説明

物質を推定に基づいて検出するための方法

本発明は、(i)紫外線を吸収し、中毒性の薬物により吸収される波長で放出される紫外線を生成する第1の化合物;および(ii)前記中毒性の薬物が前記放出された紫外線を吸収する際に前記中毒性の薬物により放出された紫外線を吸収し、可視スペクトルの放射線を放出する第2の化合物を含む、前記中毒性の薬物の検出で用いるための組成物;ならびに、紫外線を吸収する1又は2種類の化合物と接触させた試料に紫外線を照射することを含む、試料中の中毒性の薬物を検出するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査試料、例えば唾液試料又は飲料の中の物質、例えば麻薬および環境汚染物質などを推定に基づいて検出するための方法および装置に関する。
【0002】
背景技術
1967年に飲酒運転検知器が導入されて以来、アルコール乱用を路側で検出することにまつわる不確実さの大半が取り除かれた。
【0003】
しかし、そのような同等の検査は、麻薬を含む中毒性の薬物に対して存在せず、特に、路側で唾液又はその他の体液中の麻薬を検出するための検査は存在しない。英国では、運転している時又は運転しようとする時に、薬物によって運転に不適当な状態になることは犯罪行為である。これに関して、この規定の範囲内に入るために、この薬物はそれ自体が非合法である必要はない。多くの処方薬および店頭で買える医薬品は中毒を引き起こすことが知られており、服用後の運転および機械操作をしないように警告する使用説明書とともに提供されている。
【0004】
警察は、麻薬を含む薬物からの中毒に基づいて逮捕するかどうかを決定する際に、完全に容疑者の主観的な行動の印象に頼らざるを得ない。したがって、警察は、任意の特別な訓練又は資格についての要件なしに第一線の警官により展開することのできる、麻薬を含む中毒性の薬物についての推定に基づく検査を必要とする。
【0005】
警察が緊急に必要とするものは、アルコール以外の薬物による中毒の可能性の、安価な、推定に基づく指示器であり、該指示器は第一線の警官が街路又は路側で使用するのに十分簡単であって、その後に警察の研究所でより詳細に行われる完全な定量的薬物判定を可能にするものである。
【0006】
薬物に関して唾液を検査するためのモバイル機器は実際に存在するが、いずれもまだ広く、特に第一線の警官に用いられるには至っていない。この主な理由は、現在の移動式の検査法の全てが高価なモノクローナル抗体又は免疫センサー技術に基づくものであることである。この技術の中で、別々のモノクローナル抗体は各標的物質のために合成される必要がある。これらは安く作製することができない。一部の例では、生成されたイムノクロマティック(immunochromatic)シグナルは、高価な電子装置を用いる分析を必要とする。実用レベルでは、この技術は現在非常に高価であるためパトカーの全車両に設置できない。たとえ電子読取装置を排除して単に検査棒の色変化を探すだけとしても、なおも解決できない高い「検査単価」がおよそ20米ドル残っている。この種類の技術を多忙な夜に用いると、一回の警察の巡回が検査に数百ポンドを費やすこともあり得る。
【0007】
さらに、電子のモノクローナル抗体又は免疫センサー技術は、可能性のある麻薬の範囲を網羅するために、複雑なキーパッド入力を伴う精巧な装置か、又は多様な検査棒および検査片を扱うことを使用者に求める。
【0008】
その上、これらのシステムは、結果を出すのに最大5分かかる。
【0009】
実用レベルでは、このことは、この技術を街路に立つ第一線の警官が使用するにはあまりに複雑で時間がかかりすぎるものにする。
【0010】
麻薬を含む中毒性の薬物を個人の飲み物に加えること(その個人を無能力にして窃盗又は性犯罪を容易にするため)は、増加しつつある懸念である。現在利用可能な検出技術はあまりにも高価であり、この問題に適切に対応するためにその範囲が限定されている。
【0011】
上記に対する同様のモノクローナル抗体技術が、麻薬で「スパイク」された飲み物の検出に適用されている。しかし、前記の路側でのモノクローナル抗体に基づく検出装置、この技術に伴う費用は高く、2枚の検査カードでおよそ4.99ポンドである。この高い費用が広範な使用を制限する可能性が高い。
【0012】
さらに、各カードは現在2種類の麻薬−γヒドロキシ酪酸とケタミンしか検査することができない。そのカードはジフェンヒドラミンを検出することができない。
【0013】
本発明は、当分野における上記の不利点の1又はそれ以上に取り組むものである。
【0014】
発明の概要
本発明は、肉眼で確認できるようにされた紫外蛍光を使用して、唾液又は飲料中の麻薬の存在を含む検査試料中の物質の存在を示す。より広範に、本発明は、中毒性の薬物(intoxicating drugs)(麻薬およびその他の物質を含む)を検出するために用いることができる。例えば、本発明は、運動選手の薬物検査、ならびに手および衣類、ならびに事件現場での薬物の痕跡の検出に特に適している。
【0015】
本発明は、中毒性の薬物の紫外蛍光特性を利用して、それらの存在について検査するための迅速で単純な方法を提供する。本発明は、一回の検査で複数の種類の物質の存在について検査することができる。
【0016】
従って、一態様から見ると、本発明は、
(i)紫外線を吸収し、前記中毒性の薬物により吸収される波長で放出される紫外線を生成する第1の化合物;および
(ii)前記中毒性の薬物が前記放出された紫外線を吸収する際に前記中毒性の薬物により放出された紫外線を吸収し、可視スペクトルの放射線を放出する第2の化合物
を含む、中毒性の薬物の検出で用いるための組成物を提供する。
【0017】
さらなる態様から見ると、本発明は、試料中の中毒性の薬物を検出するための方法であって、
(i)前記試料を、前記中毒性の薬物に紫外線が照射される場合に前記中毒性の薬物から放出される紫外線の吸収の際に可視線を放出する化合物と接触させる段階;および
(ii)前記試料および前記化合物に紫外線を照射する段階
を含む方法を提供する。
【0018】
さらなる態様から見ると、本発明は、試料中の中毒性の薬物を検出するための方法であって、
(i)前記試料を、紫外線を吸収し、前記中毒性の薬物により吸収される波長で放出される紫外線を生成する化合物と接触させる段階であって、前記中毒性の薬物が前記放出された紫外線の吸収の際に可視線を放出するものである段階;および
(ii)前記試料および前記化合物を紫外線で照射する段階
を含む方法を提供する。
【0019】
さらなる態様から見ると、本発明は、試料中の中毒性の薬物を検出するための方法であって、
(i)前記試料を、紫外線を吸収し、前記中毒性の薬物により吸収される波長で放出される紫外線を生成する第1の化合物および前記中毒性の薬物が前記放出された紫外線を吸収する際に前記中毒性の薬物により放出される紫外線を吸収し、可視線を放出する第2の化合物と接触させる段階;ならびに
(ii)前記試料および前記化合物を紫外線で照射する段階
を含む方法を提供する。
【0020】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書に定義されるような第1の化合物および/又は第2の化合物を含む組成物を用いて被覆および/又は含浸させた支持体を提供する。
【0021】
さらなる態様から見ると、本発明は、中毒性の薬物の推定に基づく検出における紫外線の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】酸化タンタル(V)およびキニーネと接触させた場合に、100ppmヘロイン(左上)、100ppmベンゾイルエクゴニン(右上)、100ppmカフェイン(左下)、および水(右下)で呈示された蛍光を示す図である。
【図2】脱イオン水(左)、および1000ppmジフェンヒドラミン(右)で接触させた、変更されたストローにより呈示された蛍光を示す図である。 図1および2は呈示された蛍光の表示であり、写真用フィルタを用いて実際の画像をグレースケールに変換すること、およびHalftone Screenを用いてグレースケール画像を図に示される白黒画像、すなわち黒色の背景上の様々な大きさの白色のドットに変換することにより得られる。
【図3】本発明の特定の態様に従う第1の化合物および第2の化合物(添加剤(1)および(2))、および光源の、本発明の一実施形態に従って検査されている特定の物質(X)に関する概略配置図を示す図である。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、その様々な態様において、中毒性の薬物の推定に基づく検出に関する。前述の考察に述べられるように、この検出は定量的で最終的なものでなくてよく、最終的な鑑定は典型的に警察の研究所で行われる。試料の紫外線照射の際に可視蛍光を観察した場合、中毒性の薬物が検査された試料中に存在すると推定することができる。
【0024】
中毒性の薬物は、化合物、典型的に合成化合物であって、十分な量で摂取されると中毒を引き起こすことができるものである。中毒とは、十分な量の中毒性の物質が摂取された場合に被る麻酔状態又は障害の状態として定義されうる。本明細書において、中毒性の薬物はアルコールではない。中毒は主観的な概念であるとはいえ、中毒は本明細書において、NHTSA DWI Detection and Standardized Field Sobriety Testing Participant Manual(2002)に従うものとして定義され、該マニュアルには中毒を判定するための3つの標準検査(水平注視眼振、歩行および回転および片足立ち)が規定されている。中毒性の薬物とは、これらの検査の1又はそれ以上に従う中毒を引き起こすことのできる薬物である。一般に、それだけには限らないが、この中毒性の薬物は、米国の規制薬物法(Controlled Substances Act)(CSA)に定義されるように、麻薬である。公知のように、この法令は、コカインおよびココアの葉がオピエート受容体と結合しないし、モルヒネのような作用(その作用は麻薬の定義として用いられることが多い)を生じることもないにもかかわらず、コカインおよびココアの葉を麻薬として包含する。
【0025】
本発明に従って検出できる中毒性の薬物の種類の例としては、カンナビノイド類(例えば、Δ−9−テトラヒドロカンナビノール)、ベンゾジアゼピン類(例えば、ノルジアゼパム(nordiazepan)およびオキサゼパム)、コカインおよびコカイン誘導体又は代謝産物(例えば、コカインおよびベンゾイルエクゴニン(benzoyl ecognine))、アンフェタミン類(例えば、D−アンフェタミンおよび同等物)、メチルアンフェタミン(例えば、MDAおよびMDMA(エクスタシー))、メタドンおよびオピエート類(例えば、モルヒネ)が挙げられる。別の一群の種類の例としては、オピエート類、カンナビノール類、トロパンアルカロイド類、アンフェタミン類、ベンゾジアゼピン類、エルゴリン誘導体およびエタノールアミン類が挙げられる。本発明に従って検出できる中毒性の薬物の具体的な例としては、MDMA(エクスタシー)、γヒドロキシ酪酸、モルヒネ、6−モノアセチルモルヒネ、コカイン、カンナビノール、コデイン、LSD、ケタミンおよびヘロインが挙げられる。
【0026】
特定の態様では、本発明は、「変換物質」を半導体材料とともに用いて、検査試料中の中毒性の薬物の紫外蛍光を肉眼で確認できるようにする。
【0027】
本発明の方法は、典型的に、検査試料を2種類の化合物と、例えば混合により接触させることを伴う。第1の化合物は、紫外線を吸収し、中毒性の薬物が検査試料中に存在する場合に中毒性の薬物により吸収される、放出される紫外線又は波長を生成する。放出された紫外線を吸収した後、中毒性の薬物は、可視線を放出する第2の化合物に吸収される紫外線を放出する。あるいは、第1の化合物の1種類のみが存在してもよい。かかる実施形態で除外された化合物は、上で定義される第1の化合物であっても第2の化合物であってもよい。例えば、本発明は、第1の化合物を使用せずに機能することができ、紫外線の吸収およびその結果として起こる放射線の放出を直接に検査されている中毒性の薬物に頼る。あるいは、検査されている中毒性の薬物が紫外線を照射されると可視波長の光を放出することが公知の場合に(LSDがそのような物質の例である)、第2の化合物を除外してもよい。
【0028】
続く考察は、第1および第2の化合物の両方が存在している、本発明のそれらの実施形態に焦点を当てる。しかし、前述の考察から、本発明がそのように限定されないことは当然理解される。
【0029】
検査試料中の検査されている中毒性の薬物の紫外線吸収および発光波長は一般に公知である。
【0030】
第1の化合物(存在する場合)は、ある波長で紫外線を吸収し、検査されている中毒性の薬物の吸収波長の前後のある波長でそれを放出する能力をもつ物質である。
【0031】
第2の化合物(存在する場合)は、検査されている中毒性の薬物(1又は複数種類)が放射線を放出する波長の前後で紫外線を吸収し、可視スペクトル内のある波長でそれを放出する能力を持つ物質である。
【0032】
好ましくは、第1の化合物が放射線を放出する波長は、第2の化合物が放射線を吸収する波長と重複するべきではない。好ましくは、第1および第2の化合物は、図3に示されるように、検査されている中毒性の薬物の吸収および発光波長に従って選定されるべきである。
【0033】
例えば混合による接触の後、第1の化合物が存在する場合、第1の化合物の吸収波長の前後の波長の紫外光に検査試料を曝露するか、又は、第1の化合物が存在しない場合、その存在又は不在を確かめることが望まれる中毒性の薬物の吸収波長で、検査試料を曝露する。本明細書において前後とは、検査試料が曝露される紫外光の波長が、中毒性の薬物(存在する場合)による紫外線吸収が、Amax、すなわち最大の吸収が起こる波長、の10%以内であるような波長であることを意味する。
【0034】
第1の化合物は(存在する場合)、かかる放射線を吸収し、検査されている中毒性の薬物が吸収する波長で放射線を放出する。検査されている中毒性の薬物は、かかる放射線を吸収し、次に第2の化合物が吸収する波長で放射線を放出する。第2の化合物は、かかる放射線を吸収し、次に可視スペクトル内の放射線を放出する。あるいは、中毒性の薬物が可視スペクトル内で放射線を放出するならば、第2の化合物は存在しなくてもよい。
【0035】
検査されている中毒性の薬物が存在しないと、第1の化合物の発光バンドは第2の化合物の吸収バンドと交差しないので、眼に見える放射線の放出はほとんど又は全く起こり得ない。従って、可視線が存在する場合、検査されている中毒性の薬物が存在すると推定される。
【0036】
表1、2および3は、第1および第2の化合物としての使用に適した特定の物質の吸収および発光波長、ならびに本発明を用いて検査されうる特定の中毒性の薬物の吸収および発光波長を示す。
【表1】

【0037】
表1:第1の化合物としての使用に適した様々な物質の吸収および発光波長
【表2】

【0038】
表2:頻繁に検査される様々な中毒性の薬物の吸収および発光波長
【表3】

【0039】
表3:第2の化合物としての使用に適した様々な物質の吸収および発光波長
【0040】
好ましくは、検査試料は、蛍光が確実に肉眼ではっきりと見えるようにするために、暗い条件下で紫外光に曝露される。
【0041】
既に述べたように、第2の化合物により直接に吸収されている第1の化合物からの発光波長のリスクを回避し、そして従って第2の化合物の蛍光をもたらすために、第2の化合物(存在する場合)が第1の化合物(存在する場合)の発光波長の前後でごくわずかな吸収を呈示するならば、それは有利である。あるいは、第1の化合物から放射される蛍光の吸収後の中毒性の薬物から予期される蛍光の量が分かっている場合、第1の化合物により放出される放射線および/又は紫外光源からの紫外線の、第2の化合物による吸収はこの蛍光の公知量よりも少ないことが好ましい。あるいは、中毒性の薬物から予期される蛍光の量が分かっていない場合(典型的な場合)、化合物2から放出される蛍光が、化合物2による紫外光源からの紫外線の直接吸収の結果として放出される蛍光、および化合物2により放出される、それからの紫外線の直接吸収の結果として放出される蛍光の合計よりも大きい場合、中毒性の薬物の存在が推定されうる。好ましくは、検査されている中毒性の薬物からもたらされる化合物2からの蛍光は、(i)紫外光源(例えば、紫外線ランプ)からの紫外線の直接吸収;および(ii)化合物2による化合物1から放出された紫外線の吸収の合計よりも大きい。
【0042】
本発明の方法を用いて、中毒性の薬物、特に麻薬についての迅速かつ簡単な検査、特に路側で用いることのできる検査を提供することができる。便宜には、この検査は唾液試料で実施されてよい。しかし、身体起源のその他の試料(例えば、液体)、例えば哺乳類(例えば、ヒト)の血液、汗又は尿試料を用いてもよいことは当然理解される。
【0043】
また、本発明が、関心対象の化合物の代謝産物の検出を可能にすることも当然理解され、その場合、かかる代謝産物はその存在又は不在を確かめることが望まれる化合物の紫外蛍光特性を有する。
【0044】
本発明の方法はまた、飲料に加えられている、麻薬を含む中毒性の薬物を検出するために用いることもできる。
【0045】
路側での薬物検出およびその他の実施形態の範囲内で、本発明は、例えば、支持体材料、又は支持体、例えば、紙(又はその他の適した材料)を第1および第2の化合物(本明細書において添加剤(1)および(2)とも称される)で含浸させること、および一滴の唾液をかかる紙の上に載せることにより、実施されてよい。あるいは、第1および/又は第2の化合物を吸着させるか、又はそうでなければ支持体上に固定させてもよい。支持体は検査用試料が浸透できることが好ましい。支持体はインサイチューで、すなわち本発明の方法の実践と同時に処理されてよい。あるいは、紙又はその他の材料を本発明の第1および/又は第2の化合物で前処理してもよい。さらに、路側での薬物検出の実施形態の実践は、本発明のその他の実施形態において、例えば、本発明に従って検出可能な中毒性の薬物によって汚染されていることが疑われる液体又はその他の摂取可能な(食用又は飲用に適した)物質の分析においても等しく適切であることは当然理解される。
【0046】
飲料を検査する実施形態の中で、添加剤(1)および/又は(2)は、所望により、任意の適した材料、例えば、紙、ボール紙又はプラスチックでできた細長い支持体(例えば、綿棒)の一端又は両端に(特に支持体が細長い場合)添付されてよい。かかる実施形態の例は、ストロー又は「かき混ぜ棒」であり、半透明の、非蛍光物質、例えば関心対象の中毒性の薬物が浸透できる物質などを用いることが好ましい。あるいは、唾液又はその他の試料を最初に収集し、次に添加剤(1)および/又は(2)と接触させる。あるいは、本発明の方法を行うために、例えば、皮膚(例えば、手)および/又は衣類を湿った又はアルコールを湿した吸収材料(例えば、脱脂綿又は綿棒)でぬぐうことにより得た液体を、例えば、本発明の組成物で処理された支持体の上に垂らすことにより適用してよい。この実施形態が、同様に、路側検出又はその他のシナリオに適していることは、当然理解される。
【0047】
あるいは、添加剤(1)および/又は(2)を含む、任意の適した材料、例えば、紙、ボール紙又はプラスチック(例えば、綿棒)からできた任意の便利な支持体は、所望により、1つの単位、例えば、使い捨てできる単位内に収容されてよく、その中には、紫外線照射への曝露よりも前に唾液又はその他の試料が導入されてよい。
【0048】
添加剤(1)は、好ましくは、300nm以下の波長で紫外線を吸収し、250から300nmの範囲の波長でそれを放出する物質である。金属酸化物半導体が一般に適している。酸化タンタル(V)がそのような物質の例である。酸化タンタルは、その269nmのバンドギャップ波長以下の波長で紫外線を吸収し、このバンドギャップ波長で放射線を放出する。
【0049】
添加剤(2)は、好ましくは、300から400nmの間の波長で紫外線を吸収し、それを可視スペクトル(400nmを超える波長)で放出する物質である。キニーネがそのような物質の例である。キニーネは350nm前後の波長で、さらに250nm前後の波長で紫外線を吸収し、450nm前後の波長で放射線を放出する。注目すべきは、キニーネの250nm前後の波長での放出は蛍光量子効率が非常に低く、その結果、大部分が蛍光よりも光分解となるのに対して、350nm前後での放出ピークは量子収量がそれよりもはるかに大きいという事実である。また、キニーネは、270から300nmの波長でごくわずかな吸収を呈示する。従って、キニーネは、検査されている物質により行われる放出の領域内の吸収能力が比較的強いため、添加剤(2)として使用するのに理想的な物質である。それは、大部分の乱用麻薬が300nmから400nmの波長間の紫外線を放出するため、およびその最小吸収波長が、酸化タンタルのバンドギャップ波長から遠い波長で吸収するので、その結果として生じる蛍光が添加剤(1)からの放出の影響を受けない可能性が高いことを意味するためである。
【0050】
添加剤(1又は複数)と接触させた後、検査試料を暗いか又はほぼ暗いチャンバの中に入れる。このチャンバの目的は、蛍光を視覚的に確認しやすくさせることである。
【0051】
次に、検査試料を紫外光に曝露させる。主に270nm以下の波長で紫外線を放出している低圧水銀蒸気ランプが、酸化タンタルおよびキニーネを添加剤(1)および(2)として用いているこの実施形態内での使用に適している。
【0052】
これおよびその他の実施形態の中で、検査されている中毒性の薬物は、典型的に、1種類の乱用麻薬である。大部分の乱用麻薬およびそれらの代謝産物は、200から300nm、一般に250から300nmの範囲の波長で紫外線を強力に吸収し、上に述べたように、それを300から400nmの間の波長で放出する。
【0053】
放射線源が上に考察される水銀蒸気ランプである場合、紫外線は暗くされたチャンバの中に254nmのピーク波長で放出される。添加剤(1)が酸化タンタルである場合、この紫外線は酸化タンタルにより吸収される。酸化タンタルは269nm又はそれ以下の波長で紫外線を吸収し、269nmのそのバンドギャップ波長で放出するためである。乱用麻薬は一般に250から300nmの範囲の波長で放射線を吸収するので、この放出された放射線は、存在する場合、前記乱用麻薬により吸収され、その後300から400nmの間の波長で再放出される。添加剤(2)がキニーネである場合、この放出された放射線はキニーネにより吸収される。キニーネが紫外線を吸収するピークレベルは350nm前後であるためである。キニーネは450nm前後の波長で紫外線を放出するため、その結果として可視蛍光が存在することになる。このことは、検査試料中の乱用麻薬の存在を示す。もし乱用麻薬が全く存在しない場合、チャンバ内の酸化タンタルか又は検査試料のいずれによっても、紫外線はキニーネによる吸収、およびその後の放出に適した波長で全く放出されないということになる。
【0054】
そのため、本発明は、蛍光を呈示するか、しないかによって、検査試料中の乱用麻薬およびその他の中毒性の薬物の存在、又はかかる存在の欠如を確定的に示すことができる。感受性に関して、中毒性の薬物は、0.5ppm程度の低い濃度で、例えば0.5から1000ppm、例えば、0.5又は1ppmから100ppmの範囲で検出され得る。
【0055】
図1は、酸化タンタルおよびキニーネを含浸させた紙の上に載せ、前述の実施形態に記載されているものに類似の水銀蒸気ランプからの紫外線に曝露させた、ヘロインおよびベンゾイルエクゴニン(コカインの代謝産物)を含む検査試料により呈示された蛍光を示す。下の2つの試料はカフェインおよび脱イオン水の対照であり、最小の蛍光を示す。
【0056】
本発明はまた、ストロー又は「かき混ぜ棒」の形態で実施されてよい。
【0057】
この実施形態の中で、ストロー又は「かき混ぜ棒」は、添加剤(1)および(2)の混合物を含浸させるか、又は吸着させるか、又はそうでなければ支持体上に固定させてもよく、かかる添加剤は、上記の本発明の説明に記載される、検査されている中毒性の薬物の特性に従って選定される。この実施形態の中で、ストロー又は「かき混ぜ棒」は、もしそれによって移動される液体が前記検査されている中毒性の薬物により毒されていたならば、蛍光を発する。
【0058】
前の実施形態に関して考察されるものと同じ添加剤を利用する場合、ストロー又は「かき混ぜ棒」の蛍光は、それと接触している液体が乱用麻薬又はその他の中毒性の薬物を含んでいることを示す。そのため、この実施形態は、飲む人に知られずに麻薬物質が混入されている飲料を特定するために特に有用である。図2は、酸化タンタルおよびキニーネが、不活性型非蛍光ワックスであるメチルステアレート(その他の不活性型非蛍光ワックス類を用いてもよい)とともにストローに固定されている、2本のかかる変更されたストローを示す。その一方は1000ppmジフェンヒドラミンと接触しており、もう一方は脱イオン水対照と接触している。
【0059】
本発明は、暗くした箱の中のわずか1つの小さな紫外光源程度からなる方法で実施することができる。従って、その実施の資本コストは非常に低い。
【0060】
本発明の検査あたりの運用コストは非常に低い。それは、安価で標準的な実験用化学薬品の組合せを用いて含浸/被覆させた、普通の小さな濾紙、ストロー(例えば、紙ストロー)又は棒を用いて実施することができる。
【0061】
本発明は、一回の検査を複数の物質について行うことを可能にする。従って、個々の中毒性の薬物について別々に検査するよりも費用効率が高い。本発明はまた、使いやすく、即時に結果を出す。
【0062】
本発明を以下の限定されない例により説明する。
【実施例】
【0063】
脱イオン水中1ppmの溶液を、次の試薬について調製した:
・ヘロイン(McFarlan−Smith,Edinburgh,UK)
・モルヒネ(McFarlan−Smith,Edinburgh,UK)
・ベンゾイルエクゴニン(McFarlan−Smith,Edinburgh,UK)
・ジフェンヒドラミン(Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)
サリチル酸(Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)の100ppm溶液およびジフェンヒドラミンの1000ppm溶液も調製した。
【0064】
サリチル酸を使用する水中の一連の麻酔剤の検出
0.5gの酸化タンタル(V)(Ta25)(Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)を、10mlのサリチル酸溶液と混合してスラリーを形成した。これを冷たく暗い場所でおよそ4時間置いて沈殿させた。一滴の形成された厚い沈殿物を、4枚の1001−030濾紙ディスク(Whatman International Ltd,Maidstone,UK)の中心に載せた。次に、これらを暗くしたデシケーター中で一晩乾燥させた。一滴のヘロイン、モルヒネ、ベンゾイルエクゴニンおよびジフェンヒドラミン溶液を、前記ディスクの4枚の中心地点に載せた。5枚目のディスクには一滴の脱イオン水を載せた。次に、これらのディスクを、暗い観察用キャビネット(viewing cabinet)中で紫外線GL−58 254nmの水銀蒸気紫外光源(UVP,Cambridge,UK)で照射した。
【0065】
飲料に加えられた麻酔剤の検出
0.5gの酸化タンタル(V)を0.5gの乾燥したキニーネと十分な非蛍光ワックス(メチルステアレート、Poole,UK)とともに50℃にて混合して粘度の高いペーストを形成した。次に、このペーストの一滴を前記2本のストローの底部の付近に塗布した。1本を対照として水中に入れ、一方、もう1本をジフェンヒドラミンの1000ppm溶液中に5分間入れた。可視蛍光が図2に示され、この図には脱イオン水(左)、および1000ppmジフェンヒドラミン(右)と接触させたストローが示される。
【0066】
また、本発明を用いてその他の紫外蛍光物質、例えば環境汚染物質、食物および飲用水の汚染を検出することができる。
【0067】
既存の技術は、特定の不法物質を検出するためにのみ設計されている。いかなる物質によっても中毒になっている間に運転することはそれでも違反である。したがって、道路交通法の重要な範囲が先行技術では無視されているが、本発明によって網羅される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)紫外線を吸収し、中毒性の薬物により吸収される波長で放出される紫外線を生成する第1の化合物;および
(ii)前記中毒性の薬物が前記放出された紫外線を吸収する際に前記中毒性の薬物により放出される紫外線を吸収し、可視スペクトルの放射線を放出する第2の化合物
を含む、前記中毒性の薬物の検出で用いるための組成物。
【請求項2】
中毒性の薬物が麻薬薬物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
麻薬薬物が、カンナビノイド、ベンゾジアゼピン、コカイン又はその誘導体もしくは代謝産物、アンフェタミン、メチルアンフェタミン、メタドンあるいはオピエートである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
麻薬薬物が、MDMA、γヒドロキシ酪酸、モルヒネ、6−モノアセチルモルヒネ、コカイン、カンナビノール、コデイン、LSD、ケタミン又はヘロインである、請求項2又は請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
第1の化合物が、300nm未満の波長で放射線を吸収し、250から300nmの範囲の波長で前記放出される紫外線を生成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
第1の化合物が酸化タンタル又は酸化ジルコニウムである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
第2の化合物が、300から400nmの間の波長で紫外線を吸収する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
第2の化合物が、キニーネ又はサリチル酸である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
第2の化合物が、前記放出された紫外線を吸収しない、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
試料中の中毒性の薬物を検出するための方法であって、
(i)前記試料を、前記中毒性の薬物に紫外線が照射される場合に前記中毒性の薬物から放出される紫外線の吸収の際に可視線を放出する化合物と接触させる段階と;
(ii)前記試料および前記化合物に紫外線を照射する段階と
を含む方法。
【請求項11】
試料中の中毒性の薬物を検出するための方法であって、
(i)前記試料を、紫外線を吸収し、前記中毒性の薬物により吸収される波長で放出される紫外線を生成する化合物と接触させる段階であって、前記中毒性の薬物が前記放出された紫外線の吸収の際に可視線を放出するものである段階と;
(ii)前記試料および前記化合物に紫外線を照射する段階と
を含む方法。
【請求項12】
試料中の中毒性の薬物を検出するための方法であって、
(i)前記試料を、紫外線を吸収し、前記中毒性の薬物により吸収される波長で放出される紫外線を生成する第1の化合物、および前記中毒性の薬物が前記放出された紫外線を吸収する際に前記中毒性の薬物により放出される紫外線を吸収し、可視線を放出する第2の化合物と接触させる段階と;
(ii)前記試料および前記化合物に紫外線を照射する段階と
を含む方法。
【請求項13】
第2の化合物が、前記放出された紫外線を吸収しない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
可視線を放出する化合物が、300から400nmの間の波長で放射線を吸収する、請求項10、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
可視線を放出する化合物が、キニーネ又はサリチル酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
紫外線を吸収する化合物が、300nm未満の波長で吸収し、250から300nmの範囲の波長で前記放出される紫外線を生成する、請求項11、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項17】
紫外線を吸収する化合物が、酸化タンタル又は酸化ジルコニウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記関心対象の中毒性の薬物が麻薬薬物である、請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
麻薬薬物が、カンナビノイド、ベンゾジアゼピン、コカイン又はその誘導体もしくは代謝産物、アンフェタミン、メチルアンフェタミン、メタドンあるいはオピエートである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
麻薬薬物が、MDMA、γヒドロキシ酪酸、モルヒネ、6−モノアセチルモルヒネ、コカイン、カンナビノール、コデイン、LSD、ケタミン又はヘロインである、請求項19又は請求項20に記載の方法。
【請求項21】
前記試料が液体を含む、請求項10から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記液体が、哺乳類の唾液、汗又は尿を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記唾液、汗又は尿がヒト起源である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から9のいずれか一項に定義される組成物を用いて被覆および/又は含浸させた支持体。
【請求項25】
紙、ボール紙又はプラスチック材料でできた、請求項24に記載の支持体。
【請求項26】
細長い、および/又は、その一部分だけを被覆および/又は含浸させた、請求項24又は請求項25に記載の支持体。
【請求項27】
中毒性の薬物の推定に基づく検出における紫外線の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−543032(P2009−543032A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517412(P2009−517412)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002448
【国際公開番号】WO2008/001116
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(505469481)ヘリオット−ワット・ユニバーシティ (3)
【氏名又は名称原語表記】Heriot−Watt University
【Fターム(参考)】