狂犬病糖タンパク質を発現するアライグマポックスウイルス
本発明は、ポックスウイルスゲノムの血球凝集素(ha)遺伝子座に、狂犬病ウイルス糖タンパク質遺伝子を発現するか、またはポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座に、同一または異なる狂犬病株の糖タンパク質遺伝子を発現する組換えアライグマポックスウイルスベクター、およびアジュバント不含ワクチンとしてのその使用に関する。アライグマポックスウイルスベクターは、ポックスウイルスゲノムのtk遺伝子座に挿入され、発現されるChallenge Virus Standard狂犬病株の糖タンパク質、およびポックスウイルスゲノムのha遺伝子座に挿入され、発現されるPasteur−Paris狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸分子を含む。ワクチンは、動物の免疫化のためのさらなるネコおよびイヌ抗原の混合物を場合により含んでもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座に挿入された、少なくとも2つの異なる狂犬病株の狂犬病糖タンパク質遺伝子を独特に発現する組換えアライグマポックスウイルスベクターに関する。本発明は、狂犬病ウイルスによって引き起こされる神経疾患および死亡の予防においてワクチンとして有用である。
【背景技術】
【0002】
狂犬病ウイルスは、ラブドウイルス科のマイナス鎖極性を有する、非分割型の、一本鎖、直鎖RNAラブドウイルスまたはリッサウイルスであり、一方の末端が、球形または円錐体であり、もう一方の末端が平面状であるかまたは凹面の形である砲弾様の形を有する。ウイルス粒子の球形または円錐体の末端は、糖タンパク質Gからなるノブ様スパイクを含むリポタンパク質外被を有する。コア構造の周囲の脂質膜またはウイルスの外被は、糖タンパク質Gに加え、基質タンパク質(M)からなる第2の内層を有する。外面糖タンパク質Gは、細胞接着に関与しており、狂犬病ウイルスの毒性または病原性ならびに宿主免疫応答に関与している抗原物質として同定されている。
【0003】
若干の例外はあるものの、狂犬病は、常に、ヒトおよび動物に致命的な神経疾患をもたらし、世界的な公衆衛生における大きな懸念のままである。狂犬病に起因するヒトの死の大部分は、アフリカ、アジアおよび南アメリカで起こっているが、狂犬病の流行は、最近、急速に増加している感染アライグマの集団のために、米国においても問題になっている。懸念されるその他の一次ウイルスキャリアとして、中西部州に多いスカンク、および米国におけるほとんどのヒト症例における主な供給源であるコウモリがある。アライグマ、スカンク、キツネ、オオカミなどといった感染野生動物に加え、ヒトは、通常、感染しているイヌおよびネコの咬傷によって狂犬病に感染する。イヌは、イヌ狂犬病が風土性であるアフリカおよびアジアにおいて狂犬病ウイルスの主要な宿主であり続け、世界中で、依然として、狂犬病に起因するヒトの死亡のほとんどに関与している。したがって、人類にとって特に重要なことは、イヌ、ネコおよびフェレットなどの家庭内ペットにおける狂犬病ウイルス感染を防ぐことである。
【0004】
Louis PasteurおよびEmile Rouxが、1885年に最初の狂犬病ワクチン接種を開発した。初期の神経組織由来ワクチンは、感染ウサギから採取し、乾燥させて病原性を減弱させたウイルスサンプルからなる。発展途上国の中には、同程度の神経組織狂犬病ワクチンを依然として使用する国もあり、それらは、現代の細胞培養ワクチンよりもかなり費用がかからないが、有効性では程遠く、神経学的副作用の重大な危険を伴う。
【0005】
1967年に、ウイルスの弱毒化されたPitman−Moore L503株を用いてヒトワクチン接種のためのヒト二倍体細胞狂犬病ワクチン(HDCV)が開発された。現在市場で入手可能なものは、あまり費用がかからない、高度精製ニワトリ胚培養ワクチン(PCEC)および精製ベロ細胞狂犬病ワクチンである。後者のベロ細胞培養ワクチンは、狂犬病ウイルスの弱毒化されたWistar株を用いるが、ベロ細胞株はその宿主である。弱毒化にもかかわらず、ベロ細胞培養ワクチンは、毒性へ復帰する可能性を有する。その結果、狂犬病ワクチンの調製は、不活化プロセスで生き残った狂犬病ウイルスの結果としての株によるウイルス感染の偶発的な播種を避けるよう、作業者による細心の注意を必要とする。PCECワクチンは、卵またはニワトリに対するアレルギーを有するものには与えることができないという不利点が追加される。ワクチンにおいて、生存している狂犬病ウイルスを操作、製造または使用するのが、さらに困難であることはは、製薬および獣医学の技術分野の当業者にはよく知られている。
【0006】
従来の狂犬病ウイルスワクチンの不利点を考慮して、研究は、組換えアライグマポックスウイルスの使用および狂犬病ウイルス糖タンパク質遺伝子などの外来遺伝子を、アライグマポックスウイルスのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入することを目的としてきた。組換えアライグマポックスウイルスの特定の初期構築物は、外来ウイルスの抗原物質または外来DNAを発現し、イヌおよびネコなどのその他の動物において宿主防御免疫応答を誘発できることがわかった。しかし、ワクチンとして有用である、安全で、有効な組換えアライグマポックスウイルスの構築は、複雑な事柄であり、考慮しなければならない多数の因子と関わっている。特に、既知tk遺伝子座を超えた種々の領域に挿入された、外因性または外来遺伝子の位置が異なる組換えアライグマポックスウイルスを作製する能力ならびに機能的外来抗原DNA断片の特定の選択には、得られた組換えポックスウイルスの安定性、安全性および効力を調べるための相当な実験研究が必要である。したがって、商業的に実現可能な組換えアライグマポックスウイルスワクチンを得るためのいくつかの試みは、家畜ワクチンの分野に多くの努力を集中してきた。
【0007】
そのため、ワクチンとしての組換えアライグマポックスウイルスという主題に関して相当な量の公開された情報がある。例えば、より最近、米国特許出願第2005/0282210号に、アライグマ狂犬病のための、経口の遺伝子組換えウイルスワクチンが記載された。狂犬病ウイルスの外被においてタンパク質を産生する遺伝子を、組換えDNA技術を用いて生存ワクシニアウイルスに挿入した。改変ワクシニアウイルスは、正常な動物に感染すると、通常、狂犬病ウイルスによって作製される抗原性タンパク質を産生する。犠牲者の生物系は、このタンパク質を外来と認識し、この動物は、能動免疫を発達させる。具体的には、ワクシニアのウイルスベクターゲノムに挿入された狂犬病表面糖タンパク質遺伝子を包含する含むウイルスのベクターからなる組成物を投与することを含むスカンクまたはマングースにおいて免疫応答を誘発する方法について、特許出願第2005/0282210号は書かれている。この開示内容は、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子で発現される予定のポリヌクレオチドもしくは複数のポリヌクレオチドの可能性ある挿入部位もしくは挿入部位、血球凝集素(ha)遺伝子もしくは挿入部位、またはワクシニアウイルスのA型の封入体(ATI)をコードする領域、カナリアポックスウイルスの場合には、ORF(複数可)C3、C5および/またはC6、鶏痘ウイルスの場合にはC6、ORF F7および/またはF8を示唆するが、この文書は、狂犬病糖タンパク質GがERA株に由来し、ワクシニアのtk部位にのみ挿入される挿入されるワクシニアウイルスベクターの使用を例示するだけである。
【0008】
米国特許第7,074,413号には、非神経浸潤性狂犬病株の糖タンパク質を、streetまたは神経浸潤性狂犬病ウイルスのものと置換して、ワクチン接種のための弱毒化された組換え狂犬病ウイルスを作製することまたはアポトーシス促進性タンパク質を発現する組換え狂犬病ウイルスを構築することによる組換え狂犬病ウイルスワクチンの設計が開示されている。
【0009】
米国特許第6,719,981号には、Street Alabama Dufferin株(SAD D29)の組換え狂犬病ウイルス突然変異体が、ウイルスゲノムのGタンパク質中に突然変異を含み、前記突然変異が、Arg333をコードするAGAコドンのGACコドンとの特定の置換を含む、弱毒化された狂犬病ウイルス突然変異体および前記突然変異体を含む生存弱毒化抗狂犬病ワクチンが示されている。
【0010】
米国特許第6,294,176号は、アライグマポックスウイルスゲノムのHind III「U」ゲノム領域、HindIII「M」ゲノム領域またはHind III「N」ゲノム領域内の非必須領域挿入された外来DNA配列を含むアライグマポックスウイルスゲノムからなる組換えアライグマポックスウイルスワクチンに関する。アライグマポックスウイルスゲノムは、ウイルスゲノムのアライグマポックスウイルス宿主域遺伝子に欠失を含有すると特許に記載されている。この特許は、アライグマポックスウイルスゲノムに外来DNA配列を挿入することによって、組換えアライグマポックスウイルスを作製するための相同ベクターを提供する。組換えアライグマポックスウイルスは、狂犬病ウイルスに由来する抗原性ポリペプチドをコードする外来DNAを含み得るということが広く示唆されるが、それに関連する例証はない。さらに、DNA配列分析によって、特許権所有者によって開示されるHindIII「U」ゲノム領域は、組換えアライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素(ha)挿入および/またはチミジンキナーゼ(tk)領域ではないということが示されている。
【0011】
米国特許第6,241,989号およびその継続米国特許第7,087,234号は、チミジンキナーゼ遺伝子または血球凝集素遺伝子のいずれかに挿入された2つ以上の外因性遺伝子を含有している多価組換えアライグマポックスウイルスを扱っている。これらの特許に開示されるのは、ネコをネコ病原体に対して免疫化するワクチンとしての多価組換えアライグマポックスウイルスの使用である。また、外因性遺伝子が挿入される挿入ベクターの構築および挿入された遺伝子およびアライグマポックスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子または血球凝集素遺伝子中に組換えることができる配列をフランキングすること、ならびに外因性遺伝子を含有する挿入ベクターおよびアライグマポックスウイルスの両方を感受性宿主細胞に導入すること、ならびに得られたプラークから組換えアライグマポックスウイルス選択することを含む組換え法によって、多価組換えアライグマポックスウイルスを作製する方法も開示されている。この特許の、多価の、組換えアライグマポックスウイルスは、ネコ細胞に感染し、複製することができ、ウイルス複製に必須でないアライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子またはチミジンキナーゼ遺伝子からなる領域に挿入され、各々、ネコ病原体抗原をコードする、2つ以上の外因性遺伝子を含む。これらの特許には、ネコ白血病ウイルス(FeLV Env)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV Gag)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV Env)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV M)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV N)、ネコカリシウイルス(FCV キャプシドタンパク質)、ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPV VP2)および狂犬病−Gなどのネコ病原体抗原をコードする外因性遺伝子が記載されている。
【0012】
米国特許第6,241,989号および同第7,087,234号では、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子および血球凝集素(ha)遺伝子の両方とも、組換えによる外因性遺伝子の挿入のために使用できることが示唆されており、具体的な例は、フランキングされたワクシニアウイルスtk遺伝子配列の相同組換えおよびha遺伝子に挿入されたFCVキャプシドタンパク質遺伝子を含有する別個の相同組換えアライグマポックスウイルスによって、多価RCNVベースの組換えFPV VP2および狂犬病ウイルス(RCNV/FPV/RAB−G)を作製する方法を単に示すものである。チミジンキナーゼおよび血球凝集素遺伝子の両方に複数の外来抗原性物質を含有する組換えアライグマポックスウイルスを構築および/または使用する方法を教示する特許請求または例示はない。さらに、これらの特許は、アライグマポックスウイルスゲノムのha部位に挿入された狂犬病ウイルス糖タンパク質遺伝子を有する組換え構築物は全く教示または開示しない。
【0013】
米国特許第6,106,841号は、動物を異種抗原に対して免疫化する方法に関する。この方法には、動物に結膜経路によって、異種抗原をコードする核酸分子を有する組換えアライグマポックスウイルスを含む組成物を投与することが記載されている。抗原は、カリシウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、免疫不全ウイルス、感染性腹膜炎ウイルス、白血病ウイルス、パルボウイルス抗原、狂犬病ウイルス、バルトネラ、エルシニア、イヌ糸状虫、トキソプラズマ、ノミ抗原またはノミアレルゲン、小昆虫抗原またはアレルゲン、ダニ抗原またはアレルゲンおよび腫瘍抗原として記載されている。この特許は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターロイキン、インターフェロンγなどといった免疫調節物質をコードする核酸分子を含む組換えアライグマポックスウイルスをさらに開示している。それにはまた、チミジンキナーゼ、血球凝集素、セルピン、サイトカイン受容体およびインターフェロン受容体遺伝子から選択されるアライグマポックスウイルス遺伝子中に異種核酸分子を有し、異種核酸分子が、p11ポックスウイルスプロモーター、p7.5ポックスウイルスプロモーターまたは合成ポックスウイルスプロモーターからなる転写制御配列に作動可能に連結した組換えアライグマポックスウイルスゲノムを使用する方法も記載されている。
【0014】
米国特許第6,024,953号には、狂犬病の抗原性糖タンパク質をコードするDNA配列のすべてまたは一部を含むワクシニアウイルスが記載されている。特に、この特許は、7.5Kワクシニアウイルスプロモーターの制御下のワクシニアチミジンキナーゼ(tk)遺伝子に挿入されている狂犬病糖タンパク質Gのアミノ酸配列をコードするDNA配列を含有するハイブリッドワクシニアウイルスおよびハイブリッドワクシニアウイルスと、製薬上許容される担体とからなる狂犬病予防および治療するワクチンを開示する。
【0015】
米国特許第5,348,741号は、ワクシニアP11後期プロモーターに作動可能に連結した狂犬病ウイルス糖タンパク質G遺伝子を含む組換えDNAを用いて構築されているプラスミドベクターを扱っている。狂犬病ウイルス糖タンパク質G遺伝子は、Challenge Virus Standard株に由来している。遺伝子およびプロモーターは、ワクシニアまたは牛痘ウイルスベクターのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入される。この特許には、組換えワクシニアウイルスは、細胞において狂犬病ウイルス糖タンパク質の遺伝子を発現し、狂犬病に対する免疫化のための糖タンパク質の産生を誘導すると記載されている。この特許は、組換えウイルスは、抗狂犬病ワクチンの製造および研究または診断目的のG抗原抗体および関連免疫学的試薬の製造に適用できることを示す。特に、この特許は、狂犬病ウイルス糖タンパク質G遺伝子を、tk遺伝子座付近の任意のその他の部位に挿入することを記載しておらず、アライグマポックスウイルスをベクターとして使用することの示唆は全く与えていない。
【0016】
初期のDNA狂犬病ワクチンは、米国特許第5,830,477号に記載されており、これは、狂犬病の抗原性糖タンパク質をコードするDNA配列のすべてまたは一部を含むワクシニアウイルスに関する。この特許は、アミノ酸配列狂犬病糖タンパク質GをコードするDNA配列を含み、発現し、DNA配列が、ワクシニアウイルスの非必須セグメント中に存在するハイブリッドワクシニアウイルスと、製薬上許容される担体とからなる、哺乳動物において狂犬病を予防または治療するための経口ワクチン関する。具体的には、この特許は、狂犬病糖タンパク質Gが、7.5Kワクシニアプロモーターの制御下にあり、ワクシニアチミジンキナーゼ(tk)遺伝子中に存在するハイブリッドワクシニアウイルスワクチンを単に例示するものである。
【0017】
米国特許第5,266,313号は、アライグマポックスウイルスの、異種生物の配列をコードするヌクレオチドの挿入および発現の基質としての使用に関する。この特許には、アライグマポックスウイルスDNAと、チミジンキナーゼ(tk)挿入不活化によるワクシニアウイルス組換え体の製造に使用するためのキメラプラスミド間の相同組換えによって、狂犬病ウイルス表面スパイク糖タンパク質(G)を発現する、2つの感染性アライグマポックスウイルス組換え体の製造が記載されている。
【0018】
また、プロモーター、すなわち、挿入され、組換えベクターによって発現されている外来遺伝子または外因性遺伝子物質を含む外来遺伝子タンパク質コード配列とともに使用されるプロモーターなどの遺伝子の転写を正に調節する配列の一般的な使用に関するこれまでの特許が、本発明の背景材料として注目される。例えば、米国特許第6,998,252号は、ポックスウイルスにとって外来であるポリペプチドをコードする第1のDNA配列と、ポックスウイルス転写調節配列とを含み、転写調節配列がDNA配列に隣接しており、DNA配列に転写制御を及ぼし、セグメントが組換えポックスウイルスの非必須ゲノム領域内に位置するワクシニアなどの組換えポックスウイルスに関する。ワクシニアウイルスの7.5Kポリペプチド遺伝子(7.5K遺伝子)に由来するプロモーターと、外来タンパク質コード配列の挿入のための制限エンドヌクレアーゼ部位と、フランキングDNAとして中断されたワクシニアウイルスチミジンキナーゼ(tk)遺伝子とを含有するプラスミドの構築が示されている。
【0019】
米国特許第7,045,313号は、同様に、ワクシニアウイルスまたはその他のポックスウイルスを、外来遺伝子の発現のためのベクターとして使用するための方法および組成物に関し、これでは、発現は、in vitroでワクシニアウイルス転写調節配列を、中断されていない外来タンパク質コード配列と組み合わせて、キメラ遺伝子を形成することによって得られる。この特許では、キメラ遺伝子が、ワクシニアウイルスゲノムの非必須領域に由来するDNAによってフランキングされて、in vivo相同組換えのための部位を提供する方法が示されている。これらの工程は、外来タンパク質コード配列の挿入のためにワクシニア転写調節配列の隣に、複数の制限エンドヌクレアーゼ部位を含むプラスミドの構築によって、特許の開示内容において促進される。この特許では、ワクシニアウイルスにとって外来であるポリペプチドをコードする第1のDNA配列と、ワクシニアウイルスプロモーター配列とからなるセグメントを含み、前記プロモーター配列が前記の第1のDNA配列と隣接しており、前記の第1のDNA配列に転写制御を及ぼし、前記セグメント、ワクシニアゲノムの非必須領域に由来するDNAをフランキングするプラスミドがさらに示されている。具体的には、プロモーター配列は、ワクシニアウイルスにおいて、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子または7.5Kポリペプチドをコードするワクシニア遺伝子を調節するものである。それには、DNAを細胞に導入するためのトランスフェクション手順が示されており、その細胞で、相同組換えの結果、キメラ遺伝子がワクシニアウイルスゲノムの非必須領域へ挿入される。
【0020】
また、当技術分野で公知の標準プロモーターに関連して、米国特許第7,208,313号は、負のチミジンキナーゼ(tk)表現型および負のワクシニアウイルス増殖因子表現型を用いて作製されるワクシニアウイルス発現ベクターに関する。外来遺伝子は、ワクシニアウイルスプロモーターの制御下に置かれ、突然変異ワクシニアウイルスのゲノムに組み込まれる。あるいは、発現は、ワクシニアプロモーターによって制御される遺伝子を含有するシャトルベクターまたはプラスミドを、ワクシニアウイルスに感染している細胞にトランスフェクトすることおよび相同組換えによって外因性配列を導入することによって達成され得る。
【0021】
合成初期−後期ワクシニアウイルスプロモーターが、米国特許第6,183,750号;同第7,067,248号、その他に示されている。米国特許第6,183,750号には、ヘルペスウイルスに由来する外来DNAおよびDNAを発現するためのこのDNAに作動可能に連結したプロモーターを含有する、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルスまたはカナリアポックスウイルスなどの組換えポックスウイルスが記載されており、これでは、プロモーターはDNAの開始コドンに重ねられているか、連結されている。プロモーター−遺伝子連結は、連結が、両末端で、非必須遺伝子座を含有するポックスDNAの領域をフランキングするDNA配列と相同なDNAによってフランキングされるように、プラスミド構築物中に位置している。挿入されたDNAの発現のための条件は、挿入されたDNAと適当な関係にあるプロモーターの存在であり、すなわち、プロモーターは、発現される予定のDNA配列から上流に位置するように置かれるべきである。米国特許第7,067,248号は、合成初期−後期プロモーターを使用して、ワクシニアウイルスから基質タンパク質を発現する方法をさらに示す。非特許文献1を参照のこと。
【0022】
本発明の背景と関連するその他の物質は、以下の文献引用に見ることができる:
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
従来の不活化狂犬病ワクチンと比較して、安全かつ有効で、アジュバントを含まないアライグマポックスウイルスベクターによる狂犬病ワクチンの開発の成功は、ネコにおけるアジュバント関連肉腫副作用を回避すること、ワクチン製造の間の従事者の安全を確実にすること、商業的製造に用いられる不活化および汚染除去手順を生き残る狂犬病ウイルスのいかなる機会も完全に排除することにおいて重要な利点をもたらす。ペットを狂犬病ウイルスに感染することから適切に保護し、順に、それらのヒトの飼い主を致命的な感染から保護する、家庭用ペットのための安全で、有効な狂犬病ウイルスワクチンに対する技術分野で認識される必要性は、依然として存在する。また、狂犬病を予防するための実行可能な方法および哺乳動物における有害な神経学的影響の回復も必要である。
【0025】
前述の目的は、本明細書に記載される狂犬病ワクチンの新規アライグマポックスウイルスベクター構築物の形の、イヌおよびネコにおいて長期間持続する免疫をもたらす、安全で、有効な組換え狂犬病ワクチンを提供することによって達成される。
【0026】
本明細書に引用されるすべての特許および刊行物は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】S.Chakrabartiら、「Compact,Synthetic,vaccinia virus early/late promoter for protein expression」、BioTechniques23:1094〜1097頁(1997年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、そのもっとも広い態様では、各々、少なくとも1つの狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、2つ以上の外因性核酸分子を含み、少なくとも2つの核酸分子が血球凝集素(ha)遺伝子座またはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入されており、または、少なくとも1つの核酸分子が、血球凝集素およびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入されており、抗原が少なくとも2つの異なる狂犬病ウイルス株に由来し得る、新規の、高度に免役原性の組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)を提供する。2つの外因性核酸が、同一の遺伝子座に挿入される場合には、それらは連続であってもよいし、介在する配列によって分離していてもよい。新規組換えアライグマポックスウイルスベクターワクチンは、ポックスウイルスゲノムの血球凝集素(ha)遺伝子座で、もしくはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座で、またはポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座の両方で、狂犬病ウイルスの外因性または外来糖タンパク質遺伝子を発現し得る。本発明の新規の、高度に好ましい組換えウイルス構築物が、それぞれ、tkおよびha遺伝子座で、Challenge Virus Standard(CVS)およびPasteur−Paris(PV)株の狂犬病糖タンパク質(G2)を発現することが都合がよい。狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする核酸分子の供給源は、狂犬病ウイルスの同一株に由来してもよいが、少なくとも2つの異なる狂犬病株の遺伝子が、ポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座に挿入されることが好ましい。本発明の広域性組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アジュバント不含ワクチンとして有用である。組換えワクチンは、動物の有効な免疫化ためにその他のネコおよびイヌ抗原の混合物を含み得ることが望ましい。また、哺乳動物に有効免役量の本発明のワクチンを投与することを含む、哺乳動物において狂犬病に対する免役応答を誘導する方法も開示される。
【0029】
したがって、本発明の第1の態様は、各々少なくとも1つの狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、2つ以上の外因性核酸分子を含み、少なくとも2つの核酸分子が、血球凝集素(ha)遺伝子座もしくはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入されているか、または少なくとも1つの核酸分子が、血球凝集素およびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入されている、組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)を提供する。
【0030】
一実施形態では、組換えアライグマポックスウイルスベクターによる構築物は、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼおよび血球凝集素遺伝子座に加えて、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位に、挿入された狂犬病糖タンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0031】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位は、セリンプロテアーゼ阻害剤部位である。
【0032】
一実施形態では、狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする2つの核酸分子は、狂犬病ウイルスの同一株から単離される。
【0033】
一実施形態では、狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする2つの核酸分子は、狂犬病ウイルスの異なる株から単離される。
【0034】
一実施形態では、狂犬病ウイルス糖タンパク質の供給源は、Challenge Virus Standard 狂犬病株、Pasteur−Paris狂犬病株、イヌ狂犬病streetウイルス、ホッキョクギツネ狂犬病ウイルス、アライグマ狂犬病ウイルスおよびコウモリ狂犬病ウイルスからなる群から選択される。
【0035】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入される糖タンパク質をコードする核酸分子は、Challenge Virus Standard狂犬病株に由来するものである。
【0036】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座に挿入される糖タンパク質をコードする核酸分子は、Pasteur−Paris狂犬病株に由来するものである。
【0037】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスは、生存しており、複製可能である。
【0038】
一実施形態では、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼおよび血球凝集素遺伝子座に加え、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位に挿入される狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0039】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位は、セリンプロテアーゼ阻害剤部位である。
【0040】
本発明の第2の態様は、免疫学的に有効な量の、本明細書に記載されるいずれか1つの組換えアライグマポックスウイルスベクターと、場合により好適な単体または希釈剤とを含む組換え狂犬病ワクチンを提供する。
【0041】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、免疫学的に有効な量の2つ以上の、本明細書に記載される組換えアライグマポックスウイルスベクターと、場合により、好適な担体または希釈剤とを含む。
【0042】
一実施形態では、多価ワクチンは、1つのベクター構築物しか含まない。
【0043】
一実施形態では、本発明は、1つ以上の核酸分子を含み、各々の核酸分子が狂犬病抗原をコードし、
a)少なくとも1つの核酸分子がアライグマポックスウイルスノムの血球凝集素遺伝子座もしくはチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されているか、または
b)少なくとも2つの核酸分子がアライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座またはもしくはチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されているか、または
c)少なくとも1つの核酸分子が血球凝集素遺伝子座に挿入されており、かつ、少なくとも1つの核酸分子がアライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されている、
組換え狂犬病ワクチンを提供する。
【0044】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、ネコカリシウイルス、ネコクラミジア(Chlamydophila felis)、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルスおよびバルトネラ菌からなる群から選択される1つ以上のネコ抗原との混合物をさらに含む。
【0045】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、エーリキ・カニス(Ehrlichia canis)、イヌパルボウイルス、イヌジステンパー、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌアデノウイルスII型、イヌアデノウイルス、イヌコロナウイルス、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohemorrhagiae)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・グリッポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(Leptospira Pomona)からなる群から選択される1つ以上のイヌ抗原との混合物をさらに含む。
【0046】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、アジュバントを含まない。
【0047】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、アジュバントをさらに含む。
【0048】
一実施形態では、アジュバントは、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む。
【0049】
本発明の第3の態様は、哺乳動物に有効免疫量の本明細書に記載される任意のワクチンを投与することを含む哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0050】
一実施形態では、本発明は、ネコに有効免疫量の本明細書に記載されるワクチンを、望ましくは、いかなるアジュバントも伴わずに投与することによって、ネコにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0051】
一実施形態では、本発明は、イヌに有効免疫量の本明細書に記載される任意のワクチンを投与することによってイヌにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0052】
一実施形態では、本発明は、ウシまたはウマに有効免疫量の本明細書に記載される任意のワクチンを投与することによって、ウシまたはウマにおいて狂犬病に対する防御免役応答を誘導する方法を提供する。
【0053】
一実施形態では、防御免疫応答は、体液性または抗体媒介性応答である。
【0054】
一実施形態では、防御免疫応答は、細胞媒介性またはT細胞媒介性免疫応答である。
【0055】
一実施形態では、防御免疫応答は、約4.5Log10TCID50/ml〜約6.7Log10TCID50/mlの範囲であるワクチン用量を投与することによって誘導される。
【0056】
一実施形態では、防御免疫応答は、約5.38Log10TCID50/ml〜約6.28Log10TCID50/mlの範囲であるワクチン用量を投与することによって誘導される。
【0057】
一実施形態では、防御応答は、ワクチンを単回用量として、または反復用量として投与することによって誘導される。
【0058】
本発明の第4の態様は、以下の工程を含む組換えアライグマポックスウイルスベクターを作製する方法を提供する:
(a)第1の狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸配列を、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入する工程と、
(b)第2の狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸配列を、アライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座に挿入する工程と、
(c)組換えアライグマポックスウイルスベクターを回収する工程。
【0059】
一実施形態では、工程(a)および(b)の核酸配列は、組換えアライグマポックスウイルスベクターによる核酸の発現ならびに第1および第2の狂犬病株の糖タンパク質の産生を可能にするために、核酸配列に作動可能に連結したプロモーターをさらに含む。
【0060】
一実施形態では、第1の狂犬病株は、Challenge Virus Standard狂犬病株である。
【0061】
一実施形態では、第2の狂犬病株は、Pasteur−Paris狂犬病株である。
【0062】
本発明の第5の態様は、配列番号1のヌクレオチド配列を有するプラスミドpFD2003−GPV−PVを提供する。
【0063】
第6の態様は、哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する医薬を調製するための任意の本発明のベクターまたはワクチンの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
発明の背景および当技術分野からのその発展を、添付の図面を参照して本明細書において以下にさらに説明する:
【図1A】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1B】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1C】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1D】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1E】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1F】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1G】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1H】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1I】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1J】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1K】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1L】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1M】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図2A】プラスミドを1〜3回の間で切断する主要な制限酵素、すなわち、BamHI(塩基対位置2471、5526)、EcoRI(位置558、5469)、EcoRV(位置265、324、3578)、HindIII(位置2055)、HpaI(位置2891、3515、5895)、KpnI(位置2147)、MuI(位置3767、4547、4972)、NcoI(位置80、2147)、NsiI(位置1812)、PciI(位置24、5224、8241)、SacI(位置4405、8372)、SalI(位置564)、SpeI(位置5583)、SphI(位置1423、6128)、XbaI(位置2196)およびXhoI(位置1633);およびプラスミドpFD2003−GPV−PVを切断しない主要な制限酵素、すなわち、BglII、KasI、NheI、NotI、NruI、PmeI、PstI、SacII、SmaIおよびXmaIを示す、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの制限酵素マップを示す図である。
【図2B】プラスミドを1〜3回の間で切断する主要な制限酵素、すなわち、BamHI(塩基対位置2471、5526)、EcoRI(位置558、5469)、EcoRV(位置265、324、3578)、HindIII(位置2055)、HpaI(位置2891、3515、5895)、KpnI(位置2147)、MuI(位置3767、4547、4972)、NcoI(位置80、2147)、NsiI(位置1812)、PciI(位置24、5224、8241)、SacI(位置4405、8372)、SalI(位置564)、SpeI(位置5583)、SphI(位置1423、6128)、XbaI(位置2196)およびXhoI(位置1633);およびプラスミドpFD2003−GPV−PVを切断しない主要な制限酵素、すなわち、BglII、KasI、NheI、NotI、NruI、PmeI、PstI、SacII、SmaIおよびXmaIを示す、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの制限酵素マップを示す図である。
【図3A】rRCNV−狂犬病G2の構築の重要な工程のダイアグラムを示す図である。KpnI−SalI狂犬病GPV−PV断片を、狂犬病DNAワクチンpVAX1−GPV−PV(WO第00/63242号において調製されたような)からプラスミドpFD2003SELにサブクローニングしてプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製した。vKB3−JE13、pFD2003SEL−GPV−PVおよびCOS−7細胞を用いる3者同時感染/トランスフェクションによって、rRCNV−狂犬病G2のプールクローンを作製する。次の工程は、ベロ細胞におけるプラーク精製および純粋クローン選抜を含む。クローン候補は、PCR同定試験およびrRCNV−狂犬病G2が得られたIFAによる狂犬病Gタンパク質のin vitro発現によって確認する。
【図3B】rRCNV−狂犬病G2の構築の重要な工程のダイアグラムを示す図である。KpnI−SalI狂犬病GPV−PV断片を、狂犬病DNAワクチンpVAX1−GPV−PV(WO第00/63242号において調製されたような)からプラスミドpFD2003SELにサブクローニングしてプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製した。vKB3−JE13、pFD2003SEL−GPV−PVおよびCOS−7細胞を用いる3者同時感染/トランスフェクションによって、rRCNV−狂犬病G2のプールクローンを作製する。次の工程は、ベロ細胞におけるプラーク精製および純粋クローン選抜を含む。クローン候補は、PCR同定試験およびrRCNV−狂犬病G2が得られたIFAによる狂犬病Gタンパク質のin vitro発現によって確認する。
【図4】組換えアライグマポックスウイルス遺伝子型のPasteur−Paris狂犬病G2 lacZが、ha遺伝子座に構築されており、CVS狂犬病Gがtk遺伝子座に構築されているrRCNV−狂犬病G2ゲノム(約200kb直鎖dsDNA)のダイアグラムを示す図である。
【図5A】ha遺伝子座(図5A)について、およびtk遺伝子座(図5B)について、rRCNV−狂犬病−G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験のためのアガロースゲル電気泳動を示す図である。対照、レーン2の使用したrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン3のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン4のDNA精製陰性対照−01、レーン5のDNA精製陰性対照−02、レーン6のPCR陰性対照(水)、レーン7のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈)、レーン8のrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン9のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン10のDNA精製陰性対照−01、レーン11のDNA精製陰性対照−02、レーン12のPCR陰性対照(水)およびレーン13のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈物)を含むサンプルのためのDNA鋳型。Lambda/Hind IIIマーカーは、レーン1にあり、1kb DNAラダーマーカーは、レーン14にあった。レーン2〜7については、ゲルA(図5A)のプライマーは、HA−08、HA−Pstであり、ゲルB(図5B)のプライマーは、TK−LW、TK−RWであり、標的遺伝子はwt haltkであった。レーン8〜13については、ゲルA(図5A)のプライマーはHA−Pst、gp−1Fであり、ゲルB(図5B)のプライマーはTK−RR、gJE−F1であり、標的遺伝子は狂犬病Gであった。図5に示されるように、PCRは、レーン2〜6および10〜13において陰性であったが、レーン7〜9ではPCRは陽性であった。
【図5B】ha遺伝子座(図5A)について、およびtk遺伝子座(図5B)について、rRCNV−狂犬病−G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験のためのアガロースゲル電気泳動を示す図である。対照、レーン2の使用したrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン3のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン4のDNA精製陰性対照−01、レーン5のDNA精製陰性対照−02、レーン6のPCR陰性対照(水)、レーン7のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈)、レーン8のrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン9のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン10のDNA精製陰性対照−01、レーン11のDNA精製陰性対照−02、レーン12のPCR陰性対照(水)およびレーン13のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈物)を含むサンプルのためのDNA鋳型。Lambda/Hind IIIマーカーは、レーン1にあり、1kb DNAラダーマーカーは、レーン14にあった。レーン2〜7については、ゲルA(図5A)のプライマーは、HA−08、HA−Pstであり、ゲルB(図5B)のプライマーは、TK−LW、TK−RWであり、標的遺伝子はwt haltkであった。レーン8〜13については、ゲルA(図5A)のプライマーはHA−Pst、gp−1Fであり、ゲルB(図5B)のプライマーはTK−RR、gJE−F1であり、標的遺伝子は狂犬病Gであった。図5に示されるように、PCRは、レーン2〜6および10〜13において陰性であったが、レーン7〜9ではPCRは陽性であった。
【図5C】ha遺伝子座(図5A)について、およびtk遺伝子座(図5B)について、rRCNV−狂犬病−G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験のためのアガロースゲル電気泳動を示す図である。対照、レーン2の使用したrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン3のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン4のDNA精製陰性対照−01、レーン5のDNA精製陰性対照−02、レーン6のPCR陰性対照(水)、レーン7のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈)、レーン8のrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン9のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン10のDNA精製陰性対照−01、レーン11のDNA精製陰性対照−02、レーン12のPCR陰性対照(水)およびレーン13のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈物)を含むサンプルのためのDNA鋳型。Lambda/Hind IIIマーカーは、レーン1にあり、1kb DNAラダーマーカーは、レーン14にあった。レーン2〜7については、ゲルA(図5A)のプライマーは、HA−08、HA−Pstであり、ゲルB(図5B)のプライマーは、TK−LW、TK−RWであり、標的遺伝子はwt haltkであった。レーン8〜13については、ゲルA(図5A)のプライマーはHA−Pst、gp−1Fであり、ゲルB(図5B)のプライマーはTK−RR、gJE−F1であり、標的遺伝子は狂犬病Gであった。図5に示されるように、PCRは、レーン2〜6および10〜13において陰性であったが、レーン7〜9ではPCRは陽性であった。
【図6】rRCNV−狂犬病G2感染ベロ細胞における狂犬病糖タンパク質のin vitro発現を示す図である。rRCNV−狂犬病G2 MSV−およびX+5感染ベロ細胞のすべての希釈物において細胞変性効果および蛍光が観察された(図6Aおよび6B)が、非感染ベロ細胞のみからなる陰性対照では観察されなかった(図6C)。この結果は、狂犬病Gタンパク質は、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよび継代5において発現され、狂犬病Gタンパク質特異的モノクローナル抗体によって検出されるということを示した。
【図7】全長狂犬病G遺伝子を含有するPCR産物のアガロースゲル電気泳動を示す図である。対照を含む、試験されているサンプルは、レーン2にrRCNV−狂犬病G2 MSV、レーン3にrRCNV−狂犬病G2 X+5、レーン4に陰性対照(水)、レーン5にrRCNV−狂犬病G2 MSV、レーン6にrRCNV−狂犬病G2 X+5およびレーン7に陰性対照(水)を含み、レーン1にLambda/HindIIIマーカーを含み、レーン8に1kb DNAラダーマーカーを含む。レーン2〜4については、プライマーはHA−Pst、PW4であり、遺伝子標的は、1806bpのPasteur−Paris狂犬病Gおよびそのフランキング領域であった。レーン5〜7については、プライマーはTK−RR、PW−03であり、遺伝子標的は1910bpのCVS狂犬病Gおよびそのフランキング領域であった。図7に示されるように、PCRは対照レーン4および7において陰性であったが、PCR産物は、レーン2、3、5および6において陽性であった。
【図8】ベロ細胞におけるrRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の青色プラーク(Lac+)精製によるスクリーニングを示す図であり、これでは、図8Aは、rRCNV−狂犬病G2 MSV(未希釈、100)を表し、図8Bは、rRCNV−狂犬病G2 X+5(10−4希釈)を表す。この結果は、rRCNV−狂犬病G2 MSVは、青色プラークアッセイによって、継代5への製造前スケールアップ手順下で表現型上安定であるということを示した。
【発明を実施するための形態】
【0065】
(発明の詳細な説明)
本方法および治療方法論が記載される前に、本発明は特定の方法および記載される実験条件に限定されず、方法および条件は変わり得るということが理解されなければならない。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲においてのみ限定されるので、本明細書に用いられる専門用語は特定の実施形態のみを記載する目的のものであって、制限であるよう意図されるものではないということも理解されなくてはならない。
【0066】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形の「冠詞」および「不定冠詞」は、文脈が明確に他を示すのでない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、1つ以上の方法および/または本明細書に記載される、および/または本開示内容などを読んだ際に当業者に明らかとなる種類の工程を含む。
【0067】
したがって、本出願では、当業者の範囲内の従来の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術が使用され得る。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Byrd、CMおよびHruby、DE、Methods in Molecular Biology、第269巻:Vaccinia Virus and Poxvirology、第3章、31〜40頁;Sambrook、Fritsch & Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989年)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(本明細書では「Sambrookら、1989年」);DNA Cloning:A Practical Approach、第IおよびIl巻(D.N.Glover編1985年);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編1984年);Nucleic Acid Hybridization[B.D.Hames & S.J.Higgins編(1985年)];Transcription And Translation[B.D.Hames & S.J.Higgins編(1984年)];Animal Cell Culture[R.I.Freshney編(1986年)];Immobilized Cells And Enzymes[IRL Press、(1986年)];B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984年);F.M.Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、Inc.(1994年)。
【0068】
本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料はいずれも、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料が記載されている。本明細書に言及されるすべての刊行物は、その全文が本明細書に組み込まれる。
【0069】
定義
本明細書に使用される用語は、当業者に認識され、既知であることを意味するが、便宜上および完全性のために、特定の用語およびその意味を以下に説明する。
【0070】
用語「約」とは、20%内、より好ましくは、10%内、より好ましくは5%内を意味する。
【0071】
用語「隣接する」とは、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を指す。アジュバントは、抗原をゆっくりと放出する組織貯蔵所として、また、免疫応答を非特異的に増強するリンパ系アクチベーターとして働き得る(Hoodら、Immunology、第2編、1984年、Benjamin/Cummings:Menlo Park、California、384頁)。状況に応じて、アジュバントの不在下での抗原単独での一次誘発は、体液性または細胞性免疫応答を誘発できない場合がある。アジュバントとして、限定されないが、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルまたは炭化水素エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよび有用である可能性があるヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が挙げられる。アジュバントは、製薬上許容されることが好ましい。用語「アジュバント不含である」とは、上記のように、アジュバントの不在下での本発明のいずれか1つのワクチンの調製を指す。
【0072】
「コードされる」または「コードする」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を指し、ポリペプチド配列は、少なくとも3〜5個のアミノ酸、より好ましくは、少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらにより好ましくは、少なくとも15〜20個のアミノ酸のアミノ酸配列を含み、ポリペプチドは核酸配列によってコードされる。また、その配列によってコードされるポリペプチドを用いて免疫学的に同定可能なポリペプチド配列も包含される。したがって、抗原「ポリペプチド」、「タンパク質」または「アミノ酸」配列は、抗原のポリペプチドまたはアミノ酸配列に対して少なくとも70%の類似性、好ましくは、少なくとも約80%の類似性、より好ましくは、約90〜95%の類似性、最も好ましくは、約99%の類似性を有し得る。
【0073】
用語「外因性」とは、外来遺伝子またはアライグマポックスウイルスゲノム外から産生された、起因する、由来する、生じた外来遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0074】
抗原またはワクチン組成物に対する「免疫応答」は、注目する抗原またはワクチン組成物中に存在する分子に対する体液性および/または細胞媒介性免疫応答の被験体における発生である。本発明の目的上、「体液性免疫応答」とは、抗体媒介性免疫応答であり、抗原/本発明のワクチンに対して親和性を有する抗体の生成を含み、一方で、「細胞媒介性免疫応答」とは、Tリンパ球および/またはその他の白血球によって媒介されるものである。「細胞媒介性免疫応答」は、クラスIまたはクラスII分子の主要組織適合抗原(MHC)と関連した抗原性エピトープの提示によって惹起される。これは、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)を活性化する。CTLは、主要組織適合抗原(MHC)によってコードされ、細胞表面に発現されるタンパク質に関連して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊またはこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導および促進するのに役立つ。細胞性免疫の別の側面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的反応に関与している。ヘルパーT細胞は、その表面上にMHC分子と関連してペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を集中させるのに役立つよう作用する。「細胞媒介性免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカインならびに活性化されたT細胞および/またはその他の白血球によって産生される分子のようなその他のもの、例えば、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものの産生を指す。特定の抗原または組成物の、細胞媒介性免疫学的応答を刺激する能力は、いくつかのアッセイによって、例えば、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイによって、感作された被験体において抗原に対して特異的なTリンパ球をアッセイすることによって、または抗原での再刺激に応じたT細胞によるサイトカイン産生の測定によって調べることができる。このようなアッセイは、当技術分野では周知である。例えば、Ericksonら、J.Immunol.(1993年)151:4189〜4199頁;Doeら、Eur.J.Immunol.(1994年)24:2369〜2376頁参照のこと。
【0075】
本明細書において同義的に使用される、「免疫学的に有効な量」または「有効免疫量」とは、当業者に公知の標準アッセイによって測定されるような、免疫応答、細胞性(T細胞)または体液性(B細胞または抗体)応答のいずれかを惹起するのに十分な抗原またはワクチンの量を指す。本発明では、「免疫学的に有効な量」または「有効免疫量」は、最小防御用量(力価):4.5〜6.7Log10TCID50/mLである。免役原としての抗原の有効性は、T細胞の、その特異的標的細胞を溶解する能力を測定するためのクロム放出アッセイなどの細胞溶解アッセイによって、または血清中の抗原に特異的な循環抗体のレベルを測定することによってB細胞活性のレベルを測定することのいずれかによって測定できる。さらに、免疫応答の防御のレベルは、免役化された宿主を、注射された抗原で誘発することによって測定してもよい。例えば、それに対する免疫応答が望まれる抗原が、腫瘍細胞のウイルスである場合には、「免疫学的に有効な量」の抗原によって誘導される防御のレベルは、この動物のウイルスまたは腫瘍誘導後の生存パーセントまたは死亡パーセントを検出することによって測定される。
【0076】
本明細書において用いる場合、アライグマポックスウイルスゲノム中の「非必須部位」とは、ウイルスの感染または複製にとって必要ではないウイルスゲノム中の領域を意味する。アライグマポックスウイルスゲノム中の非必須部位の例として、限定されないが、チミジンキナーゼ(TK)部位、血球凝集素(HA)部位およびセリンプロテアーゼ阻害剤部位が挙げられる。アライグマポックスウイルスのTK部位は、C.Lutze−Wallace、M.SidhuおよびA.Kappeler、Virus Genes10(1995年)、81〜84頁に記載されている。アライグマポックスウイルスのTK遺伝子の配列はまた、PubMed受託番号DQ066544およびU08228に見ることができる。アライグマポックスウイルスのHA部位は、Cavallaro KFおよびEsposito,JJ、Virology(1992年)、190(1):434〜9頁に記載されている。アライグマポックスウイルスのHA遺伝子の配列はまた、PubMed受託番号AF375116に見ることができる。
【0077】
用語「核酸分子」または「核酸配列」とは、タンパク質合成の過程を指示するプリンおよびピリミジン塩基の反復単位などの反復するヌクレオチドの長い鎖を指す、その明白な意味を有する。すなわち、それらは、タンパク質物質をコードし、発現する。特許請求の範囲において用いる場合、核酸とは、狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする既知外因性または外来遺伝子を指す。
【0078】
RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、次いで、トランスRNAによってスプライシングされ、コード配列によってコードされるタンパク質に翻訳される場合には、コード配列は、細胞において転写および翻訳制御配列と、「作動可能に連結している」。
【0079】
「防御的」免疫応答とは、ワクチンの、哺乳動物の感染からの保護に役立つ免疫応答、体液性または細胞媒介性のいずれかを惹起する能力を指す。対照集団の哺乳動物と比較して統計上有意な改善があれば、提供される防御は必ずしも完全ではない、すなわち、感染は必ずしも完全に予防されるか、または根絶されるわけではない。防御は、感染の症状の重症度または発生の速度の緩和に限定され得る。
【0080】
本明細書において用語「組換え」とは、簡単に、標準遺伝子工学法によって作製されるアライグマポックスウイルス構築物を指す。
【0081】
用語「複製可能な」とは、好適な宿主細胞において複製可能である(replicating)、複製可能である(duplicating)、または再生可能である、微生物、特に、アライグマポックスウイルスなどのウイルスを指す。
【0082】
用語「ワクチン」または「ワクチン組成物」とは、本明細書において同義的に使用され、動物において免疫応答を誘導する、および/または動物を感染による疾患または死亡の可能性から保護する、少なくとも1つの免疫学的に活性な成分を含む薬剤組成物を指し、活性成分の免疫学的活性を増強する1つ以上のさらなる成分を含む場合も含まない場合もある。ワクチンは、薬剤組成物に特有のさらなる成分をさらに含んでなってもよい。
【0083】
「ベクター」は、宿主生物において複製可能なDNA分子であり、その中に、組換えDNA分子を構築するための遺伝子が挿入される。
【0084】
概要
本発明に従って、安定な、安全な、高度に有効な、場合によってはアジュバントを含まない製品の製造においてアライグマポックスウイルス(RCNV)株を用いる独特の組換え狂犬病ワクチンが提供される。具体的には、本発明は、各々、少なくとも1つの狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、1つ以上の外因性核酸分子を含み、血球凝集素(ha)遺伝子座もしくはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に少なくとも2つの核酸分子が挿入されているか、または少なくとも1つの核酸分子が血球凝集素およびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入されている組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)を提供する。外因性核酸分子の供給源は、同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも2つの異なる狂犬病株から外来遺伝子を得ることが望ましい。本発明の新規の、高度に好ましいウイルス構築物rRCNV−狂犬病G2は、2つの異なる狂犬病ウイルス株の狂犬病糖タンパク質(G)を独特に発現することが有利であり、ここで、Challenge Virus Standard(CVS)およびPasteur−Paris(PV)狂犬病株の抗原性糖タンパク質を、RCNVゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座にそれぞれ挿入することが高度に望ましい。rRCNV−狂犬病G2感染ベロ細胞における狂犬病糖タンパク質のIn vitro 発現は、狂犬病糖タンパク質特異的モノクローナル抗体を用いる間接免疫蛍光アッセイ(IFA)によって確認される。本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物は、極めて免役原性であり、高度に強力である。免疫継続期間(DOI)研究におけるネコおよびイヌの接種と、それに続く病原性狂犬病ウイルス誘発によって、新規組換え狂犬病ワクチンは、哺乳動物を狂犬病感染から保護することにおいて優れた効力および有用性を有ることが実証される。
【0085】
アライグマポックスウイルス(Herman株)が、まず、1961〜1962年にメリーランド州、アバディーン(Aberdeen)においてY.F.Hermanによって臨床症状のないアライグマの気道から単離された(Bacteriol.Proc.第64回Annual Meeting of the American Society for Microbiology、117頁(1964年)中、Y.F.Herman、「Isolation and characterization of a naturally occuring pox virus of raccoons」)。いくつかの初期の研究では、tk遺伝子座でCVS狂犬病G遺伝子を発現するRCNVベクターは、野生動物およびペットを含む家畜の両方に投与した場合に安全であると報告された(例えば、A.D.Alexanderら、「Survey of wild mammals in a Chesapeake Bay area for selected zoonoses」、J.Wildlife Dis.8:119〜126頁(1972年);C.Bahloulら、「DNA−based immunization for exploring the enlargement of immunological cross reactivity against the lyssaviruses」、Vaccine16:417〜425頁(1998年);S.Chakrabartiら、「Compact,Synthetic、vaccinia virus early/late promoter for protein expression」、BioTechniques23:1094〜1097頁(1997年);およびJ.C.DeMartiniら、「Raccoon poxvirus rabies uirus glycoprotein recombinant vaccine in sheep」、Arch.Virol.133:211〜222頁(1993年)参照のこと)。
【0086】
しかし、初期の構築物の中には、狂犬病G遺伝子がha部位に挿入されているか、または少なくとも2つの狂犬病G遺伝子が、アライグマポックスウイルスゲノムのtkおよびha遺伝子座の両方に挿入されている本発明の独特の設計を提供するものはない。本発明の新規構築物を示す構築物または動物研究はない。
【0087】
vKB3−JE13として知られる(RCNV Rab−G、RABORAL V−RG(登録商標)としてMerial、Harlow、Essex、UK から商業的に販売されている)これまでの組換え狂犬病構築物は、RCNVベクターのHerman株を使用していたが、この構築物は、RCNVゲノムのtk遺伝子座に狂犬病CVS株のG遺伝子の単一の挿入物しか有していない。本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物もまた、RCNVベクターのHerman株を利用するが、この新規構築物は、2つの遺伝子座に2つの異なる狂犬病株に由来する外来遺伝子を有する、すなわち、狂犬病CVSおよびPV株のG遺伝子を含む外来遺伝子材料が、RCNVゲノムに挿入されており、挿入部位はRCNVゲノムのtk遺伝子座にCVS遺伝子由来のDNAを、ha遺伝子座にPV遺伝子由来のDNAを提供するために特異的である。本発明の新規rRCNV−狂犬病G2構築物では、狂犬病G遺伝子の、RCNVゲノムのtkおよびha遺伝子座両方の組み合わせへの挿入は、病原性Herman株をさらに弱毒化するが、同時に、強力な広域性ワクチンを提供する。
【0088】
vKB3−JE13と同様に、本発明のrRCNV−狂犬病G2は、まず、vvP 11後期プロモーターを使用してtk遺伝子座にCVS遺伝子を挿入し、次いで、さらに合成初期−後期プロモーターを使用し、駆動して、ha遺伝子座にさらなるPV遺伝子を挿入して調製する。tkおよびha遺伝子座から外来狂犬病抗原を発現できることにあるrRCNV−狂犬病G2の安定性および有用性は、新規多価構築物の重要な特性であり、これまで未知であった。
【0089】
著しく改善された本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物はまた、良好な構築物であるという点で先行する構築物vKB3−JE13を上回る、予想外の、重大な利点を提供する。驚くべきことに、rRCNV−狂犬病G2は、取り扱いのための良好な安全性、実質的に良好な最小の防御用量(すなわち、著しくより強力である)およびChallenge Virus Standard(CVS)およびPasteur−Paris(PV)狂犬病株を網羅する、より広い防御範囲を有する。
【0090】
例えば、標準米国国立衛生研究所(NIH)マウス効力試験における、匹敵する力価のrRCNV−狂犬病G2およびvKB3−JE13(RCNV Rab−G)の性能は、vKB3−JE13(6.4Logs10TCID50/mL)の0.3というかなり低いRP値と比較してrRCNV−狂犬病G2(6.3Logs10TCID50/mL)の6.8という優れた相対力(RP)値を示す。本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物は、予想外に、vKB3−JE13構築物よりも23倍強力であった。
【0091】
CVS単独由来の狂犬病糖タンパク質遺伝子を保持する既知組換えRCNV(vKB3−JE13)は、1回の単回用量を用いて皮下にワクチン接種を受けたネコにおいて有効性を示したが、vKB3−JE13は、高濃度のRab−Gを投与されたネコの96.2%(25/26)が保護されたのに対し、対照の93.8%(15/16)が狂犬病誘発によって死亡したことを示す、1年の免役継続期間研究(DOI)において狂犬病に対して適切な保護を達成するために8.3Log10TCID50/mLという高力価のRCNV Rab−Gが必要であった。しかし、後処理プロセス研究によって、商業化のためにこのような高力価ウイルスを作製することは実行可能ではないということが示された。安全性およびベクターの懸念のために、VKB3−JE13は、ネコにおける実用的使用には不十分である。
【0092】
さらに、有効性データから、イヌに対する1年のDOI研究において、この先行するvKB3−JE13構築物は法的要件を満たすことはできないと実証された(タイトル9、連邦規則集)。8.3Log10TCID50/mLのRCNV Rab−Gという単回用量を用いて皮下にワクチン接種を受けたイヌの79.2%(19/24)しか、1年の免役継続期間研究(DOI)において狂犬病から保護されなかったが、対照の100%(13/13)が狂犬病誘発のために死亡した。
【0093】
比較として、本発明の新規rRCNV−狂犬病G2構築物の1年のDOIは、必要とされるvKB3−JE13よりも、かなり低濃度でネコにおいて優れた結果を提供した。6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の力価で、誘発結果は、9/10(90%)の対照が狂犬病のために死亡したが、25/25(100%)のワクチン接種されたものが90日間健康なままであったと実証し、これは、狂犬病ワクチン有効性についての法的要件を満たす十分な試験である。1年DOI研究から得た結果は、本発明の組換え狂犬病ワクチンは、ネコにおいて単回のワクチン接種後少なくとも1年間狂犬病の予防において高度に有効であると実証する。
【0094】
イヌにおける1年DOI研究に関して、本発明の新規rRCNV−狂犬病G2構築物は、イヌにおいて優れた、成功した結果を提供したが、当技術分野のRCNV Rab−Gは適切な保護を与えることができなかった。6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の力価で、誘発結果は、9/10(90%)の対照が、狂犬病のために死亡したが、22/25(88%)のワクチン接種されたものは、90日間健康なままであると実証し、これは、狂犬病ワクチン有効性についての法的要件を満たす。この1年DOI研究から得た結果は、本発明の組換え狂犬病ワクチンは、イヌにおいて単回ワクチン接種後少なくとも1年間、狂犬病の予防において補助として有効であると実証する。
【0095】
当技術分野で公知の先行組換えvKB3−JE13構築物の不利点に加え、その他の従来の不活化狂犬病ワクチンもまた、獣医学の分野におけるその技術的な問題を有し、これは本発明が解決する。不活化狂犬病ワクチンは、有効な免疫応答を得るためにアジュバント補給を必要とすることが多いが、残念ながら、アジュバントは、ネコにおいて肉腫の形成の一因となることが多く、ネコおよびイヌにおいてその他の安全性の懸念を有する。本発明は、当技術分野で認識される問題を独特に解決し、アジュバントの不在下での単回のワクチン接種後に優れた免疫応答を維持する、より安全な製品として組換えアライグマポックスウイルス(rRCNV)をベクターとする狂犬病ワクチンを提供する。
【0096】
有利なことに、本発明のアジュバント不含のrRCNVベクターによる狂犬病ワクチンはまた、ワクチン製造の間の従事者の安全性を改善し、商業的製造の間に用いられる不活化および汚染除去手順を狂犬病ウイルスが生き残るいかなる機会も完全に排除する。rRCNV−狂犬病G2は、RCNVゲノムのtk遺伝子座に挿入されたCVS G遺伝子を含有するRCNVベクターのha遺伝子座へのPasteur−Paris狂犬病G遺伝子の挿入によってさらに弱毒化される。言い換えれば、弱毒化された狂犬病ウイルスは、中程度の可能性の健康ハザードのバイオセーフティーレベル2病原体と考えられるのに対し、rRCNV−狂犬病G2は、低リスクバイオセーフティーレベル1病原体として全く安全であると見なされる。
【0097】
新規狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(すなわち、本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物)は、通常、狂犬病感染の予防における補助として3ヶ月齢またはそれより高齢の健康なネコおよびイヌのワクチン接種のために用いられる。フェレットなどのその他の家庭用ペットも、適切な免役応答のために十分に成熟した齢で狂犬病に対する予防接種から恩恵を受ける。ワクチンはまた、ワクチンが感染後治療として必要とされる場合には、狂犬病ウイルスに曝露されるより若いネコ、イヌおよびさらなる哺乳動物において使用してもよい。
【0098】
高レベルの生存RCNVを用いてネコに接種した後にウイルス排出は示されず、このことから、RCNVはネコにおいて非複製性であり、非病原性であることが確認される。ネコは、ネコがRCNVに対してイヌよりも感受性であるために試験動物として選択された。RCNVの天然の感染経路は、主に、口腔粘膜、皮膚擦過傷および気道を介してである。扁桃腺が、これらのウイルスが複製するのに好ましい位置である。したがって、以下の発明を示す実施例のためのいくつかの研究において組換えウイルスを投与するために、口腔経路、最も一般的な感染経路を選択した。しかし、本発明のワクチンは、種々の従来経路によって投与してよいということは考慮される。
【0099】
NIH(米国国立衛生研究所)マウス効力試験によって、rRCNV−狂犬病G2構築物は、極めて免役原性であり、高度に強力であると示される。用量漸増研究によって、ネコおよびイヌが、免疫学的に有効な投与量のrRCNV−狂犬病G2を用いて皮下にワクチン接種される場合には、狂犬病誘発からの完全保護(ワクチン接種後3ヶ月)が示される。狂犬病ワクチン、本発明の生存アライグマポックスウイルスベクターの、ネコおよびイヌにおける3ヶ月の免役継続期間(DOI)研究、1年のDOI研究およびネコにおける毒性への復帰の研究は、優れた結果を示す。非常に有利なことに、アライグマポックスウイルスベクターによるワクチンの経口投与は、rRCNV−狂犬病G2 X+3の濃縮保存液がネコおよびイヌにおいて皮下に投与された後に、毒性に復帰せず、体液または糞便中に播種することなく、好ましくない反応は観察されなかった。
【0100】
ネコおよびイヌは、3種の異なる力価のrRCNV−狂犬病G2ワクチンを用いたワクチン接種、続いて、単回のワクチン接種の3ヶ月後に病原性狂犬病ウイルス誘発を受け、短期間の有効性を示し、より長期間の免役研究のための適切な投与量を求めた。ネコでは、6.5、5.5および4.5Log10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2の単回用量を用いて皮下にワクチン接種を受けたネコの100%(10/10)が、有益に保護されたのに対し、対照の80%(8/10)が狂犬病誘発のために死亡した。イヌでは、6.5、5.5および4.5Log10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2の単回用量を用いて皮下にワクチン接種を受けたイヌの100%(10/10)、90%(9/10)および70%(7/10)が、それぞれ保護されたのに対し、対照の100%(10/10)が狂犬病誘発のために死亡した。後者のイヌにおける結果は、4.5Log10TCID50/mLの力価は、イヌを狂犬病から保護するのに不十分な濃度であるが、6.5Log10TCID50/mLおよび5.5Log10TCID50/mLの実行可能な力価でワクチンはイヌにおいて効力を示す、新規ワクチン製品の適切な投与量を得るために家畜ワクチンの技術分野において用いられる標準力価設定研究を示す。
【0101】
上記で本明細書に記載され、以下の実施例において例示されるように、ネコおよびイヌへの本発明の組換えrRCNV−狂犬病G2ワクチンの単回投与後の1年免役継続期間(DOI)から得られた結果はまた、ワクチンの優れた効力および有用性を示す。組換え狂犬病ワクチンは、驚くべきことに、単回接種後に長期間持続する免役をもたらし、有益である。
【0102】
一般に、狂犬病糖タンパク質遺伝子、例えば、狂犬病Pasteur−Paris糖タンパク質遺伝子(G)の、vKB3−JE13ゲノムの血球凝集(ha)遺伝子座への挿入によってウイルスrRCNV−狂犬病G2は構築され得る。既知ウイルスvKB3−JE13は、アライグマポックスウイルス野生型のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座でChallenge Virus Standard(CVS)株の狂犬病糖タンパク質を発現する。一実施形態では、rRCNV−狂犬病G2の構築方法は、2つの主要な工程によって提供される。第1に、PCR増幅された1,575bpの狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子(GPV−PV)を、構築された本発明のpFD2003SELベクター中にクローニングし、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製する。この工程は、FDAHの狂犬病DNAワクチン構築物pVAX1−GPV−PV(WO第00/63242号において調製されるような)から得たKpnI−SalI狂犬病GPV−PV断片を、プラスミドpFD2003SELにサブクローニングし、それによって、pFD2003SEL−GPV−PVを作製することを含む。第2に、COS−7細胞におけるvKB3−JE13およびプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの3者同時感染/トランスフェクションを実施して、ha遺伝子座での対立遺伝子交換によってrRCNV−狂犬病G2を作製する。青色プラーク(Lac+)を、ベロ細胞におけるプラーク精製の4回の連続ラウンドによってクローニングする。クローン候補を、ベロ細胞において、0.05%ラクトアルブミン加水分解物(LAH)、30μg/mLの硫酸ゲンタマイシン、および5%ウシ胎児血清を補給した最小必須培地(MEM)を用いてさらに3倍以上増殖させ、ゲル特異的PCRおよび間接免役蛍光アッセイ(IFA)によって確認した。7回継代物を用いてプレマスターシードを調製する。マスターシードは、プレマスターシード、生存ベクターとしてアライグマポックスウイルスがhaおよびtk遺伝子座でPasteur−ParisおよびCVS株の狂犬病糖タンパク質をそれぞれ発現する、設計されたrRCNV−狂犬病G2の1:10,000希釈によって確立すればよい。このマスターシードは、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターのさらなる製造において有用である。rRCNV−狂犬病G2構築物は、狂犬病に対する予防において動物のワクチンとして高度に強力で、安全で、極めて有効である。
【0103】
本発明に記載される新規方法は、当業者によって、その他の狂犬病株から得られる抗原性糖タンパク質に適用され得ることが考慮され、これでは、例示されるCVSおよびPV株以外の株の狂犬病糖タンパク質が使用され、tkおよび/またはha遺伝子座に挿入されるか、またはtkおよびha遺伝子座両方の場合には、別の糖タンパク質遺伝子は、例えば、セリンプロテアーゼ阻害剤遺伝子などのアライグマポックスウイルスベクターのさらなる第3の非必須領域に挿入されて、狂犬病感染に対する保護のための免役原性のワクチンを提供する。例えば、イヌ狂犬病streetウイルス、ホッキョクギツネウイルス、アライグマ狂犬病ウイルスまたはコウモリ狂犬病ウイルス株などといったその他の狂犬病株に由来する抗原性糖タンパク質をコードするヌクレオチドまたは核酸分子は、容易にCVSおよび/またはPV株と置換するか、それらに加えて使用され得る。あるいは、新規野生分離株または狂犬病突然変異体の糖タンパク質遺伝子を、CVSおよび/またはPV遺伝子の代わりに本発明の組換えワクチンにおいて単離し、利用してもよい。第3の狂犬病株のさらなる抗原性糖タンパク質をコードする遺伝子が、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位に挿入され得ることも考慮される。tkおよびha遺伝子座を超えるその他の非必須遺伝子として、例えば、成長および増殖にとって必須ではない領域が挙げられる。
【0104】
実施例は、tk遺伝子座に挿入されているCVS株の糖タンパク質遺伝子およびha遺伝子座に挿入されているPV株の糖タンパク質遺伝子を示すが、CVSのG遺伝子がha遺伝子座にあり、PVのG遺伝子がtk遺伝子座にある、逆に、遺伝子が挿入されるか、または病原性狂犬病ウイルスに対する高められた免役応答のために、より強力に有効な組換えワクチンを構築するために同一の狂犬病ウイルスの同一の糖タンパク質遺伝子がtkおよびhaの両方に挿入されることがさらに考慮される。狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする核酸が、アライグマポックスウイルスゲノムのha部位のみに挿入されている組換えワクチンを構築することが望ましいと思われる場合もある。
【0105】
当業者に公知の任意の方法を使用して、本発明の遺伝子構築物を調製してもよい。例えば、標準法を用いて任意の所望の核酸配列をアライグマポックスウイルスベクターに挿入するために、特定の制限部位を利用してもよい。あるいは、大きな配列の挿入が望まれる場合には、または本明細書に記載される、複数の遺伝子が挿入されることが望ましい場合には、相同組換え技術を利用してもよい。この方法では、複数の遺伝子が挿入される予定の挿入部位をフランキングするプラスミド配列は、アライグマポックスウイルスゲノム中に存在する配列と十分な相同性を有する配列を含み、組換えを媒介する。フランキング配列は、アライグマポックスウイルスの成長および増殖にとって必須でないアライグマポックスウイルスの領域、例えば、血球凝集素遺伝子座またはチミジンキナーゼ遺伝子座またはセリンプロテアーゼ阻害剤遺伝子座と相同でなければならない。1つのプロモーターを使用して、組み換えられるべき2つの外因性遺伝子の発現を駆動してもよいが、挿入ベクター中に、各々、個々の遺伝子に作動可能に連結した2つのプロモーターを使用することも、効率的な発現を提供する。
【0106】
本発明はまた、保護を必要とする哺乳動物に強力な新規組換えワクチンを投与することによって、狂犬病から哺乳動物を保護する、または狂犬病ウイルスに感染した後に動物を治療する新規方法を提供する。
【0107】
本発明の方法では、狂犬病に対する防御免役応答を誘導するために、狂犬病感染からの保護または治療を必要とする哺乳動物、特に、ネコおよびイヌに本発明の免疫学的に有効な量のワクチンを投与する。また、狂犬病に対してウシおよびウマを免役化するためのワクチンの使用も考慮される。哺乳動物に投与される有効免疫量は、哺乳動物を狂犬病ウイルスの致命的な神経学的効果から保護するためにワクチンに対する十分な免疫学的応答が得られるものである。狂犬病に対する防御免疫応答は、ワクチンが、USDAによって認可される狂犬病ワクチンの法定ガイドラインを満たすか、超える場合に得られると考えられる。動物に接種し、十分なワクチン接種効果を誘発する免疫学的に有効な投与量または有効免疫量は、例えば、標準力価測定研究などの通例の試験によって容易に決定できるか、容易に力価測定できる。
【0108】
ワクチンは、単回用量で、または反復用量で、特に、感染後治療として投与してよい。ワクチンは、単回接種で健康な動物に投与され、少なくとも1年〜3年以上の間、狂犬病から動物を保護する、狂犬病からの長期間の保護を提供することが望ましい。投与量は、例えば、ネコおよびイヌに投与される場合、約5.4〜約6.7Log10TCID50/mL(最小防御用量)の範囲であり得るが、より小さいネコの中には、4.5Logs10TCID50/mL以上の投与量から恩恵を受けるものもある。フェレットは、ネコおよびイヌにおいて使用されるのと同様の投与量を投与され得る。
【0109】
いくつかの国では、ウマおよびウシにおける狂犬病の問題があるので、大きな動物には、通常、体重によってではなく用量(1〜2mL)あたりの力価として表される好適なワクチン接種用量が投与される。力価は、獣医学の技術分野の当業者に公知の通例の力価測定研究によって決定できる。本発明のrRCNV−狂犬病G2はまた、狂犬病の蔓延を制御する手段として、キツネ、スカンク、マングース、アライグマ、コウモリなどといった野生動物において利用を見い出すこともできるということが考慮される。
【0110】
ワクチンは、免疫学的に有効な量の、本明細書に記載される組換えアライグマポックスウイルスベクター構築物の任意の1つを含み得る。もう1つの実施形態では、、ワクチンは、免疫学的に有効な量の、本明細書に記載される組換えアライグマポックスウイルスベクター構築物の任意の2つ以上を含み得る。一実施形態では、多価ワクチンが1つのベクター構築物のみを含む。
【0111】
ワクチンは、任意の投与経路、経口的に、鼻腔内に、経皮的に(すなわち、全身吸収のために皮膚表面上に、または皮膚上面に塗布される)、非経口的になどによって容易に投与できるが、いくつかの経路は、動物および取扱者に応じてロジスティックに、より困難であり得る。非経口投与経路として、限定されないが、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内(すなわち、注射されるか、そうでなければ皮膚の下に置かれる)経路などが挙げられる。好ましい。ワクチンは健康なネコ、イヌおよびその他の家庭用ペットに皮下に投与されることが好ましい。
【0112】
ポックスウイルスベクターは、生存していてもよいし、不活化ウイルスベクターを調製するための従来の手順によって、BEI(バイナリーエチレンイミン)、ホルマリンなどを用いて不活化されていてもよく、BEIが好ましい不活化剤(inactivant)であるが、本発明のワクチンにとって、最適および強力な免疫学的有効性のために生存アライグマポックスウイルスを使用することが高度に望ましい。生存アライグマポックスウイルスはまた、複製可能であり、マスターシードウイルスからワクチンを開発するために、好適な培養において複製し、それ自体のコピーを作製できることを意味する。狂犬病Challenge Virus Standard(CVS)およびPasteur−Paris株の狂犬病糖タンパク質(G2)を発現する生存組換えRCNVが、単独で、または好適な担体、希釈剤およびアジュバントと組み合わせてのいずれかで、ワクチンとして有用であることは有益である。好適な担体とは、すべての哺乳動物に投与するために非毒性で、製薬上許容されるものである。しかし、ネコの接種に使用される製品はアジュバント不含であることが考慮される。ワクチン製品は、液体または使用直前に標準の非毒性希釈剤で再構成される凍結乾燥粉末の形であり得る。凍結乾燥した粉末は、長期保存下でその効力を維持し、凍結乾燥され、2〜7℃で保存される場合には力価喪失がないという利点を有する。
【0113】
液体として投与される場合には、本ワクチンは、従来の形の水性溶液、シロップ剤、エリキシル剤、チンキ剤などで調製され得る。このような製剤は当技術分野では公知であり、通常、投与のために、抗原およびその他の添加剤を適当な担体または溶媒系に溶解または分散することによって調製される。好適な非毒性の、生理学的に許容される担体または溶媒として、限定されないが、水、生理食塩水、エチレングリコール、グリセロールなどが挙げられる。ワクチンはまた、凍結乾燥、またはそうでなければ、凍結−乾燥され、次いで、使用直前に好適な希釈剤を用いて無菌的に再構成または再水和されてもよい。好適な希釈剤として、限定されないが、生理食塩水、イーグル最小必須培地などが挙げられる。通常の添加剤または製剤補助剤(co−formulants)として、例えば、認定色素、フレーバー、甘味料および1つ以上の抗菌性保存料、例えば、チメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)、ネオマイシン、ポリミキシンB、アムホテリシンBなどがある。このような溶液は、例えば、部分加水分ゼラチン、ソルビトールまたは細胞培養培値を添加することによって安定化することができ、当技術分野で公知の試薬、例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、それらの混合物などを用いる従来法によって緩衝することができる。
【0114】
液体製剤としてまた、懸濁剤または乳化剤を、その他の標準の製剤補助剤と組み合わせて含む懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。これらの種類の液体製剤は、従来法によって調製できる。懸濁液は、例えば、コロイドミルを用いて調製できる。エマルジョンは、例えば、ホモジナイザーを用いて調製できる。
【0115】
体液系に注射されるよう設計される非経口製剤は、ネコ体液の対応するレベルへの適切な等張性およびpH緩衝を必要とする。等張性は、必要に応じて塩化ナトリウムおよびその他の塩を用いて適合して調整することができる。ワクチン接種時に、ウイルスを解凍(凍結されている場合には)するか、または脱イオン水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などといった生理学的に許容される担体を用いて再構成(凍結乾燥されている場合には)する。好適な溶媒、例えば、プロピレングリコールを用いて、製剤中の成分の溶解度および液体製剤の安定性を高めることができる。
【0116】
免疫増強アジュバント系からの有害な効果を有さないイヌおよびその他の動物の接種には、ワクチン製剤は、種々の通常の、非毒性の、製薬上許容される添加剤、希釈剤およびアジュバントを場合により含んでもよく、限定されないが、保存料、安定化剤、乳化剤、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化ナトリウム、塩酸などといったpH調節剤、Tween(登録商標)80(ポリソルベート80、Sigma Chemical Co.、St. Louis、MOから市販されている)などの界面活性剤、リポソーム、イスコムアジュバント、ムラミルジペプチドなどの合成糖ペプチド、デキストランまたは例えば、リン酸アルミニウムとのデキストラン組み合わせ、硫酸デキストラン、DEAE−デキストランなどといった増量剤、CARBOPOL(登録商標)(B.F.Goodrich Company、Cleveland、Ohioから市販されているポリアクリル酸ポリマー)などのカルボキシポリメチレン、エチレン無水マレイン酸またはエチレン無水マレイン酸共重合体(Monsanto Co.、St. Louis、MOから市販されている、EMA(登録商標)、およそ等量のエチレンおよび無水マレイン酸を有し、約75,000〜100,000の推定平均分子量を有する直鎖エチレン無水マレイン酸共重合体)、NEOCRYL(登録商標)A640(例えば、米国特許第5,047,238号、Polyvinyl Chemicals、Inc.、Wilmington、MAから市販されているアクリル酸と、スチレンと混合されたメタクリル酸の合体していない水性アクリル酸共重合体)のようなスチレンの、アクリル酸およびメタクリル酸の混合物との共重合体などのアクリル酸共重合体エマルジョン、マイコバクテリア細胞壁抽出物などの細菌細胞壁、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などのコリネバクテリウム由来アジュバント、プロピオニバクテリウム・アクネ(Propionibacterium acne)などのプロピオニバクテリウム由来アジュバント、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)(カルメット・ゲラン桿菌またはBCG)、オルビウイルスなどのサブウイルス(subviral)粒子アジュバント、コレラ毒素、N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−プロパンジアミン(アブリジン)、モノホスホリル脂質A、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(Kodak、Rochester、NYから市販されているDDA)、合成物質およびそれらの混合物が挙げられる。本ワクチンにおいて使用してよいさらなる添加剤として、限定されないが、デキストロース、従来の抗酸化物質および従来のキレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。ワクチン製剤を場合により補完してよいその他の製薬上許容されるアジュバントとして、限定されないが、ポリアニオン、ポリカチオン、ペプチド、ミネラルオイルエマルジョン、免疫調節物質、種々の組み合わせなどが挙げられる。好適なアジュバントのさらなる限定されない例として、スクアランおよびスクアレン(または動物起源のその他のオイル)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、例えば、PLURONIC(登録商標)(例えば、BASF Aktiengesellschaft、Ludwigshafen、Germanyから市販されているL121)、サポニン、Quil A(キラヤ・サポナリア(Quillaja saponaria)の精製された形の商業的名称、Iscotec AB、Sweden and Superfos Biosector a/s、Vedbaek、Denmark から入手可能)、MARCOL(登録商標)(液体飽和炭化水素の精製された混合物、市販の from); 植物油、Exxon−Mobil、Fairfax、VAからから市販されている)などのミネラルオイル、植物油、例えば、ピーナッツオイル、インターロイキン、例えば、インターロイキン−2およびインターロイキン−12、インターフェロン、例えば、γインターフェロン、動物ポックスウイルスタンパク質またはそれらの混合物が挙げられる。好適な安定化剤の例として、限定されないが、スクロース、ゼラチン、ペプトン、消化タンパク質抽出物、例えば、NZ−アミンまたはNZ−アミンASが挙げられる。乳化剤の例として、限定されないが、ミネラルオイル、植物油、ピーナッツオイルおよび注射用または鼻腔内ワクチンにとって有用であるその他の標準の、代謝可能な、非毒性のオイルが挙げられる。水酸化アルミニウムは、サポニンまたはQuil Aなどのその他のアジュバントと混合されて、サポニン−水酸化アルミニウムまたはQuil A−水酸化アルミニウムなどの組み合わせを形成することが望ましい。好ましいアジュバントは、エチレン無水マレイン酸共重合体、スチレンの、アクリル酸とメタクリル酸の混合物との共重合体、ミネラルオイルエマルジョンまたはそれらの組み合わせを含む。
【0117】
イヌ使用のための本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物の効力を大幅に増強する特に好ましいアジュバント系は、エチレン/マレイン酸共重合体、例えば、EMA−31(登録商標)(およそ等量のエチレンおよび無水マレイン酸を有し、約75,000〜100,000の推定平均分子量を有する直鎖エチレン無水マレイン酸共重合体、Monsanto Co.、St. Louis、MOから市販されている)およびアクリル酸共重合体エマルジョン、例えば、NEOCRYL(登録商標)(アクリル酸と、スチレンと混合されメタクリル酸の合体していない水性アクリル酸共重合体(アクリル酸−スチレンエマルジョン)、Polyvinyl Chemicals、Inc.、Wilmington、MAから市販されている)の組み合わせを含む。研究により、6.4Log10TCID50/mL(用量あたり)の力価のrRCNV−狂犬病G2構築物は、EMA−31(登録商標)およびNEOCRYL(登録商標)を含む組み合わせアジュバント系の存在下で高度に有効であることが実証された。誘発結果は、10/10(100%)の対照イヌが死亡するか、狂犬病の徴候を示し、この研究は妥当な誘発試験であるということを示した。一方、3つの接種群では、9/10(90%)、10/10(100%)および10/10(100%)がワクチン接種を受け、研究期間にわたって健康なままであった。
【0118】
イヌの場合には、本発明の組換え狂犬病ワクチンはまた、1つ以上のさらなるイヌ抗原、例えば、エーリキア・カニス、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌジステンパー、イヌパラインフルエンザウイルス(CPI)、イヌアデノウイルスII型(CAV−2)、イヌアデノウイルス(CDV)、イヌコロナウイルス(CCV)、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohemorrhagiae)(LI)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)(LC)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)(LG)、レプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)(LP)などとの混合物を場合により含んでもよい。特に好ましい抗原の組み合わせは、コロナウイルスおよびレプトスピラ(例えば、新興血清型、L. グリポティフォーサ(grippotyphosa)およびL.ポモナ(pomona))を伴うか伴わない、イヌパルボウイルス、イヌジステンパー、イヌアデノウイルスおよびイヌパラインフルエンザの単離物を包含する。
【0119】
ネコの場合には、本発明の組換え狂犬病ワクチンはまた、1つ以上のさらなるネコ抗原、例えば、ネコカリシウイルス(FCV)、クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)(これまでは、通常、クラミジア・シタッシ(Chlamydia psittaci)(FCP)として知られる、C.フェリス(felis))、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPV)、ネコ鼻気管炎ウイルス(FVR)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)、バルトネラ菌(例えば、特有のネコ引っ掻き病)などとの混合物を場合により含んでいてもよい。
【0120】
用語を本明細書に用いる場合、当業者に公知の従来の意味が使われる。例えば、用語「核酸分子」または「核酸配列」は、タンパク質合成の過程に向かう、すなわち、タンパク質物質をコードし、発現するプリンおよびピリミジン塩基の反復される単位などの反復するヌクレオチドの長い鎖を指す、その明白な意味を有する。この用語を特許請求の範囲において使用する場合、核酸とは、狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする既知外因性または外来遺伝子を指す。本明細書において使用する場合、用語「組換え」とは、標準の遺伝子工学法によって作製されるアライグマポックスウイルス構築物を指す。
【実施例】
【0121】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を実証する。しかし、これらの実施例は単に例示であって、本発明の条件および範囲について、完全に確定的なものであることを意味しないと理解されなければならない。当然のことながら、通常の反応条件(例えば、温度、反応時間など)が示されている場合には、指定の範囲より上および下の条件も使用できるが、概して、好都合ではない。実施例は、室温(約23℃〜約28℃)および大気圧で実施される。本明細書において言及されるすべての部およびパーセントは、重量ベースであり、すべての温度は、特に断りのない限り摂氏度で表される。
【0122】
本発明のさらなる理解を、以下の実施例から得ることができる。これらの実施例は、本発明を、その範囲を制限することなく例示するよう意図されている。
【0123】
実施例1:rRCNV−狂犬病G2の構築
手短には、狂犬病Pasteur− Paris糖タンパク質遺伝子(G)を、vKB3−JE13ゲノムの血球凝集(ha)遺伝子座に挿入することによってウイルスrRCNV−狂犬病G2を構築した。完全構築物は、RCNVチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集(ha)遺伝子座にそれぞれ挿入されたCVSおよびPasteur−Paris株の狂犬病糖タンパク質遺伝子、さらなる弱毒野生型アライグマポックスウイルス、病原性Herman株を含む。
【0124】
Dr.Joseph J. Esposito(米国疾病対策予防センター(CDC)、Atlanta、GA)から入手したウイルスvKB3−JE13は、Challenge Virus Standard(CVS)株の狂犬病糖タンパク質を、アライグマポックスウイルスのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座で発現する(さらなる情報については、米国特許第7,087,234号、同第6,241,989号、同5,348,741号および同第5,266,313号も参照のこと)。Pasteur−Paris G遺伝子は、WO00/63242の方法に従って製造できる狂犬病DNAワクチンから入手した。rRCNV−狂犬病G2の構築方法は、2つの主要な工程によって提供された。第1に、FDAHの狂犬病DNAワクチン構築物pVAX1−GPV−PV由来の、PCR増幅された1,575bpの狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子(GPV−PV)を、プラスミドpFD2003SELベクターにクローニングして、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製した。第2に、COS−7細胞においてvKB3−JE13およびプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの3者同時感染/トランスフェクションを実施して、ha遺伝子座での対立遺伝子交換によってrRCNV−狂犬病G2を作製した。青色プラーク(Lac+)を、ベロ細胞におけるプラーク精製の4回の連続ラウンドによってクローニングした。クローン候補を、ベロ細胞において、0.05%ラクトアルブミン加水分解物(LAH)、30μg/mLの硫酸ゲンタマイシンおよび5%ウシ胎児血清を補給した最小必須培地(MEM)を用いてさらに3倍以上増殖させ、その後、遺伝子特異的PCRおよび間接免役蛍光アッセイ(IFA)によって確認した。7回継代物を用いてプレマスターシードを調製した。マスターシードは、プレマスターシード、生存ベクターとしてアライグマポックスウイルスがhaおよびtk遺伝子座でPasteur−ParisおよびCVS株の狂犬病糖タンパク質をそれぞれ発現できる設計されたrRCNV−狂犬病G2の1:10,000希釈によって確立すればよい。狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2)のマスターシードは、RCNV ha、tkおよび狂犬病G遺伝子特異的PCR試験によって同定された。狂犬病糖タンパク質の発現は、Accurate Chemical & Scientific Corporation、Westbury、NY製の狂犬病Gタンパク質特異的モノクローナル抗体を用いるIFAによって確認された。ネコおよびイヌにおける細菌、真菌およびマイコプラズマ汚染の検出のための純度試験および安全性試験を、APHIS標準プロトコールに従って実施した。すべての純度および安全性試験の満足のいく結果が報告された。
【0125】
より詳しくは、以下のプロトコールをたどって、組換え生物rRCNV−狂犬病G2を調製した:
レシピエント特性決定に関しては、上記で記載および説明したように、親生物は、1961〜1962年にメリーランド州、アバディーン(Aberdeen)においてY.F.Hermanによって臨床症状のないアライグマの気道から最初に単離されたアライグマポックスウイルス(RCNV)のHerman株とした。RCNVは、直鎖の、ほぼ200kbの、各末端にヘアピンループを含む二本鎖DNAゲノムを含有するポックスウイルス科のメンバーである。その他のポックスウイルス(ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルスおよびカナリアポックスウイルス)と同様に、RCNVは細胞質中で複製し、その自身の転写系を使用し、ワクチン開発のための外来遺伝子を発現するために生存ベクターとして用いられてきた。しかし、RCNVのこれまでの、既知の使用は、アライグマポックスウイルスゲノムのtk遺伝子座での1つのみの狂犬病ウイルス株の糖タンパク質Gの挿入に制限されてきた。
【0126】
遺伝子マーカーについて、RCNV野生型は、tk遺伝子を含み、TK+表現型と表される。先のウイルスvKB3−JE13構築物中への狂犬病CVS G遺伝子の挿入は、tk遺伝子のオープンリーディングフレームを破壊し、RCNV TK−にする。同様に、RCNV野生型は、ha遺伝子を含み、HA+表現型と表される。本発明の方法による狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子の挿入は、ha遺伝子のオープンリーディングフレームを破壊し、RCNV HA−にする。
【0127】
ドナー特性決定に関しては、ドナー生物は以下のように記載される:狂犬病ウイルス、マイナス鎖RNAウイルスは、ラブドウイルス科内のリッサウイルス属のメンバーである。狂犬病ウイルスは、すべての温血動物に感染し得る。このウイルスによる感染は、致命的な神経疾患をもたらし得る。5種の構造タンパク質:核タンパク質(N)、リン酸化タンパク質(M1)、基質タンパク質(M2)、膜貫通糖タンパク質(G)およびRNA依存性RNAポリメラーゼ(L)が、12kbのウイルスゲノムによってコードされる。ウイルス抗原Gタンパク質が、ウイルス中和抗体および致死性の狂犬病ウイルス誘発からの保護を誘導できることは知られている。
【0128】
ドナー遺伝子を得るために、逆転写酵素(RT)−PCRを用いて狂犬病CVSおよびPasteur−Paris株から狂犬病G−cDNAを増幅した。CVSおよびPasteur−Paris狂犬病G遺伝子の大きさは、1575bpである。プラスミドpFD2003−GPV−PVの完全核酸配列および制限酵素マップが図1および2に示されている。さらなるDNA配列分析によって、狂犬病CVS G遺伝子は、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子と89%の同一性を共有することが示され、これら2つの狂犬病G遺伝子を、rRCNV−狂犬病G2ゲノムの、それぞれ、tkおよびha遺伝子座に反対方向に挿入した。
【0129】
組換え生物を構築するために、ウイルスrRCNV−狂犬病G2を狂犬病Pasteur−Paris糖タンパク質遺伝子(G)を、vKB3−JE13ゲノムの血球凝集(ha)遺伝子座に挿入することによって構築した。rRCNV−狂犬病G2の構築方法は、2つの主要な工程を含んでいた。第1に、鋳型としてプラスミドpGPV−PVから構築されたプラスミドpVAX1−GPV−PV(WO00/63242において調製された狂犬病DNAワクチンおよびpGPV−PV参照のこと)を用いてPCRによって増幅された1,575bpの狂犬病Pasteur−Paris G cDNA(GPV−PV)を含有するKpnI−SalI断片を、pFD2003SELベクターに挿入して、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製した。この構築物では、GPV−PVの発現は、合成初期−後期プロモーター(PSEL)によって調節され、レポーター遺伝子としての大腸菌(E.coli)β−ガラクトシダーゼの発現は、反対方向のワクシニアウイルス7.5kDaプロモーター(P75)の転写制御下にあった。全発現カセットを、RCNV ha配列によってフランキングした。第2に、COS−7細胞においてvKB3−JE13およびプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの三者感染/トランスフェクションを実施して、ha遺伝子座での対立遺伝子交換によってrRCNV−狂犬病G2を作製した。青色プラーク(Lac+)を、ベロ細胞におけるプラーク精製の5回の連続ラウンドによってクローニングした。遺伝子(haまたはtk)特異的PCRを用いて、混合集団が存在しないことを確認し、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)を用いて、狂犬病糖タンパク質の発現を調べた。rRCNV−狂犬病G2の構築における重要な工程の例示については図3参照のこと、rRCNV−狂犬病G2 ゲノムのダイアグラムについては図4参照のこと。
【0130】
中間体クローニングベクターとして、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを本明細書に記載されるとおりに構築した。プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの完全配列および制限酵素マップは、図1および2にそれぞれ示されている。
【0131】
レシピエントに遺伝子修飾を導入するために、狂犬病CVSおよびPasteur−Parisの G遺伝子を、相同組換えによってRCNVゲノムのtkおよびha遺伝子座にそれぞれ挿入した。ワクシニアウイルスを用いてこれまでに記載された手順(J.J.Espositoら、「Vaccinia virus recombinants expressing rabiesvirus glycoprotein protect against rabies」、Virus Genes1:7〜21頁(1987年)参照のこと)を用いて、本発明の新規遺伝子修飾をアライグマポックスウイルスに導入するこの方法を達成した。
【0132】
組換え生物を同定および精製するためのスクリーニング法およびプロトコールは、以下のとおりに実施した:組換えウイルスを、標準ウイルスプラーク精製技術によって精製した。vKB3−JE13を、CV−1細胞内の相同組換えによって作製した。TK−ウイルスは、変異原性化合物5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)の存在下で選択し、DNAハイブリダイゼーション、PCRおよび狂犬病糖タンパク質タンパク質発現の免疫学的スクリーニングを含めた種々の方法によって組換え体をさらにスクリーニングした。rRCNV−狂犬病G2は、ブルプラーク(Lac+)精製、遺伝子(haまたはtk)特異的PCRおよびIFAによってスクリーニングした。
【0133】
実施例2:rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験
RCNV野生型においてhaおよびtk遺伝子を、およびrRCNV−狂犬病−G2ゲノムのhaおよびtk遺伝子座療法に挿入された狂犬病糖タンパク質(G)遺伝子を同定するために、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5中に存在する混合集団がないことを実証するために、以下の材料および方法を用いて包括的PCR試験を実施した。
【0134】
材料
1.ウイルス:
a)rRCNV−狂犬病G2 MSV
b)rRCNV−狂犬病G2 X+5
c)RCNV野生型エスポシト(Esposito)
2.QIAGEN DNeasy組織キット(Qiagen Inc、Valencia、CA、USAから市販されている)
3.遺伝子特異的プライマー:
a)同定試験のために、プライマーHA−08およびHA−Pstを用いてRCNV野生型の563bpのha遺伝子断片を増幅した。
【0135】
i)HA−08:5’−GAA ACA ATG CCA AAT ATC TCT−3’(配列番号2に対応する)
ii)HA−Pst:5’−TCA TTG ACA TCT GGA GAT GCA GGT ACT−3’(配列番号3に対応する)
b) 同定試験のために、プライマーHA−Pstおよびgp−1Fを用いて、rRCNV−狂犬病G2 ゲノムのha遺伝子座で、1303bpの狂犬病Pasteur−ParisのG遺伝子断片を増幅した。
【0136】
i)HA−Pst:上記の配列を参照のこと
ii)gp−1F:5’−ACA CTA ACT TCG TTG GTT−5’(配列番号4に対応する)
c)同定試験のために、プライマーTK−LWおよびTK−RWを用いて、503bpのRCNV野生型のtk遺伝子断片を増幅した。
【0137】
i)TK−LW:5’−AAC GTA ATG GAT ATA TTA AAG TCT−3’(配列番号5に対応する)
ii)TK−RW:5’−GAA AAC GAC GCC TCT TTA AAG−3’(配列番号6に対応する)
d)同定試験のために、プライマーTK−RRおよびgJE−F1を用いて、rRCNV−狂犬病G2ゲノムのtk遺伝子座で、1637bpの狂犬病CVSのG遺伝子断片を増幅した。
【0138】
i)TK−RR:5’−GAA AAG GAA GCC TCC TTA AAG−3’(配列番号7に対応する)
ii)gJE−F1:5’−TCT CCT ACA TGG AAC TCA−3’(配列番号8に対応する)
4.Applied Biosystems AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems、Foster City、CAから市販されている)
5.Amersham−Pharmacia−Biotech Inc.dNTP(Amersham Biosciences、Piscataway、NJから市販されている)
6.Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems、Foster City、CAから市販されている)
方法
A.DNA調製
rRCNVゲノムDNA調製は、QIAGEN DNeasy組織キット(Qiagen Inc、Valencia、CA、USAから市販されている)を用い、Qiagenによって提供される取扱説明書に記載のとおりに実施した。
【0139】
B.PCR試験
この包括的PCR試験では、プライマーHA−08およびHA−Pstを用いて、RCNV野生型をスクリーニングし、プライマーHA−Pstおよびgp−1Fを用いて、ha遺伝子座でrRCNV−狂犬病G2をスクリーニングし、プライマーTK−LWおよびTK−RWを用いて、RCNV野生型をスクリーニングし、プライマーTK−RRおよびgJE−F1を用いて、tk遺伝子座でrRCNV−狂犬病G2をスクリーニングした。
【0140】
1.各PCR反応のために、以下の反応混合物を調製する:
5μL 10×PCRバッファー
3μL 25mM MgCl2
5μL 2mM dNTPs
5μL 各プライマー(10μM)
5μL DNA鋳型
0.5μL 5ユニット/μL ABI AmpliTaq Gold
21.5μL ddH20
2.95℃のサーマルサイクラー中で、10分間、サンプルをインキュベートして、DNA鋳型を完全に変性する。
【0141】
3.標的鋳型を35サイクルの間、増幅する。
【0142】
工程 温度 時間
変性 94℃ 1.0分
アニーリング 590C 1.0分
伸長 720C 2.0分
4.サンプルを72℃で、さらに5分間維持する。
【0143】
5.サンプルを4℃で無期限に維持する。
【0144】
C.アガロースゲル電気泳動
1.10μLの各PCR産物を、2μLのローディングバッファーと合わせる。
【0145】
2.サンプルを、マーカーとしてPromega Lambda DNA/Hind IIIおよびPromega 1kb DNAラダーとともに1%アガロースゲルに流す(両製品とも、Promega Corporation、Madison、WIから市販されている)。
【0146】
結果
遺伝子特異的プライマーを用いた、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験の結果が図5に示されている。プライマーHA−08およびHA−Pstを用いて、RCNV ha遺伝子(図5A、ゲルA)を検出し、プライマーTK−LWおよびTK−RWを用いて、RCNV tk遺伝子(図5B、ゲルB)を検出し、MSVおよびX+5(レーン2〜6)ではバンドは観察されなかった。対照的に、RCNV野生型Esposito(レーン7)では、ha遺伝子座の563bpバンドおよびtk遺伝子座の503bpバンドの両方が観察された。これらの結果は、RCNV野生型は、rRCNV−狂犬病G2中に混合されているということを示した。プライマーHA−Pstおよびgp−1Fを用いて、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子がrRCNV−狂犬病G2 ゲノムのha遺伝子座に挿入されているかどうかを調べた場合、プライマーTK−RRおよびgJE−F1を用いて、狂犬病CVS G遺伝子がrRCNV−狂犬病G2 ゲノムのtk遺伝子座に挿入されているかどうかを調べた場合には、ha遺伝子座の1303bpバンドおよびtk遺伝子座の1637bpバンドの両方が、それぞれ、MSVおよびX+5(レーン8〜9)において観察された。対照的に、RCNV野生型Esposito(レーン13)ではバンドは観察されなかった。これらの結果は、狂犬病Pasteur−ParisおよびCVS G遺伝子は、rRCNV−狂犬病G2 ゲノムのhaおよびtk遺伝子座にそれぞれ挿入されているということを示した。これらの結果は以下の表1に要約されている:
【0147】
【表1−1】
【0148】
【表1−2】
結論
このPCR同定試験の結果から、狂犬病Pasteur−ParisおよびCVS G遺伝子は、rRCNV−狂犬病G2ゲノムのhaおよびtk遺伝子座に物理的に存在していたこと、およびRCNV野生型は、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5中には混合されていないことが結論付けられる。このPCR試験はまた、1)RCNV野生型の、rRCNV−狂犬病G2ゲノムのhaおよびtk遺伝子座中の狂犬病Pasteur−ParisおよびCVS G遺伝子の同定試験;および2)組換えウイルス構築のプラーク精製の際にrRCNV−狂犬病G2をRCNV野生型と区別するためのクローンスクリーニングのために使用できる。
【0149】
実施例3:rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5における狂犬病糖タンパク質のIn Vitro発現
rRCNV−狂犬病G2 MSVおよび継代5の感染ベロ細胞における狂犬病糖タンパク質の発現を調べるために、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)を実施した。
【0150】
材料
ウイルス: rRCNV−狂犬病G2 MSV
rRCNV−狂犬病 G2 X+5
ベロ細胞: P18−ベロ−12
培地: w/0.05%のLAH & Gentを補給した1×MEM
一次抗体: 抗狂犬病IgG2mAb(Accurate Chemical&Scientific Corp.、Westbury、NYから市販されている)
二次抗体: 蛍光がコンジュゲートしているヤギ抗マウスIgG(H+L)0.5mg
希釈剤/洗浄バッファー: 0.01M PBS
増強溶液: 1mg/mL p−フェニレンジアミン
90% グリセロール
10% 0.01M PBS
0.5M 炭酸バッファー
pH9.0、−20℃、暗所で保管
蛍光顕微鏡: Olympus BX51
方法
1.2個の8ウェルチャンバースライドに、0.05%のラクトアルブミン加水分解物(LAH)、30μL/mLのゲンタマイシンおよび5%のウシ胎児血清(FBS)を補給した、500μLの1×最小必須培地(MEM)中、1.0×105個のベロ細胞を植え付ける。
【0151】
2.5% CO2チャンバー中、37℃で一晩インキュベートする。
【0152】
3.1×MEM w/0.05%LAH & Gent培地を用いて、サンプルで、rRCNV−狂犬病G2 MSVについては、未希釈から10−1まで、rRCNV−狂犬病G2 X+5については、10−2〜10−4の連続10倍希釈を行う
4.100μLの各希釈物をチャンバースライドのウェルに2連で入れ、4番目のウェルは陰性対照として残しておく。
【0153】
5.5% CO2中、37℃でチャンバーを一晩48時間インキュベートする。
【0154】
6.細胞変性効果を観察し、狂犬病Gタンパク質特異的モノクローナル抗体(Gタンパク質特異的MAb)を用いるIFA(間接免疫蛍光アッセイ)によって狂犬病Gタンパク質発現のプラークをらに調べる。
【0155】
結果
結果は図6A〜6Cに示されている。rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5感染ベロ細胞のすべての希釈物において、細胞変性効果および蛍光が観察された(図6Aおよび6b参照のこと)が、非感染ベロ細胞のみを含有する陰性対照では観察されなかった(図6C参照のこと)。この結果は、狂犬病Gタンパク質は、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよび継代5において発現され、狂犬病Gタンパク質特異的モノクローナル抗体によって検出されるということを示した。
【0156】
実施例4:NIHマウス効力試験
標準NIHマウス効力試験を用いて、rRCNV−狂犬病G2およびvKB3−JE13(RCNV Rab−G)構築物の最初の比較研究を実施した。結果は、以下の表2に要約されている:
【0157】
【表2】
上記の結果は、本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物は、驚くべきことに、vKB3−JE13 構築物よりも23倍強力であることを示した。
【0158】
その後、同業界によって認識される技術を用いて、以下により詳細に記載される、さらなる研究を実施して、種々の製剤における狂犬病ワクチン、本発明の生存アライグマポックスウイルスベクターのNIHマウス効力、当技術分野で公知のこれまでの狂犬病ワクチンと比較して調べた。
【0159】
材料
ウイルスまたはワクチン:
rRCNV−狂犬病G2、生存ベクター(7.0Logs10TCID50/mL)
rRCNV−狂犬病G2、生存ベクター(6.5Logs10TCID50/mL)
vKB3−JE13(CDC旧構築物)(7.2Logs10TCID50/mL)
Merial PUREVAX(登録商標)ネコ狂犬病(生存カナリアポックスベクターを用いる一価の狂犬病糖タンパク質ワクチン、Merial、Harlow、Essex、UKから市販されている)
rRCNV−狂犬病G2(6.38Logs10TCID50/mL)
不活化rRCNV−狂犬病G2(不活化前力価:6.38Logs10TCID50/mL)
NIH狂犬病参照ワクチン:アジュバントを含む不活化狂犬病ワクチン、NIHマウス効力試験において参照として用いられる究極の判断基準ワクチン。
【0160】
方法
NIHマウス効力試験:
この試験は、元の方法では、1:5、1:25、1:125および1:625の、または改正法では未希釈、1:10、1:100および1:1000の試験ウイルス/ワクチンを用いて標準法「狂犬病ワクチンのNIHマウス効力試験」を実施した。手短には、16匹のマウスに、7日間隔(特記されない限り)で、2用量の0.5mLの試験ウイルス(希釈された、もしくは未希釈の)またはNIH狂犬病参照ワクチンを用いて、腹膜内に(IP)ワクチン接種した。最初のワクチン接種の14日後、すべてのワクチン接種したマウスに、0.03mLの、1:80,000希釈の病原性狂犬病(チャレンジウイルスは、ワクチン接種されていないマウス(各希釈10マウス)において5倍希釈で逆滴定して、適切な攻撃用量を確実にした。)を用いて脳内に攻撃した(IC)。すべてのマウスは、攻撃後14日間毎日観察した。
【0161】
結果
以下の表3では、rRCNV−狂犬病G2の相対効力(RP)は、それぞれ、6.5Logs10TCID50/mLで27.9および7.0Logs10TCID50/mL で101.9である。表4では、6.5Logs10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2は、7.2Logs10TCID50/mLのMerial PUREVAX(登録商標)ネコ狂犬病ワクチン(Merial、Harlow、Essex、UKから市販されている生存カナリアポックスベクターを用いる一価の狂犬病糖タンパク質ワクチン、これは、市場からこの実験比較の目的で購入した)およびVKB3−JE13(CDC旧構築物)よりも強力であった。以下の表5では、結果は、生存rRCNV−狂犬病G2は、不活化ワクチン製品よりも強力であると示した。
【0162】
結論
NIHマウス効力試験は、本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物はマウスモデルにおいて高度に強力であるということを示した。
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】
【表5】
実施例5:PCR試験によるrRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の遺伝的安定性試験
実験研究の目的は、PCR試験によってrRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の遺伝的安定性を調べることである。
【0166】
材料
1.ウイルス:
a)rRCNV−狂犬病G2 MSV
b)rRCNV−狂犬病G2 X+5
2.プライマー:
a)ha遺伝子座での1806bpのPasteur−Paris狂犬病G遺伝子およびその部分フランキング領域の増幅のために、
HA−Pst:5’−TCA TTG ACA TCT GGA GAT GCA GGT ACT−3’(配列番号3に対応する)
PW−04: 5’−AGA ACA TTA CCC ACA TGA−3’(配列番号9に対応する)
b) tk遺伝子座での1910bpのChallenge Virus Standard(CVS)狂犬病G遺伝子およびその部分フランキング領域の増幅のために
TK−RR:5’−GAA AAG GAA GCC TCC TTA AAG−3’(配列番号7に対応する)
PW−03:5’−TCT CAC AAT CAC CAC TTT CAT−3’(配列番号10に対応する)
3.DNA精製およびPCRクローニングのためのキット/試薬
a)QIAGEN DNeasy組織キット(Qiagen Inc.、Valencia、CA、USAから市販されている)
b)Applied Biosystems AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems、Foster City、CAから市販されている)
c)Amersham−Pharmacia−Biotech Inc.dNTP(Amersham Biosciences、Piscataway、NJから市販されている)
4.Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems、Foster City、CAから市販されている)
方法
A.DNA調製
QIAGEN DNeasy組織キット(Qiagen Inc、Valencia、CA、USAから市販されている)を用い、Qiagenによって提供される取扱説明書に記載のとおりに、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5からのゲノムDNAの調製を実施した。
【0167】
B.PCR試験
このPCR試験では、プライマーHA−PstおよびPW−04を用いて、ha遺伝子座で1806bpのPasteur−Paris狂犬病G遺伝子およびその挿入フランキング領域を増幅し、プライマーTK−RRおよびPW−03を用いて、tk遺伝子座で1910bpのCVS狂犬病G遺伝子およびその挿入フランキング領域を増幅した。
【0168】
1.各PCR反応のために、以下の反応混合物を調製する:
5μL 10×PCRバッファー
3μL 25mM MgCl2
5μL 2mM dNTP
5μL 各プライマー(10μM)
5μL DNA鋳型
0.5μL 5ユニット/μL ABI AmpliTaq Gold
21.5μL ddH20
2.95℃のサーマルサイクラー中で、10分間サンプルをインキュベートして、DNA鋳型を完全に変性する。
【0169】
3.標的鋳型を35サイクルの間、増幅する。
【0170】
工程 温度 時間
変性 94℃ 1.0分
アニーリング 590C 1.0分
伸長 720C 2.0分
4.サンプルを72℃で、さらに5分間維持する。
【0171】
5.サンプルを4℃で無期限に維持する。
【0172】
C.アガロースゲル電気泳動
1.10μLの各PCR産物を、2μLのローディングバッファーと合わせる。
【0173】
2.サンプルを、マーカーとしてPromega Lambda DNA/Hind IIIおよび1kb DNAラダーとともに1%アガロースゲルに流す(両製品とも、Promega Corporation、Madison、WIから市販されている)(図7参照のこと)。
【0174】
結果
PCR結果は、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5から、1806bp(ha遺伝子座)および1910bp(tk遺伝子座)の同一のバンドが増幅されることを示した(図7参照のこと)。この結果は、それぞれ、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5から得た、挿入フランキング領域およびtk遺伝子座のCVS狂犬病株の、およびha 遺伝子座のPasteur−Paris狂犬病株の狂犬病G遺伝子内に、注目すべき挿入または欠失は生じていないことを示した。rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5間のバンド密度の相違は、継代5のウイルスの力価が、マスターシードよりお約10,000倍高かったからである。結果は表6に要約されている。
【0175】
【表6】
結論
PCR試験から、rRCNV−狂犬病G2 MSVは、継代5への製造前スケールアップ手順下で遺伝的に安定であると結論付けられる。
【0176】
実施例6:青色プラークアッセイによる、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の表現型安定性試験
この研究は、青色プラークアッセイによって、継代5(rRCNV−狂犬病G2 X+5)への製造前スケールアップ手順下でrRCNV−狂犬病G2 MSV(マスターシードウイルス)が表現型上安定であったかどうかを調べる。
【0177】
方法
A.ベロ細胞を播種する
1.細胞を、7×105個/mL(1×MEM/0.05% LAH/Gent培地+5%FBS中10mL)の濃度で100mmディッシュ上に植え付け、細胞が感染のために約80%のコンフルエンシーに達するよう一晩増殖させる。
【0178】
B.ウイルス希釈
2. Thaw out ウイルスを室温で解凍し、場合により、氷上で15秒間、3回、超音波処理する。
【0179】
3.1×MEM/0.05% LAH/Gent培地で連続10倍希釈を作製する:
a)rRCNV−狂犬病G2 MSVを10−1に希釈した。
【0180】
b)rRCNV−狂犬病G2 X+5を10−5に希釈した。
【0181】
C.感染
4.100mmディッシュから培地を除去し、6mlの0.01M PBSを用いて2回すすぐ。
【0182】
5.プレートからすべての液体を除去し、各ディッシュに希釈したウイルスを加える。
【0183】
a)MSVについて:1mLの100および10−1希釈したウイルスを3連で加えた。
【0184】
b)X+5について:1mLの10−3、10−4および10−5希釈したウイルスを3連で加えた。
【0185】
6.各ディッシュに4mLの1×MEM/0.05% LAH/Gent培地を加え、各ディッシュ中の総容積を5mLとする。
【0186】
7.37℃、5%CO2で2時間ンキュベートし、ベロ細胞にウイルスを感染させる。
【0187】
D.寒天オーバーレイ
8.2×MEM/0.05%LAH/Gent培地に10% FBSを加え、42℃に加温する。
【0188】
9.溶解した後、Noble寒天を56℃に冷却する。
【0189】
10.等容積の2.5%Noble寒天を、2×MEM/0.05%LAH/Gent培地+10% FBSと混合し、56℃の水のビーカー中、室温で10分間静置しておく。
【0190】
11.2時間の感染後、工程7のプレートから全培地を除去し、細胞単層巣を、15mLの工程10から得た増殖培地/Noble寒天混合物で覆う。
【0191】
12.寒天を10〜15分間固化させる。
【0192】
13.37℃および5% CO2でディッシュをインキュベートする。
【0193】
E.染色
5日間インキュベーションした後、以下のとおりに7mLの染色溶液でディッシュを覆う:
14.染色溶液(100mL):50mLの2.5%Noble寒天、50mLのPBSおよび1mLの50mg/mL X−Galを調製する。
【0194】
15.混合する前に、Noble寒天を56℃に冷却し、PBSを42℃に加温する。まず、PBSおよびX−Galを混合し、次いで、X−Gal/PBSをNoble寒天中に加える。混合物を、56℃の水を含有するビーカー中、室温で10分間静置する。
【0195】
16.10分後、各プレート上に7mLの染色溶液を加える。
【0196】
17.寒天を10〜15分間固化させる
18.37℃で4〜6時間インキュベートする。
【0197】
19.青色プラークを計数し、デジタル画像を記録する。
【0198】
結果
各プレート上で総青色プラークを計数し、以下の表7に要約した。いずれのプレートにおいても白色プラークは観察されなかった。ベロ細胞におけるrRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5に由来する青色プラークのデジタル画像が図8Aおよび8Bにそれぞれ示されている。rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の算出された力価を以下に示す。
【0199】
結論
rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5のいずれにおいても白色プラークは大きな力価喪失は観察されなかった。この結果は、rRCNV−狂犬病G2 MSVは、継代5への製造前スケールアップ手順下で表現型上安定であることを示した。
【0200】
【表7】
実施例7:ネコにおけるrRCNV−狂犬病G2の力価測定研究
この研究は、rRCNV−狂犬病G2ワクチンの短期間(3ヶ月)の有効性を実証するために実施した。
【0201】
rRCNV−狂犬病G2の力価測定研究は、40匹のネコで実施した。アジュバント不含試験ワクチンは、生存rRCNV−狂犬病G2および1×MEM(最小必須培地)からなっていた。ワクチンは、2〜7℃で保管した。この研究では、4群(各群につき12週齢の10匹のネコ)があった:群1〜3のネコには、単回用量(1mL/用量)の6.5、5.5および4.5Log10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2をそれぞれ皮下(SQ)に投与したのに対し、群4(対照)のネコにはワクチン接種を行わなかった。ネコはワクチン接種時に12週齢であった。ワクチン接種の3ヶ月後、狂犬病NYC street株を用いてネコを攻撃した。攻撃の42日後、ワクチン接種を受けたネコは死亡しなかったのに対し、対照ネコの80%(8/10)が狂犬病感染のために死亡した。3種の異なる投与量でワクチン接種を受けたネコの100%が保護されたと示し、この研究の優れた結果は、本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物が、ネコにおいて狂犬病攻撃に対して完全な保護を誘導できることを示した。
【0202】
この用量漸増研究では、4群:ネコ(n=3×10)があり、3つのワクチン接種群には、それぞれ、3種の異なる力価(6.50、5.39および4.42Log10TCID50/mL/用量)を有する単回用量の狂犬病ワクチン、生存アイグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2)を、12週齢で投与し、対照群のネコ(n=10)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後28、63および98日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたネコの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0203】
ワクチン接種の3ヶ月より後に(98DPVで)、すべてのネコ(30匹のワクチン接種および10匹の対照)を、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された狂犬病street NYC株ロット92−5の1:150直接希釈物を用いて攻撃した。すべての攻撃されたネコを、42日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。攻撃結果は、8/10(80%)の対照が狂犬病のために死亡したが、各ワクチン接種群では10/10(100%)のワクチン接種を受けたものが42日間健康なままであったということを実証した。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、3つのワクチン接種群すべてについて100%であった。
【0204】
要約すれば、この用量漸増研究から得られた結果は、生存アライグマポックスウイルスベクターを用いる本発明の組換え狂犬病ワクチンは、ネコにおける、単回ワクチン接種後少なくとも3ヶ月間の狂犬病の予防において、4.42Log10TCID50/mL(用量あたり)ほどの低い力価であっても有効であることを実証した。
【0205】
ワクチン接種の3ヶ月より後に(98DPVで)、すべてのネコを、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された狂犬病street challengeウイルス(ロット92−5、3−1−92、キツネにおけるNYC株)の1:150直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、42日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。42日後、すべての狂犬病動物が攻撃後最初の4週間のうちに死亡した、これまでの狂犬病攻撃結果によって、攻撃観察期間は正当であるとした。
【0206】
致死的攻撃用量は、この研究における対照ネコの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、8/10(80%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。したがって、これは妥当な攻撃試験であった。
【0207】
各ネコから6mLの全血を、ワクチン接種後0日(DPV)、28DPV、63および98DPVに血清のために採取した。
【0208】
血清サンプルは、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)、NVSL(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture))によって公開された組織培養蛍光抗体手順によって試験して、狂犬病ウイルスに対する血清中和(SN)力価を調べた。
【0209】
この研究に用いたrRCNV−狂犬病G2ワクチンは、ベロ細胞で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、それぞれ、6.50(V1)、5.39(V2)および4.42(V3)Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0210】
ワクチン接種の28、63および98日後に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたネコの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0211】
攻撃後、ネコは42日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。8/10(80%)のワクチン接種を受けていない対照ネコが死亡するか、または狂犬病の徴候を示し、このことは、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、3つの群において、すべてのワクチン接種を受けたネコ(10/10、100%)が健康なまmであった。狂犬病感染による8匹のネコの死亡は、12DPCから25DPCの間に起こることがわかった。ワクチン接種を受けたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、3つのワクチン接種を受けた群すべてについて100%であった。
【0212】
この用量漸増研究から、生存アライグマポックスウイルスベクターを用いる新規狂犬病ワクチン(rRCNV−狂犬病G2)は、ネコにおける、単回ワクチン接種後少なくとも3ヶ月間の狂犬病の予防において、用量あたり4.42Log10TCID50/mLほどの低い力価であっても有効であると結論付けられる。
【0213】
実施例8:イヌにおけるrRCNV−狂犬病G2の用量漸増研究
この研究の目的は、rRCNV−狂犬病G2ワクチンの短期間(3ヶ月)の有効性を実証することであった。
【0214】
rRCNV−狂犬病G2の用量漸増研究は、40匹のイヌで実施した。試験ワクチンは、生存rRCNV−狂犬病G2および1×MEMからなり、アジュバントは含んでいなかった。この研究では、4群(各群につき、12週齢の10匹のイヌ):群1〜3中のイヌには、それぞれ、6.5、5.5および4.5Logs10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2の単回用量(1mL/用量)を皮下に投与したが(SQ)、群4(対照)のイヌには、ワクチン接種を行わなかった。イヌはワクチン接種時に12週齢であった。ワクチン接種の3ヶ月後、狂犬病NYC street株を用いてイヌを攻撃した。攻撃の42日後、群1では0%(0/10)群2では、10%(1/10)および群3では30%(3/10)のイヌが死亡したが、対照イヌの100%(10/10)が狂犬病感染のために死亡した。群1の100%(10/10)イヌが感染から保護された優れた結果は、本発明のrRCNV−狂犬病G2は、イヌが6.5Logs10TCID50/mLの有効免役量でワクチン接種を受けた場合に、狂犬病攻撃に対する完全な保護を誘発し、うまく達成したことを示す。5.5Logs10TCID50/mLの有効量でワクチン接種を受けたイヌの90%(9/10)が、感染から保護されたことを実証する群2もまた、満足のいく結果であった。この研究は、標準用量漸増技術によって、生存狂犬病ワクチンの承認のための米国政府の必要条件(9C.F.R.§113.312)を満たす、満足のいく結果を有する本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物の有効免疫量または投与量を確立できることを示す。
【0215】
この用量漸増研究では、4群があった:3つのワクチン接種群のイヌ(n=3×10)には、それぞれ、3種の異なる力価(6.50、5.39および4.42 Log10TCID50/mL/用量)を有する単回用量の狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2)を、12週齢で投与し、対照群のイヌ(n=10)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後28、64および91日に、すべてのイヌを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたイヌの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないイヌは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0216】
ワクチン接種の3ヶ月より後に(98DPVで)、すべてのイヌ(30匹のワクチン接種および10匹の対照)を、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された狂犬病street NYC株(キツネにおけるNYC株)の1:10−5直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、各0.5mLの咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。すべての攻撃されたイヌを、42日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病のために死亡したが、それぞれ、6.50、5.39および4.42Log10TCID50/mL/用量の用量でワクチン接種を受けたイヌの10/10(100%)、9/10(90%)および7/10(70%)が42日間健康なままであったことを実証した。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、それぞれ、100%(V1)、90%(V2)および70%(V3)であった。
【0217】
要約すれば、この用量漸増研究から得られた結果は、生存RCNVを用いる新規狂犬病ワクチンは、イヌにおける、単回ワクチン接種後少なくとも3ヶ月間の狂犬病の予防において補助として、5.39Log10TCID50/mL(用量あたり)ほどの低い力価であっても有効であることを実証した。
【0218】
致死的攻撃用量は、この研究における対照ネコの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。これは明らかに妥当な攻撃試験であった。
【0219】
血清サンプルを採取した。各イヌから8mLの全血を、ワクチン接種後0日(DPV)、28DPV、63および91DPVに血清のために採取した。血清サンプルは、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)、NVSL(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture))によって公開された組織培養蛍光抗体手順によって試験して、狂犬病ウイルスに対する血清中和(SN)力価を調べた。
【0220】
この研究に用いたrRCNV−狂犬病G2ワクチンは、ベロ細胞で5つの複製で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、それぞれ、6.50(V1)、5.39(V2)および4.42(V3)Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0221】
ワクチン接種の28、63および91日後に、すべてのイヌを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたイヌの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないイヌは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0222】
攻撃後観察:攻撃後、イヌは42日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。10/10(100%)のワクチン接種を受けていない対照イヌが死亡するか、狂犬病の徴候を示し、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、それぞれ、6.50、5.39および4.42Log10TCID50/mL/用量でワクチン接種を受けたイヌの10/10(100%)、9/10(90%)および7/10(70%)が42日間健康なままであった。興味深いことに、狂犬病感染による14匹のイヌの死亡は、13DPCから25DPCの間に起こることがわかった。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、それぞれ、100%(V1)、90%(V2)および70%(V3)であった。
【0223】
この用量漸増研究から、生存アライグマポックスウイルスベクターを用いる狂犬病ワクチン(rRCNV−狂犬病G2)は、イヌにおける、単回ワクチン接種後少なくとも3ヶ月間の狂犬病の予防において補助として、5.39Log10TCID50/mLほどの低い力価であっても有効であると結論付けられる。
【0224】
実施例9:ネコにおける、狂犬病ワクチン(低用量および常用量)、生存アライグマポックスウイルスベクターの1年の免役継続期間研究
ネコにおいてワクチン製剤を使用するための防御用量を調べるために、2つの、rRCNV−狂犬病G2ワクチンの1年の免役継続期間(DOI)研究を実施し、病原性狂犬病ウイルス攻撃によって有効性が実証された。これらの研究の目的は、2つの異なる用量、5.38Log10TCID50/mlの低用量および6.28Log10TCID50/mlの常用量の狂犬病ウイルスワクチンを用いた単回ワクチン接種後、1年の期間後、ネコにおいてアジュバント不含組換え狂犬病ワクチンの有効性および免疫原性を調べることであった。
【0225】
A.低用量研究概要
手短には、この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種群のネコ(n=28)には、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(VSコード1901.R5)の単回用量を、12週齢で投与し、対照群のネコ(n=13)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後28、91、183、272および365日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の1年より後に(421日目)、狂犬病攻撃のために35匹のネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株ロット92−5の1:40直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたネコを、90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたネコの脳を各々、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0226】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、「低」用量と呼ばれる、5.38Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。ワクチン接種を受けたネコでは相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0227】
攻撃結果は、8/10(80%)のワクチン接種を受けていない対照が狂犬病によって死亡したが、ワクチン接種を受けたネコの3/25すなわち12%しか狂犬病によって死亡せず、22/25(88%)のワクチン接種を受けたものは90日間健康なままであったことを実証した。9匹の死亡した対照ネコの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、85%(95%CI55,97)であった。これは、狂犬病ワクチン有効性のための法的要件(タイトル9、連邦およびEPの規則集)を満たす満足のいく試験である。
【0228】
低用量研究のためのプロトコール
この研究のプロトコールを以下にさらに詳細に記載する:
ワクチン接種時には、28匹の試験動物および13匹の対照動物があった。攻撃のために35匹のこれらのネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。ネコは、ワクチン接種時に12週齢であった。この研究のための凍結乾燥したrRCNV−狂犬病G2ワクチンは、2〜7℃で保存した。凍結乾燥ワクチンは、生存rRCNV−狂犬病G2およびSGGK安定化剤からなっていた。試験組換え狂犬病ワクチンは、アジュバント不含であった。試験ワクチンは、5つの複製アッセイで力価測定し、この研究においてネコに投与される用量を定めた。ワクチンの平均力価は、5.38Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0229】
ワクチン接種時には、41実験単位(28のワクチン接種されたものおよび13の対照)があった。攻撃のために、これらのネコのうち35匹(25匹のワクチン接種されたもの、および10匹の対照)を無作為に選択した。同腹の子に従って、動物を、ワクチン接種されるものおよび対照に無作為化した。無作為化プロセスは、マイクロソフトエクセルを用いた各同腹仔の動物への乱数割り当てによって完了した。各同腹仔中の乱数を、その同腹仔から各群への動物の配置について昇順に分けた。このプロセスを、すべての同腹仔からの動物が無作為化されるまで反復した。
【0230】
本研究は、無作為化完備ブロック計画であった。41匹のネコを、以下のように無作為に2群に分けた:
【0231】
【表8】
ワクチン接種プロトコール
凍結乾燥ワクチンを、1.0mLの供給された滅菌水希釈剤によって再水和した。ワクチン接種経路は皮下とした。ワクチン接種群中の各動物には、1回用量(1mL/用量)のワクチンを襟首に投与した。対照動物には、ワクチン接種を行わなかった。APHIS/CVB調査官は現場で、ワクチン接種の全手順を観察した。長期の研究機関のために、Fel−O−Vax PCTを用い、ラベルの指示に従って、すべてのネコにワクチン接種した。
【0232】
攻撃プロトコール
rRCNV−狂犬病G2ワクチンを用いたワクチン接種の1年より後に(421DPV)、攻撃のために10匹の対照および25匹のワクチン接種されたものを無作為に選択した。無作為化は、マイクロソフトエクセル中の乱数発生器を用いて実施した:ワクチン接種されたものに数を割り当て、分け、ワクチン接種されたものの数が25に等しくなるまで最大数をつけたネコを攻撃から除外し;類似の手順を用いて、対照の数を10に減らした。結果として、3匹の対照および2匹のワクチン接種されたものを、攻撃相から無作為に排除した。さらに、1匹の、種々の皮膚疾患を有していたワクチン接種されたものを、攻撃の前にこの研究から排除した。
【0233】
35匹のネコのすべてを、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street challengeウイルス(キツネにおけるNYC株)の1:40直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの各咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、90日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。APHIS/CVB調査官は現場で、攻撃ウイルス希釈および狂犬病攻撃の全手順を観察した。
【0234】
致死的攻撃用量は、この研究における対照ネコの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、8/10(80%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。したがって、これは妥当な攻撃試験であった。
【0235】
サンプル採取および試験
血清サンプル
血清サンプルを採取した。各ネコから6mLの全血を、ワクチン接種後0日(DPV)、28DPV、91DPV、183DPV、272DPVおよび365DPVに血清のために採取した。
【0236】
血清学試験
血清サンプルは、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)、NVSL(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture))によって公開された組織培養蛍光抗体手順によって試験して、狂犬病ウイルスに対する血清中和(SN)力価を調べた。
【0237】
動物の試験
攻撃後観察期間の間、安楽死させた、または死亡しているように見えたすべての動物を、狂犬病ウイルスについて試験した。より詳しくは、脳を採取し(アンモン角)、切片を作製し、加工し、蛍光抗体技術によって染色した。
【0238】
結果
ワクチン力価測定
この研究に用いたワクチンは、標準技術によってベロ細胞で5つの複製で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、5.38Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0239】
狂犬病に対する中和抗体
ワクチン接種の28、91、183、272および365日後に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたネコの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0240】
攻撃後観察
攻撃後、ネコは90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。8/10(80%)のワクチン接種を受けていない対照ネコが死亡するか、または狂犬病の徴候を示さず、これが妥当な攻撃試験であったことを示すことがわかった。対照的に、3/25(12%)のワクチン接種を受けたネコしか死亡または狂犬病の徴候を示さなかった。狂犬病感染による11匹のネコの死亡は、10DPCから20DPCの間に起こることがわかった。研究の最後に、22匹のワクチン接種されたものおよび2匹の対照が健康なままであった。ワクチン接種されたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。予防できる確率は85%であった(95%CI55,97)。
【0241】
蛍光抗体試験
上記の安楽死させたネコの脳(8匹の対照および3匹のワクチン接種されたもの)の試験結果は、狂犬病ウイルスについて陽性であり、それによって、これら11匹のネコの死亡は、狂犬病感染によるものであったことが確認された。
【0242】
結論
この1年DOI研究から、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、ネコの単回ワクチン接種後少なくとも1年間の狂犬病の予防において補助として、5.38Log10TCID50/mLほどの低い力価であっても有効であると結論付けられる。
【0243】
B.常用量研究概要
1年の免役継続期間研究を反復した、ただし、組換えワクチンの平均力価は、「標準」用量と呼ばれる、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。凍結乾燥ワクチンは、生存rRCNV−狂犬病G2およびSGGK安定化剤からなっていた。この組換え狂犬病ワクチンは、アジュバント不含であった。試験ワクチンは、5つの複製アッセイで力価測定し、この研究においてネコに投与される用量を定めた。
【0244】
この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種群のネコ(n=28)には、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(VSコード1901.R5)の単回用量を、12週齢で投与し、対照群のネコ(n=13)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後31、91、182、273および364日後に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の1年より後に(399日目)、狂犬病攻撃のために35匹のネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDAによって供給された、ロット92−5の狂犬病street NYC株の1:40直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたネコを90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたネコ各々の脳を、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0245】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。すべてのワクチン接種を受けたネコは相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていない対照ネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0246】
攻撃結果は、9/10(90%)対照が狂犬病によって死亡したが、25/25(100%)のワクチン接種を受けたネコは、90日間健康なままであったことを実証した。9匹の死亡した対照ネコの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、100%(95%CI 84,100)であった。これは、狂犬病ワクチン有効性のための9CFRおよびEP必要条件を満たす満足のいく試験である。
【0247】
要約すれば、この1年のDOI研究から得られた結果は、Fort Dodge Animal Healthの狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、単回ワクチン接種後少なくとも1年間の狂犬病の予防において、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の力価で有効であることを実証する。
【0248】
常用量研究のプロトコール
これは、無作為化完備ブロック計画であった。41匹のネコを、以下のように無作為に2群に分けた:
【0249】
【表9】
ワクチン接種プロトコール
凍結乾燥ワクチンを、1.0mLの供給された滅菌水希釈剤によって再水和した。ワクチン接種経路は皮下とした。ワクチン接種群中の各動物には、1回用量(1mL/用量)のワクチンを襟首に投与した。対照動物には、ワクチン接種を行わなかった。APHIS/CVB調査官は現場で、ワクチン接種の全手順を観察した。長期の研究機関のために、Fel−O−Vax PCTを用い、ラベルの指示に従って、すべてのネコにワクチン接種した。
【0250】
攻撃プロトコール
ワクチン接種の1年より後に(399日目)、攻撃のために10匹の対照および25匹のワクチン接種されたものを無作為に選択した。無作為化は、マイクロソフトエクセル中の乱数発生器を用いて実施した:ワクチン接種されたものに数を割り当て、分け、ワクチン接種されたものの数が25に等しくなるまで最大数をつけたネコを攻撃から除外し;類似の手順を用いて、対照の数を10に減らした。結果として、3匹の対照を、攻撃相から無作為に排除し、安全性試験のためにQCに移した。3匹のワクチン接種されたものも、攻撃相から無作為に排除し、安楽死させた。
【0251】
35匹のネコのすべてを、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street challengeウイルス(キツネにおけるNYC株)の1:40直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの各咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、90日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。APHIS/CVB調査官は現場で、攻撃ウイルス希釈および狂犬病攻撃の全手順を観察した。
【0252】
致死的攻撃用量は、この研究における対照ネコの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、9/10(90%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。したがって、これは妥当な攻撃試験であった。
【0253】
結果
ワクチン力価測定
この研究に使用したワクチンは、ベロ細胞で5つの複製で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0254】
サンプル採取および試験
血清サンプル
6ミリリットルの全血を、ワクチン接種後0日およびワクチン接種後31、91、182、273および364日に採取した。
【0255】
血清学試験
ワクチン接種後31、91、182、273および364日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたネコの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0256】
攻撃後観察
攻撃後、ネコは90日間観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。9/10(90%)のワクチン接種を受けていない対照ネコが死亡するか、狂犬病の徴候を示し、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、ワクチン接種を受けたネコのうち死亡または狂犬病の徴候を示したものはなかった(0/25、0%)。狂犬病感染による9匹のネコの死亡は、10DPCから15DPCの間に起こることがわかった。研究の最後に、25匹のワクチン接種されたものすべておよび1匹の対照が健康なままであった。ワクチン接種されたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。予防できる確率は100%であった(95%CI84,100)。
【0257】
蛍光抗体試験
攻撃後観察期間の間に死亡した、および安楽死させたネコを、蛍光抗体試験のためにアイオワ州立大学獣医学部の獣医診断検査所(Veterinary Diagnostic Laboratory)に確実に運んだ。9匹の死亡したネコの脳(9匹の対照)は、狂犬病ウイルスについて試験の結果、陽性であった。これらの結果から、9匹のネコの死亡は狂犬病によるものであったことがさらに確認された。
【0258】
結論
この1年のDOI研究の結果から、新規狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2構築物)は、単回ワクチン接種後少なくとも1年間の狂犬病の予防において、ネコにおいて、6.28Log10TCID50/mLの力価で有効であると結論付けられる。
【0259】
実施例10:イヌにおける、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターの1年免役継続期間研究
イヌにおける狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターの防御用量を決定するために、rRCNV−狂犬病G2ワクチンの1年の免役継続期間(DOI)研究を実施し、イヌにおいて病原性狂犬病ウイルス攻撃によって有効性を実証した。この研究の目的は、単回ワクチン接種の1年後の、イヌにおけるアジュバント不含組換え狂犬病ワクチンの有効性を実証することであった。
【0260】
手短には、この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種群のイヌ(n=28)には、単回用量の狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(VSコード1901.R5)を、12週齢で投与し、対照群のイヌ(n=13)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後28、91、182、273および365日に、すべてのイヌを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の1年より後に(420日目)、狂犬病攻撃のために35匹のイヌ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株ロット92−5の10−4直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたイヌを、90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたイヌ各々の脳を、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0261】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。ワクチン接種を受けたイヌの大部分で相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないイヌは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0262】
攻撃結果は、9/10(90%)の対照が狂犬病によって死亡したが、22/25(88%)のワクチン接種を受けたものは90日間健康なままであったことを実証した。9匹の死亡した対照および3匹のワクチン接種を受けたイヌの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、87%(95%CI62,97)であった。これは、狂犬病ワクチン有効性のための法的要件(タイトル9、連邦規則集)を満たす満足のいく試験である。
【0263】
具体的に言えば、、ワクチン接種時に28匹の試験動物および13匹の対照動物があった。これらのイヌのうち35匹(25匹のワクチン接種されたもの、および10匹の対照)を、攻撃のために無作為に選択した。イヌはワクチン接種時に12週齢であった。この研究に使用された凍結乾燥rRCNV−狂犬病G2ワクチンは、2〜7℃で保存し、生存rRCNV−狂犬病G2およびSGGK安定化剤からなっていた。この組換え狂犬病ワクチンは、アジュバント不含であった。試験ワクチンは、5つの複製アッセイで力価測定し、この研究においてイヌに投与される用量を定めた。ワクチンの平均力価は、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0264】
対照群においてプラセボは用いなかった。プラセボがないので、特定の観察バイアスは取り込まれなかった。結果は、ワクチン接種日後丸1年を超えて盲検化した観察者によって判断され、その時点では、プラセボがないことの一時的効果の可能性はとうに終わっている。
【0265】
ワクチン接種時には、41実験単位(28のワクチン接種されたものおよび13の対照)があった。攻撃のために、これらのイヌのうち35匹(25匹のワクチン接種されたもの、および10匹の対照)を無作為に選択した。同腹の子に従って、動物を、ワクチン接種されるものおよび対照に無作為化した。無作為化プロセスは、マイクロソフトエクセルを用いた各同腹仔の動物への乱数割り当てによって完了した。各同腹仔中の乱数を、その同腹仔から各群への動物の配置について昇順に分けた。このプロセスを、すべての同腹仔からの動物が無作為化されるまで反復した。
【0266】
この研究は、ワクチン接種されたものおよび対照が、群を越える脱落の可能性を防ぐために別個に飼育されるので、最初の3週間は盲検化されなかった。群を超えるワクチンキャリーオーバーがないことを確実にするために、群は、動物管理スタッフに知られなくてはならなかった。ワクチン接種の3週間後、動物を再度無作為化し、研究の残りを盲検化した。
【0267】
本研究は、無作為化完備ブロック計画であった。41匹のイヌを、以下のように無作為に2群に分けた:
【0268】
【表10−1】
【0269】
【表10−2】
ワクチン接種
凍結乾燥ワクチンを、1.0mLの供給された滅菌水希釈剤によって再水和した。ワクチン接種経路は皮下とした。ワクチン接種群中の各動物には、1用量(1mL/用量)のワクチンを襟首に投与した。対照動物には、ワクチン接種を行わなかった。APHIS/CVB調査官は現場で、ワクチン接種の全手順を観察した。
【0270】
攻撃
ワクチン接種の1年より後に(420日)、攻撃のために10匹の対照および25匹のワクチン接種されたものを選択した。4匹のイヌ(2匹のワクチン接種されたものおよび2匹の対照)を再発性耳感染のために排除した。2匹のイヌ(1匹のワクチン接種されたものおよび1匹の対照)を無作為に排除した。無作為化は、マイクロソフトエクセル中の乱数発生器を用いて実施した:ワクチン接種されたものに数を割り当て、分け、ワクチン接種されたものの数が25に等しくなるまで最大数をつけたイヌを攻撃から除外し;類似の手順を用いて、対照の数を10に減らした。結果として、1匹の対照および1匹のワクチン接種されたものを、攻撃相から無作為に排除した。
【0271】
35匹のイヌのすべてを、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street challengeウイルス(キツネにおけるNYC株)の10−4直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの各咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、90日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。APHIS/CVB調査官は現場で、攻撃ウイルス希釈および狂犬病攻撃の全手順を観察した。
【0272】
致死的攻撃用量は、この研究における対照イヌの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、9/10(90%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。したがって、これは妥当な攻撃試験であった。
【0273】
攻撃前2日間、35匹の健康なイヌにおいて異常な徴候は観察されなかった。血清サンプルを採取した。各イヌから6mLの全血を、ワクチン接種後0日(DPV)、28DPV、91DPVおよび182DPV、273DPVおよび365DPVに血清のために採取した。血清サンプルは、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)、NVSL(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture))によって公開された組織培養蛍光抗体手順によって試験して、狂犬病ウイルスに対する血清中和(SN)力価を調べた。
【0274】
この研究に用いたワクチンは、標準手順によってベロ細胞で5つの複製で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、それぞれ、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0275】
ワクチン接種の28、91、182、273および365日後に、すべてのイヌを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたイヌの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないイヌは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0276】
攻撃後、イヌは90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。9/10(90%)のワクチン接種を受けていない対照のイヌは死亡するか、または狂犬病の徴候を示し、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、3/25(12%)のワクチン接種を受けたイヌが、死亡または狂犬病の徴候を示した。狂犬病感染によるイヌの死亡は、11DPCから17DPCの間に起こることがわかった。研究の最後に、22匹のワクチン接種されたものおよび1匹の対照が健康なままであった。ワクチン接種されたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。予防できる確率は87%であった(95%CI62,97)。
【0277】
攻撃後観察期間の間に死亡した、および安楽死させたイヌを、蛍光抗体試験のためにアイオワ州立大学獣医学部の獣医診断検査所(Veterinary Diagnostic Laboratory)に確実に運んだ。12匹の死亡したイヌの脳(9匹の対照および3匹のワクチン接種されたもの)は、狂犬病ウイルスについて試験の結果、陽性であった。これらの結果から、13匹のイヌの死亡は狂犬病によるものであったことがさらに確認された。
【0278】
結論
この1年のDOI研究の結果から、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2構築物)は、イヌの単回ワクチン接種後少なくとも1年間の狂犬病の予防において、ネコにおいて補助として、6.28Log10TCID50/mLの力価で有効であると結論付けられる。
【0279】
実施例11:ネコにおける、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターの毒性への復帰研究
この研究の目的は、rRCNV−狂犬病G2が、ネコにおける戻し継代の際に病原性へ復帰できるかどうかを調べることおよびウイルス排出およびネコの間でのウイルスの蔓延の可能性を調べることであった。
【0280】
それぞれ、チミジンキナーゼおよび血球凝集遺伝子座でChallenge Virus StandardおよびPasteur−Paris株の狂犬病糖タンパク質を発現する生存組換えアライグマポックスウイルス(rRCNV−狂犬病G2)の毒性への復帰を、この研究で評価した。8周齢の全部で35匹の健康なネコで最初の継代および確認的戻し継代を実施した。35匹のネコすべてが、接種の時点でアライグマポックスウイルスについて血清学的に陰性であった。
【0281】
最初の継代は、全部で15匹のネコを用いて実施した:10匹の1.0mLの用量の7.41Log10TCID50のrRCNV−狂犬病G2を用いて経口的に接種されたネコおよび5匹の接種を行っていない接触対照としてのネコ。口腔スワブおよび5種の無作為糞便サンプルを、接種後−2日〜15日後(DPI)まで毎日採取した。15DPIに、組織サンプル採取のために、すべてのネコを剖検した。肉眼的病変は観察されず、口腔スワブ、糞便および組織サンプルのいずれからもウイルスは単離されなかった。
【0282】
正確性を確保するために、20匹のネコ:10匹の、1.0mL用量の、最初の継代においてと同じウイルス(7.57Log10TCID50/mL)を用いて経口的に接種されたネコおよび10匹の、1.0mL用量の、最初の継代から採取されたプールされた組織ホモジネートを用いて経口的に接種されたネコにおいて確認的戻し継代を実施した。口腔スワブおよび5種の無作為糞便サンプルを,−2〜21DPIの間毎日採取した。21DPIでは、組織サンプル採取のためにすべてのネコを剖検した。最初の継代におけるのと同様、肉眼的病変は観察されず、採取したサンプルのいずれからもウイルスは単離できなかった。
【0283】
両継代において、すべてのネコを、直腸温、アライグマポックスウイルスの感染と関連している臨床徴候および研究機関の間の任意のその他の局所または全身反応または相当な直腸温上昇について毎日モニターした。
【0284】
要約すれば、この研究から得た結果気化は、rRCNV−狂犬病G2は、ネコを通過する場合に、毒性へ復帰することおよび/または体液もしくは糞便中に播種することはできないことを実証した。さらに、試験したネコのうち臨床徴候を発症したものはなかった。これらの結果は、rRCNV−狂犬病G2は、ネコにおいて非複製的であり、非病原性であることをさらに示唆する。
【0285】
ウイルス排出は、高レベルの生存RCNVを用いた接種後に実証されず、これから、RCNVは、ネコにおいて非複製的であり、非病原性であることが確認された。
【0286】
具体的には、合計35匹の健康なネコをこの研究に用いた。最初の継代では10匹の接種したネコおよび5匹の未処理(対照)ネコを使用した。確認用継代では、20匹のネコを使用し、そのうち10匹が、最初の継代から得られたプールされた組織ホモジネートを用いて播種され、10匹は、最初の継代と同じウイルスを用いて播種された。
【0287】
ネコは、両継代において、接種時にほぼ8週齢であった。標的集団は健康なネコであった。その免疫機能に関しては、この研究のために選択された動物はネコを代表するように思われた。すべてのネコが、試験の結果、RCNVに対して陰性であった(SN力価<2)。
【0288】
最初の継代は、15匹のネコ、10匹の、rRCNV−狂犬病G2 x+3を接種されたものおよび5匹の未処理接触対照からなっていた。確認的戻し継代は、20匹のネコを含んでいた。10匹のネコは、最初の継代殻得られたプールした組織ホモジネートを接種し、10匹のネコは、最初の継代と同じウイルス(rRCNV−狂犬病G2 x+3)を用いて播種した。
【0289】
最初の接種および確認的戻し継代に使用したネコは、同腹仔によって適当な群に無作為化した。無作為化は、マイクロソフトエクセルを用いて各同腹仔の動物へ乱数を割り当てることによって完了した。乱数を昇順に分け、各同腹仔の動物をそのそれぞれの群に入れた。この研究は、研究の観察、サンプル採取ならびに最初の継代および確認的戻し継代のための試験を実施する科学者には盲検化した。
【0290】
最初の継代
10匹の接種したネコは、5匹の未処理(接触)対照ネコとまとめて飼育し、ワクチンウイルスの、動物対動物の接触によって蔓延する能力を評価した。口腔スワブおよび糞便サンプルを、接種後−2〜15日(DPI)まで毎日採取した。直腸温および全身の健康および臨床徴候の観察を、−2〜15DPIまで毎日モニターした。
【0291】
15DPIに、10匹の接種されたものおよび5匹の接触対照ネコを安楽死させ、剖検した。ウイルス単離のために、組織サンプル(頸部リンパ節、肝臓、脾臓および扁桃腺)を無菌的に採取した。
【0292】
確認的戻し継代
最初の継代では、口腔スワブ、糞便サンプルまたは組織サンプルからウイルスが単離されなかったので、20匹のネコを用いて確認的戻し継代を実施した。10匹のネコに、プールした組織ホモジネートを接種し、10匹のネコに最初の接種におけるようなウイルスを接種した。これらのネコは、−2DPI〜21DPIまで観察した。21DPIに、これらのネコを安楽死させ、剖検した。
【0293】
接種
接触対照(接種なし)を除くすべてのネコに、最初および確認的戻し継代の両方において1.0mLの投与容量を用いて経口的に投与した。
【0294】
観察および手順
直腸温、および咳、くしゃみ、鼻汁および眼漏、舌炎および口内炎などの臨床徴候を、最初の継代については、−2〜15DPIまで、確認的戻し継代については、−2〜21DPIまで毎日モニターした。剖検後、血清サンプル、口腔スワブ、糞便サンプルおよび組織サンプルを採取し、分析した。
【0295】
RCNVに対する抗体を、一定ウイルス(50〜300TCID50)変動血清法を用いる血清中和によって測定した。エンドポイントは、ベロ細胞でのRCNV感染に特徴的な細胞変性効果(CPE)の顕微鏡検査によって読み取った。力価は、ReedおよびMuenchの方法に従って、ウイルス複製の50%阻害を引き起こす血清希釈として算出した。
【0296】
最初のおよび確認的戻し継代において使用したrRCNV−狂犬病G2接種は、24ウェルプレート中のベロ細胞で力価測定した。
【0297】
手短には、0.05% LAHおよびゲンタマイシン(30μg/mL)を含有する1×MEMを用いてrRCNV−狂犬病G2の連続10倍希釈物を作製した。ウェルあたり100μLの希釈したウイルスを、90%を超えるコンフルエントの単層に接種した。プレートを、4〜6%CO2を用い、36±2℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェルに、0.05% LAH、ゲンタマイシン(30μg/mL)および5% FBSを含有する1.0〜1.5mLの1×MEMを加え、プレートを4〜6%CO2を用い、36±2℃で5日間さらにインキュベートした。インキュベーション後、プレートを、典型的なCPEまたはプラークの観察のために染色した。TCID50力価は、ReedおよびMuenchの方法を用いて算出した。
【0298】
ウイルス単離法の感度を調べるために、rRCNV−狂犬病G2を、プールされた口腔スワブ、組織ホモジネートおよび糞便サンプルで希釈し(スパイクし)、上記の方法によって力価測定した。
【0299】
ネコを通過した場合に、rRCNV−狂犬病G2の毒性への復帰がないことを実証するには、以下の基準を満たさなければならない:
a)rRCNV−狂犬病G2を接種されたネコは、臨床疾患の徴候を示さないはずである。咽門炎などの軽度の一時的な臨床異常が、開園生存ウイルスの経口投与のために予測され、接種の正常な反応と考えられるべきである。
【0300】
b)確認的戻し継代から単離されたrRCNV−狂犬病G2には、最初の継代において接種されたウイルスと比較して、表現型及び/または遺伝子型の変化は観察されない。
【0301】
c)糞便、口腔および組織サンプルからウイルスが単離されない場合には、ウイルス排出および蔓延がない。
【0302】
接種rRCNV−狂犬病G2 x+3の力価測定は、5つの複製で実施した。最初の継代の平均力価は、7.41Log10TCID50/mLであり、確認的戻し継代については、7.57Log10TCID50/mLであった。これらの力価は、1年の免役継続期間研究においてネコおよびイヌに投与される常用量(6.28Log10TCID50/mL)よりも約13〜20倍高かった。
【0303】
RCNVに対する抗体を血清中和によって測定し、ネコがRCNV抗体について陰性であることを確認した。血清中和アッセイは、両継代において、すべてのネコが、RCNV抗体について接種時に陰性である(SN<2)ことを示した。
【0304】
すべてのネコの直腸温および臨床徴候を最初の継代および確認的戻し継代においていつものように記録した。対照および接種群両方において、ネコの中には、温度が上昇(103.0°F〜103.9°F)したものがあったが、これは、ネコが観察時、拘束されている間に興奮したためである可能性が最も高い。研究期間の間、異常な徴候は観察されなかった。15DPI(最初の継代)および21DPI(確認的戻し継代)で、すべてのネコを剖検し、肉眼的病変は全く観察されなかった。これらの結果は、rRCNV−狂犬病G2は、ネコにとって非病原性であることを示した。
【0305】
最初の継代および確認的戻し継代のすべての口腔スワブ、糞便および組織サンプルからのウイルス単離は陰性であった。いずれかの継代からもウイルスが全く単離されなかったので、ウイルス力価は算出しなかった。これらの結果は、rRCNV−狂犬病G2はネコにおいて非複製性であることを示した。
【0306】
口腔スワブ、糞便および組織サンプルが、ウイルス力価測定に何らかの負の影響を与えているかどうかを調べるために、rRCNV−狂犬病G2 x+3を、希釈剤として上記のサンプルを用いて2連で力価測定し、対照としてMEM培地と比較した。rRCNV−狂犬病G2 x+3の平均力価は、それぞれ、7.6(口腔スワブ)、7.0(糞便)、7.0(組織)および7.6Log10TCID50/mL(MEM)であった。これらの結果は、力価測定アッセイに対する口腔スワブ、糞便および組織サンプルの有意な影響を全く示さなかった。感度についての、さらなるスパイク試験は、単離は、試験サンプル中にウイルス粒子がある場合には陽性となることを示した。
【0307】
いずれの試験サンプルからもウイルスが単離されなかったので、最初の継代と確認的戻し継代の間のrRCNV−狂犬病G2表現型および/または遺伝子型の変化の比較は実施しなかった。
【0308】
結論
この研究から得られた結果は、rRCNV−狂犬病G2は、ネコを通過した場合に病原性に復帰できないことを示した。また、rRCNV−狂犬病G2ウイルスは、排出しない、またはネコの間で播種しないことも実証した。
【0309】
実施例12:イヌにおけるDURAMUNE(登録商標)DA2PPvまたはDURAMUNE(登録商標)DA2PPv/CvK/LCIGP不活化rRCNV−狂犬病G2画分の用量設定
手短には、この用量設定研究では、4群があった:3つのワクチン接種群中のイヌ(n=3×10)には、単回用量の、それぞれ、6.7もしくは6.4Log10TCID50/mLの不活化前力価(希釈)を有するDURAMUNE(登録商標)DA2PPv(ケーキ)/不活化rRCNV−狂犬病G2、または6.7Log10TCID50/mLの不活化前力価(希釈)を有するCvK/LCIGP/不活化rRCNV−狂犬病G2を、12週齢で投与し、対照群中のイヌ(n=10)には、DURAMUNE(登録商標)DA2PPv(ケーキ)/水(希釈剤)を用いてワクチン接種した。ワクチン接種の時点で、すべての試験イヌは狂犬病血清陰性であった。
【0310】
ワクチン接種の20週間後(140DPVで)、すべてのイヌ(30ワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株の1:10−5直接希釈を用いて攻撃した。すべての攻撃されたイヌを、33日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病のために死亡したが、群1中の9/10(90%)のワクチン接種されたもの、群2中の10/10(100%)のワクチン接種されたものおよび群3中の10/10(100%)のワクチン接種されたものは、33日間、健康なままであったことを示した。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。このワクチン有効性は、それぞれ、90%(V1)、100%(V2)および100%(V3)であった。
【0311】
DURAMUNE(登録商標)10併用製剤(Fort Dodge Animal Health、Wyeth、Madison、NJの事業部から市販されている)、イヌジステンパー−アデノウイルス2型−コロナウイルス−パラインフルエンザ−パルボウイルスワクチン、改変生存および死滅ウイルス、レプトスピラバクトリン(DA2PPv/CvK/LCIGP)は、USDAが認可したワクチンである。凍結乾燥DAPPv改変生存画分は、イヌジステンパーウイルス(CDV)、イヌアデノウイルス2型(CAV2)、イヌパラインフルエンザウイルス(CPI)およびイヌパルボウイルス(CPV)を含む。希釈剤CvK/LCIGP画分は、不活化イヌコロナウイルス(CCV)およびレプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohaemorrhagiae)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)の外膜タンパク質(OMC)からなるレプトスピラバクテリン(L)を含む。DA2PPvケーキは、CvK/LCIGP希釈剤で再構成し、CDV、感染性イヌ肝炎ウイルス(ICHV)、CAV2、CPV、CPI、CCV、レプトスピラ・カニコーラ(L.canicola)、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(L.icterohaemorrhagiae)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(L.grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(L.pomona)によって引き起こされる疾患から保護するための補助として、皮下(SQ)経路によって6週齢以上の子犬に投与する。
【0312】
この用量設定研究では、イヌをDURAMUNE(登録商標)DA2PPv/不活化rRCNV−狂犬病G2またはDURAMUNE(登録商標)DA2PPi/CvK/LCIGP/不活化rRCNV−狂犬病G2の単回用量でワクチン接種し、ワクチン接種の約5ヶ月後に病原性狂犬病ウイルスを用いて攻撃した。この研究の目的は、(1)組換えウイルス(rRCNV−狂犬病G2)が、不活化ワクチンとして免役原性であるかどうかを調べること、(2)DA2PPvまたはDURAMUNE(登録商標)DA2PPiと組み合わせた不活化rRCNV−狂犬病G2の5ヶ月DOIを評価することおよび(3)免疫原性のための投与量を最適化することであった。
【0313】
30匹の試験動物および10匹の対照動物があった。イヌは、ワクチン接種時に12週であった。
【0314】
試験ワクチンの組成物
ワクチン1(V1)は、凍結乾燥DA2PPvケーキおよび希釈剤1からなるものであった。希釈剤1は、不活化rRCNV狂犬病G2画分(用量あたり約6.7Log10TCID50の不活化前力価)およびアジュバント(1% EMA(登録商標)3% NEOCRYL(登録商標))を含んでいた。
【0315】
ワクチン2(V2)は、凍結乾燥DA2PPvケーキおよび希釈剤2からなるものであった。希釈剤2は、不活化rRCNV狂犬病G2画分(用量あたり約6.4Log10TCID50不活化前力価)およびアジュバント(1% EMA(登録商標)および3% NEOCRYL(登録商標))を含んでいた。
【0316】
ワクチン3(V3)は、凍結乾燥DAPPvケーキおよび希釈剤3からなるものであった。希釈剤3は、不活化rRCNV狂犬病G2画分(用量あたり約6.7Log10TCID50不活化前力価)、不活化イヌコロナウイルス(CvK)、レプトスピラバクテリン(LCIGP−レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohaemorrhagiae)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)のOMC)およびアジュバント(1% EMA(登録商標)および3% NEOCRYL(登録商標))を含んでいた。
【0317】
凍結乾燥DA2PPv画分およびCvK/LCIGP希釈剤を、従来の製造方法に従って製造した。不活化rRCNV−狂犬病G2画分を、ワクチン調製のためにウイルス培養物を不活化するための標準技術によってBEI(バイナリーエチレンイミン)によって不活化した。凍結乾燥DA2PPv画分を、ワクチン接種時にそれぞれの希釈剤によって再水和した。この研究では、DURAMUNE(登録商標)DA2PPvケーキを、1mLの滅菌Super Q水で再構成し、再水和したDA2PPvをプラセボとして使用した。
【0318】
方法
イヌを以下のように無作為に4群に分けた:
【0319】
【表11】
ワクチン接種
ワクチン接種経路は皮下(SQ)であった。各動物に1用量(1mL/用量)のワクチン/プラセボを襟首に投与した。
【0320】
攻撃
ワクチン接種の20週間(約5ヶ月)後、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street challengeウイルス(キツネにおけるNYC株)の1:10−5直接希釈物を用いてすべてのイヌを攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの各咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、33日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。33日の攻撃後観察期間は、すべての狂犬病動物が攻撃後最初の4週間に死亡した、これまでの狂犬病攻撃結果によって正当であるとした。
【0321】
致死的攻撃用量は、この研究における対照イヌの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。これは、明らかに妥当な攻撃試験であった。
【0322】
観察
攻撃前2日間、40匹の健康なイヌにおいて異常な徴候は観察されなかった。
【0323】
攻撃後、攻撃後33日(DPC)まで、狂犬病の徴候を認識するために動物を臨床獣医によって訓練された人材によって毎日モニターした。観察結果は記録し、狂犬病ワクチンの法的要件の通りに類別した。
【0324】
攻撃後、イヌは33日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。10/10(100%)の対照のイヌは死亡するか、または狂犬病の徴候を示し、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、群1、2または3中の9/10(90%)、10/10(100%)および10/10(100%)のワクチン接種を受けたものは、それぞれ、33日間健康なままであった。興味深いことに、狂犬病感染による11匹のイヌの死亡は、11DPC〜22DPCの間に起こることがわかった。ワクチン接種されたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、それぞれ、90%(V1)、100%(V2)および100%(V3)であった。
【0325】
結論
この用量漸増研究の結果は、DURAMUNE(登録商標)DA2PPvまたはDURAMUNE(登録商標)DAP2Pv/LCIGPと組み合わせた本発明のrRCNV−狂犬病G2画分は、イヌにおける、単回ワクチン接種後少なくとも5ヶ月間の狂犬病の予防において補助として、6.4Log10TCID50/mL(用量あたり)の不活化前力価でさえ有効であると結論付けられる。
【0326】
実施例13:ネコにおける、狂犬病ワクチン(常用量)、生存アライグマポックスウイルスベクターの3年免役継続期間研究
ネコにおけるワクチン製剤の使用のために防御用量を決定するために、rRCNV−狂犬病G2 ワクチンの3年の免役継続期間(DOI)研究を、実施例9において先に記載したものと同様の材料および方法を用いて実施し、有効性が病原性狂犬病ウイルス攻撃によって実証された。本発明の目的は、6.28Log10TCID50/mlの用量を用いて単回ワクチン接種した後の3年間後に、ネコにおけるアジュバント不含組換え狂犬病ワクチンの有効性および免疫原性を実証することであった。
【0327】
手短には、この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種を受ける群のネコ(n=28)には、単回用量の狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(VSコード1901.R5)を、12週齢で投与し、対照群のネコ(n=13)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後0、28、91、181、273、365、549、730、912および1095日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、先に記載した狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の3年より後に(1128日目)、狂犬病攻撃のために35匹のネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株ロット92−5の1:25直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたネコを、90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたネコ各々の脳を、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0328】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。ワクチン接種を受けたネコでは相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0329】
攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病によって死亡したが、21/25(84%)のワクチン接種を受けたものは90日間健康なままであったことを実証した。10匹の死亡した対照および4匹のワクチン接種を受けたネコの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、84%(95%CI64,96)であった。
【0330】
実施例14:ネコにおける、Fel−O−Vax−LvK IV+CaliVaxと組み合わせた、狂犬病ワクチン(常用量)、生存アライグマポックスウイルスベクターの1年の免役継続期間研究
ネコにおいてワクチン製剤を使用するための防御用量を調べるために、rRCNV−狂犬病G2画分の1年の免役継続期間(DOI)研究を実施し、病原性狂犬病ウイルス攻撃によって有効性が実証された。これらの研究の目的は、1年間後のネコにおけるFel−O−Vax−LvK IV+CaliVaxと組み合わせた、rRCNV−狂犬病G2画分の有効性および免疫原性を実証することであった。
【0331】
手短には、この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種を受ける群のネコ(n=28)には、1mlの、Fel−O−Vax LvK IV+CaliVax(希釈剤)と組み合わせた、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(ケーキ)を、12週齢で皮下投与し、対照群のネコ(n=13)には、1mlのFel−O−Vax LvK IV+CaliVax(希釈剤)を皮下投与した。8週齢ですべてのネコに1mLのFel−O−Vax LvK IV+CaliVaxを投与した。ワクチン接種後0、28、91、182、274および398日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の1年より後に(400日目)、狂犬病攻撃のために35匹のネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株ロット92−5の1:25直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたネコを、90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたネコ各々の脳を、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0332】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。ワクチン接種を受けたネコでは相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0333】
攻撃結果は、7/10(70%)の対照が狂犬病によって死亡したが、25/25(100%)のワクチン接種を受けたものは90日間健康なままであったことを実証した。7匹の死亡した対照のネコの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、100%(95%CI82,100)であった。
【0334】
前述では、例示目的で、制限ではなく、本発明の特定の実施形態の詳細な説明を提供した。この開示内容に基づいて当業者に明らかな、すべてのその他の改変、波及および等価物は、特許請求される本発明の範囲内に含まれる容易とされることは理解されるべきである。
【0335】
【表12】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座に挿入された、少なくとも2つの異なる狂犬病株の狂犬病糖タンパク質遺伝子を独特に発現する組換えアライグマポックスウイルスベクターに関する。本発明は、狂犬病ウイルスによって引き起こされる神経疾患および死亡の予防においてワクチンとして有用である。
【背景技術】
【0002】
狂犬病ウイルスは、ラブドウイルス科のマイナス鎖極性を有する、非分割型の、一本鎖、直鎖RNAラブドウイルスまたはリッサウイルスであり、一方の末端が、球形または円錐体であり、もう一方の末端が平面状であるかまたは凹面の形である砲弾様の形を有する。ウイルス粒子の球形または円錐体の末端は、糖タンパク質Gからなるノブ様スパイクを含むリポタンパク質外被を有する。コア構造の周囲の脂質膜またはウイルスの外被は、糖タンパク質Gに加え、基質タンパク質(M)からなる第2の内層を有する。外面糖タンパク質Gは、細胞接着に関与しており、狂犬病ウイルスの毒性または病原性ならびに宿主免疫応答に関与している抗原物質として同定されている。
【0003】
若干の例外はあるものの、狂犬病は、常に、ヒトおよび動物に致命的な神経疾患をもたらし、世界的な公衆衛生における大きな懸念のままである。狂犬病に起因するヒトの死の大部分は、アフリカ、アジアおよび南アメリカで起こっているが、狂犬病の流行は、最近、急速に増加している感染アライグマの集団のために、米国においても問題になっている。懸念されるその他の一次ウイルスキャリアとして、中西部州に多いスカンク、および米国におけるほとんどのヒト症例における主な供給源であるコウモリがある。アライグマ、スカンク、キツネ、オオカミなどといった感染野生動物に加え、ヒトは、通常、感染しているイヌおよびネコの咬傷によって狂犬病に感染する。イヌは、イヌ狂犬病が風土性であるアフリカおよびアジアにおいて狂犬病ウイルスの主要な宿主であり続け、世界中で、依然として、狂犬病に起因するヒトの死亡のほとんどに関与している。したがって、人類にとって特に重要なことは、イヌ、ネコおよびフェレットなどの家庭内ペットにおける狂犬病ウイルス感染を防ぐことである。
【0004】
Louis PasteurおよびEmile Rouxが、1885年に最初の狂犬病ワクチン接種を開発した。初期の神経組織由来ワクチンは、感染ウサギから採取し、乾燥させて病原性を減弱させたウイルスサンプルからなる。発展途上国の中には、同程度の神経組織狂犬病ワクチンを依然として使用する国もあり、それらは、現代の細胞培養ワクチンよりもかなり費用がかからないが、有効性では程遠く、神経学的副作用の重大な危険を伴う。
【0005】
1967年に、ウイルスの弱毒化されたPitman−Moore L503株を用いてヒトワクチン接種のためのヒト二倍体細胞狂犬病ワクチン(HDCV)が開発された。現在市場で入手可能なものは、あまり費用がかからない、高度精製ニワトリ胚培養ワクチン(PCEC)および精製ベロ細胞狂犬病ワクチンである。後者のベロ細胞培養ワクチンは、狂犬病ウイルスの弱毒化されたWistar株を用いるが、ベロ細胞株はその宿主である。弱毒化にもかかわらず、ベロ細胞培養ワクチンは、毒性へ復帰する可能性を有する。その結果、狂犬病ワクチンの調製は、不活化プロセスで生き残った狂犬病ウイルスの結果としての株によるウイルス感染の偶発的な播種を避けるよう、作業者による細心の注意を必要とする。PCECワクチンは、卵またはニワトリに対するアレルギーを有するものには与えることができないという不利点が追加される。ワクチンにおいて、生存している狂犬病ウイルスを操作、製造または使用するのが、さらに困難であることはは、製薬および獣医学の技術分野の当業者にはよく知られている。
【0006】
従来の狂犬病ウイルスワクチンの不利点を考慮して、研究は、組換えアライグマポックスウイルスの使用および狂犬病ウイルス糖タンパク質遺伝子などの外来遺伝子を、アライグマポックスウイルスのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入することを目的としてきた。組換えアライグマポックスウイルスの特定の初期構築物は、外来ウイルスの抗原物質または外来DNAを発現し、イヌおよびネコなどのその他の動物において宿主防御免疫応答を誘発できることがわかった。しかし、ワクチンとして有用である、安全で、有効な組換えアライグマポックスウイルスの構築は、複雑な事柄であり、考慮しなければならない多数の因子と関わっている。特に、既知tk遺伝子座を超えた種々の領域に挿入された、外因性または外来遺伝子の位置が異なる組換えアライグマポックスウイルスを作製する能力ならびに機能的外来抗原DNA断片の特定の選択には、得られた組換えポックスウイルスの安定性、安全性および効力を調べるための相当な実験研究が必要である。したがって、商業的に実現可能な組換えアライグマポックスウイルスワクチンを得るためのいくつかの試みは、家畜ワクチンの分野に多くの努力を集中してきた。
【0007】
そのため、ワクチンとしての組換えアライグマポックスウイルスという主題に関して相当な量の公開された情報がある。例えば、より最近、米国特許出願第2005/0282210号に、アライグマ狂犬病のための、経口の遺伝子組換えウイルスワクチンが記載された。狂犬病ウイルスの外被においてタンパク質を産生する遺伝子を、組換えDNA技術を用いて生存ワクシニアウイルスに挿入した。改変ワクシニアウイルスは、正常な動物に感染すると、通常、狂犬病ウイルスによって作製される抗原性タンパク質を産生する。犠牲者の生物系は、このタンパク質を外来と認識し、この動物は、能動免疫を発達させる。具体的には、ワクシニアのウイルスベクターゲノムに挿入された狂犬病表面糖タンパク質遺伝子を包含する含むウイルスのベクターからなる組成物を投与することを含むスカンクまたはマングースにおいて免疫応答を誘発する方法について、特許出願第2005/0282210号は書かれている。この開示内容は、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子で発現される予定のポリヌクレオチドもしくは複数のポリヌクレオチドの可能性ある挿入部位もしくは挿入部位、血球凝集素(ha)遺伝子もしくは挿入部位、またはワクシニアウイルスのA型の封入体(ATI)をコードする領域、カナリアポックスウイルスの場合には、ORF(複数可)C3、C5および/またはC6、鶏痘ウイルスの場合にはC6、ORF F7および/またはF8を示唆するが、この文書は、狂犬病糖タンパク質GがERA株に由来し、ワクシニアのtk部位にのみ挿入される挿入されるワクシニアウイルスベクターの使用を例示するだけである。
【0008】
米国特許第7,074,413号には、非神経浸潤性狂犬病株の糖タンパク質を、streetまたは神経浸潤性狂犬病ウイルスのものと置換して、ワクチン接種のための弱毒化された組換え狂犬病ウイルスを作製することまたはアポトーシス促進性タンパク質を発現する組換え狂犬病ウイルスを構築することによる組換え狂犬病ウイルスワクチンの設計が開示されている。
【0009】
米国特許第6,719,981号には、Street Alabama Dufferin株(SAD D29)の組換え狂犬病ウイルス突然変異体が、ウイルスゲノムのGタンパク質中に突然変異を含み、前記突然変異が、Arg333をコードするAGAコドンのGACコドンとの特定の置換を含む、弱毒化された狂犬病ウイルス突然変異体および前記突然変異体を含む生存弱毒化抗狂犬病ワクチンが示されている。
【0010】
米国特許第6,294,176号は、アライグマポックスウイルスゲノムのHind III「U」ゲノム領域、HindIII「M」ゲノム領域またはHind III「N」ゲノム領域内の非必須領域挿入された外来DNA配列を含むアライグマポックスウイルスゲノムからなる組換えアライグマポックスウイルスワクチンに関する。アライグマポックスウイルスゲノムは、ウイルスゲノムのアライグマポックスウイルス宿主域遺伝子に欠失を含有すると特許に記載されている。この特許は、アライグマポックスウイルスゲノムに外来DNA配列を挿入することによって、組換えアライグマポックスウイルスを作製するための相同ベクターを提供する。組換えアライグマポックスウイルスは、狂犬病ウイルスに由来する抗原性ポリペプチドをコードする外来DNAを含み得るということが広く示唆されるが、それに関連する例証はない。さらに、DNA配列分析によって、特許権所有者によって開示されるHindIII「U」ゲノム領域は、組換えアライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素(ha)挿入および/またはチミジンキナーゼ(tk)領域ではないということが示されている。
【0011】
米国特許第6,241,989号およびその継続米国特許第7,087,234号は、チミジンキナーゼ遺伝子または血球凝集素遺伝子のいずれかに挿入された2つ以上の外因性遺伝子を含有している多価組換えアライグマポックスウイルスを扱っている。これらの特許に開示されるのは、ネコをネコ病原体に対して免疫化するワクチンとしての多価組換えアライグマポックスウイルスの使用である。また、外因性遺伝子が挿入される挿入ベクターの構築および挿入された遺伝子およびアライグマポックスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子または血球凝集素遺伝子中に組換えることができる配列をフランキングすること、ならびに外因性遺伝子を含有する挿入ベクターおよびアライグマポックスウイルスの両方を感受性宿主細胞に導入すること、ならびに得られたプラークから組換えアライグマポックスウイルス選択することを含む組換え法によって、多価組換えアライグマポックスウイルスを作製する方法も開示されている。この特許の、多価の、組換えアライグマポックスウイルスは、ネコ細胞に感染し、複製することができ、ウイルス複製に必須でないアライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子またはチミジンキナーゼ遺伝子からなる領域に挿入され、各々、ネコ病原体抗原をコードする、2つ以上の外因性遺伝子を含む。これらの特許には、ネコ白血病ウイルス(FeLV Env)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV Gag)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV Env)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV M)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV N)、ネコカリシウイルス(FCV キャプシドタンパク質)、ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPV VP2)および狂犬病−Gなどのネコ病原体抗原をコードする外因性遺伝子が記載されている。
【0012】
米国特許第6,241,989号および同第7,087,234号では、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子および血球凝集素(ha)遺伝子の両方とも、組換えによる外因性遺伝子の挿入のために使用できることが示唆されており、具体的な例は、フランキングされたワクシニアウイルスtk遺伝子配列の相同組換えおよびha遺伝子に挿入されたFCVキャプシドタンパク質遺伝子を含有する別個の相同組換えアライグマポックスウイルスによって、多価RCNVベースの組換えFPV VP2および狂犬病ウイルス(RCNV/FPV/RAB−G)を作製する方法を単に示すものである。チミジンキナーゼおよび血球凝集素遺伝子の両方に複数の外来抗原性物質を含有する組換えアライグマポックスウイルスを構築および/または使用する方法を教示する特許請求または例示はない。さらに、これらの特許は、アライグマポックスウイルスゲノムのha部位に挿入された狂犬病ウイルス糖タンパク質遺伝子を有する組換え構築物は全く教示または開示しない。
【0013】
米国特許第6,106,841号は、動物を異種抗原に対して免疫化する方法に関する。この方法には、動物に結膜経路によって、異種抗原をコードする核酸分子を有する組換えアライグマポックスウイルスを含む組成物を投与することが記載されている。抗原は、カリシウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、免疫不全ウイルス、感染性腹膜炎ウイルス、白血病ウイルス、パルボウイルス抗原、狂犬病ウイルス、バルトネラ、エルシニア、イヌ糸状虫、トキソプラズマ、ノミ抗原またはノミアレルゲン、小昆虫抗原またはアレルゲン、ダニ抗原またはアレルゲンおよび腫瘍抗原として記載されている。この特許は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターロイキン、インターフェロンγなどといった免疫調節物質をコードする核酸分子を含む組換えアライグマポックスウイルスをさらに開示している。それにはまた、チミジンキナーゼ、血球凝集素、セルピン、サイトカイン受容体およびインターフェロン受容体遺伝子から選択されるアライグマポックスウイルス遺伝子中に異種核酸分子を有し、異種核酸分子が、p11ポックスウイルスプロモーター、p7.5ポックスウイルスプロモーターまたは合成ポックスウイルスプロモーターからなる転写制御配列に作動可能に連結した組換えアライグマポックスウイルスゲノムを使用する方法も記載されている。
【0014】
米国特許第6,024,953号には、狂犬病の抗原性糖タンパク質をコードするDNA配列のすべてまたは一部を含むワクシニアウイルスが記載されている。特に、この特許は、7.5Kワクシニアウイルスプロモーターの制御下のワクシニアチミジンキナーゼ(tk)遺伝子に挿入されている狂犬病糖タンパク質Gのアミノ酸配列をコードするDNA配列を含有するハイブリッドワクシニアウイルスおよびハイブリッドワクシニアウイルスと、製薬上許容される担体とからなる狂犬病予防および治療するワクチンを開示する。
【0015】
米国特許第5,348,741号は、ワクシニアP11後期プロモーターに作動可能に連結した狂犬病ウイルス糖タンパク質G遺伝子を含む組換えDNAを用いて構築されているプラスミドベクターを扱っている。狂犬病ウイルス糖タンパク質G遺伝子は、Challenge Virus Standard株に由来している。遺伝子およびプロモーターは、ワクシニアまたは牛痘ウイルスベクターのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入される。この特許には、組換えワクシニアウイルスは、細胞において狂犬病ウイルス糖タンパク質の遺伝子を発現し、狂犬病に対する免疫化のための糖タンパク質の産生を誘導すると記載されている。この特許は、組換えウイルスは、抗狂犬病ワクチンの製造および研究または診断目的のG抗原抗体および関連免疫学的試薬の製造に適用できることを示す。特に、この特許は、狂犬病ウイルス糖タンパク質G遺伝子を、tk遺伝子座付近の任意のその他の部位に挿入することを記載しておらず、アライグマポックスウイルスをベクターとして使用することの示唆は全く与えていない。
【0016】
初期のDNA狂犬病ワクチンは、米国特許第5,830,477号に記載されており、これは、狂犬病の抗原性糖タンパク質をコードするDNA配列のすべてまたは一部を含むワクシニアウイルスに関する。この特許は、アミノ酸配列狂犬病糖タンパク質GをコードするDNA配列を含み、発現し、DNA配列が、ワクシニアウイルスの非必須セグメント中に存在するハイブリッドワクシニアウイルスと、製薬上許容される担体とからなる、哺乳動物において狂犬病を予防または治療するための経口ワクチン関する。具体的には、この特許は、狂犬病糖タンパク質Gが、7.5Kワクシニアプロモーターの制御下にあり、ワクシニアチミジンキナーゼ(tk)遺伝子中に存在するハイブリッドワクシニアウイルスワクチンを単に例示するものである。
【0017】
米国特許第5,266,313号は、アライグマポックスウイルスの、異種生物の配列をコードするヌクレオチドの挿入および発現の基質としての使用に関する。この特許には、アライグマポックスウイルスDNAと、チミジンキナーゼ(tk)挿入不活化によるワクシニアウイルス組換え体の製造に使用するためのキメラプラスミド間の相同組換えによって、狂犬病ウイルス表面スパイク糖タンパク質(G)を発現する、2つの感染性アライグマポックスウイルス組換え体の製造が記載されている。
【0018】
また、プロモーター、すなわち、挿入され、組換えベクターによって発現されている外来遺伝子または外因性遺伝子物質を含む外来遺伝子タンパク質コード配列とともに使用されるプロモーターなどの遺伝子の転写を正に調節する配列の一般的な使用に関するこれまでの特許が、本発明の背景材料として注目される。例えば、米国特許第6,998,252号は、ポックスウイルスにとって外来であるポリペプチドをコードする第1のDNA配列と、ポックスウイルス転写調節配列とを含み、転写調節配列がDNA配列に隣接しており、DNA配列に転写制御を及ぼし、セグメントが組換えポックスウイルスの非必須ゲノム領域内に位置するワクシニアなどの組換えポックスウイルスに関する。ワクシニアウイルスの7.5Kポリペプチド遺伝子(7.5K遺伝子)に由来するプロモーターと、外来タンパク質コード配列の挿入のための制限エンドヌクレアーゼ部位と、フランキングDNAとして中断されたワクシニアウイルスチミジンキナーゼ(tk)遺伝子とを含有するプラスミドの構築が示されている。
【0019】
米国特許第7,045,313号は、同様に、ワクシニアウイルスまたはその他のポックスウイルスを、外来遺伝子の発現のためのベクターとして使用するための方法および組成物に関し、これでは、発現は、in vitroでワクシニアウイルス転写調節配列を、中断されていない外来タンパク質コード配列と組み合わせて、キメラ遺伝子を形成することによって得られる。この特許では、キメラ遺伝子が、ワクシニアウイルスゲノムの非必須領域に由来するDNAによってフランキングされて、in vivo相同組換えのための部位を提供する方法が示されている。これらの工程は、外来タンパク質コード配列の挿入のためにワクシニア転写調節配列の隣に、複数の制限エンドヌクレアーゼ部位を含むプラスミドの構築によって、特許の開示内容において促進される。この特許では、ワクシニアウイルスにとって外来であるポリペプチドをコードする第1のDNA配列と、ワクシニアウイルスプロモーター配列とからなるセグメントを含み、前記プロモーター配列が前記の第1のDNA配列と隣接しており、前記の第1のDNA配列に転写制御を及ぼし、前記セグメント、ワクシニアゲノムの非必須領域に由来するDNAをフランキングするプラスミドがさらに示されている。具体的には、プロモーター配列は、ワクシニアウイルスにおいて、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子または7.5Kポリペプチドをコードするワクシニア遺伝子を調節するものである。それには、DNAを細胞に導入するためのトランスフェクション手順が示されており、その細胞で、相同組換えの結果、キメラ遺伝子がワクシニアウイルスゲノムの非必須領域へ挿入される。
【0020】
また、当技術分野で公知の標準プロモーターに関連して、米国特許第7,208,313号は、負のチミジンキナーゼ(tk)表現型および負のワクシニアウイルス増殖因子表現型を用いて作製されるワクシニアウイルス発現ベクターに関する。外来遺伝子は、ワクシニアウイルスプロモーターの制御下に置かれ、突然変異ワクシニアウイルスのゲノムに組み込まれる。あるいは、発現は、ワクシニアプロモーターによって制御される遺伝子を含有するシャトルベクターまたはプラスミドを、ワクシニアウイルスに感染している細胞にトランスフェクトすることおよび相同組換えによって外因性配列を導入することによって達成され得る。
【0021】
合成初期−後期ワクシニアウイルスプロモーターが、米国特許第6,183,750号;同第7,067,248号、その他に示されている。米国特許第6,183,750号には、ヘルペスウイルスに由来する外来DNAおよびDNAを発現するためのこのDNAに作動可能に連結したプロモーターを含有する、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルスまたはカナリアポックスウイルスなどの組換えポックスウイルスが記載されており、これでは、プロモーターはDNAの開始コドンに重ねられているか、連結されている。プロモーター−遺伝子連結は、連結が、両末端で、非必須遺伝子座を含有するポックスDNAの領域をフランキングするDNA配列と相同なDNAによってフランキングされるように、プラスミド構築物中に位置している。挿入されたDNAの発現のための条件は、挿入されたDNAと適当な関係にあるプロモーターの存在であり、すなわち、プロモーターは、発現される予定のDNA配列から上流に位置するように置かれるべきである。米国特許第7,067,248号は、合成初期−後期プロモーターを使用して、ワクシニアウイルスから基質タンパク質を発現する方法をさらに示す。非特許文献1を参照のこと。
【0022】
本発明の背景と関連するその他の物質は、以下の文献引用に見ることができる:
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
従来の不活化狂犬病ワクチンと比較して、安全かつ有効で、アジュバントを含まないアライグマポックスウイルスベクターによる狂犬病ワクチンの開発の成功は、ネコにおけるアジュバント関連肉腫副作用を回避すること、ワクチン製造の間の従事者の安全を確実にすること、商業的製造に用いられる不活化および汚染除去手順を生き残る狂犬病ウイルスのいかなる機会も完全に排除することにおいて重要な利点をもたらす。ペットを狂犬病ウイルスに感染することから適切に保護し、順に、それらのヒトの飼い主を致命的な感染から保護する、家庭用ペットのための安全で、有効な狂犬病ウイルスワクチンに対する技術分野で認識される必要性は、依然として存在する。また、狂犬病を予防するための実行可能な方法および哺乳動物における有害な神経学的影響の回復も必要である。
【0025】
前述の目的は、本明細書に記載される狂犬病ワクチンの新規アライグマポックスウイルスベクター構築物の形の、イヌおよびネコにおいて長期間持続する免疫をもたらす、安全で、有効な組換え狂犬病ワクチンを提供することによって達成される。
【0026】
本明細書に引用されるすべての特許および刊行物は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】S.Chakrabartiら、「Compact,Synthetic,vaccinia virus early/late promoter for protein expression」、BioTechniques23:1094〜1097頁(1997年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、そのもっとも広い態様では、各々、少なくとも1つの狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、2つ以上の外因性核酸分子を含み、少なくとも2つの核酸分子が血球凝集素(ha)遺伝子座またはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入されており、または、少なくとも1つの核酸分子が、血球凝集素およびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入されており、抗原が少なくとも2つの異なる狂犬病ウイルス株に由来し得る、新規の、高度に免役原性の組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)を提供する。2つの外因性核酸が、同一の遺伝子座に挿入される場合には、それらは連続であってもよいし、介在する配列によって分離していてもよい。新規組換えアライグマポックスウイルスベクターワクチンは、ポックスウイルスゲノムの血球凝集素(ha)遺伝子座で、もしくはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座で、またはポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座の両方で、狂犬病ウイルスの外因性または外来糖タンパク質遺伝子を発現し得る。本発明の新規の、高度に好ましい組換えウイルス構築物が、それぞれ、tkおよびha遺伝子座で、Challenge Virus Standard(CVS)およびPasteur−Paris(PV)株の狂犬病糖タンパク質(G2)を発現することが都合がよい。狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする核酸分子の供給源は、狂犬病ウイルスの同一株に由来してもよいが、少なくとも2つの異なる狂犬病株の遺伝子が、ポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座に挿入されることが好ましい。本発明の広域性組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アジュバント不含ワクチンとして有用である。組換えワクチンは、動物の有効な免疫化ためにその他のネコおよびイヌ抗原の混合物を含み得ることが望ましい。また、哺乳動物に有効免役量の本発明のワクチンを投与することを含む、哺乳動物において狂犬病に対する免役応答を誘導する方法も開示される。
【0029】
したがって、本発明の第1の態様は、各々少なくとも1つの狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、2つ以上の外因性核酸分子を含み、少なくとも2つの核酸分子が、血球凝集素(ha)遺伝子座もしくはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入されているか、または少なくとも1つの核酸分子が、血球凝集素およびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入されている、組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)を提供する。
【0030】
一実施形態では、組換えアライグマポックスウイルスベクターによる構築物は、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼおよび血球凝集素遺伝子座に加えて、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位に、挿入された狂犬病糖タンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0031】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位は、セリンプロテアーゼ阻害剤部位である。
【0032】
一実施形態では、狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする2つの核酸分子は、狂犬病ウイルスの同一株から単離される。
【0033】
一実施形態では、狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする2つの核酸分子は、狂犬病ウイルスの異なる株から単離される。
【0034】
一実施形態では、狂犬病ウイルス糖タンパク質の供給源は、Challenge Virus Standard 狂犬病株、Pasteur−Paris狂犬病株、イヌ狂犬病streetウイルス、ホッキョクギツネ狂犬病ウイルス、アライグマ狂犬病ウイルスおよびコウモリ狂犬病ウイルスからなる群から選択される。
【0035】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入される糖タンパク質をコードする核酸分子は、Challenge Virus Standard狂犬病株に由来するものである。
【0036】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座に挿入される糖タンパク質をコードする核酸分子は、Pasteur−Paris狂犬病株に由来するものである。
【0037】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスは、生存しており、複製可能である。
【0038】
一実施形態では、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼおよび血球凝集素遺伝子座に加え、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位に挿入される狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0039】
一実施形態では、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位は、セリンプロテアーゼ阻害剤部位である。
【0040】
本発明の第2の態様は、免疫学的に有効な量の、本明細書に記載されるいずれか1つの組換えアライグマポックスウイルスベクターと、場合により好適な単体または希釈剤とを含む組換え狂犬病ワクチンを提供する。
【0041】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、免疫学的に有効な量の2つ以上の、本明細書に記載される組換えアライグマポックスウイルスベクターと、場合により、好適な担体または希釈剤とを含む。
【0042】
一実施形態では、多価ワクチンは、1つのベクター構築物しか含まない。
【0043】
一実施形態では、本発明は、1つ以上の核酸分子を含み、各々の核酸分子が狂犬病抗原をコードし、
a)少なくとも1つの核酸分子がアライグマポックスウイルスノムの血球凝集素遺伝子座もしくはチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されているか、または
b)少なくとも2つの核酸分子がアライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座またはもしくはチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されているか、または
c)少なくとも1つの核酸分子が血球凝集素遺伝子座に挿入されており、かつ、少なくとも1つの核酸分子がアライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されている、
組換え狂犬病ワクチンを提供する。
【0044】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、ネコカリシウイルス、ネコクラミジア(Chlamydophila felis)、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルスおよびバルトネラ菌からなる群から選択される1つ以上のネコ抗原との混合物をさらに含む。
【0045】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、エーリキ・カニス(Ehrlichia canis)、イヌパルボウイルス、イヌジステンパー、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌアデノウイルスII型、イヌアデノウイルス、イヌコロナウイルス、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohemorrhagiae)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・グリッポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(Leptospira Pomona)からなる群から選択される1つ以上のイヌ抗原との混合物をさらに含む。
【0046】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、アジュバントを含まない。
【0047】
一実施形態では、組換え狂犬病ワクチンは、アジュバントをさらに含む。
【0048】
一実施形態では、アジュバントは、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む。
【0049】
本発明の第3の態様は、哺乳動物に有効免疫量の本明細書に記載される任意のワクチンを投与することを含む哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0050】
一実施形態では、本発明は、ネコに有効免疫量の本明細書に記載されるワクチンを、望ましくは、いかなるアジュバントも伴わずに投与することによって、ネコにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0051】
一実施形態では、本発明は、イヌに有効免疫量の本明細書に記載される任意のワクチンを投与することによってイヌにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0052】
一実施形態では、本発明は、ウシまたはウマに有効免疫量の本明細書に記載される任意のワクチンを投与することによって、ウシまたはウマにおいて狂犬病に対する防御免役応答を誘導する方法を提供する。
【0053】
一実施形態では、防御免疫応答は、体液性または抗体媒介性応答である。
【0054】
一実施形態では、防御免疫応答は、細胞媒介性またはT細胞媒介性免疫応答である。
【0055】
一実施形態では、防御免疫応答は、約4.5Log10TCID50/ml〜約6.7Log10TCID50/mlの範囲であるワクチン用量を投与することによって誘導される。
【0056】
一実施形態では、防御免疫応答は、約5.38Log10TCID50/ml〜約6.28Log10TCID50/mlの範囲であるワクチン用量を投与することによって誘導される。
【0057】
一実施形態では、防御応答は、ワクチンを単回用量として、または反復用量として投与することによって誘導される。
【0058】
本発明の第4の態様は、以下の工程を含む組換えアライグマポックスウイルスベクターを作製する方法を提供する:
(a)第1の狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸配列を、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入する工程と、
(b)第2の狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸配列を、アライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座に挿入する工程と、
(c)組換えアライグマポックスウイルスベクターを回収する工程。
【0059】
一実施形態では、工程(a)および(b)の核酸配列は、組換えアライグマポックスウイルスベクターによる核酸の発現ならびに第1および第2の狂犬病株の糖タンパク質の産生を可能にするために、核酸配列に作動可能に連結したプロモーターをさらに含む。
【0060】
一実施形態では、第1の狂犬病株は、Challenge Virus Standard狂犬病株である。
【0061】
一実施形態では、第2の狂犬病株は、Pasteur−Paris狂犬病株である。
【0062】
本発明の第5の態様は、配列番号1のヌクレオチド配列を有するプラスミドpFD2003−GPV−PVを提供する。
【0063】
第6の態様は、哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する医薬を調製するための任意の本発明のベクターまたはワクチンの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
発明の背景および当技術分野からのその発展を、添付の図面を参照して本明細書において以下にさらに説明する:
【図1A】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1B】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1C】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1D】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1E】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1F】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1G】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1H】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1I】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1J】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1K】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1L】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図1M】(配列番号1に対応する)プラスミドpFD2003SEL−GPV−PV(8373ヌクレオチド)の完全配列を示す図であり、RCNV HA−L断片は塩基対位置1〜557含み、PSEL(合成初期−後期)プロモーター領域は、塩基対位置2153〜2195Cに及び、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子は、塩基対位置570〜2150Cを包含し、vvP75初期プロモーター領域は、塩基対位置2202〜2468にわたり、lacZ ORFレポーター遺伝子は、塩基対位置2469〜5525にわたり、RCNV HA−R断片は、塩基対位置5532〜6123を包含し、アンピシリンORFは、塩基対位置6566〜7426を含む。
【図2A】プラスミドを1〜3回の間で切断する主要な制限酵素、すなわち、BamHI(塩基対位置2471、5526)、EcoRI(位置558、5469)、EcoRV(位置265、324、3578)、HindIII(位置2055)、HpaI(位置2891、3515、5895)、KpnI(位置2147)、MuI(位置3767、4547、4972)、NcoI(位置80、2147)、NsiI(位置1812)、PciI(位置24、5224、8241)、SacI(位置4405、8372)、SalI(位置564)、SpeI(位置5583)、SphI(位置1423、6128)、XbaI(位置2196)およびXhoI(位置1633);およびプラスミドpFD2003−GPV−PVを切断しない主要な制限酵素、すなわち、BglII、KasI、NheI、NotI、NruI、PmeI、PstI、SacII、SmaIおよびXmaIを示す、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの制限酵素マップを示す図である。
【図2B】プラスミドを1〜3回の間で切断する主要な制限酵素、すなわち、BamHI(塩基対位置2471、5526)、EcoRI(位置558、5469)、EcoRV(位置265、324、3578)、HindIII(位置2055)、HpaI(位置2891、3515、5895)、KpnI(位置2147)、MuI(位置3767、4547、4972)、NcoI(位置80、2147)、NsiI(位置1812)、PciI(位置24、5224、8241)、SacI(位置4405、8372)、SalI(位置564)、SpeI(位置5583)、SphI(位置1423、6128)、XbaI(位置2196)およびXhoI(位置1633);およびプラスミドpFD2003−GPV−PVを切断しない主要な制限酵素、すなわち、BglII、KasI、NheI、NotI、NruI、PmeI、PstI、SacII、SmaIおよびXmaIを示す、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの制限酵素マップを示す図である。
【図3A】rRCNV−狂犬病G2の構築の重要な工程のダイアグラムを示す図である。KpnI−SalI狂犬病GPV−PV断片を、狂犬病DNAワクチンpVAX1−GPV−PV(WO第00/63242号において調製されたような)からプラスミドpFD2003SELにサブクローニングしてプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製した。vKB3−JE13、pFD2003SEL−GPV−PVおよびCOS−7細胞を用いる3者同時感染/トランスフェクションによって、rRCNV−狂犬病G2のプールクローンを作製する。次の工程は、ベロ細胞におけるプラーク精製および純粋クローン選抜を含む。クローン候補は、PCR同定試験およびrRCNV−狂犬病G2が得られたIFAによる狂犬病Gタンパク質のin vitro発現によって確認する。
【図3B】rRCNV−狂犬病G2の構築の重要な工程のダイアグラムを示す図である。KpnI−SalI狂犬病GPV−PV断片を、狂犬病DNAワクチンpVAX1−GPV−PV(WO第00/63242号において調製されたような)からプラスミドpFD2003SELにサブクローニングしてプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製した。vKB3−JE13、pFD2003SEL−GPV−PVおよびCOS−7細胞を用いる3者同時感染/トランスフェクションによって、rRCNV−狂犬病G2のプールクローンを作製する。次の工程は、ベロ細胞におけるプラーク精製および純粋クローン選抜を含む。クローン候補は、PCR同定試験およびrRCNV−狂犬病G2が得られたIFAによる狂犬病Gタンパク質のin vitro発現によって確認する。
【図4】組換えアライグマポックスウイルス遺伝子型のPasteur−Paris狂犬病G2 lacZが、ha遺伝子座に構築されており、CVS狂犬病Gがtk遺伝子座に構築されているrRCNV−狂犬病G2ゲノム(約200kb直鎖dsDNA)のダイアグラムを示す図である。
【図5A】ha遺伝子座(図5A)について、およびtk遺伝子座(図5B)について、rRCNV−狂犬病−G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験のためのアガロースゲル電気泳動を示す図である。対照、レーン2の使用したrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン3のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン4のDNA精製陰性対照−01、レーン5のDNA精製陰性対照−02、レーン6のPCR陰性対照(水)、レーン7のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈)、レーン8のrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン9のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン10のDNA精製陰性対照−01、レーン11のDNA精製陰性対照−02、レーン12のPCR陰性対照(水)およびレーン13のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈物)を含むサンプルのためのDNA鋳型。Lambda/Hind IIIマーカーは、レーン1にあり、1kb DNAラダーマーカーは、レーン14にあった。レーン2〜7については、ゲルA(図5A)のプライマーは、HA−08、HA−Pstであり、ゲルB(図5B)のプライマーは、TK−LW、TK−RWであり、標的遺伝子はwt haltkであった。レーン8〜13については、ゲルA(図5A)のプライマーはHA−Pst、gp−1Fであり、ゲルB(図5B)のプライマーはTK−RR、gJE−F1であり、標的遺伝子は狂犬病Gであった。図5に示されるように、PCRは、レーン2〜6および10〜13において陰性であったが、レーン7〜9ではPCRは陽性であった。
【図5B】ha遺伝子座(図5A)について、およびtk遺伝子座(図5B)について、rRCNV−狂犬病−G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験のためのアガロースゲル電気泳動を示す図である。対照、レーン2の使用したrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン3のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン4のDNA精製陰性対照−01、レーン5のDNA精製陰性対照−02、レーン6のPCR陰性対照(水)、レーン7のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈)、レーン8のrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン9のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン10のDNA精製陰性対照−01、レーン11のDNA精製陰性対照−02、レーン12のPCR陰性対照(水)およびレーン13のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈物)を含むサンプルのためのDNA鋳型。Lambda/Hind IIIマーカーは、レーン1にあり、1kb DNAラダーマーカーは、レーン14にあった。レーン2〜7については、ゲルA(図5A)のプライマーは、HA−08、HA−Pstであり、ゲルB(図5B)のプライマーは、TK−LW、TK−RWであり、標的遺伝子はwt haltkであった。レーン8〜13については、ゲルA(図5A)のプライマーはHA−Pst、gp−1Fであり、ゲルB(図5B)のプライマーはTK−RR、gJE−F1であり、標的遺伝子は狂犬病Gであった。図5に示されるように、PCRは、レーン2〜6および10〜13において陰性であったが、レーン7〜9ではPCRは陽性であった。
【図5C】ha遺伝子座(図5A)について、およびtk遺伝子座(図5B)について、rRCNV−狂犬病−G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験のためのアガロースゲル電気泳動を示す図である。対照、レーン2の使用したrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン3のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン4のDNA精製陰性対照−01、レーン5のDNA精製陰性対照−02、レーン6のPCR陰性対照(水)、レーン7のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈)、レーン8のrRCNV−狂犬病G2、MSV、レーン9のrRCNV−狂犬病G2、X+5、レーン10のDNA精製陰性対照−01、レーン11のDNA精製陰性対照−02、レーン12のPCR陰性対照(水)およびレーン13のPCR陽性対照(RCNV Esposito−3希釈物)を含むサンプルのためのDNA鋳型。Lambda/Hind IIIマーカーは、レーン1にあり、1kb DNAラダーマーカーは、レーン14にあった。レーン2〜7については、ゲルA(図5A)のプライマーは、HA−08、HA−Pstであり、ゲルB(図5B)のプライマーは、TK−LW、TK−RWであり、標的遺伝子はwt haltkであった。レーン8〜13については、ゲルA(図5A)のプライマーはHA−Pst、gp−1Fであり、ゲルB(図5B)のプライマーはTK−RR、gJE−F1であり、標的遺伝子は狂犬病Gであった。図5に示されるように、PCRは、レーン2〜6および10〜13において陰性であったが、レーン7〜9ではPCRは陽性であった。
【図6】rRCNV−狂犬病G2感染ベロ細胞における狂犬病糖タンパク質のin vitro発現を示す図である。rRCNV−狂犬病G2 MSV−およびX+5感染ベロ細胞のすべての希釈物において細胞変性効果および蛍光が観察された(図6Aおよび6B)が、非感染ベロ細胞のみからなる陰性対照では観察されなかった(図6C)。この結果は、狂犬病Gタンパク質は、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよび継代5において発現され、狂犬病Gタンパク質特異的モノクローナル抗体によって検出されるということを示した。
【図7】全長狂犬病G遺伝子を含有するPCR産物のアガロースゲル電気泳動を示す図である。対照を含む、試験されているサンプルは、レーン2にrRCNV−狂犬病G2 MSV、レーン3にrRCNV−狂犬病G2 X+5、レーン4に陰性対照(水)、レーン5にrRCNV−狂犬病G2 MSV、レーン6にrRCNV−狂犬病G2 X+5およびレーン7に陰性対照(水)を含み、レーン1にLambda/HindIIIマーカーを含み、レーン8に1kb DNAラダーマーカーを含む。レーン2〜4については、プライマーはHA−Pst、PW4であり、遺伝子標的は、1806bpのPasteur−Paris狂犬病Gおよびそのフランキング領域であった。レーン5〜7については、プライマーはTK−RR、PW−03であり、遺伝子標的は1910bpのCVS狂犬病Gおよびそのフランキング領域であった。図7に示されるように、PCRは対照レーン4および7において陰性であったが、PCR産物は、レーン2、3、5および6において陽性であった。
【図8】ベロ細胞におけるrRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の青色プラーク(Lac+)精製によるスクリーニングを示す図であり、これでは、図8Aは、rRCNV−狂犬病G2 MSV(未希釈、100)を表し、図8Bは、rRCNV−狂犬病G2 X+5(10−4希釈)を表す。この結果は、rRCNV−狂犬病G2 MSVは、青色プラークアッセイによって、継代5への製造前スケールアップ手順下で表現型上安定であるということを示した。
【発明を実施するための形態】
【0065】
(発明の詳細な説明)
本方法および治療方法論が記載される前に、本発明は特定の方法および記載される実験条件に限定されず、方法および条件は変わり得るということが理解されなければならない。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲においてのみ限定されるので、本明細書に用いられる専門用語は特定の実施形態のみを記載する目的のものであって、制限であるよう意図されるものではないということも理解されなくてはならない。
【0066】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形の「冠詞」および「不定冠詞」は、文脈が明確に他を示すのでない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、1つ以上の方法および/または本明細書に記載される、および/または本開示内容などを読んだ際に当業者に明らかとなる種類の工程を含む。
【0067】
したがって、本出願では、当業者の範囲内の従来の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術が使用され得る。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、Byrd、CMおよびHruby、DE、Methods in Molecular Biology、第269巻:Vaccinia Virus and Poxvirology、第3章、31〜40頁;Sambrook、Fritsch & Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989年)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(本明細書では「Sambrookら、1989年」);DNA Cloning:A Practical Approach、第IおよびIl巻(D.N.Glover編1985年);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編1984年);Nucleic Acid Hybridization[B.D.Hames & S.J.Higgins編(1985年)];Transcription And Translation[B.D.Hames & S.J.Higgins編(1984年)];Animal Cell Culture[R.I.Freshney編(1986年)];Immobilized Cells And Enzymes[IRL Press、(1986年)];B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984年);F.M.Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、Inc.(1994年)。
【0068】
本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料はいずれも、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料が記載されている。本明細書に言及されるすべての刊行物は、その全文が本明細書に組み込まれる。
【0069】
定義
本明細書に使用される用語は、当業者に認識され、既知であることを意味するが、便宜上および完全性のために、特定の用語およびその意味を以下に説明する。
【0070】
用語「約」とは、20%内、より好ましくは、10%内、より好ましくは5%内を意味する。
【0071】
用語「隣接する」とは、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を指す。アジュバントは、抗原をゆっくりと放出する組織貯蔵所として、また、免疫応答を非特異的に増強するリンパ系アクチベーターとして働き得る(Hoodら、Immunology、第2編、1984年、Benjamin/Cummings:Menlo Park、California、384頁)。状況に応じて、アジュバントの不在下での抗原単独での一次誘発は、体液性または細胞性免疫応答を誘発できない場合がある。アジュバントとして、限定されないが、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルまたは炭化水素エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよび有用である可能性があるヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が挙げられる。アジュバントは、製薬上許容されることが好ましい。用語「アジュバント不含である」とは、上記のように、アジュバントの不在下での本発明のいずれか1つのワクチンの調製を指す。
【0072】
「コードされる」または「コードする」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を指し、ポリペプチド配列は、少なくとも3〜5個のアミノ酸、より好ましくは、少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらにより好ましくは、少なくとも15〜20個のアミノ酸のアミノ酸配列を含み、ポリペプチドは核酸配列によってコードされる。また、その配列によってコードされるポリペプチドを用いて免疫学的に同定可能なポリペプチド配列も包含される。したがって、抗原「ポリペプチド」、「タンパク質」または「アミノ酸」配列は、抗原のポリペプチドまたはアミノ酸配列に対して少なくとも70%の類似性、好ましくは、少なくとも約80%の類似性、より好ましくは、約90〜95%の類似性、最も好ましくは、約99%の類似性を有し得る。
【0073】
用語「外因性」とは、外来遺伝子またはアライグマポックスウイルスゲノム外から産生された、起因する、由来する、生じた外来遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0074】
抗原またはワクチン組成物に対する「免疫応答」は、注目する抗原またはワクチン組成物中に存在する分子に対する体液性および/または細胞媒介性免疫応答の被験体における発生である。本発明の目的上、「体液性免疫応答」とは、抗体媒介性免疫応答であり、抗原/本発明のワクチンに対して親和性を有する抗体の生成を含み、一方で、「細胞媒介性免疫応答」とは、Tリンパ球および/またはその他の白血球によって媒介されるものである。「細胞媒介性免疫応答」は、クラスIまたはクラスII分子の主要組織適合抗原(MHC)と関連した抗原性エピトープの提示によって惹起される。これは、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)を活性化する。CTLは、主要組織適合抗原(MHC)によってコードされ、細胞表面に発現されるタンパク質に関連して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊またはこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導および促進するのに役立つ。細胞性免疫の別の側面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的反応に関与している。ヘルパーT細胞は、その表面上にMHC分子と関連してペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を集中させるのに役立つよう作用する。「細胞媒介性免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカインならびに活性化されたT細胞および/またはその他の白血球によって産生される分子のようなその他のもの、例えば、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものの産生を指す。特定の抗原または組成物の、細胞媒介性免疫学的応答を刺激する能力は、いくつかのアッセイによって、例えば、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイによって、感作された被験体において抗原に対して特異的なTリンパ球をアッセイすることによって、または抗原での再刺激に応じたT細胞によるサイトカイン産生の測定によって調べることができる。このようなアッセイは、当技術分野では周知である。例えば、Ericksonら、J.Immunol.(1993年)151:4189〜4199頁;Doeら、Eur.J.Immunol.(1994年)24:2369〜2376頁参照のこと。
【0075】
本明細書において同義的に使用される、「免疫学的に有効な量」または「有効免疫量」とは、当業者に公知の標準アッセイによって測定されるような、免疫応答、細胞性(T細胞)または体液性(B細胞または抗体)応答のいずれかを惹起するのに十分な抗原またはワクチンの量を指す。本発明では、「免疫学的に有効な量」または「有効免疫量」は、最小防御用量(力価):4.5〜6.7Log10TCID50/mLである。免役原としての抗原の有効性は、T細胞の、その特異的標的細胞を溶解する能力を測定するためのクロム放出アッセイなどの細胞溶解アッセイによって、または血清中の抗原に特異的な循環抗体のレベルを測定することによってB細胞活性のレベルを測定することのいずれかによって測定できる。さらに、免疫応答の防御のレベルは、免役化された宿主を、注射された抗原で誘発することによって測定してもよい。例えば、それに対する免疫応答が望まれる抗原が、腫瘍細胞のウイルスである場合には、「免疫学的に有効な量」の抗原によって誘導される防御のレベルは、この動物のウイルスまたは腫瘍誘導後の生存パーセントまたは死亡パーセントを検出することによって測定される。
【0076】
本明細書において用いる場合、アライグマポックスウイルスゲノム中の「非必須部位」とは、ウイルスの感染または複製にとって必要ではないウイルスゲノム中の領域を意味する。アライグマポックスウイルスゲノム中の非必須部位の例として、限定されないが、チミジンキナーゼ(TK)部位、血球凝集素(HA)部位およびセリンプロテアーゼ阻害剤部位が挙げられる。アライグマポックスウイルスのTK部位は、C.Lutze−Wallace、M.SidhuおよびA.Kappeler、Virus Genes10(1995年)、81〜84頁に記載されている。アライグマポックスウイルスのTK遺伝子の配列はまた、PubMed受託番号DQ066544およびU08228に見ることができる。アライグマポックスウイルスのHA部位は、Cavallaro KFおよびEsposito,JJ、Virology(1992年)、190(1):434〜9頁に記載されている。アライグマポックスウイルスのHA遺伝子の配列はまた、PubMed受託番号AF375116に見ることができる。
【0077】
用語「核酸分子」または「核酸配列」とは、タンパク質合成の過程を指示するプリンおよびピリミジン塩基の反復単位などの反復するヌクレオチドの長い鎖を指す、その明白な意味を有する。すなわち、それらは、タンパク質物質をコードし、発現する。特許請求の範囲において用いる場合、核酸とは、狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする既知外因性または外来遺伝子を指す。
【0078】
RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、次いで、トランスRNAによってスプライシングされ、コード配列によってコードされるタンパク質に翻訳される場合には、コード配列は、細胞において転写および翻訳制御配列と、「作動可能に連結している」。
【0079】
「防御的」免疫応答とは、ワクチンの、哺乳動物の感染からの保護に役立つ免疫応答、体液性または細胞媒介性のいずれかを惹起する能力を指す。対照集団の哺乳動物と比較して統計上有意な改善があれば、提供される防御は必ずしも完全ではない、すなわち、感染は必ずしも完全に予防されるか、または根絶されるわけではない。防御は、感染の症状の重症度または発生の速度の緩和に限定され得る。
【0080】
本明細書において用語「組換え」とは、簡単に、標準遺伝子工学法によって作製されるアライグマポックスウイルス構築物を指す。
【0081】
用語「複製可能な」とは、好適な宿主細胞において複製可能である(replicating)、複製可能である(duplicating)、または再生可能である、微生物、特に、アライグマポックスウイルスなどのウイルスを指す。
【0082】
用語「ワクチン」または「ワクチン組成物」とは、本明細書において同義的に使用され、動物において免疫応答を誘導する、および/または動物を感染による疾患または死亡の可能性から保護する、少なくとも1つの免疫学的に活性な成分を含む薬剤組成物を指し、活性成分の免疫学的活性を増強する1つ以上のさらなる成分を含む場合も含まない場合もある。ワクチンは、薬剤組成物に特有のさらなる成分をさらに含んでなってもよい。
【0083】
「ベクター」は、宿主生物において複製可能なDNA分子であり、その中に、組換えDNA分子を構築するための遺伝子が挿入される。
【0084】
概要
本発明に従って、安定な、安全な、高度に有効な、場合によってはアジュバントを含まない製品の製造においてアライグマポックスウイルス(RCNV)株を用いる独特の組換え狂犬病ワクチンが提供される。具体的には、本発明は、各々、少なくとも1つの狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、1つ以上の外因性核酸分子を含み、血球凝集素(ha)遺伝子座もしくはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に少なくとも2つの核酸分子が挿入されているか、または少なくとも1つの核酸分子が血球凝集素およびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入されている組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)を提供する。外因性核酸分子の供給源は、同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも2つの異なる狂犬病株から外来遺伝子を得ることが望ましい。本発明の新規の、高度に好ましいウイルス構築物rRCNV−狂犬病G2は、2つの異なる狂犬病ウイルス株の狂犬病糖タンパク質(G)を独特に発現することが有利であり、ここで、Challenge Virus Standard(CVS)およびPasteur−Paris(PV)狂犬病株の抗原性糖タンパク質を、RCNVゲノムのチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集素(ha)遺伝子座にそれぞれ挿入することが高度に望ましい。rRCNV−狂犬病G2感染ベロ細胞における狂犬病糖タンパク質のIn vitro 発現は、狂犬病糖タンパク質特異的モノクローナル抗体を用いる間接免疫蛍光アッセイ(IFA)によって確認される。本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物は、極めて免役原性であり、高度に強力である。免疫継続期間(DOI)研究におけるネコおよびイヌの接種と、それに続く病原性狂犬病ウイルス誘発によって、新規組換え狂犬病ワクチンは、哺乳動物を狂犬病感染から保護することにおいて優れた効力および有用性を有ることが実証される。
【0085】
アライグマポックスウイルス(Herman株)が、まず、1961〜1962年にメリーランド州、アバディーン(Aberdeen)においてY.F.Hermanによって臨床症状のないアライグマの気道から単離された(Bacteriol.Proc.第64回Annual Meeting of the American Society for Microbiology、117頁(1964年)中、Y.F.Herman、「Isolation and characterization of a naturally occuring pox virus of raccoons」)。いくつかの初期の研究では、tk遺伝子座でCVS狂犬病G遺伝子を発現するRCNVベクターは、野生動物およびペットを含む家畜の両方に投与した場合に安全であると報告された(例えば、A.D.Alexanderら、「Survey of wild mammals in a Chesapeake Bay area for selected zoonoses」、J.Wildlife Dis.8:119〜126頁(1972年);C.Bahloulら、「DNA−based immunization for exploring the enlargement of immunological cross reactivity against the lyssaviruses」、Vaccine16:417〜425頁(1998年);S.Chakrabartiら、「Compact,Synthetic、vaccinia virus early/late promoter for protein expression」、BioTechniques23:1094〜1097頁(1997年);およびJ.C.DeMartiniら、「Raccoon poxvirus rabies uirus glycoprotein recombinant vaccine in sheep」、Arch.Virol.133:211〜222頁(1993年)参照のこと)。
【0086】
しかし、初期の構築物の中には、狂犬病G遺伝子がha部位に挿入されているか、または少なくとも2つの狂犬病G遺伝子が、アライグマポックスウイルスゲノムのtkおよびha遺伝子座の両方に挿入されている本発明の独特の設計を提供するものはない。本発明の新規構築物を示す構築物または動物研究はない。
【0087】
vKB3−JE13として知られる(RCNV Rab−G、RABORAL V−RG(登録商標)としてMerial、Harlow、Essex、UK から商業的に販売されている)これまでの組換え狂犬病構築物は、RCNVベクターのHerman株を使用していたが、この構築物は、RCNVゲノムのtk遺伝子座に狂犬病CVS株のG遺伝子の単一の挿入物しか有していない。本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物もまた、RCNVベクターのHerman株を利用するが、この新規構築物は、2つの遺伝子座に2つの異なる狂犬病株に由来する外来遺伝子を有する、すなわち、狂犬病CVSおよびPV株のG遺伝子を含む外来遺伝子材料が、RCNVゲノムに挿入されており、挿入部位はRCNVゲノムのtk遺伝子座にCVS遺伝子由来のDNAを、ha遺伝子座にPV遺伝子由来のDNAを提供するために特異的である。本発明の新規rRCNV−狂犬病G2構築物では、狂犬病G遺伝子の、RCNVゲノムのtkおよびha遺伝子座両方の組み合わせへの挿入は、病原性Herman株をさらに弱毒化するが、同時に、強力な広域性ワクチンを提供する。
【0088】
vKB3−JE13と同様に、本発明のrRCNV−狂犬病G2は、まず、vvP 11後期プロモーターを使用してtk遺伝子座にCVS遺伝子を挿入し、次いで、さらに合成初期−後期プロモーターを使用し、駆動して、ha遺伝子座にさらなるPV遺伝子を挿入して調製する。tkおよびha遺伝子座から外来狂犬病抗原を発現できることにあるrRCNV−狂犬病G2の安定性および有用性は、新規多価構築物の重要な特性であり、これまで未知であった。
【0089】
著しく改善された本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物はまた、良好な構築物であるという点で先行する構築物vKB3−JE13を上回る、予想外の、重大な利点を提供する。驚くべきことに、rRCNV−狂犬病G2は、取り扱いのための良好な安全性、実質的に良好な最小の防御用量(すなわち、著しくより強力である)およびChallenge Virus Standard(CVS)およびPasteur−Paris(PV)狂犬病株を網羅する、より広い防御範囲を有する。
【0090】
例えば、標準米国国立衛生研究所(NIH)マウス効力試験における、匹敵する力価のrRCNV−狂犬病G2およびvKB3−JE13(RCNV Rab−G)の性能は、vKB3−JE13(6.4Logs10TCID50/mL)の0.3というかなり低いRP値と比較してrRCNV−狂犬病G2(6.3Logs10TCID50/mL)の6.8という優れた相対力(RP)値を示す。本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物は、予想外に、vKB3−JE13構築物よりも23倍強力であった。
【0091】
CVS単独由来の狂犬病糖タンパク質遺伝子を保持する既知組換えRCNV(vKB3−JE13)は、1回の単回用量を用いて皮下にワクチン接種を受けたネコにおいて有効性を示したが、vKB3−JE13は、高濃度のRab−Gを投与されたネコの96.2%(25/26)が保護されたのに対し、対照の93.8%(15/16)が狂犬病誘発によって死亡したことを示す、1年の免役継続期間研究(DOI)において狂犬病に対して適切な保護を達成するために8.3Log10TCID50/mLという高力価のRCNV Rab−Gが必要であった。しかし、後処理プロセス研究によって、商業化のためにこのような高力価ウイルスを作製することは実行可能ではないということが示された。安全性およびベクターの懸念のために、VKB3−JE13は、ネコにおける実用的使用には不十分である。
【0092】
さらに、有効性データから、イヌに対する1年のDOI研究において、この先行するvKB3−JE13構築物は法的要件を満たすことはできないと実証された(タイトル9、連邦規則集)。8.3Log10TCID50/mLのRCNV Rab−Gという単回用量を用いて皮下にワクチン接種を受けたイヌの79.2%(19/24)しか、1年の免役継続期間研究(DOI)において狂犬病から保護されなかったが、対照の100%(13/13)が狂犬病誘発のために死亡した。
【0093】
比較として、本発明の新規rRCNV−狂犬病G2構築物の1年のDOIは、必要とされるvKB3−JE13よりも、かなり低濃度でネコにおいて優れた結果を提供した。6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の力価で、誘発結果は、9/10(90%)の対照が狂犬病のために死亡したが、25/25(100%)のワクチン接種されたものが90日間健康なままであったと実証し、これは、狂犬病ワクチン有効性についての法的要件を満たす十分な試験である。1年DOI研究から得た結果は、本発明の組換え狂犬病ワクチンは、ネコにおいて単回のワクチン接種後少なくとも1年間狂犬病の予防において高度に有効であると実証する。
【0094】
イヌにおける1年DOI研究に関して、本発明の新規rRCNV−狂犬病G2構築物は、イヌにおいて優れた、成功した結果を提供したが、当技術分野のRCNV Rab−Gは適切な保護を与えることができなかった。6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の力価で、誘発結果は、9/10(90%)の対照が、狂犬病のために死亡したが、22/25(88%)のワクチン接種されたものは、90日間健康なままであると実証し、これは、狂犬病ワクチン有効性についての法的要件を満たす。この1年DOI研究から得た結果は、本発明の組換え狂犬病ワクチンは、イヌにおいて単回ワクチン接種後少なくとも1年間、狂犬病の予防において補助として有効であると実証する。
【0095】
当技術分野で公知の先行組換えvKB3−JE13構築物の不利点に加え、その他の従来の不活化狂犬病ワクチンもまた、獣医学の分野におけるその技術的な問題を有し、これは本発明が解決する。不活化狂犬病ワクチンは、有効な免疫応答を得るためにアジュバント補給を必要とすることが多いが、残念ながら、アジュバントは、ネコにおいて肉腫の形成の一因となることが多く、ネコおよびイヌにおいてその他の安全性の懸念を有する。本発明は、当技術分野で認識される問題を独特に解決し、アジュバントの不在下での単回のワクチン接種後に優れた免疫応答を維持する、より安全な製品として組換えアライグマポックスウイルス(rRCNV)をベクターとする狂犬病ワクチンを提供する。
【0096】
有利なことに、本発明のアジュバント不含のrRCNVベクターによる狂犬病ワクチンはまた、ワクチン製造の間の従事者の安全性を改善し、商業的製造の間に用いられる不活化および汚染除去手順を狂犬病ウイルスが生き残るいかなる機会も完全に排除する。rRCNV−狂犬病G2は、RCNVゲノムのtk遺伝子座に挿入されたCVS G遺伝子を含有するRCNVベクターのha遺伝子座へのPasteur−Paris狂犬病G遺伝子の挿入によってさらに弱毒化される。言い換えれば、弱毒化された狂犬病ウイルスは、中程度の可能性の健康ハザードのバイオセーフティーレベル2病原体と考えられるのに対し、rRCNV−狂犬病G2は、低リスクバイオセーフティーレベル1病原体として全く安全であると見なされる。
【0097】
新規狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(すなわち、本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物)は、通常、狂犬病感染の予防における補助として3ヶ月齢またはそれより高齢の健康なネコおよびイヌのワクチン接種のために用いられる。フェレットなどのその他の家庭用ペットも、適切な免役応答のために十分に成熟した齢で狂犬病に対する予防接種から恩恵を受ける。ワクチンはまた、ワクチンが感染後治療として必要とされる場合には、狂犬病ウイルスに曝露されるより若いネコ、イヌおよびさらなる哺乳動物において使用してもよい。
【0098】
高レベルの生存RCNVを用いてネコに接種した後にウイルス排出は示されず、このことから、RCNVはネコにおいて非複製性であり、非病原性であることが確認される。ネコは、ネコがRCNVに対してイヌよりも感受性であるために試験動物として選択された。RCNVの天然の感染経路は、主に、口腔粘膜、皮膚擦過傷および気道を介してである。扁桃腺が、これらのウイルスが複製するのに好ましい位置である。したがって、以下の発明を示す実施例のためのいくつかの研究において組換えウイルスを投与するために、口腔経路、最も一般的な感染経路を選択した。しかし、本発明のワクチンは、種々の従来経路によって投与してよいということは考慮される。
【0099】
NIH(米国国立衛生研究所)マウス効力試験によって、rRCNV−狂犬病G2構築物は、極めて免役原性であり、高度に強力であると示される。用量漸増研究によって、ネコおよびイヌが、免疫学的に有効な投与量のrRCNV−狂犬病G2を用いて皮下にワクチン接種される場合には、狂犬病誘発からの完全保護(ワクチン接種後3ヶ月)が示される。狂犬病ワクチン、本発明の生存アライグマポックスウイルスベクターの、ネコおよびイヌにおける3ヶ月の免役継続期間(DOI)研究、1年のDOI研究およびネコにおける毒性への復帰の研究は、優れた結果を示す。非常に有利なことに、アライグマポックスウイルスベクターによるワクチンの経口投与は、rRCNV−狂犬病G2 X+3の濃縮保存液がネコおよびイヌにおいて皮下に投与された後に、毒性に復帰せず、体液または糞便中に播種することなく、好ましくない反応は観察されなかった。
【0100】
ネコおよびイヌは、3種の異なる力価のrRCNV−狂犬病G2ワクチンを用いたワクチン接種、続いて、単回のワクチン接種の3ヶ月後に病原性狂犬病ウイルス誘発を受け、短期間の有効性を示し、より長期間の免役研究のための適切な投与量を求めた。ネコでは、6.5、5.5および4.5Log10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2の単回用量を用いて皮下にワクチン接種を受けたネコの100%(10/10)が、有益に保護されたのに対し、対照の80%(8/10)が狂犬病誘発のために死亡した。イヌでは、6.5、5.5および4.5Log10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2の単回用量を用いて皮下にワクチン接種を受けたイヌの100%(10/10)、90%(9/10)および70%(7/10)が、それぞれ保護されたのに対し、対照の100%(10/10)が狂犬病誘発のために死亡した。後者のイヌにおける結果は、4.5Log10TCID50/mLの力価は、イヌを狂犬病から保護するのに不十分な濃度であるが、6.5Log10TCID50/mLおよび5.5Log10TCID50/mLの実行可能な力価でワクチンはイヌにおいて効力を示す、新規ワクチン製品の適切な投与量を得るために家畜ワクチンの技術分野において用いられる標準力価設定研究を示す。
【0101】
上記で本明細書に記載され、以下の実施例において例示されるように、ネコおよびイヌへの本発明の組換えrRCNV−狂犬病G2ワクチンの単回投与後の1年免役継続期間(DOI)から得られた結果はまた、ワクチンの優れた効力および有用性を示す。組換え狂犬病ワクチンは、驚くべきことに、単回接種後に長期間持続する免役をもたらし、有益である。
【0102】
一般に、狂犬病糖タンパク質遺伝子、例えば、狂犬病Pasteur−Paris糖タンパク質遺伝子(G)の、vKB3−JE13ゲノムの血球凝集(ha)遺伝子座への挿入によってウイルスrRCNV−狂犬病G2は構築され得る。既知ウイルスvKB3−JE13は、アライグマポックスウイルス野生型のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座でChallenge Virus Standard(CVS)株の狂犬病糖タンパク質を発現する。一実施形態では、rRCNV−狂犬病G2の構築方法は、2つの主要な工程によって提供される。第1に、PCR増幅された1,575bpの狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子(GPV−PV)を、構築された本発明のpFD2003SELベクター中にクローニングし、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製する。この工程は、FDAHの狂犬病DNAワクチン構築物pVAX1−GPV−PV(WO第00/63242号において調製されるような)から得たKpnI−SalI狂犬病GPV−PV断片を、プラスミドpFD2003SELにサブクローニングし、それによって、pFD2003SEL−GPV−PVを作製することを含む。第2に、COS−7細胞におけるvKB3−JE13およびプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの3者同時感染/トランスフェクションを実施して、ha遺伝子座での対立遺伝子交換によってrRCNV−狂犬病G2を作製する。青色プラーク(Lac+)を、ベロ細胞におけるプラーク精製の4回の連続ラウンドによってクローニングする。クローン候補を、ベロ細胞において、0.05%ラクトアルブミン加水分解物(LAH)、30μg/mLの硫酸ゲンタマイシン、および5%ウシ胎児血清を補給した最小必須培地(MEM)を用いてさらに3倍以上増殖させ、ゲル特異的PCRおよび間接免役蛍光アッセイ(IFA)によって確認した。7回継代物を用いてプレマスターシードを調製する。マスターシードは、プレマスターシード、生存ベクターとしてアライグマポックスウイルスがhaおよびtk遺伝子座でPasteur−ParisおよびCVS株の狂犬病糖タンパク質をそれぞれ発現する、設計されたrRCNV−狂犬病G2の1:10,000希釈によって確立すればよい。このマスターシードは、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターのさらなる製造において有用である。rRCNV−狂犬病G2構築物は、狂犬病に対する予防において動物のワクチンとして高度に強力で、安全で、極めて有効である。
【0103】
本発明に記載される新規方法は、当業者によって、その他の狂犬病株から得られる抗原性糖タンパク質に適用され得ることが考慮され、これでは、例示されるCVSおよびPV株以外の株の狂犬病糖タンパク質が使用され、tkおよび/またはha遺伝子座に挿入されるか、またはtkおよびha遺伝子座両方の場合には、別の糖タンパク質遺伝子は、例えば、セリンプロテアーゼ阻害剤遺伝子などのアライグマポックスウイルスベクターのさらなる第3の非必須領域に挿入されて、狂犬病感染に対する保護のための免役原性のワクチンを提供する。例えば、イヌ狂犬病streetウイルス、ホッキョクギツネウイルス、アライグマ狂犬病ウイルスまたはコウモリ狂犬病ウイルス株などといったその他の狂犬病株に由来する抗原性糖タンパク質をコードするヌクレオチドまたは核酸分子は、容易にCVSおよび/またはPV株と置換するか、それらに加えて使用され得る。あるいは、新規野生分離株または狂犬病突然変異体の糖タンパク質遺伝子を、CVSおよび/またはPV遺伝子の代わりに本発明の組換えワクチンにおいて単離し、利用してもよい。第3の狂犬病株のさらなる抗原性糖タンパク質をコードする遺伝子が、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位に挿入され得ることも考慮される。tkおよびha遺伝子座を超えるその他の非必須遺伝子として、例えば、成長および増殖にとって必須ではない領域が挙げられる。
【0104】
実施例は、tk遺伝子座に挿入されているCVS株の糖タンパク質遺伝子およびha遺伝子座に挿入されているPV株の糖タンパク質遺伝子を示すが、CVSのG遺伝子がha遺伝子座にあり、PVのG遺伝子がtk遺伝子座にある、逆に、遺伝子が挿入されるか、または病原性狂犬病ウイルスに対する高められた免役応答のために、より強力に有効な組換えワクチンを構築するために同一の狂犬病ウイルスの同一の糖タンパク質遺伝子がtkおよびhaの両方に挿入されることがさらに考慮される。狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする核酸が、アライグマポックスウイルスゲノムのha部位のみに挿入されている組換えワクチンを構築することが望ましいと思われる場合もある。
【0105】
当業者に公知の任意の方法を使用して、本発明の遺伝子構築物を調製してもよい。例えば、標準法を用いて任意の所望の核酸配列をアライグマポックスウイルスベクターに挿入するために、特定の制限部位を利用してもよい。あるいは、大きな配列の挿入が望まれる場合には、または本明細書に記載される、複数の遺伝子が挿入されることが望ましい場合には、相同組換え技術を利用してもよい。この方法では、複数の遺伝子が挿入される予定の挿入部位をフランキングするプラスミド配列は、アライグマポックスウイルスゲノム中に存在する配列と十分な相同性を有する配列を含み、組換えを媒介する。フランキング配列は、アライグマポックスウイルスの成長および増殖にとって必須でないアライグマポックスウイルスの領域、例えば、血球凝集素遺伝子座またはチミジンキナーゼ遺伝子座またはセリンプロテアーゼ阻害剤遺伝子座と相同でなければならない。1つのプロモーターを使用して、組み換えられるべき2つの外因性遺伝子の発現を駆動してもよいが、挿入ベクター中に、各々、個々の遺伝子に作動可能に連結した2つのプロモーターを使用することも、効率的な発現を提供する。
【0106】
本発明はまた、保護を必要とする哺乳動物に強力な新規組換えワクチンを投与することによって、狂犬病から哺乳動物を保護する、または狂犬病ウイルスに感染した後に動物を治療する新規方法を提供する。
【0107】
本発明の方法では、狂犬病に対する防御免役応答を誘導するために、狂犬病感染からの保護または治療を必要とする哺乳動物、特に、ネコおよびイヌに本発明の免疫学的に有効な量のワクチンを投与する。また、狂犬病に対してウシおよびウマを免役化するためのワクチンの使用も考慮される。哺乳動物に投与される有効免疫量は、哺乳動物を狂犬病ウイルスの致命的な神経学的効果から保護するためにワクチンに対する十分な免疫学的応答が得られるものである。狂犬病に対する防御免疫応答は、ワクチンが、USDAによって認可される狂犬病ワクチンの法定ガイドラインを満たすか、超える場合に得られると考えられる。動物に接種し、十分なワクチン接種効果を誘発する免疫学的に有効な投与量または有効免疫量は、例えば、標準力価測定研究などの通例の試験によって容易に決定できるか、容易に力価測定できる。
【0108】
ワクチンは、単回用量で、または反復用量で、特に、感染後治療として投与してよい。ワクチンは、単回接種で健康な動物に投与され、少なくとも1年〜3年以上の間、狂犬病から動物を保護する、狂犬病からの長期間の保護を提供することが望ましい。投与量は、例えば、ネコおよびイヌに投与される場合、約5.4〜約6.7Log10TCID50/mL(最小防御用量)の範囲であり得るが、より小さいネコの中には、4.5Logs10TCID50/mL以上の投与量から恩恵を受けるものもある。フェレットは、ネコおよびイヌにおいて使用されるのと同様の投与量を投与され得る。
【0109】
いくつかの国では、ウマおよびウシにおける狂犬病の問題があるので、大きな動物には、通常、体重によってではなく用量(1〜2mL)あたりの力価として表される好適なワクチン接種用量が投与される。力価は、獣医学の技術分野の当業者に公知の通例の力価測定研究によって決定できる。本発明のrRCNV−狂犬病G2はまた、狂犬病の蔓延を制御する手段として、キツネ、スカンク、マングース、アライグマ、コウモリなどといった野生動物において利用を見い出すこともできるということが考慮される。
【0110】
ワクチンは、免疫学的に有効な量の、本明細書に記載される組換えアライグマポックスウイルスベクター構築物の任意の1つを含み得る。もう1つの実施形態では、、ワクチンは、免疫学的に有効な量の、本明細書に記載される組換えアライグマポックスウイルスベクター構築物の任意の2つ以上を含み得る。一実施形態では、多価ワクチンが1つのベクター構築物のみを含む。
【0111】
ワクチンは、任意の投与経路、経口的に、鼻腔内に、経皮的に(すなわち、全身吸収のために皮膚表面上に、または皮膚上面に塗布される)、非経口的になどによって容易に投与できるが、いくつかの経路は、動物および取扱者に応じてロジスティックに、より困難であり得る。非経口投与経路として、限定されないが、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内(すなわち、注射されるか、そうでなければ皮膚の下に置かれる)経路などが挙げられる。好ましい。ワクチンは健康なネコ、イヌおよびその他の家庭用ペットに皮下に投与されることが好ましい。
【0112】
ポックスウイルスベクターは、生存していてもよいし、不活化ウイルスベクターを調製するための従来の手順によって、BEI(バイナリーエチレンイミン)、ホルマリンなどを用いて不活化されていてもよく、BEIが好ましい不活化剤(inactivant)であるが、本発明のワクチンにとって、最適および強力な免疫学的有効性のために生存アライグマポックスウイルスを使用することが高度に望ましい。生存アライグマポックスウイルスはまた、複製可能であり、マスターシードウイルスからワクチンを開発するために、好適な培養において複製し、それ自体のコピーを作製できることを意味する。狂犬病Challenge Virus Standard(CVS)およびPasteur−Paris株の狂犬病糖タンパク質(G2)を発現する生存組換えRCNVが、単独で、または好適な担体、希釈剤およびアジュバントと組み合わせてのいずれかで、ワクチンとして有用であることは有益である。好適な担体とは、すべての哺乳動物に投与するために非毒性で、製薬上許容されるものである。しかし、ネコの接種に使用される製品はアジュバント不含であることが考慮される。ワクチン製品は、液体または使用直前に標準の非毒性希釈剤で再構成される凍結乾燥粉末の形であり得る。凍結乾燥した粉末は、長期保存下でその効力を維持し、凍結乾燥され、2〜7℃で保存される場合には力価喪失がないという利点を有する。
【0113】
液体として投与される場合には、本ワクチンは、従来の形の水性溶液、シロップ剤、エリキシル剤、チンキ剤などで調製され得る。このような製剤は当技術分野では公知であり、通常、投与のために、抗原およびその他の添加剤を適当な担体または溶媒系に溶解または分散することによって調製される。好適な非毒性の、生理学的に許容される担体または溶媒として、限定されないが、水、生理食塩水、エチレングリコール、グリセロールなどが挙げられる。ワクチンはまた、凍結乾燥、またはそうでなければ、凍結−乾燥され、次いで、使用直前に好適な希釈剤を用いて無菌的に再構成または再水和されてもよい。好適な希釈剤として、限定されないが、生理食塩水、イーグル最小必須培地などが挙げられる。通常の添加剤または製剤補助剤(co−formulants)として、例えば、認定色素、フレーバー、甘味料および1つ以上の抗菌性保存料、例えば、チメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)、ネオマイシン、ポリミキシンB、アムホテリシンBなどがある。このような溶液は、例えば、部分加水分ゼラチン、ソルビトールまたは細胞培養培値を添加することによって安定化することができ、当技術分野で公知の試薬、例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、それらの混合物などを用いる従来法によって緩衝することができる。
【0114】
液体製剤としてまた、懸濁剤または乳化剤を、その他の標準の製剤補助剤と組み合わせて含む懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。これらの種類の液体製剤は、従来法によって調製できる。懸濁液は、例えば、コロイドミルを用いて調製できる。エマルジョンは、例えば、ホモジナイザーを用いて調製できる。
【0115】
体液系に注射されるよう設計される非経口製剤は、ネコ体液の対応するレベルへの適切な等張性およびpH緩衝を必要とする。等張性は、必要に応じて塩化ナトリウムおよびその他の塩を用いて適合して調整することができる。ワクチン接種時に、ウイルスを解凍(凍結されている場合には)するか、または脱イオン水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などといった生理学的に許容される担体を用いて再構成(凍結乾燥されている場合には)する。好適な溶媒、例えば、プロピレングリコールを用いて、製剤中の成分の溶解度および液体製剤の安定性を高めることができる。
【0116】
免疫増強アジュバント系からの有害な効果を有さないイヌおよびその他の動物の接種には、ワクチン製剤は、種々の通常の、非毒性の、製薬上許容される添加剤、希釈剤およびアジュバントを場合により含んでもよく、限定されないが、保存料、安定化剤、乳化剤、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化ナトリウム、塩酸などといったpH調節剤、Tween(登録商標)80(ポリソルベート80、Sigma Chemical Co.、St. Louis、MOから市販されている)などの界面活性剤、リポソーム、イスコムアジュバント、ムラミルジペプチドなどの合成糖ペプチド、デキストランまたは例えば、リン酸アルミニウムとのデキストラン組み合わせ、硫酸デキストラン、DEAE−デキストランなどといった増量剤、CARBOPOL(登録商標)(B.F.Goodrich Company、Cleveland、Ohioから市販されているポリアクリル酸ポリマー)などのカルボキシポリメチレン、エチレン無水マレイン酸またはエチレン無水マレイン酸共重合体(Monsanto Co.、St. Louis、MOから市販されている、EMA(登録商標)、およそ等量のエチレンおよび無水マレイン酸を有し、約75,000〜100,000の推定平均分子量を有する直鎖エチレン無水マレイン酸共重合体)、NEOCRYL(登録商標)A640(例えば、米国特許第5,047,238号、Polyvinyl Chemicals、Inc.、Wilmington、MAから市販されているアクリル酸と、スチレンと混合されたメタクリル酸の合体していない水性アクリル酸共重合体)のようなスチレンの、アクリル酸およびメタクリル酸の混合物との共重合体などのアクリル酸共重合体エマルジョン、マイコバクテリア細胞壁抽出物などの細菌細胞壁、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などのコリネバクテリウム由来アジュバント、プロピオニバクテリウム・アクネ(Propionibacterium acne)などのプロピオニバクテリウム由来アジュバント、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)(カルメット・ゲラン桿菌またはBCG)、オルビウイルスなどのサブウイルス(subviral)粒子アジュバント、コレラ毒素、N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−プロパンジアミン(アブリジン)、モノホスホリル脂質A、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(Kodak、Rochester、NYから市販されているDDA)、合成物質およびそれらの混合物が挙げられる。本ワクチンにおいて使用してよいさらなる添加剤として、限定されないが、デキストロース、従来の抗酸化物質および従来のキレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。ワクチン製剤を場合により補完してよいその他の製薬上許容されるアジュバントとして、限定されないが、ポリアニオン、ポリカチオン、ペプチド、ミネラルオイルエマルジョン、免疫調節物質、種々の組み合わせなどが挙げられる。好適なアジュバントのさらなる限定されない例として、スクアランおよびスクアレン(または動物起源のその他のオイル)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、例えば、PLURONIC(登録商標)(例えば、BASF Aktiengesellschaft、Ludwigshafen、Germanyから市販されているL121)、サポニン、Quil A(キラヤ・サポナリア(Quillaja saponaria)の精製された形の商業的名称、Iscotec AB、Sweden and Superfos Biosector a/s、Vedbaek、Denmark から入手可能)、MARCOL(登録商標)(液体飽和炭化水素の精製された混合物、市販の from); 植物油、Exxon−Mobil、Fairfax、VAからから市販されている)などのミネラルオイル、植物油、例えば、ピーナッツオイル、インターロイキン、例えば、インターロイキン−2およびインターロイキン−12、インターフェロン、例えば、γインターフェロン、動物ポックスウイルスタンパク質またはそれらの混合物が挙げられる。好適な安定化剤の例として、限定されないが、スクロース、ゼラチン、ペプトン、消化タンパク質抽出物、例えば、NZ−アミンまたはNZ−アミンASが挙げられる。乳化剤の例として、限定されないが、ミネラルオイル、植物油、ピーナッツオイルおよび注射用または鼻腔内ワクチンにとって有用であるその他の標準の、代謝可能な、非毒性のオイルが挙げられる。水酸化アルミニウムは、サポニンまたはQuil Aなどのその他のアジュバントと混合されて、サポニン−水酸化アルミニウムまたはQuil A−水酸化アルミニウムなどの組み合わせを形成することが望ましい。好ましいアジュバントは、エチレン無水マレイン酸共重合体、スチレンの、アクリル酸とメタクリル酸の混合物との共重合体、ミネラルオイルエマルジョンまたはそれらの組み合わせを含む。
【0117】
イヌ使用のための本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物の効力を大幅に増強する特に好ましいアジュバント系は、エチレン/マレイン酸共重合体、例えば、EMA−31(登録商標)(およそ等量のエチレンおよび無水マレイン酸を有し、約75,000〜100,000の推定平均分子量を有する直鎖エチレン無水マレイン酸共重合体、Monsanto Co.、St. Louis、MOから市販されている)およびアクリル酸共重合体エマルジョン、例えば、NEOCRYL(登録商標)(アクリル酸と、スチレンと混合されメタクリル酸の合体していない水性アクリル酸共重合体(アクリル酸−スチレンエマルジョン)、Polyvinyl Chemicals、Inc.、Wilmington、MAから市販されている)の組み合わせを含む。研究により、6.4Log10TCID50/mL(用量あたり)の力価のrRCNV−狂犬病G2構築物は、EMA−31(登録商標)およびNEOCRYL(登録商標)を含む組み合わせアジュバント系の存在下で高度に有効であることが実証された。誘発結果は、10/10(100%)の対照イヌが死亡するか、狂犬病の徴候を示し、この研究は妥当な誘発試験であるということを示した。一方、3つの接種群では、9/10(90%)、10/10(100%)および10/10(100%)がワクチン接種を受け、研究期間にわたって健康なままであった。
【0118】
イヌの場合には、本発明の組換え狂犬病ワクチンはまた、1つ以上のさらなるイヌ抗原、例えば、エーリキア・カニス、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌジステンパー、イヌパラインフルエンザウイルス(CPI)、イヌアデノウイルスII型(CAV−2)、イヌアデノウイルス(CDV)、イヌコロナウイルス(CCV)、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohemorrhagiae)(LI)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)(LC)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)(LG)、レプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)(LP)などとの混合物を場合により含んでもよい。特に好ましい抗原の組み合わせは、コロナウイルスおよびレプトスピラ(例えば、新興血清型、L. グリポティフォーサ(grippotyphosa)およびL.ポモナ(pomona))を伴うか伴わない、イヌパルボウイルス、イヌジステンパー、イヌアデノウイルスおよびイヌパラインフルエンザの単離物を包含する。
【0119】
ネコの場合には、本発明の組換え狂犬病ワクチンはまた、1つ以上のさらなるネコ抗原、例えば、ネコカリシウイルス(FCV)、クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)(これまでは、通常、クラミジア・シタッシ(Chlamydia psittaci)(FCP)として知られる、C.フェリス(felis))、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPV)、ネコ鼻気管炎ウイルス(FVR)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)、バルトネラ菌(例えば、特有のネコ引っ掻き病)などとの混合物を場合により含んでいてもよい。
【0120】
用語を本明細書に用いる場合、当業者に公知の従来の意味が使われる。例えば、用語「核酸分子」または「核酸配列」は、タンパク質合成の過程に向かう、すなわち、タンパク質物質をコードし、発現するプリンおよびピリミジン塩基の反復される単位などの反復するヌクレオチドの長い鎖を指す、その明白な意味を有する。この用語を特許請求の範囲において使用する場合、核酸とは、狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする既知外因性または外来遺伝子を指す。本明細書において使用する場合、用語「組換え」とは、標準の遺伝子工学法によって作製されるアライグマポックスウイルス構築物を指す。
【実施例】
【0121】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を実証する。しかし、これらの実施例は単に例示であって、本発明の条件および範囲について、完全に確定的なものであることを意味しないと理解されなければならない。当然のことながら、通常の反応条件(例えば、温度、反応時間など)が示されている場合には、指定の範囲より上および下の条件も使用できるが、概して、好都合ではない。実施例は、室温(約23℃〜約28℃)および大気圧で実施される。本明細書において言及されるすべての部およびパーセントは、重量ベースであり、すべての温度は、特に断りのない限り摂氏度で表される。
【0122】
本発明のさらなる理解を、以下の実施例から得ることができる。これらの実施例は、本発明を、その範囲を制限することなく例示するよう意図されている。
【0123】
実施例1:rRCNV−狂犬病G2の構築
手短には、狂犬病Pasteur− Paris糖タンパク質遺伝子(G)を、vKB3−JE13ゲノムの血球凝集(ha)遺伝子座に挿入することによってウイルスrRCNV−狂犬病G2を構築した。完全構築物は、RCNVチミジンキナーゼ(tk)および血球凝集(ha)遺伝子座にそれぞれ挿入されたCVSおよびPasteur−Paris株の狂犬病糖タンパク質遺伝子、さらなる弱毒野生型アライグマポックスウイルス、病原性Herman株を含む。
【0124】
Dr.Joseph J. Esposito(米国疾病対策予防センター(CDC)、Atlanta、GA)から入手したウイルスvKB3−JE13は、Challenge Virus Standard(CVS)株の狂犬病糖タンパク質を、アライグマポックスウイルスのチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座で発現する(さらなる情報については、米国特許第7,087,234号、同第6,241,989号、同5,348,741号および同第5,266,313号も参照のこと)。Pasteur−Paris G遺伝子は、WO00/63242の方法に従って製造できる狂犬病DNAワクチンから入手した。rRCNV−狂犬病G2の構築方法は、2つの主要な工程によって提供された。第1に、FDAHの狂犬病DNAワクチン構築物pVAX1−GPV−PV由来の、PCR増幅された1,575bpの狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子(GPV−PV)を、プラスミドpFD2003SELベクターにクローニングして、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製した。第2に、COS−7細胞においてvKB3−JE13およびプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの3者同時感染/トランスフェクションを実施して、ha遺伝子座での対立遺伝子交換によってrRCNV−狂犬病G2を作製した。青色プラーク(Lac+)を、ベロ細胞におけるプラーク精製の4回の連続ラウンドによってクローニングした。クローン候補を、ベロ細胞において、0.05%ラクトアルブミン加水分解物(LAH)、30μg/mLの硫酸ゲンタマイシンおよび5%ウシ胎児血清を補給した最小必須培地(MEM)を用いてさらに3倍以上増殖させ、その後、遺伝子特異的PCRおよび間接免役蛍光アッセイ(IFA)によって確認した。7回継代物を用いてプレマスターシードを調製した。マスターシードは、プレマスターシード、生存ベクターとしてアライグマポックスウイルスがhaおよびtk遺伝子座でPasteur−ParisおよびCVS株の狂犬病糖タンパク質をそれぞれ発現できる設計されたrRCNV−狂犬病G2の1:10,000希釈によって確立すればよい。狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2)のマスターシードは、RCNV ha、tkおよび狂犬病G遺伝子特異的PCR試験によって同定された。狂犬病糖タンパク質の発現は、Accurate Chemical & Scientific Corporation、Westbury、NY製の狂犬病Gタンパク質特異的モノクローナル抗体を用いるIFAによって確認された。ネコおよびイヌにおける細菌、真菌およびマイコプラズマ汚染の検出のための純度試験および安全性試験を、APHIS標準プロトコールに従って実施した。すべての純度および安全性試験の満足のいく結果が報告された。
【0125】
より詳しくは、以下のプロトコールをたどって、組換え生物rRCNV−狂犬病G2を調製した:
レシピエント特性決定に関しては、上記で記載および説明したように、親生物は、1961〜1962年にメリーランド州、アバディーン(Aberdeen)においてY.F.Hermanによって臨床症状のないアライグマの気道から最初に単離されたアライグマポックスウイルス(RCNV)のHerman株とした。RCNVは、直鎖の、ほぼ200kbの、各末端にヘアピンループを含む二本鎖DNAゲノムを含有するポックスウイルス科のメンバーである。その他のポックスウイルス(ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルスおよびカナリアポックスウイルス)と同様に、RCNVは細胞質中で複製し、その自身の転写系を使用し、ワクチン開発のための外来遺伝子を発現するために生存ベクターとして用いられてきた。しかし、RCNVのこれまでの、既知の使用は、アライグマポックスウイルスゲノムのtk遺伝子座での1つのみの狂犬病ウイルス株の糖タンパク質Gの挿入に制限されてきた。
【0126】
遺伝子マーカーについて、RCNV野生型は、tk遺伝子を含み、TK+表現型と表される。先のウイルスvKB3−JE13構築物中への狂犬病CVS G遺伝子の挿入は、tk遺伝子のオープンリーディングフレームを破壊し、RCNV TK−にする。同様に、RCNV野生型は、ha遺伝子を含み、HA+表現型と表される。本発明の方法による狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子の挿入は、ha遺伝子のオープンリーディングフレームを破壊し、RCNV HA−にする。
【0127】
ドナー特性決定に関しては、ドナー生物は以下のように記載される:狂犬病ウイルス、マイナス鎖RNAウイルスは、ラブドウイルス科内のリッサウイルス属のメンバーである。狂犬病ウイルスは、すべての温血動物に感染し得る。このウイルスによる感染は、致命的な神経疾患をもたらし得る。5種の構造タンパク質:核タンパク質(N)、リン酸化タンパク質(M1)、基質タンパク質(M2)、膜貫通糖タンパク質(G)およびRNA依存性RNAポリメラーゼ(L)が、12kbのウイルスゲノムによってコードされる。ウイルス抗原Gタンパク質が、ウイルス中和抗体および致死性の狂犬病ウイルス誘発からの保護を誘導できることは知られている。
【0128】
ドナー遺伝子を得るために、逆転写酵素(RT)−PCRを用いて狂犬病CVSおよびPasteur−Paris株から狂犬病G−cDNAを増幅した。CVSおよびPasteur−Paris狂犬病G遺伝子の大きさは、1575bpである。プラスミドpFD2003−GPV−PVの完全核酸配列および制限酵素マップが図1および2に示されている。さらなるDNA配列分析によって、狂犬病CVS G遺伝子は、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子と89%の同一性を共有することが示され、これら2つの狂犬病G遺伝子を、rRCNV−狂犬病G2ゲノムの、それぞれ、tkおよびha遺伝子座に反対方向に挿入した。
【0129】
組換え生物を構築するために、ウイルスrRCNV−狂犬病G2を狂犬病Pasteur−Paris糖タンパク質遺伝子(G)を、vKB3−JE13ゲノムの血球凝集(ha)遺伝子座に挿入することによって構築した。rRCNV−狂犬病G2の構築方法は、2つの主要な工程を含んでいた。第1に、鋳型としてプラスミドpGPV−PVから構築されたプラスミドpVAX1−GPV−PV(WO00/63242において調製された狂犬病DNAワクチンおよびpGPV−PV参照のこと)を用いてPCRによって増幅された1,575bpの狂犬病Pasteur−Paris G cDNA(GPV−PV)を含有するKpnI−SalI断片を、pFD2003SELベクターに挿入して、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを作製した。この構築物では、GPV−PVの発現は、合成初期−後期プロモーター(PSEL)によって調節され、レポーター遺伝子としての大腸菌(E.coli)β−ガラクトシダーゼの発現は、反対方向のワクシニアウイルス7.5kDaプロモーター(P75)の転写制御下にあった。全発現カセットを、RCNV ha配列によってフランキングした。第2に、COS−7細胞においてvKB3−JE13およびプラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの三者感染/トランスフェクションを実施して、ha遺伝子座での対立遺伝子交換によってrRCNV−狂犬病G2を作製した。青色プラーク(Lac+)を、ベロ細胞におけるプラーク精製の5回の連続ラウンドによってクローニングした。遺伝子(haまたはtk)特異的PCRを用いて、混合集団が存在しないことを確認し、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)を用いて、狂犬病糖タンパク質の発現を調べた。rRCNV−狂犬病G2の構築における重要な工程の例示については図3参照のこと、rRCNV−狂犬病G2 ゲノムのダイアグラムについては図4参照のこと。
【0130】
中間体クローニングベクターとして、プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVを本明細書に記載されるとおりに構築した。プラスミドpFD2003SEL−GPV−PVの完全配列および制限酵素マップは、図1および2にそれぞれ示されている。
【0131】
レシピエントに遺伝子修飾を導入するために、狂犬病CVSおよびPasteur−Parisの G遺伝子を、相同組換えによってRCNVゲノムのtkおよびha遺伝子座にそれぞれ挿入した。ワクシニアウイルスを用いてこれまでに記載された手順(J.J.Espositoら、「Vaccinia virus recombinants expressing rabiesvirus glycoprotein protect against rabies」、Virus Genes1:7〜21頁(1987年)参照のこと)を用いて、本発明の新規遺伝子修飾をアライグマポックスウイルスに導入するこの方法を達成した。
【0132】
組換え生物を同定および精製するためのスクリーニング法およびプロトコールは、以下のとおりに実施した:組換えウイルスを、標準ウイルスプラーク精製技術によって精製した。vKB3−JE13を、CV−1細胞内の相同組換えによって作製した。TK−ウイルスは、変異原性化合物5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)の存在下で選択し、DNAハイブリダイゼーション、PCRおよび狂犬病糖タンパク質タンパク質発現の免疫学的スクリーニングを含めた種々の方法によって組換え体をさらにスクリーニングした。rRCNV−狂犬病G2は、ブルプラーク(Lac+)精製、遺伝子(haまたはtk)特異的PCRおよびIFAによってスクリーニングした。
【0133】
実施例2:rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験
RCNV野生型においてhaおよびtk遺伝子を、およびrRCNV−狂犬病−G2ゲノムのhaおよびtk遺伝子座療法に挿入された狂犬病糖タンパク質(G)遺伝子を同定するために、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5中に存在する混合集団がないことを実証するために、以下の材料および方法を用いて包括的PCR試験を実施した。
【0134】
材料
1.ウイルス:
a)rRCNV−狂犬病G2 MSV
b)rRCNV−狂犬病G2 X+5
c)RCNV野生型エスポシト(Esposito)
2.QIAGEN DNeasy組織キット(Qiagen Inc、Valencia、CA、USAから市販されている)
3.遺伝子特異的プライマー:
a)同定試験のために、プライマーHA−08およびHA−Pstを用いてRCNV野生型の563bpのha遺伝子断片を増幅した。
【0135】
i)HA−08:5’−GAA ACA ATG CCA AAT ATC TCT−3’(配列番号2に対応する)
ii)HA−Pst:5’−TCA TTG ACA TCT GGA GAT GCA GGT ACT−3’(配列番号3に対応する)
b) 同定試験のために、プライマーHA−Pstおよびgp−1Fを用いて、rRCNV−狂犬病G2 ゲノムのha遺伝子座で、1303bpの狂犬病Pasteur−ParisのG遺伝子断片を増幅した。
【0136】
i)HA−Pst:上記の配列を参照のこと
ii)gp−1F:5’−ACA CTA ACT TCG TTG GTT−5’(配列番号4に対応する)
c)同定試験のために、プライマーTK−LWおよびTK−RWを用いて、503bpのRCNV野生型のtk遺伝子断片を増幅した。
【0137】
i)TK−LW:5’−AAC GTA ATG GAT ATA TTA AAG TCT−3’(配列番号5に対応する)
ii)TK−RW:5’−GAA AAC GAC GCC TCT TTA AAG−3’(配列番号6に対応する)
d)同定試験のために、プライマーTK−RRおよびgJE−F1を用いて、rRCNV−狂犬病G2ゲノムのtk遺伝子座で、1637bpの狂犬病CVSのG遺伝子断片を増幅した。
【0138】
i)TK−RR:5’−GAA AAG GAA GCC TCC TTA AAG−3’(配列番号7に対応する)
ii)gJE−F1:5’−TCT CCT ACA TGG AAC TCA−3’(配列番号8に対応する)
4.Applied Biosystems AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems、Foster City、CAから市販されている)
5.Amersham−Pharmacia−Biotech Inc.dNTP(Amersham Biosciences、Piscataway、NJから市販されている)
6.Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700 (Applied Biosystems、Foster City、CAから市販されている)
方法
A.DNA調製
rRCNVゲノムDNA調製は、QIAGEN DNeasy組織キット(Qiagen Inc、Valencia、CA、USAから市販されている)を用い、Qiagenによって提供される取扱説明書に記載のとおりに実施した。
【0139】
B.PCR試験
この包括的PCR試験では、プライマーHA−08およびHA−Pstを用いて、RCNV野生型をスクリーニングし、プライマーHA−Pstおよびgp−1Fを用いて、ha遺伝子座でrRCNV−狂犬病G2をスクリーニングし、プライマーTK−LWおよびTK−RWを用いて、RCNV野生型をスクリーニングし、プライマーTK−RRおよびgJE−F1を用いて、tk遺伝子座でrRCNV−狂犬病G2をスクリーニングした。
【0140】
1.各PCR反応のために、以下の反応混合物を調製する:
5μL 10×PCRバッファー
3μL 25mM MgCl2
5μL 2mM dNTPs
5μL 各プライマー(10μM)
5μL DNA鋳型
0.5μL 5ユニット/μL ABI AmpliTaq Gold
21.5μL ddH20
2.95℃のサーマルサイクラー中で、10分間、サンプルをインキュベートして、DNA鋳型を完全に変性する。
【0141】
3.標的鋳型を35サイクルの間、増幅する。
【0142】
工程 温度 時間
変性 94℃ 1.0分
アニーリング 590C 1.0分
伸長 720C 2.0分
4.サンプルを72℃で、さらに5分間維持する。
【0143】
5.サンプルを4℃で無期限に維持する。
【0144】
C.アガロースゲル電気泳動
1.10μLの各PCR産物を、2μLのローディングバッファーと合わせる。
【0145】
2.サンプルを、マーカーとしてPromega Lambda DNA/Hind IIIおよびPromega 1kb DNAラダーとともに1%アガロースゲルに流す(両製品とも、Promega Corporation、Madison、WIから市販されている)。
【0146】
結果
遺伝子特異的プライマーを用いた、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5のPCR同定試験の結果が図5に示されている。プライマーHA−08およびHA−Pstを用いて、RCNV ha遺伝子(図5A、ゲルA)を検出し、プライマーTK−LWおよびTK−RWを用いて、RCNV tk遺伝子(図5B、ゲルB)を検出し、MSVおよびX+5(レーン2〜6)ではバンドは観察されなかった。対照的に、RCNV野生型Esposito(レーン7)では、ha遺伝子座の563bpバンドおよびtk遺伝子座の503bpバンドの両方が観察された。これらの結果は、RCNV野生型は、rRCNV−狂犬病G2中に混合されているということを示した。プライマーHA−Pstおよびgp−1Fを用いて、狂犬病Pasteur−Paris G遺伝子がrRCNV−狂犬病G2 ゲノムのha遺伝子座に挿入されているかどうかを調べた場合、プライマーTK−RRおよびgJE−F1を用いて、狂犬病CVS G遺伝子がrRCNV−狂犬病G2 ゲノムのtk遺伝子座に挿入されているかどうかを調べた場合には、ha遺伝子座の1303bpバンドおよびtk遺伝子座の1637bpバンドの両方が、それぞれ、MSVおよびX+5(レーン8〜9)において観察された。対照的に、RCNV野生型Esposito(レーン13)ではバンドは観察されなかった。これらの結果は、狂犬病Pasteur−ParisおよびCVS G遺伝子は、rRCNV−狂犬病G2 ゲノムのhaおよびtk遺伝子座にそれぞれ挿入されているということを示した。これらの結果は以下の表1に要約されている:
【0147】
【表1−1】
【0148】
【表1−2】
結論
このPCR同定試験の結果から、狂犬病Pasteur−ParisおよびCVS G遺伝子は、rRCNV−狂犬病G2ゲノムのhaおよびtk遺伝子座に物理的に存在していたこと、およびRCNV野生型は、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5中には混合されていないことが結論付けられる。このPCR試験はまた、1)RCNV野生型の、rRCNV−狂犬病G2ゲノムのhaおよびtk遺伝子座中の狂犬病Pasteur−ParisおよびCVS G遺伝子の同定試験;および2)組換えウイルス構築のプラーク精製の際にrRCNV−狂犬病G2をRCNV野生型と区別するためのクローンスクリーニングのために使用できる。
【0149】
実施例3:rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5における狂犬病糖タンパク質のIn Vitro発現
rRCNV−狂犬病G2 MSVおよび継代5の感染ベロ細胞における狂犬病糖タンパク質の発現を調べるために、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)を実施した。
【0150】
材料
ウイルス: rRCNV−狂犬病G2 MSV
rRCNV−狂犬病 G2 X+5
ベロ細胞: P18−ベロ−12
培地: w/0.05%のLAH & Gentを補給した1×MEM
一次抗体: 抗狂犬病IgG2mAb(Accurate Chemical&Scientific Corp.、Westbury、NYから市販されている)
二次抗体: 蛍光がコンジュゲートしているヤギ抗マウスIgG(H+L)0.5mg
希釈剤/洗浄バッファー: 0.01M PBS
増強溶液: 1mg/mL p−フェニレンジアミン
90% グリセロール
10% 0.01M PBS
0.5M 炭酸バッファー
pH9.0、−20℃、暗所で保管
蛍光顕微鏡: Olympus BX51
方法
1.2個の8ウェルチャンバースライドに、0.05%のラクトアルブミン加水分解物(LAH)、30μL/mLのゲンタマイシンおよび5%のウシ胎児血清(FBS)を補給した、500μLの1×最小必須培地(MEM)中、1.0×105個のベロ細胞を植え付ける。
【0151】
2.5% CO2チャンバー中、37℃で一晩インキュベートする。
【0152】
3.1×MEM w/0.05%LAH & Gent培地を用いて、サンプルで、rRCNV−狂犬病G2 MSVについては、未希釈から10−1まで、rRCNV−狂犬病G2 X+5については、10−2〜10−4の連続10倍希釈を行う
4.100μLの各希釈物をチャンバースライドのウェルに2連で入れ、4番目のウェルは陰性対照として残しておく。
【0153】
5.5% CO2中、37℃でチャンバーを一晩48時間インキュベートする。
【0154】
6.細胞変性効果を観察し、狂犬病Gタンパク質特異的モノクローナル抗体(Gタンパク質特異的MAb)を用いるIFA(間接免疫蛍光アッセイ)によって狂犬病Gタンパク質発現のプラークをらに調べる。
【0155】
結果
結果は図6A〜6Cに示されている。rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5感染ベロ細胞のすべての希釈物において、細胞変性効果および蛍光が観察された(図6Aおよび6b参照のこと)が、非感染ベロ細胞のみを含有する陰性対照では観察されなかった(図6C参照のこと)。この結果は、狂犬病Gタンパク質は、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよび継代5において発現され、狂犬病Gタンパク質特異的モノクローナル抗体によって検出されるということを示した。
【0156】
実施例4:NIHマウス効力試験
標準NIHマウス効力試験を用いて、rRCNV−狂犬病G2およびvKB3−JE13(RCNV Rab−G)構築物の最初の比較研究を実施した。結果は、以下の表2に要約されている:
【0157】
【表2】
上記の結果は、本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物は、驚くべきことに、vKB3−JE13 構築物よりも23倍強力であることを示した。
【0158】
その後、同業界によって認識される技術を用いて、以下により詳細に記載される、さらなる研究を実施して、種々の製剤における狂犬病ワクチン、本発明の生存アライグマポックスウイルスベクターのNIHマウス効力、当技術分野で公知のこれまでの狂犬病ワクチンと比較して調べた。
【0159】
材料
ウイルスまたはワクチン:
rRCNV−狂犬病G2、生存ベクター(7.0Logs10TCID50/mL)
rRCNV−狂犬病G2、生存ベクター(6.5Logs10TCID50/mL)
vKB3−JE13(CDC旧構築物)(7.2Logs10TCID50/mL)
Merial PUREVAX(登録商標)ネコ狂犬病(生存カナリアポックスベクターを用いる一価の狂犬病糖タンパク質ワクチン、Merial、Harlow、Essex、UKから市販されている)
rRCNV−狂犬病G2(6.38Logs10TCID50/mL)
不活化rRCNV−狂犬病G2(不活化前力価:6.38Logs10TCID50/mL)
NIH狂犬病参照ワクチン:アジュバントを含む不活化狂犬病ワクチン、NIHマウス効力試験において参照として用いられる究極の判断基準ワクチン。
【0160】
方法
NIHマウス効力試験:
この試験は、元の方法では、1:5、1:25、1:125および1:625の、または改正法では未希釈、1:10、1:100および1:1000の試験ウイルス/ワクチンを用いて標準法「狂犬病ワクチンのNIHマウス効力試験」を実施した。手短には、16匹のマウスに、7日間隔(特記されない限り)で、2用量の0.5mLの試験ウイルス(希釈された、もしくは未希釈の)またはNIH狂犬病参照ワクチンを用いて、腹膜内に(IP)ワクチン接種した。最初のワクチン接種の14日後、すべてのワクチン接種したマウスに、0.03mLの、1:80,000希釈の病原性狂犬病(チャレンジウイルスは、ワクチン接種されていないマウス(各希釈10マウス)において5倍希釈で逆滴定して、適切な攻撃用量を確実にした。)を用いて脳内に攻撃した(IC)。すべてのマウスは、攻撃後14日間毎日観察した。
【0161】
結果
以下の表3では、rRCNV−狂犬病G2の相対効力(RP)は、それぞれ、6.5Logs10TCID50/mLで27.9および7.0Logs10TCID50/mL で101.9である。表4では、6.5Logs10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2は、7.2Logs10TCID50/mLのMerial PUREVAX(登録商標)ネコ狂犬病ワクチン(Merial、Harlow、Essex、UKから市販されている生存カナリアポックスベクターを用いる一価の狂犬病糖タンパク質ワクチン、これは、市場からこの実験比較の目的で購入した)およびVKB3−JE13(CDC旧構築物)よりも強力であった。以下の表5では、結果は、生存rRCNV−狂犬病G2は、不活化ワクチン製品よりも強力であると示した。
【0162】
結論
NIHマウス効力試験は、本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物はマウスモデルにおいて高度に強力であるということを示した。
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】
【表5】
実施例5:PCR試験によるrRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の遺伝的安定性試験
実験研究の目的は、PCR試験によってrRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の遺伝的安定性を調べることである。
【0166】
材料
1.ウイルス:
a)rRCNV−狂犬病G2 MSV
b)rRCNV−狂犬病G2 X+5
2.プライマー:
a)ha遺伝子座での1806bpのPasteur−Paris狂犬病G遺伝子およびその部分フランキング領域の増幅のために、
HA−Pst:5’−TCA TTG ACA TCT GGA GAT GCA GGT ACT−3’(配列番号3に対応する)
PW−04: 5’−AGA ACA TTA CCC ACA TGA−3’(配列番号9に対応する)
b) tk遺伝子座での1910bpのChallenge Virus Standard(CVS)狂犬病G遺伝子およびその部分フランキング領域の増幅のために
TK−RR:5’−GAA AAG GAA GCC TCC TTA AAG−3’(配列番号7に対応する)
PW−03:5’−TCT CAC AAT CAC CAC TTT CAT−3’(配列番号10に対応する)
3.DNA精製およびPCRクローニングのためのキット/試薬
a)QIAGEN DNeasy組織キット(Qiagen Inc.、Valencia、CA、USAから市販されている)
b)Applied Biosystems AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems、Foster City、CAから市販されている)
c)Amersham−Pharmacia−Biotech Inc.dNTP(Amersham Biosciences、Piscataway、NJから市販されている)
4.Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems、Foster City、CAから市販されている)
方法
A.DNA調製
QIAGEN DNeasy組織キット(Qiagen Inc、Valencia、CA、USAから市販されている)を用い、Qiagenによって提供される取扱説明書に記載のとおりに、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5からのゲノムDNAの調製を実施した。
【0167】
B.PCR試験
このPCR試験では、プライマーHA−PstおよびPW−04を用いて、ha遺伝子座で1806bpのPasteur−Paris狂犬病G遺伝子およびその挿入フランキング領域を増幅し、プライマーTK−RRおよびPW−03を用いて、tk遺伝子座で1910bpのCVS狂犬病G遺伝子およびその挿入フランキング領域を増幅した。
【0168】
1.各PCR反応のために、以下の反応混合物を調製する:
5μL 10×PCRバッファー
3μL 25mM MgCl2
5μL 2mM dNTP
5μL 各プライマー(10μM)
5μL DNA鋳型
0.5μL 5ユニット/μL ABI AmpliTaq Gold
21.5μL ddH20
2.95℃のサーマルサイクラー中で、10分間サンプルをインキュベートして、DNA鋳型を完全に変性する。
【0169】
3.標的鋳型を35サイクルの間、増幅する。
【0170】
工程 温度 時間
変性 94℃ 1.0分
アニーリング 590C 1.0分
伸長 720C 2.0分
4.サンプルを72℃で、さらに5分間維持する。
【0171】
5.サンプルを4℃で無期限に維持する。
【0172】
C.アガロースゲル電気泳動
1.10μLの各PCR産物を、2μLのローディングバッファーと合わせる。
【0173】
2.サンプルを、マーカーとしてPromega Lambda DNA/Hind IIIおよび1kb DNAラダーとともに1%アガロースゲルに流す(両製品とも、Promega Corporation、Madison、WIから市販されている)(図7参照のこと)。
【0174】
結果
PCR結果は、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5から、1806bp(ha遺伝子座)および1910bp(tk遺伝子座)の同一のバンドが増幅されることを示した(図7参照のこと)。この結果は、それぞれ、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5から得た、挿入フランキング領域およびtk遺伝子座のCVS狂犬病株の、およびha 遺伝子座のPasteur−Paris狂犬病株の狂犬病G遺伝子内に、注目すべき挿入または欠失は生じていないことを示した。rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5間のバンド密度の相違は、継代5のウイルスの力価が、マスターシードよりお約10,000倍高かったからである。結果は表6に要約されている。
【0175】
【表6】
結論
PCR試験から、rRCNV−狂犬病G2 MSVは、継代5への製造前スケールアップ手順下で遺伝的に安定であると結論付けられる。
【0176】
実施例6:青色プラークアッセイによる、rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の表現型安定性試験
この研究は、青色プラークアッセイによって、継代5(rRCNV−狂犬病G2 X+5)への製造前スケールアップ手順下でrRCNV−狂犬病G2 MSV(マスターシードウイルス)が表現型上安定であったかどうかを調べる。
【0177】
方法
A.ベロ細胞を播種する
1.細胞を、7×105個/mL(1×MEM/0.05% LAH/Gent培地+5%FBS中10mL)の濃度で100mmディッシュ上に植え付け、細胞が感染のために約80%のコンフルエンシーに達するよう一晩増殖させる。
【0178】
B.ウイルス希釈
2. Thaw out ウイルスを室温で解凍し、場合により、氷上で15秒間、3回、超音波処理する。
【0179】
3.1×MEM/0.05% LAH/Gent培地で連続10倍希釈を作製する:
a)rRCNV−狂犬病G2 MSVを10−1に希釈した。
【0180】
b)rRCNV−狂犬病G2 X+5を10−5に希釈した。
【0181】
C.感染
4.100mmディッシュから培地を除去し、6mlの0.01M PBSを用いて2回すすぐ。
【0182】
5.プレートからすべての液体を除去し、各ディッシュに希釈したウイルスを加える。
【0183】
a)MSVについて:1mLの100および10−1希釈したウイルスを3連で加えた。
【0184】
b)X+5について:1mLの10−3、10−4および10−5希釈したウイルスを3連で加えた。
【0185】
6.各ディッシュに4mLの1×MEM/0.05% LAH/Gent培地を加え、各ディッシュ中の総容積を5mLとする。
【0186】
7.37℃、5%CO2で2時間ンキュベートし、ベロ細胞にウイルスを感染させる。
【0187】
D.寒天オーバーレイ
8.2×MEM/0.05%LAH/Gent培地に10% FBSを加え、42℃に加温する。
【0188】
9.溶解した後、Noble寒天を56℃に冷却する。
【0189】
10.等容積の2.5%Noble寒天を、2×MEM/0.05%LAH/Gent培地+10% FBSと混合し、56℃の水のビーカー中、室温で10分間静置しておく。
【0190】
11.2時間の感染後、工程7のプレートから全培地を除去し、細胞単層巣を、15mLの工程10から得た増殖培地/Noble寒天混合物で覆う。
【0191】
12.寒天を10〜15分間固化させる。
【0192】
13.37℃および5% CO2でディッシュをインキュベートする。
【0193】
E.染色
5日間インキュベーションした後、以下のとおりに7mLの染色溶液でディッシュを覆う:
14.染色溶液(100mL):50mLの2.5%Noble寒天、50mLのPBSおよび1mLの50mg/mL X−Galを調製する。
【0194】
15.混合する前に、Noble寒天を56℃に冷却し、PBSを42℃に加温する。まず、PBSおよびX−Galを混合し、次いで、X−Gal/PBSをNoble寒天中に加える。混合物を、56℃の水を含有するビーカー中、室温で10分間静置する。
【0195】
16.10分後、各プレート上に7mLの染色溶液を加える。
【0196】
17.寒天を10〜15分間固化させる
18.37℃で4〜6時間インキュベートする。
【0197】
19.青色プラークを計数し、デジタル画像を記録する。
【0198】
結果
各プレート上で総青色プラークを計数し、以下の表7に要約した。いずれのプレートにおいても白色プラークは観察されなかった。ベロ細胞におけるrRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5に由来する青色プラークのデジタル画像が図8Aおよび8Bにそれぞれ示されている。rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5の算出された力価を以下に示す。
【0199】
結論
rRCNV−狂犬病G2 MSVおよびX+5のいずれにおいても白色プラークは大きな力価喪失は観察されなかった。この結果は、rRCNV−狂犬病G2 MSVは、継代5への製造前スケールアップ手順下で表現型上安定であることを示した。
【0200】
【表7】
実施例7:ネコにおけるrRCNV−狂犬病G2の力価測定研究
この研究は、rRCNV−狂犬病G2ワクチンの短期間(3ヶ月)の有効性を実証するために実施した。
【0201】
rRCNV−狂犬病G2の力価測定研究は、40匹のネコで実施した。アジュバント不含試験ワクチンは、生存rRCNV−狂犬病G2および1×MEM(最小必須培地)からなっていた。ワクチンは、2〜7℃で保管した。この研究では、4群(各群につき12週齢の10匹のネコ)があった:群1〜3のネコには、単回用量(1mL/用量)の6.5、5.5および4.5Log10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2をそれぞれ皮下(SQ)に投与したのに対し、群4(対照)のネコにはワクチン接種を行わなかった。ネコはワクチン接種時に12週齢であった。ワクチン接種の3ヶ月後、狂犬病NYC street株を用いてネコを攻撃した。攻撃の42日後、ワクチン接種を受けたネコは死亡しなかったのに対し、対照ネコの80%(8/10)が狂犬病感染のために死亡した。3種の異なる投与量でワクチン接種を受けたネコの100%が保護されたと示し、この研究の優れた結果は、本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物が、ネコにおいて狂犬病攻撃に対して完全な保護を誘導できることを示した。
【0202】
この用量漸増研究では、4群:ネコ(n=3×10)があり、3つのワクチン接種群には、それぞれ、3種の異なる力価(6.50、5.39および4.42Log10TCID50/mL/用量)を有する単回用量の狂犬病ワクチン、生存アイグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2)を、12週齢で投与し、対照群のネコ(n=10)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後28、63および98日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたネコの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0203】
ワクチン接種の3ヶ月より後に(98DPVで)、すべてのネコ(30匹のワクチン接種および10匹の対照)を、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された狂犬病street NYC株ロット92−5の1:150直接希釈物を用いて攻撃した。すべての攻撃されたネコを、42日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。攻撃結果は、8/10(80%)の対照が狂犬病のために死亡したが、各ワクチン接種群では10/10(100%)のワクチン接種を受けたものが42日間健康なままであったということを実証した。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、3つのワクチン接種群すべてについて100%であった。
【0204】
要約すれば、この用量漸増研究から得られた結果は、生存アライグマポックスウイルスベクターを用いる本発明の組換え狂犬病ワクチンは、ネコにおける、単回ワクチン接種後少なくとも3ヶ月間の狂犬病の予防において、4.42Log10TCID50/mL(用量あたり)ほどの低い力価であっても有効であることを実証した。
【0205】
ワクチン接種の3ヶ月より後に(98DPVで)、すべてのネコを、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された狂犬病street challengeウイルス(ロット92−5、3−1−92、キツネにおけるNYC株)の1:150直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、42日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。42日後、すべての狂犬病動物が攻撃後最初の4週間のうちに死亡した、これまでの狂犬病攻撃結果によって、攻撃観察期間は正当であるとした。
【0206】
致死的攻撃用量は、この研究における対照ネコの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、8/10(80%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。したがって、これは妥当な攻撃試験であった。
【0207】
各ネコから6mLの全血を、ワクチン接種後0日(DPV)、28DPV、63および98DPVに血清のために採取した。
【0208】
血清サンプルは、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)、NVSL(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture))によって公開された組織培養蛍光抗体手順によって試験して、狂犬病ウイルスに対する血清中和(SN)力価を調べた。
【0209】
この研究に用いたrRCNV−狂犬病G2ワクチンは、ベロ細胞で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、それぞれ、6.50(V1)、5.39(V2)および4.42(V3)Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0210】
ワクチン接種の28、63および98日後に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたネコの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0211】
攻撃後、ネコは42日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。8/10(80%)のワクチン接種を受けていない対照ネコが死亡するか、または狂犬病の徴候を示し、このことは、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、3つの群において、すべてのワクチン接種を受けたネコ(10/10、100%)が健康なまmであった。狂犬病感染による8匹のネコの死亡は、12DPCから25DPCの間に起こることがわかった。ワクチン接種を受けたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、3つのワクチン接種を受けた群すべてについて100%であった。
【0212】
この用量漸増研究から、生存アライグマポックスウイルスベクターを用いる新規狂犬病ワクチン(rRCNV−狂犬病G2)は、ネコにおける、単回ワクチン接種後少なくとも3ヶ月間の狂犬病の予防において、用量あたり4.42Log10TCID50/mLほどの低い力価であっても有効であると結論付けられる。
【0213】
実施例8:イヌにおけるrRCNV−狂犬病G2の用量漸増研究
この研究の目的は、rRCNV−狂犬病G2ワクチンの短期間(3ヶ月)の有効性を実証することであった。
【0214】
rRCNV−狂犬病G2の用量漸増研究は、40匹のイヌで実施した。試験ワクチンは、生存rRCNV−狂犬病G2および1×MEMからなり、アジュバントは含んでいなかった。この研究では、4群(各群につき、12週齢の10匹のイヌ):群1〜3中のイヌには、それぞれ、6.5、5.5および4.5Logs10TCID50/mLのrRCNV−狂犬病G2の単回用量(1mL/用量)を皮下に投与したが(SQ)、群4(対照)のイヌには、ワクチン接種を行わなかった。イヌはワクチン接種時に12週齢であった。ワクチン接種の3ヶ月後、狂犬病NYC street株を用いてイヌを攻撃した。攻撃の42日後、群1では0%(0/10)群2では、10%(1/10)および群3では30%(3/10)のイヌが死亡したが、対照イヌの100%(10/10)が狂犬病感染のために死亡した。群1の100%(10/10)イヌが感染から保護された優れた結果は、本発明のrRCNV−狂犬病G2は、イヌが6.5Logs10TCID50/mLの有効免役量でワクチン接種を受けた場合に、狂犬病攻撃に対する完全な保護を誘発し、うまく達成したことを示す。5.5Logs10TCID50/mLの有効量でワクチン接種を受けたイヌの90%(9/10)が、感染から保護されたことを実証する群2もまた、満足のいく結果であった。この研究は、標準用量漸増技術によって、生存狂犬病ワクチンの承認のための米国政府の必要条件(9C.F.R.§113.312)を満たす、満足のいく結果を有する本発明のrRCNV−狂犬病G2構築物の有効免疫量または投与量を確立できることを示す。
【0215】
この用量漸増研究では、4群があった:3つのワクチン接種群のイヌ(n=3×10)には、それぞれ、3種の異なる力価(6.50、5.39および4.42 Log10TCID50/mL/用量)を有する単回用量の狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2)を、12週齢で投与し、対照群のイヌ(n=10)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後28、64および91日に、すべてのイヌを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたイヌの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないイヌは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0216】
ワクチン接種の3ヶ月より後に(98DPVで)、すべてのイヌ(30匹のワクチン接種および10匹の対照)を、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された狂犬病street NYC株(キツネにおけるNYC株)の1:10−5直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、各0.5mLの咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。すべての攻撃されたイヌを、42日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病のために死亡したが、それぞれ、6.50、5.39および4.42Log10TCID50/mL/用量の用量でワクチン接種を受けたイヌの10/10(100%)、9/10(90%)および7/10(70%)が42日間健康なままであったことを実証した。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、それぞれ、100%(V1)、90%(V2)および70%(V3)であった。
【0217】
要約すれば、この用量漸増研究から得られた結果は、生存RCNVを用いる新規狂犬病ワクチンは、イヌにおける、単回ワクチン接種後少なくとも3ヶ月間の狂犬病の予防において補助として、5.39Log10TCID50/mL(用量あたり)ほどの低い力価であっても有効であることを実証した。
【0218】
致死的攻撃用量は、この研究における対照ネコの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。これは明らかに妥当な攻撃試験であった。
【0219】
血清サンプルを採取した。各イヌから8mLの全血を、ワクチン接種後0日(DPV)、28DPV、63および91DPVに血清のために採取した。血清サンプルは、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)、NVSL(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture))によって公開された組織培養蛍光抗体手順によって試験して、狂犬病ウイルスに対する血清中和(SN)力価を調べた。
【0220】
この研究に用いたrRCNV−狂犬病G2ワクチンは、ベロ細胞で5つの複製で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、それぞれ、6.50(V1)、5.39(V2)および4.42(V3)Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0221】
ワクチン接種の28、63および91日後に、すべてのイヌを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたイヌの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないイヌは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0222】
攻撃後観察:攻撃後、イヌは42日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。10/10(100%)のワクチン接種を受けていない対照イヌが死亡するか、狂犬病の徴候を示し、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、それぞれ、6.50、5.39および4.42Log10TCID50/mL/用量でワクチン接種を受けたイヌの10/10(100%)、9/10(90%)および7/10(70%)が42日間健康なままであった。興味深いことに、狂犬病感染による14匹のイヌの死亡は、13DPCから25DPCの間に起こることがわかった。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、それぞれ、100%(V1)、90%(V2)および70%(V3)であった。
【0223】
この用量漸増研究から、生存アライグマポックスウイルスベクターを用いる狂犬病ワクチン(rRCNV−狂犬病G2)は、イヌにおける、単回ワクチン接種後少なくとも3ヶ月間の狂犬病の予防において補助として、5.39Log10TCID50/mLほどの低い力価であっても有効であると結論付けられる。
【0224】
実施例9:ネコにおける、狂犬病ワクチン(低用量および常用量)、生存アライグマポックスウイルスベクターの1年の免役継続期間研究
ネコにおいてワクチン製剤を使用するための防御用量を調べるために、2つの、rRCNV−狂犬病G2ワクチンの1年の免役継続期間(DOI)研究を実施し、病原性狂犬病ウイルス攻撃によって有効性が実証された。これらの研究の目的は、2つの異なる用量、5.38Log10TCID50/mlの低用量および6.28Log10TCID50/mlの常用量の狂犬病ウイルスワクチンを用いた単回ワクチン接種後、1年の期間後、ネコにおいてアジュバント不含組換え狂犬病ワクチンの有効性および免疫原性を調べることであった。
【0225】
A.低用量研究概要
手短には、この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種群のネコ(n=28)には、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(VSコード1901.R5)の単回用量を、12週齢で投与し、対照群のネコ(n=13)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後28、91、183、272および365日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の1年より後に(421日目)、狂犬病攻撃のために35匹のネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株ロット92−5の1:40直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたネコを、90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたネコの脳を各々、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0226】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、「低」用量と呼ばれる、5.38Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。ワクチン接種を受けたネコでは相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0227】
攻撃結果は、8/10(80%)のワクチン接種を受けていない対照が狂犬病によって死亡したが、ワクチン接種を受けたネコの3/25すなわち12%しか狂犬病によって死亡せず、22/25(88%)のワクチン接種を受けたものは90日間健康なままであったことを実証した。9匹の死亡した対照ネコの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、85%(95%CI55,97)であった。これは、狂犬病ワクチン有効性のための法的要件(タイトル9、連邦およびEPの規則集)を満たす満足のいく試験である。
【0228】
低用量研究のためのプロトコール
この研究のプロトコールを以下にさらに詳細に記載する:
ワクチン接種時には、28匹の試験動物および13匹の対照動物があった。攻撃のために35匹のこれらのネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。ネコは、ワクチン接種時に12週齢であった。この研究のための凍結乾燥したrRCNV−狂犬病G2ワクチンは、2〜7℃で保存した。凍結乾燥ワクチンは、生存rRCNV−狂犬病G2およびSGGK安定化剤からなっていた。試験組換え狂犬病ワクチンは、アジュバント不含であった。試験ワクチンは、5つの複製アッセイで力価測定し、この研究においてネコに投与される用量を定めた。ワクチンの平均力価は、5.38Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0229】
ワクチン接種時には、41実験単位(28のワクチン接種されたものおよび13の対照)があった。攻撃のために、これらのネコのうち35匹(25匹のワクチン接種されたもの、および10匹の対照)を無作為に選択した。同腹の子に従って、動物を、ワクチン接種されるものおよび対照に無作為化した。無作為化プロセスは、マイクロソフトエクセルを用いた各同腹仔の動物への乱数割り当てによって完了した。各同腹仔中の乱数を、その同腹仔から各群への動物の配置について昇順に分けた。このプロセスを、すべての同腹仔からの動物が無作為化されるまで反復した。
【0230】
本研究は、無作為化完備ブロック計画であった。41匹のネコを、以下のように無作為に2群に分けた:
【0231】
【表8】
ワクチン接種プロトコール
凍結乾燥ワクチンを、1.0mLの供給された滅菌水希釈剤によって再水和した。ワクチン接種経路は皮下とした。ワクチン接種群中の各動物には、1回用量(1mL/用量)のワクチンを襟首に投与した。対照動物には、ワクチン接種を行わなかった。APHIS/CVB調査官は現場で、ワクチン接種の全手順を観察した。長期の研究機関のために、Fel−O−Vax PCTを用い、ラベルの指示に従って、すべてのネコにワクチン接種した。
【0232】
攻撃プロトコール
rRCNV−狂犬病G2ワクチンを用いたワクチン接種の1年より後に(421DPV)、攻撃のために10匹の対照および25匹のワクチン接種されたものを無作為に選択した。無作為化は、マイクロソフトエクセル中の乱数発生器を用いて実施した:ワクチン接種されたものに数を割り当て、分け、ワクチン接種されたものの数が25に等しくなるまで最大数をつけたネコを攻撃から除外し;類似の手順を用いて、対照の数を10に減らした。結果として、3匹の対照および2匹のワクチン接種されたものを、攻撃相から無作為に排除した。さらに、1匹の、種々の皮膚疾患を有していたワクチン接種されたものを、攻撃の前にこの研究から排除した。
【0233】
35匹のネコのすべてを、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street challengeウイルス(キツネにおけるNYC株)の1:40直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの各咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、90日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。APHIS/CVB調査官は現場で、攻撃ウイルス希釈および狂犬病攻撃の全手順を観察した。
【0234】
致死的攻撃用量は、この研究における対照ネコの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、8/10(80%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。したがって、これは妥当な攻撃試験であった。
【0235】
サンプル採取および試験
血清サンプル
血清サンプルを採取した。各ネコから6mLの全血を、ワクチン接種後0日(DPV)、28DPV、91DPV、183DPV、272DPVおよび365DPVに血清のために採取した。
【0236】
血清学試験
血清サンプルは、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)、NVSL(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture))によって公開された組織培養蛍光抗体手順によって試験して、狂犬病ウイルスに対する血清中和(SN)力価を調べた。
【0237】
動物の試験
攻撃後観察期間の間、安楽死させた、または死亡しているように見えたすべての動物を、狂犬病ウイルスについて試験した。より詳しくは、脳を採取し(アンモン角)、切片を作製し、加工し、蛍光抗体技術によって染色した。
【0238】
結果
ワクチン力価測定
この研究に用いたワクチンは、標準技術によってベロ細胞で5つの複製で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、5.38Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0239】
狂犬病に対する中和抗体
ワクチン接種の28、91、183、272および365日後に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたネコの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0240】
攻撃後観察
攻撃後、ネコは90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。8/10(80%)のワクチン接種を受けていない対照ネコが死亡するか、または狂犬病の徴候を示さず、これが妥当な攻撃試験であったことを示すことがわかった。対照的に、3/25(12%)のワクチン接種を受けたネコしか死亡または狂犬病の徴候を示さなかった。狂犬病感染による11匹のネコの死亡は、10DPCから20DPCの間に起こることがわかった。研究の最後に、22匹のワクチン接種されたものおよび2匹の対照が健康なままであった。ワクチン接種されたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。予防できる確率は85%であった(95%CI55,97)。
【0241】
蛍光抗体試験
上記の安楽死させたネコの脳(8匹の対照および3匹のワクチン接種されたもの)の試験結果は、狂犬病ウイルスについて陽性であり、それによって、これら11匹のネコの死亡は、狂犬病感染によるものであったことが確認された。
【0242】
結論
この1年DOI研究から、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、ネコの単回ワクチン接種後少なくとも1年間の狂犬病の予防において補助として、5.38Log10TCID50/mLほどの低い力価であっても有効であると結論付けられる。
【0243】
B.常用量研究概要
1年の免役継続期間研究を反復した、ただし、組換えワクチンの平均力価は、「標準」用量と呼ばれる、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。凍結乾燥ワクチンは、生存rRCNV−狂犬病G2およびSGGK安定化剤からなっていた。この組換え狂犬病ワクチンは、アジュバント不含であった。試験ワクチンは、5つの複製アッセイで力価測定し、この研究においてネコに投与される用量を定めた。
【0244】
この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種群のネコ(n=28)には、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(VSコード1901.R5)の単回用量を、12週齢で投与し、対照群のネコ(n=13)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後31、91、182、273および364日後に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の1年より後に(399日目)、狂犬病攻撃のために35匹のネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDAによって供給された、ロット92−5の狂犬病street NYC株の1:40直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたネコを90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたネコ各々の脳を、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0245】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。すべてのワクチン接種を受けたネコは相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていない対照ネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0246】
攻撃結果は、9/10(90%)対照が狂犬病によって死亡したが、25/25(100%)のワクチン接種を受けたネコは、90日間健康なままであったことを実証した。9匹の死亡した対照ネコの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、100%(95%CI 84,100)であった。これは、狂犬病ワクチン有効性のための9CFRおよびEP必要条件を満たす満足のいく試験である。
【0247】
要約すれば、この1年のDOI研究から得られた結果は、Fort Dodge Animal Healthの狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、単回ワクチン接種後少なくとも1年間の狂犬病の予防において、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の力価で有効であることを実証する。
【0248】
常用量研究のプロトコール
これは、無作為化完備ブロック計画であった。41匹のネコを、以下のように無作為に2群に分けた:
【0249】
【表9】
ワクチン接種プロトコール
凍結乾燥ワクチンを、1.0mLの供給された滅菌水希釈剤によって再水和した。ワクチン接種経路は皮下とした。ワクチン接種群中の各動物には、1回用量(1mL/用量)のワクチンを襟首に投与した。対照動物には、ワクチン接種を行わなかった。APHIS/CVB調査官は現場で、ワクチン接種の全手順を観察した。長期の研究機関のために、Fel−O−Vax PCTを用い、ラベルの指示に従って、すべてのネコにワクチン接種した。
【0250】
攻撃プロトコール
ワクチン接種の1年より後に(399日目)、攻撃のために10匹の対照および25匹のワクチン接種されたものを無作為に選択した。無作為化は、マイクロソフトエクセル中の乱数発生器を用いて実施した:ワクチン接種されたものに数を割り当て、分け、ワクチン接種されたものの数が25に等しくなるまで最大数をつけたネコを攻撃から除外し;類似の手順を用いて、対照の数を10に減らした。結果として、3匹の対照を、攻撃相から無作為に排除し、安全性試験のためにQCに移した。3匹のワクチン接種されたものも、攻撃相から無作為に排除し、安楽死させた。
【0251】
35匹のネコのすべてを、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street challengeウイルス(キツネにおけるNYC株)の1:40直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの各咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、90日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。APHIS/CVB調査官は現場で、攻撃ウイルス希釈および狂犬病攻撃の全手順を観察した。
【0252】
致死的攻撃用量は、この研究における対照ネコの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、9/10(90%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。したがって、これは妥当な攻撃試験であった。
【0253】
結果
ワクチン力価測定
この研究に使用したワクチンは、ベロ細胞で5つの複製で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0254】
サンプル採取および試験
血清サンプル
6ミリリットルの全血を、ワクチン接種後0日およびワクチン接種後31、91、182、273および364日に採取した。
【0255】
血清学試験
ワクチン接種後31、91、182、273および364日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたネコの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0256】
攻撃後観察
攻撃後、ネコは90日間観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。9/10(90%)のワクチン接種を受けていない対照ネコが死亡するか、狂犬病の徴候を示し、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、ワクチン接種を受けたネコのうち死亡または狂犬病の徴候を示したものはなかった(0/25、0%)。狂犬病感染による9匹のネコの死亡は、10DPCから15DPCの間に起こることがわかった。研究の最後に、25匹のワクチン接種されたものすべておよび1匹の対照が健康なままであった。ワクチン接種されたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。予防できる確率は100%であった(95%CI84,100)。
【0257】
蛍光抗体試験
攻撃後観察期間の間に死亡した、および安楽死させたネコを、蛍光抗体試験のためにアイオワ州立大学獣医学部の獣医診断検査所(Veterinary Diagnostic Laboratory)に確実に運んだ。9匹の死亡したネコの脳(9匹の対照)は、狂犬病ウイルスについて試験の結果、陽性であった。これらの結果から、9匹のネコの死亡は狂犬病によるものであったことがさらに確認された。
【0258】
結論
この1年のDOI研究の結果から、新規狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2構築物)は、単回ワクチン接種後少なくとも1年間の狂犬病の予防において、ネコにおいて、6.28Log10TCID50/mLの力価で有効であると結論付けられる。
【0259】
実施例10:イヌにおける、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターの1年免役継続期間研究
イヌにおける狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターの防御用量を決定するために、rRCNV−狂犬病G2ワクチンの1年の免役継続期間(DOI)研究を実施し、イヌにおいて病原性狂犬病ウイルス攻撃によって有効性を実証した。この研究の目的は、単回ワクチン接種の1年後の、イヌにおけるアジュバント不含組換え狂犬病ワクチンの有効性を実証することであった。
【0260】
手短には、この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種群のイヌ(n=28)には、単回用量の狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(VSコード1901.R5)を、12週齢で投与し、対照群のイヌ(n=13)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後28、91、182、273および365日に、すべてのイヌを出血させ、個々の血清サンプルを狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の1年より後に(420日目)、狂犬病攻撃のために35匹のイヌ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株ロット92−5の10−4直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたイヌを、90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたイヌ各々の脳を、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0261】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。ワクチン接種を受けたイヌの大部分で相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないイヌは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0262】
攻撃結果は、9/10(90%)の対照が狂犬病によって死亡したが、22/25(88%)のワクチン接種を受けたものは90日間健康なままであったことを実証した。9匹の死亡した対照および3匹のワクチン接種を受けたイヌの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、87%(95%CI62,97)であった。これは、狂犬病ワクチン有効性のための法的要件(タイトル9、連邦規則集)を満たす満足のいく試験である。
【0263】
具体的に言えば、、ワクチン接種時に28匹の試験動物および13匹の対照動物があった。これらのイヌのうち35匹(25匹のワクチン接種されたもの、および10匹の対照)を、攻撃のために無作為に選択した。イヌはワクチン接種時に12週齢であった。この研究に使用された凍結乾燥rRCNV−狂犬病G2ワクチンは、2〜7℃で保存し、生存rRCNV−狂犬病G2およびSGGK安定化剤からなっていた。この組換え狂犬病ワクチンは、アジュバント不含であった。試験ワクチンは、5つの複製アッセイで力価測定し、この研究においてイヌに投与される用量を定めた。ワクチンの平均力価は、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0264】
対照群においてプラセボは用いなかった。プラセボがないので、特定の観察バイアスは取り込まれなかった。結果は、ワクチン接種日後丸1年を超えて盲検化した観察者によって判断され、その時点では、プラセボがないことの一時的効果の可能性はとうに終わっている。
【0265】
ワクチン接種時には、41実験単位(28のワクチン接種されたものおよび13の対照)があった。攻撃のために、これらのイヌのうち35匹(25匹のワクチン接種されたもの、および10匹の対照)を無作為に選択した。同腹の子に従って、動物を、ワクチン接種されるものおよび対照に無作為化した。無作為化プロセスは、マイクロソフトエクセルを用いた各同腹仔の動物への乱数割り当てによって完了した。各同腹仔中の乱数を、その同腹仔から各群への動物の配置について昇順に分けた。このプロセスを、すべての同腹仔からの動物が無作為化されるまで反復した。
【0266】
この研究は、ワクチン接種されたものおよび対照が、群を越える脱落の可能性を防ぐために別個に飼育されるので、最初の3週間は盲検化されなかった。群を超えるワクチンキャリーオーバーがないことを確実にするために、群は、動物管理スタッフに知られなくてはならなかった。ワクチン接種の3週間後、動物を再度無作為化し、研究の残りを盲検化した。
【0267】
本研究は、無作為化完備ブロック計画であった。41匹のイヌを、以下のように無作為に2群に分けた:
【0268】
【表10−1】
【0269】
【表10−2】
ワクチン接種
凍結乾燥ワクチンを、1.0mLの供給された滅菌水希釈剤によって再水和した。ワクチン接種経路は皮下とした。ワクチン接種群中の各動物には、1用量(1mL/用量)のワクチンを襟首に投与した。対照動物には、ワクチン接種を行わなかった。APHIS/CVB調査官は現場で、ワクチン接種の全手順を観察した。
【0270】
攻撃
ワクチン接種の1年より後に(420日)、攻撃のために10匹の対照および25匹のワクチン接種されたものを選択した。4匹のイヌ(2匹のワクチン接種されたものおよび2匹の対照)を再発性耳感染のために排除した。2匹のイヌ(1匹のワクチン接種されたものおよび1匹の対照)を無作為に排除した。無作為化は、マイクロソフトエクセル中の乱数発生器を用いて実施した:ワクチン接種されたものに数を割り当て、分け、ワクチン接種されたものの数が25に等しくなるまで最大数をつけたイヌを攻撃から除外し;類似の手順を用いて、対照の数を10に減らした。結果として、1匹の対照および1匹のワクチン接種されたものを、攻撃相から無作為に排除した。
【0271】
35匹のイヌのすべてを、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street challengeウイルス(キツネにおけるNYC株)の10−4直接希釈物を用いて攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの各咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、90日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。APHIS/CVB調査官は現場で、攻撃ウイルス希釈および狂犬病攻撃の全手順を観察した。
【0272】
致死的攻撃用量は、この研究における対照イヌの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、9/10(90%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。したがって、これは妥当な攻撃試験であった。
【0273】
攻撃前2日間、35匹の健康なイヌにおいて異常な徴候は観察されなかった。血清サンプルを採取した。各イヌから6mLの全血を、ワクチン接種後0日(DPV)、28DPV、91DPVおよび182DPV、273DPVおよび365DPVに血清のために採取した。血清サンプルは、迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)、NVSL(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture))によって公開された組織培養蛍光抗体手順によって試験して、狂犬病ウイルスに対する血清中和(SN)力価を調べた。
【0274】
この研究に用いたワクチンは、標準手順によってベロ細胞で5つの複製で力価測定した。試験ワクチンの平均力価は、それぞれ、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)であった。
【0275】
ワクチン接種の28、91、182、273および365日後に、すべてのイヌを出血させ、個々の血清サンプルを、RFFITによって狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種を受けたイヌの大部分において相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないイヌは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0276】
攻撃後、イヌは90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。9/10(90%)のワクチン接種を受けていない対照のイヌは死亡するか、または狂犬病の徴候を示し、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、3/25(12%)のワクチン接種を受けたイヌが、死亡または狂犬病の徴候を示した。狂犬病感染によるイヌの死亡は、11DPCから17DPCの間に起こることがわかった。研究の最後に、22匹のワクチン接種されたものおよび1匹の対照が健康なままであった。ワクチン接種されたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。予防できる確率は87%であった(95%CI62,97)。
【0277】
攻撃後観察期間の間に死亡した、および安楽死させたイヌを、蛍光抗体試験のためにアイオワ州立大学獣医学部の獣医診断検査所(Veterinary Diagnostic Laboratory)に確実に運んだ。12匹の死亡したイヌの脳(9匹の対照および3匹のワクチン接種されたもの)は、狂犬病ウイルスについて試験の結果、陽性であった。これらの結果から、13匹のイヌの死亡は狂犬病によるものであったことがさらに確認された。
【0278】
結論
この1年のDOI研究の結果から、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(rRCNV−狂犬病G2構築物)は、イヌの単回ワクチン接種後少なくとも1年間の狂犬病の予防において、ネコにおいて補助として、6.28Log10TCID50/mLの力価で有効であると結論付けられる。
【0279】
実施例11:ネコにおける、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターの毒性への復帰研究
この研究の目的は、rRCNV−狂犬病G2が、ネコにおける戻し継代の際に病原性へ復帰できるかどうかを調べることおよびウイルス排出およびネコの間でのウイルスの蔓延の可能性を調べることであった。
【0280】
それぞれ、チミジンキナーゼおよび血球凝集遺伝子座でChallenge Virus StandardおよびPasteur−Paris株の狂犬病糖タンパク質を発現する生存組換えアライグマポックスウイルス(rRCNV−狂犬病G2)の毒性への復帰を、この研究で評価した。8周齢の全部で35匹の健康なネコで最初の継代および確認的戻し継代を実施した。35匹のネコすべてが、接種の時点でアライグマポックスウイルスについて血清学的に陰性であった。
【0281】
最初の継代は、全部で15匹のネコを用いて実施した:10匹の1.0mLの用量の7.41Log10TCID50のrRCNV−狂犬病G2を用いて経口的に接種されたネコおよび5匹の接種を行っていない接触対照としてのネコ。口腔スワブおよび5種の無作為糞便サンプルを、接種後−2日〜15日後(DPI)まで毎日採取した。15DPIに、組織サンプル採取のために、すべてのネコを剖検した。肉眼的病変は観察されず、口腔スワブ、糞便および組織サンプルのいずれからもウイルスは単離されなかった。
【0282】
正確性を確保するために、20匹のネコ:10匹の、1.0mL用量の、最初の継代においてと同じウイルス(7.57Log10TCID50/mL)を用いて経口的に接種されたネコおよび10匹の、1.0mL用量の、最初の継代から採取されたプールされた組織ホモジネートを用いて経口的に接種されたネコにおいて確認的戻し継代を実施した。口腔スワブおよび5種の無作為糞便サンプルを,−2〜21DPIの間毎日採取した。21DPIでは、組織サンプル採取のためにすべてのネコを剖検した。最初の継代におけるのと同様、肉眼的病変は観察されず、採取したサンプルのいずれからもウイルスは単離できなかった。
【0283】
両継代において、すべてのネコを、直腸温、アライグマポックスウイルスの感染と関連している臨床徴候および研究機関の間の任意のその他の局所または全身反応または相当な直腸温上昇について毎日モニターした。
【0284】
要約すれば、この研究から得た結果気化は、rRCNV−狂犬病G2は、ネコを通過する場合に、毒性へ復帰することおよび/または体液もしくは糞便中に播種することはできないことを実証した。さらに、試験したネコのうち臨床徴候を発症したものはなかった。これらの結果は、rRCNV−狂犬病G2は、ネコにおいて非複製的であり、非病原性であることをさらに示唆する。
【0285】
ウイルス排出は、高レベルの生存RCNVを用いた接種後に実証されず、これから、RCNVは、ネコにおいて非複製的であり、非病原性であることが確認された。
【0286】
具体的には、合計35匹の健康なネコをこの研究に用いた。最初の継代では10匹の接種したネコおよび5匹の未処理(対照)ネコを使用した。確認用継代では、20匹のネコを使用し、そのうち10匹が、最初の継代から得られたプールされた組織ホモジネートを用いて播種され、10匹は、最初の継代と同じウイルスを用いて播種された。
【0287】
ネコは、両継代において、接種時にほぼ8週齢であった。標的集団は健康なネコであった。その免疫機能に関しては、この研究のために選択された動物はネコを代表するように思われた。すべてのネコが、試験の結果、RCNVに対して陰性であった(SN力価<2)。
【0288】
最初の継代は、15匹のネコ、10匹の、rRCNV−狂犬病G2 x+3を接種されたものおよび5匹の未処理接触対照からなっていた。確認的戻し継代は、20匹のネコを含んでいた。10匹のネコは、最初の継代殻得られたプールした組織ホモジネートを接種し、10匹のネコは、最初の継代と同じウイルス(rRCNV−狂犬病G2 x+3)を用いて播種した。
【0289】
最初の接種および確認的戻し継代に使用したネコは、同腹仔によって適当な群に無作為化した。無作為化は、マイクロソフトエクセルを用いて各同腹仔の動物へ乱数を割り当てることによって完了した。乱数を昇順に分け、各同腹仔の動物をそのそれぞれの群に入れた。この研究は、研究の観察、サンプル採取ならびに最初の継代および確認的戻し継代のための試験を実施する科学者には盲検化した。
【0290】
最初の継代
10匹の接種したネコは、5匹の未処理(接触)対照ネコとまとめて飼育し、ワクチンウイルスの、動物対動物の接触によって蔓延する能力を評価した。口腔スワブおよび糞便サンプルを、接種後−2〜15日(DPI)まで毎日採取した。直腸温および全身の健康および臨床徴候の観察を、−2〜15DPIまで毎日モニターした。
【0291】
15DPIに、10匹の接種されたものおよび5匹の接触対照ネコを安楽死させ、剖検した。ウイルス単離のために、組織サンプル(頸部リンパ節、肝臓、脾臓および扁桃腺)を無菌的に採取した。
【0292】
確認的戻し継代
最初の継代では、口腔スワブ、糞便サンプルまたは組織サンプルからウイルスが単離されなかったので、20匹のネコを用いて確認的戻し継代を実施した。10匹のネコに、プールした組織ホモジネートを接種し、10匹のネコに最初の接種におけるようなウイルスを接種した。これらのネコは、−2DPI〜21DPIまで観察した。21DPIに、これらのネコを安楽死させ、剖検した。
【0293】
接種
接触対照(接種なし)を除くすべてのネコに、最初および確認的戻し継代の両方において1.0mLの投与容量を用いて経口的に投与した。
【0294】
観察および手順
直腸温、および咳、くしゃみ、鼻汁および眼漏、舌炎および口内炎などの臨床徴候を、最初の継代については、−2〜15DPIまで、確認的戻し継代については、−2〜21DPIまで毎日モニターした。剖検後、血清サンプル、口腔スワブ、糞便サンプルおよび組織サンプルを採取し、分析した。
【0295】
RCNVに対する抗体を、一定ウイルス(50〜300TCID50)変動血清法を用いる血清中和によって測定した。エンドポイントは、ベロ細胞でのRCNV感染に特徴的な細胞変性効果(CPE)の顕微鏡検査によって読み取った。力価は、ReedおよびMuenchの方法に従って、ウイルス複製の50%阻害を引き起こす血清希釈として算出した。
【0296】
最初のおよび確認的戻し継代において使用したrRCNV−狂犬病G2接種は、24ウェルプレート中のベロ細胞で力価測定した。
【0297】
手短には、0.05% LAHおよびゲンタマイシン(30μg/mL)を含有する1×MEMを用いてrRCNV−狂犬病G2の連続10倍希釈物を作製した。ウェルあたり100μLの希釈したウイルスを、90%を超えるコンフルエントの単層に接種した。プレートを、4〜6%CO2を用い、36±2℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェルに、0.05% LAH、ゲンタマイシン(30μg/mL)および5% FBSを含有する1.0〜1.5mLの1×MEMを加え、プレートを4〜6%CO2を用い、36±2℃で5日間さらにインキュベートした。インキュベーション後、プレートを、典型的なCPEまたはプラークの観察のために染色した。TCID50力価は、ReedおよびMuenchの方法を用いて算出した。
【0298】
ウイルス単離法の感度を調べるために、rRCNV−狂犬病G2を、プールされた口腔スワブ、組織ホモジネートおよび糞便サンプルで希釈し(スパイクし)、上記の方法によって力価測定した。
【0299】
ネコを通過した場合に、rRCNV−狂犬病G2の毒性への復帰がないことを実証するには、以下の基準を満たさなければならない:
a)rRCNV−狂犬病G2を接種されたネコは、臨床疾患の徴候を示さないはずである。咽門炎などの軽度の一時的な臨床異常が、開園生存ウイルスの経口投与のために予測され、接種の正常な反応と考えられるべきである。
【0300】
b)確認的戻し継代から単離されたrRCNV−狂犬病G2には、最初の継代において接種されたウイルスと比較して、表現型及び/または遺伝子型の変化は観察されない。
【0301】
c)糞便、口腔および組織サンプルからウイルスが単離されない場合には、ウイルス排出および蔓延がない。
【0302】
接種rRCNV−狂犬病G2 x+3の力価測定は、5つの複製で実施した。最初の継代の平均力価は、7.41Log10TCID50/mLであり、確認的戻し継代については、7.57Log10TCID50/mLであった。これらの力価は、1年の免役継続期間研究においてネコおよびイヌに投与される常用量(6.28Log10TCID50/mL)よりも約13〜20倍高かった。
【0303】
RCNVに対する抗体を血清中和によって測定し、ネコがRCNV抗体について陰性であることを確認した。血清中和アッセイは、両継代において、すべてのネコが、RCNV抗体について接種時に陰性である(SN<2)ことを示した。
【0304】
すべてのネコの直腸温および臨床徴候を最初の継代および確認的戻し継代においていつものように記録した。対照および接種群両方において、ネコの中には、温度が上昇(103.0°F〜103.9°F)したものがあったが、これは、ネコが観察時、拘束されている間に興奮したためである可能性が最も高い。研究期間の間、異常な徴候は観察されなかった。15DPI(最初の継代)および21DPI(確認的戻し継代)で、すべてのネコを剖検し、肉眼的病変は全く観察されなかった。これらの結果は、rRCNV−狂犬病G2は、ネコにとって非病原性であることを示した。
【0305】
最初の継代および確認的戻し継代のすべての口腔スワブ、糞便および組織サンプルからのウイルス単離は陰性であった。いずれかの継代からもウイルスが全く単離されなかったので、ウイルス力価は算出しなかった。これらの結果は、rRCNV−狂犬病G2はネコにおいて非複製性であることを示した。
【0306】
口腔スワブ、糞便および組織サンプルが、ウイルス力価測定に何らかの負の影響を与えているかどうかを調べるために、rRCNV−狂犬病G2 x+3を、希釈剤として上記のサンプルを用いて2連で力価測定し、対照としてMEM培地と比較した。rRCNV−狂犬病G2 x+3の平均力価は、それぞれ、7.6(口腔スワブ)、7.0(糞便)、7.0(組織)および7.6Log10TCID50/mL(MEM)であった。これらの結果は、力価測定アッセイに対する口腔スワブ、糞便および組織サンプルの有意な影響を全く示さなかった。感度についての、さらなるスパイク試験は、単離は、試験サンプル中にウイルス粒子がある場合には陽性となることを示した。
【0307】
いずれの試験サンプルからもウイルスが単離されなかったので、最初の継代と確認的戻し継代の間のrRCNV−狂犬病G2表現型および/または遺伝子型の変化の比較は実施しなかった。
【0308】
結論
この研究から得られた結果は、rRCNV−狂犬病G2は、ネコを通過した場合に病原性に復帰できないことを示した。また、rRCNV−狂犬病G2ウイルスは、排出しない、またはネコの間で播種しないことも実証した。
【0309】
実施例12:イヌにおけるDURAMUNE(登録商標)DA2PPvまたはDURAMUNE(登録商標)DA2PPv/CvK/LCIGP不活化rRCNV−狂犬病G2画分の用量設定
手短には、この用量設定研究では、4群があった:3つのワクチン接種群中のイヌ(n=3×10)には、単回用量の、それぞれ、6.7もしくは6.4Log10TCID50/mLの不活化前力価(希釈)を有するDURAMUNE(登録商標)DA2PPv(ケーキ)/不活化rRCNV−狂犬病G2、または6.7Log10TCID50/mLの不活化前力価(希釈)を有するCvK/LCIGP/不活化rRCNV−狂犬病G2を、12週齢で投与し、対照群中のイヌ(n=10)には、DURAMUNE(登録商標)DA2PPv(ケーキ)/水(希釈剤)を用いてワクチン接種した。ワクチン接種の時点で、すべての試験イヌは狂犬病血清陰性であった。
【0310】
ワクチン接種の20週間後(140DPVで)、すべてのイヌ(30ワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株の1:10−5直接希釈を用いて攻撃した。すべての攻撃されたイヌを、33日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病のために死亡したが、群1中の9/10(90%)のワクチン接種されたもの、群2中の10/10(100%)のワクチン接種されたものおよび群3中の10/10(100%)のワクチン接種されたものは、33日間、健康なままであったことを示した。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。このワクチン有効性は、それぞれ、90%(V1)、100%(V2)および100%(V3)であった。
【0311】
DURAMUNE(登録商標)10併用製剤(Fort Dodge Animal Health、Wyeth、Madison、NJの事業部から市販されている)、イヌジステンパー−アデノウイルス2型−コロナウイルス−パラインフルエンザ−パルボウイルスワクチン、改変生存および死滅ウイルス、レプトスピラバクトリン(DA2PPv/CvK/LCIGP)は、USDAが認可したワクチンである。凍結乾燥DAPPv改変生存画分は、イヌジステンパーウイルス(CDV)、イヌアデノウイルス2型(CAV2)、イヌパラインフルエンザウイルス(CPI)およびイヌパルボウイルス(CPV)を含む。希釈剤CvK/LCIGP画分は、不活化イヌコロナウイルス(CCV)およびレプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohaemorrhagiae)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)の外膜タンパク質(OMC)からなるレプトスピラバクテリン(L)を含む。DA2PPvケーキは、CvK/LCIGP希釈剤で再構成し、CDV、感染性イヌ肝炎ウイルス(ICHV)、CAV2、CPV、CPI、CCV、レプトスピラ・カニコーラ(L.canicola)、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(L.icterohaemorrhagiae)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(L.grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(L.pomona)によって引き起こされる疾患から保護するための補助として、皮下(SQ)経路によって6週齢以上の子犬に投与する。
【0312】
この用量設定研究では、イヌをDURAMUNE(登録商標)DA2PPv/不活化rRCNV−狂犬病G2またはDURAMUNE(登録商標)DA2PPi/CvK/LCIGP/不活化rRCNV−狂犬病G2の単回用量でワクチン接種し、ワクチン接種の約5ヶ月後に病原性狂犬病ウイルスを用いて攻撃した。この研究の目的は、(1)組換えウイルス(rRCNV−狂犬病G2)が、不活化ワクチンとして免役原性であるかどうかを調べること、(2)DA2PPvまたはDURAMUNE(登録商標)DA2PPiと組み合わせた不活化rRCNV−狂犬病G2の5ヶ月DOIを評価することおよび(3)免疫原性のための投与量を最適化することであった。
【0313】
30匹の試験動物および10匹の対照動物があった。イヌは、ワクチン接種時に12週であった。
【0314】
試験ワクチンの組成物
ワクチン1(V1)は、凍結乾燥DA2PPvケーキおよび希釈剤1からなるものであった。希釈剤1は、不活化rRCNV狂犬病G2画分(用量あたり約6.7Log10TCID50の不活化前力価)およびアジュバント(1% EMA(登録商標)3% NEOCRYL(登録商標))を含んでいた。
【0315】
ワクチン2(V2)は、凍結乾燥DA2PPvケーキおよび希釈剤2からなるものであった。希釈剤2は、不活化rRCNV狂犬病G2画分(用量あたり約6.4Log10TCID50不活化前力価)およびアジュバント(1% EMA(登録商標)および3% NEOCRYL(登録商標))を含んでいた。
【0316】
ワクチン3(V3)は、凍結乾燥DAPPvケーキおよび希釈剤3からなるものであった。希釈剤3は、不活化rRCNV狂犬病G2画分(用量あたり約6.7Log10TCID50不活化前力価)、不活化イヌコロナウイルス(CvK)、レプトスピラバクテリン(LCIGP−レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohaemorrhagiae)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)のOMC)およびアジュバント(1% EMA(登録商標)および3% NEOCRYL(登録商標))を含んでいた。
【0317】
凍結乾燥DA2PPv画分およびCvK/LCIGP希釈剤を、従来の製造方法に従って製造した。不活化rRCNV−狂犬病G2画分を、ワクチン調製のためにウイルス培養物を不活化するための標準技術によってBEI(バイナリーエチレンイミン)によって不活化した。凍結乾燥DA2PPv画分を、ワクチン接種時にそれぞれの希釈剤によって再水和した。この研究では、DURAMUNE(登録商標)DA2PPvケーキを、1mLの滅菌Super Q水で再構成し、再水和したDA2PPvをプラセボとして使用した。
【0318】
方法
イヌを以下のように無作為に4群に分けた:
【0319】
【表11】
ワクチン接種
ワクチン接種経路は皮下(SQ)であった。各動物に1用量(1mL/用量)のワクチン/プラセボを襟首に投与した。
【0320】
攻撃
ワクチン接種の20週間(約5ヶ月)後、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street challengeウイルス(キツネにおけるNYC株)の1:10−5直接希釈物を用いてすべてのイヌを攻撃した。手短には、動物を接種前に鎮静化し、次いで、0.5mLの各咀嚼筋への希釈した攻撃(合計1.0mL)を用いて筋肉内に接種した。動物を、33日の観察期間の間、狂犬病攻撃領域内の個々のケージに入れ、確保した。33日の攻撃後観察期間は、すべての狂犬病動物が攻撃後最初の4週間に死亡した、これまでの狂犬病攻撃結果によって正当であるとした。
【0321】
致死的攻撃用量は、この研究における対照イヌの死亡率によって条件が満たされるものと決定した。攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病のために死亡したことを示した。これは、明らかに妥当な攻撃試験であった。
【0322】
観察
攻撃前2日間、40匹の健康なイヌにおいて異常な徴候は観察されなかった。
【0323】
攻撃後、攻撃後33日(DPC)まで、狂犬病の徴候を認識するために動物を臨床獣医によって訓練された人材によって毎日モニターした。観察結果は記録し、狂犬病ワクチンの法的要件の通りに類別した。
【0324】
攻撃後、イヌは33日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡を記録した。10/10(100%)の対照のイヌは死亡するか、または狂犬病の徴候を示し、これが妥当な攻撃試験であったことを示す。対照的に、群1、2または3中の9/10(90%)、10/10(100%)および10/10(100%)のワクチン接種を受けたものは、それぞれ、33日間健康なままであった。興味深いことに、狂犬病感染による11匹のイヌの死亡は、11DPC〜22DPCの間に起こることがわかった。ワクチン接種されたものと対照群の間の死亡率には有意差があった。ワクチン有効性は、それぞれ、90%(V1)、100%(V2)および100%(V3)であった。
【0325】
結論
この用量漸増研究の結果は、DURAMUNE(登録商標)DA2PPvまたはDURAMUNE(登録商標)DAP2Pv/LCIGPと組み合わせた本発明のrRCNV−狂犬病G2画分は、イヌにおける、単回ワクチン接種後少なくとも5ヶ月間の狂犬病の予防において補助として、6.4Log10TCID50/mL(用量あたり)の不活化前力価でさえ有効であると結論付けられる。
【0326】
実施例13:ネコにおける、狂犬病ワクチン(常用量)、生存アライグマポックスウイルスベクターの3年免役継続期間研究
ネコにおけるワクチン製剤の使用のために防御用量を決定するために、rRCNV−狂犬病G2 ワクチンの3年の免役継続期間(DOI)研究を、実施例9において先に記載したものと同様の材料および方法を用いて実施し、有効性が病原性狂犬病ウイルス攻撃によって実証された。本発明の目的は、6.28Log10TCID50/mlの用量を用いて単回ワクチン接種した後の3年間後に、ネコにおけるアジュバント不含組換え狂犬病ワクチンの有効性および免疫原性を実証することであった。
【0327】
手短には、この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種を受ける群のネコ(n=28)には、単回用量の狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(VSコード1901.R5)を、12週齢で投与し、対照群のネコ(n=13)には、ワクチン接種を行わなかった。ワクチン接種後0、28、91、181、273、365、549、730、912および1095日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、先に記載した狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の3年より後に(1128日目)、狂犬病攻撃のために35匹のネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株ロット92−5の1:25直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたネコを、90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたネコ各々の脳を、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0328】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。ワクチン接種を受けたネコでは相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0329】
攻撃結果は、10/10(100%)の対照が狂犬病によって死亡したが、21/25(84%)のワクチン接種を受けたものは90日間健康なままであったことを実証した。10匹の死亡した対照および4匹のワクチン接種を受けたネコの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、84%(95%CI64,96)であった。
【0330】
実施例14:ネコにおける、Fel−O−Vax−LvK IV+CaliVaxと組み合わせた、狂犬病ワクチン(常用量)、生存アライグマポックスウイルスベクターの1年の免役継続期間研究
ネコにおいてワクチン製剤を使用するための防御用量を調べるために、rRCNV−狂犬病G2画分の1年の免役継続期間(DOI)研究を実施し、病原性狂犬病ウイルス攻撃によって有効性が実証された。これらの研究の目的は、1年間後のネコにおけるFel−O−Vax−LvK IV+CaliVaxと組み合わせた、rRCNV−狂犬病G2画分の有効性および免疫原性を実証することであった。
【0331】
手短には、この1年の免役継続期間(DOI)研究では、2群があった:ワクチン接種を受ける群のネコ(n=28)には、1mlの、Fel−O−Vax LvK IV+CaliVax(希釈剤)と組み合わせた、狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクター(ケーキ)を、12週齢で皮下投与し、対照群のネコ(n=13)には、1mlのFel−O−Vax LvK IV+CaliVax(希釈剤)を皮下投与した。8週齢ですべてのネコに1mLのFel−O−Vax LvK IV+CaliVaxを投与した。ワクチン接種後0、28、91、182、274および398日に、すべてのネコを出血させ、個々の血清サンプルを、狂犬病ウイルスに対する中和抗体について試験した。ワクチン接種の1年より後に(400日目)、狂犬病攻撃のために35匹のネコ(25匹のワクチン接種されたものおよび10匹の対照)を無作為に選択した。攻撃材料は、NVSL−BVL、USDA(米国農業省の国立獣医学研究所(National Veterinary Services Laboratories of the United States Department of Agriculture)および全豪検査機関協会(National Association of Testing Authorities)(NATA)品質認定研究所下のオーストラリアのノーザンテリトリーのベリマー獣医学研究所(Berrimah Veterinary Laboratories)によって供給された、狂犬病street NYC株ロット92−5の1:25直接希釈によって調製した。すべての攻撃されたネコを、90日間毎日観察し、狂犬病関連臨床徴候および死亡率を記録した。死亡した、または安楽死させたネコ各々の脳を、蛍光抗体(FA)試験によって狂犬病について調べた。APHIS/CVB調査官は現場で、この研究におけるワクチン接種、攻撃材料調製および攻撃のすべての手順を観察した。
【0332】
狂犬病ワクチン、生存アライグマポックスウイルスベクターは、5つの複製で力価測定し、6.28Log10TCID50/mL(用量あたり)の平均力価を有していた。ワクチン接種を受けたネコでは相当な狂犬病中和抗体力価が観察されたが、ワクチン接種を受けていないネコは、攻撃まで狂犬病血清陰性のままであった。
【0333】
攻撃結果は、7/10(70%)の対照が狂犬病によって死亡したが、25/25(100%)のワクチン接種を受けたものは90日間健康なままであったことを実証した。7匹の死亡した対照のネコの脳は、FA試験によって狂犬病ウイルスについて陽性と確認された。ワクチン接種群と対照群の間の死亡率には有意差があった。狂犬病の予防のためのワクチン有効性は、100%(95%CI82,100)であった。
【0334】
前述では、例示目的で、制限ではなく、本発明の特定の実施形態の詳細な説明を提供した。この開示内容に基づいて当業者に明らかな、すべてのその他の改変、波及および等価物は、特許請求される本発明の範囲内に含まれる容易とされることは理解されるべきである。
【0335】
【表12】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が少なくとも1つの狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、2つ以上の外因性核酸分子を含む、組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)であって、血球凝集素(ha)遺伝子座もしくはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に少なくとも2つの核酸分子が挿入されているか、または血球凝集素およびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に少なくとも1つの核酸分子が挿入されている、組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)。
【請求項2】
狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、前記2つの核酸分子が、狂犬病ウイルスの同一株から単離されている、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項3】
狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、前記2つの核酸分子が、狂犬病ウイルスの異なる株から単離されている、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項4】
狂犬病ウイルス糖タンパク質の供給源が、Challenge Virus Standard狂犬病株、Pasteur−Paris狂犬病株、イヌ狂犬病streetウイルス、ホッキョクギツネ狂犬病ウイルス、アライグマ狂犬病ウイルスおよびコウモリ狂犬病ウイルスからなる群から選択される、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項5】
アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されている糖タンパク質をコードする核酸分子が、Challenge Virus Standard狂犬病株に由来する、請求項4に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項6】
アライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座に挿入されている糖タンパク質をコードする核酸分子が、Pasteur−Paris狂犬病株に由来する、請求項4に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項7】
アライグマポックスウイルスが生存しており、複製可能である、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター
【請求項8】
アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼおよび血球凝集素遺伝子座に加え、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位に挿入されている狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする核酸分子をさらに含む、請求項7に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項9】
アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位が、セリンプロテアーゼ阻害剤部位である、請求項8に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項10】
免疫学的に有効な量の、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクターと、所望により、好適な担体または希釈剤とを含む、組換え狂犬病ワクチン。
【請求項11】
免疫学的に有効な量の、請求項1〜9のいずれか一項に記載の1つ以上の組換えアライグマポックスウイルスベクターと、所望により、好適な担体または希釈剤とを含む、組換え狂犬病ワクチン。
【請求項12】
ネコカリシウイルス、クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルスおよびバルトネラ菌からなる群から選択される1つ以上のネコ抗原との混合物をさらに含む、請求項11に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項13】
エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、イヌパルボウイルス、イヌジステンパー、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌアデノウイルスII型、イヌアデノウイルス、イヌコロナウイルス、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohemorrhagiae)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)からなる群から選択される1つ以上のイヌ抗原との混合物をさらに含む、請求項12に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項14】
アジュバントをさらに含む、請求項10に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項15】
前記アジュバントが、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む、請求項14に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項16】
アジュバントをさらに含む、請求項11に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項17】
前記アジュバントが、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む、請求項16に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項18】
アジュバントをさらに含む、請求項12に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項19】
前記アジュバントが、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む、請求項18に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項20】
アジュバントをさらに含む、請求項13に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項21】
前記アジュバントが、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む、請求項20に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項22】
哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に、有効免疫量の請求項10に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項23】
哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に、有効免疫量の請求項11に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項24】
哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に、有効免疫量の請求項14に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項25】
哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に、有効免疫量の請求項16に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項26】
ネコにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、ネコに、有効免疫量の請求項12、18または19のいずれか一項に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項27】
イヌにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、イヌに、有効免疫量の請求項13、20または21のいずれか一項に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項28】
ウシにおいて、またはウマにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、ウシまたはウマに、有効免疫量の請求項10または12〜15のいずれか一項に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項29】
ウシにおいて、またはウマにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、ウシまたはウマに、有効免疫量の請求項11に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項30】
請求項1または3のいずれか一項に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクターを作製する方法であって、以下の工程:
(a) 第1の狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸配列を、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入する工程と、
(b)第2の狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸配列を、アライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座に挿入する工程と、
(c)組換えアライグマポックスウイルスベクターを回収する工程と
を含む方法。
【請求項31】
前記工程(a)および(b)の核酸配列が、組換えアライグマポックスウイルスベクターによる核酸の発現ならびに第1および第2の狂犬病株の糖タンパク質の産生を可能にするために、核酸配列に作動可能に連結したプロモーター配列をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の狂犬病株が、Challenge Virus Standard狂犬病株である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の狂犬病株が、Pasteur−Paris狂犬病株である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
配列番号1のヌクレオチド配列を有するプラスミドpFD2003−GPV−PV。
【請求項35】
前記ワクチンの有効免疫量が、約4.5Log10TCID50/ml〜約6.7Log10TCID50/mlの範囲である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ワクチンの有効免疫量が、約5.38Log10TCID50/ml〜約6.28Log10TCID50/mlの範囲である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ワクチンが、単回用量として、または反復用量として投与される、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ワクチンがアジュバントを含まない、請求項10〜14のいずれか一項に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項1】
各々が少なくとも1つの狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、2つ以上の外因性核酸分子を含む、組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)であって、血球凝集素(ha)遺伝子座もしくはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に少なくとも2つの核酸分子が挿入されているか、または血球凝集素およびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に少なくとも1つの核酸分子が挿入されている、組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)。
【請求項2】
狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、前記2つの核酸分子が、狂犬病ウイルスの同一株から単離されている、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項3】
狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする、前記2つの核酸分子が、狂犬病ウイルスの異なる株から単離されている、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項4】
狂犬病ウイルス糖タンパク質の供給源が、Challenge Virus Standard狂犬病株、Pasteur−Paris狂犬病株、イヌ狂犬病streetウイルス、ホッキョクギツネ狂犬病ウイルス、アライグマ狂犬病ウイルスおよびコウモリ狂犬病ウイルスからなる群から選択される、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項5】
アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されている糖タンパク質をコードする核酸分子が、Challenge Virus Standard狂犬病株に由来する、請求項4に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項6】
アライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座に挿入されている糖タンパク質をコードする核酸分子が、Pasteur−Paris狂犬病株に由来する、請求項4に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項7】
アライグマポックスウイルスが生存しており、複製可能である、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター
【請求項8】
アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼおよび血球凝集素遺伝子座に加え、アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位に挿入されている狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードする核酸分子をさらに含む、請求項7に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項9】
アライグマポックスウイルスゲノムの第3の非必須部位が、セリンプロテアーゼ阻害剤部位である、請求項8に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項10】
免疫学的に有効な量の、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクターと、所望により、好適な担体または希釈剤とを含む、組換え狂犬病ワクチン。
【請求項11】
免疫学的に有効な量の、請求項1〜9のいずれか一項に記載の1つ以上の組換えアライグマポックスウイルスベクターと、所望により、好適な担体または希釈剤とを含む、組換え狂犬病ワクチン。
【請求項12】
ネコカリシウイルス、クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルスおよびバルトネラ菌からなる群から選択される1つ以上のネコ抗原との混合物をさらに含む、請求項11に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項13】
エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、イヌパルボウイルス、イヌジステンパー、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌアデノウイルスII型、イヌアデノウイルス、イヌコロナウイルス、レプトスピラ・イクテロヘモラジア(Leptospira icterohemorrhagiae)、レプトスピラ・カニコーラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・グリポティフォーサ(Leptospira grippotyphosa)およびレプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)からなる群から選択される1つ以上のイヌ抗原との混合物をさらに含む、請求項12に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項14】
アジュバントをさらに含む、請求項10に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項15】
前記アジュバントが、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む、請求項14に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項16】
アジュバントをさらに含む、請求項11に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項17】
前記アジュバントが、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む、請求項16に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項18】
アジュバントをさらに含む、請求項12に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項19】
前記アジュバントが、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む、請求項18に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項20】
アジュバントをさらに含む、請求項13に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項21】
前記アジュバントが、エチレン/マレイン酸共重合体およびアクリル酸共重合体エマルジョンの混合物を含む、請求項20に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【請求項22】
哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に、有効免疫量の請求項10に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項23】
哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に、有効免疫量の請求項11に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項24】
哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に、有効免疫量の請求項14に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項25】
哺乳動物において狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、哺乳動物に、有効免疫量の請求項16に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項26】
ネコにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、ネコに、有効免疫量の請求項12、18または19のいずれか一項に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項27】
イヌにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、イヌに、有効免疫量の請求項13、20または21のいずれか一項に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項28】
ウシにおいて、またはウマにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、ウシまたはウマに、有効免疫量の請求項10または12〜15のいずれか一項に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項29】
ウシにおいて、またはウマにおいて狂犬病に対する防御免疫応答を誘導する方法であって、ウシまたはウマに、有効免疫量の請求項11に記載のワクチンを投与する工程を含む方法。
【請求項30】
請求項1または3のいずれか一項に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクターを作製する方法であって、以下の工程:
(a) 第1の狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸配列を、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入する工程と、
(b)第2の狂犬病株の糖タンパク質をコードする核酸配列を、アライグマポックスウイルスゲノムの血球凝集素遺伝子座に挿入する工程と、
(c)組換えアライグマポックスウイルスベクターを回収する工程と
を含む方法。
【請求項31】
前記工程(a)および(b)の核酸配列が、組換えアライグマポックスウイルスベクターによる核酸の発現ならびに第1および第2の狂犬病株の糖タンパク質の産生を可能にするために、核酸配列に作動可能に連結したプロモーター配列をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の狂犬病株が、Challenge Virus Standard狂犬病株である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の狂犬病株が、Pasteur−Paris狂犬病株である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
配列番号1のヌクレオチド配列を有するプラスミドpFD2003−GPV−PV。
【請求項35】
前記ワクチンの有効免疫量が、約4.5Log10TCID50/ml〜約6.7Log10TCID50/mlの範囲である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ワクチンの有効免疫量が、約5.38Log10TCID50/ml〜約6.28Log10TCID50/mlの範囲である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ワクチンが、単回用量として、または反復用量として投与される、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ワクチンがアジュバントを含まない、請求項10〜14のいずれか一項に記載の組換え狂犬病ワクチン。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図1K】
【図1L】
【図1M】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図1K】
【図1L】
【図1M】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2010−528605(P2010−528605A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510318(P2010−510318)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/006736
【国際公開番号】WO2008/153794
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/006736
【国際公開番号】WO2008/153794
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】
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