説明

独立操舵装置

【課題】乗心地や車輪の操舵の応答性を一層高めることができる独立操舵装置を提供する。
【解決手段】後輪独立操舵装置10は、アクチュエータ15内のモータ38を回転させ、モータ38の回転を軸方向の直進運動に変換させて後輪18の舵角を制御するものである。この後輪独立操舵装置10は、アクチュエータ15が第1、第2のラバーブッシュ73,77を介して車体11側やナックル14側にそれぞれ連結され、第1、第2のラバーブッシュ73,77のばね特性K1,K2から決定されるアクチュエータ15の固有周波数f1,f2が、アクチュエータ15の作動周波数f3より高く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ内に備えたモータを回転させ、モータの回転を軸方向の直進運動に変換させて車輪の舵角を制御する独立操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
独立操舵装置のなかには、アクチュエータで車輪のトー角を変化させて操縦安定性能を高めるようにしたものが知られている。
このアクチュエータは、モータの駆動で雄ねじ部材を回転させ、雄ねじ部材の回転で雌ねじ部材をモータから離れる方向や近づく方向に送り出すように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】EP0340823A1
【0003】
ところで、雄ねじ部材の回転で雌ねじ部材を送り出すためには、雌ねじ部材が雄ねじ部材とともに回転しないようにする必要がある。
そこで、雌ねじ部材を回転しないようにするために、雌ねじ部材の外周面に軸線方向の案内溝を形成し、この案内溝にボルトの先端部を差し込んでいる。
【0004】
雄ねじ部材が回転したとき、案内溝の側壁がボルトに当たって雌ねじ部材の回転を阻止することが可能である。
一方、案内溝を軸線方向に延ばすことで雌ねじ部材の軸線方向への移動が可能である。
よって、モータの駆動で雌ねじ部材を送り出すことでアクチュエータが伸縮し、車輪のトー角を制御することが可能であるとされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のアクチュエータは、雌ねじ部材の回転を阻止するために、雌ねじ部材の外周面に軸線方向の案内溝を形成し、この案内溝にボルトの先端部を差し込んでいる。
このように、アクチュエータに雌ねじ部材の回転を阻止する部材を組み込むために、アクチュエータの簡素化や小型化を図ることが難しい。
【0006】
ここで、独立操舵装置のなかには、アクチュエータの両端部をそれぞれラバーブッシュを介して車体側やナックル側に連結することで、雌ねじ部材の回転を阻止するものがある。
アクチュエータに雌ねじ部材の回転を阻止する部材を組み込む必要がないので、アクチュエータの簡素化や小型化を図ることが可能である。
【0007】
この独立操舵装置は、アクチュエータは両端部がそれぞれラバーブッシュを介して車体側やナックル側に連結されている。
よって、アクチュエータの伸張に対する車輪の操舵の応答性を良好に保つためには、ラバーブッシュのバネレートを大きくして、アクチュエータの軸方向に対する弾性変形量を小さく抑えることが好ましい。
一方、乗心地を良好に保つためには、ラバーブッシュのバネレートを小さくして、アクチュエータのねじり方向(こじり方向)に対する弾性変形量を大きくすることが好ましい。
【0008】
このため、ラバーブッシュのバネレートは、車輪の操舵の応答性および乗心地の両方を考慮して設定されている。
しかし、車輪の操舵の応答性や乗心地を高めるためにねじり方向のバネレートを小さくすると、ラバーブッシュのバネレートなどから決まるアクチュエータ全体の固有周波数がアクチュエータの作動周波数に近づくことが考えられる。
このため、アクチュエータの応答性が低下してしまい、車輪の操舵の応答性や乗心地の両方をさらに高めることが難しく、車輪の操舵の応答性や車両の乗心地を一層高めることが可能な技術の実用化が望まれている。
【0009】
本発明は、乗心地や車輪の操舵の応答性を一層高めることができる独立操舵装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、アクチュエータの両端部が車体側およびナックル側にそれぞれ連結され、前記アクチュエータ内に備えたモータを回転させ、前記モータの回転を軸方向の直進運動に変換させ、前記ナックルで支持する車輪の舵角を制御する独立操舵装置において、前記アクチュエータの両端部のうち、少なくとも一端部がラバーブッシュを介して車体側およびナックル側の一方に連結され、前記ラバーブッシュのばね特性から決定される前記アクチュエータの固有周波数が、前記アクチュエータの作動周波数より高く設定されたことを特徴とする。
【0011】
ここで、モータを駆動してアクチュエータを伸縮駆動した際に、アクチュエータの作動周波数が、ラバーブッシュのバネレートなどから決まるアクチュエータ全体の固有周波数と一致すると、ラバーブッシュが共振してしまい、アクチュエータの動きが目標値に定まらない虞がある。
そこで、請求項1において、ラバーブッシュのばね特性(バネレート)から決定されるアクチュエータの固有周波数を、アクチュエータの作動周波数よりも高く設定した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、アクチュエータの両端部のうち、少なくとも一端部をラバーブッシュを介して車体側およびナックル側の一方に連結した。
そして、ラバーブッシュのばね特性から決定されるアクチュエータ全体の固有周波数を、アクチュエータの作動周波数よりも高く設定した。
【0013】
よって、モータを回転させてアクチュエータを伸縮する際に、アクチュエータの作動周波数が、ラバーブッシュのばね特性などから決まるアクチュエータ全体の固有周波数と一致することを抑制することができる。
これにより、ラバーブッシュが固有周波数で振動することを抑えることができる。
したがって、アクチュエータの作動によるトー変化が所望のトー変化とならないことを抑えて、アクチュエータの応答性を向上させることができるという利点がある。
【0014】
さらには、ラバーブッシュの固有周波数をアクチュエータの作動周波数より高い周波数に設定することで、ラバーブッシュのばね特性を自由に選択できる。
これにより、車両の乗心地や車輪の操舵の応答性(操安性)の設定自由度を向上させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
なお、本実施の形態では、独立操舵装置として後輪独立操舵装置を例示する。
【0016】
図1は本発明に係る独立操舵装置を示す斜視図、図2は図1の2矢視図である。
後輪独立操舵装置10は、車体11に上下動可能に連結されたアッパアーム12およびロアアーム13と、アッパアーム12およびロアアーム13に操舵自在に連結されたナックル14と、ナックル14を操舵するアクチュエータ15と、ナックル14の上下動を緩衝する懸架ばね付きダンパー16とを備えた四輪操舵車両用のダブルウイッシュボーン式のリヤサスペンションである。
ナックル14に後輪18が回転自在に支持されている。
【0017】
アッパアーム12は、基端部がラバーブッシュジョイント21,21で車体11に上下動可能に連結されている。
ロアアーム13は、基端部がラバーブッシュジョイント22…で車体11に上下動可能に連結されている。
アッパアーム12の先端部およびロアアーム13の先端部にボールジョイント23,24を介してナックル14の上部および下部が連結されている。
【0018】
アクチュエータ15は、基端部(両端部の一方)15aがラバーブッシュジョイント26を介して車体11に連結され、先端部(両端部の他方)15bがラバーブッシュジョイント27を介してナックル14の後部位に連結されている。
懸架ばね付きダンパー16は、上端部16aが車体11(具体的には、サスペンションタワーの上壁19)に設けられ、下端部16bがラバーブッシュジョイント28を介してナックル14の上部に連結されている。
【0019】
後輪独立操舵装置10によれば、アクチュエータ15を伸長することで、ナックル14の後部が車幅方向外側に押圧されて後輪18のトー角をトーイン方向に制御させることができる。
一方、アクチュエータ15を収縮することで、ナックル14の後部が車幅方向内側に引っ張られて後輪18のトー角をトーアウト方向に制御させることができる。
すなわち、アクチュエータ15は、トー角をコントロールするトーコントロールアクチュエータである。
【0020】
よって、通常のステアリングホイール(不図示)の操作による前輪の操舵に加えて、後輪18のトー角を制御して車両の直進安定性能や旋回性能を高めることができる。
後輪18のトー角は、例えば、車速やステアリングホイールの操舵角に応じて制御される。
以下、図3〜図6に基づいてアクチュエータ15を詳しく説明する。
【0021】
図3は図1の3−3線断面図である。
アクチュエータ15は、車体11(図2参照)側に連結されるラバーブッシュジョイント26が設けられた第1ハウジング31と、第1ハウジング31にボルト32…で一体に設けられた第2ハウジング33と、第2ハウジング33にスライド自在に支持された出力ロッド34とを備えている。
出力ロッド34は、ナックル14(図2参照)側に連結されるラバーブッシュジョイント27が設けられている。
【0022】
ラバーブッシュジョイント26は、第1ハウジング31の基端部15aに設けられた第1外軸受71と、第1外軸受71内に同軸上に配置された第1内軸受72と、第1外軸受71および第1内軸受72間に介在された第1ラバーブッシュ(ラバーブッシュ)73を備えている。
【0023】
第1内軸受72は、ボルト74を介して車体11(図2参照)に回動自在に連結されている。
第1ラバーブッシュ73が弾性変形することで、第1外軸受71を第1内軸受72に対して変位させることが可能である。
【0024】
ラバーブッシュジョイント27は、第2ハウジング33の先端部15bに設けられた第2外軸受75と、第2外軸受75内に同軸上に配置された第2内軸受76と、第2外軸受75および第2内軸受76間に介在された第2ラバーブッシュ(ラバーブッシュ)77を備えている。
【0025】
第2内軸受76は、ボルト78・ナット79を介してナックル14(図2参照)に回動自在に連結されている。
第2ラバーブッシュ77が弾性変形することで、第2外軸受75を第2内軸受76に対して変位させることが可能である。
【0026】
第1、第2のハウジング31,33は、フランジ31a,33aがボルト32…で締結されることで一体に連結されている。すなわち、第1、第2のハウジング31,33でハウジング30が形成されている。
第1ハウジング31は、内部にモータ38が収納されている。
第2ハウジング33は、内部に、モータ38に連結された減速機41と、減速機41に連結されたカップリング42と、カップリング42に連結された送りねじ機構43とが収納されている。
【0027】
モータ38は、カップ状のヨーク45と、ヨーク45のフランジ45aにボルト46…で締結されたベアリングホルダ47とを備えている。
ヨーク45およびベアリングホルダ47を締結するボルト46…を、第1ハウジング31にねじ結合することでモータ38は第1ハウジング31に取り付けられている。
【0028】
ヨーク45の内周面に環状のステータ48が支持され、ステータ48内にロータ49が配置されている。
ロータ49の回転軸51は、一端部がヨーク45の底部にボールベアリング52を介して回転自在に支持され、他端部がベアリングホルダ47にボールベアリング53を介して回転自在に支持されている。
ベアリングホルダ47は、内面に、回転軸51のコミュテータ54に摺接するブラシ55が支持されている。
ブラシ55から延びた導線56が、グロメット57を介して外部に引き出されている。
【0029】
減速機41は、第1遊星歯車減速機構61および第2遊星歯車減速機構62が直列に連結されている。
第1、第2の遊星歯車減速機構61,62を直列に連結することで、モータ38の回転を減速機41で大きく減速させてカップリング42に伝えることができる。
カップリング42に伝えられた回転は、送りねじ機構43の入力フランジ81に伝えられる。
【0030】
第2ハウジング33の軸方向中間部の内周面に第1スライドベアリング104が設けられ、第2ハウジング33の軸方向端部にエンド部材105がねじ結合されている。
エンド部材105の内周面に第2スライドベアリング106が設けられている。
第1、第2のスライドベアリング104,106に出力ロッド34が摺動自在に支持されている。
【0031】
出力ロッド34内に送りねじ機構43が収納されている。
送りねじ機構43は、入力フランジ81に同軸上に設けられた雄ねじ部材107と、雄ねじ部材107の外周にねじ結合された雌ねじ部材108とを備えている。
雄ねじ部材107は、一端側(右側)が入力フランジ81の中心を貫通してナット112で締結されている。
雌ねじ部材108は、中空の出力ロッド34の内周面に嵌合され、他端側(左側)の外周が出力ロッド34の内周にねじ結合部114でねじ結合されている。
【0032】
この送りねじ機構43は、入力フランジ81の回転を雄ねじ部材107に伝えることで、雌ねじ部材108を軸線111方向に移動させることができる。
よって、雌ねじ部材108と一体に出力ロッド34を軸線111方向に移動させることができる。
【0033】
ここで、アクチュエータ15には、出力ロッド34の移動位置を検出し、検出した移動位置を制御装置(図示せず)にフィードバックする位置検出手段120が設けられている。
位置検出手段120は、出力ロッド34の外周にボルト121で固定された被検出部122と、被検出部122の位置を磁気的に検出する検出部123とを備えている。
【0034】
検出部123は、第2ハウジング33に設けられたセンサ本体124に収納されている。
被検出部122は、一例として、永久磁石が用いられている。
検出部123は、一例として、コイル等が用いられている。
第2ハウジング33には開口部33bが形成されている。開口部33bを形成することで、出力ロッド34の移動に伴って被検出部122が移動した際に、被検出部122が第2ハウジング33に干渉することを防止できる。
【0035】
このアクチュエータ15によれば、ハウジング30内に備えたモータ38を回転させ、モータ38の回転を入力フランジ81を介して雄ねじ部材107に伝えることができる。
雄ねじ部材107が回転することで、雌ねじ部材108を軸線111方向(軸方向)に送り出すことができる。
雌ねじ部材108を送り出してアクチュエータ15を伸縮させることで、後輪18(図2参照)の舵角を制御することができる。
【0036】
図4は本発明に係る独立操舵装置を示す側面図である。
前述したように、アクチュエータ15は、基端部15aがラバーブッシュジョイント26で車体11(図2参照)に連結され、先端部15bがラバーブッシュジョイント27でナックル14(図2参照)に連結されている。
ラバーブッシュジョイント26は第1ラバーブッシュ73を備えている。また、ラバーブッシュジョイント27は第2ラバーブッシュ77を備えている。
【0037】
このため、モータ38を回転させてアクチュエータ15を矢印A方向に伸縮させた際に、第1、第2のラバーブッシュ73,77が弾性変形して後輪18の操舵応答性を良好に保つことが難しいことが考えられる。
【0038】
一方、後輪18の操舵応答性を良好に保つために、第1、第2のラバーブッシュ73,77の弾性変形量を小さく抑えすぎると、アクチュエータ15の矢印B方向の移動が大きく規制される。
このため、ナックル14を円滑に移動させることが難しくなり、乗心地を良好に保つことが難しくなる。
【0039】
そこで、アクチュエータ15を伸縮させた際の後輪18の操舵応答性を良好に保つように、第1、第2のラバーブッシュ73,77の軸線111方向(軸方向)のばね特性がK1(図5(a)参照)に設定されている。
一方、乗心地を良好に保つように、第1、第2のラバーブッシュ73,77のねじり方向(こじり方向)のばね特性がK2(図5(b)参照)に設定されている。
【0040】
図5(a)、(b)は本発明に係るアクチュエータの振動モデルを示す図、図6は本発明に係るアクチュエータの固有周波数について説明する図である。
図5(a),(b)に示すように、ハウジング30は、第1ラバーブッシュ73を介して車体11に支持されている。
出力ロッド34は、第2ラバーブッシュ77を介してナックル14に支持されている。
この出力ロッド34は、ハウジング30に対して矢印A方向に移動自在に、かつ、矢印B方向に回動可能に支持されている。
【0041】
なお、図3に示すように、出力ロッド34は、送りねじ機構43、カップリング42、減速機41およびモータ38を介してハウジング30に連結されている。
図5(a)は、アクチュエータ15の矢印A方向(すなわち、図4に示す軸線111方向)の振動モデルであり、送りねじ機構43、カップリング42、減速機41およびモータ38をばね部材83と考えることが可能である。
【0042】
図5(a)に示す第1、第2のラバーブッシュ73,77のばね特性K1は、アクチュエータ15の軸線111方向(軸方向)に対する弾性変形量を小さく抑えるように設定されている。
よって、アクチュエータ15を伸縮させた際に、後輪18の操舵応答性を良好に保つことが可能である。
【0043】
図5(b)に示す第1、第2のラバーブッシュ73,77のばね特性K2は、アクチュエータ15のねじり方向に対する弾性変形量を大きくするように設定されている。
よって、ナックル14が円滑に移動して、乗心地を良好に保つことが可能である。
【0044】
すなわち、ばね特性K1とばね特性K2との関係は、K1>K2を満たすように設定されている。
このように、ばね特性K1をばね特性K2に対して大きく設定することで、後輪操舵の応答性および乗心地の両方を良好に保つことができる。
【0045】
なお、ばね特性K1とは、第1、第2のラバーブッシュ73,77に加わる軸線111方向の荷重と、荷重によって生じる第1、第2のラバーブッシュ73,77の軸線111方向の撓みとの関係をいう。
また、ばね特性K2とは、第1、第2のラバーブッシュ73,77に加わるねじり方向の荷重と、荷重によって生じる第1、第2のラバーブッシュ73,77のねじり方向の撓みとの関係をいう。
【0046】
ところで、アクチュエータ15が第1ラバーブッシュ73を介して車体11に連結されるとともに、第2ラバーブッシュ77を介してナックル14に連結されている。
よって、図5(a)に示すように、第1、第2のラバーブッシュ73,77を含むアクチュエータ15が全体として軸線111方向に固有周波数(固有振動数)を持つ。
また、アクチュエータ15が第1、第2のラバーブッシュ73を介して車体11やナックル14に連結されることで、図5(b)に示すように、第1、第2のラバーブッシュ73,77を含むアクチュエータ15が全体としてねじり方向に固有周波数(固有振動数)を持つ。
【0047】
ここで、ばね特性K1やばね特性K2は、軸線111方向の固有周波数や、ねじり方向の固有周波数を決定する要因になる。
軸線111方向の固有周波数は、アクチュエータ15が軸線111方向に共振するときの周波数であり、後輪18の操舵応答性に影響を与える。
また、ねじり方向の固有周波数は、アクチュエータ15がねじり方向に共振するときの周波数であり、乗心地に影響を与える。
【0048】
アクチュエータ15の軸線111方向の固有周波数は、ばね特性K1に基づいてf1に決められている。
換言すれば、軸線111方向の固有周波数がf1になるように、ばね特性K1が設定されている。
なお、固有周波数がf1は、図6に示すように、所定範囲H1に設定されている。
【0049】
また、アクチュエータ15のねじり方向の固有周波数は、ばね特性K2に基づいてf2に決められている。
換言すれば、ねじり方向の固有周波数がf2になるように、ばね特性K2が設定されている。
なお、固有周波数がf2は、図6に示すように、所定範囲H2に設定されている。
【0050】
ここで、前述したように、ばね特性K1とばね特性K2とは、K1>K2の関係が成立している。
よって、第1、第2のラバーブッシュ73,77は、軸線111方向に対して弾性変形量が小さく、ねじり方向に対して弾性変形量が比較的大きい。
これにより、図6に示すように、軸線111方向の固有周波数f1は、ねじり方向の固有周波数f2と比較して高く設定されている。
【0051】
ところで、アクチュエータ15の作動周波数f3がアクチュエータ15の固有周波数f1,f2と一致した場合、アクチュエータ15が矢印A方向(図5(a)参照)や矢印B方向(図5(b)参照)に共振することが考えられる。
なお、アクチュエータ15の作動周波数f3は、図6に示すように、所定範囲H3に設定されている。
【0052】
そこで、図6に示すように、アクチュエータ15の軸線111方向の固有周波数f1や、アクチュエータ15のねじり方向の固有周波数f2を、アクチュエータ15の作動周波数f3より高く設定した。
具体的には、アクチュエータ15の作動周波数f3が略2Hzの場合、固有周波数f1や固有周波数f2を作動周波数f3より高い50〜100Hzに設定することが好ましい。
【0053】
これにより、アクチュエータ15が矢印A方向(軸線111方向)に固有周波数f1で共振することや、アクチュエータ15が矢印B方向(ねじり方向)に固有周波数f2で共振することを防ぐことができる。
【0054】
アクチュエータ15が固有周波数f1で共振することを防ぐことで、アクチュエータ15の伸張に対する後輪操舵の応答性を一層高めることができる。
さらに、アクチュエータ15が固有周波数f2で共振することを防ぐことで、ナックル14(図4参照)を円滑に移動することが可能になる。
これにより、ナックル14とともに後輪18(図4参照)を円滑に移動することができ、乗心地を一層高めることができる。
【0055】
加えて、固有周波数f1,f2をアクチュエータ15の作動周波数f3より高い周波数に設定することで、第1、第2のラバーブッシュ73,77(図5参照)のばね特性を自由に選択できる。
これにより、車両の乗心地や車輪の操舵の応答性(操安性)の設定自由度を向上させることができる。
【0056】
なお、前記実施の形態では、アクチュエータ15の両端部15a,15bを第1、第2のラバーブッシュ73,77を介して車体11側やナックル14側にそれぞれ連結させた例について説明したが、これに限らないで、アクチュエータ15の両端部15a,15bのうち、一端部のみをラバーブッシュを介して車体11側やナックル14側に連結させることも可能である。
【0057】
また、前記実施の形態では、独立操舵装置として後輪独立操舵装置10を示して後輪18を操舵する例について説明したが、これに限らないで、前輪を操舵する前輪独立操舵装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、アクチュエータ内のモータを回転させ、モータの回転を軸方向の直進運動に変換させて車輪の舵角を制御する独立操舵装置を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る独立操舵装置を示す斜視図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】本発明に係る独立操舵装置を示す側面図である。
【図5】本発明に係るアクチュエータの振動モデルを示す図である。
【図6】本発明に係るアクチュエータの固有周波数について説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
10…後輪独立操舵装置(独立操舵装置)、11…車体、14…ナックル、15…アクチュエータ、15a…基端部(両端部の一方)、15b…先端部(両端部の他方)、18…後輪、38…モータ、73…第1ラバーブッシュ(ラバーブッシュ)、77…第2ラバーブッシュ(ラバーブッシュ)、f1,f2…アクチュエータの固有周波数、f3…アクチュエータの作動周波数、K1,K2…ばね特性(バネレート)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの両端部が車体側およびナックル側にそれぞれ連結され、前記アクチュエータ内に備えたモータを回転させ、前記モータの回転を軸方向の直進運動に変換させ、前記ナックルで支持する車輪の舵角を制御する独立操舵装置において、
前記アクチュエータの両端部のうち、少なくとも一端部がラバーブッシュを介して車体側およびナックル側の一方に連結され、
前記ラバーブッシュのばね特性から決定される前記アクチュエータの固有周波数が、前記アクチュエータの作動周波数より高く設定されたことを特徴とする独立操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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