説明

特定の病原体に対する抗原の同定、単離および製造方法

【課題】所定の病原体に対して有効な抗原、あるいは好ましくは実用的に(臨床的に)関連のある所定の病原体の全ての抗原の殆ど完全なセットを同定する手段を提供する。
【解決手段】Staphylococcus aureus由来の特定な配列よりなる群から選ばれる高度免疫血清に反応性の抗原;医薬製剤の製造のための該抗原の使用;高度免疫血清に反応性の該抗原の高度免疫性フラグメント;該抗原または該フラグメントを含むワクチン;該抗原または該フラグメントに対する抗体を含む調製物;該調製物の製造方法;および医薬の製造のための該調製物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の病原体に対する抗原の同定、単離および製造方法、並びに所定のタイプの動物またはヒトのワクチンに使用するのに適した抗原に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、他の医学的介入に比べて多くの生命(および資源)を救うことができる。世界的に広まったワクチン接種プログラムのおかげで、多くの致死的疾患の発生率は劇的に減少してきている。この見方は疾患の全パネル、たとえば、ジフテリア、百日咳、麻疹および破傷風にはあてはまるが、HIV、HCV、CMVその他多くのウイルス感染症を含む多数の感染疾患に対する有効なワクチンは存在しない。また、感染性であるか非感染性であるかを問わず、マラリアや癌を含めて毎年何百万もの患者の人命を奪う他の疾患に対する有効なワクチンも存在しない。さらに、抗生物質に耐性の細菌および微生物の急激な出現は他の治療を要求しており、ワクチンは必然の選択となってきている、最後に、ワクチンに対する大いなる必要性はまた、心血管性疾患または癌または創傷よりもむしろ感染疾患が世界的に死亡および不具の最大の原因であるという事実によっても説明される。
【0003】
幾つかの確立されたワクチンは、生きた弱毒化した微生物からなるが、ビルレントな野生株に逆戻りする危険が存在する。この点は、とりわけ免疫無防備状態の宿主では生命を脅かす筋書きともなりうる。別法として、ワクチンは病原体由来の抗原をこれら抗原に対する免疫応答を誘導もしくは促進する化合物(これら化合物は一般にアジュバントと呼ばれる)と組み合わせて投与される。なぜなら、これらサブユニットワクチン自体は一般に有効でないからである。
【0004】
上記ワクチンが価値ある医学的治療であることに疑問はないわけであるが、その複合性ゆえに、たとえば該ワクチンに含まれる抗原でワクチン接種した個体の細胞によって発現される分子と交差反応性を示すものに対して重篤な副作用が惹起されうるという不利がある。さらに、規制当局、たとえば世界保健機構(WHO)、食品医薬品局(FDA)、およびそれらの対応ヨーロッパ部門による、ワクチンの組成および免疫の誘導機構の正確な記述に対する現存する要求は、満たすのが難しい。
【0005】
幾つかの広く使用されているワクチンは、全細胞ワクチン(弱毒化細菌またはウイルス(たとえば、カルメット−ゲラン桿菌(BCG)(結核)、麻疹、おたふくカゼ、風疹、経口ポリオワクチン(Sabin))、死菌またはウイルス(たとえば、百日咳、不活化ポリオワクチン(Salk))、サブユニットワクチン(たとえば、トキソイド(ジフテリア、破傷風))、莢膜多糖(H. influenza B型)、酵母組換えサブユニット(B型肝炎ウイルス表面タンパク質)である。
【0006】
ワクチンは、全く様々な異なる抗原を含んでいてよい。抗原の例は、不活化したウイルスまたは細菌、真菌、原生生物あるいは癌細胞などの完全に殺した生物である。抗原はまた、これら生物/組織の下部画分(subfractions)、タンパク質、または最も単純な形態でペプチドからなっていてもよい。抗原はまた、グリコシル化タンパク質またはペプチドの形態で免疫系によって認識されてよく、多糖または脂質であるかまたは含んでいてよい。短いペプチドを用いることができる。なぜなら、たとえば細胞障害性T細胞(CTL)は主要組織適合複合体(MHC)と結合した通常8〜11アミノ酸長の短い形態の抗原を認識するからである。B細胞は4〜5アミノ酸の短い直線状エピトープ並びに三次元構造(立体配置エピトープ)を認識する。持続した抗原特異的な免疫応答を得るため、必要な免疫系の全ての細胞が関与する免疫カスケードを誘起するのをアジュバントが助けてよい。主としてアジュバントは、その作用の仕方に制限はないが、いわゆる抗原提示細胞(APC)に作用する。これら細胞は通常、まず抗原と出会い、ついでプロセシングした抗原または非修飾抗原を免疫エフェクター細胞に提示する。媒介する細胞型もまた関与していてよい。適当な特異性を有するエフェクター細胞だけが増殖性の(productive)免疫応答において活性化される。アジュバントはまた、抗原および同時に注射する他の因子を局所的に保持していてもよい。さらに、アジュバントは他の免疫細胞に対する化学誘引物質として作用してよく、または免疫系に対する刺激剤として局所的および/または全身的に作用してよい。
【0007】
抗原提示細胞は先天免疫系に属しており、先天免疫系は微生物への暴露後の初期に感染を制限する第一線の宿主防御として発展してきたものである。先天免疫系の細胞は、獲得免疫系によって認識される一層複雑で特異的な構造ではなく、標的上に発現されたパターンないし比較的に非特異的な構造を認識する。先天免疫系の細胞の例は、マクロファージおよび樹状細胞のみならず顆粒球(たとえば、好中球)、ナチュラルキラー細胞その他である。対照的に、獲得免疫系の細胞は、T細胞の場合にはペプチドを含む特異的で抗原性の構造を認識し、B細胞の場合にはペプチド並びに三次元構造を認識する。獲得免疫系は先天免疫系に比べてはるかに特異的で複雑であり、所定の病原体/抗原への暴露を繰り返すことにより改善される。系統発生的には先天免疫系は遥かに古く、非常に原始的な生物において既に認めることができる。それにもかかわらず、先天免疫系は抗原暴露の初期相において重要である。というのは、病原体を封じ込める(containing)ことに加えて、先天免疫系の細胞、すなわちAPCは獲得免疫系の細胞の初回抗原刺激を受けさせ(prime)、かくして特異的な免疫応答を惹起して侵入者の排除に導くからである。要約すると、先天免疫系の細胞、とりわけAPCは、(a)原始パターン認識系により感染を封じ込めること、および(b)獲得免疫系の細胞に初回抗原刺激を受けさせて特異的な免疫応答および記憶に導き、侵入してきた病原体または他の標的の排除という結果となること、によって重要な役割を果たしている。これらメカニズムはまた、腫瘍細胞を排除または封じ込めるのにも重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのようなワクチンに使用する抗原は、しばしば偶然または利用のしやすさによって選択されている。所定の病原体に対して有効な抗原、あるいは好ましくは実用的に(臨床的に)関連のある所定の病原体の全ての抗原の殆ど完全なセットを同定する必要性が存在する。そのような抗原は、ワクチンにおける好ましい抗原候補である。
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、これら必要性に沿うことであり、そのような抗原を提供でき、抗体源として所定の血清を用いて、たとえば所定の病原体の抗原の実用的に完全なセットを同定できる方法を提供することである。そのような方法はまた、一般的な医薬やワクチンに対して急速な耐性を進化させる急激に変化する病原体に対しても適しているに違いない。本発明の方法はまた、腫瘍抗原、アレルゲン、自己免疫抗原を同定および単離することにも適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それゆえ、本発明は、特定の病原体、腫瘍、アレルゲンまたは組織または自己免疫に罹りやすい宿主からの、とりわけ特定の病原体からの高度免疫血清に反応性の抗原の同定、単離および製造方法を提供し、該抗原は所定のタイプの動物またはヒトのワクチンに使用するのに適しており、該方法は、下記工程を特徴とする:
・該所定のタイプの動物の血漿プールから、またはヒト血漿プール、または該特定の病原体、腫瘍、アレルゲンまたは組織に対する抗体を有する個体の血清または自己免疫に罹りやすい宿主から抗体調製物を用意し、
・該特定の病原体、腫瘍、アレルゲンまたは組織または自己免疫に罹りやすい宿主の少なくとも1つの発現ライブラリーを用意し、
・少なくとも1つの該発現ライブラリーを該抗体調製物でスクリーニングし、
・該スクリーニングにおいて該抗体調製物中の抗体に結合する抗原を同定し、
・同定した該抗原を、該特定の病原体、腫瘍、アレルゲンまたは組織または自己免疫に罹りやすい宿主に対する抗体を有する個体からの個々の血清からの個々の抗体調製物でスクリーニングし、
・同定した該抗原の高度免疫血清に反応性の抗原部分を同定し、高度免疫血清に反応性の抗原は該個々の血清からの該個々の抗体調製物の関連部分に結合するものであり、ついで
・任意に該高度免疫血清に反応性の抗原を単離し、該高度免疫血清に反応性の抗原を化学的方法または組換え法により製造する。
【0011】
この方法はまた、一般に、本発明による方法を用いて少なくとも3つの異なる発現ライブラリーを病原体/抗原同定プログラムでスクリーニングするならば、所定の血清を抗体源として用いて特定の病原体の高度免疫血清に反応性の抗原の実用的に完全なセットを同定するのに適している。
それゆえ、本発明は、特定の病原体の高度免疫血清に反応性の抗原の実用的に完全なセットの同定、単離および製造方法に関し、該抗原は所定のタイプの動物またはヒトのワクチンに使用するのに適しており、該方法は、下記工程を特徴とする:
・該所定のタイプの動物の血漿プールから、またはヒト血漿プール、または該特定の病原体に対する抗体を有する個体の血清から抗体調製物を用意し、
・該特定の病原体の少なくとも3つの異なる発現ライブラリーを用意し、
・少なくとも3つの該発現ライブラリーを該抗体調製物でスクリーニングし、
・少なくとも3つの該スクリーニングの少なくとも1つにおいて該抗体調製物中の抗体に結合する抗原を同定し、
・同定した該抗原を、該特定の病原体に対する抗体を有する個体からの個々の血清からの個々の抗体調製物でスクリーニングし、
・同定した該抗原の高度免疫血清に反応性の抗原部分を同定し、高度免疫血清に反応性の抗原は該個々の血清からの該個々の抗体調製物の関連部分に結合するものであり、
・該スクリーニングおよび同定工程を少なくとも1回繰返し、
・該繰返したスクリーニングおよび同定工程で同定した高度免疫血清に反応性の抗原を、最初のスクリーニングおよび同定工程で同定した高度免疫血清に反応性の抗原と比較し、
・高度免疫血清に反応性の抗原の少なくとも5%が繰り返したスクリーニングおよび同定工程においてのみ同定される場合には、該スクリーニングおよび同定工程をさらに繰返して、さらに繰返した該工程においてのみ高度免疫血清に反応性の抗原の5%未満が同定されるようにして特定の病原体の高度免疫血清に反応性の抗原の完全なセットを得、ついで
・任意に該高度免疫血清に反応性の抗原を単離し、該高度免疫血清に反応性の抗原を化学的方法または組換え法により製造する。
【0012】
本発明による方法は、主として3つの必須の工程からなる、すなわち、1.所定の病原体に対する特異的抗体を含む高度免疫血清源の同定、2.適当な抗体調製物による適当な発現ライブラリーのスクリーニング(ここで候補抗原(またはそのような抗原の抗原フラグメント)が選択される)、および3.2回目のスクリーニング(ここで、高度免疫血清に反応性の抗原が実用的に関連しており、高度免疫血清に反応性であるばかりでなく広く免疫原性である(すなわち、多くの個々の血清が所定の抗原と反応する)ことを示すために、高度免疫血清に反応性の抗原が個々の血清からの個々の抗体調製物の関連部分へ結合するその能力により同定される)。本発明により、選択した病原体および選択した血清に関して実用的に完全な、所定の病原体の抗原のセットを提供することができる。それゆえ、「間違った」抗原候補または所定の病原体の抗原の不完全なセットに関する偏りは本発明によって排除される。
【0013】
本発明の意味するところにおいて所定の病原体の抗原セットの完全性は、もちろん、発現ライブラリーの提示性(representability)および発現系の有用性の両者に関して、本発明の方法に使用した発現ライブラリーの完全さおよび試験した血清コレクションの質および量(個々の血漿/血清の数)に依存する。それゆえ、本発明の方法の好ましい態様は、該発現ライブラリーの少なくとも1つがリボソームディスプレイライブラリー、細菌表面ライブラリーおよびプロテオームから選ばれる。
【0014】
本発明に使用する血清コレクションは、所定の病原体の既知の抗原性化合物のパネル、たとえば、細胞壁、細胞膜および細胞質の多糖、脂質およびタンパク質性成分、並びに分泌された産物に対して試験しなければならない。好ましくは、3つの別個の血清コレクションを用いる:1.非常に安定な抗体レパートリー(antibody repertoire)を有するもの:急性の疾患および徴候なしに、たとえば所定の病原体との以前の遭遇を克服したかまたは現在キャリアである、正常な成人、臨床的に健康な人々、2.実際に病原性生物の存在によって誘発された抗体を有するもの:様々な発現の急性疾患を有する患者(たとえば、S. aureus敗血症または創傷感染など)、3.特異的な抗体を全く有しないもの(負の対照として)、生後5〜6ヶ月で母体移行免疫グロブリンを失った5〜8ヶ月の赤ん坊。所定の病原体(細菌、真菌、蠕虫その他)に対して、および本発明によるスクリーニング法において関連するものに対して高度免疫であるとするためには、血清は複数の病原体特異的抗原と反応しなければならない。
【0015】
本発明による抗原の完全なセットを同定するための抗原同定プログラムにおいて、少なくとも3つの異なる該発現ライブラリーは、少なくともリボソームディスプレイライブラリー、細菌表面ライブラリーおよびプロテオームであるのが好ましい。全ての発現ライブラリーが完全であっても、抗原同定プログラムにおける1または2のみの発現ライブラリーの使用は、異なる発現ライブラリーの各々の優先的な発現特性のために抗原の完全なセットに導かないことが観察された。それゆえ、1または2のみの異なる発現ライブラリーを用いて高度免疫血清に反応性の抗原を得ることも可能ではあるが、これは多くの場合、最終的に高度免疫血清に反応性の抗原の完全なセットの同定とはならないであろう。もちろん、本発明による「完全な」とは理論的な最大を示すのではなく実用的な完全さ、すなわち、実用的に関連のある抗原または抗原決定基の少なくとも95%が所定の病原体に関して同定されたことを意図している。従って、実用的な関連は、所定の病原体に対する抗体の患者集団での存在により定められる。
【0016】
また、本発明によれば、血清プールまたは血漿画分または体液を含む他のプールした抗体は「血漿プール」である。
【0017】
本発明において使用する発現ライブラリーは、所定の病原体の全ての潜在的な抗原、たとえば全ての表面タンパク質の発現が少なくとも可能でなければならない。本発明による発現ライブラリーでは、所定の病原体の潜在的な抗原の少なくとも1つのセットが提供され、このセットは病原体のゲノムによってコードされ(すなわち、実施例2に記載するようなゲノムライブラリー)、組換え宿主(実施例3を参照)またはインビトロ(実施例4を参照)のいずれかで発現される(ポリ)ペプチドの完全な理論的補完物(complement)であるのが好ましい。この潜在的な抗原のセットはまたタンパク質調製物であってよく、細胞外病原体の場合、タンパク質調製物は所定の生理条件下で増殖させた該病原体から得た該病原体の表面タンパク質を含んでいるのが好ましい(実施例5を参照)。ゲノム法は抗原の完全なセットを含む可能性があるが、後者はタンパク質を天然の状態(たとえば、これらタンパク質の翻訳後修飾またはプロセシングした形態;これらはDNA配列からは明らかでない)で含む点で有利である。病原体、腫瘍、アレルゲンまたは組織または自己免疫に罹りやすい宿主からの潜在的な抗原のこれらのまたは他のセットは、以下、「発現ライブラリー」と称する。極めて様々な種類の発現ライブラリーを本発明において適用できる。適当な例は、たとえばAusubelら、1994に記載されている。特に好ましいのは、インビトロ翻訳法のように組換え形態の病原体の遺伝子セットのディスプレイを表す発現ライブラリー、たとえば、リボソームディスプレイ、または原核発現系、たとえば、細菌表面発現ライブラリー、または所定の生理状態の所定の病原体の特定の生理的発現状態に類似するライブラリー、たとえば、プロテオームである。
【0018】
リボソームディスプレイは組換えDNA法において確立された方法であり、本発明の目的のために各特定の病原体について適用できる(Schaffitzelら、1999)。細菌表面ディスプレイライブラリーは、所定の病原体の発現されたペプチド配列の(全)セットを、たとえば細菌宿主膜の選択した外膜タンパク質上にディスプレイする細菌宿主の組換えライブラリーを代表とする(Georgiouら、1997)。外膜タンパク質中でのペプチドまたはタンパク質配列のディスプレイとは別に、他の細菌ディスプレイ法、たとえばバクテリオファージディスプレイ法および輸送タンパク質による発現もまた細菌表面発現ライブラリーとして好ましい(Forrerら、1999;RodiおよびMakowski, 1993;Georgiouら、1997)。
【0019】
本発明による方法における1回目のスクリーニングのための抗体調製物は、所定の病原体に対する抗体を含むいかなる採取源からのものであってもよい。好ましくは、血漿プールを抗体調製物の採取源として用いる場合は、所定の病原体による感染を経験したかまたは経験しているドナーを含むヒト血漿プールを選択する。血漿または血漿プールのそのような選択は、たとえば高度免疫グロブリン調製物の製造においては基本的な標準法ではあるが、そのような方法がとりわけ本発明の好ましい態様で示されるような効果を有することは驚くべきことである。
【0020】
好ましくは発現ライブラリーは所定の病原体のゲノム発現ライブラリー、あるいはmRNAライブラリーである。これらゲノムライブラリーまたはmRNAライブラリーは完全なゲノムまたはmRNA発現ライブラリーであるのが好ましく、その意味するところは、これらライブラリーが少なくとも一度は所定の病原体の全ての可能なタンパク質、ペプチドまたはペプチドフラグメントを発現できることである。好ましくは、ゲノム発現ライブラリーは、少なくとも2×、さらに好ましくは少なくとも5×、とりわけ少なくとも×10の冗長度(redundancy)を示す。
【0021】
好ましくは、本発明による方法は、少なくともリボソームディスプレイライブラリー、細菌表面ディスプレイライブラリーおよびプロテオームを抗体調製物でスクリーニングし、ついで該スクリーニングの少なくとも2つ、好ましくは全てにおいて該抗体調製物中の抗体に結合する抗原を同定することを含む。ついで、そのような抗原は、発現の仕方の如何にかかわらず、高度免疫原性(hyperimmunogenic)の抗原として極めて適しているとされる。好ましくは、少なくとも2つのスクリーニングがプロテオームを少なくとも含んでいるのが好ましい、というのはプロテオームは常に天然に発現されるタンパク質として(翻訳後修飾、プロセシングなど;これらはDNA配列からは明らかでない)抗原を表しているからである。
【0022】
本発明による方法は、いかなる所望の病原体に対しても適用できる。それゆえ、好ましい病原体は、細菌、ウイルス、真菌および原生動物病原体の群から選択される。本発明による方法はまた、癌に対して、すなわち腫瘍関連抗原の同定のため、およびアレルゲンまたは自己免疫疾患に関与する抗原の同定のために適用することもできる。もちろん、とりわけ組換え法は、小さなゲノムまたは比較的少数の発現タンパク質を有する病原体(細菌やウイルス病原体など)に対しては単純であり、大きなゲノムを有する複雑な(真核)生物に対しては一層複雑である。しかしながら、高等生物病原体のそのような大きなゲノムライブラリーも、本発明による方法を用いれば、適当な抗原を同定するための公知の方法と比べて少なくとも一層迅速かつ一層高い信頼性で分析することができる。
【0023】
分析すべきまたはその抗原を抽出することのできる好ましい病原体としては、それぞれ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、インフルエンザウイルス(IV)、ロタウイルス(RV)、Staphylococcus aureus(S. aureus)、Staphylococcus epidermidis(S. epidermidis)、Chlamydia pneumoniae(C. pneumoniae)、Chlamydia trachomatis(C. trachomatis)、Mycobacterium tuberculosis(M. tuberculosis)、Mycobacterium leprae(M. leprae)、Streptococcus pneumoniae(S. pneumoniae)、Streptococcus pyogenes(S. pyogenes)、Streptococcus agalactiae(S. agalactiae)、Enterococcus faecalis(E. faecalis)、Bacillus anthracis(B. anthracis)、Vibrio cholerae(V. cholerae)、Borrelia burgdorferi(B. burgdorferi)、Plasmodium種、真菌疾患、たとえば、Pneumocystis carinii、Aspergillus種、Cryptococcus種、Candida albicansまたは寄生虫感染、たとえば回虫症(Ascaris lumbricoides)および条虫症(Taenia saginata)が挙げられる。本発明による方法は、細菌、蠕虫またはカンジダに対して最も適用することができる。
【0024】
本願のモデル生物として、Staphylococcus aureusを本発明による方法の適用可能性および有効性を示すのに選択した。特に実施例に関しては、本発明を全ての潜在的な病原体、とりわけ上記に列記したものに容易に適用できる(transferable)ことが明らかである。
【0025】
本発明による方法が、とりわけ、所定の病原体が有効に打ち負かされている状態においてすらも患者の抗体のレパートリーの小フラクションのみが該病原体に向けられるという事実に鑑みて、該所定の病原体の有効かつ迅速な生物学的スクリーニングを可能にするということは驚くべきことであった。本発明により、とりわけS. aureusによる実施例を行うに際して、S. aureusに対して高い力価を有する患者の抗体レパートリーの1〜2%のみが実際にS. aureusに対して向けられた抗体であることが見出された。さらに、この特定の1%部分の70%以上がテイコ酸などの非タンパク質抗原に対して向けられており、そのため全部で抗体の0.1%またはそれ以下しかタンパク質性抗原に対して向けられていない。
【0026】
組換え発現ライブラリー、とりわけリボソームディスプレイライブラリーおよび細菌表面ディスプレイライブラリーを用いることの利点の1つは、同定した高度免疫血清に反応性の抗原が、さらに組換えDNA法またはクローニング工程を必要とすることなく、該高度免疫血清に反応性の抗原を発現するスクリーニングおよび選択したクローンのコード配列の発現によって即座に製造できることである。
【0027】
それゆえ、本発明による方法によって得ることのできる高度免疫血清に反応性の抗原は、たとえば発現ライブラリープラットホーム(platform)からの発現によって産生した直後に(2回目の選択工程において)、好ましくは薬理学的に許容しうる担体および/または賦形剤を添加することにより直ちに医薬製剤とすることができる。
【0028】
好ましくは、高度免疫血清に反応性の抗原を含む医薬製剤は、それに対して抗原を選択した特定の病原体の感染予防または治療のためのワクチンである。
【0029】
医薬製剤は、緩衝液物質、安定化剤またはさらなる活性成分などの適当な賦形剤物質、とりわけワクチン製造に関連して知られている成分を含んでいてよい。
【0030】
本発明による高度免疫血清に反応性の抗原のための好ましい担体および/または賦形剤は、所定の高度免疫血清に反応性の抗原に対する免疫応答をさらに刺激する免疫促進性化合物である。好ましくは、本発明による医薬製剤中の免疫促進性化合物は、ポリカチオン物質、とりわけポリカチオン性ペプチド、免疫促進性のデオキシヌクレオチド、ミョウバン、フロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、神経刺激性化合物、とりわけヒト成長ホルモン、またはそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる。
【0031】
本発明に従って用いるポリカチオン性化合物は、WO97/30721による特徴的な作用を示すあらゆるポリカチオン性化合物であってよい。好ましいポリカチオン性化合物は、塩基性ポリペプチド、有機ポリカチオン、塩基性ポリアミノ酸またはその混合物から選ばれる。これらポリアミノ酸は、少なくとも4アミノ酸残基の鎖長を有していなければならない(Goldmanら(1983)に記載のTuftsinを参照)。特に好ましいのは、ポリリジン、ポリアルギニン、および8を超える、とりわけ20を超えるアミノ酸残基の範囲に20%を超える、とりわけ50%を超える塩基性アミノ酸を含むポリペプチドまたはその混合物のようなペプチド結合を含む物質である。他の好ましいポリカチオンおよびその医薬組成物は、WO97/30721(たとえば、ポリエチレンイミン)およびWO99/38528に記載されている。好ましくは、これらポリペプチドは20〜500アミノ酸残基、とりわけ30〜200残基を含む。
【0032】
これらポリカチオン性化合物は化学的にまたは組換えにより製造してよく、あるいは天然の採取源に由来してもよい。
【0033】
カチオン性(ポリ)ペプチドはまた、Ganzら, 1999; Hancock, 1999に概説されている特性を有する抗菌性ペプチドであってもよい。これら(ポリ)ペプチドは、原核生物または動物または植物起源のものであってよく、化学的にまたは組換えにより製造されてよい(Andreuら, 1998; Ganzら, 1999; Simmacoら、1998)。ペプチドはまた、デフェンシンのクラスに属していてよい(Ganz, 1999;Ganzら、1999)。そのようなペプチドの配列は、たとえば以下のインターネットアドレスの下に抗菌配列データベース(Antimicrobial Sequences Database)中に見出すことができる:
http://www.bbcm.univ.trieste. it/~tossi/pag2.html
【0034】
そのような宿主防御ペプチドまたは防御剤(defensives)もまた、本発明によるポリカチオン性ポリマーの好ましい形態である。一般に、好ましくはAPC(樹状細胞を含む)によって媒介される獲得免疫系を最終生成物として活性化(またはダウンレギュレーション)することを可能にする化合物をポリカチオン性ポリマーとして用いる。
【0035】
本発明においてポリカチオン性物質として使用するのに特に好ましいのは、カテリシジン(cathelicidin)由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体(国際特許出願PCT/EP01/09529、参照のため本明細書中に引用する)、とりわけ哺乳動物カテリシジン、好ましくはヒト、ウシまたはマウスからのカテリシジンに由来する抗菌ペプチドである。
【0036】
天然の採取源に由来するポリカチオン性化合物としては、HIV−REVまたはHIV−TAT(由来のカチオン性ペプチド、アンテナペディア(antennapedia)ペプチド、キトサンまたはキトサンの他の誘導体)または生化学的な製造または組換え製造によりこれらペプチドまたはタンパク質に由来する他のペプチドが挙げられる。他の好ましいポリカチオン性化合物は、カテリン(cathelin)またはカテリンの関連物質またはカテリンに由来する物質である。たとえば、マウスカテリンは、アミノ酸配列:NH−RLAGLLRKGGEKIGEKLKKIGOKIKNFFQKLVPQPE−COOHを有するペプチドである。カテリンの関連物質またはカテリンに由来する物質はカテリン配列の全部または一部を含み、少なくとも15〜20アミノ酸残基を有する。誘導体化は、20の標準アミノ酸以外のアミノ酸による天然アミノ酸の置換または修飾を含む。さらに、さらなるカチオン性残基がそのようなカテリン分子中に導入されてよい。これらカテリン分子は、抗原と組み合わせるのが好ましい。これらカテリン分子は驚くべきことに、さらなるアジュバントを加えなくとも抗原に対するアジュバントとして有効なことがわかった。それゆえ、そのようなカテリン分子は、さらなる不活化物質を用いたまたは用いないワクチン製剤において有効なアジュバントとして用いることが可能である。
【0037】
本発明に従って用いることのできる他の好ましいポリカチオン性物質は、3〜7の疎水性アミノ酸のリンカーによって隔てられた少なくとも2のKLK−モチーフを含む合成ペプチドである(国際特許出願PCT/EP01/12041、参照のため本明細書中に引用する)。
【0038】
免疫促進性のデオキシヌクレオチドは、たとえば、中性または人工のCpG含有DNA、非脊椎動物に由来するDNAの短いストレッチ、あるいはある種の塩基の前後関係での非メチル化シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含む短いオリゴヌクレオチド(ODN)の形態のもの(Kriegら、1995)、並びにWO01/93905に記載されているようなイノシン含有ODN(I−ODN)である。
【0039】
神経刺激性化合物は、たとえばポリカチオン性物質と組み合わせてWO01/24822に記載されている。
【0040】
好ましい態様によれば、2回目のスクリーニングの個々の抗体調製物は、所定の病原体で急性感染した患者、とりわけ所定の病原体に対してある最小レベル以上の抗体、たとえば試験したヒト(患者またはキャリヤ)血清の80百分順位(percentile)を超える、好ましくは90百分順位を超える、とりわけ95百分順位を超える抗体力価を示す患者からのものである。そのような高力価の個々の抗体調製物を2回目のスクリーニングで用いることにより、所定の病原体に対する高度免疫血清に反応性の抗原の非常に選択的な同定が可能となる。
【0041】
個々の抗体調製物(これはまた選択した血清であってよい)を用いた2回目のスクリーニングが、1回目のスクリーニングからの全ての可能性のある候補からの高度免疫血清に反応性の抗原の選択的な同定を可能にすることは重要である。それゆえ、好ましくは少なくとも10の個々の抗体調製物(すなわち、選択した病原体に感染した少なくとも10人の異なる個体からの抗体調製物(たとえば、血清))を2回目のスクリーニングにおいてこれら抗原を同定するのに用いるべきである。もちろん、10未満の個々の調製物を用いることも可能であるが、工程の選択性は少数の個々の抗体調製物では最適のものとはならない。一方、所定の高度免疫血清に反応性の抗原(またはその抗原断片)が少なくとも10の個々の抗体調製物、好ましくは30、とりわけ少なくとも50の個々の抗体調製物において認識される場合は、高度免疫血清に反応性の抗原の同定はまた適当な同定について充分に選択的なものである。高度免疫血清への反応性は、もちろん、できるだけ多くの個々の調製物(たとえば、100を超える、あるいは1000さえをも超える)を用いて試験することができる。
【0042】
それゆえ、本発明の方法による高度免疫血清に反応性の抗体調製物の関連部分は、好ましくは少なくとも10、さらに好ましくは少なくとも30、とりわけ少なくとも50の個々の抗体調製物でなければならない。別のやり方として(または組み合わせて)、高度免疫血清に反応性の抗原はまた、2回目のスクリーニングに使用した全ての個々の抗体調製物の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、とりわけ少なくとも40%を用いて同定するのが好ましい。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、2回目のスクリーニングのための個々の抗体調製物を調製する(または抗体調製物として用いる)血清は特定の病原体に対する(たとえば、溶解液、細胞壁成分および組換えタンパク質などの該病原体の調製物に対する)力価により選択する。好ましくは、全生物(全溶解液または全細胞)を抗原としてELISAに用いたときに、幾つかのものは4000U(U=単位、所定の希釈でのOD405nmの読み取りから計算する)を超える、とりわけ6000Uを超える全IgA力価、および/または10000Uを超える、とりわけ12000Uを超えるIgG力価で選択される。800〜1000Uを超えるIg力価を有する個々のタンパク質が、全力価に対してのみ本発明に従って高度免疫血清に反応性の抗原を選択するのに特に好ましい。個々のタンパク質の記載は図9に見出すことができる。
【0044】
例示の実施例(これは本発明の好ましい態様でもある)では、所定の病原体はStaphylococcus病原体、とりわけStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisである。Staphylococcusは日和見感染病原体であり、軽症の感染症から生命を脅かす疾患にいたる病気を引き起こすことができる。多数のStaphylococcusのうち、少なくとも3つ:S. aureus、S. epidermidisおよび稀にS. saprophyticusがヒトの疾患と一般に関連している(CrossleyおよびArcher, 1997)。S. aureusは、本発明が機能する例示的な仕方で本発明において使用した。このことに加えて、S. aureusはまたヒトに対して重篤な病原的影響を及ぼすことに関しても重要な生物である。Staphylococcus感染症は、世界中の病院で増大する脅威をふるっている。Staphylococcusの出現および疾患を引き起こす能力は、多剤耐性を引き起こすかまたは引き起こし続けている抗生物質の広範な使用と関係している。この理由のため、Staphylococcus感染症に対する医学的な治療はもはや抗生物質に頼ることはできない。それゆえ、感染予防を目的としたこれら疾患の治療の戦略的転換が極めて必要とされている。ワクチン接種によりオプソニンおよび中和タイプの高親和性抗体を誘発することは、先天免疫系を手助けして細菌および毒素を排除する。このことは、本発明による方法をStaphylococcusの抗原タンパク質を同定するための最適の手段とする。
【0045】
全てのヒトはS. epidermidisのコロニーを有している。S. epidermidisが通常棲息しているのは皮膚および粘膜である。最大の病原種であるS. aureusの主要な棲息環境は外鼻孔および会陰部である。個体のなかにはS. aureus(しばしば同じ株の)の終生のキャリヤであるものがある。キャリヤステージは臨床的に関連性がある、というのは手術を受けたキャリヤは非キャリヤよりも感染症に罹りやすいからである。一般に、確立された鼻のフローラは新たな株の獲得を妨害する。しかしながら、抗生物質を処置したときに感受性のキャリヤ株が排除されて他の株のコロニー形成が生じる。この状況が病院で起こるため、患者は院内耐性Staphylococcusのコロニーを有するようになる。これら細菌は先天の適応性を有しており、これが広くまたときには不適切な抗菌剤の使用によって補完される。それゆえ、病院は薬剤耐性を発生させる好適の環境を提供する(病んだ患者同士の緊密な接触、抗菌剤の広範な使用、院内感染)。S. aureusおよびS. epidermidisはともに多くの一般に使用されている抗生物質、最も重要にはメチシリン(MRSA)およびバンコマイシン(VISA)に対して耐性となっている。薬剤耐性はますます重要となっている公衆衛生上の懸念であり、Staphylococcusによって引き起こされる多くの感染症はすぐに抗生物質では治療できなくなる。公衆衛生に対する有害な影響に加えて、抗菌耐性はまた高い健康管理費用の原因ともなる、というのは耐性の感染症の治療には、しばしば一層毒性が強く高価な薬剤を使用する必要があり、感染患者にとって一層長期の入院という結果となるからである。
【0046】
さらに、有効な抗生物質の助けを借りたとしても、最も重篤なStaphylococcus感染症の死亡率は30〜50%である。
【0047】
Staphylococcusは、天然のバリヤー(皮膚、粘膜)が破られたときに、微生物と免疫系との天然のバランスが崩れると直ぐに潜在的に病原性となる。コアグラーゼ陽性のS. aureusは最も病原性の強いStaphylococcus種であり、医者によって長い間恐れられている。それは、最もしばしば外科創傷感染症を引き起こし、膿瘍の生成を誘発する。この局所感染症は全身性となることがあり、菌血症および敗血症を引き起こす。特に、ウイルス感染の後および老年において重篤な肺炎を引き起こす。S. aureusはまた、医学装置、たとえば血管内および経皮カテーテル(心内膜炎、敗血症、腹膜炎)や人工器官(化膿性関節炎、骨髄炎)と関連した感染症の頻繁な原因でもある。S. epidermidisは、異物の存在および装置の使用と最も関連した疾患、たとえば、カテーテル関連感染症、脳脊髄液シャント感染症、透析患者(主としてCAPD)の腹膜炎、人工器官バルブを使用した個体における心内膜炎を引き起こす。このことは、コアグラーゼ陰性のStaphylococcus感染症が血管内装置の使用と関連してしばしば生じる癌患者や未熟な新生児などの免疫無防備状態の個体で典型的にみられる。発症の増大は、これら装置の使用の増大および免疫無防備状態の患者数の増大と関連している。
【0048】
他のコアグラーゼ陰性Staphylococcusであり、それまで健康であった人々に急性の尿路感染症を引き起こすS. saprophyticusについては殆どわかっていない。幾つかの例外を除いて、これらは16〜25歳の女性である。
【0049】
Staphylococcusの病因は多因子である。感染を開始するには病原体は宿主の細胞および組織に接近、すなわち接着しなければならない。S. aureusは、宿主タンパク質への付着を促進する表面タンパク質、たとえば、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、ビトロネクチン、フィブリノーゲンおよび細胞外マトリックスの部分を構成する他の多くの分子(細胞外マトリックス結合タンパク質、ECMBP)を発現する。S. epidermidisは外来物質への接着を促進する細胞表面分子を備えており、このメカニズムにより宿主での感染を確立する。Staphylococcusが使用する他の強力な武器は、エンテロトキシン、外毒素、および組織傷害酵素などの分泌産物である。毒素は、宿主防御にとって重要な免疫細胞を殺すかまたは誤導する。幾つかの異なったタイプの毒素が、感染症の際の大抵の徴候に預かっている。
【0050】
S. aureusに対する宿主防御は、主として先天免疫機構に依存している。皮膚および粘膜はStaphylococcusの侵入に対する手強いバリヤーである。しかしながら、皮膚または粘膜が破れると(創傷、経皮カテーテルなど)、非適合(nonadaptive)細胞防御の第一線が、補体および食細胞、とりわけ多形核白血球(PMN)により協調作用を開始する。これら細胞は、侵入した細菌を排除するうえでの礎石と考えることができる。Staphylococcusは主として細胞外病原体であるので、主たる抗Staphylococcus適合応答は免疫系の体液部分から生じ、3つの主要なメカニズムにより媒体される:すなわち、オプソニン反応の促進、毒素の中和、および接着の抑制。オプソニン反応は、それが有効な食細胞を必要とすることから特に重要であると考えられる。有効なオプソニン反応のためには、細菌表面は、IgG分子のFcフラグメントまたは活性化C3bに対するレセプターを介してPMNによって認識されるために抗体および補体因子でコーティングされなければならない。オプソニン反応の後、Staphylococcusは食作用を受け、殺される。さらに、S. aureusは内皮細胞に付着することができ、食作用様のプロセスによりインターナリゼーションを受ける。細胞表面上の特定の抗原に結合した抗体はPMNへの付着のためのリガンドとして作用し、食作用を促進する。付着因子および他の細胞表面タンパク質に結合した全く同じ抗体が接着を中和し、コロニー形成を防ぐと思われる。
【0051】
細胞媒体免疫がStaphylococcusに対する防御において有意の寄与をしていることの臨床的な証拠は殆どないが、それでも問題が適切に取り組まれていないことを認めないわけにはいかない。しかしながら、Staphylococcus aureusは、スーパー抗原と呼ばれるポリペプチドを分泌することによって感染宿主の防御の微細環境を操作する分子的対抗手段の多大なアレイを利用している。このスーパー抗原は、病原体特異的な免疫クリアランスを開始するための基本であるT細胞と抗原提示細胞との間のマルチレセプター伝達をターゲティングしている。スーパー抗原は毒性ショック症候群および食中毒において重要な役割を果たしているが、通常の感染症における機能は未だ充分には理解されていない。さらに、T細胞の関与なしには長期にわって持続する抗体(記憶)応答を期待することはできない。また、抗Staphylococcus抗体の大部分は、記憶機能なしでのT細胞非依存性抗原(莢膜多糖、リポテイコ酸、ペプチドグリカン)に対するものである。T細胞依存性のタンパク質抗原は、長期間にわたる防御抗体応答を引き起こすことができる。これらStaphylococcusのタンパク質およびペプチドは未だに決定されていない。
【0052】
上記に記載したこれら全ての理由のため、Staphylococcus感染症に対する戦場における戦略変換がひどく必要とされている。感染症に対抗する1つの方法は、能動免疫により感染症を防ぐことである。S. aureusに対するワクチン開発は、世界中の幾つかの研究グループおよび国立機関で着手されているが、いまのところ有効性の確認されたワクチンはまだない。抗体の欠乏状態がStaphylococcusの耐性に寄与することが示されており、このことから抗Staphylococcus抗体が宿主防御に重要であることが示唆されている。表面成分に対して向けられた抗体(受動免疫として加えられたかまたは能動ワクチン接種によって誘発された)は、細菌の接着を防ぎ、毒素を中和し、食作用を促進することができる。フィブロネクチン結合タンパク質に基づくワクチンはウシにおいて乳腺炎に対する防護免疫を誘発し、この方法がヒトでも同様に有効であることが示唆されている(参照文献)。これらのことを総合すると、有効なワクチンは、全ての株で発現され、S. aureusの細胞表面成分に対して高親和性で多量の抗体を誘導することのできるタンパク質またはポリペプチドから構成されていなければならないことが示唆される。抗体は、オプソニン反応のためにIgG1および/またはIgG3、接着および毒素作用の中和のためにあらゆるIgGサブタイプおよびIgAでなければならない。全細胞ワクチン(弱毒化または死菌)に比べて化学的に定めたワクチンの方が明らかに優れている、というのはTH細胞を麻痺させ(スーパー抗原)またはオプソニン作用を抑制する(プロテインA)S. aureusの成分を排除することができ、防御抗体を誘発する個々のタンパク質を選択することができるからである。関連抗原の同定は有効な受動免疫(ヒト化モノクローナル抗体療法)を生成する手助けとなるものであり、有効な受動免疫はヒト免疫グロブリン投与をその危険な副作用とともに取って代わることができる。新生児のStaphylococcus感染症、重篤な敗血症および他の生命を脅かす急性の状態は受動免疫の主たる標的である。有効なワクチンは、一般に選択的手術に直面している患者、および特に血管内(endovascular)装置を受けている患者に大きな可能性を与える。さらに、免疫応答を減少させる慢性的な疾患に罹っている患者または連続携行式腹膜潅流を受けている患者は、そのようなワクチンの利益を得ると思われる。
【0053】
Staphylococcus aureusに関する例示のため、3つの異なるアプローチを平行して採用した。これら3つの方法は全て、本発明による方法を用いてStaphylococcusのタンパク質またはペプチドとヒト血清中に存在する抗体との相互作用に基づくものである。この相互作用はタンパク質内のエピトープの認識に依存し、エピトープは短いペプチド(直線状エピトープ)かまたはポリペプチドドメイン(構造的エピトープ)であってよい。抗原タンパク質は、前もって選択した血清のプールを用いた種々の方法によって、および(2回目のスクリーニングにおいては)個々の選択した血清により同定する。
【0054】
高処理量スクリーニングに従い、選択した抗原タンパク質を組換えタンパク質としてまたはインビトロ翻訳産物として(原核発現系で発現できない場合)発現させ、大きなヒト血清コレクション(>100非感染血清、>50患者血清)を用いて免疫原性の評価のために一連のELISAおよびウエスタンブロッティングアッセイで試験する。好ましい抗原は細胞表面上に位置しているかまたは分泌される、すなわち細胞外で接近できる。細胞壁タンパク質(細胞外マトリックス結合タンパク質など)に対する抗体は二重の目的のために働くことが期待される:すなわち、接着の抑制および食作用の促進。分泌されたタンパク質に対する抗体は、毒素の中和に有用である。細菌は分泌したタンパク質によって互いに情報伝達していることが知られている。これらタンパク質に対する中和抗体は、Staphylococcus種間または内での成長促進クロストーク(cross-talk)を妨害するであろう。バイオインフォーマティクス(シグナル配列、細胞壁局在シグナル、膜貫通ドメイン)は、細胞表面局在(localisation)および分泌を評価するうえで非常に有用であることがわかった。実験手法は、対応エピトープおよびタンパク質を用いたヒト血清からの抗体の単離、およびその後のアッセイでの該抗体の試薬としての使用を含む:異なる条件下で増殖させたStaphylococcusの細胞表面染色(FACS、顕微鏡観察)、中和能の決定(毒素、接着)、およびオプソニン反応および食作用の促進(インビトロ食作用アッセイ)。
【0055】
抗体による直線状エピトープの認識は、4〜5アミノ酸の短さの配列に基づくことができる。もちろん、このことはこれら短いペプチドが所定の抗体をインビボで誘発できることを必ずしも意味しない。この理由から、定められたエピトープ、ポリペプチドおよびタンパク質は、選択したタンパク質に対してインビボで抗体を誘導する能力について動物(主としてマウス)でさらに試験する。抗体を誘導する能力が確認された抗原は、感染を防ぐ能力について動物モデルで試験されるであろう。
【0056】
Staphylococcusに対してヒト免疫系によって産生されヒト血清中に存在する抗体は、抗原タンパク質のインビボ発現およびその免疫原性を示すものである。
【0057】
従って、Staphylococcus aureusまたはStaphylococcus epidermidisからの新規な高度免疫血清に反応性の抗原を本発明による方法により得ることができる。本発明の他の側面によれば、本発明は、表2a、2b、2c、2d、3、4および5のいずれかに列記した配列よりなる群から選ばれた、とりわけ配列番号:56、57、59、60、67、70、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、85、87、88、89、90、92、95、96、97、99、100、101、102、103、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、126、128、132、134、138、140、142、151、152、154、155およびその高度免疫性フラグメントよりなる群から選ばれた高度免疫血清に反応性の抗原に関する。従って、本発明はまた、本発明による方法によって得ることができ、表2a、2b、2c、2d、3、4および5のいずれかに列記した配列よりなる群から選ばれた、とりわけ配列番号:56、57、59、60、67、70、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、85、87、88、89、90、92、95、96、97、99、100、101、102、103、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、126、128、132、134、138、140、142、151、152、154、155およびその高度免疫性フラグメントよりなる群から選ばれた高度免疫血清に反応性の抗原に関する。
【0058】
Staphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisからの抗原を本発明による方法によって抽出し、これを医薬製剤の製造、とりわけStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidis感染症に対するワクチンの製造に用いることができる。医薬製剤に使用すべきStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisのそのような高度免疫血清に反応性の抗原の例は、表2a、2b、2c、2d、3、4および5のいずれかに列記した配列よりなる群から選ばれた、とりわけ配列番号:55、56、57、58、59、60、62、66、67、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、87、88、89、90、92、94、95、96、97、99、100、101、102、103、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、126、128、130、132、134、138、140、142、151、152、154、155、158および医薬製剤の製造、とりわけStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidis感染症に対するワクチンの製造のためのその高度免疫性フラグメントよりなる群から選ばれた高度免疫血清に反応性の抗原よりなる群から選ばれる。
【0059】
高度免疫性フラグメントは、それ自体抗原性であるかまたはハプテンとして提供したときに抗原性にできる同定した抗原のフラグメントとして定義される。それゆえ、1または(一層長いフラグメントについては)幾つかのみのアミノ酸変化を示す抗原または抗原性フラグメントも本発明で得ることができる、ただし、アミノ酸変化を有するそのようなフラグメントの抗原能が該変化によってひどく損なわれないこと、すなわち、この抗原をワクチン接種した個体において適当な免疫応答を引き起こすのに適しており、個々の血清からの個々の抗体調製物によって同定されることを条件とする。
【0060】
高度免疫血清に反応性の抗原のそのような高度免疫性フラグメントの好ましい例は、表2a、2b、2cおよび2dの「予測された免疫原性アミノ酸」、「同定した免疫原性領域の位置」および「関連領域との血清反応性」の欄のアミノ酸配列、および表4および5の「推定抗原性表面領域」の欄のアミノ酸配列を含むペプチド、とりわけ配列番号:55のアミノ酸配列12-29、34-40、63-71、101-110、114-122、130-138、140-195、197-209、215-229、239-253、255-274および39-94、
配列番号:56のアミノ酸配列5-39、111-117、125-132、134-141、167-191、196-202、214-232、236-241、244-249、292-297、319-328、336-341、365-380、385-391、407-416、420-429、435-441、452-461、477-488、491-498、518-532、545-556、569-576、581-587、595-602、604-609、617-640、643-651、702-715、723-731、786-793、805-811、826-839、874-889、37-49、63-77および274-334、
配列番号:57のアミノ酸配列28-55、82-100、105-111、125-131、137-143、1-49
配列番号:58のアミノ酸配列33-43、45-51、57-63、65-72、80-96、99-110、123-129、161-171、173-179、185-191、193-200、208-224、227-246、252-258、294-308、321-329、344-352、691-707、358-411および588-606、
配列番号:59のアミノ酸配列16-38、71-77、87-94、105-112、124-144、158-164、169-177、180-186、194-204、221-228、236-245、250-267、336-343、363-378、385-394、406-412、423-440、443-449、401-494、
配列番号:60のアミノ酸配列18-23、42-55、69-77、85-98、129-136、182-188、214-220、229-235、242-248、251-258、281-292、309-316、333-343、348-354、361-367、393-407、441-447、481-488、493-505、510-515、517-527、530-535、540-549、564-583、593-599、608-621、636-645、656-670、674-687、697-708、726-734、755-760、765-772、785-792、798-815、819-824、826-838、846-852、889-904、907-913、932-939、956-964、982-1000、1008-1015、1017-1024、1028-1034、1059-1065、1078-1084、1122-1129、1134-1143、1180-1186、1188-1194、1205-1215、1224-1230、1276-1283、1333-1339、1377-1382、1415-1421、1448-1459、1467-1472、1537-1545、1556-1566、1647-1654、1666-1675、1683-1689、1722-1737、1740-1754、1756-1762、1764-1773、1775-1783、1800-1809、1811-1819、1839-1851、1859-1866、1876-1882、1930-1939、1947-1954、1978-1985、1999-2007、2015-2029、2080-2086、2094-2100、2112-2118、2196-2205、2232-2243、198-258、646-727および2104-2206
配列番号:62のアミノ酸配列10-29、46-56、63-74、83-105、107-114、138-145、170-184、186-193、216-221、242-248、277-289、303-311、346-360、379-389、422-428、446-453、459-469、479-489、496-501、83-156、
配列番号:66のアミノ酸配列14-22、32-40、52-58、61-77、81-93、111-117、124-138、151-190、193-214、224-244、253-277、287-295、307-324、326-332、348-355、357-362、384-394、397-434、437-460、489-496、503-510、516-522、528-539、541-547、552-558、563-573、589-595、602-624、626-632、651-667、673-689、694-706、712-739、756-790、403-462、
配列番号:67のアミノ酸配列49-56、62-68、83-89、92-98、109-115、124-131、142-159、161-167、169-175、177-188、196-224、230-243、246-252、34-46、
配列番号:70のアミノ酸配列11-20、26-47、69-75、84-92、102-109、119-136、139-147、160-170、178-185、190-196、208-215、225-233、245-250、265-272、277-284、300-306、346-357、373-379、384-390、429-435、471-481、502-507、536-561、663-688、791-816、905-910、919-933、977-985、1001-1010、1052-1057、1070-1077、1082-1087、1094-1112、493-587、633-715および704-760、
配列番号:71のアミノ酸配列6-20、53-63、83-90、135-146、195-208、244-259、263-314、319-327、337-349、353-362、365-374、380-390、397-405、407-415、208-287および286-314、
配列番号:72のアミノ酸配列10-26、31-43、46-58、61-66、69-79、85-92、100-115、120-126、128-135、149-155、167-173、178-187、189-196、202-222、225-231、233-240、245-251、257-263、271-292、314-322、325-334、339-345、59-74、
配列番号:73のアミノ酸配列4-9、15-26、65-76、108-115、119-128、144-153、38-52および66-114、
配列番号:74のアミノ酸配列5-22、42-50、74-81、139-145、167-178、220-230、246-253、255-264、137-237および250-267、
配列番号:75のアミノ酸配列10-26、31-44、60-66、99-104、146-153、163-169、197-205、216-223、226-238、241-258、271-280、295-315、346-351、371-385、396-407、440-446、452-457、460-466、492-510、537-543、546-551、565-582、590-595、635-650、672-678、686-701、705-712、714-721、725-731、762-768、800-805、672-727、
配列番号:76のアミノ酸配列5-32、35-48、55-76、
配列番号:77のアミノ酸配列7-35、54-59、247-261、263-272、302-320、330-339、368-374、382-411、126-143および168-186、
配列番号:78のアミノ酸配列5-24、88-94、102-113、132-143、163-173、216-224、254-269、273-278、305-313、321-327、334-341、31-61および58-74、
配列番号:79のアミノ酸配列16-24、32-39、43-49、64-71、93-99、126-141、144-156、210-218、226-233、265-273、276-284、158-220、
配列番号:80のアミノ酸配列49-72、76-83、95-105、135-146、148-164、183-205、57-128、
配列番号:81のアミノ酸配列6-15、22-32、58-73、82-88、97-109、120-131、134-140、151-163、179-185、219-230、242-255、271-277、288-293、305-319、345-356、368-381、397-406、408-420、427-437、448-454、473-482、498-505、529-535、550-563、573-580、582-590、600-605、618-627、677-685、718-725、729-735、744-759、773-784、789-794、820-837、902-908、916-921、929-935、949-955、1001-1008、1026-1032、1074-1083、1088-1094、1108-1117、1137-1142、1159-1177、1183-1194、1214-1220、1236-1252、1261-1269、1289-1294、1311-1329、1336-1341、1406-1413、1419-1432、1437-1457、1464-1503、1519-1525、1531-1537、1539-1557、1560-1567、1611-1618、1620-1629、1697-1704、1712-1719、1726-1736、1781-1786、1797-1817、1848-1854、1879-1890、1919-1925、1946-1953、1974-1979、5-134、
配列番号:82のアミノ酸配列6-33、40-46、51-59、61-77、84-104、112-119、124-187、194-248、252-296、308-325、327-361、367-393、396-437、452-479、484-520、535-545、558-574、582-614、627-633、656-663、671-678、698-704、713-722、725-742、744-755、770-784、786-800、816-822、827-837、483-511、
配列番号:83のアミノ酸配列4-19、57-70、79-88、126-132、144-159、161-167、180-198、200-212、233-240、248-255、276-286、298-304、309-323、332-346、357-366、374-391、394-406、450-456、466-473、479-487、498-505、507-519、521-530、532-540、555-565、571-581、600-611、619-625、634-642、650-656、658-665、676-682、690-699、724-733、740-771、774-784、791-797、808-815、821-828、832-838、876-881、893-906、922-929、938-943、948-953、969-976、1002-1008、1015-1035、1056-1069、1105-1116、1124-1135、1144-1151、1173-1181、1186-1191、1206-1215、1225-1230、1235-1242、6-66、65-124および590-604、
配列番号:84のアミノ酸配列5-32、66-72、87-98、104-112、116-124、128-137、162-168、174-183、248-254、261-266、289-303、312-331、174-249、
配列番号:85のアミノ酸配列4-21、28-40、45-52、59-71、92-107、123-137、159-174、190-202、220-229、232-241、282-296、302-308、312-331、21-118、
配列番号:87のアミノ酸配列9-28、43-48、56-75、109-126、128-141、143-162、164-195、197-216、234-242、244-251、168-181、
配列番号:88のアミノ酸配列4-10、20-42、50-86、88-98、102-171、176-182、189-221、223-244、246-268、276-284、296-329、112-188、
配列番号:89のアミノ酸配列4-9、13-24、26-34、37-43、45-51、59-73、90-96、99-113、160-173、178-184、218-228、233-238、255-262、45-105、103-166および66-153、
配列番号:90のアミノ酸配列13-27、42-63、107-191、198-215、218-225、233-250、474-367、
配列番号:92のアミノ酸配列25-53、95-123、164-176、189-199、8-48、
配列番号:94のアミノ酸配列7-13、15-23、26-33、68-81、84-90、106-117、129-137、140-159、165-172、177-230、234-240、258-278、295-319、22-56、23-99、97-115、233-250および245-265、
配列番号:95のアミノ酸配列13-36、40-49、111-118、134-140、159-164、173-183、208-220、232-241、245-254、262-271、280-286、295-301、303-310、319-324、332-339、1-85、54-121および103-185、
配列番号:96のアミノ酸配列39-44、46-80、92-98、105-113、118-123、133-165、176-208、226-238、240-255、279-285、298-330、338-345、350-357、365-372、397-402、409-415、465-473、488-515、517-535、542-550、554-590、593-601、603-620、627-653、660-665、674-687、698-718、726-739、386-402、
配列番号:97のアミノ酸配列5-32、34-49、1-43、
配列番号:99のアミノ酸配列10-27、37-56、64-99、106-119、121-136、139-145、148-178、190-216、225-249、251-276、292-297、312-321、332-399、403-458、183-200、
配列番号:100のアミノ酸配列5-12、15-20、43-49、94-106、110-116、119-128、153-163、175-180、185-191、198-209、244-252、254-264、266-273、280-288、290-297、63-126、
配列番号:101のアミノ酸配列5-44、47-55、62-68、70-78、93-100、128-151、166-171、176-308、1-59、
配列番号:102のアミノ酸配列18-28、36-49、56-62、67-84、86-95、102-153、180-195、198-218、254-280、284-296、301-325、327-348、353-390、397-402、407-414、431-455、328-394、
配列番号:103のアミノ酸配列7-37、56-71、74-150、155-162、183-203、211-222、224-234、242-272、77-128、
配列番号:104のアミノ酸配列34-58、63-69、74-86、92-101、130-138、142-150、158-191、199-207、210-221、234-249、252-271、5-48、
配列番号:106のアミノ酸配列12-36、43-50、58-65、73-78、80-87、108-139、147-153、159-172、190-203、211-216、224-232、234-246、256-261、273-279、286-293、299-306、340-346、354-366、167-181、
配列番号:112のアミノ酸配列61-75、82-87、97-104、113-123、128-133、203-216、224-229、236-246、251-258、271-286、288-294、301-310、316-329、337-346、348-371、394-406、418-435、440-452
配列番号:114のアミノ酸配列30-37、44-55、83-91、101-118、121-128、136-149、175-183、185-193、206-212、222-229、235-242、
配列番号:116のアミノ酸配列28-38、76-91、102-109、118-141、146-153、155-161、165-179、186-202、215-221、234-249、262-269、276-282、289-302、306-314、321-326、338-345、360-369、385-391
配列番号:142のアミノ酸配列9-33、56-62、75-84、99-105、122-127、163-180、186-192、206-228、233-240、254-262、275-283、289-296、322-330、348-355、416-424、426-438、441-452、484-491、522-528、541-549、563-569、578-584、624-641、527-544、
配列番号:151のアミノ酸配列37-42、57-62、121-135、139-145、183-190、204-212、220-227、242-248、278-288、295-30、304-309、335-341、396-404、412-433、443-449、497-503、505-513、539-545、552-558、601-617、629-649、702-711、736-745、793-804、814-829、843-858、864-885、889-895、905-913、919-929、937-943、957-965、970-986、990-1030、1038-1049、1063-1072、1080-1091、1093-1116、1126-1136、1145-1157、1163-1171、1177-1183、1189-1196、1211-1218、1225-1235、1242-1256、1261-1269、624-684、
配列番号:152のアミノ酸配列8-23、31-38、42-49、61-77、83-90、99-108、110-119、140-147、149-155、159-171、180-185、189-209、228-234、245-262、264-275、280-302、304-330、343-360、391-409、432-437、454-463、467-474、478-485、515-528、532-539、553-567、569-581、586-592、605-612、627-635、639-656、671-682、700-714、731-747、754-770、775-791、797-834、838-848、872-891、927-933、935-942、948-968、976-986、1000-1007、1029-1037、630-700、
配列番号:154のアミノ酸配列17-25、27-55、84-90、95-101、115-121、55-101、
配列番号:155のアミノ酸配列13-28、40-46、69-75、86-92、114-120、126-137、155-172、182-193、199-206、213-221、232-238、243-253、270-276、284-290、22-100、および
配列番号:158のアミノ酸配列7-19、46-57、85-91、110-117、125-133、140-149、156-163、198-204、236-251、269-275、283-290、318-323、347-363、9-42および158-174、
配列番号:168のアミノ酸配列7-14、21-30、34-50、52-63、65-72、77-84、109-124、129-152、158-163、175-190、193-216、219-234、
配列番号:174のアミノ酸配列5-24、38-44、100-106、118-130、144-154、204-210、218-223、228-243、257-264、266-286、292-299、
配列番号:176のアミノ酸配列29-44、74-83、105-113、119-125、130-148、155-175、182-190、198-211、238-245を含むペプチド、および該配列の少なくとも6アミノ酸、好ましくは8を超えるアミノ酸、とりわけ10を超えるアミノ酸を含むフラグメントよりなる群から選ばれる。これらフラグメントは個々におよびそれぞれ独立に本発明の好ましい側面をなす。
【0061】
特に適したヘルパーエピトープもまた、これら抗原に由来するものである。特に好ましいヘルパーエピトープは、表4および5中の「推定抗原性表面領域」の欄に記載したペプチドから選ばれた、および配列番号56のアミノ酸配列6-40、583-598、620-646および871-896、配列番号70のアミノ酸配列24-53、配列番号74のアミノ酸配列240-260、配列番号81のアミノ酸配列1660-1682および1746-1790、配列番号83のアミノ酸配列1-29、680-709および878-902、配列番号89のアミノ酸配列96-136、配列番号94のアミノ酸配列1-29、226-269および275-326、配列番号114のアミノ酸配列23-47および107-156、配列番号142のアミノ酸配列24-53、およびT細胞エピトープであるそのフラグメントよりなる群から選ばれたフラグメントを含むペプチドである。
【0062】
他の側面によれば、本発明はStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisについて上記で同定したそのような高度免疫血清に反応性の抗原またはそのフラグメントを含むワクチンに関する。そのようなワクチンは、S. aureusまたはS. epidermidisに対する1またはそれ以上の抗原を含んでいてよい。場合により、そのようなS. aureusまたはS. epidermidisの抗原は、混合ワクチンにおいて他の病原体に対する抗原と組み合わせてもよい。好ましくは、このワクチンはさらに、免疫促進物質、好ましくはポリカチオン性ポリマー、とりわけポリカチオン性ペプチド、免疫促進性デオキシヌクレオチド(ODN)、神経刺激性化合物、とりわけヒト成長ホルモン、ミョウバン、フロイントの完全または不完全アジュバントまたはそれらの組み合わせから選ばれる免疫促進性物質を含んでいる。そのようなワクチンはまた、大腸菌などの遺伝子操作した微生物の表面上の表面ディスプレイタンパク質プラットホーム上に提示された抗原をも含んでいてよい。
【0063】
他の側面によれば、本発明は、上記Staphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisの抗原またはStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisの抗原フラグメントの少なくとも1に対して産生された抗体を含む特異的調製物に関する。これらの抗体はモノクローナル抗体であるのが好ましい。
【0064】
そのようなポリクローナルまたはモノクローナルの抗体調製物を製造する方法は当業者には充分に利用でき、従来技術に適切に記載されている。そのようなモノクローナル抗体調製物を製造する好ましい方法は、下記の工程を特徴とする:
・上記Staphylococcusの抗原またはそのフラグメントを非ヒト動物に投与することにより該非ヒト動物で免疫応答を開始させ、
・該動物から脾臓または脾細胞を取り出し、
・該脾臓または脾細胞のハイブリドーマ細胞を製造し、
・該抗原に特異的なハイブリドーマ細胞を選択およびクローニングし、ついで
・該クローニングしたハイブリドーマ細胞を培養し、さらに任意に精製工程を行うことによって抗体調製物を製造する。
好ましくは、脾臓または脾細胞の取り出しは該動物を殺すことと関係している。
【0065】
モノクローナル抗体およびそのフラグメントは、繰返し投与を可能とすべくキメラ化またはヒト化することができる(Grazianoら、1995)。あるいは、ヒトモノクローナル抗体およびそのフラグメントをファージディスプレイライブラリーから(McGuinnesら、1996)またはトランスジェニック動物から(Bruggemannら、1996)得ることができる。
【0066】
本発明で同定した該Staphylococcus aureusまたはStaphylococcus epidermidisの抗原に対するポリクローナル抗体調製物を製造する好ましい方法は、下記の工程を特徴とする:
・上記Staphylococcusの抗原またはそのフラグメントを非ヒト動物に投与することにより該非ヒト動物で免疫応答を開始させ、
・該動物から抗体含有体液を取り出し、ついで
・該抗体含有体液をさらに精製工程に供することにより抗体調製物を製造する。
【0067】
これらモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体調製物は、Staphylococcus感染による疾患の治療または予防用医薬の製造に用いることができる。さらに、これら調製物はまた診断および造影目的のために用いることができる。
本発明の方法を下記実施例および図面においてさらに説明するが、これらに限られるものではない。
【0068】
実施例
新規なStaphylococcus aureus抗原の発見
実施例1:ヒト血清からの抗体の調製
ヒト免疫系によってStaphylococcusに対して産生されヒト血清中に存在する抗体は、抗原性タンパク質のインビボでの発現およびその免疫原性を示すものである。これら分子は、特異的な抗Staphylococcus抗体と対応するS. aureusペプチドまたはタンパク質との相互反応に基づく本発明による方法においては、個々の抗原の同定に必須である。関連抗体レパートリーへのアクセスを得るため、ヒト血清をI.急性のS. aureus感染症、たとえば菌血症、敗血症、血管内および皮内カテーテルおよび装置の感染症、創傷感染症、および表層部および深部軟組織感染症の患者から回収した(S. aureusは医学的微生物試験により病因であることが示された)。II.未感染成人からの血清試料のコレクションもまた本分析に含めた、というのはStaphylococcus感染はよくあるものであり、抗体は皮膚および軟組織からのStaphylococcusとの以前の遭遇による自然免疫の結果として存在するからである(せつ、創傷感染症、歯周炎など)。
【0069】
血清を一連のELISAアッセイによりS. aureus抗体について特徴付けた。幾つかのStaphylococcus抗原を用いて、測定した力価が交差反応性の抗体の合計の結果ではないことを確かめた。この目的のため、全菌体S. aureus(プロテインA欠失)抽出物(種々の条件下で増殖)または全菌体をELISAアッセイに用いたのみならず、個々の細胞壁成分、たとえばS. aureusから単離したリポテイコ酸およびペプチドグリカンをも用いた。さらに重要なことに、本発明のヒト血清コレクションを一層良好に特徴付けるべく、既知のStaphylococcus細胞表面タンパク質を表す組換えタンパク質コレクションを確立した。
【0070】
最近、IgG血清抗体のみならずIgA血清抗体もまたPMNのFcRIIIレセプターによって認識され、オプソニン反応を促進しうることが報告された(Phillips-Quagliataら、2000;Shibuyaら、2000)。IgA抗体の主たる役割は、主として粘膜表面上での中和である。血清IgAレベルは、二量体分泌IgAの質、量および特異性を反映している。この理由から、血清コレクションを抗Staphylococcus IgGのみならずIgAレベルについても分析した。ELISAアッセイでは、高度に特異的な二次試薬を用いてIgGやIgAなどの高親和性タイプの抗体を検出し、IgMを回避した。IgM抗体の産生は一次獲得体液応答の際に生じ、低親和性の抗体という結果となるのに対し、IgGおよびIgA抗体はすでに親和性成熟を経てきており、疾患の治療または予防において一層価値がある。
【0071】
実験手順
酵素結合抗体免疫アッセイ(ELISA)。ELISAプレートをコーティング緩衝液(炭酸ナトリウム、pH9.2)中の種々の抗原(2〜10μg/ml)でコーティングした。血清の系列希釈(100〜100,000)をTBS−BSAで行った。高度に特異的な(交差吸着)HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)標識抗ヒトIgGまたは抗ヒトIgA二次抗体(Southern Biotech)を製造業社の指示推奨(〜2.000×)に従って用いた。抗原−抗体複合体の定量を、自動ELISAリーダー(Wallace Victor 1420)でのOD405nmの読み取りに基づいて基質(ABTS)の発色産物への変換を測定することにより行った。希釈応答が線形である所定の希釈で力価を比較した(表1)。〜100の血清を複数のStaphylococcus成分に対する反応性に基づいてランク付けを行い、最も高い反応性のもの(90百分順位を超えるもの)を抗原同定のさらなる分析のために選択した。重要なことに、臨床的に健康な個体の血清からの抗Staphylococcus抗体は非常に安定であることがわかり、3ヶ月、6ヶ月および9ヶ月後に測定したときに全てのStaphylococcus抗原に対して同じ高いELISA力価を与えた(データは示していない)。対照的に、患者の抗S. aureus抗体は減少し、ついで感染の数週間後に消失した(Coloque-Navarroら、1998)。しかしながら、患者からの抗体は非常に重要である、というのはこれら抗体はELISAにおいて試験し本発明によるスクリーニングの際に免疫原として同定した細菌性抗原のインビボ発現の直接的な証拠であるからである。
【0072】
抗体の特徴付けの際に従ったこの包括的なアプローチは独特であり、Staphylococcusの高度免疫血清の明白な同定に導いた。
【0073】
ゲノムスクリーニングのための抗体の精製。患者および非感染の両グループから5つの血清を全体の抗Staphylococcus力価に基づいて選択した。大腸菌タンパク質に対する抗体は、熱不活化血清を全菌体大腸菌(DH5a、pHIE11で形質転換、細菌ディスプレイに使用したのと同じ条件で増殖)とともにインキュベートするか、またはリボソームディスプレイのための大腸菌溶解液アフィニティークロマトグラフィーにかけることのいずれかにより除去した。プールし枯渇した(depleted)血清からのIgGの高度に富んだ調製物を、製造業社の指示(UltraLink Immobilized Protein G, Pierce)に従ってプロテインGアフィニティークロマトグラフィーにより生成した。IgA抗体もまた、ストレプトアビジン−アガロース(GIBCO BRL)上に固定化したビオチン標識抗ヒトIgA(Southern Biotech)を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。枯渇および精製の有効性は、SDS−PAGE、ウエスタンブロッティング、ELISA、およびタンパク質濃度測定によりチェックした。プロテオミックスのためには、IgGおよびIgA調製物の枯渇は必要ではない、というのは二次試薬が特異性を確実にするからである。
【0074】
実施例2:Staphylococcus aureusの高度にランダムな、読取り枠選択した(frame-selected)、小フラグメントのゲノムDNAライブラリーの生成
実験手順
StaphylococcusゲノムDNAの調製。この方法は2つの以前に刊行されたプロトコール(Sohail, 1998, Betleyら、1984)の改変として開発され、ゲノムDNAを高品質かつ大スケールで得るべく、本来、メチシリン耐性Staphylococcus aureus株COLに対して特別に適合させたものであった。5μg/mlのテトラサイクリンを添加した500mlのBHI(Brain Heart Infusion)培地に凍結スタッブ(frozen stab)からの細菌を接種し、通気および振盪しながら37℃で18時間増殖させた。ついで、培養液を各250mlの2つのアリコートに回収し、1600×gで15分間遠心分離にかけ、上澄み液を除去した。細菌ペレットを26mlの0.1mMトリス−HCl(pH7.6)に注意深く再浮遊させ、1600×gで15分間、再び遠心分離にかけた。ペレットを20mlの1mMトリス−HCl(pH7.6)、0.1mM EDTAに再浮遊させ、50ml容の滅菌ポリプロピレン管に移した。各管に1mlの熱処理RNアーゼA(10mg/ml)およびRNアーゼT1(200U)を加え、溶液を注意深く混合した。ついで、各管に250μlのリソスタフィン(Lysostaphin)(10mg/mlストック、ddHO中に新たに調製)を加え、充分に混合し、連続的攪拌下で振盪水浴中、40℃で10分間インキュベートした。1mlの10%SDS、40μlのプロテイナーゼK(25mg/mlストック)および100μlのプロナーゼ(10mg/ml)を添加後、管を再び数回逆さにし、振盪水浴中、40℃で5分間インキュベートした。ついで、3.75mlの5M NaClおよび2.5mlの臭化セチルトリメチルアンモニウム溶液(CTAB)(10%w/v、4%w/v NaCl)を加え、管を振盪水浴中、65℃で10分間さらにインキュベートした。試料を室温に冷却し、PhOH/CHCl/IAA(25:24:1)およびCHCl/IAA(24:1)で抽出した。水性相を注意深く回収し、新たな50ml容の滅菌管に移した。各管に1.5mlのStratacleanTM樹脂を加え、穏やかにしかし充分に混合し、室温で1分間インキュベートした。試料を遠心分離にかけ、DNAを含有する上層を清浄な50ml容の管に回収した。0.6×容量のイソプロパノールを添加してDNAを室温で沈殿させ、滅菌パスツールピペットを用いて溶液から巻き取り、80%氷冷エタノールを入れた管に移した。沈殿を10〜12000×gで遠心分離にかけてDNAを回収し、ついで空気乾燥し、ddHO中に分散させた。
【0075】
小さなゲノムDNAフラグメントの調製。ゲノムDNAフラグメントを、カップ−ホーンソニケーター(cup-horn sonicator)(BB5カップホーンを備えたBandelin Sonoplus UV 2200 sonicator、100%出力で10秒パルス)を用いて150〜300bpの範囲のサイズのフラグメントに機械的に切断するか、または穏やかなDNアーゼI処理(Novagen)により50〜75bpのサイズのフラグメントに切断した。超音波処理は、150〜300bpのサイズ範囲のフラグメントにDNAを切断したときに極めて緊密なフラグメントサイズ分布が得られることが観察された。しかしながら、DNAを超音波により誘導した流体力学的剪断力に充分に暴露したにもかかわらず、その後のフラグメントサイズの低減は有効かつ再現性をもって達成することはできなかった。それゆえ、Novagenのショットガン開裂キットを用いた穏やかなDNアーゼI処理により50〜70bpのサイズのフラグメントを得た。キットにより提供されたDNアーゼIの1:20希釈を調製し、MnClの存在下、60μlの容量で20℃にて5分間消化を行って該酵素による二本鎖の開裂を確実にした。2μlの0.5M EDTAを用いて反応を停止させ、断片化の有効性を2%TAE−アガロースゲル上で評価した。この処理は、ゲノムDNAのほぼ50〜70bpフラグメントへの完全な断片化という結果となった。ついで、各100μMのdNTPの存在下でT4 DNAポリメラーゼを用い、フラグメントを2回平滑末端化して末端の充分な揃え(flushing)を確実にした。フラグメントは直ちにライゲーション反応に用いるか、またはその後の使用のために−20℃で冷凍した。
【0076】
ベクターの記載。ベクターpMAL4.1をpEH1骨格(Hashemzadeh-Bonehiら、1998)のもとにカナマイシン耐性遺伝子を用いて構築した。さらに、このベクターはマルチプルクローニングサイトにクローニングしたb−ラクタマーゼ(bla)遺伝子を有している。bla遺伝子の前にはompAのリーダーペプチド配列が先行しており、細胞質膜を通した充分な分泌を確実にしている。SmaI制限部位は、ライブラリー挿入用に働く。SmaI部位は上流のFseI部位および下流のNotI部位にフランキングされており、これら部位は選択したフランキングの回収に用いた。これら3つの制限部位は、bla遺伝子が−1読取り枠で転写され、その結果、NotI部位の15bp後に停止コドンとなるような仕方でompAリーダー配列の後ろに挿入されている。b−ラクタマーゼタンパク質が産生される結果としてアンピシリン耐性が得られるように、+1bp挿入はbla ORFを回復させる。
【0077】
ベクターpMAL4.31をpASK−IBA骨格(Skerra、1994)のもとにb−ラクタマーゼ遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子で置換して構築した。さらに、このベクターはマルチプルクローニングサイトにクローニングしたb−ラクタマーゼ(bla)遺伝子を有している。成熟b−ラクタマーゼ遺伝子をコードする配列の前にはompAのリーダーペプチド配列が先行しており、細胞質膜を通した充分な分泌を確実にしている。さらに、成熟b−ラクタマーゼの最初の12のアミノ酸をコードする配列(スペーサー配列)がompAリーダーペプチド配列の後に続いていて、リーダーペプチダーゼ開裂部位の直後に配列の融合となることを回避している、というのは、たとえばこの領域での正に荷電したアミノ酸のクラスターは細胞質膜を通した移動を低減ないし廃棄するからである(Kajavaら、2000)。SmaI制限部位は、ライブラリー挿入用に働く。SmaI部位は上流のFseI部位および下流のNotI部位にフランキングされており、これら部位は選択したフランキングの回収に用いた。これら3つの制限部位は、bla遺伝子が−1読取り枠で転写され、その結果、NotI部位の15bp後に停止コドンとなるような仕方で12アミノ酸のスペーサー配列をコードする配列の後ろに挿入されている。b−ラクタマーゼタンパク質が産生される結果としてアンピシリン耐性が得られるように、+1bp挿入はbla ORFを回復させる。
【0078】
ベクターpMAL9.1を、pEH1のマルチプルクローニングサイトにlamB遺伝子をクローニングすることにより構築した。引き続き、lamB中のアミノ酸154の後に制限部位FseI、SmaIおよびNotIを含む配列を挿入した。この挿入の読取り枠は、プラスチドpMAL4.1またはpMAL4.31からFseIおよびNotI消化により切り出した読取り枠選択DNAフラグメントのプラスチドpMAL9.1への移動がlamBおよび各挿入物の連続した読取り枠を生成するような仕方で選択した。
【0079】
ベクターpHIE11を、pEH1のマルチプルクローニングサイトにfhuA遺伝子をクローニングすることにより構築した。その後、fhuA中のアミノ酸405の後に制限部位FseI、XbaIおよびNotIを含む配列を挿入した。この挿入の読取り枠は、プラスチドpMAL4.1またはpMAL4.31からFseIおよびNotI消化により切り出した読取り枠選択DNAフラグメントのプラスチドpHIE11への移動がfhuAおよび各挿入物の連続した読取り枠を生成するような仕方で選択した。
【0080】
読取り枠選択のためのライブラリーのクローニングおよび評価。S. aureusのゲノムDNAフラグメントをベクターpMAL4.1かまたはpMAL4.31のSmaI部位にライゲートした。組換えDNAをDH10Bエレクトロコンピテント(electrocompetent)大腸菌細胞(GIBCO BRL)にエレクトロポレーションし、形質転換体をカナマイシン(50μg/ml)およびアンピシリン(50μg/ml)を添加したLB−アガーにプレーティングした。プレートを37℃で一夜インキュベートし、コロニーを大スケールDNA抽出のために回収した。代表的なプレートをコロニーPCR分析および大スケールシークエンシングのためのコロニーを回収するために貯蔵し取っておいた。簡単なコロニーPCRアッセイを用いて最初に大まかなフラグメントのサイズ分布並びに挿入効率を決定した。シークエンシングデータから正確なフラグメントサイズを評価した(挿入部位での結合の正確さ並びに読取り枠選択の正確さ(3n+1則))。
【0081】
細菌表面ディスプレイのためのライブラリーのクローニングおよび評価。pMAL4.1またはpMAL4.31から制限酵素FseIおよびNotIを有するS. aureusライブラリーを含むゲノムDNAフラグメントを切り出した。ついで、フラグメントの全集団を、FseIおよびNotIで消化しておいたプラスチドpMAL9.1(LamB)またはpHIE11(FhuA)中に移した。これら2つの制限酵素(8bpのGCリッチ配列を認識する)を用い、pMAL4.1またはpMAL4.31ベクターで選択した読取り枠が各プラットホームベクターでも維持される。ついで、プラスミドライブラリーを大腸菌DH5a細胞にエレクトロポレーションにより形質転換した。細胞をカナマイシン(50μg/ml)を添加した大きなLB−アガープレート上にプレーティングし、明らかに単一のコロニーが目で認められる濃度まで37℃で一夜増殖させた。ついで、細胞をこれらプレートの表面から掻き落し、新たなLB培地で洗浄し、ライブラリースクリーニングのためにアリコートとして−80℃で貯蔵した。
【0082】
結果
読取り枠選択のためのライブラリー。2つのライブラリー(LSA50/6およびLSA250/1)がpMAL4.1ベクターでそれぞれ約50bpおよび250bpのサイズで得られた。両ライブラリーについて、読取り枠選択後に1〜2×10のクローン総数が約1μgのpMAL4.1プラスミドDNAおよび50ngの断片化S. aureusゲノムDNAを用いて得られた。LSA50/6ライブラリーのランダムさを評価するため、672のランダムに選択したクローンをシークエンシングした。バイオインフォーマティクス分析は、これらのクローンのうち1度を越えて存在するものはないことを示した。さらに、クローンの90%が19〜70bpのサイズ範囲に含まれ、平均サイズは25bpであることが示された(図2)。672のの配列全てが3n+1則に従っており、全てのクローンが正しく読取り枠選択されていることを示していた。
【0083】
細菌表面ディスプレイライブラリー。大腸菌の表面上のペプチドのディスプレイには、読取り枠選択ベクターpMAL4.1からのLSA50/6ライブラリーからの挿入物のディスプレイプラスミドpMAL9.1(LamB)またはpHIE11(FhuA)への移動が必要であった。ゲノムDNAフラグメントをFseIおよびNotI制限酵素により切り出し、5ngの挿入物を0.1μgのプラスミドDNAとライゲートすると2〜5×10クローンという結果となった。これらのクローンをLBプレートから掻き取り、さらに増幅することなく凍結した。
【0084】
実施例3:細菌表面にディスプレイしたゲノムライブラリーおよびヒト血清を用いたS. aureusからの高度に免疫原性のペプチド配列の同定
実験手順
MACSスクリーニング。所定のライブラリーからの約2.5×10細胞を、50μg/mlのカナマイシンを添加した5mlのLB−培地中で37℃にて2時間増殖させた。1mMのIPTGを加えることにより発現を30分間誘導した。細胞を新たなLB培地で2回洗浄し、約2×10細胞を100μlのLB培地に再浮遊させ、エッペンドルフ管に移した。
【0085】
10μgのビオチン化ヒト血清を細胞に加え、懸濁液を穏やかに振盪しながら4℃で一夜インキュベートした。900μlのLB培地を加え、懸濁液を混合し、引き続き6000rpm、4℃にて10分間遠心分離にかけた。細胞を1mlのLBで1回洗浄し、ついで100μlのLB培地に再浮遊させた。ストレプトアビジンを結合した10μlのMACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotech、ドイツ)を加え、インキュベーションを4℃で20分間続けた。その後、900μlのLB培地を加え、MACSマイクロビーズ細胞浮遊液を磁石に固定した平衡化MSカラム(Miltenyi Biotech、ドイツ)に負荷した。(MSカラムの平衡化は、1mlの70%EtOHで1回、2mlのLB培地で2回洗浄することにより行った。)
【0086】
ついで、カラムを3mlのLB培地で3回洗浄した。磁石を取り外し、2mlのLB培地で洗浄することにより溶出を行った。カラムを3mlのLB培地で洗浄した後、2mlの溶出液を同じカラムに2回目に負荷し、洗浄および溶出プロセスを繰返した。負荷、洗浄および溶出プロセスの3回目を行い、2mlの最終溶出液を得た。
【0087】
2回目のスクリーニングは以下のようにして行った。最終溶出液からの細胞を遠心分離により回収し、50μg/mlのカナマイシンを添加した1mlのLB培地に再浮遊させた。培養液を37℃で90分間インキュベートし、ついで1mM IPTGで30分間誘導した。細胞をその後回収し、1mlのLB培地で1回洗浄し、10μlのLB培地に浮遊させた。容量が減ったので、1μgのヒトビオチン化血清を加え、懸濁液を穏やかに振盪しながら4℃で一夜インキュベートした。その後の工程は全て1回目の選択と全く同じであった。2回の選択後に選択した細胞を50μg/mlのカナマイシンを添加したLB−アガー培地にプレーティングし、37℃で一夜増殖させた。
【0088】
選択したクローンのシークエンシングおよびウエスタンブロット分析による評価。選択したクローンを50μg/mlのカナマイシンを添加した3mlのLB培地中、37℃で一夜増殖させ、標準手順を用いてプラスミドDNAを調製した。シークエンシングはMWG(ドイツ)にて、またはTIGR(米国)との共同研究により行った。
【0089】
ウエスタンブロット分析のため、約10〜20μgの全細胞タンパク質を10%SDS−PAGEにより分離し、HybondCメンブレン(Amersham Pharmacia Biotech、イングランド)上にブロッティングした。ヒト血清を一次抗体として1:5000の希釈で用い、HRPに結合した抗ヒトIgG抗体を二次抗体として1:5000の希釈で用いて、LamBまたはFhuA融合タンパク質を検出した。検出はECL検出キット(Amersham Pharmacia Biotech、イングランド)を用いて行った。別法として、ウサギ抗FhuA抗体またはマウス抗LamB抗体を、融合タンパク質の検出のためにHRPに結合した各二次抗体とともに用いた。
【0090】
結果
ビオチン化ヒト血清を用いたマグネチックアクチベーテッドセルソーティング(MACS)による細菌表面ディスプレイのスクリーニング。pMAL9.1でのライブラリーLSA50/6およびpHIE11でのライブラリーLSA250/1をビオチン化したヒト患者血清のプール(実施例1のヒト血清からの抗体の調製を参照)でスクリーニングした。選択手順を実験手順に記載したようにして行った。対照として、S. aureusに感染していない蓋然性の高い幼児からプールしたヒト血清を用いた。記載した条件下、幼児の血清に比べて10〜50倍多くの細胞が患者血清で常法により選択された(図3)。スクリーニングの性能を評価するため、約100の選択クローンをランダムに取り出し、同じプール患者血清を用いてウエスタンブロット分析に供した。この分析は、選択クローンの30〜50%が患者血清中に存在する抗体との反応性を示すのに対し、S. aureus特異的な挿入を有せずLamBまたはFhuAを発現する対照株は同血清と反応しないことを明らかにした。コロニーPCR分析は、全ての選択クローンが予期されるサイズ範囲の挿入を含むことを示した。
【0091】
ランダムに取り出した多数のクローン(スクリーニング当たり500〜800)のその後のシークエンシングは、スクリーニングに用いたヒト患者血清によって特異的に認識される遺伝子および対応するペプチドまたはタンパク質配列の同定に導いた。特異的なクローンを選択する頻度は、選択に使用した血清中に存在し、このクローンによって提示されるエピトープを認識する特異的抗体の存在量および/または親和性を少なくとも部分的に反映している。この観点から、幾つかのクローン(ORF2264、ORF1951、ORF0222、リパーゼおよびIsaA)は90回も取り出され、その高度に免疫原性の特性を示したことは衝撃的である。表2に示したクローンは全て、単一のクローンからの全細胞抽出物を用いたウエスタンブロット分析によりスクリーニングに使用したヒト血清のプールとの表中に示した反応性を示すことが確認された。
【0092】
さらに、細菌表面ディスプレイスクリーニングによって同定された遺伝子の殆どがS. aureusの表面に付着しているかおよび/または分泌されるタンパク質をコードしていることは注目に値する。これは、S. aureusのビルレンスにおいて表面付着タンパク質または分泌タンパク質が果たす予期された役割によるものである。
【0093】
種々のヒト血清との高度に免疫原性のペプチド配列の反応性の評価。引き続き、10〜30の種々のヒト患者血清を用い、本発明によるスクリーニングで見出された選択した免疫原性ペプチド配列に対する抗体の存在を評価した。大腸菌によって発現されるタンパク質との交差反応性の可能性を排除するため、全ての血清をFhuAタンパク質を発現する大腸菌DHa細胞の全細胞溶解液でプレ吸着させた。
【0094】
この分析は表2にまとめてあり、また図4に一例として示してあり、本発明のスクリーニングの有効性を示すものである。この分析はさらに、すでに短い選択したエピトープが多数の患者において抗体の産生を生じさせることができることを示している(ORF1618、ORF1632、IsaA、Empbp、プロテインA)。一層大きな患者血清のセットによっては認識されないペプチド配列はなお高度に免疫原性のタンパク質の一部であるが、組換えタンパク質自体をその目的のために各単独のケースについて試験してもよい。
【0095】
実施例4:リボソームディスプレイおよびヒト血清を用いたS. aureusからのゲノムフラグメントからの高度に免疫原性のペプチド配列の同定
実験手順
リボソームディスプレイスクリーニング:リボソームディスプレイに使用するため、pMAL4.1でのS. aureus LSA250/1からのゲノムライブラリー(2.4ng)をオリゴICC277およびICC202を用いてPCR増幅した。オリゴICC277(CGAATAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGGTTTCCCACTAGTAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATATCCATGCAGaCCTTGGCCGGCCTCCC)およびICC202(GGCCCACCCGTGAAGGTGAGCCGGCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGG)は、プラスミドpMAL4.1のFseI−NotI挿入部位の5'および3'にそれぞれハイブリダイズする。ICC277は、T7ファージRNAポリメラーゼプロモーター、RNAレベルでのステム−ループ構造という結果となるパリンドローム配列、リボソーム結合部位(RBS)、およびATG開始コドンを含むT7ファージの第10遺伝子の翻訳開始を導入する。オリゴICC202はβ−ラクタマーゼのオープンリーディングフレームのヌクレオチド位置668にハイブリダイズし、得られるRNAの3'末端にステム−ループ構造をも導入する。高信頼性(fidelity)PCRキット(Roche Diagnostic)を用い、50℃のハイブリダイゼーション温度の他は標準条件にて25サイクルのPCRを行った。
【0096】
得られたPCRライブラリーを用い、以下に記載する改変の他は以前の記載(Hanesら、1997)と同様にしてリボソームディスプレイによる5回連続の選択および増幅を行った。
【0097】
1回目のリボソームディスプレイは以下の工程を含んでいた:RiboMaxキット(Promega)を用いた2μgのPCR産物のインビトロ翻訳は約50μgのRNAという結果となった。インビトロ翻訳は、4.4μlのPremix Z(250mMのトリス−酢酸、pH7.5、1.75mMの各アミノ酸、10mMのATP、2.5mMのGTP、5mMのcAMP、150mMのアセチルリン酸、2.5mg/mlの大腸菌tRNA、0.1mg/mlのホリニン酸、7.5%のPEG8000、200mMのグルタミン酸カリウム、13.8mMのMg(Ac)2、8μlのS30抽出物(xmg/ml)およびプールからの約2μgのインビトロ転写RNA)を用い、22μlの容量で37℃にて9分間行った。S30抽出物は記載に従って調製した(Chenら、1983)。ついで、試料を、35.2μlの10%ミルク−WBT(トリス−酢酸、pH7.5、150mMのNaCl、50mMのMg(Ac)2、0.1%のTween-20、10%乳粉末)および52.8μlのWBTH(上記プラス2.5mg/mlのヘパリン)を入れた氷冷管に移した。引き続き、10μgの精製IgGを加え、氷上で90分間インキュベートし、ついで30μlのMAGmolプロテインGビーズ(Miltenyi Biotec、氷上で90分間)を加えることにより免疫沈降を行った。試料を前もって平衡化したμカラム(Miltenyi Biotec)に負荷し、氷冷WBT緩衝液で5回洗浄した。つぎに20μlのEB20溶出緩衝液(50mMのトリス−酢酸、150mMのNaCl、20mMのEDTA、50μg/mlのS. cerevisiae RNA)をカラムに負荷し、4℃で5分間インキュベートした。2×50μlのEB20を加えて溶出を完了した。溶出試料からmRNAを高純度RNA単離キット(Roche Diagnostics)を用いて精製した。引き続く逆転写を、Superscript II逆転写酵素キット(Roche Diagnostics)を製造業社の指示に従って用い、60ピコモルのオリゴICC202を用いて50μlの容量で50℃にて1時間行った。この混合物5μlを上記プライマーICC202およびICC277とともに以下のPCR反応に用いた。
【0098】
3回のリボソームディスプレイを行い、その結果得られた選択したPCRプールを引き続き制限エンドヌクレアーゼNotIおよびFseIで開裂することによりプラスミドpHIE11(上記)にクローニングした。
【0099】
選択したクローンのシークエンシングおよびペプチド−ELISA分析による評価:標準法を用い、選択したクローンを50μg/mlのカナマイシンを添加した3mlのLB培地で37℃にて一夜増殖させてプラスミドDNAを調製した。シークエンシングはMWG(ドイツ)にて、またはthe Institute of Genomic Research (TIGR;ロックビル、メリーランド、米国)にて行った。挿入物に対応するペプチドを合成し、10mMのNaHCO、pH9.3中、10μg/mlの濃度にて(50μl)96−ウエルマイクロタイタープレート(Nunc)にコーティングした。PBS中の1%BSAで37℃にてブロッキングした後、指示した血清の1:200および1:1000希釈を1%BSA/PBS中で希釈し、ウエルに適用した。PBS/0.1% Tween-20で洗浄した後、ビオチン標識抗ヒトIgG二次抗体(SBA)を加え、引き続き西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを加えることによりこれら抗体を標準法に従って検出した。
【0100】
結果
上記250bpゲノムライブラリー(LSA250/1)をスクリーニングに用いた。非感染だがS. aureusに対して高力価を有する成人からの精製IgGを抗原性ペプチドの選択に用いた。
【0101】
3回のリボソームディスプレイ選択および増幅を実験手順の記載に従って行い、クローニングにより終了し、得られたPCRプールをシークエンシングした。
【0102】
ランダムに取り出した多数のクローン(700)の配列分析は、スクリーニングに用いた高力価血清によって特異的に認識される遺伝子および対応するペプチドまたはタンパク質配列の同定に導いた。特異的なクローンを選択する頻度は、選択に使用した血清中に存在し、このクローンによって提示されるエピトープを認識する特異的抗体の存在量および/または親和性を少なくとも部分的に反映している。注目すべきことに、幾つかのクローン(ORF)は50回までも取り出され、その高度に免疫原性の特性を示した。表2は、ORF名、配列番号、および本発明によって同定された回数を示す。
【0103】
幾つかの免疫選択したORFについて、同定した免疫原性の領域に対応するペプチドを合成し、それらを同定した血清プールおよびS. aureusに感染した患者からの幾つかのさらなる血清に対する反応性をペプチド−ELISAで試験した。図5のグラフの2つの例は、アウレオリシン(aureolysin)およびPlsからのペプチドの値を示す。これらは高力価血清プールに対して高度免疫反応性であるばかりでなく、幾つかの個々の患者血清に対しても高度免疫反応性であった。選択した免疫原性の領域に対応する全ての合成ペプチドは高力価血清プールに対する反応性を示し、表2には上記と同様にこれらペプチドが個々の患者血清に対して反応性であった回数をまとめてある。
【0104】
さらに、上記細菌表面ディスプレイによっても同定したORFについては、ORF内の実際の免疫原性の領域が、非常にしばしば、リボソームディスプレイによって同定されたものと同一であるかもしくは重複したことは衝撃的である。この比較は表2に見出すことができる。
【0105】
実施例5:血清学的プロテオーム分析を用いたS. aureusからの高度に免疫原性の抗原の同定
実験手順
高度に免疫原性の抗原を含むS. aureusからの表面タンパク質調製物。S. aureus株COL(ShaferおよびIandolo, 1979)およびagr−(Recseiら、1986)を−80℃にてグリセリンストックとして、または4℃にてBHI(DIFCO)プレート上で貯蔵した。単一のクローンをBHI(「標準条件」)かまたはRPMI1640(Gibco BRL)のいずれかでの一夜培養の接種に用い、最後のものはイミノ二酢酸(Sigma)で一夜処理することにより鉄を枯渇してあった(「ストレス条件」)。新たな培地を翌日に1:100で接種し、細菌を0.3〜0.7のO.D.600まで増殖させた。細菌を遠心分離により回収し、氷冷PBSで洗浄した。等張条件下でリソスタフィン処理することにより表面タンパク質を調製した(Limら、1998)。簡単に説明すると、〜3×10の細菌(O.D.600=1は約5×10の細菌であることによる)を、35%のラフィノース(Aldrich Chemical Company)、プロテアーゼインヒビター(Roche)および5単位のリソスタフィン(Sigma)を含有する1mlの消化緩衝液中に再浮遊させた。37℃で30分間インキュベートした後、プロトプラストを低速遠心分離により注意深く沈降させた。この処理は、ペプチドグリカン細胞壁のペンタグリシン架橋に共有結合した表面タンパク質を上澄み液中に放出させる(Crossley, 1997中)。細胞表面タンパク質はメタノール/クロロホルムで沈殿させるか(Wessel, 1984)、または遠心濾過管(Millipore)に濃縮する。タンパク質試料は凍結して−80℃で貯蔵するか、または試料緩衝液に溶解して等電点電気泳動(IEF)に直ちに用いた(Pasqualiら、1997)。
【0106】
S. aureusからの表面タンパク質調製物の血清学的プロテオーム分析。試料を、(a)「ストレス条件」下で増殖させたS. aureus/agr、(b)「標準条件」下で増殖させたS. aureus/COL、および(c)「ストレス条件」下のS. aureus/COLから得た。固定化pH勾配(pH4〜7、BioRad)を含む17cmストリップへの負荷を、「in-gel-reswelling法」を用いた行った(Pasqualiら、1997)。ブロッティング用ゲルに100〜800μgのタンパク質を負荷し、調製用ゲルには400〜1,000μgのタンパク質を負荷した。等電点電気泳動およびSDS−PAGE(9〜16%勾配ゲル)は記載に従って行った(Pasqualiら、1997)。ウエスタンブロッティングのために、タンパク質を半乾燥ブロッティングによりPVDF−メンブレン(BioRad)に移した。移動効率をアミド−ブラック染色によりチェックした。ブロッキング(PBS/0.1%Tween 20/10%ドライミルク、4℃で16時間)後、ブロットを血清(ブロッキング溶液中に1:2,500〜1:100,000、表3を参照)とともに2時間インキュベートした。洗浄後、血清IgGの特異的結合を、二次抗体としてのヤギ抗ヒトIgG/ペルオキシダーゼコンジュゲート(1:25,000、Southern Biotech)および化学ルミネセンス基質(ECLTM、Amersham)の発色により可視化した。代表的な結果を図6に示す。メンブレンを2%β−ME/ラムリ緩衝液で50〜65℃にて30分間処理することにより剥ぎ取り、異なる血清で直ちに再プローブし、上記のようにして発色させた。この手順を5回まで繰返した。患者および/または健康なドナー対照血清では示されるが幼児プールでは示されないシグナルは、クーマシー(BioRad)染色した調製用ゲル(例を図7に示す)と一致した。これらS. aureusからの表面タンパク質調製物の血清学的プロテオーム分析の結果を表3にまとめてある。
【0107】
ペプチド−フィンガープリントMALDI−TOF−MSおよびタンデムMS/MSによるタンパク質スポットのシークエンシング。ゲル片を10μlの消化緩衝液(10mM NHHCO/CAN、1:1)で交互に3回洗浄した。その後、ゲル片を10μlのACNで縮ませ、2μlのプロテアーゼ溶液(0.05μg/μlのトリプシン、Promega、マジソン、米国)で再膨潤させた。消化を37℃で10〜12時間行った。MALDI−TOF−MSのため、ゲル片から10μlの消化緩衝液を用いてペプチドを抽出した。上澄み液をZipTipTM(Millipore、ベッドフォード、米国)で濃縮し、0.5μlの抽出緩衝液(0.1%TFA/CAN、1:1)を用いてペプチドをMALDI標的上に溶出し、0.5μlのマトリックス溶液(ACN中のHCCA/0.1%TFA、1:1)を加えた。SCOUT384イオン源を備えたREFLEX III(Bruker Daltonik、ブレーメン、ドイツ)を用いてMALDI−TOF−MSを行った。加速(acceleration)電圧を25kVに設定し、反射(reflection)電圧を28.7kVに設定した。質量範囲は700Da〜4000Daに設定した。データの取得はXACQソフトウエア、バージョン4.0を用いてSUN Ultraで行った。分析後データ処理は、XMASSソフトウエア、バージョン4.02(Bruker Daltonik、ブレーメン、ドイツ)を用いて行った。結果を表3および4にまとめて示す。
【0108】
実施例6:S. aureusからの高度に免疫原性のタンパク質の特徴付け
前もって選択した血清からのIgGおよびIgA調製物を用いた異なるスクリーニング法によって同定した抗原を、以下の仕方でさらに特徴付けた。
1. タンパク質を、最も好ましくは大腸菌またはグラム陽性発現系またはインビトロ翻訳系で発現させた組換えタンパク質として精製し、抗原性を一連のヒト血清によって評価する。タンパク質をバイオインフォーマティク分析に基づいて修飾する:シグナルペプチドを表すN末端配列を除去し、細胞壁アンカーの下流のC末端領域も除去し、精製を容易にするため余分のアミノ酸を標識として導入する(たとえば、Strep-tagII、His-tagなど)。ついで、多数の血清をELISAアッセイに用いて所定のタンパク質に対する特異的抗体を含むヒト血清の画分を評価する(例として図9を参照)。選択した抗原の1つは895アミノ酸長のタンパク質であり、これはグラム陽性細胞壁アンカー配列LPXTGを含むことからLPXTGVと呼ばれる(表2および4を参照)。この表示のものは、LPXTGモチーフ含有タンパク質をペプチドグリカン細胞壁に共有結合させるトランスペプチダーゼであるソルターゼ(sortase)の開裂部位として働くことがしめされた。LPXTGVはまた、典型的なシグナルペプチドをも備えている(図8)。このタンパク質をStrep-tagした組換えタンパク質として用いたELISAデータは、このタンパク質が高パーセントの血清において高度に免疫原性である(他の組換えタンパク質に比べて高力価)ことを示している(図9)。重要なことには、急性のS. aureus感染症に罹った患者は健康な正常者に比べてこれら抗LPXTGV抗体を有意に一層多く産生し、該タンパク質がインビボ感染症の際に発現されていることが示唆されている。個々の抗原性タンパク質全体のELISA力価を比較し、大抵の個体で(タンパク質は大抵の株によってインビボで発現される)最も高い抗体レベルを誘導する(高度に免疫原性である)ものが有利である。個々の患者で産生されるS. aureusに対する抗体の抗原特異性および質(クラス、サブタイプ、機能、非機能)は、感染部位、付随する慢性疾患(たとえば、糖尿病)および慢性的状態(たとえば、血管内装置)、および個体の免疫応答に依存して変わるので、異なる患者グループで検出される差異には特別の注意を払う必要があった、というのは各血清に関する医療記録を利用できたからである。さらに、各患者血清には血清サンプリング時に患者から単離した病原株も付してあった。
【0109】
2. 特異的抗体を機能的特徴付けのために精製する。組換えタンパク質の純度および完全さをチェックする(たとえば、N末端Strep-tagをSDS−PAGEでの銀染色と比較してウエスタンブロット分析において検出する)。抗原をタグを介して固定化してアフィニティーマトリックスを生成し、高度に反応性の血清からの特異的抗体の精製に用いる。例としてStrep-tagしたLPXTGVを捕捉抗原として用い、125mgのIgGから20μgの抗体を精製した。ELISAデータに基づき、たとえば抗LTA活性および抗ペプチドグリカン活性(ともに非分画IgGで優勢である)を有しない純粋な調製物を得た。ついで、これら抗体をFACSおよび蛍光顕微鏡により細胞表面局在化を試験するのに用いた。
【0110】
3. 臨床単離物中の遺伝子の存在頻度
理想的なワクチン抗原は、ワクチンが向けられた標的生物の全てまたは大部分の株に存在する抗原であろう。同定したStaphylococcus aureus抗原をコードする遺伝子がS. aureus株に偏在して存在するか否かを確立するため、一連の独立のS. aureus単離物に対して目的遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRを行った。S. aureus単離物は、種々のS. aureus感染症に罹った患者から得た。加えて、健康なキャリヤ幾つかの鼻内単離物および幾つかの実験室株をも回収し、分析した。株のタイプ分けは、spa遺伝子およびcoa遺伝子の制限断片長多型(RFLP)に従って行った(Gohら、1992, Frenayら、1994, vanden Berghら、1999)。これら結果から30の異なる株が同定された−24の患者単離物、3つの鼻内単離物および3つの実験室株。選択した抗原の遺伝子分布を確立するため、これら30の株のゲノムDNAを選択したエピトープをフランキングする遺伝子特異的なプライマー(ORF1361:配列番号187および188;ORF2268:配列番号193および194;ORF1951:配列番号195および196;ORF1632:配列番号181および182;ORF0766:配列番号183および184;ORF0576:配列番号185および186;ORF0222:配列番号189および190;ORF0360:配列番号191および192)を用いたPCRに供した。PCR産物をゲル電気泳動により分析して正しい予測されたサイズの産物を同定した。ORF1361、ORF2268、ORF1951、ORF1632、ORF0766およびORF0222は試験した株の100%に存在し、ORF0576は97%に存在した。しかしながら、ORF0360は株の71%しか存在しなかった。それゆえ、ORF1361、ORF2268、ORF1951、ORF1632、ORF0766およびORF0222は、それぞれS. aureus単離物での偏在的存在という必要性を満たしている。
【0111】
これら抗原(またはその抗原性フラグメント、とりわけ同定したフラグメント)は、S. aureusに対するワクチン接種プロジェクトに使用するのに特に好ましい。
【0112】
4. 選択した抗原のORF内の高度にプロミスカスな(promiscuous)HLA−クラスIIヘルパーエピトープの同定
ヒト血清中の抗体による認識に基づいて同定した抗原に対応するORFは、線状のT細胞エピトープをも含んでいる蓋然性が高い。とりわけ、非感染のコロニー形成していない個体さえも極めて高い抗体力価(幾つかの抗原については>100,000、実施例5を参照)を示し、これが>1年も安定である(実施例1を参照)という本発明に際して見出された驚くべき知見は、おそらくCD4+ヘルパーT細胞によって媒体されるT細胞依存性記憶の存在を示唆している。対応HLAクラスIIヘルパー−エピトープの分子的定義は、免疫学的記憶を誘導しうる合成抗Staphylococcusワクチンをデザインするうえで有用である。このシナリオにおいて、Staphylococcus抗原に由来するヘルパー−エピトープは、これら抗原またはそのフラグメントに対するB細胞応答への「コグネイトヘルプ(cognate help)」を提供する。さらに、たとえば炭水化物のようなT細胞非依存性抗原への記憶を誘導するのにこれらヘルパー−エピトープを用いることが可能である(コンジュゲートワクチン)。一方、細胞内に存在するStaphylococcusは、HLAクラスI拘束エピトープを認識するCD8+細胞傷害性T細胞によって排除することができる。
【0113】
T細胞エピトープは、種々のパブリックドメインアルゴリズムによって予測することができる:http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla bind/(Parkerら、1994)、http://134.2.96.221/scripts/MHCServer.dl1/home.htm(Rammenseeら、1999)、http://mypage.ihost.com/usinet.hamme76/(Sturnioloら、1999)。後者の予測アルゴリズムは、プロミスカスヘルパー−エピトープ、すなわち幾つかのHLAクラスII分子に結合するペプチドを同定する可能性を提供する。Staphylococcus抗原内の高度にプロミスカスなヘルパー−エピトープを同定するため、配列番号64(IsaA)、配列番号114(POV2)、配列番号89(ORF0222)、配列番号70(LPXTGIV)、配列番号56(LPXTGV)、配列番号142(LPXTGVI)、配列番号81(ORF3200)、配列番号74(ORF1951)、配列番号94(Empbp)、配列番号83(オートリシン)および配列番号58(ORF2498)に対応するORFをTEPITOPEパッケージhttp://mypage.ihost.com/usinet.hamme76/(Sturnioloら、1999)を用いて分析した。25の一般に普及している(prevalent)DR−アレルに対して分析を行い、ペプチドが(a)少なくとも10/25のアレルに対して強く結合するか(1%閾値)または(b)少なくとも17/25のアレルに対して中くらいで結合する(3%閾値)と予測されたなら選択した。
【0114】
1または幾つかのプロミスカスヘルパー−エピトープを含む下記ペプチドを選択した(および特許請求した):
配列番号56:位置6-40、583-598、620-646、871-896
配列番号58:いずれのペプチドも選択基準を満たさず
配列番号64:いずれのペプチドも選択基準を満たさず
配列番号70:位置24-53
配列番号74:位置240-260
配列番号81:位置1660-1682、1746-1790
配列番号83:位置1-29、680-709、878-902
配列番号89:位置96-136
配列番号94:位置1-29、226-269、275-326
配列番号114:位置23-47、107-156
配列番号142:位置24-53
【0115】
対応ペプチドまたはそのフラグメント(たとえば、重複する15−mer)は、合成し、インビトロで種々のHLA分子に結合する能力について試験することができる。その免疫原性は、ペプチド(抗原)−誘発増殖(BrdUまたは3H−チミジンの取り込み)かまたはインビトロでのT細胞のサイトカインの分泌(ELIspot、細胞内サイトカイン染色)を評価することにより試験することができる(Mayerら、1996, Schmittelら、2000, Sesterら、2000)。この観点から、種々のStaphylococcus感染症に罹っているかコロニー形成している患者の集団と最近感染もコロニー形成もしていない健康な個体とで、Staphylococcus抗原または選択したプロミスカスペプチドまたはそのフラグメントに対するT細胞の定量的および定性的な差異を決定することは興味深いであろう。さらに、これら集団で観察される抗体力価とT細胞応答の量および質との相関も予測される。あるいは、予測されたペプチドの免疫原性は、HLA−トランスジェニックマウスで試験することもできる(Sonderstrupら、1999)。
同様のアプローチは、Staphylococcus抗原内のHLAクラスI拘束エピトープの同定にも採用できる。
【0116】
S. aureusからの1またはそれ以上のプロミスカスTヘルパーエピトープを表す合成ペプチド
配列番号56(LPXTGV)、配列番号70(LPXTGIV)、配列番号74(ORF1hom1)、配列番号81(EM BP)、配列番号83(オートリシン)、配列番号89(ORF1hom2)、配列番号94(EMPBP)、配列番号114(POV2)および配列番号142(LPXTGVI)の指示した領域にわたる部分的に重複したペプチドを合成した。個々のペプチドの配列は表5に示してある。ペプチドはすべてFmoc化学により合成し、HPLC精製し、マススペクトロメトリーにより分析した。凍結乾燥したペプチドをDMSOに溶解し、−20℃にて濃度5〜10mMで貯蔵した。
【0117】
プロミスカスTヘルパーエピトープを表す合成ペプチドのHLA分子へのインビトロでの結合
抗原提示細胞の表面上のHLA分子へのペプチドの結合は、T細胞の活性化の先行条件である。HLAクラスII分子の組換え可溶態様を用いた2つの独立した生化学的アッセイを用い、結合をインビトロで評価した。1つのアッセイは、被験ペプチドによる標識参照ペプチドの濃度依存性の競合置換を測定する。第二のアッセイは、高親和性および中くらいの親和性のリガンドの結合によるSDS可溶複合体の形成に基づく。これら2つのアッセイにより得られた結果の要約を表5に示す。
【0118】
Aichingerら、1997の記載に従い、可溶性のHLA分子(DRA1*0101/DRB1*0101およびDRA1*0101/DRB1*0401)をSC−2細胞で発現させ、精製した。競合アッセイのため(Hammerら、1995)、HLA分子を50〜200ng/ウエル添加した。DRB1*0101については、ビオチン化インディケーターペプチドHA(PKYVKQNTLKLAT、Valliら、1993)を0.008μMで用いた。DRB1*0401については、ビオチン化インディケーターペプチドUD4(YPKFVKQNTLKAA、Valliら、1993)を0.03〜0.06μMで用いた。被験ペプチドを0.02nM〜200μMの系列希釈で用いた。分子、インディケーターおよび被験ペプチドを37℃、pH7で一夜インキュベートした。系列希釈の被験ペプチドおよび参照ペプチド(既知の高親和性バインダーHAおよびUD4を正の対照として用いた)とのインキュベーション後に得られたHLA:ペプチド複合体を、抗体L243(正しく会合したへテロ二量体によってのみ形成されるコンホメーショナルエピトープを認識することが知られている)をコーティングしたELISAプレートに捕捉した。ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート(Dako)をNBT/BCIP錠(Sigma)を基質として用いた標準比色検出およびVictorリーダー(Wallace)上での自動OD読み取りにより、導入ビオチンを測定した。
【0119】
IFNg ELIspotアッセイによって評価したプロミスカスTヘルパーエピトープに対するT細胞応答
抗原刺激を受けると、T細胞は増殖およびインターフェロンガンマ(IFNg)などのサイトカインの分泌を開始する。S. aureus抗原内のエピトープを特異的に認識するヒトT細胞をIFNg−ELIspotにより検出した(Schmittelら、2000)。強い抗S. aureus IgG応答を示す健康な個体からのPBMCを、フィコール濃度勾配遠心分離により50〜100mlの静脈血から単離し、凍結および解凍後に用いた。細胞を96−ウエルプレートに200,000/ウエルで植え付けた。ペプチドを個々の抗原に対応する混合物として、いずれの場合もそれぞれ10μg/mlにて加えた。コンカナバリンA(Amersham)およびPPD(ツベルクリン精製タンパク質誘導体、Statens Serum Institute)はアッセイの正の対照であり、ペプチドを含まないアッセイ培地は負の対照であった。抗ヒトIFNgモノクローナル抗体B140(Bender Med Systems)をコーティングしたマルチスクリーン96−ウエル濾過プレート(Millipore)で一夜インキュベートした後、ビオチン化抗ヒトIFNgモノクローナル抗体B308−BT2(Bender Med Systems)、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(DAKO)およびBCIP/NBTアルカリホスファターゼ基質(SIGMA)を用いてELIspotを発色させた。自動プレートリーダー(Bioreader 2000, BIO-SYS)を用いてスポットをカウントした。アッセイ培地のみ(負の対照、一般に10スポット/100.000細胞未満)で刺激した細胞を入れたウエルでカウントしたスポットはバックグラウンドとし、ペプチドを入れたウエルでカウントしたスポット数から差し引いた。
【0120】
表5:S. aureus抗原に含まれるプロミスカスTヘルパーエピトープ
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

(1)可溶性DRA1*0101/DRB1*0401分子に対する結合は、競合アッセイを用いて決定した(+、++:結合、−:200μMの被験ペプチドまで競合なし、nd:決定せず)。
(2)強い抗S. aureus IgG応答を示す5人の健康な個体から得られた結果。データはスポット/200,000細胞として表してある(バックグラウンド値は差し引いてある)。
【0123】
5. 抗原をマウスに注射してもよく、これらタンパク質に対する抗体を測定することができる。
6. ワクチン接種によって動物で誘導された抗体の防御能を動物モデルで評価することができる。
5.および6.はともに当業者に充分に利用できる方法である。
【0124】
実施例7:応用
(A)有効なワクチンは、一般に選択的手術に直面している患者、および特に血管内装置を受けている患者に大きな可能性を与える。免疫応答を減少させる慢性的な疾患に罹っている患者または連続携行式腹膜潅流を受けている患者は、本発明による免疫原性の血清反応性の抗原によるS. aureusワクチンの利益を得ると思われる。関連抗原の同定は有効な受動免疫(ヒト化モノクローナル抗体療法)を生成する手助けとなるものであり、有効な受動免疫はヒト免疫グロブリン投与をその危険な副作用とともに取って代わることができる。それゆえ、有効なワクチンは、一般に選択的手術に直面している患者、および特に血管内装置を受けている患者に大きな可能性を与える。
【0125】
S. aureusは多くの種々の疾患を引き起こすことができる。
1.敗血症、菌血症
2.血液透析を受けている患者−菌血症、敗血症
3.腹膜透析患者−腹膜炎
4.血管内装置を有している患者(心臓手術など)−心内膜炎、菌血症、敗血症
5.人工装置を有している整形外科の患者−化膿性関節炎
6.一般住民の予防的ワクチン接種
【0126】
(B)受動および能動ワクチン接種、ともにT細胞に対して特別の対処、とりわけ後者について:ワクチン接種の際に強いT細胞ヘルパー応答を誘導して有効な体液性応答および免疫学的記憶を達成することが目的である。現在までのところ、S. aureus感染を排除するうえでT細胞が重要な役割を果たしているという直接的な証拠はないが、これまで適切に対処されてきたとはいえない。タンパク質性抗原に対する有効な体液性応答にはT細胞が関与しているに違いなく、記憶を形成するにも必須である。ナイーブなCD4+細胞はTh1細胞およびTh2細胞に分化することができる。この決定には先天的な免疫学的応答(サイトカイン)が影響を及ぼすので、T細胞の関与は、急性の重篤な感染症の際にはサブユニットワクチン(天然の感染の際に免疫応答を損なう成分を含んでいない)で免疫した健康な個体と比べて異なっているかもしれない。Th1応答およびTh2応答を誘導した結果は甚大である。Th1細胞は細胞媒体免疫に導き、一方、Th2細胞は体液性免疫を与える。
【0127】
(C)予防用ワクチンおよび治療用ワクチン
予防用:感染前の高リスクグループの人の能動ワクチン接種/受動免疫
治療用:すでに病気の人の受動ワクチン接種。
鼻内保持(carriage)を除去するための能動ワクチン接種
応用の特別の例
医療スタッフのMRSA保持の排除およびコロニー形成の予防
病院外の人の鼻孔内のS. aureusの保持率は10〜40%である。入院患者および病院職員はもっと高い保持率を有する。保持率は、血液透析を受けている患者および糖尿病の患者、麻薬常用者、および種々の皮膚科状態の患者でとりわけ高い。MRSA感染のリスクが最も高い患者は、大きな三次医療病院に入院している患者、とりわけ高齢者および免疫無防備状態の者、集中治療室にいる患者、火傷患者、外科的創傷を有する患者、および静脈内カテーテルを有する患者である。
【0128】
ELISAデータは、S. aureusに対する明白なIgA応答があることを強く示唆しており、これは文献からは明らかではなく知られていないものである。優勢な粘膜免疫応答は中和活性を有するIgAの産生であるので、高度に純粋なIgA調製物で同定されたStaphylococcusのエピトープおよび抗原が有効な粘膜ワクチンに導くことは明らかである。
・明らかな適応症:手術(とりわけ、整形外科、外傷、一般外科)を行う部門での全ての人の脅威
・ワクチン接種のよく定められた集団(医師および看護士)
・S. aureusの流行株の鼻内キャリヤと同定されたヘルスケア職員は、現在、菌が排除されるまでムピロシン(mupirocin)およびリファンピシンの治療を受けている。これは、しばしば有効ではなく、時間がかかる。
・利用できる動物モデル:鼻内保持のマウスモデルがある。
【0129】
表1:複数のStaphylococcusタンパク質に対する非感染個体からの血清のELISA力価
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
表I:複数のStaphylococcusタンパク質に対する非感染個体からの血清のELISA力価
BHI培地(BHI)、リポテイコ酸(LTA)、ペプチドグリカン(PG)、細胞表面タンパク質および分泌タンパク質を表す13の組換えタンパク質、たとえば、凝集因子(clumping factor)AおよびB(ClfA、ClfB)、フィブロネクチン結合タンパク質(FnBPA)、SD−繰返しタンパク質(sdrC、sdrE)、MHCクラスII類似タンパク質(map−w)、エラスチン結合タンパク質(EBP)、エノラーゼ(細胞表面に位置し、免疫原性であることが報告されている)、鉄輸送リポタンパク質(LP309、LP342)、ソルターゼ(srtA)、コアグラーゼ(coa)、細胞外フィブリノーゲン結合タンパク質(fib)中で増殖させたS. aureusから調製した全溶解液を用いた標準ELISAにより、抗Staphylococcus抗体レベルを個々に測定した。FnBPAからの5つの免疫優性D繰返しドメインのうちの2つを表す2つの短い合成ペプチドも、抗原として含めた(D1+D3)。個々の血清をIgG力価に基づいてランク付け、1〜9からスコアを得た。スコア1は最高力価の血清を表示し、スコア8または9は所定の抗原について試験した全ての血清の中で8番目または9番目の血清を表示する。それは、血清の上位20の百分順位の分析という結果となった(8〜9/40)。5つの「最良の血清」(抗Staphylococcus抗体に関して最も高度に反応性であることを意味する)をスコア1〜8の数に基づいて選択した。****は特定の抗原に対する抗体反応性が例外的に高いことを意味する(2番目に反応性の血清と比較して>2×ELISA単位)。
【0132】
表2a:細菌表面ディスプレイおよびリボソームディスプレイにより同定した免疫原性タンパク質:S. aureus
細菌表面ディスプレイ:A、患者血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(655);B、患者血清1でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(484);C、IC血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(571);E、IC血清2でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(454);F、患者血清P1でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(1105);G、IC血清1でのlamb中のLSA50/6ライブラリー(471);H、患者血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(IgA、708)。リボソームディスプレイ:D、IC血清でのLSA250/1ライブラリー(1686)。*:スクリーニングした33のうち18回同定され、それゆえスクリーニングCから排除した。**:5アミノ酸を超える長さの抗原配列の予測は、プログラムANTIGENIC(KolaskarおよびTongaonkar, 1990)で行った。#:ORF中に2回存在する同一配列。##:データベースに存在しないクローン(TIGRによってシークエンシングせず)。
【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】

【0136】
【表9】

【0137】
【表10】

【0138】
【表11】

【0139】
【表12】

【0140】
【表13】

【0141】
【表14】

【0142】
【表15】

【0143】
【表16】

【0144】
表2b:細菌表面ディスプレイおよびリボソームディスプレイによって同定したさらなる免疫原性タンパク質:S. aureus
細菌表面ディスプレイ:A、患者血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(655);B、患者血清1でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(484);C、IC血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(571);E、IC血清2でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(454);F、患者血清P1でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(1105);G、IC血清1でのlamb中のLSA50/6ライブラリー(471);H、患者血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(IgA、708)。リボソームディスプレイ:D、IC血清でのLSA250/1ライブラリー(1686)。**:5アミノ酸を超える長さの抗原配列の予測は、プログラムANTIGENIC(KolaskarおよびTongaonkar, 1990)で行った。ORF:オープンリーディングフレーム;CRF:相補鎖上の読取り枠;ARF:他の読取り枠。
【0145】
【表17】

【0146】
【表18】

【0147】
【表19】

【0148】
【表20】

【0149】
【表21】

【0150】
【表22】

【0151】
【表23】

【0152】
【表24】

【0153】
表2c:細菌表面ディスプレイおよびリボソームディスプレイによって同定した免疫原性タンパク質:S. aureus
細菌表面ディスプレイ:A、患者血清2でのfhuA中のLSE150ライブラリー(957);B、患者血清2でのlamB中のLSE70ライブラリー(1420);C、患者血清1でのlamB中のLSE70ライブラリー(551)。リボソームディスプレイ:D、P2でのpMAL4.31中のLSE150(1235)。**:5アミノ酸を超える長さの抗原配列の予測は、プログラムANTIGENIC(KolaskarおよびTongaonkar, 1990)で行った。ORF:オープンリーディングフレーム;ARF:他の読取り枠;CRF:相補鎖上の読取り枠;ORF:オープンリーディングフレーム;CRF:相補鎖上の読取り枠。
【0154】
【表25】

【0155】
【表26】

【0156】
【表27】

【0157】
【表28】

【0158】
【表29】

【0159】
【表30】

【0160】
【表31】

【0161】
【表32】

【0162】
【表33】

【0163】
【表34】

【0164】
【表35】

【0165】
【表36】

【0166】
表2d:細菌表面ディスプレイおよびリボソームディスプレイによって同定した免疫原性タンパク質:S. aureus(新たな注釈)
細菌表面ディスプレイ:A、患者血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(655);B、患者血清1でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(484);C、IC血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(571);E、IC血清2でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(454);F、患者血清P1でのlamB中のLSA50/6ライブラリー(1105);G、IC血清1でのlamb中のLSA50/6ライブラリー(471);H、患者血清1でのfhuA中のLSA250/1ライブラリー(IgA、708)。リボソームディスプレイ:D、IC血清でのLSA250/1ライブラリー(1686)。**:5アミノ酸を超える長さの抗原配列の予測は、プログラムANTIGENIC(KolaskarおよびTongaonkar, 1990)で行った。#:ORF中に2回存在する同一配列。
【0167】
【表37】

【0168】
【表38】

【0169】
【表39】

【0170】
【表40】

【0171】
【表41】

【0172】
【表42】

【0173】
表3:ヒト血清を用いたS. aureusの表面タンパク質の血清学的プロテオーム分析
(a)S. aureus/agr「ストレス条件」
【表43】

【0174】
【表44】

【0175】
(b)S. aureus/COL「標準条件」
【表45】

【0176】
(c)S. aureus/COL「ストレス条件」
【表46】

【0177】
表4:MALDI−TOF−MSシークエンシングによって同定したS. aureusの抗原(太字で示したORFは、細菌表面ディスプレイによっても同定された)
ヒト血清を用いて血清学的プロテオーム分析によって同定した選択した抗原中の抗原性領域の予測
【表47】

【0178】
【表48】

【0179】
【表49】

【0180】
【表50】

(1)標準状態で増殖させたS. aureus 8325-4 spa-からの全溶解液から同定。1/1の患者血清および2/4の正常血清と血清反応性、しかし幼児血清とは血清反応せず(C5)。
【0181】
参照文献
【表51】

【0182】
【表52】

【0183】
【表53】

【0184】
【表54】

【0185】
【表55】

【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】図1は、ELISAによって測定した抗Staphylococcus抗体力価に基づいた血清のプレ選択を示す。
【0187】
【図2】図2は、pMAL4.1でのLSA50/6ライブラリー中のDNAフラグメントのサイズ分布を示す。
【0188】
【図3】図3は、ビオチン化ヒト血清を用いたMACS選択を示す。pMAL4.1でのLSA50/6ライブラリーを、1回目の選択で10μgのビオチン化ヒト血清(A)、2回目の選択で1μgのビオチン化ヒト血清(B)でスクリーニングした。P.血清は患者血清を、B.血清は幼児血清を示す。2回目および3回目の溶出後に選択した細胞数を各回の選択について示す。
【0189】
【図4】図4は、1:5000希釈の患者血清を用いたウエスタンブロット分析により分析した、細菌表面ディスプレイにより単離した特定のクローンとの血清反応性を示す。
【0190】
【図5】図5は、リボソームディスプレイにより同定したエピトープを有する患者および健康な個体からの血清を用いたペプチドELISAを示す。
【0191】
【図6】図6は、ヒト血清を用いて検出したS. aureus表面タンパク質の代表的な2Dイムノブロットを示す。BHI上で増殖させたS. aureus/COLからの800μgのタンパク質をIEF(pI4〜7)およびSDS−PAGE(9〜16%)により分離し、その後にPVDFメンブレンに移した。ブロッキング後、メンブレンを血清IC35(1:20,000)とともにインキュベートした。血清IgGの結合を、抗ヒトIgG/HRPOコンジュゲートおよびECL発色により可視化した。
【0192】
【図7】図7は、クーマシーブルーで染色したS. aureus表面タンパク質を示す代表的な2Dゲルを示す。S. aureus/COLからの1mgのタンパク質をIEF(pI4〜7)およびSDS−PAGE(9〜16%)により分離した。血清学的プロテオーム分析後にシークエンシング用に選択したスポットをマークしてある。
【0193】
【図8】図8Aおよび8Bは、LPXTG細胞壁タンパク質の構造を示す。
【0194】
【図9】図9は、本発明の細菌表面ディスプレイ法およびプロテオミックス法の両者により見出した、S. aureusのLPXTGV、新規な抗原およびおそらく表面アドヒーシンであるものとの非感染(N、C)および感染患者(P)でのIgG応答を示す。
【0195】
【図10】図10は、精製抗LPXTGV IgGを用いたS. aureusの表面染色を示す。
【0196】
【図11】図11は、S. aureus表面タンパク質をクーマシーブルーで染色した2Dゲルを示す(左)。初期対数期まで増殖させたS. aureus/agrからの1mgのタンパク質をIEF(pI6〜11)およびSDS−PAGE(9〜16%)により分離した。血清学的プロテオーム分析後にシークエンシング用に選択したスポットをマークしてある。対応の2D−イムノブロット(右)。同調製物からの800μgのタンパク質を2DEにより平行して分離し、その後にPVDFメンブレンに移した。ブロッキング後、メンブレンをP−プール(1:10,000)とともにインキュベートした。血清IgGの結合を、抗ヒトIgG/HRPOコンジュゲートおよびECL発色により可視化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表2a、2b、2c、2d、3、4および5のいずれかに列記した配列よりなる群から選ばれる、とりわけ配列番号:56、57、59、60、67、70、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、85、87、88、89、90、92、95、96、97、99、100、101、102、103、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、126、128、130、132、134、138、140、142、151、152、154、155およびその高度免疫性フラグメントよりなる群から選ばれる高度免疫血清に反応性の抗原。
【請求項2】
下記のいずれかの方法によって得ることができ、表2a、2b、2c、2d、3、4および5のいずれかに列記した配列よりなる群から選ばれる、とりわけ配列番号:56、57、59、60、67、70、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、85、87、88、89、90、92、95、96、97、99、100、101、102、103、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、126、128、130、132、134、138、140、142、151、152、154、155およびその高度免疫性フラグメントよりなる群から選ばれる高度免疫血清に反応性の抗原:
病原体から高度免疫血清に反応性の抗原を同定、単離および製造する方法であって、該抗原は所定のタイプの動物またはヒトのワクチンに使用するのに適しており、下記工程:
・該所定のタイプの動物の血漿プールから、またはヒト血漿プール、または該特定の病原体に対する抗体を有する個体の血清から抗体調製物を用意し、
・該特定の病原体の少なくとも1つの細菌表面発現ライブラリーを用意し、
・少なくとも1つの該細菌表面発現ライブラリーを該抗体調製物でスクリーニングし、
・該スクリーニングにおいて該抗体調製物中の抗体に結合する抗原を同定し、
・同定した該抗原を、該特定の病原体に対する抗体を有する個体からの個々の血清からの個々の抗体調製物でスクリーニングし、
・同定した該抗原の高度免疫血清に反応性の抗原部分を同定し、高度免疫血清に反応性の抗原は該個々の血清からの該個々の抗体調製物の関連部分に結合するものであり、ついで
・該高度免疫血清に反応性の抗原を単離し、該高度免疫血清に反応性の抗原を化学的方法または組換え法により製造する、ただし、該個々の血清は、該特定の病原体に対して80百分順位よりも高い抗体力価または約10000Uを超えるIgG力価を示す患者からのものである
ことを特徴とする方法;または
特定の病原体の高度免疫血清に反応性の抗原の実用的に完全なセットを同定、単離および製造する方法であって、該抗原は所定のタイプの動物またはヒトのワクチンに使用するのに適しており、下記工程:
・該所定のタイプの動物の血漿プールから、またはヒト血漿プール、または該特定の病原体に対する抗体を有する個体の血清から抗体調製物を用意し、
・該特定の病原体の少なくとも3つの異なる発現ライブラリーであってそのうち1つは細菌表面発現ライブラリーであるものを用意し、
・少なくとも3つの異なる該発現ライブラリーを該抗体調製物でスクリーニングし、
・少なくとも3つの該スクリーニングの少なくとも1つにおいて該抗体調製物中の抗体に結合する抗原を同定し、
・同定した該抗原を、該特定の病原体に対する抗体を有する個体からの個々の血清からの個々の抗体調製物でスクリーニングし、
・同定した該抗原の高度免疫血清に反応性の抗原部分を同定し、高度免疫血清に反応性の抗原は該個々の血清からの該個々の抗体調製物の関連部分に結合するものであり、
・該スクリーニングおよび同定工程を少なくとも1回繰返し、
・該繰返したスクリーニングおよび同定工程で同定した高度免疫血清に反応性の抗原を、最初のスクリーニングおよび同定工程で同定した高度免疫血清に反応性の抗原と比較し、
・高度免疫血清に反応性の抗原の少なくとも5%が繰り返したスクリーニングおよび同定工程においてのみ同定される場合には、該スクリーニングおよび同定工程をさらに繰返して、さらに繰返した該工程においてのみ高度免疫血清に反応性の抗原の5%未満が同定されるようにして特定の病原体の高度免疫血清に反応性の抗原の完全なセットを得、ついで
・該高度免疫血清に反応性の抗原を単離し、該高度免疫血清に反応性の抗原を化学的方法または組換え法により製造する、ただし、該個々の血清は、該特定の病原体に対して80百分順位よりも高い抗体力価または約10000Uを超えるIgG力価を示す患者からのものである
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
医薬製剤の製造、とりわけStaphylococcus感染症またはコロニー形成に対する、とりわけStaphylococcus aureusまたはStaphylococcus epidermidisに対するワクチンの製造のための、表2a、2b、2c、2d、3、4および5のいずれかに列記した配列よりなる群から選ばれた、とりわけ配列番号:55、56、57、58、59、60、62、66、67、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、87、88、89、90、92、94、95、96、97、99、100、101、102、103、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、126、128、130、132、134、138、140、142、151、152、154、155、158およびその高度免疫性フラグメントよりなる群から選ばれた高度免疫血清に反応性の抗原の使用。
【請求項4】
表2a、2b、2cおよび2dの「予測された免疫原性アミノ酸」、「同定した免疫原性領域の位置」および「関連領域との血清反応性」の欄のアミノ酸配列、および表4および5の「推定抗原性表面領域」の欄のアミノ酸配列を含むペプチド、とりわけ配列番号:55のアミノ酸配列12-29、34-40、63-71、101-110、114-122、130-138、140-195、197-209、215-229、239-253、255-274および39-94、
配列番号:56のアミノ酸配列5-39、111-117、125-132、134-141、167-191、196-202、214-232、236-241、244-249、292-297、319-328、336-341、365-380、385-391、407-416、420-429、435-441、452-461、477-488、491-498、518-532、545-556、569-576、581-587、595-602、604-609、617-640、643-651、702-715、723-731、786-793、805-811、826-839、874-889、37-49、63-77および274-334、
配列番号:57のアミノ酸配列28-55、82-100、105-111、125-131、137-143、1-49
配列番号:58のアミノ酸配列33-43、45-51、57-63、65-72、80-96、99-110、123-129、161-171、173-179、185-191、193-200、208-224、227-246、252-258、294-308、321-329、344-352、691-707、358-411および588-606、
配列番号:59のアミノ酸配列16-38、71-77、87-94、105-112、124-144、158-164、169-177、180-186、194-204、221-228、236-245、250-267、336-343、363-378、385-394、406-412、423-440、443-449、401-494、
配列番号:60のアミノ酸配列18-23、42-55、69-77、85-98、129-136、182-188、214-220、229-235、242-248、251-258、281-292、309-316、333-343、348-354、361-367、393-407、441-447、481-488、493-505、510-515、517-527、530-535、540-549、564-583、593-599、608-621、636-645、656-670、674-687、697-708、726-734、755-760、765-772、785-792、798-815、819-824、826-838、846-852、889-904、907-913、932-939、956-964、982-1000、1008-1015、1017-1024、1028-1034、1059-1065、1078-1084、1122-1129、1134-1143、1180-1186、1188-1194、1205-1215、1224-1230、1276-1283、1333-1339、1377-1382、1415-1421、1448-1459、1467-1472、1537-1545、1556-1566、1647-1654、1666-1675、1683-1689、1722-1737、1740-1754、1756-1762、1764-1773、1775-1783、1800-1809、1811-1819、1839-1851、1859-1866、1876-1882、1930-1939、1947-1954、1978-1985、1999-2007、2015-2029、2080-2086、2094-2100、2112-2118、2196-2205、2232-2243、198-258、646-727および2104-2206
配列番号:62のアミノ酸配列10-29、46-56、63-74、83-105、107-114、138-145、170-184、186-193、216-221、242-248、277-289、303-311、346-360、379-389、422-428、446-453、459-469、479-489、496-501、83-156、
配列番号:66のアミノ酸配列14-22、32-40、52-58、61-77、81-93、111-117、124-138、151-190、193-214、224-244、253-277、287-295、307-324、326-332、348-355、357-362、384-394、397-434、437-460、489-496、503-510、516-522、528-539、541-547、552-558、563-573、589-595、602-624、626-632、651-667、673-689、694-706、712-739、756-790、403-462、
配列番号:67のアミノ酸配列49-56、62-68、83-89、92-98、109-115、124-131、142-159、161-167、169-175、177-188、196-224、230-243、246-252、34-46、
配列番号:70のアミノ酸配列11-20、26-47、69-75、84-92、102-109、119-136、139-147、160-170、178-185、190-196、208-215、225-233、245-250、265-272、277-284、300-306、346-357、373-379、384-390、429-435、471-481、502-507、536-561、663-688、791-816、905-910、919-933、977-985、1001-1010、1052-1057、1070-1077、1082-1087、1094-1112、493-587、633-715および704-760、
配列番号:71のアミノ酸配列6-20、53-63、83-90、135-146、195-208、244-259、263-314、319-327、337-349、353-362、365-374、380-390、397-405、407-415、208-287および286-314、
配列番号:72のアミノ酸配列10-26、31-43、46-58、61-66、69-79、85-92、100-115、120-126、128-135、149-155、167-173、178-187、189-196、202-222、225-231、233-240、245-251、257-263、271-292、314-322、325-334、339-345、59-74、
配列番号:73のアミノ酸配列4-9、15-26、65-76、108-115、119-128、144-153、38-52および66-114、
配列番号:74のアミノ酸配列5-22、42-50、74-81、139-145、167-178、220-230、246-253、255-264、137-237および250-267、
配列番号:75のアミノ酸配列10-26、31-44、60-66、99-104、146-153、163-169、197-205、216-223、226-238、241-258、271-280、295-315、346-351、371-385、396-407、440-446、452-457、460-466、492-510、537-543、546-551、565-582、590-595、635-650、672-678、686-701、705-712、714-721、725-731、762-768、800-805、672-727、
配列番号:76のアミノ酸配列5-32、35-48、55-76、
配列番号:77のアミノ酸配列7-35、54-59、247-261、263-272、302-320、330-339、368-374、382-411、126-143および168-186、
配列番号:78のアミノ酸配列5-24、88-94、102-113、132-143、163-173、216-224、254-269、273-278、305-313、321-327、334-341、31-61および58-74、
配列番号:79のアミノ酸配列16-24、32-39、43-49、64-71、93-99、126-141、144-156、210-218、226-233、265-273、276-284、158-220、
配列番号:80のアミノ酸配列49-72、76-83、95-105、135-146、148-164、183-205、57-128、
配列番号:81のアミノ酸配列6-15、22-32、58-73、82-88、97-109、120-131、134-140、151-163、179-185、219-230、242-255、271-277、288-293、305-319、345-356、368-381、397-406、408-420、427-437、448-454、473-482、498-505、529-535、550-563、573-580、582-590、600-605、618-627、677-685、718-725、729-735、744-759、773-784、789-794、820-837、902-908、916-921、929-935、949-955、1001-1008、1026-1032、1074-1083、1088-1094、1108-1117、1137-1142、1159-1177、1183-1194、1214-1220、1236-1252、1261-1269、1289-1294、1311-1329、1336-1341、1406-1413、1419-1432、1437-1457、1464-1503、1519-1525、1531-1537、1539-1557、1560-1567、1611-1618、1620-1629、1697-1704、1712-1719、1726-1736、1781-1786、1797-1817、1848-1854、1879-1890、1919-1925、1946-1953、1974-1979、5-134、
配列番号:82のアミノ酸配列6-33、40-46、51-59、61-77、84-104、112-119、124-187、194-248、252-296、308-325、327-361、367-393、396-437、452-479、484-520、535-545、558-574、582-614、627-633、656-663、671-678、698-704、713-722、725-742、744-755、770-784、786-800、816-822、827-837、483-511、
配列番号:83のアミノ酸配列4-19、57-70、79-88、126-132、144-159、161-167、180-198、200-212、233-240、248-255、276-286、298-304、309-323、332-346、357-366、374-391、394-406、450-456、466-473、479-487、498-505、507-519、521-530、532-540、555-565、571-581、600-611、619-625、634-642、650-656、658-665、676-682、690-699、724-733、740-771、774-784、791-797、808-815、821-828、832-838、876-881、893-906、922-929、938-943、948-953、969-976、1002-1008、1015-1035、1056-1069、1105-1116、1124-1135、1144-1151、1173-1181、1186-1191、1206-1215、1225-1230、1235-1242、6-66、65-124および590-604、
配列番号:84のアミノ酸配列5-32、66-72、87-98、104-112、116-124、128-137、162-168、174-183、248-254、261-266、289-303、312-331、174-249、
配列番号:85のアミノ酸配列4-21、28-40、45-52、59-71、92-107、123-137、159-174、190-202、220-229、232-241、282-296、302-308、312-331、21-118、
配列番号:87のアミノ酸配列9-28、43-48、56-75、109-126、128-141、143-162、164-195、197-216、234-242、244-251、168-181、
配列番号:88のアミノ酸配列4-10、20-42、50-86、88-98、102-171、176-182、189-221、223-244、246-268、276-284、296-329、112-188、
配列番号:89のアミノ酸配列4-9、13-24、26-34、37-43、45-51、59-73、90-96、99-113、160-173、178-184、218-228、233-238、255-262、45-105、103-166および66-153、
配列番号:90のアミノ酸配列13-27、42-63、107-191、198-215、218-225、233-250、474-367、
配列番号:92のアミノ酸配列25-53、95-123、164-176、189-199、8-48、
配列番号:94のアミノ酸配列7-13、15-23、26-33、68-81、84-90、106-117、129-137、140-159、165-172、177-230、234-240、258-278、295-319、22-56、23-99、97-115、233-250および245-265、
配列番号:95のアミノ酸配列13-36、40-49、111-118、134-140、159-164、173-183、208-220、232-241、245-254、262-271、280-286、295-301、303-310、319-324、332-339、1-85、54-121および103-185、
配列番号:96のアミノ酸配列39-44、46-80、92-98、105-113、118-123、133-165、176-208、226-238、240-255、279-285、298-330、338-345、350-357、365-372、397-402、409-415、465-473、488-515、517-535、542-550、554-590、593-601、603-620、627-653、660-665、674-687、698-718、726-739、386-402、
配列番号:97のアミノ酸配列5-32、34-49、1-43、
配列番号:99のアミノ酸配列10-27、37-56、64-99、106-119、121-136、139-145、148-178、190-216、225-249、251-276、292-297、312-321、332-399、403-458、183-200、
配列番号:100のアミノ酸配列5-12、15-20、43-49、94-106、110-116、119-128、153-163、175-180、185-191、198-209、244-252、254-264、266-273、280-288、290-297、63-126、
配列番号:101のアミノ酸配列5-44、47-55、62-68、70-78、93-100、128-151、166-171、176-308、1-59、
配列番号:102のアミノ酸配列18-28、36-49、56-62、67-84、86-95、102-153、180-195、198-218、254-280、284-296、301-325、327-348、353-390、397-402、407-414、431-455、328-394、
配列番号:103のアミノ酸配列7-37、56-71、74-150、155-162、183-203、211-222、224-234、242-272、77-128、
配列番号:104のアミノ酸配列34-58、63-69、74-86、92-101、130-138、142-150、158-191、199-207、210-221、234-249、252-271、5-48、
配列番号:106のアミノ酸配列12-36、43-50、58-65、73-78、80-87、108-139、147-153、159-172、190-203、211-216、224-232、234-246、256-261、273-279、286-293、299-306、340-346、354-366、167-181、
配列番号:112のアミノ酸配列61-75、82-87、97-104、113-123、128-133、203-216、224-229、236-246、251-258、271-286、288-294、301-310、316-329、337-346、348-371、394-406、418-435、440-452
配列番号:114のアミノ酸配列30-37、44-55、83-91、101-118、121-128、136-149、175-183、185-193、206-212、222-229、235-242、
配列番号:116のアミノ酸配列28-38、76-91、102-109、118-141、146-153、155-161、165-179、186-202、215-221、234-249、262-269、276-282、289-302、306-314、321-326、338-345、360-369、385-391
配列番号:142のアミノ酸配列9-33、56-62、75-84、99-105、122-127、163-180、186-192、206-228、233-240、254-262、275-283、289-296、322-330、348-355、416-424、426-438、441-452、484-491、522-528、541-549、563-569、578-584、624-641、527-544、
配列番号:151のアミノ酸配列37-42、57-62、121-135、139-145、183-190、204-212、220-227、242-248、278-288、295-30、304-309、335-341、396-404、412-433、443-449、497-503、505-513、539-545、552-558、601-617、629-649、702-711、736-745、793-804、814-829、843-858、864-885、889-895、905-913、919-929、937-943、957-965、970-986、990-1030、1038-1049、1063-1072、1080-1091、1093-1116、1126-1136、1145-1157、1163-1171、1177-1183、1189-1196、1211-1218、1225-1235、1242-1256、1261-1269、624-684、
配列番号:152のアミノ酸配列8-23、31-38、42-49、61-77、83-90、99-108、110-119、140-147、149-155、159-171、180-185、189-209、228-234、245-262、264-275、280-302、304-330、343-360、391-409、432-437、454-463、467-474、478-485、515-528、532-539、553-567、569-581、586-592、605-612、627-635、639-656、671-682、700-714、731-747、754-770、775-791、797-834、838-848、872-891、927-933、935-942、948-968、976-986、1000-1007、1029-1037、630-700、
配列番号:154のアミノ酸配列17-25、27-55、84-90、95-101、115-121、55-101、
配列番号:155のアミノ酸配列13-28、40-46、69-75、86-92、114-120、126-137、155-172、182-193、199-206、213-221、232-238、243-253、270-276、284-290、22-100、および
配列番号:158のアミノ酸配列7-19、46-57、85-91、110-117、125-133、140-149、156-163、198-204、236-251、269-275、283-290、318-323、347-363、9-42および158-174、
配列番号:168のアミノ酸配列7-14、21-30、34-50、52-63、65-72、77-84、109-124、129-152、158-163、175-190、193-216、219-234、
配列番号:174のアミノ酸配列5-24、38-44、100-106、118-130、144-154、204-210、218-223、228-243、257-264、266-286、292-299、
配列番号:176のアミノ酸配列29-44、74-83、105-113、119-125、130-148、155-175、182-190、198-211、238-245を含むペプチド、および該配列の少なくとも6アミノ酸、好ましくは8を超えるアミノ酸、とりわけ10を超えるアミノ酸を含むフラグメントよりなる群から選ばれる、高度免疫血清に反応性の抗原の高度免疫性フラグメント。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の抗原またはフラグメントのヘルパーエピトープ、とりわけ、表4および5中の「推定抗原性表面領域」の欄に記載したペプチドから選ばれた、および配列番号56のアミノ酸配列6-40、583-598、620-646および871-896、配列番号70のアミノ酸配列24-53、配列番号74のアミノ酸配列240-260、配列番号81のアミノ酸配列1660-1682および1746-1790、配列番号83のアミノ酸配列1-29、680-709および878-902、配列番号89のアミノ酸配列96-136、配列番号94のアミノ酸配列1-29、226-269および275-326、配列番号114のアミノ酸配列23-47および107-156、配列番号142のアミノ酸配列24-53、およびT細胞エピトープであるそのフラグメントよりなる群から選ばれたフラグメントを含むペプチド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の高度免疫血清に反応性の抗原またはそのフラグメントを含むワクチン。
【請求項7】
好ましくはポリカチオン性ポリマー、とりわけポリカチオン性ペプチド、免疫促進性デオキシヌクレオチド(ODN)、神経刺激性化合物、とりわけヒト成長ホルモン、ミョウバン、フロイントの完全または不完全アジュバントまたはそれらの組み合わせから選ばれる免疫促進物質をさらに含む、請求項6に記載のワクチン。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれかに記載の少なくとも1の抗原またはそのフラグメントに対する抗体を含む調製物。
【請求項9】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項8に記載の調製物。
【請求項10】
請求項9に記載の調製物を製造する方法であって、下記工程:
・請求項1ないし5のいずれかに記載の抗原またはそのフラグメントを非ヒト動物に投与することにより該非ヒト動物で免疫応答を開始させ、
・該動物から脾臓または脾細胞を取り出し、
・該脾臓または脾細胞のハイブリドーマ細胞を製造し、
・該抗原に特異的なハイブリドーマ細胞を選択およびクローニングし、ついで
・該クローニングしたハイブリドーマ細胞を培養し、さらに任意に精製工程を行うことによって抗体調製物を製造する
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
該脾臓または脾細胞の取り出しが該動物を殺すことと関係している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項8に記載の調製物を製造する方法であって、下記工程:
・請求項1ないし5のいずれかに記載の抗原またはそのフラグメントを非ヒト動物に投与することにより該非ヒト動物で免疫応答を開始させ、
・該動物から抗体含有体液を取り出し、ついで
・該抗体含有体液をさらに精製工程に供することにより抗体調製物を製造する
を特徴とする方法。
【請求項13】
Staphylococcus感染症またはコロニー形成、とりわけStaphylococcus aureusまたはStaphylococcus epidermidisの感染症またはコロニー形成を治療または予防するための医薬の製造のための請求項8または9に記載の調製物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−291035(P2008−291035A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152742(P2008−152742)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【分割の表示】特願2002−559450(P2002−559450)の分割
【原出願日】平成14年1月21日(2002.1.21)
【出願人】(502270718)インターツェル・アクチェンゲゼルシャフト (26)
【氏名又は名称原語表記】INTERCELL AG
【Fターム(参考)】