚部12,16に捻じれや撓みが生じることを抑制できる。
【0088】
物理量検出デバイス200によれば、枠部50は、屈曲部54を備えている。そのため、物理量検出デバイス200では、物理量検出デバイス100に比べて、第3固定部84がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して第3固定部84に発生する応力を、物理量検出素子40に伝達される前に、より緩和することができる。
【0089】
2. 第2の実施形態
2.1. 物理量検出デバイス
次に、第2の実施形態に係る物理量検出デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図7は、第2の実施形態に係る物理量検出デバイス200を模式的に示す斜視図である。図8は、第2の実施形態に係る物理量検出デバイス200を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図8では、質量部60,62および接合部材72を透視し、質量部64,66を省略して図示している。
【0090】
以下、物理量検出デバイス200において、上述した物理量検出デバイス100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0091】
物理量検出デバイス100では、図2に示すように、枠部50の延出部51bは、第3固定部84を備えていた。これに対し、物理量検出デバイス300では、図8および図9に示すように、枠部50は、第4脚部90および第5脚部94を含み、第4脚部90は第4固定部(枠固定部)86を備え、第5脚部(枠固定部)94は第5固定部88を備えている。
【0092】
第4脚部90は、例えば、枠部50の屈曲部52aから−X方向に延出している延出部91aと、延出部91aから−Y方向に延出している延出部91bと、を備えている。延出部91bは、第4固定部86を備えることができる。第4固定部86は、第4脚部90の先端近傍に設けられている。
【0093】
図示の例では、第4脚部90は、延出部91aと延出部91bとが接続することにより形成された屈曲部92を備え、曲がった構造となっている。すなわち、第4脚部90は、屈曲部52aから第4固定部86まで延出する間が曲がっている。つまり、第4脚部90は、第4脚部90の根元の部分93から第4固定部86まで延出する間が曲がっている。
【0094】
第4固定部86は、第4脚部90の先端近傍に設けられている。第4脚部90は、第4固定部86において、パッケージや回路基板などの外部部材に固定されることができる。すなわち、第4固定部86は、第4脚部90を外部部材に固定するための部分である。第4固定部86は、平面視において、第4脚部90を外部部材に固定するために設けられる接合部材と重なる部分であってもよい。第4固定部86の平面形状は、特に限定されないが、図8に示す例では、円形である。
【0095】
第5脚部94は、例えば、枠部50の屈曲部52bから+X方向に延出している延出部95aと、延出部95aから−Y方向に延出している延出部95bと、を備えている。延出部95bは、第5固定部88を備えることができる。第5固定部88は、第5脚部94の先端近傍に設けられている。
【0096】
図示の例では、第5脚部94は、延出部95aと延出部95bとが接続することにより形成された屈曲部96を備え、曲がった構造となっている。すなわち、第5脚部94は、屈曲部52bから第5固定部88まで延出する間が曲がっている。つまり、第5脚部94は、第5脚部94の根元の部分97から第5固定部88まで延出する間が曲がっている。
【0097】
第5固定部88は、第5脚部94の先端近傍に設けられている。第5脚部94は、第5固定部88において、パッケージや回路基板などの外部部材に固定されることができる。すなわち、第5固定部88は、第5脚部94を外部部材に固定するための部分である。第5固定部88は、平面視において、第5脚部94を外部部材に固定するために設けられる接合部材と重なる部分であってもよい。第5固定部88の平面形状は、特に限定されないが、図8に示す例では、円形である。
【0098】
図示の例では、脚部90,94は、物理量検出デバイス200の重心Gを通るY軸と平行な軸である中心軸(図示せず)に関して、対称に設けられている。また、固定部86,88は、重心Gを通るY軸と平行な軸である中心軸(図示せず)に関して、対称に設けられている。
【0099】
物理量検出デバイス200の重心Gは、図8に示すように平面視において、固定部80,82,86,88に囲まれた範囲A内にある。より具体的には、重心Gは、平面視において、第1固定部80の中心と第2固定部82の中心を結ぶ直線、第2固定部82の中心と第5固定部88の中心を結ぶ直線、第5固定部88の中心と第4固定部86の中心を結ぶ直線、および第4固定部86の中心と第1固定部80の中心を結ぶ直線に囲まれた範囲A(領域A)内に位置している。図8に示す例では、領域Aの形状は、長方形であり、重心Gは、可動部30と(より具体的には、物理量検出素子40のベース部42bと)重なっている。
【0100】
なお、物理量検出デバイス200の重心Gが範囲A内に位置していれば、脚部90,94の形状、および固定部86,88の位置は、特に限定されない。例えば、第4脚部90は、延出部51aまたは延出部51bから延出していてもよいし、第5脚部94は、延出部51bまたは延出部51cから延出していてもよい。
【0101】
また、図示はしないが、枠部50は、複数の枠固定部を備えていてもよい。このような形態では、第1固定部80、第2固定部82、および複数の枠固定部に囲まれた範囲内に、物理量検出デバイス200の重心Gが位置するように、複数の固定部を配置することができる。また、枠部50の延出部(例えば延出部51b)が枠固定部を備えていてもよい。
【0102】
物理量検出デバイス200は、例えば、以下の特徴を有する。
【0103】
物理量検出デバイス200によれば、物理量検出デバイス200の重心Gは、平面視において、第1固定部80、第2固定部82、第4固定部86、および第5固定部88に囲まれた範囲A内にある。これにより、例えば、第4固定部および第5固定部を備えておらず第1固定部および第2固定部のみによって外部部材に固定される場合に比べて、物理量検出デバイス200は、可動部30が変位した際に、脚部12,16に捻じれや撓みが生じることを抑制できる。その結果、物理量検出デバイス200は、高い検出感度を有することができる。特に、物理量検出デバイス200では、物理量検出デバイス100に比べて固定部の数が多いので、より確実に、脚部12,16に捻じれが生じることを抑制できる。また、例えば、第1固定部および第2固定部を備えておらず第4固定部および第5固定部のみによって外部部材に固定される場合に比べて、物理量検出デバイス200は、可動部30が変位した際に、脚部90,94に捻じれや撓みが生じることを抑制できる。
【0104】
物理量検出デバイス200によれば、第4脚部90は、屈曲部92を備えており、第4脚部90の根元の部分93から第4固定部86まで延出する間が曲がっている。また、第5脚部94は、屈曲部96を備えており、第5脚部94の根元の部分97から第5固定部88まで延出する間が曲がっている。そのため、物理量検出デバイス200では、固定部86,88がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して固定部86,88に発生する応力を、検出部35(より具体的には物理量検出素子40)に伝達される前に緩和することができる。
【0105】
なお、図示はしないが、物理量検出デバイス200の重心Gは、範囲A内であって、重心Gから固定部80,82,86,88各々までの距離が等しくなる位置に設けられていてもよい。これにより、例えばより確実に、可動部30が変位した際に、脚部12,16に捻じれや撓みが生じることを抑制できる。
【0106】
また、図示の例では、第4固定部86と第5固定部88との間が枠部50によって連結しているが、第4固定部86と第5固定部88との間が枠部50によって連結されていない構成であってもよい。すなわち第4支持部90と連結している枠部と、第5支持部94と連結している枠部とが、分離している構成であってもよい。
【0107】
ただし、図8に示すように、第4支持部90と第5支持部94との間が枠部50によって連結された構成であれば、第4固定部86と第5固定部88とを外部部材に固定する際に、第4固定部86と第5固定部88との間の位置関係にズレが生じ難いので、物理量検出デバイス200に組み立て精度に起因した応力が発生し難いという効果が得られやすい。
【0108】
2.2. 変形例
2.2.1. 第1変形例
次に、第2の実施形態の第1変形例に係る物理量検出デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図9は、第2の実施形態の第1変形例に係る物理量検出デバイス210を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図9では、質量部60,62および接合部材72を透視し、質量部64,66を省略して図示している。
【0109】
以下、物理量検出デバイス210において、上述した物理量検出デバイス200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0110】
物理量検出デバイス200では、図8に示すように、枠部50の延出部51bは、X軸に沿って直線状に延出していた。これに対し、物理量検出デバイス210では、図9に示すように、枠部50の延出部51bは、第4脚部90から(根元の部分93から)第5脚部94まで(根元の部分97まで)延出する間が曲がっている。
【0111】
図示の例では、枠部50の延出部51bは、往復構造部55を備えている。往復構造部55は、例えば、Y軸に沿って往復しながら、X軸に沿って延出されている。往復構造部55は、X軸に沿って延出している第1部分56aと、Y軸に沿って延出している第2部分56bと、第1部分56aと第2部分56bとが接続することによって形成された屈曲部57と、を有することができる。第1部分56aおよび第2部分56bは、複数設けられ、そのため屈曲部57も複数設けられている。図示の例では、第1部分56aは4つ設けられ、第2部分56bは3つ設けられ、屈曲部57は6つ設けられている。
【0112】
物理量検出デバイス210によれば、枠部50の延出部51bは、第4脚部90から第5脚部94まで延出する間が曲がっている。そのため、固定部86,88がパッケージなどの外部部材に固定されることに起因して固定部86,88に発生する応力を、物理量検出素子40に伝達される前に、緩和することができる。例えば往復構造部54は、弾性を有することができ、これにより、いっそう固定部86,88に発生する応力を、物理量検出素子40に伝達される前に緩和することができる。
【0113】
2.2.2. 第2変形例
次に、第2の実施形態の第2変形例に係る物理量検出デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図10は、第2の実施形態の第2変形例に係る物理量検出デバイス220を模式的に示す平面図である。
【0114】
以下、物理量検出デバイス220において、上述した物理量検出デバイス200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0115】
物理量検出デバイス200では、図8に示すように、枠部50は、基部10の脚部12,16から延出していた。また、物理量検出デバイス200では、枠部50の脚部90,94は、それぞれ枠部50の屈曲部52a,52bから延出していた。
【0116】
これに対し、物理量検出デバイス220では、図10に示すように、枠部50は、基部10の第1部分11から延出している。また、物理量検出デバイス220では、脚部90,94は、枠部50の延出部51bから延出している。
【0117】
図示の例では、基部10の第1部分11は、枠部50の延出部51a,51cの幅よりも広い幅を有する幅広部211を備え、脚部12,16は、幅広部211から延出している。また、枠部50の延出部51bは、枠部50の延出部51a,51cの幅よりも広い幅を有する幅広部251を備え、脚部90,94は、幅広部251から延出している。
【0118】
なお、延出部51a,51cの幅とは、延出部51a,51cのX軸方向の大きさであり、第1部分11の幅および延出部51bの幅とは、Y軸方向の大きさである。すなわち、幅広部211,251のY軸方向の大きさは、延出部51a,51cのX軸方向の大きさよりも大きい。
【0119】
また、物理量検出デバイス200では、図8に示すように、可動部30の主面30aに質量部60,62が固定されていた。これに対し、物理量検出デバイス220では、図10に示すように、可動部30の主面30aには質量部60が固定されており、質量部62は設けられていない。
【0120】
なお、図10では、便宜上、質量部60および接合部材72を透視して図示している。また、図10では図示しないが、物理量検出デバイス220では、例えば、可動部30の主面30b(主面30aと反対側の主面)に、質量部64(図7参照)が固定されており、質量部66(図7参照)は設けられていない。
【0121】
物理量検出デバイス220によれば、物理量検出デバイス200と同様に、可動部30が変位した際に、脚部12,16に捻じれや撓みが生じることを抑制できる。
【0122】
3. 第3の実施形態
次に、第3の実施形態に係る物理量検出器について、図面を参照しながら説明する。図11は、第3の実施形態に係る物理量検出器300を模式的に示す平面図である。図12は、第3の実施形態に係る物理量検出器300を模式的に示す図11のXII−XII線断面図である。なお、便宜上、図11では、質量部60,62および接合部材72を透視し、質量部64,66を省略して図示している。
【0123】
物理量検出器300は、図11および図12に示すように、本発明に係る物理量検出デバイスと、パッケージ310と、を含む。以下では、本発明に係る物理量検出デバイスとして、物理量検出デバイス100を用いた例について説明する。
【0124】
パッケージ310は、物理量検出デバイス100を収容している。パッケージ310は、パッケージベース320と、リッド330と、を備えることができる。なお、図11では、便宜上、リッド330の図示を省略している。
【0125】
パッケージベース320には、凹部321が形成され、凹部321内に物理量検出デバイス100が配置されている。パッケージベース320の平面形状は、凹部321内に物理量検出デバイス100を配置することができれば、特に限定されない。パッケージベース320としては、例えば、セラミックグリーンシートを成形して積層し焼成した酸化アルミニウム質焼結体、水晶、ガラス、シリコンなどの材料を用いる。
【0126】
パッケージベース320は、パッケージベース320の内底面(凹部の内側の底面)322から、リッド330側に突出した段差部323を備えることができる。段差部323は、固定部80,82,84と重なる位置に設けられ、図示の例では、段差部323は、3つ設けられている。例えば、平面視において第1固定部80と重なる段差部323には、内部端子340が設けられている。また、平面視において第2固定部82と重なる段差部323には、内部端子342が設けられている。
【0127】
なお、図示はしないが、例えば4つの固定部を備えた物理量検出デバイス(例えば物理量検出デバイス200)をパッケージ310内に収容する場合は、段差部323は、4つ設けられることができる。
【0128】
また、図示はしないが、複数の段差部323は、平面視において、質量部60,62,64,66および可動部30と重ならないように、連続して設けられていてもよい。
【0129】
内部端子340,342は、物理量検出デバイス100の固定部80,82に設けられた外部接続端子49a,49bと対向する位置(平面視において重なる位置)に設けられている。例えば、外部接続端子49aは、内部端子340と電気的に接続され、外部接続端子49bは、内部端子342と電気的に接続されている。
【0130】
パッケージベース320の外底面(内底面322と反対側の面)324には、電子機器などの外部部材に実装される際に用いられる外部端子344,346が設けられている。外部端子344,346は、図示しない内部配線を介して内部端子340,342と電気的に接続されている。例えば、外部端子344は、内部端子340と電気的に接続され、外部端子346は、内部端子342と電気的に接続されている。
【0131】
内部端子340,342および外部端子344,346は、Wなどのメタライス層に、Ni、Auなどの皮膜をめっきなどの方法により積層した金属膜からなる。
【0132】
パッケージベース320には、凹部321の底部にパッケージ310の内部(キャビティー)を封止する封止部350が設けられている。封止部350は、パッケージベース320に形成された貫通孔325内に配置されている。貫通孔325は、外底面324から内底面322まで貫通している。図示の例では、貫通孔325は、外底面324側の孔径が内底面322側の孔径より大きい段付きの形状を有している。封止部350は、貫通孔325に、例えば、Au/Ge合金、はんだなどからなる封止材を配置し、加熱溶融後、固化させることで形成される。封止部350は、パッケージ310の内部を気密に封止する構成である。
【0133】
固定部80,82,84は、接合部材74を介して、パッケージベース320の段差部323に固定されている。これにより、物理量検出デバイス100は、パッケージベース320に実装され、パッケージ310内に収容される。
【0134】
固定部80,82が段差部323に固定されることにより、固定部80,82に設けられた外部接続端子49a,49bと、段差部323に設けられた内部端子340,342とは、接合部材74を介して、電気的に接続される。接合部材74としては、例えば、金属フィラーなどの導電性物質が混合されたシリコーン樹脂系の導電性接着剤を用いる。
【0135】
リッド330は、パッケージベース320の凹部321を覆って設けられている。リッド330の形状は、例えば、板状である。リッド330としては、例えば、パッケージベース320と同じ材料や、コバール、42アロイ、ステンレス鋼などの金属を用いる。リッド330は、例えば、シームリング、低融点ガラス、接着剤などの接合部材332を介して、パッケージベース310に接合されている。
【0136】
リッド330をパッケージベース310接合した後、パッケージ310の内部が減圧された状態(真空度の高い状態)で、貫通孔325内に封止材を配置し、加熱溶融後、固化させて封止部350を形成することにより、パッケージ310内を気密に封止することができる。パッケージ310の内部は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填されていてもよい。
【0137】
物理量検出器300において、外部端子344,346、内部端子340,342、外部接続端子49a,49b、接続端子46a,46bなどを経由して、物理量検出素子40の励振電極に駆動信号がされると、物理量検出素子40の振動梁部41a,41bは、所定の周波数で振動(共振)する。そして、物理量検出器300は、印加される加速度に応じて変化する物理量検出素子40の共振周波数を出力信号として、出力することができる。
【0138】
物理量検出器300によれば、上記のように高い検出感度を有する物理量検出デバイス100を含む。そのため、物理量検出器300は、高い検出感度を有することができる。
【0139】
なお、図示はしないが、物理量検出デバイス100が配置される凹部は、パッケージベース320およびリッド330の両方に形成されていてもよいし、リッド330にのみ形成されていてもよい。
【0140】
4. 第4の実施形態
次に、第4の実施形態に係る電子機器について説明する。以下では、第4の実施形態に係る電子機器として、本発明に係る物理検出デバイス(以下の例では物理検出デバイス100)を含む傾斜計について、図面を参照しながら説明する。図13は、第4の実施形態に係る傾斜計400を模式的に示す斜視図である。
【0141】
傾斜計400は、図13に示すように、物理量検出デバイス100を、傾斜センサーとして含んでいる。
【0142】
傾斜計400は、例えば、山の斜面、道路の法面、盛土の擁壁面などの被計測場所に設置される。傾斜計400は、外部からケーブル410を介して電源が供給され、または電源を内蔵し、図示しない駆動回路によって物理量検出デバイス100に駆動信号が送られている。
【0143】
そして、傾斜計400は、図示しない検出回路によって、物理量検出デバイス100に加わる重力加速度に応じて変化する共振周波数から、傾斜計400の姿勢の変化(傾斜計400に対する重力加速度が加わる方向の変化)を検出し、それを角度に換算して、例えば、無線などで基地局にデータ転送する。これにより、傾斜計400は、異常の早期発見に貢献することができる。
【0144】
傾斜計400によれば、上記のように検出感度の高い物理量検出デバイス100を含む。そのため、傾斜計400は、高い検出感度を有することができる。
【0145】
本発明に係る物理量検出デバイスは、上記の傾斜計に限らず、地震計、ナビゲーション装置、姿勢制御装置、ゲームコントローラー、携帯電話などの加速度センサー、傾斜センサーなどとして好適に用いることができ、いずれの場合にも上記実施形態および変形例で説明した効果を奏する電子機器を提供することができる。
【0146】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0147】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0148】
10 基部、10a,10b 主面、11 第1部分、12 第1脚部、
13a,13b 延出部、14 屈曲部、15 根元の部分、16 第2脚部、
17a,17b 延出部、18 屈曲部、19 根元の部分、20 継ぎ手部、
20a,20b 溝部、30 可動部、30a,30b 主面、35 検出部、
40 物理量検出素子、41a,41b 振動梁部、42a,42b ベース部、
44a,44b 引き出し電極、46a,46b 接続端子、48 ワイヤー、
49a,49b 外部接続端子、50 枠部、51a,51b,51c 延出部、
52a,52b 屈曲部、53 第3脚部、54 屈曲部、55 往復構造、
56a 第1部分、56b 第2部分、57 屈曲部、60〜66 質量部、
70〜74 接合部材、80 第1固定部、82 第2固定部、84 第3固定部、
86 第4固定部、88 第5固定部、100,110 物理量検出デバイス、
200,210 物理量検出デバイス、211 幅広部、220 物理量検出デバイス、
251 幅広部、300 物理量検出器、310 パッケージ、
320 パッケージベース、321 凹部、322 内底面、323 段差部、
324 外底面、325 貫通孔、330 リッド、332 接合部材、
340,342 内部端子、344,346 外部端子、350 封止部、
400 傾斜計、410 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部に継ぎ手部を介して設けられており、物理量の変化に応じて変位する可動部を備えている検出部と、
前記基部から延出しており、前記可動部と間隙を介して前記可動部の周囲に設けられている枠部と、
を含み、
前記基部は、
第1固定部を備えている第1脚部と、
第2固定部を備えている第2脚部と、を含み、
前記枠部は、枠固定部を備えており、
平面視において、前記第1固定部、前記第2固定部、および前記枠固定部に囲まれた範囲内に、重心がある、物理量検出デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記枠部は、第3脚部を含み、
前記第3脚部は、前記枠固定部を備えている、物理量検出デバイス。
【請求項3】
請求項1において、
前記枠部は、複数の前記枠固定部を備えており、
前記枠部は、
少なくとも一つの前記枠固定部を備えている第4脚部と、
少なくとも一つの他の前記枠固定部を備えている第5脚部と、を含む、物理量検出デバイス。
【請求項4】
請求項3において、
前記枠部は、前記第4脚部から前記第5脚部まで延出する間が曲がっている、物理量検出デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記第1脚部は、該第1脚部の根元の部分から前記第1固定部まで延出する間が曲がっており、
前記第2脚部は、該第2脚部の根元の部分から前記第2固定部まで延出する間が曲がっている、物理量検出デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記検出部は、前記基部と前記可動部とに掛け渡されている物理量検出素子を、さらに備えている、物理量検出デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の物理量検出デバイスと、
前記物理量検出デバイスを収容しているパッケージと、
を含む、物理量検出器。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の物理量検出デバイスを含む、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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