説明

物理量検出装置

【課題】ICパッケージの回路面に電荷が帯電するのを防止可能な物理量検出装置を提供する。
【解決手段】ICパッケージ20は、弁軸12の回転角の変化に応じた信号を出力する磁気検出素子21、当該磁気検出素子21を覆う封止体22、および、磁気検出素子21に電気的に接続するとともに封止体22から突出するよう設けられる端子31、32、33を有している。カバー部材40は、磁気検出素子21が前記信号を出力可能なようICパッケージ20を収容している。ターミナル部材70は、導電性を有する材料により形成されている。ターミナル部材70は、ICパッケージ20のグランド用の端子32に電気的に接続するとともに封止体22に当接するようカバー部材40に設けられている。ターミナル部材70は、磁気検出素子21に電力を供給する電源の負極側に電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の物理量を検出する物理量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象の物理量を検出する物理量検出装置が知られている。例えば特許文献1に記載された回転角検出装置は、検出対象としてのスロットル弁の弁軸の回転角を検出する。この回転角検出装置では、磁気検出素子を含むICパッケージを弁軸の端部近傍に配置し、弁軸の端部に取り付けた磁石が回転することにより変化する磁界を磁気検出素子で検出することによって弁軸の回転角を検出している。
【0003】
特許文献1には、ICパッケージを金属製のステータで保持した構成が開示されている。この回転角検出装置では、ステータ、金属ターミナル、および、金属製の中間軸を互いに電気的に接続するよう構成することで、ICパッケージに帯電する静電気の電荷を、ステータ、金属ターミナルおよび中間軸を経由してスロットルボディへ積極的に逃がしている。これにより、ICパッケージの回路面に電荷が帯電するのを抑制し、ICパッケージの動作不良の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、金属製のステータを用いることなくICパッケージのみで検出対象の回転角を検出する回転角検出装置が開発されてきている。このようなステータを備えない回転角検出装置では、ICパッケージに帯電する電荷をステータを経由して逃がすことができない。そのため、ICパッケージの回路面に電荷が帯電し、ICパッケージの動作不良を招くおそれがある。なお、ICパッケージを樹脂製の保持部材で保持するような構成の場合、導電性を有さない保持部材に電荷は流れないため、ICパッケージに帯電する電荷を保持部材を経由して逃がすことはできない。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ICパッケージの回路面に電荷が帯電するのを防止可能な物理量検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ICパッケージとカバー部材とターミナル部材とを備えている。ICパッケージは、検出対象の物理量の変化に応じた信号を出力する信号出力素子、当該信号出力素子を覆う封止体、および、信号出力素子に電気的に接続するとともに封止体から突出するよう設けられる複数の端子を有している。カバー部材は、信号出力素子が前記信号を出力可能なようICパッケージを収容している。ターミナル部材は、導電性を有する材料により形成されている。ターミナル部材は、ICパッケージの複数の端子のうちグランド用の端子に電気的に接続するとともに封止体に当接するようカバー部材に設けられている。ターミナル部材は、信号出力素子に電力を供給する電源の負極側に電気的に接続される。
【0008】
本発明では、電源の負極側に電気的に接続されるターミナル部材は、ICパッケージの封止体に当接するよう設けられている。これにより、ICパッケージに帯電する静電気の電荷をターミナル部材を経由して電源の負極側、すなわちグランドへ逃がすことができる。したがって、ICパッケージの回路面に電荷が帯電するのを防止することができる。よって、ICパッケージの動作不良を防止することができる。
なお、本発明では、ICパッケージに帯電する電荷がターミナル部材を経由してグランドへ流れるとき、ICパッケージの複数の端子のうちグランド用の端子は、前記電荷の流れる経路の一部を構成する。
【0009】
請求項2に記載の発明では、信号出力素子は、検出対象の物理量の変化に伴う磁界の変化に応じた信号を出力する磁気検出素子である。また、ターミナル部材は、導電性を有する非磁性の材料により形成されている。本発明では、ターミナル部材を非磁性の材料で形成することにより、信号出力素子すなわち磁気検出素子が出力する信号に与える影響を低減または無くすことができる。したがって、検出対象の物理量の検出精度を向上することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、ターミナル部材は、ICパッケージを保持可能な形状に形成されている。そのため、ICパッケージを保持するための保持部材を別途設ける必要がない。したがって、部材点数および部材コストを低減することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、検出対象の物理量は、検出対象とICパッケージとの相対回転角度、または、検出対象とICパッケージとの相対ストローク量である。本発明は、物理量検出装置が検出の対象とする検出対象の物理量を具体的に例示するものである。つまり、本発明による物理量検出装置は、回転角検出装置またはストローク量検出装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態による物理量検出装置の要部を示す断面図。
【図2】(A)は本発明の第1実施形態による物理量検出装置の上面図、(B)は(A)のICパッケージ近傍を拡大した図。
【図3】(A)は図2(A)を矢印IIIA方向から見た図、(B)はICパッケージおよびターミナル部材を示す斜視図、(C)はICパッケージおよびターミナル部材を示す模式図。
【図4】本発明の第2実施形態による物理量検出装置のICパッケージおよびターミナル部材を示す斜視図。
【図5】(A)は本発明の他の実施形態による物理量検出装置のICパッケージおよびターミナル部材を示す斜視図、(B)はさらに別の本発明の他の実施形態による物理量検出装置のICパッケージおよびターミナル部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による物理量検出装置としての回転角検出装置、および、その一部を図1〜3に示す。
【0014】
回転角検出装置1は、車両に搭載されたスロットル弁11の開度を算出するのに用いられる。回転角検出装置1は、検出対象としてのスロットル弁11の弁軸12の回転角を検出する。回転角検出装置1からの出力は、図示しない電子制御装置(以下、「ECU」という。)に伝送される。ECUは、車両に搭載された種々の装置および機器類の作動を制御する。
【0015】
まず、スロットル弁11について説明する。図1に示すように、スロットル弁11は、略円板状に形成されている。スロットル弁11は、図示しない内燃機関に吸気を導く吸気通路13内に設けられている。弁軸12は、スロットル弁11の中心を板面方向に貫くようにして、スロットル弁11と一体に形成されている。弁軸12のスロットル弁11の両側の部分は、吸気通路13を形成するスロットルボディ14に軸受けされている。ここで、吸気通路13は、図1の紙面に対し垂直な方向に延びて形成されている。また、弁軸12は、吸気の流れ方向に略垂直となるよう設けられている。さらに、弁軸12の一端は、スロットルボディ14から突出している。
【0016】
弁軸12がスロットルボディ14に軸受けされることにより、スロットル弁11は、吸気通路13において弁軸12とともに回転可能である。つまり、スロットルボディ14は、検出対象であるスロットル弁11を回転可能に支持している。これにより、スロットル弁11は、回転することで吸気通路13を開閉可能である。
【0017】
本実施形態では、スロットルボディ14にモータ15が設けられている。モータ15は、モータ軸151が弁軸12と略平行になるようにして設けられている。モータ軸151には、モータギア152が取り付けられている。
【0018】
弁軸12の一端には、弁駆動ギア121が取り付けられている。弁軸12とモータ軸151との間には、中間軸16が設けられている。中間軸16は、一端がスロットルボディ14に支持されている。中間軸16の他端は、後述する回転角検出装置1のカバー部材40によって支持または位置決めされる。
【0019】
中間軸16には、中間ギア160が設けられている。中間ギア160は、大径ギア161および小径ギア162を有している。大径ギア161と小径ギア162とは一体に形成されている。中間ギア160は、大径ギア161がモータギア152に噛み合うよう、小径ギア162が弁駆動ギア121に噛み合うよう設けられている。
【0020】
上記構成により、モータ15が駆動することでモータ軸151が回転すると、モータ軸151の回転力は、中間ギア160を経由して減速されて弁駆動ギア121に伝達される。これにより、弁軸12がスロットル弁11とともに回転駆動される。
【0021】
モータ15は、ECUに制御されることにより弁軸12を回転駆動する。ECUは、モータ15の回転を制御することによりスロットル弁11の開度を制御し、図示しない内燃機関へ供給する吸気の量を調節する。なお、本実施形態では、弁軸12の回転可能角度範囲は、約90度に設定されている。
【0022】
弁軸12の弁駆動ギア121に対しスロットル弁11とは反対側の端部には、ホルダ17が取り付けられている。ホルダ17は、筒部171および当該筒部171の一方の端部を塞ぐ底部172を有している。すなわち、ホルダ17は有底筒状に形成されている。ホルダ17は、底部172の中心が弁軸12に固定されることにより、弁軸12に取り付けられている。ホルダ17の筒部171の内壁には、マグネット18が貼り付けられている。マグネット18は、例えばボンド磁石であり、N極およびS極の極性が筒部171の周方向に交互になるよう設けられている。そのため、弁軸12が回転すると、筒部171の内側において磁界が変化する。
【0023】
次に、回転角検出装置1について説明する。図1に示すように、回転角検出装置1は、ICパッケージ20、カバー部材40およびターミナル部材70等を備えている。回転角検出装置1は、弁軸12のホルダ17側の端部を覆うようにして、スロットルボディ14に取り付けられる。
【0024】
ICパッケージ20は、信号出力素子としての磁気検出素子21、封止体22、および、端子31、32、33等を有している。磁気検出素子21は、例えばホール素子や20R素子等の磁気センサである。磁気検出素子21は、周囲の磁界の変化に応じた信号を出力可能である。
封止体22は、例えばエポキシ等の樹脂により形成され、磁気検出素子21の全体を覆うようにして設けられている。封止体22は、外部からの衝撃、熱または湿気等から磁気検出素子21を保護する役割を果たす。
【0025】
端子31、32、33は、例えば銅等の金属により形成され、一端が磁気検出素子21に接続している。端子31、32、33は、磁気検出素子21に接続する端部以外の部分が封止体22から突出(露出)している。本実施形態では、端子31が磁気検出素子21への電力供給用の端子として用いられ、端子32がグランド用の端子として用いられ、端子33が信号出力用の端子として用いられる。
【0026】
磁気検出素子21には、電力供給用の端子31を経由して定電流Iが流れる。磁気検出素子21を流れた定電流Iは、グランド用の端子32に流れる。信号出力用の端子33からは、ICパッケージ20の周囲の磁界すなわち磁束密度Bに応じた信号(電圧)VHが出力される。当該信号VHは、下記式1で表される(kは比例定数)。
H=k・I・B ・・・式1
【0027】
図2に示すように、本実施形態では、ICパッケージ20は2つ設けられている。2つのICパッケージ20のそれぞれの端子33から信号VHが出力される。ICパッケージ20において、磁気検出素子21が搭載された面を回路面とよぶ。
【0028】
カバー部材40は、図2(A)および図3(A)に示すように、樹脂により皿状に形成されている。カバー部材40は、開口部41から外側へ環状に延びるフランジ部42を有している(図1、図2(A)および図3(A)参照)。フランジ部42には、複数の穴44が形成されている(図3(A)参照)。
カバー部材40の底部43には、フレキシブル基板50が設けられている。図2に示すように、フレキシブル基板50には、電極51、52、53、54、55が設けられている。
【0029】
図2(A)および図3(A)に示すように、カバー部材40の底部43とフランジ部42との間には、コネクタ部60が形成されている。コネクタ部60の内側には、端子61、62、63、64、65、66が設けられている。
【0030】
電力供給用の端子61は、フレキシブル基板50の配線を経由して電極51と電極54とに電気的に接続している。信号出力用の端子62は、フレキシブル基板50の配線を経由して電極52に電気的に接続している。グランド用の端子63は、フレキシブル基板50の配線を経由して電極55に電気的に接続している。もう1つの信号出力用の端子64は、フレキシブル基板50の配線を経由して電極53に電気的に接続している。
【0031】
ターミナル部材70は、例えば銅、アルミ、金、銀、または、グラファイト等、導電性を有する非磁性の材料、すなわち導電率が比較的大きく、かつ、透磁率が比較的小さい材料により形成されている。ターミナル部材70は、板状の部材を曲げ加工等することにより、図3(B)に示す形状に形成されている。ターミナル部材70は、底部71および当該底部71から略垂直に立ち上がるよう形成される2つの側部72を有している。
【0032】
底部71は、面方向に延伸するよう形成される延伸部73を有している。2つの側部72は、それぞれ、底部71の面方向の両端に挟持部74を有している。本実施形態では、ターミナル部材70は、底部71がフレキシブル基板50またはカバー部材40の底部43に固定されるようにしてカバー部材40に設けられている。また、延伸部73は、コネクタ部60のグランド用の端子63に接続するフレキシブル基板50の電極55に例えば溶接または半田付け等により電気的に接続されている。
【0033】
ターミナル部材70は、上述の2つのICパッケージ20の封止体22を挟持部74で挟持することにより、ICパッケージ20を保持している。ここで、2つのICパッケージ20は、封止体22の所定の面同士が当接した状態で挟持部74により挟持されている。また、2つのICパッケージ20のそれぞれのグランド用の端子32は、ターミナル部材70の底部71に例えば溶接または半田付け等により電気的に接続されている。
【0034】
また、2つのICパッケージ20のうち一方の電力供給用の端子31は、コネクタ部60の電力供給用の端子61に接続する電極51に例えば溶接または半田付け等により電気的に接続されている。また、信号出力用の端子33は、信号出力用の端子62に接続する電極52に例えば溶接または半田付け等により電気的に接続されている。
【0035】
また、2つのICパッケージ20のうち他方の電力供給用の端子31は、コネクタ部60の電力供給用の端子61に接続する電極54に例えば溶接または半田付け等により電気的に接続されている。また、信号出力用の端子33は、信号出力用の端子64に接続する電極53に例えば溶接または半田付け等により電気的に接続されている。
【0036】
このように、ターミナル部材70は、ICパッケージ20のグランド用の端子32に電気的に接続するとともに封止体22に当接するようカバー部材40に設けられている。また、ターミナル部材70は、ICパッケージ20を保持可能な形状に形成されている。
【0037】
フランジ部42は、穴44にねじ46等の締結部材を通すことによりスロットルボディ14に締付固定される(図1参照)。これにより、カバー部材40は、スロットルボディ14に取り付けられる。
カバー部材40がスロットルボディ14に取り付けられたとき、中間軸16の他端がカバー部材40の穴部45に嵌り込む。これにより、中間軸16の他端は、カバー部材40により支持または位置決めされる。
また、カバー部材40がスロットルボディ14に取り付けられたとき、コネクタ部60の端子65、66に接続するモータ端子47、48が、モータ15の電力供給用の端子に電気的に接続する。
【0038】
コネクタ部60には、図示しないワイヤーハーネスが接続される。当該ワイヤーハーネスの導線は、端子61〜66と、ECUおよび図示しない電源と、を接続する。これにより、磁気検出素子21とECUおよび電源とは、端子31〜33、フレキシブル基板50の電極51〜55および配線、端子61〜64、ならびに、ワイヤーハーネスの導線を介して接続される。
【0039】
なお、本実施形態では、端子61がECUを経由して電源の正極側に接続され、端子62および64がECUに接続され、端子63がECUを経由して電源の負極側に接続される。これにより、端子63に電気的に接続しているターミナル部材70は、電源の負極側に電気的に接続される。この構成により、ICパッケージ20の磁気検出素子21にはECUによって制御された電力(定電流I)が供給され、磁気検出素子21からの信号VHがECUに伝達される。
【0040】
また、端子65および66は、ECUを経由して電源に接続される。この構成により、モータ15にはECUによって制御された電力が供給され、モータ15が回転駆動する。これにより、弁軸12およびスロットル弁11が回転駆動される。
【0041】
図1に示すように、カバー部材40は、弁軸12のホルダ17側の端部を覆うようにして、スロットルボディ14に取り付けられる。このとき、ターミナル部材70の底部71とは反対側の端部は、弁軸12に対向するとともにホルダ17の筒部171の内側に位置した状態となる。
【0042】
上述の構成により、カバー部材40がスロットルボディ14に取り付けられた状態では、ICパッケージ20は、ホルダ17の筒部171(マグネット18)の内側に位置する。この状態で、モータ15により弁軸12が回転駆動され、スロットル弁11とともにホルダ17が回転すると、ICパッケージ20の周囲の磁界が変化する。このとき、ICパッケージ20の磁気検出素子21は、周囲の磁界の変化に応じた信号を出力する。つまり、磁気検出素子21は、ホルダ17に取り付けられたマグネット18が回転することにより生じる磁界の変化に応じた信号を出力する。この信号の経時的な変化は、弁軸12の回転角の経時的な変化に対応する。
【0043】
磁気検出素子21から出力される信号は、上述のワイヤーハーネスを経由してECUに伝達される。ECUは、伝達された信号に基づき弁軸12の回転角を検出する。これにより、ECUはスロットル弁11の開度を算出可能である。なお、本実施形態では、2つのICパッケージ20が設けられているため、例えば2つのICパッケージ20のうち一方が故障しても、他方のICパッケージ20により、弁軸12の回転角の検出を継続可能である。
このように、カバー部材40は、磁気検出素子21が前記信号を出力可能なよう、2つのICパッケージ20を収容している。
【0044】
図3(C)に示すように、回転角検出装置1の作動時等、ICパッケージ20の封止体22に静電気の電荷が帯電することがある。しかしながら、本実施形態ではICパッケージ20の封止体22にターミナル部材70が当接しているため、封止体22に帯電する電荷をターミナル部材70を経由して電源の負極側、すなわちグランドへ逃がすことができる。
【0045】
なお、本実施形態では、ICパッケージ20に帯電する電荷がターミナル部材70を経由してグランドへ流れるとき、ICパッケージ20のグランド用の端子32は、前記電荷の流れる経路の一部を構成する(図3(C)参照)。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、電源の負極側に電気的に接続されるターミナル部材70は、ICパッケージ20の封止体22に当接するよう設けられている。これにより、ICパッケージ20に帯電する静電気の電荷をターミナル部材70を経由して電源の負極側、すなわちグランドへ逃がすことができる。したがって、ICパッケージ20の回路面に電荷が帯電するのを防止することができる。よって、ICパッケージ20の動作不良を防止することができる。
【0047】
また、本実施形態では、信号出力素子としての磁気検出素子21は、検出対象の物理量(スロットル弁11の弁軸12の回転角)の変化に伴う磁界の変化に応じた信号を出力する。また、ターミナル部材70は、導電性を有する非磁性の材料により形成されている。本実施形態では、ターミナル部材70を非磁性の材料で形成することにより、磁気検出素子21が出力する信号に与える影響を低減または無くすことができる。したがって、検出対象の物理量の検出精度を向上することができる。
【0048】
また、本実施形態では、ターミナル部材70は、ICパッケージ20を保持可能な形状に形成されている。そのため、ICパッケージ20を保持するための保持部材を別途設ける必要がない。したがって、部材点数および部材コストを低減することができる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による回転角検出装置の一部を図4に示す。第2実施形態は、ターミナル部材の形状等が第1実施形態と異なる。
【0050】
第2実施形態では、ターミナル部材80は、例えば銅、アルミ、金、銀、または、グラファイト等、導電性を有する非磁性の材料により形成されている。ターミナル部材80は、板状の部材を曲げ加工することにより、図4に示す形状に形成されている。
【0051】
ターミナル部材80は、第1側部81、第2側部82、第1挟持部83、第2挟持部84、中間挟持部85および延伸部86を有している。第1側部81と第2側部82とは、長方形に形成され、互いに略平行となるよう設けられている。第1挟持部83は、第1側部81の長辺の一方から第1側部81に対し略垂直に延びるようにして形成されている。第2挟持部84は、第2側部82の長辺の一方から第2側部82に対し略垂直に延びるようにして形成されている。中間挟持部85は、第1側部81の長辺の他方と第2側部82の長辺の他方とを接続するようにして形成されている。延伸部86は、第1側部81の第1挟持部83とは反対側の端部から第1側部81の面方向へ延伸するよう形成されている。
【0052】
本実施形態では、2つのICパッケージ20は、それぞれ、封止体22が第1挟持部83と中間挟持部85との間、および、第2挟持部84と中間挟持部85との間に挟持されることにより、ターミナル部材80に保持されている。また、2つのICパッケージ20のグランド用の端子32は、それぞれ第1挟持部83または第2挟持部84に例えば溶接または半田付け等により電気的に接続されている。
また、延伸部86は、コネクタ部60のグランド用の端子63に接続するフレキシブル基板50の電極55に例えば溶接または半田付け等により電気的に接続されている。
【0053】
このように、ターミナル部材80は、ICパッケージ20のグランド用の端子32に電気的に接続するとともに封止体22に当接するよう設けられている。また、ターミナル部材80は、ICパッケージ20を保持可能な形状に形成されている。
【0054】
以上説明した本実施形態では、2つのICパッケージ20の間に中間挟持部85が介在する構成のため、第1実施形態と比べ、ICパッケージ20の封止体22に帯電する電荷をターミナル部材80を経由して逃がす効果が高い。
【0055】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、図5(A)に示すように、第1実施形態のターミナル部材70の挟持部74を延伸してICパッケージ20の封止体22を覆うようにしてもよい。また、図5(B)に示すように、第2実施形態のターミナル部材80の第1挟持部83および第2挟持部84を延伸してICパッケージ20の封止体22を覆うようにしてもよい。このようにターミナル部材でICパッケージの封止体を覆うことにより、ICパッケージの封止体に帯電する電荷を逃がす効果を高めることができるとともに、外部から封止体に帯電する電荷をターミナル部材によって遮ることができる。
【0056】
上述の実施形態では、ターミナル部材を、導電性を有する非磁性の材料により形成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、ターミナル部材を、例えば鉄、ニッケル、コバルト、または、黄銅等、導電性を有する磁性材、すなわち導電率および透磁率が比較的大きい材料により形成することとしてもよい。このような材料でターミナル部材を形成しても、ICパッケージに帯電する電荷を逃がす効果を得ることはできる。
【0057】
また、上述の実施形態では、ターミナル部材を、ICパッケージを保持可能な形状に形成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、ターミナル部材は、ICパッケージの封止体に当接するよう設けられるのであれば、どのような形状に形成されていてもよい。また、カバー部材のコネクタ部のグランド用の端子とターミナル部材とは、一体に形成されていてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、信号出力素子として磁気検出素子を用いる例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、信号出力素子として、周囲の磁界の変化以外の現象に応じて信号を出力する素子を用いることとしてもよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、物理量検出装置として回転角検出装置を構成し、スロットル弁の弁軸の回転角を検出する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、回転角検出装置を例えば車両のアクセルペダル等の回転角を検出するために用いることとしてもよい。また、物理量検出装置として、検出対象とICパッケージとの相対的なストローク量を検出するストローク量検出装置を構成し、例えば車両のシフト位置を変更するマニュアルバルブ等のストローク量を検出するために用いることとしてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ・・・・回転角検出装置(物理量検出装置)
12 ・・・弁軸(検出対象)
20 ・・・ICパッケージ
21 ・・・磁気検出素子(信号出力素子)
22 ・・・封止体
31、33 ・・・端子
32 ・・・端子(グランド用の端子)
40 ・・・カバー部材
70、80 ・・・ターミナル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量の変化に応じた信号を出力する信号出力素子、当該信号出力素子を覆う封止体、および、前記信号出力素子に電気的に接続するとともに前記封止体から突出するよう設けられる複数の端子を有するICパッケージと、
前記信号出力素子が前記信号を出力可能なよう前記ICパッケージを収容するカバー部材と、
導電性を有する材料により形成され、前記複数の端子のうちグランド用の端子に電気的に接続するとともに前記封止体に当接するよう前記カバー部材に設けられ、前記信号出力素子に電力を供給する電源の負極側に電気的に接続されるターミナル部材と、
を備えることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
前記信号出力素子は、前記検出対象の物理量の変化に伴う磁界の変化に応じた信号を出力する磁気検出素子であり、
前記ターミナル部材は、導電性を有する非磁性の材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項3】
前記ターミナル部材は、前記ICパッケージを保持可能な形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の物理量検出装置。
【請求項4】
前記物理量は、前記検出対象とICパッケージとの相対回転角度、または、前記検出対象とICパッケージとの相対ストローク量であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の物理量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−29352(P2013−29352A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164150(P2011−164150)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】