説明

特殊効果顔料

本発明は、光学的に薄いバインダー系で利用することができ、従来の特殊効果顔料を用いて得られる「金属薄片」外観よりも優れた「金属薄片」外観を与えることができる、混合金属酸化物をベースにした特殊効果顔料を提供する。
本発明にかかる特殊効果顔料は、マコーネルライト(Cu+Cr+O)結晶構造を呈する混合金属酸化物を、少なくとも10重量%含む。その他の金属元素は、本顔料の外観効果を変えるために、結晶格子構造に組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊効果顔料に関する。特に、本発明は、混合金属酸化物をベースにした特殊効果顔料、混合金属酸化物をベースにした特殊効果顔料を含有する組成物、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊効果顔料は、例えば、自動車用塗料、プラスチック、及びその他のコーティング及び仕上げ剤など、様々な用途において用いられる。従来の特殊効果顔料の多くは、薄く、表面処理されたベースメタル(例えば、銀やアルミニウム)の薄片もしくは無機材料(例えば、チタニア及びシリカもしくはグラファイトなどの低屈折率物質の交互層を有するマイカ)をベースとしている。前記顔料は、バインダー系もしくはポリマーに取り入れられると、個々の顔料薄片の平面が、入射光を反射する微小な鏡のような働き(すなわち、鏡面反射)をし、広視野角に亘って、光沢のある金属のような仕上がりを表面にもたらす。
【0003】
従来の効果顔料の多くにおいて、特に、マイカをベースとする効果顔料は、本質的に明るい色である傾向がある。暗色で着色されたコーティングもしくは基材を所望する場合に、前記のような従来の効果顔料を使用すると、その基材は、所望するより明るい色になったり、「色あせた」外観になり得る。さらに、マイカをベースにした大抵の効果顔料は、広視野角に亘り、比較的一様に、金属のような外観をもたらす傾向にある。しかしながら、一方で、視野角及び/又は照明角度によって基材の外観色又は効果が変化するといった特殊効果を提供できることから、狭い視野角で金属のように見える顔料が好ましいこともある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光学的に薄いバインダー系に取り入れて、特殊効果を有する外観をもたらすことのできる混合金属酸化物特殊効果顔料を提供するものである。これは、所望により、既存の特殊効果顔料を用いて達成し得る「金属薄片」よりも優れた外観とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる特殊効果顔料は、マコーネルライト結晶構造(McConnellite crystal structure)を有する混合金属酸化物を、少なくとも10重量%含むことを特徴とする。本顔料の外観効果を変化させるために、前記結晶構造に他の金属元素が組み込まれていてもよい。
【0006】
例えば、本発明の一実施態様は、意図的に添加されたマコーネルライト結晶構造を有する混合金属酸化物顔料粒子を含む組成物である。
本発明の別の実施態様は、顔料の製造方法であって、前記方法は、銅原子、クロム原子、及び酸素原子を含む前駆体化合物の混合物を調製する段階と、前記混合物を焼成して顔料を製造する段階とを含み、前記顔料が、マコーネルライト結晶構造を有する粒子を少なくとも10重量%含むことを特徴とする。本発明の別の実施態様は、ガラスエナメル組成物であって、前記ガラスエナメル組成物は、意図的に添加されたマコーネルライト結晶構造を有する粒子を含有する混合金属酸化物顔料を含むことを特徴とする。また別の実施態様は、コーティングで被覆された基材であって、前記基材が、金属、ガラス、エナメルもしくはセラミックから成る群から選択され、前記コーティングが、燃焼もしくは硬化の前に、意図的に添加されたマコーネルライト結晶構造を有する粒子を含有する混合金属酸化物顔料を含む。本発明の顔料は、釉薬及びガラスエナメルを着色するために使用することができ、所望により、それらに金属的な効果を与える。
【0007】
上記ならびに他の本発明の特徴は、以下、さらに十分に記載され、特にクレームや本発明のいくつかの代表的な実施例を詳細に説明する以下の記載において示されている。しかしながら、これらは本発明の原理が採用された多様な方法が少なからずあることを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にかかる特殊効果顔料は、マコーネルライト結晶構造を有する結晶を含む顔料バッチの形成に必要な元素を含有する前駆体化合物を、十分に乾式もしくは湿式混合し、前記前駆体化合物を焼成して顔料バッチを形成することによって製造することができる。本明細書及び添付の特許請求の範囲を通じ、「マコーネルライト結晶構造」という用語は、マコーネルライト(McConnellite)として知られる鉱物が示すものと同じ結晶であることを意図する。マコーネルライト鉱物は、通常、一般式Cu1+Cr3+を有するものとして表される。本発明において、顔料の回折パターンが、マコーネルライトとして知られる鉱物に起因するJPDSのX線回折パターン(例えば、JPDS39−0247)と実質的に類似するのであれば、銅、クロム及び酸素に加えて他の元素が本結晶中に存在してもよい。一般的に言えば、顔料バッチの形成に使用される前駆体化合物は、酸化銅(II)及び酸化クロム(III)のような金属酸化物を含む。しかしながら、形成に必要な焼成条件下で、酸化物種に分解及び/又は変換され得るものであれば、他の前駆体化合物を用いることもできる。当然のことながら、本発明の実施には、多種多様な前駆体を用いることができ、前駆体の選択それ自体重要ではないことは理解されるであろう。
【0009】
本前駆体化合物は微粉末であることが好ましく、焼成の前に、適切な比率で十分に混合される。微粉度は重要ではないが、平均粒径が約0.2ミクロン〜約5ミクロンのものが好ましい。現在市販されている標準的な顔料グレードの金属酸化物粉体及び前駆体は、通常、混合前に付加的な粉砕を施すことなく、用いることができる。混合は、乾燥状態で行うことができる。もしくは、粉体を溶液中で混合し、乾燥させ、その後、粒子凝集を粉砕する必要があれば、再度粉砕することもできる。前駆体化合物の混合物は、その後、顔料バッチ形成のために焼成することができる。
【0010】
焼成は、標準的な耐熱るつぼ、窯、もしくはその他の適した装置において行うことができる。当然のことながら、焼成は、バッチの静的加熱、もしくは、回転か焼炉を使用するなどの動的な焼成方法によって達成することができる。本発明にかかる顔料バッチを形成するのに十分な焼成は、前駆体化合物の混合物を、約600℃〜約1300℃の温度で加熱することで達成できる。本発明の現在最も好適な方法では、顔料を約10分間で周囲温度から500℃まで急速に加熱し、次いで、前駆体化合物の混合物を4時間をかけて約900℃まで徐々に加熱し、その後、約900℃に約8時間温度保持することで、焼成が達成される。本発明を実施する者であれば、広範囲の焼成温度、焼成時間、及び焼成条件が適用され得ること、また、用いられる温度及び時間が、本発明にかかるマコーネルライト相を形成するのに十分なものである限り、焼成温度及び焼成時間それ自体は重要ではないことを理解するであろう。
【0011】
本発明の実施態様の一つは、意図的に添加されたマコーネルライト結晶構造を有する混合金属酸化物顔料粒子を含む組成物である。
【0012】
本発明の別の実施態様は、顔料の製造方法であって、前記方法は、銅原子、クロム原子、及び酸素原子を含む前駆体化合物の混合物を調製する段階と、前記混合物を焼成して顔料を製造する段階とを含み、前記顔料が、マコーネルライト結晶構造を有する粒子を少なくとも10重量%含むことを特徴とする。本発明の別の実施態様は、ガラスエナメル組成物であって、前記ガラスエナメル組成物は、意図的に添加されたマコーネルライト結晶構造を有する粒子を含有する混合金属酸化物顔料を含むことを特徴とする。さらに別の実施態様は、コーティングで被覆された基材であって、前記基材が、金属、ガラス、エナメルもしくはセラミックから成る群から選択され、前記コーティングは、燃焼もしくは硬化の前に、意図的に添加されたマコーネルライト結晶構造を有する粒子を含有する混合金属酸化物顔料を含む。
【0013】
「燃焼もしくは硬化」という表現は、マコーネルライト結晶構造を有する混合金属酸化物顔料が、基材のコーティングとして組成物に組み込まれる方法であるのか、もしくは、基質に分散された顔料として組成物に組み込まれる方法であるのかを区別するために用いられる。当業者であれば、燃焼もしくは硬化を適宜選択することができるであろう。
【0014】
場合によっては、焼成後の顔料に高負荷の粉砕を施す必要はない。通常、粒子の解砕は、実験室規模では、顔料バッチをふるいに押し付けて濾すことによって達成することが可能である。この方法は、顔料を「ローニングする」(lawning)と称されることがある。粉砕媒体の有無に係らず、液体中における粉砕によっても、適当な顔料を得ることができるが、顔料粒子の板状構造を維持するためには、微粉化、空気粉砕(分級の有無に係らず)、及びローニングなどの乾式処理方法が好ましい。
【0015】
得られた顔料は、マコーネルライト結晶構造を有する結晶を、少なくとも10重量%含むと考えられる。前記顔料及びその結晶回折パターン形成に使用される前駆体化合物は、自然発生的なマコーネルライトに関して報告されている結晶構造に類似しており、これは、本結晶が、マコーネルライト結晶構造を有していることを示唆している。しかしながら、前記結晶が、マコーネルライトとは異なる構造を有することも可能である。
【0016】
本発明にかかる特殊効果顔料は、マコーネルライト結晶構造を有する粒子を、少なくとも10重量%、より好適には少なくとも約50重量%含む。顔料粒子の一部は、板状であることが好ましい。より好ましくは、顔料バッチ中の顔料粒子のほとんど全ての粒子、好適にはバッチ中の少なくとも約70重量%の粒子、より好適には少なくとも約80重量%の粒子、もっとも好適には少なくとも約90重量%の粒子が板状である。前記板状粒子のアスペクト比は、好適には少なくとも2:1、より好適には少なくとも4:1、もっとも好適には少なくとも10:1である。
【0017】
理論に拘束されることを望むものではないが、前駆体化合物中における他元素の存在は、結果として生じる顔料粒子に影響を与えると考えられる。例えば、二酸化ケイ素として提供可能なケイ素は、平らな板状結晶の成長速度を促進させると思われる。前駆体化合物の混合物中における、塩化ナトリウムのようなハロゲン化アルカリの存在は、恐らく、気相もしくは液相どちらかのメカニズムにより、板状結晶の成長を促進すると思われる。アンチモン酸ナトリウムのようなアルカリ物質もまた、板状結晶の形成に役立つと考えられる。
【0018】
通常、マコーネルライト結晶構造は、一般式Cu1+Cr3+を有するものとして表される。前駆体化合物の混合物中における銅もしくはクロム以外の元素の原子の存在が、顔料バッチ中の結晶において所望される平板状構造に悪影響を及ぼすことなく、色及び/又は外観特性が変化する結晶を形成させる傾向にある。本結晶中における他の原子の含有が、銅、クロム及び酸素のみを含有する結晶に比べ、より明色又は暗色の顔料粒子をもたらすと考えられる。適当な付加元素としては、例えば、鉄、アルミニウム、マンガン、アンチモン、錫、チタニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛及び銀が挙げられる。他の添加物としては、アルカリ及びアルカリ土類金属、半金属、希土類、遷移金属、及び非金属の元素が挙げられる。鉄やマンガンなどの元素の含有が、デラフォサイト(Delafossite)(Cu+1Fe+3)及び/又はクレドネライト(Crednerite)(Cu+1Mn+3)のような別の結晶構造の形成に寄与すると考えられる。少量のシリカ(例えば1〜5重量%)の含有が、板状粒子の形成に重要な影響を及ぼすと思われる。少量のシリカを含有して形成された顔料バッチの粒子は、少量のシリカを含有せずに形成した顔料バッチの粒子に比べ、極めて高いアスペクト比を有する傾向にある。
【0019】
本発明にかかる特殊効果顔料は、一般式ABO(式中、Aは一価金属原子であり、Bは三価金属原子である。)で表される板状粒子を含有する混合金属酸化物顔料を含む。前記顔料粒子は、板状の形態を呈することが好ましく、さらに、一般式ABO(式中、Aは銅もしくは一価の状態になり得る元素であり、Bはクロムもしくは三価の状態になり得る元素である。)で表される化学構造を有することが好ましい。前記一価原子は銅、前記三価原子はクロムであることが好ましい。さらに、マコーネルライト結晶構造を有する本粒子には、少なくとも約10重量%、より好適には少なくとも約75重量%の上記板状顔料粒子が含まれていることがより好ましい。
【0020】
銅と置換可能である適した原子は、例えば、銀及びプラチナである。クロムと置換可能である適した原子は、例えば、鉄、アルミニウム、及びマンガンである。有効な一価原子の、有効な三価原子に対するモル比率は、好適には約1:4〜約4:1、より好適には約1:2〜約2:1、もっとも好適には約1:1.5〜約1.5:1である。当然のことながら、マコーネルライト結晶構造に類似もしくは同一の結晶構造を得るには、一般式ABOにおける「A」元素の「B」元素に対するモル比が実質的に同等でなければならず、全体的な電荷の中立性を維持するために、十分な酸素原子が存在していなければならない。本発明にかかる顔料は、一価及び三価の状態になり得る金属に加え、さらに、二価もしくは四価の状態になり得る金属原子を含むこともできる。少量の二価もしくは四価の金属もしくは半金属は、結晶構造中にドープされ、結晶構造、酸素空孔、金属原子空孔、もしくは格子間位置において、他の代わりとなる価数の代替物にとって代えられると考えられる。これらの方法によって添加される元素には、上記したもの、すなわち、鉄、アルミニウム、マンガン、アンチモン、錫、チタニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛及び銀が挙げられる。その他の添加物としては、アルカリ及びアルカリ土類金属、半金属、遷移金属及びその他非ガス状の非金属元素が挙げられる。
【0021】
本発明にかかる特殊効果顔料は、基材に塗布された場合に金属薄片効果を呈する塗料及びその他のコーティングの調製における使用に特に適している。通常、顔料バッチ中の粒子の平板状の表面が、多少不規則的に、バインダー系中へ分散されると、前記粒子が光線を不規則な方向に反射して、光り輝く金属効果(glittery
metallic effect)、別名「金属薄片」効果もしくは「スパークル(sparkle)」効果として知られる効果をもたらすと考えられる。さらに、着色基材上の光学的に薄いコーティングに添加すると、視角が変化するにつれて、基材の隠蔽度を変化させることができる。この現象は、「フロップ(flop)」として知られている。通常、「光学密度」は透明度の単位であり、ある1点とその観察者との間の空間で散乱した放射線の割合として定義される。
【0022】
ある一定の波長において、光学密度は、光学素子の透過率を意味する。光学密度は、log10(1/T)(Tは透過率である。)で表される。ゆえに、「光学的に薄い」とは、放射線ビームの減衰が低いことを意味するか、もしくは、上記空間を透過する入射放射線ビームの割合が、ことによると60%以上、もしくは70%以上、80%以上、もしくはさらに90%以上などと高く、それゆえに、光学密度が例えば、40%、30%、20%もしくは10%などと低いことを意味している。
【0023】
角度の変化によって、より大きなフロップ及び色差を得るため、本顔料は、基材表面上の比較的透明な層に添加されるべきである。大きな色差(及びフロップ)が起こり得るような視角変化が生じる際に、本効果顔料の微小鏡面からの反射は最小となり、基材の色がよりはっきりする。このようなコーティングは完全に隠蔽をしていないため、「光学的に薄い」と称されることがある。
【0024】
従来の金属薄片効果顔料とは異なり、本発明にかかる特殊効果顔料は、より暗色となる傾向にあり、したがって、本顔料が分散される光学的に薄いバインダーの色、もしくは本顔料が被覆する基材の色を薄くしたり、色あせて見せたりすることはない。これによって、従来の金属薄片効果顔料を用いて得られるものよりも、暗色に着色された金属薄片のコーティングを調製することが可能となる。
【0025】
本発明にかかる特殊効果顔料は混合金属酸化物顔料であるため、当然のことながら、本特殊効果顔料は、従来の混合金属酸化物顔料が使用されている用途において用いることができる。例えば、本発明にかかる特殊効果顔料は、バルクガラス、釉薬、及び/又はガラスエナメルなどのガラス質の無機材料を含むガラス材料に、色もしくは特殊効果を与えるために用いることができる。本発明にかかる特殊効果顔料は、有機樹脂から構成されるバルク体を着色するために用いることができる。
【0026】
本発明にかかる特殊効果顔料は、金属基材の腐食を防ぐ保護層の調製における使用に適していると思われる。本特殊効果顔料は、特殊効果を付与するために、バルク加工もしくは表面加工のどちらかにおいて、セメント、石こう、もしくはスタッコに添加することができる。本発明にかかる特殊効果顔料は、インク、特に金属のような外観を発するインクの製造に用いることができる。本発明にかかる特殊効果顔料は平板状の形態であるため、対象物の表面に機械的保護をもたらすため、もしくは潤滑剤として有用である。
【0027】
本特殊効果顔料のその他の可能な使用としては、データ記憶回路基板、マイクロ波放射用結合器、及び、電磁波放射用吸収体がある。あわせて、本発明の一実施態様は電磁波放射の吸収方法であって、前記吸収方法は、燃焼もしくは硬化前に、銅及びクロムを含有する焼成混合金属酸化物粒子を含む混合物の製剤を基材に塗布する段階と、前記混合物を燃焼もしくは硬化させて前記基材上に顔料コーティングを形成する段階と、前記顔料コーティングを電磁波放射にさらす段階とを含むことを特徴とする。好適な実施態様においては、本方法は、400nmより短い波長を有する放射線を吸収する顔料コーティングを含む。より好適な実施態様においては、本方法は、紫外線放射線を吸収する顔料コーティングを含む。
【0028】
本顔料において、レーザーマーキング用途における実用性を試験したところ、そのような用途に適していると思われた。レーザーエネルギーを伴う放射の強さ及び時間を変化させることで、銀色から青銅色、次いで黒色へといった色の範囲にわたって、様々に着色されたマーキングを施すことができる。
【0029】
本発明にかかる特殊効果顔料は、さらに、必要に応じて、個々の顔料粒子上に、(例えば、銀もしくはアルミニウムなどの金属で被覆するなどして、)全体的もしくは部分的な鏡面仕上げを施すことができる。さらに、本顔料は、個々の顔料粒子上に干渉層を作るため、異なる屈折率を有する、1層以上の透明層もしくは半透明層で被覆することができる。
【0030】
本発明の顔料及びコーティングの用途には、燃焼もしくは硬化されたコーティングを含む電子部品があり、前記コーティングは、燃焼もしくは硬化に先立ち、本願に記載された任意の顔料組成物を含有している。本発明の任意の混合金属酸化物顔料を含む半導体は、太陽電池に用いてもよい。前記半導体の混合金属酸化物は、少なくとも1種のドーパント原子を含み、好適には一つのドーパントが約1モル%を超えないことが好ましい。また、前記半導体の混合金属酸化物は、マコーネルライト結晶構造を有する。その他の用途は、被覆された金属基材であって、前記金属基材を被覆するコーティングは、燃焼もしくは硬化の前に、バインダー系及びそのバインダー系に分散した顔料を含み、前記顔料は、マコーネルライト結晶構造を有する粒子を含む。自動車の車体パネルなどの金属基材は、マコーネルライト結晶構造を有する粒子を含む顔料含有の組成物(例えば塗料など)で被覆することができる。マコーネルライト結晶構造を有する本混合金属酸化物顔料は、また、高周波遮へいに有用なコーティングを作るために用いることもできる。
【実施例1】
【0031】
下記の実施例は、いかなる方法においても制限されることなく、本発明を説明することを意図したものである。実施例で挙げられた全ての原材料は、表示のない限り、標準的な顔料グレードの粉体である。
【0032】
実施例1。下記表1記載の量の原料を、高負荷のミキサーで混合し、その後、得られた混合物を、500℃〜900℃で4時間窯で加熱し、その温度を900℃で8時間保持して、特殊効果顔料(SEP)1〜6をそれぞれ調整した。
【表1】

【0033】
加熱後、窯から顔料を取り出し、冷却させた。全ての顔料が、銀色がかった色の、金属のような輝きを呈した。粒子凝集は、28メッシュふるいに顔料を押し付けて分解した。
【実施例2】
【0034】
本発明にかかる特殊効果顔料で得られる外観と、従来の金属薄片顔料で得られる外観との差を比較するために、3種類の塗料製剤を調製した。出願人はその塗料製剤の組成を知らず、該組成は、秘密保持契約の条件に従って製剤を調製した顧客独自のものであると考えられる。出願人は、3つの同じ紫色塗料ベースが、本塗料製剤の調製に用いられたと考えている。第一の塗料製剤では、3重量%の従来のマイカをベースにした「金属薄片」顔料を、紫色塗料ベースに混合した。第二の塗料製剤では、第一の塗料製剤に使用されたのと同じ従来のマイカをベースにした「金属薄片」顔料を1.5重量%と、実施例1のSEP6を1.5重量%とを、紫色塗料ベースに混合した。第三の塗料製剤では、3.0重量%の実施例1のSEP6を紫色塗料ベースに混合した。
【0035】
3種類全ての塗料製剤を、白領域と黒領域を含む試験紙の異なる部分へそれぞれ噴霧によって塗布した。図7は、塗布された試験紙の一部のカラー写真である。7A及び7Bと記された区画は、それぞれ、試験紙の白領域及び黒領域上における、従来のマイカベース顔料を含有する第一塗料製剤である。7C及び7Dと記された区画は、それぞれ、試験紙の白領域及び黒領域上における、従来のマイカベース顔料とSEP6を1:1で含有する第二塗料製剤である。そして、7E及び7Fと記された区画は、それぞれ、試験紙の白領域及び黒領域上における、SEP6含有の第三塗料製剤である。
【0036】
図7は、SEP6が、紫色塗料ベースの色をより明るい色にさせていないことを示している。言い換えれば、紫色塗料ベースは色あせを起こしていない。様々な照明条件で試験紙を調べた結果、SEP6含有の第三塗料製剤は、マイカをベースにした特殊効果顔料含有の第一塗料製剤に比べ、より広い範囲の視角及び照明条件において、一様に、見た目がより美しい「金属薄片」の外観を呈していることがわかった。
【0037】
付加的な利点及び変更は当業者に容易であろう。よって、その広範な態様において本発明はここに示され記載される特定の詳細や例示された実施例に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物により定義される発明の概念全般の精神あるいは範囲から逸脱せずに、多様な変更を行ってよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1A〜1Dは、本発明にかかる特殊効果顔料を、それぞれ、1,400倍、2,800倍、5,600倍、及び14,000倍に拡大した走査電子顕微鏡写真である。
【図2】図2A〜2Dは、本発明にかかる別の特殊効果顔料を、それぞれ、1,400倍、2,800倍、5,600倍、及び14,000倍に拡大した走査電子顕微鏡写真である。
【図3】図3A〜3Dは、本発明にかかるさらに別の特殊効果顔料を、それぞれ、1,400倍、2,800倍、5,600倍、及び14,000倍に拡大した走査電子顕微鏡写真である。
【図4】図4A〜4Dは、本発明にかかるさらに別の特殊効果顔料を、それぞれ、1,400倍、2,800倍、5,600倍、及び14,000倍に拡大した走査電子顕微鏡写真である。
【図5】図5A〜5Dは、本発明にかかるさらに別の特殊効果顔料を、それぞれ、1,400倍、2,800倍、5,600倍、及び14,000倍に拡大した走査電子顕微鏡写真である。
【図6】図6A〜6Dは、本発明にかかるさらに別の特殊効果顔料を、それぞれ、1,400倍、2,800倍、5,600倍、及び14,000倍に拡大した走査電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、従来の金属薄片効果顔料のみを含有する塗料製剤、従来の金属薄片効果顔料と本発明にかかる特殊効果顔料との混合物を含有する塗料製剤、及び、本発明にかかる特殊効果顔料のみを含有する塗料製剤で塗られた塗料試験紙の写真である。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図6D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
意図的に添加された混合金属酸化物顔料粒子を含む組成物であって、前記粒子はマコーネルライト結晶構造(McConnellite crystal structure)を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記顔料が、マコーネルライト結晶構造を有する前記粒子を少なくとも10重量%含むことを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物において、前記顔料が、マコーネルライト結晶構造を有する前記粒子を少なくとも50重量%含むことを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物において、マコーネルライト結晶構造を有する前記粒子が、板状の形態であることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物において、マコーネルライト結晶構造を有する前記粒子が、2:1を超えるアスペクト比を有することを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物において、前記混合金属酸化物顔料が、一般式ABO(式中、Aは一価金属原子であり、Bは三価金属原子である。)で表される板状粒子を含むことを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物において、前記一価金属原子が、銅、銀及びプラチナから成る群から選択され、前記三価金属原子が、クロム、アルミニウム、鉄及びマンガンから成る群から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物において、前記粒子は、さらに、二価原子及び四価原子、及びそれらの組合せから成る群から選択される一種を含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
燃焼もしくは硬化されたコーティングを含む電子部品であって、前記コーティングが、燃焼もしくは硬化の前に、請求項1に記載の組成物を含んでいることを特徴とする電子部品。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物において、前記粒子は、銀金属、アルミニウム金属、前記粒子とは異なる屈折率を有する透明コーティング、前記粒子とは異なる屈折率を有する半透明コーティング、及びそれらの組合せから成る群から選択される物質で被覆されることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を含有する半導体を含む太陽電池であって、前記混合金属酸化物が、さらに、約1モル%を超えない量のドーパントを含むことを特徴とする太陽電池。
【請求項12】
バインダー系中に分散された請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とする製剤。
【請求項13】
コーティングを含む被覆金属基材であって、前記コーティングが、硬化もしくは燃焼の前に、請求項12に記載の製剤を含んでいることを特徴とする基材。
【請求項14】
硬化の前に、請求項12に記載の製剤を含んでいることを特徴とする自動車車体パネル。
【請求項15】
顔料の製造方法であって、
(a)銅原子、クロム原子、及び酸素原子を含む前駆体化合物の混合物を調製する段階、及び
(b)前記混合物を焼成して顔料を製造する段階とを含み、
前記顔料が、マコーネルライト結晶構造を有する粒子を、少なくとも10重量%含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記前駆体化合物の混合物が、さらに、ケイ素原子を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、前記前駆体化合物の混合物が、さらに、ハロゲン化アルカリ化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
意図的に添加された混合金属酸化物顔料を含むガラス質無機組成物であって、前記顔料はマコーネルライト結晶構造を有する粒子を含むことを特徴とする組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の組成物において、前記混合金属酸化物顔料が、前記組成物全体に分散されていることを特徴とする組成物。
【請求項20】
コーティングで被覆された基材であって、
前記基材が、金属、ガラス、エナメル、もしくはセラミックから成る群から選択され、
前記コーティングが、燃焼の前に、意図的に添加されたマコーネルライト結晶構造を有する粒子を含む混合金属酸化物顔料を含んでいることを特徴とする基材。


【図7】
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【公表番号】特表2009−544820(P2009−544820A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521975(P2009−521975)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/074301
【国際公開番号】WO2008/014309
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(503468695)フエロ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】