説明

特定の孔径分布を有する沈降シリカ

【課題】エラストマー混合物中の補強充填剤として適用する際に改善された応用技術的特性を有する沈降シリカを提供する。
【解決手段】以下の物理化学的パラメータ:孔径分布の相対幅γ 4.0〜10.0(g nm)/ml、シアーズ数V2 28〜40ml/(5g)、シアーズ数V2/CTAB比 0.18〜0.28ml/(5m2)、CTAB 100〜200m2/gを特徴とする沈降シリカであり、粉末の形か又はほぼ球状粒子(ミクロ顆粒)の形か又は顆粒として存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔容積分布関数の微分の極大の細孔直径よりも小さな細孔直径を有する細孔の特に広い孔径分布を有する沈降シリカ、該沈降シリカの製造法及び該沈降シリカの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー混合物、例えばタイヤにおける沈降シリカの使用は長年公知である。このための例は、US6013234、EP0647591及びWO03/016215から引用することができる。
【0003】
タイヤに使用されるシリカには高度の要求が課せられる。シリカは容易にかつ良好にゴム中で分散可能であり、かつ結合試薬、例えば二官能性シランを介して、使用されるゴムのそれぞれのポリマー鎖と迅速かつ良好に結合し得るべきである。これが混合プロセスの間に効果的に成功すればそれだけ一層、完成タイヤにおける摩耗抵抗が良好となる。他の重要な特性は、比表面積(BET又はCTAB)及び吸油量(DBP)により表される。
【0004】
シリカ技術をいわゆる「グリーンタイヤ」に導入することにより、転がり抵抗を劇的に低下させることができ、その一方で、摩耗特性は純粋なカーボンブラックが充填されたタイヤのレベルをほぼ維持していた。タイヤ混合物の摩耗抵抗及び転がり抵抗に関する更なる改善は、上昇し続ける原料価格に基づき、及び環境に対する責任のある認識を考慮して、より一層重要となる。
【特許文献1】US6013234
【特許文献2】EP0647591
【特許文献3】WO03/016215
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、特にエラストマー混合物中の補強充填剤として適用する際に改善された応用技術的特性を有する沈降シリカを提供することであった。更に、本発明によるシリカの製造法が提供される。
【0006】
詳細に記載されない他の課題は、明細書の全体の文脈、実施例及び特許請求の範囲から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意想外にも、前記課題は、以下の明細書並びに特許請求の範囲及び実施例において詳細に定義された本発明による沈降シリカによって解決されることが見出された。
【0008】
本発明の対象は、以下の物理化学的パラメータ:
孔径分布の相対幅γ 4.0〜10.0(g nm)/ml
シアーズ数V2 28〜40ml/(5g)
シアーズ数V2/CTAB比 0.18〜0.28ml/(5m2
CTAB 100〜200m2/g
を特徴とする沈降シリカである。
【0009】
本発明の対象は更に、上記パラメータに加えて、1つ以上の以下の物理化学的パラメータ:
DBP価 200〜330g/(100g)
pH5でのゼータ電位 −12〜−30mV
BET/CTAB比 >1.3
一次粒径 10〜40nm
Al23含分 <5質量%
篩残留物(Ro−Tap、>300μm) ≧80質量%
篩分級物(Ro−Tap、<75μm) ≦10質量%
炭素含分 0.1〜20.0質量%
を有し、かつ粉末の形か又はほぼ球状粒子(ミクロ顆粒)の形か又は顆粒として存在する沈降シリカである。
【0010】
本発明のもう1つの対象は、本発明による沈降シリカの製造法である。
【0011】
同様に本発明の対象は、エラストマー混合物、加硫性ゴム混合物及び/又はその他の加硫物、例えば空気タイヤ、タイヤトレッド、ケーブル外装、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、Vベルト、ローラ被覆、タイヤ、靴底、ガスケット及び制動エレメントにおける本発明によるシリカの使用である。
【0012】
本発明の対象は更に、本発明によるシリカを含有する、エラストマー混合物、加硫性ゴム混合物又はその他の加硫物並びにタイヤである。
【0013】
本発明による沈降シリカは特に、本発明による沈降シリカをゴムに混和した後に生じるヒステリシスがわずかであるため、混合物の機械的な動的負荷の際に引き起こされる発熱がわずかであり、結果的に、例えばタイヤの転がり抵抗が低くなるという利点を有する。更に、タイヤの摩耗をわずかにするために、良好な分散係数及び高い補強が達成される。
【0014】
従って全般的に、本発明による沈降シリカの特定の特性、特に
・孔径分布の高い相対幅γ
・高いシラノール基密度
・BET/CTAB比
により、以下の利点:
・エラストマー混合物及びゴム混合物中への混和の後の、孔径分布に基づく、極端に低いヒステリシス損失
・エラストマー混合物及びゴム混合物中での、比CTAB表面積値に基づく、高い補強性及び改善された摩耗特性
・良好な分散特性及び同時にゴムへの良好な混和特性
がもたらされる。
【0015】
pH5での低いゼータ電位は、有利に高いゴム活性及び架橋密度に寄与している。
【0016】
本発明の対象を以下に詳細に記載する。
【0017】
本発明において、シリカ及び沈降シリカという概念は同義語として用いられる。
【0018】
本発明によるシリカは、細孔容積分布関数の微分の極大の細孔直径よりも小さな細孔直径を有する細孔の広い孔径分布を有し、この孔径分布は水銀多孔度測定法を用いて測定される。シリカは種々の提供形 −例えば粉末、球状粒子又は顆粒の形− で存在することができるため、提供形に依存しない測定値を得るためには、まずシリカの機械的な加圧処理を行わねばならない。
【0019】
次いで、水銀多孔度測定法を用いて測定された3.5nm〜5μmの範囲内の細孔容積を評価する。そのために、累積細孔容積の負の対数微分のデータに対して、まず初めに最頻出の特徴的な孔径を決定するというアルゴリズムを適用する。この特徴的な孔径は典型的に10〜100nmの範囲内である。前記値から出発して、実験の部の記載に従って更なる評価を行う。それに伴って、非対称の孔径分布を考慮した孔径分布の相対幅γが得られる。相対幅γは、特徴的な、提供形とは無関係でかつ良好な再現性で測定することのできる指標であり、この指標は、最頻出の細孔よりも小さな直径を有する細孔のみを表す(図1を参照のこと)。この孔径範囲は主にシリカ凝集物へと集合した一次粒子間の細孔容積に相応し、かつその凝集に関する推断を可能にする。孔径分布の相対幅γはゴムへの沈降シリカの混和の後に特に低いヒステリシスを生じさせるため、タイヤの低い転がり抵抗を保証する。孔径分布の相対幅γは、有利に4.3〜10.0(g nm)/ml、特に有利に4.3〜8.0(g nm)/ml、極めて特に有利に4.5〜8.0(g nm)/ml並びに4.6〜7.0(g nm)/mlの範囲内である。
【0020】
更に、本発明による沈降シリカは高い絶対シアーズ数V2を有する。シアーズ数V2は、シリカのシラノール基の数を表すための1つの尺度である(R. K. Iler, "The Chemistry of Silica", John Wiley & Sons (1979)を参照のこと)。本発明によるシリカのシアーズ数V2は、28〜40ml/(5g)、有利に28〜38ml/(5g)、特に有利に28〜36ml/(5g)及び29〜36ml/(5g)の範囲内である。
【0021】
しかしながら、シラノール基の絶対数の記述のみでは、沈降シリカを十分に特徴付けるのに常に適当であるとは言えず、それというのも、高い表面積を有する沈降シリカは、通常、低い表面積を有する沈降シリカよりも高いシラノール基の絶対数を有するためである。従って、シアーズ数V2はシリカの表面積と関連付けて規定されねばならない。本発明による適用に関して、CTAB表面積はBET表面積よりも重要であると見なすべきであり、それというのも、CTAB表面積は外部からアクセス可能であるため、ゴム系との架橋に関して有効な表面積のための尺度であるためである。従って、シアーズ数V2/CTABの商が重要である。従って、シラノール基により生じる補強可能性を、導入された外部表面積及びそれにより結合パートナーにアクセス可能な比表面積当たりで表すことができる。本発明による沈降シリカは、先行技術の沈降シリカと比較して著しく高められた、CTAB表面積に対するシアーズ数V2の比0.18〜0.28ml/(5m2)が特徴的である。即ち、本発明による沈降シリカは特に外部表面積に関して極めて高いシラノール基の数を有する。有利に、CTAB表面積に対するシアーズ数V2の比は0.18〜0.28ml/(5m2)、特に有利に0.19〜0.27ml/(5m2)の範囲内である。
【0022】
シリカ表面上のシラノール基は、ゴム混合物中で、結合試薬との考えられる化学反応パートナーとして機能し、この化学反応パートナーはゴムマトリックスへのシリカの結合を可能にする。従って、出来る限り多いシラノール基の数により、シリカと結合試薬との間の結合の高い可能性、及びそれにより、ゴムマトリックスへのシリカの結合の高い可能性が達成され、これは結果的により高い補強可能性をもたらす。
【0023】
比CTAB表面積は主にシリカの補強特性のために極めて重要である(Janzen, Kraus, Rubber Chem. Technol. 44, 1287 (1971)参照)。補強可能性はCTAB表面積の増大と共に増加する。本発明による沈降シリカは、有利に105〜195m2/g、特に有利に110〜190m2/g、極めて特に有利に110〜175m2/gのCTAB表面積が特徴的である。特別な実施態様において、CTAB表面積は100〜139m2/gの範囲内、有利に105〜135m2/gの範囲内にある。もう1つの特別な実施態様において、本発明による沈降シリカは141〜200m2/g、有利に145〜190m2/g、極めて特に有利に145〜175m2/gのCTAB表面積を有する。
【0024】
孔径分布の相対幅γに加えて、細孔の種類、即ち細孔がゴムに到達可能であるか否かは、本発明によるシリカのもう1つの重要な基準である。細孔の種類はBET/CTAB比により表される。高いBET/CTAB比はミクロ多孔性を示すため、「内部」の −例えば小さな窒素分子には到達可能であるがゴムには到達可能でない− 表面積の高い割合を示す。本発明によるシリカのBET/CTAB比は1.3より大きくてよく、有利に1.3〜2.5の範囲内、特に有利に1.6〜2.4の範囲内、極めて特に有利に1.7〜2.2の範囲内である。本発明の特別な一実施態様において、BET/CTAB比は1.3〜1.69、有利に1.4〜1.69である。
【0025】
比BET表面積(S. Brunauer, P. H. Emmett, E. Teller, "Adsorption of Gases in Multimolecular Layers", J. Am. Chem. Soc. 60, 309 (1938)参照)は、ゴムへの混和特性、粗製混合物特性並びに加硫キネティクスに対するシリカの影響を表す。本発明によるシリカは、有利にCTAB表面積の少なくとも1.3倍の大きさのBET表面積を有し、特に有利に、BET表面積はCTAB表面積の少なくとも1.6倍の大きさでかつ500m2/gより小さく、極めて特に有利に、BET表面積はCTAB表面積の1.6〜2.5倍の大きさでかつ400m2/gより小さく、特に、BET表面積はCTAB表面積の1.65〜2.2倍の大きさでかつ350m2/gより小さい。本発明の特別な一実施態様において、BET表面積はCTAB表面積の1.3〜1.7倍、有利に1.4〜1.69倍の大きさである。
【0026】
表面活性、並びに、シリカへの結合試薬の結合力に関する更なる情報は、ゼータ電位の測定により得られる。ここで、所定のpH値で高周波電場でシリカの水性懸濁液から放出される音波が検出される。これはシリカの表面電荷に基づいて生じるため、結合反応に関与し得る電荷を有するシラノール基の1つの尺度である。本発明によるシリカは有利にpH5で−12〜−30mVのゼータ電位を有することができる。有利に、ゼータ電位は−12〜−25mV、特に有利に−13〜−21mV、極めて特に有利に−13〜−19mVである。
【0027】
更に、良好な分散を達成するために、本発明によるシリカの高いDBP吸収量は有用であることが明らかとなった。しかしながらここで、場合による造粒プロセスによってDBP価が低減されるため、シリカの比較は1つの提供形の範囲内でのみ可能であることに留意しなければならない。本発明によるシリカは200〜330g/(100g)のDBP価を有することができる。有利に、DBP価は、粉末及び球状粒子(ミクロ顆粒)に関しては250〜330g/(100g)であり、顆粒に関しては200〜270g/(100g)である。
【0028】
本発明によるシリカは、0.001〜5質量%、有利に0.001〜0.5質量%、特に有利に0.01〜0.3質量%、極めて特に有利に0.01〜0.15質量%の酸化アルミニウム含分を有することができる。
【0029】
本発明による沈降シリカは、種々の提供形で、例えば、レーザー回折を用いて測定された1〜80μmの粒径d50を有する粉末の形で存在してよい。粉末状粒子は不規則な外部形状を有してよいが、規則的な外部形状を有してもよく、即ち、該粉末状粒子は例えば実質的に球状であってもよい。本発明による沈降シリカは、篩残留物測定(Alpine)を用いて測定された80μm〜1000μmの粒径d50を有する実質的に球状の粒子(ミクロ顆粒)の形で存在してもよい。最後に挙げたケースでは、本発明によるシリカは有利にEP0937755に記載されているような噴霧塔乾燥を用いて製造され、この乾燥法のために特徴的な外部形状を示す(EP0937755の図を参照のこと)。これにより、EP0937755の記載は本発明の明細書の記載に明確に取り入れられる。本発明による沈降シリカが顆粒(d50>1000μm(Alpine篩残留物))の形で存在する場合、本発明によるシリカは、造粒後に、篩残留物測定(Ro−Tap)により粒子の少なくとも80質量%が300μmよりも大きく、最大で10質量%が75μmより小さくなるような粒径分布を有する。
【0030】
上記の有利な範囲を相互に独立して設定することができる。
【0031】
本発明による沈降シリカは、以下の方法:
a)アルカリ金属ケイ酸塩又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び/又は有機塩基及び/又は無機塩基の水溶液を装入する工程、その際、装入物は20〜40のアルカリ価を有するものとする、
b)前記装入物中に強力な撹拌下に55〜85℃で粘度が上昇するまで同時にアルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び酸性化剤を計量供給する工程
c)供給を35〜85分間、有利に工程b)の最後に達する温度を維持しながら停止する工程
d)55〜85℃で、有利に工程b)及び/又はc)と同じ温度で、撹拌下に同時にアルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び酸性化剤を、90〜140g/lの固体含分に達するまで供給する工程
e)酸性化剤を用いて酸性化し、2.5〜5.0のpH値にする工程、及び
f)濾過及び乾燥させる工程
により製造することができる。
【0032】
この場合、粘度上昇点は、沈降の進行中に沈降懸濁液の粘度が著しく上昇し始める時点に相当する。これに関してはEP0643015を参照のこと。
【0033】
有利に、工程a)〜e)の少なくとも1つにおいて、有利に工程b)〜e)の少なくとも1つにおいて、特に有利に工程b)〜d)において、極めて特に有利に工程b)〜e)において、沈降懸濁液は付加的な剪断装置を用いて強度に剪断される。有利に、工程b)及びd)において、硫酸は付加的な剪断装置の剪断ヘッドに直接計量供給され、直ちに、沈降懸濁液中への酸の強力な混和及びそれに伴う出来る限り均質でかつ迅速な分配が保証される。
【0034】
装入物は、沈降の最終容積の約20、30、40、50、60、70、80又は90%であってよい。装入物に施与される塩基性化合物は、特にアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩及びアルカリ金属ケイ酸塩の群から選択される。有利に、水ガラス及び/又は苛性ソーダ液が使用される。
【0035】
酸性化剤として、有利に硫酸が使用される。しかしながら、他の酸性化剤、例えばHCl、HNO3、H3PO4又はCO2を使用することもできる。
【0036】
アルカリ金属ケイ酸塩又はアルカリ土類金属ケイ酸塩として、有利に水ガラス(2.0〜3.5の質量率を有するケイ酸ナトリウム溶液)及び/又は別のケイ酸塩、例えばケイ酸カリウム又はケイ酸カルシウムが使用される。特に有利に、3.2〜3.5の質量率及び1.30〜1.45kg/lの密度を有する水ガラスが使用される。
【0037】
装入物中で調節されるアルカリ価(工程a)並びに工程b)及び/又はd)の間のアルカリ価は、20〜40、有利に20〜35、特に有利に25〜35である。
【0038】
工程b)及び/又はd)の間のアルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び酸性化剤の添加は、有利に、反応溶液のアルカリ価がそれぞれの沈降工程の間に一定となるように行われる。「一定」とは、アルカリ価がそれぞれの沈降工程の間に目標値から最大で2%のずれが許容されることを意味する。
【0039】
工程b)及びd)において供給される成分は、それぞれ同じか又は異なる濃度及び/又は供給速度を有してよい。変法において、双方の工程における使用される成分の濃度は同じであるが、工程d)における成分の供給速度は工程b)における成分の供給速度より高い。特に有利に、工程d)における成分の供給速度は工程b)における供給速度の125〜140%である。
【0040】
更に、場合により、有機塩又は無機塩の付加的な添加を工程a)〜e)の間に行うことができる。これは、溶液で、又は固体として、それぞれアルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び酸性化剤の添加時間に亘って連続的に、又はバッチ添加として実施することができる。塩を1つ又は2つの成分中に溶解させ、これらと同時に添加することも可能である。
【0041】
有利に、工程e)は二段階で実施される。酸性化剤の供給速度は、第一の部分工程において有利に工程d)の供給速度の90〜110%であり、第二の部分工程において有利に工程d)の供給速度の40〜60%である。
【0042】
無機塩として、有利にアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が使用される。特に、以下のイオンの全ての組合せを使用することができる:
Li+、Na+、K+、Rb+、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、H+、F-、Cl-、Br-、I-、SO32-、SO42-、PO33-、PO43-、NO3-、NO2-、CO32-、OH-、TiO32-、ZrO32-、ZrO44-、AlO2-、Al242-、BO43-
【0043】
有機塩として、ギ酸、酢酸及びプロピオン酸の塩が適当である。カチオンとして、前記アルカリ金属金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが挙げられる。添加溶液中のこれらの塩の濃度は0.01〜5モル/lであってよい。有利に、無機塩としてNa2SO4が使用される。
【0044】
本発明によるシリカの濾過、液化(例えばDE2447613による)及び長時間乾燥又は短時間乾燥は当業者に公知であり、例えば上記明細書中に挙げられた刊行物に供覧されている。シリカの濾過及び洗浄は有利に、最終生成物の導電率が<2000μS/cm、特に<1300μS/cmとなるように行われる。
【0045】
有利に、本発明によるシリカは気流乾燥器、噴霧乾燥器、多段乾燥器、ベルト乾燥器、回転管乾燥器、フラッシュ乾燥器、スピンフラッシュ乾燥器又は噴霧塔乾燥器中で乾燥される。前記乾燥変法には、アトマイザー、一成分又は二成分ノズル又は組み込まれた流動床を用いる操作が包含される。噴霧乾燥は例えばUS4094771に従って実施することができる。噴霧塔乾燥は例えばEP0937755に記載されているように実施することができる。噴霧乾燥された粒子は、レーザー回折を用いて測定された、15μmを上回る、有利に15〜80μmの平均直径を有することができる。噴霧塔乾燥された粒子は、有利に、篩分析(Alpine)を用いて測定された、80μmを上回る、特に90μmを上回る、有利に200μmを上回る平均粒径を有する。これにより、US4094771及びEP0937755の記載は本発明の明細書の記載に明確に取り入れられる。
【0046】
造粒は例えばAlexanderwerk AG, Remscheid社のWP 50N/75タイプのローラプレスを用いて実施することができる。この場合有利に、粉末状の生成物を、バインダー又は液体を更に添加することなく、単軸スクリューを有する水平供給系を用いて真空系を経て脱気し、両側に取り付けられた垂直配置ロールの間に均一に導入する。ここで粉末をプレスしてクラスト(Schuelpe)にし、破砕機を用いて所望の最大顆粒サイズにする。
【0047】
場合により、本発明によるシリカを、直鎖、環式及び/又は分枝鎖シラン、シラザン、シロキサン化合物及び/又はケイ素有機化合物で変性させることができる。置換基は、例えば脂肪族化合物、オレフィン、芳香族化合物、アリール芳香族化合物から成ってよく、前記置換基は更に以下の置換基を有することができる:−SCN、−SH、−Cl、−NH2、−OC(O)CHCH2、−OC(O)C(CH3)CH2、−S、−S2、−S3、−S4、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、シラノール基、シアニド基、チオシアニド基、ハロゲン基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、安息香酸基、安息香酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、アクリラート基、メタクリラート基及び/又はオルガノシラン基。
【0048】
有利に、一方ではシラノール基含有充填剤との結合を可能にし、他方ではポリマーとの結合を可能にする二官能性シランが使用される。前記有機ケイ素化合物の例は以下の通りである:
ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン。他の有機ケイ素化合物は、WO99/09036、DE10163945及びDE10223658に記載されている。これにより、前記特許明細書の記載は本発明の明細書の記載に明確に取り入れられる。本発明の有利な一実施態様において、シランとしてビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン又はビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルファンを使用することができる。
【0049】
1種以上の前記化合物を用いた、場合により造粒された、造粒されていない、粉砕された及び/又は粉砕されていない沈降シリカの変性を、沈降シリカ100部に対して0.5〜50部、特に沈降シリカ100部に対して1〜15部、極めて特に1〜10部の混合で行うことができ、その際、沈降シリカと上記化合物との反応を、混合物製造の間に(in-situ)行うか、又は、外部で噴霧し、引き続き混合物を温度処理することにより行うか、又は、変性剤とシリカ懸濁液とを混合し、引き続き乾燥させ、温度処理することにより行うか(例えばDE3437473及びDE19609619に従って)、又は、DE19609619又はDE4004781に記載された方法に従って行うことができる。
【0050】
変性されたシリカの炭素含分は、0.1〜20質量%、有利に0.1〜10質量%、特に有利に0.5〜5質量%である。
【0051】
本発明のもう1つの対象は、エラストマー混合物、加硫性ゴム混合物及び/又はその他の加硫物、例えば空気タイヤ、タイヤトレッド、ケーブル外装、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、Vベルト、ローラ被覆、タイヤ、靴底、ガスケット及び制動エレメントにおけるシリカの使用である。
【0052】
本発明によるシリカを、エラストマー混合物、タイヤ、又は加硫性ゴム混合物中に、補強性充填剤として、ゴム100部に対して5〜200部の量で、粉末、球状生成物又は顆粒として、有機後処理を実施するか又は実施せずに混入することができる。
【0053】
ゴム混合物とエラストマー混合物とは、本発明の意味において同等のものとみなされる。
【0054】
上記の有機後処理を実施するか又は実施しない本発明によるシリカのみを充填剤として含有する混合物の他に、エラストマー混合物又はゴム混合物に、付加的に1種以上の多少なりとも補強性を有する充填剤が充填されていてよい。
【0055】
他の充填剤として、以下の材料を使用することができる:
・カーボンブラック:ここで使用することのできるカーボンブラックは、フレームブラック法、ファーネスブラック法又はガスブラック法により製造され、20〜200m2/gのBET表面積を有し、例えばSAF−、ISAF−、HSAF−、HAF−、FEF−又はGPF−カーボンブラックである。カーボンブラックは場合によりヘテロ原子、例えばケイ素を含有してもよい。
【0056】
・例えばハロゲン化ケイ素の火炎加水分解により製造された高分散性熱分解法シリカ。該シリカは場合により、他の金属酸化物、例えばAl−、Mg−、Ca−、Ba−、Zn−及びチタン酸化物との混合酸化物として存在してもよい。
【0057】
・他の市販のシリカ
・20〜400m2/gのBET表面積及び10〜400nmの一次粒径を有する合成ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム又はケイ酸カルシウム
・合成又は天然酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウム
・天然ケイ酸塩、例えばカオリン及びその他の天然起源の二酸化ケイ素化合物
・ガラス繊維及びガラス繊維製品(マット、ロープ)又はマイクロガラス球
・澱粉及び変性した種類の澱粉
・天然充填剤、例えば粘土及びケイ石白墨。
【0058】
ブレンド比は、ここでも、完成ゴム混合物の目的とされる特性像に従う。本発明によるシリカとその他の上記充填剤(混合物としても)との5〜95%の比が可能であり、この範囲で実現することもできる。
【0059】
特に有利な実施態様では、混合物を製造するために、各々ゴム100質量部に対して、完全にか又は部分的に本発明による沈降シリカから成るシリカ10〜150質量部を、場合によりカーボンブラック0〜100質量部並びに有機ケイ素化合物1〜10質量部と一緒に使用することができる。
【0060】
本発明による沈降シリカ、有機シラン及び他の充填剤と並んで、エラストマーは、ゴム混合物のもう1つの重要な成分を形成する。ここで、単独ポリマー又は他のゴムとのブレンドとしての、天然及び合成の油展又は非油展のエラストマー、例えば天然ゴム、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン含量1〜60質量%、有利に2〜50質量%を有する、特に溶液重合法により製造されたスチレン/ブタジエン−コポリマー(SBR)、ブチルゴム、イソブチレン/イソプレン−コポリマー(IIR)、アクリロニトリル含量5〜60質量%、有利に10〜50質量%を有するブタジエン/アクリロニトリル−コポリマー(NBR)、部分水素化又は完全水素化されたNBRゴム(HNBR)、エチレン/プロピレン/ジエン−コポリマー(EPDM)並びに前記のゴムの混合物が挙げられる。
【0061】
更に、上記のゴムを含有するゴム混合物に関して、以下の付加的なゴムが該当する:カルボキシルゴム、エポキシゴム、トランス−ポリペンテナマー、ハロゲン化ブチルゴム、2−クロロ−ブタジエンから成るゴム、エチレン−酢酸ビニル−コポリマー、エチレン−プロピレン−コポリマー、場合により天然ゴムの化学誘導体並びに変性天然ゴム。
【0062】
有利な合成ゴムは、例えばW. Hofmann著"Kautschuktechnologie", Genter Verlag, Stuttgart 1980に記載されている。
【0063】
本発明によるタイヤの製造のために、特にガラス転移温度が−50℃より高いアニオン重合S−SBRゴム(溶液SBR)並びにジエンゴムとのその混合物が重要である。
【0064】
このシリカの混和及びこのシリカを含有する混合物の製造は、ゴム工業で慣用の方法で密閉式混合機又はロールミルで有利に80〜200℃で行なわれる。このシリカの提供形又は使用形は、粉末、球状生成物としてでもよいし顆粒としてでもよい。
【0065】
本発明によるゴム加硫物は、他のゴム助剤、例えば反応促進剤、老化防止剤、熱安定化剤、遮光剤、オゾン防止剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物並びに活性化剤、例えばトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール及び/又はヘキサントリオールを慣用の配量で含有してよい。前記化合物はゴム工業において公知である。
【0066】
ゴム助剤は、特に用途に応じた公知量で使用することができる。慣用量は、例えばゴムに対して0.1〜50質量%の量である。架橋剤としては、硫黄又は硫黄提供物質を使用することができる。本発明によるゴム混合物は、更に加硫促進剤を含有してよい。好適な主促進剤の例は、0.5〜3質量%の量でのメルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメートである。助促進剤(Cobeschleuniger)の例は、0.5〜5質量%の量でのグアニジン、チオ尿素及びチオカーボナートである。硫黄は、通常、ゴムに対して0.1〜10質量%、有利に1〜3質量%の量で使用することができる。
【0067】
本発明によるシリカは、促進剤及び/又は硫黄ともペルオキシドとも架橋可能なゴム中で使用できる。
【0068】
本発明によるゴム混合物の加硫は、100〜200℃、有利に130〜180℃の温度で、場合により10〜200バールの圧力下に行うことができる。ゴムと充填剤、場合によってはゴム助剤及び有機ケイ素化合物との混合は、公知の混合装置中、例えばローラ、密閉式混合機及び混合押出機中で実施することができる。
【0069】
本発明によるゴム混合物は、成形体の製造のために、例えば空気タイヤ、夏−、冬−及び通年タイヤ用タイヤトレッド、乗用車タイヤ、多用途車タイヤ、オートバイタイヤ、タイヤ二次部品、ケーブル外装、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、ローラライニング、靴底、パッキンリング及び制動素子の製造のために好適である。
【0070】
先行技術による沈降シリカを含有する同一のゴム混合物に対して、本発明によるシリカを含有するゴム混合物は、ヒステリシス損失、迅速な加硫時間及び極めて良好な補強特性の点で有利である。先行技術による同じ表面積範囲(CTAB)にあるシリカに対して、本発明によるシリカは改善された摩耗特性を有する。
【0071】
本発明によるゴム混合物は、殊に、乗用車−及びオートバイ−タイヤトレッドの製造のために、また、良好な摩耗抵抗及び良好な冬性能における低下された転がり抵抗を有する多用途車タイヤの製造のためにも好適である。
【0072】
更に、本発明によるゴム混合物は、有機ケイ素化合物の添加なしで、典型的なトレッドカーボンブラックとのブレンド中で、建築−、農業機械−及び坑内車タイヤのカット及びチップ特性の改善のためにも好適である(定義及び他の実施態様は、ハンブルグでのTire Technology 2003においてDr. W. Niedermeierにより発表された"New insights into the tear mechanism"及び該刊行物中の参考文献を参照のこと)。
【0073】
反応条件及び本発明による沈降シリカの物理的/化学的データは次の方法で測定される:
フィルターケーキの固体含分の測定
この方法により、フィルターケーキの固体含分を揮発性分を105℃で除去することにより測定する。
【0074】
そのために、乾燥させて風袋の質量を測定した磁器皿(直径20cm)中にフィルターケーキ100.00gを量り入れる(初期重量E)。場合によりフィルターケーキをへらで粉砕し、最大1cm3の易流動性の小片を得る。試料を105±2℃で乾燥棚中で重量が一定となるまで乾燥させる。引き続き、試料を、乾燥剤としてのシリカゲルの入ったデシケータ棚中で室温に冷却する。最終重量Aを重量測定により決定する。
【0075】
固体含分(FG)(%)を以下:
FG=A/E*100%
に従って決定する。ここで、A=最終重量(g)であり、E=初期重量(g)である。
【0076】
沈降懸濁液の固体含分の測定
沈降懸濁液の固体含分を重量測定により試料の濾過後に測定する。均質化させた沈降懸濁液100.0ml(V懸濁液)を室温でメスシリンダーを用いて量り取る。試料を磁器吸引濾過用漏斗中の円形フィルター(572タイプ、Schleicher & Schuell社)上で吸引濾過するが、フィルターケーキの亀裂形成を回避するために乾燥吸引はしない。引き続き、フィルターケーキを蒸留水100.0mlで洗浄する。洗浄したフィルターケーキを風袋の質量を測定した磁器皿に移し、105±2℃で乾燥棚中で重量が一定となるまで乾燥させる。室温に冷却した後、乾燥シリカの重量(m試料)を測定する。
【0077】
固体含分を以下:
固体含分(g/l)=m試料(g)/V懸濁液(l)
に従って決定する。
【0078】
シリカフィードの固体含分の測定
シリカフィードをIR乾燥機中で重量が一定となるまで乾燥させる。乾燥損失は主に水分から成る。
【0079】
風袋の質量を測定したアルミニウム皿にシリカフィード2.0gを入れ、IR乾燥ユニット(Mettler社、LP 16タイプ)の蓋を閉める。開始ボタンを押した後、懸濁液の乾燥が105℃で開始し、単位時間当たりの重量減少が2mg/(120s)の値を下回ると自動的に終了する。
【0080】
重量減少(%)は装置により0〜100%の様式の選択で直接表示される。固体含分を以下:
固体含分(%)=100%−重量減少(%)
に従って決定する。
【0081】
アルカリ価の測定
アルカリ価測定(AZ価)とは、pH値が8.30になるまでのアルカリ性溶液もしくは懸濁液の直接電位差滴定における塩酸の消費量(ml)(試料容積50ml、蒸留水50ml及び使用される塩酸濃度0.5モル/l)であると解釈される。これにより、溶液もしくは懸濁液の遊離アルカリ含分が明らかになる。
【0082】
pH装置(Knick社、766タイプpH-Meter Calimatic、温度センサ付き)及びpH電極(Schott社、N7680タイプの組合せ電極)を2種の緩衝溶液(pH=7.00及びpH=10.00)を用いて室温で校正する。組合せ電極を、沈降懸濁液50.0mlと脱イオン水50.0mlとから成る40℃に調温された測定溶液もしくは測定懸濁液に浸漬させる。引き続き、濃度0.5モル/lの塩酸溶液を、pH値が8.30で一定となるまで少量ずつ添加する。シリカと遊離アルカリ含分との間の平衡がゆっくりと生じることに基づき、酸消費量の最終的な読み取りまで15分の待ち時間が必要である。選択された物質量及び濃度において、読み取られた塩酸消費量(ml)はそのままアルカリ価に相当し、このアルカリ価は無次元で表される。
【0083】
pH値の測定
シリカのpH値の測定を、5%水性懸濁液として室温でDIN EN ISO 787−9に準拠して行う。前記規格の規準値に対して初期重量を変化させた(脱イオン水100mlに対してシリカ5.00g)。
【0084】
導電率の測定
シリカの導電率の測定を、4%水性懸濁液として室温でDIN EN ISO 787−14に準拠して行う。前記規格の規準値に対して初期重量を変化させた(脱イオン水100mlに対してシリカ4.00g)。
【0085】
湿分の測定
シリカの湿分を、ISO787−2に準拠して、循環空気乾燥棚中で105℃で2時間乾燥させた後に測定する。この乾燥損失は主に水分から成る。
【0086】
BET表面積の測定
粉末状、球状又は顆粒状のシリカの比窒素表面積(以下でBET表面積と呼称)を、ISO 5794−1/Annex Dに準拠してAREA-meter (Stroehlein社、JUWE)を用いて測定する。
【0087】
CTAB表面積の測定
この方法は、ASTM3765もしくはNFT45−007(第5.12.1.3章)に準拠したシリカの「外」表面へのCTAB(N−ヘキサデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)の吸着に基づく。
【0088】
CTABの吸着は水溶液中で撹拌及び超音波処理下に行われる。吸着されていない過剰のCTABを、滴定処理装置(Titroprozessor)を用いたNDSS(ジオクチルナトリウムスルホスクシナート溶液、"Aerosol OT"溶液)での逆滴定によって測定し、その際、最終点は溶液の混濁の最大によって与えられ、ホトトロード(Phototrode)で測定される。実施される全操作の間の温度は、CTABの再結晶を防ぐために23〜25℃である。逆滴定は、以下の反応式に基づく:
【化1】

【0089】
装置
滴定処理装置METTLER Toledo DL55タイプ及び滴定処理装置METTLER Toledo DL70タイプ。それぞれpH電極Mettler DG111タイプ及びホトトロードMettler DP550タイプを備えている。
【0090】
滴定ビーカー、100mlでポリプロピレン製
滴定ガラス容器、150mlで蓋付
圧力濾過装置、100mlの内容量
硝酸セルロースから成り、細孔サイズ0.1μm、径47mmのメンブランフィルター、例えばWhatman(注文番号7181−004)
試薬
CTABの溶液(脱イオン水中でCCTAB=0.015モル/l)及びNDSSの溶液(脱イオン水中で濃度=0.00423モル/l)を、即使用可のものとして購入し(Bernd. Kraft GmbH社, 47167 Duisburg:注文番号6056.4700、CTAB溶液 濃度0.015モル/l;注文番号6057.4700、NDSS溶液 0.00423モル/l)、25℃で貯蔵し、1ヶ月以内に消費する。
【0091】
実施
1.盲目滴定
5mlのCTAB溶液の滴定のためのNDSS溶液の消費量を、毎日1回、各々の一連の測定の前に試験すべきである。このためにホトトロードを滴定の開始前に1000±20mVに調整する(100%の透明度に相当する)。
【0092】
正確に5.00mlのCTAB溶液を滴定ビーカー中にピペット導入し、50.0mlの脱イオン水を添加する。撹拌しながらNDSS溶液での滴定を当業者によく知られた測定法に従って滴定処理装置DL55を用いて溶液の最大の混濁度にまで行う。NDSS溶液の消費量VAをmlで規定する。各滴定は三重測定として行うべきである。
【0093】
2.吸着
湿分5±2%(場合により湿分を105℃での乾燥棚中での乾燥又は均一な湿潤によって調整する)を有する、粉末状、球状又は顆粒状のシリカ10.0gをミル(Krups社、モデルKM75、商品番号2030−70)を用いて30秒間微粉砕する。微粉砕された試料の正確に500.0mg(初期重量E)をマグネットスターラを有する150mlの滴定容器中に移し、そして正確に100.0mlのCTAB溶液(T1)を供給する。滴定容器の蓋を閉め、ウルトラ−ツラックスT25撹拌機(Ruehrwelle KV-18G、18mmの直径)を用いて18000rpmで完全に湿潤するまで最大で1分間撹拌する。滴定容器を滴定処理装置DL70に固定し、そして懸濁液のpH値をKOH(0.1モル/l)で9±0.05の値に調整する。
【0094】
懸濁液を滴定容器中で超音波浴(Bandelin社、 Sonorex RK 106S、35kHz、実動力100Wないし最大出力200W)において25℃で4分間超音波処理する。引き続き直ちに圧力濾過をメンブランフィルタを通して窒素圧1.2バールで行う。最初の5mlの流出物を廃棄する。
【0095】
3.滴定
5.00mlの残りの濾液を100mlの滴定ビーカー中にピペット導入し、そして脱イオン水で50.00mlにまで補充する。該滴定ビーカーを滴定処理装置DL55に固定し、そして撹拌しながらNDSS溶液での滴定を最大の混濁度にまで行う。NDSS溶液の消費量VBをmlで規定する。各滴定は三重測定として行うべきである。
【0096】
【化2】

【0097】
CTAB表面積は無水シリカに関するものであるため、以下の補正を行う。
【0098】
【化3】

【0099】
シリカの湿分を記載された方法「湿分の測定」に従って測定する。
【0100】
DBP吸収量の測定
沈降シリカの吸収度のための尺度であるDBP吸収量(DBP価)を規格DIN53601に準拠して以下のように測定する:
0〜10%の湿分含有率(場合により湿分含有率は乾燥棚中での105℃での乾燥によって調整される)を有する粉末状又は球状のシリカ12.50gをブラベンダー吸収計"E"の混練室(商品番号279061)に投入する(トルクセンサの出力フィルタの減衰なし)。顆粒の場合、3.15〜1mmの篩分級物(Retsch社の特殊鋼製篩)を使用する(3.15mmの細孔幅を有する篩を通してのプラスチックへらを用いた顆粒の緩やかな加圧による)。永続的に混合しながら(混練ブレードの回転速度 125rpm)、室温で"Dosimaten Brabender T 90/50"によってジブチルフタラートを4ml/分の速度で混合物中に滴加する。混入を低い所要エネルギーでのみ行い、そしてデジタルディスプレイをもとに追跡する。測定の終わりに向かって混合物はペースト状になり、これは所要エネルギーの急上昇により示される。600桁(0.6Nmのトルク)を指示した場合に、電気接点を通じて混練機もDBP計量供給も切断する。DBP供給のためのシンクロ受信機がデジタル計数器と連結されているので、DBPの消費量をmlで読み取ることができる。
【0101】
DBP吸収量はg/(100g)で示され、以下の式をもとに算出される:
【化4】

【0102】
DBP吸収量は水不含の乾燥シリカについて定義されている。湿式の沈降シリカを使用する場合には、DBP吸収量の算出のための補正値Kを考慮しなければならない。この値を以下の補正表をもとに算出することができ、例えばシリカの含水率5.8%はDBP吸収量について33g/(100g)の上乗せを意味する。シリカの湿分を、「湿分もしくは乾燥損失の測定」の方法に従って測定する。
【0103】
【表1】

【0104】
シアーズ数の測定
pH6〜pH9の範囲の水酸化カリウム溶液によるシリカの滴定によって、改変されたシアーズ数(以下にシアーズ数V2と呼称)を遊離シラノール基の数についての尺度として規定できる。
【0105】
測定法は以下の化学反応に基づき、その際、≡SiOHはシリカのシラノール基を抽象化するものである:
【化5】

【0106】
実施
5±1%の湿分を有する粉末状、球状又は顆粒状のシリカ10.00gをIKAユニバーサルミルM20(550W;20000rpm)で60秒間均一に微粉砕する。場合により、出発物質の湿分含有率を乾燥棚中での105℃での乾燥又は均一な湿潤によって調整し、微粉砕を繰り返さねばならない。こうして処理されたシリカ2.50gを、室温で250mlの滴定容器中に量り入れ、メタノールp.A. 60.0mlを混合する。試料の完全な湿潤化後に、脱イオン水40.0mlを添加し、ウルトラ−ツラックスT25撹拌機(Ruehrwelle KV-18G、18mmの直径)を用いて18000rpmの回転数で30秒間分散させる。脱イオン水100mlで容器の縁及び撹拌機に付着した試料粒子を懸濁液中にすすぎ、サーモスタットを備えた水浴中で25℃に調温する。pH測定装置(Knick社、型:766の温度センサを有するpH計Calimatic)及びpH電極(Schott社の組合せ電極、N7680型)を緩衝溶液(pH7.00及び9.00)を使用して室温で校正する。pH計を用いて、まず懸濁液の出発pH値を25℃で測定し、次いで水酸化カリウム溶液(0.1モル/l)もしくは塩酸溶液(0.1モル/l)での結果に応じてpH値を6.00に調整する。以下のパラメータを伴う動的滴定様式を選択する:増加滴定容積Vmin=0.05ml〜Vmax=1.0ml;容積拡張の間の待ち時間tmin=2.0s〜tmax=20.0s。KOH溶液もしくはHCl溶液のpH6.00までの消費量(ml)はV1’に相当する。次いで塩化ナトリウム溶液20.0ml(NaClp.A. 250.00gを脱イオン水で1lにまで補充する)を計量供給する。次いで0.1モル/lのKOHで滴定をpH値9.00まで実施する。pH9.00までのKOH溶液の消費量(ml)はV2’に相当する。
【0107】
引き続き容量V1’もしくはV2’をまず1gの理論上の初期重量に規格化し、5を乗じ、それによってV1及びシアーズ数V2をml/(5g)の単位にする。
【0108】
孔径分布の相対幅γの測定
この方法により、シリカの孔径分布の相対幅γを水銀多孔度測定法を用いて測定する。前記方法は、(表面張力480mN/m及び接触角140°での)DIN 66133によるHg注入に基づくものであり、その際、Micromeritics社のAutopore IV 9500装置を使用する。
【0109】
シリカを測定前に加圧処理する。このためにManual Hydraulic Press(注文番号15011、Specac Ltd.社、River House, 97 Cray Avenue, Orpington, Kent BR5 4HE, U.K.)を利用する。ここで、Specac Ltd.社の内径13mmの「ペレットダイ」にシリカ250mgを量り入れ、ディスプレイにより1tの負荷を印加する。この負荷を5秒間維持し、場合により後調節する。引き続き、試料を放圧し、循環空気乾燥棚中で105±2℃で4時間乾燥させる。
【0110】
タイプ10の針入度計へのシリカの秤量を0.001gの精度で行い、測定の良好な再現性のために、「ステム使用率」、即ち針入度計の充填のために消費された百分率でのHg容積が20〜40%となるように選択する。引き続き、針入度計をゆっくりと排気してHg50μmにし、この圧力で5分間放置する。
【0111】
Autopore装置の操作を、操作指示に従ってSoftware Version IV 1.05を用いて行う。各測定値を針入度計の空測定分だけ補正する。測定範囲は0.0025〜420MPaであり、その際、少なくとも136の平衡測定点(10秒の装置固有の基準)を用いる(0.0025〜0.25MPaの範囲内:30点、0.25〜15MPaの範囲内:53点、15〜150MPa:40点、150〜420MPaの範囲内:13点)。増加侵入容積が>0.04ml/gである場合、場合によって前記ソフトウェアは更なる測定点を導入する。侵入曲線の平滑化を装置ソフトウェアの"smooth differentials"機能により行う。
【0112】
孔径分布の相対幅γを測定するために、3.5nm〜5μmの細孔直径範囲内の侵入曲線の負の対数微分のデータに対して以下のアルゴリズムを適用する:
このアルゴリズムは、侵入曲線の負の対数微分の連続する3つの測定点から成る、大きな細孔直径から出発する可動領域を利用し、点を通じて放物線を描く。放物線の極大を細孔直径aにおける求める極大Aと定義する。点aが求める細孔直径範囲内にあり、かつ侵入曲線の負の対数微分の大域的極大であるかどうかをチェックする。そうでない場合には、領域を1点分ずらして再度放物線を描き、2つの基準が満たされるまでこのプロセスを繰り返す。その後、Bを0.300Aと定義する。bはaよりも小さい曲線の細孔直径を表し、ここで初めて値Bが達成される。最終的に、孔径分布の相対幅γはγ=(a−b)/(A−B)=(a−b)/(0.7A)と定義され、その際、a及びbはナノメートルの単位を有し、γは(g nm)/mlの単位を有する。
【0113】
i測定点及び指標a、b、A並びにBを有する細孔直径xに関する式1による累積細孔容積Vの負の対数微分の典型的な曲線形を図1に示す。
【0114】
【化6】

【0115】
ゼータ電位の測定
該方法により、pH5でのシリカのゼータ電位を動電学的音波振幅(ESA)を用いて測定する。
【0116】
そのために、まず試料を105℃±2℃で5時間乾燥させ、その後、蒸留水中の1体積%シリカを含有する懸濁液100mlを調製する。そのために必要な粒子密度をHe比重測定法(DIN66137−2)を用いて測定する。分散を超音波プローブ(超音波変換器UW2200を備えたBandelin Sonopuls HD2200、出力100%、サイクル8(80%パルス、即ち出力0.8s及び休止0.2s)及びブースターホーンSH 213 G、フラットチタンチップTT 13、φ13mm、浸漬深さ1cm)を用いて150mlガラスビーカー(高さ9.5cm、外径5cm)中で5分間行い、このガラスビーカーを超音波処理期間に亘って氷浴中で冷却する。
【0117】
室温にした懸濁液を電磁撹拌機で撹拌し、蠕動ポンプにより、Matec社のESA-8000装置のPPL-80センサーに導通してポンプ輸送する。室温での自動電位差滴定を5モルHNO3を用いて、かつpH値が5になるまでの30sの遅延時間で行う。懸濁液の初期pH値が<5である場合、滴定を5モルNaOH溶液を用いてpH値が5になるまで行う。評価を装置ソフトウェアVersion pcava 5.94を用いて行う。
【0118】
pH5でのゼータ電位を算出する:
【化7】

【0119】
測定のためには平均粒子半径の値が必要であり、この値は上述の超音波処理された懸濁液をもとに動的光散乱法を用いて測定される。そのために、Horiba LB-500装置を使用する(半径=0.5×粒子分布の体積加重平均値、算出レベル=50、セル密度1cm、光学モデル:液体屈折率 実部=1.333;材料屈折率 実部=1.45;虚部=0.01)。
【0120】
レーザー回折を用いた粒径の測定
粉末の粒径の測定のためのレーザー回折の適用は、粒子が単色光を種々の強度パターンを伴って全方向に散乱するという現象に基づく。この散乱は粒径に依存する。粒子が小さいほど散乱角は大きくなる。
【0121】
試料準備及び測定(モジュールの洗浄等)を、親水性沈降シリカの場合には脱イオン水を用いて行い、水湿潤性が不十分である沈降シリカの場合には純粋なエタノールで行う。
【0122】
測定開始前に、レーザー回折装置LS 230 (Coulter社)及び液体モジュール(Small Volume Module Plus, 120 ml, Coulter社)を2時間加温し、該モジュールを脱イオン水で3回洗浄し、校正し、かつ疎水性沈降シリカの場合にはエタノールで3回洗浄する。
【0123】
装置ソフトウェアのコントロールバーで、メニュー項目「測定」によってファイルウィンドー"光学モデルを計算する"を選択し、屈折率を.rfdファイルで規定する:液体屈折率B.I.実部=1.332(エタノールに関しては1.359);材料屈折率 実部=1.46;虚部=0.1;形状因子1。更に、このファイルウィンドーにおいて以下の項目を選択する:オフセット測定、調整、バックグラウンド測定、測定濃度セット、試料情報入力、測定情報入力、測定時間60s、測定数1、PIDSデータなし、サイズ分布。ポンプ速度を装置上で30%となるように調節する。
【0124】
脱イオン水40ml中のシリカ1gの均質な懸濁液の添加を、2mlの使い捨てピペットを用いて、装置の液体モジュールへ、8〜12%の光吸収で一定の濃度が達成されかつ装置が「OK」を報告するように行う。この測定を室温で行う。生データ曲線から、ソフトウェアによって、体積分布をもとにMie理論及び光学モデルパラメータ(.rfdファイル)を考慮して粒径分布及びd50値(中央値)が算出される。
【0125】
篩残留物の測定(Alpine)
この篩残留物測定は、DIN ISO 8130−1に準拠し、Alpine社のエアジェット篩装置S 200を用いたエアジェット篩分けである。ミクロ顆粒及び顆粒のd50値の測定のために、>300μmのメッシュ幅の篩も使用する。d50値を測定するために、篩がd50値を図2に従って決定できるような粒径分布をもたらすように篩を選択しなければならない。グラフ表示及び評価をISO 2591−1、第8.2章と同様に行う。
【0126】
50値とは、粒子の50%がd50値の粒子直径を有する粒子よりも小さいか又はこれと同じ粒子直径を有する累積粒径分布における粒子直径であると解釈される。
【0127】
篩残留物の測定(Ro−Tap)
この方法を用いて、顆粒の、比較的粗度の高い(>300μm)粒子の割合及び比較的微細な(<75μm)粒子の割合を篩分けにより測定する。
【0128】
篩皿、それぞれ200mmの篩直径を有する、金属篩網を有する分析篩(DIN ISO 565 T.2、公称メッシュ幅75μm)、金属篩網を有する分析篩(DIN ISO 565 T.2、公称メッシュ幅150μm)並びに金属篩網を有する分析篩(DIN ISO 565 T.2、公称メッシュ幅300μm)を使用する。篩スタックを上記の順序でTyler社のタイムスイッチを備えた分析篩機器Ro-Tap B 8260中に導入し、シリカ顆粒100.00gの均一な試料量を最上部の篩に移す。篩蓋及びビーターを載置し、篩分けを円振動及び叩打振動により5分間行う。
【0129】
篩残留物(Ro−Tap)を以下に従って決定する:
【化8】

【0130】
炭素含分の測定
シリカ中の炭素含分の測定を元素分析器LECO CS 244を用いて行う。ここで、シリカをセラミック坩堝に量り入れ、燃焼添加物を混合し、誘導炉中で酸素流下に加熱する。存在する炭素はここで酸化されてCO2となる。このガス量を赤外線検出器により定量化する。
【0131】
本来の測定の前に、適当な参照材料(例えば炭素6.17質量%を含有する炭化タングステン)を用いて装置の校正を行う。シリカに関して、150〜200mgを精度1mgでセラミック坩堝に量り入れる。試料材料をLecocel II(タングステン−錫(10%)合金の粉末)1g及び鉄屑0.7gで覆う。引き続き、坩堝の蓋を閉める。誘導炉を最大出力にセットし、10秒間酸素でパージする。坩堝を誘導炉中に置いた後、自動測定及び評価を開始する。試料1つにつき測定を3回実施する。結果は、オリジナルの物質に対して、かつ質量%で示される。
【0132】
酸化アルミニウム含分の測定
酸化アルミニウム含分の測定をDIN EN ISO 3262−18に準拠してフレーム原子吸光分析を用いて309.3nmの波長で行う。シリカ約20gを精度0.01gで白金坩堝に量り入れ、蒸留水で湿潤させる。濃フッ化水素酸(40%、p.a.)1mlを供給し、混合物を発煙するまで砂浴中で加熱する。シリカが完全に溶解するまでゆっくりと硝酸を少量ずつ添加する。乾燥するまで蒸発させた後、残留物を濃塩酸3ml中に溶解させる。冷却させた溶液を定量的に100ml測定ビーカーに移し、そこに蒸留水を注いで100mlにする。
【0133】
このように調製した溶液を操作指示に従ってフレーム原子吸光分析装置中で試験する(波長:309.3nm、スリット S:0.7nm、ガス流:アセチレン/N2O)。
【0134】
酸化アルミニウム含分の測定をオリジナルの試料で測定するが、但しこの含分は1000℃で2時間強熱された試料に対するものである:
【化9】

【0135】
分散係数の決定
分散係数を、"Entwicklung eines Verfahrens zur Charakterisierung der Fuellstoffdispersion in Gummimischungen mittels einer Oberflaechentopographie" A. Wehmeier; Diplomarbeit 1998, Fachhochschule Muenster, Abteilung Steinfurt、化学工学分野及び"Filler dispersion Analysis by Topography Measurements" Degussa AG, Applied Technology Advanced Fillers, Technical Report TR 820に記載されたトポグラフィーを用いて決定することができる。
【0136】
また、分散係数はDeutschen Institut fuer Kautschuktechnologie、Hannover在でDIAS法(光学的)を用いて決定することもできる(H. Geisler, DIK aktuell, 第1版 (1997)及びMedalia, Rubber Age, 1965年4月を参照のこと)。
【0137】
達成可能な最も良好な分散度は100%であり、従って理論的に最も劣悪な分散度は0%である。90%以上の分散係数を有するシリカは高分散性(HD)と等級付けされる。
【0138】
表面トポグラフィーを用いた分散係数の測定に関する説明:
【化10】

【0139】
以下の実施例は本発明を詳細に説明するものであり、その範囲を制限するためのものではない。
【実施例】
【0140】
実施例1
皿形鏡板、MIG傾斜ブレード撹拌装置系及びEkato流体剪断タービンを備えたステンレス特殊鋼製の二重ジャケット反応器(高さ1.60m、内径1.60m)に、水1202l並びに水ガラス(密度1.348kg/l、SiO2 27.0質量%、Na2O 8.05質量%)172.4kgを装入する。引き続き、強力な撹拌及び剪断下に温度79℃で35分間に亘って、上記の水ガラス5.85kg/分と硫酸(密度1.83kg/l、H2SO4 96質量%)約0.65kg/分とを同時に供給する。剪断タービンへの硫酸の計量供給を、反応媒体中で供給の全時間に亘ってAZ価が30.0+/−0.3となるように調節する。2種の原料添加を停止し、得られた懸濁液を79℃で60分間強力に撹拌し、剪断する。最終的に、引き続き強力な撹拌及び剪断下に、79℃で50分間に亘って、上記の水ガラス8.00kg/分と上記の硫酸約0.90kg/分とを同時に供給する。硫酸の計量供給を、再度、反応媒体中でAZ価が30.0+/−0.3となるように調節する。水ガラス添加を停止し、pHが7.0(室温で測定)に達するまで硫酸を0.90kg/分で更に供給する。それに引き続いてすぐに、0.45kg/分の硫酸添加により、懸濁液の最終pH値を3.2(室温で測定)に調節する。
【0141】
得られた懸濁液をメンブランフィルタープレスで濾過し、フィルターケーキを水で洗浄する。21質量%の固体含分を有するフィルターケーキを引き続き水及び上記の硫酸及び溶解機を用いて液化する。18質量%の固体含分及び4.2のpH値を有するシリカフィードを、引き続き、アンモニア計量供給下に、最終生成物中で5%懸濁液として測定されたpH値が5.8となるように噴霧乾燥させる。圧延造粒をAlexanderwerk AG社のWP 50N/75タイプの圧延プレスを用いて行う。この場合、粉末状の生成物を、バインダー又は液体を更に添加することなく、単軸スクリュー(回転数86rpm)を備えた水平供給系を用いて真空系を通じて脱気し(減圧0.3バール)、両側に取り付けられ、垂直に配置されたローラの間に均一に施与する。回転数11rpm、圧力14バールの場合、粉末を圧縮してクラストにし、破砕機(メッシュ幅8mm)を用いて粉砕する。微細分を振動篩を用いた篩分けにより除去し(メッシュ幅1.2mm)、粉末供給に返送する。
【0142】
粉末(実施例1a)及び顆粒(実施例1b)の代表的な試料の物理化学的データを第1表に挙げる。
【0143】
実施例2
皿形鏡板、MIG傾斜ブレード撹拌装置系及びEkato流体剪断タービンを備えたステンレス特殊鋼製の二重ジャケット反応器(高さ1.60m、内径1.60m)に、水1202l並びに水ガラス(密度1.348kg/l、SiO2 27.0質量%、Na2O 8.05質量%)172.4kgを装入する。引き続き、強力な撹拌及び剪断下に温度70℃で42分間に亘って、上記の水ガラス5.85kg/分と硫酸(密度1.83kg/l、H2SO4 96質量%)約0.65kg/分とを同時に供給する。剪断タービンへの硫酸の計量供給を、反応媒体中でAZ価が30.0+/−0.3となるように調節する。2種の原料添加を停止し、得られた懸濁液を70℃で60分間強力に撹拌し、剪断する。最終的に、引き続き強力な撹拌及び剪断下に、70℃で45分間に亘って、上記の水ガラス8.00kg/分と上記の硫酸約0.90kg/分とを同時に供給する。硫酸の計量供給を、再度、反応媒体中でAZ価が30.0+/−0.3となるように調節する。水ガラス添加を停止し、pHが7.0(室温で測定)に達するまで硫酸を0.90kg/分で更に供給する。それに引き続いてすぐに、0.45kg/分での硫酸添加により、懸濁液の最終pH値を3.2(室温で測定)に調節する。
【0144】
得られた懸濁液をメンブランフィルタープレスで濾過し、フィルターケーキを水で洗浄する。23質量%の固体含分を有するフィルターケーキを引き続きスピンフラッシュ乾燥器で乾燥させる。造粒を実施例1と同様に行う。
【0145】
粉末(実施例2a)及び顆粒(実施例2b)の代表的な試料の物理化学的データを第1表に挙げる。
【0146】
実施例3
皿形鏡板、MIG傾斜ブレード撹拌装置系及びEkato流体剪断タービンを備えたステンレス特殊鋼製の二重ジャケット反応器(高さ1.60m、内径1.60m)に、水1202l並びに水ガラス(密度1.348kg/l、SiO2 27.0質量%、Na2O 8.05質量%)172.4kgを装入する。引き続き、強力な撹拌及び剪断下に温度65℃で42分間に亘って、上記の水ガラス5.85kg/分と硫酸(密度1.83kg/l、H2SO4 96質量%)約0.65kg/分とを同時に供給する。剪断タービンへの硫酸の計量供給を、反応媒体中でAZ価が30.0+/−0.3となるように調節する。2種の原料添加を停止し、得られた懸濁液を65℃で60分間強力に撹拌し、剪断する。最終的に、引き続き強力な撹拌及び剪断下に、65℃で45分間に亘って、上記の水ガラス8.00kg/分と上記の硫酸約0.90kg/分とを同時に供給する。硫酸の計量供給を、再度、反応媒体中でAZ価が30.0+/−0.3となるように調節する。水ガラス添加を停止し、pHが7.0(室温で測定)に達するまで硫酸を0.90kg/分で更に供給する。それに引き続いてすぐに、0.45kg/分での硫酸添加により、懸濁液の最終pH値を3.3(室温で測定)に調節する。
【0147】
得られた懸濁液をメンブランフィルタープレスで濾過し、フィルターケーキを水で洗浄する。21質量%の固体含分を有するフィルターケーキを引き続き水及び上記の硫酸及び溶解機を用いて液化する。18.5質量%の固体含分及び4.0のpH値を有するシリカフィードを、引き続き、アンモニア計量供給下に、最終生成物中で5%懸濁液として測定されたpH値が5.8となるように噴霧乾燥させ、実施例1と同様に圧力13バールで造粒する。
【0148】
粉末(実施例3a)及び顆粒(実施例3b)の代表的な試料の物理化学的データを第1表に挙げる。
【0149】
【表2】

【0150】
応用技術的な例
ゴム混合物及び加硫物の製造のために実施例1b、2b、3bを用いる。
【0151】
ゴム混合物のために使用される配合物(標準グリーンタイヤ)を以下の第2表に示す。ここで、単位「phr」は、使用された粗製ゴム100部に対する質量部を表す。
【0152】
【表3】

【0153】
ポリマーVSL 5025-1は、約25+/−2質量%のスチレン含分(UV分光法による)及び約50+/−4質量%のビニル含分(IR分光法による)を有するBayer AG社(現在はLanxess Europe GmbH & Co. KG)の溶液重合SBRコポリマーである。このコポリマーは芳香族鉱油約27質量%(25.8〜28.8質量%)を含有し、かつ約50+/−5MUのムーニー粘度(ASTM D 1646)を有する。
【0154】
ポリマーBuna CB 24は、少なくとも96質量%のシス−1,4含分(IR分光法による)及び約45MU(39MU〜49MU)のムーニー粘度(DIN 53523)を有するBayer AG社(現在はLanxess Europe GmbH & Co. KG)のシス−1,4−ポリブタジエン(チタンタイプ)である。
【0155】
【表4】

【0156】
ゴム混合物及びその加硫物の一般的な製造法は、以下の文献に記載されている:"Rubber Technology Handbook", W. Hofmann, Hanser Verlag 1994。
【0157】
試験体のための加硫時間は、165℃で、それぞれ実施例1b及び3bに関しては20分であり、実施例2bに関しては15分である。
【0158】
ゴム技術試験を第4表に示される試験法に従って行う。
【0159】
【表5】

【0160】
下記の表に、第2〜4表に従って配合及び試験を行った、実施例1b、2b及び3bの応用技術的なデータを示す。
【0161】
【表6】

【0162】
標準グリーンタイヤ配合物において、参照として、それぞれ試験すべき本発明によるシリカと同じ比CTAB表面積範囲内にある(第8表参照)、Degussa AG社の市販のシリカを使用した。従って、ゴム技術的結果を効果的に比較できることが保証される。
【0163】
【表7】

【0164】
本発明によるシリカの比BET表面積は極めて高いため、実施例混合物の加工可能な粘度はほとんど期待されなかったであろう。しかしながら、実施例1b〜3bからの沈降シリカはわずかに高められたムーニー粘度を有するに過ぎないことが判明した。これは、本発明による沈降シリカの驚異的に良好な加工性を示す。更に、3種全ての沈降シリカは、高められた架橋速度t80%−t20%を有し、更には、実施例1b及び3bによるシリカの場合には、スコーチ時間t10%が有利に延長されている。
【0165】
本発明による沈降シリカの利点は動的データによって最も明確に示されている。ここで、ヒステリシス損失に関する著しい改善が得られ、これは高められたボールはね返り及び低減されたtanδ値において認めることができる、E*値も同様に良好なレベルにある。
【0166】
実施例シリカの極めて良好な補強特性は、応力値300%において認めることができ、これは、それぞれの参照体の応力値300%に対して少なくとも同じか又は更には改善されたレベルにある。
【0167】
標準グリーンタイヤ配合物における分散係数は、試験した3種全ての沈降シリカ(実施例1b、2b及び3b)に関して90%を上回るため、高分散性(HD)シリカと等級付けすることができる(第9表)。
【0168】
【表8】

【0169】
上記のゴム技術特性は、特に孔径分布の幅γに起因する。実質的に、従来公知であるものよりも安定であり、それにより、良好な分散性にもかかわらずゴムマトリックスへの混入の後にも残存するシリカモルホロジーが存在する。ここから、高いシリカ密度を有する範囲及びポリマーマトリックスが優勢である範囲が生じ、その際、特に後者の範囲は明らかにより低いヒステリシス損失をもたらす。
【0170】
特に高いシラノール基数及び高いシラノール基密度(シアーズ数V2/CTAB)により、二官能性シランを介して、通常よりも多くのポリマーが結合する。極めて良好な補強特性が生じ、これは高い応力値300%及び低いDIN摩耗により示される。
【0171】
本発明によるシリカの低いゼータ電位及びそれと関連した高められた表面活性によって、高められた補強特性により示されているように、異なる極性に基づき通常はわずかであるポリマー/シリカ相互作用を明らかに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】指標a、b、A並びにBを有する細孔直径Xに関する累積細孔容積Vの負の対数微分の典型的な曲線を示す図。
【図2】累積粒径分布を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降シリカにおいて、以下の物理化学的パラメータ:
孔径分布の相対幅γ 4.0〜10.0(g nm)/ml
シアーズ数V2 28〜40ml/(5g)
シアーズ数V2/CTAB比 0.18〜0.28ml/(5m2
CTAB 100〜200m2/g
を特徴とする沈降シリカ。
【請求項2】
BET/CTAB比が1.3より大きい、請求項1記載の沈降シリカ。
【請求項3】
pH5でのゼータ電位が−12〜−30mVである、請求項1又は2記載の沈降シリカ。
【請求項4】
DBP価として表される油吸着量が200〜330g/(100g)である、請求項1から3までのいずれか1項記載の沈降シリカ。
【請求項5】
Al23含分が0.001〜5質量%である、請求項1から4までのいずれか1項記載の沈降シリカ。
【請求項6】
300μm篩上の篩残留物(Ro−Tap)が少なくとも80質量%である、請求項1から5までのいずれか1項記載の沈降シリカ。
【請求項7】
<75μmの篩分級物(Ro−Tap)が最大で10質量%である、請求項1から6までのいずれか1項記載の沈降シリカ。
【請求項8】
シリカが0.1〜20.0質量%の炭素含分を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の沈降シリカ。
【請求項9】
沈降シリカの製造法において、順に以下の工程
a)アルカリ金属ケイ酸塩又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び/又は有機塩基及び/又は無機塩基の水溶液を装入する工程、その際、装入物は20〜40のアルカリ価を有するものとする、
b)前記装入物中に強力な撹拌下に55〜85℃で粘度が上昇するまで同時にアルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び酸性化剤を計量供給する工程
c)供給を35〜85分間、有利に工程b)の最後に達する温度を維持しながら停止する工程
d)55〜85℃で、有利に工程b)及び/又はc)と同じ温度で、撹拌下に同時にアルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び酸性化剤を、90〜140g/lの固体含分に達するまで供給する工程
e)酸性化剤を用いて酸性化し、約2.5〜5.0のpH値にする工程、及び
f)濾過及び乾燥させる工程
を実施することを特徴とする、沈降シリカの製造法。
【請求項10】
工程a)〜e)の少なくとも1つにおいて、沈降懸濁液を付加的な剪断装置を用いて剪断する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
工程b)及びd)において、硫酸を付加的な剪断装置の剪断ヘッドに直接計量供給し、直ちに、沈降懸濁液中への酸の強力な混和及びそれに伴う出来る限り均質でかつ迅速な分配を行う、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
工程d)における供給速度が工程b)における供給速度よりも高い、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程d)における成分の供給速度が工程b)における供給速度の125〜140%である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程b)及び/又はd)において、アルカリ価が各工程の間に一定となるようにアルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び酸性化剤を計量供給する、請求項9から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
塩基として、アルカリ金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を使用する、請求項9から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
工程a)〜e)の間に、有機塩又は無機塩の添加を行う、請求項9から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
乾燥のために、気流乾燥器、噴霧乾燥器、多段乾燥器、ベルト乾燥器、回転管乾燥器、フラッシュ乾燥器、スピンフラッシュ乾燥器又は噴霧塔乾燥器を使用する、請求項9から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
乾燥後にローラ圧縮機を用いた造粒を実施する、請求項9から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
沈降シリカを、直鎖、環式及び/又は分枝鎖シラン、シラザン、シロキサン化合物及び/又はケイ素有機化合物で変性させる、請求項9から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン又はビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルファンを沈降シリカの変性のために使用する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
エラストマー混合物、加硫性ゴム混合物及び/又はその他の加硫物、例えば空気タイヤ、タイヤトレッド、ケーブル外装、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、Vベルト、ローラ被覆、タイヤ、靴底、ガスケット及び制動エレメントの製造のための、請求項1から8までのいずれか1項記載の沈降シリカの使用。
【請求項22】
充填剤としての請求項1から8までのいずれか1項記載の少なくとも1種の沈降シリカを含有する加硫性ゴム混合物及び加硫物。
【請求項23】
請求項1から8までのいずれか1項記載の少なくとも1種の沈降シリカを含有するタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−77012(P2007−77012A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240438(P2006−240438)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】