説明

特定の選択的な電気信号および電磁信号によって生成される電場の印加を介して骨細胞における骨形成タンパク質(BMP)遺伝子発現を上方制御するシステムおよび方法

【解決手段】 罹患骨または損傷骨の治療において、特定の選択的な電気信号および電磁信号によって生成される電場を印加することにより、骨細胞における骨形成タンパク質の遺伝子発現を制御する方法および装置を説明する。遺伝子発現は、ヒトゲノム(DNA)の特定部位(遺伝子)がmRNAに転写され、次にタンパク質に翻訳される過程の上方制御若しくは下方制御を意味する。前記方法および装置は、損傷骨組織または罹患骨組織の標的治療のために提供されており、この方法および装置には、特定の選択的な電気信号および電磁信号を生成して、骨形成タンパク質の遺伝子発現を上昇させるために最適化された電場を生成する工程、および前記特定の選択的な信号によって生成される電場に骨を露出して、このような骨組織における骨形成タンパク質の遺伝子発現を制御するものである、露出する工程が含まれる。本方法および装置は、骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、癒着不能の骨折、骨欠損症、脊椎固定、骨壊死または虚血壊死のうちの1つ若しくは全ての治療、および骨粗鬆症の治療における他の治療法の補助療法として、上記の病状の標的治療のために有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国特許出願第10/257,126号明細書の一部継続特許出願であり、前記米国特許出願は、2001年2月23日付けで提出されたPCT/US01/05991の米国国内段階特許出願である。さらに、この米国国内段階特許出願は、2000年2月23日付け米国特許仮出願第60/184,491号明細書の出願日の利益を主張するものである。また、本発明は、2004年1月12日に提出された米国特許仮出願第60/535,755号明細書に対しても優先権を主張するものである。これらの特許出願の内容はこの参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本発明は、損傷骨および罹患骨の治療のために、特定の選択的な電気信号および電磁信号によって生成される電場を印加して骨細胞における骨形成タンパク質(BMP)の遺伝子発現を上方制御する方法および前記信号を生成する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な生体組織および生体細胞内に存在すると考えられている生体電気の相互作用および活動は、もっとも解明が遅れている生理的過程の1つである。しかしながら、特定の組織および細胞の増殖および修復におけるこのような相互作用および活動に関する研究が近年多数行われてきた。特に、電場および電磁場による刺激、さらに骨および軟骨の増殖および修復におけるその効果について多数の研究がなされてきた。研究者等は、このような研究が様々な医学的問題に対する新治療法の開発に有用である可能性があると確信している。
【0004】
骨粗鬆症として一般的に知られている疾患では、骨の鉱質除去が起こり、骨が異常に希薄になる。骨は有機細胞成分および有機基質成分、さらに無機成分または鉱物成分を有する。前記細胞および基質は、骨を硬質にするリン酸カルシウム(85%)および炭酸カルシウム(10%)の鉱物成分で含浸された膠原線維の枠組みを有する。骨粗鬆症は通常、高齢者に起こる疾患として考えられているが、特定型の骨粗鬆症は、骨に機能的ストレスを受けていないすべての年齢層の個人にも影響を及ぼす可能性がある。そのような場合、長期に渡る不動期間に患者の皮質骨および海綿骨の著しい減少が生じることもある。高齢患者では、骨折後寝たきりになった際に骨が使用されないために、骨量減少が起こることが知られ、このような骨量減少より、ついには、既に骨粗鬆症の骨格に2次的な骨折が起こることもある。骨密度が低下すると椎骨の圧潰、股関節、前腕、手関節、足首の骨折、さらに耐え難い痛みが起こる場合もある。そのような疾患には、非外科的な代替療法が必要とされている。
【0005】
パルス電磁場(Pulsed electromagnetic fields、略称、PEMF)および静電結合(Capacitive coupling、略称、CC)は、1979年に食品医薬品局(Food and Drug Administration)で承認されて以来、治癒不能の骨折(癒着不能)および骨折治癒に関連する問題を治療するために広範囲に使用されてきた。この治療形式が試行された当初の理由は、骨に物理的な圧力をかけると僅かな電流が生じ、機械的な緊張と同様に、その電流が、前記物理的圧力を骨形成を促進する信号に変換する仕組みの根底にあるメカニズムであると考えられるという観察結果に基づいていた。癒着不能の治療において成功を収めた直接的電場刺激と同様に、PEMFおよび静電結合を使用した非侵襲的な技術(治療域の皮膚上に電極を配置するもの)もまた効果的であることが認められた。PEMFsは、伝導率の高い細胞外液に小誘導電流(ファラデー電流)を生成し、一方、静電結合は前記組織に直接電流を生じさせるものである。それにより、PEMFsおよびCC双方とも内因性電流を擬態する。
【0006】
内因性電流は、当初骨内の結晶表面に起こる現象に起因すると考えられていたが、主に、陰性の固定電荷を有する有機成分を含有し、いわゆる「流動電位」を生成する、骨管内の電解質を含む液体の運動によって生じることが明らかになった。骨内における電気現象に関する研究は、骨を機械的に圧迫することにより、前記骨基質中のプロテオグリカンおよびコラーゲンにおける陰性の固定電荷の表面上に液体運動および電解質が生じる際に起こる機械−電気変換メカニズムを実証した。このような流動電位は、骨内で一定の目的を果たし、機械的な緊張と同様に、石灰化可能な基質における骨細胞の合成を刺激することが可能なシグナル伝達をもたらし、これにより骨形成が促進される。
【0007】
直流、静電結合およびPEMFsは主に整形外科で癒着不能の骨折治癒に応用されてきた(Brightonら、J.Bone Joint Surg.、63:2〜13、1981年、BrightonおよびPollack、J.Bone Joint Surg.、67:577〜585、1985年、Bassettら、Crit.Rev.Biomed.Eng.、17:451〜529、1989年、Bassettら、JAMA 247:623〜628、1982年)。成人における股関節の虚血壊死、および小児におけるレッグパーセス病(Legg−Perthes‘s disease)での臨床効果が報告されてきた(Bassettら、Clin.Orthop.246:172〜176、1989年、Aaronら、Clin.Orthop.249:209〜218、1989年、Harrisonら、J.Pediatr.Orthop.4:579〜584、1984年)。また、PEMFs(Mooney、Spine、15:708〜712、1990年)および静電結合(Goodwin、Brightonら、Spine、24:1349〜1356、1999年)が、腰椎部癒着の成功率を有意に高める可能性があることも示されている。さらに、末梢神経再生の増加およびその機能の増強、および血管形成の促進も報告されている(Bassett Bioessays 6:36〜42、1987年)。ステロイド注射および他の通常の措置に反応しない、持続性回旋筋腱板腱炎患者は、プラセボで治療を受けた患者と比べて有意に有益性を示した(Binderら、Lancet 695〜698、1984年)。最後に、Brightonらは、ラットにおいて、適切な静電結合の電場が、腰椎における椎骨骨粗鬆症を予防し、さらに好転させる能力があることを示した(Brightonら、J.Orthop.Res.6:676〜684、1988年、Brightonら、J.Bone Joint Surg.、71:228〜236、1989年)。
【0008】
より最近では、この分野の研究は刺激が組織および細胞に与える影響に着目してきた。例えば、直流は細胞膜を透過しないこと、および細胞外基質の分化を介して調整が行われることが推測されてきた(Grodzinsky、Crit.Rev.Biomed.Eng.9:133〜199,1983年)。また、直流とは対照的に、PEMFsは、細胞膜を透過することが可能で、且つ、同細胞膜を刺激するか、細胞内器官に直接影響を与えるかのいずれかが可能であることが報告された。PEMFsが細胞外基質および生体内軟骨内骨化に与える効果についての試験では、軟骨分子の合成の増加および骨梁の成熟が認められた(Aaronら、J.Bone Miner.Res.4:227〜233、1989年)。さらに最近では、Lorichら(Clin.Orthop.Related Res.350:246〜256,1989年)、およびBrightonら(J.Bone Joint Surg.、83−A、1514−1523、2001年)は、静電結合型の電気信号のシグナル伝達は、電位依存性のカルシウムチャネルを介して行われるが、PEMFsまたは複合電磁場のシグナル伝達は、細胞内に貯蔵されているカルシウムの放出を介して行われる。3つのタイプの電気刺激全てにおいて、細胞質のカルシウムが増加し、さらに(細胞骨格の)カルモジュリンの活性化を促すことを報告した。
【0009】
1996年に本発明者らは、環状二軸で0.17%の機械的緊張によって、培養MC3T3−E1骨細胞中のTGF−β mRNAが有意に増加することを報告した(Brightonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.229:449〜453,1996年)。1997年には、重要な追研究がいくつか行われた。1研究においては、同一の環状二軸で0.17%の機械的緊張によって、類似骨細胞中のPDGF−A mRNAが有意に増加したことが報告された(Brightonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.43:339〜346,1997年)。また、60kHzで20mV/cmの静電結合型電場によって、類似骨細胞中のTGF−βが有意に増加したことも報告された(Brightonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.237:225〜229、1997年)。但し、前記文献では、このような電場が他の遺伝子に及ぼす影響については報告されていない。
【0010】
「Regulation of Genes Via Application of Specific and Selective Electrical and Electromagnetic Signals(特定の選択的な電気信号および電磁信号の印加による遺伝子制御)」と題する上述の親特許出願では、罹患組織、または損傷組織の標的遺伝子を制御することを目的する電場を発生させるために使用される前記特定の選択的な電気信号および電磁信号の決定方法を開示した。本発明は、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、骨折の癒着不能、骨欠損症、脊椎固定、骨壊死または虚血壊死のうちの1つ、あるいは全ての治療における他の治療法の補助療法として、特定の選択的な電気信号および電磁信号によって生成される電場の印加を介して標的遺伝子ファミリーの発現、すなわち、骨形成タンパク質(複数可)遺伝子の発現を制御する方法を説明することにより、前記親出願で記載された技術をさらに発展させるものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、特定の選択的な電気信号および/または電磁信号によって生成される電場を印加することにより、骨細胞における骨形成タンパク質の遺伝子発現を制御する工程に関する。電場の継続時間、振幅、周波数およびデューティサイクルに関する用量反応曲線を作成することにより、骨細胞における骨形成タンパク質のmRNAを上方制御するための最適な信号を発見した。前記最適な信号により、20mV/cmの振幅、24時間の継続時間、60kHzの周波数、50%のデューティサイクルおよび正弦波形を伴う静電結合型電場が生成された。本発明は、より具体的には、このような信号によって生成される電場を印加することにより、骨細胞における骨形成タンパク質(BMP)の遺伝子発現を上方制御する工程に関する。
【0012】
本発明に従って、静電結合型電場、電磁場または複合場を用いて、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7の遺伝子発現(mRNAによって測定)を特定的および選択的に上方制御する方法を提供する。BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7の遺伝子発現を上方制御する、約24時間の電場継続時間、60kHzの周波数、約50%のデューティサイクル、および正弦波形を伴う約20mV/cmの静電結合型電場で新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、癒着不能の骨折、骨欠損症、骨壊死、骨粗鬆症などを治療する。本発明の方法によると、「特定の選択的な」信号は、振幅、継続時間、デューティサイクル、周波数、および波形に一定の特性を有し、BMPの遺伝子発現を上方制御する信号である(特定性)。これにより、BMPの遺伝子発現を上方制御するための異なる信号を選択し、ある特定の生物学的反応または治療効果を達成することが可能になる(選択性)。さらに、本発明は、本明細書で説明する方法を用いた装置に関し、この装置は、前記BMPの遺伝子発現を上方制御する電場を発生させる特定の選択的な信号を生成するものである。
【0013】
関連態様において、本発明は、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、癒着不能の骨折、骨欠損症、脊椎固定、骨壊死を治療するための方法および装置に関し、前記方法および装置は、上記のうちの1若しくはそれ以上の治療および骨粗鬆症の治療における他の治療法の補助療法としての方法および装置である。また、本発明の前記方法は、BMPの細胞産生を増加させるとして知られている、若しくは増加させると推測される開始信号の継続時間を体系的に変化させることにより、BMPの遺伝子発現のための「特定の選択的な」信号を決定する方法を含む。最適な継続時間を決定後、前記信号の振幅を、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7の遺伝子発現に基づいて決定された最適な継続時間の間変化させる。上記と同様の用量反応法で前記デューティサイクル、周波数、および波形を体系的に変化させ、それと同時に他の信号特性を一定にする。前記BMPsの発現を最大限に上昇させる最適な信号が決定されるまで、この工程を繰り返す。
【0014】
本発明について上述した点および他の点については、以下の発明の詳細な説明において明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜8を参照しながら、以下に本発明を詳細に説明する。前記図面に関する本明細書の記載は、例示的な目的のみを意図しており、いかなる点においても、本発明の範囲を制限することを意図しないことは、当業者であれば理解するものである。本発明の範囲に関する質問はすべて、添付の特許請求の範囲を参照することにより解決されうる。
【0016】
本発明は、特定の選択的な電気信号および/または電磁信号を印加することにより、特定の遺伝子発現を制御することが可能であるという発見に基づいている。すなわち、本発明者らは、骨、軟骨および他の組織細胞における各遺伝子を制御するための電場を生成する特定の電気信号および/または電磁信号があり、このような特定の信号によって、前記細胞における遺伝子を特定的および選択的に制御することが可能になることを発見したものである。特に、組織または細胞の増殖、維持、修復、および変性または変質を支配する遺伝子発現は、本発明に従って、特定の選択的な電気信号および/または電磁信号によって生成される電場を印加することにより制御することが可能であり、その結果、有益な臨床効果を得ることができる。このような発見は、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、癒着不能の骨折、骨欠損症、骨壊死を含むある特定の病状を標的とする治療法の開発において、上記の病状のうちのいずれか1つ若しくはそれ以上の治療、および骨粗鬆症の治療における補助療法として有益である。
【0017】
本明細書では、用語「信号」は、装置によって出力される、機械的信号、超音波信号、電磁信号および電気信号を含む様々な信号に言及するために使用される。本明細書での用語「電場」は、複合場、パルス電磁場、または直流、静電結合、または誘導結合によって生成された電場のいずれかに関わらず、標的組織内の電場に言及することが理解されるものである。
【0018】
用語「遠隔」は、距離を置いた場所から作用する、作用を受ける、または制御されることを意味するために使用される。「遠隔的に」提供することは、距離を置いた場所から提供することを指す。例えば、遠隔電源から特定の選択的な信号を提供することは、組織または細胞から距離を置いた電源から、若しくは身体の外部または身体外側の電源から信号を提供することを指す。
【0019】
用語「特定の選択的な」信号は、一定の特質の振幅、継続時間、デューティサイクル、周波数および波形を有し、標的遺伝子または補足遺伝子の標的機能を上方制御若しくは下方制御する電場を発生させる信号を意味する(特定性)。これにより、様々な遺伝子発現を上方制御若しくは下方制御するための異なる「特定の選択的な」信号を選択し、ある特定の生物学的反応または治療効果を達成することが可能になる(選択性)。
【0020】
用語「制御する」は、遺伝子発現を制御することを意味する。「制御する」には、上方制御および下方制御の両方が含まれる。上方制御は遺伝子発現の上昇を意味し、また下方制御は遺伝子発現を抑制、若しくは阻止することを意味する。
【0021】
「機能的に相補的」は、ある特定の細胞または組織において、発現が相補的または相乗的である2若しくはそれ以上の遺伝子を指す。
【0022】
「組織」は、患者の構造物質の1つを形成する細胞外物質を伴う細胞の集合体を指す。本明細書では、用語「組織」は、筋肉および臓器組織、腫瘍組織、さらに骨組織または軟骨組織を含むことを意図する。また、本明細書では、用語「組織」は、個別細胞を指す場合もある。
【0023】
「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。
【0024】
本発明は、特定の組織、細胞または疾患を標的とする治療方法および装置を提供するものである。特に、損傷または罹患した組織または細胞における修復過程に関連する遺伝子発現は、特定の選択的な電気信号によって生成される電場を該標的組織または細胞における被制御遺伝子に対して印加することにより、制御することが可能である。遺伝子発現は、各遺伝子または補足遺伝子の各集合のための特定の選択的な信号を印加することによって、上方制御若しくは下方制御することが可能であり、その結果有益な臨床効果を得ることができる。例えば、ある固有の特定および選択的な信号は、特定の望ましい遺伝子発現を上方制御する電場を生成し、一方、同一の、または別の固有の特定および選択的な信号は特定の望ましくない遺伝子発現を下方制御する電場を生成する場合もある。ある特定の遺伝子は、ある固有の特定および選択的な信号によって生成される電場により上方制御され、また、別の特定の選択的な信号によって生成さる電場により下方制御される可能性もある。当業者であれば、組織の増殖、維持、修復、および変性または変質を支配する遺伝子を制御することにより、ある特定の罹患または損傷した組織を治療標的とすることが可能であることを理解するものである。
【0025】
本発明の方法および装置は、ある特定の標的罹患組織および損傷組織に関連する遺伝子発現のための特定の選択的な電場を生成する信号を同定することに基づいている。例えば、様々な形態の電気(静電結合、誘導結合、複合場)は、各選択遺伝子に対して印加電場の周波数、振幅、波形またはデューティサイクルを変化させることにより、患者の身体の標的組織または細胞における遺伝子発現を特定的および選択的に制御することが可能である。また、電気に対する露出継続時間も、電気が患者の身体の標的組織または細胞における遺伝子発現を特定的および選択的に制御する能力に影響を及ぼす。遺伝子発現に対して望ましい効果を提供する周波数、振幅、波形、デューティサイクルおよび継続時間の組み合わせが検出されるまで、特定の選択的な信号によって、各遺伝子に対して印加電場を生成する。
【0026】
ある特定の遺伝子発現のための電場の特定性および選択性は、複数の要因から影響を受ける可能性があるため、様々な罹患組織または損傷組織、若しくは病状を治療標的とすることが可能であることが理解されるものである。特に、ある特定の遺伝子発現のための、適切な周波数、振幅、波形、および/またはデューティサイクルを有する電場は特定的および選択的であるため、標的治療を提供することが可能である。また、時間的要因(例えば、電場に対する露出継続時間)も、ある特定の遺伝子発現のための電場の特定性および選択性に影響を与える。遺伝子発現の制御は、一定の継続時間の間電場を印加することによってより効果的(若しくは可能)になる場合がある。従って、本発明は、様々な罹患または損傷した、組織若しくは疾患を標的とする治療を提供するために、印加電場の周波数、振幅、波形、デューティサイクルおよび/または継続時間を変化させて、ある電場がある特定の遺伝子発現に対して特定的および選択的であることを検出する工程を提供することを、当業者であれば理解するものである。
【0027】
このように、本発明は、適切な継続時間の間、適切な周波数、振幅、波形、および/またはデューティサイクルを有する、特定の選択的な信号によって生成される電場を印加することにより、特定の罹患組織または損傷組織に関連する特定の遺伝子発現を制御することが可能なため、標的治療を提供することができる。従って、電場を生成する信号の特定性および選択性を調整することにより、特定の遺伝子発現を制御して特定の罹患組織または損傷組織、若しくは病状を治療標的とすることが可能である。特に、本発明は、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、癒着不能の骨折、骨欠損症、脊椎固定、骨壊死の標的治療を提供し、前記標的治療は、上記のうちの1若しくは全ての治療、および骨粗鬆症の治療における他の治療法の補助療法としての治療である。
【0028】
また、本発明は、BMP遺伝子発現のための特定の選択的な、少なくとも1つの信号の電源を含む装置も提供する。本発明の装置は、前記特定の選択的な信号によって生成される電場を印加するようなっている少なくとも1つの電極により、骨細胞に印加するための信号を発生させることができる。
【0029】
本発明の装置では、特定の選択的な信号によって生成される電場を患者の罹患または損傷した組織、骨および/または皮膚に直接印加することが可能である。また、本発明の装置では、特定の選択的な電場を遠隔的に印加する(例えば、罹患組織または損傷組織から距離を置いた場所で電場を印加する)場合もある。但し、静電結合型の装置では被験者の皮膚への接触が必要になることが理解されるものである。静電結合の場合、本発明の装置は、患者の身体の損傷組織または罹患組織の近傍に電極を取着する手段を含む場合もある。例えば、図8で示すように、自動接着性の導電性電極を、患者の骨折骨18または関節20の両側の皮膚上に取着する場合もある。本発明の装置は、当該装置を患者の身体に取着するための自動接着性の電極を具備することもある。例えば、本発明の装置10は、電源装置14に取着された電極12を具備し、この電源装置14は、裏面にVELCRO(登録商標)パッチ16を有するため、患者のギプスの周囲に適合するVELCRO(登録商標)ストラップ(図示せず)に当該電源装置14を取着することが可能になる。誘導結合の場合、本発明の装置は、電極の代わりに電源装置に接続されたコイルまたはソレノイドを具備することもある。
【0030】
本発明の装置10は、多様な方法で用いることができる。前記装置10は、携帯用であってもよいし、患者の身体に一時的または永久的に取着されていてもよい。本発明の装置10は、非侵襲的であることが好ましい。例えば、予め定められた特定の選択的な信号によって生成される電場を印加するために、患者の皮膚に接触するようなっている電極12を取着することによって、本発明の装置10が患者の皮膚に取り付けられることもある。また、このような信号はコイルまたはソレノイド(図示せず)を介して印加される場合もあり、これらのコイルまたはソレノイド内に時変電流が流れて前記組織を透過する特定の選択的な電磁場が発生する。また、本発明の装置10を患者に埋め込むことも可能であり、この埋め込みには、患者の骨との直接接触のための皮下埋め込みが含まれる。
【0031】
当業者であれば、本発明の装置を、一対または複数の対の電極、あるいは電磁コイルまたはソレノイドに印加するためのプログラムされた、複数の、切替え可能な、特定の選択的な信号を伴う静電結合型の電源装置を含む様々な形態で提供することが可能であることがさらに理解されるものであり、これらの電極、あるいは電磁コイルまたはソレノイドは、切替え可能な、複数の、特定の選択的な信号を伴う電源装置および特定の選択的な信号を生成するための電源を伴う超音波刺激装置に取着されている。通常、患者の承諾および適応性に基づいて装置の選択が行われる。現行技術において入手可能な最も小型の携帯用装置は静電結合型装置であるが、皮膚が非常に敏感な患者においては、誘導結合型装置を使用することが好ましい場合もある。一方、超音波装置は患者の協力を最も必要とするが、特定の患者によって使用されるのが望ましい場合もある。
【0032】
実施例
本発明は、以下の実施例において実証されるものであるが、この実施例は例示を目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0033】
物質および方法
MC3T3−E1骨細胞(5×10細胞/cm)を、特別改良したCooperディッシュ上で平板培養した。前記細胞を培地で7日間増殖させ、この培地を実験条件を開始する直前に交換した。これらの研究全般における実験用細胞培養は、60kHz、静電結合型の正弦波、44.81ピーク−ピークの出力振幅を伴う電場の条件下に置いた。前記条件により、前記ディッシュの培地に、電流密度が300μA/cmで20mV/cmの算出電場強度を発生させた。対照細胞培養ディッシュは、電極が関数発生器に接続されていない点を除いては、刺激を受けた細胞培養ディッシュと同一であった。
【0034】
実験の終了時に、製造業者の取扱説明書に従い、TRIzolを使用して全RNAを分離し、SuperScript II逆転写酵素を使用して逆転写(reversed transcription:RT)を行った。リアルタイムのRT−PCR法において使用するオリゴヌクレオチドプライマーを、公開cDNA配列から選択するか、若しくは、Primer Expressソフトウェアプログラムを使用して設計した。ABI Prism(登録商標)7000 Sequence Detection Systemを使用して、RT−PCR産物のリアルタイム定量分析を行った。
【0035】
特にBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7を含む、(BMP)遺伝子の望ましい上方制御のための最適な信号を以下のように体系的に検出した。ある特定のタンパク質の細胞産生を増加させるとして知られている(若しくは、増加させると推測される)電気信号(例えば、60kHzの正弦波)を前記特定のタンパク質の遺伝子発現(mRNA)のための電場を生成する特定の信号を決定するための開始信号とする。始めに、前記信号の継続時間を変化させる一方で、その他全ての信号特性(振幅、デューティサイクル、周波数および波形)を一定に保つことにより、用量反応曲線を作成する(図1)。これにより、前記特定のタンパク質の遺伝子発現のための前記開始信号の最適な継続時間が決定される。図1で示したように、BMPのmRNAsの最大発現は、信号が24時間の継続時間の場合に起った。次に、第2の用量反応曲線の作成を行い、今回は、前記電場の振幅(単位mV/cm)を変化させる一方で、前記最適な継続時間および他の信号特性を一定に保った(図2)。図示したように、様々なBMPのmRNAsの最大発現は、電場振幅が20mV/cmの場合に起った。第3の用量反応曲線の作成を行い、今回は、前記信号の周波数を変化させる一方で、上記で検出された最適な継続時間および振幅を一定に保った(図3)。図示したように、前記様々なBMPのmRNAsの最大発現は、周波数が60kHzの場合に起った。第4の用量反応曲線の作成を行い、デューティサイクルを100%(連続稼動)〜10%若しくはそれ未満に変化させる一方で、上記で検出された最適な継続時間、振幅、および周波数を一定に保った(図4)。図示したように、前記様々なBMPのmRNAの最大発現は、デューティサイクルが50%の場合に起った。最後に、第5の用量反応曲線の作成を行い、オフ時間/オン時間のパラメータを変化させる一方で、上記で検出されたように、デューティサイクルを50%、振幅を20mV/cm、周波数を60kHzにそれぞれ保った(図5)。図示したように、前記様々なBMPのmRNAsの最大発現は、デューティサイクルが50%で1分間のオン/1分間のオフ状態の場合に起った。
【0036】
前記方法により、前記様々なBMPsの遺伝子発現を最大限に上昇させるために最適な信号が決定される。
【0037】
50%のデューティサイクルの連続(信号)(静電結合、20mV/cm、60kHz、正弦波)と50%のデューティサイクルのパルス(信号)(静電結合、20mV/cm、60kHz)とを比較することにより、第6の実験を行った。図示したように、両信号において、BMP−2のmRNAの増加は約5倍であった(図6)。
【0038】
前記BMPのmRNA産物(すなわち、BMP−2タンパク質)の産生における増加を実証するために、最終実験を行った。50%のデューティサイクル(静電結合、20mV/cm、60kHz、正弦波)の信号で24時間刺激したところ、BMP−2産物に1.9倍の増加、アルカリホスファターゼ活性に1.6倍の増加があった(図7)。
【0039】
図8は、膝に変形性関節症を伴なう患者を治療するために使用する、本発明に従った装置10を示す。図示したように、2つの円形の弱導電性、自動接着性の電極12が膝のいずれかの側面の皮膚上に、関節線20の高さで配置されている。前記電極12は電源装置14に取着されており、この電源装置14は裏面上にVELCRO(登録商標)パッチ16を有するため、腓腹、大腿または腰の周囲に適合するVELCRO(登録商標)ストラップ(図示せず)に取着することが可能である。前記電極12は、患者が毎晩、若しくは他の都合の良い時間に就寝する前に皮膚上に配置される場合もある。当然のことながら、他の適切なタイプの電極12も使用可能である。
【0040】
前記電源装置14は、小型(例えば、6〜8オンス)であることが好ましく、また、標準規格の9ボルトの電池で電力が供給され、5ボルトピーク−ピーク、6〜10mAmp、20mV/cm、60kHzで正弦波の信号を皮膚上に配置された電極12に発生させることが好ましい。前記信号を1日約24時間の間、1分間のオンおよび1分間のオフの増分を伴う適切なデューティサイクル(50%)で提供すると、BMPをコード化する遺伝子を有意に上方制御することが明らかになった。
【0041】
前記実施例で説明した最適な電場により、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のmRNAを非常に有意に上方制御することが可能であり、この上方制御により骨形成が促進されることを、本発明は明瞭に示している。本明細書では静電結合を用いた適切な電場を説明したが、誘導結合を用いた場合、さらに、均等または略均等の電場特性を発生させる全電磁システムを用いた場合も同様の効果があることを、当業者であれば理解するものである。また、より多くのデータポイント(例えば、100±3%のデューティサイクルを30±3分間)に関する実験をさらに行うことによって、より固有の信号特性を発見することが可能であるが、各信号特性のこのような僅かな変化は、本明細書の教示を鑑みると、当業者のレベルの範囲内であると確信するものであることも、当業者は理解するであろう。
【0042】
また、当業者であれば、本発明の要旨の範囲内で本発明に対し数多くの他の修正が可能であることも理解するものである。例えば、本明細書で説明した最適な電場は、対になったまたはストリップ状の、あるいは補強材、包帯またはギプスに組み込まれた、2若しくはそれ以上の適切な表面電極を介して任意の骨に印加可能であり、また前記電場は静電結合によって供給することができる。さらに、本明細書で説明した最適な電場は、補強材、包帯またはギプスに組み込まれたコイル(複数可)またはソレノイドを介して任意の骨に印加可能であり、誘導結合によって供給することができる。従って、本発明の範囲は、上述した好適な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲よってのみ限定されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明は、以下の発明の詳細な説明と伴に添付の図面から明らかになるものである。
【図1】図1は、骨細胞が20mV/cmの静電結合型電場に様々な継続時間の間露出された場合の、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、前記様々なBMPのmRNAの最大発現は、信号の継続時間が24時間の場合に起った。
【図2】図2は、骨細胞が24時間の継続時間の間様々な静電結合型電場振幅に露出された場合の、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、前記様々なBMPのmRNAの最大発現は、電場振幅が20mV/cmの場合に起った。
【図3】図3は、骨細胞が、電場振幅が20mV/cmで、信号継続時間が24時間である、様々な静電結合型電場の周波数に露出された場合の、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、前記様々なBMPのmRNAの最大発現は、周波数が60kHzの場合に起った。
【図4】図4は、骨細胞が、周波数が60kHz、電場振幅が20mV/cm、信号継続時間が24時間である、様々な静電結合型電場のデューティサイクルに露出された場合の、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、前記様々なBMPのmRNAの最大発現は、デューティサイクルが50%の場合に起った。
【図5】図5は、骨細胞が、電場振幅が20mV/cm、周波数が60kHzであり、様々なオン/オフ時を伴なう50%のデューティサイクルの静電結合型電場に露出された場合の、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、前記様々なBMPのmRNAの最大発現は、デューティサイクルが50%で1分間のオン/1分間のオフ状態の場合に起った。
【図6】図6は、骨細胞が、静電結合型で50%のデューティサイクルの連続信号(20mV/cm、60kHz、正弦波)と50%のデューティサイクルのパルス信号とに露出された場合の、BMP−2のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、両信号において、BMP−2のmRNAの増加は実質的に5倍であった。
【図7】図7は、骨細胞が、50%のデューティサイクルの静電結合型信号(20mV/cm、60kHz、正弦波)に24時間の間露出された場合の、BMP−2タンパク質産生およびアルカリホスファターゼ活性をグラフで示したものである。図示したように、BMP−2産生に1.9倍の増加、およびアルカリホスファターゼ活性に1/6倍の増加があった。
【図8】図8は、本発明の実施形態例に従った、骨形成タンパク質の遺伝子発現を上方制御するための装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織における骨形成タンパク質の遺伝子発現を特定的および選択的に上方制御する方法であって、
a.少なくとも1つの特定の選択的な信号を生成する工程であって、前記信号は、前記組織に印加されると、mRNAによって測定される骨形成タンパク質(BMPs)の遺伝子発現を上方制御するよう選択された信号特性を有するものである、前記少なくとも1つの特定の選択的な信号を生成する工程と、
b.前記特定の選択的な信号によって生成される電場に、所定の継続時間の間、所定の間隔で前記骨細胞を露出し、mRNAによって測定されるBMPsの前記発現を上方制御する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記生成する工程は、mRNAによって測定されるBMPsの前記遺伝子発現の前記生成電場による上方制御が実質的に増加されるまで、前記特定の選択的な信号の振幅、継続時間、デューティサイクル、周波数、および波形を選択的に変化させる工程を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記生成する工程は前記特定の選択的な信号を遠隔電源で生成する工程を有し、前記露出する工程は前記特定の選択的な信号によって生成される電場を前記骨組織に印加する工程を有するものである。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記露出する工程は、前記特定の選択的な信号を前記骨組織付近に配置された電極、コイル、またはソレノイドに印加する工程を有するものである。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記露出する工程は、前記特定の選択的な信号によって生成される電場を静電結合および誘導結合のうちの1つを介して前記骨組織に印加する工程を有するものである。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記特定の選択的な信号によって、前記電極は静電結合型電場の1つを生成し、前記コイルまたはソレノイドは、電磁場または複合場を生成するものである。
【請求項7】
骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、骨折の癒着不能、骨欠損症、脊椎固定、骨壊死、および骨粗鬆症のうちの少なくとも1つを治療する方法であって、
a.mRNAによって測定される骨形成タンパク質の遺伝子発現を上方制御する、少なくとも1つの特定の選択的な信号を生成する工程と、
b.前記特定の選択的な信号によって生成される電場に、所定の継続時間の間、所定の間隔で前記骨細胞を露出し、mRNAによって測定される骨形成タンパク質の遺伝子発現を選択的に上方制御するものである、露出する工程と
を有する方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記露出する工程は、前記電場を骨組織に静電結合する工程を有するものである。
【請求項9】
請求項7記載の方法において、前記露出する工程は、電磁場および複合場のうちの1つを骨組織に印加する工程を有するものである。
【請求項10】
請求項7記載の方法において、前記生成する工程は、約20mV/cmの振幅、正弦波形、約50%のデューティサイクル、および約60kHzの周波数を有する電場を生成する工程を有するものである。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記露出する工程は、24時間毎に約24時間の継続時間の間、前記電場を前記骨組織に印加する工程を有するものである。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記露出する工程は、50%のデューティサイクルを1分間オンおよび1分間オフにして前記電場を前記骨組織に印加する工程を有するものである。
【請求項13】
請求項7記載の方法において、前記生成する工程は、mRNAによって測定される前記骨細胞における骨形成タンパク質の前記遺伝子発現の前記生成電場による上方制御が実質的に増加されるまで、前記特定の選択的な信号の振幅、継続時間、デューティサイクル、周波数、および波形を選択的に変化させる工程を有するものである。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記露出する工程は、前記特定の選択的な信号によって生成される電場を静電結合および誘導結合のうちの1つを介して前記骨組織に印加する工程を有するものである。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記特定の選択的な信号によって、患者の皮膚に印加された電極は、静電結合型電場、電磁場、および複合場のうちの1つを生成するものである。
【請求項16】
骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、骨折の癒着不能、骨欠損症、脊椎固定、骨壊死、および骨粗鬆症のうちの少なくとも1つを治療するための装置であって、
mRNAによって測定される骨形成タンパク質の遺伝子発現を上方制御するための特定の選択的な電場を発生させる信号を少なくとも1つ提供する信号電源と、
前記信号電源に接続された電極またはコイルであって、前記少なくとも1つの特定の選択的な信号を受信して、所定の継続時間の間、所定の間隔で前記電場を前記骨組織に印加することにより、mRNAによって測定される前記骨における骨形成タンパク質の遺伝子発現を選択的に上方制御するものである、前記電極またはコイルと
を有する装置。
【請求項17】
請求項16記載の装置において、この装置は、さらに、
前記信号電源を駆動する携帯用電源装置を有するものである。
【請求項18】
請求項16記載の装置において、この装置は、さらに、
前記電極を患者の身体の骨組織の近傍に取着する手段を有するものである。
【請求項19】
請求項16記載の装置において、この装置は、さらに、
前記信号電源を前記患者の身体に取着する手段を有するものである。
【請求項20】
請求項16記載の装置において、前記少なくとも1つの特定の選択的な信号によって生成される前記電場は、静電結合および誘導結合のうちの1つを介して前記骨組織に印加されるものである。
【請求項21】
請求項20記載の装置において、前記特定の選択的な信号は正弦波形を有し、60kHzの周波数、約50%のデューティサイクルで約20mV/cmの振幅を有する電場を生成するものである。
【請求項22】
骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、骨折の癒着不能、骨欠損症、脊椎固定、骨壊死、および骨粗鬆症のうちの少なくとも1つを治療する方法であって、請求項21記載の装置によって生成される特定の選択的な電場に骨組織を露出し、mRNAによって測定される前記骨組織における骨形成タンパク質の遺伝子発現を上方制御するものである、露出する工程を有する治療方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記露出する工程は、50%のデューティサイクルを1分間オンおよび1分間オフにして24時間毎に、約24時間の間前記特定の選択的な電場を前記骨組織に印加する工程を有するものである。
【請求項24】
骨形成タンパク質を上方制御する電場を生成する選択的な信号を決定する方法であって、
骨形成タンパク質の細胞産生を増加させるとして知られている、若しくは前記細胞産生に影響を与えると推測される信号形および周波数を有する開始信号を選択する工程と、
BMP(s)を最大限に増加させる継続時間が検出されるまで、前記開始信号を印加する継続時間を選択的に変化させる工程と、
BMP(s)を最大限に増加させる振幅が検出されるまで、前記開始信号の振幅を変化させる工程と、
BMP(s)を最大限に増加させるデューティサイクルが検出されるまで、前記開始信号のデューティサイクルを変化させる工程と、
BMP(s)を最大限に増加させるオン−オフ間隔が検出されるまで、前記信号のデューティサイクルにおけるオン−オフ間隔の継続時間を変化させる工程と
を有する方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、この方法は、さらに、
mRNAによって測定されるBMPの遺伝子発現における最大限の上昇が検出されるまで、他の信号特性を一定にして、前記信号の周波数および波形を選択的に変化させる工程とを有するものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−517624(P2007−517624A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549515(P2006−549515)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/000793
【国際公開番号】WO2005/070136
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】